説明

画像生成装置、画像生成方法

【課題】3次元電子地図データから風景画像を作成する際の工数を低減することのできる技術を提供する。
【解決手段】3次元電子地図データから交差点の風景画像を生成する画像生成装置は、交差点に対する位置における全ての退出パターン毎に設定される、風景画像を生成するための生成条件に基づいて、3次元電子地図データから、全ての退出パターンに対応する風景画像を生成するレンダリング処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元電子地図データから画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータで利用可能に電子化された地図データは、インターネットにおける電子地図や、カーナビゲーションシステム等の地図表示装置で広く使用されている。また、このような場面において、近年では、建造物等を2次元で立体的に表示した地図画像も積極的に利用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−58093号公報
【特許文献2】特開2008−275560号公報
【0004】
このように、建造物等を立体的に表示した画像(以降、「風景画像」または単に「画像」とも呼ぶ。)の作成処理には多くの時間を要する。このため、例えば地図表示装置においては、予め多数の風景画像を作成しておき、これらの画像を地図表示装置に記憶させておくという手法が採用されている。この風景画像の作成は、オペレータがマニュアル操作で行うため、非常に工数を要するという問題があった。
【0005】
なお、このような問題は、地図表示装置において使用される風景画像に限らず、インターネットにおける電子地図で使用される風景画像にも共通する問題であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、3次元電子地図データから風景画像を作成する際の工数を低減することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
3次元電子地図データから交差点の風景画像を生成する画像生成装置であって、3次元電子地図データを予め記憶する3D地図記憶部と、前記交差点に対応する位置における全ての退出パターン毎に設定される、前記風景画像を生成するための生成条件を記憶する生成条件記憶部と、前記生成条件に基づいて、前記3次元電子地図データから、前記全ての退出パターンに対応する風景画像を生成するレンダリング処理を実行する画像生成部と、を備える画像生成装置。
この構成によれば、交差点に対応する位置における全ての退出パターン毎にレンダリング処理を行うことにより、全ての退出パターンに対応する風景画像を生成するので、3次元電子地図データから風景画像を作成する際の工数を低減することができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の図画像生成装置であって、さらに、前記画像生成部により生成された個々の風景画像に対して、該風景画像に関する前記生成条件を個別に調整するための調整条件を設定する調整条件設定部を備え、前記画像生成部は、前記調整条件が設定された風景画像について、前記3次元電子地図データを用いて、前記生成条件および前記調整条件に基づいた再レンダリング処理を行う画像生成装置。
この構成によれば、画像生成装置により生成された個々の風景画像に対して、該風景画像を個別に調整し、その調整条件を保存しておくことができる。このようにして保存された調整条件は、3次元電子地図データに変更があった場合等における再レンダリング処理に役立てることができる。
【0010】
[適用例3]
適用例1又は適用例2記載の画像生成装置であって、前記画像生成部は、処理対象となる交差点の進入側道路の道幅および車線数のうち少なくとも一方の情報に基づいて、進入方向が同一で退出方向が異なる複数のパターンに対応した異なる複数の風景画像を生成する第1の機能と、前記進入方向が同一で退出方向が異なる複数のパターンに対して共通の1つの風景画像を生成する第2の機能との少なくとも何れか一方を備える画像生成装置。
この構成によれば、交差点の進入側道路の道幅および車線数に基づいて、異なる複数の風景画像を生成する第1の機能と、共通の1つの風景画像を生成する第2の機能とを実現することができる。
【0011】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、本発明は、画像生成装置、画像生成システム、画像生成方法のほか、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例としての画像生成装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】交差点における進入方向と退出方向の組合せについての説明図である。
