画像書換方法および画像書換装置
【課題】1本もしくは複数のレーザービームが可逆性感熱記録媒体上をラスター走査して画像形成する光熱変換型画像書換方法および装置においては、副走査方向に連続発色する画像形成が困難である。
【解決手段】媒体の温度および温度変化速度の違いにより選択的に発色状態または消色状態をなす可逆性感熱記録媒体10と、複数の独立駆動されるレーザービーム21が可逆性感熱記録媒体10の移動方向と直交する方向に配列されたレーザーアレイ露光手段20とからなり、可逆性感熱記録媒体10をレーザーアレイ露光手段20で所定のパターンで露光し、可逆性感熱記録媒体10の発色すべき画素を発色条件に加熱し、同時に可逆性感熱記録媒体の消色すべき画素を消色条件に加熱して画像形成を行う画像書換装置に関する。
【解決手段】媒体の温度および温度変化速度の違いにより選択的に発色状態または消色状態をなす可逆性感熱記録媒体10と、複数の独立駆動されるレーザービーム21が可逆性感熱記録媒体10の移動方向と直交する方向に配列されたレーザーアレイ露光手段20とからなり、可逆性感熱記録媒体10をレーザーアレイ露光手段20で所定のパターンで露光し、可逆性感熱記録媒体10の発色すべき画素を発色条件に加熱し、同時に可逆性感熱記録媒体の消色すべき画素を消色条件に加熱して画像形成を行う画像書換装置に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギの移動を制御することにより発色および消色が可能な可逆性感熱記録媒体を用いる画像書換装置に関し、特に光による熱エネルギの付与を行う非接触画像書換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無色ないし淡色のロイコ染料と、加熱・冷却よりこのロイコ染料を発色させ、再加熱して消色させる可逆性を有する顕色剤を用いた可逆性感熱記録媒体と、微小な発熱体をアレイ上に集積したサーマルヘッドを使用して、この可逆性感熱記録媒体に画像様に熱エネルギを接触により移動させ可視化画像を形成し、記録媒体の多数回書換を可能にした画像書換方法、装置、可逆性感熱記録媒体等が知られている。
【0003】
このサーマルヘッドを用いた装置では、十分な熱伝導を得るためにサーマルヘッドを記録媒体に圧接する必要があり、画像形成時にはサーマルヘッドと記録媒体は接触走行することにより、サーマルヘッド表面と記録媒体表面の磨耗が避けられなかった。また、記録媒体は多数回利用されるため、使用時における記録媒体表面の汚れや異物がサーマルヘッド表面に付着・蓄積・固着し、これがサーマルヘッドの表面を劣化を加速させ、さらには劣化したサーマルヘッドの表面により記録媒体表面の劣化も加速する。このため、サーマルヘッドのメンテナンス、交換、さらには記録媒体表面のクリーニングが必要であった。
【0004】
このようなサーマルヘッドを用いた画像書換方法の欠点を解消する手段として、光吸収熱変換層を可逆性感熱記録媒体に積層するか、もしくはロイコ染料と可逆性顕色剤を含有する記録層に光吸収熱変換材料を混合した記録媒体に、一つまたは複数のレーザービームをこの記録媒体上に合焦させて走査し、光エネルギを熱エネルギに変換せしめ画像を非接触で形成する方法や装置、すなわち光熱変換型画像書換方法や装置が開示されている(例えば特許文献1)。
【0005】
一方、従来、光プリンタ、複写機等の電子写真装置の露光装置としてとして、アレイ状に配列された光源に集光レンズを組み合わせたLEDアレイ等が使用されている。
このようなアレイ状露光装置を用いて、良好な画像を得るためにのレーザービームのスポット径、露光エネルギー、感光体の感度等の最適化条件が開示されている(例えば特許文献2) 。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の1本もしくは複数のレーザービームが可逆性感熱記録媒体上をラスター走査して画像形成する光熱変換型画像書換方法および装置においては、副走査方向に連続発色する画像形成が困難である。具体的には、1本のレーザービームが記録媒体上を主走査し、同時に主走査方向と直行方向の副走査方向に記録媒体を移動させるラスター走査を使用した場合、主走査の時間間隔が長いと、前回のレーザービームにより発色条件まで加熱・溶融した記録媒体の画素が、次のレーザービーム走査までに冷却されてしまう。
【0007】
次のレーザービーム走査では、レーザービームの露光エネルギー密度分布がガウス分布しているため、そのガウス分布の裾の部分が前回の発色画素にかかり、記録媒体の消色可能温度帯域が発色可能温度帯域よりも低いので、小さい露光エネルギー密度を示すレーザービームの大きな半径部分で、前回の発色画素を消色してしまう。したがって、主走査方向に長い画角の画像を形成する場合には、副走査方向に連続発色する画像形成が困難である。また、レーザービームの露光エネルギー密度が過大な場合には、記録媒体の熱伝導により、前回の発色画素が消色条件を満たしてしまう場合もある。
【0008】
このような、発色した画素の一部が再露光で消色する現象を防止するためには、アレイ状に配列されたレーザービームからなるレーザーアレイを露光手段に用いる方法がある。このようなレーザーアレイを露光手段においては、記録媒体の移動方向と直交する方向にすべての画素に対応するレーザービームが1ラインに配列されているので、その1ラインの画素すべてを同時に露光できる。
【0009】
したがって、次のレーザービームのライン露光までの時間間隔は十分に短くでき、前回のレーザービームにより発色条件まで加熱・溶融した記録媒体の画素の温度は、次のレーザービーム走査まで発色条件に維持される。
【0010】
しかしながら、レーザーアレイを露光手段に用いる方法においても、記録媒体をムラなく発色および消色して画像形成を行うにはいくつかの問題点がある。レーザービームの露光エネルギー密度分布はガウス分布しているため、そのガウス分布の裾に相当する部分まで記録媒体を発色させようとすると、レーザービームの中心部分では露光エネルギー密度が過剰になり、この中心部分では発色条件以上に温度上昇し、発色に必要な冷却速度が得られず逆に消色してしまう場合がある。
【0011】
さらに過大な露光エネルギー密度では、熱分解、熱変形等の記録媒体に重大なダメージを与え、可逆性感熱記録媒体の書換え寿命を低減させてしまう場合がある。また、消色しようとする画素に対しては、ガウス分布の裾に相当する部分まで記録媒体を消色させようとすると、レーザービームの中心部分では、露光エネルギー密度が大きくなり過ぎ、発色条件に達し、画素の中心部分が発色してしまう場合がある。
【0012】
このような画質の低下現象、性能の劣化現象は、レーザービームのスポット半径、露光エネルギー密度分布、可逆性感熱記録媒体の発色および消色特性との関係が適切に設定されていないために発生する。
【0013】
レーザーアレイを露光手段に用いる方法においては、1ラインのすべての画素に対して同時に個別に露光することが可能であり、このとき、発色画素、消色画素に対して同時にそれぞれの条件で露光すると、発色同時消色(消去同時書込み)ができる可能性がある。これにより、従来のハロゲンランプや温風吹き出し装置等の記録媒体を一様に加熱するの消色手段が不要になると言われている。
【0014】
また、レーザービームのスポット半径はすべて同一で固定されているため、露光条件を、発色画素、消色画素に対して同時に個別に制御するには、パルス幅変調制御やパワー変調制御等により、レーザービームの発光を制御して、記録媒体面上で露光エネルギー密度の制御を行う必要がある。
【0015】
しかしながら、このように制約の多い発色および消色特性の2つを同時に満たす条件に関しては、従来開示しているものはなく、レーザーアレイによる発色同時消色は実現されていない。
さらに、この発色および消色特性の2つを同時に満たす条件は、すべての形成すべき画像パターンに対応していなければならいので、なおいっそう発色同時消色の実現は困難である。
【0016】
一方従来、電子写真装置においては、各種のアレイ状露光装置の使用条件、設定条件が提案されている。しかしながら、これらは、感光体の感度等の電子写真材料やプロセスに対して最適化されているものであり、そのままの条件で、可逆性感熱記録方法における発色および消色特性に関して適用できるものではない。
【0017】
従って本発明の目的は、レーザービームが可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向に配列されたレーザーアレイ露光手段を用いて、発色同時消色(消去同時書込み)を可能にし、かつ記録媒体にダメージを与えず、記録媒体の全領域にわたって任意の画像パターンを良好に多数回書換形成できる、光熱変換型画像書換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、媒体の温度および温度変化速度の違いにより選択的に発色状態または消色状態をなす可逆性感熱記録媒体と、複数の独立駆動されるレーザービームが可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向に配列されたレーザーアレイ露光手段とからなり、可逆性感熱記録媒体をレーザーアレイ露光手段で所定のパターンで露光し、可逆性感熱記録媒体の発色すべき画素を発色条件に加熱し、同時に可逆性感熱記録媒体の消色すべき画素を消色条件に加熱して画像形成を行う画像書換装置において、
レーザーアレイ露光手段から出射される1つレーザービームの可逆性感熱記録媒体上における結像スポットに対して、E00[J/m2]を結像スポットの中心における露光エネルギー密度、w0[m] を結像スポットが形成する露光エネルギー密度分布において、E00/e2[J/m2] 露光エネルギー密度を示す結像スポットの中心からの距離である、 レーザービームの可逆性感熱記録媒体上のスポット半径、とし、
レーザーアレイ露光手段から出射される複数のレーザービームの可逆性感熱記録媒体上における複数の結像スポットに対して、r0[m] を複数の結像スポットのピッチ間距離の1/2長さであり、かつ形成する画素のピッチ間距離の1/2である画素半径、とし、可逆性感熱記録媒体の特性をMc [J/m2] を 最小発色エネルギー密度、Mcm[J/m2] を最大発色エネルギー密度、Md [J/m2] を最小消色エネルギー密度、Mdm[J/m2] を最大消色エネルギー密度、とし、χを変数、aをパラメーターとした方程式(1)、およびχの関係式(2)を
1-a4χ+4χ2+4χ4-a8χ5=0 ・・・(1)
w0/r0=2/log(1/χ)1/2 ・・・(2)
において、
χ1=0.5を用いて、画素半径r0で割ったスポット半径w1を
w1/r0=2/log(1/χ1)1/2
とし、
さらに、Mdm/Md、Mcm/Mcの2つの値から小さい方の値を、
aとしたときの方程式(1)の解χ2を用いて、画素半径r0で割ったスポット半径w2を
w2/r 0=2/log(1/χ2)1/2
としたとき、
スポット半径w0を画素半径r0で割った値を
w2/r0≦w0/r0≦w1/r0
の関係を満たすように設定することを特徴とする画像書換装置である。
【0019】
また本発明は、関係式(2)で定義される変数χと、bc、bcmをパラメーターとした方程式(3)、方程式(4)
4bcχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1=0 ・・・(3)
bcχ-1/2(1+4χ2+4χ4)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1-bcm=0 ・・・(4)
において、
最小発色エネルギー密度Mc [J/m2] および最大消色エネルギー密度Mdm[J/m2]用いて
bc=Mc/Mdm
としたときに、
変数χの範囲
0<χ≦0.5
における方程式(3)の解χ3を用い、
ただし、範囲0<χ≦0.5において、方程式(3)の解χ3がない場合には
解χ1を用いてχ3=χ1とし、画素半径r0で割ったスポット半径w3を
w3/r 0= 2/log(1/χ3)1/2
とし、さらに、
bcm=Mcm/Mdm
であるときの方程式(4)の解χ4を用いて、画素半径r0で割ったスポット半径w4を
w4/r0=2/log(1/χ4)1/2
としたとき、
スポット半径w0を画素半径r0で割った値を
w4/r0≦w0/r0≦w3/r0
の関係を満たすように設定することを特徴とする画像書換装置である。
【0020】
また本発明は、関係式(2)で定義される変数χと、bcをパラメーターに対する方程式(5)、方程式(6)
0=log(1/χ)・((bc((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5)/(1+2χ2+χ4+2χ6))-(bc(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6))(-8χ+16χ3)/(1+4χ4-4χ2))+1/χ・(bc(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6)) ・・・(5)
ρrB=2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4) ・・・(6)
において、
解χ3および解χ4を用いた変数χの範囲
χ4≦χ≦χ3
における方程式(5)の解χ5を用い、
ただし、範囲χ4≦χ≦χ3において、方程式(5)の解χ5がない場合には、
解χ3 を方程式(6)の変数χに代入した値をρrB3とし、
解χ4を方程式(6)の変数χに代入した値をρrB4とし、
ρrB3とρrB4でどちらか小さい値を示す、解χ3、解χ4をχ5とし、
画素半径r0で割ったスポット半径w5を
w6/r0=2/log(1/χ5)1/2
と設定することを特徴とする画像書換装置である。
【0021】
また本発明は、パラメーターbcを
bc=σCDh/σD0
として、最消発色エネルギー密度Md [J/m2] および最大消色エネルギー密度Mdm[J/m2]よる条件
Md/Mdm<σCDh≦1
Md/Mdm≦σD0 <1
の範囲でbcの値を調整し、この調整されたbcを用いた場合に、
方程式(3)および方程式(4)の解χ3および解χ4を用いた変数χの範囲
χ4≦χ≦χ3
を方程式(5)の解χ5が満たしていることを特徴とする画像書換装置である。
【0022】
また本発明は、発色する画素に対する、レーザーアレイ露光手段から出射される1つのレーザービームの露光エネルギー分布の中心の露光エネルギー密度の最小値E 0cmin[J/m2]が、
関係式(2)で定義される変数χと、最小発色エネルギー密度Mc [J/m2]用いて、
E0cmin=Mc/(4χ+8χ5)
であることを特徴とする画像書換装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、サーマルヘッドを用いた従来の画像書換方法に比べて、可逆性感熱記録媒体を格段に多い回数で繰り返し書換可能な、レーザービームが直線状に並びかつ複数同時照射可能なレーザーアレイ露光手段を使用し、かつ従来の光熱変換型画像書換方法に比べて消色専用加熱手段を不要とした、レーザーアレイ露光手段で発色同時消色を可能にするレーザービームのスポット半径の条件を開示し、これによって高画質の光熱変換型画像書換方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1、図2は第1実施形態の光熱変換型画像書換方法を用いた画像書換装置の基本構成を示す図で、図1は概略断面図、図2は概略斜視図である。図2の概略斜視図は見やすくするために主要な構成のみ図示してある。まず第1実施形態の画像書換装置の構造と書換機能の概略について説明する。
具体例としては、幅100mmの画像を、380mm/sec程度の媒体搬送速度、0.125mm×0.125mmの画素で画像形成するものである。
【0025】
光吸収熱変換機能を有する光熱変換型可逆性感熱記録媒体10(以下記録媒体10と呼ぶ)は、周知の搬送ベルトや搬送ローラー等からなる媒体搬送装置90によって、一定速度で記録媒体搬送方向Yに搬送される。
【0026】
次に露光手段であるレーザーアレイモジュール20で、媒体搬送方向-Yに直交する方向Χでレーザービーム21がアレイ状に配列し、個別駆動され露光される。これによって記録媒体10の必要な部分が画像様に発色および消色する。すなわち前回の記録画像11は、今回形成される画像の部分が発色し、今回形成される画像の背景部に相当する部分が消色され、求められている今回の記録画像12となる。
【0027】
露光消手段について、図1、図2を用いて詳しく説明する。露光消手段消色は単一の構成であるレーザーアレイモジュール20(例えば波長808nmもしくは830nmを使用)からなる。レーザーアレイモジュール20は、例えば、幅100mmの画像で画素の大きさを0.125mm×0.125mmとすると、ライン露光方向Χと同じアレイ集積方向Χに、画素のピッチと同じ0.125mmピッチでレーザービーム21の発光点を800個ならべたレーザービームアレイを形成するものである。ただし、レーザーアレイモジュール20の左右の端部のそれぞれ2個づつレーザービーム21は、端部の露光エネルギー密度分布を適正化するために使用し、この部分は画像形成の範囲外とする。
【0028】
レーザーアレイモジュール20を構成する半導体レーザーアレイ23は例えば、800個のレーザービーム21に対応する、1個あたり16個のレーザービームを出射する50個の半導体レーザーチップからなる。この半導体レーザーチップは、レーザーアレイドライバ24で、レーザービーム21ごとに個別に駆動制御可能で、パルス幅に従ったON/OFF制御によるパルス幅変調制御、およびパワー設定値に従ったパワーレベル制御によるパワー変調制御が可能である。
【0029】
半導体レーザーアレイ23から出射した光線はレンズによる集光光学系22によって記録媒体10上で所定のスポット半径を有する結像スポットを形成する。集光光学系22は固定されていて、記録媒体10上で所定のスポット半径は初期設定のまま固定されている。したがって、記録媒体10上での、露光エネルギーを可変に制御するには、前述のこのパルス幅変調制御とパワー変調制御のどちらか一方、あるいは両方の組み合わせにより、記録媒体10面上で1つのレーザービーム21の露光エネルギー密度の制御を行う。
【0030】
また、例えば、記録媒体10面上で1つのレーザービーム21の光強度は50〜200mW程度が必要となる場合には、レーザーアレイモジュール20全体では光出力は40〜160W程度になる。
あるいは、レーザーアレイドライバ24で周知の時分割駆動を行うことも可能で、例えば、半導体レーザーチップの駆動時間を1/3とし、逆に1つのレーザービームの光強度を150〜210mW程度とする。このときもレーザーアレイモジュール20全体での光出力の40〜56Wを保持し、単位記録面積あたりの必要エネルギーを確保している。
【0031】
本発明の画像書換装置で使用される光熱変換型可逆性感熱記録媒体について可逆性感熱記録媒体10の概略断面図3を用いて説明する。
【0032】
本発明に係わる光熱変換型可逆性感熱記録媒体10の基本構成は、図3に示すように、支持体13上に、光吸収熱変換材料を混入した可逆性感熱記録記録層14、保護層15を形成したものである。本発明に用いられる可逆性感熱記録層14は少なくとも、ロイコ染料と可逆性顕色剤と光吸収熱変換材料からなる。使用可能な光熱変換型可逆性感熱記録媒体10の構成としては、ロイコ染料と可逆性顕色剤とから可逆性感熱記録層を形成し、その上に光吸収熱変換材料からなる光熱変換層を積層することも可能である。
【0033】
また、ロイコ染料と可逆性顕色剤と光吸収熱変換材料からなる可逆性感熱記録層15を形成し、その上にさらに光吸収熱変換材料からなる光熱変換層を保護層15として積層することも可能である。
また、光吸収熱変換材料の吸収波長を持つ光の平均透過率が、光吸収熱変換材料を含んだ可逆性感熱記録層14において、例えば30%以上ある場合には、可逆性感熱記録層14の直下に光吸収熱変換材料からなる光熱変換層を積層することも可能である。
【0034】
以下各層の材料について説明する。ロイコ染料の具体的例としては、特許文献3、4、5に開示されているものが使用可能である。これに限定されるものではない。
【特許文献3】特開2001-162941号公報
【特許文献4】特開2004-345273号公報
【特許文献5】特開平11-151856号公報
【0035】
可逆性顕色剤は長鎖アルキル基を有するフェノール化合物が使用され、特許文献3、4、5に開示されている。本発明では高速消色性を有する可逆性顕色剤に限定する必要があり、特に特許文献3に開示されている具体的可逆性顕色剤の使用が望ましい。また特許文献3に開示されているように、他の可逆性顕色剤であってもロイコ染料と混合して生成された可逆性感熱記録材料に関して、加熱溶融、急冷して得られた発色状態の可逆性感熱記録材料が、示差走査熱量分析または示差熱分析によって、その昇温過程で発熱ピーク示さずに消色状態に転移する場合には、高速消色性を有する可逆性感熱記録材料として使用可能である。すなわち、この場合、少ない熱エネルギーの授受で瞬時に発色状態から消色状態に転移することができる。
【0036】
したがって、本発明で使用可能な可逆性感熱記録材料に関しては、高速消色性を有することが要件であり、ロイコ染料およびとそれに適する可逆性顕色剤に限定されるものではない。
【0037】
本発明に用いられる光吸収熱変換材料としては、光熱変換色素が用いられる。具体的な例としては、フタロシアニン化合物、金属錯体化合物、ポリメチン化合物、ナフトキノン系化合物等が挙げられ、可逆感熱記録層14に分散状態または分子状態で含有することができる。好ましくは、光熱変換効率、溶剤への溶解性、樹脂への分散性、紫外線に対する耐光性の点でフタロシアニン化合物、金属錯体化合物が挙げられ、とくに特にフタロシアニン化合物が好ましい。
【0038】
さらに詳しくは特許文献3、4、5に開示されているものが使用可能である。また、本実施例では、使用するレーザー光源21の波長808nm〜830nm付近に吸収ピークを持つ光吸収熱変換材料が選択される。
【0039】
可逆感熱記録層14には、性能向上のために各種のバインダー、添加剤等を使用することが可能で、これらについては特許文献3、4、5に開示されている。例えば、可逆感熱記録層の強度を向上し、可逆感熱記録層の組成物の各素材が、加熱・冷却当によって偏在することなく均一に分散するための耐熱性樹脂等のバインダーが挙げらている。また、発色感度および消去温度を調整するための熱可融性物質等が挙げらている。
【0040】
本発明に用いられる支持体13は、単に可逆感熱記録層14を支持する機能だけではなく、発色時における加熱後の冷却工程において熱の吸収体としての機能を果たしている。 このため、支持体13には所定の熱伝導率と比熱を有するポリエチレンテレフタレート、ポリプロポレン等の合成樹脂フィルムが使用される。具体的に使用できる材料関しては特許文献3、4、5に開示されている。
【0041】
光熱変換型可逆性感熱記録媒体10の構成としては、可逆感熱記録層35の上の最外層として保護層15が積層することが望ましい。本発明の画像書換方法では、記録媒体10は非接触で画像を書換えることができ、基本的に加熱・冷却以外に記録媒体10にはダメージを与えない。しかしながら、記録媒体10のライフサイクル全体では、本発明の画像書換方法で書換えられた後が、記録媒体10本来の役割を果たす使用段階となる。この使用段階では、擦過、打撃、折り曲げ、紫外線照射等のさまざまダメージを受ける。このため、ハードコート層である保護層15が必要になる。
【0042】
特に、光吸収熱変換材料としての光熱変換色素やロイコ染料は、紫外線吸収により大きなダメージを受ける可能性が高いので、各種の紫外線吸収剤を保護層15に混入することが可能である。使用可能な各種の紫外線吸収剤を含めた保護層の材料は特許文献4、5に開示されている。一般に光吸収熱変換材料としては、近赤外領域の吸収波長を持つものを使用し、ロイコ染料の発色波長域は可視域であるので、最上部の保護層15が紫外線のみを吸収する場合には、光吸収熱変換材料もロイコ染料もその機能に悪影響を与えられることはない。
【0043】
記録媒体10上における楕円形レーザービーム21の結像スポットは、I0[w/m2]をスポット中心の強度(以下中心強度と呼ぶ)とすると、スポット中心を原点とした座標(x,y)[m]に対して、式 (1.1)で示すガウス分布の強度分布I(r)[w/m2]を持つ(wb≦wa)
I(r)=I0exp(-(2x2/wa2 + 2y2/wb2)) ・・・(1.1)
ここで、waは1/e2スポット長半径(以下スポット長半径と呼ぶ)であり、x=wa,y=0のとき
I(wa)=I0exp(-2)=I0/e2 ・・・(1.2a)
また、 wbは1/e2スポット短半径(以下スポット短半径と呼ぶ)であり、x=0,y=wbのとき
I(wb)=I0exp(-2)=I0/e2 ・・・(1.2b)
となる関係を満たしている。
【0044】
さらに、レーザービーム21の露光時間内に記録媒体10が移動する距離が、ビーム半径w0に対して十分短い場合は、円形レーザービーム21による結像スポットの露光エネルギー密度分布[J/m2]はガウス分布で近似できる。そこで、画素形成時間すなわち1画素あたりのレーザー露光時間t0[sec]を用いて、
I(r)・t0=I0・t0exp(-2r2/w02)
E00[J/m2]をスポット中心の露光エネルギー密度(以下中心露光エネルギー密度と呼ぶ)とすると、円形レーザービーム21による結像スポットの露光エネルギー密度分布E(r)[J/m2]は 、
E00=I0・t0 ・・・(1.3)、E(r)=I(r)・t0と置き換えると
E(r)=E 00exp(-2r2/w02) ・・・(1.4) となる。
【0045】
したがって、記録媒体10上における円形レーザービーム21の結像スポットは、E00[J/m2]をスポット中心の露光エネルギー密度(中心露光エネルギー密度)とすると、スポット中心からの距離r[m]に対して式(1.4)で示すガウス分布の露光エネルギー密度E(r)[J/m2]を持つ。
ここで、r=w0のとき
E(w0)=E 00exp(-2)=E 00/e2
となる。したがって式(1.4)で示すガウス分布の露光エネルギー密度は、距離w0においては、中心露光エネルギー密度E 00の1/e2の露光エネルギー密度を示す。このw0をスポット半径とする。
【0046】
レーザービーム21の結像スポットの露光エネルギー密度と記録媒体10の発色および消色特性との関係を検討していくにあたり、エネルギー密度と発色および消色特性の関係は相対的であるので、それぞれの値の絶対値ではなく、基準値で割って無次元化して扱う。これにより、露光エネルギー密度と発色および消色特性の絶対値が使用する条件、材料等によって変化しても、一定の設定基準を提供できる。
【0047】
アレイ状に配列されたレーザービーム21のピッチは形成する画素(ドット) のピッチと同一である。この画素(ドット)ピッチの1/2をr0[m]画素半径とし、この画素半径r0に対するスポット半径の指標として変数χ(スポット半径指標)を導入し、
w0/r0=2/(log(1/χ))1/2 ・・・(1.5)
で示す関係にあるとする。
スポット中心からの距離rを画素半径r0で無次元化し
γ=r/r0 ・・・(1.6)
で示すスポット中心からの無次元距離γ(以下偏差距離と呼ぶ)を導入する。
式(1.5)と式(1.6)を式(1.4)に代入すると、
E(r)=E00χ^(γ2/2) ・・・(1.7)
となる。
【0048】
ここで記録媒体10の発色および消色特性を
Mc [J/m2] : 最小発色エネルギー密度
Mcm[J/m2] :最大発色エネルギー密度
Md [J/m2] :最小消色エネルギー密度
Mdm[J/m2] :最大消色エネルギー密度
と定め、これらを最小発色エネルギー密度Mcを用いて無次元化すると
ξc =Mc/Mc=1 :無次元化最小発色エネルギー密度
ξcm=Mcm/Mc :無次元化最大発色エネルギー密度
ξd =Md/Mc :無次元化最小消色エネルギー密度
ξdm=Mdm/Mc :無次元化最大消色エネルギー密度
となる。
さらにMcを用いて、露光エネルギー密度に関して無次元化する
ε(γ)=E(r)/Mc: 偏差距離γにおける無次元化露光エネルギー密度
ε00 =E00/Mc :無次元化中心露光エネルギー密度
これらより式(1.6)は無次元化されたガウス分布のエネルギー密度分布を表す
ε(γ)=ε00χ^(γ2/2) ・・・(1.8)
となる。
【0049】
以下、特にことわりのないかぎり、無次元化最小発色エネルギー密度等を、単に最小発色エネルギー密度等と呼ぶ。同様に、無次元中心露光エネルギー密度を、単に中心露光エネルギー密度と呼ぶ。
【0050】
特許文献2より、設定されたスポット半径w0から、レーザーアレイモジュール20で使用するでレーザービーム21のパワー[w]を算出することができる。
1つのレーザービーム21のパワーP[w]は
P=1/2・I0πw02 ・・・(1.9)
で与えられる。ゆえに
P/(πr02)=1/2・I0(w0/r0)2
両辺に画素形成時間すなわち1画素あたりのレーザー露光時間t0[sec]をかけてエネルギー密度に変換すると
