説明

画像復元装置およびその方法、並びに情報コード読取装置

【課題】画像の復元処理においてコントラストの向上と共にノイズも増幅することを防止でき、復元画像の判定精度に影響を与えることなく、深度を拡張することが可能な画像復元装置およびその方法、並びに情報コード読取装置を提供する。
【解決手段】1次画像を形成する光波面変調素子を含む光学系210および撮像素子220と、撮像素子220による画像データに対してフィルタリングを行う画像処理装置230と、を有し、画像処理装置230は、ぼけ復元フィルタ単独でフィルタリングを行う第1のぼけ復元処理機能と、ぼけ復元フィルタとエッジ保存型平均フィルタとの両フィルタによるフィルタリングを行う第2のぼけ復元処理機能と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を用い、光学系を備えた画像復元装置およびその方法、並びに情報コード読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年急峻に発展を遂げている情報のデジタル化に相俟って映像分野においてもその対応が著しい。
特に、デジタルカメラに象徴されるように撮像面はフィルムに変わって固体撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device),CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサが使用されているのが大半である。
【0003】
このように、撮像素子にCCDやCMOSセンサを使った撮像レンズ装置は、被写体の映像を光学系により光学的に取り込んで、撮像素子により電気信号として抽出するものであり、デジタルスチルカメラの他、情報コード読取装置(バーコードリーダ)、ビデオカメラ、デジタルビデオユニット、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal DigitalAssistant)、画像検査装置、自動制御用産業カメラ等に用いられている。
【0004】
図33は、一般的な撮像レンズ装置の構成および光束状態を模式的に示す図である。
この撮像レンズ装置1は、光学系2とCCDやCMOSセンサ等の撮像素子3とを有する。
光学系は、物体側レンズ21,22、絞り23、および結像レンズ24を物体側(OBJS)から撮像素子3側に向かって順に配置されている。
【0005】
撮像レンズ装置1においては、図33に示すように、ベストフォーカス面を撮像素子面上に合致させている。
図34(A)〜(C)は、撮像レンズ装置1の撮像素子3の受光面でのスポット像を示している。
【0006】
ところで、F値が明るいレンズは合焦位置からデフォーカスすると急激に変調伝達関数(MTF:Modulation Transfer Function)が下がってしまう。その結果、MTFが0まで下がりそこから高い周波数で再び値を持ついわゆるバウンドが発生する。
そして、このバウンド点以上は位相がずれているので解像はつぶれてしまう。
F値を絞るとデフォーカスさせた時のMTFの変化が低く抑えられるのでバウンドするデフォーカス距離を広くすることができる。これがF値を絞ることで被写界深度をかせぐ方法である。
【0007】
さて、たとえばバーコードリーダの深度拡張技術としては、上記のようにF値を絞ることで被写界深度を広げて固定ピントとしている。
フォーカシングすれば撮影距離は伸びるが複雑な機構が必要になるため、耐衝撃の信頼性や耐久性問題、または即時性の問題でオートフォーカス機構を有しているものはない。すなわち、バーコードリーダは、信頼性の観点から固定焦点レンズが用いられている。
しかしながら、F値を絞ると撮像素子に入射する光エネルギーが小さくなってしまうため感度が低下してノイズが増えバーコードのデコードを失敗してしまうという問題がある。
そこで、バーコードリーダにおいては、製品仕様の撮影距離とF値のバランスをとって被写界深度は決まっている。
【0008】
また、位相板により光束を規則的に分散し、デジタル処理により復元させ被写界深度の深い画像撮影を可能にする等の撮像装置が提案されている(たとえば非特許文献1,2、特許文献1〜5参照)。
この手法を用いれば、F値は明るいままで、被写界深度を伸ばすことができる。
【非特許文献1】“Wavefront Coding;jointly optimized optical and digital imaging systems”,Edward R.Dowski,Jr.,Robert H.Cormack,Scott D.Sarama.
【非特許文献2】“Wavefront Coding;A modern method of achieving high performance and/or low cost imaging systems”,Edward R.Dowski,Jr.,Gregory E.Johnson.
【特許文献1】USP6,021,005
【特許文献2】USP6,642,504
【特許文献3】USP6,525,302
【特許文献4】USP6,069,738
【特許文献5】特開2003−235794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述したように、バーコードリーダは、一般に信頼性の観点から固定焦点レンズが用いられているため、深度が狭い。
一方、深度拡張光学系を用い画像復元処理を行うことで深度を伸ばすバーコードリーダシステムを形成した場合、大きなボケがなくコントラストを高められる利点があるものの、ノイズも増幅してしまうことから、バーコードリーダのノイズ判定処理によってデコード不可(NG)になってしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、画像の復元処理においてコントラストの向上と共にノイズも増幅することを防止でき、復元画像の判定精度に影響を与えることなく、深度を拡張することが可能な画像復元装置およびその方法、並びに情報コード読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点の画像復元装置は、画像のぼけ復元フィルタと、エッジ保存型平均フィルタと、画像データに対してフィルタリングを行う画像処理装置と、を有し、前記画像処理装置は、前記ぼけ復元フィルタ単独で前記フィルタリングを行う第1のぼけ復元処理機能と、前記ぼけ復元フィルタと前記エッジ保存型平均フィルタとの両フィルタによる前記フィルタリングを行う第2のぼけ復元処理機能と、を含む。
【0012】
本発明の第2の観点の情報コード読取装置は、光学系と、前記光学系を通した被写体である情報コードの像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子により撮像された画像の復元処理を行う画像復元装置と、を有し、前記画像復元装置は、画像のぼけ復元フィルタと、エッジ保存型平均フィルタと、画像データに対してフィルタリングを行う画像処理装置と、を有し、前記画像処理装置は、前記ぼけ復元フィルタ単独で前記フィルタリングを行う第1のぼけ復元処理機能と、前記ぼけ復元フィルタと前記エッジ保存型平均フィルタとの両フィルタによる前記フィルタリングを行う第2のぼけ復元処理機能と、を含む。
【0013】
好適には、前記第2のぼけ復元処理機能におけるぼけ復元フィルタのゲインは、前記第1のぼけ復元処理機能におけるぼけ復元フィルタのゲインより小さい。
