説明

画像撮影・転送方法、画像撮影・転送プログラム、画像撮影・転送プログラムを記録した記録媒体、撮影機能付き携帯型無線通信機器

【課題】撮影機能付き携帯型無線通信機器どうしを使って、見ず知らずの人に対しても安心して自分の写真の撮影を頼んで、該撮影してもらった自分の写真を入手できるようにする。
【解決手段】画像撮影・転送プログラムを互いに搭載した2台の撮影機能付き携帯型無線通信機器A,Bを使用する。機器Aで画像を撮影して機器Bに転送する場合は、機器Aは自己の撮影機能を使って画像を撮影し、該撮影で得られた画像データを無線送信し、該送信後に該画像データを自己の機器Aから削除する。機器Bは機器Aから送信された画像データを直接または中継機器を介して無線受信し自己の機器Bに保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は撮影機能付き携帯型無線通信機器(カメラ付き携帯電話端末、カメラ付きスマートフォン(多機能携帯電話端末)、通信機能付きデジタルカメラ等)で撮影した画像(静止画像・動画像)を別の撮影機能付き携帯型無線通信機器に転送するための方法および該方法で使用される画像撮影・転送プログラム等に関し、見ず知らずの人に対しても安心して自分の写真の撮影を頼むことができ、該撮影してもらった自分の写真を入手できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一人で旅行したときに自分自身の写真を撮る場合やグループで旅行したときにグループ全員の集合写真を撮る場合などは、自分やグループ内の誰かの撮影機器を見ず知らずの人に渡して撮ってもらう必要がある。ところが携帯電話やスマートフォンには多数の個人情報が入っているため、自分の撮影機器を見ず知らずの人に渡すのは危険である。したがって自分の撮影機器を人に渡さずに自分を写した写真を入手できれば便利である。下記特許文献1の図11には見ず知らずの人に、当該見ず知らずの人の撮影機器で自分を撮影してもらって、撮影した画像データを自分の撮影機器に送信してもらうことにより自分の写真を入手することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−200621号公報(図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図11に記載の方法によれば、見ず知らずの人に自分の撮影機器を渡さなくて済むので、当該撮影機器に入った個人情報が漏れる等の危険を回避できる。ところがこの方法によると、見ず知らずの人の撮影機器に自分の写真が残ってしまうおそれがあり、安心して撮影を頼むことができない問題がある。
【0005】
この発明は上述の問題点を解決するもので、見ず知らずの人に、その人の撮影機器で自分を撮影してもらって、撮影した画像データを自分の撮影機器に送信してもらう場合であっても、その人に安心して撮影を頼めるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の画像撮影・転送方法は、画像撮影・転送プログラムを互いに搭載した2台の撮影機能付き携帯型無線通信機器の相互間で、該画像撮影・転送プログラムを相互に使用して、一方の通信機器で撮影した画像データを他方の通信機器に無線転送する方法であって、前記2台の通信機器に搭載される画像撮影・転送プログラムは、該画像撮影・転送プログラムが搭載された自己の通信機器の撮影機能を使って画像を撮影し、該撮影で得られた画像データを無線送信し、該送信後に該画像データを自己の通信機器から削除する撮影・送信・削除モードと、該画像撮影・転送プログラムが搭載された別の通信機器から送信された画像データを直接または中継機器を介して無線受信し自己の通信機器に保存する受信・保存モードの両機能を自己の通信機器に実行させる機能を有し、該方法は、前記画像撮影・転送プログラムを2台の通信機器に搭載する工程と、該2台の通信機器の前記画像撮影・転送プログラムを起動する工程と、一方の通信機器を前記撮影・送信・削除モードで使用して、該一方の通信機器で画像を撮影し、該撮影で得られた画像データを無線送信し、該送信後に該画像データを該一方の通信機器から削除する工程と、
他方の通信機器を前記受信・保存モードで使用して、前記無線送信された画像データを直接または中継機器を介して該他方の通信機器で無線受信し、該受信した画像データを該他方の通信機器に保存する工程とを具備してなるものである。