t0P/(πr02)=1/2・I0t0(w0/r0)2
式(1.3)を用いると
t0P/(πr02)=1/2・E00(w0/r0)2 ・・・(1.10)
画像形成に必要な光エネルギーの大小を比較するために、一つのレーザービーム21のビーム露光エネルギーを画素半径からなる円の面積(πr02)で割った値をUr[J/m2]とする。
Ur=t0P/(πr02)
これを(1.10)に代入して
Ur=1/2・E00(w0/r0)2 ・・・(1.11)
式(1.9)をMc[J/m2]で割って無次元化した、無次元ビームエネルギー密度ρr
ρr=Ur/Mc
を用いると
ρr=ε00(w0/r0)2/2 ・・・(1.12)
さらに式(1.5)を用いると
ρr=ε002/log(1/χ) ・・・(1.13)
となる。ρrは画素面積の絶対値にかかわらないので、画像形成に必要な露光エネルギーの大小の比較に使用される。以下、特にことわりのないかぎり、無次元ビームエネルギー密度を、単にビームエネルギー密度と呼ぶ。
【0051】
本発明では空間周波数を
空間周波数=(発消色サイクル)/(画素数) ・・・(1.14)
と定義し、
さらに2元空間周波数を
X方向の空間周波数νx
νx=(X方向の発消色サイクル)/(X方向の画素数) ・・・(1.15)
Y方向の空間周波数νy
νy=(Y方向の発消色サイクル)/(Y方向の画素数) ・・・(1.16)
を用いて
ν=(νx2+νy2)1/2 ・・・(1.17)
と定義する。
本実施例においては、基準となる画素数は、累積範囲30が4画素半径なので、隣接する累積範囲間のピッチは、4画素半径×2となるので、これを1画素の大きさ、画素半径×2で割る。
したがって
基準画素数=(4画素半径×2)/(画素半径×2)=4
となる。
【0052】
第1実施形態では、最小空間周波数をもつ、すべての画素を発色もしくは消色とする画像パターンにおける累積露光エネルギー密度を示す。
この場合の2元空間周波数は
ν=((0/4)2 + (0/4)2)1/2=0
である。
【0053】
図4(a)、図4(b) 、図4(c)に、発色画素もしくは消色画素が全面に一様に配置されている全面発色もしくは全面消色画像パターンに対応する、発消色露光パターンを示す。この画像パターンは最小の空間周波数をもつものである。この図4において、記録媒体10表面におけるレーザービーム21が結像するスポット円31の状態を表す。このときスポット円31の中心露光エネルギー密度ξ00はすべて一定であり、以下の2種類とする。
【0054】
すべての画素を発色とする全面発色パターンの場合は、スポット円31は発色画素に対応する発色スポットであり、このとき中心露光エネルギー密度は発色中心露光エネルギー密度E0cとなる。このE0cをMcで無次元化すると、
ε0c=E0c/Mc :無次元発色中心露光エネルギー密度
すべての画素を消色とする全面消色パターンの場合は、
スポット円31は消色画素に対応する消色スポットであり、このとき中心露光エネルギー密度は消色中心露光エネルギー密度E0dとなる。このE0dをMcで無次元無次元化すると、
ε0d=E0d/Mc :無次元消色中心露光エネルギー密度
となる。
【0055】
一般的には、記録媒体10上の任意の観測位置において、その観測位置を露光可能なすべてのレーザービーム21からの露光エネルギー密度の総和を、その観測位置で累積露光エネルギー密度と定義できるが、本実施例では、観測位置から一定の累積範囲を設定して、その範囲内のすべてのレーザービーム21からの露光エネルギー密度の総和を、その観測位置で累積露光エネルギー密度と定義する。
図4の表面を記録媒体10表面とすると、図4(a)、図4(b) 、図4(c)のそれぞれに場合において、複数のレーザービーム21によるスポット半径w0からなるスポット円31が示されている。このスポット半径w0はスポット半径指標χによって変化する。スポット円31は縦横方向にそれぞれ2画素半径(2r0)ピッチで配列されている。これは、媒体搬送方向Yに直行する方向Χでレーザービーム21が2画素半径(2r0)ピッチでアレイ状に配列しているのに対応している。露光エネルギー密度の累積を算出する特定の観測位置である、観測ノード32、33、34がそれぞれ設定され、この観測ノードを中心にして、4画素半径(4r0)を示す累積範囲30が描かれている。この累積範囲30内に中心があるスポット円31に対応する、複数のレーザービーム21の露光エネルギー密度分布の総和を、観測ノードにおける累積露光エネルギー密度とする。厳密には、4r0以上の累積範囲でもレーザービーム21が観測ノードに影響を及ぼすが、w0/r0≒2.4を最大値としているので、このときの露光エネルギー密度は中心エネルギー密度の0.4%程度しかない。したがって、4r0の累積範囲外のレーザービーム21の露光エネルギーは、対象となる観測ノードの累積露光エネルギー密度の算出に対しては無視して差し支えない。図4(a)の観測ノード32は、1つのスポット円31の中心に位置するので中心ノード32と呼ぶ。図4(b)の観測ノード33は、2つのスポット円31の中間に位置するので中間ノード33と呼ぶ。図4(c)の観測ノード34は、4つのスポット円31の中央に位置するので面心ノード34と呼ぶ。
【0056】
次に、式(1.8)を用いて、この図4(a)、図4(b) 、図4(c)に示す、記録媒体10上の各観測ノードの累積露光エネルギー密度を算出する。図4(a)において、中心ノード32におけるMcで無次元化した無次元累積露光エネルギー密度をσ0とすると、中心ノード32に対応するスポット円31と周囲8個スポット円31合計9個レーザービーム21の露光エネルギー密度の和をとるから、
σ0 =ε00(1+4χ2+4χ4) ・・・(1.18)
となる。
図4(b) において、同様に中間ノード33における無次元累積露光エネルギー密度をσhとすると、周囲12個のスポット円を形成するレーザービーム21の露光エネルギー密度の和をとるから、
σh =ε00χ1/2(2+ 4χ2+ 2χ4 +4χ6) ・・・(1.19)
となる。
図4(c) において、面心ノード34における無次元累積露光エネルギー密度をσfとすると、周囲12個のスポット円を形成するレーザービーム21の露光エネルギー密度の和をとるから、
σf =ε00(4χ+ 8χ5) ・・・(1.20)
となる。
式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)におけるε00は、露光エネルギー密度を算出する場合には、画像パターに応じて、ε0cもしくはε0dが適用される。以下、特にことわりのないかぎり、無次元累積露光エネルギー密度を、単に累積露光エネルギー密度と呼ぶ。
【0057】
式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)から、図4(a)、図4(b) 、図4(c)に示す露光パターンで、露光エネルギー密度ε00=1に固定した場合の累積露光エネルギー密度σ0、σh、σfを、0<χ≦0.5の条件で図5にプロットする。
図5より、0<χ≦0.5の条件では、
中心ノード32における累積露光エネルギー密度σ0が最大値を取る。
面心ノード34における累積露光エネルギー密度σfが最小値を取る。
したがって、中心ノード32が最大の累積露光エネルギー密度であり、かつ面心ノード34が最小の累積露光エネルギー密度である条件が、σ0、σf2つの累積露光エネルギー密度において、許容される最大の露光エネルギー密度比条件となる。
そこで新たに露光累積エネルギー密度比としてパラメーターaを導入すると
a =σ0/σf ・・・(1.21)
この式にξ0を示す式(1.18)およびξfを示す式(1.20)を代入して、ε00を消去すると、
a =(1+4χ2+4χ4)/(4χ+ 8χ5) ・・・(1.22)
1-a4χ+4χ2+4χ4-a8χ5=0 ・・・(1.23)
となる。
σ0 とσf最小エネルギー密度比は、記録媒体10の発色および消色特性にかかわらず
σ0=σf
a =σ0/σf=1 ・・・(1.24)
と設定できる。この条件で式(1.12)は
1-4χ+4χ2+ 4χ4 -8χ5 = 0 ・・・(1.25)
となり、この解はχ1
χ1=0.5である。 ・・・(1.26)
これを式(1.5)に代入すると許容される最大のスポット半径w1が
w1/r 0=2/log(1/χ1)1/2 ・・・(1.27)
として設定される。式(1.19)の値は具体的に求めることができ
w1/r0 =2/(log(2))1/2≒2.402
一方、以下の記録媒体10の発色および消色特性
Mc [J/m2] : 最小発色エネルギー密度
Mcm[J/m2] :最大発色エネルギー密度
Md [J/m2] :最小消色エネルギー密度
Mdm[J/m2] :最大消色エネルギー密度
から、最大のエネルギー密度比としては
ac=σ0/σf=ξcm/ξc = Mcm/Mc ・・・(1.28)
ad=σ0/σf=ξdm/ξd = Mdm/Md ・・・(1.29)
の2つがある。
aの意味するところは、記録媒体10の特性として、発色可能なエネルギー密度の幅、もしくは消色可能なエネルギー密度の幅を示す、最大許容累積露光エネルギー密度比であるから、ac、adの2つの値から小さい方の値を抽出すると、
a =min(ac,ad)
となる。ここで、関数min(a1,a2)はa1、a2の2つの値から小さい方の値を抽出する関数である。
以上をまとめると、求める条件式は、式(1.23)と以下の(1.31)となる。
a =min(Mcm/Mc,Mdm/Md) ・・・(1.30)
1-a4χ+4χ2+4χ4-a8χ5=0
となる。
この条件での式(1.23)の解をχ=χ2とし、式(1.5)に代入すると、
許容される最小のスポット半径w2が
w2/r 0= 2/log(1/χ2)1/2 ・・・(1.31) として設定される。
以上より、χの設定範囲は
χ2≦χ≦χ1 ・・・(1.32)
χ2≦χ≦0.5
したがってレーザービーム21のスポット半径w0を、
w2/r0≦w0/r0≦w1/r0 ・・・(1.33)
w2/r0≦w0/r0≦2.402
の関係を満たすように設定することで、記録媒体10の発色および消色特性と関連し、良好な画像形成が可能な、光熱変換型画像書換方法を得ることができる。
また、無次元化スポット半径w0/r0を使用することにより、必要される画像解の画素半径r0にかかわらないスポット半径の設定基準が得られる。
【0058】
条件式(1.31) を満たす例として、すべての画素を消色とする全面消色画像パターンに対応する、スポット半径の有効設定範囲を示す。
数値条件として
ξd =0.5
σf =ξd
を設定する。
まず式(1.23)
a =(1+4χ2+4χ4)/(4χ+ 8χ5)
からにχ対するaを算出する。
次に、式(1.20)の中心露光エネルギー密度ξ00を、消色中心露光エネルギー密度ξ0dとすると、
σf =ε0d(4χ + 8χ5)
これに、条件σf =ξdを代入すし、全面消色画像パターンを形成するするのに必要な、χ対する最小中心露光エネルギー密度ε0dを算出する。
ε0d =ξd/(4χ + 8χ5) ・・・(1.34)
算出されたξ0d を用いて式(1.18)から、σ0を求める。
σ0 =ε0d(1+4χ2+4χ4) ・・・(1.35)
同様に 式(1.18)から、σhを求める。
σh =ε0dχ1/2(2+ 4χ2+ 2χ4 +4χ6) ・・・(1.36)
以上より、パラメーターa、累積露光エネルギー密度ξ0、ξh、ξfを
0>χ≧0.5
の条件で図6にプロットする。
また、以下のように具体的な数値a
ξdm=0.75
a = ξdm/ξd = 0.75/0.5 = 1.5
を設定し、これを式(1.23)
1-a4χ+4χ2+4χ4-a8χ5=0
代入して、周知の2分法やニュートン法を用いると、
最小のスポット半径に対応する解
χ2 ≒0.1915
が求められる。これを図6に示す。
よって、χの有効設定範囲は
0.1915≦χ≦0.5
となる。これを、式(1.5)によって、無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
1.556 ≦w0/r0≦2.402 ・・・(1.37)
具体的な無次元化スポット半径w0/r0の有効設定範囲が得られる。
【0059】
上記の設定
1.556 ≦w0/r0≦2.402
を用いた場合の、全面消色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度分布を示す。
スポット半径w0の最大条件は、
a=1
w0/r0=2.402
χ=0.5
である。
最大のスポット半径w0の条件であるχ=0.5と、ξd=0.5を式(1.34)に代入すると、消色中心露光エネルギー密度ε0dの最小値
ε0d ≒0.2222
が決定される。
この値を式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)に代入すると、それぞれの観測ノードでの累積露光エネルギー密度が算出される。
σ0 =0.5
σh ≒0.5009
σf =0.5
この最大スポット半径での、全面消色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度分布を図7に示す。
【0060】
図7のグラフは、図4(a)に示す線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を示していて、
線分A-Aでは、ピークが中心ノードでの値、ボトムが中間ノードでの値を示している。
線分B-Bでは、ピークが中間ノードでの値、ボトムが面心ノードでの値を示している。
また、図7においては、σ0、σh、σf の値が、上記の算出値より最大1%程度上回っているが、これは、確認としてより厳密な計算を行うため、複数のレーザービーム21の露光エネルギー密度分布を総和する累積範囲30を、約6画素半径(6r0)としたためでる。これは式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)の導出に使用した4画素半径(4r0)より広い範囲で総和する設定である。
図7に示すように、の累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≒σd
となり、平坦な消色条件を保持している。
【0061】
次にスポット半径w0の最小値での場合を示す。
このとき条件は、
a =1.5
w0/r0=1.556
χ =0.1915
である。
最小のスポット半径w0の条件である、χ=0.1915とξd = 0.5を、この式(1.34)に代入すると、消色中心露光エネルギー密度ε0dの最大値
ε0d ≒0.6511
が決定される。
この値を式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)に代入すると、それぞれの観測ノードでの露光エネルギー密度が算出される。
σ0 =0.75
σh ≒0.6124
σf =0.5
この最小スポット半径での、全面消色画像パターンに対する線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を図8に示す。図8に示すように、消色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≦σd≦ξdm
となり、消色条件を保持している。
最大スポット半径の場合の図7と最小スポット半径の場合の図8を比較すると、最大スポット半径の場合の方が、露光エネルギー密度分布は均一である。しかしながら、最小スポット半径の場合の方が、空間周波数がより高い画像パターンの形成に対して好適である。
【0062】
次に、すべての画素を発色とする全面発色画像パターンに対応する、スポット半径の有効設定範囲を示す。
数値条件として
ξc =1.0
ξf =ξc
を設定する。
まず式(1.23)
a =(1+4χ2+4χ4)/(4χ+ 8χ5)
からにχ対するaを算出する。したがって、aの値は、全面消色パターンの場合と同じになる。
次に、式(1.20)の中心露光エネルギー密度ξ00を、発色中心露光エネルギー密度ξ0cとすると、
σf =ε0c(4χ + 8χ5)
これに、条件σf =ξdを代入すし、全面発色画像パターンを形成するするのに必要な、χ対する最小発色中心露光エネルギー密度ε0cを算出する。
ε0c =ξc/(4χ + 8χ5) ・・・(1.38)
算出されたξ0d を用いて式(1.18)から、σ0を求める。
σ0 =ε0c(1+4χ2+4χ4) ・・・(1.39)
同様に 式(1.18)から、σhを求める。
σh =ε0cχ1/2(2+ 4χ2+ 2χ4 +4χ6) ・・・(1.40)
以上より、パラメーターa、累積露光エネルギー密度σ0、σh、σfを
0>χ≧0.5
の条件で図9にプロットする。
また、以下のように具体的な数値a
ξcm =1.5
a =ξcm/ξc =1.5/1.0 =1.5
を設定し、これを式(1.23)
1-a4χ+4χ2+4χ4-a8χ5=0
代入して、周知の2分法やニュートン法を用いると、
最小のスポット半径に対応する解
χ2≒0.1915
が求められる。これを図9に示す。
よって、χの有効設定範囲は
0.1915≦χ≦0.5
となる。これを、式(1.5)によって、無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
1.556 ≦w0/r0≦2.402 ・・・(1.41)
具体的な無次元化スポット半径w0/r0の有効設定範囲が得られる。
これは、露光エネルギー密度のレベルを除けば、全面消色パターンの場合と全く同様の結果である。したがって、同一のスポット半径の設定で、全面消色、全面発色とも画像形成が可能である。これは、集光光学系22が固定、すなわち、個別のレーザービーム21のスポット半径がすべて同一で固定されている画像書換方法に対して、発色消色同時形成を可能にするスポット半径条件である。
【0063】
上記の設定
1.556 ≦w0/r0≦2.402
を用いた場合の、全面発色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度分布を示す。
スポット半径w0の最大条件は、
a=1
w0/r0=2.402
χ=0.5
である。
最大のスポット半径w0の条件であるχ=0.5とξc = 1.0を、式(1.37)に代入すると、
発色中心露光エネルギー密度ε0cの最小値
ε0c ≒0.4444
が決定される。
この値を式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)に代入すると、それぞれの観測ノードでの露光エネルギー密度が算出される。
σ0 =1.0
σh ≒1.002
σf =1.0
この最大スポット半径での、全面消色画像パターンに対する線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を図10に示す。これは、露光エネルギー密度のレベルを除けば、全面消色パターンの場合と全く同様の結果である。
図10に示すように、の累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≒σc
となり、平坦な消色条件を保持している。
【0064】
次にスポット半径w0の最小値での場合を示す。
このとき条件は、
a =1.5
w0/r0=1.556
χ =0.1915
である。
最小のスポット半径w0の条件である、χ=0.1915とξc = 1.0を、式(1.37)に代入すると、中心露光エネルギー密度ε0dの最小値
ε0d ≒1.302
が決定される。
この値を式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)に代入すると、それぞれの観測ノードでの露光エネルギー密度が算出される。
σ0 =1.5
σh ≒1.225
σf =1.0
【0065】
この最小スポット半径での、全面消色画像パターンに対する線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を図11に示す。
これは、露光エネルギー密度のレベルを除けば、全面消色パターンの場合と全く同様の結果である。
図11に示すように、消色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≦σc≦ξcm
となり、消色条件を保持している。
最大スポット半径の場合の図10と最小スポット半径の場合の図11とを比較すると、最大スポット半径の場合の方が、露光エネルギー密度分布は均一である。しかしながら、最小スポット半径の場合の方が、空間周波数がより高い画像パターンの形成に対して好適である。
【0066】
本発明による最適化されたスポット半径設定では、同一のスポット半径の設定で、全面消色、全面発色とも画像形成可能である。これは、集光光学系22が固定、すなわち、個別のレーザービーム21のスポット半径がすべて同一で固定されているレーザーアレイを用いた画像書換方法に対して好適であり、発色同時消色での画像形成が実現できる。この発色同時消色により、ハロゲンランプや温風吹き出し装置等の記録媒体一様加熱方式の消色手段が不要になった。これにより、画像書換装置が小型・単純化できコストダウンが容易となる。
【0067】
レーザーアレイによる露光では、画素のピッチの半分程度のスポット半径設定では、スポット中心部と周辺部の露光エネルギー密度のムラのために、画像に濃度ムラが発生する。
本発明による画素半径の約1.5から2.5倍程度のスポット半径により、スポット中心部と周辺部の露光エネルギー密度は発色および消色特性と完全に適合しているため、ムラのない高画質の画像形成が可能になる。
【0068】
本発明によるスポット半径設定は、約1画素半径程度の幅をもつ。これは、形成する各種の画像パターンによる最適化可能範囲である。例えば、大面積の均一べた画像を印刷するのに適した画像書換方法としては、大きめのスポット半径を採用する、あるいは細かい画像から大面積の画像まで、用途の広い画像書換方法としては、小さめのスポット半径を採用する等の、求められる印刷特性への細やかな適合化が可能である。
【0069】
本発明による最適化されたスポット半径設定によれば、露光エネルギー密度は記録媒体10の発色および消色特性と完全に適合している。このため、レーザービーム21によるスポット周辺部での十分な露光エネルギー密度を維持しつつ、かつスポット中心部で過剰な露光エネルギー密度になることない。これにより、記録媒体の材料に熱分解、熱変形等の重大なダメージを与えることがないので、記録媒体の書換え寿命を、記録媒体の材料自身がもつ、材料本来の特性まで発揮することができる。
【0070】
第1実施形態で示した全面消色および全面発色パターンでの有効なスポット半径の範囲は、空間周波数がより高い画像パターンの形成に対しては広すぎて、不十分である。
例えば、スポット半径の最大条件w0/r0=2.402を用いた場合には、
最小画像パターン面積≧3画素ピッチ×3画素ピッチ=6r0×6r0
程度になり、レーザービーム21の配列ピッチが2r0にもかかわらず、3倍も粗い画像しか形成できないことになる。そこで第2実施形態では、正方格子での最大の空間周波数をもつ、チェッカーボード画像パターンを実現する有効スポット半径の範囲を示す。
この場合の2元空間周波数は
ν= ((2/4)2 + (2/4)2)1/2 ≒ 0.7071
である。
【0071】
図12(a)、図12(b) 、図12(c)に、1つの発色画素、消色画素が上下左右で交互に配置されているチェッカーボード画像パターンに対応する、発消色露光パターンを示す。各観測ノードの設定は図4(a)、図4(b) 、図4(c)と同様である。
式(1.8)を用いて、図12(a)、図12(b) 、図12(c)に示す、記録媒体10上の各観測ノードの累積露光エネルギー密度を算出する。
このときスポット円31は以下の2種類となっている。
発色スポット31a
ε0c :発色中心露光エネルギー密度
をもつ。
消色スポット31b
ε0d :消色中心露光エネルギー密度
をもつ。
図12(a)において、中心ノード32が発色条件の場合、すなわち発色中心ノード32aの場合の累積露光エネルギー密度をσC0とすると、
σC0 =ε0c(1+4χ4)+ε0d4χ2 ・・・(2.1)
また、図12(a)において、発色中心ノード32a に隣接する消色中心ノード32bの累積露光エネルギー密度σD0 とすると、この場合は、スポット円31の発色スポットと消色スポットを入れ替えて中心ノード32が消色条件の場合、すなわち発色中心ノード32a と消色中心ノード32b の位置を入れ替えて計算すればよいので、式(2.1)から、
σD0 =ε0d(1+4χ4)+ε0c4χ4 ・・・(2.2)
となる。
図12(b) において、中間ノード33における累積露光エネルギー密度をσCDhとすると、
σCDh=χ1/2(ε0c(1+2χ2+χ4+2χ6)+ε0d(1+2χ2+χ4+2χ6)) ・・・(2.3)
となる。
図12(c)において、面心ノード34における累積露光エネルギー密度をσCDfとすると、
σCDf =ε0c(2χ+4χ5)+ε0d(2χ+4χ5) ・・・(2.4)
となる。
したがって、
式(2.2)、式(2.3)からξ0dを消去して、
ε0c =(σCDh(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2x2+x4+2x6)-σD0)/(1-4χ2+4χ4) ・・(2.5)
式(2.2)、式(2.3)からξ0cを消去して、
ε0d =-(4σCDh χ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-σD0)/(1-4χ2+4χ4) ・・・(2.6)
式(2.5)、式(2.6)の結果を式(2.1)に代入して
σC0 =σCDh(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-σD0 ・・・(2.7)
となる。
【0072】
本実施例における、チェッカーボード画像パターンに露光エネルギー密度が満たすべき条件は、
消色中心ノード32における消色中心露光エネルギー密度ε0dがゼロ以上
消色中心ノード32における累積露光エネルギー密度σD0が最大消色エネルギー密度ξdm以下
発色中心ノード32における累積露光エネルギー密度σC0が最大発色エネルギー密度ξcm以下
中間ノード33における累積露光エネルギー密度σCDhが最小発色エネルギー密度ξc以上
のと設定する。
この条件より、
σD0=ξdm
σCDh=ξc
とおいて、新たに許容累積露光エネルギー密度比であるパラメーターbcを導入する。
bc =σCDh/σD0=ξc/ξdm=Mc/Mdm ・・・(2.8)
bc の意味するところは記録媒体10の特性として、消色可能な最大の露光エネルギー密度と発色可能な最小の露光エネルギー密度の幅、すなわち画像の良好なコントラストを得るための必要最小露光エネルギー密度比を示す。
また、新たにMdm基準の各無次元中心露光エネルギー密度および無次元累積露光エネルギー密度を
ε0cB =ε0c/ξdm ・・・(2.9)
ε0dB =ε0d/ξdm ・・・(2.10)
σC0B =σCO/ξdm ・・・(2.11)
とする。
【0073】
これらを用いると、
式(2.5)から
ε0cB =(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4) ・・・(2.12)
式(2.6)から
ε0dB =-(4bcχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4) ・・・(2.13)
式(2.7)から
σC0B =bc(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1 ・・・(2.14)
が得られる。
【0074】
最大のスポット半径では、スポット円31の重なり合いが最大になり、このとき許される最小の消色中心露光エネルギー密度ε0dBはゼロである。したがって、式(2.12)においてε0dB=0として
-(4bcχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)=0 ・・・(2.15)
さらに、0<χ≦0.5においては(1-4χ2+4χ4)>0であるから
4bcχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1=0 ・・・(2.16)
となり、この解をχ=χ3とする。
ところで、式(1.28) 、式(1.29)からχの設定範囲は
0<χ≦0.5
であるから、χ3が0<χ≦0.5の条件を満たさない場合がある。この場合は、
χ3=χ1=0.5 ・・・(2.17)
とする。
このχ3を式(1.5)に代入すると、許容される最大のスポット半径w3が
w3/r 0= 2/log(1/χ3)1/2 ・・・(2.18)
として設定される。
【0075】
最小のスポット半径では、スポット円31の重なり合いが最小になり、発色中心露光エネルギー密度ε0cBは最大値となる。このとき発色中心ノード32における累積露光エネルギー密度σC0Bは最大発色エネルギー密度ξcm以下となる必要がある。
