説明

画像生成システム内のサンプル中の対象領域の位置を検証する装置および方法

【課題】サンプル中の対象領域の位置を検証するのに好適な装置および方法を提供すること。
【解決手段】画像生成システムは、光学システムと、上記光学システムに対して移動可能なステージとを含む。コンピュータサーバが、上記画像生成システムおよびレビューステーションと通信する。上記画像生成システムは、上記サンプル上の基準マークの空間的位置を配置し、上記マークの公称位置に対する上記マークの空間オフセット値を判定することができる。上記画像生成システムおよび上記レビューステーションそれぞれの座標系を標準化することが可能である。上記方法は、上記サンプル上に基準マークを配置する工程と、上記サンプル内の対象領域を識別する工程とを含む。上記方法は、上記マークに対する上記対象領域の位置を判定する工程をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本願は、明細書中、3つの米国特許出願を参考として援用する。これらの3つの米国特許出願は、本出願と同じ日、すなわち、1999年10月29日に出願され、それぞれ、Cytological Imaging System and Method、Cytological Stain Composition Including Verification CharacteristicおよびCytological Stain Compositionという名称であり、代理人ドケット番号CYM−031、CYM−032およびCYM−033、米国特許出願第09/430,116号、第09/430,117号、および第09/430,196号として識別される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、サンプル内の対象領域の位置を検証する装置および方法に関する。詳細には、本発明は、自動画像システムにおいて、細胞診標本内の対象領域の位置を検証する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
細胞学は、生物学から派生し、細胞の形成、構造、および機能について論じる。細胞学は、実験室設備で適用されて、細胞学者、細胞検査技師、および他の医学的な専門家が、患者の細胞の標本の視覚的な検査に基づいて、患者の状態についての医学的な診断を行う。典型的な細胞学的技術として、細胞を、女性の子宮頸部からこすり取り、異常な細胞、すなわち、初期の子宮頸ガンにおける前駆物質があるかどうか検出するために解析する、「パパニコラウスミア」検査がある。また、細胞学的技術は、人間の体の他の部分における異常な細胞および疾病を検出するためにも用いられる。
【0004】
パパニコラウスミア分析の従来の人間によるレビュー過程は、細胞検査技師によるスライド上での顕微鏡サンプルの手動スクリーニングを含む。細胞検査技師は、典型的には低い倍率でスライド上の何万もの細胞を系統的に見て、対象領域を特定し、これに手動で印をつける。病理学者は、その後、確立された基準に対して領域に位置付けられた細胞のサイズ、形状、および密度を比較して、異常細胞を区別するために、各特定された領域を高い倍率で見る。診断的パパニコラウスミアは、この消耗的な検査に伴う退屈さおよび疲労ゆえに、高い偽陰性率を引き起こす。高い偽陰性率のために、多くの異常が検出されないままか、検出が遅れる。
【0005】
偽陰性結果の約3分の1がスクリーニング誤差に関わるものであった。スクリーニング誤差を減少させるために、コンピュータイメージングがパパニコラウスミア分析の自動化に適用された。完全に人間による読み取りが必要な正常な標本の数を減らせるように、非常に多くの正常な標本の中から異常のありそうな標本を選り分ける予備スクリーニングシステムが開発された。しかし、これらの自動予備スクリーニングシステムも、システムによる不正確な読み取りのために間違った読み取りを起こし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
第1の実施形態によると、本発明はサンプル内の対象領域の位置を検証する方法を含み、その方法は、サンプル上の基準マークの位置を特定する工程、サンプル内の対象領域を特定する工程、マークに対する対象領域の位置を決定する工程、および再び基準の位置を特定する工程を含む。基準の位置を再び特定する際の寸法誤差が許容値を下回る場合は、対象領域の位置は検証される。サンプル内の対象領域を特定する工程は、サンプルを光学的にスキャンする工程を含み得、許容値は約10ミクロンと1,000ミクロンの間にある。
【0007】