【0014】
好適には、前記エッジ保存型平均フィルタにおいて、処理対象画素の周辺領域を設定し、当該周辺領域を分割して分散演算を行う場合、前記分割の方向が上下、左右、斜めの方向のみならず、これらの方向の間の方向を想定した分割も行い分散演算を行う。
【0015】
好適には、前記第1のボケ復元処理または第2のぼけ復元処理が行われた前記画像データに対するデコードの可否を判定し、前記第1のボケ復元処理または第2のぼけ復元処理画像のうち、前記デコード可否判定においてデコード可となったほうを最終結果とする判定手段を有する。
【0016】
好適には、前記光学系は、光学的伝達関数(OTF)を変調する光波面変調機能を含む。
【0017】
好適には、前記光学系は、光波面変調素子、または、当該光学系を形成する光学素子に形成された光波面変調面を含む。
【0018】
本発明の第3の観点は、画像のぼけ復元フィルタと、エッジ保存型平均フィルタとを用いて画像データに対してフィルタリングを行って画像を復元する画像復元方法であって、前記ぼけ復元フィルタ単独で前記フィルタリングを行う第1のぼけ復元処理、または、前記ぼけ復元フィルタと前記エッジ保存型平均フィルタとの両フィルタによる前記フィルタリングを行う第2のぼけ復元処理が行われた前記画像データに対するデコードの可否を判定し、前記第1のボケ復元処理または第2のぼけ復元処理画像のうち、前記デコード可否判定においてデコード可となった方を最終結果として採用する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像の復元処理においてコントラストの向上と共にノイズも増幅することを防止でき、また、復元画像の判定精度に影響を与えることなく、深度を拡張することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面に関連付けて説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る情報コード読取装置の一例を示す外観図である。
図2(A)〜(C)は、情報コードの例を示す図である。
図3は、図1の情報コード読取装置に適用される撮像装置の構成例を示すブロックである。
【0022】
本実施形態に係る情報コード読取装置100は、図1に示すように、本体110がケーブル111を介して図示しない電子レジスタ等の処理装置と接続され、たとえば読み取り対象物120に印刷された反射率の異なるシンボル、コード等の情報コード121を読み取り可能な装置である。
情報コード読取装置100は、本体110に形成された読取開始スイッチ112が操作されると、それをトリガとして、情報コードの読み取りを、たとえば10回試みて7回デコード判定で可となればそれをデコード結果とする機能を有している。
この機能を有する理由は、情報コードの読み取り1回でデコード判定を可とすると、外乱や弱い情報に対して読み取りができない状態が続く場合が想定されることから、利用者の使い勝手を考慮したものである。ちなみにこの再試行の7回の設定は変更できように構成されている。
【0023】
読み取り対象の情報コードとしては、たとえば図2(A)に示すような、JANコードのような1次元のバーコード122と、図2(B)および(C)に示すようなスタック式のCODE49、あるいはマトリックス方式のQRコードのような二次元のバーコード123が挙げられる。
【0024】
本実施形態に係る情報コード読取装置100は、本体110内に、図示しない照明光源と、図3に示すような撮像装置200とが配置されている。
本実施形態に係る撮像装置200は、光学系210に光波面変調素子を適用し、光波面変調素子により光束を規則的に分散し、デジタル処理により復元させ被写界深度の深い画像撮影を可能にする波面収差制御光学系システム、あるいは深度拡張光学系システム(DEOS:Depth Expantion Optical system)というシステムを採用し、情報コードを的確に高精度で読み取ることが可能に構成されている。
なお、光波面変調機能は、このように光学系に光波面変調素子を配置することで発現することが可能であるが、光学系を形成する光学素子に形成された光波面変調面により発現するように構成することも可能である。
【0025】
情報コード読取装置100の撮像装置200は、図3に示すように、光学系210、撮像素子220、フィルタ手段としての機能を含む画像処理装置230、判定手段としての機能を含む制御装置240、および外部とのびインタフェース部(I/F)250を有する。
これらの構成要素のうち、画像処理装置230および制御装置240により画像復元装置が構成される。
【0026】
光学系210は、位相変調素子等の光波面変調素子を含み、被写体物体OBJである情報コード121を撮影した像を撮像素子220に供給する。
光学系210は、たとえば固定焦点レンズが用いられている。
【0027】
撮像素子220は、光学系210で取り込んだ像が結像され、結像1次画像情報を電気信号の1次画像信号FIMとして、図示しないアナログフロントエンド部(AFE)を介して画像処理装置230に出力するCCDやCMOSセンサからなる。
図3においては、撮像素子220を一例としてCCDとして記載している。
【0028】
図4は、本実施形態に係る光波面変調素子を含む光学系210の構成例を模式的に示す図である。
【0029】
図4の光学系210は、物体側OBJSに配置された物体側レンズ211と、撮像素子220に結像させるための結像レンズ212と、物体側レンズ211と結像レンズ212間に配置され、結像レンズ212による撮像素子220の受光面への結像の波面を変形させる、たとえば3次元的曲面を有する位相板からなる光波面変調素子(波面形成用光学素子)群213を有する。
【0030】
なお、本実施形態においては、位相板を用いた場合について説明したが、本発明の光波面変調素子としては、波面を変形させるものであればどのようなものでもよく、厚みが変化する光学素子(たとえば、上述の3次の位相板)、屈折率が変化する光学素子(たとえば屈折率分布型波面変調レンズ)、レンズ表面へのコーディング等により厚み、屈折率が変化する光学素子(たとえば、波面変調ハイブリッドレンズ、あるいはレンズ面上に形成される位相面として形成される状態)、光の位相分布を変調可能な液晶素子(たとえば、液晶空間位相変調素子)等の光波面変調素子であればよい。
また、本実施形態においては、光波面変調素子である位相板を用いて規則的に分散した画像を形成する場合について説明したが、通常の光学系として用いるレンズで光波面変調素子と同様に規則的に分散した画像を形成できるものを選択した場合には、光波面変調素子を用いずに光学系のみで実現することができる。この際は、後述する位相板に起因する分散に対応するのではなく、光学系に起因する分散に対応することとなる。
【0031】
図4の光学系210は、光学位相板213aを挿入した例である。
図で示された位相板213aは、光学系により収束される光束を規則正しく分散する光学レンズである。この位相板を挿入することにより、撮像素子220上ではピントのどこにも合わない画像を実現する。
換言すれば、位相板213aによって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)を形成している。
前述したように、この規則的に分散した画像をデジタル処理により、光学系210を移動させずにピントの合った画像に復元する手段を波面収差制御光学系システム、あるいは深度拡張光学系システム(DEOS:Depth Expantion Optical system)といい、この処理を画像処理装置230において行う。
