説明

画像符号化装置、画像符号化方法及び画像符号化プログラム

【課題】輝度イントラ予測モードと色差イントラ予測モードとを独立に符号化すると冗長性のために符号化効率が低下する。
【解決手段】輝度イントラ予測モード符号化部601は、符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを符号化する。色差イントラ予測モード符号化部603は、符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを参照して、符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードを特定する色差予測モード決定情報を符号化する。色差イントラ予測モード符号化部603は、符号化対象ブロックの輝度成分のブロックサイズに応じて、輝度成分の画面内予測モードをそのまま引き継いで色差成分の画面内予測モードとする引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報と、輝度成分の復号画像を画像変換して色差成分の予測画像を生成する画像変換モードを示す色差予測モード決定情報とを符号化する際の優先順位を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像符号化技術に関し、特に画面内符号化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
動画像符号化の国際標準であるMPEG−4 AVCでは、一画面内で処理を完結させる画面内符号化の方式としてイントラ予測と呼ばれる方式を採用している。イントラ予測は、処理対象となるブロックに隣接した既復号サンプル値を、指定された予測方向に複製することにより処理対象ブロックの予測画像を作り出すものである。MPEG−4 AVCでは図1(a)、(b)に示す9種類の予測方向が定義されており、各ブロックにおいて予測方向を示すイントラ予測モードのモード番号を伝送することにより、適切な予測方向を指定する構成をとる。
【0003】
予測方向の定義数を拡張することにより予測画像品質を高めることができる。図2(a)の符号201は、17種類の予測方向の定義例を示したものであり、図2(b)の符号202は、34種類の予測方向の定義例を示したものである。しかしながら予測方向の定義数の増加はイントラ予測モードの伝送情報量の増加につながる。予測方向の定義数が増加するにつれ、全発生符号量のうちイントラ予測モードの占める割合が増加するため、効率的な伝送方法の必要性が高まる。
【0004】
特許文献1には、伝送する画面内予測モードの総数を減らすことにより、画面内予測モードの符号量を削減する手段が記載されている。特許文献1の方法は、複数のブロックの画面内予測モードを所定の統合単位分走査して、統合単位内のすべての画面内予測モードが同一である場合に統合単位で一つの画面内予測モードを伝送することにより、伝送する画面内予測モードを減らすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−246975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MPEG−4 AVCにおいては、輝度と色差それぞれに対してイントラ予測モードを定義している。輝度イントラ予測モードと色差イントラ予測モードとはそれぞれ独立しており、相関を用いない。そのため、イントラ予測モードの符号化に冗長性が存在し、符号化効率の低下につながっている。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、イントラ予測モードの発生符号量を削減し、符号化効率をより一層向上させることのできる画像符号化技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の画像符号化装置は、ブロック単位で複数の画面内予測モードから選択された画面内予測モードを用いて、画像信号を符号化するとともにその選択された画面内予測モードを特定するための情報を符号化する画像符号化装置であって、符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを符号化する輝度成分画面内予測モード符号化部(601)と、前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを記憶する輝度成分画面内予測モード記憶部(602)と、前記輝度成分画面内予測モード記憶部に記憶された前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを参照して、前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードを特定する色差予測モード決定情報を符号化する色差成分画面内予測モード符号化部(603)とを備える。前記色差成分画面内予測モード符号化部(603)は、前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードが前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードと同一である場合に、その輝度成分の画面内予測モードをそのまま引き継いで前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードとする引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報を符号化し、前記符号化対象ブロックの輝度成分の復号画像を画像変換して色差成分の予測画像を生成するモードを前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードとする画像変換モードを示す色差予測モード決定情報を符号化し、前記符号化対象ブロックの輝度成分のブロックサイズに応じて、前記引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報と前記画像変換モードを示す色差予測モード決定情報とを符号化する際の優先順位を切り替える。
【0009】