方法はまた、サンプル内の複数の対象領域を特定する工程、および順番に複数の対象領域のランク付けを行う工程を含み得る。サンプルは、画像システムのステージ上に装着可能なガラススライドに置かれた細胞診標本であり得、サンプル内の対象領域が異常細胞であり得る。方法によると、対象領域の位置が検証されなければ、システムは信頼できないものとしてサンプルを却下する。対象領域の位置を特定する際に、任意に、方法はサンプル内で特定された対象領域の最も近い部分に可視の指標を配置する工程を含み得る。
【0008】
別の実施形態によると、サンプル内の対象領域の位置を検証する方法は、サンプル上に基準マークの位置を特定する工程、マークの位置に基準座標値を割り当てる工程、サンプル内の対象領域を特定する工程、対象領域の位置に座標値を割り当てる工程、およびそのマークの位置を空間的に特定し、それによって基準座標値に対してマークの空間的オフセット値を決定する工程を含み得、空間的オフセット値が許容値を下回る場合は、対象領域の位置が検証される。第1の基準マークの位置を特定する工程は、光学機器の視野範囲において、マークを中心に位置付けることで達成され得る。
【0009】
方法は、さらに対象領域の座標値をメモリに格納する工程、レビューステーションにサンプルを移動させる工程、基準マークの位置を特定する工程、およびマークの位置に基づいてレビューステーションの座標系を設定する工程を含み得る。
【0010】
本発明による、自動細胞学的画像システムに装着されたスライド上の細胞診標本内の対象領域の位置を検証する別の方法は、画像システムの光経路内にスライドを配置する工程、画像システムの視野範囲内でスライド上の基準マークを中心にする工程、マークの位置に基準座標値を割り当てる工程、基準座標値をメモリ内に格納する工程、標本内の対象領域を特定するために標本をスキャンする工程、画像システムの視野範囲内で対象領域を中心にする工程、対象領域に座標値を割り当てる工程、基準座標値位置に戻す工程、2回目の空間的にマークの位置を特定する工程、および2回目のマークの位置の特定から生じる座標値と基準座標値を比較し、これによってマークの空間的オフセット値を決定する工程を含む。空間的オフセット値が許容値を下回る場合は、対象領域の位置が検証される。
【0011】
本発明はまた、サンプルをイメージする画像システムにおいて使用するデバイスを含み、そのデバイスは、その上にサンプルと、少なくとも2つの基準マークとを配置するのに適応した領域を有するスライドであり、その領域は少なくとも部分的に、少なくとも2つのマークで境界づけられる。サンプルは、細胞診標本であり得、少なくとも2つのマークの各々の位置は所定の許容値内である。デバイスはまた、スライド上にサンプル領域内の当該部位の位置で配置される指標を含み得、サンプル領域内の当該部位が異常細胞の位置を示す。
【0012】
本発明はさらに、サンプル内の対象領域の位置を検証する画像システムを含み、その画像システムは光学システムと光学システムに対して移動可能なステージとを含み、光学システムとステージの少なくとも一方は光学システムの光経路においてサンプルを位置付けするように動作可能である。画像システムは、サンプル上の基準マークの位置を空間的に特定し、正常位置に対してマークの空間的なオフセット値を決定することが可能である。サンプルは、スライド上に置かれた細胞診標本であり得る。
【0013】
本発明はまた、サンプルを観察し、サンプル内の対象領域の位置を検証する装置を含み、その装置は、第1の光学システムと第1の光学システムに対して移動可能なステージとを有する画像システムであって、その光学システムとステージの少なくとも一方は第1の光学システムの光経路に、サンプルの位置付けをするように動作可能である画像システムと、画像システムと通信するコンピュータサーバと、およびそのサーバと通信するレビューステーションとを含む。そのレビューステーションは第2の光学システムを含む。第1の光学システムおよび第2の光学システムは空間的にサンプル上の基準マークの位置を特定し、第1の光学システムおよび第2の光学システムの各々の座標系を標準化するように動作可能である。
【0014】
本発明は、添付請求項に詳細に記載される。本発明の上記およびさらなる利点は、添付図面とともに行われる以下の説明を参照することによってより理解され得る。
(項目1) サンプル中の対象領域の位置を検証する方法であって、
a)該サンプル上の基準マークの位置を特定する工程と、
b)該サンプル内の対象領域を識別する工程と、
c)該対象領域の該マークに対する位置を判定する工程と、
d)該基準の位置を再度特定する工程であって、工程a)に対する工程d)中の該基準の位置特定の寸法誤差が許容誤差値未満である場合に該対象領域の位置を検証する、工程と、
