説明

画像空間超解像装置及びプログラム

【課題】入力画像に含まれる雑音レベルを考慮することにより、高画質の超解像画像を生成する。
【解決手段】画像空間超解像装置1は、入力画像から高周波成分画像を抽出する第1高周波成分抽出部11、及び高周波成分画像の雑音レベルを検出する雑音レベル解析部12を有する雑音レベル検出部10と、入力画像から高周波成分画像を抽出する第2高周波成分抽出部21、高周波成分画像の拡大画像を生成する高周波成分拡大部22、雑音レベル検出部10から雑音レベルを取得し、該雑音レベルが大きいほどフィルタの標準偏差として小さい値を生成する標準偏差決定部25、高周波成分画像の拡大画像を標準偏差決定部25にて生成された標準偏差を有するフィルタにより平滑化する高周波成分平滑化部23、及び平滑化された拡大画像を用いて入力画像を超解像処理して超解像画像を生成する周波数成分再構成部24を有する雑音考慮型超解像処理部20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力画像の超解像画像を生成する画像空間超解像装置、及びそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置及び表示装置の高精細化が進んでおり、いわゆる4Kシステムと呼ばれるデジタルシネマのような高精細映像、又は8Kシステムと呼ばれるスーパーハイビジョン(SHV)のような超高精細映像は、従来のハイビジョン(HDTV)映像の4倍ないし16倍の高解像度を有するに至っている。高精細画像は膨大な情報量を持つため、送信装置側では低解像度の画像を送信し、受信装置側で低解像度の画像から高解像度の画像を生成する超解像と称される画像の高解像化技術が研究されている。
【0003】
例えば、あらかじめ変換対象フレーム上に点(仮対応点)を設定し、各仮対応点に対応する他のフレーム上の画素(対応画素)を求め、その対応画素を基準として仮対応点の位置を対応画素に合うように修正するか、他のフレームの画像上で正確なサブピクセル位置を求め、その位置に対応する画素値を補間生成し、また、対応画素を求める際、利用可能な他のフレームのすべてに適当な範囲を設定し、その各画素を対応画素の候補としたうえで、設定した候補のうち対応する可能性が十分に高い(相対的に信頼性が高い)ものだけを残し、それ以外の(相対的に信頼性が低い)候補を排除することにより、他のフレームすべてのうちで相対的に信頼性が高い候補だけを残すことができ、ノイズが混入する可能性を軽減可能とした解像度変換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、基準となる入力画像フレーム上の画像データと他の入力画像フレーム上の対応する各画像データを用いてサンプリング位相差を推定し、サンプリング位相差を変換し、変換後のサンプリング位相差を出力し、変換後のサンプリング位相差の情報を用いて各入力画像フレームの画像データを動き補償するとともに画素数を増加し、画素数が増加された各画像フレームの画像データを所定量位相シフトし、位相シフトの前後の各画像データに、サンプリング位相差の情報を用いて決定した係数を乗じて加算することにより、折返し成分を除去して超解像画像を出力する解像度変換装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−34696号公報
【特許文献2】特開2009−94593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、原画像を信号成分と雑音成分とを区別することなく超解像処理していた。雑音にはその発生原因により様々な種類がある。例えば、白色雑音は全周波数帯域にほぼ均等にパワーを持つ。一方、画像の信号成分は、一般的に空間低周波成分のパワーが高く、空間高周波成分のパワーが低い。このため、画像信号が白色雑音を含む場合は、空間高波成分のSNR(信号対雑音比)が低くなる。SNRが低い空間高周波数帯は、画像超解像処理において画質劣化の原因となる。そのため、画像に雑音成分が多い場合には、十分な超解像画質が得られないという課題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を鑑みて為されたものであり、入力画像に含まれる雑音レベルを考慮することにより、高画質の超解像画像を生成することが可能な画像空間超解像装置、及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像空間超解像装置は、入力画像に含まれる雑音レベルを考慮して、入力画像の超解像画像を生成する画像空間超解像装置であって、前記入力画像を多重解像度解析して高周波成分の画像を抽出する第1高周波成分抽出部、及び、前記第1高周波成分抽出部により抽出された高周波成分の画像の雑音レベルを検出する雑音レベル解析部、を有する雑音レベル検出部