説明

画像形成装置

【発明の詳細な説明】
[発明の目的]
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、たとえば自動露光モードとマニュアル露光モードとを備える電子複写機などの画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、電子複写機には、原稿の濃度に応じて露光ランプの露光量を自動的に調節する自動露光モードと、原稿の濃度とは無関係に任意に可変することができるマニュアル(手動)露光モードとを備えるものがある。
【0003】従来、マニュアル露光の露光量をスライドボリウムにて可変するようになっている複写機においては、スライドボリウムの位置によるデータをある周期ごとに読み込み、そのデータをもとに露光ランプの明るさの調節を行うようになっている。したがって、自動露光モードの設定スイッチをオフすることによってマニュアル露光モードを設定した後、ボリウムを動かすのが一般的である。
【0004】しかしながら、マニュアル露光モードの設定は、自動露光モード設定スイッチの操作とスライドボリウムの操作と2つの操作を必要とするため、操作が面倒で煩わしいものとなっていた。これに鑑みて、自動露光モードの時にマニュアルスイッチを操作することによって自動的にマニュアル露光モードに切り替わる複写機が考案されている。しかしながら、操作者が誤ってマニュアルスイッチに触れてしまっただけでモードが切り換えられてしまう場合があり、操作性が悪くなるという新たな問題点を生じていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、従来においては、マニュアル露光モードを設定する場合、自動露光モード設定スイッチの操作とスライドボリウムの操作とを必要とするため、操作が面倒で煩わしく、自動露光モードの時にマニュアルスイッチを操作することによって自動的にマニュアル露光モードに切り替わる複写機の場合、操作者が誤ってマニュアルスイッチに触れてしまっただけでモードが切り換えられてしまう場合があり、操作性が悪くなるという問題点を生じていた。
【0006】そこで、この発明は、可変手段の操作のみによって手動露光モードを設定することができ、操作者が誤ってマニュアルスイッチに触れてしまったような場合には自動切り換えが行われないようにすることによって、操作の簡素化が図れ、操作者の使い勝手を向上でき画像形成装置を提供することを目的としている。
【0007】[発明の構成]
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、この発明の画像形成装置にあっては、原稿を露光する露光手段、この露光手段が原稿の露光を行う際に、原稿の濃度に応じて自動的に決定される露光量に応じて露光を行う自動露光モードと、任意に設定される設定値に基づく露光量に応じて露光を行う手動露光モードとを切換えるモード切換手段、可動部を有してなり、前記モード切換手段により手動露光モードが設定されているときに、前記可動部を移動させることによって、この可動部の位置に対応した露光量を前記露光手段に対して設定する設定手段、この設定手段の前記可動部の移動量を検知する検知手段、前記モード切換手段により自動露光モードが設定されているときに、前記検知手段により検知された前記設定手段の可動部の移動量が予め設定されている、ある大きさの基準値以上であるか否かを判断する判断手段、この判断手段により前記可動部の移動量が前記基準値以上であると判断した際に、前記モード切換手段の指示に関わらず手動露光モードに切り換える第1の制御手段、および前記判断手段により前記可動部の移動量が前記基準値以上でないと判断した際に、前記自動露光モードのままにする第2の制御手段から構成されている。
【0009】
【作用】この発明は、上記した手段により、可変手段を操作するだけで自動露光モードから手動露光モードへ変更でき、操作者が誤ってマニュアルスイッチに触れてしまったような場合には自動切り換えが行われないようにすることによって、面倒な操作を不要とし、操作者の使い勝手を向上することが可能となるものである。
【0010】
【実施例】以下、この発明の一実施例について図面を参照して説明する。
【0011】図3は、この発明にかかる画像形成装置、たとえば電子複写機を概略的に示すものである。
【0012】すなわち、複写機本体1の上面には原稿を支承する原稿台(透明ガラス)2が固定されている。この原稿台2の上部には、原稿をその載置位置(セット基準)まで自動的に搬送する自動原稿送り装置50が設けられ、複数枚の原稿を連続して給紙できるようになっている。また、この自動原稿送り装置50は、原稿台2に対して開閉自在に設けられているため、原稿を一枚ずつ手差しによりセットすることもできるようになっている。
【0013】そして、上記原稿台2に載置された原稿は、露光ランプ4、ミラー5,6,7からなる光学系が、原稿台2の下面に沿って往復動されることによって露光走査されるようになっている。この場合、ミラー6,7は光路長を保持するよう、ミラー5の1/2の速度にて移動される。
【0014】上記光学系の走査による原稿からの反射光、つまり露光ランプ4の光照射による原稿からの反射光は上記ミラー5,6,7によって反射された後、変倍用レンズブロック8を通り、さらにミラー91 ,92 ,93 によって反射されて感光体ドラム10に導かれ、原稿の像が感光体ドラム10の表面に結像されるようになっている。
【0015】上記感光体ドラム10は図示矢印c方向に回転され、まず帯電用帯電器11によって表面が帯電される。この後、画像が露光部Phでスリット露光されることにより、表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器12によってトナーが付着されることにより可視像化される。
【0016】前記現像器12は、複写機本体1に対して着脱自在とされている。また、現像器12の側面には、収容されているトナーの色を示す図示せぬコード情報が設けられており、現像器12を複写機本体1に装着すると、複写機本体1側の図示せぬセンサによってこのコード情報が読取られ、トナーの色を自動的に判別できるようになっている。
【0017】一方、用紙(被転写材)は、選択された上段給紙カセット131 、下段給紙カセット132 、あるいは3段目(追加の)給紙カセット113から送出ローラ141 、142 あるいは114、およびローラ対151 、152 あるいは115によって一枚ずつ取り出され、この取り出された用紙は用紙案内路161 、162 あるいは116を通ってレジストローラ対19へ案内され、このレジストローラ対19によって転写部へ送られるようになっている。
【0018】ここで、上記給紙カセット131 ,132 は、本体1の右側下端部に着脱自在に設けられている。また、上記した3段目給紙カセット113は、複写機本体1のオプションとして設けられた給紙装置17の右側部に着脱自在に設けられている。
【0019】なお、上記各給紙カセット131 、132 および113は、後述する操作パネルにおいていずれか一方が選択できるようになっている。
【0020】また、上記各給紙カセット131 、132 および113は、それぞれカセットサイズ検知スイッチ601 、602 、160によって収納している用紙のサイズが検知されるものである。このカセットサイズ検知スイッチ601 ,602 および160は、サイズの異なるカセットの挿入に応じてオン/オフされる複数のマイクロスイッチにより構成されている。
【0021】さらに、上記各給紙カセット131 、132 および113は、それぞれ空検知器611 、612 、161によって用紙の収納状態が検知されるものである。この空検知器611 ,612 および161は、たとえば反射型の光センサにより構成されている。
【0022】また、前記給紙カセット131 の上面部には手差しガイド13aが設けられている。しかして、この手差しガイド13aを介して手差し挿入された用紙は、送出ローラ14aによって前記ローラ対151 に導かれ、この後、給紙カセット131 から給紙された用紙と同様に搬送されるようになっている。
【0023】上記転写部に送られた用紙は、転写用帯電器20の部分で感光体ドラム10の表面と密着され、上記帯電器20の作用により感光体ドラム10上のトナー像が転写される。この転写された用紙は、剥離用帯電器21の作用で感光体ドラム10から静電的に剥離され、搬送ベルト22によってその終端部に設けられた定着器としての定着ローラ対23へ送られる。そして、ここを通過することにより転写像が定着され、定着後の用紙は、排紙ローラ対24,25によって本体1外のトレイ26に排出される。
【0024】また、転写後の感光体ドラム10は、クリーナ27で表面の残留トナーが除去され、さらに除電ランプ28によって残像が消去されることにより、初期状態に復帰されるようになっている。
【0025】なお、29は本体1内の温度上昇を防止するための冷却ファンである。
【0026】また、上記した排紙ローラ対24,25の相互間には、定着後の用紙を前記トレイ26あるいは前記の給紙装置17内に振り分ける振り分けゲート40が設けられている。この振り分けゲート40によって給紙装置17内に振り分けられた用紙は、そのままの状態もしくは表裏が反転された状態で、再度、転写部に送られるようになっている。これにより、用紙の同一面に対する多重複写または一枚の用紙に対する両面複写が行われることになる。
【0027】図4は、本体1に設けられた操作パネル30の要部を示すものである。
【0028】同図において、30aは複写開始などを指令する複写キー、30bは複写枚数(置数)の設定などを行うテンキー、30cは各部の動作状態や用紙のジャムなどを表示する状態表示部、30dは上段,下段,3段目給紙カセット131 ,132 ,113を選択するカセット選択キー、30eは選択されたカセットにおける用紙サイズを表示するカセット表示部、30fは複写の拡大,縮小倍率を所定の関係で設定する倍率設定キー、30gは拡大,縮小倍率を無段階に設定するズームキー、30hは設定された倍率を表示する倍率表示部、30iは複写濃度を設定する濃度設定部である。
【0029】上記濃度設定部30iは、自動露光モードを設定する自動露光キー301 、自動露光モードの設定を表示する表示用LED302 、マニュアル露光モード時の露光量を調整するためのスライドボリウム303 により構成されている。
【0030】図1は、電気回路の要部を示すものである。
【0031】マイクロコンピュータ70は、操作パネル30のテンキー30bや自動露光キー301 などのキー入力部31からの入力の検出と、状態表示部30cや表示用LED303 などの表示部32への出力の制御とを行うとともに、前記各種帯電器を駆動するための高圧トランス(図示しない)や露光ランプ4のランプレギュレータ71などを制御して前述の複写動作を実行するものである。
【0032】また、マイクロコンピュータ70には、スライドボリウム303 の値を読み取ってA/D変換した、このA/D変換値を記憶するためのRAM72、自動露光モード時の露光量を決定するための露光量データを記憶するROM73、上記A/D変換値をもとに決定されるマニュアル露光モード時の露光量データまたは自動露光モード時の露光量データをパラレル/シリアル変換するパラレル/シリアル変換器74などが接続されている。そして、このパラレル/シリアル変換器74の出力が、D/Aコンバータ75およびAMP.76を介して上記ランプレギュレータ71に供給されるようになっている。
【0033】次に、上記した構成における、複写濃度の制御にかかる動作について説明する。
【0034】図2は、露光動作における処理の流れを示すものである。
【0035】たとえば今、複写機本体1の電源が投入されたとする。すると、まず、スライドボリウム303 の値VSLが読み取られ、A/D変換される(ステップST1)。このA/D変換値は、RAM72のたとえばRAMaのエリアに記憶される(ステップST2)。
【0036】この後、露光の初期設定が行われる(ステップST3)。この実施例の場合、自動露光となっている。
【0037】続いて、自動露光キー301 のオン/オフの状態が判断される(ステップST4)。そして、オンの場合には自動露光モードが設定され(ステップST5)、操作パネル30の表示用LED302 が点灯される。また、オフの場合には、マニュアル露光モードが設定された後(ステップST6)、処理はステップST7に移行される。この場合、表示用LED302 はオフ(消灯)状態とされる。
【0038】ステップST7では、再び、スライドボリウム303 の値VSLが読み取られ、A/D変換される。そして、このA/D変換値と、上記したステップST2ですでにRAM72に記憶されているA/D変換値との差の絶対値が求められる。この値は、調整データとして、RAM72のたとえばRAMbのエリアに記憶される(ステップST8)。
【0039】また、上記したステップST7で読み取られてA/D変換されたスライドボリウム303 の値VSLにより、RAM72のたとえばRAMaのエリアに記憶されるA/D変換値が書き換えられる(ステップST9)。
【0040】次いで、上記したステップST8で求められた調整データは、あらかじめ設定される基準値、たとえば読み込みの誤差を考慮してセットされている「10」なる値と比較される(ステップST10)。そして、調整データが基準値より大きい場合、つまりスライドボリウム303 がある程度以上に動かされていると判断される場合には、モードがマニュアル露光モードに再設定される(ステップST11)。これにより、操作パネル30の複写キー30aが操作された場合には、RAM72のたとえばRAMaのエリアに記憶されている新A/D変換値をもとに決定される露光量データによって、露光ランプ4の露光量が調整されることになる。
【0041】一方、調整データが基準値よりも小さい場合には、処理は上記したステップST4に移行される。そして、上記したステップST4〜の処理が繰り返される。したがって、この状態で複写キー30aが操作されると、自動露光モードの場合にはROM73のデータに応じて露光ランプ4の露光量が自動的に決定されることになる。
【0042】また、あらかじめマニュアル露光モードが設定されている状態においては、上記した再設定時の場合と同様に、RAM72のたとえばRAMaのエリアに記憶されている新A/D変換値をもとに決定される露光量データによって露光ランプ4の露光量が調整されることになる。
【0043】上記したように、スライドボリウムを操作するだけで自動露光モードからマニュアル露光モードへ変更できるようにしている。
【0044】すなわち、自動露光モードからマニュアル露光モードへの切り換えを、自動露光キーを操作することなく、スライドボリウムを動かすだけで行えるようにしている。これにより、自動露光モードをオフした後にスライドボリウムを調整するといった、複雑、かつ面倒な操作を不要とすることが可能となる。したがって、操作の簡素化を容易にして図ることができるものである。
【0045】なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を変えない範囲において、種々変形実施可能なことは勿論である。
【0046】以上、詳述したようにこの発明によれば、可変手段の操作のみによって手動露光モードを設定することができ、操作者が誤ってマニュアルスイッチに触れてしまったような場合には自動切り換えが行われないようにすることによって、操作の簡素化が図れ、操作者の使い勝手を向上できる画像形成装置を提供することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例にかかる電気回路の要部の構成を示すブロック図。
【図2】同じく、露光制御動作の一例を示すフローチャート。
【図3】同じく、電子複写機を例に示す画像形成装置の構成図。
【図4】同じく、操作パネルの一例を示す平面図。
【符号の説明】
1…複写機本体、2…原稿台、4…露光ランプ、10…感光体ドラム、11…帯電用帯電器、12…現像器、17…給紙装置、20…転写用帯電器、23…定着ローラ対、24,25…排紙ローラ対、30…操作パネル、30a…複写キー、30i…濃度設定部、301 …自動露光キー、302 …表示用LED、303 …スライドボリウム、50…自動原稿送り装置、70…マイクロコンピュータ、71…ランプレギュレータ、72…RAM、73…ROM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 原稿を露光する露光手段と、この露光手段が原稿の露光を行う際に、原稿の濃度に応じて自動的に決定される露光量に応じて露光を行う自動露光モードと、任意に設定される設定値に基づく露光量に応じて露光を行う手動露光モードとを切換えるモード切換手段と、可動部を有してなり、前記モード切換手段により手動露光モードが設定されているときに、前記可動部を移動させることによって、この可動部の位置に対応した露光量を前記露光手段に対して設定する設定手段と、この設定手段の前記可動部の移動量を検知する検知手段と、前記モード切換手段により自動露光モードが設定されているときに、前記検知手段により検知された前記設定手段の可動部の移動量が予め設定されている、ある大きさの基準値以上であるか否かを判断する判断手段と、この判断手段により前記可動部の移動量が前記基準値以上であると判断した際に、前記モード切換手段の指示に関わらず手動露光モードに切り換える第1の制御手段と、前記判断手段により前記可動部の移動量が前記基準値以上でないと判断した際に、前記自動露光モードのままにする第2の制御手段と、を具備することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3160306号(P3160306)
【登録日】平成13年2月16日(2001.2.16)
【発行日】平成13年4月25日(2001.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−91644
【出願日】平成3年3月29日(1991.3.29)
【公開番号】特開平4−301857
【公開日】平成4年10月26日(1992.10.26)
【審査請求日】平成10年3月25日(1998.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外6名)
【参考文献】
【文献】特開 昭59−198474(JP,A)
【文献】特開 昭62−194265(JP,A)
【文献】特開 昭61−61143(JP,A)
【文献】特開 昭61−166557(JP,A)
【文献】特開 平2−91664(JP,A)