説明

画像形成装置

【課題】モータやその他の高さ切り換え機構部品のコストが嵩むことなく、また、複雑でサイズの大きな機構部品のためにマシンサイズを大きくすることなく、簡単な構成でキャリッジの高さ切り換え時にキャリッジにかかる衝撃を小さくする。
【解決手段】本発明の画像形成装置は、記録媒体45にインクを吐出して画像を形成する記録ヘッド11を備えたキャリッジ4と、キャリッジに設けられてキャリッジの高さを切り換える高さ調整機構と、高さ調整機構を支持してキャリッジを記録媒体の幅方向である主走査方向にガイドするためのガイド部材3とを有し、高さ調整機構による高さ調整の際、キャリッジに設けられたピン部材524がガイド部材に設けられた衝撃低減部材520に接触することにより、キャリッジは上方位置から下方位置に下降する途中で保持され、その後キャリッジは下方位置に達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリッジに搭載された記録ヘッドからインクを吐出して用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、封筒、厚紙、光沢紙などの厚い記録媒体の印字にも対応するため、記録ヘッドのノズル面と搬送面の隙間(ギャップ)、すなわち記録ヘッドの高さを調整できる機構を有するものが多い。この高さ調整機構としては、カム、リンク機構、レバーなどを用いて手動で高さを切り換える方式や、モータなどの動力源を用いたギヤ駆動により自動で高さを切り換える方式がある。昨今では、自動の高さ切り換え方式のものが主流になっており、コスト低減やダウンサイジングなどのために、高さ調整機構の構成はより単純になってきている。
【0003】
ここで、高さ調整機構の高さ切り換えに要求される機能としては、常に正確な位置に切換わることはもちろん、切り換え動作時の記録ヘッドの動きも副次的な機能として重要である。すなわち、高さ切り換え時に、記録ヘッドが衝撃を受けないことが非常に重要である。記録ヘッドは衝撃に対して弱く、衝撃を受けるとヘッド面上でノズル抜けが発生し、インク不吐出という不具合が生じてしまうからである。
【0004】
しかし、従来のインクジェットプリンタにおいては、このような不具合を回避するために、モータなどの動力源を用いて高さ切り換え動作をゆっくり行ったり、切り換え部品の形状を利用して時間をかけて切り換え動作を行ったりしている。よって、前者では、モータやその他の切り換え機構部品を使用するためコストが嵩んでしまい、後者では、切り換え部品の設置場所が必要なため結果的にマシンサイズが大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
特許文献1には、高さ切り換え時又はヘッドキャッピング時に加わるキャリッジユニット(ヘッド)への衝撃を低減させるために、高さ切り換え部材及びキャリッジユニット支持部材を設け、支持部材によりキャリッジユニットを弾力付勢する技術が開示されている。
【0006】
しかし、高さ切り換え部材及びキャリッジ支持部材は、1個のキャリッジユニットに2個ずつ使用されており、また、高さ切り換え部材はキャリッジの左右幅方向に出っ張る構成を有している。よって、高さ切り換え部品のコストが嵩み、また、高さ切り換え部品が場所をとってしまいマシンサイズが大きくなるという問題は解消できていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、モータやその他の高さ切り換え機構部品のコストが嵩むことなく、また、複雑でサイズの大きな機構部品のためにマシンサイズを大きくすることなく、簡単な構成でキャリッジの高さ切り換え時にキャリッジにかかる衝撃を小さくすることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、記録媒体にインクを吐出して画像を形成する画像形成手段を備えたキャリッジと、該キャリッジに設けられて該キャリッジの高さを切り換える高さ調整機構と、該高さ調整機構を支持して該キャリッジを該記録媒体の幅方向である主走査方向にガイドするためのガイド部材とを有し、前記高さ調整機構による高さ調整の際、前記キャリッジに設けられた接触部が前記ガイド部材に設けられた衝撃低減部材に接触することにより、前記キャリッジは上方位置から下方位置に下降する途中で保持され、その後前記キャリッジは下方位置に達する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
