画像消去方法及び画像消去装置
【課題】レーザ光の走査が一軸方向だけですみ、低エネルギーで高速消去が可能となり、装置コストの大幅な低減が可能になる画像消去装置及び画像消去方法の提供。
【解決手段】半導体レーザアレイと、半導体レーザアレイの出射面に配置され、該半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にする幅方向平行化手段と、前記幅方向平行化手段の出射面側に配置され、形成されたライン状ビームの長軸長さを前記半導体レーザアレイの光源長さより長く、かつ長さ方向に均一な光分布にする長軸長さ方向光分布制御手段とを少なくとも有してなり、半導体レーザアレイの光源長さより長く、かつ長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去装置である。
【解決手段】半導体レーザアレイと、半導体レーザアレイの出射面に配置され、該半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にする幅方向平行化手段と、前記幅方向平行化手段の出射面側に配置され、形成されたライン状ビームの長軸長さを前記半導体レーザアレイの光源長さより長く、かつ長さ方向に均一な光分布にする長軸長さ方向光分布制御手段とを少なくとも有してなり、半導体レーザアレイの光源長さより長く、かつ長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体レーザ(LD)を直線状に配列した半導体レーザ(LD)アレイを光学系レンズで均一性の高いライン状ビームに変換して、該ライン状ビームを熱可逆記録媒体に照射して記録された画像の消去を行う画像消去方法及び画像消去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、熱可逆記録媒体(以下、「記録媒体」、又は「媒体」と称することがある)への画像形成及び画像消去は、加熱源を記録媒体に接触させて該媒体を加熱する接触式で行われている。該加熱源としては、通常、画像形成にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
【0003】
このような接触式の記録方法は、熱可逆記録媒体がフィルム、紙等のフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって記録媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像形成及び画像消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像形成装置及び画像消去装置を安価に製造することができるという利点があった。しかし、熱可逆記録媒体が、特許文献1及び2に記載されているようなRF−IDタグなどを内蔵している場合には、熱可逆記録媒体の厚みが厚くなりフレキシブル性が低下して加熱源を均一に押し当てるためには高い圧力が必要となる。また、接触式であるために、印字と消去を繰り返すと記録媒体表面が削れて凹凸が生じ、サーマルヘッドやホットスタンプ等の加熱源に接触しない部分が出てきて均一に加熱されないため濃度低下や消去不良がおこるという問題がある(特許文献3及び4参照)。
【0004】
更に、RF−IDタグが非接触で離れたところから記憶情報の読み取り及び書き換えが行われるのに対して、熱可逆記録媒体についても離れた位置から画像を書き換えたいという要望が生じてきている。例えば熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や離れたところから均一に画像形成及び画像消去する方法として、レーザを用いる方法が提案されている(特許文献5参照)。この方法は、物流ラインに用いる搬送用容器に熱可逆記録媒体を使用して非接触記録を行うものであり、書き込みはレーザで実施し、消去は熱風、温水、又は赤外線ヒータで行うと記載されている。
【0005】
このようなレーザによる記録方法としては、高出力のレーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、その位置をコントロール可能なレーザ記録装置(レーザマーカー)が提供されている。このレーザマーカーを用いて、レーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、媒体中の光熱変換材料が光を吸収して熱に変換し、その熱で記録及び消去を行うことが可能である。これまでレーザによる画像形成及び消去を行う方法として、ロイコ染料と可逆性顕色剤、種々の光熱変換材料を組み合わせて、近赤外レーザ光により記録する方法が提案されている(特許文献6参照)
【0006】
近赤外レーザ光により書換え可能な熱可逆記録媒体に記録する方法として、例えば半導体レーザ(LD)光源を利用してレーザ光による非接触の書換えが可能である。
半導体レーザを用いた非接触の書き換えを行うレーザ記録装置(レーザマーカー)では、高速で小さい文字を細い線で印字するために、高出力で小さい円形ビームが必要であることから、図1に示すように、複数のLD光源からなるLDアレイ1からのライン状ビームを円形ビームに変換するため、特殊光学レンズ系11、光ファイバ12などで構成されるファイバ結合LDが用いられている。しかし、レーザ光を高出力化してLDアレイの光源数が多くなればなるほど、前記特殊光学レンズ系11は複雑となり、かつ装置コストが高くなることが課題である。また、ファイバ結合LDはレンズ系を組み込まれた形になっていて直接LD光源を冷却できないので冷却効率が悪く高出力化が難しく、かつ、複雑な光学系であることから、レーザ光全てをファイバに入れることができず効率低下を引起し、高出力化が困難であった。
【0007】
また、画像記録では、画像記録部分だけにベクター方式でレーザ光を照射するのに対して、画像消去では、熱可逆記録媒体全面にレーザ光を照射するので高速で消去するためにはレーザ光の高出力化が必要である。
前記レーザ記録装置を用いた画像消去方法として、図2A及び図2Bに示すように、通常のレーザマーカーの円形ビームを用いて平行に重複させながら走査することで画像を消去する方法が提案されている(特許文献7、8及び9参照)。
しかし、これらの提案の方法では、レーザ光の高出力化を図るには装置コストが高くなってしまうという課題があった。
【0008】
一方、LD光源の高出力化を図るために、1つの光源で出力を上げるとLD光源素子が破損するので、複数LD光源を装備したLD素子(LDアレイ)を用いるのが一般的である。例えば特許文献10には、図3に示すような、直線状に複数の光源が配置されたLDアレイ1から出射されたレーザ光を第1のシリンドリカルレンズ13により帯状の光に変換するレーザ光加熱ツールが提案されている。図3中14は、第1のシリンドリカルレンズ13から出射した帯状の平行光を幅方向に集光させる第2のシリンドリカルレンズ14である。しかし、この提案では、第1のシリンドリカルレンズ13から出射される帯状の光が均一であるか明示がなく、第2のシリンドリカルレンズ14により集光させて、半田付け及び半田付けの修正を行うものであり、本願発明とは構成及び目的が相違する。
【0009】
また、特許文献11には、複数の光源が並んだLDアレイを各光源に対して結像させるレンズを配置して均一な光分布の帯状光にするライン光源を用いて、熱可逆記録媒体に対し画像記録及び画像消去を行うことについて提案されている。
しかし、この提案では、LDアレイの各光源に対して結像させるレンズを配置するため、装置が複雑になり、LDアレイの光源の幅と熱可逆記録媒体に照射する幅が同じになるので、LDアレイの光源の幅を広くする必要があり、結果として装置サイズが大きくなり、装置コストが大幅に上昇するという問題がある。
【0010】
また、特許文献12及び13には、均一な光分布を形成するための光学系レンズ構成を搭載した照明装置が紹介されているが、近赤外レーザ光を書換え可能な熱可逆記録媒体に対し照射して、繰り返し画像記録及び画像消去することについては、開示も示唆もされていない。
【0011】
したがって低エネルギーで高速消去が可能となり、装置コストの大幅な低減が可能になる画像消去装置及び画像消去方法の速やかな提供が望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、レーザ光の走査が一軸方向だけですみ、円形ビームのレーザ光走査に比べて簡易になり、低エネルギーで高速消去が可能となり、装置コストの大幅な低減が可能になる画像消去装置及び画像消去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、画像消去では円形ビームである必要がないことから、複数のLD光源を有する直線状に配列したLDアレイを用いて、光学レンズによりライン状ビームに変換することで、レーザ光の走査が一軸方向だけですみ、円形ビームのレーザ光走査に比べて簡易になり、低エネルギーで高速消去が可能となり、装置コストの大幅な低減が可能になることを知見した。
【0014】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 複数の半導体レーザ光源を直線状に配列した半導体レーザアレイと、
前記半導体レーザアレイの出射面に配置され、該半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にする幅方向平行化手段と、
前記幅方向平行化手段により形成されたライン状ビームの長軸長さを、前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする長軸長さ方向光分布制御手段と、を少なくとも有してなり、
前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去することを特徴とする画像消去装置である。
<2> 半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整するビームサイズ調整手段を有する前記<1>に記載の画像消去装置である。
<3> 幅方向平行化手段が、シリンドリカルレンズである前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像消去装置である。
<4> 長軸長さ方向光分布制御手段が、レンズアレイである前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像消去装置である。
<5> 長軸長さ方向光分布制御手段が、フレネルレンズである前記<1>から<4>のいずれかに記載の画像消去装置である。
<6> 熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、一軸方向に走査する走査手段を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像消去装置である。
<7> 走査手段が、一軸のガルバノミラーである前記<6>に記載の画像消去装置である。
<8> 走査手段が、ステッピングモータミラーである前記<6>に記載の画像消去装置である。
<9> 走査手段が、ポリゴンミラーである前記<6>に記載の画像消去装置である。
<10> 半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームに対して、熱可逆記録媒体を移動手段により移動させ、該熱可逆記録媒体上で該ライン状ビームを走査させて、該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する前記<1>から<9>のいずれかに記載の画像消去装置である。
<11> 熱可逆記録媒体が容器表面に貼り付けられており、該容器を移動手段により移動させることで該熱可逆記録媒体を移動させる前記<10>に記載の画像消去装置である。
<12> 複数の半導体レーザ光源を直線状に配列した半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にする幅方向平行化工程と、
前記幅方向平行化工程で形成されたライン状ビームの長軸長さを前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする長軸長さ方向光分布制御工程と、
を少なくとも含んでなり、
前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去することを特徴とする画像消去方法である。
<13> 半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整するビームサイズ調整工程を含む前記<12>に記載の画像消去方法である。
<14> 熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、一軸方向に走査する走査工程を含む前記<12>から<13>のいずれかに記載の画像消去方法である。
<15> 半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームに対して、熱可逆記録媒体を移動手段により移動させ、該熱可逆記録媒体上で該ライン状ビームを走査させて、該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する前記<12>から<13>のいずれかに記載の画像消去方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、レーザ光の走査が一軸方向だけですみ、円形ビームのレーザ光走査に比べて簡易になり、低エネルギーで高速消去が可能となり、装置コストの大幅な低減が可能になる画像消去装置及び画像消去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、従来の画像消去装置の一例を示す図である。
【図2A】図2Aは、従来のレーザビーム形状を示す図である。
【図2B】図2Bは、従来のビーム形状を用いたときのレーザ光走査方法を示す図である。
【図3】図3は、従来のレーザ光加熱ツールの一例を示す図である。
【図4A】図4Aは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図4B】図4Bは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の他の一例を示す概略断面図である。
【図4C】図4Cは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の更に他の一例を示す概略断面図である。
【図5A】図5Aは、熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。
【図5B】図5Bは、熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である
【図6】図6は、本発明の画像消去装置の一例を示す概略図である。
【図7】図7は、本発明の画像消去装置の他の一例を示す概略図である。
【図8】図8は、本発明のレーザビーム形状、及びレーザ光走査方法を示す図である。
【図9】図9は、実施例における消去方式の違いによる消去性を比較したグラフである。
【図10】図10は、レーザ光走査におけるジャンプ(レーザ光を照射しないレーザ光走査)を説明するための図である。
【図11】図11は、RF−IDタグの一例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(画像消去装置及び画像消去方法)
本発明の画像消去装置は、半導体レーザアレイと、幅方向平行化手段と、長軸長さ方向光分布制御手段とを少なくとも有してなり、ビームサイズ調整手段、走査手段、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
本発明の画像消去装置においては、前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する。
本発明の画像消去方法は、幅方向平行化工程と、長軸長さ方向光分布制御工程とを少なくとも含んでなり、ビームサイズ調整工程、走査工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の画像消去方法においては、前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する。
【0018】
本発明の画像消去方法は、本発明の画像消去装置により好適に実施することができ、前記幅方向平行化工程は前記幅方向平行化手段により行うことができ、前記長軸長さ方向光分布制御工程は前記長軸長さ方向光分布制御手段により行うことができ、前記ビームサイズ調整工程は前記ビームサイズ調整手段により行うことができ、前記走査工程は前記走査手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0019】
<半導体レーザアレイ>
前記半導体レーザアレイは、複数の半導体レーザを直線状に配列した半導体レーザ光源であり、3個〜300個の半導体レーザを含んでいることが好ましく、10個〜100個がより好ましい。
前記半導体レーザの数が少ないと、照射パワーを上げることができないことがあり、多すぎると、半導体レーザアレイを冷却するための大規模の冷却装置が必要となることがある。なお、半導体レーザアレイを発光させるためには半導体レーザは加熱され、冷却が必要となり、装置コストが上がることがある。
前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm〜50mmであることが好ましく、3mm〜15mmであることがより好ましい。前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さが、1mm未満であると、照射パワーを上げることができなくなることがあり、50mmを超えると、半導体レーザアレイを冷却するための大規模な冷却装置が必要となり、装置コストが上がることがある。
ここで、前記半導体レーザアレイの発光部とは、半導体レーザアレイにおいて有効かつ実際に発光している部分を意味する。
【0020】
前記半導体レーザアレイにおけるレーザ光の波長としては、700nm以上が好ましく、720nm以上がより好ましく、750nm以上が更に好ましい。前記レーザ光の波長の上限としては、目的に応じて適宜選択することができるが、1,500nm以下が好ましく、1,300mm以下がより好ましく、1,200nm以下が更に好ましい。
前記レーザ光の波長を700nmより短い波長にすると、可視光領域では熱可逆記録媒体の画像記録時のコントラストが低下したり、熱可逆記録媒体が着色してしまうという問題がある。更に短い波長の紫外光領域では、熱可逆記録媒体の劣化が起こりやすくなるという問題がある。また、熱可逆記録媒体に添加する光熱変換材料には、繰返し画像処理に対する耐久性を確保するために高い分解温度を必要とし、光熱変換材料に有機色素を用いる場合、分解温度が高く吸収波長が長い光熱変換材料を得るのは難しい。これよりレーザ光の波長としては1,500nm以下が好ましい。
【0021】
<幅方向平行化工程及び幅方向平行化手段>
前記幅方向平行化工程は、複数の半導体レーザを直線状に配列した半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にしてライン状ビームとする工程であり、幅方向平行化手段により実施することができる。
前記幅方向平行化手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1枚の片面凸型のシリンドリカルレンズ、複数の凸型シリンドリカルレンズ、凹型シリンドリカルレンズ、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。
前記半導体レーザアレイのレーザ光は長さ方向に比べて幅方向の拡散角が大きく、前記幅方向平行化手段が前記半導体レーザアレイの出射面に近接配置されていることで、ビーム幅(短軸長さ)が広がることを避けることができ、レンズを小さくできるので好ましい。
【0022】
<長軸長さ方向光分布制御工程及び長軸長さ方向光分布制御手段>
前記長軸長さ方向光分布制御工程は、前記幅方向平行化工程で形成されたライン状ビームの長軸長さを前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする工程であり、長軸長さ方向光分布制御手段により実施することができる。
前記長軸長さ方向光分布制御手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2枚の球面レンズ、非球面シリンドリカルレンズ(長さ方向)、シリンドリカルレンズ(幅方向)の組合せで実現可能である。前記非球面シリンドリカルレンズ(長さ方向)としては、例えば、凸レンズアレイ、凹レンズアレイ、フレネルレンズなどが挙げられる。前記のレンズアレイとは、長さ方向に凸型又は、凹型のレンズが複数並んだレンズを示す。前記非球面シリンドリカルレンズにより長さ方向に拡散することで均一な光分布を得ることが可能となる。
前記長軸長さ方向光分布制御手段は、前記幅方向平行化手段の出射面側に配置されている。
【0023】
<ビームサイズ調整工程及びビームサイズ調整手段>
前記ビームサイズ調整工程は、熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整する工程であり、ビームサイズ調整手段により実施することができる。
【0024】
前記ビームサイズ調整手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば凸型シリンドリカルレンズ、凹型シリンドリカルレンズ、球面レンズの焦点距離変更、レンズ設置位置の変更、装置と熱可逆記録媒体のワーク間距離の変更及びその組合せなどが挙げられる。
本発明において、調整後のライン状ビームの長軸長さは10mm〜300mmであることが好ましく、30mm〜160mmであることがより好ましい。前記ライン状ビームの長軸長さにより消去可能な領域が決まるので狭いと消去領域が狭くなり、ビーム幅が広いと消去不要な領域にもエネルギーを加えてしまい、エネルギーロス及び破損を引き起こす。
