画像生成装置、画像生成方法、およびプログラム
【課題】繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる画像生成装置を提供する。
【解決手段】画像生成装置100は、繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成する画像生成装置であって、質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得部11と、前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得部12と、前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列部13と、配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成部14と、を含む。
【解決手段】画像生成装置100は、繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成する画像生成装置であって、質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得部11と、前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得部12と、前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列部13と、配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成部14と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成装置、画像生成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、質量分析の結果から得られるマススペクトルを解析するために、様々な方法やその方法を利用した装置(ソフトウェア)が開発されている(例えば、特許文献1参照)。マススペクトルは、一般的に、横軸を質量電荷比(m/z、m=分子質量、z=電荷数)とし、縦軸をイオン強度(相対強度)とした二次元画像として表される。
【0003】
脂質は、一般的に、脂肪酸とアルコールのエステルであり、CH2の繰り返し構造を持つ。また、ポリマーは、モノマーが重合したものであり、モノマーの繰り返し構造を持つ。このような繰り返し構造を持つ物質のマススペクトルを解析するためのソフトウェアの1つとして、Polymerixソフトウェア(Sierra ANALYTICS社製)が知られている。Polymerixソフトウェアは、ポリマーのマススペクトルからモノマーの質量を推定するために、イオンピークの間隔の個数をカウントする機能を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−219140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この機能では、未知のポリマーがどのような質量のモノマーによって構成されているかを推定することはできるが、ポリマーの末端基や修飾については推定できない。また、脂質の解析においては、すでに繰り返し構造CH2は既知であり、末端基や修飾などについては推定できない。すなわち、イオンピークの間隔の個数をカウントする手法では、マススペクトルから、繰り返し構造を持つ物質の末端基や修飾などの情報を得ることができなかった。
【0006】
このように、従来、マススペクトルから、繰り返し構造を持つ物質の物性に重要な末端基や修飾等の解析を行うことは難しかった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる画像生成装置、画像生成方法、およびプログラムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る画像生成装置は、
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成する画像生成装置であって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列部と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成部と、
を含む。
【0009】
このような画像生成装置によれば、イオン強度を、質量電荷比軸方向だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向にも展開した画像を得ることができる。これにより、従来のマススペクトル表示と比べて、繰り返し構造を有する物質において、物性に関連する情報(例えば、末端基や修飾等の情報)を容易に確認することができる。したがって、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる。
【0010】
(2)本発明に係る画像生成装置において、
前記配列部は、前記所定の質量電荷比の範囲ごとに前記イオン強度データを第1軸に沿って並べて単位列を形成し、前記単位列を前記第1軸と交差する第2軸に沿って配列してもよい。
【0011】
このような画像生成装置によれば、イオン強度を、質量電荷比軸方向だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向にも展開した画像を得ることができる。したがって、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる。
【0012】
(3)本発明に係る画像生成装置において、
前記画像生成部は、前記第1軸をX軸とし、前記第2軸をY軸とし、前記イオン強度データに対応する前記イオン強度を色の濃淡とする二次元画像を生成してもよい。
【0013】
このような画像生成装置によれば、イオンピークのずれや周期、イオンピーク間の間隔等の情報を容易に確認することが可能な画像を生成することができる。
【0014】
(4)本発明に係る画像生成装置において、
前記画像生成部は、前記第1軸をX軸とし、前記第2軸をY軸とし、前記イオン強度データに対応する前記イオン強度をZ軸とする三次元画像を生成してもよい。
【0015】
このような画像生成装置によれば、イオンピークの強度分布(分布変化)等の情報を、容易に把握することが可能な画像を生成することができる。
【0016】
(5)本発明に係る画像生成装置において、
前記画像生成部が生成した画像上の位置を指定するための位置指定部と、
前記位置指定部によって指定された2点間のX軸方向に沿う距離を測定する測長部と、
をさらに含んでもよい。
【0017】
このような画像生成装置によれば、イオンピーク間の質量電荷比の差を容易に確認できる。したがって、例えば、末端基や修飾の解析を容易に行うことができる。
【0018】
(6)本発明に係る画像生成方法は、
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成する画像生成方法であって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得工程と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得工程と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列工程と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成工程と、
を含む。
【0019】
このような画像生成方法によれば、イオン強度を、質量電荷比軸方向だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向にも展開した画像を得ることができる。これにより、従来のマススペクトル表示と比べて、繰り返し構造を有する物質において、物性に関連する情報(例えば、末端基や修飾等の情報)を容易に確認することができる。したがって、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる。
【0020】
(7)本発明に係るプログラムは、
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成するプログラムであって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列部と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成部としてコンピューターを機能させる。
【0021】
このようなプログラムによれば、イオン強度を、質量電荷比軸方向だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向にも展開した画像を得ることができる。これにより、従来のマススペクトル表示と比べて、繰り返し構造を有する物質において、物性に関連する情報(例えば、末端基や修飾等の情報)を容易に確認することができる。したがって、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る画像生成装置の構成の一例を示す図。
【図2】本実施形態に係る画像生成方法の一例を示すフローチャート。
【図3】イオン強度データ取得工程を説明するための図。
【図4】配列工程を説明するための図。
【図5】配列工程を説明するための図。
【図6】配列工程を説明するための図。
【図7】画像生成部が生成した画像の一例を示す図。
【図8】画像生成部が生成した画像の一例を示す図。
【図9】ミコール酸の推定される構造を示す表。
【図10】ミコール酸のマススペクトルを示すグラフ。
【図11】ミコール酸のマススペクトルから、本実施形態に係る画像生成装置を用いて生成した画像。
【図12】ミコール酸のマススペクトルから、本実施形態に係る画像生成装置を用いて、生成した画像。
【図13】質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトルを示すグラフ。
【図14】質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトルから生成した三次元画像。