本発明の別の態様は、画像符号化方法である。この方法は、ブロック単位で複数の画面内予測モードから選択された画面内予測モードを用いて、画像信号を符号化するとともにその選択された画面内予測モードを特定するための情報を符号化する画像符号化方法であって、符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを符号化する輝度成分画面内予測モード符号化ステップと、前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを記憶するメモリから前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを参照して、前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードを特定する色差予測モード決定情報を符号化する色差成分画面内予測モード符号化ステップとを備える。前記色差成分画面内予測モード符号化ステップは、前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードが前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードと同一である場合に、その輝度成分の画面内予測モードをそのまま引き継いで前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードとする引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報を符号化し、前記符号化対象ブロックの輝度成分の復号画像を画像変換して色差成分の予測画像を生成するモードを前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードとする画像変換モードを示す色差予測モード決定情報を符号化し、前記符号化対象ブロックの輝度成分のブロックサイズに応じて、前記引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報と前記画像変換モードを示す色差予測モード決定情報とを符号化する際の優先順位を切り替える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、イントラ予測モードの発生符号量を削減し、符号化効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】9パターンのイントラ予測モードの予測方向を説明するための図である
【図2】18パターンと35パターンのイントラ予測モードの予測方向を説明するための図である。
【図3】画像のブロック構成と参照ブロックを説明するための概念図である。
【図4】実施の形態に係るイントラ予測モードの符号化方法を実行するための画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図4のイントラ予測モード符号化部の第1の実施例の詳細な構成を示すブロック図である。
【図6】図5のイントラ予測モード符号化部によるイントラ予測モード符号化手順を説明するフローチャートである。
【図7】実施の形態に係るイントラ予測モードの復号方法を実行するための画像復号装置の構成を示すブロック図である。
【図8】図7のイントラ予測モード復号部の第1の実施例の詳細な構成を示すブロック図である。
【図9】図8のイントラ予測モード復号部によるイントラ予測モード復号手順を説明するフローチャートである。
【図10】第1の実施例における色差イントラ予測モードを符号化する手順を説明するフローチャートである。
【図11】第1の実施例における色差イントラ予測モードを復号する手順を説明するフローチャートである。
【図12】第1の実施例における色差予測モード決定情報、輝度イントラ予測モード、および色差イントラ予測モードの対応表である。
【図13】第2の実施例における色差イントラ予測モードを符号化する手順を説明するフローチャートである。
【図14】第2の実施例における色差イントラ予測モードを復号する手順を説明するフローチャートである。
【図15】第2の実施例における色差予測モード決定情報、輝度イントラ予測モード、および色差イントラ予測モードの対応表である。
【図16】輝度ブロックと色差ブロックの対応関係を説明する図である。
【図17】LMモードの概念を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、「処理対象ブロック」とは、画像符号化装置による符号化処理の場合は、符号化対象ブロックのことであり、画像復号装置による復号処理の場合は、復号対象ブロックのことである。「処理済みブロック」とは、画像符号化装置による符号化処理の場合は、符号化済みの復号されたブロックのことであり、画像復号装置による復号処理の場合は、復号済みのブロックのことである。以下、断りのない限り、この意味で用いる。
【0014】
[符号化装置]
本発明を実施する好適な画像符号化装置について図面を参照して説明する。図4は実施の形態に係る画像符号化装置の構成を示すブロック図である。実施の形態の画像符号化装置は、減算部501と、直交変換・量子化部502と、逆量子化・逆変換部503と、加算部504と、復号画像メモリ505と、イントラ予測部506と、テクスチャ情報符号化部507と、イントラ予測モード符号化部508と、イントラ予測モード選択部509とを備える。本発明の実施の形態は画面内予測に注目したものであるため、画面間予測に関連する構成要素については図示せず、説明を省略する。
【0015】
イントラ予測モード選択部509は、画像のブロック毎に最適なイントラ予測モードを選択し、選択されたイントラ予測モードをイントラ予測部506と、イントラ予測モード符号化部508に与える。
【0016】
イントラ予測モード符号化部508は、入力されたイントラ予測モードを可変長符号化してイントラ予測モードビットストリームを出力する。イントラ予測モード符号化部508の詳細な構成と動作については後述する。
【0017】
イントラ予測部506は、入力されたイントラ予測モードと、復号画像メモリ505に記憶した隣接ブロックの既復号画像を用いてイントラ予測画像を生成し、生成したイントラ予測画像を減算部501へ与える。
【0018】
減算部501は、符号化対象の原画像からイントラ予測画像を減ずることにより差分画像を生成し、生成した差分信号を直交変換・量子化部502に与える。
【0019】
直交変換・量子化部502は、差分画像に対し直交変換・量子化をしてテクスチャ情報を生成し、生成したテクスチャ情報を逆量子化・逆変換部503とテクスチャ情報符号化部507に与える。
【0020】
テクスチャ情報符号化部507は、テクスチャ情報をエントロピー符号化してテクスチャ情報ビットストリームを出力する。
【0021】
逆量子化・逆変換部503は、直交変換・量子化部502から受け取ったテクスチャ情報に対し逆量子化・逆直交変換をして復号差分信号を生成し、生成した復号差分信号を加算部504に与える。
【0022】
加算部504は、イントラ予測画像と復号差分信号を加算して復号画像を生成し、生成した復号画像を復号画像メモリ505に格納する。
【0023】
[復号装置]
本発明を実施する好適な画像復号装置について図面を参照して説明する。図7は実施の形態に係る画像復号装置の構成を示すブロック図である。実施の形態の画像復号装置は、テクスチャ情報復号部801と、逆量子化・逆変換部802と、イントラ予測モード復号部803と、加算部804と、復号画像メモリ805と、イントラ予測部806とを備える。本発明の実施の形態は画面内予測に注目したものであるため、画面間予測に関連する構成要素は図示せず、説明を省略する。
【0024】
図7の画像復号装置の復号処理は、図4の画像符号化装置の内部に設けられている復号処理に対応するものであるから、図7の逆量子化・逆変換部802、加算部804、復号画像メモリ805、およびイントラ予測部806の各構成は、図4の画像符号化装置の逆量子化・逆変換部503、加算部504、復号画像メモリ505、およびイントラ予測部506の各構成とそれぞれ対応する機能を有する。
【0025】