前記ビーム長軸長さは、前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さよりも2倍以上長いことが好ましく、3倍以上長いことがより好ましい。前記ビーム長軸長さが前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さよりも短いと、長い消去領域を確保するには半導体レーザアレイの光源を長くする必要があり、装置のコスト及び装置サイズが大きくなることがある。
また、調整後のライン状ビームの短軸長さは、0.1mm〜10mmであることが好ましく、0.2mm〜5mmであることがより好ましい。前記ビーム短軸長さは熱可逆記録媒体を加熱する時間を制御でき、ビーム短軸長さが狭いと加熱時間が短く消去性が低下してしまい、ビーム短軸長さが広いと加熱時間が長くなり、余計なエネルギーを熱可逆記録媒体に加え、高いエネルギーが必要で高速での消去ができない。熱可逆記録媒体の消去特性に適したビーム短軸長さを調整することが装置には必要である。
【0025】
このように調整されたライン状ビームの出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10W以上が好ましく、20W以上がより好ましく、40W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、10W未満であると、画像消去に時間がかかり、画像消去時間を短くしようとすると出力が不足して画像の消去不良が発生する。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500W以下が好ましく、200W以下がより好ましく、120W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、500Wを超えると、半導体レーザの光源の冷却装置が大型化するおそれがある。
【0026】
<走査工程及び走査手段>
前記走査工程は、前記熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、一軸方向に走査する工程であり、走査手段により実施することができる。
前記走査手段としては、ライン状ビームを一軸方向に走査することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば一軸のガルバノミラー、ポリゴンミラー、ステッピングモータミラーなどが挙げられる。
前記一軸のガルバノミラーやステッピングモータミラーでは速度調整を細かく制御することが可能であり、前記ステッピングモータミラーは前記一軸のガルバノミラーに比べて低価格であり、前記ポリゴンミラーでは速度調整は困難であるが低価格である。
【0027】
前記ライン状ビームの走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2mm/s以上が好ましく、10mm/s以上がより好ましく、20mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、2mm/s未満であると、画像消去に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1000mm/s以下が好ましく、300mm/s以下がより好ましく、100mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、1000mm/sを超えると、均一な画像消去がし難くなることがある。
【0028】
また、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームに対して、熱可逆記録媒体を移動手段により移動させ、該熱可逆記録媒体上で該ライン状ビームを走査させて、該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去することが好ましい。前記移動手段としては、例えばコンベア、ステージなどが挙げられる。この場合、熱可逆記録媒体が容器表面に貼り付けられており、該容器をコンベアにより移動させることで該熱可逆記録媒体を移動させることが好ましい。
前記容器としては、例えばダンボール、プラスチックコンテナ、箱などが挙げられる。
【0029】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば制御工程などが挙げられる。
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0030】
<熱可逆記録媒体>
前記熱可逆記録媒体は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化するものである。
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とをこの順に有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、第1の酸素バリア層、第2の酸素バリア層、紫外線吸収層、バック層、保護層、中間層、アンダー層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。熱可逆記録層に光熱変換材料を添加することで、光熱変換層を省略して第1及び第2の熱可逆記録層を1つにすることも可能である。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。ただし、前記光熱変換層の上に設ける層においては、照射する特定波長のレーザ光のエネルギーロスを少なくするために該特定波長において吸収の少ない材料を用いて層を構成させることが好ましい。
【0031】
ここで、熱可逆記録媒体100の層構成としては、図4Aに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104とをこの順に有する態様がある。
また、図4Bに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有する態様がある。
また、図4Cに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、紫外線吸収層107と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有してなり、支持体101の熱可逆記録層等を有していない側の面にバック層108を有する態様がある。
なお、図示を省略しているが、図4Aの第2の熱可逆記録層104上、図4Bの第2の酸素バリア層106上、図4Cの第2の酸素バリア層106上の最表層に保護層を形成してもよい。
【0032】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
【0033】
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO2、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0034】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜2,000μmが好ましく、50μm〜1,000μmがより好ましい。
【0035】
−第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層−
前記第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層(以下、「熱可逆記録層」と称することがある)は、いずれも電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である顕色剤を含み、熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層であり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記熱により色調が可逆的に変化する電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤は、温度変化により目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。
【0036】
−−ロイコ染料−−
前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
【0037】
−−可逆性顕色剤−−
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0038】
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
【化1】
【化2】
ただし、前記一般式(1)及び(2)中、R1は、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。R2は、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。R3は、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
【0039】
前記R1、前記R2、及び前記R3の炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
nは、0〜1の整数を示す。
【0040】
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、消色促進剤として分子中に−NHCO−基、−OCONH−基を少なくとも一つ有する化合物を併用することにより、消色状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上するので好ましい。
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱可逆記録層には、バインダー樹脂、更に必要に応じて熱可逆記録層の塗布特性や発色消色特性を改善、制御するための各種添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
【0041】
−−バインダー樹脂−−
前記バインダー樹脂としては、支持体上に熱可逆記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が好適である。該熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
前記熱可逆記録層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記熱可逆記録層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
【0042】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、特に好ましくはイソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物である。
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量としては、特に制限はないが、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01〜2が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
【0043】
前記熱架橋した場合の熱硬化性樹脂のゲル分率としては、特に制限はなく、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0044】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0045】
前記熱可逆記録層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像の記録を容易にする観点から、界面活性剤、可塑剤などが挙げられる。
前記熱可逆記録層用塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・硬化方法等は公知の方法を用いることができる。
なお、熱可逆記録層用塗布液は前記分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散してもよいし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させてもよい。
【0046】
前記熱可逆記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記樹脂、及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を溶媒中に溶解乃至分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記樹脂のみを溶解した溶媒に前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記樹脂と前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。
【0047】
前記(1)又は(2)において用いる溶剤としては、前記樹脂及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤の種類等によって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記可逆性顕色剤は、前記熱可逆記録層中では粒子状に分散して存在している。
前記熱可逆記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
【0048】
前記熱可逆記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法で塗布する。
前記熱可逆記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
前記熱可逆記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記熱可逆記録層の厚みが薄すぎると発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、希望とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
なお、前記熱可逆記録層に光熱変換材料を添加することも可能であり、その場合、光熱変換層、バリア層を省略でき、前記第1及び第2の熱可逆記録層を1つにすることも可能である。
【0049】
−光熱変換層−
前記光熱変換層は、前記レーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。また熱可逆記録層と光熱変換層の間に両層が相互作用を抑制する目的でバリア層を形成することがあり、材料として熱伝導性のよい層が好ましい。前記熱可逆記録層と光熱変換層の間に挟む層は、目的に応じて適宜選択することができ、これらに限定されるものではない。
前記光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
【0050】
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属又は半金属及びそれを含む合金、ホウ化ランタン、酸化タングステン、ATO、ITO等が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、700nm〜1,500nmの波長範囲内に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系化合物などが挙げられる。繰返し画像処理を行うためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましく、この点からフタロシアニン系化合物が特に好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記光熱変換層を設ける場合には、通常、前記光熱変換材料は、樹脂と併用して用いられる。該光熱変換層に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、前記無機系材料及び有機系材料を保持できるものであれば、公知のものの中から適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましく、前記記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱架橋樹脂が好ましい。前記バインダー樹脂において、その水酸基価は50mgKOH/g〜400mgKOH/gであることが好ましい。
前記光熱変換層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜20μmであることが好ましい。
【0052】
−第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層−
第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層(以下、単に酸素バリア層と称することがある)としては、熱可逆記録層に酸素が進入することを防ぐことにより、前記第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を防止する目的で、第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層の上下に酸素バリア層を設けることが好ましい。即ち、支持体と第1の熱可逆記録層との間に第1の酸素バリア層を設け、第2の熱可逆記録層上に第2の酸素バリア層を設けることが好ましい。
【0053】
前記第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の形成材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、可視部の透過率が大きく、酸素透過度が低い樹脂又は高分子フィルム等が挙げられる。該酸素バリア層は、その用途、酸素透過性、透明性、塗工のしやすさ、接着性等によって選択される。
前記酸素バリア層の具体例としては、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリロニトリル、ポリアルキルビニルエステル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリフッ素化ビニル、ポリスチレン、酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、アセトニトリル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6及びポリアセタール等の樹脂、又はポリエチレンテレフタレートやナイロン等の高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したシリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ/アルミナ蒸着フィルムなどが挙げられる。これらの中でも高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したフィルムが好ましい。
【0054】
前記酸素バリア層の酸素透過度としては、特に制限はないが、20ml/m2/day/MPa以下が好ましく、5ml/m2/day/MPa以下がより好ましく、1ml/m2/day/MPa以下が特に好ましい。前記酸素透過度が、20ml/m2/day/MPaを超えると、前記第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を抑制できないことがある。
前記酸素透過度は、例えばJIS K7126 B法に準じた測定法により測定することができる。
前記酸素バリア層は前記熱可逆記録層の下側又は支持体の裏面など、前記酸素バリア層で熱可逆記録層を挟み込むように設けることもできる。これにより、熱可逆記録層への酸素侵入をより効果的に防ぐことができ、ロイコ染料の光劣化をより少なくすることができる。
【0055】
前記第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、溶融押出し法、コーティング法、ラミネート法、などが挙げられる。
前記第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の厚みは、樹脂又は高分子フィルムの酸素透過性によって異なるが、0.1μm〜100μmが好ましい。これより薄いと酸素バリアが不完全であり、厚いと透明性が低下するので好ましくない。
前記酸素バリア層と下層の間には、接着層を設けてもよい。前記接着層の形成方法は、特に制限なく通常のコーティング法、ラミネート法等を挙げることができる。接着層の厚みは特に制限ないが、0.1μm〜5μmが好ましい。前記接着層は、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記熱可逆記録層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
【0056】
−保護層−
本発明の熱可逆記録媒体には、前記熱可逆記録層を保護する目的で該熱可逆記録層上に保護層を設けることが好ましい。該保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよく、露出している最表面に設けることが好ましい。
前記保護層は、バインダー樹脂、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記保護層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が好ましく、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体が得られる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
【0057】