したがって、新たに許容累積露光エネルギー密度比であるパラメーターbcmを導入し
bcm =σC0B =ξcm/ξdm=Mcm/Mdm ・・・(2.19)
とする。式(2.14)においてパラメーターbcm をσC0Bに代入した
0 =bc(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1-bcm ・・・(2.20)
の解をχ4とする。この解χ4を式(1.5)に代入すると、
許容される最小のスポット半径w4が
w4/r 0= 2/log(1/χ4)1/2 ・・・(2.21)
として設定される。
以上より、χの設定範囲は
χ4≦χ≦χ3 ・・・(2.22)
したがって、レーザービーム21のスポット半径w0を、
w4/r0≦w0/r0≦w3/r0 ・・・(2.23)
の関係を満たすように設定することで、記録媒体10の発色および消色特性と関連し、チェッカーボード画像パターンを良好に画像形成する良好な画像形成が可能な、光熱変換型画像書換方法を得ることができる。
【0076】
式(2.23)を満たす例として、チェッカーボード画像パターンに対応するスポット半径の有効設定範囲を示す。
数値条件として
ξd =0.5
ξdm =0.75
ξc =1.0
ξcm =1.5
σD0=ξdm=0.75
σCDh=ξc=1.0
を設定する。
式(2.5)
ε0c =(σCDh(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-σD0)/(1-4χ2+4χ4)
式(2.6)
ε0d =-(4σCDh χ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-σD0)/(1-4χ2+4χ4)
式(2.7)
σC0 =σCDh(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-σD0
に上記の数値条件を代入してχに対するε0c、ε0d、σC0を求める。
また、これらの値より式(2.4)
σCDf =ε0c(2χ+4χ5)+ε0d(2χ+4χ5)
よりσCDfを求める。
以上より、中心露光エネルギー密度ε0c、ε0d、累積露光エネルギー密度σC0、σCDfの値を
0>χ≧0.5
の条件で図13にプロットする。
【0077】
また、具体的な数値
b =σCDh/σD0=ξc/ξdm=1.0/0.75=4/3=1.333
を式(2.16)
4bχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1=0
代入すると、最大のスポット半径に対する解
χ3 ≒0.4015
が求められる。
さらに具体的な数値
Mcm/Mdm=ξcm/ξdm=1.5/0.75=2
を設定し、式(2.17)
0=b(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1-Mcm/Mdm
代入してすると、最小のスポット半径に対する解
χ4 ≒0.2467
が求められる。
よって、χの有効設定範囲は
0.2467≦χ≦0.4015 ・・・(2.24)
となる。これを図13に示す
χの有効設定範囲を、式(1.5)によって、無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
1.691≦w0/r0≦2.094 ・・・(2.25)
具体的な無次元化スポット半径w0/r0の有効設定範囲が得られる。
式(2.20)の値を、全面消色の有効設定範囲式(1.37)、同じ値の全面発色の有効設定範囲式(1.41)
1.556 ≦w0/r0≦2.402
と比較すると、有効設定範囲が狭くなっていることがわかる。
【0078】
本発明による画素半径の約1.7から2.1倍程度のスポット半径により、正方格子での最大の空間周波数をもつ、チェッカーボード画像パターンでの画像形成が可能になる。この最大の空間周波数をもつ画像パターンの形成が可能であるということは、これ以下の空間周波数を画像パターンの形成に対しても、同一のスポット半径の有効設定範囲で対応可能であるということを示している。各画像パターンに応じて最適化する必要があるのは、各結像スポットに対応する露光エネルギーのみであり、これに対しては周知のパルス幅変調制御やパワー変調制御で対応可能である。
【0079】
レーザーアレイモジュール20では最大ワット数が、半導体レーザーチップの仕様の最も重要な仕様の一つで、できるだけその最大ワット数が小さいほうがコストからみて有利である。したがって、画素形成時間すなわち1画素あたりのレーザー露光時間t0が決定されている場合において、画像形成に必要な最大エネルギーを最小にする最適スポット半径の条件を示す。まず、ビームエネルギー密度の極小値を求める。
画像形成に必要なエネルギーは、ビームエネルギー密度ρrは式(1.13)より
ρr=ε002/log(1/χ)
である。
ここで、ビームエネルギー密度ρrの極小値を求めるために、0<χ≦0.5の範囲でρr<をχで微分すると
dρr/dχ=(ε00’log(1/χ)+ ε00 /χ)/log(1/χ)2 ・・・(3.1)
ここで、
ε00’= dε00/dχ
である。
ビームエネルギー密度ρr極小値を求めるためにdρr/dχ=0とすると、0<χ≦0.5の範囲で
0=ε00’log(1/χ)+ξ00 /χ ・・・(3.2)
となる。これがビームエネルギー密度ρrの極小値を求めるための式である。
【0080】
正方格子での最大の空間周波数をもつ、チェッカーボード画像パターンでのχの有効設定範囲は式(2.22) 、式(2.23)より、
χ4≦χ≦χ3
w4/r0≦w0/r0≦w3/r0
であるので、この範囲から、画像形成に必要な最大エネルギーを最小にするポイントを求める。
チェッカーボード画像パターンにおける最大の中心露光エネルギー密度は、発色中心露光エネルギー密度の式(2.12)
ε0cB =(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)
のε0cBで示される。
また、新たにMdm基準の無次元ビームエネルギー密度を
ρrB=ρr/ξdm ・・・(3.3)
とすると、チェッカーボード画像パターンに対する最大のビームエネルギー密度は、式(1.13)より
ρrB=ε0cB2/log(1/χ) ・・・(3.4)
ρrB=2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)・・・(3.5)
となり、発色ビームエネルギー密度ρrBが決定される。
無次元化の基準をMcにそろえると
ρr=ξdm2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)・・・(3.6)
となり、これはグラフを描くのに使用される。
また、式(2.5)を微分すると、
dε0cB/dχ=(bc((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)(1+2χ2+χ4+2χ6)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5))/(1+2χ2+χ4+2χ6)2・(1-4χ2+4χ4)-(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)・(-8χ+16χ3))/(1-4χ2+4χ4)2
となる。ここで式(3.1)を用いると、
dρr/dχ=log(1/χ)・(bc((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)(1+2χ2+χ4+2χ6)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5))/(1+2χ2+χ4+2χ6)2・(1+4χ4-4χ2)-(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)- 1)(-8χ+16χ3))/(1-4χ2+4χ4)2+1/χ・(b(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1+4χ4-4χ2) ・・・(3.7)
この式(3.6)より極小値を求めるための式は
0=log(1/χ)・(bc((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)(1+2χ2+χ4+2χ6)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5))/(1+2χ2+χ4+2χ6)2・(1+4χ4-4χ2)-(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)- 1)(-8χ+16χ3))/(1-4χ2+4χ4)2 +1/χ・(bc (χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1+4χ4-4χ2)
0<x≦0.5においては
0=log(1/χ)・((bc((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5)/(1+2χ2+χ4+2χ6))-(bc(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6))(-8χ+16χ3)/(1+4χ4-4χ2))+1/χ・(bc(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6)) ・・・(3.8)
となる。
【0081】
正方格子での最大の空間周波数をもつ、チェッカーボード画像パターンでのχの有効設定として、画像形成に必要なエネルギーを最小にする、すなわち、最大のビームエネルギー密度ρr を最小にする条件の一つは、ビームエネルギー密度をρrの極小値であるから、式(3.8)の解χ5が求める最適値となる。
【0082】
ところが、チェッカーボード画像パターンにおいては、前提条件として、
式(2.16)
4bcχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1=0
の解χ=χ3
式(2.20)
0=b(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1-bcm
の解χ=χ4
を用いた条件式(2.21)
χ4≦χ≦χ3
によってχの範囲が限定されている。
したがって式(3.8)の0<χ≦0.5における解χ5は、
χ4≦χ5≦χ3 ・・・(3.9)
を満たしている場合にのみ、最適値として採用される。
そこで、条件式(3.11)が成立しない場合は、
式(3.4)のχにχ3、χ4を代入し
ρrB3=2/log(1/χ3)・(bc(χ3-1/2+4χ37/2)/(1+2χ32+χ34+2χ36)-1)/(1-4χ32+4χ34)・・・(3.10)
ρrB4=2/log(1/χ4)・(bc(χ4-1/2+4χ47/2)/(1+2χ42+χ44+2χ436)-1)/(1-4χ42+4χ44)・・・(3.11)
ρr3 、ρr4 のうち、どちらか小さい値を示すχ3もしくはχ4をχ5として採用し、
条件式(3.9)
χ4≦χ5≦χ3
が成立するように再設定する。
このχ5を式(1.5)に代入すると、ビームエネルギー密度を最小にするスポット半径w5が
w5/r 0= 2/log(1/χ5)1/2 ・・・(3.12)
として設定される。
【0083】
式(3.12)を満たす例として、チェッカーボード画像パターンに対応する、ビームエネルギー密度を最小にするスポット半径の例を示す。
数値条件として
ξd =0.5
ξdm =0.75
ξc =1.0
ξcm =1.5
σD0=ξdm=0.75
σCDh=ξc=1.0
bc =σCDh/σD0=ξc/ξdm=1.0/0.75
を設定する。
式(3.5)
ρrB=2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)
を用いて、χに対するビームエネルギー密度を求める。
無次元化の基準をそろえるため、式(3.6)を用いてρrBを変換したビームエネルギー密度ρr、式(2.5)、式(2.6)用いて中心露光エネルギー密度ε0c、ε0dを
0>χ≧0.5
の範囲で図14にプロットしてある。
図14に示すように、発色中心露光エネルギー密度ε0cの最小値を示すχは、発色ビームエネルギー密度ρrの最小値を示していない。これは、ビームエネルギー密度ρrは露光するスポット面積と比例関係にあるためである。
【0084】
また、この条件で式(3.8)
0=log(1/χ)・((b((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5)/(1+2χ2+χ4+2χ6))-(b(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6))(-8χ+16χ3)/(1+4χ4-4χ2))+1/χ・(b(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6))
の解
χ5≒0.2059
が得られる。
このとき式(3.5)から
ρr5≒2.604
ところが、このχ5値は、チェッカーボード画像パターンにおけるχの有効設定範囲の条件式(2.24)
0.2467≦χ≦0.4015
を満たしていない。
そこで式(3.5)のχに
χ3 ≒0.4015
χ4 ≒0.2467
を代入すると
ρrB3≒3.450
ρrB4≒2.632
となる。ここで
ρrB4<ρrB3
であるから、0>χ≧0.5でのビームエネルギー密度を最小にする条件は
χ5=χ4 ≒0.2467
よって、χ5の最適設定値を、式(1.5)によって無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
w5/r0≒1.691 ・・・(3.20)
が得られる。
ただし、図14には、無次元化の基準をそろえるため式(3.6)から
ρr3≒2.587
ρr5=ρr4≒1.974
が算出され、プロットされている。
したがって、χ5=χ4 ≒0.2467の設定で最大ビームエネルギー密度が最小になる。すなわち、最小パワーのレーザーアレイモジュール20でチェッカーボード画像パターンの画像形成が可能になる。
【0085】
上記の最適スポット半径
χ5=0.2467
w0/r0=1.691
を用いた場合の、チェッカーボード画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を示す。
最適のスポット半径の条件を式(2.5)、式(2.6)に代入すると、発色中心露光エネルギー密度ε0c、消色中心露光エネルギー密度ε0d
ε0c≒1.381
ε0d≒0.4077
が算出される。
この消色中心露光エネルギー密度ε0d、中心露光エネルギー密度ε0cの値を式(2.1)、式(2.2)、式(2.3)、式(2.4) に代入すると、それぞれの観測ノードでの累積露光エネルギー密度が算出される。
σC0 ≒1.50
σD0 = 0.75
σCDh= 1.0
σCDf ≒0.8892
この最適スポット半径での、チェッカーボード画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を図15に示す。
【0086】
図15のグラフは、図12(a)に示す線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を示していて、
線分A-Aでは、ピークが発色中心ノードでの値、ボトムが消色中心ノードでの値を示している。
線分B-Bでは、ピークが中間ノードでの値、ボトムが面心ノードでの値を示している。
図15に示すように、消色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≦σd≦ξdm
となり、消色条件を保持している。
また、発色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≦σc≦ξcm
となり、発色条件を保持している。
以上、図15に示すように、最適スポット半径を用いると、チェッカーボード画像パターンに最適な累積露光エネルギー密度分布が実現できる。
【0087】
最大の空間周波数をもつチェッカーボード画像パターンの最適スポット半径が求められたので、以下各種画像パターンに対して適用する。同一のスポット半径が適用されるが、各画像パターンに応じて各結像スポットに対応する露光エネルギー密度は最適化する必要がある。
【0088】
図16(a)、図16(b) 、図16(c)に、一つの発色画素の周囲すべてに消色画素が配置されている孤立発色画像パターンに対応する、発消色露光パターンを示す。図12に示すように、この画像パターンは、各観測ノードの設定は図4(a)、図4(b) 、図4(c)と同様である。
チェッカーボード画像パターンの場合と同様に、式(1.8)を用いて、記録媒体10上の各観測ノードの累積露光エネルギー密度を算出することができる。
このときスポット円31の中心露光エネルギー密度は以下の2種類とする。
発色スポット31a
ε0c :発色中心露光エネルギー密度
をもつ。
消色スポット31b
ε0d :消色中心露光エネルギー密度
をもつ。
【0089】
チェッカーボード画像パターンでの最適スポット半径
χ5=0.2467
w0/r0=1.691
を用いて、孤立発色画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を示す。
最適のスポット半径の条件から、発色中心露光エネルギー密度ε0c、消色中心露光エネルギー密度ε0d
ε0c≒1.313
ε0d≒0.5596
が算出される。
この消色中心露光エネルギー密度ε0d、中心露光エネルギー密度ε0cの値を用いて、図16(a)、図16(b) 、図16(c)に示す、それぞれの観測ノードでの累積露光エネルギー密度が算出される。
σC0 ≒1.475
σ1D0 = 0.75
σ2D0 = 0.7069
σCDh= 1.0
σCDf ≒0.7422
図16(a)では、発色中心ノード32に隣接する消色中心ノードは、累積露光エネルギー密度の違いから以下の2種類に分類されている。
σ1D0 :発色中心ノード32aと直交方向に隣接する消色中心ノード32b1
σ2D0 :発色中心ノード32aと対角方向に隣接する消色中心ノード32b2
この最適スポット半径での、孤立発色画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を図17に示す。
図17のグラフは、図16(a)に示す線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を示していて、
線分A-Aでは、中心のピークが発色中心ノードでの値を示している。
線分B-Bでは、各ピークが消色中心ノードでの値を示している。
図17に示すように、発色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≦σc≦ξcmとなり、発色条件を保持している。
【0090】
また、発色中心ノード付近以外での累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≦σd≦ξdm
となり、消色条件を保持している。
以上、図17に示すように、チェッカーボード画像パターンでの最適スポット半径を用いると、孤立発色画像パターンにおいても、十分条件を満たす累積露光エネルギー密度分布が実現できる。
【0091】
図18(a)、図18(b) 、図18(c)に、一つの消色画素の周囲すべてに発色画素が配置されている孤立消色画像パターンに対応する、発消色露光パターンを示す。各観測ノードの設定は図4(a)、図4(b) 、図4(c)と同様である。
チェッカーボード画像パターンの場合と同様に、式(1.8)を用いて、記録媒体10上の各観測ノードの累積露光エネルギー密度を算出することができる。
このときスポット円31の中心露光エネルギー密度は以下の2種類とする。
発色スポット31a
ε0c :発色中心露光エネルギー密度
をもつ。
消色スポット31b
ε0d :消色中心露光エネルギー密度
をもつ。
【0092】
チェッカーボード画像パターンでの最適スポット半径
χ5=0.2467
w0/r0=1.691
を用いて、孤立消色画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を示す。
最適のスポット半径の条件から、発色中心露光エネルギー密度ε0c、消色中心露光エネルギー密度ε0d
ε0c≒1.192
ε0d≒0.4421
が算出される。
この消色中心露光エネルギー密度ε0d、中心露光エネルギー密度ε0cの値を用いて、図18(a)、図18(b) 、図18(c)に示す、それぞれの観測ノードでの累積露光エネルギー密度が算出される。
σD0 = 0.75
σ1C0≒1.454
σ2C0≒1.497
σCDh≒0.9607
σCDf= 1.0
図18(a)では、消色中心ノード32に隣接する発色中心ノードは、累積露光エネルギー密度の違いから以下の2種類に分類されている。
σ1C0 :消色中心ノード32bと直交方向に隣接する発色中心ノード32a1
σ2C0 :消色中心ノード32bと対角方向に隣接する発色中心ノード32a2
この最適スポット半径での、孤立消色画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を図19に示す。
【0093】
図19のグラフは、図18(a)に示す線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を示していて、
線分A-Aでは、中心のボトムが消色中心ノードでの値を示している。
線分B-Bでは、各ピークが発色中心ノードでの値を示している。
図19に示すように、消色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≦σd≦ξdmとなり、消色条件を保持している。
また、消色中心ノード付近以外での累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≦σc≦ξcm
となり、発色条件を保持している。
以上、図19に示すように、チェッカーボード画像パターンでの最適スポット半径を用いると、孤立消色画像パターンにおいても、十分条件を満たす累積露光エネルギー密度分布が実現できる。
【0094】
図20(a)、図20(b) 、図20(c)に1画素ラインが交互に発色ライン35a(線分A-A)、消色ライン35b(線分B-B)と配置されている1画素ライン画像パターンに対応する、発消色露光パターンを示す。各観測ノードの設定は図4(a)、図4(b) 、図4(c)と同様である。
チェッカーボード画像パターンの場合と同様に、式(1.8)を用いて、記録媒体10上の各観測ノードの累積露光エネルギー密度を算出することができる。
このときスポット円31の中心露光エネルギー密度は以下の2種類とする。
発色スポット31a
ε0c :発色中心露光エネルギー密度
をもつ。
消色スポット31b
ε0d :消色中心露光エネルギー密度
をもつ。
【0095】
チェッカーボード画像パターンでの最適スポット半径
χ5=0.2467
w0/r0=1.691
を用いて、1画素ライン画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を示す。
最適のスポット半径の条件から、発色中心露光エネルギー密度ε0c、消色中心露光エネルギー密度ε0d
ε0c≒1.275
ε0d≒0.5134
が算出される。
この消色中心露光エネルギー密度ε0d、中心露光エネルギー密度ε0cの値を用いて、図20(a)、図20(b) 、図20(c)に示す、それぞれの観測ノードでの累積露光エネルギー密度が算出される。
σC0 = 1.5
σD0 = 0.75
σCDh= 1.0
σCCh≒1.333 (発色ライン上の中間ノード)
σCDf=0.8889
図20(b)では、中間ノードは、累積露光エネルギー密度の違いから以下の2種類に分類されている。
σCDh :発色中心ノード32aと消色中心ノード32bの中間に位置する中間ノード33
σCCh :発色中心ノード32aと次の発色中心ノード32aの中間に位置する(発色ライン上)の中間33ノード33a
この最適スポット半径での、1画素ラインチェッカーボード画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を図21に示す。
【0096】
図21のグラフは、図20(a)に示す線分A-Aと線分C-C上での2つの累積露光エネルギー密度分布を示している。線分C-Cは発色ライン35a(線分A-A)、消色ライン35b(線分B-B)を横切る直交ラインである。
線分C-C(直交ライン)では、ピークが発色中心ノードでの値、ボトムが消色中心ノードでの値を示している。
線分A-A(発色ライン)では、ピークが発色中心ノードでの値、ボトムが発色ライン上の中間ノードでの値を示している。
【0097】
図21に示すように、発色中心ノードを連ねた発色ライン付近での累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≦σc≦ξcm となり、発色条件を保持している。
また、消色中心ノードノードを連ねた消色ライン(図21線分C-C)付近以外での累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≦σd≦ξdm
となり、消色条件を保持している。
以上、図21に示すように、1画素ライン画像パターンでの最適スポット半径を用いると、孤立消色画像パターンにおいても、十分条件を満たす累積露光エネルギー密度分布が実現できる。
【0098】
本発明による設定方法を用いると、画像形成に必要な最大のビームエネルギー密度を最小にすることができる。すなわち、最小パワーのレーザーアレイモジュール20でチェッカーボード画像パターンの画像形成が可能になる。したがって、高い光エネルギー利用効率が維持でき、レーザーアレイモジュール20の低コスト化、最大消費電量の減少に寄与する。
【0099】
本発明による、画像形成に必要な最大のビームエネルギー密度を最小にする設定方法を用いると、各種画像パターンに対して、各結像スポットに対応する露光エネルギーのみを最適化することで、同一のスポット半径で対応可能である。これにより、多様な画像を高画質で形成できる画像書換方法が提供できる。
【0100】
レーザーアレイモジュール20における各々のレーザービーム21が形成するスポット半径のばらつき、あるいは、レーザーパワーのばらつき、あるいは記録媒体10の温度変動等による発色消色特性の不安定性を考慮すると、均一で安定した画像形成を実現するためには、式(3.8)の解である、チェッカーボード画像パターンでのビームエネルギー密度ρrの極小値を使用するスポット半径の採用が望ましい。
しかしながら、式(3.8)の0<χ≦0.5における解χ5は、条件式(3.9)
χ4≦χ5≦χ3
を満たしている場合にのみ最適値として採用されるので、すべての条件で解χ5を使用することはできない。
【0101】
ところで、 (3.8)で使用するパラメーターbcは式(2.8)から
bc =σCDh/σD0 ・・・(4.1)
である。したがって、中間ノードの累積露光エネルギー密度σCDhと、消色中心ノードの累積露光エネルギー密度σD0を調整し、使用する条件に対して解χ5を条件式(3.9)
χ4≦χ5≦χ3
満たようにすることは可能である。
パラメーターbcの調整範囲は
ξdm<σCDh≦ξc ・・・(4.2)
ξdm≦σD0 <ξc ・・・(4.3)
であり、これを変形すると
Md/Mdm<σCDh≦Mc/Mc
Md/Mdm≦σD0 <Mc/Mc
となり、最終的に
Md/Mdm<σCDh≦1 ・・・(4.4)
Md/Mdm≦σD0 <1 ・・・(4.5)
が得られる。
【0102】
式(4.4)での調整は、σCDh≦1として、チェッカーボード画像パターンでの発色画素(ドット)の半径をやや小さくする方法である。
式(4.5)での調整は、Md/Mdm≦σD0として、チェッカーボード画像パターンでの消色画素(ドット) の濃度をやや上げる、あるいは消色画素の半径をやや小さくする方法である。
また、σCDhとσD0の両方の値を調整することも可能である。
このような画質の微調整は、最大の空間周波数をもつチェッカーボード画像パターンに対してのみ大きく作用するが、チェッカーボード画像パターン以外の比較的小さなの空間周波数をもつ画像パターンに対しては、画質変化の度合いは小さい。
【0103】
まず、チェッカーボード画像パターンでの発色画素(ドット)の直径をやや小さくする方法の例を示す。
チェッカーボード画像パターンにおける数値条件として、
ξd =0.5
ξdm =0.75
ξc =1.0
ξcm =1.5
を設定する。
第3実施形態における設定
σD0=ξdm=0.75
σCDh=ξc=1.0
bc =σCDh/σD0≒1.333
を初期値として、これを調整する。
例えば、σD0に対してσD0-h、σCDhに対してσCDh-h、 bcに対して bc-hを調整値をとして
σD0-h=0.75 ・・・(4.6)
σCDh-h =0.9591<1 ・・・(4.7)