【図3】レンダリング処理および再レンダリング処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】右折方向と直進方向と左折方向にそれぞれ退出する場合のレンダリング後の風景画像を表す説明図である。
【図5】再レンダリング処理についての説明図である。
【図6】第2実施例における画像生成装置の概略構成を示す説明図である。
【図7】画像更新処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0014】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としての画像生成装置10の概略構成を示す説明図である。この画像生成装置10は、入力部100と、制御部200と、記憶部300とを備えたコンピュータである。入力部100は、例えば、マウスやキーボード等の入力装置から構成される。制御部200は、生成条件設定部210と、調整条件設定部220と、画像生成部230とを備えている。これら各部についての詳細は後述する。制御部200は、図示しないCPUと、ROMやRAM等の内部記憶装置を含んでいる。制御部200中の各部は、内部記憶装置(RAMまたはROM)に格納されている各種のプログラムを実行することにより、後述する様々な処理/機能を実現する。
【0015】
記憶部300は、設定ファイル310と、調整ファイル320と、3D地図データベース330と、誘導線データベース340と、生成画像データベース350とを備えている。この記憶部300は、ハードディスク、フラッシュメモリ、メモリカード等で構成される。設定ファイル310は、生成条件設定部210によって作成されたパラメータ群を記憶する機能を有する。調整ファイル320は、調整条件設定部220によって作成されたパラメータ群を記憶する機能を有する。3D地図記憶部としての3D地図データベース330には、3次元コンピュータグラフィックスとして整備された、実際の道路や建物の形状等を表すデータ(以降、「3次元電子地図データ」とも呼ぶ。)が予め格納されている。誘導線記憶部としての誘導線データベース340には、道路に存在する交差点に対する全ての進入方向と全ての退出方向を表す誘導線データが予め格納されている。生成画像データベース350には、画像生成部230によって生成された画像が格納される。
【0016】
図2は、交差点における進入方向と退出方向の組合せについての説明図である。図2では、一般的な十字路である交差点CRの場合を例示している。交差点CRには、道路の交わる点に対して4つの進入方向(IN、IW、IS、IE)がある。また、十字路の場合、ある進入方向に対しては3つの退出方向がある。例えば、方向ISから進入する場合は、右折方向ARへの退出と、直進方向ASへの退出と、左折方向ALへの退出がある。従って、交差点CRについての全ての進入方向と全ての退出方向の組合せにより構成される進入退出誘導線は、図2の場合、12種類(4×3)存在する。なお、組合せ数が12種類なのは十字路の場合であり、一方通行が存在する場合や五叉路等の場合は組合せ個数が異なる。
【0017】
図3は、レンダリング処理および再レンダリング処理の手順を示すフローチャートである。本実施例における「レンダリング処理」とは、3次元電子地図データから建造物等を2次元で立体的に表示した画像(以降、「風景画像」とも呼ぶ。)を生成する一連の処理を意味する。まず、生成条件設定部210は、風景画像の生成条件を作成するとともに、設定ファイル310へ記憶する(ステップS110)。具体的には、生成条件設定部210は、オペレータが入力部100から入力する生成条件の値から、3次元電子地図データをレンダリングする際の各種パラメータを作成し、設定ファイル310へ記憶する。各種パラメータには、例えば、画像をレンダリングする際の視点位置(座標、視線方向ベクトル)、焦点位置、エフェクト(効果)等がある。この生成条件は個々の交差点毎に設定することができ、その場合、交差点毎に異なる生成条件を用いたレンダリング処理が行われる。なお、生成条件設定部210と設定ファイル310とは、生成条件記憶部として機能する。
【0018】
ステップS110の処理が終了した後、画像生成部230は、画像生成(レンダリング)を行う(ステップS120)。具体的な処理の手順は次の通りである。
手順1)画像生成部230は、誘導線データベース340に格納された誘導線データから、各交差点に対する全ての進入退出誘導線(図2)を求める。
手順2)画像生成部230は、それら全ての進入退出誘導線に対して、3次元電子地図データを用いて、退出方向に応じた異なる複数の画像が生成されるようなレンダリングを行う。このレンダリングは、設定ファイル310中の各種パラメータに基づいて行われる。
【0019】
