説明

画像形成装置

【課題】カールしたシートに対する画像形成品質の低下を抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】搬送ベルト50は、搬送経路の途中において、搬送面50Aによりシート99の第1面99Aを吸着しながら搬送する。第1搬送ガイド110は、搬送経路における搬送面50Aより上流側に設けられ、第1面99Aに接触可能とされて、シート99を搬送面50Aに向けて案内する。第2搬送ガイド120は、搬送経路における搬送面50Aより上流側で第1搬送ガイド110と対向して設けられ、シート99の第2面99Bに接触可能とされて、シート99を搬送面50Aに向けて案内する。第1搬送ガイド110は、幅方向の中央部110Cに対して幅方向の両端部110L、110Rが搬送面50Aに平行に接近するように突出し、かつ中央部110Cに対して両端部110L、110Rが搬送面50Aに直交する方向に離れるように突出する形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の画像形成装置の例が開示されている。この画像形成装置は、シートを搬送する搬送経路が設けられた装置本体と、装置本体内において搬送経路の途中に設けられ、複数本のローラに巻き掛けられて循環可能な搬送ベルトとを備える。搬送ベルトは、搬送経路に沿う搬送面によりシートの第1面を吸着しながら搬送するものである。
【0003】
また、この画像形成装置は、装置本体内において搬送面に対向するように設けられ、搬送面上を通過するシートの第1面とは反対側の第2面に接触する複数個の感光体と、装置本体内において各感光体に対応して設けられた複数個の現像手段とを備える。
【0004】
上記構成である従来の画像装置では、搬送ベルトが搬送面によりシートの第1面を吸着しながら搬送する際、現像手段が感光体に形成された潜像に現像剤を供給して現像剤像とし、感光体が現像剤像をシートの第2面に転写する。その後、シートに転写された現像剤像は熱定着される。こうして、この画像形成装置は、シートの第2面に画像を形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−96527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の画像形成装置では、シートに第2面に転写された現像剤像が熱定着されることにより、排出されるシートがカールする傾向にある。特に、シートの幅方向の両端縁側がカールする現象が発生し易い。
【0007】
そして、例えば、第2面に現像剤像が熱定着されたシートの第1面にも画像を形成する場合等において、シートがカールした状態で搬送面上に搬送されると、そのカールした状態のままでシートが搬送面に吸着され易くなる。そうすると、シートの幅方向の両端縁が中央領域より先に搬送面に吸着されて動けない状態になり、シートの幅方向の中央領域において搬送面に対する浮きが発生するおそれがある。その結果、シートの搬送面に対して浮いた領域に対して現像剤像を良好に転写することが難しくなり、カールしたシートに対する画像形成品質が低下し易いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、カールしたシートに対する画像形成品質の低下を抑制できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像形成装置は、シートを搬送する搬送経路が設けられた装置本体と、
前記装置本体内において前記搬送経路の途中に設けられ、複数本のローラに巻き掛けられて循環可能であり、搬送される前記シートの幅方向に延在し、かつ前記搬送経路に沿う平面である搬送面により前記シートの第1面を吸着しながら搬送する搬送ベルトと、
前記装置本体内において前記搬送面に対向するように設けられ、前記搬送面に平行であり、かつ前記幅方向と直交する長手方向に並び、前記搬送面上を通過する前記シートの前記第1面とは反対側の第2面に接触する複数個の感光体と、
前記装置本体内において各前記感光体に対応して設けられ、各前記感光体に形成される潜像に現像剤を供給して現像剤像とする複数個の現像手段と、
前記装置本体内において前記搬送経路における前記搬送面より上流側に設けられ、前記シートの前記第1面に接触可能とされて、前記シートを前記搬送面に向けて案内する第1搬送ガイドと、
前記装置本体内において前記搬送経路における前記搬送面より上流側で前記第1搬送ガイドと対向して設けられ、前記シートの前記第2面に接触可能とされて、前記シートを前記搬送面に向けて案内する第2搬送ガイドとを備える画像形成装置であって、