【0032】
画像処理装置230は、前段の不図示のAFEからくる撮像画像のデジタル信号を入力し、二次元のコンボリューション処理を施し、後段の制御装置240に出力する。
画像処理装置230は、画像のぼけ復元フィルタと、エッジ保存型平均フィルタとを用いて画像データに対してフィルタリングを行う機能を有している。
画像処理装置230のフィルタリングを行う機能には、ぼけ復元フィルタ単独でフィルタリングを行う第1のぼけ復元処理機能と、ぼけ復元フィルタとエッジ保存型平均フィルタとの両フィルタによるフィルタリングを行う第2のぼけ復元処理機能と、を含む。
なお、本実施形態においては、第2のぼけ復元処理機能におけるぼけ復元フィルタのゲインは、第1のぼけ復元処理機能におけるぼけ復元フィルタのゲインより小さい。
【0033】
図5(A),(B)および図6(A),(B)は、フィルタゲインFGとMTFとの関係を示す図であって、図5(A),(B)の方が図6(A),(B)よりフィルタゲインが高い場合の例である。
このように、フィルタゲインが高い方がMTFは高くなり、MTFの頂点部からの傾斜も急となる。
【0034】
また、複数の画像復元フィルタは下記に示すフィルタゲインFGの値が略等しくなるようにWienerフィルタの係数を変えて生成されている。
【0035】
[数1]
FG = (1/a*ΣΣfilt(u,v)^2)^0.5
aはフィルタの全要素数
【0036】
なお、図5(A),(B)に示すように、フィルタゲインFGを高くするとMTFを高くすることができるが、これに伴いノイズ量も多くなる。
すなわち、復元フィルタだけに着目した場合、復元レベルを変えることが復元画像の解像やノイズに関係してくる。すなわち、強い復元フィルタを用いた場合、解像が上がると同時にノイズも増加する。情報コードを判定する際にある程度のノイズは訂正処理等で回避できるが限界がある。同時に、解像に関してもある一定の解像を持っていれば判定することは可能である。
【0037】
また、画像処理装置230は、エッジ保存型平均フィルタにおいて、処理対象画素の周辺領域を設定し、この周辺領域を分割して分散演算を行う場合、分割の方向が上下、左右、斜めの8方向のみならず、これらの方向の間の方向を想定した分割も行い分散演算を行う機能を有している。
【0038】
画像処理装置230は、内蔵または外部に設けた、たとえば不揮発性メモリからなる記憶部を有し、この記憶部にボケ(画像)復元フィルタおよびエッジ保存型平均フィルタが格納される。
記憶部に格納された画像復元フィルタおよびエッジ保存型平均フィルタは、光学系210の個体毎または要求される被写体距離毎に画像復元フィルタの値を変更可能に構成される。
【0039】
ここで、エッジ保存型平均フィルタを用いたエッジ保存平滑化方法の一例について説明する。
【0040】
図7は、エッジ保存平滑化方法の一例について説明するための図である。図7は、注目画素と近傍5×5の場合の領域の区切りの一例をあげている。
また、図8は、注目画素と近傍3×3の場合の領域の区切りの一例をあげて示す図である。
【0041】
注目画素NPXLと近傍5×5において、図7に示すように、9つの領域内の画素の分散を求め、この分散が最も小さい領域の原画素の平均値を注目画素値とする。このエッジ保存型平均フィルタのアルゴリズムは次のような考えに基づいている。
エッジが領域内に含まれているとすると、分散は大きくなり、逆に最も分散の小さい領域にはエッジが含まれていないと考えられる。そこで、最も分散の小さい領域の画素を平滑化することにより、エッジのぼけを防ぐ。
ここで、2つ以上の領域で分散の値が同じ場合、平均値が複数発生する場合がある。
この場合、注目画素の値をどの平均値に置き換えるのか判断するのが難しいため、注目画素の値は置き換えないものとする。
【0042】
この方式では、以下のような特徴も持つ。
バーコード、QRコードなどで1ピクセル(pixel)幅のコード、2×2ピクセルサイズのコードを読み取る場合には近傍5×5よりも近傍3×3の方がエッジ保存の点で有利である。
分割の方向が上下、左右、斜めの8方向のみならず、これらの方向の間の方向を想定した分割を行い、分割する領域の種類を増やすことにより斜め方向のエッジのぼけ方も小さくなる。
【0043】
エッジ保存型平均フィルタを用いたエッジ保存平滑化方法についてさらに具体的に説明する
【0044】
図9(A),(B)は、3×3のエッジ保存型平均フィルタを用いた具体例を説明するための図である。
【0045】
図9(A)は、注目画素“5”と3×3の近傍画素の位置関係を示している。
(1):図9(A)に示すような画素配列(マトリクス配列)を、図9(B)に示すように8の小領域A〜Hに分割する。
(2):そして、それぞれ領域についての2画素間の画素値の平均と差分の絶対値を求める。
(3):8つの領域の差分の絶対値の最小値が固定値M以上の値の場合、注目画素5の画素値は、注目画素5は固定パターンノイズ(FPN;fixed-pattern noise)と判断して9画素の平均値に置き換える。
または、演算の簡略化のために画素1,2,3,4,6,7,8,9の8画素の平均値に置き換える。この場合、除算器を使わずに3ビットシフトで結果を出すことができる。
(4):上記(3)に該当しない場合は、8つの領域の差分の絶対値が、最も小さい領域の画素値の平均を注目画素5の画素値とする。
【0046】
図10(A),(B)は、3×3のエッジ保存型平均フィルタを用いた他の具体例を説明するための図である。
【0047】
図10(A)は、注目画素“5”と3×3の近傍画素の位置関係を示している。
(1):図10(A)に示すような画素配列(マトリクス配列)を、図10(B)に示すように13の小領域A〜Mに分割する。
(2):それぞれの領域についての画素値の平均と分散(または標準偏差)を求める。
(3):13の領域の中で分散(または標準偏差)が最も小さい領域の画素値の平均を注目画素5の画素値とする。
【0048】
図11(A),(B)は、5×5のエッジ保存型平均フィルタを用いた具体例を説明するための図である。
【0049】
図11(A)は、注目画素“13”と5×5の近傍画素の位置関係を示している。
(1):図11(A)に示すような画素配列(マトリクス配列)を、図11(B)に示すように9の小領域A〜Iに分割する。
(2):それぞれの領域についての画素値の平均と分散(または標準偏差)を求める。
(3):9の領域の中で分散(または標準偏差)が最も小さい領域の画素値の平均を注目画素13の画素値とする。
【0050】
エッジ保存型平均フィルタによるノイズ保存平滑化方法を採用しない場合、バーコードを読み取る場合には、次のような差異を有する。
【0051】
センサとコード間の距離が大きい場合、図12(A)に示すように被写体は撮像素子上に小さく結像し、情報コード(バーコード)のバー(bar)の幅が1〜2ピクセルと小さくなり、ノイズ成分とバーが隣接する場合にエッジとノイズの区別が付かなくなり、ノイズが除去できない、または反対にノイズを強調することがある(フィルタサイズ3×3の場合)。
これに対して、センサとコード間の距離が小さい場合、図12(B)に示すように被写体は撮像素子上に大きく結像し、情報コード(バーコード)のバー(bar)の幅が3ピクセルと大きくなり、エッジ保存型平均フィルタでのノイズの除去能力が十分に発揮される場合、ノイズがなくなりデコード成功率が上昇する(フィルタサイズ3×3の場合)。
