説明

画像形成装置

【課題】蛇行補正不良が発生し難く、使い勝手の良い画像形成装置を提供する。
【解決手段】中間転写ベルトの蛇行を、該中間転写ベルトを張架する従動ローラーを変位させることによって補正する蛇行補正ユニットと、従動ローラーの変位量を計測する計測部と、を有する複写機であって、中間転写ベルトを回走させながら、従動ローラーを変位させて、中間転写ベルトの蛇行を補正する第1の蛇行補正モード(ステップS2)と、中間転写ベルトの停止中に、従動ローラーの配置及び計測部の計測値を初期化してから改めて従動ローラーを変位させ、その後、中間転写ベルトを回走させて、中間転写ベルトの蛇行を補正する第2の蛇行補正モード(ステップS7〜S10)と、を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、またはファクシミリ装置等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、フルカラー式の画像形成装置においては、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)及びブラック(BK)の各色にそれぞれ対応した複数の感光体ドラムの周面に、レーザースキャニングユニットを用いて電気的潜像を形成し、各色のトナーによって各色のトナー像をそれぞれ生成するように構成されている。
【0003】
各感光体ドラムの周面に生成された各色のトナー像は、無端回走する中間転写ベルトに順次重畳転写され、これにより、中間転写ベルト上にカラー画像が合成される。次いで、この中間転写ベルト上に合成されたカラー画像を、転写ローラーを用いて用紙等からなるシート材に転写した後、定着装置で加圧・加熱することで、カラー画像を形成するように構成されている。
【0004】
中間転写ベルトのような無端ベルトを用いる方式においては、当該無端ベルトは、通常、複数のローラーによって張架されて回走するが、装置や無端ベルト自体に歪みがある場合には、無端ベルトの蛇行や片寄り(以下、蛇行と称する)が生じる。無端ベルトに蛇行が生じると、各色トナー像の色ずれや、装置の故障に繋がるため、従来から、無端ベルトの蛇行を補正するための蛇行補正手段が各種、提案されている。
【0005】
この蛇行補正手段の一つとして、例えば、無端ベルトの端部に寄り止め部材を接触させ、ベルトの幅方向の位置を規制する手段がある。しかしながら、この手段は、ベルトの端部が擦れて劣化し易くなる。そこで、下記特許文献1では、蛇行補正手段として、無端ベルトの裏側に接触している複数のローラーのうち少なくとも一つを傾けるように変位させることにより、無端ベルトの蛇行を補正するアライメント調整機構を採用している。
【0006】
このアライメント調整機構は、ローラーの一端をベルト表裏方向に揺動させるカムと、該カムを回転させるモーターとを有する。ローラーの変位量は、例えば、光学センサーで検出したカムの回転角度と、設計されたカムの単位角度当りのローラーの変位量とに基づいて計測することができる。このような計測手段を用い、蛇行補正手段の状態を監視することで、無端ベルトの蛇行を補正する際の精密なアライメント調整能を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】2010−217461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来では、蛇行補正手段による蛇行補正によっても、無端ベルトの蛇行が解消しない場合には、異常が発生したと判断し、その警告をディスプレイに表示等して装置を停止させていた。この警告が出た場合には、一般ユーザーが修理を行うことは困難であるから、装置構成を熟知している所謂サービスマンを呼び、当該異常状態を解消するための修理を行うこととしている。
【0009】
ところで、この異常状態には、装置の修理をしなくても良い一時的なものが存在する。しかしながら、従来では、異常状態がこの一時的なものか否かに係らず、一律に警告を出して装置を停止していた。このため、ユーザーは、装置停止による印刷ジョブのやり直しや、警告表示によるサービスマンの呼び出しといったことを度々行っており、人によっては、装置の使い勝手が悪いと感じられる場合がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、蛇行補正不良が発生し難く、使い勝手の良い画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、無端ベルトの蛇行を、該無端ベルトと接触する接触部材を変位させることによって補正する蛇行補正手段と、上記接触部材の変位量を計測する計測手段と、を有する画像形成装置であって、上記無端ベルトを回走させながら、上記接触部材を変位させて、上記無端ベルトの蛇行を補正する第1の蛇行補正モードと、上記無端ベルトの停止中に、上記接触部材の配置及び上記計測手段の計測値を初期化してから改めて上記接触部材を変位させ、その後、上記無端ベルトを回走させて、上記無端ベルトの蛇行を補正する第2の蛇行補正モードと、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、無端ベルト回走中にアクティブに接触部材を変位させて無端ベルトの蛇行を補正する第1の蛇行補正モードと、無端ベルト停止中に接触部材の配置及び計測手段の計測値を一度リセット(初期化)してから、接触部材の位置を適正な位置に改めて変位させ、適正な変位量で無端ベルトの蛇行を補正する第2の蛇行補正モードの、二種類の蛇行補正モードを備える。したがって、第1の蛇行補正モードの蛇行補正によって、無端ベルトの蛇行が解消しない場合であっても、それがアクティブな蛇行補正に起因する機械的誤差や計測誤差等といった一時的な異常状態である場合には、第2の蛇行補正モードによって対応することが可能となる。