前記第1搬送ガイドは、前記幅方向の中央部に対して前記幅方向の両端部が前記搬送面に平行に接近するように突出し、かつ、前記中央部に対して前記両端部が前記搬送面に直交する方向に離れるように突出する形状とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成装置では、シートがカールした状態で搬送面上に搬送される際、まず、カールしたシートの幅方向の両端縁を第1搬送ガイドの幅方向の両端部が持ち上げる。そして、第1搬送ガイドと第2搬送ガイドとで挟むようにして、シートのカールを平らになるように矯正する。この際、第1搬送ガイドは、シートの幅方向の中央領域が両端部より凹んだ中央部に逃げることを許容する。このため、そのシートの逃げた中央領域が最も先に搬送面に吸着され、その後、シートの幅方向の両端縁が搬送面に吸着されることとなり、シートの幅方向の中央領域において搬送面に対する浮きが発生し難い。
【0011】
したがって、本発明の画像形成装置は、カールしたシートに対する画像形成品質の低下を抑制できる。
【0012】
本発明の画像形成装置において、第1搬送ガイドは、中央部から両端部に向かって除々に突出していることが望ましい。この構成によれば、第1搬送ガイドが幅方向の中央部から両端部に向かって段階的に突出する場合と比較して、シートを滑らかにガイドし易い。
【0013】
本発明の画像形成装置において、搬送面は略水平に延在している。また、第1搬送ガイドは、両端部が搬送面より高い位置にある。この構成によれば、搬送面の直前で、シートの幅方向の両端縁を搬送面より上方に確実に持ち上げることができる。その結果、シートの幅方向の中央領域が搬送面に一層吸着され易くなり、カールしたシートに対する画像形成品質の低下を確実に抑制できる。
【0014】
本発明の画像形成装置は、装置本体内において搬送ベルトの下方に設けられ、シートが載置される第1シート載置部を備える。そして、搬送経路は、搬送面より上流側に、第1シート載置部から上向きにUターンして搬送面にシートを搬送するUターン経路を有する。また、第1搬送ガイドは、幅方向から見た場合に略円弧を描くように、Uターン経路に沿って湾曲している。この構成によれば、第1搬送ガイドが湾曲することにより、第1搬送ガイドが屈曲する場合と比較して、シートの擦れや送りムラが発生し難くなり、また、シートが第1搬送ガイドに引っかかり難くなるので、シートを滑らかに搬送し易い。
【0015】
本発明の画像形成装置は、装置本体の側面に設けられ、シートを載置可能な第2シート載置部を備える。そして、第2シート載置部から搬送されるシートは、搬送経路におけるUターン経路の途中に合流し、かつ第2搬送ガイドの頂点よりも下方で合流することにより、第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドに案内される。この構成によれば、第2シート載置部から搬送面までシートをほぼストレート給紙できるので、厚紙等を手差し給紙し易い。また、第2シート載置部に載置されるシートがカールしている場合でも、第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドにより、カールしたシートに対する画像形成品質の低下を抑制できる。
【0016】
本発明の画像形成装置において、第2搬送ガイドの下流側端部は、第1搬送ガイドの下流側端部よりもシートの搬送方向下流側まで延設されている。この構成によれば、シートの幅方向の全てが搬送面に吸着されるまで、第2搬送ガイドがシートを案内できる。その結果、カールしたシートに対する画像形成品質の低下を確実に抑制できる。
【0017】
本発明の画像形成装置では、第2搬送ガイドにおいて、第2面に接触可能な案内面は、幅方向に真っ直ぐな状態を保ったまま湾曲する曲面であることが望ましい。この構成によれば、例えば、カールしていないシートが搬送されるときであっても、そのシートが第2搬送ガイドに沿って滑らかに搬送され易い。
【0018】
本発明の画像形成装置において、第1搬送ガイドは、シートの厚みを若干吸収できる弾性部材からなることが望ましい。この構成によれば、第1搬送ガイドが少しつぶれてシートの厚みを若干吸収することにより、シートが第1搬送ガイドに引っ掛かり難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例の画像形成装置の概略断面図である。
【図2】実施例の画像形成装置に係り、第2載置部を開放した状態を示す概略部分断面図である。
【図3】実施例の画像形成装置に係り、搬送ベルトの搬送面及び第1搬送ガイドを示す要部拡大斜視図である。