イントラ予測モード復号部803は、入力されたイントラ予測モードビットストリームをエントロピー復号してイントラ予測モードを生成し、生成したイントラ予測モードをイントラ予測部806に与える。イントラ予測モード復号部803の詳細な構成と動作については後述する。
【0026】
イントラ予測部806は、入力されたイントラ予測モードと、復号画像メモリ805に記憶した隣接ブロックの既復号画像を用いてイントラ予測画像を生成し、生成したイントラ予測画像を加算部804へ与える。
【0027】
テクスチャ情報復号部801は、テクスチャ情報をエントロピー復号してテクスチャ情報を生成する。生成したテクスチャ情報を逆量子化・逆変換部802に与える。
【0028】
逆量子化・逆変換部802は、テクスチャ情報復号部801から受け取ったテクスチャ情報に対し逆量子化・逆直交変換をして復号差分信号を生成し、生成した復号差分信号を加算部804に与える。
【0029】
加算部804は、イントラ予測画像と復号差分信号を加算して復号画像を生成し、生成した復号画像を復号画像メモリ805に格納し、出力する。
【0030】
本発明の実施の形態に係るイントラ予測モード符号化及び復号処理は、図4の動画像符号化装置のイントラ予測モード符号化部508及び図7の動画像復号装置のイントラ予測モード復号部803において実施される。以下、実施の形態に係るイントラ予測モード符号化及び復号処理の詳細を説明する。
【0031】
[符号化ブロック]
実施の形態では、図3で示されるように、画面を矩形ブロックにて階層的に分割するとともに、各ブロックに対し所定の処理順による逐次処理を行う。分割する各ブロックを符号化ブロックとよぶ。図3のブロック317は、実施の形態において分割の最大単位であり、これを最大符号化ブロックとよぶ。図3のブロック316は、実施の形態において分割の最小単位であり、これを最小符号化ブロックとよぶ。以下最小符号化ブロックを4×4画素、最大符号化ブロックを16×16画素として説明を行う。
【0032】
[予測ブロック]
符号化ブロックのうち、イントラ予測を行う単位を予測ブロックと呼ぶ。予測ブロックは最小符号化ブロック以上、最大符号化ブロック以下のいずれかの大きさを持つ。図3ではブロック302、303、および304が16×16ブロック、ブロック305、310、311、および301が8×8ブロック、ブロック306、307、308、309が4×4ブロックである。ブロック312、313、314、315は未処理ブロックであり、符号化ブロックサイズが確定していない。符号化手順においては最適な予測ブロックサイズを決定し、予測ブロックサイズを伝送する。復号手順においてはビットストリームより予測ブロックサイズを取得する。以下、予測ブロックを処理単位として説明を行う。
【0033】
[ブロックの色差成分]
実施の形態では、YUV4:2:0フォーマットを扱うものとする。8×8ブロック、16×16ブロックの色差成分はそれぞれ、4×4画素、8×8画素となる。4×4ブロックに対しては、4×4ブロック4つにより構成される輝度8×8画素領域に対して、4×4画素の色差ブロック1つを対応させる。
【0034】
図16(a)、(b)に4×4ブロック、8×8ブロックの輝度成分と色差成分の対応関係を示す。
【0035】
図16(a)の符号1701は4×4ブロックの輝度成分と色差成分の対応関係であり、符号1702は輝度成分、符号1703は色差成分を示す。輝度成分1702は4×4ブロック4つ(符号1707、1708、1709、1710)による8×8画素領域により構成され、4つの4×4ブロック(符号1707、1708、1709、1710)のそれぞれに対し輝度イントラ予測モードを定義する。色差成分1703に対しては色差イントラ予測モードを1つ定義する。色差ブロックイントラ予測モードの符号化/復号処理で輝度イントラ予測モードを参照するときは、4つの4×4ブロック(符号1707、1708、1709、1710)の輝度イントラ予測モードから一意に1つの輝度イントラ予測モードを選択する必要がある。本実施の形態では、色差ブロックイントラ予測モードの符号化/復号処理で輝度イントラ予測モードを参照するときは、4つの4×4ブロックのうち左上に位置するブロック1707の輝度イントラ予測モードを選択するものとする。
【0036】
図16(b)の符号1704は8×8ブロックの輝度成分と色差成分の対応関係であり、符号1705は輝度成分、符号1706は色差成分を示す。輝度成分1705は8×8ブロック1つにより構成される。輝度成分1705に対し輝度イントラ予測モードを、色差成分1706に対しては色差イントラ予測モードを、それぞれ1つずつ定義する。
【0037】
16×16ブロックに対しては、8×8ブロックと同様、輝度成分に対し輝度イントラ予測モードを、色差成分に対しては色差イントラ予測モードを、それぞれ1つずつ定義する。
【0038】
[参照ブロックと参照イントラ予測モード]
参照ブロックは、処理対象ブロックの左側に隣接しかつ最も上側に位置するブロックであるブロックAと、処理対象ブロックの上側に隣接しかつ最も左側に位置するブロックであるブロックBである。ブロックAの輝度成分の予測モードをrefModeA、ブロックBの輝度成分の予測モードをrefModeBとする。また参照ブロックが存在しないときの輝度成分の参照イントラ予測モードは平均値予測モード(直流予測モードともいう)に設定する。各参照ブロックのイントラ予測モードを「参照イントラ予測モード」と呼ぶ。
【0039】
[予測ブロックサイズと輝度イントラ予測モード]
予測ブロックのサイズに応じて、イントラ予測モードの構成を切り替える。4×4ブロックの輝度成分では図2(a)の符号201に示す18パターンのイントラ予測モードを定義し、8×8ブロックと16×16ブロックの輝度成分に対しては、図2(b)の符号202に示す35パターンのイントラ予測モードを定義する。これは、小さいサイズの予測ブロックに対して過剰なパターン数のイントラ予測モードを定義しても、発生符号量の増加に見合うだけの品質向上が得られないためである。
【0040】
[色差ブロックのイントラ予測モード]
色差ブロックに対しては、輝度成分のイントラ予測モードに加えさらに2つのモードを定義する。
DMモード:輝度のイントラ予測モードをそのまま引き継ぐ
LMモード:輝度成分の復号済周辺領域と、色差成分の復号済周辺領域間の誤差解析を行い、誤差最小となる変換パラメータを算出する。算出された変換パラメータを用いて輝度対象ブロックの復号画像を変換し、それを色差成分の予測画像とする。
【0041】
LMモードは、輝度復号画像に対する画像変換により色差予測画像を作成するものである。本実施例においては、輝度復号画像に対するレンジ調整と、オフセット加算により色差予測画像を作成するものとし、変換式をPred_Chroma(x,y)=α×Dec_Luma(2x,2y)+β(式1)とする。ただし、Pred_Chromaは色差予測画像、Dec_Lumaは輝度復号画像とし、α、βを変換パラメータとする。変換パラメータα、βについては、輝度成分の復号済周辺領域と、色差成分の復号済周辺領域間の誤差評価から計算し、伝送しない。
【0042】