【0007】
この発明によれば、撮影機能付き携帯型無線通信機器に撮影・送信・削除モードと受信・保存モードの両機能を実行させる画像撮影・転送プログラムを2台の撮影機能付き携帯型無線通信機器に搭載して、一方の通信機器を前記撮影・送信・削除モードで使用して、該一方の通信機器で画像を撮影し、該撮影で得られた画像データを無線送信し、該送信後に該画像データを該一方の通信機器から削除し、他方の通信機器を前記受信・保存モードで使用して、前記無線送信された画像データを直接または中継機器を介して該他方の通信機器で無線受信し、該受信した画像データを該他方の通信機器に保存するようにしたので、この画像撮影・転送プログラムの撮影・送信・削除モードで撮影した画像は必ず削除されることになる。したがって、見ず知らずの人に、その人の通信機器で自分を撮影してもらって、撮影した画像データを自分の通信機器に送信してもらう場合であっても、その人がこの画像撮影・転送プログラムを使用すれば、その人の通信機器に自分の写真が残るのを防止することができ、安心して撮影を依頼することができる。
【0008】
この発明において、前記画像撮影・転送プログラムは、該画像撮影・転送プログラムの相互間で通信を行う機能と、該通信が確立した後に、通信相手の通信機器に搭載した画像撮影・転送プログラムが自己の通信機器に搭載した画像撮影・転送プログラムが指定する条件に適合するプログラムであるかどうかを確認(認証)し、その確認結果を自己の通信機器に視覚表示または聴覚表示する正式仕様確認機能をさらに有することができる。これによれば、この発明による画像撮影・転送プログラムと通信可能であるが、撮影した画像データが送信後も撮影側の通信機器に残るように細工した不正な画像撮影プログラムを使って不正に撮影されるのを防止することができる。
【0009】
この発明において、前記画像撮影・転送プログラムは、該画像撮影・転送プログラムの相互間で通信を行う機能と、該通信が確立したときに、該通信が確立したことをユーザに認知させる視覚表示または聴覚表示を自己の通信機器に行うとともに前記撮影・送信・削除モードによる撮影を許可する機能をさらに有することができる。これによれば、画像撮影・転送プログラムの相互間で通信が確立したことをユーザは撮影に先立ち知ることができるので、この発明による画像撮影・転送プログラム以外の画像撮影プログラムを使って不正に撮影されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】2台の撮影機能付き携帯型無線通信機器間で直接この発明の画像撮影・転送方法を実施する状況を示すブロック図である。
【図2】この発明による画像撮影・転送方法の実施の形態1を示すフローチャートである。
【図3】この発明による画像撮影・転送方法の実施の形態2を示すフローチャートである。
【図4A】この発明による画像撮影・転送方法の実施の形態3を示すフローチャートである。
【図4B】図4Aの続きを示すフローチャートである。
【図5A】この発明による画像撮影・転送方法の実施の形態4を示すフローチャートである。
【図5B】図5Aの続きを示すフローチャートである。
【図6】2台の撮影機能付き携帯型無線通信機器間で中継機器(サーバ)を介してこの発明の画像撮影・転送方法を実施する状況を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施の形態を説明する。図1はこの発明による画像転送機能を具えた2台のスマートフォン等の撮影機能付き通信機器(以下「機器」)A,Bどうしで直接この発明の画像撮影・転送方法を実施する状況を示す。機器A,Bはこの発明に関し同じ機能を有する。機器A,Bの共通する部分には、共通の数字に“A”,“B”の記号を付けた符号を用いる。
【0012】
機器Aはプログラム記憶部14A、撮影機能部16A、一時記憶部18A、保存記録部20A、表示・入力操作部22A、通信機能部24A、音声入出力・処理部26Aを有し、これら各部はCPU28Aによって制御される。機器Bも同様に構成されている。機器A,Bはユーザがインターネットやパソコンからダウンロードしたソフトウェア(アプリケーションプログラム)をインストールしたり、ユーザが自分でソフトウェアをプログラムしてインストールできる機能を有し、インストールしたプログラムはプログラム記憶部14A,14Bに記憶される。この発明による画像撮影・転送機能を実現する画像撮影アプリケーションプログラム(以下「画像撮影・転送プログラム」)も同一のものがインターネットやパソコンからダウンロードしてプログラム記憶部14A,14Bにインストールされている。この発明によらない通常の(画像転送機能を有しない)画像撮影機能を実現する画像撮影アプリケーションプログラムも別途インストールすることができ、ユーザによるアプリケーションプログラムの起動操作によりいずれかの画像撮影アプリケーションプログラムを択一的に選択して起動することができる。画像撮影・転送プログラムでは、機器A,Bを撮影・送信・削除モードまたは受信・保存モードに切り換えて使用する。
【0013】
撮影機能部16A,16Bは光学系、撮像素子、フラッシュライト、撮像素子からのアナログ撮像信号をディジタル信号に変換するA/D変換器等を具え、画像(静止画像、動画像)を撮影して画像データに変換する。一時記憶部18A,18BはDRAM等の揮発性メモリで構成され、画像データを一時的に記憶する。保存記録部20A,20Bはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成され、この発明によらない通常の画像撮影アプリケーションプログラムを使用して撮影したときに、ユーザの撮影操作に続く保存操作で(あるいはユーザの撮影操作に続いて自動で)、一時記憶部18A,18Bに記憶されている画像データが転送されて保存記録する。この発明による画像撮影・転送プログラムを使用して、撮影・送信・削除モードで撮影したときは、一時記憶部18A,18Bに記憶されている画像データの保存記録部20A,20Bへの転送は一切禁止(不許可)とされる。したがって撮影・送信・削除モードでは一時記憶部18A,18Bにたとえ画像データが残っていても機器A,Bの電源がなくなればこの画像データは自然に消失する。また撮影・送信・削除モードでは電源が強制的にオフされたときや画像撮影・転送プログラムが強制終了されたときも一時記憶部18A,18Bに残っている画像データは削除される。この発明による画像撮影・転送プログラムを使用して、受信・保存モードで画像データを受信するときは、受信した画像データは一時記憶部18A,18Bに一旦記憶され、ユーザの保存操作で(あるいは自動で)保存記録部20A,20Bに転送して保存記録される。
【0014】
表示・入力操作部22A,22Bは発光型液晶等のタッチパネルディスプレイで構成され、機器A,Bの各種機能を実現するための視覚表示および入力操作が行われる。通信機能部24A,24Bは通話、電子メール、インターネット接続機能のほか、この発明による画像転送機能を実現する。この発明による画像転送機能は、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信を利用したサーバ非経由の機器A,B間の直接通信で実現するほか、インターネットを利用したサーバ経由等の中継機器を介した通信で実現することもできる。音声入出力・処理部26A,26Bはマイク、スピーカおよびマイクで収音した音声信号の処理、スピーカで再生する音声信号の処理を行う。
【0015】
以下機器Aを撮影・送信・削除モード、機器Bを受信・保存モードで使用し、機器Aで撮影した画像を機器Bに転送する場合について説明する。これとは逆に、機器Bを受信・保存モード、機器Aを撮影・送信・削除モードで使用し、機器Bで撮影した画像を機器Aに転送することもできる。なお機器A,Bは同一機種である必要はない。また機器A,Bにインストールされている画像撮影・転送プログラムは、同一のプログラムかまたは互いの画像撮影・転送プログラムが指定する条件に適合するプログラム(例えば同一ブランドでバージョン違いのプログラム、正式仕様と認定された別ブランドの互換プログラム等)であればよい。
【0016】
《実施の形態1》
画像撮影・転送プログラムを使用して機器Aで画像を撮影して機器Bに転送する場合の操作と該操作に応じた画像撮影・転送プログラムの動作内容の実施の形態を図2を参照して説明する。なお図2以降のプログラムはいずれもイベントドリブン形式で記述している。この発明による画像撮影・転送機能を利用して見ず知らずの人に自分の写真を撮って転送してもらうためには、この発明による画像撮影・転送プログラムがインストールされている撮影機能付き通信機器を持っている人を探す必要がある。そのためには、例えばこの発明による画像撮影・転送プログラムがインストールされていることを示すロゴマークが入ったシールを撮影機能付き通信機器に互いに貼っておくことにより、互いに見分けることができる。