【図4】実施例の画像形成装置に係り、搬送ベルトの搬送面及び第1搬送ガイドを示す要部拡大斜視図である。
【図5】実施例の画像形成装置に係り、搬送ベルトの搬送面、第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドを示す要部拡大上面図である。
【図6】実施例の画像形成装置に係り、図5の矢視A方向から見た搬送ベルトの搬送面、第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドを示す要部拡大正面図である。
【図7】実施例の画像形成装置に係り、図6のB−B断面を示す要部拡大断面図である。
【図8】実施例の画像形成装置に係り、(a)は図5の矢視A方向から見た搬送面、第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドを示して、第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドのシートに対する作用を説明する説明図であり、(b)は(a)から第1搬送ガイドをなくした比較例におけるシートの挙動を説明する説明図である。
【図9】変形例1の画像形成装置に係り、搬送ベルトの搬送面、第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドを示す要部拡大上面図である。
【図10】変形例1の画像形成装置に係り、図9の矢視C方向から見た搬送ベルトの搬送面、第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドを示す要部拡大正面図である。
【図11】変形例2の画像形成装置に係り、搬送ベルトの搬送面、第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドを示す要部拡大上面図である。
【図12】変形例2の画像形成装置に係り、図11の矢視D方向から見た搬送ベルトの搬送面、第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドを示す要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施例)
図1に示すように、実施例の画像形成装置1は、電子写真方式により、用紙やOHPシート等であるシート99に複数色の画像を形成するカラーレーザプリンタである。図1では、紙面右側を装置の前側と規定し、装置を前側から見た場合に左手に来る側である紙面手前側を左側と規定して、前後、左右及び上下の各方向を表示する。そして、図2以降の各図に示す各方向は、全て図1に示す各方向に対応させて表示する。以下、図1等に基づいて、画像形成装置1が備える各構成要素について説明する。
【0022】
<全体構成>
図1に示すように、画像形成装置1は、略箱状体であるハウジング90と、ハウジング90の内側に設けられた図示しないフレーム部材とを備えている。ハウジング90及びフレーム部材により、本発明の装置本体が構成されている。ハウジング90の上面には、排出トレイ90Aが下方に凹むように形成されている。ハウジング90の前面における下側には、第1開口90Bが形成されている。ハウジング90の前面における上側には、第2開口90Cが形成されている。ハウジング90の前面は、本発明の「装置本体の側面」の一例である。
【0023】
また、画像形成装置1は、シートカセット21と、マルチパーパストレイ(以下、「MPトレイ」と呼ぶ)81とを備える。シートカセット21は、本発明の「第1載置部」の一例である。MPトレイ81は、本発明の「第2載置部」の一例である。
【0024】
シートカセット21は、ハウジング90内の下方に着脱可能に設けられている。シートカセット21は、上方が開放されて、その内部に複数枚のシート99を積層状態で収容する略箱状体である。シート99はシートカセット21に収容された状態で、第1面99Aを上方に向け、第1面99Aとは反対側の第2面99Bを下方に向けている。シートカセット21は、ハウジング90の手前側から第1開口90Bを介して略水平に挿入されることにより、ハウジング90内に装着され、その逆の動作により、ハウジング90から取り外される。
【0025】
図1に示すように、MPトレイ81は、略平板形状部材であり、上下方向に起立した状態で第2開口90Cを閉鎖している。この状態では、MPトレイ81は、ハウジング90の前面側の意匠面の一部を構成している。MPトレイ81の下端縁側は、ハウジング90に揺動可能に支持されている。そして、MPトレイ81は、図2に示すように、その上端側が前方に向けて揺動することにより、ハウジング90から前方に向けて略水平に延びる状態に変化する。この状態では、MPトレイ81の上方を向く面に、シート99が載置される。MPトレイ81上のシート99は、後述するMP給紙部80により、ハウジング90内に給紙されるようになっている。