図17を用いてLMモードの概念を説明する。符号1801は輝度成分を示し、符号1802は復号済み周辺領域、符号1803は対象領域の既復号画像である。符号1804は、輝度成分画像1801を色差成分のサンプル数に変換したものである。符号1807は、色差成分であり、符号1808は色差成分の復号済み周辺領域、符号1809は色差の復号対象領域である。1809は未復号である。
【0043】
輝度の復号済み周辺領域のサブサンプリング画像1805に対して、上述の(式1)を適用した結果と、色差の復号済み周辺領域1808との誤差が最小となるαとβを算出する。算出手順は公知であり、例えば最小二乗法を利用することができる。算出したα、βを用いて、符号1803に示す輝度復号画像に対して(式1)を適用し、色差の予測画像を作成する。
【0044】
4×4ブロックに対するLMモードは、4つの4×4画素領域からなる8×8画素の輝度復号画像に対し、色差予測画像を作成するものとする。
【0045】
(第1の実施例)
[符号化手順]
本発明の実施の形態に係るイントラ予測モードの符号化方法の第1の実施例を説明する。図5は図4のイントラ予測モード符号化部508の詳細な構成のブロック図である。イントラ予測モード符号化部508は、輝度イントラ予測モード符号化部601、輝度イントラ予測モードメモリ602、および色差イントラ予測モード符号化部603を備える。以下、図6のフローチャートも参照しながら、イントラ予測モードの符号化手順を説明する。
【0046】
輝度イントラ予測モード符号化部601は、輝度イントラ予測モードメモリ602から隣接ブロックの輝度イントラ予測モードrefModeAとrefModeBを取得し、所定の手順に従い、対象の輝度イントラ予測モードを符号化する(ステップS701)。本手順は、輝度イントラ予測モードの空間的相関性を用いるために隣接ブロックの輝度イントラ予測モードrefModeAとrefModeBを参照し、圧縮効率を高めている。これは、本発明の実施の形態の本質ではないため、詳細説明を省略する。
【0047】
輝度イントラ予測モードメモリ602は、対象の輝度イントラ予測モードを格納する(ステップS702)。
【0048】
色差イントラ予測モード符号化部603は、対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードを取得し、対象の色差イントラ予測モードを符号化し(ステップS703)、処理を終了する。
【0049】
色差イントラ予測モード符号化手順の詳細を以下で説明する。
【0050】
[色差イントラ予測モード符号化手順]
色差イントラ予測モード符号化部603は、対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードを取得し、対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードを比較する。
【0051】
対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードが等しいときは、色差予測モード決定情報を0と設定する。色差予測モード決定情報に対し、所定の可変長符号化を行うことにより、色差予測モード決定情報の符号化系列を作成する。本実施例における可変長符号化は、算術符号化、ハフマン符号化等の可変長符号化を適用し、値の小さい色差予測モード決定情報に対して短い符号語が割り当てられるようにする。
【0052】
対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードが等しくないときは、さらに対象の色差イントラ予測モードがLMモードであるかどうかを判定する。対象の色差イントラ予測モードがLMモードであるときは、色差予測モード決定情報を1と設定する。対象の色差イントラ予測モードがLMモードと異なるときは、色差イントラ予測モードと輝度イントラ予測モードの値の判定を行う。
【0053】
輝度イントラ予測モードが4より小さく、かつ色差イントラ予測モードが4と等しいときは、色差予測モード決定情報を輝度イントラ予測モード+2と設定する。色差予測モード決定情報に対し、所定の可変長符号化を行うことにより、色差予測モード決定情報の符号化系列を作成する。
【0054】
輝度イントラ予測モードが4以上、または色差イントラ予測モードが4と異なるときは、色差予測モード決定情報を色差イントラ予測モード+2と設定する。色差予測モード決定情報に対し、所定の可変長符号化を行うことにより、色差予測モード決定情報の符号化系列を作成する。
【0055】
図6のステップS703の色差イントラ予測モード符号化手順の詳細を図10のフローチャートを参照して説明する。
【0056】
色差イントラ予測モード符号化部603は、対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードを取得し、対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードを比較する。対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードが等しければステップS1101へ、そうでなければステップS1102へそれぞれ進む(ステップ1101)。
【0057】
対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードが等しいときは、色差予測モード決定情報を0と設定し(ステップS1102)、ステップS1108へ進む。
【0058】
対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードが異なるときは、色差イントラ予測モードがLMモードであるかどうかを判定する(ステップS1103)。色差イントラ予測モードがLMモードであるならば、ステップS1104へ、そうでなければステップS1105へそれぞれ進む。
【0059】
色差イントラ予測モードがLMモードであるときは、色差予測モード決定情報を1と設定し(ステップS1104)、ステップS1108へ進む。
【0060】
色差イントラ予測モードがLMモードでないときは、輝度イントラ予測モードと色差イントラ予測モードの値の判定を行う(ステップS1105)。輝度イントラ予測モードが4より小さく、かつ色差イントラ予測モードが4と等しいならばステップS1106へ、そうでなければ、ステップS1107へそれぞれ進む。
【0061】
輝度イントラ予測モードが4より小さく、かつ色差イントラ予測モードが4と等しいときは、色差予測モード決定情報を、輝度イントラ予測モードに2を加えた値と設定し(ステップS1106)、ステップS1108へ進む。
【0062】
輝度イントラ予測モードが4より小さくない、または色差イントラ予測モードが4と等しくないときは、色差予測モード決定情報を、色差イントラ予測モードに2を加えた値と設定し(ステップS1107)、ステップS1108へ進む。
【0063】
色差予測モード決定情報を可変長符号化し、色差予測モード決定情報の符号化系列を作成し(ステップS1108)、処理を終了する。可変長符号化手段においては、算術符号化、ハフマン符号化等の可変長符号化を適用し、値の小さい色差予測モード決定情報に対して短い符号語が割り当てられるようにする。
【0064】
[復号手順]
