説明

画像形成装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ロール紙に画像を形成する、静電プロッタ等の画像形成装置に関し、特にロール紙のスキュー補正機構に関する。
【0002】
【従来の技術】ロール紙を搬送ローラ対により搬送させて画像を形成する画像形成装置においては、ロール紙を搬送ローラ対にセットする際にロール紙が少しでも曲がっているとスキューが生ずる。この状態で作像を続けると、スキューが次第に大きくなり、画像がゆがみ画像品質が低下する。又、特にスリット現像方式の静電プロッタにおいては、ロール紙のスキューが大きくなると現像可能領域から外れ、スリット内で負圧が形成されなくなり、現像不能になって装置の運転が停止する。このようなことになれば、オペレータは手作業によってロール紙の再設定をしなければならなくなる。
【0003】このような不具合に対して、ロール紙をセットした後送り出し方向と巻き戻し方向との間でこれを数回往復させ、紙を正しい位置へ矯正するようにした装置が提案されている(特開平2−100066号公報参照)。
【0004】しかしこのような方法でロール紙を正しい位置に修正できるとすれば、ロール紙と搬送ローラ対との間でスリップが発生する必要があり、短時間で確実にスキューが修正されるとは限らない。又、カラー画像形成装置では、スリップを生じやすい搬送ローラ対を用いると、色ずれのない高品質のフルカラー画像を作成することができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術に於ける上記問題を解決し、ロール紙をスリップさせることなく搬送させる搬送ローラ対を用いる場合であっても、確実にロール紙のスキューを修正することができる画像形成装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1の発明は、回転抵抗を有するロール紙ホルダに保持されたロール紙を、挟持及び挟持解除する切換手段を備えた搬送ローラ対の間に挟んで搬送させ、同じく挟持及び挟持解除する切換手段を備えた戻しローラ対でロール紙に戻し力を加えつつ画像形成手段により画像形成した後、排紙ローラ対により搬送方向にロール紙を送る画像形成装置において、前記排紙ローラ対が1対の幅狭ローラからなり、更にロール紙のスキューを検知するスキュー検知手段と制御手段とが設けられ、該制御手段は上記スキュー検知手段がスキューを検知すると挟持を解除するように前記それぞれの切換手段を作動させて、しかる後に前記排紙ローラ対を一定時間回転駆動するように制御するように構成されており、請求項2は、上記に加えて、前記制御手段が、排紙ローラ対のスキュー補正のための回転駆動後に前記それぞれの切換手段を挟持方向に作動させ、しかる後に前記搬送ローラ対を画像形成時のロール紙搬送方向とは逆向きになるように回転駆動する。
【0007】
【作用】本発明によれば、請求項1の発明においては、スキュー検知手段によりロール紙のスキューが検知されると、制御手段が搬送ローラ対及び戻しローラ対の挟持を解除するように夫々の切換手段を制御するので、1対の幅の狭い排紙ローラ対がロール紙ホルダの回転抵抗を受けつつスキューしたロール紙を引っ張ることで、ロール紙にはスキューを修正する方向にモーメントが働き、いわゆるセルフセンタリング作用が生じ、排紙ローラ対の幅が狭いために排紙ローラ対の領域部分でローラ紙は搬送方向に対し直角方向にも移動して、スキュー補正されることとなる。
【0008】請求項2の発明によれば、上記に加えて、排紙ローラ対のスキュー補正のための回転駆動後に前記切換手段の挟持解除を解き、更に前記搬送ローラ対を画像形成時のロール紙搬送方向とは逆向きになるように回転駆動する排紙ローラ対のスキュー補正のための回転駆動後に前記それぞれの切換手段によって搬送ローラ対と戻しローラ対のそれぞれが再びロール紙を挟持し、しかる後に前記搬送ローラ対を画像形成時のロール紙搬送方向とは逆向きになるように回転駆動するので、スキューが補正された後に画像形成に供されていないロール紙の部分を巻き戻すことができ、ロール紙が無駄に消費されることがなくなる。
【0009】
【実施例】図1及び図2は本発明を適用することができる画像形成装置の一例である静電プロッタの構成を示す。ロール状に巻かれた静電記録紙であるロール紙1はロール紙ホルダ2にセットされ、矢印Aで示す搬送方向に引き出される。そしてロール紙1の搬送方向には、順次、戻しローラ対3、印写手段としての書込みヘッド4、現像手段の一例であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の三色からなる現像部5、搬送ローラ対6、カッタ7、排紙ローラ対8等が設けられる。