【0026】
図1及び図2に示すように、ハウジング90内には、Uターン経路P1、略水平経路P2、排出経路P3及びMP経路P4からなる搬送経路が設けられている。図1に示すように、Uターン経路P1は、シートカセット21の前端部からハウジング90の前面側に向かって進んだ後、上向きにUターンして後方に向きを変える経路である。略水平経路P2は、Uターン経路P1に連続し、ハウジング90の後面側に向かって略水平に進む経路である。排出経路P3は、略水平経路P2に連続し、ハウジング90の後面に向かって進んだ後、上向きにUターンし、さらに前方に向かって進んで排出トレイ90Aまで至る経路である。図2に示すように、MP経路P4は、開放状態のMPトレイ81から後方に向かって上り傾斜しつつ進んで、Uターン経路P1の途中に合流する経路である。本実施例では、Uターン経路P1、略水平経路P2、排出経路P3及びMP経路P4に沿って搬送されるシート99の幅方向は、左右方向である。
【0027】
図1に示すように、ハウジング90内において、シートカセット21の上方には、給紙部20、MP給紙部80、第1搬送ガイド110、第2搬送ガイド120、画像形成部30及び排出ローラ対29A、29B等が設けられている。これらは、図示しないフレーム部材に組み付けられている。
【0028】
給紙部20は、シートカセット21に収容されたシート99を給紙ローラ22、分離ローラ23及び分離パッド23Aにより1枚ずつUターン経路P1に送り出す。そして、Uターン経路P1の途中に配設された搬送ローラ対24A、24B及びレジストローラ対25A、25Bにより、シート99を画像形成部30に向けて搬送する。
【0029】
図2に示すように、MP給紙部80は、MPトレイ81に第2面99Bを上方に向けた状態で載置されたシート99を給紙ローラ82及び分離パッド82Aにより1枚ずつMP経路P4に沿って搬送する。そして、MP給紙部80は、シート99をUターン経路P1の途中に合流させ、レジストローラ対25A、25Bにより、画像形成部30に向けて搬送する。
【0030】
第1搬送ガイド110及び第2搬送ガイド120は、ハウジング90内においてUターン経路P1の途中に設けられている。
【0031】
第1搬送ガイド110は、Uターン経路P1の最上端部に位置している。第1搬送ガイド110は、Uターン経路P1の最上端部を通過するシート99の第1面99Aに接触可能とされて、シート99を後述する搬送面50Aに向けて案内するものである。第2搬送ガイド120は、Uターン経路P1の最上端部に位置して、第1搬送ガイド110と対向している。第2搬送ガイド120は、Uターン経路P1の最上端部を通過するシート99の第2面99Bに接触可能とされて、シート99を後述する搬送面50Aに向けて案内するものである。図2に示すように、MP経路P4は、第2搬送ガイド120の頂点120Tよりも下方で、Uターン経路P1の途中に合流するようになっている。第1搬送ガイド110及び第2搬送ガイド120の具体的構成については、後で詳しく説明する。
【0032】
図1に示すように、画像形成部30は、いわゆるダイレクトタンデム方式のものである。画像形成部30は、略水平経路P2の下方に設けられた搬送ベルト50と、略水平経路P2を挟んで搬送ベルト50の上方に位置する4組の感光ドラム40及びプロセスカートリッジ31と、各感光ドラム40及びプロセスカートリッジ31の上方に位置するスキャナ部39と、排出経路P3の最上流側に位置する定着器55等とを有する。感光ドラム40は、本発明の「感光体」の一例である。プロセスカートリッジ31は、本発明の「現像手段」の一例である。
【0033】
搬送ベルト50は、ハウジング90内の後方において左右方向を向く回転軸周りに回転する駆動ローラ51と、ハウジング90内の前方において駆動ローラ51と平行な回転軸周りに回転する従動ローラ52とに巻き掛けられて循環する無端ベルトである。搬送ベルト50において、駆動ローラ51と従動ローラ52と間で略水平経路P2に沿って、左右方向及び前後方向に延在する略水平面は、搬送面50Aとされている。
【0034】
Uターン経路P1に沿って搬送されて略水平経路P2に進入するシート99は、第1面99Aを下方に向けた状態となって、第1面99Aが搬送面50Aに吸着される。そして、シート99は、循環する搬送ベルト50に搬送されることにより、第2面99Bを上方に向けた状態で、4組の感光ドラム40及びプロセスカートリッジ31の下方を通過する。