【図15】質量電荷比のキャリブレーションが不適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトルから生成した三次元画像。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0024】
1. 画像生成装置
まず、本実施形態に係る画像生成装置について説明する。図1は、本実施形態に係る画像生成装置100の構成の一例を示す図である。
【0025】
画像生成装置100は、図1に示すように、処理部10と、操作部20と、表示部22と、記憶部24と、情報記憶媒体26と、を含んでいる。画像生成装置100は、繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成することができる。
【0026】
繰り返し構造を有する物質(以下「対象物質」ともいう)として、例えば、脂質、ポリマーがある。脂質は、一般に、脂肪酸とアルコールのエステルであり、CH2の繰り返し構造を有する。ポリマーは、モノマーが重合したものであり、モノマーの繰り返し構造を有する。
【0027】
処理部10は、イオン強度データ取得部11と、質量情報取得部12と、配列部13と、画像生成部14と、を含む。処理部10は、さらに、測長部15を含むことができる。処理部10の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。
【0028】
イオン強度データ取得部11は、質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む対象物質のイオン強度データを取得する。イオン強度データは、質量分析において質量電荷比ごとに検出されたイオンの強度の情報を含む。イオン強度データから、横軸を質量電荷比、縦軸をイオン強度とったグラフを作成することでマススペクトルが得られる。イオン強度データは、例えば、マススペクトルから得ることができる。ここで、マススペクトルとは、横軸に質量電荷比(m/z、m=分子質量、z=電荷数)、縦軸にイオン強度(相対強度)をとったスペクトルである。
【0029】
対象物質のイオン強度データ(マススペクトル)は、例えば、対象物質を質量分析装置で測定することによって得られる。対象物質のイオン強度データを取得するための質量分析装置としては、例えば、MALDI−TOF MS(Matrix assisted laser desorption/ionization−Time of flight Mass Spectrometer)が挙げられる。
【0030】
イオン強度データ取得部11は、例えば、情報記憶媒体26に格納されたイオン強度データ(マススペクトルデータ)を読み取ることにより、イオン強度データを取得する。なお、イオン強度データ取得部11は、繰り返し構造を反映したイオンピークが現れる質量電荷比の範囲だけ、イオン強度データを取得してもよい。
【0031】
質量情報取得部12は、対象物質の繰り返し単位の質量情報を取得する。対象物質が脂質である場合、繰り返し単位の質量情報は、例えば、CH2の精密質量14.0157uである。質量情報取得部12は、ユーザーが操作部20を操作して繰り返し単位の質量情報を入力し、操作部20が入力された繰り返し単位の質量情報を質量情報取得部12に出力することにより、繰り返し単位の質量情報を取得してもよい。また、質量情報取得部12は、予め情報記憶媒体26に格納された繰り返し単位の質量情報を読み取ることにより、対象物質の繰り返し単位の質量情報を取得してもよい。
【0032】
配列部13は、質量情報取得部12が取得した繰り返し単位の質量情報に基づいて、イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する。配列部13は、例えば、所定の質量電荷比の範囲ごとにイオン強度データを第1軸に沿って並べて単位列を形成し、当該単位列を第1軸と交差する第2軸に沿って配列する。所定の質量電荷比の範囲は、例えば、繰り返し単位の質量に対応する。
【0033】
画像生成部14は、配列されたイオン強度データに基づいて、画像を生成する。画像生成部14は、上述した第1軸をX軸とし、上述した第2軸をY軸とし、イオン強度データに対応するイオン強度を色の濃淡とする二次元画像を生成することができる。
【0034】
また、画像生成部14は、第1軸をX軸とし、第2軸をY軸とし、イオン強度データに対応するイオン強度をZ軸とする三次元画像を生成することができる。画像生成装置14は、三次元画像において、イオン強度を、Z軸と色の変化の両方で表してもよい。
【0035】
また、画像生成部14は、二次元画像および三次元画像の両方を生成することができる。さらに、画像生成部14は、生成した二次元画像と、三次元画像とを任意に切り換えることができる。これにより、二次元画像と三次元画像との対応関係が明確になり、解析を容易化できる。また、画像生成部14は、生成した画像の一部を、拡大・縮小した画像を生成することができる。また、画像生成部14は、例えば、三次元画像において、様々な視点からみた画像を生成することができる。また、画像生成部14は、様々な視点から見た画像を生成して、二次元画像から三次元画像に変化するアニメーションを生成することができる。
【0036】
測長部15は、操作部(位置指定部)20によって指定された画像上の2点間の距離を測定することができる。また、測長部15は、指定された画像上の2点間のX軸に沿う距離を測定することができる。
【0037】
操作部20は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部10に出力する。操作部20の機能は、キーボード、マウス、タッチパネル型ディスプレイなどのハードウェアにより実現することができる。操作部20は、画像生成部14が生成した画像上の位置を指定することができる。操作部20は、指定した位置の情報を処理部10(測長部15)に出力する。
【0038】
表示部22は、処理部10によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。表示部22は、画像生成部14により生成された画像を表示することができる。また、表示部22は、マススペクトルを表示することができる。
【0039】
記憶部24は、処理部10のワーク領域となるもので、その機能はRAMなどにより実現できる。情報記憶媒体26(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部10は、情報記憶媒体26に格納されるプログラムに基づいて本実施形態の種々の処理を行う。情報記憶媒体26には、処理部10の各部としてコンピューターを機能させるためのプログラムを記憶することができる。
【0040】
2. 画像生成方法
次に、本実施形態に係る画像生成方法について説明する。本実施形態に係る画像生成方法は、本実施形態に係る画像生成装置を用いて行うことができる。図2は、本実施形態に係る画像生成方法の一例を示すフローチャートである。
【0041】
(1)まず、イオン強度データ取得部11が、質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む対象物質のイオン強度データを取得する(イオン強度データ取得工程S11)。
【0042】
図3は、イオン強度データ取得工程S11を説明するための図であり、対象物質のマススペクトルの一例を示す図である。
【0043】
本工程は、まず、図3に示すように、ユーザーが、対象物質の繰り返し構造を反映したイオンピークが現れる質量電荷比の範囲1を指定する。具体的には、例えば、処理部10が、情報記憶媒体26に格納された対象物質のイオン強度データ(マススペクトルデータ)に基づいて、表示部22に対象物質のマススペクトルを表示させる。ユーザーは、操作部20を操作することによって、表示部22に表示された対象物質のマススペクトルから、繰り返し構造を反映したイオンピークが現れる質量電荷比の範囲1を指定する。
【0044】
次に、イオン強度データ取得部11が、指定された質量電荷比の範囲1のイオン強度データを取得する。イオン強度データ取得部11は、情報記憶媒体26に格納されたイオン強度データを読み取ることにより、質量電荷比の範囲1に対応するイオン強度データを取得する。
【0045】
なお、質量電荷比の範囲1を指定する工程を行わずに、イオン強度データ取得部11が、情報記憶媒体26に格納されたイオン強度データの全部を取得してもよい。
【0046】
(2)次に、質量情報取得部12が、対象物質の繰り返し単位の質量情報を取得する(質量情報取得工程S12)。
【0047】
質量情報取得部12は、対象物質の繰り返し単位の質量情報を、例えば、ユーザーが操作部20を介して当該質量情報を入力することにより、取得することができる。また、例えば、物質と当該物質の繰り返し単位の質量とを関連付けたリストを予め情報記憶媒体26に格納しておいてもよい。このリストからユーザーが物質名を選択することによって、選択された物質の繰り返し単位の質量情報が質量情報取得部12に出力されて、質量情報取得部12が対象物質の繰り返し単位情報を取得することができる。
【0048】
対象物質の繰り返し単位の質量として、対象物質の繰り返し単位の精密質量を用いることができる。例えば、対象物質が脂質である場合、繰り返し単位の質量情報は、例えば、CH2の精密質量14.0157uである。また、対象物質の繰り返し単位情報は、対象物質の繰り返し単位の質量の整数倍(例えば、2倍)であってもよい。
【0049】
(3)次に、配列部13が、質量情報取得部12が取得した対象物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する(配列工程S13)。
【0050】
図4〜図6は、配列工程S13を説明するための図である。図4は、図3に示す範囲1を拡大して示す図である。図5(A)は、図4に示す質量電荷比の範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)を拡大して示す図であり、図5(B)は、図4に示す質量電荷比の範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)を拡大して示す図である。図6は、図5(A)に示すイオン強度データ(マススペクトルS1)と、図5(B)に示すイオン強度データ(スペクトルS2)を配列した図である。なお、以下に示す配列工程S13において、配列部13はイオン強度データに基づいて処理を行うが、図4〜図6では、イオン強度データを視覚的に捉えるために、イオン強度データをマススペクトルとして図示した。