【0012】
また、本発明では、上記無端ベルトの幅方向における位置を検出する位置検出手段を有し、上記第1の蛇行補正モードによる蛇行補正によっても、上記無端ベルトの幅方向における位置が予め定められた閾値以上である場合に、上記第2の蛇行補正モードに移行するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、先ず、第1の蛇行補正モードに移行して蛇行補正を試みることで、第2の蛇行補正モードに移行する回数を低減させ、無端ベルトの停止回数を低減させることが可能となる。
【0013】
また、本発明では、異常状態を警告するための異常警告手段を有し、上記第2の蛇行補正モードによる蛇行補正によっても、上記無端ベルトの幅方向における位置が上記閾値以上である場合には、現在の動作を停止し、上記異常警告手段による警告を行うという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第2の蛇行補正モードによる蛇行補正によっても、無端ベルトの幅方向における位置が上記閾値以上である場合には、一時的な異常でないと判断できるため、この場合には、現在の動作を停止し、警告を出す。
【0014】
また、本発明では、上記第2の蛇行補正モードによる蛇行補正によって、上記無端ベルトの幅方向における位置が上記閾値未満となった場合であっても、上記第2の蛇行補正モードに移行する頻度が予め定められた頻度を超えた場合には、現在の動作を停止し、上記異常警告手段による警告を行うという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第2の蛇行補正モードによる蛇行補正によって、無端ベルトの幅方向における位置が上記閾値未満となった場合であっても、第2の蛇行補正モードに移行する頻度が高い場合には、何らかの不具合があり修理が必要と判断できるため、この場合には、現在の動作を停止し、警告を出す。
【0015】
また、本発明では、上記頻度は、上記第2の蛇行補正モードから次の上記第2の蛇行補正モードへ移行するまでの期間情報と、上記第2の蛇行補正モードへ移行した回数の情報とに基づいて導出するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第2の蛇行補正モードに移行する頻度を、当該移行に関する期間情報と回数情報とに基づいて導出する。
【0016】
また、本発明では、上記無端ベルトは、複数のローラーに張架されており、上記接触部材は、上記複数のローラーのうちの少なくとも一つであるという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、無端ベルトを張架し、共に回転するローラーの変位により蛇行が補正されるため、無端ベルトが擦れて劣化し製品寿命が短くなる、といったことを防止することができる。
【0017】
また、本発明では、上記無端ベルトの一方の面に沿って並列に複数配置される像担持体と、上記像担持体のそれぞれと上記無端ベルトとを接触させる接触位置と、上記接触した上記像担持体のうちの少なくとも一部と上記無端ベルトとを離間させる離間位置との間を移動自在な移動手段と、を有し、上記第2の蛇行補正モードでは、上記移動手段を上記接触位置に位置させるという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第2の蛇行補正モードによる蛇行補正が、無端ベルトの一方の面に沿って並列配置された像担持体のすべてが接触した状態で行われる。ローラーの変位によって蛇行補正をする場合、離間位置にあるよりも接触位置にある方が、蛇行補正に関して無端ベルトの幅方向における応答性が良い。このため、蛇行補正の速度が速くなり、補正の時間短縮が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蛇行補正不良が発生し難く、使い勝手の良い画像形成装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における複写機の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における複写機の概略構成を示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態における蛇行補正ユニット及び計測部の構成を示す正面側斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における蛇行補正ユニット及び計測部の構成を示す背面側斜視図である。
【図5】本発明の実施形態における偏心カムのホームポジションを検出する前のパルス板とホームポジション検出部材との関係を示す正面図である。
【図6】本発明の実施形態における偏心カムの回転角度の検出を開始する際のパルス板とホームポジション検出部材との関係を示す正面図である。
【図7】本発明の実施形態における蛇行補正に関する全体の動作を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態における第2の蛇行補正モードの基本動作を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の実施形態における異常を警告するケースを示すタイムチャートである。