【0035】
4組の感光ドラム40及びプロセスカートリッジ31は、ブラック、イエロー、マゼンダ、シアンの4色のトナーにそれぞれ対応している。トナーは、本発明の「現像剤」の一例である。
【0036】
各感光ドラム40は、左右方向に延びる円筒体であり、略水平経路P2を挟んで搬送面50Aに対して上方から対向するように設けられている。各感光ドラム40は、略水平経路P2に沿って前後方向に並んでいる。本実施例では、搬送面50Aに平行であり、かつ幅方向と直交する長手方向は、前後方向である。
【0037】
各プロセスカートリッジ31は、各感光ドラム40の上方に位置して、略水平経路P2に沿って前後方向に並んでいる。各プロセスカートリッジ31は、左右方向に延びる略箱状体であり、その内部に現像ローラ31A、トナー収容部31B及び帯電器31C等を有する。プロセスカートリッジ31はそれぞれ、対応する感光ドラム40に対して前方かつ斜め上方に位置して、現像ローラ31Aを感光ドラム40に当接させている。
【0038】
スキャナ部39は、レーザ光源、ポリゴンミラー、fθレンズ及び反射鏡等から構成されており、上方からレーザビームを各感光ドラム40に照射する。
【0039】
定着器55は、排出経路P3を挟んで互いに対向する加熱ローラ55A及び加圧ローラ55Bを有する。
【0040】
排出ローラ対29A、29Bは、排出経路P3における最下流側に位置して、排出トレイ90Aに臨んでいる。
【0041】
画像形成部30は、以下のようにして、Uターン経路P1又はMP経路P4を介して、略水平経路P2に沿って搬送されるシート99の第2面99Bに画像を形成する。すなわち、各感光ドラム40の表面は、その回転に伴って、帯電器31Cにより一様に正帯電された後、スキャナ部39が照射するレーザービームにより露光される。これにより、スキャナ部39は、各感光ドラム40の表面に、形成すべき画像に対応した静電潜像を形成する。次に、各プロセスカートリッジ31の現像ローラ31Aにより、トナー収容部31Bから各感光ドラム40の表面の静電潜像に対応する色のトナーを供給して、トナー像を形成する。そのトナー像は、略水平経路P2に沿って搬送されるシート99の第2面99Bに感光ドラム40が当接しつつ回転し、搬送面50Aに印加された負の電圧が作用することにより、シート99の第2面99Bに転写される。
【0042】
そして、定着器55は、各プロセスカートリッジ31の下方を通過して、排出経路P3に進入するシート99を加熱ローラ55A及び加圧ローラ55Bにより加熱加圧して、シート99の第2面99Bに転写されたトナー像を定着させる。その後、シート99は、排出ローラ対29A、29Bにより、排出トレイ90Aに排出される。こうして、画像形成装置1は、シート99に対する画像形成動作を終了する。
【0043】
<第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドの具体的構成>
図3〜図7に示すように、搬送ベルト50は、枠状フレーム部材である搬送ベルト保持部59の前側枠部59F、後側枠部(図示省略)、左側枠部59L及び右側枠部59Rにより前後左右から囲まれた状態で、搬送面50Aを上方に露出させている。また、搬送ベルト50が巻き掛けられた従動ローラ52及び駆動ローラ51は、左右のフレームである左側枠部59L及び右側枠部59Rによって保持されている。
【0044】
図3及び図7等に示すように、搬送ベルト保持部59の前側枠部59Fに、従動ローラ52に対して前方に位置する傾斜面58が形成されている。傾斜面58は、前方に向かって下り傾斜している。図7に示すように、傾斜面58の上端縁58Aの高さは、搬送面50Aの高さとほぼ等しくされている。
【0045】
図7に示すように、第1搬送ガイド110は、搬送ベルト保持部59の前側枠部59Fにおいて、傾斜面58の上端縁58Aに連続し、従動ローラ52に巻き掛けられた搬送ベルト50に対して上方から覆い被さるように後方に延びる部位である。
【0046】
第1搬送ガイド110の中央部110Cは、左右方向から見た場合、Uターン経路P1に沿って上方に膨らむように緩やかに湾曲している。そして、中央部110Cの後端111Cは、略水平面である搬送面50Aの直前まで延びている。
【0047】
図3、図4及び図7等に示すように、第1搬送ガイド110の上方に膨らむ湾曲の程度は、左右方向の中央部110Cから、左右方向の両端部110L、110Rに向けて、除々に大きくなっている。
【0048】