【0051】
本工程は、具体的には、まず、図4に示すように、配列部13が、対象物質の繰り返し単位情報から、質量電荷比の範囲Dを設定する。図4の例では、質量電荷比の範囲Dは、対象物質の繰り返し単位の質量に対応している。すなわち、対象物質が脂質の場合、質量電荷比の範囲Dは、CH2の精密質量14.0157uである。なお、質量電荷比の範囲Dは、図示はしないが、対象物質の繰り返し単位の質量の整数倍(例えば2倍)であってもよい。
【0052】
次に、配列部13が、質量電荷比の範囲Dごとに、イオン強度データを分割する。図4の例では、配列部13は、質量電荷比の範囲Dごとに、イオン強度データ(マススペクトル)を、質量電荷比の範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)と、質量電荷比の範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)の2つに分割している。なお、イオン強度データの分割数は2つ以上であれば特に限定されない。配列部13は、図5(A)に示す、範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)と、図5(B)に示す、領域1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)と、を得ることができる。
【0053】
次に、図6に示すように、配列部13が、イオン強度データ(マススペクトルS1)およびイオン強度データ(マススペクトルS2)を、配列する。具体的には、配列部13は、範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)および範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)をそれぞれ軸A1に沿って並べて単位列を形成し、単位列(マススペクトルS1,S2)を軸A1と交差する軸A2に沿って配列する。軸A1と軸A2とは、例えば、直交している。配列部13は、単位列(マススペクトルS1,S2)を、質量電荷比の大きさに基づいて、配列する。具体的には、配列部13は、例えば、範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)の始点S1aの質量電荷比と、範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)の始点S2aの質量電荷比と、を比べて、その値が小さいほうから(図示の例ではマススペクトルS1から)順に、軸A2に沿ってならべる。
【0054】
図6の例では、配列部13は、範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)の始点S1aと、範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)の始点S2aとが、軸A2方向に揃う(軸A1の座標が互いに同じになる)ように配列する。配列部13は、同様に、範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)の終点S1aと、範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)の終点S2aとが、軸A2方向に揃う(軸A1の座標が互いに同じになる)ように配列する。なお、図6の例では、軸A3は、イオン強度データに対応するイオン強度を示している。軸A3は、例えば、軸A1および軸A2と直交している。
【0055】
(4)次に、画像生成部14が、配列されたイオン強度データ(マススペクトルS1,S2)に基づいて、画像を生成する(画像生成工程S14)。
【0056】
図7および図8は、画像生成部14が生成した画像の一例を示す図である。なお、上述した図3〜図6の例では、イオン強度データを2列に配列する場合について説明したが、図7および図8では、イオン強度データを30列に配列して画像を生成した例を示す。
【0057】
画像生成部14は、図7に示すように、軸A1をX軸とし、軸A2をY軸とし、軸A3を色の濃淡とする二次元画像を生成する。また、画像生成部14は、図8に示すように、軸A1をX軸とし、軸A2をY軸とし、軸A3をZ軸とする三次元画像を生成する。画像生成部14は、例えば、図6に示すように配列したイオン強度データを、三角形分割してデータポイント間のリンクを作成し、三次元画像を生成する。
【0058】
このように、画像生成部14が、軸A1をX軸とし、軸A2をY軸として画像を生成することにより、X軸が質量電荷比に対応し、Y軸が繰り返し構造の周期に対応する画像を生成することができる。なお、繰り返し構造の周期は、すなわち、繰り返し構造の数や、重合度に対応させることができる。
【0059】
画像生成部14は、例えば、イオンピークの位置(X座標、Y座標)が確認しやすい二次元画像を生成する。すなわち、画像上において、注目するイオンピークがどの列、どの行に属しているかが容易に確認できる二次元画像を生成する。具体的には、例えば、各座標に対応する領域(図示の例では、正方形の領域)を割り当て、当該領域ごとにイオン強度に対応する色(濃淡)を付ける。これにより、イオンピークの位置(座標)を明確にすることができる。このような二次元画像では、イオンピークのずれや周期、イオンピーク間の間隔等を容易に確認することができる。
【0060】
また、画像生成部15は、例えば、イオンピーク間を滑らかに接続した三次元画像を生成する。具体的には、例えば、隣接するイオンピーク間を補完することによって、隣接するイオンピーク間が滑らかに接続されるようにする。このような三次元画像では、イオンピークの強度分布(強度変化)を、容易に把握することができる。
【0061】
次に、表示部22が、画像生成部15が生成した画像を表示する。なお、画像生成部15が生成した画像を、例えば、紙等の媒体に出力してもよい。
【0062】
以上の工程により、繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成することができる。
【0063】
3.実施例
以下、実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0064】
3.1. 実施例1
(1)試料
試料(対象物質)として、ミコール酸(Mycobacterium tuberculosis)を用いた。図9は、ミコール酸の推定される構造を示す表である。ミコール酸を、MALDI−TOF MSで測定しマススペクトルを得た。
【0065】
図10は、ミコール酸のマススペクトルを示すグラフである。
【0066】
(2)画像生成条件
繰り返し単位の質量は、脂肪酸の繰り返し単位CH2の精密質量14.0157uを用いた。画像化した質量電荷比の範囲1は、1067.6037〜1503.0889の範囲とした。イオン強度データのデータポイント数は、106309である。
【0067】
(3)結果
図11は、本実施形態に係る画像生成装置を用いて、図10に示すミコール酸のマススペクトルから生成した二次元画像である。図12は、本実施形態に係る画像生成装置を用いて、図10に示すミコール酸のマススペクトルから生成した三次元画像である。なお、図11および図12では、イオン強度を色の濃淡で示しており、色が濃いほど、イオン強度が高い。また、図11において、点線で囲まれた部分は、同位体を示している。
【0068】
図11および図12に示す画像では、CH2の繰り返し構造により複数のイオンピークがY軸に沿って並んでいることを容易に確認することができる。さらに、文献(F. Laval, M. A. Laneelle, C. D´eon, B. Monsarrat, and M. Daffe. Accurate molecular mass determination of mycolic acids by maldi-tof mass spectrometry. Analytical Chemistry, 73(18):4537-4544, 2001.)で報告された、繰り返し構造のイオンピークの強度が1つおきに強くなる現象を容易に確認できる。
【0069】
さらに、図11に示す画像から末端基の情報が得られる。末端基の炭化水素に二重結合がある場合、水素原子2個分の2uだけ、質量が小さくなる。すなわち、図11に示す画像において、X軸方向の2uの差が二重結合の数の違いを表す。図11に示す画像では、B(1)とB(2)、およびB(4)とB(5)においてこのことが確認できる。
【0070】
このように、図11に示す画像では、脂質の末端基の違いを視覚化することができ、末端基の情報を容易に確認することができる。
【0071】
さらに、分子中のどの位置が修飾されているかを確認したい場合には、純物質や、MS/MSのマススペクトルが必要となるが、同様に本手法で解析することができる。
【0072】
3.2. 実施例2
次に、本手法を、質量分析装置における質量電荷比のキャリブレーションの確認方法として適用した例について説明する。
【0073】
(1)試料
キャリブレーションには、既知の物質であり、かつ、そのイオンピークが既知である試料を用いる。本実施例では、試料として、PMMA((Poly(methyl methacrylate))を用いた。
【0074】
PMMAを、質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態のMALDI−TOF MSで測定して、PMMAのマススペクトルを得た。
【0075】
図13は、質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトルを示すグラフである。
【0076】
次に、PMMAを、質量電荷比のキャリブレーションが不適切な状態のMALDI−TOF MSで測定して、PMMAのマススペクトルを得た。
【0077】
(2)画像生成条件
繰り返し単位の質量は、PMMAの繰り返し単位12C51H816O2の精密質量100.05243uを用いた。
【0078】
(3)結果
図14は、質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトル(図13に示すマススペクトル)から、本実施形態に係る画像生成装置を用いて生成した三次元画像である。図15は、質量電荷比のキャリブレーションが不適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトルから、本実施形態に係る画像生成装置を用いて生成した三次元画像である。
【0079】
図14に示すように、質量電荷比のキャリブレーションが適切な場合、生成された三次元画像では、PMMAに由来するイオンピークがY軸に沿って並んでいることが確認できる。そして、PMMAに由来するイオンピークは、Y軸に沿って滑らかな曲線状に連なっていることが確認できる。しかしながら、図15に示すように、質量電荷比のキャリブレーションが不適切な場合、得られる三次元画像では、PMMAに由来するイオンピークが、滑らかな曲線状に連なっておらず、凹凸をもって連なっていることが確認できる。この凹凸は、隣接するイオンピークを接続する際に、繰り返し単位が一つ小さい(または一つ大きい)イオンのイオンピークが、三角形分割の隣接頂点に、出現しなかったため現れたものである。すなわち、この凹凸は、質量電荷比のキャリブレーションのずれを反映して現れたものである。
【0080】
このように、本実施形態に係る画像生成装置によって三次元画像を生成することにより、質量分析装置の質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態か否かを、容易に確認することができる。
【0081】
本実施形態では、対象物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列し、配列したイオン強度データに基づいて、画像を生成する。これにより、イオン強度を、質量電荷比軸方向(図7、図8におけるX軸方向)だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向(図7、図8におけるY軸方向)にも展開した画像を得ることができる。
【0082】
ここで、従来のマススペクトル表示では、イオン強度を質量電荷比軸方向に展開していた。これに対して、本実施形態によれば、上述のように、イオン強度を、質量電荷比軸方向だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向にも展開した画像を得ることができる。これにより、表示空間を効率よく使うことができ、多くの情報を効率よく表示することができる。そのため、従来のマススペクトル表示と比べて、繰り返し構造を有する物質において、その物性に関連する重要な情報である、繰り返し単位、イオン強度分布、末端基、修飾等の情報を容易に確認することができる。したがって、本実施形態によれば、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる。
【0083】
また、従来のマススペクトル表示では、例えば、繰り返し構造に由来するイオンピークを1つ1つアサインしなければならなかった。これに対して、イオン強度を、質量電荷比軸方向、および繰り返し構造の周期軸方向に展開した画像では、例えば、同一の末端基を持つ物質のイオンピークがY軸に沿って並ぶため、このY軸に沿って並ぶイオンピーク群を一度にアサインすることができる。したがって、従来のマススペクトル表示と比べて、解析時間を短縮することができる。本実施形態によれば、従来のマススペクトル表示と比べて、解析時間を短縮することが可能な画像を生成することができる。
【0084】
また、イオン強度を、質量電荷比軸方向、および繰り返し構造の周期軸方向に展開した画像では、繰り返し構造の単位質量に対応する周期を持つイオンピークは、Y軸に沿って直線状に並ぶ。例えば、図11に示す二次元画像では、同一の末端基を持つ物質のイオンピークがY軸に沿って直線状に並んでいる。したがって、このような画像では、従来のマススペクトル表示と比べて、イオンピークのずれや周期性をより容易に確認できる。直線は、一次元視覚野で検出するため、ヒトの視覚情報処理において、高速な認識が可能である。そのため、直線状に並んだイオンピークは、ノイズの中からでも高速に認識することが可能である。
【0085】
また、イオン強度を、質量電荷比軸方向、および繰り返し構造の周期軸方向に展開した画像では、例えば、同位体のイオンピークが軸(Y軸)に沿って並ぶ。ここで、マススペクトルには、同位体のイオンピークが現れる。同位体のイオンピークは、解析の確度を上げるための情報として利用できる。しかしながら、同位体のイオンピークによって、マススペクトルは複雑になり、従来のマススペクトル表示では、解析が難しくなってしまう場合があった。イオン強度を、質量電荷比軸方向、および繰り返し構造の周期軸方向に展開した画像では、同位体のイオンピークが軸に沿って並ぶため、従来のマススペクトル表示を用いて解析を行う場合と比べて、解析が容易であり、解析の確度を向上させることができる。
【0086】
本実施形態によれば、軸A1をX軸とし、軸A2をY軸とし、イオン強度データに対応するイオン強度を色の濃淡とする二次元画像を生成することができる。これにより、例えば、イオンピークのずれや周期、イオンピーク間の間隔等の情報を容易に確認することが可能な画像を生成することができる。また、本実施形態の実施例で試料として用いた脂質は、生物学分野において解析することが多い。生物学分野で用いられる電気泳動ゲル(電気泳動法)では、一般的に、強度を色の濃淡で表すため、当該二次元画像は、この電気泳動法の測定結果の表し方と類似している。したがって、例えば、脂質の分析を行う場合、当該二次元画像は、生物学分野のユーザーが見慣れたものに類似しており、ユーザーが行う解析を促進させることができる。
【0087】
本実施形態によれば、軸A1をX軸とし、軸A2をY軸とし、イオン強度データに対応するイオン強度をZ軸とする三次元画像を生成することができる。これにより、例えば、イオン強度の変化(分布)等の情報を容易に把握することが可能な画像を生成することができる。
【0088】
本実施形態によれば、上述したように、二次元画像(図7参照)および三次元画像(図8参照)の両方を生成することができる。二次元画像では、イオン強度が色の変化であるため、イオン強度の変化が確認しづらい場合がある。これに対して、三次元画像では、Z軸でイオン強度を表しているため、イオン強度の変化が確認しやすい。また、三次元画像では、イオンピークのずれや周期、イオンピーク間の間隔を確認しづらい場合がある。また、隣接するレイヤーが重なるオクルージョンの問題がある。これに対して、二次元画像では、イオンピークのずれや周期、イオンピーク間の間隔が確認しやすい。また、オクルージョンの問題が生じない。このように、二次元画像と三次元画像の両方を生成できることにより、より解析を容易化することができる。
【0089】
本実施形態によれば、生成された画像上の2点間のX軸に沿う距離を測定することができる。これにより、ピーク間の質量電荷比の差を容易に確認できる。したがって、例えば、末端基や修飾の解析を容易に行うことができる。
【0090】
なお、上述した実施形態は一例であって、これらに限定されるわけではない。
【0091】
例えば、上述した実施形では、質量分析装置として、MALDI−MSを用いた例を説明したが、マススペクトルに繰り返し構造が現れれば前処理やイオン化法の組み合わせによらず適用可能である。
【0092】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0093】
S1,S2 マススペクトル、D,1,1a,1b 範囲、S1a,S2a 始点、
S1b,S2b 終点、A1,A2,A3 軸、10 処理部、
11 イオン強度データ取得部、12 質量情報取得部、13 配列部、
14 画像生成部、15 測長部、20 操作部、22 表示部、24 記憶部、
26 情報記憶媒体、100 画像生成装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成装置、画像生成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、質量分析の結果から得られるマススペクトルを解析するために、様々な方法やその方法を利用した装置(ソフトウェア)が開発されている(例えば、特許文献1参照)。マススペクトルは、一般的に、横軸を質量電荷比(m/z、m=分子質量、z=電荷数)とし、縦軸をイオン強度(相対強度)とした二次元画像として表される。
【0003】
脂質は、一般的に、脂肪酸とアルコールのエステルであり、CH2の繰り返し構造を持つ。また、ポリマーは、モノマーが重合したものであり、モノマーの繰り返し構造を持つ。このような繰り返し構造を持つ物質のマススペクトルを解析するためのソフトウェアの1つとして、Polymerixソフトウェア(Sierra ANALYTICS社製)が知られている。Polymerixソフトウェアは、ポリマーのマススペクトルからモノマーの質量を推定するために、イオンピークの間隔の個数をカウントする機能を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−219140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この機能では、未知のポリマーがどのような質量のモノマーによって構成されているかを推定することはできるが、ポリマーの末端基や修飾については推定できない。また、脂質の解析においては、すでに繰り返し構造CH2は既知であり、末端基や修飾などについては推定できない。すなわち、イオンピークの間隔の個数をカウントする手法では、マススペクトルから、繰り返し構造を持つ物質の末端基や修飾などの情報を得ることができなかった。
【0006】
このように、従来、マススペクトルから、繰り返し構造を持つ物質の物性に重要な末端基や修飾等の解析を行うことは難しかった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる画像生成装置、画像生成方法、およびプログラムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る画像生成装置は、
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成する画像生成装置であって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列部と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成部と、
を含む。
【0009】
このような画像生成装置によれば、イオン強度を、質量電荷比軸方向だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向にも展開した画像を得ることができる。これにより、従来のマススペクトル表示と比べて、繰り返し構造を有する物質において、物性に関連する情報(例えば、末端基や修飾等の情報)を容易に確認することができる。したがって、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる。
【0010】
(2)本発明に係る画像生成装置において、
前記配列部は、前記所定の質量電荷比の範囲ごとに前記イオン強度データを第1軸に沿って並べて単位列を形成し、前記単位列を前記第1軸と交差する第2軸に沿って配列してもよい。
【0011】
このような画像生成装置によれば、イオン強度を、質量電荷比軸方向だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向にも展開した画像を得ることができる。したがって、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる。
【0012】
(3)本発明に係る画像生成装置において、
前記画像生成部は、前記第1軸をX軸とし、前記第2軸をY軸とし、前記イオン強度データに対応する前記イオン強度を色の濃淡とする二次元画像を生成してもよい。
【0013】
このような画像生成装置によれば、イオンピークのずれや周期、イオンピーク間の間隔等の情報を容易に確認することが可能な画像を生成することができる。
【0014】
(4)本発明に係る画像生成装置において、
前記画像生成部は、前記第1軸をX軸とし、前記第2軸をY軸とし、前記イオン強度データに対応する前記イオン強度をZ軸とする三次元画像を生成してもよい。
【0015】
このような画像生成装置によれば、イオンピークの強度分布(分布変化)等の情報を、容易に把握することが可能な画像を生成することができる。
【0016】
(5)本発明に係る画像生成装置において、
前記画像生成部が生成した画像上の位置を指定するための位置指定部と、
前記位置指定部によって指定された2点間のX軸方向に沿う距離を測定する測長部と、
をさらに含んでもよい。
【0017】
このような画像生成装置によれば、イオンピーク間の質量電荷比の差を容易に確認できる。したがって、例えば、末端基や修飾の解析を容易に行うことができる。
【0018】
(6)本発明に係る画像生成方法は、
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成する画像生成方法であって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得工程と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得工程と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列工程と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成工程と、
を含む。
【0019】
このような画像生成方法によれば、イオン強度を、質量電荷比軸方向だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向にも展開した画像を得ることができる。これにより、従来のマススペクトル表示と比べて、繰り返し構造を有する物質において、物性に関連する情報(例えば、末端基や修飾等の情報)を容易に確認することができる。したがって、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる。
【0020】
(7)本発明に係るプログラムは、
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成するプログラムであって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列部と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成部としてコンピューターを機能させる。
【0021】
このようなプログラムによれば、イオン強度を、質量電荷比軸方向だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向にも展開した画像を得ることができる。これにより、従来のマススペクトル表示と比べて、繰り返し構造を有する物質において、物性に関連する情報(例えば、末端基や修飾等の情報)を容易に確認することができる。したがって、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る画像生成装置の構成の一例を示す図。
【図2】本実施形態に係る画像生成方法の一例を示すフローチャート。
【図3】イオン強度データ取得工程を説明するための図。
【図4】配列工程を説明するための図。
【図5】配列工程を説明するための図。
【図6】配列工程を説明するための図。
【図7】画像生成部が生成した画像の一例を示す図。
【図8】画像生成部が生成した画像の一例を示す図。
【図9】ミコール酸の推定される構造を示す表。
【図10】ミコール酸のマススペクトルを示すグラフ。
【図11】ミコール酸のマススペクトルから、本実施形態に係る画像生成装置を用いて生成した画像。
【図12】ミコール酸のマススペクトルから、本実施形態に係る画像生成装置を用いて、生成した画像。
【図13】質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトルを示すグラフ。
【図14】質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトルから生成した三次元画像。
【図15】質量電荷比のキャリブレーションが不適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトルから生成した三次元画像。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0024】
1. 画像生成装置
まず、本実施形態に係る画像生成装置について説明する。図1は、本実施形態に係る画像生成装置100の構成の一例を示す図である。
【0025】
画像生成装置100は、図1に示すように、処理部10と、操作部20と、表示部22と、記憶部24と、情報記憶媒体26と、を含んでいる。画像生成装置100は、繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成することができる。
【0026】
繰り返し構造を有する物質(以下「対象物質」ともいう)として、例えば、脂質、ポリマーがある。脂質は、一般に、脂肪酸とアルコールのエステルであり、CH2の繰り返し構造を有する。ポリマーは、モノマーが重合したものであり、モノマーの繰り返し構造を有する。
【0027】
処理部10は、イオン強度データ取得部11と、質量情報取得部12と、配列部13と、画像生成部14と、を含む。処理部10は、さらに、測長部15を含むことができる。処理部10の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。
【0028】
イオン強度データ取得部11は、質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む対象物質のイオン強度データを取得する。イオン強度データは、質量分析において質量電荷比ごとに検出されたイオンの強度の情報を含む。イオン強度データから、横軸を質量電荷比、縦軸をイオン強度とったグラフを作成することでマススペクトルが得られる。イオン強度データは、例えば、マススペクトルから得ることができる。ここで、マススペクトルとは、横軸に質量電荷比(m/z、m=分子質量、z=電荷数)、縦軸にイオン強度(相対強度)をとったスペクトルである。
【0029】
対象物質のイオン強度データ(マススペクトル)は、例えば、対象物質を質量分析装置で測定することによって得られる。対象物質のイオン強度データを取得するための質量分析装置としては、例えば、MALDI−TOF MS(Matrix assisted laser desorption/ionization−Time of flight Mass Spectrometer)が挙げられる。
【0030】
イオン強度データ取得部11は、例えば、情報記憶媒体26に格納されたイオン強度データ(マススペクトルデータ)を読み取ることにより、イオン強度データを取得する。なお、イオン強度データ取得部11は、繰り返し構造を反映したイオンピークが現れる質量電荷比の範囲だけ、イオン強度データを取得してもよい。
【0031】
質量情報取得部12は、対象物質の繰り返し単位の質量情報を取得する。対象物質が脂質である場合、繰り返し単位の質量情報は、例えば、CH2の精密質量14.0157uである。質量情報取得部12は、ユーザーが操作部20を操作して繰り返し単位の質量情報を入力し、操作部20が入力された繰り返し単位の質量情報を質量情報取得部12に出力することにより、繰り返し単位の質量情報を取得してもよい。また、質量情報取得部12は、予め情報記憶媒体26に格納された繰り返し単位の質量情報を読み取ることにより、対象物質の繰り返し単位の質量情報を取得してもよい。
【0032】
配列部13は、質量情報取得部12が取得した繰り返し単位の質量情報に基づいて、イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する。配列部13は、例えば、所定の質量電荷比の範囲ごとにイオン強度データを第1軸に沿って並べて単位列を形成し、当該単位列を第1軸と交差する第2軸に沿って配列する。所定の質量電荷比の範囲は、例えば、繰り返し単位の質量に対応する。
【0033】
画像生成部14は、配列されたイオン強度データに基づいて、画像を生成する。画像生成部14は、上述した第1軸をX軸とし、上述した第2軸をY軸とし、イオン強度データに対応するイオン強度を色の濃淡とする二次元画像を生成することができる。
【0034】
また、画像生成部14は、第1軸をX軸とし、第2軸をY軸とし、イオン強度データに対応するイオン強度をZ軸とする三次元画像を生成することができる。画像生成装置14は、三次元画像において、イオン強度を、Z軸と色の変化の両方で表してもよい。
【0035】
また、画像生成部14は、二次元画像および三次元画像の両方を生成することができる。さらに、画像生成部14は、生成した二次元画像と、三次元画像とを任意に切り換えることができる。これにより、二次元画像と三次元画像との対応関係が明確になり、解析を容易化できる。また、画像生成部14は、生成した画像の一部を、拡大・縮小した画像を生成することができる。また、画像生成部14は、例えば、三次元画像において、様々な視点からみた画像を生成することができる。また、画像生成部14は、様々な視点から見た画像を生成して、二次元画像から三次元画像に変化するアニメーションを生成することができる。
【0036】
測長部15は、操作部(位置指定部)20によって指定された画像上の2点間の距離を測定することができる。また、測長部15は、指定された画像上の2点間のX軸に沿う距離を測定することができる。
【0037】
操作部20は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部10に出力する。操作部20の機能は、キーボード、マウス、タッチパネル型ディスプレイなどのハードウェアにより実現することができる。操作部20は、画像生成部14が生成した画像上の位置を指定することができる。操作部20は、指定した位置の情報を処理部10(測長部15)に出力する。
【0038】
表示部22は、処理部10によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。表示部22は、画像生成部14により生成された画像を表示することができる。また、表示部22は、マススペクトルを表示することができる。
【0039】
記憶部24は、処理部10のワーク領域となるもので、その機能はRAMなどにより実現できる。情報記憶媒体26(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部10は、情報記憶媒体26に格納されるプログラムに基づいて本実施形態の種々の処理を行う。情報記憶媒体26には、処理部10の各部としてコンピューターを機能させるためのプログラムを記憶することができる。
【0040】
2. 画像生成方法
次に、本実施形態に係る画像生成方法について説明する。本実施形態に係る画像生成方法は、本実施形態に係る画像生成装置を用いて行うことができる。図2は、本実施形態に係る画像生成方法の一例を示すフローチャートである。
【0041】
(1)まず、イオン強度データ取得部11が、質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む対象物質のイオン強度データを取得する(イオン強度データ取得工程S11)。
【0042】
図3は、イオン強度データ取得工程S11を説明するための図であり、対象物質のマススペクトルの一例を示す図である。
【0043】
本工程は、まず、図3に示すように、ユーザーが、対象物質の繰り返し構造を反映したイオンピークが現れる質量電荷比の範囲1を指定する。具体的には、例えば、処理部10が、情報記憶媒体26に格納された対象物質のイオン強度データ(マススペクトルデータ)に基づいて、表示部22に対象物質のマススペクトルを表示させる。ユーザーは、操作部20を操作することによって、表示部22に表示された対象物質のマススペクトルから、繰り返し構造を反映したイオンピークが現れる質量電荷比の範囲1を指定する。
【0044】
次に、イオン強度データ取得部11が、指定された質量電荷比の範囲1のイオン強度データを取得する。イオン強度データ取得部11は、情報記憶媒体26に格納されたイオン強度データを読み取ることにより、質量電荷比の範囲1に対応するイオン強度データを取得する。
【0045】
なお、質量電荷比の範囲1を指定する工程を行わずに、イオン強度データ取得部11が、情報記憶媒体26に格納されたイオン強度データの全部を取得してもよい。
【0046】
(2)次に、質量情報取得部12が、対象物質の繰り返し単位の質量情報を取得する(質量情報取得工程S12)。
【0047】
質量情報取得部12は、対象物質の繰り返し単位の質量情報を、例えば、ユーザーが操作部20を介して当該質量情報を入力することにより、取得することができる。また、例えば、物質と当該物質の繰り返し単位の質量とを関連付けたリストを予め情報記憶媒体26に格納しておいてもよい。このリストからユーザーが物質名を選択することによって、選択された物質の繰り返し単位の質量情報が質量情報取得部12に出力されて、質量情報取得部12が対象物質の繰り返し単位情報を取得することができる。
【0048】
対象物質の繰り返し単位の質量として、対象物質の繰り返し単位の精密質量を用いることができる。例えば、対象物質が脂質である場合、繰り返し単位の質量情報は、例えば、CH2の精密質量14.0157uである。また、対象物質の繰り返し単位情報は、対象物質の繰り返し単位の質量の整数倍(例えば、2倍)であってもよい。
【0049】
(3)次に、配列部13が、質量情報取得部12が取得した対象物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する(配列工程S13)。
【0050】
図4〜図6は、配列工程S13を説明するための図である。図4は、図3に示す範囲1を拡大して示す図である。図5(A)は、図4に示す質量電荷比の範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)を拡大して示す図であり、図5(B)は、図4に示す質量電荷比の範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)を拡大して示す図である。図6は、図5(A)に示すイオン強度データ(マススペクトルS1)と、図5(B)に示すイオン強度データ(スペクトルS2)を配列した図である。なお、以下に示す配列工程S13において、配列部13はイオン強度データに基づいて処理を行うが、図4〜図6では、イオン強度データを視覚的に捉えるために、イオン強度データをマススペクトルとして図示した。
【0051】
本工程は、具体的には、まず、図4に示すように、配列部13が、対象物質の繰り返し単位情報から、質量電荷比の範囲Dを設定する。図4の例では、質量電荷比の範囲Dは、対象物質の繰り返し単位の質量に対応している。すなわち、対象物質が脂質の場合、質量電荷比の範囲Dは、CH2の精密質量14.0157uである。なお、質量電荷比の範囲Dは、図示はしないが、対象物質の繰り返し単位の質量の整数倍(例えば2倍)であってもよい。
【0052】
次に、配列部13が、質量電荷比の範囲Dごとに、イオン強度データを分割する。図4の例では、配列部13は、質量電荷比の範囲Dごとに、イオン強度データ(マススペクトル)を、質量電荷比の範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)と、質量電荷比の範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)の2つに分割している。なお、イオン強度データの分割数は2つ以上であれば特に限定されない。配列部13は、図5(A)に示す、範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)と、図5(B)に示す、領域1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)と、を得ることができる。
【0053】
次に、図6に示すように、配列部13が、イオン強度データ(マススペクトルS1)およびイオン強度データ(マススペクトルS2)を、配列する。具体的には、配列部13は、範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)および範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)をそれぞれ軸A1に沿って並べて単位列を形成し、単位列(マススペクトルS1,S2)を軸A1と交差する軸A2に沿って配列する。軸A1と軸A2とは、例えば、直交している。配列部13は、単位列(マススペクトルS1,S2)を、質量電荷比の大きさに基づいて、配列する。具体的には、配列部13は、例えば、範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)の始点S1aの質量電荷比と、範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)の始点S2aの質量電荷比と、を比べて、その値が小さいほうから(図示の例ではマススペクトルS1から)順に、軸A2に沿ってならべる。
【0054】
図6の例では、配列部13は、範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)の始点S1aと、範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)の始点S2aとが、軸A2方向に揃う(軸A1の座標が互いに同じになる)ように配列する。配列部13は、同様に、範囲1aのイオン強度データ(マススペクトルS1)の終点S1aと、範囲1bのイオン強度データ(マススペクトルS2)の終点S2aとが、軸A2方向に揃う(軸A1の座標が互いに同じになる)ように配列する。なお、図6の例では、軸A3は、イオン強度データに対応するイオン強度を示している。軸A3は、例えば、軸A1および軸A2と直交している。
【0055】
(4)次に、画像生成部14が、配列されたイオン強度データ(マススペクトルS1,S2)に基づいて、画像を生成する(画像生成工程S14)。
【0056】
図7および図8は、画像生成部14が生成した画像の一例を示す図である。なお、上述した図3〜図6の例では、イオン強度データを2列に配列する場合について説明したが、図7および図8では、イオン強度データを30列に配列して画像を生成した例を示す。
【0057】
画像生成部14は、図7に示すように、軸A1をX軸とし、軸A2をY軸とし、軸A3を色の濃淡とする二次元画像を生成する。また、画像生成部14は、図8に示すように、軸A1をX軸とし、軸A2をY軸とし、軸A3をZ軸とする三次元画像を生成する。画像生成部14は、例えば、図6に示すように配列したイオン強度データを、三角形分割してデータポイント間のリンクを作成し、三次元画像を生成する。
【0058】
このように、画像生成部14が、軸A1をX軸とし、軸A2をY軸として画像を生成することにより、X軸が質量電荷比に対応し、Y軸が繰り返し構造の周期に対応する画像を生成することができる。なお、繰り返し構造の周期は、すなわち、繰り返し構造の数や、重合度に対応させることができる。
【0059】
画像生成部14は、例えば、イオンピークの位置(X座標、Y座標)が確認しやすい二次元画像を生成する。すなわち、画像上において、注目するイオンピークがどの列、どの行に属しているかが容易に確認できる二次元画像を生成する。具体的には、例えば、各座標に対応する領域(図示の例では、正方形の領域)を割り当て、当該領域ごとにイオン強度に対応する色(濃淡)を付ける。これにより、イオンピークの位置(座標)を明確にすることができる。このような二次元画像では、イオンピークのずれや周期、イオンピーク間の間隔等を容易に確認することができる。
【0060】
また、画像生成部15は、例えば、イオンピーク間を滑らかに接続した三次元画像を生成する。具体的には、例えば、隣接するイオンピーク間を補完することによって、隣接するイオンピーク間が滑らかに接続されるようにする。このような三次元画像では、イオンピークの強度分布(強度変化)を、容易に把握することができる。
【0061】
次に、表示部22が、画像生成部15が生成した画像を表示する。なお、画像生成部15が生成した画像を、例えば、紙等の媒体に出力してもよい。
【0062】
以上の工程により、繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成することができる。
【0063】
3.実施例
以下、実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0064】
3.1. 実施例1
(1)試料
試料(対象物質)として、ミコール酸(Mycobacterium tuberculosis)を用いた。図9は、ミコール酸の推定される構造を示す表である。ミコール酸を、MALDI−TOF MSで測定しマススペクトルを得た。
【0065】
図10は、ミコール酸のマススペクトルを示すグラフである。
【0066】
(2)画像生成条件
繰り返し単位の質量は、脂肪酸の繰り返し単位CH2の精密質量14.0157uを用いた。画像化した質量電荷比の範囲1は、1067.6037〜1503.0889の範囲とした。イオン強度データのデータポイント数は、106309である。
【0067】
(3)結果
図11は、本実施形態に係る画像生成装置を用いて、図10に示すミコール酸のマススペクトルから生成した二次元画像である。図12は、本実施形態に係る画像生成装置を用いて、図10に示すミコール酸のマススペクトルから生成した三次元画像である。なお、図11および図12では、イオン強度を色の濃淡で示しており、色が濃いほど、イオン強度が高い。また、図11において、点線で囲まれた部分は、同位体を示している。
【0068】
図11および図12に示す画像では、CH2の繰り返し構造により複数のイオンピークがY軸に沿って並んでいることを容易に確認することができる。さらに、文献(F. Laval, M. A. Laneelle, C. D´eon, B. Monsarrat, and M. Daffe. Accurate molecular mass determination of mycolic acids by maldi-tof mass spectrometry. Analytical Chemistry, 73(18):4537-4544, 2001.)で報告された、繰り返し構造のイオンピークの強度が1つおきに強くなる現象を容易に確認できる。
【0069】
さらに、図11に示す画像から末端基の情報が得られる。末端基の炭化水素に二重結合がある場合、水素原子2個分の2uだけ、質量が小さくなる。すなわち、図11に示す画像において、X軸方向の2uの差が二重結合の数の違いを表す。図11に示す画像では、B(1)とB(2)、およびB(4)とB(5)においてこのことが確認できる。
【0070】
このように、図11に示す画像では、脂質の末端基の違いを視覚化することができ、末端基の情報を容易に確認することができる。
【0071】
さらに、分子中のどの位置が修飾されているかを確認したい場合には、純物質や、MS/MSのマススペクトルが必要となるが、同様に本手法で解析することができる。
【0072】
3.2. 実施例2
次に、本手法を、質量分析装置における質量電荷比のキャリブレーションの確認方法として適用した例について説明する。
【0073】
(1)試料
キャリブレーションには、既知の物質であり、かつ、そのイオンピークが既知である試料を用いる。本実施例では、試料として、PMMA((Poly(methyl methacrylate))を用いた。
【0074】
PMMAを、質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態のMALDI−TOF MSで測定して、PMMAのマススペクトルを得た。
【0075】
図13は、質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトルを示すグラフである。
【0076】
次に、PMMAを、質量電荷比のキャリブレーションが不適切な状態のMALDI−TOF MSで測定して、PMMAのマススペクトルを得た。
【0077】
(2)画像生成条件
繰り返し単位の質量は、PMMAの繰り返し単位12C51H816O2の精密質量100.05243uを用いた。
【0078】
(3)結果
図14は、質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトル(図13に示すマススペクトル)から、本実施形態に係る画像生成装置を用いて生成した三次元画像である。図15は、質量電荷比のキャリブレーションが不適切な状態で測定を行った場合のPMMAのマススペクトルから、本実施形態に係る画像生成装置を用いて生成した三次元画像である。
【0079】
図14に示すように、質量電荷比のキャリブレーションが適切な場合、生成された三次元画像では、PMMAに由来するイオンピークがY軸に沿って並んでいることが確認できる。そして、PMMAに由来するイオンピークは、Y軸に沿って滑らかな曲線状に連なっていることが確認できる。しかしながら、図15に示すように、質量電荷比のキャリブレーションが不適切な場合、得られる三次元画像では、PMMAに由来するイオンピークが、滑らかな曲線状に連なっておらず、凹凸をもって連なっていることが確認できる。この凹凸は、隣接するイオンピークを接続する際に、繰り返し単位が一つ小さい(または一つ大きい)イオンのイオンピークが、三角形分割の隣接頂点に、出現しなかったため現れたものである。すなわち、この凹凸は、質量電荷比のキャリブレーションのずれを反映して現れたものである。
【0080】
このように、本実施形態に係る画像生成装置によって三次元画像を生成することにより、質量分析装置の質量電荷比のキャリブレーションが適切な状態か否かを、容易に確認することができる。
【0081】
本実施形態では、対象物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列し、配列したイオン強度データに基づいて、画像を生成する。これにより、イオン強度を、質量電荷比軸方向(図7、図8におけるX軸方向)だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向(図7、図8におけるY軸方向)にも展開した画像を得ることができる。
【0082】
ここで、従来のマススペクトル表示では、イオン強度を質量電荷比軸方向に展開していた。これに対して、本実施形態によれば、上述のように、イオン強度を、質量電荷比軸方向だけでなく、繰り返し構造の周期軸方向にも展開した画像を得ることができる。これにより、表示空間を効率よく使うことができ、多くの情報を効率よく表示することができる。そのため、従来のマススペクトル表示と比べて、繰り返し構造を有する物質において、その物性に関連する重要な情報である、繰り返し単位、イオン強度分布、末端基、修飾等の情報を容易に確認することができる。したがって、本実施形態によれば、繰り返し構造を持つ物質の解析を容易化することができる。
【0083】
また、従来のマススペクトル表示では、例えば、繰り返し構造に由来するイオンピークを1つ1つアサインしなければならなかった。これに対して、イオン強度を、質量電荷比軸方向、および繰り返し構造の周期軸方向に展開した画像では、例えば、同一の末端基を持つ物質のイオンピークがY軸に沿って並ぶため、このY軸に沿って並ぶイオンピーク群を一度にアサインすることができる。したがって、従来のマススペクトル表示と比べて、解析時間を短縮することができる。本実施形態によれば、従来のマススペクトル表示と比べて、解析時間を短縮することが可能な画像を生成することができる。
【0084】
また、イオン強度を、質量電荷比軸方向、および繰り返し構造の周期軸方向に展開した画像では、繰り返し構造の単位質量に対応する周期を持つイオンピークは、Y軸に沿って直線状に並ぶ。例えば、図11に示す二次元画像では、同一の末端基を持つ物質のイオンピークがY軸に沿って直線状に並んでいる。したがって、このような画像では、従来のマススペクトル表示と比べて、イオンピークのずれや周期性をより容易に確認できる。直線は、一次元視覚野で検出するため、ヒトの視覚情報処理において、高速な認識が可能である。そのため、直線状に並んだイオンピークは、ノイズの中からでも高速に認識することが可能である。