と、前記入力画像を多重解像度解析して高周波成分の画像を抽出する第2高周波成分抽出部、前記第2高周波成分抽出部により抽出された高周波成分の画像をアップサンプリングし、該高周波成分の拡大画像を生成する高周波成分拡大部、前記雑音レベル検出部から前記雑音レベルを取得し、該雑音レベルが大きいほど、平滑化フィルタの標準偏差として小さい値を生成する標準偏差決定部、前記高周波成分拡大部により生成された拡大画像を、前記標準偏差決定部により生成された標準偏差を有する平滑化フィルタにより平滑化する高周波成分平滑化部、及び、前記高周波成分平滑化部により平滑化された拡大画像を用いて前記入力画像を超解像処理して超解像画像を生成する周波数成分再構成部、を有する雑音考慮型超解像処理部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る画像空間超解像装置において、前記第1高周波成分抽出部は、前記入力画像を空間方向に多重解像度解析するか、又は前記入力画像を時間方向及び空間方向に多重解像度解析して前記高周波成分の画像を抽出し、第2高周波成分抽出部は、前記入力画像を空間方向に多重解像度解析して前記高周波成分の画像を抽出することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る画像空間超解像装置において、前記雑音レベル解析部は、前記第1高周波成分抽出部により抽出された高周波成分の画像の孤立点位置を抽出する孤立点位置抽出部と、前記第1高周波成分抽出部により抽出された高周波成分の画像について、前記孤立点位置抽出部により抽出された孤立点位置における画素値に基づく値を前記雑音レベルとする雑音レベル算出部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る画像空間超解像装置において、前記雑音レベル検出部により検出された各時空間高周波成分の雑音レベルを取得し、入力画像に含まれる雑音レベルのパワーが所定の閾値以上であるか否かの判定を行う雑音レベル判定部を備え、前記高周波成分平滑化部は、前記雑音レベル判定部により入力画像に含まれる雑音レベルのパワーが所定の閾値以上であると判定された場合には、前記標準偏差決定部により生成された標準偏差を有する平滑化フィルタにより平滑化し、前記雑音レベル判定部により入力画像に含まれる雑音レベルのパワーが所定の閾値未満であると判定された場合には、一定の値の標準偏差を有する平滑化フィルタにより平滑化することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明に係る画像空間超解像装置において、前記雑音レベル判定部は、前記各時空間高周波成分の雑音レベルから雑音レベルのパワースペクトル密度を求めることにより、入力画像に含まれる雑音レベルのパワーが所定の種類のノイズの雑音レベルのパワー以上であるか否かの判定を行うことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る画像空間超解像生成プログラムは、コンピュータを、上述した画像空間超解像装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、入力画像に含まれる雑音レベルを考慮することにより、高画質の超解像画像を生成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による実施例1の画像空間超解像装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による実施例1の画像空間超解像装置における雑音レベル検出部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明による実施例1の画像空間超解像装置における雑音レベル検出部の高周波成分抽出処理を説明する図である。
【図4】本発明による実施例1の画像空間超解像装置における雑音レベル検出部の孤立点抽出処理を説明する図である。
【図5】本発明による実施例1の画像空間超解像装置における雑音考慮型超解像処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明による実施例1の画像空間超解像装置における雑音考慮型超解像処理部の動作を説明する図である。
【図7】本発明による実施例2の画像空間超解像装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明による実施例2の画像空間超解像装置における超解像処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明による実施例2の画像空間超解像装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明による実施例1の画像空間超解像装置について、以下に説明する。図1は、本発明による実施例1の画像空間超解像装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像空間超解像装置1は、雑音レベル検出部10と、雑音考慮型超解像処理部20とを備え、入力画像に含まれる雑音レベルを考慮した超解像画像を生成する。