図5に示すように、両端部110L、110Rの後端111L、111Rは、中央部110Cの後端111Cに対して、搬送面50Aに平行に接近するように突出している。第1搬送ガイド110を上方から見た場合、後端111L、111C、111Rを結んだ線は、「V」字状の折れ線となっている。図7に示すように、後端111L、111Rは、搬送面50Aに対して上方から被さるように後端111Cよりも後方に突出している。
【0049】
図6に示すように、両端部110L、110Rの上端112L、112Rは、中央部110Cの上端112Cに対して、搬送面50Aに直交する上下方向に離れるように突出している。第1搬送ガイド110を前方から見た場合、上端112L、112C、112Rを結んだ線も、「V」字状の折れ線となっている。図7に示すように、上端112L、112Rは、後端112Cより斜め後方に位置している。上端112L、112Rは、搬送面50Aより高い位置にある。
【0050】
搬送ベルト保持部59の前側枠部59Fは剛性の高い樹脂成形品である。ただし、第1搬送ガイド110が形成されている部位については、面圧が作用することにより若干凹む弾性材料が用いられている。具体的には、ゴムシートやエラストマーシートが樹脂成形品に貼り付けられたり、ゴムやエラストマーがインサート成形されたりすることにより、第1搬送ガイド110が弾性材料から構成されるようになっている。
【0051】
図6及び図7に示すように、第2搬送ガイド120は、第1搬送ガイド110に対して上方から対向している。第2搬送ガイド120において、下方を向いて第2面99Bに接触可能な案内面120Aは、左右方向に真っ直ぐな状態を保ったまま湾曲する曲面である。詳しく述べると、左右方向においては真っ直ぐな状態であり、前後方向においては湾曲している。また、案内面120Aは、第1搬送ガイド110の両端部110L、110Rの湾曲よりも大きく湾曲している。
【0052】
図5及び図7に示すように、第2搬送ガイド120の後端縁121は、第1搬送ガイド11の中央部110Cの後端111C及び両端部110L、110Rの後端111L、111Rよりも搬送面50Aに接近するように延設されている。また、第2搬送ガイド120の後端縁121は、第1搬送ガイド11の中央部110Cの後端111C及び両端部110L、110Rの後端111L、111Rよりも、シート99の搬送方向D1の下流側に位置する長さまで延設されている。
【0053】
<作用効果>
実施例の画像形成装置1において、シート99がカールした状態で搬送面50A上に搬送される様子を図8(a)に示す。なお、実施例において問題となるシート99のカールは、前後方向からみて、シート99の左右方向の両端縁99L、99Rが下方に位置し、中央領域99Cが上方に位置するような湾曲形状のカールである。このようなカール形状であるシート99は、以下のようにして搬送される。まず、カールしたシート99の左右方向の両端縁99L、99Rを第1搬送ガイド110の左右方向の両端部110L、110Rが持ち上げ、第1搬送ガイド110と第2搬送ガイド120とで挟むようにして、シート99のカールを平らになるように矯正する。なお、図8(a)は、矯正された後のシート99の状態を示している。この際、第1搬送ガイド110は、シート99の左右方向の中央領域99Cが両端部110L、110Rより凹んだ中央部110Cに逃げることを許容する。このため、そのシート99の逃げた中央領域99Cが最も先に搬送面50Aに吸着され、その後、シート99の左右方向の両端縁99L、99Rが搬送面50Aに吸着されることとなり、シート99の左右方向の中央領域99Cにおいて搬送面50Aに対する浮きが発生し難い。
【0054】
図8(b)に、上記形状を有する第1搬送ガイド110をなくした比較例を示す。この場合、シート99がカールした状態で搬送面50A上に搬送されると、そのカールした状態のままでシート99の第1面99Aが搬送面50Aに吸着され易くなる。そうすると、シート99の幅方向の両端縁99L、99Rが中央領域99Cより先に搬送面に吸着されて動けない状態になり、シート99の幅方向の中央領域99Cにおいて搬送面50Aに対する浮きが発生してしまう。その結果、シート99の搬送面50Aに対して浮いた領域に対して現像剤像を良好に転写することが難しくなる。
【0055】
したがって、実施例の画像形成装置1は、カールしたシート99に対する画像形成品質の低下を抑制できる。
【0056】
また、この画像形成装置1において、第1搬送ガイド110は、中央部110Cから両端部110L、110Rに向かって除々に突出している。この構成により、第1搬送ガイド110が左右方向の中央部110Cから両端部110L、110Rに向かって段階的に突出する場合と比較して、シート99を滑らかにガイドし易い。
【0057】