【図10】本発明の実施形態における第2の蛇行補正モードに移行する頻度によって異常を警告するケースを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、本発明を複写機(画像形成装置)に適応した場合の例について説明する。また、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0021】
図1は、本発明の実施形態における複写機1の機能構成を示すブロック図である。図2は、本発明の実施形態における複写機1の概略構成を示す構成図である。
本実施形態の複写機1は、図1に示すように、画像読取部2と、記憶部3と、画像処理部4と、印刷部5と、操作部6と、表示部(異常警告手段)7と、移動ユニット(移動手段)8と、位置検出部(位置検出手段)9と、蛇行補正ユニット(蛇行補正手段)70と、計測部(計測手段)80と、制御部100と、を有する。
【0022】
図2に示すように、本実施形態の複写機1は、所謂タンデム方式を採用しており、カラー画像を形成可能に構成されている。
画像読取部2は、原稿自動送り装置21と、不図示のスキャナーとを有する。画像読取部2は、制御部100の制御指令に基づいて、原稿自動送り装置21によって供給された原稿の画像を不図示のスキャナーで読み取り、原稿画像の形状や色彩等の画像データを取得する構成となっている。
【0023】
記憶部3は、ハードディスク等の外部記憶装置或いは/及び半導体メモリ等を有する。記憶部3は、制御部100の制御指令に基づいて、画像読取部2にて読み取った画像データを書き込み記憶すると共に、当該原稿画像データを読み出して出力可能な構成となっている。
画像処理部4は、制御部100の制御指令に基づいて、原稿画像データを印刷形式の画像データに変換して出力するものであり、必要に応じて原稿画像データに各種画像処理を施して印刷形式の画像データに変換する。
【0024】
印刷部5は、制御部100の制御指令に基づいて、印刷用紙(シート材)を搬送しつつ当該印刷用紙にトナーを付着させることにより、印刷形成の画像データに基づき画像を形成するものである。
印刷部5は、図2に示すように、ベルトユニット50と、クリーニング部55と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色にそれぞれ対応した画像形成ユニットF(FY、FM、FC、FK)と、給紙カセット56と、二次転写部57と、定着部58と、搬送路59とを有する。
【0025】
ベルトユニット50は、画像形成ユニットFから画像を転写される中間転写ベルト(無端ベルト)51と、中間転写ベルト51を張架すると共に無端回走させる駆動ローラー52、従動ローラー53a〜53dとを有する。
中間転写ベルト51は、駆動ローラー52、従動ローラー53a〜53dに張架されて、図2において時計回りに無端回走する構成となっている。クリーニング部55は、不図示のクリーニングローラーやクリーニングブレード等を備え中間転写ベルト51に残留したトナー等を除去する構成となっている。
【0026】
駆動ローラー52は、モーター等の駆動源を有する不図示の駆動部に接続され、中間転写ベルト51に対しグリップ力を付与しつつ回走させるものである。従動ローラー53a〜53cは、駆動ローラー52の回転駆動に従動して回転駆動するものである。従動ローラー(接触部材)53aには、バネ機構を有する付勢装置54が設けられており、中間転写ベルト51にテンションを与えるものである。
【0027】
画像形成ユニットFは、感光体(像担持体)10と、帯電器11と、露光装置12と、現像装置13と、一次転写ローラー14とを有し、さらに不図示のクリーニング装置及び除電装置等とを有する。この画像形成ユニットFは、中間転写ベルト51に沿ってYMCKの各色に対応して4つ設けられ、感光体10(10Y、10M、10C、10K)は、中間転写ベルト51の一方の面51aに沿って並列に4つ配置される。
【0028】
感光体10は、円柱に形状設定され、その周面に静電潜像及び当該静電潜像に基づくトナー像(像)が形成されるものである。帯電器11は、感光体10に対して対向配置され、感光体10の周面を帯電状態とするものである。露光装置12は、印刷形式の画像データに基づいて射出されるレーザー光を帯電状態の感光体10の周面において走査するものである。現像装置13は、感光体10の周面に対してトナーを供給することによって感光体10の周面上に静電潜像に基づく画像を現像するものである。一次転写ローラー14は、中間転写ベルト51を挟んで感光体10と対向配置され、感光体10に現像された画像を中間転写ベルト51に一次転写するものである。
【0029】
二次転写部57は、中間転写ベルト51上に形成された画像を印刷用紙に二次転写するものであって、中間転写ベルト51を駆動させる駆動ローラー52と、中間転写ベルト51を挟んで該駆動ローラー52と対向配置される二次転写ローラー57aとを備える。
定着部58は、印刷用紙上に二次転写された画像を定着させるものであり、加圧・加熱することによりトナーを定着させる加熱ローラーを備える。
搬送路59は、給紙カセット56から排紙トレイ1Aまで印刷用紙を搬送するものであり、給紙カセット56から印刷用紙を搬出するピックアップローラー59a、印刷用紙を搬送する給紙ローラー59b、排紙トレイ1Aに印刷用紙を排紙する排紙ローラー59c等を備える。
【0030】
操作部6は、マンマシンインタフェースとして機能し、操作キーや、表示部7に設けられたタッチセンサー等を備える。操作部6は、例えば電源ボタン、数字ボタン、印刷開始ボタン等の操作情報を制御部100に出力する構成となっている。