【0018】
雑音レベル検出部10は、入力画像を多重解像度解析して高周波成分を抽出し、高周波成分の画像に含まれる雑音成分の大きさを示す雑音レベルを帯域成分ごとに検出して雑音考慮型超解像処理部20に出力する。詳細については後述する。
【0019】
雑音考慮型超解像処理部20は、入力画像を多重解像度解析して高周波成分を抽出し、高周波成分の画像を平滑化フィルタにより平滑化する。そして、平滑化した高周波成分の画像を用いて入力画像を超解像処理して超解像画像を生成する。雑音考慮型超解像処理部20は、高周波成分の画像を平滑化する際に、雑音レベル検出部10により生成された雑音レベルが大きいほど、平滑化フィルタの標準偏差の値を小さくする。これにより、雑音考慮型超解像処理部20は、入力画像に含まれる雑音レベルを考慮した超解像画像を生成することができる。詳細については後述する。
【0020】
雑音レベル検出部10の詳細について、図2から図4を参照して説明する。図2は、雑音レベル検出部10の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、雑音レベル検出部10は、第1高周波成分抽出部11と、雑音レベル解析部12とを有する。第1高周波成分抽出部11は、時間周波数分解部111と、空間周波数分解部112とを有し、入力画像を多重解像度解析して高周波成分の画像を抽出する。雑音レベル解析部12は、孤立点位置抽出部121と、雑音レベル算出部122とを有し、第1高周波成分抽出部11により抽出された高周波成分の画像の雑音レベルを検出する。以下の実施例では、多重解像度解析の一例としてウェーブレット解析を用いるが、これに限られるものではない。
【0021】
時間周波数分解部111は、入力画像を時間方向にウェーブレット分解して、時間低周波成分の画像、及び時間高周波成分の画像を生成する。そして、時間高周波成分の画像を空間周波数分解部112に出力する。ウェーブレット分解の階数は、どの程度の周波数帯域まで高周波成分として抽出するかに応じて決定される。なお、ウェーブレット分解では一般的にデシメーションされることが多いが、孤立点位置抽出部121にて、各周波数帯域について同一サイズの領域内で同様に孤立点判定できるようにするために、デシメーション無しのウェーブレット分解を行い、生成される各周波数帯域の画像のサイズを同一としてもよい。
【0022】
空間周波数分解部112は、時間周波数分解部111により生成された時間高周波成分について、空間方向にウェーブレット分解して時空間低周波成分の画像、及び時空間高周波成分の画像を生成する。そして、時空間高周波成分の画像を孤立点位置抽出部121、及び雑音レベル算出部122に出力する。時間周波数分解部111と同様に、ウェーブレット分解の階数は、どの程度の周波数帯域まで高周波成分として抽出するかに応じて決定される。なお、時間周波数分解部111と同様に、デシメーション無しのウェーブレット分解を行い、生成される各周波数帯域の画像のサイズを同一としてもよい。
【0023】
図3は、時間周波数分解部111及び空間周波数分解部112の動作を説明する図である。図3(a)は、時間周波数分解部111が、入力画像を時間方向に1階ウェーブレット分解して時間低周波成分の画像、及び時間高周波成分の画像(斜線部分)を生成する様子を示している。
【0024】
図3(b)は、空間周波数分解部112が、時間周波数分解部111により生成された時間高周波成分の画像を空間方向にデシメーション有りの2階ウェーブレット分解して時空間低周波成分の画像、及び時空間高周波成分の画像(斜線部分)を生成する様子を示している。空間方向にn階ウェーブレット分解した場合、3n個の帯域の高周波成分が生成される。雑音レベル検出部10は、3n個の各周波数帯域の高周波成分について、それぞれ雑音レベルを出力する。
【0025】
なお、図2、3に示す例では、時間周波数分解部111及び空間周波数分解部112により、時間方向及び空間方向にウェーブレット分解して高周波成分の画像を抽出したが、時間周波数分解部111を設けずに、空間周波数分解部112により空間方向にのみにウェーブレット分解して高周波成分の画像を抽出するようにしてもよい。
【0026】
孤立点位置抽出部121は、空間周波数分解部112により抽出された時空間高周波成分の各帯域成分の画像について、所定の閾値Thを超える画素の画素値を1とし、閾値Th以下の画素の画素値を0とする2値化画像Bを生成する。閾値Thは、例えば各帯域成分の非零の全要素値の中央値又は平均値とする。
【0027】