bc-h=σCDh-h /σD0-h≒1.279 ・・・(4.8)
のように設定する。
このとき、中間ノードの累積露光エネルギー密度σCDh-h は0.9591<1であり、最小発色エネルギー密度ξc=1を下回っている。このため、画素半径r0の位置にある中間ノードでは十分な発色濃度が得られず、結果として、発色画素の直径がやや小さくなる。
次にbc-hを式(3.5)
ρrB=2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)
のbcに代入して、χに対するビームエネルギー密度を求める。
【0104】
無次元化の基準をそろえるため、式(3.6)を用いてρrBを変換したビームエネルギー密度ρr、式(2.5)、式(2.6)用いて中心露光エネルギー密度ε0c、ε0dを
0>χ≧0.5
の範囲で
図22にプロットしてある。
また、調整された条件で式(3.8) の解χ5-hは
χ5-h≒0.2164 ・・・(4.9)
となり、
このとき式(3.5)から対応するビームエネルギー密度ρr5-hは
ρr5-h≒2.435
となる。
一方、調整された条件を式(2.16)、式(2.20)に適用すると、チェッカーボード画像パターンにおけるχの有効設定範囲の条件式も変更され、
χ3 ≒0.4209
χ4 ≒0.2164
となり、新たなχの有効設定範囲
0.2164≦χ≦0.4209 ・・・(4.10)
が得られる。
χ5-h値は、新たなχの有効設定範囲
0.2164≦χ5-h≦0.4209
を満たしている。
よって、χ5の最適設定値を、式(1.5)によって無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
w5-h/r0≒1.617 ・・・(4.11)
が得られる。
ただし、図22には、無次元化の基準をそろえるため式(3.6)から
ρr5-h≒1.826 ・・・(4.12)
が算出され、プロットされている。
したがって、調整された設定で最大ビームエネルギー密度が極小かつ最小になる。すなわち、最小パワーのレーザーアレイモジュール20で、均一かつ安定な画像形成が可能になる。
【0105】
次に、チェッカーボード画像パターンでの消色画素(ドット) の濃度をやや上げる、あるいは消色画素の直径をやや小さくする方法の例を示す。
チェッカーボード画像パターンにおける数値条件として、
ξd =0.5
ξdm =0.75
ξc =1.0
ξcm =1.5
を設定する。
第3実施形態における設定
σD0=ξdm=0.75
σCDh=ξc=1.0
bc =σCDh/σD0≒1.333
を初期値として、これを調整する。
例えば、σD0に対してσD0+d、σCDhに対してσCDh+d、 bcに対して bc+dを調整値をとして
σD0+d=0.8094 ・・・(4.13)
σCDh+d=1.0 ・・・(4.14)
bc+d=σCDh+d/σD0+d≒1.236 ・・・(4.15)
のように設定する。
このとき、消色中心ノードの累積露光エネルギー密度σD0+dは0.75<0.8094であり、最大消色エネルギー密度ξdm =0.75を上回っている。このため、消色中心ノードでは十分な消色濃度以上のエネルギー密度で露光されてしまう。結果として、消色画素の中心濃度が初期値の場合よりやや上昇する。
次にbc+dを式(3.5)
ρrB=2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)
のbcに代入して、χに対するビームエネルギー密度を求める。
無次元化の基準をそろえるため、式(3.6)を用いてρrBを変換したビームエネルギー密度ρr、式(2.5)、式(2.6)用いて中心露光エネルギー密度ε0c、ε0dを
0>χ≧0.5
の範囲で図23プロットしてある。
また、調整された条件で式(3.8) の解χ5+dは
χ5+d≒0.2269 ・・・(4.16)
となり、
このとき式(3.5)から対応するビームエネルギー密度ρr5+dは
ρr5+d≒2.297
となる。
一方、調整された条件を式(2.16)、式(2.20)に適用すると、チェッカーボード画像パターンにおけるχの有効設定範囲の条件式も変更され、
χ3 ≒0.4388
χ4 ≒0.2269
となり、新たなχの有効設定範囲
0.2269≦χ≦0.4388 ・・・(4.17) が得られる。
χ5+d値は、新たなχの有効設定範囲
0.2269≦χ5+d≦0.4388
を満たしている。
よって、χ5の最適設定値を、式(1.5)によって無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
w5+d/r0≒1.642 ・・・(4.18)
が得られる。
ただし、図23は、無次元化の基準をそろえるため式(3.6)から
ρr5+d≒1.859 ・・・(4.19)
が算出され、プロットされている。
したがって、調整された設定で最大ビームエネルギー密度が極小かつ最小になる。すなわち、最小パワーのレーザーアレイモジュール20で、均一かつ安定な画像形成が可能になる。
【0106】
上記の2つの修正された極小スポット半径
χ5-h=0.2164
χ5+d=0.2269
を、チェッカーボード画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を示す図24で比較する。
図24のグラフは、図12(a)に示す線分A-Aでの2つスポット半径に対するの累積露光エネルギー密度分布を示している。
実線で示される累積露光エネルギー密度σ-hは発色画素の直径縮小調整の例で、以下の値がプロットされている。
χ5-h=0.2164 : 発色画素の直径縮小調整
σD0-h=0.75 :消色中心ノードでの累積露光エネルギー密度は初期値と同じ
σCDh-h=0.9591 :調整された中間ノードでの累積露光エネルギー密度
σC0=1.5 :発色中心ノードでの累積露光エネルギー密度は初期値と同じ
2r-h≒1.869r0 :縮小された発色画素の直径
破線で示される累積露光エネルギー密度+dは消色画素の濃度上昇調整の例で、以下の値がプロットされている。
χ5+d≒0.2269 : 消色画素の濃度上昇調整
σD0+d=0.8094 :調整された消色中心ノードでの累積露光エネルギー密度
σCDh+d=1.0 :中間ノードでの累積露光エネルギー密度は初期値と同じ
σC0=1.5 :発色中心ノードでの累積露光エネルギー密度は初期値と同じ
2r+d=2r0 :発色画素の直径は初期値と同じ
【0107】
図24に示すように、発色画素の直径縮小調整では、発色画素の直径が小さくなっている
2r-h<2r+d=2r0
また、消色画素の濃度上昇調整では消色中心ノードの累積露光エネルギー密度が最大消色エネルギー密度を超えている。このことは消色画素の中心濃度が初期値のより上昇することを意味している。
ξdm =σD0-h<σD0+d
一方また、発色中心ノードでの累積露光エネルギー密度の分布は、どちらの調整方法でも
σC0=ξcm
となり、最大発色エネルギー密度を上回らず、記録媒体10に対して、熱分解、熱変形等の重大なダメージを与えることはない。
【0108】
本発明で示すパラメーターbcの調整により、ビームエネルギー密度の極小値を使用するスポット半径が採用でき、レーザーアレイモジュール20における各々のレーザービーム21が形成するスポット半径のばらつき、あるいは、レーザーパワーのばらつきを吸収する均一な画像形成を実現できる。
【0109】
また、ビームエネルギー密度が極小値を示すので、記録媒体10の温度変動等の環境変動による発色消色特性の不安定性を吸収する安定な画像形成を実現できる。
特に記録媒体10の長期間の繰返し使用による発色消色特性の変化は避けられないので、本発明で示すパラメーターbcの調整による、最大ビームエネルギー密度が極小かつ最小の採用は、長期間安定な画像形成を保障するものである。この結果、記録媒体10の長寿命化が達成される。
【0110】
本発明では、チェッカーボード画像パターンでのビームエネルギー密度ρrの極小値あるいは最小値を使用するスポット半径の採用により、各種画像パターン対応できることを示してきた。
チェッカーボード画像パターン基準のスポット半径(例えば式(3.20))を用いる設定においても、実際の画像形成において、比較的広い面積、例えば、5画素(ドット)×5画素(ドット)以上の面積を発色させる場合には、全面発色画像パターンを形成する際に使用した、発色中心露光エネルギー密度の式(1.38)
ε0c =ξc/(4χ + 8χ5)
が使用できる。
この式の無次元化を解除すると、
E0c=Mc/(4χ+8χ5) ・・・(5.1)
となる。
全面発色画像パターンにおける中心露光エネルギー密度を求める式(5.1)の設定は、各種の発色画像パターンのなかで、最小の中心露光エネルギー密度をもたらす。
そこで新たに、発色画像パターンにおける中心露光エネルギー密度の最小値をE 0cmin[J/m2]とおくと
E0cmin=Mc/(4χ+8χ5) ・・・(5.2)
を得ることができる。
【0111】
同様に、実際の画像形成において、比較的広い面積、例えば、5画素(ドット)×5画素(ドット)以上の面積を発色させる場合には、全面消色画像パターンを形成する際に使用した、消色中心露光エネルギー密度の式 (1.34)
ε0d =ξd/(4χ + 8χ5)
が使用できる。
この式の無次元化を解除すると、
E0c=Md/(4χ+8χ5) ・・・(5.3)
となる。
各種の消色画像パターンのなかで、最小の中心露光エネルギー密度をもたらす。
発色画像パターンにおける中心露光エネルギー密度の最小値をE 0dmin[J/m2]とおくと
E0dmin=Md/(4χ+8χ5) ・・・(5.4)
を得ることができる。
ただし、これは比較的広い面積での消色画像パターンに適用されるべきもので、例えば孤立消色などの場合は、消色ノードに対する中心露光エネルギーは、全面消色の場合より小さくなる。したがって、最小値のような基準にすることはできない。
【0112】
全面発色画像パターンもしく全面消色画像パターンはの設定が適用できる場合には、本発明による中心露光エネルギー密度の最小値を使用することにより、レーザーアレイモジュール20における、総露光エネルギーを削減できる。これにより、レーザーアレイモジュール20の総消費電力の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光熱変換型画像書換方法を用いた画像書換装置の基本構成を示す概略断面図。
【図2】同実施形態に係る光熱変換型画像書換方法を用いた画像書換装置の基本構成を示す概略斜視図。
【図3】同実施形態に係る光熱変換型可逆性感熱記録媒体の概略断面図。
【図4】全面発色および全面消色画像パターンに対応する発消色露光パターンの状態図で、 (a)は中心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (b)は中間ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (c)は面心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図。
【図5】全面発色および全面消色画像パターンにおいて中心露光エネルギー密度を固定した場合の、スポット半径指標と累積露光エネルギー密度の関係図。
【図6】全面消色画像パターンにおける有効スポット半径指標範囲と累積露光エネルギー密度の関係図。
【図7】最大スポット半径での全面消色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図8】最小スポット半径での全面消色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図9】全面発色画像パターンにおけるスポット半径指標と累積露光エネルギー密度の関係図。
【図10】最大スポット半径での全面発色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図11】最小スポット半径での全面発色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図12】チェッカーボード画像パターンに対応する発消色露光パターンの状態図で、 (a)は中心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (b)は中間ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (c)は面心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図。
【図13】チェッカーボード画像パターンにおける有効スポット半径指標範囲と中心露光エネルギー密度および累積露光エネルギー密度の関係図。
【図14】チェッカーボード画像パターンにおける最適スポット半径指標と中心露光エネルギー密度、累積露光エネルギー密度およびビームエネルギー密度の関係図。
【図15】最適スポット半径でのチェッカーボー画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図16】孤立発色画像パターンに対応する発消色露光パターンの状態図で、 (a)は中心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (b)は中間ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (c)は面心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図。
【図17】最適スポット半径での孤立発色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図18】孤立消色画像パターンに対応する発消色露光パターンの状態図で、 (a)は中心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (b)は中間ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (c)は面心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図。
【図19】最適スポット半径での孤立消色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図20】1画素ライン画像パターンに対応する発消色露光パターンの状態図で、 (a)は中心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (b)は中間ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (c)は面心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図。
【図21】最適スポット半径での1画素ライン画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図22】チェッカーボード画像パターンにおける、発色画素の直径縮小調整での、スポット半径指標と中心露光エネルギー密度、累積露光エネルギー密度およびビームエネルギー密度の関係図。
【図23】チェッカーボード画像パターンにおける、消色画素の濃度上昇調整での、スポット半径指標と中心露光エネルギー密度、累積露光エネルギー密度およびビームエネルギー密度の関係図。
【図24】修正された2つの極小スポット半径でのチェッカーボード画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【符号の説明】
【0114】
10…光熱変換型可逆性感熱記録媒体(記録媒体)、
11…前回の記録画像、12…今回の記録画像、
13…支持体、14…可逆性感熱記録層、15…保護層、
20…レーザーアレイモジュール、21…レーザービーム、
22…集光光学系、23…半導体レーザーアレイ、24…レーザーアレイドライバ、
30…累積範囲、31…スポット円、31a…発色スポット、31b…消色スポット、
32…中心ノード、
32a…発色中心ノード、
32a1…直交方向に隣接する発色中心ノード、32a2…対角方向に隣接する発色中心ノード、
32b…消色中心ノード、
32b1…直交方向に隣接する消色中心ノード、32b2…対角方向に隣接する消色中心ノード、
33…中間ノード、34…面心ノード、
35a…発色ライン、35b…消色ライン、
90…媒体搬送装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】
【特許文献1】特開2003-246144号公報
【特許文献2】特開平7-61036号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギの移動を制御することにより発色および消色が可能な可逆性感熱記録媒体を用いる画像書換装置に関し、特に光による熱エネルギの付与を行う非接触画像書換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無色ないし淡色のロイコ染料と、加熱・冷却よりこのロイコ染料を発色させ、再加熱して消色させる可逆性を有する顕色剤を用いた可逆性感熱記録媒体と、微小な発熱体をアレイ上に集積したサーマルヘッドを使用して、この可逆性感熱記録媒体に画像様に熱エネルギを接触により移動させ可視化画像を形成し、記録媒体の多数回書換を可能にした画像書換方法、装置、可逆性感熱記録媒体等が知られている。
【0003】
このサーマルヘッドを用いた装置では、十分な熱伝導を得るためにサーマルヘッドを記録媒体に圧接する必要があり、画像形成時にはサーマルヘッドと記録媒体は接触走行することにより、サーマルヘッド表面と記録媒体表面の磨耗が避けられなかった。また、記録媒体は多数回利用されるため、使用時における記録媒体表面の汚れや異物がサーマルヘッド表面に付着・蓄積・固着し、これがサーマルヘッドの表面を劣化を加速させ、さらには劣化したサーマルヘッドの表面により記録媒体表面の劣化も加速する。このため、サーマルヘッドのメンテナンス、交換、さらには記録媒体表面のクリーニングが必要であった。
【0004】
このようなサーマルヘッドを用いた画像書換方法の欠点を解消する手段として、光吸収熱変換層を可逆性感熱記録媒体に積層するか、もしくはロイコ染料と可逆性顕色剤を含有する記録層に光吸収熱変換材料を混合した記録媒体に、一つまたは複数のレーザービームをこの記録媒体上に合焦させて走査し、光エネルギを熱エネルギに変換せしめ画像を非接触で形成する方法や装置、すなわち光熱変換型画像書換方法や装置が開示されている(例えば特許文献1)。
【0005】
一方、従来、光プリンタ、複写機等の電子写真装置の露光装置としてとして、アレイ状に配列された光源に集光レンズを組み合わせたLEDアレイ等が使用されている。
このようなアレイ状露光装置を用いて、良好な画像を得るためにのレーザービームのスポット径、露光エネルギー、感光体の感度等の最適化条件が開示されている(例えば特許文献2) 。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の1本もしくは複数のレーザービームが可逆性感熱記録媒体上をラスター走査して画像形成する光熱変換型画像書換方法および装置においては、副走査方向に連続発色する画像形成が困難である。具体的には、1本のレーザービームが記録媒体上を主走査し、同時に主走査方向と直行方向の副走査方向に記録媒体を移動させるラスター走査を使用した場合、主走査の時間間隔が長いと、前回のレーザービームにより発色条件まで加熱・溶融した記録媒体の画素が、次のレーザービーム走査までに冷却されてしまう。
【0007】
次のレーザービーム走査では、レーザービームの露光エネルギー密度分布がガウス分布しているため、そのガウス分布の裾の部分が前回の発色画素にかかり、記録媒体の消色可能温度帯域が発色可能温度帯域よりも低いので、小さい露光エネルギー密度を示すレーザービームの大きな半径部分で、前回の発色画素を消色してしまう。したがって、主走査方向に長い画角の画像を形成する場合には、副走査方向に連続発色する画像形成が困難である。また、レーザービームの露光エネルギー密度が過大な場合には、記録媒体の熱伝導により、前回の発色画素が消色条件を満たしてしまう場合もある。
【0008】
このような、発色した画素の一部が再露光で消色する現象を防止するためには、アレイ状に配列されたレーザービームからなるレーザーアレイを露光手段に用いる方法がある。このようなレーザーアレイを露光手段においては、記録媒体の移動方向と直交する方向にすべての画素に対応するレーザービームが1ラインに配列されているので、その1ラインの画素すべてを同時に露光できる。
【0009】
したがって、次のレーザービームのライン露光までの時間間隔は十分に短くでき、前回のレーザービームにより発色条件まで加熱・溶融した記録媒体の画素の温度は、次のレーザービーム走査まで発色条件に維持される。
【0010】
しかしながら、レーザーアレイを露光手段に用いる方法においても、記録媒体をムラなく発色および消色して画像形成を行うにはいくつかの問題点がある。レーザービームの露光エネルギー密度分布はガウス分布しているため、そのガウス分布の裾に相当する部分まで記録媒体を発色させようとすると、レーザービームの中心部分では露光エネルギー密度が過剰になり、この中心部分では発色条件以上に温度上昇し、発色に必要な冷却速度が得られず逆に消色してしまう場合がある。
【0011】
さらに過大な露光エネルギー密度では、熱分解、熱変形等の記録媒体に重大なダメージを与え、可逆性感熱記録媒体の書換え寿命を低減させてしまう場合がある。また、消色しようとする画素に対しては、ガウス分布の裾に相当する部分まで記録媒体を消色させようとすると、レーザービームの中心部分では、露光エネルギー密度が大きくなり過ぎ、発色条件に達し、画素の中心部分が発色してしまう場合がある。
【0012】
このような画質の低下現象、性能の劣化現象は、レーザービームのスポット半径、露光エネルギー密度分布、可逆性感熱記録媒体の発色および消色特性との関係が適切に設定されていないために発生する。
【0013】
レーザーアレイを露光手段に用いる方法においては、1ラインのすべての画素に対して同時に個別に露光することが可能であり、このとき、発色画素、消色画素に対して同時にそれぞれの条件で露光すると、発色同時消色(消去同時書込み)ができる可能性がある。これにより、従来のハロゲンランプや温風吹き出し装置等の記録媒体を一様に加熱するの消色手段が不要になると言われている。
【0014】
また、レーザービームのスポット半径はすべて同一で固定されているため、露光条件を、発色画素、消色画素に対して同時に個別に制御するには、パルス幅変調制御やパワー変調制御等により、レーザービームの発光を制御して、記録媒体面上で露光エネルギー密度の制御を行う必要がある。
【0015】
しかしながら、このように制約の多い発色および消色特性の2つを同時に満たす条件に関しては、従来開示しているものはなく、レーザーアレイによる発色同時消色は実現されていない。
さらに、この発色および消色特性の2つを同時に満たす条件は、すべての形成すべき画像パターンに対応していなければならいので、なおいっそう発色同時消色の実現は困難である。
【0016】
一方従来、電子写真装置においては、各種のアレイ状露光装置の使用条件、設定条件が提案されている。しかしながら、これらは、感光体の感度等の電子写真材料やプロセスに対して最適化されているものであり、そのままの条件で、可逆性感熱記録方法における発色および消色特性に関して適用できるものではない。
【0017】
従って本発明の目的は、レーザービームが可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向に配列されたレーザーアレイ露光手段を用いて、発色同時消色(消去同時書込み)を可能にし、かつ記録媒体にダメージを与えず、記録媒体の全領域にわたって任意の画像パターンを良好に多数回書換形成できる、光熱変換型画像書換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、媒体の温度および温度変化速度の違いにより選択的に発色状態または消色状態をなす可逆性感熱記録媒体と、複数の独立駆動されるレーザービームが可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向に配列されたレーザーアレイ露光手段とからなり、可逆性感熱記録媒体をレーザーアレイ露光手段で所定のパターンで露光し、可逆性感熱記録媒体の発色すべき画素を発色条件に加熱し、同時に可逆性感熱記録媒体の消色すべき画素を消色条件に加熱して画像形成を行う画像書換装置において、
レーザーアレイ露光手段から出射される1つレーザービームの可逆性感熱記録媒体上における結像スポットに対して、E00[J/m2]を結像スポットの中心における露光エネルギー密度、w0[m] を結像スポットが形成する露光エネルギー密度分布において、E00/e2[J/m2] 露光エネルギー密度を示す結像スポットの中心からの距離である、 レーザービームの可逆性感熱記録媒体上のスポット半径、とし、
レーザーアレイ露光手段から出射される複数のレーザービームの可逆性感熱記録媒体上における複数の結像スポットに対して、r0[m] を複数の結像スポットのピッチ間距離の1/2長さであり、かつ形成する画素のピッチ間距離の1/2である画素半径、とし、可逆性感熱記録媒体の特性をMc [J/m2] を 最小発色エネルギー密度、Mcm[J/m2] を最大発色エネルギー密度、Md [J/m2] を最小消色エネルギー密度、Mdm[J/m2] を最大消色エネルギー密度、とし、χを変数、aをパラメーターとした方程式(1)、およびχの関係式(2)を
1-a4χ+4χ2+4χ4-a8χ5=0 ・・・(1)
w0/r0=2/log(1/χ)1/2 ・・・(2)
において、
χ1=0.5を用いて、画素半径r0で割ったスポット半径w1を
w1/r0=2/log(1/χ1)1/2
とし、
さらに、Mdm/Md、Mcm/Mcの2つの値から小さい方の値を、
aとしたときの方程式(1)の解χ2を用いて、画素半径r0で割ったスポット半径w2を
w2/r 0=2/log(1/χ2)1/2
としたとき、
スポット半径w0を画素半径r0で割った値を
w2/r0≦w0/r0≦w1/r0
の関係を満たすように設定することを特徴とする画像書換装置である。
【0019】
また本発明は、関係式(2)で定義される変数χと、bc、bcmをパラメーターとした方程式(3)、方程式(4)
4bcχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1=0 ・・・(3)
bcχ-1/2(1+4χ2+4χ4)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1-bcm=0 ・・・(4)
において、
最小発色エネルギー密度Mc [J/m2] および最大消色エネルギー密度Mdm[J/m2]用いて
bc=Mc/Mdm
としたときに、
変数χの範囲
0<χ≦0.5
における方程式(3)の解χ3を用い、
ただし、範囲0<χ≦0.5において、方程式(3)の解χ3がない場合には
解χ1を用いてχ3=χ1とし、画素半径r0で割ったスポット半径w3を
w3/r 0= 2/log(1/χ3)1/2
とし、さらに、
bcm=Mcm/Mdm
であるときの方程式(4)の解χ4を用いて、画素半径r0で割ったスポット半径w4を
w4/r0=2/log(1/χ4)1/2
としたとき、
スポット半径w0を画素半径r0で割った値を
w4/r0≦w0/r0≦w3/r0
の関係を満たすように設定することを特徴とする画像書換装置である。
【0020】
また本発明は、関係式(2)で定義される変数χと、bcをパラメーターに対する方程式(5)、方程式(6)
0=log(1/χ)・((bc((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5)/(1+2χ2+χ4+2χ6))-(bc(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6))(-8χ+16χ3)/(1+4χ4-4χ2))+1/χ・(bc(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6)) ・・・(5)
ρrB=2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4) ・・・(6)
において、
解χ3および解χ4を用いた変数χの範囲
χ4≦χ≦χ3
における方程式(5)の解χ5を用い、
ただし、範囲χ4≦χ≦χ3において、方程式(5)の解χ5がない場合には、
解χ3 を方程式(6)の変数χに代入した値をρrB3とし、
解χ4を方程式(6)の変数χに代入した値をρrB4とし、
ρrB3とρrB4でどちらか小さい値を示す、解χ3、解χ4をχ5とし、
画素半径r0で割ったスポット半径w5を
w6/r0=2/log(1/χ5)1/2
と設定することを特徴とする画像書換装置である。
【0021】
また本発明は、パラメーターbcを