【0017】
上記のようにシールで目印を付けた場合に、観光スポットなどで、この目印シールが貼られている機器Aを持った人(以下「撮影者」)が、同じ目印シールが貼られている機器Bを持った一人旅風の人で誰かに写真を撮ってもらいたそうな様子の人(以下「被写体者」)を見つけたとする。撮影者が被写体者に「写真を撮りましょうか?」と声をかける。これに応答して被写体者が「お願いします」と返事をすると、両者は準備に入る。はじめに両機器A,Bのメニュー画面から画像撮影・転送プログラムをそれぞれ起動操作する(Sa1,Sb1)。これにより両機器A,Bの画像撮影・転送プログラムがそれぞれ起動される(Sa2,Sb2)。該プログラムが起動されると、はじめに両機器A,B間でブルートゥース等の近距離無線通信を利用して両機器A,Bの画像撮影・転送プログラムどうしで接続を確立するための処理が実行される(Sa3,Sb3)。両機器A,Bの画像撮影・転送プログラムどうしで近距離無線通信接続が確立すると、次いで両機器A,Bのディスプレイにシャッターボタンが表示されて(Sa4,Sb4)、撮影が許可された状態となる。撮像素子で撮られる映像もリアルタイムでディスプレイに表示される。併せて画像の受信を許可する状態となって(Sa5,Sb5)、休止状態となる(Sa6,Sb6)。ディスプレイにシャッターボタンが表示されることで両機器A,Bのユーザは画像撮影・転送プログラムどうしの接続が確立したことを認知することができる。この状態では機器A,Bは受信・保存モードとなっている。
【0018】
機器Aでシャッターボタンが押されると(Sa7)、機器Aは受信許可が解除されて、受信・保存モードから撮影・送信・削除モードに切り換えられる。このとき機器Bは何も操作しなければ受信を許可したままとなるので、受信・保存モードのままである。機器Aはシャッターボタンの操作を検知して(Sa8)、撮影処理を実行する(Sa9)。すなわちシャッターボタンが押される前は機器Aは撮像素子からの出力信号をリアルタイムで処理し、一時記憶部18Aに順次更新して記憶し、該順次更新されている一時記憶部18Aの画像データをライブビューファインダーとしてディスプレイに表示しているが、シャッターボタンが押されると、一時記憶部18Aの更新が停止され、そのときの画像データ(静止画像データ)が一時記憶部18Aに記憶され続け(Sa10)、その画像がディスプレイに表示され続けた状態となる。次いで機器Aは一時記憶部18Aに記憶している画像データを自動的に機器Bに向けて送信する(Sa11)。機器Bは画像データを受信し(Sb7)、受信した画像データを一時記憶部18Bを経て自動的に(または保存ボタンを表示して被写体者が該保存ボタンを押すことにより)保存記録部20Bに保存記録し(Sb8)、休止状態となる(Sb9)。機器Aは画像データの送信に成功すると(あるいは成功・不成功の確認を行うことなく画像データの送信を完了すると)(Sa12)、一時記憶部18Aに記憶している画像データを自動的に削除(消去)する(Sa13)。一時記憶部18Aに記憶された画像データを保存記録部20Bに保存記録することはプログラムによって一切禁止(不許可)とされている。したがって機器Aには保存ボタンも表示されない。これにより撮影者の機器Aに被写体者の画像が残るのが阻止される。画像データの送信が完了して該画像データが削除されると(Sa13)、休止状態となる(Sa14)。この状態ではシャッターボタンを押して(Sa7)取り直すか、あるいは画像撮影・転送プログラムの終了操作(Sa15,Sb10)をすることができる。両機器A,Bで画像撮影・転送プログラムの終了操作をすると、該操作がそれぞれ検知され(Sa16,Sb11)、画像撮影・転送プログラムはそれぞれ終了し(Sa17,Sb12)、休止状態となる(Sa18,Sb13)。
【0019】
なお上記の説明では機器Aは撮影後に画像データを自動的に送信するようにしたが、自動的に送信するのに代えて、ディスプレイに送信/取り直しボタンを表示して送信または取り直しの準備ができたことを表示することもできる。このとき撮影者が送信ボタンを押すと送信を実行する。送信ボタンを押すとまたは実際に送信が完了すると送信/取り直しボタンの表示は消される。送信/取り直しボタンが表示されてから所定時間(両者が写り具合を確認できる程度の短い時間)送信ボタンを押さないままでいると、一時記憶部18Aに記憶している画像データは自動的に削除される。これにより送信されない画像データが機器Aに残るのが防止される。取り直しボタンを押した場合は一時記憶部18Aに記憶している画像データは削除され、再びシャッターボタンを押せる状態(ステップSa6で休止した状態)に戻る。