表示部7は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等から構成されており、制御部100の制御指令に基づいて、画像や文字を表示するものである。本実施形態では、後述するベルト蛇行に関する異常を警告するための手段として、表示部7を用いる。なお、警告は、画像表示だけでなく、音声等を用いてもよい。
【0031】
移動ユニット8は、複数の感光体10のそれぞれと中間転写ベルト51とを接触させる接触位置と、複数の感光体10の少なくとも一部と中間転写ベルト51とを離間させる離間位置と、の間を移動自在な構成となっている。本実施形態の移動ユニット8は、従動ローラー53b、一次転写ローラー14Y、一次転写ローラー14M、一次転写ローラー14Cを一体としてユニット化すると共に、制御部100の制御指令に基づいて、不図示の偏心カムを有する駆動装置を駆動させ、これらを一体として移動させる構成となっている。
【0032】
移動ユニット8が接触位置にあるとき、一次転写ローラー14Y、一次転写ローラー14M及び一次転写ローラー14Cが、感光体10Y、感光体10M及び感光体10Cに近接し、感光体10Y、感光体10M及び感光体10Cが、中間転写ベルト51に対し押圧した状態となる(図2に示す状態、以下この状態を3色押圧と称する場合がある)。したがって、移動ユニット8が接触位置にあるときには、感光体10(10Y、10M、10C、10K)のそれぞれと中間転写ベルト51とが接触し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナーを用いたフルカラー印刷が可能となる。
【0033】
一方、移動ユニット8が離間位置にあるとき、一次転写ローラー14Y、一次転写ローラー14M及び一次転写ローラー14Cが、感光体10Y、感光体10M及び感光体10Cから離間し、感光体10Y、感光体10M及び感光体10Cの中間転写ベルト51に対する押圧状態が解除される(以下この状態を3色解除と称する場合がある)。したがって、移動ユニット8が離間位置にあるときには、一端に配置された感光体10K以外の感光体10が中間転写ベルト51から離間し、ブラックのトナーのみを用いたモノクロ印刷が可能となる。
【0034】
位置検出部9は、中間転写ベルト51の幅方向における位置を検出するものであり、当該検出結果から中間転写ベルト51の蛇行を検知する構成となっている。位置検出部9は、中間転写ベルト51の端部の位置を検出する光学センサーを有する。この光学センサーの構成は、本出願人の先願(特開2011−7945号公報)に記載されており、ここでは詳しい説明を省略するが、発光部及び受光部が設けられたコの字型の光学センサーで、中間転写ベルト51の端部を表裏から挟むように配置され、幅方向に並んだ複数の受光素子のうち端部によって遮光されたものを検出することにより、中間転写ベルト51の蛇行方向及び蛇行量を検出可能となっている。
【0035】
蛇行補正ユニット70は、中間転写ベルト51の蛇行を、該中間転写ベルト51を張架する従動ローラー53aを変位させることによって補正するものである。本実施形態の蛇行補正ユニット70は、従動ローラー53aの一端をベルト表裏方向に揺動させ、従動ローラー53aの傾斜具合によって中間転写ベルト51の蛇行を補正する構成となっている。なお、以下の説明で、この従動ローラー53aを傾ける動作を、「舵取り」と称する場合がある。
次に、図3及び図4を参照して、従動ローラー53aを変位させる蛇行補正ユニット70の構成及び従動ローラー53aの変位量を計測する計測部80の構成を説明する。
【0036】
図3は、本発明の実施形態における蛇行補正ユニット70及び計測部80の構成を示す正面側斜視図である。図4は、本発明の実施形態における蛇行補正ユニット70及び計測部80の構成を示す背面側斜視図である。
蛇行補正ユニット70は、モーター35と、モーター35の駆動出力軸に固定されたウオームギヤ71と、ウオームギヤ71に噛み合うギヤ歯が形成されたウオームホイル72と、ウオームホイル72と噛み合い回転軸89を回転中心とする多段ギヤ73と、多段ギヤ73に噛み合う大径部75aと小径部75bとを有する二段ギヤ75と、二段ギヤ75の回転軸75cを中心として一体形成された偏心カム77を有している。そして、偏心カム77は、不図示のアーム部材を介して従動ローラー53aの一端に連結している。
【0037】
モーター35が、制御部100の制御指令に基づいて回転すると、ウオームギヤ71、ウオームホイル72及び多段ギヤ73を介して偏心カム77が回転する。偏心カム77が回転すると、偏心カム77の回転中心(回転軸75c)から外周面までの距離が変化するため、不図示のアーム部材を介して従動ローラー53aの一端が揺動(本実施形態ではベルト表裏方向に上下動)する。したがって、従動ローラー53aに張架された中間転写ベルト51を所定角度傾けて蛇行を補正することができる。
【0038】
計測部80は、偏心カム77の回転角度と、設計された偏心カム77の単位角度当りの従動ローラー53aの変位量とに基づいて、従動ローラー53aの変位量を計測する構成となっている。図4に示すように、多段ギヤ73には、偏心カム77の回転角度を検出するための多数のスリット80aが等間隔で形成されたパルス板80bが一体形成されている。また、多段ギヤ73にはギヤ歯の形成されていない軸受け面が設けられており、この軸受け面には偏心カム77の基準位置(ホームポジション(HP))を検出するためのホームポジション検出部材81が回転自在に支持されている。