図4(A)、(B)、(C)は、方向ISから右折方向ARと直進方向ASと左折方向ALにそれぞれ退出する場合のレンダリング後の風景画像を表している。図4(A)は交差点を右折する場合であるため、誘導線DL1に沿った右折ルートを画像の中心に配置するようなレンダリングが行われる。図4(B)、(C)も同様である。このように、風景画像では、利用者の実際の視点と、画面に表示される画像とを一致させる目的から、退出方向毎に画像を変化させることが好ましい。なお、図4においては、誘導線DL1〜3が描画された状態の図を示したが、本実施例におけるレンダリング処理中における誘導線の描画は任意である。図4のように、レンダリング処理と併せて誘導線の描画を行ってもよいし、レンダリング処理では誘導線の描画を行わない風景画像を生成するものとしてもよい。
【0020】
なお、本実施例では、交差点毎に生成条件を設定し、その後、当該交差点における全ての進入退出誘導線に対して、退出方向に応じた異なる画像が生成されるようなレンダリング処理を行うものとした。しかし、交差点に対応する位置における全ての退出パターン毎に生成条件を設定し、その後、当該生成条件に基づいてレンダリング処理を行う構成とする(すなわち、進入退出誘導線を用いない構成とする)ことも可能である。
【0021】
図5は、再レンダリング処理についての説明図である。ステップS120(図3)の処理が終了した後、生成された個々の画像に対して、オペレータが個別に画像の確認と調整を行う。例えば、図5(A)のように、風景画像CP中に障害物BLが存在することによって、誘導線DLが見えづらい場合は、障害物BLを削除する。この場合には、障害物BLを表すデータを、レンダリング処理で利用しないことを示すパラメータが設定される。また、見通しが悪い交差点の場合はレンダリング時の視点位置(座標、視線方向ベクトル)を変更する。その他にも、3次元電子地図データをレンダリングする際の各種パラメータの調整をすることができる。このように、風景画像を個別に調整するための条件を「調整条件」とも呼ぶ。
【0022】
調整条件設定部220は、上記のようなオペレータによる調整内容を、入力部100を通じて受け付け、3次元電子地図データを再レンダリングする際の各種パラメータを作成する。また、当該条件を調整ファイル320へ記憶する(図3:ステップS130)。この調整ファイル320は、個々の画像とその調整条件とが関連付けられた形で保存される。例えば、調整条件と共に、交差点を識別するための識別記号と、その交差点の進入退出誘導線の識別記号とを保存することで、個々の画像が識別可能な形でデータを保存することができる。なお、調整条件設定部220と調整ファイル320とは、調整条件記憶部として機能する。
【0023】
ステップS130(図3)の処理が終了した後、画像生成部230は、画像生成(レンダリング)を行う(ステップS140)。具体的には、画像生成部230は、ステップS130で調整条件が入力された画像について、3次元電子地図データと、設定ファイル310と、調整ファイル320とを用いて、再度レンダリングを行う。図5(B)は、図5(A)について再レンダリング処理を行った後の風景画像ADJPを示している。
【0024】
以上のように、第1実施例では、各交差点に対する全ての進入方向と全ての退出方向の全組合せについて(換言すれば、交差点に対応する位置における全ての退出パターンについて)のレンダリング処理を自動で行うことにより風景画像を生成するので、3次元電子地図データから風景画像を作成する際の工数を低減することができる。また、生成された個々の画像に対して、当該画像を個別に調整し、その調整条件を保存しておくことができる。このようにして保存された調整条件は、3次元電子地図データに変更があった場合等における再レンダリング処理に役立てることができる。
【0025】
B.第2実施例:
図6は、第2実施例における画像生成装置10aの概略構成を示す説明図である。図1に示した第1実施例との違いは、制御部200に更新処理実行部240を備える点のみであり、他の構成や動作は第1実施例と同じである。更新処理実行部240は、3次元電子地図データに変更があった場合に、変更後の3次元電子地図データを用いて、変更があった交差点の画像を生成する画像更新処理を行う機能を有する。詳細については後述する。
【0026】
図7は、画像更新処理の手順を示すフローチャートである。まず、更新処理実行部240は、設定ファイル310に保存された生成条件と、調整ファイル320に保存された調整条件とを読み込む(ステップS210)。次に更新処理実行部240は、画像生成(レンダリング)を行う(ステップS220)。この際、更新処理実行部240は、3次元電子地図データからその内容に変更のあった交差点のみを抽出して、これらの交差点についてのみ画像の更新を実行することが好ましい。この更新処理において、調整条件が設定されている画像に関しては、更新処理実行部240は、調整条件と生成条件とに基づいたレンダリング処理を画像生成部230に実行させる。一方、調整条件が設定されていない画像に関しては、更新処理実行部240は、生成条件のみに基づいたレンダリング処理を画像生成部230に実行させる。
【0027】
このように、第2実施例においては、変更後の3次元電子地図データを用いて、調整条件が未設定である画像に関しては生成条件に基づいてレンダリング処理がされ、調整条件が設定されている画像に関しては生成条件と調整条件とに基づいてレンダリング処理がされるため、風景画像の再作成処理の自動化が可能となる。この結果、風景画像を作成する際の工数をさらに低減することができる。