本発明の実施の形態に係るイントラ予測モードの復号方法の第1の実施例を説明する。図8は図7のイントラ予測モード復号部803の詳細な構成のブロック図である。イントラ予測モード復号部803は、輝度イントラ予測モード復号部901、輝度イントラ予測モードメモリ902、および色差イントラ予測モード復号部903を備える。
【0065】
図8のイントラ予測モード復号部803におけるイントラ予測モード復号処理は、図5のイントラ予測モード符号化部508におけるイントラ予測モード符号化処理に対応するものであるから、図8の輝度イントラ予測モードメモリ902は、図5の輝度イントラ予測モードメモリ602と同一の機能を有する。
【0066】
以下、図9のフローチャートも参照しながら、イントラ予測モードの復号手順を説明する。
【0067】
輝度イントラ予測モード復号部901は、輝度イントラ予測モードメモリ902から隣接ブロックの輝度イントラ予測モードrefModeAとrefModeBを取得し、所定の手順に従い、輝度成分のイントラ予測モードを復号する(ステップS1001)。詳細説明を省略する。
【0068】
輝度イントラ予測モードメモリ902は、対象の輝度イントラ予測モードを格納する(ステップS1002)。
【0069】
色差イントラ予測モード復号部903は、輝度イントラ予測モードメモリ902から同一ブロックの輝度イントラ予測モードを取得し、イントラ予測モード符号化系列を復号することにより、対象の色差イントラ予測モードを算出し(ステップS1003)、処理を終了する。
【0070】
色差イントラ予測モード復号手順の詳細を以下で説明する。
【0071】
[色差イントラ予測モード復号手順]
図9のステップS1003の色差イントラ予測モード復号手順の詳細を図11のフローチャートを参照して説明する。
【0072】
色差イントラ予測モード復号部903は、色差予測モード決定情報符号化系列を取得し、また輝度イントラ予測モードメモリ902から、復号対象ブロックの復号済輝度イントラ予測モードを取得する。色差予測モード決定情報符号化系列に対し所定の可変長復号処理を行い、色差予測モード決定情報を作成する(ステップS1201)。可変長復号手段においては、算術符号化、ハフマン符号化等の可変長復号を適用し、値の小さい色差予測モード決定情報に対して短い符号語が割り当てられるようにする。
【0073】
色差予測モード決定情報の値を判定する(ステップS1202)。色差予測モード決定情報の値が0である場合は、色差イントラ予測モードを輝度イントラ予測モードと同一の値と設定し(ステップS1203)、処理を終了する。
【0074】
色差予測モード決定情報の値が0でない場合は、さらに色差予測モード決定情報の値を判定する(ステップS1204)。色差予測モード決定情報の値が1である場合は、色差イントラ予測モードをLMモードと設定し(ステップS1205)、処理を終了する。
【0075】
色差予測モード決定情報の値が2以上である場合は、色差予測モード決定情報と輝度イントラ予測モードの値を比較する(ステップS1206)。
【0076】
色差予測モード決定情報−2と輝度イントラ予測モードの値が等しいときは、色差イントラ予測モードを所定値に設定し(ステップS1207)、処理を終了する。本実施例においては、図2で示すモード4(右下45度方向)のイントラ予測モードを所定値とする。ここで設定するイントラ予測モードは必ずしも4である必要はなく、他のモード(例えば左下45度方向のモード7)であってもよいし、他のモードであってもよい。
【0077】
色差予測モード決定情報−2と輝度イントラ予測モードの値が異なるときは、色差イントラ予測モードを色差予測モード決定情報−2に設定し(ステップS1208)、処理を終了する。
【0078】
本実施例における色差予測モード決定情報と色差イントラ予測モードとの対応表を図12に示す。図12の対応表では、色差予測モード決定情報0、1、2、3、4、5は、それぞれDMモード、LMモード、Planarモード、垂直モード、水平モード、平均値モードに対応する。
【0079】
色差予測モード決定情報0は、DMモードである。色差イントラ予測モードは輝度イントラ予測モードの値をそのまま引き継ぐ。輝度イントラ予測モードと等しい色差イントラ予測モードは発生頻度が高いため、色差予測モード決定情報0にDMモードを割り当てることにより、平均発生符号量を削減することができる。
【0080】
色差予測モード決定情報1は、LMモードである。輝度イントラ予測モードの値に関わらず、色差イントラ予測モードはLMモードとなる。
【0081】
色差予測モード決定情報2、3、4、5は、それぞれ図2に示すイントラ予測モードの0(Planarモード)、1(垂直モード)、2(水平モード)、3(平均値モード)に対応することを基本とするが、輝度イントラ予測モードと等しい色差イントラ予測モードに対しては、すでに色差予測モード決定情報0(DMモード)を割り当てており、輝度イントラ予測モードが0のときの色差予測モード決定情報2、輝度イントラ予測モードが1のときの色差予測モード決定情報3、輝度イントラ予測モードが2のときの色差予測モード決定情報4、輝度イントラ予測モードが3のときの色差予測モード決定情報3に対して、改めてイントラ予測モードの0(Planarモード)、1(Verticalモード)、2(Horizontalモード)、3(DCモード)を割り当てる構成は冗長である。
【0082】
本構成では、輝度イントラ予測モードが0のときの色差予測モード決定情報2、輝度イントラ予測モードが1のときの色差予測モード決定情報3、輝度イントラ予測モードが2のときの色差予測モード決定情報4、輝度イントラ予測モードが3のときの色差予測モード決定情報3に対しては、他の色差予測モード決定情報に割り当てられていないイントラ予測モード4(右下45度方向)を割り当てることにより、冗長性を回避でき、符号化効率の向上を実現できる。
【0083】
輝度イントラ予測モードが0のときの色差予測モード決定情報2、輝度イントラ予測モードが1のときの色差予測モード決定情報3、輝度イントラ予測モードが2のときの色差予測モード決定情報4、輝度イントラ予測モードが3のときの色差予測モード決定情報5に割り当てるイントラ予測モードの必要条件は、他の色差予測モード決定情報に割り当てられていないモードであり、必ずしもイントラ予測モード4である必要はない。輝度イントラ予測モードの値に連動し、より相関性の強いモード、例えば輝度イントラ予測モードの隣接モードを割り当てるような構成を取れば、適切なモードを選択できる確率が上がり、符号化効率を向上させることが可能となる。
【0084】
(第2の実施例)
本発明の実施の形態に係るイントラ予測モードの符号化方法の第2の実施例を説明する。第1の実施例とは色差イントラ予測モードの符号化/復号手順のみが異なる。以下で本実施例の色差イントラ予測モードの符号化/復号手順を説明する。
【0085】
本実施例は、DMモードとLMモードの符号割当順をブロックサイズに応じて適応的に切り替えることが、実施例1と異なる。
【0086】
前述したとおり、4×4ブロックでは、輝度4×4画素領域4つからなる8×8画素領域に対して、色差4×4画素領域が対応する。さらに、色差のイントラ予測モード符号化/復号処理において、4つの4×4ブロックのうち左上に位置する1707の輝度イントラ予測モードを参照する。
【0087】