bc=σCDh/σD0
として、最消発色エネルギー密度Md [J/m2] および最大消色エネルギー密度Mdm[J/m2]よる条件
Md/Mdm<σCDh≦1
Md/Mdm≦σD0 <1
の範囲でbcの値を調整し、この調整されたbcを用いた場合に、
方程式(3)および方程式(4)の解χ3および解χ4を用いた変数χの範囲
χ4≦χ≦χ3
を方程式(5)の解χ5が満たしていることを特徴とする画像書換装置である。
【0022】
また本発明は、発色する画素に対する、レーザーアレイ露光手段から出射される1つのレーザービームの露光エネルギー分布の中心の露光エネルギー密度の最小値E 0cmin[J/m2]が、
関係式(2)で定義される変数χと、最小発色エネルギー密度Mc [J/m2]用いて、
E0cmin=Mc/(4χ+8χ5)
であることを特徴とする画像書換装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、サーマルヘッドを用いた従来の画像書換方法に比べて、可逆性感熱記録媒体を格段に多い回数で繰り返し書換可能な、レーザービームが直線状に並びかつ複数同時照射可能なレーザーアレイ露光手段を使用し、かつ従来の光熱変換型画像書換方法に比べて消色専用加熱手段を不要とした、レーザーアレイ露光手段で発色同時消色を可能にするレーザービームのスポット半径の条件を開示し、これによって高画質の光熱変換型画像書換方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1、図2は第1実施形態の光熱変換型画像書換方法を用いた画像書換装置の基本構成を示す図で、図1は概略断面図、図2は概略斜視図である。図2の概略斜視図は見やすくするために主要な構成のみ図示してある。まず第1実施形態の画像書換装置の構造と書換機能の概略について説明する。
具体例としては、幅100mmの画像を、380mm/sec程度の媒体搬送速度、0.125mm×0.125mmの画素で画像形成するものである。
【0025】
光吸収熱変換機能を有する光熱変換型可逆性感熱記録媒体10(以下記録媒体10と呼ぶ)は、周知の搬送ベルトや搬送ローラー等からなる媒体搬送装置90によって、一定速度で記録媒体搬送方向Yに搬送される。
【0026】
次に露光手段であるレーザーアレイモジュール20で、媒体搬送方向-Yに直交する方向Χでレーザービーム21がアレイ状に配列し、個別駆動され露光される。これによって記録媒体10の必要な部分が画像様に発色および消色する。すなわち前回の記録画像11は、今回形成される画像の部分が発色し、今回形成される画像の背景部に相当する部分が消色され、求められている今回の記録画像12となる。
【0027】
露光消手段について、図1、図2を用いて詳しく説明する。露光消手段消色は単一の構成であるレーザーアレイモジュール20(例えば波長808nmもしくは830nmを使用)からなる。レーザーアレイモジュール20は、例えば、幅100mmの画像で画素の大きさを0.125mm×0.125mmとすると、ライン露光方向Χと同じアレイ集積方向Χに、画素のピッチと同じ0.125mmピッチでレーザービーム21の発光点を800個ならべたレーザービームアレイを形成するものである。ただし、レーザーアレイモジュール20の左右の端部のそれぞれ2個づつレーザービーム21は、端部の露光エネルギー密度分布を適正化するために使用し、この部分は画像形成の範囲外とする。
【0028】
レーザーアレイモジュール20を構成する半導体レーザーアレイ23は例えば、800個のレーザービーム21に対応する、1個あたり16個のレーザービームを出射する50個の半導体レーザーチップからなる。この半導体レーザーチップは、レーザーアレイドライバ24で、レーザービーム21ごとに個別に駆動制御可能で、パルス幅に従ったON/OFF制御によるパルス幅変調制御、およびパワー設定値に従ったパワーレベル制御によるパワー変調制御が可能である。
【0029】
半導体レーザーアレイ23から出射した光線はレンズによる集光光学系22によって記録媒体10上で所定のスポット半径を有する結像スポットを形成する。集光光学系22は固定されていて、記録媒体10上で所定のスポット半径は初期設定のまま固定されている。したがって、記録媒体10上での、露光エネルギーを可変に制御するには、前述のこのパルス幅変調制御とパワー変調制御のどちらか一方、あるいは両方の組み合わせにより、記録媒体10面上で1つのレーザービーム21の露光エネルギー密度の制御を行う。
【0030】
また、例えば、記録媒体10面上で1つのレーザービーム21の光強度は50〜200mW程度が必要となる場合には、レーザーアレイモジュール20全体では光出力は40〜160W程度になる。
あるいは、レーザーアレイドライバ24で周知の時分割駆動を行うことも可能で、例えば、半導体レーザーチップの駆動時間を1/3とし、逆に1つのレーザービームの光強度を150〜210mW程度とする。このときもレーザーアレイモジュール20全体での光出力の40〜56Wを保持し、単位記録面積あたりの必要エネルギーを確保している。
【0031】
本発明の画像書換装置で使用される光熱変換型可逆性感熱記録媒体について可逆性感熱記録媒体10の概略断面図3を用いて説明する。
【0032】
本発明に係わる光熱変換型可逆性感熱記録媒体10の基本構成は、図3に示すように、支持体13上に、光吸収熱変換材料を混入した可逆性感熱記録記録層14、保護層15を形成したものである。本発明に用いられる可逆性感熱記録層14は少なくとも、ロイコ染料と可逆性顕色剤と光吸収熱変換材料からなる。使用可能な光熱変換型可逆性感熱記録媒体10の構成としては、ロイコ染料と可逆性顕色剤とから可逆性感熱記録層を形成し、その上に光吸収熱変換材料からなる光熱変換層を積層することも可能である。
【0033】
また、ロイコ染料と可逆性顕色剤と光吸収熱変換材料からなる可逆性感熱記録層15を形成し、その上にさらに光吸収熱変換材料からなる光熱変換層を保護層15として積層することも可能である。
また、光吸収熱変換材料の吸収波長を持つ光の平均透過率が、光吸収熱変換材料を含んだ可逆性感熱記録層14において、例えば30%以上ある場合には、可逆性感熱記録層14の直下に光吸収熱変換材料からなる光熱変換層を積層することも可能である。
【0034】
以下各層の材料について説明する。ロイコ染料の具体的例としては、特許文献3、4、5に開示されているものが使用可能である。これに限定されるものではない。
【特許文献3】特開2001-162941号公報
【特許文献4】特開2004-345273号公報
【特許文献5】特開平11-151856号公報
【0035】
可逆性顕色剤は長鎖アルキル基を有するフェノール化合物が使用され、特許文献3、4、5に開示されている。本発明では高速消色性を有する可逆性顕色剤に限定する必要があり、特に特許文献3に開示されている具体的可逆性顕色剤の使用が望ましい。また特許文献3に開示されているように、他の可逆性顕色剤であってもロイコ染料と混合して生成された可逆性感熱記録材料に関して、加熱溶融、急冷して得られた発色状態の可逆性感熱記録材料が、示差走査熱量分析または示差熱分析によって、その昇温過程で発熱ピーク示さずに消色状態に転移する場合には、高速消色性を有する可逆性感熱記録材料として使用可能である。すなわち、この場合、少ない熱エネルギーの授受で瞬時に発色状態から消色状態に転移することができる。
【0036】
したがって、本発明で使用可能な可逆性感熱記録材料に関しては、高速消色性を有することが要件であり、ロイコ染料およびとそれに適する可逆性顕色剤に限定されるものではない。
【0037】
本発明に用いられる光吸収熱変換材料としては、光熱変換色素が用いられる。具体的な例としては、フタロシアニン化合物、金属錯体化合物、ポリメチン化合物、ナフトキノン系化合物等が挙げられ、可逆感熱記録層14に分散状態または分子状態で含有することができる。好ましくは、光熱変換効率、溶剤への溶解性、樹脂への分散性、紫外線に対する耐光性の点でフタロシアニン化合物、金属錯体化合物が挙げられ、とくに特にフタロシアニン化合物が好ましい。
【0038】
さらに詳しくは特許文献3、4、5に開示されているものが使用可能である。また、本実施例では、使用するレーザー光源21の波長808nm〜830nm付近に吸収ピークを持つ光吸収熱変換材料が選択される。
【0039】
可逆感熱記録層14には、性能向上のために各種のバインダー、添加剤等を使用することが可能で、これらについては特許文献3、4、5に開示されている。例えば、可逆感熱記録層の強度を向上し、可逆感熱記録層の組成物の各素材が、加熱・冷却当によって偏在することなく均一に分散するための耐熱性樹脂等のバインダーが挙げらている。また、発色感度および消去温度を調整するための熱可融性物質等が挙げらている。
【0040】
本発明に用いられる支持体13は、単に可逆感熱記録層14を支持する機能だけではなく、発色時における加熱後の冷却工程において熱の吸収体としての機能を果たしている。 このため、支持体13には所定の熱伝導率と比熱を有するポリエチレンテレフタレート、ポリプロポレン等の合成樹脂フィルムが使用される。具体的に使用できる材料関しては特許文献3、4、5に開示されている。
【0041】
光熱変換型可逆性感熱記録媒体10の構成としては、可逆感熱記録層35の上の最外層として保護層15が積層することが望ましい。本発明の画像書換方法では、記録媒体10は非接触で画像を書換えることができ、基本的に加熱・冷却以外に記録媒体10にはダメージを与えない。しかしながら、記録媒体10のライフサイクル全体では、本発明の画像書換方法で書換えられた後が、記録媒体10本来の役割を果たす使用段階となる。この使用段階では、擦過、打撃、折り曲げ、紫外線照射等のさまざまダメージを受ける。このため、ハードコート層である保護層15が必要になる。
【0042】
特に、光吸収熱変換材料としての光熱変換色素やロイコ染料は、紫外線吸収により大きなダメージを受ける可能性が高いので、各種の紫外線吸収剤を保護層15に混入することが可能である。使用可能な各種の紫外線吸収剤を含めた保護層の材料は特許文献4、5に開示されている。一般に光吸収熱変換材料としては、近赤外領域の吸収波長を持つものを使用し、ロイコ染料の発色波長域は可視域であるので、最上部の保護層15が紫外線のみを吸収する場合には、光吸収熱変換材料もロイコ染料もその機能に悪影響を与えられることはない。
【0043】
記録媒体10上における楕円形レーザービーム21の結像スポットは、I0[w/m2]をスポット中心の強度(以下中心強度と呼ぶ)とすると、スポット中心を原点とした座標(x,y)[m]に対して、式 (1.1)で示すガウス分布の強度分布I(r)[w/m2]を持つ(wb≦wa)
I(r)=I0exp(-(2x2/wa2 + 2y2/wb2)) ・・・(1.1)
ここで、waは1/e2スポット長半径(以下スポット長半径と呼ぶ)であり、x=wa,y=0のとき
I(wa)=I0exp(-2)=I0/e2 ・・・(1.2a)
また、 wbは1/e2スポット短半径(以下スポット短半径と呼ぶ)であり、x=0,y=wbのとき
I(wb)=I0exp(-2)=I0/e2 ・・・(1.2b)
となる関係を満たしている。
【0044】
さらに、レーザービーム21の露光時間内に記録媒体10が移動する距離が、ビーム半径w0に対して十分短い場合は、円形レーザービーム21による結像スポットの露光エネルギー密度分布[J/m2]はガウス分布で近似できる。そこで、画素形成時間すなわち1画素あたりのレーザー露光時間t0[sec]を用いて、
I(r)・t0=I0・t0exp(-2r2/w02)
E00[J/m2]をスポット中心の露光エネルギー密度(以下中心露光エネルギー密度と呼ぶ)とすると、円形レーザービーム21による結像スポットの露光エネルギー密度分布E(r)[J/m2]は 、
E00=I0・t0 ・・・(1.3)、E(r)=I(r)・t0と置き換えると
E(r)=E 00exp(-2r2/w02) ・・・(1.4) となる。
【0045】
したがって、記録媒体10上における円形レーザービーム21の結像スポットは、E00[J/m2]をスポット中心の露光エネルギー密度(中心露光エネルギー密度)とすると、スポット中心からの距離r[m]に対して式(1.4)で示すガウス分布の露光エネルギー密度E(r)[J/m2]を持つ。
ここで、r=w0のとき
E(w0)=E 00exp(-2)=E 00/e2
となる。したがって式(1.4)で示すガウス分布の露光エネルギー密度は、距離w0においては、中心露光エネルギー密度E 00の1/e2の露光エネルギー密度を示す。このw0をスポット半径とする。
【0046】
レーザービーム21の結像スポットの露光エネルギー密度と記録媒体10の発色および消色特性との関係を検討していくにあたり、エネルギー密度と発色および消色特性の関係は相対的であるので、それぞれの値の絶対値ではなく、基準値で割って無次元化して扱う。これにより、露光エネルギー密度と発色および消色特性の絶対値が使用する条件、材料等によって変化しても、一定の設定基準を提供できる。
【0047】
アレイ状に配列されたレーザービーム21のピッチは形成する画素(ドット) のピッチと同一である。この画素(ドット)ピッチの1/2をr0[m]画素半径とし、この画素半径r0に対するスポット半径の指標として変数χ(スポット半径指標)を導入し、
w0/r0=2/(log(1/χ))1/2 ・・・(1.5)
で示す関係にあるとする。
スポット中心からの距離rを画素半径r0で無次元化し
γ=r/r0 ・・・(1.6)
で示すスポット中心からの無次元距離γ(以下偏差距離と呼ぶ)を導入する。
式(1.5)と式(1.6)を式(1.4)に代入すると、
E(r)=E00χ^(γ2/2) ・・・(1.7)
となる。
【0048】
ここで記録媒体10の発色および消色特性を
Mc [J/m2] : 最小発色エネルギー密度
Mcm[J/m2] :最大発色エネルギー密度
Md [J/m2] :最小消色エネルギー密度
Mdm[J/m2] :最大消色エネルギー密度
と定め、これらを最小発色エネルギー密度Mcを用いて無次元化すると
ξc =Mc/Mc=1 :無次元化最小発色エネルギー密度
ξcm=Mcm/Mc :無次元化最大発色エネルギー密度
ξd =Md/Mc :無次元化最小消色エネルギー密度
ξdm=Mdm/Mc :無次元化最大消色エネルギー密度
となる。
さらにMcを用いて、露光エネルギー密度に関して無次元化する
ε(γ)=E(r)/Mc: 偏差距離γにおける無次元化露光エネルギー密度
ε00 =E00/Mc :無次元化中心露光エネルギー密度
これらより式(1.6)は無次元化されたガウス分布のエネルギー密度分布を表す
ε(γ)=ε00χ^(γ2/2) ・・・(1.8)
となる。
【0049】
以下、特にことわりのないかぎり、無次元化最小発色エネルギー密度等を、単に最小発色エネルギー密度等と呼ぶ。同様に、無次元中心露光エネルギー密度を、単に中心露光エネルギー密度と呼ぶ。
【0050】
特許文献2より、設定されたスポット半径w0から、レーザーアレイモジュール20で使用するでレーザービーム21のパワー[w]を算出することができる。
1つのレーザービーム21のパワーP[w]は
P=1/2・I0πw02 ・・・(1.9)
で与えられる。ゆえに
P/(πr02)=1/2・I0(w0/r0)2
両辺に画素形成時間すなわち1画素あたりのレーザー露光時間t0[sec]をかけてエネルギー密度に変換すると
t0P/(πr02)=1/2・I0t0(w0/r0)2
式(1.3)を用いると
t0P/(πr02)=1/2・E00(w0/r0)2 ・・・(1.10)
画像形成に必要な光エネルギーの大小を比較するために、一つのレーザービーム21のビーム露光エネルギーを画素半径からなる円の面積(πr02)で割った値をUr[J/m2]とする。
Ur=t0P/(πr02)
これを(1.10)に代入して
Ur=1/2・E00(w0/r0)2 ・・・(1.11)
式(1.9)をMc[J/m2]で割って無次元化した、無次元ビームエネルギー密度ρr
ρr=Ur/Mc
を用いると
ρr=ε00(w0/r0)2/2 ・・・(1.12)
さらに式(1.5)を用いると
ρr=ε002/log(1/χ) ・・・(1.13)
となる。ρrは画素面積の絶対値にかかわらないので、画像形成に必要な露光エネルギーの大小の比較に使用される。以下、特にことわりのないかぎり、無次元ビームエネルギー密度を、単にビームエネルギー密度と呼ぶ。
【0051】
本発明では空間周波数を
空間周波数=(発消色サイクル)/(画素数) ・・・(1.14)
と定義し、
さらに2元空間周波数を
X方向の空間周波数νx
νx=(X方向の発消色サイクル)/(X方向の画素数) ・・・(1.15)
Y方向の空間周波数νy
νy=(Y方向の発消色サイクル)/(Y方向の画素数) ・・・(1.16)
を用いて
ν=(νx2+νy2)1/2 ・・・(1.17)
と定義する。
本実施例においては、基準となる画素数は、累積範囲30が4画素半径なので、隣接する累積範囲間のピッチは、4画素半径×2となるので、これを1画素の大きさ、画素半径×2で割る。
したがって
基準画素数=(4画素半径×2)/(画素半径×2)=4
となる。
【0052】
第1実施形態では、最小空間周波数をもつ、すべての画素を発色もしくは消色とする画像パターンにおける累積露光エネルギー密度を示す。
この場合の2元空間周波数は
ν=((0/4)2 + (0/4)2)1/2=0
である。
【0053】
図4(a)、図4(b) 、図4(c)に、発色画素もしくは消色画素が全面に一様に配置されている全面発色もしくは全面消色画像パターンに対応する、発消色露光パターンを示す。この画像パターンは最小の空間周波数をもつものである。この図4において、記録媒体10表面におけるレーザービーム21が結像するスポット円31の状態を表す。このときスポット円31の中心露光エネルギー密度ξ00はすべて一定であり、以下の2種類とする。
【0054】
すべての画素を発色とする全面発色パターンの場合は、スポット円31は発色画素に対応する発色スポットであり、このとき中心露光エネルギー密度は発色中心露光エネルギー密度E0cとなる。このE0cをMcで無次元化すると、
ε0c=E0c/Mc :無次元発色中心露光エネルギー密度
すべての画素を消色とする全面消色パターンの場合は、
スポット円31は消色画素に対応する消色スポットであり、このとき中心露光エネルギー密度は消色中心露光エネルギー密度E0dとなる。このE0dをMcで無次元無次元化すると、
ε0d=E0d/Mc :無次元消色中心露光エネルギー密度
となる。
【0055】
一般的には、記録媒体10上の任意の観測位置において、その観測位置を露光可能なすべてのレーザービーム21からの露光エネルギー密度の総和を、その観測位置で累積露光エネルギー密度と定義できるが、本実施例では、観測位置から一定の累積範囲を設定して、その範囲内のすべてのレーザービーム21からの露光エネルギー密度の総和を、その観測位置で累積露光エネルギー密度と定義する。
図4の表面を記録媒体10表面とすると、図4(a)、図4(b) 、図4(c)のそれぞれに場合において、複数のレーザービーム21によるスポット半径w0からなるスポット円31が示されている。このスポット半径w0はスポット半径指標χによって変化する。スポット円31は縦横方向にそれぞれ2画素半径(2r0)ピッチで配列されている。これは、媒体搬送方向Yに直行する方向Χでレーザービーム21が2画素半径(2r0)ピッチでアレイ状に配列しているのに対応している。露光エネルギー密度の累積を算出する特定の観測位置である、観測ノード32、33、34がそれぞれ設定され、この観測ノードを中心にして、4画素半径(4r0)を示す累積範囲30が描かれている。この累積範囲30内に中心があるスポット円31に対応する、複数のレーザービーム21の露光エネルギー密度分布の総和を、観測ノードにおける累積露光エネルギー密度とする。厳密には、4r0以上の累積範囲でもレーザービーム21が観測ノードに影響を及ぼすが、w0/r0≒2.4を最大値としているので、このときの露光エネルギー密度は中心エネルギー密度の0.4%程度しかない。したがって、4r0の累積範囲外のレーザービーム21の露光エネルギーは、対象となる観測ノードの累積露光エネルギー密度の算出に対しては無視して差し支えない。図4(a)の観測ノード32は、1つのスポット円31の中心に位置するので中心ノード32と呼ぶ。図4(b)の観測ノード33は、2つのスポット円31の中間に位置するので中間ノード33と呼ぶ。図4(c)の観測ノード34は、4つのスポット円31の中央に位置するので面心ノード34と呼ぶ。
【0056】
次に、式(1.8)を用いて、この図4(a)、図4(b) 、図4(c)に示す、記録媒体10上の各観測ノードの累積露光エネルギー密度を算出する。図4(a)において、中心ノード32におけるMcで無次元化した無次元累積露光エネルギー密度をσ0とすると、中心ノード32に対応するスポット円31と周囲8個スポット円31合計9個レーザービーム21の露光エネルギー密度の和をとるから、
σ0 =ε00(1+4χ2+4χ4) ・・・(1.18)
となる。
図4(b) において、同様に中間ノード33における無次元累積露光エネルギー密度をσhとすると、周囲12個のスポット円を形成するレーザービーム21の露光エネルギー密度の和をとるから、
σh =ε00χ1/2(2+ 4χ2+ 2χ4 +4χ6) ・・・(1.19)
となる。
図4(c) において、面心ノード34における無次元累積露光エネルギー密度をσfとすると、周囲12個のスポット円を形成するレーザービーム21の露光エネルギー密度の和をとるから、
σf =ε00(4χ+ 8χ5) ・・・(1.20)
となる。
式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)におけるε00は、露光エネルギー密度を算出する場合には、画像パターに応じて、ε0cもしくはε0dが適用される。以下、特にことわりのないかぎり、無次元累積露光エネルギー密度を、単に累積露光エネルギー密度と呼ぶ。
【0057】
式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)から、図4(a)、図4(b) 、図4(c)に示す露光パターンで、露光エネルギー密度ε00=1に固定した場合の累積露光エネルギー密度σ0、σh、σfを、0<χ≦0.5の条件で図5にプロットする。
図5より、0<χ≦0.5の条件では、
中心ノード32における累積露光エネルギー密度σ0が最大値を取る。
面心ノード34における累積露光エネルギー密度σfが最小値を取る。
したがって、中心ノード32が最大の累積露光エネルギー密度であり、かつ面心ノード34が最小の累積露光エネルギー密度である条件が、σ0、σf2つの累積露光エネルギー密度において、許容される最大の露光エネルギー密度比条件となる。
そこで新たに露光累積エネルギー密度比としてパラメーターaを導入すると
a =σ0/σf ・・・(1.21)
この式にξ0を示す式(1.18)およびξfを示す式(1.20)を代入して、ε00を消去すると、
a =(1+4χ2+4χ4)/(4χ+ 8χ5) ・・・(1.22)
1-a4χ+4χ2+4χ4-a8χ5=0 ・・・(1.23)
となる。
σ0 とσf最小エネルギー密度比は、記録媒体10の発色および消色特性にかかわらず
σ0=σf
a =σ0/σf=1 ・・・(1.24)
と設定できる。この条件で式(1.12)は
1-4χ+4χ2+ 4χ4 -8χ5 = 0 ・・・(1.25)
となり、この解はχ1
χ1=0.5である。 ・・・(1.26)
これを式(1.5)に代入すると許容される最大のスポット半径w1が
w1/r 0=2/log(1/χ1)1/2 ・・・(1.27)
として設定される。式(1.19)の値は具体的に求めることができ
w1/r0 =2/(log(2))1/2≒2.402
一方、以下の記録媒体10の発色および消色特性
Mc [J/m2] : 最小発色エネルギー密度
Mcm[J/m2] :最大発色エネルギー密度
Md [J/m2] :最小消色エネルギー密度
Mdm[J/m2] :最大消色エネルギー密度
から、最大のエネルギー密度比としては
ac=σ0/σf=ξcm/ξc = Mcm/Mc ・・・(1.28)
ad=σ0/σf=ξdm/ξd = Mdm/Md ・・・(1.29)
の2つがある。
aの意味するところは、記録媒体10の特性として、発色可能なエネルギー密度の幅、もしくは消色可能なエネルギー密度の幅を示す、最大許容累積露光エネルギー密度比であるから、ac、adの2つの値から小さい方の値を抽出すると、
a =min(ac,ad)
となる。ここで、関数min(a1,a2)はa1、a2の2つの値から小さい方の値を抽出する関数である。
以上をまとめると、求める条件式は、式(1.23)と以下の(1.31)となる。
a =min(Mcm/Mc,Mdm/Md) ・・・(1.30)
1-a4χ+4χ2+4χ4-a8χ5=0
となる。
この条件での式(1.23)の解をχ=χ2とし、式(1.5)に代入すると、
許容される最小のスポット半径w2が
w2/r 0= 2/log(1/χ2)1/2 ・・・(1.31) として設定される。
以上より、χの設定範囲は
χ2≦χ≦χ1 ・・・(1.32)
χ2≦χ≦0.5
したがってレーザービーム21のスポット半径w0を、
w2/r0≦w0/r0≦w1/r0 ・・・(1.33)
w2/r0≦w0/r0≦2.402
の関係を満たすように設定することで、記録媒体10の発色および消色特性と関連し、良好な画像形成が可能な、光熱変換型画像書換方法を得ることができる。
また、無次元化スポット半径w0/r0を使用することにより、必要される画像解の画素半径r0にかかわらないスポット半径の設定基準が得られる。
【0058】
条件式(1.31) を満たす例として、すべての画素を消色とする全面消色画像パターンに対応する、スポット半径の有効設定範囲を示す。
数値条件として
ξd =0.5
σf =ξd
を設定する。
まず式(1.23)
a =(1+4χ2+4χ4)/(4χ+ 8χ5)
からにχ対するaを算出する。
次に、式(1.20)の中心露光エネルギー密度ξ00を、消色中心露光エネルギー密度ξ0dとすると、
σf =ε0d(4χ + 8χ5)
これに、条件σf =ξdを代入すし、全面消色画像パターンを形成するするのに必要な、χ対する最小中心露光エネルギー密度ε0dを算出する。
ε0d =ξd/(4χ + 8χ5) ・・・(1.34)
算出されたξ0d を用いて式(1.18)から、σ0を求める。
σ0 =ε0d(1+4χ2+4χ4) ・・・(1.35)
同様に 式(1.18)から、σhを求める。
σh =ε0dχ1/2(2+ 4χ2+ 2χ4 +4χ6) ・・・(1.36)
以上より、パラメーターa、累積露光エネルギー密度ξ0、ξh、ξfを
0>χ≧0.5
の条件で図6にプロットする。
また、以下のように具体的な数値a
ξdm=0.75
a = ξdm/ξd = 0.75/0.5 = 1.5
を設定し、これを式(1.23)
1-a4χ+4χ2+4χ4-a8χ5=0
代入して、周知の2分法やニュートン法を用いると、
最小のスポット半径に対応する解
χ2 ≒0.1915
が求められる。これを図6に示す。
よって、χの有効設定範囲は
0.1915≦χ≦0.5
となる。これを、式(1.5)によって、無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
1.556 ≦w0/r0≦2.402 ・・・(1.37)
具体的な無次元化スポット半径w0/r0の有効設定範囲が得られる。
【0059】
上記の設定
1.556 ≦w0/r0≦2.402
を用いた場合の、全面消色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度分布を示す。
スポット半径w0の最大条件は、
a=1
w0/r0=2.402
χ=0.5
である。
最大のスポット半径w0の条件であるχ=0.5と、ξd=0.5を式(1.34)に代入すると、消色中心露光エネルギー密度ε0dの最小値
ε0d ≒0.2222
が決定される。
この値を式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)に代入すると、それぞれの観測ノードでの累積露光エネルギー密度が算出される。
σ0 =0.5
σh ≒0.5009
σf =0.5
この最大スポット半径での、全面消色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度分布を図7に示す。
【0060】
図7のグラフは、図4(a)に示す線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を示していて、
線分A-Aでは、ピークが中心ノードでの値、ボトムが中間ノードでの値を示している。
線分B-Bでは、ピークが中間ノードでの値、ボトムが面心ノードでの値を示している。