【0039】
ホームポジション検出部材81の外周面には、二段ギヤ75の小径部75bと噛み合うギヤ歯81bが形成されている。また、多段ギヤ73の斜め上方には、偏心カム77のホームポジション及び偏心カム77の回転角度を検出するフォトインタラプタ83が配置されている。フォトインタラプタ83は、発光部及び受光部が設けられたコの字型の検出部83aでパルス板80b及びホームポジション検出部材81の外周縁近傍を表裏から挟むように配置されている。
【0040】
多段ギヤ73が回転すると、パルス板80b及びホームポジション検出部材81は、それぞれ多段ギヤ73と同方向に異なる速度で回転する。ここでは、ホームポジション検出部材81の回転速度がパルス板80b(多段ギヤ73)の回転速度の1/9となるように、多段ギヤ73及び二段ギヤ75のギヤ比が設定されている。
多段ギヤ73、二段ギヤ75、及びホームポジション検出部材81の位相は、遮光部81aが検出部83aの光路を開放状態から遮光状態に切り換えるとき、偏心カム77がホームポジションとなるように調整されている。また、ここでは偏心カム77の最も小径の部分が不図示のアーム部材と接触する位置をホームポジションとしている。
【0041】
次に、図5及び図6を参照して、偏心カム77のホームポジション及びカム位置(回転角度)を検出する方法について説明する。
図5は、本発明の実施形態における偏心カム77のホームポジションを検出する前のパルス板80bとホームポジション検出部材81との関係を示す正面図であり、図6は、本発明の実施形態における偏心カム77の回転角度の検出を開始する際のパルス板80bとホームポジション検出部材81との関係を示す正面図である。
【0042】
先ず、偏心カム77のホームポジションの検出について説明する。
偏心カム77のホームポジションを検出する場合は、モーター35を駆動して多段ギヤ73(パルス板80b)を、図5に示す時計回りに回転させる。パルス板80bが時計回りに回転すると、ホームポジション検出部材81も1/9の回転速度で時計回りに回転する。すなわち、ホームポジション検出部材81は、遮光部81aがフォトインタラプタ83の検出部83aに近づく方向に回転する。
【0043】
ホームポジション検出部材81の遮光部81aがフォトインタラプタ83の検出部83aに到達するまでは、パルス板80bのスリット80aが一定間隔で検出部83aを通過するため、検出部83aの受光信号レベルが一定のタイミングでLOW(OFF状態)及びHIGH(ON状態)に切り換わる。そして、遮光部81aが検出部83aの光路を遮断する位置までホームポジション検出部材81が回転すると、検出部83aの受光信号レベルがLOW(OFF状態)のまま維持される。
【0044】
したがって、検出部83aの受光信号レベルが所定時間以上LOWとなった時点でモーター35の駆動を停止することにより、偏心カム77がホームポジションに配置される。なお、遮光部81aが検出部83aの光路を遮断してから所定時間後に偏心カム77の回転が停止するため、厳密にはホームポジションから所定量だけ回転した位置に配置されることとなる。そこで、図6に示すように、モーター35の駆動を反転させ、遮光部81aが検出部83aの光路を開放し、パルス板80bのいずれかのスリット80a(ここではスリット80aa)を始めて検出部83aの光路が通過し、検出部83aの受光信号レベルがLOW(OFF状態)からHIGH(ON状態)に切り換わった時点をホームポジションとして検出する。
【0045】
次に、偏心カム77の回転角度の検出について説明する。
偏心カム77の回転角度を検出する場合は、モーター35を駆動して多段ギヤ73(パルス板80b)を、例えば図6に示す反時計回りに回転させる。パルス板80bが反時計回りに回転すると、ホームポジション検出部材81も1/9の回転速度で反時計回りに回転する。すなわち、ホームポジション検出部材81は検出部83aの光路を遮断していた遮光部81aが光路を開放する方向に回転する。また、この回転に伴い、偏心カム77の径は徐々に大きくなる。したがって、ホームポジションから、その後のスリット80aの通過によって受光信号レベルがLOWからHIGHへ切り換わる回数をカウントすることにより、パルス板80bの回転角度を検出し、それに基づいて偏心カム77の回転角度を検出することができる。
【0046】
図1に戻り、制御部100は、上記各構成機器の動作を統括的に制御するコンピューターシステムを構成する。本実施形態の制御部100は、中間転写ベルト51の蛇行補正に関し、二種類の蛇行補正モードを備えている。
中間転写ベルト51の蛇行(異常)には、修理が必要な恒久的なものと、修理が不要な一時的なものとが存在する。一時的な異常は、少なくとも、以下の(1)〜(3)の要因が単独または複合した場合に発生することが、実験や経験等によって確認されている。
【0047】
(1)装置本体やベルトユニット50の歪みが大きい場合、また、中間転写ベルト51の肉厚に偏りが大きい場合に、蛇行量が大きくなるもの。
(2)フルカラー印刷と、モノクロ印刷とを切り替え可能な機構(移動ユニット8)を有する装置で、モノクロ印刷の際の蛇行補正による中間転写ベルト51の位置補正の速度が遅いことによるもの。
(3)計測部80により検出したアライメント調整状態(具体的には偏心カム77の位相)が実情と異なる場合に、本来の蛇行補正とは異なる補正が行われているもの。この現象は、例えば、偏心カム77の駆動機構に想定外の負荷が一時的に生じ、パルス板80bの動作が遅くなり、パルスのカウントが遅くなって原点と判断した場合や、電気ノイズが入り、フォトインタラプタ83が、勘定した以上のパルス数をカウントした場合などが考えられる。