を包含する方法。
(項目2) 前記サンプル内の対象領域を識別する工程は、前記サンプルに光学走査を行う工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記許容誤差値は約10ミクロン〜1000ミクロンである、項目1に記載の方法。
(項目4) 前記サンプル内の複数の対象領域を識別する工程と、
該複数の対象領域を順序付ける工程と、
をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目5) 前記サンプルは、スライド上に配置された細胞診標本を含む、項目1に記載の方法。
(項目6) 前記サンプル内の対象領域は異常細胞を含む、項目5に記載の方法。
(項目7) 前記サンプルは、ステージ上に取り付けられる、項目1に記載の方法。
(項目8) 前記対象領域の位置が検証されない場合、前記サンプルを却下する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目9) 前記サンプル内で識別された対象領域の近隣に視認可能なインジケータを配置する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目10) サンプル中の対象領域の位置を検証する方法であって、
a)該サンプル上の基準マークの位置を特定する工程と、
b)該マークの位置に基準座標値を割り当てる工程と、
c)該サンプル内の対象領域を識別する工程と、
d)該対象領域の位置に座標値を割り当てる工程と、
e)該マークの位置を空間的に特定することにより、該マークの該基準座標値に対する空間オフセット値を判定する工程と、
を包含し、
該空間オフセット値が許容誤差値未満である場合、該対象領域の位置が検証される、
方法。
(項目11) 前記基準マークの位置をはじめに特定する工程は、光学機器の視野において該マークを中心に位置付ける工程を包含する、項目10に記載の方法。
(項目12) 前記対象領域の座標値をメモリに格納する工程をさらに包含する、項目10に記載の方法。
(項目13) a)前記サンプルをレビューステーションに転送する工程と、
b)前記基準マークの位置を特定する工程と、
c)該マークの位置に基づいて該レビューステーションの座標系を設定する工程と、
をさらに包含する、項目10に記載の方法。
(項目14) 自動化細胞画像生成システムに挿入されたスライド上の細胞診標本中の対象領域の位置を検証する方法であって、
a)該画像生成システムの光路内に該スライドを配置する工程と、
b)該画像生成システムの視野内の該スライド上の基準マークを中心に位置付ける工程と、
c)基準座標値を該マークの位置に割り当てる工程と、
d)該基準座標値をメモリに格納する工程と、
e)該標本を走査して、該標本内の対象領域を識別する工程と、
f)該画像生成システムの視野内の該対象領域を中心に位置付ける工程と、
g)該対象領域に座標値を割り当てる工程と、
h)該基準座標値の位置に戻る工程と、
i)該マークの位置を空間的に特定する工程と、
j)該基準座標値と、工程i)から得られた座標値とを比較することにより、該マークの空間オフセット値を判定する工程と、
を包含し、
該空間オフセット値が許容誤差値未満である場合、該対象領域の位置を検証する、
方法。
(項目15) サンプルを画像生成するための画像生成システムにおいて用いられ、かつ、該サンプルを載置できるようになっている領域を有するスライドを含むデバイスであって、該スライドは、その上部に少なくとも2つの基準マークを有し、該領域は、該少なくとも2つのマークによって少なくとも部分的に境界付けられる、デバイス。
(項目16) 前記サンプルは細胞診標本を含む、項目15に記載のデバイス。
(項目17) 前記少なくとも2つのマークのそれぞれの位置は、所定の許容誤差値以内である、項目15に記載のデバイス。
(項目18) 前記サンプル領域内の対象領域の位置における前記スライド上に配置されたインジケータをさらに備える、項目15に記載のデバイス。
(項目19) 前記サンプル領域中の対象領域は、異常細胞の位置を示す、項目18に記載のデバイス。
(項目20) サンプル中の対象領域の位置を検証する画像生成システムであって、
a)光学システムと、
b)該光学システムに対して移動可能なステージであって、該光学システムおよび該ステージのうち少なくとも1つは、該光学システムの光路中の該サンプルを位置決めするように動作可能である、ステージと、
を備え、
該画像生成システムは、該サンプル上に基準マークの位置を空間的に特定し、該マークの公称位置に対する該マークの空間オフセット値を判定することが可能である、画像生成システム。
