説明

画像用シリコーン樹脂レンズ及びその製造方法

【課題】
アッベ数が高く、屈折率の温度変化率が小さい、優れた画像を与えるシリコーン樹脂レンズを提供する。さらに、設計通りの寸法を有する精密なレンズを得ることができる条件を提供する。
【解決手段】
シリコーン樹脂組成物を成形及び硬化してなるシリコーン樹脂レンズであって、400nmでの屈折率が1.5以上であり、400nmでの屈折率と596nmでの屈折率の比が1.01以上であり、アッベ数が45以上であり、且つ屈折率の温度変化率dn/dTの絶対値が250ppm/℃以下であるシリコーン樹脂レンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像用シリコーン樹脂レンズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CMOSセンサー等の画像を集光するためのレンズは、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明性の良好な熱可塑性樹脂を用いて成形されていた。この種のレンズは射出成形等の機械成形により容易に製造することができる。熱可塑性樹脂の射出成形は高温で溶融した樹脂を低温に設定された金型内に流し込み冷却固化するため、金型の温度を設定することで一定の収縮率を有する所望の成形物を得ることができる。
【0003】
しかし、近年ではこの種の画像用レンズを備えたCMOSセンサーパッケージを基板に実装する際、鉛フリーはんだを使用することが多くなってきた。その結果、実装温度が260℃と高温に設定される故、従来の熱可塑性樹脂から成る画像用レンズではリフロー時にレンズの変形や黄変の問題が発生している。また、LED素子として青色LEDを使用した場合、熱可塑性樹脂より成る画像用レンズは黄変や劣化が起こることも知られている。
【0004】
一方、耐紫外線、耐熱性に優れたシリコーン樹脂を用いた光学用レンズが報告されている(特許文献1〜3)。シリコーン樹脂は熱硬化性樹脂であるため高温に加熱されている金型内に樹脂を注入して反応固化させる。成形後に硬化反応を行うために成形温度以上の温度で数時間ポストキュアを行う結果、成形条件やポストキュア条件で樹脂の収縮率が変わり、設計通りの寸法を有する精密なレンズを得ることが非常に困難となる。
【0005】
良好な成形性を有するレンズ成形用シリコーン樹脂組成物として、フェニル系シリコーン樹脂を用いたLED用シリコーン樹脂レンズ及びその製造方法が報告されている(特許文献4〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−231002号公報
【特許文献2】特開2000−17176号公報
【特許文献3】特開2004−221308号公報
【特許文献4】特開2006−324596号公報
【特許文献5】特開2006−328102号公報
【特許文献6】特開2006−328103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらのフェニル系シリコーン樹脂は、屈折率は高いが光の副屈折が起きるためアッベ数が低く画像のゆがみが発生するという問題を有している。また、レンズを筐体に入れてリフローをかける時、筐体の膨張係数とシリコーンの膨張係数が異なるため樹脂が変形し、精密な画像を得られないといった問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、アッベ数が高く屈折率の温度変化率が小さい、優れた画像を与えるシリコーン樹脂レンズを見出した。また、さらに本発明は、シリコーン樹脂組成物の成形条件と成形収縮率の関係を詳細に検討し、設計通りの寸法を有する精密なレンズを得ることができる条件を見出した。
【0009】
即ち、本発明は、シリコーン樹脂組成物を成形及び硬化してなるシリコーン樹脂レンズであって、400nmでの屈折率が1.5以上であり、400nmでの屈折率と596nmでの屈折率の比が1.01以上であり、アッベ数が45以上であり、且つ屈折率の温度変化率dn/dTの絶対値が250ppm/℃以下であるシリコーン樹脂レンズである。
【0010】
さらに、本発明は、成形後の成形収縮率に対するポストキュア後の成形収縮率の比が0.8〜1.2となるシリコーン樹脂レンズの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリコーン樹脂レンズは、アッベ数が高く、屈折率の温度変化率が小さい。これにより、光の副屈折を軽減し画像のゆがみを抑制することができる。また、温度安定性に優れるためレンズを筐体に入れてリフローをかける時の樹脂レンズの変形を抑制することができ、精密な画像を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、寸法の正確性に画像用シリコーン樹脂レンズを提供することができる。本発明のシリコーン樹脂レンズは、画像用として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1及び参考例1〜3に示すシリコーン樹脂レンズの成形温度と収縮率の関係を示した図である。
【図2】図2は、本発明のシリコーン樹脂レンズの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のシリコーン樹脂レンズは、シリコーン樹脂組成物を硬化及び成形して成るシリコーン樹脂レンズであり、該シリコーン樹脂レンズの波長400nmで測定した屈折率R400と、波長596nmで測定した屈折率R596の比(R400/R596)が1.01以上、好ましくは1.01〜1.05であり、かつ400nmの屈折率R400が1.5以上、特に1.5〜1.6、さらには1.52〜1.59である。上記屈折率とすることにより、レンズの厚みを薄くすることができる。本発明でいう屈折率の値は、25℃においてプリズムカプラー法によって測定した値である。
【0014】
また、本発明のシリコーン樹脂レンズはアッベ数が45以上、好ましくは45〜65、より好ましくは50〜60であることを特徴とする。アッベ数(ν)とは、屈折率の波長依存性、すなわち光の分散の度合いを示すもので、次式で求めることができる。