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することで樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
【0058】
また、前記モノマー又はオリゴマーを、紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量としては、特に制限はないが、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0059】
前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射としては、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものが挙げられる。
前記光源としては、例えば水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記熱可逆記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を決めればよい。
【0060】
また、搬送性を良好にするため、重合性基を持つシリコーン、シリコーングラフトをした高分子;ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤;シリコーンオイル等の滑剤を添加することができる。これらの添加量としては、保護層の樹脂成分全質量に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜40質量%がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、静電気対策として導電性フィラーを用いることが好ましく、針状導電性フィラーを用いることが特に好ましい。
【0061】
前記フィラーの粒径としては、特に制限はないが、例えば、0.01μm〜10.0μmが好ましく、0.05μm〜8.0μmがより好ましい。前記フィラーの添加量としては、前記樹脂1質量部に対し、0.001質量部〜2質量部が好ましく、0.005質量部〜1質量部がより好ましい。
なお、前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
【0062】
また、前記熱硬化性樹脂としては例えば、前記熱可逆記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。
前記熱硬化性樹脂は架橋されていることが好ましい。従って熱硬化性樹脂としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し画像記録・消去を行っても熱可逆記録媒体の劣化が抑えることができる。
前記硬化剤としては、特に制限はなく、例えば、前記熱可逆記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に用いることができる。
【0063】
前記保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、保護層の塗工方法、乾燥方法等としては、特に制限はなく前記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。紫外線硬化樹脂を用いた場合には塗布して乾燥を行った紫外線照射による硬化工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件については前記の通りである。
前記保護層の厚みとしては、特に制限はないが、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましく、1.5μm〜6μmが特に好ましい。前記厚みが0.1μm未満であると、熱可逆記録媒体の保護層としての機能を十分に果たすことができず、熱による繰り返し履歴によりすぐに劣化し、繰り返し使用することができなくなってしまうことがあり、20μmを超えると、保護層の下層にある感熱に十分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像記録と消去が十分にできなくなってしまうことがある。
【0064】
−紫外線吸収層−
前記熱可逆記録媒体としては、前記熱可逆記録層中のロイコ染料の紫外線による着色及び光劣化による消え残りを防止する目的で、紫外線吸収層を設けることが好ましく、これによって前記記録媒体の耐光性が改善できる。紫外線吸収層は390nm以下の紫外線を吸収するように、紫外線吸収層の厚みを適宜選択することが好ましい。
【0065】
前記紫外線吸収層は、少なくともバインダー樹脂と紫外線吸収剤を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0066】
前記紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収構造を持つポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することもある)を用いることが好ましい。
ここで、前記紫外線吸収構造を持つポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。該紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられ、これらの中でも、ロイコ染料の光劣化の原因である340〜400nmの紫外線を吸収することからベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
前記紫外線吸収ポリマーは架橋されていることが好ましい。従って紫外線吸収ポリマーとしては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し消去印字を行っても記録媒体の劣化が抑えることができる。
【0067】
前記紫外線吸収層の厚みとしては、特に制限はないが、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。前記紫外線吸収層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、紫外線吸収層の塗工方法、紫外線吸収層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0068】
−中間層−
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はないが、前記熱可逆記録層と前記保護層の接着性向上、保護層の塗布による熱可逆記録層の変質防止、保護層中の添加剤の熱可逆記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることが好ましく、これによって発色画像の保存性が改善できる。
【0069】
前記中間層としては、特に制限はなく、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有するものが挙げられる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0070】
また、前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。該紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
前記中間層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0071】
−アンダー層−
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はないが、印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は支持体と熱可逆記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的として、前記熱可逆記録層と前記支持体の間にアンダー層を設けてもよい。
前記アンダー層としては、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有するものが挙げられる。
【0072】
前記中空粒子としては、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製);ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも、日本ゼオン株式会社製);SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば10質量%〜80質量%が好ましい。
前記バインダー樹脂としては、前記熱可逆記録層、又は前記紫外線吸収構造を持つポリマーを含有する層と同様の樹脂を用いることができる。
前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク等の無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
前記アンダー層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜30μmがより好ましく、12μm〜24μmが特に好ましい。
【0073】
−バック層−
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はなく、カール及び帯電防止、搬送性の向上のために支持体の熱可逆記録層を設ける面と反対側にバック層を設けてもよい。
前記バック層としては、特に制限はなく、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有するものが挙げられる。
【0074】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられ、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記フィラー、前記導電性フィラー、及び前記滑剤については、前記熱可逆記録層、又は前記保護層で用いられたものと同様なものを好適に用いることができる。
【0075】
−接着層及び粘着層−
前記支持体の前記記録層形成面の反対面に、接着層又は粘着層を設けることにより、前記熱可逆記録媒体を、熱可逆記録ラベルの態様で得ることができる。
前記接着層及び前記粘着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて一般的に使われているものの中から適宜選択することができる。
【0076】
前記接着層及び前記粘着層の材料は、ホットメルトタイプでもよい。また、剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように前記接着層又は前記粘着層を設けることにより、前記記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカード等の厚手の基板の全面若しくは一部に、前記記録層を貼ることができる。これにより、磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、前記熱可逆記録媒体の利便性が向上する。
このような接着層又は粘着層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカード、光カード等の厚手のカードにも好適である。
【0077】
−着色層−
前記熱可逆記録媒体には、視認性を向上させる目的で、前記支持体と前記記録層との間に着色層を設けてもよい。
前記着色層は、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し乾燥する、あるいは単に、着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
【0078】
前記着色層は、カラー印刷層とすることができる。
前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられる。
前記樹脂バインダーとしては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂などが挙げられる。
前記カラー印刷層の厚みとしては、特に制限はなく、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
【0079】
なお、前記熱可逆記録媒体は、非可逆性記録層を併用していてもよい。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、前記熱可逆記録媒体の記録層と同一面の一部若しくは全面、又は反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、昇華型プリンタ等によって任意の絵柄などを形成した着色層を設けてもよく、更に前記着色層上の一部分又は全面に、硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。
前記絵柄としては、例えば、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。
また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
更に、前記熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のために、レリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
【0080】
−熱可逆記録媒体の形状及び用途−
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。
また、カード状に加工されたものについては、プリペイドカード、ポイントカード、更にはクレジットカード等へ応用することができる。
更に、カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは、値札等に利用することができ、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは、工程管理や出荷指示書、チケット等に使用することができる。
ラベル状のものは、貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは、記録する範囲が広くなるため、一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
【0081】
−熱可逆記録部材 RF−IDとの組合せ例−
前記熱可逆記録部材は、可逆表示可能な前記可逆性感熱記録層(記録層)と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を前記記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えたときには、熱可逆記録部の表示を書き換えることで、前記熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
なお、前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリ、光メモリ、RF−IDタグなどが好適に挙げられる。工程管理、物品管理等に使用する場合には、RF−IDタグが特に好適に使用可能である。
なお、前記RF−IDタグは、ICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
【0082】
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを有し、該情報記憶部の好適な例としては、RF−IDタグが挙げられる。
図11は、RF−IDタグの概略図の一例を示す。このRF−IDタグ85は、ICチップ81と、該ICチップ81に接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は、記憶部、電源調整部、送信部、及び受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行っている。通信はRF−IDタグ85と、リーダライタとのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行う。具体的には、RF−ID85のアンテナが、リーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式との2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ85内のICチップ81が起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグ85から信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行う。
【0083】
前記RF−IDタグは、ラベル状又はカード状に加工されており、該RF−IDタグを前記熱可逆記録媒体に貼り付けることができる。前記RF−IDタグは記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼るのが好ましい。
前記RF−IDタグと前記熱可逆記録媒体とを貼り合わせるためには、公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
【0084】
前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとを組み合わせた前記熱可逆記録部材の工程管理での使い方の一例を示す。
納品された原材料が入っているコンテナが搬送される工程ラインには、搬送されながら表示部に可視画像を非接触で書き込む手段と、非接触で消去する手段とが備えられ、更に、電磁波の発信によりコンテナに備えられたRF−IDの情報の読み取り、書き換えを非接触で行うためのリーダライタが備えられている。また、更に、この工程ラインには、コンテナが搬送されながら非接触にて読み書きされるその個別情報を利用して、物流ライン上で自動的に分岐や計量、管理などを行う制御手段が備えられている。
このコンテナに添付されたRF−ID付き熱可逆記録媒体に対して、物品名と数量などの情報を該熱可逆記録媒体と該RF−IDタグとに記録し、検品が実施される。次工程では納入された原材料に加工指示が与えられ、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに情報が記録され、加工指示書となり加工工程へと進む。次いで、加工された商品には発注指示書として発注情報が前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに記録され、商品出荷後に回収したコンテナから出荷情報を読み取り、再度納品用のコンテナとRF−ID付き熱可逆記録媒体として使用される。
このとき、レーザを用いた前記熱可逆記録媒体への非接触記録であるため、コンテナ等から前記熱可逆記録媒体を剥がすことなく情報の消去記録を行うことができ、更に前記RF−IDタグにも非接触で情報を記録することができるため、工程をリアルタイムで管理することができ、また前記RF−IDタグ内の情報を前記熱可逆記録媒体に同時に表示することが可能となる。
【0085】
<画像記録及び画像消去のメカニズム>
前記画像記録及び画像消去のメカニズムは、熱により色調が可逆的に変化する態様である。前記態様はロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)からなり、色調が透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図5Aに、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる熱可逆記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図5Bに、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度T1にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T2にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図5Aに示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもT2で凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
更に図5Aにおいて、前記記録層を溶融温度T1以上の温度T3に繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、前記熱可逆記録媒体を加熱する際に図5Aの前記溶融温度T1と前記温度T3の差を小さくすることにより、繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えられる。
【0086】
ここで、本発明の画像消去装置の概略について図面を参照して説明する。
図6の画像消去装置は、半導体レーザ(LD)アレイ1と、幅方向平行化手段2と、長軸長さ方向光分布制御手段7、ビームサイズ調整手段9と、走査手段5とを有している。
【0087】
半導体レーザ(LD)アレイ1としては、複数個のLD光源が並んだLDアレイを用いている。
幅方向平行化手段2として、半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向のビームの広がりを平行にする光学レンズを用いている。
長軸長さ方向光分布制御手段7は、ライン状ビームの長軸長さを半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする機能を有している。
ビームサイズ調整手段9としては、ライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整可能な光学系レンズを使用している。
【0088】