(項目21) 前記サンプルは、スライド上に配置された細胞診標本である、項目20に記載の画像生成システム。
(項目22) サンプルの観察および該サンプル中の対象領域の位置の検証を行うための装置であって、
a)画像生成システムであって、
i)第1の光学システムと、
ii)該第1の光学システムに対して移動可能なステージであって、該光学システムおよび該ステージのうち少なくとも1つは、該第1の光学システムの光路中に該サンプルを位置決めするように動作可能である、ステージと、
を含む画像生成システムと、
b)該画像生成システムと通信するコンピュータサーバと、
c)該サーバと通信し、第2の光学システムを備えるレビューステーションであって、該第1の光学システムおよび該第2の光学システムは、該サンプル上の基準マークの位置を空間的に特定し、該第1の光学システムおよび該第2の光学システムの各座標系を標準化するように動作可能である、レビューステーションと、
を備える、装置。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明によって使用するスライドの1実施形態を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明のシステムの1実施形態を示す全体概略図である。
【図3】図3は、本発明の装置の1実施形態を示すより詳細な概略図である。
【図4】図4は、サンプルにおける対象領域の位置を検証する本発明による方法で、操作の工程を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
図1は、本発明の顕微鏡スライド10の平面図である。スライド10は、その上に細胞診標本14等のサンプルの堆積物(deposition)に適合された標本領域12を有する。スライド10は、許容寸法および面取りされた端部を有し、画像化機器等の自動較正機器におけるスライド10の操作および使用を容易にする。1実施形態において、スライド10はガラスから製造され、約1インチの幅、約3インチの長さ、および約0.04インチの厚さを有する。
【0017】
スライド10は、その上に配置された少なくとも1つの基準マーク16を有し、その上に配置される2つ以上のマーク16を有してもよい。標本領域12は、2つのマーク16によって少なくとも部分的に境界づけられ得る。代替的に、基準マークと呼ばれ得るマーク16は、画像システムの顕微鏡またはカメラ等の光学器械の視野において可視であり、基準として、または測定較正の目的で用いられ得る。1実施形態において、スライドは、第1、第2、および第3の基準マーク16を含み得、これらはスライド10上の非共線点に存在する。1実施形態において、基準マーク16は、それぞれ、約0.010インチの直径を有し、約+/−0.015インチの位置公差を有する。マーク16は、シルクスクリーンプロセスによってスライド10に付与され得る。
【0018】
有界標本領域12は、約1平方インチの領域を有し得る。スライド10の一方の末端部18は、標本14のマーキングおよび特定を容易にするためにその上でフロストされる(frost)か、または被覆され得る。フロストされた末端部18は、約1平方インチの領域を有し得る。まばらな標本を走査することを容易にするために、細胞が保持される領域を規定するフロスト環20も提供され得る。さらに、それぞれのスライド10のフロストされた末端部18の一方の角22は、他の角よりも大きな程度で面取りされ得、イメージング機器に取付けられている間、スライド10の正確な配向を保証する。
【0019】
スライド10上に置かれる標本は、好適には、細胞診標本であるが、別のタイプの標本でもよい。本発明の1実施形態において、細胞診標本は頚部のパパニコラウスミアから作成される。パパニコラウスミア標本は、好適には、単層プレパラートであり、頚部細胞が単層でスライド上に置かれ、イメージングおよび分析を容易にする。単層標本を作成するための機器は、米国特許第5,143,627号において記載され、この特許の記載は、参考のため、その全体を本明細書中で援用する。
【0020】