ν=(n−1)/(n−n
ここで、n、n、nはそれぞれフラウンホーファー線のC線(656nm)、D線(589nm)、F線(486nm)に対する屈折率である。アッベ数が前記範囲内であるシリコーン樹脂レンズは、光の副屈折が少ないため画像のゆがみが抑制される。
【0015】
また、本発明のシリコーン樹脂レンズは屈折率の温度変化率(dn/dT)が小さいことを特徴とする。ここでいう温度Tに対する屈折率nの変化率の指標であるdn/dTとは、シリコーン樹脂レンズの屈折率(n)が温度(T)の変化に対しdn/dTの割合で変化することを示している。dn/dTの値は、各温度でシリコーン樹脂レンズの屈折率を測定し、屈折率の温度変化率を読みとることで求めることができる。本発明に係るシリコーン樹脂レンズは、このdn/dTの絶対値である|dn/dT|が250ppm/℃以下、好ましくは250〜50ppm/℃、より好ましくは200〜50ppm/℃である。屈折率の温度変化率dn/dTが上記範囲であれば、温度安定性に優れたシリコーン樹脂レンズを提供することができる。これによりレンズを筐体に入れてリフローをかける時の樹脂レンズの変形を抑制することができる。
【0016】
本発明のシリコーン樹脂レンズを形成するシリコーン樹脂組成物は、上記要件を満たす硬化物を与えるシリコーン樹脂組成物であればいかなるものでも使用することができるが、特に、三次元網目構造を有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含有するものが望ましく、特に、ヒドロシリル化反応で硬化するシリコーン樹脂組成物であることが好ましい。
【0017】
このようなシリコーン樹脂組成物としては、下記(A)〜(C)成分を含むシリコーン樹脂組成物がよい。
(A)下記平均組成式(1)で示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
[化1]
(RSiO1.5(RSiO)(RSiO0.5(1)
(式中、Rは炭素数2〜8のアルケニル基であり、Rは非置換又は置換のアルケニル基を含まない一価炭化水素基であり、k及びpは0、1又は2、但しk+p=2であり、q及びrは0、1〜3の整数、但しq+r=3であり、a、b及びcはモル比で(b+c)/a=0.01〜1、c/a=0.05〜3を満たす数であり、R及びRで示す基の総モル数に対する10〜80%がシクロアルキル基である)
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有し、(A)成分中のアルケニル基1当量あたり該水素原子を0.75〜2.0当量与える量のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)硬化触媒の触媒量
【0018】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0019】
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A)成分は下記平均組成式(1)で示され、三次元網目構造を有するオルガノポリシロキサンである。
[化2]
(RSiO1.5(RSiO)(RSiO0.5(1)
【0020】
式中、Rは炭素数2〜8、好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基であり、Rはアルケニル基を含まない、非置換又は置換の一価炭化水素基である。Rは、炭素数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。中でも、炭素数4〜8、好ましくは5〜6のシクロアルキル基であるのがよい。ただし、該オルガノポリシロキサンは、R及びRで示す基の総モル数に対する10〜80%、好ましくは15〜70%がシクロアルキル基である。シクロアルキル基が前記下限値未満では屈折率が低くレンズが厚くなってしまい、前記上限値超では立体障害が生じるため好ましくない。さらには、アルケニル基をR及びRで示す基の総モル数に対し2〜45%、好ましくは5〜30%で有するものがよい。アルケニル基が前記下限値未満では架橋点が少なく硬化物の強度が不足し、前記上限値超では硬化物が脆くなってしまう。該オルガノポリシロキサンは、シクロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンと、シクロアルキル基を含有しないオルガノポリシロキサンを併用して用いてもよい。
【0021】
式中、k及びpは0、1又は2、但しk+p=2であり、qは1〜3、rは0〜2の整数、但しq+r=3であり、a、b及びcはモル比で(b+c)/a=0.01〜1、好ましくは0.1〜0.5、c/a=0.05〜3、好ましくは0.1〜0.5を満たす数である。また、該オルガノポリシロキサンは、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜10,000の範囲にあるものが好適である。
【0022】
該オルガノポリシロキサンは、上記R2SiO1.5単位、R1SiO単位、RSiO0.5単位に加えて、さらに、二官能性シロキサン単位や三官能性シロキサン単位(すなわち、オルガノシルセスキオキサン単位)を本発明の目的を損なわない範囲で少量含有してもよい。
【0023】
該オルガノポリシロキサンは、上記RSiO1.5単位、RSiO単位、RSiO0.5単位の単位源となる化合物をa、b及びcが上記モル比となるように組み合わせ、例えば、酸の存在下で共加水分解反応を行なうことによって容易に合成することができる。
【0024】
SiO1.5単位源として、シクロへキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロへキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシランを用いることができる。
【0025】
SiO単位源として、下記のものを用いることができる。
【化3】