【0048】
上記一時的な異常である場合には、所定の初期化等を行えば、修理をしなくても再動作が可能である。そこで、本実施形態の制御部100は、中間転写ベルト51の蛇行補正に関し、第1の蛇行補正モードと、第2の蛇行補正モードの、二種類の蛇行補正モードを備えている。
第1の蛇行補正モードは、中間転写ベルト51を回走させながら、従動ローラー53aを変位させて、中間転写ベルト51の蛇行を補正する、通常時の蛇行補正モードである。
一方、第2の蛇行補正モードは、中間転写ベルト51の停止中に、従動ローラー53aの配置及び計測部80の計測値を初期化(リセット)してから改めて従動ローラー53aを変位させ、その後、中間転写ベルト51を回走させて、中間転写ベルト51の蛇行を補正する、非常時(救済時)の蛇行補正モードである。
【0049】
以下、上記二種類の蛇行補正モードによる具体的な蛇行補正について、図7〜図11を参照して説明する。なお、以下の説明では、特に断りが無い限り、制御部100が、主体者として以下の動作を制御する。
図7は、本発明の実施形態における蛇行補正に関する全体の動作を説明するフローチャートである。図8は、本発明の実施形態における第2の蛇行補正モードの基本動作を示すタイムチャートである。図9は、本発明の実施形態における異常を警告するケースを示すタイムチャートである。なお、図8及び図9において、横軸は時間であり、縦軸は各種パラメーターである。
【0050】
例えば、操作部6から所定の操作指令が入力されると、図7に示すように、その指令に基づく通常駆動(印刷動作、印刷の準備動作等)が開始される(ステップS1)。
この通常駆動中には、第1の蛇行補正モード(通常舵取り)による蛇行補正が行われる(ステップS2)。この通常駆動中、位置検出部9は、中間転写ベルト51の端部の幅方向の位置(以下、エッジ位置と称する場合がある)を常に確認しており、中間転写ベルト51の蛇行方向及び蛇行量を出力する。位置検出部9によって中間転写ベルト51の蛇行が検出された場合、第1の蛇行補正モードでは、その蛇行方向及び蛇行量に基づいて、蛇行補正ユニット70を駆動させ、中間転写ベルト51の回走中、アクティブに従動ローラー53aを傾かせて、中間転写ベルト51を適正な位置に復帰させる。
【0051】
ステップS3では、第1の蛇行補正モードによる蛇行補正の結果として、エッジ位置が予め定められた閾値以上となっているか否かを判断する。このエッジ位置の閾値は、制御部100内あるいは記憶部3に予め記憶されている。閾値は、例えば、第1の蛇行補正モードの蛇行補正によって対応できるレベルのエッジ位置の上限の値に設定されている。エッジ位置が当該閾値未満である場合、ステップS2に戻る。一方、エッジ位置が閾値以上である場合、ステップS4に移行する。
【0052】
ステップS4に移行した場合、従動ローラー53aの傾きを最大とする舵取りを行う。また、作像をしている場合には、当該作像を中断する。
次のステップS5では、ステップS4での最大舵取りの結果、エッジ位置が閾値未満の適正な位置に復帰しているか否かを判断する。エッジ位置が閾値未満である場合、ステップS2に戻る。一方、エッジ位置が閾値以上である場合、ステップS6に移行する。
次のステップS6では、中間転写ベルト51の規定の周回数の内に、エッジ位置が閾値未満の適正な位置に復帰しているか否かを判断する。この状態でも、規定の周回数(本実施形態では9.6周、図8参照)までに、エッジ位置が閾値内に戻らない場合には、「異常発生」と判断して、ステップS7に移行する。
【0053】
ステップS7〜S10では、救済モードとしての第2の蛇行補正モードによる蛇行補正が行われる(図8参照)。
この第2の蛇行補正モードでは、先ず、中間転写ベルト51の駆動を停止する(ステップS7)。次に、ステップS8では、従動ローラー53aの配置及び計測部80による計測値を一度リセット(初期化)するホームポジション検出を行う。すなわち、通常駆動において、蛇行補正ユニット70の偏心カム77の位置は、中間転写ベルト51が蛇行しないように調整されていて、最小半径でも最大半径でもない、中間的な位置に保持されている。ホームポジション検出を行うとは、偏心カム77を回転させ、偏心カム77を現在の位置から一端「ゼロ」まで戻すことである。ここで、「ゼロ」まで戻す機械的な動作と同時に、制御部100内でも計測値(カウント値)の減算を行う。機械的な「ゼロ」と、制御部100内での「ゼロ」とが一致していれば、異常がない。機械的な「ゼロ」と制御部100内での「ゼロ」とが一致しない場合は、なんらかのエラー(例えば一時的な異常の要因の一つである、上述の(3)の現象)が発生していたことになる。
【0054】
ステップS8では、ホームポジション検出を行い、機械的に「ゼロ」に戻した時点で、記憶している計測値を「ゼロ」に設定し直す。そして、改めてモーター35を逆回転させ、再度もとの記憶位置(例えば最大舵取り位置)にまで偏心カム77の位置を戻していく。これによって、従動ローラー53aを適正な位置に変位させる。
次のステップS9では、移動ユニット8を接触位置に移動させ、3色押圧、中間転写ベルト51に感光体10(10Y、10M、10C、10K)のすべてが接触した状態とする。すなわち、通常駆動によってモノクロ印刷を行っていた場合には、一時的な異常の要因の一つである、上述の(2)の現象が発生していた可能性がある。このため、ステップS9では、3色押圧とし、蛇行補正に関して中間転写ベルト51の幅方向における応答性を高める。