また、図7においては、σ0、σh、σf の値が、上記の算出値より最大1%程度上回っているが、これは、確認としてより厳密な計算を行うため、複数のレーザービーム21の露光エネルギー密度分布を総和する累積範囲30を、約6画素半径(6r0)としたためでる。これは式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)の導出に使用した4画素半径(4r0)より広い範囲で総和する設定である。
図7に示すように、の累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≒σd
となり、平坦な消色条件を保持している。
【0061】
次にスポット半径w0の最小値での場合を示す。
このとき条件は、
a =1.5
w0/r0=1.556
χ =0.1915
である。
最小のスポット半径w0の条件である、χ=0.1915とξd = 0.5を、この式(1.34)に代入すると、消色中心露光エネルギー密度ε0dの最大値
ε0d ≒0.6511
が決定される。
この値を式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)に代入すると、それぞれの観測ノードでの露光エネルギー密度が算出される。
σ0 =0.75
σh ≒0.6124
σf =0.5
この最小スポット半径での、全面消色画像パターンに対する線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を図8に示す。図8に示すように、消色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≦σd≦ξdm
となり、消色条件を保持している。
最大スポット半径の場合の図7と最小スポット半径の場合の図8を比較すると、最大スポット半径の場合の方が、露光エネルギー密度分布は均一である。しかしながら、最小スポット半径の場合の方が、空間周波数がより高い画像パターンの形成に対して好適である。
【0062】
次に、すべての画素を発色とする全面発色画像パターンに対応する、スポット半径の有効設定範囲を示す。
数値条件として
ξc =1.0
ξf =ξc
を設定する。
まず式(1.23)
a =(1+4χ2+4χ4)/(4χ+ 8χ5)
からにχ対するaを算出する。したがって、aの値は、全面消色パターンの場合と同じになる。
次に、式(1.20)の中心露光エネルギー密度ξ00を、発色中心露光エネルギー密度ξ0cとすると、
σf =ε0c(4χ + 8χ5)
これに、条件σf =ξdを代入すし、全面発色画像パターンを形成するするのに必要な、χ対する最小発色中心露光エネルギー密度ε0cを算出する。
ε0c =ξc/(4χ + 8χ5) ・・・(1.38)
算出されたξ0d を用いて式(1.18)から、σ0を求める。
σ0 =ε0c(1+4χ2+4χ4) ・・・(1.39)
同様に 式(1.18)から、σhを求める。
σh =ε0cχ1/2(2+ 4χ2+ 2χ4 +4χ6) ・・・(1.40)
以上より、パラメーターa、累積露光エネルギー密度σ0、σh、σfを
0>χ≧0.5
の条件で図9にプロットする。
また、以下のように具体的な数値a
ξcm =1.5
a =ξcm/ξc =1.5/1.0 =1.5
を設定し、これを式(1.23)
1-a4χ+4χ2+4χ4-a8χ5=0
代入して、周知の2分法やニュートン法を用いると、
最小のスポット半径に対応する解
χ2≒0.1915
が求められる。これを図9に示す。
よって、χの有効設定範囲は
0.1915≦χ≦0.5
となる。これを、式(1.5)によって、無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
1.556 ≦w0/r0≦2.402 ・・・(1.41)
具体的な無次元化スポット半径w0/r0の有効設定範囲が得られる。
これは、露光エネルギー密度のレベルを除けば、全面消色パターンの場合と全く同様の結果である。したがって、同一のスポット半径の設定で、全面消色、全面発色とも画像形成が可能である。これは、集光光学系22が固定、すなわち、個別のレーザービーム21のスポット半径がすべて同一で固定されている画像書換方法に対して、発色消色同時形成を可能にするスポット半径条件である。
【0063】
上記の設定
1.556 ≦w0/r0≦2.402
を用いた場合の、全面発色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度分布を示す。
スポット半径w0の最大条件は、
a=1
w0/r0=2.402
χ=0.5
である。
最大のスポット半径w0の条件であるχ=0.5とξc = 1.0を、式(1.37)に代入すると、
発色中心露光エネルギー密度ε0cの最小値
ε0c ≒0.4444
が決定される。
この値を式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)に代入すると、それぞれの観測ノードでの露光エネルギー密度が算出される。
σ0 =1.0
σh ≒1.002
σf =1.0
この最大スポット半径での、全面消色画像パターンに対する線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を図10に示す。これは、露光エネルギー密度のレベルを除けば、全面消色パターンの場合と全く同様の結果である。
図10に示すように、の累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≒σc
となり、平坦な消色条件を保持している。
【0064】
次にスポット半径w0の最小値での場合を示す。
このとき条件は、
a =1.5
w0/r0=1.556
χ =0.1915
である。
最小のスポット半径w0の条件である、χ=0.1915とξc = 1.0を、式(1.37)に代入すると、中心露光エネルギー密度ε0dの最小値
ε0d ≒1.302
が決定される。
この値を式(1.18)、式(1.19)、式(1.20)に代入すると、それぞれの観測ノードでの露光エネルギー密度が算出される。
σ0 =1.5
σh ≒1.225
σf =1.0
【0065】
この最小スポット半径での、全面消色画像パターンに対する線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を図11に示す。
これは、露光エネルギー密度のレベルを除けば、全面消色パターンの場合と全く同様の結果である。
図11に示すように、消色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≦σc≦ξcm
となり、消色条件を保持している。
最大スポット半径の場合の図10と最小スポット半径の場合の図11とを比較すると、最大スポット半径の場合の方が、露光エネルギー密度分布は均一である。しかしながら、最小スポット半径の場合の方が、空間周波数がより高い画像パターンの形成に対して好適である。
【0066】
本発明による最適化されたスポット半径設定では、同一のスポット半径の設定で、全面消色、全面発色とも画像形成可能である。これは、集光光学系22が固定、すなわち、個別のレーザービーム21のスポット半径がすべて同一で固定されているレーザーアレイを用いた画像書換方法に対して好適であり、発色同時消色での画像形成が実現できる。この発色同時消色により、ハロゲンランプや温風吹き出し装置等の記録媒体一様加熱方式の消色手段が不要になった。これにより、画像書換装置が小型・単純化できコストダウンが容易となる。
【0067】
レーザーアレイによる露光では、画素のピッチの半分程度のスポット半径設定では、スポット中心部と周辺部の露光エネルギー密度のムラのために、画像に濃度ムラが発生する。
本発明による画素半径の約1.5から2.5倍程度のスポット半径により、スポット中心部と周辺部の露光エネルギー密度は発色および消色特性と完全に適合しているため、ムラのない高画質の画像形成が可能になる。
【0068】
本発明によるスポット半径設定は、約1画素半径程度の幅をもつ。これは、形成する各種の画像パターンによる最適化可能範囲である。例えば、大面積の均一べた画像を印刷するのに適した画像書換方法としては、大きめのスポット半径を採用する、あるいは細かい画像から大面積の画像まで、用途の広い画像書換方法としては、小さめのスポット半径を採用する等の、求められる印刷特性への細やかな適合化が可能である。
【0069】
本発明による最適化されたスポット半径設定によれば、露光エネルギー密度は記録媒体10の発色および消色特性と完全に適合している。このため、レーザービーム21によるスポット周辺部での十分な露光エネルギー密度を維持しつつ、かつスポット中心部で過剰な露光エネルギー密度になることない。これにより、記録媒体の材料に熱分解、熱変形等の重大なダメージを与えることがないので、記録媒体の書換え寿命を、記録媒体の材料自身がもつ、材料本来の特性まで発揮することができる。
【0070】
第1実施形態で示した全面消色および全面発色パターンでの有効なスポット半径の範囲は、空間周波数がより高い画像パターンの形成に対しては広すぎて、不十分である。
例えば、スポット半径の最大条件w0/r0=2.402を用いた場合には、
最小画像パターン面積≧3画素ピッチ×3画素ピッチ=6r0×6r0
程度になり、レーザービーム21の配列ピッチが2r0にもかかわらず、3倍も粗い画像しか形成できないことになる。そこで第2実施形態では、正方格子での最大の空間周波数をもつ、チェッカーボード画像パターンを実現する有効スポット半径の範囲を示す。
この場合の2元空間周波数は
ν= ((2/4)2 + (2/4)2)1/2 ≒ 0.7071
である。
【0071】
図12(a)、図12(b) 、図12(c)に、1つの発色画素、消色画素が上下左右で交互に配置されているチェッカーボード画像パターンに対応する、発消色露光パターンを示す。各観測ノードの設定は図4(a)、図4(b) 、図4(c)と同様である。
式(1.8)を用いて、図12(a)、図12(b) 、図12(c)に示す、記録媒体10上の各観測ノードの累積露光エネルギー密度を算出する。
このときスポット円31は以下の2種類となっている。
発色スポット31a
ε0c :発色中心露光エネルギー密度
をもつ。
消色スポット31b
ε0d :消色中心露光エネルギー密度
をもつ。
図12(a)において、中心ノード32が発色条件の場合、すなわち発色中心ノード32aの場合の累積露光エネルギー密度をσC0とすると、
σC0 =ε0c(1+4χ4)+ε0d4χ2 ・・・(2.1)
また、図12(a)において、発色中心ノード32a に隣接する消色中心ノード32bの累積露光エネルギー密度σD0 とすると、この場合は、スポット円31の発色スポットと消色スポットを入れ替えて中心ノード32が消色条件の場合、すなわち発色中心ノード32a と消色中心ノード32b の位置を入れ替えて計算すればよいので、式(2.1)から、
σD0 =ε0d(1+4χ4)+ε0c4χ4 ・・・(2.2)
となる。
図12(b) において、中間ノード33における累積露光エネルギー密度をσCDhとすると、
σCDh=χ1/2(ε0c(1+2χ2+χ4+2χ6)+ε0d(1+2χ2+χ4+2χ6)) ・・・(2.3)
となる。
図12(c)において、面心ノード34における累積露光エネルギー密度をσCDfとすると、
σCDf =ε0c(2χ+4χ5)+ε0d(2χ+4χ5) ・・・(2.4)
となる。
したがって、
式(2.2)、式(2.3)からξ0dを消去して、
ε0c =(σCDh(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2x2+x4+2x6)-σD0)/(1-4χ2+4χ4) ・・(2.5)
式(2.2)、式(2.3)からξ0cを消去して、
ε0d =-(4σCDh χ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-σD0)/(1-4χ2+4χ4) ・・・(2.6)
式(2.5)、式(2.6)の結果を式(2.1)に代入して
σC0 =σCDh(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-σD0 ・・・(2.7)
となる。
【0072】
本実施例における、チェッカーボード画像パターンに露光エネルギー密度が満たすべき条件は、
消色中心ノード32における消色中心露光エネルギー密度ε0dがゼロ以上
消色中心ノード32における累積露光エネルギー密度σD0が最大消色エネルギー密度ξdm以下
発色中心ノード32における累積露光エネルギー密度σC0が最大発色エネルギー密度ξcm以下
中間ノード33における累積露光エネルギー密度σCDhが最小発色エネルギー密度ξc以上
のと設定する。
この条件より、
σD0=ξdm
σCDh=ξc
とおいて、新たに許容累積露光エネルギー密度比であるパラメーターbcを導入する。
bc =σCDh/σD0=ξc/ξdm=Mc/Mdm ・・・(2.8)
bc の意味するところは記録媒体10の特性として、消色可能な最大の露光エネルギー密度と発色可能な最小の露光エネルギー密度の幅、すなわち画像の良好なコントラストを得るための必要最小露光エネルギー密度比を示す。
また、新たにMdm基準の各無次元中心露光エネルギー密度および無次元累積露光エネルギー密度を
ε0cB =ε0c/ξdm ・・・(2.9)
ε0dB =ε0d/ξdm ・・・(2.10)
σC0B =σCO/ξdm ・・・(2.11)
とする。
【0073】
これらを用いると、
式(2.5)から
ε0cB =(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4) ・・・(2.12)
式(2.6)から
ε0dB =-(4bcχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4) ・・・(2.13)
式(2.7)から
σC0B =bc(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1 ・・・(2.14)
が得られる。
【0074】
最大のスポット半径では、スポット円31の重なり合いが最大になり、このとき許される最小の消色中心露光エネルギー密度ε0dBはゼロである。したがって、式(2.12)においてε0dB=0として
-(4bcχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)=0 ・・・(2.15)
さらに、0<χ≦0.5においては(1-4χ2+4χ4)>0であるから
4bcχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1=0 ・・・(2.16)
となり、この解をχ=χ3とする。
ところで、式(1.28) 、式(1.29)からχの設定範囲は
0<χ≦0.5
であるから、χ3が0<χ≦0.5の条件を満たさない場合がある。この場合は、
χ3=χ1=0.5 ・・・(2.17)
とする。
このχ3を式(1.5)に代入すると、許容される最大のスポット半径w3が
w3/r 0= 2/log(1/χ3)1/2 ・・・(2.18)
として設定される。
【0075】
最小のスポット半径では、スポット円31の重なり合いが最小になり、発色中心露光エネルギー密度ε0cBは最大値となる。このとき発色中心ノード32における累積露光エネルギー密度σC0Bは最大発色エネルギー密度ξcm以下となる必要がある。
したがって、新たに許容累積露光エネルギー密度比であるパラメーターbcmを導入し
bcm =σC0B =ξcm/ξdm=Mcm/Mdm ・・・(2.19)
とする。式(2.14)においてパラメーターbcm をσC0Bに代入した
0 =bc(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1-bcm ・・・(2.20)
の解をχ4とする。この解χ4を式(1.5)に代入すると、
許容される最小のスポット半径w4が
w4/r 0= 2/log(1/χ4)1/2 ・・・(2.21)
として設定される。
以上より、χの設定範囲は
χ4≦χ≦χ3 ・・・(2.22)
したがって、レーザービーム21のスポット半径w0を、
w4/r0≦w0/r0≦w3/r0 ・・・(2.23)
の関係を満たすように設定することで、記録媒体10の発色および消色特性と関連し、チェッカーボード画像パターンを良好に画像形成する良好な画像形成が可能な、光熱変換型画像書換方法を得ることができる。
【0076】
式(2.23)を満たす例として、チェッカーボード画像パターンに対応するスポット半径の有効設定範囲を示す。
数値条件として
ξd =0.5
ξdm =0.75
ξc =1.0
ξcm =1.5
σD0=ξdm=0.75
σCDh=ξc=1.0
を設定する。
式(2.5)
ε0c =(σCDh(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-σD0)/(1-4χ2+4χ4)
式(2.6)
ε0d =-(4σCDh χ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-σD0)/(1-4χ2+4χ4)
式(2.7)
σC0 =σCDh(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-σD0
に上記の数値条件を代入してχに対するε0c、ε0d、σC0を求める。
また、これらの値より式(2.4)
σCDf =ε0c(2χ+4χ5)+ε0d(2χ+4χ5)
よりσCDfを求める。
以上より、中心露光エネルギー密度ε0c、ε0d、累積露光エネルギー密度σC0、σCDfの値を
0>χ≧0.5
の条件で図13にプロットする。
【0077】
また、具体的な数値
b =σCDh/σD0=ξc/ξdm=1.0/0.75=4/3=1.333
を式(2.16)
4bχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1=0
代入すると、最大のスポット半径に対する解
χ3 ≒0.4015
が求められる。
さらに具体的な数値
Mcm/Mdm=ξcm/ξdm=1.5/0.75=2
を設定し、式(2.17)
0=b(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1-Mcm/Mdm
代入してすると、最小のスポット半径に対する解
χ4 ≒0.2467
が求められる。
よって、χの有効設定範囲は
0.2467≦χ≦0.4015 ・・・(2.24)
となる。これを図13に示す
χの有効設定範囲を、式(1.5)によって、無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
1.691≦w0/r0≦2.094 ・・・(2.25)
具体的な無次元化スポット半径w0/r0の有効設定範囲が得られる。
式(2.20)の値を、全面消色の有効設定範囲式(1.37)、同じ値の全面発色の有効設定範囲式(1.41)
1.556 ≦w0/r0≦2.402
と比較すると、有効設定範囲が狭くなっていることがわかる。
【0078】
本発明による画素半径の約1.7から2.1倍程度のスポット半径により、正方格子での最大の空間周波数をもつ、チェッカーボード画像パターンでの画像形成が可能になる。この最大の空間周波数をもつ画像パターンの形成が可能であるということは、これ以下の空間周波数を画像パターンの形成に対しても、同一のスポット半径の有効設定範囲で対応可能であるということを示している。各画像パターンに応じて最適化する必要があるのは、各結像スポットに対応する露光エネルギーのみであり、これに対しては周知のパルス幅変調制御やパワー変調制御で対応可能である。
【0079】
レーザーアレイモジュール20では最大ワット数が、半導体レーザーチップの仕様の最も重要な仕様の一つで、できるだけその最大ワット数が小さいほうがコストからみて有利である。したがって、画素形成時間すなわち1画素あたりのレーザー露光時間t0が決定されている場合において、画像形成に必要な最大エネルギーを最小にする最適スポット半径の条件を示す。まず、ビームエネルギー密度の極小値を求める。
画像形成に必要なエネルギーは、ビームエネルギー密度ρrは式(1.13)より
ρr=ε002/log(1/χ)
である。
ここで、ビームエネルギー密度ρrの極小値を求めるために、0<χ≦0.5の範囲でρr<をχで微分すると
dρr/dχ=(ε00’log(1/χ)+ ε00 /χ)/log(1/χ)2 ・・・(3.1)
ここで、
ε00’= dε00/dχ
である。
ビームエネルギー密度ρr極小値を求めるためにdρr/dχ=0とすると、0<χ≦0.5の範囲で
0=ε00’log(1/χ)+ξ00 /χ ・・・(3.2)
となる。これがビームエネルギー密度ρrの極小値を求めるための式である。
【0080】
正方格子での最大の空間周波数をもつ、チェッカーボード画像パターンでのχの有効設定範囲は式(2.22) 、式(2.23)より、
χ4≦χ≦χ3
w4/r0≦w0/r0≦w3/r0
であるので、この範囲から、画像形成に必要な最大エネルギーを最小にするポイントを求める。
チェッカーボード画像パターンにおける最大の中心露光エネルギー密度は、発色中心露光エネルギー密度の式(2.12)
ε0cB =(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)
のε0cBで示される。
また、新たにMdm基準の無次元ビームエネルギー密度を
ρrB=ρr/ξdm ・・・(3.3)
とすると、チェッカーボード画像パターンに対する最大のビームエネルギー密度は、式(1.13)より
ρrB=ε0cB2/log(1/χ) ・・・(3.4)
ρrB=2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)・・・(3.5)
となり、発色ビームエネルギー密度ρrBが決定される。
無次元化の基準をMcにそろえると
ρr=ξdm2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)・・・(3.6)
となり、これはグラフを描くのに使用される。
また、式(2.5)を微分すると、
dε0cB/dχ=(bc((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)(1+2χ2+χ4+2χ6)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5))/(1+2χ2+χ4+2χ6)2・(1-4χ2+4χ4)-(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)・(-8χ+16χ3))/(1-4χ2+4χ4)2
となる。ここで式(3.1)を用いると、
dρr/dχ=log(1/χ)・(bc((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)(1+2χ2+χ4+2χ6)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5))/(1+2χ2+χ4+2χ6)2・(1+4χ4-4χ2)-(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)- 1)(-8χ+16χ3))/(1-4χ2+4χ4)2+1/χ・(b(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1+4χ4-4χ2) ・・・(3.7)
この式(3.6)より極小値を求めるための式は
0=log(1/χ)・(bc((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)(1+2χ2+χ4+2χ6)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5))/(1+2χ2+χ4+2χ6)2・(1+4χ4-4χ2)-(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)- 1)(-8χ+16χ3))/(1-4χ2+4χ4)2 +1/χ・(bc (χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1+4χ4-4χ2)
0<x≦0.5においては
0=log(1/χ)・((bc((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5)/(1+2χ2+χ4+2χ6))-(bc(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6))(-8χ+16χ3)/(1+4χ4-4χ2))+1/χ・(bc(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6)) ・・・(3.8)
となる。
【0081】
正方格子での最大の空間周波数をもつ、チェッカーボード画像パターンでのχの有効設定として、画像形成に必要なエネルギーを最小にする、すなわち、最大のビームエネルギー密度ρr を最小にする条件の一つは、ビームエネルギー密度をρrの極小値であるから、式(3.8)の解χ5が求める最適値となる。
【0082】
ところが、チェッカーボード画像パターンにおいては、前提条件として、
式(2.16)
4bcχ3/2/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1=0
の解χ=χ3
式(2.20)
0=b(χ-1/2+4χ3/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1-bcm
の解χ=χ4
を用いた条件式(2.21)
χ4≦χ≦χ3
によってχの範囲が限定されている。
したがって式(3.8)の0<χ≦0.5における解χ5は、
χ4≦χ5≦χ3 ・・・(3.9)
を満たしている場合にのみ、最適値として採用される。
そこで、条件式(3.11)が成立しない場合は、
式(3.4)のχにχ3、χ4を代入し
ρrB3=2/log(1/χ3)・(bc(χ3-1/2+4χ37/2)/(1+2χ32+χ34+2χ36)-1)/(1-4χ32+4χ34)・・・(3.10)
ρrB4=2/log(1/χ4)・(bc(χ4-1/2+4χ47/2)/(1+2χ42+χ44+2χ436)-1)/(1-4χ42+4χ44)・・・(3.11)
ρr3 、ρr4 のうち、どちらか小さい値を示すχ3もしくはχ4をχ5として採用し、
条件式(3.9)
χ4≦χ5≦χ3
が成立するように再設定する。
このχ5を式(1.5)に代入すると、ビームエネルギー密度を最小にするスポット半径w5が
w5/r 0= 2/log(1/χ5)1/2 ・・・(3.12)
として設定される。
【0083】
式(3.12)を満たす例として、チェッカーボード画像パターンに対応する、ビームエネルギー密度を最小にするスポット半径の例を示す。
数値条件として
ξd =0.5
ξdm =0.75
ξc =1.0
ξcm =1.5
σD0=ξdm=0.75
σCDh=ξc=1.0
bc =σCDh/σD0=ξc/ξdm=1.0/0.75
を設定する。
式(3.5)
ρrB=2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)
を用いて、χに対するビームエネルギー密度を求める。
無次元化の基準をそろえるため、式(3.6)を用いてρrBを変換したビームエネルギー密度ρr、式(2.5)、式(2.6)用いて中心露光エネルギー密度ε0c、ε0dを
0>χ≧0.5
の範囲で図14にプロットしてある。
図14に示すように、発色中心露光エネルギー密度ε0cの最小値を示すχは、発色ビームエネルギー密度ρrの最小値を示していない。これは、ビームエネルギー密度ρrは露光するスポット面積と比例関係にあるためである。
【0084】
また、この条件で式(3.8)
0=log(1/χ)・((b((-1/2・χ-3/2+14χ5/2)-(χ-1/2+4χ7/2)(4χ+4χ3+12χ5)/(1+2χ2+χ4+2χ6))-(b(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6))(-8χ+16χ3)/(1+4χ4-4χ2))+1/χ・(b(χ-1/2+4χ7/2)-(1+2χ2+χ4+2χ6))
の解
χ5≒0.2059
が得られる。
このとき式(3.5)から
ρr5≒2.604
ところが、このχ5値は、チェッカーボード画像パターンにおけるχの有効設定範囲の条件式(2.24)
0.2467≦χ≦0.4015
を満たしていない。
そこで式(3.5)のχに
χ3 ≒0.4015
χ4 ≒0.2467
を代入すると
ρrB3≒3.450
ρrB4≒2.632
となる。ここで
ρrB4<ρrB3
であるから、0>χ≧0.5でのビームエネルギー密度を最小にする条件は
χ5=χ4 ≒0.2467
よって、χ5の最適設定値を、式(1.5)によって無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
w5/r0≒1.691 ・・・(3.20)
が得られる。
ただし、図14には、無次元化の基準をそろえるため式(3.6)から