【0026】
SiO0.5単位源としては、下記のものを用いることができる。
【化4】

【0027】
また、本発明のシリコーン樹脂組成物は、上記三次元網目構造を有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンに変えて、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを使用することもできる。このような直鎖状オルガノポリシロキサンはアルケニル基を一分子中に2個以上有し、粘度が25℃で10〜1,000,000mPa・s、特に50〜100000mPa・sであれば、いずれのものでも使用することができる。
【0028】
中でも、下記平均組成式(2)で示されるオルガノポリシロキサンが好ましい。
[化5]
(R(RSiO(4−d−e−f)/2 (2)
【0029】
式(2)中、Rは炭素数4〜8、好ましくは5〜6のシクロアルキル基であり、Rは炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の、アルケニル基及びシクロアルキル基を除、非置換または置換の一価の炭化水素基であり、Rは炭素数2〜8、好ましくは2〜6のアルケニル基であり、dは0.3〜1.0、好ましくは0.4〜0.8、eは0.05〜1.5、好ましくは0.05〜1.0、fは0.05〜0.8、好ましくは0.05〜0.5の数であり、但しd+e+f=0.4〜2.0、より好ましくは0.5〜1.2である。但し、該オルガノポリシロキサンは、R、R及びRで示す基の総モル数に対する10〜80%、好ましくは15〜70%がシクロアルキル基である。さらには、アルケニル基をR、R及びRで示す基の総モル数に対し2〜45%、好ましくは5〜30%で有するものがよい。該オルガノポリシロキサンは、シクロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンと、シクロアルキル基を含有しないオルガノポリシロキサンを併用して用いてもよい。
【0030】
上記式(2)において、Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、及びシアノエチル基等が挙げられる。
【0031】
上記式(2)において、Rとしては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられ、ビニル基またはアリル基が望ましい。
【0032】
このようなオルガノシロキサンは、主鎖がジオルガノシロキサン単位(RSiO2/2単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(RSiO1/2単位)で封鎖された直鎖状構造を有するオルガノポリシロキサンであることが一般的である(Rは上記R、RまたはRのいずれかと同じ)。中でも下記一般式(3)で表される分子鎖両末端のケイ素原子上に各1個以上のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンであって、25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・s、好ましくは1000〜50000mPa・sのものが作業性、硬化性等の観点から好ましい。粘度は例えば回転粘度計等により測定することができる。尚、このオルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有してもよい。
【0033】
【化6】