スライド10には、バーコード24だけでなく、分析結果を正しい患者と適合させるために必要な、例えば、スライド上の標本が取得された患者の特定またはスライドを提供した医師の情報を含む表示(indicia)26が付けら得る。スライド表示26は、1つ以上の英数字文字を含む多様な形式のいずれかを有し得る。スライド10上に人の目で読取り可能な表示をつけることが一般的に望ましく、それによって、固定され、染色された標本を検査する細胞学者が標本および標本が作成された関連サンプルを容易に特定し得る。さらに、標本は、多くの場合、長期間保管され、保持される。従って、使用できなくなるか、または、役に立たなくなり得る表示標準を用いることを回避することが一般的に望ましい。スライド表示は、スライド10に接着された粘着ラベル上に付与され得、次の固定および染色等のプロセスが表示または接着剤を退化させ得る。標本スライド10は、多くの場合、スライドファイルの引出しに保管されるので、スライド10をファイルの引出しから取出すことを必要とせずに読取ることができるように、スライド表示26は、フロストされた末端部18の広幅寸法または狭幅寸法に沿って配向されることが一般的に望ましい。
【0021】
図2は、本発明の、装置30の1実施形態の模式図を示す。装置30は、少なくとも1つのイメージ処理システム32、コンピュータサーバ34、および少なくとも1つのレビューステーション36を含む。サーバ34は、イメージ処理システム32およびレビューステーション36の両方と通信し、イメージ処理システム32とレビューステーション36との間の動作およびデータフローを調整する。
【0022】
図3は、本発明のイメージ処理システム32の1実施形態の、より詳細な図示である。イメージ処理システム32は、第1の光学システム38、およびそれに対して可動なスライドステージ40を含む。レビューステーション36は、第2の光学システム44を含み、サーバ34を介して、イメージ処理システム32と接続される。内部コンピュータシステム46は、第1の光学システム38を制御し、サーバ34と通信する。
【0023】
第1の光学システム38は、CCDカメラ48等の電子カメラ48、および顕微鏡50を含む。顕微鏡50は、好適には、自動顕微鏡である。自動顕微鏡50は、オートフォーカスメカニズム54等の、顕微鏡50の光学経路51に配置されたスライド10の領域の、迅速かつ精密なイメージングを提供する機能を含み得る。第1の光学システム38は、1つ以上のレンズシステム52を含み得る。照明器42は、スライド10上に配置された標本14の照明を提供し得、通常、ステージ40の下からスライド10を照らし得る。
【0024】
ステージ40は、内部コンピュータシステム46からの適切なコマンドに応答して、標本スライド10を顕微鏡50の光学経路51内に搬送し、かつ光学経路51内で搬送する。1実施形態において、ロボットスライド操縦器64は、コンピュータシステム46からの適切なコマンドに基づいて、標本内の細胞をイメージングするために、標本スライド10をスライド保持カセットから可動ステージ40へ移動させ、イメージング後、カセットに戻し得る。スライドホルダ65は、固定かつ取り外し可能にスライド10をステージ40上の精確な位置および配向に繰り返し位置付ける。ステージ40は、1つ以上のステージモーター56によって動力化され得、駆動され得る。ステージ40は、軸受け58上に取付けられ得、その結果、顕微鏡50の基部59に取付けられる。1実施形態において、図3において示されるように、ステージ40はx−y面で可動である。
【0025】
1実施形態において、可動ステージ40と通信するインターフェース制御器60は、顕微鏡50の光学経路51および視野に対して精確に制御されたスライド10の移動を提供し得る。インターフェース制御器60は、コンピュータシステム46からのコマンドを適切な信号に変換することによって、ステージモーター56を制御し、モーター56がステージ40を所定の位置に移動するようにする。位置エンコーダ62は、ステージ40の精確な位置を検出し得、ステージの動きまたは位置を表わすパルスをコンピュータシステム46に生成する。当業者に公知のように、イメージングステーション調整システムにおいて、ステージ40の位置を特定するために、これらのパルスはコンピュータシステム46によって復号され得る。
【0026】
1実施形態において、イメージ処理システム32はバーコードリーダー66を含み、これは、スライド10がロボットスライド操縦器64によって可動ステージ40に搬送されるか、または手動で装着されると、バーコード24を含むスライドの領域を観察するため配置される。1実施形態において、イメージ処理システム32は、潜在的に異常細胞が配置され得る標本内の対象領域に、小点、マーク、または他の可視記号を自動的に配置するマーカ68を含む。
【0027】
レビューステーション36は、サーバ34を介して、イメージ処理システム32に接続され、遠隔で配置され得る。レビューステーション36は、第2の光学システム44を含む。第2の光学システム44は、第1の光学システム38の任意の機能およびすべての機能を含み得る。1実施形態において、第2の光学システム44は顕微鏡50を含み、これは可動ステージと接続され、かつイメージ処理システム32によって特定された対象領域を視覚検査する人間のオペレータによって用いられるように適合される。