従来はキャリッジの上方位置と下方位置の間のギャップ分を一度に下降させていたため、下降時にキャリッジにかかる衝撃が大きかったが、本発明ではキャリッジが下降途中で衝撃低減部材によって一旦受けられるため、下降距離が小さくなり、従ってキャリッジにかかる衝撃も低減される。接触部をキャリッジに設け、接触部を受ける衝撃低減部材をガイド部材に設けるという簡単で低コストな構成により、高さ切り換え時に発生するキャリッジへの衝撃を低減し、ノズル抜けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例を示す外観斜視説明図である。
【図2】同装置の機構部の要部平面説明図である。
【図3】同じく機構部の要部斜視説明図である。
【図4】同じくキャリッジ部分の側面説明図である。
【図5】同じくキャリッジ部分の正面斜視説明図である。
【図6】同じくキャリッジ部分の正面説明図である。
【図7】カム部材の説明に供する側面説明図である。
【図8】回転誘導部材の説明に供する正面説明図である。
【図9】高さ切り換え時のキャリッジの挙動を示す側面説明図である。
【図10】本発明のキャリッジの構成を示す側面説明図である。
【図11】本発明における高さ切り換え時のキャリッジの挙動を示す背面説明図である。
【図12】下方位置にあるキャリッジにカバーを装着した状態を示す側面説明図である。
【図13】キャリッジ側に設けられたピン部材の別な実施形態を示す背面説明図である。
【図14】本体側に設けられた衝撃低減部材の別な実施形態を示す背面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る画像形成装置の一例の概要について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の外観斜視説明図、図2は同装置の機構部の平面説明図である。
【0012】
この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、装置本体100の上面側に開閉可能にカバー101が設けられ、このカバー101を開くことで内部の機構部にアクセスすることができる。
【0013】
機構部は、図2に示すように、左右のメイン側板1A、1Bに横架したガイド部材3にてキャリッジ4を主走査方向に摺動自在に支持し、主走査モータ5によって駆動プーリ6と従動プーリ7との間に張架されたタイミングベルト8を介してキャリッジ4を主走査方向に移動走査する。
【0014】
このキャリッジ4には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液滴を吐出する画像形成手段としての液体吐出ヘッド及びこの液体吐出ヘッドにインクを供給するヘッドタンクを含む記録ヘッドユニット(以下、単に「記録ヘッド」ともいう。)11を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。これらの複数の記録ヘッド11はキャリッジ4に搭載されている。
【0015】
また、キャリッジ4の主走査方向に沿ってエンコーダスケール15を配置し、キャリッジ4側にはエンコーダスケール15の目盛り(スケール:位置識別部)を読み取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ16を取り付け、これらのエンコーダスケール15とエンコーダセンサ16とで位置検出装置としてのリニアエンコーダを構成している。
【0016】
一方、キャリッジ4の下側には、記録媒体を副走査方向に搬送する搬送ベルト21を配置している。この搬送ベルト21は、無端状ベルトであり、搬送ローラ22とテンションローラ23との間に掛け渡されて、副走査モータ31によってタイミングベルト32及びタイミングプーリ33を介して搬送ローラ22が回転駆動されることによって副走査方向に周回移動される。
【0017】
さらに、キャリッジ4の主走査方向の一方側には搬送ベルト21の側方に記録ヘッド11の維持回復を行う維持回復機構41が配置されている。なお、維持回復機構41は、例えば記録ヘッド11のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材、ノズル面を払拭するワイパ部材、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出受けなどで構成されている。
【0018】
また、図1に示すように、記録媒体を搬送ベルト21に給紙する給紙手段や、画像形成手段としての記録ヘッド11から吐出された液体が付着して画像が形成された記録媒体を排紙する排紙手段などを構成する給排紙トレイ103が装置本体100に対して装着される。