式中、R、Rは上述したとおりであり、RはRまたはRである。gは1、2又は3であり、x、y及びzは0又は正の整数であり、但し、1≦x+y+z≦1,000を満足する数であり、xまたはyの少なくとも1つは1以上である。
【0034】
上記式(3)において、x、y及びzは、1≦x+y+z≦1,000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦x+y+z≦500、より好ましくは30≦x+y+z≦500であり、但し0.5<(x+y)/(x+y+z)≦1.0を満足する整数である。
【0035】
このような上記式(3)で表されるオルガノポリシロキサンとしては、具体的に下記のものを挙げられる。
【化7】

(上記式において、x、y、zは上述の通りである)
【0036】
【化8】

【0037】
該直鎖状オルガノポリシロキサンは上述した三次元網目構造のオルガノポリシロキサンと併用してもよい。その場合、直鎖状オルガノポリシロキサンは、三次元網目構造のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1〜50質量部、好ましくは5〜30質量部で含有されるのがよい。三次元網目構造のオルガノポリシロキサンの配合量が少なすぎると、硬化物の物理的強度及び表面のタック性の向上効果が十分達成されないため好ましくない。
【0038】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用するものであり、該成分中のケイ素原子に結合した水素原子(以下、SiH基)と(A)成分中のアルケニル基とが付加反応することにより硬化物を形成する。かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するものであればいずれのものでもよい。(B)成分の配合量は、上記(A)成分の中のアルケニル基1当量あたり、ケイ素原子に結合した水素原子を0.75〜2.0当量、好ましくは0.8〜1.5当量与える量とすればよい。
【0039】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(4)
[化9]
SiO(4−a−b−d)/2 (4)
(Rは炭素数4〜8のシクロアルキル基であり、Rは炭素数1〜10のアルケニル基及びシクロアルキル基を除く、置換または非置換の一価炭化水素基であり、a=0〜1.4、b=0.6〜1.5、d=0.05〜1.0であり、a+b+d=1.0〜2.5である)
で表されるものが好適に用いられる。
【0040】
式(4)において、Rは炭素数4〜8、好ましくは炭素数5〜6のシクロアルキル基であり、特に好ましくはシクロヘキシル基である。Rは炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜7の、アルケニル基及びシクロアルキル基を除く、置換または非置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基等の低級アルキル基、フェニル基等のアリール基など、前述した一般式(2)のRのために例示したものが挙げられる。また、a、b及びcは、aは0〜1.4、好ましくは0〜1.0の数、bは0.6〜1.5、好ましくは0.8〜1.2の数、dは0.05〜1.0、好ましくは0.3〜0.8の数であり、但しa+b+d=1.0〜2.5を満たす数である。分子中SiH基の位置は特に制限されず、分子鎖の末端であっても途中であってもよい。
【0041】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
【0042】
また、下記構造で示される単位を使用して得られるオルガノハイドロジェンポリシロキサンも用いることができる。
【化10】