【0055】
ステップS8でのホームポジション検出、ステップS9での3色押圧を行ったら、その後、ステップS10において中間転写ベルト51の回走を再開させる。
ステップS10においては、ホームポジション検知と3色押圧とを行っているので、適正な偏心カム77の位置で速い蛇行補正を行うことができる。したがって、第1の蛇行補正モードの蛇行補正によって、中間転写ベルト51の蛇行が解消しない場合であっても、それがアクティブな蛇行補正に起因する機械的誤差や計測誤差等((3)の現象)や補正応答性の悪さ((2)の現象)等に起因する一時的な異常状態である場合には、この第2の蛇行補正モードの蛇行補正によって対応することが可能となる。
【0056】
次のステップS11では、ステップS10での蛇行補正の結果、エッジ位置が閾値未満の適正な位置に復帰しているか否かを判断する。図8に示すように、蛇行補正の結果、エッジ位置が閾値未満となった場合、ステップS20に移行し、3色押圧状態を中断していたもとの状態(モノクロ印刷の場合は3色解除、フルカラー印刷の場合はそのまま)に戻した上で、ステップS2に戻る。一方、エッジ位置が閾値以上である場合、ステップS12に移行する。
次のステップS12では、中間転写ベルト51の規定の周回数の内に、エッジ位置が閾値未満の適正な位置に復帰しているか否かを判断する。この状態で、規定の周回数(本実施形態では9.6周、図9参照)までに、エッジ位置が閾値内に戻らない場合には、「異常発生」と判断して、ステップS13に移行する。
【0057】
第2の蛇行補正モードによる蛇行補正によっても、中間転写ベルト51の幅方向における位置が閾値以上である場合には、一時的な異常でないと判断できる。したがって、ステップS13では、現在の動作を停止し、表示部7に警告を出す。
以上により、上記二種類の蛇行補正モードによる蛇行補正が終了する。
【0058】
このように、本実施形態では、二種類の蛇行補正モードを備えるため、第1の蛇行補正モードの蛇行補正によって、中間転写ベルト51の蛇行が解消しない場合であっても、それが一時的な異常である場合には、第2の蛇行補正モードによって対応することができる。したがって、ユーザーは、装置停止による印刷動作のやり直しや、警告表示によるサービスマンの呼び出しを、装置の修理が必要なときにのみ行うことができる。このため、蛇行補正不良が従来よりも発生し難くなり、また、装置の使い勝手が良くなる。
さらに、本実施形態では、第2の蛇行補正モードに移行する前に、第1の蛇行補正モードによる蛇行補正を行うため、第2の蛇行補正モードに移行する回数を低減させ、印刷動作ができなくなる中間転写ベルト51の停止回数を低減させることができる。
【0059】
ところで、第2の蛇行補正モードによる蛇行補正によって、中間転写ベルト51の幅方向における位置が閾値未満となった場合(ステップS11でYesの場合)であっても、再び第2の蛇行補正モードに移行し、また、その頻度が高い場合には、何らかの不具合があり、修理が必要と判断できる。そこで、本実施形態では、第2の蛇行補正モードによる蛇行補正によって、中間転写ベルト51の幅方向における位置が閾値未満となった場合であっても、第2の蛇行補正モードに移行する頻度が予め定められた頻度を超えた場合には、現在の動作を停止し、表示部7に警告を出す構成となっている。
【0060】
図10は、本発明の実施形態における第2の蛇行補正モードに移行する頻度によって異常を警告するケースを示すタイムチャートである。なお、図10において、横軸は時間であり、縦軸は各種パラメーターである。
第2の蛇行補正モードに移行する頻度は、第2の蛇行補正モードから次の第2の蛇行補正モードへ移行するまでの期間情報と、第2の蛇行補正モードへ移行した回数の情報とに基づいて導出する。本実施形態では、第2の蛇行補正モードによる蛇行補正によって復帰したときから所定期間Yth内に、第2の蛇行補正モードに移行した連続回数ntが所定回数を超えたときに、「頻度が高い」と判断している。
【0061】
本実施形態の所定期間Ythは、第2の蛇行補正モードによる蛇行補正によって復帰したときから中間転写ベルト51が100周するまでの期間に設定されている。また、本実施形態の連続回数ntは、所定期間Yth(100周)内に第2の蛇行補正モードに移行した連続回数として設定されている。本実施形態では、連続回数ntが2回を越えて、3回目(nt=NT)となったときに、「頻度が高い」と判断し、警告を出す。したがって、図10に示すように、中間転写ベルト51の周回数Y(n)が200周の場合は連続回数ntがカウントされず、周回数Y(n)が80周、90周、85周の場合には連続回数ntがカウントされる。なお、nt=NTとなるまでの間に、中間転写ベルト51の周回数Y(n)が100周を超えるケースが一回でもあった場合には、連続回数ntのカウントをゼロに戻す。
【0062】
第2の蛇行補正モードによって中間転写ベルト51の蛇行補正がされたとしても、第2の蛇行補正モードに移行する頻度が高い場合には、それだけ中間転写ベルト51の停止回数が多くなるため、使い勝手が悪く、また、装置自体にも何らかの不具合があり、このままでは復帰不能な蛇行補正不良に到る可能性がある。このため、第2の蛇行補正モードに移行する頻度によって警告を出すことにより、使い勝手が悪くなることを未然に防止し、復帰不能な蛇行補正不良となる前段階で修理を行うことができる。
【0063】