4×4ブロックでは、輝度は(4×4画素領域4つからなる)8×8領域に対し、色差の4×4画素領域が対応する。4×4ブロックで輝度の4×4画素領域4つが同一のイントラ予測モードで効率的に符号化できるような場合は、8×8ブロックとして符号化した方が、冗長性をなくし符号量を削減できる可能性が高い。言い換えれば、4×4ブロックとして符号化する場合は、4つの4×4画素領域は2種類以上のイントラ予測モードにより構成される可能性が高い。4×4ブロックで色差イントラ予測モードを符号化/復号する際は、4×4画素領域の左上領域(図16の1707)を参照するものと規定しているが、色差成分との相関性が最も高い領域は必ずしも左上領域とは限らない。すなわち4×4ブロックでは、8×8ブロックおよび16×16ブロックと比べ、輝度イントラ予測モードと色差イントラ予測モードとの相関性が低くなり、DMモードの有効性は相対的に低くなる。
【0088】
LMモードに対しては次のことが言える。4×4ブロックのLMモードは、輝度4×4画素領域4つからなる8×8画素領域の輝度復号画像を元に色差4×4画素領域の予測画像を作成するものであり、輝度、色差間の画像相関性を利用するものである。4×4画素領域4つそれぞれのイントラ予測モード自体を参照するのではなく、各イントラ予測モードを用いて作成した復号画像のみを参照する。4×4ブロックにおいても、DMモードで見られた、輝度イントラ予測モードと色差イントラ予測モードとの相関性低下による、LMモードの有効性低下は発生せず、LMモードの有効性は相対的に高くなる。
【0089】
以上述べたように、4×4ブロックでは、輝度、色差間のイントラ予測モードの相関性が低下するため、DMモードの有効性は相対的に低く、LMモードの有効性は相対的に高くなる。
【0090】
本実施例では、上記の課題に鑑みたものであり、4×4ブロックではLMモードをDMモードよりも優先的に伝送する構成を取る。本構成を取ることにより、実施例1と比べ、色差イントラ予測モードの符号量を削減し、符号化効率を高めることができる。
【0091】
[色差イントラ予測モード符号化手順]
図6のステップS703の色差イントラ予測モード符号化手順の詳細を図13のフローチャートを参照して説明する。
【0092】
色差イントラ予測モード符号化部603は、符号化対象ブロックのブロックサイズを判定する(ステップS1401)。
【0093】
対象ブロックサイズが4×4ブロックのときは、対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードを取得し、対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードを比較する(ステップS1402)。
【0094】
対象の色差イントラ予測モードがLMモードであるときは、色差予測モード決定情報を0と設定する(ステップS1403)。色差予測モード決定情報に対し、所定の可変長符号化を行うことにより、色差予測モード決定情報の符号化系列を作成し(ステップS1413)、処理を終了する。本実施例における可変長符号化は実施例1と同様、算術符号化、ハフマン符号化等の可変長符号化を適用し、値の小さい色差予測モード決定情報に対して短い符号語が割り当てられるようにする。
【0095】
ステップS1402において、対象の色差イントラ予測モードがLMモードでないときは、さらに対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードが等しいかどうかを判定する(ステップS1404)。
【0096】
対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードが等しいときは、色差予測モード決定情報を1と設定する(ステップS1405)。色差予測モード決定情報に対し、所定の可変長符号化を行うことにより、色差予測モード決定情報の符号化系列を作成し(ステップS1413)、処理を終了する。
【0097】
ステップS1401において、対象ブロックサイズが4×4ブロックでないときは、対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードを比較する(ステップS1406)。
【0098】
対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードが等しいときは、色差予測モード決定情報を0と設定する(ステップS1407)。色差予測モード決定情報に対し、所定の可変長符号化を行うことにより、色差予測モード決定情報の符号化系列を作成し(ステップS1413)、処理を終了する。
【0099】
ステップS1406において、対象の色差イントラ予測モードと、同一ブロックの輝度イントラ予測モードが等しくないときは、さらに対象の色差イントラ予測モードがLMモードであるかどうかを判定する(ステップS1408)。
【0100】
対象の色差イントラ予測モードがLMモードであるときは、色差予測モード決定情報を1と設定する(ステップS1409)。色差予測モード決定情報に対し、所定の可変長符号化を行うことにより、色差予測モード決定情報の符号化系列を作成し(ステップS1413)、処理を終了する。
【0101】
対象の色差イントラ予測モードが、輝度のイントラ予測モードともLMモードとも異なるときは、色差イントラ予測モードと輝度イントラ予測モードの値の判定を行う(ステップS1410)。
【0102】
輝度イントラ予測モードが4より小さく、かつ色差イントラ予測モードが4と等しいときは、色差予測モード決定情報を輝度イントラ予測モード+2と設定する(ステップS1411)。色差予測モード決定情報に対し、所定の可変長符号化を行うことにより、色差予測モード決定情報の符号化系列を作成し(ステップS1413)、処理を終了する。
【0103】
輝度イントラ予測モードが4以上、または色差イントラ予測モードが4と異なるときは、色差予測モード決定情報を色差イントラ予測モード+2と設定する(ステップS1412)。色差予測モード決定情報に対し、所定の可変長符号化を行うことにより、色差予測モード決定情報の符号化系列を作成し(ステップS1413)、処理を終了する。
【0104】
[色差イントラ予測モード復号手順]
図9のステップS1003の色差イントラ予測モード復号手順の詳細を図14のフローチャートを参照して説明する。
【0105】
色差イントラ予測モード復号部903は、色差予測モード符号化系列を取得し、また輝度イントラ予測モードメモリ902から、復号対象ブロックの復号済輝度イントラ予測モードを取得する。色差予測モード決定情報符号化系列に対し所定の可変長復号処理を行い、色差予測モード決定情報を作成する(ステップS1501)。可変長復号手段においては、算術符号化、ハフマン符号化等の可変長復号を適用し、値の小さい色差予測モード決定情報に対して短い符号語が割り当てられるようにする。
【0106】
色差予測モード決定情報の値を判定する(ステップS1502)。色差予測モード決定情報の値が0である場合は、復号対象ブロックのブロックサイズを判定する(ステップS1503)。ブロックサイズが4×4であるときは、色差イントラ予測モードをLMモードと設定し(ステップS1504)、処理を終了する。ブロックサイズが4×4でない、すなわち8×8ブロック、もしくは16×16ブロックであるときは、色差イントラ予測モードを輝度イントラ予測モードと同一の値と設定し(ステップS1505)、処理を終了する。