【0019】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙された記録媒体を搬送ベルト21で間歇的に搬送し、キャリッジ4を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド11を駆動することにより、停止している記録媒体に液滴を吐出して1行分を記録し、記録媒体を所定量搬送後、次の行の記録を行なう動作を繰り返して記録媒体上に画像を形成し、画像形成後記録媒体を排紙する。
【0020】
次に、この画像形成装置におけるキャリッジの支持構造及び高さ調整機構について図3ないし図6を参照して説明する。なお、図3は同じく機構部の要部斜視説明図、図4は同じくキャリッジ部分の側面説明図、図5は同じくキャリッジ部分の正面斜視説明図、図6は同じくキャリッジ部分の正面説明図である。
【0021】
ガイド部材3は板金部材からなり、キャリッジ4を摺動自在に案内するための支持面となるガイド面301、ガイド面302、303を有している。そして、キャリッジ4は、ガイド部材3のガイド面301に摺動自在に支持される高さ調整機構を含む摺動部401と、ガイド面302に摺接する摺動部402と、ガイド面303に摺接する摺動部403とを有している。この場合、ガイド部材3のガイド面301は、キャリッジ4の高さ位置を決める面となり、ガイド面302はキャリッジ4の自重によるモーメントを受ける面(回転止め部)となり、ガイド面303はキャリッジ4の副走査方向位置を決める面となる。
【0022】
図4を参照して、インクを吐出する為の記録ヘッド11を内部に搭載したキャリッジ4は、ガイド部材3上を案内され、搬送路47を搬送されて来た記録媒体45に作像する。このために、隙間49が記録ヘッド11のノズル面と搬送路47の搬送面で形成されている。記録媒体によって必要なギャップは異なるため、薄い記録媒体に印字した後に封筒や光沢紙などの厚い記録媒体に印字する場合、キャリッジ4を高くしてギャップを広げる必要がある。逆に、厚い記録媒体に印字した後に薄い記録媒体に印字する場合、キャリッジ4を低くしてギャップを狭める必要がある。
【0023】
ここで、キャリッジ4の摺動部401には、主走査方向を回転軸心とする回転部材501が、キャリッジ4に固定された4個の保持部材404にて回転自在に保持されている。この回転部材501は、ガイド部材3の支持面であるガイド面301に摺動自在に接する摺動面512を有する2つのカム部材502と、主走査方向に沿って回転部材501の周りに斜めに湾曲して形成された当接面513を有する第1回転誘導部材503と、同じく主走査方向に沿って回転部材501の周りに斜めに形成された当接面514を有する第2回転誘導部材504とが設けられている。
【0024】
カム部材502は、図7に示すように、回転位置に応じて回転軸心511とガイド部材3のガイド面301との距離が距離aと距離bとの間で変化する摺動面512を有している。この場合、図7(a)に示すようにカム部材502の摺動面512の距離aとなる部分502aがガイド面301に接しているときには、キャリッジ4は高さが低い位置(下方位置)となり、図7(b)に示すようにカム部材502の摺動面512の距離bとなる部分502bがガイド面301に接しているときには、キャリッジ4は高さが高い位置(上方位置)となる。
【0025】
第1回転誘導部材503は、カム部材502を図7(a)の位置から図7(b)の位置に回転させる、つまり、キャリッジ4をガイド面301に対して上昇させる(ギャップが広くなる)方向に回転部材501の回転を誘導する部材である。第2回転誘導部材504は、カム部材502を図7(b)の位置から図7(a)の位置に回転させる、つまり、キャリッジ4をガイド面301に対して下降させる(ギャップが狭くなる)方向に回転部材501の回転を誘導する部材である。
【0026】
また、図8に示すように、第1回転誘導部材503の当接面513と、第2回転誘導部材504の当接面514とは、第1回転誘導部材503の当接面513の傾斜を第2回転誘導部材504の当接面514の傾斜よりも緩やかにしている。つまり、回転部材501が同じ角度回転するために、第1回転誘導部材503では距離Lbの移動が必要であるのに対し、第2回転誘導部材504では距離La(La<Lb)の移動が必要である。
【0027】
これにより、キャリッジ4の移動速度を同じとしたとき、キャリッジ4を上昇させるときにはキャリッジ4を下降させるときよりも長い時間をかけて調整動作が行なわれる。これは、キャリッジ4を上昇させるときにはキャリッジ4の自重に抗してキャリッジ4を持ち上げることからゆっくり上昇させるためである。
【0028】
一方、装置本体100の側板1A(キャリッジ主走査方向一端部)には、第1回転誘導部材503の当接面513に当接可能な第1押圧部材603が配設され、側板1B(キャリッジ主走査方向他端部)には、第2回転誘導部材504の当接面514に当接可能な第2押圧部材604が配設されている。
【0029】
この場合、維持回復機構41を配設した側、すなわち、キャリッジ4のホーム位置側に第2回転誘導部材504と第2押圧部材604が配置されているので、キャリッジ4をホーム位置に移動させたときには、キャリッジ4は低い高さ位置に戻され、維持回復機構41の図示しないキャップ部材によるキャッピングを確実に行なうことができる。
【0030】
このように構成したので、図6において、キャリッジ4を矢示A方向に移動させて、第1押圧部材603に第1回転誘導部材503の当接面513を当接させて押し付けることによって、回転部材501、すなわちカム部材502は、図7(b)の状態に回転して、摺動面512の第1摺接部512bがガイド部材3のガイド面301に接触する位置まで移動し、キャリッジ4が上昇して高さが高くなり、ギャップ(記録ヘッド11のノズル面と搬送ベルト21による用紙搬送面との間の距離)が広がる。
【0031】
一方、図6において、キャリッジ4を矢示B方向に移動させて、第2押圧部材604に第2回転誘導部材504の当接面514を当接させて押し付けることによって、回転部材501、すなわちカム部材502は図7(a)の状態に回転して、摺動面512の距離aとなる部分がガイド部材3のガイド面301に接触する位置まで移動し、キャリッジ4が下降して高さが低くなり、ギャップが狭くなる。
このようにして、簡単な構成でキャリッジ4の移動のみによってキャリッジ4が昇降してギャップが変化する(ギャップが調整される)。
【0032】
図9は、高さ切り換え時のキャリッジの挙動を示す側面説明図である。
図9(a)は、カム部材502によって上方位置に支持されているキャリッジ4が鉛直下方に下降動作をする前の状態を示している。この状態では、記録ヘッド11のノズル面と搬送路47の搬送面の間には、距離Aがある。この状態においてカム部材502が図中時計回りに回転すると、キャリッジ4もカムの形状に従って下降し、キャリッジ4は、回転したカム部材502によって図9(b)に示される下方位置で再び支持される。このとき、記録ヘッド11のノズル面と搬送路47の搬送面の間には、距離Bがある。よって、この下降動作の前後において、キャリッジ4は距離H(=A−B)だけ変移しており、この下降距離Hがキャリッジ4に内包された記録ヘッド11に衝撃を与えることになる。このとき、比較的重いキャリッジ4の自重による衝撃によって、ノズル抜けが発生してしまう。
【0033】
図10は、本発明のキャリッジの構成を示す側面説明図である。
キャリッジ4を支持案内するガイド部材3の背面には、高さ切り換え時に下降するキャリッジ4を支持するための衝撃低減部材520が設置されている。この衝撃低減部材520の上部には、受け部522が紙面手前側と奥側にそれぞれ1つずつ形成されている。一方、キャリッジ4には、衝撃低減部材520の受け部522に対応する箇所に、湾曲した先端を有する接触部としてのピン部材524が紙面手前側と奥側にそれぞれ1つずつ形成されている。ここで、ピン部材524と受け部522の間の距離hは、従来の下降距離Hよりも小さく形成されている。
【0034】
よって、高さ切り換え時の下降動作において、従来のキャリッジは上方位置と下方位置の間の高さ(ギャップ)である距離Hだけ一度に落下していてキャリッジへの衝撃も大きかったが、本発明によれば、ピン部材524と受け部522の接触によって、ギャップ分の距離を一度に落下させずにキャリッジの下降距離を微小距離hとするため、落下による衝撃が低減される。
【0035】
衝撃低減部材はポリアセタールなどの摺動性の良好な材質で形成されると好ましい。後述するように、キャリッジが下方位置に切り換わるとき、キャリッジは衝撃低減部材の平面部を摺動し、斜面部を駆け降りる。従って、部材間の表面摺動負荷を低減することで、突発的な負荷上昇や部材表面の摩耗を防止することができる。
なお、設置スペースによっては、衝撃低減部材520はキャリッジ4を支持案内するガイド部材3の内側(図中右側)に設置されてもよい。
【0036】
また、キャリッジ4の重量はカム部材502によってガイド部材3上に支えられるため、衝撃低減部材520の取り付け位置はカム部材502を通る鉛直面の近傍であることが好ましい。例えば、図10において、カム部材502から離れたキャリッジ4の右側部分を受容するように衝撃低減部材を取り付けたとしても、衝撃の中心であるカム部材502からキャリッジ4の右側部分まで一定の距離があるため、落下時に大きな衝撃がキャリッジ4にかかった後に衝撃低減部材でキャリッジを受容する可能性があるからである。