【0028】
動作中、イメージ処理システム32は標本14の予備評価を行うために、細胞診標本14が配置されるスライド10の初期観察およびスクリーニングを実行する。イメージ処理システム32は、次に続く細胞工学者または病理学者による観察のために、最も問題となる可能性のあるスライド上の対象領域の位置を特定する。パパニコラウスミアスクリーンにおける偽陰性の読出しを避けるために、この予備スクリーニングにおけるイメージ処理システム32によって特定される領域の位置は、許容し得る誤差範囲内に精確に入っている必要がある。走査プロセスの間、スライドが間違って操作されるか、または配置されると、特定された領域の位置の誤差およびそれに続くレビューステーション36で読違いの原因となる。
【0029】
本発明により、スライド10上の基準マーク16は、スライド10が正しく装着されたことを検証するために、および標本内の特定された対象領域の位置の信頼性を検証するために用いられる。2つまたは3つの基準マーク16が付けられ、その上に標本14が配置されたスライド10は、スライドホルダ65によって可動ステージ40上に固定して配置され、かつ保持される。次に、自動顕微鏡50は、第1の基準マーク16を検索する。基準マーク16の公称位置は、コンピュータシステム46に予めプログラミングされる。コンピュータシステム46は、制御信号をインターフェース制御器60に送信することによって基準マーク16を検索し、ステージ40を第1の基準マーク16の推定位置に移動させる。応答して、ステージモーター56は、ステージ40を顕微鏡50の視野内で、所望の基準マーク16まで移動させる。通常、観察されるスライド10の一部は、顕微鏡50の視野を構成する。第1の基準マーク16は、その後、顕微鏡50の視野内で自動的に中心に位置付けられ得、公差のために重要でない誤差および他の重要でない誤差の原因となる。
【0030】
コンピュータシステム46は、例えば(0,0)等の基準座標値を第1の基準マークの空間位置に割当て、基準座標値およびステージ位置をメモリに記憶し得る。第1の基準マーク16に対する第2の基準マーク16の相対位置も、コンピュータシステム46に予めプログラミングされる。従って、第1の基準マーク16の位置がわかると、コンピュータシステム46は第2の基準マーク16の位置を特定する。コンピュータシステム46は、モーター56がステージ40を第2の基準マーク16の公称位置に移動するようにし、その後、第2の基準マーク16が顕微鏡50の視野内で自動的に中心に位置付けられ得る。コンピュータシステム46は、例えば、(x_1,y_1)等の別の基準座標値を第2の基準マークの空間位置に割当て、その基準座標値をそのメモリに記憶する。基準座標値(0,0)および(x_1,y_1)は、2次元座標系を規定し、これと関連する標本14内の選択された領域は、その後、特定され得る。1実施形態において、スライド10は2つより多い基準マークを有し、イメージ処理システム32は、第3の基準マーク16およびスライド10上の任意の他の基準マーク16を捜し得、同様にそれらのそれぞれの位置を、中心に位置付け、かつ、記録する。
【0031】
次いで、画像処理システム32は、通常、数万もの細胞を含む標本14全体を走査して、極度に大きいおよび/または暗い細胞核(dark nucleii)を備えた細胞などのサンプル内の潜在的なほとんどの対象領域を測定する。走査プロセスの間、コンピュータシステム46は、スライド10の種々のエリアが顕微鏡50の光路51内に位置決めされるように、モータ56がステージ40を移動させる適切な制御信号を生成することによって、移動可動なステージ40を操作する。ステージ40が、コンピュータシステム46からの信号に応答してモータ56によって移動される際、顕微鏡50のレンズシステム52によって目視される画像も移動されて、スライド10の別の部分が目視されるようになる。画像処理システム32は、移動可能なステージ40を移動させることによって標本14を走査し、これにより、顕微鏡50の視野が標本14全体にわたるようになる。ステージ40は移動されて、顕微鏡50の視野が走査エリア全体にわたって移動されるようになり得る。
【0032】