【0020】
《実施の形態2》
実施の形態1(図2)の動作では機器A,Bの画像撮影・転送プログラムを起動後に、近距離無線通信接続が確立したら(図2のステップSa3,Sb3)、すぐに撮影を許可し(Sa4,Sb4)、また画像の受信を許可する状態(Sa5,Sb5)としたが、撮影・画像の受信を許可する前に、撮影側の機器Aで正式仕様の画像撮影・転送プログラム(機器B側で起動した画像撮影・転送プログラムと同一ブランドのプログラム、正式仕様と認定された別ブランドの互換プログラム等)を起動したかどうかを被写体者が確認できるようにする工程を画像撮影・転送プログラムに追加することもできる。このようにすれば機器Aで撮影した画像データが送信後も機器Aに残るように細工した不正な画像撮影・転送プログラムが機器Aで使用されるのを防止することができる。この確認工程を追加した実施の形態を図3に示す。図2と共通する工程には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0021】
図3において、近距離無線接続が確立すると(Sa3,Sb3)、機器A,Bのディスプレイに撮影準備ボタンと正式仕様確認ボタンがそれぞれ表示され(Sa21,Sb21)、ともに休止状態となる(Sa22,Sb22)。ディスプレイに撮影準備ボタンと正式仕様確認ボタンが表示されることで両機器A,Bのユーザは画像撮影・転送プログラムどうしの接続が確立したことを認知することができる。この状態で撮影者は機器Aの撮影準備ボタンを押し(Sa23)、被写体者は機器Bの正式仕様確認ボタンを押す(Sb23)。機器Aは撮影準備ボタンが押されたことを検知し(Sa24)、撮影・送信・削除モードとなり、乱数(任意の数列でもよい)の受信を許可し(Sa25)、休止状態となる(Sa26)。機器Bは正式仕様確認ボタンが押されたことを検知し(Sb24)、受信・保存モードとなり、乱数を生成する(Sb25)。機器Bは生成した乱数を、確立した近距離無線通信を使って機器Aに送信し(Sb26)、次いでメッセージダイジェスト(ハッシュ値)の受信を許可し(Sb27)、休止状態となる(Sb28)。機器Aは前記乱数を受信し(Sa27)、受信した乱数に秘密の共通鍵を連結してメッセージダイジェストXを生成し(Sa28)、近距離無線通信を使って機器Bに送信し(Sa29)、シャッターボタンを表示して(Sa30)、休止状態となる(Sa31)。
【0022】
機器BはメッセージダイジェストXを受信し(Sb29)、機器Bで生成した前記乱数に秘密の共通鍵(機器Aの画像撮影・転送プログラムが正式仕様であれば、機器A,Bの画像撮影・転送プログラムは同一の共通鍵である)を連結してメッセージダイジェストYを生成する(Sb30)。次いで機器BはメッセージダイジェストXとメッセージダイジェストYが等しいかどうかを判断し(Sb31)、等しいと判断した場合は機器Aで起動した画像撮影・転送プログラムが正式仕様である旨を表示し(Sb32)、等しくないと判断した場合は機器Aで起動した画像撮影・転送プログラムが正式仕様でない旨を表示し(Sb33)、併せて該判断結果の表示を消去するボタンを表示して(Sb34)、休止状態となる(Sb35)。被写体者は判断結果の表示を見て、機器Aで正式仕様の画像撮影・転送プログラムが起動されているかどうかを知ることができる。なお秘密の共通鍵は、例えば機器A,Bに搭載されている画像撮影・転送プログラムの全体あるいは一部をそのまま利用して、あるいは該画像撮影・転送プログラムの全体あるいは一部から導かれる情報を利用して生成するように該画像撮影・転送プログラムに仕組んでおくこともできる。このようにすると、正規の画像撮影・転送プログラムを解読してその一部(特に撮影・送信・削除モードで撮影した画像が必ず削除されるようにする処理部分)を改変して、撮影・送信・削除モードで撮影した画像データが送信後も撮影側の通信機器に残るように細工した不正な画像撮影・転送プログラムが作られても、正しい共通鍵は生成されなくなるので、ステップ31bにおいて正式仕様でないと判断される。したがって不正撮影を回避することができる(後述する実施の形態3,4においても同じ)。