そして、孤立点位置抽出部121は、2値化画像Bの画素値が1である画素について、該画素を中心とする所定の判定領域内の画素値の合計値と、所定の閾値Thとを比較する。2値化画像Bの判定領域内の画素値の合計値が閾値Thを超える場合には、当該画素は孤立点ではないと判定し、2値化画像Bの判定領域内の画素値の合計値が閾値Th以下である場合には、当該画素を孤立点と判定する。そして、孤立点であると判定した画素の位置情報(孤立点画素位置情報)を雑音レベル算出部122に出力する。
【0028】
図4は、孤立点位置抽出部121の孤立点判定の動作例を説明する図であり、2値化画像Bの一例を示している。図4に示す例では、判定領域は3×3画素である。閾値Thを1とすると、2値化画像Bの画素値が1となる画素の周囲の8画素の画素値が0であるときのみ、2値化画像Bの画素値が1である画素を孤立点とみなす。よって、閾値Th=1の場合、図中の画素P1は孤立点であると判定され、画素P2とP3は孤立点と判定されない。
【0029】
雑音レベル算出部122は、空間周波数分解部112により生成された時空間高周波成分の各帯域成分の画像について、孤立点位置抽出部121から入力される孤立点画素位置情報に基づいて、孤立点と判定された画素位置の画素値を取得し、取得した画素値に基づく値(例えば、非零要素の平均値又は中央値)を、各帯域成分の雑音レベルとして検出する。これは、時空間高周波成分の孤立点成分は、少量の動領域のエッジ成分を除けば、ほとんど雑音成分だからである。
【0030】
次に、雑音考慮型超解像処理部20の詳細について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、雑音考慮型超解像処理部20の概略構成を示すブロック図である。図5に示すように、雑音考慮型超解像処理部20は、第2高周波成分抽出部21と、高周波成分拡大部22と、高周波成分平滑化部23と、周波数成分再構成部24と、標準偏差決定部25とを備える。図6は、雑音考慮型超解像処理部20の動作を説明する図である。
【0031】
第2高周波成分抽出部21は、入力画像を空間方向に1階ウェーブレット分解し、空間低周波成分の画像LL、水平方向高周波成分の画像LH、垂直方向高周波成分の画像HL、及び斜め方向高周波成分の画像HHを生成する(ステップS101)。そして、高周波成分の画像、すなわち水平方向高周波成分の画像LH、垂直方向高周波成分の画像HL、及び斜め方向高周波成分の画像HHを高周波成分拡大部22に出力する。
【0032】
高周波成分拡大部22は、第2高周波成分抽出部21により生成された水平方向高周波成分の画像LH、垂直方向高周波成分の画像HL、及び斜め方向高周波成分の画像HHをそれぞれ拡大処理(アップサンプリング)する(ステップS102,103,104)。そして、水平方向高周波成分の画像LHの拡大画像(水平方向高周波成分拡大画像Ex.LH)、垂直方向高周波成分の画像HLの拡大画像(垂直方向高周波成分拡大画像Ex.HL)、及び斜め方向高周波成分の画像HHの拡大画像(斜め方向高周波成分拡大画像Ex.HH)を高周波成分平滑化部23に出力する。
【0033】
具体的には、高周波成分拡大部22は、図6に示すように、垂直方向高周波成分の画像HLを拡大する場合には、垂直方向高周波成分の画像HLを空間低周波成分とし、空間高周波成分を零とした画像に対して空間方向に1階ウェーブレット再構成を行い、垂直方向高周波成分拡大画像Ex.HLを生成する。同様に、水平方向高周波成分の画像LHを拡大する場合には、水平方向高周波成分の画像LHを空間低周波成分とし、空間高周波成分を零とした画像に対して空間方向に1階ウェーブレット再構成を行い、水平方向高周波成分拡大画像Ex.LHを生成する。斜め方向高周波成分の画像HHを拡大する場合には、斜め方向高周波成分の画像HHを空間低周波成分とし、空間高周波成分を零とした画像に対して空間方向に1階ウェーブレット再構成を行い、斜め方向高周波成分拡大画像Ex.HHを生成する。
【0034】
標準偏差決定部25は、高周波成分平滑化部23で用いる平滑化フィルタの標準偏差σを帯域成分ごとに決定し、高周波成分平滑化部23に出力する(ステップS105,106,107)。具体的には、標準偏差決定部25は、雑音レベル検出部10から各帯域成分の雑音レベルを取得し、雑音レベルが高いほど標準偏差σを小さくする。
【0035】
高周波成分平滑化部23は、高周波成分拡大部22により生成された、水平方向高周波成分拡大画像Ex.LH、垂直方向高周波成分拡大画像Ex.HL、及び斜め方向高周波成分拡大画像Ex.HHをそれぞれ、標準偏差決定部25により生成された標準偏差を有する平滑化フィルタにより平滑化する(ステップS105,106,107)。そして、平滑化された水平方向高周波成分拡大画像Ex.LH’、平滑化された垂直方向高周波成分拡大画像Ex.HL’、及び平滑化された斜め方向高周波成分拡大画像Ex.HH’を周波数成分再構成部24に出力する。平滑化フィルタとしては、例えば、確率密度関数をガウシアンとし、ガウシアンの標準偏差をσとしたバイラテラルフィルタを用いる。なお、バイラテラルフィルタは一例であり、ガウシアンフィルタなどの他の平滑化フィルタを用いてもよい。