【0037】
図11は、本発明における高さ切り換え時のキャリッジの挙動を示す背面説明図である。
図11(a)は、鉛直下方に下降動作をする前の、カム部材502によって上方位置に支持されているキャリッジ4を示す図である。図示のように、装置本体側のガイド部材3の背面に設けられた衝撃低減部材520の両側2箇所に形成された受け部522は、下降動作するキャリッジ4を一旦保持する保持部としての平面部526と、平面部526からキャリッジ4を下方位置に緩やかに下降させる移行部としての斜面部528を有している。
【0038】
一方、キャリッジ4側には、衝撃低減部材520により保持される相手として、滑らかな先端を有するピン部材524が、キャリッジの幅方向の両側2箇所に一体形成されている。よって、キャリッジ4がカム部材502の回転により下降動作をすると、キャリッジ4は、ピン部材524と平面部526との接触によって下降動作の途中で一旦保持され、その後下方位置に達する。受け部522の下部には外側から切り込みが入れられているため、キャリッジ4が落下した時に受け部522は撓み、衝撃を吸収するようになっている。従って、下降距離を従来の下降距離Hに比べてかなり小さい下降距離hとすることができ、さらには落下時の衝撃も大幅に低減することができる。また、受け部522とピン部材524がそれぞれ主走査方向に離れて2箇所に形成されることで、下降時のキャリッジの姿勢が安定し、余計な振動は生じない。
【0039】
図11(b)は、上方位置に保持されていたキャリッジ4がカム部材502の回転によって平面部526まで下降したときを示す図である。キャリッジ4は落下時に衝撃低減部材520により弾性的に保持され、次いで、キャリッジ4は図中左方向に移動し、キャリッジ4に形成されたピン部材524は斜面部528を滑り降りる。このようにして、キャリッジ4は下方位置まで緩やかに下降することができる。なお、距離hだけ下降したキャリッジ4は、斜面部528を滑り降りる最中に距離H−hだけ下降して、結局距離Hだけ下降し、下方位置に到達する。
【0040】
ここで、図2,11を参照して、下降動作時のキャリッジ4の動きを説明する。
衝撃低減部材520は、維持回復機構41の近傍においてガイド部材3の背面に配置されている。よって、キャリッジ4は、下降動作時にはガイド部材3に沿う主走査方向に摺動して維持回復機構41に近づき、図11(a)に示す位置まで移動し、第2押圧部材604に当接することで図11(b)に示す位置まで下降する。次に、キャリッジ4は維持回復機構41から遠ざかる方向に移動し、斜面部528を滑り降りる途中で低い高さ位置(下方位置)に切り換えられる。
なお、衝撃低減部材520の配置位置は維持回復機構41の近傍に限られない。
【0041】
また、図11(b)において、位置530は、維持回復機構41が記録ヘッド11のノズル面をキャッピングする位置を示している。キャリッジ4がその下方位置にて印字後に動作を終了する場合、キャリッジ4の図中右側のピン部材524はそのまま位置530で停止し、維持回復機構41により記録ヘッド11のノズル面がキャッピングされる。一方、キャリッジ4がその上方位置にて印字後に動作を終了する場合、キャリッジ4は図11(b)に示した下降動作により下方位置に達した後、ピン部材524は位置530で停止し、キャッピングがなされる。
【0042】
このように、キャリッジ4のためのキャッピング位置530を斜面部528の手前の平坦部に設定することで、高さ切り換え動作がキャッピング動作に干渉することも無く、キャッピング位置530と図11に示すピン部材524の位置の間で、斜面部528を設定することができる。なお、本実施例では平面部526、斜面部528及び低い平坦部の部分を直線状に形成しているが、平面部526から斜面部528と斜面部528から平坦部の部分を、S字状の滑らかな湾曲部として形成してもよい。
【0043】
図12は、下方位置にあるキャリッジ4にカバー85を装着した状態を示す側面説明図である。
キャリッジ4には、ガイド部材3からの上方への抜け止めのためにカバー85を装着してもよい。カバー85は、キャリッジ4の上面に被せ、図中左側に向かって挿入することでキャリッジ4に装着される。このとき、キャリッジ4の突起部90はカバー85の係合部86の開口にスナップフィットし、カバー85はキャリッジ4に固定される。突起部90と係合部86のスナップフィット係合により、工具などを使用せずに手動によりワンアクションでカバー85の取り付け・取り外し作業をすることができ、作業が簡便化される。
【0044】
また、キャリッジ4の突出部91,92はそれぞれカバー85の受容部87,89の溝に嵌り、キャリッジ4に対するカバー85の固定が補強される。