このように、上述の本実施形態によれば、中間転写ベルト51の蛇行を、該中間転写ベルト51と接触する従動ローラー53aを変位させることによって補正する蛇行補正ユニット70と、従動ローラー53aの変位量を計測する計測部80と、を有する複写機1であって、中間転写ベルト51を回走させながら、従動ローラー53aを変位させて、中間転写ベルト51の蛇行を補正する第1の蛇行補正モード(ステップS2)と、中間転写ベルト51の停止中に、従動ローラー53aの配置及び計測部80の計測値を初期化してから改めて従動ローラー53aを変位させ、その後、中間転写ベルト51を回走させて、中間転写ベルト51の蛇行を補正する第2の蛇行補正モード(ステップS7〜S10)と、を有するという構成を採用することによって、蛇行補正不良が発生し難く、使い勝手の良い複写機1が得られる。
【0064】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0065】
例えば、上記実施形態では、接触部材として従動ローラーを用いた構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、接触部材として、無端ベルトの端部に接触する寄り止め部材を用い、それを変位させる構成であっても良い。
【0066】
また、例えば、上記実施形態では、計測手段としてパルス板80b等を用いた構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、計測手段として、接触部材の変位量を計測できる距離計(例えば光学式、超音波式、レーザー光線式等)を用いても良い。
【0067】
また、例えば、上記実施形態で説明した、エッジ位置の閾値や、第2の蛇行補正モードに移行する頻度の設定値は一例であり、装置構成等によって適宜変更し得る。
【0068】
また、例えば、上記実施形態では、画像形成装置として、複写機を例示したが、本発明は、例えば、プリンター、ファクシミリ装置等の画像形成装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…複写機、7…表示部(異常警告手段)、8…移動ユニット(移行手段)、9…位置検出部(位置検出手段)、10…感光体(像担持体)、51…中間転写ベルト(無端ベルト)、53a…従動ローラー(接触部材)、70…蛇行補正ユニット(蛇行補正手段)、80…計測部(計測手段)、S2…ステップ(第1の蛇行補正モード)、S7〜S10…ステップ(第2の蛇行補正モード)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルトの蛇行を、該無端ベルトと接触する接触部材を変位させることによって補正する蛇行補正手段と、前記接触部材の変位量を計測する計測手段と、を有する画像形成装置であって、
前記無端ベルトを回走させながら、前記接触部材を変位させて、前記無端ベルトの蛇行を補正する第1の蛇行補正モードと、
前記無端ベルトの停止中に、前記接触部材の配置及び前記計測手段の計測値を初期化してから改めて前記接触部材を変位させ、その後、前記無端ベルトを回走させて、前記無端ベルトの蛇行を補正する第2の蛇行補正モードと、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記無端ベルトの幅方向における位置を検出する位置検出手段を有し、
前記第1の蛇行補正モードによる蛇行補正によっても、前記無端ベルトの幅方向における位置が予め定められた閾値以上である場合に、前記第2の蛇行補正モードに移行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
異常状態を警告するための異常警告手段を有し、
前記第2の蛇行補正モードによる蛇行補正によっても、前記無端ベルトの幅方向における位置が前記閾値以上である場合には、現在の動作を停止し、前記異常警告手段による警告を行うことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2の蛇行補正モードによる蛇行補正によって、前記無端ベルトの幅方向における位置が前記閾値未満となった場合であっても、前記第2の蛇行補正モードに移行する頻度が予め定められた頻度を超えた場合には、現在の動作を停止し、前記異常警告手段による警告を行うことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記頻度は、前記第2の蛇行補正モードから次の前記第2の蛇行補正モードへ移行するまでの期間情報と、前記第2の蛇行補正モードへ移行した回数の情報とに基づいて導出することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記無端ベルトは、複数のローラーに張架されており、
前記接触部材は、前記複数のローラーのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記無端ベルトの一方の面に沿って並列に複数配置される像担持体と、
前記像担持体のそれぞれと前記無端ベルトとを接触させる接触位置と、前記接触した前記像担持体のうちの少なくとも一部と前記無端ベルトとを離間させる離間位置との間を移動自在な移動手段と、を有し、
前記第2の蛇行補正モードでは、前記移動手段を前記接触位置に位置させることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97141(P2013−97141A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239116(P2011−239116)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】