【化11】

【化12】

【0043】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)が3〜100、好ましくは3〜10のものを使用するのがよい。
【0044】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、公知の方法により調製することができ、通常、RSiHCl、RSiCl、RSiCl、RSiHCl(Rは、上記RまたはRと同じ)のようなクロロシランを加水分解するか、加水分解して得られたシロキサンを、強酸触媒を用いて平衡化することにより得ることができる。
【0045】
尚、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、シクロアルキル基を有するものとシクロアルキル基を有さないものとを併用してもよい。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、R及びRで示される基の総モル数に対し、シクロアルキル基の総モル数が0〜60%、好ましくは5〜50%であることが(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとの相溶性に優れているため好ましい。
【0046】
(C)硬化触媒
硬化触媒は付加反応を促進するために配合され、白金系、パラジウム系、ロジウム系の触媒が使用できるが、コスト等の見地から白金族金属系触媒であることがよい。白金族金属系触媒としては、例えば、HPtCl・mHO、KPtCl、KHPtCl・mHO、KPtCl、KPtCl・mHO、PtO・mHO(mは、正の整数)等が挙げられる。また、前記白金族金属系触媒とオレフィン等の炭化水素、アルコールまたはアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を用いることができる。上記触媒は単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0047】
硬化触媒は、いわゆる触媒量で配合すればよい。例えば、前記(A)及び(B)成分の合計量100質量部に対し、白金族金属換算(質量)で好ましくは0.0001〜0.2質量部、より好ましくは0.0001〜0.05質量部となる量で使用される。
【0048】
シリコーン樹脂組成物は、上記(A)、(B)及び(C)成分を混合することで得ることができる。該シリコーン樹脂組成物は、シクロアルキル基を(A)成分及び(B)成分の合計質量に対し30〜80質量%、好ましくは30〜50質量%で含有するのがよい。前記下限値未満では屈折率が低くレンズが厚くなってしまい、前記上限値超では立体障害が生じるため好ましくない。また、シリコーン樹脂レンズのゆがみを低減するためには、シリコーン樹脂組成物中のフェニル基の含有量は限りなく0に近いことが望ましい。該シリコーン樹脂組成物を硬化及び成形してなるシリコーン樹脂レンズは、アッベ数が高く、屈折率の温度変化率が小さいシリコーン樹脂レンズとなる。
【0049】
上記シリコーン樹脂組成物は、上述した(A)、(B)及び(C)成分以外に、必要に応じて充填材や顔料、蛍光体、離型材、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤等の各種添加剤を配合することができる。これらの各種添加剤は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0050】
中でも、酸化防止剤はシリコーン樹脂組成物の耐熱性を向上するための耐熱劣化防止剤として使用する事ができる。このような酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤を配合する場合の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対し、0.001〜3質量部、好ましくは0.05〜1質量部、さらに好ましくは0.05〜0.1質量部である。配合量が前記上限値超では、残存した酸化防止剤が硬化後の樹脂の表面に析出するため好ましくなく、前記下限値未満では耐変色性が低下する。
【0051】
このような酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−プロパン−1,3−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−チオジ−p−クレゾール、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、2,2’−エチリデンビス[4,6−ジ−tert−ブチルフェノール]、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレン ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、6,6’−ジ−tert−ブチル−4,4’−チオジ−m−クレゾール、ジフェニルアミン、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応生成物、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−1−ベンゾピラン−6−オール、2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、ジドデシル3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネート等が例示される。これらの酸化防止剤は2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