【0052】
制御装置240は、画像処理装置230、インタフェース部250を介した上位装置(たとえば電子レジスタ)等との通信等を制御し、システム全体の調停制御を司るものである。
【0053】
制御装置240は、画像処理装置230においてフィルタ処理を受けた信号を受けて、第1のボケ復元処理(ボケ復元フィルタのみを用いた処理)のボケ復元処理画像に対してデコードの可否を判定し、デコード可(OK)である場合には、デコード可となった第1のボケ復元処理結果を最終結果として採用し、コードデータの出力を行う。
制御装置240は、画像処理装置230においてフィルタ処理を受けた信号を受けて、第1のボケ復元処理(ボケ復元フィルタのみを用いた処理)のボケ復元処理画像に対してデコードの可否を判定し、デコード不可(NG)である場合には、画像処理装置230に対して第2のボケ復元処理(エッジ保存型平均フィルタ処理とボケ復元フィルタ処理の両処理)を行わせ、この第2のボケ復元処理のボケ復元処理画像に対してデコードの可否を判定し、デコード可(OK)である場合には、デコード可となった第2のボケ復元処理結果を最終結果として採用し、コードデータの出力を行う。
制御装置240は、画像処理装置230においてフィルタ処理を受けた信号を受けて、第2のボケ復元処理のボケ復元処理画像に対してデコードの可否を判定し、デコード不可(NG)である場合には、たとえばデコード不可(読み取り不可)として、たとえばエラー表示する。
以上の処理を第1のコード読み取り処理とする。
【0054】
また、制御装置240は、画像処理装置230においてフィルタ処理を受けた信号を受けて、第1のボケ復元処理または(および)第2のぼけ復元処理が行われた画像データに対するデコードの可否を判定し、第1のボケ復元処理または(および)第2のぼけ復元処理画像のうち、デコード可否判定においてデコード可となったほうを最終結果とする判定機能を有する。
この処理を第2のコード読み取り処理とする。広い意味では、第1のコード読み取り処理はこの第2のコード読み取り処理の概念に含まれる。
【0055】
なお、デコード機能のデコード可否判定とは、フィルタリングされた画像データから情報コードとして判定可能であるか否かを判定することをいう。
【0056】
そして、制御装置240は、そのデコードが可とされた画像データ(解読した情報)をたとえばインタフェース部250を介して上位装置に送信する等の制御を行う。
【0057】
次に、第1のコード読み取り処理と第2のコード読み取り処理についてフローチャートに関連付けて説明する。
【0058】
図13は、本実施形態に係る第1のコード読み取り処理を説明するためのフローチャートである。
【0059】
本体110に形成された読取開始スイッチ112が操作されると、それをトリガとして、情報コードの読み取りが開始され、撮像した画像データは画像処理装置230に入力される(ST1)。
次に、制御装置240において、第1のボケ復元処理を行うように、画像処理装置230に指示が出され、これに伴いボケ復元フィルタのみを用いて読み取りデータに対する画像の復元処理が行われる(ST2)。この復元画像データは、制御装置240に供給される。
制御装置240では、第1のボケ復元処理(ボケ復元フィルタのみを用いた処理)のボケ復元処理画像に対してデコードの可否が判定される(ST3)。
ステップST3の判定において、デコード可(OK)である場合には、デコード可となった第1のボケ復元処理結果を最終結果として採用し、コードデータの出力が行われる(ST4)。
一方、ステップST3の判定において、デコード不可(NG)である場合には、制御装置240では、画像処理装置230に対して第2のボケ復元処理(エッジ保存型平均フィルタ処理とボケ復元フィルタ処理の両処理)を行うように指示が出される。
これに伴い、画像処理装置230においては、エッジ保存型平均フィルタとボケ復元フィルタの両フィルタを用いて読み取りデータに対する画像の復元処理が行われる(ST5,ST6)。この復元画像データは、制御装置240に供給される。
制御装置240では、この第2のボケ復元処理のボケ復元処理画像に対してデコードの可否が判定される(ST7)。
ステップST7の判定において、デコード可(OK)である場合には、デコード可となった第2のボケ復元処理結果を最終結果として採用し、コードデータの出力が行われる(ST4)。
一方、ステップST7の判定において、デコード不可(NG)である場合には、デコード不可(読み取り不可)として、たとえばエラー表示が行われる(ST8)。
【0060】
なお、第1のコード読み取り処理において、先に第1のボケ復元処理を行う場合について説明したが、先の第2のボケ復元処理を行うように構成することも可能である。
【0061】
図14は、本実施形態に係る第2のコード読み取り処理を説明するためのフローチャートである。
【0062】
本体110に形成された読取開始スイッチ112が操作されると、それをトリガとして、情報コードの読み取りが開始され、撮像した画像データは画像処理装置230に入力される(ST11)。
次に、制御装置240において、第1のボケ復元処理および第2のボケ復元処理「を行うように、画像処理装置230に指示が出される。
これに伴い、画像処理装置230においては、ボケ復元フィルタのみを用いて読み取りデータに対する画像の復元処理が行われ(ST12)、この復元画像データは、制御装置240に供給される。また、画像処理装置230においては、エッジ保存型平均フィルタとボケ復元フィルタの両フィルタを用いて読み取りデータに対する画像の復元処理が行われる(ST13,ST14)。この復元画像データは、制御装置240に供給される。
制御装置240においては、第1のボケ復元処理または第2のぼけ復元処理が行われた画像データに対するデコードの可否が判定され(ST15)、第1のボケ復元処理または第2のぼけ復元処理画像のうち、デコード可否判定においてデコード可となったほうが最終結果としてコードデータの出力が行われる(ST16)。
また、ステップST15において、デコード不可の結果しか得られなかった場合、デコード不可(読み取り不可)として、たとえばエラー表示が行われる(ST17)。
【0063】
本実施形態においては、上述した第1および第2のコード読み取り処理が可能であることから、画像の復元処理においてコントラストの向上と共にノイズも増幅することを防止でき、復元画像の判定精度に影響を与えることなく、深度を拡張することができ、精度の高いコード読み取りを実現できる。
【0064】
以下、本実施形態のDEOSの原理、光学系、画像処理装置の構成および機能について具体的に説明する。
【0065】
まず、DEOSの基本原理について説明する。
図15に示すように、被写体の画像fがDEOS光学系Hに入ることにより、g画像が生成される。
これは、次のような式で表される。
【0066】
[数1]
g=H*f
ただし、*はコンボリューションを表す。
【0067】
生成された画像から被写体を求めるためには、次の処理を要する。
【0068】
[数2]
f=H-1*g
【0069】
ここで、Hに関するカーネルサイズと演算係数について説明する。
光学切り替え情報をKPn,KPn−1・・・とする。また、それぞれのH関数をHn,Hn−1、・・・・とする。
各々のスポット像が異なるため、各々のH関数は、次のようになる。
【0070】
【数3】

【0071】
この行列の行数および/または列数の違いをカーネルサイズ、各々の数字を演算係数とする。