【0023】
次いで被写体者が機器Bの判断結果の表示を消去するボタンを押すと(Sb36)、機器Bは該消去ボタンが押されたことを検知し(Sb37)、該判断結果の表示を消去して(Sb38)、休止状態となる(Sb39)。以後機器A側は図2のステップSa7以降の動作に移行し、機器B側は図2のステップSb5以降の動作に移行する。すなわち機器Aで起動されている画像撮影・転送プログラムが正式仕様であると判断された場合(図3のSb32)は、被写体者は撮影者に安心して撮影を任せることができるので、撮影者に引き続き撮影を依頼する。撮影者がこの依頼を受けて機器Aのシャッターボタンを押す(図2のSa7)ことにより、機器Aでは撮影(Sa8〜Sa10)、該撮影した画像データの機器Bへの送信(Sa11)、送信後の画像データの削除(Sa12〜Sa14)の各工程が実行され、機器Bでは画像データの受信(Sb5〜Sb7)、保存記録(Sb8〜Sb9)が実行される。これにより被写体者は自分が写った写真を、機器Aに残さずに自分の機器Bで取得できる。一方、正式仕様でないと判断された場合(図3のSb33)は、被写体者は撮影者に正式仕様でない旨を告げて撮影を断ることにより、不正使用されるのを回避することができる。併せて被写体者は機器Bで画像撮影・転送プログラムの終了操作(図2のSb10)をして、画像撮影・転送プログラムを終了させる(Sb11〜Sb13)。
【0024】
《実施の形態3》
機器A,Bの被写体に向く位置(正面位置)にLED等によるランプを配置し(または機器A,Bの被写体に向く位置に元々配置されているLED等によるランプ(フラッシュ用ランプ等)を流用し)、正式仕様が確認されたときに、機器Bからの指令に基づき機器Aのランプを点灯させるようにすることができる。このようにすると、被写体者は正式仕様の画像撮影・転送プログラムを使用して撮影しようとしている機器Aを明確に識別することができ、より安心して撮影を任せることができる。実施の形態2(図3)において、該ランプ(以下「正式仕様確認ランプ」)の点灯工程を追加した実施の形態を図4(図4A,図4B)に示す。図3と共通の工程には同一の符号を付してその説明を省略する。図4において、機器Aは撮影準備ボタンが押されたことを検知すると(Sa24)、乱数の受信を許可し(Sa25)、正式仕様確認ランプの点灯操作信号の受信を許可する(Sa25’)。
【0025】
機器BはステップSb31でメッセージダイジェストXとメッセージダイジェストYが等しいかどうかを判断して、等しいと判断した場合は機器Aで起動した画像撮影・転送プログラムが正式仕様である旨を表示し(Sb32)、併せて該判断結果の表示を消去するボタンと、機器Aの正式仕様確認ランプを点灯するボタンを表示する(Sb40)。一方等しくないと判断した場合は機器Aで起動した画像撮影・転送プログラムが正式仕様でない旨を表示し(Sb33)、併せて該判断結果の表示を消去するボタンを表示する(Sb41)。これらの表示後、機器Bは休止状態となる(Sb42)。被写体者は判断結果の表示を見て、機器Aで正式仕様の画像撮影・転送プログラムが起動されているかどうかを知ることができる。
【0026】
前記判断結果の表示を消去するボタンが表示された状態(Sb40,Sb41)で被写体者が該判断結果の表示を消去するボタンを押すと(Sb43)、機器Bは該消去ボタンが押されたことを検知し(Sb44)、該判断結果の表示を消去して(Sb45)、休止状態となる(Sb46)。正式仕様であると判断されて機器Aの正式仕様確認ランプを点灯するボタンが表示された状態(Sb40)で、被写体者が該点灯ボタンを押すと(Sb47)、機器Bは該ボタンが押されたことを検知し(Sb48)、機器Aに対し近距離無線通信を使って正式仕様確認ランプの点灯操作信号を送信して(Sb49)、休止状態となる(Sb50)。機器Aはこの信号を受信し(Sa41)、正式仕様確認ランプを点灯して(Sa42)、休止状態となる(Sa43)。被写体者は機器Aの正面に配置された正式仕様確認ランプが点灯するかどうかを見て正式仕様の画像撮影・転送プログラムが起動されている機器Aを識別することができる。これによれば被写体者の前方に撮影機能付き通信機器を持った人が複数人いる場合でも、被写体者はどの撮影機能付き通信機器で撮られようとしているのかを認識することができる。機器Aの正式仕様確認ランプは被写体者が正式仕様確認ランプ点灯ボタンを押している間点灯し続ける。被写体者が機器Aの正式仕様確認ランプの点灯を確認して正式仕様確認ランプ点灯ボタンを開放すると(Sa51)、機器Bは該ボタンの開放を検知し(Sa52)、機器Aに対し近距離無線通信を使って正式仕様確認ランプの消灯操作信号を送信して(Sa53)、休止状態となる(Sb54)。機器Aはこの信号を受信し(Sa44)、正式仕様確認ランプを消灯して(Sa45)、休止状態となる(Sa46)。以後実施の形態2(図3)と同様に、機器A側は図2のステップSa7以降の動作に移行し、機器B側は図2のステップSb5以降の動作に移行する。