さらに、この画像形成装置1において、搬送面50Aは略水平に延在し、第1搬送ガイド110は、両端部110L、110Rの上端112L、112Rが搬送面50Aより高い位置にある。この構成により、搬送面50Aの直前で、シート99の左右方向の両端縁99L、99Rを搬送面50Aより上方に確実に持ち上げることができる。その結果、シート99の幅方向の中央領域99Cが搬送面50Aに一層吸着され易くなり、カールしたシート99に対する画像形成品質の低下を確実に抑制できる。
【0058】
また、この画像形成装置1は、シートカセット21からUターン経路P1に沿って搬送するシート99を案内する第1搬送ガイド110が湾曲することにより、第1搬送ガイド110が屈曲する場合と比較して、シート99の擦れや送りムラが発生し難くなり、また、シート99が第1搬送ガイド110に引っかかり難くなるので、シート99を滑らかに搬送し易い。
【0059】
さらに、この画像形成装置1は、図2に示すように、MPトレイ81からMP経路P4に沿って搬送されるシート99がUターン経路P1の途中に合流し、かつ第2搬送ガイド120の頂点120Tよりも下方で合流することにより、第1搬送ガイド110及び第2搬送ガイド120に案内される。この構成により、MPトレイ81から搬送面50Aまでシート99をほぼストレート給紙できるので、厚紙等を手差し給紙し易い。また、MPトレイ81に載置されるシート99がカールしている場合でも、第1搬送ガイド110及び第2搬送ガイド120により、カールしたシート99に対する画像形成品質の低下を抑制できる。
【0060】
また、この画像形成装置1において、第2搬送ガイド120の後端121は、図5及び図7に示すように、第1搬送ガイド110の中央部110Cの後端111C及び両端部110L、110Rの後端111L、111Rよりも搬送方向D1の下流側まで延設されている。この構成により、シート99の左右方向の全てが搬送面50Aに吸着されるまで、第2搬送ガイド120がシート99を案内できる。その結果、カールしたシート99に対する画像形成品質の低下を確実に抑制できる。
【0061】
さらに、この画像形成装置1では、第2搬送ガイド120において、第2面99Bに接触可能な案内面120Aは、左右方向に真っ直ぐな状態を保ったまま湾曲する曲面である。この構成により、カールしていないシート99が搬送されるときであっても、そのシート99が第2搬送ガイド120に沿って滑らかに搬送され易い。
【0062】
また、この画像形成装置1において、第1搬送ガイド110は、シート99の厚みを若干吸収できる弾性部材からなる。この構成により、第1搬送ガイド110が少しつぶれてシート99の厚みを若干吸収することができるので、シート99が第1搬送ガイド110に引っ掛かり難くなる。
【0063】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0064】
例えば、第1搬送ガイドは、実施例の第1搬送ガイド110の形状には限定されず、例えば、以下に示す変形例1、2のような形状であってもよい。
【0065】
(変形例1)
変形例1では、図9に示すように、第1搬送ガイド110を上方から見た場合、後端111L、111C、111Rを結んだ線は、前方に膨らむように湾曲している。また、第1搬送ガイド110を前方から見た場合、上端112L、112C、112Rを結んだ線は、下方に膨らむように湾曲している。このような形状であっても、実施例と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
(変形例2)
変形例2では、図11に示すように、第1搬送ガイド110を上方から見た場合、後端111L、111C、111Rを結んだ線は、中央部110C側が前方に膨らむように湾曲し、両端部110L、110R側が後方に膨らむように湾曲している。また、第1搬送ガイド110を前方から見た場合、上端112L、112C、112Rを結んだ線は、中央部110C側が下方に膨らむように湾曲し、両端部110L、110R側が上方に膨らむように湾曲している。このような形状であっても、実施例と同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、画像形成装置や複合機等に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…画像形成装置、40…感光体(感光体ドラム)
31…現像手段(プロセスカートリッジ)
99…シート、99A…シートの第1面、99B…シートの第2面
P1、P2、P3、P4…搬送経路(P1…Uターン経路、P2…略水平経路、P3…排出経路、P4…MP経路)
50…搬送ベルト、50A…搬送面