ここで、各々のH関数はメモリに格納しておいても構わないし、PSFを物体距離の関数としておき、物体距離によって計算し、H関数を算出することによって任意の物体距離に対して最適なフィルタを作るように設定できるようにしても構わない。また、H関数を物体距離の関数として、物体距離によってH関数を直接求めても構わない。
【0072】
本実施形態においては、図3に示すように、光学系210からの像を撮像素子220で受像して、絞り開放時には画像処理装置230に入力させ、光学系に応じた変換係数を取得して、取得した変換係数をもって撮像素子220からの分散画像信号より分散のない画像信号を生成するように構成している。
【0073】
なお、本実施形態において、分散とは、上述したように、位相板213aを挿入することにより、撮像素子220上ではピントのどこにも合わない画像を形成し、位相板213aによって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)を形成する現象をいい、像が分散してボケ部分を形成する振る舞いから収差と同様の意味合いが含まれる。したがって、本実施形態においては、収差として説明する場合もある。
【0074】
本実施形態においては、DEOSを採用し、高精細な画質を得ることが可能で、しかも、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることが可能となっている。
以下、この特徴について説明する。
【0075】
図16(A)〜(C)は、撮像素子220の受光面でのスポット像を示している。
図16(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、図16(B)が合焦点の場合(Best focus)、図16(C)が焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示している。
図16(A)〜(C)からもわかるように、本実施形態に係る撮像装置200Aにおいては、位相板213aを含む波面形成用光学素子群213によって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)が形成される。
【0076】
このように、本実施形態の撮像装置200Aにおいて形成された1次画像FIMは、深度が非常に深い光束条件にしている。
【0077】
図17(A),(B)は、本実施形態に係る撮像レンズ装置により形成される1次画像の変調伝達関数(MTF:Modulation Transfer Function)について説明するための図であって、図17(A)は撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図で、図17(B)が空間周波数に対するMTF特性を示している。
本実施形態においては、高精細な最終画像は後段の、たとえばデジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor)からなる画像処理装置230の補正処理に任せるため、図17(A),(B)に示すように、1次画像のMTFは本質的に低い値になっている。
【0078】
画像処理装置230は、上述したように、撮像素子220による1次画像FIMを受けて、1次画像の空間周波数におけるMTFをいわゆる持ち上げる所定の補正処理等を施して高精細な最終画像FNLIMを形成する。
【0079】
画像処理装置230のMTF補正処理は、たとえば図18の曲線Aで示すように、本質的に低い値になっている1次画像のMTFを、空間周波数をパラメータとしてエッジ強調、クロマ強調等の後処理にて、図18中曲線Bで示す特性に近づく(達する)ような補正を行う。
図18中曲線Bで示す特性は、たとえば本実施形態のように、波面形成用光学素子を用いずに波面を変形させない場合に得られる特性である。
なお、本実施形態における全ての補正は、空間周波数のパラメータによる。
【0080】
本実施形態においては、図18に示すように、光学的に得られる空間周波数に対するMTF特性曲線Aに対して、最終的に実現したいMTF特性曲線Bを達成するためには、それぞれの空間周波数に対し、図19に示すようにエッジ強調等の強弱を付け、元の画像(1次画像)に対して補正をかける。
たとえば、図18のMTF特性の場合、空間周波数に対するエッジ強調の曲線は、図19に示すようになる。
【0081】
すなわち、空間周波数の所定帯域内における低周波数側および高周波数側でエッジ強調を弱くし、中間周波数領域においてエッジ強調を強くして補正を行うことにより、所望のMTF特性曲線Bを仮想的に実現する。
【0082】
このように、実施形態に係る撮像装置200Aは、基本的に、1次画像を形成する光学系210および撮像素子220と、1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置230からなり、光学系システムの中に、波面成形用の光学素子を新たに設けるか、またはガラス、プラスチックなどのような光学素子の面を波面成形用に成形したものを設けることにより、結像の波面を変形(変調)し、そのような波面をCCDやCMOSセンサからなる撮像素子220の撮像面(受光面)に結像させ、その結像1次画像を、画像処理装置230を通して高精細画像を得る画像形成システムである。
本実施形態では、撮像素子220による1次画像は深度が非常に深い光束条件にしている。そのために、1次画像のMTFは本質的に低い値になっており、そのMTFの補正を画像処理装置230で行う。
【0083】
ここで、本実施形態における撮像装置200Aにおける結像のプロセスを、波動光学的に考察する。
物点の1点から発散された球面波は結像光学系を通過後、収斂波となる。そのとき、結像光学系が理想光学系でなければ収差が発生する。波面は球面でなく複雑な形状となる。幾何光学と波動光学の間を取り持つのが波面光学であり、波面の現象を取り扱う場合に便利である。
結像面における波動光学的MTFを扱うとき、結像光学系の射出瞳位置における波面情報が重要となる。
MTFの計算は結像点における波動光学的強度分布のフーリエ変換で求まる。その波動光学的強度分布は波動光学的振幅分布を2乗して得られるが、その波動光学的振幅分布は射出瞳における瞳関数のフーリエ変換から求まる。
さらにその瞳関数はまさに射出瞳位置における波面情報(波面収差)そのものからであることから、その光学系210を通して波面収差が厳密に数値計算できればMTFが計算できることになる。
【0084】
したがって、所定の手法によって射出瞳位置での波面情報に手を加えれば、任意に結像面におけるMTF値は変更可能である。
本実施形態においても、波面の形状変化を波面形成用光学素子で行うのが主であるが、まさにphase(位相、光線に沿った光路長)に増減を設けて目的の波面形成を行っている。
そして、目的の波面形成を行えば、射出瞳からの射出光束は、図16(A)〜(C)に示す幾何光学的なスポット像からわかるように、光線の密な部分と疎の部分から形成される。
この光束状態のMTFは空間周波数の低いところでは低い値を示し、空間周波数の高いところまでは何とか解像力は維持している特徴を示している。
すなわち、この低いMTF値(または、幾何光学的にはこのようなスポット像の状態)であれば、エリアジングの現象を発生させないことになる。
つまり、ローパスフィルタが必要ないのである。
そして、後段のDSP等からなる画像処理装置230でMTF値を低くしている原因のフレアー的画像を除去すれば良いのである。それによってMTF値は著しく向上する。