前記走査手段5としては、(1)一軸のガルバノミラーによるレーザ光走査は、走査制御を細かく行うことができるが、コストは高くなる。(2)ステッピングモータミラーによるレーザ走査は、走査制御を細かく行うことができ、ガルバノミラーに比べてコストは安くなる。(3)ポリゴンミラーによるレーザ光走査は、一定速度での走査制御しかできないが、低コストである。
また、走査手段を設けず、熱可逆記録媒体を移動させることもできる。実施方法としては、(1)熱可逆記録媒体をステージで移動させる、(2)コンベアで熱可逆記録媒体(媒体は箱に貼り付けて、コンベアで箱を移動させる)を移動させる。
【0089】
図7は、本発明の画像消去装置の具体的な実施形態を示す概略図である。
この図7の画像消去装置は、19個のLD光源が並んだLDアレイを使用しており、1番目から19番目までの半導体レーザアレイの発光部の長軸長さは10mmである。
半導体レーザアレイ1で出射されたレーザ光に対して、幅方向平行化手段としてのシリンドリカルレンズ2で幅方向に対して平行光として、2枚の球面レンズ4、6により幅方向、長軸長さ方向を均一に拡大して、シリンドリカルレンズ3、8により幅を調整する。
長軸長さ方向光分布を均一化するために球面レンズ6からのレーザ光を拡散することで均一化して幅を広げる機能を有したレンズ15(例えば、凹又は凸のレンズアレイ、フレネルレンズが用いられ、本実施形態では凸のレンズアレイとフレネルレンズを用いた)で構成されている。
幅方向平行化手段2から出たライン状ビームの光分布は、複数の光源から出た光の合成なので、均一でなく均一化するための光学系が必要となるために上記のような光学系を組む必要がある。
具体的には、球面レンズ6に焦点距離70mmの片面凸レンズ、球面レンズ4に焦点距離200mmの片面凸レンズを用いて、シリンドリカルレンズ8に焦点距離200mmの片面凸レンズを用いている。シリンドリカルレンズ3に片面凹レンズでビーム幅に応じて焦点距離の異なるレンズ(例えば−1,000mm、−400mm、−200mm)を配置して用いることで実施例のビーム幅を実現することができる。凸のレンズアレイは400μmの周期であって、長さ方向に段差を持たせている。
【0090】
図6及び図7に示す画像消去装置によれば、図8に示すように、得られるライン状ビームは、長軸長さ方向に均一な光分布を有し、ライン状ビームの長軸長さが消去領域の一辺となる。前記ライン状ビームを走査する長さ(距離)が消去領域の残りの一辺となる。そして、レーザ光の走査方法は、一軸方向のみで可である。
【0091】
本発明の画像消去装置及び画像消去方法によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)ライン状ビームでの消去では、レーザ光走査を一方向だけに走査すればよく、走査ミラーを減らすことが可能となり、制御が容易となり、低コスト化が可能である。
(2)ライン状ビームでの消去では、円形ビームに比べて低エネルギーでの消去が可能である。これは、ライン状ビーム光源にすること熱拡散によるエネルギーロスを低減できることによる効果である。
(3)ライン状ビームでは、レーザ光走査でジャンプ(レーザ光を照射しないレーザ光走査)を行う必要がないので、ジャンプにより消去時間が延びることがない。
(4)ファイバ結合LDに比べて、LDアレイ光源は低価格で高出力を容易に得ることができる。
(5)繰返し消去を行うと、通常地肌部の濃度が上がるが、初期の地肌濃度に対して、0.02上がる限界は、円形ビームでは400回に対して、ライン状ビームでは5,000回と大幅に改善されている。これは、レーザ光走査を重ねる必要がないためである。
【0092】
本発明の画像消去方法及び画像消去装置は、ダンボールやプラスチックコンテナ等の容器に貼付したラベル等の熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、繰返し消去可能である。このため、物流配送システムに特に好適に使用可能である。この場合、例えば、ベルトコンベアに載せた前記ダンボールやプラスチックコンテナを移動させながら、前記ラベルに画像を形成及び消去することができ、ラインの停止が不要な点で、出荷時間の短縮を図ることができる。
また、前記ラベルが貼付されたダンボールやプラスチックコンテナは、該ラベルを剥がすことなく、そのままの状態で再利用し、再度、画像の消去及び形成を行うことができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0094】
(製造例1)
<熱可逆記録媒体の製造>
熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0095】
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0096】
−第1の酸素バリア層の形成−
ウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製、TM−567)5質量部、イソシアネート(東洋モートン株式会社製、CAT−RT−37)0.5質量部、及び酢酸エチル5質量部を加え、よく攪拌して酸素バリア層用塗布液を調製した。
次に、シリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアHX、酸素透過度:0.5ml/m2/day/MPa)上に、前記酸素バリア層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、80℃にて1分間加熱及び乾燥した。この酸素バリア層付きシリカ蒸着PETフィルムを前記支持体上に貼合せ、50℃で24時間加熱し、厚み12μmの第1の酸素バリア層を形成した。
【0097】
−第1の熱可逆記録層の形成−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
【0098】
【化3】
【化4】
【化5】
【0099】
次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料としての2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、及びイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌して、熱可逆記録層用塗布液を調製した。
得られた熱可逆記録層用塗布液を、前記第1の酸素バリア層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6.0μmの第1の熱可逆記録層を形成した。
【0100】
−光熱変換層の形成−
フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社日本触媒製、IR915、吸収ピーク波長:956nm)1質量%溶液を4質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン20質量部、架橋剤としてイソシアネート(商品名コロネートHL、日本ポリウレタン株式会社製)5質量部をよく攪拌し、光熱変換層塗布液を調製した。得られた光熱変換層用塗布液を、前記第1の熱可逆記録層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み3μmの光熱変換層を形成した。
【0101】
−第2の熱可逆記録層の形成−
前記第1の熱可逆記録層と同じ熱可逆記録層用組成物を、前記光熱変換層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6.0μmの第2の熱可逆記録層を形成した。
【0102】
−紫外線吸収層の形成−
紫外線吸収ポリマーの40質量%溶液(株式会社日本触媒製、UV−G300)10質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン12質量部を加え、よく攪拌して紫外線吸収層用塗布液を調製した。
次に、前記第2の熱可逆記録層上に、前記紫外線吸収層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み1μmの紫外線吸収層を形成した。
【0103】
−第2の酸素バリア層の形成−
前記第1の酸素バリア層と同じ酸素バリア層付きシリカ蒸着PETフィルムを、前記紫外線吸収層上に貼合せ、50℃で24時間加熱し、厚み12μmの第2の酸素バリア層を形成した。
【0104】
−バック層の形成−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記支持体の前記第1の熱可逆記録層等が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、製造例1における熱可逆記録媒体を製造した。
【0105】
(製造例2)
<熱可逆記録媒体の製造>
製造例1において、熱可逆記録層用塗布液に光熱変換材料であるホウ化ランタンを製造例1の光熱変換材料と同じ感度になるように添加して、厚み12μmの第1の熱可逆記録層を形成し、第2の熱可逆記録層、光熱変換層、及び第2のバリア層は形成しない以外は、製造例1と同様にして、製造例2の熱可逆記録媒体を作製した。
【0106】
(実施例1、実施例2、及び比較例1)
比較例1として、図1に示す従来の画像消去装置(ファイバ結合LDを用いたレーザマーカー)による円形ビームと、実施例1及び2として、図7に示す本発明の画像消去装置(LDアレイ光源を用いた消去装置)によるライン状ビームを用い、実施例1ではレンズ15としてフレネルレンズが用いており、実施例2ではレンズ15として凸型のレンズアレイを用いて、製造例1の熱可逆記録媒体に記録されたベタ画像を消去したときの消去エネルギー及び消去幅を、以下のようにして、測定した。結果を表1及び図9に示す。なお、図9には、実施例1(ライン状光源消去)と比較例1(円形ビーム消去)の結果を示す。
比較例1では、従来の画像消去装置の円形ビームによる消去として、Spectra-Physics社製ファイバ結合LD(半導体レーザ)のXt Corvus FB100−980−35−01(中心波長:976nm)でレーザ光照射して、2枚のコリメータレンズ(焦点距離26mm)で平行光にして、Cambridge社製ガルバノスキャナー6230Hでレーザ光を走査させて、fθレンズ(焦点距離141mm)で集光させる装置で、ワーク間距離を180mm(円形、ビーム径3.0mm)、走査線速度1,000mm/s、図10に示すレーザ光走査方法により重複ピッチ幅0.60mmで40mm×40mmの領域を消去した。
実施例1及び2では、本発明の画像消去装置のライン状ビームによる消去として、LDアレイ光源としてイエナオプティックス社製LDバー光源のコリメータレンズ付きLD光源JOLD−55−CPFN−1L−976(中心波長976nm、出力:55W)を用いて図7に示す光学系レンズを組み、熱可逆記録媒体上で、長さ40mm、幅0.35mmのライン状ビームとなるように調整して、ガルバノミラーCambridge社製ガルバノスキャナー6230Hでライン状ビームのレーザ光を走査させた。図8に示す走査方法で走査線速度20mm/sで走査させて40mm×40mmの領域を消去した。
【0107】
<消去エネルギー及び消去幅の測定>
比較例1の従来の画像消去装置の円形ビームにより、ワーク間距離141mm、走査線速度2,500mm/s、図10に示すレーザ光走査方法によりピッチ幅0.60mmでベタ画像濃度が1.40になるように記録を行い、該ベタ画像を前記画像消去方法で照射パワーを変更しながら消去して、地肌濃度との差が0.020以内となる消去エネルギー及び消去幅を求めた。
なお、消去エネルギーは、ベタ画像を消去した後の地肌濃度が該ベタ画像を形成する前の地肌濃度に対して+0.02以下になるときのレーザ光の照射エネルギーを消去可能エネルギーとし、該消去可能エネルギーの最大値と最小値との平均値と定義する。また、消去幅は、(最大値−最小値)/(最大値+最小値)と定義する。なお、濃度測定は、反射濃度計(X−rite社製、938Spectro−Densido−meter)で測定した。
【0108】
【表1】
【0109】
図9及び表1の結果から、実施例1及び2の本発明の画像消去装置のライン状ビームによる消去は、比較例1の従来の画像消去装置の円形ビームによる消去に比べて、低エネルギーでの消去が可能であることが分かった。その結果は、ライン状ビームにすることで熱拡散によるエネルギーロスを低減できることによる効果であると考えられる。更に、実施例1に比べて、実施例2の方が広い消去幅を確保でき、より高い消去性を有している。これは、長軸長さ方向の光分布均一性が改善できたためである。
【0110】
<消去時間の評価>
次に、比較例1の従来の画像消去装置による円形ビームと、実施例1の本発明の画像消去装置によるライン状ビームとで、製造例1の熱可逆記録媒体に記録した40mm×40mm領域のベタ画像を照射パワー30Wでの消去時間を測定した。結果を表2に示す。
【0111】
【表2】
表2の結果から、実施例1及び2の本発明の画像消去装置によるライン状ビームでは、低エネルギーで消去が可能なことに加えて、レーザ光走査でジャンプ(レーザ光を照射しないレーザ光走査;図10参照)を行う必要がないのでジャンプにより消去時間が延びることがないことから、同一照射パワーで短時間での消去が可能であることが分かった(消去エネルギーは12%減で、消去時間では24%減となっている。)。
【0112】
<繰返し消去による地肌着色(地肌かぶり)の評価>
次に、比較例1の従来の画像消去装置による円形ビームと、実施例1及び2の本発明の画像消去装置によるライン状ビームとで、繰返し消去による地肌着色(地肌かぶり)の影響を以下のようにして評価した。
【0113】
−繰り返し消去後の地肌着色(地肌かぶり)の評価方法−
製造例1の熱可逆記録媒体の画像記録していない地肌部分に繰返し消去のみを行い、地肌濃度との差が0.020より大きくなる直前の繰返し回数を求めた。このとき、消去エネルギーは、消去可能エネルギーの最大値と最小値との平均値で設定した。また、濃度測定は、反射濃度計(X−rite社製、938Spectro−Densido−meter)で測定した。
【0114】
その結果、繰返し消去を行うと、地肌部の濃度が上がり、初期の地肌濃度に対して、0.02上がる限界は、比較例1の従来の画像消去装置による円形ビームでは400回に対して、実施例1の本発明の画像消去装置によるライン状ビームでは5,000回と大幅に改善された。これは、実施例1の本発明の画像消去装置によるライン状ビームでは、レーザ光の走査で重ねる必要がないためであると考えられる。
【0115】
次に、実施例2の本発明の画像消去装置において、シリンドリカルレンズ3の焦点距離を変更させてライン状ビームの短軸長さを変更して、消去エネルギー及び消去幅を測定した。結果を表3に示す。
【0116】
【表3】
表3の結果から、実施例2の本発明の画像消去装置によるライン状ビームでは、ビーム幅を制御することで、消去エネルギー及び消去幅を制御できることが判り、熱可逆記録媒体、消去する環境に応じてビーム幅を制御することで、消去性に合わせて消去が可能となることが分かった。
【0117】
(実施例3)
実施例2において、図7に示す本発明の画像消去装置における、ガルバノミラーの代わりにステッピングモータミラーを取り付けて、走査線速度20mm/sで走査させるようにステッピングモータミラーの走査制御した以外は、実施例2と同様にして、ベタ画像印字を行い消去したところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった)。
【0118】
(実施例4)
実施例2において、図7に示す本発明の画像消去装置における、ガルバノミラーの代わりにポリゴンミラーを取り付けて、走査線速度20mm/sで走査させるようにポリゴンミラーの回転数を調整した以外は、実施例2と同様にして、ベタ画像印字を行い消去したところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった)。
【0119】
(実施例5)
実施例2において、図7に示す本発明の画像消去装置における、ガルバノミラーを外して、製造例1の熱可逆記録媒体に対してベタ画像印字を実施例2と同様に行い、該熱可逆記録媒体をプラスチックの箱に貼り付けコンベアに載せて箱が20mm/sの搬送速度(1.2m/分)で移動させながら消去したところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった)。
【0120】
(実施例6)
実施例2において、図7に示す本発明の画像消去装置における、製造例2の熱可逆記録媒体に対してベタ画像印字、消去を実施例2と同様に行ったところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった)。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の画像消去方法及び画像消去装置は、レーザ光の走査が一軸方向だけですみ、低エネルギーで高速消去が可能となり、装置コストの大幅な低減が可能になるので、例えば例えば入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理用途などの大きな画面、多様な表示に幅広く用いることができ、特に、物流・配送システムや工場内での工程管理システムなどの使用に適したものである。
【符号の説明】
【0122】
1 半導体レーザアレイ
2 幅方向平行化手段
3 シリンドリカルレンズ1(幅方向のビーム幅調整手段)
4 球面レンズ1(長さ、幅方向のビーム幅調整手段)
5 走査手段
6 球面レンズ2(長さ、幅方向のビーム幅調整手段)
7 ビームサイズ調整手段
8 シリンドリカルレンズ2(幅方向のビーム幅調整手段)
9 長軸長さ方向光分布制御手段
10 熱可逆記録媒体
11 特殊光学系
12 光ファイバ
13 第1のシリンドリカルレンズ
14 第2のシリンドリカルレンズ
15 長さ方向のレーザ光拡散レンズ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0123】
【特許文献1】特開2004−265247号公報
【特許文献2】特許第3998193号公報
【特許文献3】特許第3161199号公報
【特許文献4】特開平9−30118号公報
【特許文献5】特開2000−136022号公報
【特許文献6】特開平11−151856号公報
【特許文献7】特許第4263228号公報
【特許文献8】特開2008−62506号公報
【特許文献9】特開2008−213439号公報
【特許文献10】特許第3256090号公報
【特許文献11】特開2008−137243号公報
【特許文献12】特開平10−92729号公報
【特許文献13】特開2002−353090号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体レーザ(LD)を直線状に配列した半導体レーザ(LD)アレイを光学系レンズで均一性の高いライン状ビームに変換して、該ライン状ビームを熱可逆記録媒体に照射して記録された画像の消去を行う画像消去方法及び画像消去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、熱可逆記録媒体(以下、「記録媒体」、又は「媒体」と称することがある)への画像形成及び画像消去は、加熱源を記録媒体に接触させて該媒体を加熱する接触式で行われている。該加熱源としては、通常、画像形成にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
【0003】
このような接触式の記録方法は、熱可逆記録媒体がフィルム、紙等のフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって記録媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像形成及び画像消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像形成装置及び画像消去装置を安価に製造することができるという利点があった。しかし、熱可逆記録媒体が、特許文献1及び2に記載されているようなRF−IDタグなどを内蔵している場合には、熱可逆記録媒体の厚みが厚くなりフレキシブル性が低下して加熱源を均一に押し当てるためには高い圧力が必要となる。また、接触式であるために、印字と消去を繰り返すと記録媒体表面が削れて凹凸が生じ、サーマルヘッドやホットスタンプ等の加熱源に接触しない部分が出てきて均一に加熱されないため濃度低下や消去不良がおこるという問題がある(特許文献3及び4参照)。
【0004】
更に、RF−IDタグが非接触で離れたところから記憶情報の読み取り及び書き換えが行われるのに対して、熱可逆記録媒体についても離れた位置から画像を書き換えたいという要望が生じてきている。例えば熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や離れたところから均一に画像形成及び画像消去する方法として、レーザを用いる方法が提案されている(特許文献5参照)。この方法は、物流ラインに用いる搬送用容器に熱可逆記録媒体を使用して非接触記録を行うものであり、書き込みはレーザで実施し、消去は熱風、温水、又は赤外線ヒータで行うと記載されている。
【0005】
このようなレーザによる記録方法としては、高出力のレーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、その位置をコントロール可能なレーザ記録装置(レーザマーカー)が提供されている。このレーザマーカーを用いて、レーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、媒体中の光熱変換材料が光を吸収して熱に変換し、その熱で記録及び消去を行うことが可能である。これまでレーザによる画像形成及び消去を行う方法として、ロイコ染料と可逆性顕色剤、種々の光熱変換材料を組み合わせて、近赤外レーザ光により記録する方法が提案されている(特許文献6参照)
【0006】
近赤外レーザ光により書換え可能な熱可逆記録媒体に記録する方法として、例えば半導体レーザ(LD)光源を利用してレーザ光による非接触の書換えが可能である。