なお、カバー85をキャリッジ4から取り外す際は、カバーを図中右側に引き出して突起部90と係合部86のスナップフィット係合を解除し、上方に持ち上げればよい。
【0045】
カバー85をキャリッジ4に装着した状態では、カバー85に設けられた鉤爪状の抜け止め部88が、ガイド部材3の下側に入り込むようになっており、これによりキャリッジ4がガイド部材3から上方に抜けることが防止される。また、図示のようなキャリッジ4の下方位置において、カバー85はキャリッジ4側にのみ装着され、抜け止め部88とガイド部材3の間には隙間が形成されている。また、キャリッジ4の上方位置(不図示)でも、抜け止め部88とガイド部材3の距離は縮まるが、抜け止め部88とガイド部材3の間には僅かな隙間が残るようになっている。
【0046】
しかしながら、図11(a)におけるキャリッジ4の上方位置において上記のような僅かなギャップのみ残るように距離hを設定する場合に、平面部526の位置を上昇させて距離h≒0に設定してしまうと、取り付け誤差などにより、ピン部材524と平面部526が接触することになる図11(a)に対応する位置(不図示)において、抜け止め部88がガイド部材3に接触して、ガイド部材3から負荷を受ける恐れがある。つまり、ピン部材524が、距離h≒0に設定された平面部526から上方向に負荷を受け、それにより、抜け止め部88もガイド部材3から負荷を受けて変形してしまう恐れがある。そこでこれを回避するために、図11(a)に示すように、キャリッジ4の上方位置においてピン部材524と受け部522の間には一定の距離hを残すのが好ましい。
【0047】
しかし、カバー85をキャリッジ4に装着せずに済む場合は、距離h≒0としてもよい。この場合、図11(a)に示すキャリッジ4の上方位置において、ピン部材524と平面部526が接触することになるため、キャリッジ4が落下する必要はなくなり、落下衝撃もなくすことができる。
【0048】
また、距離h≒0に設定するために、図11(a)において受け部522がピン部材524に達するまで、斜面部528をより小さい傾斜角度で延在させてもよい。これにより、斜面部528はより緩やかになり、キャリッジ4もより緩やかに下降することができる。
【0049】
図13は、キャリッジ側に設けられたピン部材524の別な実施形態を示す背面説明図である。
キャリッジの左右両側に設けられたピン部材524は、キャリッジ4と一体に形成されておらず、別部品として形成されている。このピン部材524は、金属や摺動性樹脂などの耐磨耗性の良好な材質で形成されている。また、弾性部材としてのスプリング532がキャリッジ4内に配置されていて、ピン部材524を保持している。従って、下降動作時にピン部材524が衝撃低減部材520に接触すると、ピン部材524はスプリング532の弾性によって上方に撓み、キャリッジ4の下降時の衝撃が吸収される。
【0050】
図14は、本体側に設けられた衝撃低減部材520の別な実施形態を示す背面説明図である。
ここでは、ガイド部材3の背面に設けられた衝撃低減部材520は固定されていない。図示のように、衝撃低減部材520は、その下部の左右2箇所において2個のスプリング534を介してガイド部材3の背面に設置されている。スプリング534は鉛直方向の弾性を有する弾性部材である。従って、下降動作時にピン部材524が衝撃低減部材520に接触すると、衝撃低減部材520はスプリング534の弾性によって鉛直下方に変位するため、キャリッジ4の下降時の衝撃が吸収される。
【0051】
なお、衝撃低減部材520は切り込みが入れられていて撓み易くなっているが、前記のようなスプリング532,534を設ける場合は切り込みを入れなくてもよい。
【0052】
以上のように、本発明は、キャリッジ4に設けられたカム部材502、回転誘導部材503,504と、これらを動作させる押圧部材603,604と、下降動作時に記録ヘッドに大きな衝撃がかかるのを防ぐ衝撃低減部材520を有し、キャリッジの主走査方向の移動に連動してこれら部材によってキャリッジの昇降動作が行われる。つまり、キャリッジに設けられた回転誘導部材503,504が本体側に設けられた押圧部材603,604によって押され、カム部材502が回転することで、キャリッジが昇降する。下降動作時には、キャリッジは、下降途中で衝撃低減部材520によって一旦保持され、その後キャリッジ移動の動作中に斜面部528を下る。このようにして、記録ヘッドのノズル面と搬送面のギャップが完全に切り換えられ、記録ヘッドに大きな衝撃はかからない。
【0053】