【0036】
周波数成分再構成部24は、高周波成分平滑化部23により平滑化された水平方向高周波成分拡大画像Ex.LH’、平滑化された垂直方向高周波成分拡大画像Ex.HL’、及び平滑化された斜め方向高周波成分拡大画像Ex.HH’と、入力画像とを用いて再構成処理を行い、超解像画像を生成する(ステップS108)。
【0037】
具体的には、周波数成分再構成部24は、図6に示すように、入力画像を空間低周波成分とし、平滑化された水平方向高周波成分拡大画像Ex.LH’、平滑化された垂直方向高周波成分拡大画像Ex.HL’、及び平滑化された斜め方向高周波成分拡大画像Ex.HH’を、それぞれ水平方向高周波成分、垂直方向高周波成分、及び斜め方向高周波成分とした画像に対して、空間方向に1階ウェーブレット再構成を行い、超解像画像を生成する。
【0038】
このように、画像空間超解像装置1は、雑音レベル検出部10により、入力画像を多重解像度解析して高周波成分の画像を抽出し、該抽出した高周波成分の画像の雑音レベルを検出する。また、雑音考慮型超解像処理部20により、入力画像を多重解像度解析して高周波成分の画像を抽出し、該抽出した高周波成分の画像をアップサンプリングし、該アップサンプリングした高周波成分の画像を平滑化フィルタにより平滑化した画像を用いて入力画像を超解像処理して超解像画像を生成する。その際、雑音考慮型超解像処理部20は、雑音レベル検出部10により検出された雑音レベルが大きいほど、平滑化フィルタの標準偏差を小さくする。これにより、雑音レベルが高い時空間高周波成分については平滑化フィルタの標準偏差が小さくなり、雑音(孤立点)の平滑効果(低域通過特性)が小さくなるので、雑音成分の多い画像でも、高画質な超解像画像を生成することができるようになる。
【0039】
なお、上述した画像空間超解像装置1として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、画像空間超解像装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該コンピュータの記憶部に格納しておき、当該コンピュータのCPU(中央演算処理装置)によってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明による実施例2の画像空間超解像装置について説明する。図7は、本発明による実施例2の画像空間超解像装置の概略構成を示すブロック図である。図7に示すように、画像空間超解像装置2は、雑音レベル検出部10と、雑音考慮型超解像処理部20と、雑音レベル判定部30と、超解像処理部40とを備える。画像空間超解像装置2は、図1を参照して説明した実施例1の画像空間超解像装置1と比較して、更に雑音レベル判定部30、及び超解像処理部40を備え、雑音種レベル定部30の判定結果に応じて、雑音レベル判定部30、又は超解像処理部40により超解像処理を行う。雑音レベル検出部10、及び雑音考慮型超解像処理部20については、実施例1の画像空間超解像装置1と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
雑音レベル判定部30は、雑音レベル検出部10により抽出された各時空間高周波成分の雑音レベルを取得し、入力画像に含まれる雑音レベルのパワーが、所定の閾値以上であるか否かを判定し、判定結果を示すノイズフラグFを超解像処理部40、及び雑音考慮型超解像処理部20に出力する。
【0042】
雑音レベル判定部30は、各時空間高周波成分の雑音レベルから雑音レベルのパワースペクトル密度を求めることにより、雑音の種類を判定するようにしてもよい。ここで、雑音の種類としては、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、レッドノイズ(ブラウニアンノイズ)などがある。ホワイトノイズ、ピンクノイズ、レッドノイズのパワースペクトル密度は、それぞれ1/f,1/f,1/fに比例する。そのため、所定の閾値をピンクノイズの雑音レベルのパワーとした場合には、雑音レベル判定部30は、各帯域の時空間高周波成分の雑音レベルが同程度である場合には、雑音の種類をホワイトノイズと判定し、入力画像に含まれる雑音レベルのパワーがピンクノイズの雑音レベルのパワー以上であると判定する。また、雑音レベル判定部30は、雑音レベルのパワースペクトル密度が1/fの関係を満たす場合には、入力画像に含まれる雑音レベルのパワーがピンクノイズの雑音レベルのパワー未満であると判定する。
【0043】
雑音レベルのパワーが、所定の閾値以上である場合にノイズフラグF=1とし、雑音レベルのパワーが所定の閾値未満である場合にノイズフラグF=0とすると、ノイズフラグF=1の場合には、雑音考慮型超解像処理部20により、入力画像の超解像画像を生成し、ノイズフラグF=0の場合には、超解像処理部40により、入力画像の超解像画像を生成する。
【0044】
超解像処理部40は、入力画像を超解像処理して超解像画像を生成する。図8は、超解像処理部40の概略構成を示すブロック図である。図8に示すように、超解像処理部40は、第2高周波成分抽出部21と、高周波成分拡大部22と、高周波成分平滑化部23と、周波数成分再構成部24とを備える。超解像処理部40は図5,6を参照して説明した雑音考慮型超解像処理部20と比較して、標準偏差決定部25を備えない点で相違するが、第2高周波成分抽出部21と、高周波成分拡大部22と、高周波成分平滑化部23と、周波数成分再構成部24については、雑音考慮型超解像処理部20と同様である。
【0045】
つまり、超解像処理部40は、第2高周波成分抽出部21により、入力画像を空間方向に1階ウェーブレット分解し、水平方向高周波成分の画像LH、垂直方向高周波成分の画像HL、及び斜め方向高周波成分の画像HHを抽出し、高周波成分拡大部22により、水平方向高周波成分の画像LH、垂直方向高周波成分の画像HL、及び斜め方向高周波成分の画像HHをそれぞれ拡大処理(アップサンプリング)する。
【0046】
そして、超解像処理部40は、高周波成分平滑化部23により、高周波成分拡大部22により生成された、水平方向高周波成分拡大画像Ex.LH、垂直方向高周波成分拡大画像Ex.HL、及び斜め方向高周波成分拡大画像Ex.HHをそれぞれ平滑化フィルタにより平滑化する。この際、雑音考慮型超解像処理部20とは異なり、平滑化フィルタの標準偏差σは所定の一定値とする。最後に、周波数成分再構成部24により、高周波成分平滑化部23により平滑化された水平方向高周波成分拡大画像Ex.LH’、平滑化された垂直方向高周波成分拡大画像Ex.HL’、及び平滑化された斜め方向高周波成分拡大画像Ex.HH’と、入力画像とを用いて再構成処理を行い、超解像画像を生成する
【0047】
図9は、画像空間超解像装置2の動作を示すフローチャートである。画像空間超解像装置1は、雑音レベル検出部10により、入力画像に含まれる雑音レベルを検出する(ステップS201)。次に、画像空間超解像装置1は、雑音レベル判定部30により、入力画像に含まれる雑音レベルのパワーが、所定の種類の雑音(例えば、ピンクノイズ)以上であるか否かを判定する(ステップS202)。ステップS202により、雑音レベルのパワーが所定の種類の雑音以上であると判定した場合には(ステップS202−Yes)、雑音考慮型超解像処理部20により、入力画像を超解像処理し、超解像画像を生成する(ステップS203)。一方、ステップS202により、雑音レベルのパワーが所定の種類の雑音未満であると判定した場合には(ステップS202−No)、超解像処理部40により、入力画像を超解像処理し、超解像画像を生成する(ステップS204)。
【0048】
また、画像空間超解像装置2は、図7に示した構成では超解像処理部40を備えているが、超解像処理部40を備えずに、雑音考慮型超解像処理部20がノイズフラグFに応じて平滑フィルタの標準偏差を切り替えるようにしてもよい。すなわち、雑音レベル判定部30により雑音レベルのパワーが所定の種類の雑音以上であると判定された場合には、雑音考慮型超解像処理部20の高周波成分平滑化部23は、標準偏差決定部25により生成された標準偏差を有する平滑化フィルタにより平滑化し、雑音レベル判定部30により雑音レベルのパワーが所定の種類の雑音未満であると判定された場合には、雑音考慮型超解像処理部20の高周波成分平滑化部23は、一定の値の標準偏差を有する平滑化フィルタにより平滑化するようにしてもよい。
【0049】
このように、画像空間超解像装置2は、各帯域の時空間周波数成分の雑音レベルを検出し、雑音レベル(雑音種類)を判定する。雑音種類がピンクノイズからホワイトノイズのように空間高周波成分のパワーの強い雑音である場合には、雑音考慮型の超解像処理を行い、雑音種類がそれ以外である場合には、通常の超解像処理を行う。これにより、雑音成分の多い画像でも、高画質な超解像行うことができるようになる。
【0050】
なお、上述した画像空間超解像装置2として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、画像空間超解像装置2の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該コンピュータの記憶部に格納しておき、当該コンピュータのCPU(中央演算処理装置)によってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。
【0051】
上述の実施例は、代表的な例として説明したが、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、超解像画像を生成する任意の用途、例えば、デジタルシネマのような高精細映像や、スーパーハイビジョンのような超高精細映像の生成に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1,2 画像空間超解像装置
10 雑音レベル検出部
11 第1高周波成分抽出部
12 雑音レベル解析部
20 雑音考慮型超解像処理部
21 第2高周波成分抽出部
22 高周波成分拡大部
23 高周波成分平滑化部
24 周波数成分再構成部
25 標準偏差決定部
30 雑音レベル判定部
40 超解像処理部
111 時間周波数分解部
112 空間周波数分解部
121 孤立点位置抽出部
122 雑音レベル算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像に含まれる雑音レベルを考慮して、入力画像の超解像画像を生成する画像空間超解像装置であって、
前記入力画像を多重解像度解析して高周波成分の画像を抽出する第1高周波成分抽出部、及び、
前記第1高周波成分抽出部により抽出された高周波成分の画像の雑音レベルを検出する雑音レベル解析部、を有する雑音レベル検出部と、
前記入力画像を多重解像度解析して高周波成分の画像を抽出する第2高周波成分抽出部、
前記第2高周波成分抽出部により抽出された高周波成分の画像をアップサンプリングし、該高周波成分の拡大画像を生成する高周波成分拡大部、
前記雑音レベル検出部から前記雑音レベルを取得し、該雑音レベルが大きいほど、平滑化フィルタの標準偏差として小さい値を生成する標準偏差決定部、
前記高周波成分拡大部により生成された拡大画像を、前記標準偏差決定部により生成された標準偏差を有する平滑化フィルタにより平滑化する高周波成分平滑化部、及び、
前記高周波成分平滑化部により平滑化された拡大画像を用いて前記入力画像を超解像処理して超解像画像を生成する周波数成分再構成部、を有する雑音考慮型超解像処理部と、
を備えることを特徴とする画像空間超解像装置。
【請求項2】
前記第1高周波成分抽出部は、前記入力画像を空間方向に多重解像度解析するか、又は前記入力画像を時間方向及び空間方向に多重解像度解析して前記高周波成分の画像を抽出し、
第2高周波成分抽出部は、前記入力画像を空間方向に多重解像度解析して前記高周波成分の画像を抽出することを特徴とする、請求項1に記載の画像空間超解像装置。
【請求項3】
前記雑音レベル解析部は、前記第1高周波成分抽出部により抽出された高周波成分の画像の孤立点位置を抽出する孤立点位置抽出部と、
前記第1高周波成分抽出部により抽出された高周波成分の画像について、前記孤立点位置抽出部により抽出された孤立点位置における画素値に基づく値を前記雑音レベルとする雑音レベル算出部と、
を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像空間超解像装置。
【請求項4】
前記雑音レベル検出部により検出された各時空間高周波成分の雑音レベルを取得し、入力画像に含まれる雑音レベルのパワーが所定の閾値以上であるか否かの判定を行う雑音レベル判定部を備え、
前記高周波成分平滑化部は、前記雑音レベル判定部により入力画像に含まれる雑音レベルのパワーが所定の閾値以上であると判定された場合には、前記標準偏差決定部により生成された標準偏差を有する平滑化フィルタにより平滑化し、前記雑音レベル判定部により入力画像に含まれる雑音レベルのパワーが所定の閾値未満であると判定された場合には、一定の値の標準偏差を有する平滑化フィルタにより平滑化することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の画像空間超解像装置。
【請求項5】
前記雑音レベル判定部は、前記各時空間高周波成分の雑音レベルから雑音レベルのパワースペクトル密度を求めることにより、入力画像に含まれる雑音レベルのパワーが所定の種類のノイズの雑音レベルのパワー以上であるか否かの判定を行うことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の画像空間超解像装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から5のいずれか一項に記載の画像空間超解像装置として機能させるための画像空間超解像生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−114510(P2013−114510A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260910(P2011−260910)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】