【0010】搬送ローラ対6としては、下ローラ6aにグリットローラを、又上ローラ6bにゴムローラを使用し、両ローラ間にロール紙1を挟持して、正転時には搬送方向(A方向)にスリップを生ずることなくロール紙1を搬送させる。
【0011】戻しローラ対3は、書込みヘッド4及び現像部5においてロール紙1にたるみが生じないように、図示しないトルクリミッタを介してロール紙1を搬送方向とは反対の戻す方向に送るように逆転され、ロール紙1を張っている。そしてこの状態で、ロール紙1には書込みヘッド4により静電潜像が書き込まれ、これが現像部5で現像される。即ち、現像部5では、まずY現像器5YによりY画像が現像され、これが終了すると搬送ローラ対6が逆転され、ロール紙1は初期位置まで戻り、再び画像を書き込まれて、M現像器5MによりM画像が現像され、同様にしてC画像が現像される。
【0012】排紙ローラ対8は、搬送ローラ対6の下流側においてロール紙1にたるみが生じないように、図示しないトルクリミッタを介して搬送ローラ対6よりも速く回転している。そして三色の現像が終了すると、ロール紙1の画像部先後端をカッタ7により切断し、排紙ローラ対8により排出してフルカラー画像が得られる。この場合、ロール紙1はスリップを生じない搬送ローラ対6によって押さえられて搬送されるので、色ずれのないフルカラー画像が得られるのであるが、ロール紙1が少しでも曲がってセットされていた場合には、スキューが発生して次第に大きくなり、ロール紙1は現像装置5の現像可能領域から外れることになってしまう。
【0013】このようなスキューを検知するために、ロール紙1の幅方向の両端部の外側に、スキュー検知手段としてのスキュー検知センサ9が設けられていて、スキューが検知されると、次の画像を作成する前にスキュー修正が行われる。
【0014】図3は、スキュー修正をする場合の搬送系の状態を示す。図示の如く、戻しローラ対3及び搬送ローラ対6は、ロール紙1の挟持を解除したニップ解除状態になり、排紙ローラ対8のみによりロール紙1が搬送される。この時、ロール紙ホルダ2には、摩擦部材10により軽くブレーキがかけられている。この摩擦部材10は、ロール紙1を搬送系にセットした後、図示しない装置のわに口を閉めることにより、上方から降下してきて、ロール紙ホルダ2に接触するようになっている。
【0015】図4は、スキューが修正されるセルフセンタリング作用を示す。即ち、ロール紙1が排紙ローラ対8により図示の如く搬送方向に引っ張られると、ロール紙ホルダ2が摩擦部材10によりブレーキをかけられているので、ロール紙1がスキューしている場合には、その一端側1aがロール紙ホルダ2により力Fで引っ張られ、その結果ロール紙1は、図示のような偶力Fを受けつつ搬送され、スキューを修正する方向に発生するモーメントMの作用を受け、排紙ローラ対8の位置で幅方向にスリップしてスキューが修正されることになる。
【0016】実験によれば、40mm幅の排紙ローラ対を用い、搬送ローラ対の近傍上流側にスキュー検知センサを設けた場合において、同センサによりロール紙1の幅方向変位が2mmに相当するスキューが検知されたときに、ロール紙1を500mm程度送れば完全にスキューが修正されるという結果が得られた。なお、図4に示す実施例では、排紙ローラ対8をロール紙1の幅方向のほぼ中央部分に設けている。このようにすれば、ロール紙1が何れの方向にスキューした場合にも、同じ大きさのスキュー修正モーメントが得られることになるが、排紙ローラ対8の位置は必ずしも中央でなければならない必要はない。
【0017】スキューを修正する動作を実施した後には、戻しローラ対3及び搬送ローラ対6のニップを復帰させて、次の画像形成を可能にする。又この場合、搬送ローラ対6を逆転させて、スキュー修正のために送った長さ分だけロール紙1を戻すようにすることが望ましい。このようにすれば、ロール紙1が消費されなくなる。
【0018】図5は、排紙ローラ対8の他の実施例を示す。排紙ローラ対8は、スキュー修正のためには幅が狭いことが望ましく、幅が狭い程セルフセンタリング作用が有効になり、スキュー修正のためのロール紙1の搬送距離が短くなり、用紙の無駄や修正のための時間のロスが少なくなる。このため図示の如く、排紙ローラ対8の内上ローラ8aにOリング8bを設けるような構造にすれば更によくなる。
【0019】図6は、戻しローラ対3及び搬送ローラ対6の挟持及び挟持解除をする切換手段及び他の切換手段の機構の一例を示す。説明を簡単にするために、搬送ローラ対6の場合について説明する。搬送ローラ対6の上ローラ6bの軸端6b−1を支持している軸受部6b−2は、ガイド溝6b−3内に設けらた加圧ばね6b−4により、ロール紙1を挟持するニップ方向に加圧されている。一方、回動軸6b−5に回動自在に支持されたレバー6b−6が設けられ、その一端側には軸受部6b−2に接し、他端側はソレノイド6b−7に連結されている。