シリコーン樹脂組成物の調製方法
シリコーン樹脂組成物は、上述した各成分を同時に、又は別々に、必要により加熱処理を加えながら攪拌、溶解、混合、及び分散させることにより調製されるが、通常は、使用前に硬化反応が進行しないように、成分(A)及び(C)と、成分(B)とを2液に分けて保存し、使用時に該2液を混合して硬化を行う。成分(B)と成分(C)を1液で保存すると脱水素反応を起こす危険性があるため、成分(B)と成分(C)を分けて保存するのがよい。また、アセチレンアルコール等の硬化抑制剤を少量添加して1液として用いることもできる。
【0053】
攪拌等の操作に用いる装置は特に限定されないが、攪拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。また、これら装置を適宜組み合わせてもよい。尚、得られたシリコーン樹脂組成物の回転粘度計により測定した25℃における粘度は、100〜10,000,000mPa・s、特には300〜500,000mPa・sであることが好ましい。
【0054】
このようにして得られるシリコーン樹脂組成物は、必要によって加熱することにより直ちに硬化することができる。本発明のシリコーン樹脂組成物の硬化条件は、公知の方法に準じ、用いる用途に応じて適宜選択すればよく、特に制限されるものではないが、通常、40〜250℃、好ましくは60〜200℃で、5分〜10時間、好ましくは30分〜6時間で硬化させることができる。
【0055】
シリコーン樹脂レンズの製造方法
シリコーン樹脂レンズは、上記シリコーン樹脂組成物を射出成形やトランスファー成形等で成形することによって製造する。成形物の硬化収縮率は成形条件、すなわち成形温度、成形圧力、成形時間に影響されるため、成形後の成形物の特性を確実に発揮させるために通常ポストキュアを行う。
【0056】
射出成形装置としては既存の射出成形装置を使用することができる。一般にシリコーン樹脂組成物は2液タイプのものが広く使用されるため、2液タイプの液状樹脂を供給できるシステムが搭載されている射出成形装置であれば特に制限されるものではない。射出成形の成形条件は、成形温度100℃〜170℃、好ましくは120℃〜150℃、射出圧力1〜100Mpa、成形時間0.5〜20分である。樹脂の成形収縮率は金型内での成形物の硬化度合いによって決まり、成形時間を長くすることで収縮率を小さくすることができるが、成形時間を長くすることは生産性低下の原因となることから望ましくない。
【0057】
シリコーン樹脂レンズは成形温度によって成形後の収縮率とポストキュア後の収縮率が異なるが、成形後の収縮率とポストキュア後の収縮率がほぼ同じ値となる成形温度が存在する(実施例1および図1参照)。成形収縮率はシリコーン樹脂組成物の反応性に関係するため、シリコーン樹脂組成物の硬化速度が速い場合は、収縮率がほぼ同じ値となる成形温度は低温になる。シリコーン樹脂は膨張係数が他の樹脂に比べ大きいことから、成形収縮率を制御して一定の寸法の成形物(即ち、レンズ)を成形することが困難であるが、収縮率がほぼ同じ値となる成形温度の条件下、あらかじめ収縮率を加味して製作した金型を使用することにより寸法精度の良いシリコーン樹脂レンズを製造することができる。
【0058】
特に、成形後の成形収縮率に対するポストキュア後の成形収縮率の比が0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1となる成形温度条件下にて成形することにより、寸法精度の良いレンズを提供することができ、目的とする寸法のレンズを適格に製造することができる。
【0059】
本発明のシリコーン樹脂レンズは、従来のシリコーン樹脂レンズと比較してアッベ数が高く、屈折率の温度変化率が低い。これにより、光の副屈折を軽減し、温度安定性に優れ、画像のゆがみが少ない、画像用として好適に使用できるレンズを提供することができる。また、本発明の製造方法によれば寸法の正確性に優れた画像用シリコーン樹脂レンズを提供することができる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。尚、下記の記載において、シクロアルキル基の含有量(%)は(A)オルガノシロキサンと(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対するシクロアルキル基の質量%である。
【0061】
[合成例1]
フラスコにキシレン1050g、水3652g、12MーHCl 2625g(31.5mol)を加え、シクロヘキシルトリメトキシシラン2146g(10.5mol)、ビニルジメチルクロロシラン543g(4.50mol)、キシレン1504gを混合したものを滴下した。滴下終了後3時間攪拌し、廃酸分離し水洗した。共沸脱水後にKOH6g(0.15mol)を加え、150℃で終夜加熱還流を行った。トリメチルクロロシラン27g、酢酸カリウム24.5gで中和し濾過後、溶剤を減圧留去し、下記構造で示される三次元網目構造のオルガノポリシロキサン(樹脂1)を合成した。ビニル当量は0.203mol/100gであった。
【化13】