【0085】
次に、本実施形態および従来光学系のMTFのレスポンスについて考察する。
【0086】
図20は、一般的な光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンス(応答)を示す図である。
図21は、光波面変調素子を有する本実施形態の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンスを示す図である。
また、図22は、本実施形態に係る撮像装置のデータ復元後のMTFのレスポンスを示す図である。
【0087】
図からもわかるように、光波面変調素子を有する光学系の場合、物体が焦点位置から外れた場合でもMTFのレスポンスの変化が光波面変調素子を挿入してない光学系よりも少なくなる。
この光学系によって結像された画像は、コンボリューションフィルタによる処理を行うことによって、MTFのレスポンスが向上する。
【0088】
図21に示した、位相板を持つ光学系のOTFの絶対値(MTF)はナイキスト周波数において0.1以上であることが好ましい。
なぜなら、図22に示した復元後のOTFを達成するためには復元フィルタでゲインを上げることになるが、センサのノイズも同時に上げることになる。そのため、ナイキスト周波数付近の高周波ではできるたけゲインを上げずに復元を行うことが好ましい。
通常の光学系の場合、ナイキスト周波数でのMTFが0.1以上あれば解像する。
したがって、復元前のMTFが0.1以上あれば復元フィルタでナイキスト周波数でのゲインを上げずに済む。復元前のMTFが0.1未満であると、復元画像がノイズの影響を大きく受けた画像になるため好ましくない。
【0089】
次に、画像処理装置230のボケ画像復元処理について説明する。
図23は、一般的な光学系のベストフォーカス(Best Forcus)位置でのMTF(Modulation Transfer Function:振幅伝達関数)特性図である。
図24は、本実施形態の光学系のMTF特性を示す図である。
【0090】
本実施形態の光学系210を通過して撮像素子220で得られた撮像画像はボケているため、中域〜高域にかけてMTFが低下している。このMTFを演算によって上昇させる。レンズ単体の振幅特性であるMTFに対し、画像処理を含めたトータルの振幅特性はSFR(Spatial Frequency Response)と呼ばれている。
ボケ画像を発生させるPSFの周波数特性がMTFであるので、これから所望のSFR特性まで引き上げるゲイン特性に設計してできたものがボケ復元フィルタである。どの程度のゲインにするかはノイズや偽像とのバランスで決めていく。
【0091】
このボケ復元フィルタを元画像にデジタルフィルタリングする方法は、画像をフーリエ変換し周波数領域でフィルタと周波数毎に積を取る方法と、空間領域でコンボリューション(Convolution)演算(畳み込み演算)を行なう方法がある。ここでは後者での実現方法を説明する。コンボリューション演算は下記の式で表される。
【0092】
【数4】

【0093】
ただし、fはフィルタ(filter)カーネルを示している(ここでは計算を容易にするために180度回転済みのものを使用している)。
また、Aは元画像、Bはフィルタリングされた画像(ボケ復元画像)を示している。
この式から分かる通り、fを画像に重ねて各タップ同士の積和した結果をその重ねた中心座標の値とすることである。
【0094】
次に、図25(A)〜(C)に関連付けて3*3のフィルタを例に挙げ具体的に説明する。
図25(A)の復元フィルタ(既に180度回転済み)を図25(B)に示すボケ画像のA(i,j)上にフィルタの中心f(0,0)を重ね、各タップ同士の積をとりこの9個の総和値を図25(C)に示すボケ復元画像のB(i,j)とする。
(i,j)を画像全体に渡ってスキャンすると新たなB画像が生成される。これがデジタルフィルタである。ここではフィルタがボケ復元目的であるので、この処理を行なうことでボケ復元処理を実施することができる。
【0095】
次に、画像処理装置230の構成および処理について説明する。
図26は、本実施形態に係る画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【0096】
画像処理装置230は、図26に示すように、生(RAW)バッファメモリ231、二次元コンボリューション演算部232、記憶手段としてのカーネルデータ格納ROM233、およびコンボリューション制御部234を有する。
【0097】
コンボリューション制御部234は、コンボリューション処理のオンオフ、画面サイズ、カーネルデータの入れ替え等の制御を行い、制御装置240により制御される。
【0098】
また、カーネルデータ格納ROM233には、図27に示すように予め用意されたそれぞれの光学系のPSFにより算出されたコンボリューション用のカーネルデータが格納されており、制御装置240によって予め設定された距離情報に応じてフィルタ処理に用いるカーネルデータを、コンボリューション制御部234を通じて選択的に制御する。
【0099】
また、図27の例では、カーネルデータAは距離情報が125mm、カーネルデータBは距離情報が100mm、カーネルデータCは距離情報が88mmに対応したデータとなっている。
【0100】
図28は、制御装置240の距離情報により切り替え処理のフローチャートである。
まず、距離情報が設定されコンボリューション制御部234に供給される(ST101)。
コンボリューション制御部234においては、供給された情報から、カーネルサイズ、数値演算係数がレジスタにセットされる(ST102)。
そして、撮像素子220で撮像され、二次元コンボリューション演算部232に入力された画像データに対して、レジスタに格納されたデータに基づいてコンボリューション演算が行われ、演算され変換されたデータが制御装置240に転送される(ST103)。
【0101】
以下に画像処理装置230の信号処理部とカーネルデータ格納ROMについてさらに具体的な例について説明する。
【0102】
図29は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第1の構成例を示す図である。
図29の例は取得情報に応じたフィルタカーネルを予め用意した場合のブロック図である。
【0103】
距離情報を設定し、コンボリューション制御部234を通じてカーネルデータを選択制御する。二次元コンボリューション演算部232においては、カーネルデータを用いてコンボリューション処理を施す。
【0104】
図30は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第2の構成例を示す図である。
図30の例は、信号処理部の最初にノイズ低減フィルタ処理のステップを有し、フィルタカーネルデータとして距離情報に応じたノイズ低減フィルタ処理ST1を予め用意した場合のブロック図である。
【0105】
距離情報を設定し、コンボリューション制御部234を通じてカーネルデータを選択制御する。
二次元コンボリューション演算部232においては、前記ノイズ低減フィルタ処理ST1を施した後、カラーコンバージョン処理ST2によって色空間を変換、その後カーネルデータを用いてコンボリューション処理(OTF復元フィルタ処理)ST3を施す。