ρr3≒2.587
ρr5=ρr4≒1.974
が算出され、プロットされている。
したがって、χ5=χ4 ≒0.2467の設定で最大ビームエネルギー密度が最小になる。すなわち、最小パワーのレーザーアレイモジュール20でチェッカーボード画像パターンの画像形成が可能になる。
【0085】
上記の最適スポット半径
χ5=0.2467
w0/r0=1.691
を用いた場合の、チェッカーボード画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を示す。
最適のスポット半径の条件を式(2.5)、式(2.6)に代入すると、発色中心露光エネルギー密度ε0c、消色中心露光エネルギー密度ε0d
ε0c≒1.381
ε0d≒0.4077
が算出される。
この消色中心露光エネルギー密度ε0d、中心露光エネルギー密度ε0cの値を式(2.1)、式(2.2)、式(2.3)、式(2.4) に代入すると、それぞれの観測ノードでの累積露光エネルギー密度が算出される。
σC0 ≒1.50
σD0 = 0.75
σCDh= 1.0
σCDf ≒0.8892
この最適スポット半径での、チェッカーボード画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を図15に示す。
【0086】
図15のグラフは、図12(a)に示す線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を示していて、
線分A-Aでは、ピークが発色中心ノードでの値、ボトムが消色中心ノードでの値を示している。
線分B-Bでは、ピークが中間ノードでの値、ボトムが面心ノードでの値を示している。
図15に示すように、消色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≦σd≦ξdm
となり、消色条件を保持している。
また、発色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≦σc≦ξcm
となり、発色条件を保持している。
以上、図15に示すように、最適スポット半径を用いると、チェッカーボード画像パターンに最適な累積露光エネルギー密度分布が実現できる。
【0087】
最大の空間周波数をもつチェッカーボード画像パターンの最適スポット半径が求められたので、以下各種画像パターンに対して適用する。同一のスポット半径が適用されるが、各画像パターンに応じて各結像スポットに対応する露光エネルギー密度は最適化する必要がある。
【0088】
図16(a)、図16(b) 、図16(c)に、一つの発色画素の周囲すべてに消色画素が配置されている孤立発色画像パターンに対応する、発消色露光パターンを示す。図12に示すように、この画像パターンは、各観測ノードの設定は図4(a)、図4(b) 、図4(c)と同様である。
チェッカーボード画像パターンの場合と同様に、式(1.8)を用いて、記録媒体10上の各観測ノードの累積露光エネルギー密度を算出することができる。
このときスポット円31の中心露光エネルギー密度は以下の2種類とする。
発色スポット31a
ε0c :発色中心露光エネルギー密度
をもつ。
消色スポット31b
ε0d :消色中心露光エネルギー密度
をもつ。
【0089】
チェッカーボード画像パターンでの最適スポット半径
χ5=0.2467
w0/r0=1.691
を用いて、孤立発色画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を示す。
最適のスポット半径の条件から、発色中心露光エネルギー密度ε0c、消色中心露光エネルギー密度ε0d
ε0c≒1.313
ε0d≒0.5596
が算出される。
この消色中心露光エネルギー密度ε0d、中心露光エネルギー密度ε0cの値を用いて、図16(a)、図16(b) 、図16(c)に示す、それぞれの観測ノードでの累積露光エネルギー密度が算出される。
σC0 ≒1.475
σ1D0 = 0.75
σ2D0 = 0.7069
σCDh= 1.0
σCDf ≒0.7422
図16(a)では、発色中心ノード32に隣接する消色中心ノードは、累積露光エネルギー密度の違いから以下の2種類に分類されている。
σ1D0 :発色中心ノード32aと直交方向に隣接する消色中心ノード32b1
σ2D0 :発色中心ノード32aと対角方向に隣接する消色中心ノード32b2
この最適スポット半径での、孤立発色画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を図17に示す。
図17のグラフは、図16(a)に示す線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を示していて、
線分A-Aでは、中心のピークが発色中心ノードでの値を示している。
線分B-Bでは、各ピークが消色中心ノードでの値を示している。
図17に示すように、発色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≦σc≦ξcmとなり、発色条件を保持している。
【0090】
また、発色中心ノード付近以外での累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≦σd≦ξdm
となり、消色条件を保持している。
以上、図17に示すように、チェッカーボード画像パターンでの最適スポット半径を用いると、孤立発色画像パターンにおいても、十分条件を満たす累積露光エネルギー密度分布が実現できる。
【0091】
図18(a)、図18(b) 、図18(c)に、一つの消色画素の周囲すべてに発色画素が配置されている孤立消色画像パターンに対応する、発消色露光パターンを示す。各観測ノードの設定は図4(a)、図4(b) 、図4(c)と同様である。
チェッカーボード画像パターンの場合と同様に、式(1.8)を用いて、記録媒体10上の各観測ノードの累積露光エネルギー密度を算出することができる。
このときスポット円31の中心露光エネルギー密度は以下の2種類とする。
発色スポット31a
ε0c :発色中心露光エネルギー密度
をもつ。
消色スポット31b
ε0d :消色中心露光エネルギー密度
をもつ。
【0092】
チェッカーボード画像パターンでの最適スポット半径
χ5=0.2467
w0/r0=1.691
を用いて、孤立消色画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を示す。
最適のスポット半径の条件から、発色中心露光エネルギー密度ε0c、消色中心露光エネルギー密度ε0d
ε0c≒1.192
ε0d≒0.4421
が算出される。
この消色中心露光エネルギー密度ε0d、中心露光エネルギー密度ε0cの値を用いて、図18(a)、図18(b) 、図18(c)に示す、それぞれの観測ノードでの累積露光エネルギー密度が算出される。
σD0 = 0.75
σ1C0≒1.454
σ2C0≒1.497
σCDh≒0.9607
σCDf= 1.0
図18(a)では、消色中心ノード32に隣接する発色中心ノードは、累積露光エネルギー密度の違いから以下の2種類に分類されている。
σ1C0 :消色中心ノード32bと直交方向に隣接する発色中心ノード32a1
σ2C0 :消色中心ノード32bと対角方向に隣接する発色中心ノード32a2
この最適スポット半径での、孤立消色画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を図19に示す。
【0093】
図19のグラフは、図18(a)に示す線分A-Aと線分B-B上での2つの累積露光エネルギー密度分布を示していて、
線分A-Aでは、中心のボトムが消色中心ノードでの値を示している。
線分B-Bでは、各ピークが発色中心ノードでの値を示している。
図19に示すように、消色中心ノード付近での累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≦σd≦ξdmとなり、消色条件を保持している。
また、消色中心ノード付近以外での累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≦σc≦ξcm
となり、発色条件を保持している。
以上、図19に示すように、チェッカーボード画像パターンでの最適スポット半径を用いると、孤立消色画像パターンにおいても、十分条件を満たす累積露光エネルギー密度分布が実現できる。
【0094】
図20(a)、図20(b) 、図20(c)に1画素ラインが交互に発色ライン35a(線分A-A)、消色ライン35b(線分B-B)と配置されている1画素ライン画像パターンに対応する、発消色露光パターンを示す。各観測ノードの設定は図4(a)、図4(b) 、図4(c)と同様である。
チェッカーボード画像パターンの場合と同様に、式(1.8)を用いて、記録媒体10上の各観測ノードの累積露光エネルギー密度を算出することができる。
このときスポット円31の中心露光エネルギー密度は以下の2種類とする。
発色スポット31a
ε0c :発色中心露光エネルギー密度
をもつ。
消色スポット31b
ε0d :消色中心露光エネルギー密度
をもつ。
【0095】
チェッカーボード画像パターンでの最適スポット半径
χ5=0.2467
w0/r0=1.691
を用いて、1画素ライン画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を示す。
最適のスポット半径の条件から、発色中心露光エネルギー密度ε0c、消色中心露光エネルギー密度ε0d
ε0c≒1.275
ε0d≒0.5134
が算出される。
この消色中心露光エネルギー密度ε0d、中心露光エネルギー密度ε0cの値を用いて、図20(a)、図20(b) 、図20(c)に示す、それぞれの観測ノードでの累積露光エネルギー密度が算出される。
σC0 = 1.5
σD0 = 0.75
σCDh= 1.0
σCCh≒1.333 (発色ライン上の中間ノード)
σCDf=0.8889
図20(b)では、中間ノードは、累積露光エネルギー密度の違いから以下の2種類に分類されている。
σCDh :発色中心ノード32aと消色中心ノード32bの中間に位置する中間ノード33
σCCh :発色中心ノード32aと次の発色中心ノード32aの中間に位置する(発色ライン上)の中間33ノード33a
この最適スポット半径での、1画素ラインチェッカーボード画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を図21に示す。
【0096】
図21のグラフは、図20(a)に示す線分A-Aと線分C-C上での2つの累積露光エネルギー密度分布を示している。線分C-Cは発色ライン35a(線分A-A)、消色ライン35b(線分B-B)を横切る直交ラインである。
線分C-C(直交ライン)では、ピークが発色中心ノードでの値、ボトムが消色中心ノードでの値を示している。
線分A-A(発色ライン)では、ピークが発色中心ノードでの値、ボトムが発色ライン上の中間ノードでの値を示している。
【0097】
図21に示すように、発色中心ノードを連ねた発色ライン付近での累積露光エネルギー密度σcの分布は
ξc≦σc≦ξcm となり、発色条件を保持している。
また、消色中心ノードノードを連ねた消色ライン(図21線分C-C)付近以外での累積露光エネルギー密度σdの分布は
ξd≦σd≦ξdm
となり、消色条件を保持している。
以上、図21に示すように、1画素ライン画像パターンでの最適スポット半径を用いると、孤立消色画像パターンにおいても、十分条件を満たす累積露光エネルギー密度分布が実現できる。
【0098】
本発明による設定方法を用いると、画像形成に必要な最大のビームエネルギー密度を最小にすることができる。すなわち、最小パワーのレーザーアレイモジュール20でチェッカーボード画像パターンの画像形成が可能になる。したがって、高い光エネルギー利用効率が維持でき、レーザーアレイモジュール20の低コスト化、最大消費電量の減少に寄与する。
【0099】
本発明による、画像形成に必要な最大のビームエネルギー密度を最小にする設定方法を用いると、各種画像パターンに対して、各結像スポットに対応する露光エネルギーのみを最適化することで、同一のスポット半径で対応可能である。これにより、多様な画像を高画質で形成できる画像書換方法が提供できる。
【0100】
レーザーアレイモジュール20における各々のレーザービーム21が形成するスポット半径のばらつき、あるいは、レーザーパワーのばらつき、あるいは記録媒体10の温度変動等による発色消色特性の不安定性を考慮すると、均一で安定した画像形成を実現するためには、式(3.8)の解である、チェッカーボード画像パターンでのビームエネルギー密度ρrの極小値を使用するスポット半径の採用が望ましい。
しかしながら、式(3.8)の0<χ≦0.5における解χ5は、条件式(3.9)
χ4≦χ5≦χ3
を満たしている場合にのみ最適値として採用されるので、すべての条件で解χ5を使用することはできない。
【0101】
ところで、 (3.8)で使用するパラメーターbcは式(2.8)から
bc =σCDh/σD0 ・・・(4.1)
である。したがって、中間ノードの累積露光エネルギー密度σCDhと、消色中心ノードの累積露光エネルギー密度σD0を調整し、使用する条件に対して解χ5を条件式(3.9)
χ4≦χ5≦χ3
満たようにすることは可能である。
パラメーターbcの調整範囲は
ξdm<σCDh≦ξc ・・・(4.2)
ξdm≦σD0 <ξc ・・・(4.3)
であり、これを変形すると
Md/Mdm<σCDh≦Mc/Mc
Md/Mdm≦σD0 <Mc/Mc
となり、最終的に
Md/Mdm<σCDh≦1 ・・・(4.4)
Md/Mdm≦σD0 <1 ・・・(4.5)
が得られる。
【0102】
式(4.4)での調整は、σCDh≦1として、チェッカーボード画像パターンでの発色画素(ドット)の半径をやや小さくする方法である。
式(4.5)での調整は、Md/Mdm≦σD0として、チェッカーボード画像パターンでの消色画素(ドット) の濃度をやや上げる、あるいは消色画素の半径をやや小さくする方法である。
また、σCDhとσD0の両方の値を調整することも可能である。
このような画質の微調整は、最大の空間周波数をもつチェッカーボード画像パターンに対してのみ大きく作用するが、チェッカーボード画像パターン以外の比較的小さなの空間周波数をもつ画像パターンに対しては、画質変化の度合いは小さい。
【0103】
まず、チェッカーボード画像パターンでの発色画素(ドット)の直径をやや小さくする方法の例を示す。
チェッカーボード画像パターンにおける数値条件として、
ξd =0.5
ξdm =0.75
ξc =1.0
ξcm =1.5
を設定する。
第3実施形態における設定
σD0=ξdm=0.75
σCDh=ξc=1.0
bc =σCDh/σD0≒1.333
を初期値として、これを調整する。
例えば、σD0に対してσD0-h、σCDhに対してσCDh-h、 bcに対して bc-hを調整値をとして
σD0-h=0.75 ・・・(4.6)
σCDh-h =0.9591<1 ・・・(4.7)
bc-h=σCDh-h /σD0-h≒1.279 ・・・(4.8)
のように設定する。
このとき、中間ノードの累積露光エネルギー密度σCDh-h は0.9591<1であり、最小発色エネルギー密度ξc=1を下回っている。このため、画素半径r0の位置にある中間ノードでは十分な発色濃度が得られず、結果として、発色画素の直径がやや小さくなる。
次にbc-hを式(3.5)
ρrB=2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)
のbcに代入して、χに対するビームエネルギー密度を求める。
【0104】
無次元化の基準をそろえるため、式(3.6)を用いてρrBを変換したビームエネルギー密度ρr、式(2.5)、式(2.6)用いて中心露光エネルギー密度ε0c、ε0dを
0>χ≧0.5
の範囲で
図22にプロットしてある。
また、調整された条件で式(3.8) の解χ5-hは
χ5-h≒0.2164 ・・・(4.9)
となり、
このとき式(3.5)から対応するビームエネルギー密度ρr5-hは
ρr5-h≒2.435
となる。
一方、調整された条件を式(2.16)、式(2.20)に適用すると、チェッカーボード画像パターンにおけるχの有効設定範囲の条件式も変更され、
χ3 ≒0.4209
χ4 ≒0.2164
となり、新たなχの有効設定範囲
0.2164≦χ≦0.4209 ・・・(4.10)
が得られる。
χ5-h値は、新たなχの有効設定範囲
0.2164≦χ5-h≦0.4209
を満たしている。
よって、χ5の最適設定値を、式(1.5)によって無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
w5-h/r0≒1.617 ・・・(4.11)
が得られる。
ただし、図22には、無次元化の基準をそろえるため式(3.6)から
ρr5-h≒1.826 ・・・(4.12)
が算出され、プロットされている。
したがって、調整された設定で最大ビームエネルギー密度が極小かつ最小になる。すなわち、最小パワーのレーザーアレイモジュール20で、均一かつ安定な画像形成が可能になる。
【0105】
次に、チェッカーボード画像パターンでの消色画素(ドット) の濃度をやや上げる、あるいは消色画素の直径をやや小さくする方法の例を示す。
チェッカーボード画像パターンにおける数値条件として、
ξd =0.5
ξdm =0.75
ξc =1.0
ξcm =1.5
を設定する。
第3実施形態における設定
σD0=ξdm=0.75
σCDh=ξc=1.0
bc =σCDh/σD0≒1.333
を初期値として、これを調整する。
例えば、σD0に対してσD0+d、σCDhに対してσCDh+d、 bcに対して bc+dを調整値をとして
σD0+d=0.8094 ・・・(4.13)
σCDh+d=1.0 ・・・(4.14)
bc+d=σCDh+d/σD0+d≒1.236 ・・・(4.15)
のように設定する。
このとき、消色中心ノードの累積露光エネルギー密度σD0+dは0.75<0.8094であり、最大消色エネルギー密度ξdm =0.75を上回っている。このため、消色中心ノードでは十分な消色濃度以上のエネルギー密度で露光されてしまう。結果として、消色画素の中心濃度が初期値の場合よりやや上昇する。
次にbc+dを式(3.5)
ρrB=2/log(1/χ)・(bc(χ-1/2+4χ7/2)/(1+2χ2+χ4+2χ6)-1)/(1-4χ2+4χ4)
のbcに代入して、χに対するビームエネルギー密度を求める。
無次元化の基準をそろえるため、式(3.6)を用いてρrBを変換したビームエネルギー密度ρr、式(2.5)、式(2.6)用いて中心露光エネルギー密度ε0c、ε0dを
0>χ≧0.5
の範囲で図23プロットしてある。
また、調整された条件で式(3.8) の解χ5+dは
χ5+d≒0.2269 ・・・(4.16)
となり、
このとき式(3.5)から対応するビームエネルギー密度ρr5+dは
ρr5+d≒2.297
となる。
一方、調整された条件を式(2.16)、式(2.20)に適用すると、チェッカーボード画像パターンにおけるχの有効設定範囲の条件式も変更され、
χ3 ≒0.4388
χ4 ≒0.2269
となり、新たなχの有効設定範囲
0.2269≦χ≦0.4388 ・・・(4.17) が得られる。
χ5+d値は、新たなχの有効設定範囲
0.2269≦χ5+d≦0.4388
を満たしている。
よって、χ5の最適設定値を、式(1.5)によって無次元化スポット半径w0/r0に変換すると
w5+d/r0≒1.642 ・・・(4.18)
が得られる。
ただし、図23は、無次元化の基準をそろえるため式(3.6)から
ρr5+d≒1.859 ・・・(4.19)
が算出され、プロットされている。
したがって、調整された設定で最大ビームエネルギー密度が極小かつ最小になる。すなわち、最小パワーのレーザーアレイモジュール20で、均一かつ安定な画像形成が可能になる。
【0106】
上記の2つの修正された極小スポット半径
χ5-h=0.2164
χ5+d=0.2269
を、チェッカーボード画像パターンにおける累積露光エネルギー密度分布を示す図24で比較する。
図24のグラフは、図12(a)に示す線分A-Aでの2つスポット半径に対するの累積露光エネルギー密度分布を示している。
実線で示される累積露光エネルギー密度σ-hは発色画素の直径縮小調整の例で、以下の値がプロットされている。
χ5-h=0.2164 : 発色画素の直径縮小調整
σD0-h=0.75 :消色中心ノードでの累積露光エネルギー密度は初期値と同じ
σCDh-h=0.9591 :調整された中間ノードでの累積露光エネルギー密度
σC0=1.5 :発色中心ノードでの累積露光エネルギー密度は初期値と同じ
2r-h≒1.869r0 :縮小された発色画素の直径
破線で示される累積露光エネルギー密度+dは消色画素の濃度上昇調整の例で、以下の値がプロットされている。
χ5+d≒0.2269 : 消色画素の濃度上昇調整
σD0+d=0.8094 :調整された消色中心ノードでの累積露光エネルギー密度
σCDh+d=1.0 :中間ノードでの累積露光エネルギー密度は初期値と同じ
σC0=1.5 :発色中心ノードでの累積露光エネルギー密度は初期値と同じ
2r+d=2r0 :発色画素の直径は初期値と同じ
【0107】
図24に示すように、発色画素の直径縮小調整では、発色画素の直径が小さくなっている
2r-h<2r+d=2r0
また、消色画素の濃度上昇調整では消色中心ノードの累積露光エネルギー密度が最大消色エネルギー密度を超えている。このことは消色画素の中心濃度が初期値のより上昇することを意味している。
ξdm =σD0-h<σD0+d
一方また、発色中心ノードでの累積露光エネルギー密度の分布は、どちらの調整方法でも
σC0=ξcm
となり、最大発色エネルギー密度を上回らず、記録媒体10に対して、熱分解、熱変形等の重大なダメージを与えることはない。
【0108】
本発明で示すパラメーターbcの調整により、ビームエネルギー密度の極小値を使用するスポット半径が採用でき、レーザーアレイモジュール20における各々のレーザービーム21が形成するスポット半径のばらつき、あるいは、レーザーパワーのばらつきを吸収する均一な画像形成を実現できる。
【0109】
また、ビームエネルギー密度が極小値を示すので、記録媒体10の温度変動等の環境変動による発色消色特性の不安定性を吸収する安定な画像形成を実現できる。
特に記録媒体10の長期間の繰返し使用による発色消色特性の変化は避けられないので、本発明で示すパラメーターbcの調整による、最大ビームエネルギー密度が極小かつ最小の採用は、長期間安定な画像形成を保障するものである。この結果、記録媒体10の長寿命化が達成される。
【0110】
本発明では、チェッカーボード画像パターンでのビームエネルギー密度ρrの極小値あるいは最小値を使用するスポット半径の採用により、各種画像パターン対応できることを示してきた。
チェッカーボード画像パターン基準のスポット半径(例えば式(3.20))を用いる設定においても、実際の画像形成において、比較的広い面積、例えば、5画素(ドット)×5画素(ドット)以上の面積を発色させる場合には、全面発色画像パターンを形成する際に使用した、発色中心露光エネルギー密度の式(1.38)
ε0c =ξc/(4χ + 8χ5)
が使用できる。
この式の無次元化を解除すると、
E0c=Mc/(4χ+8χ5) ・・・(5.1)
となる。
全面発色画像パターンにおける中心露光エネルギー密度を求める式(5.1)の設定は、各種の発色画像パターンのなかで、最小の中心露光エネルギー密度をもたらす。
そこで新たに、発色画像パターンにおける中心露光エネルギー密度の最小値をE 0cmin[J/m2]とおくと
E0cmin=Mc/(4χ+8χ5) ・・・(5.2)
を得ることができる。
【0111】
同様に、実際の画像形成において、比較的広い面積、例えば、5画素(ドット)×5画素(ドット)以上の面積を発色させる場合には、全面消色画像パターンを形成する際に使用した、消色中心露光エネルギー密度の式 (1.34)
ε0d =ξd/(4χ + 8χ5)
が使用できる。
この式の無次元化を解除すると、
E0c=Md/(4χ+8χ5) ・・・(5.3)
となる。
各種の消色画像パターンのなかで、最小の中心露光エネルギー密度をもたらす。
発色画像パターンにおける中心露光エネルギー密度の最小値をE 0dmin[J/m2]とおくと
E0dmin=Md/(4χ+8χ5) ・・・(5.4)
を得ることができる。
ただし、これは比較的広い面積での消色画像パターンに適用されるべきもので、例えば孤立消色などの場合は、消色ノードに対する中心露光エネルギーは、全面消色の場合より小さくなる。したがって、最小値のような基準にすることはできない。
【0112】
全面発色画像パターンもしく全面消色画像パターンはの設定が適用できる場合には、本発明による中心露光エネルギー密度の最小値を使用することにより、レーザーアレイモジュール20における、総露光エネルギーを削減できる。これにより、レーザーアレイモジュール20の総消費電力の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光熱変換型画像書換方法を用いた画像書換装置の基本構成を示す概略断面図。
【図2】同実施形態に係る光熱変換型画像書換方法を用いた画像書換装置の基本構成を示す概略斜視図。
【図3】同実施形態に係る光熱変換型可逆性感熱記録媒体の概略断面図。
【図4】全面発色および全面消色画像パターンに対応する発消色露光パターンの状態図で、 (a)は中心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (b)は中間ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (c)は面心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図。
【図5】全面発色および全面消色画像パターンにおいて中心露光エネルギー密度を固定した場合の、スポット半径指標と累積露光エネルギー密度の関係図。
【図6】全面消色画像パターンにおける有効スポット半径指標範囲と累積露光エネルギー密度の関係図。
【図7】最大スポット半径での全面消色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図8】最小スポット半径での全面消色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図9】全面発色画像パターンにおけるスポット半径指標と累積露光エネルギー密度の関係図。
【図10】最大スポット半径での全面発色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図11】最小スポット半径での全面発色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図12】チェッカーボード画像パターンに対応する発消色露光パターンの状態図で、 (a)は中心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (b)は中間ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (c)は面心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図。
【図13】チェッカーボード画像パターンにおける有効スポット半径指標範囲と中心露光エネルギー密度および累積露光エネルギー密度の関係図。
【図14】チェッカーボード画像パターンにおける最適スポット半径指標と中心露光エネルギー密度、累積露光エネルギー密度およびビームエネルギー密度の関係図。
【図15】最適スポット半径でのチェッカーボー画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図16】孤立発色画像パターンに対応する発消色露光パターンの状態図で、 (a)は中心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (b)は中間ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (c)は面心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図。
【図17】最適スポット半径での孤立発色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図18】孤立消色画像パターンに対応する発消色露光パターンの状態図で、 (a)は中心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (b)は中間ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (c)は面心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図。