【0107】
ステップS1502において、色差予測モード決定情報の値が0でない場合は、さらに色差予測モード決定情報の値を判定する(ステップS1506)。色差予測モード決定情報の値が1である場合は、復号対象ブロックのブロックサイズを判定する(ステップS1507)。ブロックサイズが4×4であるときは、色差イントラ予測モードを輝度イントラ予測モードと同一の値と設定し(ステップS1508)、処理を終了する。
ブロックサイズが4×4でない、すなわち8×8ブロック、もしくは16×16ブロックであるときは、色差イントラ予測モードをLMモードと設定し(ステップS1509)、処理を終了する。
【0108】
色差予測モード決定情報の値が2以上である場合は、色差予測モード決定情報と輝度イントラ予測モードの値を比較する(ステップS1510)。
【0109】
色差予測モード決定情報−2と輝度イントラ予測モードの値が等しいときは、色差イントラ予測モードを所定値に設定し(ステップS1511)、処理を終了する。本実施例においては、図2で示すモード4(右下45度方向)のイントラ予測モードを所定値とする。ここで設定するイントラ予測モードは必ずしも4である必要はなく、他のモード(例えば左下45度方向のモード7)であってもよいし、他のモードであってもよい。
【0110】
色差予測モード決定情報−2と輝度イントラ予測モードの値が異なるときは、色差イントラ予測モードを色差予測モード決定情報−2に設定し(ステップS1512)、処理を終了する。
【0111】
本実施例における色差予測モード決定情報と色差イントラ予測モードとの対応表を図15(a)、(b)に示す。図15(a)の符号1601は8×8、16×16ブロックの対応表、図15(b)の符号1602は4×4ブロックの対応表である。符号1601の対応表は、図12の対応表と同様である。符号1601の対応表と符号1602の対応表は、DMモードとLMモードの項目のみ異なり、符号1601の対応表は、色差予測モード決定情報0にDMモード、色差予測モード決定情報1にLMモードを割り当て、符号1602の対応表は、色差予測モード決定情報0にLMモード、色差予測モード決定情報1にDMモードを割り当てている。符号1601の対応表はDMモード優先の場合に使用し、符号1602の対応表はLMモード優先の場合に使用する。
【0112】
上述したとおり、4×4ブロックに対しては、輝度(4×4画素領域4つからなる)8×8領域に対し、色差の4×4画素領域を対応させた上、左上領域のイントラ予測モードを参照するため、DMモードの相対的有効性が低下する。輝度ブロックサイズに応じてDMモード、LMモードのいずれを優先するかを切り替える本実施例の構成を取ることにより、4×4ブロック、8×8ブロック(16×16ブロック)それぞれに対し、適切な発生頻度に基づいた色差予測モード決定情報の伝送が可能となり、符号量の削減、符号化効率の向上が可能となる。
【0113】
以上述べた実施の形態の画像符号化装置および画像復号装置は、以下の作用効果を奏する。
【0114】
(1)色差イントラ予測モードの符号化において、輝度イントラ予測モードと同一のモードを優先的に伝送することにより、平均発生符号量を削減し、符号化効率を向上させることができる。
【0115】
(2)ブロックサイズに応じて適応的にDMモード、LMモードの符号割当順を切り替える。4×4ブロックの場合のように、複数の輝度ブロックに対して1つの色差ブロックが割り当てられる場合、輝度成分と色差成分の間でイントラ予測モードの相関性が低下するため、DMモードよりもLMモードを優先することにより、発生符号量を削減し、符号化効率を向上させることができる。
【0116】
以上述べた実施の形態の動画像符号化装置が出力する動画像の符号化ストリームは、実施の形態で用いられた符号化方法に応じて復号することができるように特定のデータフォーマットを有しており、動画像符号化装置に対応する動画像復号装置がこの特定のデータフォーマットの符号化ストリームを復号することができる。
【0117】
動画像符号化装置と動画像復号装置の間で符号化ストリームをやりとりするために、有線または無線のネットワークが用いられる場合、符号化ストリームを通信路の伝送形態に適したデータ形式に変換して伝送してもよい。その場合、動画像符号化装置が出力する符号化ストリームを通信路の伝送形態に適したデータ形式の符号化データに変換してネットワークに送信する動画像送信装置と、ネットワークから符号化データを受信して符号化ストリームに復元して動画像復号装置に供給する動画像受信装置とが設けられる。
【0118】
動画像送信装置は、動画像符号化装置が出力する符号化ストリームをバッファするメモリと、符号化ストリームをパケット化するパケット処理部と、パケット化された符号化データをネットワークを介して送信する送信部とを含む。動画像受信装置は、パケット化された符号化データをネットワークを介して受信する受信部と、受信された符号化データをバッファするメモリと、符号化データをパケット処理して符号化ストリームを生成し、動画像復号装置に提供するパケット処理部とを含む。
【0119】
以上の符号化及び復号に関する処理は、ハードウェアを用いた伝送、蓄積、受信装置として実現することができるのは勿論のこと、ROM(リード・オンリ・メモリ)やフラッシュメモリ等に記憶されているファームウェアや、コンピュータ等のソフトウェアによっても実現することができる。そのファームウェアプログラム、ソフトウェアプログラムをコンピュータ等で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することも、有線あるいは無線のネットワークを通してサーバから提供することも、地上波あるいは衛星ディジタル放送のデータ放送として提供することも可能である。
【0120】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0121】
501 減算部、 502 直交変換・量子化部、 503 逆量子化・逆変換部、 504 加算部、 505 復号画像メモリ、 506 イントラ予測部、 507 テクスチャ情報符号化部、 508 イントラ予測モード符号化部、 509 イントラ予測モード選択部、 601 輝度イントラ予測モード符号化部、 602 輝度イントラ予測モードメモリ、 603 色差イントラ予測モード符号化部、 801 テクスチャ情報復号部、 802 逆量子化・逆変換部、 803 イントラ予測モード復号部、 804 加算部、 805 復号画像メモリ、 806 イントラ予測部、 901 輝度イントラ予測モード復号部、 902 輝度イントラ予測モードメモリ、 903 色差イントラ予測モード復号部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック単位で複数の画面内予測モードから選択された画面内予測モードを用いて、画像信号を符号化するとともにその選択された画面内予測モードを特定するための情報を符号化する画像符号化装置であって、
符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを符号化する輝度成分画面内予測モード符号化部と、
前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを記憶する輝度成分画面内予測モード記憶部と、
前記輝度成分画面内予測モード記憶部に記憶された前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを参照して、前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードを特定する色差予測モード決定情報を符号化する色差成分画面内予測モード符号化部とを備え、
前記色差成分画面内予測モード符号化部は、
前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードが前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードと同一である場合に、その輝度成分の画面内予測モードをそのまま引き継いで前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードとする引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報を符号化し、
前記符号化対象ブロックの輝度成分の復号画像を画像変換して色差成分の予測画像を生成するモードを前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードとする画像変換モードを示す色差予測モード決定情報を符号化し、
前記符号化対象ブロックの輝度成分のブロックサイズに応じて、前記引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報と前記画像変換モードを示す色差予測モード決定情報とを符号化する際の優先順位を切り替えることを特徴とする画像符号化装置。
【請求項2】
前記色差成分画面内予測モード符号化部は、前記輝度成分のブロックサイズが小さいほど、前記画像変換モードを示す色差予測モード決定情報を前記引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報よりも優先して符号化することを特徴とする請求項1に記載の画像符号化装置。
【請求項3】
前記色差成分画面内予測モード符号化部は、複数の輝度成分のブロックに対して1つの色差成分のブロックが割り当てられる場合、前記画像変換モードを示す色差予測モード決定情報を前記引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報よりも優先して符号化することを特徴とする請求項1または2に記載の画像符号化装置。
【請求項4】
ブロック単位で複数の画面内予測モードから選択された画面内予測モードを用いて、画像信号を符号化するとともにその選択された画面内予測モードを特定するための情報を符号化する画像符号化方法であって、
符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを符号化する輝度成分画面内予測モード符号化ステップと、
前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを記憶するメモリから前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを参照して、前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードを特定する色差予測モード決定情報を符号化する色差成分画面内予測モード符号化ステップとを備え、
前記色差成分画面内予測モード符号化ステップは、
前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードが前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードと同一である場合に、その輝度成分の画面内予測モードをそのまま引き継いで前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードとする引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報を符号化し、
前記符号化対象ブロックの輝度成分の復号画像を画像変換して色差成分の予測画像を生成するモードを前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードとする画像変換モードを示す色差予測モード決定情報を符号化し、
前記符号化対象ブロックの輝度成分のブロックサイズに応じて、前記引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報と前記画像変換モードを示す色差予測モード決定情報とを符号化する際の優先順位を切り替えることを特徴とする画像符号化方法。
【請求項5】
ブロック単位で複数の画面内予測モードから選択された画面内予測モードを用いて、画像信号を符号化するとともにその選択された画面内予測モードを特定するための情報を符号化する画像符号化プログラムであって、
符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを符号化する輝度成分画面内予測モード符号化ステップと、
前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを記憶するメモリから前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードを参照して、前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードを特定する色差予測モード決定情報を符号化する色差成分画面内予測モード符号化ステップとをコンピュータに実行させ、
前記色差成分画面内予測モード符号化ステップは、
前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードが前記符号化対象ブロックの輝度成分の画面内予測モードと同一である場合に、その輝度成分の画面内予測モードをそのまま引き継いで前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードとする引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報を符号化し、
前記符号化対象ブロックの輝度成分の復号画像を画像変換して色差成分の予測画像を生成するモードを前記符号化対象ブロックの色差成分の画面内予測モードとする画像変換モードを示す色差予測モード決定情報を符号化し、
前記符号化対象ブロックの輝度成分のブロックサイズに応じて、前記引き継ぎモードを示す色差予測モード決定情報と前記画像変換モードを示す色差予測モード決定情報とを符号化する際の優先順位を切り替えることを特徴とする画像符号化プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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