半導体レーザを用いた非接触の書き換えを行うレーザ記録装置(レーザマーカー)では、高速で小さい文字を細い線で印字するために、高出力で小さい円形ビームが必要であることから、図1に示すように、複数のLD光源からなるLDアレイ1からのライン状ビームを円形ビームに変換するため、特殊光学レンズ系11、光ファイバ12などで構成されるファイバ結合LDが用いられている。しかし、レーザ光を高出力化してLDアレイの光源数が多くなればなるほど、前記特殊光学レンズ系11は複雑となり、かつ装置コストが高くなることが課題である。また、ファイバ結合LDはレンズ系を組み込まれた形になっていて直接LD光源を冷却できないので冷却効率が悪く高出力化が難しく、かつ、複雑な光学系であることから、レーザ光全てをファイバに入れることができず効率低下を引起し、高出力化が困難であった。
【0007】
また、画像記録では、画像記録部分だけにベクター方式でレーザ光を照射するのに対して、画像消去では、熱可逆記録媒体全面にレーザ光を照射するので高速で消去するためにはレーザ光の高出力化が必要である。
前記レーザ記録装置を用いた画像消去方法として、図2A及び図2Bに示すように、通常のレーザマーカーの円形ビームを用いて平行に重複させながら走査することで画像を消去する方法が提案されている(特許文献7、8及び9参照)。
しかし、これらの提案の方法では、レーザ光の高出力化を図るには装置コストが高くなってしまうという課題があった。
【0008】
一方、LD光源の高出力化を図るために、1つの光源で出力を上げるとLD光源素子が破損するので、複数LD光源を装備したLD素子(LDアレイ)を用いるのが一般的である。例えば特許文献10には、図3に示すような、直線状に複数の光源が配置されたLDアレイ1から出射されたレーザ光を第1のシリンドリカルレンズ13により帯状の光に変換するレーザ光加熱ツールが提案されている。図3中14は、第1のシリンドリカルレンズ13から出射した帯状の平行光を幅方向に集光させる第2のシリンドリカルレンズ14である。しかし、この提案では、第1のシリンドリカルレンズ13から出射される帯状の光が均一であるか明示がなく、第2のシリンドリカルレンズ14により集光させて、半田付け及び半田付けの修正を行うものであり、本願発明とは構成及び目的が相違する。
【0009】
また、特許文献11には、複数の光源が並んだLDアレイを各光源に対して結像させるレンズを配置して均一な光分布の帯状光にするライン光源を用いて、熱可逆記録媒体に対し画像記録及び画像消去を行うことについて提案されている。
しかし、この提案では、LDアレイの各光源に対して結像させるレンズを配置するため、装置が複雑になり、LDアレイの光源の幅と熱可逆記録媒体に照射する幅が同じになるので、LDアレイの光源の幅を広くする必要があり、結果として装置サイズが大きくなり、装置コストが大幅に上昇するという問題がある。
【0010】
また、特許文献12及び13には、均一な光分布を形成するための光学系レンズ構成を搭載した照明装置が紹介されているが、近赤外レーザ光を書換え可能な熱可逆記録媒体に対し照射して、繰り返し画像記録及び画像消去することについては、開示も示唆もされていない。
【0011】
したがって低エネルギーで高速消去が可能となり、装置コストの大幅な低減が可能になる画像消去装置及び画像消去方法の速やかな提供が望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、レーザ光の走査が一軸方向だけですみ、円形ビームのレーザ光走査に比べて簡易になり、低エネルギーで高速消去が可能となり、装置コストの大幅な低減が可能になる画像消去装置及び画像消去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、画像消去では円形ビームである必要がないことから、複数のLD光源を有する直線状に配列したLDアレイを用いて、光学レンズによりライン状ビームに変換することで、レーザ光の走査が一軸方向だけですみ、円形ビームのレーザ光走査に比べて簡易になり、低エネルギーで高速消去が可能となり、装置コストの大幅な低減が可能になることを知見した。
【0014】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 複数の半導体レーザ光源を直線状に配列した半導体レーザアレイと、
前記半導体レーザアレイの出射面に配置され、該半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にする幅方向平行化手段と、
前記幅方向平行化手段により形成されたライン状ビームの長軸長さを、前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする長軸長さ方向光分布制御手段と、を少なくとも有してなり、
前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去することを特徴とする画像消去装置である。
<2> 半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整するビームサイズ調整手段を有する前記<1>に記載の画像消去装置である。
<3> 幅方向平行化手段が、シリンドリカルレンズである前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像消去装置である。
<4> 長軸長さ方向光分布制御手段が、レンズアレイである前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像消去装置である。
<5> 長軸長さ方向光分布制御手段が、フレネルレンズである前記<1>から<4>のいずれかに記載の画像消去装置である。
<6> 熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、一軸方向に走査する走査手段を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像消去装置である。
<7> 走査手段が、一軸のガルバノミラーである前記<6>に記載の画像消去装置である。
<8> 走査手段が、ステッピングモータミラーである前記<6>に記載の画像消去装置である。
<9> 走査手段が、ポリゴンミラーである前記<6>に記載の画像消去装置である。
<10> 半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームに対して、熱可逆記録媒体を移動手段により移動させ、該熱可逆記録媒体上で該ライン状ビームを走査させて、該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する前記<1>から<9>のいずれかに記載の画像消去装置である。
<11> 熱可逆記録媒体が容器表面に貼り付けられており、該容器を移動手段により移動させることで該熱可逆記録媒体を移動させる前記<10>に記載の画像消去装置である。
<12> 複数の半導体レーザ光源を直線状に配列した半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にする幅方向平行化工程と、
前記幅方向平行化工程で形成されたライン状ビームの長軸長さを前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする長軸長さ方向光分布制御工程と、
を少なくとも含んでなり、
前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去することを特徴とする画像消去方法である。
<13> 半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整するビームサイズ調整工程を含む前記<12>に記載の画像消去方法である。
<14> 熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、一軸方向に走査する走査工程を含む前記<12>から<13>のいずれかに記載の画像消去方法である。
<15> 半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームに対して、熱可逆記録媒体を移動手段により移動させ、該熱可逆記録媒体上で該ライン状ビームを走査させて、該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する前記<12>から<13>のいずれかに記載の画像消去方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、レーザ光の走査が一軸方向だけですみ、円形ビームのレーザ光走査に比べて簡易になり、低エネルギーで高速消去が可能となり、装置コストの大幅な低減が可能になる画像消去装置及び画像消去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、従来の画像消去装置の一例を示す図である。
【図2A】図2Aは、従来のレーザビーム形状を示す図である。
【図2B】図2Bは、従来のビーム形状を用いたときのレーザ光走査方法を示す図である。
【図3】図3は、従来のレーザ光加熱ツールの一例を示す図である。
【図4A】図4Aは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図4B】図4Bは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の他の一例を示す概略断面図である。
【図4C】図4Cは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の更に他の一例を示す概略断面図である。
【図5A】図5Aは、熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。
【図5B】図5Bは、熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である
【図6】図6は、本発明の画像消去装置の一例を示す概略図である。
【図7】図7は、本発明の画像消去装置の他の一例を示す概略図である。
【図8】図8は、本発明のレーザビーム形状、及びレーザ光走査方法を示す図である。
【図9】図9は、実施例における消去方式の違いによる消去性を比較したグラフである。
【図10】図10は、レーザ光走査におけるジャンプ(レーザ光を照射しないレーザ光走査)を説明するための図である。
【図11】図11は、RF−IDタグの一例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(画像消去装置及び画像消去方法)
本発明の画像消去装置は、半導体レーザアレイと、幅方向平行化手段と、長軸長さ方向光分布制御手段とを少なくとも有してなり、ビームサイズ調整手段、走査手段、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
本発明の画像消去装置においては、前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する。
本発明の画像消去方法は、幅方向平行化工程と、長軸長さ方向光分布制御工程とを少なくとも含んでなり、ビームサイズ調整工程、走査工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の画像消去方法においては、前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する。
【0018】
本発明の画像消去方法は、本発明の画像消去装置により好適に実施することができ、前記幅方向平行化工程は前記幅方向平行化手段により行うことができ、前記長軸長さ方向光分布制御工程は前記長軸長さ方向光分布制御手段により行うことができ、前記ビームサイズ調整工程は前記ビームサイズ調整手段により行うことができ、前記走査工程は前記走査手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0019】
<半導体レーザアレイ>
前記半導体レーザアレイは、複数の半導体レーザを直線状に配列した半導体レーザ光源であり、3個〜300個の半導体レーザを含んでいることが好ましく、10個〜100個がより好ましい。
前記半導体レーザの数が少ないと、照射パワーを上げることができないことがあり、多すぎると、半導体レーザアレイを冷却するための大規模の冷却装置が必要となることがある。なお、半導体レーザアレイを発光させるためには半導体レーザは加熱され、冷却が必要となり、装置コストが上がることがある。
前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm〜50mmであることが好ましく、3mm〜15mmであることがより好ましい。前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さが、1mm未満であると、照射パワーを上げることができなくなることがあり、50mmを超えると、半導体レーザアレイを冷却するための大規模な冷却装置が必要となり、装置コストが上がることがある。
ここで、前記半導体レーザアレイの発光部とは、半導体レーザアレイにおいて有効かつ実際に発光している部分を意味する。
【0020】
前記半導体レーザアレイにおけるレーザ光の波長としては、700nm以上が好ましく、720nm以上がより好ましく、750nm以上が更に好ましい。前記レーザ光の波長の上限としては、目的に応じて適宜選択することができるが、1,500nm以下が好ましく、1,300mm以下がより好ましく、1,200nm以下が更に好ましい。
前記レーザ光の波長を700nmより短い波長にすると、可視光領域では熱可逆記録媒体の画像記録時のコントラストが低下したり、熱可逆記録媒体が着色してしまうという問題がある。更に短い波長の紫外光領域では、熱可逆記録媒体の劣化が起こりやすくなるという問題がある。また、熱可逆記録媒体に添加する光熱変換材料には、繰返し画像処理に対する耐久性を確保するために高い分解温度を必要とし、光熱変換材料に有機色素を用いる場合、分解温度が高く吸収波長が長い光熱変換材料を得るのは難しい。これよりレーザ光の波長としては1,500nm以下が好ましい。
【0021】
<幅方向平行化工程及び幅方向平行化手段>
前記幅方向平行化工程は、複数の半導体レーザを直線状に配列した半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にしてライン状ビームとする工程であり、幅方向平行化手段により実施することができる。
前記幅方向平行化手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1枚の片面凸型のシリンドリカルレンズ、複数の凸型シリンドリカルレンズ、凹型シリンドリカルレンズ、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。
前記半導体レーザアレイのレーザ光は長さ方向に比べて幅方向の拡散角が大きく、前記幅方向平行化手段が前記半導体レーザアレイの出射面に近接配置されていることで、ビーム幅(短軸長さ)が広がることを避けることができ、レンズを小さくできるので好ましい。
【0022】
<長軸長さ方向光分布制御工程及び長軸長さ方向光分布制御手段>
前記長軸長さ方向光分布制御工程は、前記幅方向平行化工程で形成されたライン状ビームの長軸長さを前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする工程であり、長軸長さ方向光分布制御手段により実施することができる。
前記長軸長さ方向光分布制御手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2枚の球面レンズ、非球面シリンドリカルレンズ(長さ方向)、シリンドリカルレンズ(幅方向)の組合せで実現可能である。前記非球面シリンドリカルレンズ(長さ方向)としては、例えば、凸レンズアレイ、凹レンズアレイ、フレネルレンズなどが挙げられる。前記のレンズアレイとは、長さ方向に凸型又は、凹型のレンズが複数並んだレンズを示す。前記非球面シリンドリカルレンズにより長さ方向に拡散することで均一な光分布を得ることが可能となる。
前記長軸長さ方向光分布制御手段は、前記幅方向平行化手段の出射面側に配置されている。
【0023】
<ビームサイズ調整工程及びビームサイズ調整手段>
前記ビームサイズ調整工程は、熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整する工程であり、ビームサイズ調整手段により実施することができる。
【0024】
前記ビームサイズ調整手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば凸型シリンドリカルレンズ、凹型シリンドリカルレンズ、球面レンズの焦点距離変更、レンズ設置位置の変更、装置と熱可逆記録媒体のワーク間距離の変更及びその組合せなどが挙げられる。
本発明において、調整後のライン状ビームの長軸長さは10mm〜300mmであることが好ましく、30mm〜160mmであることがより好ましい。前記ライン状ビームの長軸長さにより消去可能な領域が決まるので狭いと消去領域が狭くなり、ビーム幅が広いと消去不要な領域にもエネルギーを加えてしまい、エネルギーロス及び破損を引き起こす。
前記ビーム長軸長さは、前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さよりも2倍以上長いことが好ましく、3倍以上長いことがより好ましい。前記ビーム長軸長さが前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さよりも短いと、長い消去領域を確保するには半導体レーザアレイの光源を長くする必要があり、装置のコスト及び装置サイズが大きくなることがある。
また、調整後のライン状ビームの短軸長さは、0.1mm〜10mmであることが好ましく、0.2mm〜5mmであることがより好ましい。前記ビーム短軸長さは熱可逆記録媒体を加熱する時間を制御でき、ビーム短軸長さが狭いと加熱時間が短く消去性が低下してしまい、ビーム短軸長さが広いと加熱時間が長くなり、余計なエネルギーを熱可逆記録媒体に加え、高いエネルギーが必要で高速での消去ができない。熱可逆記録媒体の消去特性に適したビーム短軸長さを調整することが装置には必要である。
【0025】
このように調整されたライン状ビームの出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10W以上が好ましく、20W以上がより好ましく、40W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、10W未満であると、画像消去に時間がかかり、画像消去時間を短くしようとすると出力が不足して画像の消去不良が発生する。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500W以下が好ましく、200W以下がより好ましく、120W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、500Wを超えると、半導体レーザの光源の冷却装置が大型化するおそれがある。
【0026】
<走査工程及び走査手段>
前記走査工程は、前記熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、一軸方向に走査する工程であり、走査手段により実施することができる。
前記走査手段としては、ライン状ビームを一軸方向に走査することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば一軸のガルバノミラー、ポリゴンミラー、ステッピングモータミラーなどが挙げられる。
前記一軸のガルバノミラーやステッピングモータミラーでは速度調整を細かく制御することが可能であり、前記ステッピングモータミラーは前記一軸のガルバノミラーに比べて低価格であり、前記ポリゴンミラーでは速度調整は困難であるが低価格である。
【0027】
前記ライン状ビームの走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2mm/s以上が好ましく、10mm/s以上がより好ましく、20mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、2mm/s未満であると、画像消去に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1000mm/s以下が好ましく、300mm/s以下がより好ましく、100mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、1000mm/sを超えると、均一な画像消去がし難くなることがある。
【0028】
また、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームに対して、熱可逆記録媒体を移動手段により移動させ、該熱可逆記録媒体上で該ライン状ビームを走査させて、該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去することが好ましい。前記移動手段としては、例えばコンベア、ステージなどが挙げられる。この場合、熱可逆記録媒体が容器表面に貼り付けられており、該容器をコンベアにより移動させることで該熱可逆記録媒体を移動させることが好ましい。
前記容器としては、例えばダンボール、プラスチックコンテナ、箱などが挙げられる。
【0029】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば制御工程などが挙げられる。
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0030】
<熱可逆記録媒体>
前記熱可逆記録媒体は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化するものである。