x:y=7:3
【0062】
[合成例2]
フェニルトリクロルシラン698g、メチルビニルジクロルシラン169g、ジメチルジクロルシラン194g、及びトルエン530gからなる混合物を水2500g中に激しく撹拌しながら60分間で滴下した。更に60分間撹拌を行ったのち、中性となるまで水洗した。水洗後シロキサン濃度を25%のトルエン溶液とし、水酸化カリウム0.42gを添加し、加熱還流して5時間重合させた。ついでトリメチルクロルシラン13.8gを添加し、室温で60分間撹拌を行い、アルカリを中和した。その後、ろ過し、過熱減圧下でトルエンを留去し、透明な三次元網目構造のオルガノポリシロキサンを得た(樹脂4)。ビニル量当量は0.187mol/100gであった。
【0063】
[実施例1]
合成例1のオルガノポリシロキサン(樹脂1)100g、下記構造で示されるハイドロジェンポリオルガノシロキサン1を29.4g、
【化14】

白金含有量2%の塩化白金酸アルコール溶液0.1gを均一に混合し、液状シリコーンゴム用の射出成形装置(レンズ成形用の金型寸法は室温で直径が4.5mm(図2))を用い、成形温度165℃、射出圧力10MPaで3分間成形した。
【0064】
上記成形品の室温での寸法を測定し、成形収縮率(製品5個の平均値)を計算した。また、上記成形品をさらにポストキュア条件150℃、4時間にて硬化させ、該硬化物の室温での寸法を測定し、ポストキュア後の成形収縮率を計算した。また、実施例1のシリコーン樹脂組成物を、それぞれ成形温度140℃、150℃、180℃で成形した他は実施例1と同様の方法で成形した成形品の成形収縮率及びポストキュア後の収縮率を算出した(参考例1〜3)。
【0065】
尚、成形収縮率は下記式で計算した。下記式で室温とは25℃である。結果を表1及び図1に示す。
成形後の収縮率=[(室温での金型内のレンズ寸法−成形後のレンズ寸法)/室温での金型内のレンズ寸法]×100
ポストキュア後の収縮率=[(室温での金型内のレンズ寸法−ポストキュア後のレンズ寸法)/室温での金型内のレンズ寸法]×100
表1において収縮率比は、成形後の成形収縮率に対するポストキュア後の成形収縮率の比である。
【0066】
【表1】

【0067】
表1及び図1より、成形温度165℃で成形した成形品が成形後の収縮率に対するポストキュア後の収縮率の比が最も1.0に近い。該成形温度で成形することにより、寸法変化がほとんどない精度の良好なレンズを製造することが可能となる。以下、165℃を成形温度として各シリコーン樹脂レンズを成形した。
【0068】
[実施例2]
下記式で示される粘度が4000mPa・sオルガノポリシロキサン(樹脂2)100g、
【化15】

下記式で示されるハイドロジェンポリオルガノシロキサン2を2.55g、
【化16】

白金含有量2%の塩化白金酸アルコール溶液0.1gを均一に混合し、実施例1と同様の方法によりシリコーン樹脂レンズを成形した。
【0069】
[比較例1]
下記式で示される粘度が5,000mPa・sのオルガノポリシロキサン(樹脂3)100g、
【化17】

(n=450、MW=33486、SiVi基当量=0.006mol/100g)
下記式で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン3を0.4g、
【化18】

白金含有量2%の塩化白金酸アルコール溶液0.1gを均一に混合し、実施例1と同様の方法によりシリコーン樹脂レンズを成形した。
【0070】
[比較例2]
合成例2のオルガノシロキサン(樹脂4)を100g、下記に示すオルガノハイドロジェンポリシロキサン4を30g、
【化19】