【0085】
また、イオン強度を、質量電荷比軸方向、および繰り返し構造の周期軸方向に展開した画像では、例えば、同位体のイオンピークが軸(Y軸)に沿って並ぶ。ここで、マススペクトルには、同位体のイオンピークが現れる。同位体のイオンピークは、解析の確度を上げるための情報として利用できる。しかしながら、同位体のイオンピークによって、マススペクトルは複雑になり、従来のマススペクトル表示では、解析が難しくなってしまう場合があった。イオン強度を、質量電荷比軸方向、および繰り返し構造の周期軸方向に展開した画像では、同位体のイオンピークが軸に沿って並ぶため、従来のマススペクトル表示を用いて解析を行う場合と比べて、解析が容易であり、解析の確度を向上させることができる。
【0086】
本実施形態によれば、軸A1をX軸とし、軸A2をY軸とし、イオン強度データに対応するイオン強度を色の濃淡とする二次元画像を生成することができる。これにより、例えば、イオンピークのずれや周期、イオンピーク間の間隔等の情報を容易に確認することが可能な画像を生成することができる。また、本実施形態の実施例で試料として用いた脂質は、生物学分野において解析することが多い。生物学分野で用いられる電気泳動ゲル(電気泳動法)では、一般的に、強度を色の濃淡で表すため、当該二次元画像は、この電気泳動法の測定結果の表し方と類似している。したがって、例えば、脂質の分析を行う場合、当該二次元画像は、生物学分野のユーザーが見慣れたものに類似しており、ユーザーが行う解析を促進させることができる。
【0087】
本実施形態によれば、軸A1をX軸とし、軸A2をY軸とし、イオン強度データに対応するイオン強度をZ軸とする三次元画像を生成することができる。これにより、例えば、イオン強度の変化(分布)等の情報を容易に把握することが可能な画像を生成することができる。
【0088】
本実施形態によれば、上述したように、二次元画像(図7参照)および三次元画像(図8参照)の両方を生成することができる。二次元画像では、イオン強度が色の変化であるため、イオン強度の変化が確認しづらい場合がある。これに対して、三次元画像では、Z軸でイオン強度を表しているため、イオン強度の変化が確認しやすい。また、三次元画像では、イオンピークのずれや周期、イオンピーク間の間隔を確認しづらい場合がある。また、隣接するレイヤーが重なるオクルージョンの問題がある。これに対して、二次元画像では、イオンピークのずれや周期、イオンピーク間の間隔が確認しやすい。また、オクルージョンの問題が生じない。このように、二次元画像と三次元画像の両方を生成できることにより、より解析を容易化することができる。
【0089】
本実施形態によれば、生成された画像上の2点間のX軸に沿う距離を測定することができる。これにより、ピーク間の質量電荷比の差を容易に確認できる。したがって、例えば、末端基や修飾の解析を容易に行うことができる。
【0090】
なお、上述した実施形態は一例であって、これらに限定されるわけではない。
【0091】
例えば、上述した実施形では、質量分析装置として、MALDI−MSを用いた例を説明したが、マススペクトルに繰り返し構造が現れれば前処理やイオン化法の組み合わせによらず適用可能である。
【0092】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0093】
S1,S2 マススペクトル、D,1,1a,1b 範囲、S1a,S2a 始点、
S1b,S2b 終点、A1,A2,A3 軸、10 処理部、
11 イオン強度データ取得部、12 質量情報取得部、13 配列部、
14 画像生成部、15 測長部、20 操作部、22 表示部、24 記憶部、
26 情報記憶媒体、100 画像生成装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成する画像生成装置であって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列部と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成部と、
を含む、画像生成装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記配列部は、前記所定の質量電荷比の範囲ごとに前記イオン強度データを第1軸に沿って並べて単位列を形成し、前記単位列を前記第1軸と交差する第2軸に沿って配列する、画像生成装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記画像生成部は、前記第1軸をX軸とし、前記第2軸をY軸とし、前記イオン強度データに対応する前記イオン強度を色の濃淡とする二次元画像を生成する、画像生成装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記画像生成部は、前記第1軸をX軸とし、前記第2軸をY軸とし、前記イオン強度データに対応する前記イオン強度をZ軸とする三次元画像を生成する、画像生成装置。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記画像生成部が生成した画像上の位置を指定するための位置指定部と、
前記位置指定部によって指定された2点間のX軸方向に沿う距離を測定する測長部と、
をさらに含む、画像生成装置。
【請求項6】
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成する画像生成方法であって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得工程と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得工程と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列工程と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成工程と、
を含む、画像生成方法。
【請求項7】
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成するプログラムであって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列部と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成部としてコンピューターを機能させる、プログラム。
【請求項1】
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成する画像生成装置であって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列部と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成部と、
を含む、画像生成装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記配列部は、前記所定の質量電荷比の範囲ごとに前記イオン強度データを第1軸に沿って並べて単位列を形成し、前記単位列を前記第1軸と交差する第2軸に沿って配列する、画像生成装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記画像生成部は、前記第1軸をX軸とし、前記第2軸をY軸とし、前記イオン強度データに対応する前記イオン強度を色の濃淡とする二次元画像を生成する、画像生成装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記画像生成部は、前記第1軸をX軸とし、前記第2軸をY軸とし、前記イオン強度データに対応する前記イオン強度をZ軸とする三次元画像を生成する、画像生成装置。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記画像生成部が生成した画像上の位置を指定するための位置指定部と、
前記位置指定部によって指定された2点間のX軸方向に沿う距離を測定する測長部と、
をさらに含む、画像生成装置。
【請求項6】
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成する画像生成方法であって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得工程と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得工程と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列工程と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成工程と、
を含む、画像生成方法。
【請求項7】
繰り返し構造を有する物質を解析するための画像を生成するプログラムであって、
質量電荷比に対するイオン強度の情報を含む前記物質のイオン強度データを取得するイオン強度データ取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報を取得する質量情報取得部と、
前記物質の繰り返し単位の質量情報に基づいて、前記イオン強度データを、所定の質量電荷比の範囲ごとに配列する配列部と、
配列された前記イオン強度データに基づいて、画像を生成する画像生成部としてコンピューターを機能させる、プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−44638(P2013−44638A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182459(P2011−182459)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
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