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とをこの順に有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、第1の酸素バリア層、第2の酸素バリア層、紫外線吸収層、バック層、保護層、中間層、アンダー層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。熱可逆記録層に光熱変換材料を添加することで、光熱変換層を省略して第1及び第2の熱可逆記録層を1つにすることも可能である。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。ただし、前記光熱変換層の上に設ける層においては、照射する特定波長のレーザ光のエネルギーロスを少なくするために該特定波長において吸収の少ない材料を用いて層を構成させることが好ましい。
【0031】
ここで、熱可逆記録媒体100の層構成としては、図4Aに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104とをこの順に有する態様がある。
また、図4Bに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有する態様がある。
また、図4Cに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、紫外線吸収層107と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有してなり、支持体101の熱可逆記録層等を有していない側の面にバック層108を有する態様がある。
なお、図示を省略しているが、図4Aの第2の熱可逆記録層104上、図4Bの第2の酸素バリア層106上、図4Cの第2の酸素バリア層106上の最表層に保護層を形成してもよい。
【0032】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
【0033】
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO2、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0034】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜2,000μmが好ましく、50μm〜1,000μmがより好ましい。
【0035】
−第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層−
前記第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層(以下、「熱可逆記録層」と称することがある)は、いずれも電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である顕色剤を含み、熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層であり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記熱により色調が可逆的に変化する電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤は、温度変化により目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。
【0036】
−−ロイコ染料−−
前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
【0037】
−−可逆性顕色剤−−
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0038】
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
【化1】
【化2】
ただし、前記一般式(1)及び(2)中、R1は、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。R2は、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。R3は、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
【0039】
前記R1、前記R2、及び前記R3の炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
nは、0〜1の整数を示す。
【0040】
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、消色促進剤として分子中に−NHCO−基、−OCONH−基を少なくとも一つ有する化合物を併用することにより、消色状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上するので好ましい。
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱可逆記録層には、バインダー樹脂、更に必要に応じて熱可逆記録層の塗布特性や発色消色特性を改善、制御するための各種添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
【0041】
−−バインダー樹脂−−
前記バインダー樹脂としては、支持体上に熱可逆記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が好適である。該熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
前記熱可逆記録層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記熱可逆記録層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
【0042】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、特に好ましくはイソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物である。
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量としては、特に制限はないが、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01〜2が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
【0043】
前記熱架橋した場合の熱硬化性樹脂のゲル分率としては、特に制限はなく、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0044】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0045】
前記熱可逆記録層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像の記録を容易にする観点から、界面活性剤、可塑剤などが挙げられる。
前記熱可逆記録層用塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・硬化方法等は公知の方法を用いることができる。
なお、熱可逆記録層用塗布液は前記分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散してもよいし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させてもよい。
【0046】
前記熱可逆記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記樹脂、及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を溶媒中に溶解乃至分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記樹脂のみを溶解した溶媒に前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記樹脂と前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。
【0047】
前記(1)又は(2)において用いる溶剤としては、前記樹脂及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤の種類等によって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記可逆性顕色剤は、前記熱可逆記録層中では粒子状に分散して存在している。
前記熱可逆記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
【0048】
前記熱可逆記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法で塗布する。
前記熱可逆記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
前記熱可逆記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記熱可逆記録層の厚みが薄すぎると発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、希望とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
なお、前記熱可逆記録層に光熱変換材料を添加することも可能であり、その場合、光熱変換層、バリア層を省略でき、前記第1及び第2の熱可逆記録層を1つにすることも可能である。
【0049】
−光熱変換層−
前記光熱変換層は、前記レーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。また熱可逆記録層と光熱変換層の間に両層が相互作用を抑制する目的でバリア層を形成することがあり、材料として熱伝導性のよい層が好ましい。前記熱可逆記録層と光熱変換層の間に挟む層は、目的に応じて適宜選択することができ、これらに限定されるものではない。
前記光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
【0050】
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属又は半金属及びそれを含む合金、ホウ化ランタン、酸化タングステン、ATO、ITO等が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、700nm〜1,500nmの波長範囲内に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系化合物などが挙げられる。繰返し画像処理を行うためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましく、この点からフタロシアニン系化合物が特に好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記光熱変換層を設ける場合には、通常、前記光熱変換材料は、樹脂と併用して用いられる。該光熱変換層に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、前記無機系材料及び有機系材料を保持できるものであれば、公知のものの中から適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましく、前記記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱架橋樹脂が好ましい。前記バインダー樹脂において、その水酸基価は50mgKOH/g〜400mgKOH/gであることが好ましい。
前記光熱変換層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜20μmであることが好ましい。
【0052】
−第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層−
第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層(以下、単に酸素バリア層と称することがある)としては、熱可逆記録層に酸素が進入することを防ぐことにより、前記第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を防止する目的で、第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層の上下に酸素バリア層を設けることが好ましい。即ち、支持体と第1の熱可逆記録層との間に第1の酸素バリア層を設け、第2の熱可逆記録層上に第2の酸素バリア層を設けることが好ましい。
【0053】
前記第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の形成材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、可視部の透過率が大きく、酸素透過度が低い樹脂又は高分子フィルム等が挙げられる。該酸素バリア層は、その用途、酸素透過性、透明性、塗工のしやすさ、接着性等によって選択される。
前記酸素バリア層の具体例としては、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリロニトリル、ポリアルキルビニルエステル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリフッ素化ビニル、ポリスチレン、酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、アセトニトリル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6及びポリアセタール等の樹脂、又はポリエチレンテレフタレートやナイロン等の高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したシリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ/アルミナ蒸着フィルムなどが挙げられる。これらの中でも高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したフィルムが好ましい。
【0054】
前記酸素バリア層の酸素透過度としては、特に制限はないが、20ml/m2/day/MPa以下が好ましく、5ml/m2/day/MPa以下がより好ましく、1ml/m2/day/MPa以下が特に好ましい。前記酸素透過度が、20ml/m2/day/MPaを超えると、前記第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を抑制できないことがある。
前記酸素透過度は、例えばJIS K7126 B法に準じた測定法により測定することができる。
前記酸素バリア層は前記熱可逆記録層の下側又は支持体の裏面など、前記酸素バリア層で熱可逆記録層を挟み込むように設けることもできる。これにより、熱可逆記録層への酸素侵入をより効果的に防ぐことができ、ロイコ染料の光劣化をより少なくすることができる。
【0055】
前記第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、溶融押出し法、コーティング法、ラミネート法、などが挙げられる。
前記第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の厚みは、樹脂又は高分子フィルムの酸素透過性によって異なるが、0.1μm〜100μmが好ましい。これより薄いと酸素バリアが不完全であり、厚いと透明性が低下するので好ましくない。
前記酸素バリア層と下層の間には、接着層を設けてもよい。前記接着層の形成方法は、特に制限なく通常のコーティング法、ラミネート法等を挙げることができる。接着層の厚みは特に制限ないが、0.1μm〜5μmが好ましい。前記接着層は、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記熱可逆記録層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
【0056】
−保護層−
本発明の熱可逆記録媒体には、前記熱可逆記録層を保護する目的で該熱可逆記録層上に保護層を設けることが好ましい。該保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよく、露出している最表面に設けることが好ましい。
前記保護層は、バインダー樹脂、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記保護層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が好ましく、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体が得られる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
【0057】
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することで樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
【0058】
また、前記モノマー又はオリゴマーを、紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量としては、特に制限はないが、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0059】
前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射としては、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものが挙げられる。
前記光源としては、例えば水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記熱可逆記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を決めればよい。
【0060】
また、搬送性を良好にするため、重合性基を持つシリコーン、シリコーングラフトをした高分子;ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤;シリコーンオイル等の滑剤を添加することができる。これらの添加量としては、保護層の樹脂成分全質量に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜40質量%がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、静電気対策として導電性フィラーを用いることが好ましく、針状導電性フィラーを用いることが特に好ましい。
【0061】
前記フィラーの粒径としては、特に制限はないが、例えば、0.01μm〜10.0μmが好ましく、0.05μm〜8.0μmがより好ましい。前記フィラーの添加量としては、前記樹脂1質量部に対し、0.001質量部〜2質量部が好ましく、0.005質量部〜1質量部がより好ましい。
なお、前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
【0062】
また、前記熱硬化性樹脂としては例えば、前記熱可逆記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。
前記熱硬化性樹脂は架橋されていることが好ましい。従って熱硬化性樹脂としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し画像記録・消去を行っても熱可逆記録媒体の劣化が抑えることができる。
前記硬化剤としては、特に制限はなく、例えば、前記熱可逆記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に用いることができる。
【0063】
前記保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、保護層の塗工方法、乾燥方法等としては、特に制限はなく前記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。紫外線硬化樹脂を用いた場合には塗布して乾燥を行った紫外線照射による硬化工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件については前記の通りである。
前記保護層の厚みとしては、特に制限はないが、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましく、1.5μm〜6μmが特に好ましい。前記厚みが0.1μm未満であると、熱可逆記録媒体の保護層としての機能を十分に果たすことができず、熱による繰り返し履歴によりすぐに劣化し、繰り返し使用することができなくなってしまうことがあり、20μmを超えると、保護層の下層にある感熱に十分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像記録と消去が十分にできなくなってしまうことがある。
【0064】
−紫外線吸収層−
前記熱可逆記録媒体としては、前記熱可逆記録層中のロイコ染料の紫外線による着色及び光劣化による消え残りを防止する目的で、紫外線吸収層を設けることが好ましく、これによって前記記録媒体の耐光性が改善できる。紫外線吸収層は390nm以下の紫外線を吸収するように、紫外線吸収層の厚みを適宜選択することが好ましい。
【0065】
前記紫外線吸収層は、少なくともバインダー樹脂と紫外線吸収剤を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0066】
前記紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収構造を持つポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することもある)を用いることが好ましい。