電子カメラ48は、目視されるスライド10のエリアの電子画像を取り込むように、顕微鏡50の光路51内に位置決めされる。一実施形態において、カメラの視野は、幅640ピクセル×長さ480ピクセルである。各ピクセルは、約0.74ミクロンのオーダーである。次いで、カメラ48は、コンピュータシステム46が画像エリアに映る細胞の分析を実行できるように、電子画像をコンピュータシステム46に供給する。電子画像は、好適には、コンピュータシステム46内の画像プロセッサ70によって処理され得る電子信号によって表される。
【0033】
コンピュータシステム46は必要な分析を実行して、悪性の細胞または前悪性の細胞が標本内に含まれるかを外観に基づいて判定する。コンピュータシステム46は、細胞核の形状またはサイズあるいはエリア内の細胞密度など、画像内の何らかの特性を選択および測定しようとする特性抽出アルゴリズムに依存し得る。例えば、通常、核のサイズが大きいことは、細胞の異常を示し得る。事前にプログラムされた基準に基づいて、コンピュータシステム46は、細胞異常などの特定の目的の特性を最も含みそうな標本14内のエリアの識別を行う。通常、コンピュータシステム46は、細胞診標本内に約10〜約30の対象領域を識別するが、対象領域の数は0〜100またはこれより多くと変化し得る。
【0034】
対象領域が識別された後、コンピュータシステム46は、各エリアが通常の良性の細胞ではなく、通常の前悪性の細胞または悪性の細胞内に最も見られそうな特徴をどの程度有するかに基づいて、識別されたエリアをランク付けする。次いで、コンピュータシステム46は、基準座標値によって規定される座標システム内の座標値を、各識別されたエリアに割り当てて、これにより、第一の基準点および第二の基準点に対して各エリアの相対的位置を決定する。次いで、コンピュータシステム46は、各対象領域の座標値を含むファイルをメモリ内に格納する。画像処理システム32は、サーバ34を用いてこのデータを伝達もする。一実施形態において、マーカー68は、各識別された対象領域の位置におけるスライド上に目視可能な符号をつけて、レビューステーション36において、病理学者が潜在的に悪性の細胞を識別することを援助する。
【0035】
識別された対象領域の位置が正確であるかを検証するために、コンピュータシステム46は、スライドが走査された後に基準マーク16の空間オフセット値を決定する。コンピュータシステム46は、第一の基準マークおよび第二の基準マークの実際の座標値をメモリから呼び出す。次いで、コンピュータシステム46は、適切な制御信号を送信して、ステージを、第一の基準マークに関して測定された基準座標値に対応する位置に移動させ、次いで、第二の基準マークに関して測定された基準座標値に対応する第二の位置に移動させる。コンピュータシステム46は、第一の基準マーク16が第一の位置に配置され、第二の基準マーク16が第二の位置に配置されることを予期する。いかなるメカニカルシステムにおいても固有の誤差のマージンがあるため、基準マーク16は、通常、何らかの小さな空間オフセット値によって変位する。空間オフセット値が所定の許容値より高い場合、スライドが走査中のステージに対して移動して、システムが位置を見失ったり、または識別された対象領域の格納された位置の有効性を疑問視する何らかの他の誤差が生じる。したがって、スライドが、信頼できない走査結果であるとして却下される。一実施形態において、許容値は、約+/−10ミクロンから約+/−1000ミクロンの範囲にある。
【0036】
基準マークは、種々の理由から空間的オフセットであり得る。オフセットの原因は、走査プロセスの開始時のスライドの不正確なローディングまたは位置決め、あるいは、走査プロセスの間のスライドのスリップまたは振動(jarring)など、移動可能なステージ40に対するスライド10の移動を含み得る。誤差の他の原因は、走査の間の移動可能なステージの位置の過剰なバックラッシュ、任意の種類の物理的マニュアルの介入、または画像処理システム32内の超過のメカニカル振動を含み得る。
【0037】
空間オフセット値が許容可能な許容値内である場合、スライドが検証されて、レビューステーション36において、細胞検査技師または病理学者によってさらなるレビュー用に許容され得る。上述の検証プロセスは、各スライド10に関して別々に行われる。スライド10上の基準マーク16の空間オフセット値が許容値より低い場合、許容可能な誤差マージン内にある対象領域の位置は信頼できると検証される。したがって、スライド10はレビューステーション36に伝送される。
【0038】
レビューステーション36において、一度走査されたスライド10は、レビューするために、病理学者に関する別の準備スクリーニングを行う細胞検査技師であったり、最終スクリーニングを行う病理学者であったりし得る人間の操作者によって提出される。どちらにしても、画像処理システム32は、人間の操作者のために、人間の操作者が見る必要がある標本内のエリアを電子的に限定する。