51、52…ローラ(51…駆動ローラ、52…従動ローラ)
110…第1搬送ガイド、120…第2搬送ガイド
110C…第1搬送ガイドの幅方向の中央部
110L、110R…第1搬送ガイドの幅方向の両端部
21…第1シート載置部(シートカセット)
81…第2シート載置部(MPトレイ)
120A…第2搬送ガイドの案内面、120T…第2搬送ガイドの頂点
121…第2搬送ガイドの下流側端部(後端縁)
111C、111L、111R…第1搬送ガイドの下流側端部(後端)
D1…搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送経路が設けられた装置本体と、
前記装置本体内において前記搬送経路の途中に設けられ、複数本のローラに巻き掛けられて循環可能であり、搬送される前記シートの幅方向に延在し、かつ前記搬送経路に沿う平面である搬送面により前記シートの第1面を吸着しながら搬送する搬送ベルトと、
前記装置本体内において前記搬送面に対向するように設けられ、前記搬送面に平行であり、かつ前記幅方向と直交する長手方向に並び、前記搬送面上を通過する前記シートの前記第1面とは反対側の第2面に接触する複数個の感光体と、
前記装置本体内において各前記感光体に対応して設けられ、各前記感光体に形成される潜像に現像剤を供給して現像剤像とする複数個の現像手段と、
前記装置本体内において前記搬送経路における前記搬送面より上流側に設けられ、前記シートの前記第1面に接触可能とされて、前記シートを前記搬送面に向けて案内する第1搬送ガイドと、
前記装置本体内において前記搬送経路における前記搬送面より上流側で前記第1搬送ガイドと対向して設けられ、前記シートの前記第2面に接触可能とされて、前記シートを前記搬送面に向けて案内する第2搬送ガイドとを備える画像形成装置であって、
前記第1搬送ガイドは、前記幅方向の中央部に対して前記幅方向の両端部が前記搬送面に平行に接近するように突出し、かつ、前記中央部に対して前記両端部が前記搬送面に直交する方向に離れるように突出する形状とされていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1搬送ガイドは、前記中央部から前記両端部に向かって除々に突出している請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送面は略水平に延在し、
前記第1搬送ガイドは、前記両端部が前記搬送面より高い位置にある請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記装置本体内において前記搬送ベルトの下方に設けられ、前記シートが載置される第1シート載置部を備え、
前記搬送経路は、前記搬送面より上流側に、前記第1シート載置部から上向きにUターンして前記搬送面に前記シートを搬送するUターン経路を有し、
前記第1搬送ガイドは、前記幅方向から見た場合に略円弧を描くように、前記Uターン経路に沿って湾曲している請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記装置本体の側面に設けられ、前記シートを載置可能な第2シート載置部を備え、
前記第2シート載置部から搬送される前記シートは、前記搬送経路における前記Uターン経路の途中に合流し、かつ前記第2搬送ガイドの頂点よりも下方で合流することにより、前記第1搬送ガイド及び前記第2搬送ガイドに案内される請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2搬送ガイドの下流側端部は、前記第1搬送ガイドの下流側端部よりも前記シートの搬送方向下流側まで延設されている請求項1乃至5のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2搬送ガイドにおいて、前記第2面に接触可能な案内面は、前記幅方向に真っ直ぐな状態を保ったまま湾曲する曲面である請求項1乃至6のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1搬送ガイドは、前記シートの厚みを若干吸収できる弾性部材からなる請求項1乃至7のいずれか1項記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−97091(P2013−97091A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238397(P2011−238397)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】