以上、本発明をプリンタ構成の画像形成装置に適用した例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明は、プリンタ、ファックス、コピー複写機などの画像形成装置に適用することができる。また、狭義のインク以外の液体や定着処理液、パターニング材料などを用いる画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
3 ガイド部材
4 キャリッジ
11 記録ヘッド(画像形成手段)
45 記録媒体
85 カバー
88 抜け止め部
100 画像形成装置
502 カム部材
520 衝撃低減部材
522 受け部
524 ピン部材(接触部)
526 平面部(保持部)
528 斜面部(移行部)
532 スプリング(弾性部材)
534 スプリング(弾性部材)
603,604 押圧部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2010−036345号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出して画像を形成する画像形成手段を備えたキャリッジと、該キャリッジに設けられて該キャリッジの高さを切り換える高さ調整機構と、該高さ調整機構を支持して該キャリッジを該記録媒体の幅方向である主走査方向にガイドするためのガイド部材とを有する画像形成装置において、
前記高さ調整機構による高さ調整の際、前記キャリッジに設けられた接触部が前記ガイド部材に設けられた衝撃低減部材に接触することにより、前記キャリッジは上方位置から下方位置に下降する途中で保持され、その後前記キャリッジは下方位置に達する、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記衝撃低減部材は少なくとも1つの受け部を有し、
該受け部は、前記キャリッジの前記接触部を一旦保持する保持部と、前記キャリッジの前記接触部を該保持部から下方位置に下降させる移行部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記衝撃低減部材の前記受け部と前記キャリッジの前記接触部は、それぞれ主走査方向に離れて2箇所に形成される、ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記衝撃低減部材が前記キャリッジの前記接触部を保持したとき、前記衝撃低減部材は撓むように形成されている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記衝撃低減部材は、前記画像形成手段をキャッピングするための維持回復機構の近傍に配置され、
画像形成終了後に、前記キャリッジの前記接触部は前記受け部の前記移行部の手前で停止し、この位置で前記画像形成手段が前記維持回復機構によりキャッピングされる、ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記キャリッジには、前記ガイド部材からの上方への抜け止めのためのカバーが装着され、
前記キャリッジの上方位置において、該カバーに設けられた抜け止め部と前記ガイド部材の間に隙間が形成され、前記接触部と前記衝撃低減部材の間にも隙間が形成される、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記高さ調整機構はカム部材及び回転誘導部材を有し、該カム部材を動作させる押圧部材が装置本体に設けられ、前記キャリッジの主走査方向の移動の際該回転誘導部材が該押圧部材によって押されて回転することで、該カム部材が動作されて前記キャリッジの高さが調整される、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記キャリッジの前記接触部は湾曲した先端を有するピン部材である、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ピン部材は、前記キャリッジとは別部品として形成され、前記キャリッジ内に配置された弾性部材により保持される、ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記衝撃低減部材は、鉛直方向の弾性を有する弾性部材を介して前記ガイド部材に設置される、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−99895(P2013−99895A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245364(P2011−245364)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】