ここで、前記紫外線吸収構造を持つポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。該紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられ、これらの中でも、ロイコ染料の光劣化の原因である340〜400nmの紫外線を吸収することからベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
前記紫外線吸収ポリマーは架橋されていることが好ましい。従って紫外線吸収ポリマーとしては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し消去印字を行っても記録媒体の劣化が抑えることができる。
【0067】
前記紫外線吸収層の厚みとしては、特に制限はないが、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。前記紫外線吸収層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、紫外線吸収層の塗工方法、紫外線吸収層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0068】
−中間層−
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はないが、前記熱可逆記録層と前記保護層の接着性向上、保護層の塗布による熱可逆記録層の変質防止、保護層中の添加剤の熱可逆記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることが好ましく、これによって発色画像の保存性が改善できる。
【0069】
前記中間層としては、特に制限はなく、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有するものが挙げられる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0070】
また、前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。該紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
前記中間層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0071】
−アンダー層−
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はないが、印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は支持体と熱可逆記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的として、前記熱可逆記録層と前記支持体の間にアンダー層を設けてもよい。
前記アンダー層としては、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有するものが挙げられる。
【0072】
前記中空粒子としては、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製);ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも、日本ゼオン株式会社製);SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば10質量%〜80質量%が好ましい。
前記バインダー樹脂としては、前記熱可逆記録層、又は前記紫外線吸収構造を持つポリマーを含有する層と同様の樹脂を用いることができる。
前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク等の無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
前記アンダー層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜30μmがより好ましく、12μm〜24μmが特に好ましい。
【0073】
−バック層−
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はなく、カール及び帯電防止、搬送性の向上のために支持体の熱可逆記録層を設ける面と反対側にバック層を設けてもよい。
前記バック層としては、特に制限はなく、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有するものが挙げられる。
【0074】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられ、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記フィラー、前記導電性フィラー、及び前記滑剤については、前記熱可逆記録層、又は前記保護層で用いられたものと同様なものを好適に用いることができる。
【0075】
−接着層及び粘着層−
前記支持体の前記記録層形成面の反対面に、接着層又は粘着層を設けることにより、前記熱可逆記録媒体を、熱可逆記録ラベルの態様で得ることができる。
前記接着層及び前記粘着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて一般的に使われているものの中から適宜選択することができる。
【0076】
前記接着層及び前記粘着層の材料は、ホットメルトタイプでもよい。また、剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように前記接着層又は前記粘着層を設けることにより、前記記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカード等の厚手の基板の全面若しくは一部に、前記記録層を貼ることができる。これにより、磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、前記熱可逆記録媒体の利便性が向上する。
このような接着層又は粘着層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカード、光カード等の厚手のカードにも好適である。
【0077】
−着色層−
前記熱可逆記録媒体には、視認性を向上させる目的で、前記支持体と前記記録層との間に着色層を設けてもよい。
前記着色層は、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し乾燥する、あるいは単に、着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
【0078】
前記着色層は、カラー印刷層とすることができる。
前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられる。
前記樹脂バインダーとしては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂などが挙げられる。
前記カラー印刷層の厚みとしては、特に制限はなく、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
【0079】
なお、前記熱可逆記録媒体は、非可逆性記録層を併用していてもよい。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、前記熱可逆記録媒体の記録層と同一面の一部若しくは全面、又は反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、昇華型プリンタ等によって任意の絵柄などを形成した着色層を設けてもよく、更に前記着色層上の一部分又は全面に、硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。
前記絵柄としては、例えば、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。
また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
更に、前記熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のために、レリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
【0080】
−熱可逆記録媒体の形状及び用途−
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。
また、カード状に加工されたものについては、プリペイドカード、ポイントカード、更にはクレジットカード等へ応用することができる。
更に、カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは、値札等に利用することができ、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは、工程管理や出荷指示書、チケット等に使用することができる。
ラベル状のものは、貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは、記録する範囲が広くなるため、一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
【0081】
−熱可逆記録部材 RF−IDとの組合せ例−
前記熱可逆記録部材は、可逆表示可能な前記可逆性感熱記録層(記録層)と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を前記記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えたときには、熱可逆記録部の表示を書き換えることで、前記熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
なお、前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリ、光メモリ、RF−IDタグなどが好適に挙げられる。工程管理、物品管理等に使用する場合には、RF−IDタグが特に好適に使用可能である。
なお、前記RF−IDタグは、ICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
【0082】
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを有し、該情報記憶部の好適な例としては、RF−IDタグが挙げられる。
図11は、RF−IDタグの概略図の一例を示す。このRF−IDタグ85は、ICチップ81と、該ICチップ81に接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は、記憶部、電源調整部、送信部、及び受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行っている。通信はRF−IDタグ85と、リーダライタとのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行う。具体的には、RF−ID85のアンテナが、リーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式との2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ85内のICチップ81が起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグ85から信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行う。
【0083】
前記RF−IDタグは、ラベル状又はカード状に加工されており、該RF−IDタグを前記熱可逆記録媒体に貼り付けることができる。前記RF−IDタグは記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼るのが好ましい。
前記RF−IDタグと前記熱可逆記録媒体とを貼り合わせるためには、公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
【0084】
前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとを組み合わせた前記熱可逆記録部材の工程管理での使い方の一例を示す。
納品された原材料が入っているコンテナが搬送される工程ラインには、搬送されながら表示部に可視画像を非接触で書き込む手段と、非接触で消去する手段とが備えられ、更に、電磁波の発信によりコンテナに備えられたRF−IDの情報の読み取り、書き換えを非接触で行うためのリーダライタが備えられている。また、更に、この工程ラインには、コンテナが搬送されながら非接触にて読み書きされるその個別情報を利用して、物流ライン上で自動的に分岐や計量、管理などを行う制御手段が備えられている。
このコンテナに添付されたRF−ID付き熱可逆記録媒体に対して、物品名と数量などの情報を該熱可逆記録媒体と該RF−IDタグとに記録し、検品が実施される。次工程では納入された原材料に加工指示が与えられ、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに情報が記録され、加工指示書となり加工工程へと進む。次いで、加工された商品には発注指示書として発注情報が前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに記録され、商品出荷後に回収したコンテナから出荷情報を読み取り、再度納品用のコンテナとRF−ID付き熱可逆記録媒体として使用される。
このとき、レーザを用いた前記熱可逆記録媒体への非接触記録であるため、コンテナ等から前記熱可逆記録媒体を剥がすことなく情報の消去記録を行うことができ、更に前記RF−IDタグにも非接触で情報を記録することができるため、工程をリアルタイムで管理することができ、また前記RF−IDタグ内の情報を前記熱可逆記録媒体に同時に表示することが可能となる。
【0085】
<画像記録及び画像消去のメカニズム>
前記画像記録及び画像消去のメカニズムは、熱により色調が可逆的に変化する態様である。前記態様はロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)からなり、色調が透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図5Aに、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる熱可逆記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図5Bに、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度T1にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T2にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図5Aに示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもT2で凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
更に図5Aにおいて、前記記録層を溶融温度T1以上の温度T3に繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、前記熱可逆記録媒体を加熱する際に図5Aの前記溶融温度T1と前記温度T3の差を小さくすることにより、繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えられる。
【0086】
ここで、本発明の画像消去装置の概略について図面を参照して説明する。
図6の画像消去装置は、半導体レーザ(LD)アレイ1と、幅方向平行化手段2と、長軸長さ方向光分布制御手段7、ビームサイズ調整手段9と、走査手段5とを有している。
【0087】
半導体レーザ(LD)アレイ1としては、複数個のLD光源が並んだLDアレイを用いている。
幅方向平行化手段2として、半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向のビームの広がりを平行にする光学レンズを用いている。
長軸長さ方向光分布制御手段7は、ライン状ビームの長軸長さを半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする機能を有している。
ビームサイズ調整手段9としては、ライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整可能な光学系レンズを使用している。
【0088】
前記走査手段5としては、(1)一軸のガルバノミラーによるレーザ光走査は、走査制御を細かく行うことができるが、コストは高くなる。(2)ステッピングモータミラーによるレーザ走査は、走査制御を細かく行うことができ、ガルバノミラーに比べてコストは安くなる。(3)ポリゴンミラーによるレーザ光走査は、一定速度での走査制御しかできないが、低コストである。
また、走査手段を設けず、熱可逆記録媒体を移動させることもできる。実施方法としては、(1)熱可逆記録媒体をステージで移動させる、(2)コンベアで熱可逆記録媒体(媒体は箱に貼り付けて、コンベアで箱を移動させる)を移動させる。
【0089】
図7は、本発明の画像消去装置の具体的な実施形態を示す概略図である。
この図7の画像消去装置は、19個のLD光源が並んだLDアレイを使用しており、1番目から19番目までの半導体レーザアレイの発光部の長軸長さは10mmである。
半導体レーザアレイ1で出射されたレーザ光に対して、幅方向平行化手段としてのシリンドリカルレンズ2で幅方向に対して平行光として、2枚の球面レンズ4、6により幅方向、長軸長さ方向を均一に拡大して、シリンドリカルレンズ3、8により幅を調整する。
長軸長さ方向光分布を均一化するために球面レンズ6からのレーザ光を拡散することで均一化して幅を広げる機能を有したレンズ15(例えば、凹又は凸のレンズアレイ、フレネルレンズが用いられ、本実施形態では凸のレンズアレイとフレネルレンズを用いた)で構成されている。
幅方向平行化手段2から出たライン状ビームの光分布は、複数の光源から出た光の合成なので、均一でなく均一化するための光学系が必要となるために上記のような光学系を組む必要がある。
具体的には、球面レンズ6に焦点距離70mmの片面凸レンズ、球面レンズ4に焦点距離200mmの片面凸レンズを用いて、シリンドリカルレンズ8に焦点距離200mmの片面凸レンズを用いている。シリンドリカルレンズ3に片面凹レンズでビーム幅に応じて焦点距離の異なるレンズ(例えば−1,000mm、−400mm、−200mm)を配置して用いることで実施例のビーム幅を実現することができる。凸のレンズアレイは400μmの周期であって、長さ方向に段差を持たせている。
【0090】
図6及び図7に示す画像消去装置によれば、図8に示すように、得られるライン状ビームは、長軸長さ方向に均一な光分布を有し、ライン状ビームの長軸長さが消去領域の一辺となる。前記ライン状ビームを走査する長さ(距離)が消去領域の残りの一辺となる。そして、レーザ光の走査方法は、一軸方向のみで可である。
【0091】
本発明の画像消去装置及び画像消去方法によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)ライン状ビームでの消去では、レーザ光走査を一方向だけに走査すればよく、走査ミラーを減らすことが可能となり、制御が容易となり、低コスト化が可能である。
(2)ライン状ビームでの消去では、円形ビームに比べて低エネルギーでの消去が可能である。これは、ライン状ビーム光源にすること熱拡散によるエネルギーロスを低減できることによる効果である。
(3)ライン状ビームでは、レーザ光走査でジャンプ(レーザ光を照射しないレーザ光走査)を行う必要がないので、ジャンプにより消去時間が延びることがない。
(4)ファイバ結合LDに比べて、LDアレイ光源は低価格で高出力を容易に得ることができる。
(5)繰返し消去を行うと、通常地肌部の濃度が上がるが、初期の地肌濃度に対して、0.02上がる限界は、円形ビームでは400回に対して、ライン状ビームでは5,000回と大幅に改善されている。これは、レーザ光走査を重ねる必要がないためである。
【0092】
本発明の画像消去方法及び画像消去装置は、ダンボールやプラスチックコンテナ等の容器に貼付したラベル等の熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、繰返し消去可能である。このため、物流配送システムに特に好適に使用可能である。この場合、例えば、ベルトコンベアに載せた前記ダンボールやプラスチックコンテナを移動させながら、前記ラベルに画像を形成及び消去することができ、ラインの停止が不要な点で、出荷時間の短縮を図ることができる。
また、前記ラベルが貼付されたダンボールやプラスチックコンテナは、該ラベルを剥がすことなく、そのままの状態で再利用し、再度、画像の消去及び形成を行うことができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0094】
(製造例1)
<熱可逆記録媒体の製造>
熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0095】
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0096】
−第1の酸素バリア層の形成−
ウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製、TM−567)5質量部、イソシアネート(東洋モートン株式会社製、CAT−RT−37)0.5質量部、及び酢酸エチル5質量部を加え、よく攪拌して酸素バリア層用塗布液を調製した。