【0020】スキュー修正動作が一定時間行われると、制御手段としての例えば静電プロッタの制御を行うCPU11から、ソレノイド3b-7及び6b-7に信号が送られ、これらを作動させてレバー3b-6及び6b-6を引きつけてローラニップを解除する。その結果、前述した如く、スキューが修正されることになる。
【0021】なお、加圧ばね6b−4により大きな加圧力が加えられる場合には、一回転クラッチとカムとによって圧力を解除するようにすることもできる。
【0022】ロール紙1のスキューを修正する動作が終了すると、CPU11からソレノイド3b-7及び6b-7に信号を送り、その動作を停止し、加圧ばね3b-4及び6b-4の付勢力により戻しローラ対3及び搬送ローラ対6を再びニップ状態にし、画像形成が可能な状態にする。そしてこの場合、CPU11から搬送ローラ対6の駆動手段(図示せず)に信号を送って、搬送ローラ対6を逆転させれば、前述の如くロール紙1が巻き戻される。巻き戻されたロール紙1は搬送ローラ対6の搬送方向上流側に設置されたスキュー検知センサ9によってスキューが解消されたことを確認されることとなる。
【0023】なお、以上のようにしてロール紙1のスキューを修正しても、ロール紙1の軸心と搬送ローラ対6の軸心との平行度が同じでなければ再びスキューが発生するので、できるだけ両軸心の平行度を維持する必要がある。このため、ロール紙ホルダ2のフランジ部にテーパーを設け、ロール紙1の内面端を支持するようにしている。
【0024】
【発明の効果】以上の如く本発明によれば、請求項1の発明においては、ロール紙にスキューが発生したときには、戻しローラ対及び搬送ローラ対の挟持を解除して、回転抵抗をかけつつ搬送ローラ対でロール紙を搬送させることにより、搬送ローラ対がスリップを生じないものであっても、ジョガー等の特別の機構を設けることなく、又オペレータの操作に頼ることなく自動的に、ロール紙のスキューを修正することができる。
【0025】請求項2の発明によれば、上記に加えて、搬送ローラ対を逆転させることにより、ロール紙を巻き戻し、その無駄の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の画像形成装置の一例である静電プロッタの概略構造を示す側面図である。
【図2】上記の平面図である。
【図3】図1において戻しローラ対及び搬送ローラ対のニップを解除した状態を示す。
【図4】スキューが修正されるセルフセンタリング作用の説明図である。
【図5】排紙ローラ対のうち上ローラにOリングを設けた場合の実施例を示す平面図である。
【図6】ニップ解除機構の説明図である。
【符号の説明】
1 ロール紙
2 ロール紙ホルダ
3 戻しローラ対
4 書込みヘッド(印写手段)
5 現像部(現像手段)
6 搬送ローラ対
8 排紙ローラ対
9 スキュー検知センサ
10 摩擦部材(回転抵抗)
11 CPU(制御手段)
3b−7、6b−7 ソレノイド(その他の切換手段、切換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転抵抗を有するロール紙ホルダに保持されたロール紙を、挟持及び挟持解除する切換手段を備えた搬送ローラ対の間に挟んで搬送させ、同じく挟持及び挟持解除する切換手段を備えた戻しローラ対でロール紙に戻し力を加えつつ画像形成手段により画像形成した後、排紙ローラ対により搬送方向にロール紙を送る画像形成装置において、前記排紙ローラ対は1対の幅狭ローラからなり、更にロール紙のスキューを検知するスキュー検知手段と制御手段とが設けられ、該制御手段は上記スキュー検知手段がスキューを検知すると挟持を解除するように前記それぞれの切換手段を作動させて、しかる後に前記排紙ローラ対を一定時間回転駆動するように制御するように構成されたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】 前記制御手段は、排紙ローラ対のスキュー補正のための回転駆動後に前記それぞれの切換手段を挟持方向に作動させ、しかる後に前記搬送ローラ対を画像形成時のロール紙搬送方向とは逆向きになるように回転駆動することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】第2883452号
【登録日】平成11年(1999)2月5日
【発行日】平成11年(1999)4月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−17884
【出願日】平成3年(1991)2月8日
【公開番号】特開平4−256654
【公開日】平成4年(1992)9月11日
【審査請求日】平成10年(1998)1月29日
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【参考文献】
【文献】特開 平1−167153(JP,A)
【文献】実開 昭62−23245(JP,U)