白金含有量2%の塩化白金酸アルコール溶液0.1gを均一に混合し、実施例1と同様の方法によりシリコーン樹脂レンズを成形した。
【0071】
上記実施例1、2及び比較例1、2のシリコーン樹脂レンズの特性を以下の方法により測定した。結果を表2に示す。
【0072】
屈折率
2010プリズムカプラー(メトリコン社製)により、測定温度23〜100℃にて、波長429.5nm、539.0nm、632.8nmの波長における屈折率を測定し、セルマイヤーの式(R(λ)=a+b/(λ2−c2))を用いて分散曲線を計算し、波長400nm、596nmにおける屈折率を求めた。該測定値より、波長400nmで測定した屈折率R400と波長596nmで測定した屈折率R596の比(R400/R596)を求めた。
【0073】
アッベ数の測定
2010プリズムカプラー(メトリコン社製)により、測定温度23〜100℃にて、波長429.5nm、539.0nm、632.8nmの波長における屈折率を測定し、セルマイヤーの式(R(λ)=a+b/(λ2−c2))を用いて分散曲線を計算し、波長486nm、589nm、656nmにおける屈折率を求めた。各々をn(486)、n(589)、n(656)とし、下式からアッベ数を求めた。
アッベ数=(n(589)−1)/(n(486)−n(656))
【0074】
屈折率の温度変化率の測定
2010プリズムカプラー(メトリコン社製)により測定温度25℃から100℃で、波長632.8nmにおける屈折率を測定し、温度(T)に対する屈折率(n)の変化率dn/dTを求めた。
【0075】
【表2】

【0076】
表2より、本発明のシリコーン樹脂レンズは、屈折率が高く、かつアッベ数が低く屈折率の温度変化率が小さい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のシリコーン樹脂レンズは、光の副屈折を軽減し画像のゆがみを抑制することができる。また、温度安定性に優れるレンズである。これにより、精密な画像を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、寸法の正確性に優れた画像用シリコーン樹脂レンズを提供することができる。本発明のシリコーン樹脂レンズは、画像用レンズとして好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂組成物を成形及び硬化してなるシリコーン樹脂レンズであって、400nmでの屈折率が1.5以上であり、400nmでの屈折率と596nmでの屈折率の比が1.01以上であり、アッベ数が45以上であり、且つ屈折率の温度変化率dn/dTの絶対値が250ppm/℃以下であるシリコーン樹脂レンズ。
【請求項2】
シリコーン樹脂組成物が三次元網目構造を有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含有する請求項1に記載のシリコーン樹脂レンズ。
【請求項3】
シリコーン樹脂組成物が下記成分を含むことを特徴とする請求項2に記載のシリコーン樹脂レンズ。
(A)下記平均組成式(1)で示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
[化1]
(RSiO1.5(RSiO)(RSiO0.5(1)
(式中、Rは炭素数2〜8のアルケニル基であり、Rはアルケニル基を含まない、非置換又は置換の一価炭化水素基であり、k及びpは0、1又は2、但しk+p=2であり、qは1〜3、rは0〜2の整数、但しq+r=3であり、a、b及びcはモル比で(b+c)/a=0.01〜1、c/a=0.05〜3を満たす数であり、R及びRで示す基の総モル数に対する10〜80%がシクロアルキル基である)
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有し、(A)成分中のアルケニル基1当量あたり該水素原子を0.75〜2.0当量与える量のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)硬化触媒の触媒量
【請求項4】
(A)成分と(B)成分の合計質量に対しシクロアルキル基を30〜80質量%で含有することを特徴とする請求項3に記載のシリコーン樹脂レンズ。
【請求項5】
成形後の成形収縮率に対するポストキュア後の成形収縮率の比が0.8〜1.2となる条件で請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂レンズを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−8201(P2012−8201A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141689(P2010−141689)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】