再度ノイズ低減フィルタ処理ST4を行い、カラーコンバージョン処理ST5によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、再度のノイズ低減フィルタ処理ST4は省略することも可能である。
【0106】
図31は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第3の構成例を示す図である。
図31の例は、距離情報に応じたOTF復元フィルタを予め用意した場合のブロック図である。
【0107】
距離情報を設定し、コンボリューション制御部234を通じてカーネルデータを選択制御する。
二次元コンボリューション演算部232は、ノイズ低減フィルタ処理ST11、カラーコンバージョン処理ST12の後に、前記OTF復元フィルタを用いてコンボリューション処理ST13を施す。
再度ノイズ低減フィルタ処理ST14を行い、カラーコンバージョン処理ST15によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、ノイズ低減フィルタ処理ST11、ST14は、いずれか一方のみでもよい。
【0108】
図32は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第4の構成例を示す図である。なお、簡単化のためにAFE等は省略している。
図32の例は、ノイズ低減フィルタ処理のステップを有し、フィルタカーネルデータとして距離情報に応じたノイズ低減フィルタを予め用意した場合のブロック図である。
なお、再度のノイズ低減フィルタ処理ST24は省略することも可能である。
情報コードの種類(特性)を取得し、コンボリューション制御部234を通じてカーネルデータを選択制御する。
二次元コンボリューション演算部232においては、ノイズ低減フィルタ処理ST21を施した後、カラーコンバージョン処理ST22によって色空間を変換、その後カーネルデータを用いてコンボリューション処理ST23を施す。
再度、距離情報に応じたノイズ低減フィルタ処理ST24を行い、カラーコンバージョン処理ST25によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、ノイズ低減フィルタ処理ST21は省略することも可能である。
【0109】
以上は距離情報に応じて二次元コンボリューション演算部232においてフィルタ処理を行う例を説明したが、たとえば情報コードおよび被写体距離情報により、より適した演算係数の抽出、あるいは演算を行うことが可能となる。
【0110】
以上説明したように、本実施形態によれば、1次画像を形成する光波面変調素子を含む光学系210および撮像素子220と、撮像素子220による画像データに対してフィルタリングを行う画像処理装置230と、を有し、画像処理装置230は、ぼけ復元フィルタ単独でフィルタリングを行う第1のぼけ復元処理機能と、ぼけ復元フィルタとエッジ保存型平均フィルタとの両フィルタによるフィルタリングを行う第2のぼけ復元処理機能と、を含むことから、画像の復元処理においてコントラストの向上と共にノイズも増幅することを防止でき、復元画像の判定精度に影響を与えることなく、深度を拡張することができ、精度の高いコード読み取りを実現でき、ひいてはデコードの信頼性の向上を図ることができる。
【0111】
また、本実施形態においては、結像レンズ212による撮像素子220の受光面への結像の波面を変形させる波面形成用光学素子を有する撮像レンズ系と、撮像素子220による1次画像FIMを受けて、1次画像の空間周波数におけるMTFをいわゆる持ち上げる所定の補正処理等を施して高精細な最終画像FNLIMを形成する画像処理装置230とを有することから、高精細な画質を得ることが可能となるという利点がある。
また、光学系210の構成を簡単化でき、製造が容易となり、コスト低減を図ることができる。
【0112】
ところで、CCDやCMOSセンサを撮像素子として用いた場合、画素ピッチから決まる解像力限界が存在し、光学系の解像力がその限界解像力以上であるとエリアジングのような現象が発生し、最終画像に悪影響を及ぼすことは周知の事実である。
画質向上のため、可能な限りコントラストを上げることが望ましいが、そのことは高性能なレンズ系を必要とする。
【0113】
しかし、上述したように、CCDやCMOSセンサを撮像素子として用いた場合、エリアジングが発生する。
現在、エリアジングの発生を避けるため、撮像レンズ装置では、一軸結晶系からなるローパスフィルタを併用し、エリアジングの現象の発生を避けている。
このようにローパスフィルタを併用することは、原理的に正しいが、ローパスフィルタそのものが結晶でできているため、高価であり、管理が大変である。また、光学系に使用することは光学系をより複雑にしているという不利益がある。
【0114】
以上のように、時代の趨勢でますます高精細の画質が求められているにもかかわらず、高精細な画像を形成するためには、従来の撮像レンズ装置では光学系を複雑にしなければならない。複雑にすれば、製造が困難になったりし、また高価なローパスフィルタを利用したりするとコストアップにつながる。
しかし、本実施形態によれば、ローパスフィルタを用いなくとも、エリアジングの現象の発生を避けることができ、高精細な画質を得ることができる。
【0115】
なお、本実施形態において、光学系の波面形成用光学素子を絞りより物体側レンズよりに配置した例を示したが、絞りと同一あるいは絞りより結像レンズ側に配置しても前記と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施形態に係る情報コード読取装置の一例を示す外観図である。
【図2】情報コードの例を示す図である。
【図3】図1の情報コード読取装置に適用される撮像装置の構成例を示すブロックである。
【図4】本実施形態に係る光波面変調素子を含む光学系を有する撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】フィルタゲインFGとMTFとの関係を示す図であって、フィルタゲインが高い方の例を示す図である。
【図6】フィルタゲインFGとMTFとの関係を示す図であって、フィルタゲインが低い方の例を示す図である。
【図7】エッジ保存平滑化方法の一例について説明するための図であって、注目画素と近傍5×5の場合の領域の区切りの一例を示す図である。
【図8】注目画素と近傍3×3の場合の領域の区切りの一例をあげて示す図である。
【図9】3×3のエッジ保存型平均フィルタを用いた具体例を説明するための図である。
【図10】3×3のエッジ保存型平均フィルタを用いた他の具体例を説明するための図である。
【図11】5×5のエッジ保存型平均フィルタを用いた具体例を説明するための図である。
【図12】エッジ保存型平均フィルタを用いたエッジ保存平滑化方法を採用しない場合のデメリットを撮影被写体距離の違いによって説明するための図である。
【図13】本実施形態に係る第1のコード読み取り処理を説明するためのフローチャートである。
【図14】本実施形態に係る第2のコード読み取り処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】DEOSの原理を説明するための図である。
【図16】本実施形態に係る撮像素子の受光面でのスポット像を示す図であって、(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、(B)が合焦点の場合(Best focus)、(C)が焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示す図である。