【0027】
《実施の形態4》
実施の形態2(図3)では撮影者の機器Aについて正式仕様の画像撮影・転送プログラムが起動されているかどうかを確認するようにしたが、双方の機器A,Bについて互いに正式仕様の画像撮影・転送プログラムが起動されているかどうかを確認することもできる。そのようにした実施の形態を図5(図5A,図5B)に示す。図3と共通する工程には同一の符号を付してその説明を省略する。図5において、近距離無線接続が確立すると(Sa3,Sb3)、機器A,Bはそれぞれ乱数の受信を許可する(Sa25,Sb25’)。以後機器Bは図3と同様に乱数の生成・送信を行い(Sb25,Sb26)、それに応答した機器Aからの返信(Sa29)に基づき機器Aで起動した画像撮影・転送プログラムが正式仕様かどうかを判断し、判断結果を表示する(Sb29〜Sb33)。併せて機器Bのディスプレイにシャッターボタンを表示し(Sb61)、画像の受信を許可する(Sb62)。機器Aも同様に、乱数の生成・送信を行い(Sa55,Sa56)、それに応答した機器Bからの返信(Sb65)に基づき機器Bで起動した画像撮影・転送プログラムが正式仕様かどうかを判断し、判断結果を表示する(Sa59〜Sa63)。併せて機器Bのディスプレイにシャッターボタンを表示し(Sa64)、画像の受信を許可する(Sa65)。この状態では機器A,Bはいずれも受信・保存モードとなっている。以後機器A側は図2のステップSa7以降の動作に移行し、機器B側は図2のステップSb7以降の動作に移行する。
【0028】
前記実施の形態では機器A,B間で直接通信したが、図6に示すようにサーバ等の中継機器30を経由して機器A,B間で通信して、機器Aで撮影した画像の機器Bへの転送(または機器Bで撮影した画像の機器Aへの転送)を行うこともできる。また前記実施の形態では正式仕様か否かの判断結果の表示、機器間で通信が確立したことをユーザに認知させる表示等をディスプレイ、ランプ等による視覚表示で行うようにしたが、視覚表示に代えてまたは視覚表示と併せて、ビープ音、チャイム音、人の声等をスピーカ等の発音機器から発音することによる聴覚表示でこれらの表示を行うこともできる。また前記実施の形態では暗号アルゴリズムを使って通信相手のプログラムが正式仕様か否かの確認(認証)を行ったが、他の手法を用いて認証を行う(例えば機器A,Bが相互にユーザIDとパスワードを使ってサーバにアクセスし、サーバで認証を行う等)こともできる。また前記実施の形態では、特定の2台の機器A,B間で画像撮影・転送を行う場合について説明したが、当然のことながら、この発明の画像撮影・転送プログラムを搭載した撮影機能付き携帯型無線通信機器は、この発明の画像撮影・転送プログラムを搭載した任意の撮影機能付き携帯型無線通信機器との間で画像撮影・転送を行うことができる。またこの発明は静止画像のみならず動画像の転送にも適用することができる。またこの発明の画像撮影・転送プログラムはインターネット等の通信ネットワークを介してダウンロードして提供するほか、記録媒体に記録して提供することもできる。またこの発明はカメラ付きスマートフォンどうしで画像撮影・転送を行う場合のみならず、カメラ付き携帯電話端末、カメラ付きスマートフォン、通信機能付きデジタルカメラ等の各種の撮影機能付き携帯型無線通信機器相互間で画像撮影・転送を行う場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
30…中継機器、A,B…撮影機能付き携帯型無線通信機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像撮影・転送プログラムを互いに搭載した2台の撮影機能付き携帯型無線通信機器(以下「通信機器」という)の相互間で、該画像撮影・転送プログラムを相互に使用して、一方の通信機器で撮影した画像データを他方の通信機器に無線転送する方法であって、