【図19】最適スポット半径での孤立消色画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図20】1画素ライン画像パターンに対応する発消色露光パターンの状態図で、 (a)は中心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (b)は中間ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図、 (c)は面心ノードとその累積露光エネルギー密度の累積範囲を示す図。
【図21】最適スポット半径での1画素ライン画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【図22】チェッカーボード画像パターンにおける、発色画素の直径縮小調整での、スポット半径指標と中心露光エネルギー密度、累積露光エネルギー密度およびビームエネルギー密度の関係図。
【図23】チェッカーボード画像パターンにおける、消色画素の濃度上昇調整での、スポット半径指標と中心露光エネルギー密度、累積露光エネルギー密度およびビームエネルギー密度の関係図。
【図24】修正された2つの極小スポット半径でのチェッカーボード画像パターンに対する累積露光エネルギー密度の分布図
【符号の説明】
【0114】
10…光熱変換型可逆性感熱記録媒体(記録媒体)、
11…前回の記録画像、12…今回の記録画像、
13…支持体、14…可逆性感熱記録層、15…保護層、
20…レーザーアレイモジュール、21…レーザービーム、
22…集光光学系、23…半導体レーザーアレイ、24…レーザーアレイドライバ、
30…累積範囲、31…スポット円、31a…発色スポット、31b…消色スポット、
32…中心ノード、
32a…発色中心ノード、
32a1…直交方向に隣接する発色中心ノード、32a2…対角方向に隣接する発色中心ノード、
32b…消色中心ノード、
32b1…直交方向に隣接する消色中心ノード、32b2…対角方向に隣接する消色中心ノード、
33…中間ノード、34…面心ノード、
35a…発色ライン、35b…消色ライン、
90…媒体搬送装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】
【特許文献1】特開2003-246144号公報
【特許文献2】特開平7-61036号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の温度および温度変化速度の違いにより選択的に発色状態または消色状態をなす可逆性感熱記録媒体と、複数の独立駆動されるレーザービームが前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向に配列されたレーザーアレイ露光手段とを用い、前記可逆性感熱記録媒体を前記レーザーアレイ露光手段で所定のパターンで露光し、前記可逆性感熱記録媒体の発色すべき画素を発色条件に加熱し、同時に前記可逆性感熱記録媒体の消色すべき画素を消色条件に加熱して画像形成を行う画像書換方法において、
前記レーザーアレイ露光手段から出射される1つレーザービームの前記可逆性感熱記録媒体上における楕円結像スポットに対して、
E00[J/m2]を前記楕円結像スポットの中心における露光エネルギー密度とし、
wb[m] を前記楕円結像スポットの中心から前記可逆性感熱記録媒体の移動方向へ向けた前記楕円結像スポットの短半径とし、
wa[m] を前記楕円結像スポットの中心から前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向へ向けた、前記楕円結像スポットの長半径とし、
前記レーザーアレイ露光手段から出射される複数のレーザービームの前記可逆性感熱記録媒体上における複数の楕円結像スポットに対して、
r0[m] を前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向において、前記複数の楕円結像スポットの長軸方向のピッチ間距離の1/2の長さであり、かつ形成する画素のピッチ間距離の1/2の長さである画素半径とし、
前記可逆性感熱記録媒体の特性を
Mc [J/m2] を 最小発色エネルギー密度とし、
Mcm[J/m2] を最大発色エネルギー密度とし、
Md [J/m2] を最小消色エネルギー密度とし、
Mdm[J/m2] を最大消色エネルギー密度とし、
Mdm/Md、Mcm/Mcの2つの値から小さい方の値を、パラメーターp1とし、
χaを変数、p1をパラメーターとしたとした方程式(1)、およびχaの関係式(2)を
1- p14χa+4χa2+4χa4- p18χa5=0 ・・・(1)
wa/r0=2/log(1/χa)1/2 ・・・(2)
において、
χa1=0.5を用いて、画素半径r0で割ったスポット長半径wa1を
wa1/r0=2/log(1/χa1)1/2
とし、
方程式(1)の解χ2を用いて、画素半径r0で割ったスポット長半径wa2をwa2/r 0=2/log(1/χa2)1/2とし、
χbを変数、p1をパラメーターとした方程式(3)、およびχbの関係式(4)を
1- p14χb+4χb2+4χb4- p18χb5=0 ・・・(3)
wb/r0=2/log(1/χb)1/2 ・・・(4)
において、
χb1=0.5を用いて、画素半径r0で割ったスポット短半径wb1をwb1/r0=2/log(1/χb1)1/2とし、
方程式(3)の解χ2を用いて、画素半径r0で割ったスポット短半径wb2をwb2/r 0=2/log(1/χb2)1/2としたとき、
前記楕円スポット長半径wa、および楕円スポット短半径wbを画素半径r0で割った値が
wa2/r0≦wa/r0≦wa1/r0、及びwb2/r0≦wb/r0≦wb1/r0
の関係を満たすように設定された前記レーザービームで、前記可逆性感熱記録媒体で露光することを特徴とする画像書換方法。
【請求項2】
前記最小発色エネルギー密度Mc [J/m2] および前記最大消色エネルギー密度Mdm[J/m2]用いて、パラメーターp2を、
p2=Mc/Mdm
p3=Mcm/Mdm
としたときに、
前記関係式(2)で定義される前記変数χaと、p2、p3をパラメーターとした方程式(5)、方程式(6)
4pχa3/2/(1+2χa2+χa4+2χa6)-1=0 ・・・(5)
p2χa-1/2(1+4χa2+4χa4)/(1+2χa2+χa4+2χa6)-1- p3=0 ・・・(6)
において、
変数χの範囲
0<χa≦0.5
における方程式(3)の解χa3を用い、
ただし、範囲0<χa≦0.5において、前記方程式(3)の解χa3がない場合には
前記解χa1を用いてχa3=χa1とし、画素半径r0で割ったスポット長半径wa3を
wa3/r 0= 2/log(1/χa3)1/2
とし、
方程式(6)の解χa4を用いて、画素半径r0で割ったスポット長半径wa4を
wa4/r0=2/log(1/χa4)1/2
とし、
前記関係式(4)で定義される前記変数χbと、p2、p3をパラメーターとした方程式(7)、方程式(8)
4p2χb3/2/(1+2χb2+χb4+2χ6)-1=0 ・・・(7)
p2χb-1/2(1+4χb2+4χb4)/(1+2χb2+χb4+2χb6)-1- p3=0 ・・・(8)
において、
変数χの範囲
0<χb≦0.5
における方程式(3)の解χb3を用い、
ただし、範囲0<χ≦0.5において、前記方程式(3)の解χb3がない場合には
前記解χ1を用いてχ3=χ1とし、画素半径r0で割ったスポット短半径wb3を
wb3/r 0= 2/log(1/χb3)1/2
とし、
方程式(4)の解χ4を用いて、画素半径r0で割ったスポット短半径wb4を
wb4/r0=2/log(1/χb4)1/2
としたとき、
前記楕円スポット長半径waおよび、楕円スポット短半径wbを画素半径r0で割った値が
wa4/r0≦wa/r0≦wa3/r0
wb4/r0≦wb/r0≦wb3/r0
の関係を満たすように設定された前記レーザービームで、前記可逆性感熱記録媒体で露光することを特徴とする請求項1記載の画像書換方法。
【請求項3】
前記関係式(2)で定義される前記変数χaと、前記p2をパラメーターに対する方程式(9)、方程式(10)
0=log(1/χa)・((p2((-1/2・χa-3/2+14χa5/2)
-(χa-1/2+4χa7/2)(4χa+4χa3+12χa5)/(1+2χa2+χa4+2χa6))
-(p2(χa-1/2+4χa7/2)-(1+2χa2+χa4+2χa6))(-8χa+16χa3)/(1+4χa4-4χa2))
+1/χa・(p2(χa-1/2+4χa7/2)-(1+2χa2+χa4+2χa6)) ・・・(9)
ρar=2/log(1/χa)・(p2(χa-1/2+4χa7/2)/(1+2χa2+χa4+2χa6)-1)/(1-4χa2+4χa4) ・・・(10)
において、
前記解χa3および前記解χa4を用いた変数χaの範囲
χa4≦χa≦χa3
における方程式(5)の解χa5を用い、
ただし、範囲χa4≦χa≦χa3において、前記方程式(5)の解χa5がない場合には、
前記解χa3 を方程式(10)の変数χに代入した値をρar3とし、
前記解χa4を方程式(10)の変数χに代入した値をρar4とし、
ρar3とρar4でどちらか小さい値を示す、前記解χa3、前記解χa4をχa5とし、
前記関係式(2)で定義される前記変数χbと、前記p2をパラメーターに対する方程式(11)、方程式(12)
0=log(1/χb)・((p2((-1/2・χb-3/2+14χb5/2)
-(χb-1/2+4χb7/2)(4χb+4χb3+12χ5)/(1+2χb2+χb4+2χb6))
-(p2(χb-1/2+4χb7/2)-(1+2χb2+χb4+2χb6))(-8χb+16χb3)/(1+4χb4-4χb2))
+1/χb・(p2(χb-1/2+4χb7/2)-(1+2χb2+χb4+2χb6)) ・・・(11)
ρbr=2/log(1/χb)・(p2(χb-1/2+4χb7/2)/(1+2χb2+χb4+2χb6)-1)/(1-4χb2+4χb4) ・・・(12)
において、
前記解χb3および前記解χb4を用いた変数χbの範囲
χb4≦χb≦χb3
における方程式(5)の解χb5を用い、
ただし、範囲χb4≦χb≦χb3において、前記方程式(5)の解χb5がない場合には、
前記解χb3 を方程式(12)の変数χに代入した値をρbr3とし、
前記解χb4を方程式(12)の変数χに代入した値をρbr4とし、
ρbr3とρbr4でどちらか小さい値を示す、前記解χb3、前記解χb4をχb5とし、
前記楕円スポット長半径waおよび、楕円スポット短半径wbを画素半径r0で割った値が
wa6/r0=2/log(1/χa5)1/2
wb6/r0=2/log(1/χb5)1/2
の関係を満たすように設定された前記レーザービームで、前記可逆性感熱記録媒体で露光することを特徴とする請求項2記載の画像書換装置方法。
【請求項4】
前記パラメーターp2を
p2=σCDh/σD0
として、前記最消発色エネルギー密度Md [J/m2] および前記最大消色エネルギー密度Mdm[J/m2]よる条件
Md/Mdm<σCDh≦1
Md/Mdm≦σD0 <1
の範囲でp2の値を調整し、この調整されたp2を用いた場合に、
前記方程式(5)および前記方程式(6)の前記解χa3および前記解χa4を用いた変数χaの範囲
χa4≦χa≦χa3
を前記方程式(9)の解χa5が満たし、かつ前記方程式(7)および前記方程式(8)の前記解χb3および前記解χb4を用いた変数χbの範囲χb4≦χb≦χb3を前記方程式(10)の解χb5が満たしていることを特徴とする請求項3記載の画像書換装置方法。
【請求項5】
発色する画素に対する、前記レーザーアレイ露光手段から出射される1つのレーザービームの露光エネルギー分布の中心の露光エネルギー密度の最小値E 0cmin[J/m2]が、
前記関係式(2)で定義される前記変数χaと、前記関係式(4)で定義される前記変数χbと
前記最小発色エネルギー密度Mc [J/m2]用いて、
E0cmin=Mc/(4χa+8χa5)
E0cmin=Mc/(4χb+8χb5)
であることを特徴とする請求項2記載の画像書換方法。
【請求項6】
媒体の温度および温度変化速度の違いにより選択的に発色状態または消色状態をなす可逆性感熱記録媒体と、複数の独立駆動されるレーザービームが前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向に配列されたレーザーアレイ露光手段とを用い、前記可逆性感熱記録媒体を前記レーザーアレイ露光手段で所定のパターンで露光し、前記可逆性感熱記録媒体の発色すべき画素を発色条件に加熱し、同時に前記可逆性感熱記録媒体の消色すべき画素を消色条件に加熱して画像形成を行う画像書換方法において、
前記レーザーアレイ露光手段から出射される1つレーザービームの前記可逆性感熱記録媒体上における楕円結像スポットに対して、
E00[J/m2]を前記楕円結像スポットの中心における露光エネルギー密度とし、
wb[m] を前記楕円結像スポットの中心から前記可逆性感熱記録媒体の移動方向へ向けた前記楕円結像スポットの短半径とし、
wa[m] を前記楕円結像スポットの中心から前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向へ向けた、前記楕円結像スポットの長半径とし、
前記レーザーアレイ露光手段から出射される複数のレーザービームの前記可逆性感熱記録媒体上における複数の楕円結像スポットに対して、
r0[m] を前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向において、前記複数の楕円結像スポットの長軸方向のピッチ間距離の1/2の長さであり、かつ形成する画素のピッチ間距離の1/2の長さである画素半径とし、
前記可逆性感熱記録媒体の特性を
Mc [J/m2] を 最小発色エネルギー密度とし、
Mcm[J/m2] を最大発色エネルギー密度とし、
Md [J/m2] を最小消色エネルギー密度とし、
Mdm[J/m2] を最大消色エネルギー密度とし、
Mdm/Md、Mcm/Mcの2つの値から小さい方の値を、パラメーターp1とし、
χaを変数、p1をパラメーターとしたとした方程式(1)、およびχaの関係式(2)を
1- p14χa+4χa2+4χa4- p18χa5=0 ・・・(1)
wa/r0=2/log(1/χa)1/2 ・・・(2)
において、
χa1=0.5を用いて、画素半径r0で割ったスポット長半径wa1を
wa1/r0=2/log(1/χa1)1/2
とし、
方程式(1)の解χ2を用いて、画素半径r0で割ったスポット長半径wa2を
wa2/r 0=2/log(1/χa2)1/2
とし、
χbを変数、p1をパラメーターとした方程式(3)、およびχbの関係式(4)を
1- p14χb+4χb2+4χb4- p18χb5=0 ・・・(3)
wb/r0=2/log(1/χb)1/2 ・・・(4)
において、
χb1=0.5を用いて、画素半径r0で割ったスポット短半径wb1を
wb1/r0=2/log(1/χb1)1/2
とし、
方程式(3)の解χ2を用いて、画素半径r0で割ったスポット短半径wb2を
wb2/r 0=2/log(1/χb2)1/2
としたとき、
前記楕円スポット長半径wa、および楕円スポット短半径wbを画素半径r0で割った値が
wa2/r0≦wa/r0≦wa1/r0
wb2/r0≦wb/r0≦wb1/r0
の関係を満たすように設定された前記レーザービームで、前記可逆性感熱記録媒体で露光することを特徴とする画像書換装置。
【請求項1】
媒体の温度および温度変化速度の違いにより選択的に発色状態または消色状態をなす可逆性感熱記録媒体と、複数の独立駆動されるレーザービームが前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向に配列されたレーザーアレイ露光手段とを用い、前記可逆性感熱記録媒体を前記レーザーアレイ露光手段で所定のパターンで露光し、前記可逆性感熱記録媒体の発色すべき画素を発色条件に加熱し、同時に前記可逆性感熱記録媒体の消色すべき画素を消色条件に加熱して画像形成を行う画像書換方法において、
前記レーザーアレイ露光手段から出射される1つレーザービームの前記可逆性感熱記録媒体上における楕円結像スポットに対して、
E00[J/m2]を前記楕円結像スポットの中心における露光エネルギー密度とし、
wb[m] を前記楕円結像スポットの中心から前記可逆性感熱記録媒体の移動方向へ向けた前記楕円結像スポットの短半径とし、
wa[m] を前記楕円結像スポットの中心から前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向へ向けた、前記楕円結像スポットの長半径とし、
前記レーザーアレイ露光手段から出射される複数のレーザービームの前記可逆性感熱記録媒体上における複数の楕円結像スポットに対して、
r0[m] を前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向において、前記複数の楕円結像スポットの長軸方向のピッチ間距離の1/2の長さであり、かつ形成する画素のピッチ間距離の1/2の長さである画素半径とし、
前記可逆性感熱記録媒体の特性を
Mc [J/m2] を 最小発色エネルギー密度とし、
Mcm[J/m2] を最大発色エネルギー密度とし、
Md [J/m2] を最小消色エネルギー密度とし、
Mdm[J/m2] を最大消色エネルギー密度とし、
Mdm/Md、Mcm/Mcの2つの値から小さい方の値を、パラメーターp1とし、
χaを変数、p1をパラメーターとしたとした方程式(1)、およびχaの関係式(2)を
1- p14χa+4χa2+4χa4- p18χa5=0 ・・・(1)
wa/r0=2/log(1/χa)1/2 ・・・(2)
において、
χa1=0.5を用いて、画素半径r0で割ったスポット長半径wa1を
wa1/r0=2/log(1/χa1)1/2
とし、
方程式(1)の解χ2を用いて、画素半径r0で割ったスポット長半径wa2をwa2/r 0=2/log(1/χa2)1/2とし、
χbを変数、p1をパラメーターとした方程式(3)、およびχbの関係式(4)を
1- p14χb+4χb2+4χb4- p18χb5=0 ・・・(3)
wb/r0=2/log(1/χb)1/2 ・・・(4)
において、
χb1=0.5を用いて、画素半径r0で割ったスポット短半径wb1をwb1/r0=2/log(1/χb1)1/2とし、
方程式(3)の解χ2を用いて、画素半径r0で割ったスポット短半径wb2をwb2/r 0=2/log(1/χb2)1/2としたとき、
前記楕円スポット長半径wa、および楕円スポット短半径wbを画素半径r0で割った値が
wa2/r0≦wa/r0≦wa1/r0、及びwb2/r0≦wb/r0≦wb1/r0
の関係を満たすように設定された前記レーザービームで、前記可逆性感熱記録媒体で露光することを特徴とする画像書換方法。
【請求項2】
前記最小発色エネルギー密度Mc [J/m2] および前記最大消色エネルギー密度Mdm[J/m2]用いて、パラメーターp2を、
p2=Mc/Mdm
p3=Mcm/Mdm
としたときに、
前記関係式(2)で定義される前記変数χaと、p2、p3をパラメーターとした方程式(5)、方程式(6)
4pχa3/2/(1+2χa2+χa4+2χa6)-1=0 ・・・(5)
p2χa-1/2(1+4χa2+4χa4)/(1+2χa2+χa4+2χa6)-1- p3=0 ・・・(6)
において、
変数χの範囲
0<χa≦0.5
における方程式(3)の解χa3を用い、
ただし、範囲0<χa≦0.5において、前記方程式(3)の解χa3がない場合には
前記解χa1を用いてχa3=χa1とし、画素半径r0で割ったスポット長半径wa3を
wa3/r 0= 2/log(1/χa3)1/2
とし、
方程式(6)の解χa4を用いて、画素半径r0で割ったスポット長半径wa4を
wa4/r0=2/log(1/χa4)1/2
とし、
前記関係式(4)で定義される前記変数χbと、p2、p3をパラメーターとした方程式(7)、方程式(8)
4p2χb3/2/(1+2χb2+χb4+2χ6)-1=0 ・・・(7)
p2χb-1/2(1+4χb2+4χb4)/(1+2χb2+χb4+2χb6)-1- p3=0 ・・・(8)
において、
変数χの範囲
0<χb≦0.5
における方程式(3)の解χb3を用い、
ただし、範囲0<χ≦0.5において、前記方程式(3)の解χb3がない場合には
前記解χ1を用いてχ3=χ1とし、画素半径r0で割ったスポット短半径wb3を
wb3/r 0= 2/log(1/χb3)1/2
とし、
方程式(4)の解χ4を用いて、画素半径r0で割ったスポット短半径wb4を
wb4/r0=2/log(1/χb4)1/2
としたとき、
前記楕円スポット長半径waおよび、楕円スポット短半径wbを画素半径r0で割った値が
wa4/r0≦wa/r0≦wa3/r0
wb4/r0≦wb/r0≦wb3/r0
の関係を満たすように設定された前記レーザービームで、前記可逆性感熱記録媒体で露光することを特徴とする請求項1記載の画像書換方法。
【請求項3】
前記関係式(2)で定義される前記変数χaと、前記p2をパラメーターに対する方程式(9)、方程式(10)
0=log(1/χa)・((p2((-1/2・χa-3/2+14χa5/2)
-(χa-1/2+4χa7/2)(4χa+4χa3+12χa5)/(1+2χa2+χa4+2χa6))
-(p2(χa-1/2+4χa7/2)-(1+2χa2+χa4+2χa6))(-8χa+16χa3)/(1+4χa4-4χa2))
+1/χa・(p2(χa-1/2+4χa7/2)-(1+2χa2+χa4+2χa6)) ・・・(9)
ρar=2/log(1/χa)・(p2(χa-1/2+4χa7/2)/(1+2χa2+χa4+2χa6)-1)/(1-4χa2+4χa4) ・・・(10)
において、
前記解χa3および前記解χa4を用いた変数χaの範囲
χa4≦χa≦χa3
における方程式(5)の解χa5を用い、
ただし、範囲χa4≦χa≦χa3において、前記方程式(5)の解χa5がない場合には、
前記解χa3 を方程式(10)の変数χに代入した値をρar3とし、
前記解χa4を方程式(10)の変数χに代入した値をρar4とし、
ρar3とρar4でどちらか小さい値を示す、前記解χa3、前記解χa4をχa5とし、
前記関係式(2)で定義される前記変数χbと、前記p2をパラメーターに対する方程式(11)、方程式(12)
0=log(1/χb)・((p2((-1/2・χb-3/2+14χb5/2)
-(χb-1/2+4χb7/2)(4χb+4χb3+12χ5)/(1+2χb2+χb4+2χb6))
-(p2(χb-1/2+4χb7/2)-(1+2χb2+χb4+2χb6))(-8χb+16χb3)/(1+4χb4-4χb2))
+1/χb・(p2(χb-1/2+4χb7/2)-(1+2χb2+χb4+2χb6)) ・・・(11)
ρbr=2/log(1/χb)・(p2(χb-1/2+4χb7/2)/(1+2χb2+χb4+2χb6)-1)/(1-4χb2+4χb4) ・・・(12)
において、
前記解χb3および前記解χb4を用いた変数χbの範囲
χb4≦χb≦χb3
における方程式(5)の解χb5を用い、
ただし、範囲χb4≦χb≦χb3において、前記方程式(5)の解χb5がない場合には、
前記解χb3 を方程式(12)の変数χに代入した値をρbr3とし、
前記解χb4を方程式(12)の変数χに代入した値をρbr4とし、
ρbr3とρbr4でどちらか小さい値を示す、前記解χb3、前記解χb4をχb5とし、
前記楕円スポット長半径waおよび、楕円スポット短半径wbを画素半径r0で割った値が
wa6/r0=2/log(1/χa5)1/2
wb6/r0=2/log(1/χb5)1/2
の関係を満たすように設定された前記レーザービームで、前記可逆性感熱記録媒体で露光することを特徴とする請求項2記載の画像書換装置方法。
【請求項4】
前記パラメーターp2を
p2=σCDh/σD0
として、前記最消発色エネルギー密度Md [J/m2] および前記最大消色エネルギー密度Mdm[J/m2]よる条件
Md/Mdm<σCDh≦1
Md/Mdm≦σD0 <1
の範囲でp2の値を調整し、この調整されたp2を用いた場合に、
前記方程式(5)および前記方程式(6)の前記解χa3および前記解χa4を用いた変数χaの範囲
χa4≦χa≦χa3
を前記方程式(9)の解χa5が満たし、かつ前記方程式(7)および前記方程式(8)の前記解χb3および前記解χb4を用いた変数χbの範囲χb4≦χb≦χb3を前記方程式(10)の解χb5が満たしていることを特徴とする請求項3記載の画像書換装置方法。
【請求項5】
発色する画素に対する、前記レーザーアレイ露光手段から出射される1つのレーザービームの露光エネルギー分布の中心の露光エネルギー密度の最小値E 0cmin[J/m2]が、
前記関係式(2)で定義される前記変数χaと、前記関係式(4)で定義される前記変数χbと
前記最小発色エネルギー密度Mc [J/m2]用いて、
E0cmin=Mc/(4χa+8χa5)
E0cmin=Mc/(4χb+8χb5)
であることを特徴とする請求項2記載の画像書換方法。
【請求項6】
媒体の温度および温度変化速度の違いにより選択的に発色状態または消色状態をなす可逆性感熱記録媒体と、複数の独立駆動されるレーザービームが前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向に配列されたレーザーアレイ露光手段とを用い、前記可逆性感熱記録媒体を前記レーザーアレイ露光手段で所定のパターンで露光し、前記可逆性感熱記録媒体の発色すべき画素を発色条件に加熱し、同時に前記可逆性感熱記録媒体の消色すべき画素を消色条件に加熱して画像形成を行う画像書換方法において、
前記レーザーアレイ露光手段から出射される1つレーザービームの前記可逆性感熱記録媒体上における楕円結像スポットに対して、
E00[J/m2]を前記楕円結像スポットの中心における露光エネルギー密度とし、
wb[m] を前記楕円結像スポットの中心から前記可逆性感熱記録媒体の移動方向へ向けた前記楕円結像スポットの短半径とし、
wa[m] を前記楕円結像スポットの中心から前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向へ向けた、前記楕円結像スポットの長半径とし、
前記レーザーアレイ露光手段から出射される複数のレーザービームの前記可逆性感熱記録媒体上における複数の楕円結像スポットに対して、
r0[m] を前記可逆性感熱記録媒体の移動方向と直交する方向において、前記複数の楕円結像スポットの長軸方向のピッチ間距離の1/2の長さであり、かつ形成する画素のピッチ間距離の1/2の長さである画素半径とし、
前記可逆性感熱記録媒体の特性を
Mc [J/m2] を 最小発色エネルギー密度とし、
Mcm[J/m2] を最大発色エネルギー密度とし、
Md [J/m2] を最小消色エネルギー密度とし、
Mdm[J/m2] を最大消色エネルギー密度とし、
Mdm/Md、Mcm/Mcの2つの値から小さい方の値を、パラメーターp1とし、
χaを変数、p1をパラメーターとしたとした方程式(1)、およびχaの関係式(2)を
1- p14χa+4χa2+4χa4- p18χa5=0 ・・・(1)
wa/r0=2/log(1/χa)1/2 ・・・(2)
において、
χa1=0.5を用いて、画素半径r0で割ったスポット長半径wa1を
wa1/r0=2/log(1/χa1)1/2
とし、
方程式(1)の解χ2を用いて、画素半径r0で割ったスポット長半径wa2を
wa2/r 0=2/log(1/χa2)1/2
とし、
χbを変数、p1をパラメーターとした方程式(3)、およびχbの関係式(4)を
1- p14χb+4χb2+4χb4- p18χb5=0 ・・・(3)
wb/r0=2/log(1/χb)1/2 ・・・(4)
において、
χb1=0.5を用いて、画素半径r0で割ったスポット短半径wb1を
wb1/r0=2/log(1/χb1)1/2
とし、
方程式(3)の解χ2を用いて、画素半径r0で割ったスポット短半径wb2を
wb2/r 0=2/log(1/χb2)1/2
としたとき、
前記楕円スポット長半径wa、および楕円スポット短半径wbを画素半径r0で割った値が
wa2/r0≦wa/r0≦wa1/r0
wb2/r0≦wb/r0≦wb1/r0
の関係を満たすように設定された前記レーザービームで、前記可逆性感熱記録媒体で露光することを特徴とする画像書換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−31462(P2011−31462A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179317(P2009−179317)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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