【0039】
レビューステーション36は、通常、サーバ34にアクセスし得、顕微鏡および移動可能なステージに接続された、内部コンピュータシステムを有する。人間の操作者は、顕微鏡にスライド10のバーコードを読ませ、次いで、スライド10上の第一の基準マークおよび第二の基準マークを物理的に探すことによって、スライド10を処理し始める。人間の操作者がスライド上に基準マーク16を見つけると、操作者は、顕微鏡の視野内の中心にマーク16を置き、第一の基準マーク16の座標を(0、0)に設定する。次いで、サーバは、画像処理システム32によるスライドに関して対象領域に、割り当てられた座標を提供する。
【0040】
人間の操作者は、顕微鏡が第一の割り当てられた座標に行くように指示する。第一の割り当てられた座標に対応したエリアを検査した後、操作者は、次のボタンを押して、顕微鏡が次の割り当てられた座標に行くようにコマンド信号を送信する。このようにして、操作者は、画像処理システム30によるレビュー用に選択された位置の全範囲を網羅する。人間の操作者が細胞検査技師であり、この細胞検査技師が細胞または細胞の集団を目的であると考える場合、特定のエリアをさらに識別し得る。細胞検査技師が目的の最後の位置をレビューした後、完了ボタンを押す。これらのエリアはレビューするために、対象領域が悪性の細胞を含むか否かに関する最終判定を行う病理学者によって提出される。あるいは、レビューステーションにおける人間の操作者は、画像処理システム32によってサーバ34内に格納される座標に対応したエリアのそれぞれをレビューし、各エリアに関する最終判定を行う、病理学者自身であり得る。レビューの後、レビューステーション36は、必要に応じて、基準マーク16を再度見つけて、スライドが移動しなかったこと、および他の座標システムの機能不全がスライド10のレビューの間に生じなかったことを検証し得る。
【0041】
一実施形態において、複数の画像処理システム32およびレビューステーション36は、通常のサーバ36を介して、座標内で用いられ得る。スライド10が一つの画像処理システム32から別の画像処理システムに移動されたり、一つの画像処理システム32から複数の遠隔ステーション34のうちの一つに移動される際、スライド上の対象領域の位置に関する情報が格納されて、複数の画像処理システム32およびレビューステーション36の間で共有され得る。これにより、適切なエリアが病理学者によってレビューされるこれらの機器のいずれかを、高い信頼度で交換可能に用いることが可能である。
【0042】
つまり、図4は、本発明による、サンプルにおける対象領域の位置を検証するためのプロセスにおける動作の工程のサマリーの模式的なフローチャートである。第一の工程は、サンプル上の基準マークの位置を特定する工程を含む。基準マークは、スライド上に印刷された基準マークであり得、上述したように、このスライド上に細胞診標本が堆積される。第二の工程は、サンプル内の対象領域を識別する工程を含む。例えば、標本スライドは、必要に応じて自動顕微鏡によって走査され得て、潜在的に悪性の細胞を含むエリアを識別する。第三の工程は、基準マークに対して対象領域の位置を決定する工程を含む。第四の工程は、基準マークの位置を再度特定する工程を含む。第五の工程は、基準マークの位置特定の際の寸法の誤差が許容値より小さいか否かを判定する工程を含む。小さい場合には、サンプルがレビューステーションに伝送され、小さくない場合には、サンプルは却下される。
【0043】
本発明を特定の好適および例示の実施形態を参照しながら特に示したり説明してきた。しかし、形態および詳細における種々の変更が、上掲の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の意図および範囲から逸脱しない場合に、本発明において行われ得ることが当業者によって理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−151830(P2010−151830A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34136(P2010−34136)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【分割の表示】特願2001−534074(P2001−534074)の分割
【原出願日】平成12年10月27日(2000.10.27)
【出願人】(502153961)サイティック コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】