前記2台の通信機器に搭載される画像撮影・転送プログラムは、該画像撮影・転送プログラムが搭載された自己の通信機器の撮影機能を使って画像を撮影し、該撮影で得られた画像データを無線送信し、該送信後に該画像データを自己の通信機器から削除する撮影・送信・削除モードと、該画像撮影・転送プログラムが搭載された別の通信機器から送信された画像データを直接または中継機器を介して無線受信し自己の通信機器に保存する受信・保存モードの両機能を自己の通信機器に実行させる機能を有し、
該方法は、
前記画像撮影・転送プログラムを2台の通信機器に搭載する工程と、
該2台の通信機器の前記画像撮影・転送プログラムを起動する工程と、
一方の通信機器を前記撮影・送信・削除モードで使用して、該一方の通信機器で画像を撮影し、該撮影で得られた画像データを無線送信し、該送信後に該画像データを該一方の通信機器から削除する工程と、
他方の通信機器を前記受信・保存モードで使用して、前記無線送信された画像データを直接または中継機器を介して該他方の通信機器で無線受信し、該受信した画像データを該他方の通信機器に保存する工程と
を具備してなる画像撮影・転送方法。
【請求項2】
前記画像撮影・転送プログラムは、該画像撮影・転送プログラムの相互間で通信を行う機能と、該通信が確立した後に、通信相手の通信機器に搭載した画像撮影・転送プログラムが自己の通信機器に搭載した画像撮影・転送プログラムが指定する条件に適合するプログラムであるかどうかを確認し、その確認結果を自己の通信機器に視覚表示または聴覚表示する正式仕様確認機能をさらに有する請求項1記載の画像撮影・転送方法。
【請求項3】
前記画像撮影・転送プログラムは、該画像撮影・転送プログラムの相互間で通信を行う機能と、該通信が確立したときに、該通信が確立したことをユーザに認知させる視覚表示または聴覚表示を自己の通信機器に行うとともに前記撮影・送信・削除モードによる撮影を許可する機能をさらに有する請求項1または2記載の画像撮影・転送方法。
【請求項4】
画像撮影・転送プログラムを互いに搭載した2台の撮影機能付き携帯型無線通信機器(以下「通信機器」という)の相互間で、該画像撮影・転送プログラムを相互に使用して、一方の通信機器で撮影した画像データを他方の通信機器に無線転送する方法に使用される該画像撮影・転送プログラムであって、
該画像撮影・転送プログラムが搭載された自己の通信機器の撮影機能を使って画像を撮影し、該撮影で得られた画像データを無線送信し、該送信後に該画像データを自己の通信機器から削除する撮影・送信・削除モードと、該画像撮影・転送プログラムが搭載された別の通信機器から送信された画像データを直接または中継機器を介して無線受信し自己の通信機器に保存する受信・保存モードの両機能を自己の通信機器に実行させる画像撮影・転送プログラム。
【請求項5】
前記画像撮影・転送プログラムの相互間で通信を行う機能と、該通信が確立した後に、通信相手の通信機器に搭載した画像撮影・転送プログラムが自己の通信機器に搭載した画像撮影・転送プログラムが指定する条件に適合するプログラムであるかどうかを確認し、その確認結果を自己の通信機器に視覚表示または聴覚表示する正式仕様確認機能をさらに有する請求項4記載の画像撮影・転送プログラム。
【請求項6】
前記画像撮影・転送プログラムの相互間で通信を行う機能と、該通信が確立したときに、該通信が確立したことをユーザに認知させる視覚表示または聴覚表示を自己の通信機器に行うとともに前記撮影・送信・削除モードによる撮影を許可する機能をさらに有する請求項4または5記載の画像撮影・転送プログラム。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1つに記載の画像撮影・転送プログラムを記録した記録媒体。
【請求項8】
請求項4から6のいずれか1つに記載の画像撮影・転送プログラムを搭載した撮影機能付き携帯型無線通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−59009(P2013−59009A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197655(P2011−197655)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(594164379)株式会社サピエンス (5)
【Fターム(参考)】