【図17】本実施形態に係る撮像素子により形成される1次画像のMTFについて説明するための図であって、(A)は撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図で、(B)が空間周波数に対するMTF特性を示している。
【図18】本実施形態に係る画像処理装置におけるMTF補正処理を説明するための図である。
【図19】本実施形態に係る画像処理装置におけるMTF補正処理を具体的に説明するための図である。
【図20】一般的な光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンス(応答)を示す図である。
【図21】光波面変調素子を有する本実施形態の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンスを示す図である。
【図22】本実施形態に係る撮像装置のデータ復元後のMTFのレスポンスを示す図である。
【図23】一般的な光学系のベストフォーカス(Best Forcus)位置でのMTF(Modulation Transfer Function 振幅伝達関数)特性図である。
【図24】本実施形態の光学系のMTF特性を示す図である。
【図25】本実施形態におけるボケ復元処理の説明図である。
【図26】本実施形態に係る画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図27】カーネルデータROMの格納データの一例を示す図である。
【図28】距離情報に応じた画像処理の概要を示すフローチャートである。
【図29】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第1の構成例を示す図である。
【図30】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第2の構成例を示す図である。
【図31】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第3の構成例を示す図である。
【図32】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第4の構成例を示す図である。
【図33】一般的な撮像レンズ装置の構成および光束状態を模式的に示す図である。
【図34】図33の撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図であって、(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、(B)が合焦点の場合(Best focus)、(C)が焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
100・・・情報コード読取装置、121・・・情報コード、200・・・撮像装置、210・・・光学系、220・・・撮像素子、230・・・画像処理装置、240・・・制御装置、211・・・物体側レンズ、212・・・結像レンズ、213・・・波面形成用光学素子、213a・・・位相板(光波面変調素子)、232・・・二次元コンボリューション演算部、233・・・カーネルデータROM、234・・・コンボリューション制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像のぼけ復元フィルタと、
エッジ保存型平均フィルタと、
画像データに対してフィルタリングを行う画像処理装置と、を有し、
前記画像処理装置は、
前記ぼけ復元フィルタ単独で前記フィルタリングを行う第1のぼけ復元処理機能と、
前記ぼけ復元フィルタと前記エッジ保存型平均フィルタとの両フィルタによる前記フィルタリングを行う第2のぼけ復元処理機能と、を含む
画像復元装置。
【請求項2】
前記第2のぼけ復元処理機能におけるぼけ復元フィルタのゲインは、前記第1のぼけ復元処理機能におけるぼけ復元フィルタのゲインより小さい
請求項1に記載の画像復元装置。
【請求項3】
前記エッジ保存型平均フィルタにおいて、処理対象画素の周辺領域を設定し、当該周辺領域を分割して分散演算を行う場合、前記分割の方向が上下、左右、斜めの方向のみならず、これらの方向の間の方向を想定した分割も行い分散演算を行う
請求項1または2に記載の画像復元装置。
【請求項4】
光学系と、
前記光学系を通した被写体である情報コードの像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子により撮像された画像の復元処理を行う画像復元装置と、を有し、
前記画像復元装置は、
画像のぼけ復元フィルタと、
エッジ保存型平均フィルタと、
画像データに対してフィルタリングを行う画像処理装置と、を有し、
前記画像処理装置は、
前記ぼけ復元フィルタ単独で前記フィルタリングを行う第1のぼけ復元処理機能と、
前記ぼけ復元フィルタと前記エッジ保存型平均フィルタとの両フィルタによる前記フィルタリングを行う第2のぼけ復元処理機能と、を含む
情報コード読取装置。
【請求項5】
前記第2のぼけ復元処理機能におけるぼけ復元フィルタのゲインは、前記第1のぼけ復元処理機能におけるぼけ復元フィルタのゲインより小さい
請求項4に記載の情報コード読取装置。
【請求項6】
前記エッジ保存型平均フィルタにおいて、処理対象画素の周辺領域を設定し、当該周辺領域を分割して分散演算を行う場合、前記分割の方向が上下、左右、斜めの方向のみならず、これらの方向の間の方向を想定した分割も行い分散演算を行う
請求項4または5に記載の情報コード読取装置。
【請求項7】
前記第1のボケ復元処理または第2のぼけ復元処理が行われた前記画像データに対するデコードの可否を判定し、前記第1のボケ復元処理または第2のぼけ復元処理画像のうち、前記デコード可否判定においてデコード可となったほうを最終結果とする判定手段を有する
請求項4から6のいずれか一に記載の情報コード読取装置。
【請求項8】
前記光学系は、
光学的伝達関数(OTF)を変調する光波面変調機能を含む
請求項4から7のいずれか一に記載の情報コード読取装置。
【請求項9】
前記光学系は、
光波面変調素子、または、当該光学系を形成する光学素子に形成された光波面変調面を含む
請求項8に記載の情報コード読取装置。
【請求項10】
画像のぼけ復元フィルタと、エッジ保存型平均フィルタとを用いて画像データに対してフィルタリングを行って画像を復元する画像復元方法であって、
前記ぼけ復元フィルタ単独で前記フィルタリングを行う第1のぼけ復元処理、または、前記ぼけ復元フィルタと前記エッジ保存型平均フィルタとの両フィルタによる前記フィルタリングを行う第2のぼけ復元処理が行われた前記画像データに対するデコードの可否を判定し、
前記第1のボケ復元処理または第2のぼけ復元処理画像のうち、前記デコード可否判定においてデコード可となったほうを最終結果として採用する
画像復元方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2009−32105(P2009−32105A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196528(P2007−196528)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】