次に、シリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアHX、酸素透過度:0.5ml/m2/day/MPa)上に、前記酸素バリア層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、80℃にて1分間加熱及び乾燥した。この酸素バリア層付きシリカ蒸着PETフィルムを前記支持体上に貼合せ、50℃で24時間加熱し、厚み12μmの第1の酸素バリア層を形成した。
【0097】
−第1の熱可逆記録層の形成−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
【0098】
【化3】
【化4】
【化5】
【0099】
次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料としての2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、及びイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌して、熱可逆記録層用塗布液を調製した。
得られた熱可逆記録層用塗布液を、前記第1の酸素バリア層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6.0μmの第1の熱可逆記録層を形成した。
【0100】
−光熱変換層の形成−
フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社日本触媒製、IR915、吸収ピーク波長:956nm)1質量%溶液を4質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン20質量部、架橋剤としてイソシアネート(商品名コロネートHL、日本ポリウレタン株式会社製)5質量部をよく攪拌し、光熱変換層塗布液を調製した。得られた光熱変換層用塗布液を、前記第1の熱可逆記録層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み3μmの光熱変換層を形成した。
【0101】
−第2の熱可逆記録層の形成−
前記第1の熱可逆記録層と同じ熱可逆記録層用組成物を、前記光熱変換層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6.0μmの第2の熱可逆記録層を形成した。
【0102】
−紫外線吸収層の形成−
紫外線吸収ポリマーの40質量%溶液(株式会社日本触媒製、UV−G300)10質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン12質量部を加え、よく攪拌して紫外線吸収層用塗布液を調製した。
次に、前記第2の熱可逆記録層上に、前記紫外線吸収層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み1μmの紫外線吸収層を形成した。
【0103】
−第2の酸素バリア層の形成−
前記第1の酸素バリア層と同じ酸素バリア層付きシリカ蒸着PETフィルムを、前記紫外線吸収層上に貼合せ、50℃で24時間加熱し、厚み12μmの第2の酸素バリア層を形成した。
【0104】
−バック層の形成−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記支持体の前記第1の熱可逆記録層等が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、製造例1における熱可逆記録媒体を製造した。
【0105】
(製造例2)
<熱可逆記録媒体の製造>
製造例1において、熱可逆記録層用塗布液に光熱変換材料であるホウ化ランタンを製造例1の光熱変換材料と同じ感度になるように添加して、厚み12μmの第1の熱可逆記録層を形成し、第2の熱可逆記録層、光熱変換層、及び第2のバリア層は形成しない以外は、製造例1と同様にして、製造例2の熱可逆記録媒体を作製した。
【0106】
(実施例1、実施例2、及び比較例1)
比較例1として、図1に示す従来の画像消去装置(ファイバ結合LDを用いたレーザマーカー)による円形ビームと、実施例1及び2として、図7に示す本発明の画像消去装置(LDアレイ光源を用いた消去装置)によるライン状ビームを用い、実施例1ではレンズ15としてフレネルレンズが用いており、実施例2ではレンズ15として凸型のレンズアレイを用いて、製造例1の熱可逆記録媒体に記録されたベタ画像を消去したときの消去エネルギー及び消去幅を、以下のようにして、測定した。結果を表1及び図9に示す。なお、図9には、実施例1(ライン状光源消去)と比較例1(円形ビーム消去)の結果を示す。
比較例1では、従来の画像消去装置の円形ビームによる消去として、Spectra-Physics社製ファイバ結合LD(半導体レーザ)のXt Corvus FB100−980−35−01(中心波長:976nm)でレーザ光照射して、2枚のコリメータレンズ(焦点距離26mm)で平行光にして、Cambridge社製ガルバノスキャナー6230Hでレーザ光を走査させて、fθレンズ(焦点距離141mm)で集光させる装置で、ワーク間距離を180mm(円形、ビーム径3.0mm)、走査線速度1,000mm/s、図10に示すレーザ光走査方法により重複ピッチ幅0.60mmで40mm×40mmの領域を消去した。
実施例1及び2では、本発明の画像消去装置のライン状ビームによる消去として、LDアレイ光源としてイエナオプティックス社製LDバー光源のコリメータレンズ付きLD光源JOLD−55−CPFN−1L−976(中心波長976nm、出力:55W)を用いて図7に示す光学系レンズを組み、熱可逆記録媒体上で、長さ40mm、幅0.35mmのライン状ビームとなるように調整して、ガルバノミラーCambridge社製ガルバノスキャナー6230Hでライン状ビームのレーザ光を走査させた。図8に示す走査方法で走査線速度20mm/sで走査させて40mm×40mmの領域を消去した。
【0107】
<消去エネルギー及び消去幅の測定>
比較例1の従来の画像消去装置の円形ビームにより、ワーク間距離141mm、走査線速度2,500mm/s、図10に示すレーザ光走査方法によりピッチ幅0.60mmでベタ画像濃度が1.40になるように記録を行い、該ベタ画像を前記画像消去方法で照射パワーを変更しながら消去して、地肌濃度との差が0.020以内となる消去エネルギー及び消去幅を求めた。
なお、消去エネルギーは、ベタ画像を消去した後の地肌濃度が該ベタ画像を形成する前の地肌濃度に対して+0.02以下になるときのレーザ光の照射エネルギーを消去可能エネルギーとし、該消去可能エネルギーの最大値と最小値との平均値と定義する。また、消去幅は、(最大値−最小値)/(最大値+最小値)と定義する。なお、濃度測定は、反射濃度計(X−rite社製、938Spectro−Densido−meter)で測定した。
【0108】
【表1】
【0109】
図9及び表1の結果から、実施例1及び2の本発明の画像消去装置のライン状ビームによる消去は、比較例1の従来の画像消去装置の円形ビームによる消去に比べて、低エネルギーでの消去が可能であることが分かった。その結果は、ライン状ビームにすることで熱拡散によるエネルギーロスを低減できることによる効果であると考えられる。更に、実施例1に比べて、実施例2の方が広い消去幅を確保でき、より高い消去性を有している。これは、長軸長さ方向の光分布均一性が改善できたためである。
【0110】
<消去時間の評価>
次に、比較例1の従来の画像消去装置による円形ビームと、実施例1の本発明の画像消去装置によるライン状ビームとで、製造例1の熱可逆記録媒体に記録した40mm×40mm領域のベタ画像を照射パワー30Wでの消去時間を測定した。結果を表2に示す。
【0111】
【表2】
表2の結果から、実施例1及び2の本発明の画像消去装置によるライン状ビームでは、低エネルギーで消去が可能なことに加えて、レーザ光走査でジャンプ(レーザ光を照射しないレーザ光走査;図10参照)を行う必要がないのでジャンプにより消去時間が延びることがないことから、同一照射パワーで短時間での消去が可能であることが分かった(消去エネルギーは12%減で、消去時間では24%減となっている。)。
【0112】
<繰返し消去による地肌着色(地肌かぶり)の評価>
次に、比較例1の従来の画像消去装置による円形ビームと、実施例1及び2の本発明の画像消去装置によるライン状ビームとで、繰返し消去による地肌着色(地肌かぶり)の影響を以下のようにして評価した。
【0113】
−繰り返し消去後の地肌着色(地肌かぶり)の評価方法−
製造例1の熱可逆記録媒体の画像記録していない地肌部分に繰返し消去のみを行い、地肌濃度との差が0.020より大きくなる直前の繰返し回数を求めた。このとき、消去エネルギーは、消去可能エネルギーの最大値と最小値との平均値で設定した。また、濃度測定は、反射濃度計(X−rite社製、938Spectro−Densido−meter)で測定した。
【0114】
その結果、繰返し消去を行うと、地肌部の濃度が上がり、初期の地肌濃度に対して、0.02上がる限界は、比較例1の従来の画像消去装置による円形ビームでは400回に対して、実施例1の本発明の画像消去装置によるライン状ビームでは5,000回と大幅に改善された。これは、実施例1の本発明の画像消去装置によるライン状ビームでは、レーザ光の走査で重ねる必要がないためであると考えられる。
【0115】
次に、実施例2の本発明の画像消去装置において、シリンドリカルレンズ3の焦点距離を変更させてライン状ビームの短軸長さを変更して、消去エネルギー及び消去幅を測定した。結果を表3に示す。
【0116】
【表3】
表3の結果から、実施例2の本発明の画像消去装置によるライン状ビームでは、ビーム幅を制御することで、消去エネルギー及び消去幅を制御できることが判り、熱可逆記録媒体、消去する環境に応じてビーム幅を制御することで、消去性に合わせて消去が可能となることが分かった。
【0117】
(実施例3)
実施例2において、図7に示す本発明の画像消去装置における、ガルバノミラーの代わりにステッピングモータミラーを取り付けて、走査線速度20mm/sで走査させるようにステッピングモータミラーの走査制御した以外は、実施例2と同様にして、ベタ画像印字を行い消去したところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった)。
【0118】
(実施例4)
実施例2において、図7に示す本発明の画像消去装置における、ガルバノミラーの代わりにポリゴンミラーを取り付けて、走査線速度20mm/sで走査させるようにポリゴンミラーの回転数を調整した以外は、実施例2と同様にして、ベタ画像印字を行い消去したところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった)。
【0119】
(実施例5)
実施例2において、図7に示す本発明の画像消去装置における、ガルバノミラーを外して、製造例1の熱可逆記録媒体に対してベタ画像印字を実施例2と同様に行い、該熱可逆記録媒体をプラスチックの箱に貼り付けコンベアに載せて箱が20mm/sの搬送速度(1.2m/分)で移動させながら消去したところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった)。
【0120】
(実施例6)
実施例2において、図7に示す本発明の画像消去装置における、製造例2の熱可逆記録媒体に対してベタ画像印字、消去を実施例2と同様に行ったところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった)。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の画像消去方法及び画像消去装置は、レーザ光の走査が一軸方向だけですみ、低エネルギーで高速消去が可能となり、装置コストの大幅な低減が可能になるので、例えば例えば入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理用途などの大きな画面、多様な表示に幅広く用いることができ、特に、物流・配送システムや工場内での工程管理システムなどの使用に適したものである。
【符号の説明】
【0122】
1 半導体レーザアレイ
2 幅方向平行化手段
3 シリンドリカルレンズ1(幅方向のビーム幅調整手段)
4 球面レンズ1(長さ、幅方向のビーム幅調整手段)
5 走査手段
6 球面レンズ2(長さ、幅方向のビーム幅調整手段)
7 ビームサイズ調整手段
8 シリンドリカルレンズ2(幅方向のビーム幅調整手段)
9 長軸長さ方向光分布制御手段
10 熱可逆記録媒体
11 特殊光学系
12 光ファイバ
13 第1のシリンドリカルレンズ
14 第2のシリンドリカルレンズ
15 長さ方向のレーザ光拡散レンズ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0123】
【特許文献1】特開2004−265247号公報
【特許文献2】特許第3998193号公報
【特許文献3】特許第3161199号公報
【特許文献4】特開平9−30118号公報
【特許文献5】特開2000−136022号公報
【特許文献6】特開平11−151856号公報
【特許文献7】特許第4263228号公報
【特許文献8】特開2008−62506号公報
【特許文献9】特開2008−213439号公報
【特許文献10】特許第3256090号公報
【特許文献11】特開2008−137243号公報
【特許文献12】特開平10−92729号公報
【特許文献13】特開2002−353090号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体レーザ光源を直線状に配列した半導体レーザアレイと、
前記半導体レーザアレイの出射面に配置され、該半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にする幅方向平行化手段と、
前記幅方向平行化手段により形成されたライン状ビームの長軸長さを、前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする長軸長さ方向光分布制御手段と、を少なくとも有してなり、
前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去することを特徴とする画像消去装置。
【請求項2】
半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整するビームサイズ調整手段を有する請求項1に記載の画像消去装置。
【請求項3】
幅方向平行化手段が、シリンドリカルレンズである請求項1から2のいずれかに記載の画像消去装置。
【請求項4】
長軸長さ方向光分布制御手段が、レンズアレイである請求項1から3のいずれかに記載の画像消去装置。
【請求項5】
長軸長さ方向光分布制御手段が、フレネルレンズである請求項1から3のいずれかに記載の画像消去装置。
【請求項6】
熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、一軸方向に走査する走査手段を有する請求項1から5のいずれかに記載の画像消去装置。
【請求項7】
走査手段が、一軸のガルバノミラーである請求項6に記載の画像消去装置。
【請求項8】
走査手段が、ステッピングモータミラーである請求項6に記載の画像消去装置。
【請求項9】
走査手段が、ポリゴンミラーである請求項6に記載の画像消去装置。
【請求項10】
半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームに対して、熱可逆記録媒体を移動手段により移動させ、該熱可逆記録媒体上で該ライン状ビームを走査させて、該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する請求項1から9のいずれかに記載の画像消去装置。
【請求項11】
熱可逆記録媒体が容器表面に貼り付けられており、該容器を移動手段により移動させることで該熱可逆記録媒体を移動させる請求項10に記載の画像消去装置。
【請求項12】
複数の半導体レーザ光源を直線状に配列した半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にする幅方向平行化工程と、
前記幅方向平行化工程で形成されたライン状ビームの長軸長さを前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする長軸長さ方向光分布制御工程と、
を少なくとも含んでなり、
前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去することを特徴とする画像消去方法。
【請求項13】
半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整するビームサイズ調整工程を含む請求項12に記載の画像消去方法。
【請求項14】
熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、一軸方向に走査する走査工程を含む請求項12から13のいずれかに記載の画像消去方法。
【請求項15】
半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームに対して、熱可逆記録媒体を移動手段により移動させ、該熱可逆記録媒体上で該ライン状ビームを走査させて、該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する請求項12から13のいずれかに記載の画像消去方法。
【請求項1】
複数の半導体レーザ光源を直線状に配列した半導体レーザアレイと、
前記半導体レーザアレイの出射面に配置され、該半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にする幅方向平行化手段と、
前記幅方向平行化手段により形成されたライン状ビームの長軸長さを、前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする長軸長さ方向光分布制御手段と、を少なくとも有してなり、
前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去することを特徴とする画像消去装置。
【請求項2】
半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整するビームサイズ調整手段を有する請求項1に記載の画像消去装置。
【請求項3】
幅方向平行化手段が、シリンドリカルレンズである請求項1から2のいずれかに記載の画像消去装置。
【請求項4】
長軸長さ方向光分布制御手段が、レンズアレイである請求項1から3のいずれかに記載の画像消去装置。
【請求項5】
長軸長さ方向光分布制御手段が、フレネルレンズである請求項1から3のいずれかに記載の画像消去装置。
【請求項6】
熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、一軸方向に走査する走査手段を有する請求項1から5のいずれかに記載の画像消去装置。
【請求項7】
走査手段が、一軸のガルバノミラーである請求項6に記載の画像消去装置。
【請求項8】
走査手段が、ステッピングモータミラーである請求項6に記載の画像消去装置。
【請求項9】
走査手段が、ポリゴンミラーである請求項6に記載の画像消去装置。
【請求項10】
半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームに対して、熱可逆記録媒体を移動手段により移動させ、該熱可逆記録媒体上で該ライン状ビームを走査させて、該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する請求項1から9のいずれかに記載の画像消去装置。
【請求項11】
熱可逆記録媒体が容器表面に貼り付けられており、該容器を移動手段により移動させることで該熱可逆記録媒体を移動させる請求項10に記載の画像消去装置。
【請求項12】
複数の半導体レーザ光源を直線状に配列した半導体レーザアレイから出射されたレーザ光の幅方向の広がりを平行にする幅方向平行化工程と、
前記幅方向平行化工程で形成されたライン状ビームの長軸長さを前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布にする長軸長さ方向光分布制御工程と、
を少なくとも含んでなり、
前記半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去することを特徴とする画像消去方法。
【請求項13】
半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長軸長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームの長軸長さ及び短軸長さの少なくともいずれかを調整するビームサイズ調整工程を含む請求項12に記載の画像消去方法。
【請求項14】
熱可逆記録媒体上で、半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームを、一軸方向に走査する走査工程を含む請求項12から13のいずれかに記載の画像消去方法。
【請求項15】
半導体レーザアレイの発光部の長軸長さより長く、かつ長さ方向に均一な光分布を有するライン状ビームに対して、熱可逆記録媒体を移動手段により移動させ、該熱可逆記録媒体上で該ライン状ビームを走査させて、該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する請求項12から13のいずれかに記載の画像消去方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−104995(P2011−104995A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228694(P2010−228694)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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