【0028】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。例えば次のような変形も可能である。
【0029】
C1.変形例1:
上記実施例では、個々の交差点毎に生成条件を設定するものとした。しかし、この生成条件の設定範囲は任意に定めることができる。例えば、全ての交差点において共通の生成条件を設定するものとしてもよい。また、交差点をその種類によってカテゴリ分け(例えば、一般道における交差点か高速道路における分岐点か、進入側における右左折レーンの有無や車線数等の交差点の大きさ等)して、当該カテゴリごとに異なる生成条件を適用するものとしてもよい。
【0030】
C2.変形例2:
上記実施例では、生成条件設定部は設定ファイルを保存するものとしたが、この設定ファイルへの保存は任意である。例えば、全ての交差点において共通の生成条件を使用する場合等において、デフォルトの生成条件を生成条件設定部や画像生成部のモジュール中に格納し、この生成条件を用いてレンダリングを行う構成とすることも可能である。
【0031】
C3.変形例3:
上記実施例では、交差点に対応する位置における全ての退出パターンに対して異なる複数の画像が生成されるものとした。しかし、小さい交差点(例えば、交差点を形成する道路の道幅が狭い場合や、交差点への進入側道路の車線数が少ない場合等)においては、退出方向に関係なく、交差点の進入方向に対応した画像を生成するものとしてもよい。すなわち、この場合は、1つの進入方向に対して1つの画像を生成することとなり、図2の例ではIN、IW、IS、IE方向に対応した4枚の画像が生成される。このような場合を考慮すると、画像生成部は、処理対象となる交差点の進入側道路の道幅および車線数のうち少なくとも一方の情報に基づいて、進入方向が同一で退出方向が異なる複数のパターンに対応した異なる複数の風景画像を生成する第1の機能と、これらの複数のパターンに対して共通の1つの風景画像を生成する第2の機能との少なくとも何れか一方を選択して実行するようにしてもよい。こうすれば、交差点の進入側道路の道幅および車線数に基づいて、異なる複数の風景画像を生成する第1の機能と、共通の1つの風景画像を生成する第2の機能とを実現することができる。
【符号の説明】
【0032】
10、10a…画像生成装置、100…入力部、200…制御部、210…生成条件設定部、220…調整条件設定部、230…画像生成部、240…更新処理実行部、300…記憶部、310…設定ファイル、320…調整ファイル、340…誘導線データベース、350…生成画像データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元電子地図データから交差点の風景画像を生成する画像生成装置であって、
3次元電子地図データを予め記憶する3D地図記憶部と、
前記交差点に対応する位置における全ての退出パターン毎に設定される、前記風景画像を生成するための生成条件を記憶する生成条件記憶部と、
前記生成条件に基づいて、前記3次元電子地図データから、前記全ての退出パターンに対応する風景画像を生成するレンダリング処理を実行する画像生成部と、
を備える画像生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像生成装置であって、さらに、
前記画像生成部により生成された個々の風景画像に対して、該風景画像に関する前記生成条件を個別に調整するための調整条件を記憶する調整条件記憶部を備え、
前記画像生成部は、前記調整条件が設定された風景画像について、前記3次元電子地図データを用いて、前記生成条件および前記調整条件に基づいた再レンダリング処理を行う画像生成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の画像生成装置であって、
前記画像生成部は、処理対象となる交差点の進入側道路の道幅および車線数のうち少なくとも一方の情報に基づいて、進入方向が同一で退出方向が異なる複数のパターンに対応した異なる複数の風景画像を生成する第1の機能と、前記進入方向が同一で退出方向が異なる複数のパターンに対して共通の1つの風景画像を生成する第2の機能との少なくとも何れか一方を備える画像生成装置。
【請求項4】
3次元電子地図データから交差点の風景画像を生成する画像生成方法であって、
(a)コンピュータが、前記交差点に対応する位置における全ての退出パターン毎に設定される、前記風景画像を生成するための生成条件を記憶する工程と、
(b)コンピュータが、前記生成条件に基づいて、前記3次元電子地図データから、前記全ての退出パターンに対応する風景画像を生成するレンダリング処理を実行する工程と、
を実行する画像生成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate