画像表示体、ブランク媒体及び個人認証媒体
【課題】複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示可能とする。
【解決手段】本発明の画像表示体22は、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素SP1,SP2を含んだ複数の画素PXを含み、サブ画素SP1,SP2の各々は、長さ方向が揃い且つこの長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、この主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含み、画素PXの各々においてサブ画素SP1,SP2は先の長さ方向が互いに異なっており、画素PXの少なくとも一部が含んでいるサブ画素SP1,SP2の1つ以上にエネルギービームを照射することによって画像が記録されている。
【解決手段】本発明の画像表示体22は、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素SP1,SP2を含んだ複数の画素PXを含み、サブ画素SP1,SP2の各々は、長さ方向が揃い且つこの長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、この主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含み、画素PXの各々においてサブ画素SP1,SP2は先の長さ方向が互いに異なっており、画素PXの少なくとも一部が含んでいるサブ画素SP1,SP2の1つ以上にエネルギービームを照射することによって画像が記録されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。
【0003】
例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0004】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用する感熱転写記録方式のプリンタは広く普及している。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、そこに別の顔画像を記録することは、必ずしも困難ではない。
【0006】
特許文献1には、上述した方法で顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録することが記載されている。また、特許文献2には、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録することが記載されている。更に、特許文献3には、通常の顔画像と、パール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置することが記載されている。
【0007】
これら技術をパスポートに適用すると、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認することはできるものの、パール顔料は粒径が大きいため、これを用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面は、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含み、前記複数のサブ画素の各々は、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、前記主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、前記配向領域を間に挟んで前記液晶領域と向き合っているか又は前記液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含み、前記複数の画素の各々において前記複数のサブ画素は前記長さ方向が互いに異なっており、前記複数の画素の少なくとも一部が含んでいる前記複数のサブ画素の1つ以上にエネルギービームを照射することによって画像が記録されている画像表示体である。
【0011】
本発明の第2側面は、前記複数の画素の各々は、前記複数のサブ画素の1つである第1サブ画素と、前記複数のサブ画素の他の1つである第2サブ画素とを含み、前記複数の画素の一部は第1表示部を構成し、前記複数の画素の他の一部は第2表示部を構成し、前記第1及び第2表示部の各々は、前記第1及び第2サブ画素の双方に前記エネルギービームが照射された前記画素と、前記第1及び第2サブ画素の一方にのみ前記エネルギービームが照射された前記画素とを含み、前記第1表示部では前記エネルギービームが照射された前記第2サブ画素が一様に分布し、前記第2表示部では前記エネルギービームが照射された前記第1サブ画素が一様に分布しており、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、前記第1及び第2表示部にそれぞれ対応した第1及び第2パターンと、前記第1及び第2サブ画素の双方に前記エネルギービームが照射されたか又は前記第1及び第2サブ画素の何れにも前記エネルギービームが照射されていない前記画素の配置に対応した第3パターンと、前記第1及び第2サブ画素の一方にのみ前記エネルギービームが照射された前記画素の配置に対応した第4パターンとの重ね合わせを表示し、肉眼で観察した場合に前記第1及び第2パターンを表示することなしに前記第3及び第4パターンを表示する請求項1に記載の画像表示体である。
【0012】
本発明の第3側面は、前記エネルギービームが照射された部分では構成材料の炭化を生じている第1又は第2側面に係る画像表示体である。
【0013】
本発明の第4側面は、前記炭化は、前記散乱反射領域内で生じているか、又は、前記液晶領域と前記散乱反射領域との間で生じている第3側面に係る画像表示体である。
【0014】
本発明の第5側面は、前記炭化は、前記液晶領域内で生じている第3側面に係る画像表示体である。
【0015】
本発明の第6側面は、前記エネルギービームが照射された前記1つ以上のサブ画素の各々は、前記エネルギービームが照射されておらず、このサブ画素と前記長さ方向が等しいサブ画素とは、前記液晶領域の屈折率異方性が異なっている第1乃至第5側面の何れか1つに係る画像表示体である。
【0016】
本発明の第7側面は、前記画像は個人情報を含んでいる第1乃至第6側面の何れか1つに係る画像表示体である。
【0017】
本発明の第8側面は、前記個人情報は顔画像を含んだ第7側面に係る画像表示体である。
【0018】
本発明の第9側面は、第1乃至第8側面の何れか1つに係る画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備した個人認証媒体である。
【0019】
本発明の第10側面は、エネルギービームを照射することによって画像が記録された画像表示体の製造に使用するブランク媒体であって、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含み、前記複数のサブ画素の各々は、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、前記主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、前記配向領域を間に挟んで前記液晶領域と向き合っているか又は前記液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含み、前記複数の画素の各々において前記複数のサブ画素は前記長さ方向が互いに異なっているブランク媒体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示することが可能となる。
【0021】
本発明の第1側面に係る画像表示体は、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含んでいる。そして、この画像表示体には、少なくとも一部の画素が含んでいるサブ画素の1つ以上にエネルギービームを照射することによって画像が記録されている。こうすると、各サブ画素の寸法を小さくすることができるため、画像表示体に高精細な画像を表示させることができ、従って、高画質を達成することができる。
【0022】
また、この画像表示体において、各サブ画素は、長さ方向が揃い且つこの長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、先の主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、配向領域を間に挟んで液晶領域と向き合っているか又は液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含んでいる。各画素において、その画素が含んでいるサブ画素は、先の長さ方向が互いに異なっている。
【0023】
例えば、エネルギービームを照射することによって肉眼で知覚可能な色変化を生じる場合、この画像表示体は、肉眼で観察した場合に、エネルギービームを照射した照射部とエネルギービームを照射していない非照射部とからなるパターンを表示する。そして、例えば、この画像表示体は、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合には、長さ方向が揃った複数の溝から各々がなるパターンと、肉眼で観察した場合に表示するパターンとの重ね合わせを表示し、長さ方向が揃った複数の溝から各々がなるパターンのうち、少なくとも照射部と重なり合っていない部分は、例えば、画像表示体をその法線の周りで回転させることにより、表示色を変化させる。即ち、この画像表示体は、複雑な視覚効果を示す。
【0024】
本発明の第2側面に係る画像表示体は、第1側面に係る画像表示体について上述した項性を採用するのに加え、画素の各々は、複数のサブ画素の1つである第1サブ画素と、複数のサブ画素の他の1つである第2サブ画素とを含んでいる。複数の画素の一部は第1表示部を構成し、他の一部は第2表示部を構成している。第1及び第2表示部の各々は、第1及び第2サブ画素の双方にエネルギービームが照射された画素と、第1及び第2サブ画素の一方にのみエネルギービームが照射された画素とを含んでいる。第1表示部ではエネルギービームが照射された第2サブ画素が均一に分布し、第2表示部ではエネルギービームが照射された第1サブ画素が均一に分布している。そして、この画像表示体は、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、第1及び第2表示部にそれぞれ対応した第1及び第2パターンと、第1及び第2サブ画素の双方にエネルギービームが照射されたか又は第1及び第2サブ画素の何れにもエネルギービームが照射されていない画素の配置に対応した第3パターンと、第1及び第2サブ画素の一方にのみエネルギービームが照射された画素の配置に対応した第4パターンとの重ね合わせを表示し、肉眼で観察した場合に第1及び第2パターンを表示することなしに第3及び第4パターンを表示する。即ち、この画像表示体は、肉眼で観察した場合と、偏光子を用いて観察した場合とで、互いに異なる画像を表示する。即ち、この画像表示体は、より複雑な視覚効果を示す。
【0025】
本発明の第3側面に係る画像表示体は、第1又は第2側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、エネルギービームが照射された部分で構成材料の炭化を生じている。このような画像表示体は、肉眼で観察した場合に、非照射部において明色、例えば白色を表示し、照射部において暗色、例えば黒色を表示する。即ち、この画像表示体は、肉眼で観察した場合に視認性に優れた画像を表示する。
【0026】
本発明の第4側面に係る画像表示体では、第3側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、炭化を、散乱反射領域内で生じさせているか、又は、液晶領域と散乱反射領域との間で生じさせている。通常、炭化によって反射率は低下するもののゼロではないので、このように液晶領域の背面側で炭化を生じさせた場合、この炭化を生じさせた部分の前方に位置した液晶領域は表示に寄与し得る。それ故、例えば、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、炭化を生じさせた部分の前方に位置した液晶領域は着色して見える可能性がある。このように、この画像表示体は、より複雑な視覚効果を示す。
【0027】
また、内部で炭化を生じさせた散乱反射領域内は、それ自体の偽造が困難である。他方、液晶領域と散乱反射領域との間で炭化を生じさせた構造は、液晶領域の前方に印刷によって黒色パターンを形成することによって得られる構造と比較して、偽造が困難である。それ故、この画像表示体は偽造され難い。
【0028】
本発明の第5側面に係る画像表示体では、第3側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、炭化を液晶領域内で生じさせている。内部で炭化を生じさせた液晶領域内は、それ自体の偽造が困難である。それ故、この画像表示体は偽造され難い。
【0029】
本発明の第6側面に係る画像表示体では、第1乃至第5側面の何れか1つに係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、エネルギービームが照射された1つ以上のサブ画素の各々は、エネルギービームが照射されておらず、このサブ画素と先の長さ方向が等しいサブ画素とは、液晶領域の屈折率異方性が異なっている。このような画像表示体は、例えば、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、屈折率異方性が異なっている液晶領域に対応した部分が異なる色に見える可能性がある。即ち、この画像表示体は、より複雑な視覚効果を示す。
【0030】
本発明の第7側面に係る画像表示体は、第1乃至第6側面の何れか1つに係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、画像が個人情報を含んでいる。この画像表示体が表示する個人情報の改竄は極めて困難である。
【0031】
本発明の第8側面に係る画像表示体は、第7側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、個人情報は顔画像を含んでいる。顔画像は、生体情報として一般的であり、目視による個人認証に適している。
【0032】
本発明の第9側面に係る個人認証媒体は、第1乃至第8側面の何れか1つに係る画像表示体と、この画像表示体を支持した基材とを具備している。それ故、この個人認証媒体は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示するのに加え、改竄が困難である。
【0033】
本発明の第10側面に係るブランク媒体は、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含んでいる。これらサブ画素の各々は、長さ方向が揃い且つこの長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、先の主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、配向領域を間に挟んで液晶領域と向き合っているか又は液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含んでいる。そして、画素の各々において、この画素が含んでいるサブ画素は、先の長さ方向が互いに異なっている。このようなブランク媒体には、サブ画素の一部にエネルギービームを照射することによって画像を記録することができる。このようにして得られる画像表示体は、第1側面に係る画像表示体について上述したのと同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一態様に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す個人認証媒体に採用可能な構造の一例を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示す構造の一部を拡大して示す平面図。
【図4】図2に示す構造の他の部分を拡大して示す平面図。
【図5】図2に示す構造の更に他の部分を拡大して示す平面図。
【図6】図2に示す構造の更に他の部分を拡大して示す平面図。
【図7】第1サブ画素に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図8】第2サブ画素に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図9】エネルギービームを照射したサブ画素の一例を概略的に示す断面図。
【図10】肉眼で観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の一例を示す平面図。
【図11】偏光子を用いて斜め方向から観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の一例を示す斜視図。
【図12】偏光子を用いて斜め方向から観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の他の例を示す斜視図。
【図13】画像表示体の一変形例を概略的に示す断面図。
【図14】画像表示体の他の変形例を概略的に示す断面図。
【図15】画像表示体の更に他の変形例を概略的に示す断面図。
【図16】ブランク媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図17】図1に示す個人認証媒体の製造に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図18】図17に示す転写箔を用いて得られる画像表示体の一例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0036】
図1は、本発明の一態様に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図である。
図1に示す個人認証媒体100は、パスポートなどの冊子体である。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
【0037】
この個人認証媒体100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターン12が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0038】
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0039】
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0040】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0041】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0042】
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2及びI3を表示している。
画像I1a、I2及びI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2及びI3は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2及びI3の1つ以上を省略してもよい。
【0043】
画像I1a、I2及びI3は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2及びI3の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a、I2及びI3は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームなどのエネルギービームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2及びI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0044】
画像I1bは、複数の画素の配列が表示する画像である。画像I1bは、後で詳述するように、エネルギービームを照射することによって書き込まれている。
【0045】
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0046】
画像11bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像11bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0047】
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
【0048】
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像11a及び11bの少なくとも一方とを組み合わせると、個人認証媒体100の改竄をより困難にすることができる。
【0049】
次に、表紙2の構造について、図2乃至図9を参照しながら説明する。
図2は、図1に示す個人認証媒体に採用可能な構造の一例を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す構造の一部を拡大して示す平面図である。図4は、図2に示す構造の他の部分を拡大して示す平面図である。図5は、図2に示す構造の更に他の部分を拡大して示す平面図である。図6は、図2に示す構造の更に他の部分を拡大して示す平面図である。図7は、第1サブ画素に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。図8は、第2サブ画素に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。図9は、エネルギービームを照射したサブ画素の一例を概略的に示す断面図である。
【0050】
なお、X方向は後述する画像表示体の表示面に平行な方向であり、Y方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり且つX方向に対して垂直な方向であり、Z方向はX及びY方向に対して垂直な方向である。また、図2に示す構造は、表紙2のうち画像I1bに対応した部分に採用可能な構造である。
【0051】
この表紙2は、図7乃至図9に示すように、表紙本体21と画像表示体22とを含んでいる。
表紙本体21は、個人認証媒体100の基材であって、典型的には紙片である。表紙本体21は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。表紙本体21は、個人認証媒体100を閉じた状態において、折り丁1を挟み込むように二つ折りされている。
【0052】
画像表示体22は、多層構造を有している層である。画像表示体22は、個人認証媒体100を閉じた状態において折り丁1と向き合う表紙本体21の主面に貼り付けられている。
【0053】
画像表示体22は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する画像表示層(図示せず)を含んでいる。この画像表示層が表示する画像は、典型的には画像I1aを含んでいる。
【0054】
この画像表示層は、光の吸収を利用して画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する。この画像表示層は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部に対応したパターン形状を有している。この画像表示層は、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とで構成することができる。このような画像表示層は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することにより得ることができる。また、この画像表示層の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0055】
この画像表示層は、パターニングされていなくてもよい。即ち、この画像表示層は、連続膜であってもよい。この場合、画像表示層は、例えば、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームなどのエネルギーで描画することにより得ることができる。
【0056】
この画像表示層は、省略することができる。例えば、この画像表示層は、画像表示体22の構成要素とせずに、表紙本体21上に設けてもよい。
【0057】
画像表示体22は、図7乃至図9に示すように、配向層223と、散乱反射層224と、液晶層228とを更に含んでいる。
【0058】
配向層223は、透明であり、典型的には光学的に略等方性である。配向層223は、液晶層228内のメソゲン基の配向方向を制御する。
【0059】
配向層223は、長さ方向が揃った複数の溝が各々の前面に設けられ、溝の長さ方向が異なる複数の配向領域を含んでいる。ここでは、配向層223は、溝の長さ方向がX方向に揃った第1配向領域と、溝の長さ方向がY方向に揃った第2配向領域とを含んでいる。
【0060】
第1及び第2配向領域は、X方向とY方向とに交互に配列している。即ち、ここでは、第1及び第2配向領域は、市松模様状に配列している。第1及び第2配向領域は、市松模様状に配列していなくてもよい。例えば、第1及び第2配向領域は、ストライプ状に配列していてもよい。
【0061】
第1及び第2配向領域の各々において、溝の長さは、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。また、長さ方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。更に、幅方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。
【0062】
溝を略平行とし且つピッチを適宜設定することなどにより、これら溝で回折格子を構成することができる。或いは、例えば、様々な長さの溝を或る程度ランダムでありながら、平均的には一方向に配置するように並べた場合、これら溝で一方向性拡散パターンを形成することができる。なお、この一方向性拡散パターンは、溝の長さ方向に垂直な面内での拡散能が、配向層223の主面に垂直であり且つ溝の長さ方向に平行な面内での拡散能と比較してより大きい光拡散特性、即ち、光散乱異方性を示すパターンである。ここでは、簡略化のため、第1及び第2配向領域に設けられた溝は一方向性拡散パターンを構成しておらず、回折格子を構成していることとする。
【0063】
配向層223は、例えば以下の方法によって形成することができる。
まず、基材上にレジストを塗布する。このレジスト層を、配向層223の溝又はそれらの間の筋に対応した形状にパターニングして、原版を得る。レジスト層のパターニングには、例えば、電子線描画を利用する。次に、電鋳を利用して、原版の表面に設けられたレリーフ構造を複製し、複製版を得る。そして、この複製版を熱圧して、その表面に設けられたレリーフ構造を樹脂層の表面に転写することにより、配向層223を得る。
【0064】
液晶層228は、配向層223の溝が設けられた面を被覆している。液晶層228は、固化された液晶材料からなる。
【0065】
液晶層228は、例えば、以下の方法により形成する。即ち、配向層223の溝が設けられた面に、重合性及び/又は架橋性の液晶材料を塗布し、溝に沿って配向した後、この塗膜を固化させる。この液晶材料としては、例えば、光重合タイプのネマチック液晶又はスメクチック液晶材料を使用する。この場合、塗膜の固化は、例えば、紫外線などの光を照射することにより行う。以上のようにして、液晶層228を得る。なお、重合性及び/又は架橋性の液晶材料の代わりに、ガラス転移温度が個人認証媒体100の使用温度範囲の上限値と比較してより高い液晶材料を使用してもよい。
【0066】
液晶層228は、遅相軸の向きが互いに異なる複数の液晶領域を含んでいる。即ち、液晶層228は、メソゲン基の配向方向が互いに異なる複数の液晶領域を含んでいる。ここでは、液晶層228は、第1及び第2液晶領域を含んでいる。第1及び第2液晶領域は、それぞれ、配向層223の第1及び第2配向領域上に位置している。
【0067】
第1及び第2液晶領域の各々では、メソゲン基は、これと隣接した配向領域に設けられた溝の長さ方向に対して略平行に配向している。液晶領域の遅相軸は、溝の長さ方向に対して略平行である。この画像表示体22には、第1及び第2液晶領域を利用して潜像が記録されている。
【0068】
散乱反射層224は、配向層223の背面側に位置している。散乱反射層224は、光散乱性を有している。散乱反射層224は、直線偏光などの偏光を照射した場合に、入射光の偏光状態をほぼ維持したまま散乱反射する。散乱反射層224は、肉眼で観察した場合及び偏光子を介して観察した場合の双方において、画像表示体22が表示する画像の視認性を向上させる役割を果たす。
【0069】
なお、散乱反射層224は、複数の散乱反射領域を含んでいる。ここでは、散乱反射層224は、第1及び第2散乱反射領域を含んでいる。第1及び第2散乱反射領域は、それぞれ、配向層223の第1及び第2配向領域の背面側に位置している。
【0070】
散乱反射層224は、例えば、アルミニウムなどの金属粒子を光透過性の樹脂中に分散させてなる。
【0071】
金属粒子は、金属又は合金からなる。金属又は合金としては、例えば、アルミニウム、白金、金、銀、銅、チタン、ビスマス、ゲルマニウム、インジウム、錫、又はそれらの1つ以上を含んだ合金を使用することができる。これらの中でも、アルミニウムは、可視域、赤外域及び近紫外域の全体に亘って反射率が高い。しかも、アルミニウムは、酸化に対する耐性が高い。従って、金属粒子としては、アルミニウム粒子を使用することが好ましい。
【0072】
金属粒子を光透過性樹脂中に分散させてなる散乱反射層224には、画像表示体22を表紙本体21に接着するための接着層としての役割を担わせることができる。この場合、光透過性樹脂としては、例えば、感熱接着剤及び感圧接着剤などの接着剤として使用可能な樹脂を使用する。この樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリベンゾイミダゾール、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、メラミン樹脂、レゾルシノール樹脂、又はそれらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0073】
散乱反射層224として、表面に微細な凹凸構造が設けられた金属層を使用してもよい。このような散乱反射層224は、例えば、微細な凹凸構造が設けられた下地上にアルミニウム等の金属又は合金を蒸着することによって得られる。
【0074】
散乱反射層224として、微細凹凸構造が設けられた1層又は多層の誘電体層を使用してもよい。散乱反射層224として多層の誘電体層を使用する場合、例えば、下地上に微細な凹凸構造を設けておき、その上に硫化亜鉛等の高屈折率材料とフッ化マグネシウム等の低屈折率材料とを交互に蒸着することによって散乱反射層224を得ることができる。
【0075】
各配向領域と、その前面側及び背面側に位置した液晶領域及び散乱反射領域とは、サブ画素を構成している。ここでは、第1配向領域と第1液晶領域と第1散乱反射領域とは、図2乃至図7に示すサブ画素SP1を構成している。また、第2配向領域と第2液晶領域と第2散乱反射領域とは、図2乃至図6及び図8に示すサブ画素SP2を構成している。そして、X方向に隣り合った一対のサブ画素SP1及びSP2は、図2乃至図6に示す画素PXを構成している。画素PXは、X方向とY方向とに配列している。
【0076】
サブ画素SP1及びSP2の一部は、レーザビーム及び電子ビームなどのエネルギービームが照射されている。図2乃至図6及び図9において、参照符号IPは、エネルギービームを照射した照射部を表している。
【0077】
照射部IPは、例えば、他の部分と比較して反射率がより小さい。例えば、照射部IPでは、液晶層228においてその構成材料の少なくとも一部が炭化している。炭化した照射部IPは、図1に示す画像I1bの表示に利用される。ここでは、一例として、照射部IPでは液晶層228の構成材料が炭化しており、この炭化を生じた照射部IPは黒色を表示することとする。
【0078】
なお、図2では、理解を容易にするために構造を簡略化している。従って、図2に示す構造が表示する画像は、図1に示す画像表示体22が表示する画像I1bと一致しない。
【0079】
レーザビームの照射には、例えば、CO2レーザ、LD励起YAGレーザ又はLD励起YVO4レーザを使用することができる。レーザビームとしては、例えば、波長が赤外域にある1062nmのレーザビーム又は波長が可視域にある532nmのレーザビームを使用する。
【0080】
波長が1062nmのレーザビームを使用した場合、液晶層228に赤外光を吸収する材料を添加することにより、レーザによる印字を、効率よく高速で行うことが可能となる。この場合には、赤外線吸収剤は、その吸収波長域が、使用するレーザの波長を含むように選択する。
【0081】
この画像表示体22は、図2に示すように、照射部IPの配置に応じて4つの表示部DP1乃至DP4に区分される。
【0082】
表示部DP1では、図3に示すように、エネルギービームが照射されたサブ画素SP2が一様に分布している。そして、サブ画素SP1には、一部にのみエネルギービームが照射されておいる。即ち、表示部DP1は、サブ画素SP1及びSP2のうちサブ画素SP2にのみエネルギービームが照射された画素PXと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射された画素PXとによって構成されている。そして、エネルギービームが照射されたサブ画素SP1は、菱形のパターンを形成している。なお、「一様に分布している」ことは、規則的に配列していることを必要としている訳ではない。
【0083】
表示部DP2では、図4に示すように、エネルギービームが照射されたサブ画素SP1が一様に分布している。そして、サブ画素SP2には、一部にのみエネルギービームが照射されておいる。即ち、表示部DP2は、サブ画素SP1及びSP2のうちサブ画素SP1にのみエネルギービームが照射された画素PXと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射された画素PXとによって構成されている。そして、エネルギービームが照射されたサブ画素SP2は、菱形のパターンを形成している。
【0084】
表示部DP3では、図5に示すように、エネルギービームが照射されていないサブ画素SP1が一様に分布している。そして、サブ画素SP2には、一部にのみエネルギービームが照射されておいる。即ち、表示部DP3は、サブ画素SP1及びSP2のうちサブ画素SP2にのみエネルギービームが照射された画素PXと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射されていない画素PXとによって構成されている。そして、エネルギービームが照射されたサブ画素SP2は、菱形のパターンを形成している。
【0085】
表示部DP4では、図6に示すように、エネルギービームが照射されていないサブ画素SP2が一様に分布している。そして、サブ画素SP1には、一部にのみエネルギービームが照射されておいる。即ち、表示部DP4は、サブ画素SP1及びSP2のうちサブ画素SP1にのみエネルギービームが照射された画素PXと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射されていない画素PXとによって構成されている。そして、エネルギービームが照射されたサブ画素SP1は、菱形のパターンを形成している。
【0086】
次に、この画像表示体22が、肉眼で観察した場合に表示する画像について、図10を参照しながら説明する。
図10は、肉眼で観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の一例を示す平面図である。
【0087】
上記の通り、照射部IPは、白色光で照明した場合に黒色を表示する。そして、ここでは、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に、白色を表示することとする。また、サブ画素SP1及びSP2のピッチは、例えば100μm程度と、十分に小さいこととする。そして、エネルギービームが照射されていないサブ画素SP1及びSP2は、同一の構造を有していることとする。
【0088】
この場合、白色光で照明し、肉眼で観察したときには、サブ画素SP1及びSP2の双方がエネルギービームを照射された画素PXは黒色を表示し、サブ画素SP1及びSP2の双方がエネルギービームを照射されていない画素PXは白色を表示する。そして、サブ画素SP1及びSP2の一方のみがエネルギービームを照射された画素PXは、加法混色によって灰色を表示する。従って、画像表示体22は、図10に示すように、表示部DP1及びDP2の各々では、灰色の背景と黒色の菱形とを表示し、表示部DP3及びDP4の各々では、白色の背景と灰色の菱形とを表示する。
【0089】
なお、このとき、表示部DP1及びDP2が表示する黒色は同一であり、表示部DP3及びDP4が表示する白色も同一である。そして、表示部DP1乃至DP4が表示する灰色も同一である。
【0090】
次に、偏光子を用いて正面方向から観察した場合に画像表示体22が表示する画像について説明する。
図2に示す画像表示体22の上に直線偏光板を載置し、白色光で照明して、正面から直線偏光板を介して画像表示体22を観察した場合、画像表示体22が表示する画像は、直線偏光板の透過軸とX方向又はY方向とが成す角度に応じて変化する。例えば、直線偏光板の透過軸がX方向又はY方向に平行である場合、画像表示体22は、全体的に明るさが暗いこと以外は、図10を参照しながら説明したのとほぼ同様の画像を表示する。そして、直線偏光板の透過軸がX方向又はY方向に対して45°の角度を成している場合、画像表示体22は、表示部DP1及びDP2では、例えば着色した背景IA1及びIB1と、黒色の菱形IA2及びIB2とを表示する。そして、この場合、画像表示体22は、表示部DP3及びDP4では、例えば、表示部DP1及びDP2が表示する背景IA1及びIB1と比較してより明るく着色した背景IC1及びID1と、表示部DP1及びDP2が表示する背景IA1及びIB1と同様に着色した菱形IC2及びID2とを表示する。
【0091】
直線偏光板の透過軸がX方向又はY方向に対して成す角度を45°とした場合に、画像表示体22が上述した画像を表示する理由を以下に説明する。
【0092】
直線偏光板に照明光として白色光を照射すると、直線偏光板は、その透過軸に平行な偏光面(電場ベクトルの振動面)を有する直線偏光を透過させ、その透過軸に垂直な偏光面を有する直線偏光を吸収する。ここで、白色光は、可視光域内の全ての波長成分を含んだ連続スペクトル光を意味する。例えば、白色光は、可視領域の全域で全ての単位波長幅当りの光のエネルギーが等しい連続スペクトル光である。
【0093】
エネルギービームを照射していないサブ画素SP1に入射した直線偏光は、図7に示す液晶層228を透過する。サブ画素SP1では、液晶層228の遅相軸はX方向に対して45°の角度を成している。従って、例えば、先の直線偏光のうち、或る特定波長λ0の光成分は、液晶層228を透過することにより右円偏光へと変換され、残りの光成分は、液晶層228を透過することにより右楕円偏光へと変換される。
【0094】
これら右円偏光及び右楕円偏光は、配向層223に入射する。
配向層223を透過した回折光としての右円偏光及び右楕円偏光は、散乱反射層224によって反射される。右円偏光及び右楕円偏光は、それぞれ、散乱反射層224によって反射されることにより、左円偏光及び左楕円偏光へと変換される。また、散乱反射層224は光散乱性を有しているので、この反射光は散乱光である。
【0095】
この散乱光としての左円偏光及び左楕円偏光は、配向層223を透過する。配向層223の前面には回折格子が設けられているが、散乱反射層224からの反射光が散乱光であるのに加え、通常の環境中では照明光の入射角も様々である。それゆえ、散乱反射層224からの反射光は、散乱光として液晶層228に入射する。
【0096】
この入射光は、散乱光であるので、正面方向へ進行する光成分と、斜め方向へ進行する光成分とを含んでいる。正面方向へ進行する光成分のうち、特定波長λ0の左円偏光は、液晶層228を透過することにより偏光面が直線偏光板の透過軸に対して垂直な直線偏光へと変換される。そして、残りの光成分は、液晶層228を透過することにより、左楕円偏光若しくは左円偏光又は右楕円偏光若しくは右円偏光へと変換される。
【0097】
即ち、直線偏光板の透過軸に対して平行な偏光面を有する光成分のみに着目した場合、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1では、このサブ画素SP1に入射する光成分の強度に対するこのサブ画素SP1が射出する光成分の強度の比は、波長依存性を有することとなる。換言すれば、直線偏光板に入射する照明光の強度に対する直線偏光板が射出する表示光の強度の比は、波長依存性を有することとなる。従って、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1は、着色光を射出する。なお、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1が着色光を射出する理由については、後で数式を参照しながら説明する。
【0098】
エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2は、溝の長さ方向が90°異なっている点でのみ相違している。それゆえ、エネルギービームを照射していないサブ画素SP2は、円偏光又は楕円偏光の偏光面の回転方向が逆であること以外は、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1について説明したのと同様に振舞う。従って、エネルギービームを照射していないサブ画素SP2は、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1と同様に着色光を射出する。
【0099】
このように、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々は、着色光を射出する。それ故、サブ画素SP1及びSP2の何れにもエネルギービームが照射されていない画素PXは、着色して見える。そして、サブ画素SP1及びSP2の一方にのみエネルギービームが照射された画素PXは、サブ画素SP1及びSP2の何れにもエネルギービームが照射されていない画素PXと比較して暗く着色して見える。
【0100】
ここで、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々が着色光を射出する理由について、数式を参照しながら説明する。なお、これらサブ画素SP1及びSP2において、液晶層228は、波長λ0の光に対して四分の一波長板としての役割を果たすとする。
【0101】
透過軸がX方向又はY方向に対して45°の角度を成すように配置した直線偏光板が法線方向に射出した波長λ0の直線偏光は、偏光面がX方向に垂直な直線偏光成分と偏光面がY方向に垂直な直線偏光成分との和であると考えることができる。エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々では、液晶層228のX方向についての屈折率は異常光線屈折率ne及び常光線屈折率noの一方であり、Y方向についての屈折率は異常光線屈折率ne及び常光線屈折率noの他方である。従って、液晶層228は、これら直線偏光成分に、往路と復路との各々でλ0/4の位相差を与える。即ち、液晶層228は、これら直線偏光成分に合計でλ0/2の位相差を与える。そのため、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2が法線方向に射出する波長λ0の光は、直線偏光板を透過できない。
【0102】
ところで、リターデイションReは、下記等式(1)に示すように、液晶層の膜厚dとその複屈折性Δnとに依存する。
Re=Δn×d …(1)
ここで、Δn=ne−noである。
【0103】
一対の直線偏光板をそれらの透過軸が直交するように向かい合わせ、それらの間に液晶層をその光学軸が直線偏光板の透過軸に対して45°の角度を成すように介在させる。一方の直線偏光板をその法線方向から波長λの光で照明した場合、液晶層に入射する光の強度をI0とし、他方の直線偏光板を透過する光の強度をIとすると、強度Iは、下記等式(2)で表すことができる。
I=I0×sin2(Re×π/λ) …(2)
複屈折性Δnは波長依存性を有しており、複屈折性Δnと波長nとは比例関係にはない。それゆえ、等式(2)から明らかなように、透過光のスペクトルは、入射光のスペクトルとは異なるプロファイルを有することとなる。
【0104】
このように、液晶層を一対の直線偏光板で挟むと、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる透過光を得ることができる。これと同様に、液晶層を直線偏光板と反射層とで挟んだ場合にも、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる反射光を得ることができる。このような理由で、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2は着色光を射出する。
【0105】
次に、偏光子を用いて斜め方向から観察した場合に画像表示体22が表示する画像について説明する。
図11は、偏光子を用いて斜め方向から観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の一例を示す斜視図である。
【0106】
図11には、透過軸がX方向又はY方向に対して45°の角度を成すように直線偏光板PLを画像表示体22の上に載置し、白色光で照明して、X方向に垂直な面内で観察方向を傾けた場合に、画像表示体22が表示する画像を描いている。このような条件のもとで画像表示体22が表示する画像は、直線偏光板PLを介して正面方向から観察した場合に画像表示体22が表示する画像とは異なっている。
【0107】
具体的には、図11に示す条件のもとでは、画像表示体22は、例えば、表示部DP1においては、直線偏光板PLを介して法線方向から観察した場合とは異なる色に着色した背景IA1と、黒色の菱形IA2とを表示し、表示部DP2においては、直線偏光板PLを介して法線方向から観察した場合とは異なり且つ表示部DP1が表示する背景IA1の色とも異なる色に着色した背景IB1と、黒色の菱形IB2とを表示する。そして、この場合、画像表示体22は、表示部DP3においては、表示部DP1が表示する背景IA1の色と表示部DP2が表示する背景IB1の色との加法混色によって得られる色の背景IC1と、表示部DP1が表示する背景IA1と同じ色の菱形とを表示し、表示部DP4においては、表示部DP3が表示する背景IC1と同じ色の背景ID1と、表示部DP2が表示する背景IB1と同じ色の菱形ID2とを表示する。
【0108】
この状態から、観察方向をZ方向に平行な軸の周りで90°回転させると、画像表示体22が表示する画像が変化する。
【0109】
図12は、偏光子を用いて斜め方向から観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の他の例を示す斜視図である。
【0110】
図12には、観察方向をZ方向に平行な軸の周りで90°回転させたこと以外は、図11を参照しながら説明したのと同様の条件のもとで、画像表示体22が表示する画像を描いている。この条件のもとでは、画像表示体22は、表示部DP1においては、図11に示す条件のもとで表示部DP2が表示する背景IB1と同じ色の背景IA1と、黒色の菱形IA2とを表示し、表示部DP2においては、図11に示す条件のもとで表示部DP1が表示する背景IA1と同じ色の背景IB1と、黒色の菱形IB2とを表示する。そして、この場合、画像表示体22は、表示部DP3においては、表示部DP1が表示する背景IA1の色と表示部DP2が表示する背景IB1の色との加法混色によって得られる色の背景IC1と、表示部DP1が表示する背景IA1と同じ色の菱形IC2とを表示し、表示部DP4においては、表示部DP3が表示する背景IC1と同じ色の背景ID1と、表示部DP2が表示する背景IB1と同じ色の菱形ID2とを表示する。
【0111】
このように、直線偏光板PLを用いた場合、画像表示体22は、観察方向を傾けると、法線方向から観察した場合とは異なる画像を表示する。特に、法線方向から観察した場合に同じ色に見えていた部分が、観察方向を傾けることにより異なる色に見えるようになる。この理由を、以下に説明する。
【0112】
図10を参照しながら説明した観察条件からX方向に垂直な面内で観察方向を傾けると、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々では、液晶層228の光路長が長くなるのに加え、複屈折性Δnが変化する。即ち、観察方向を傾けると、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々で液晶層228のリターデイションが変化する。それ故、直線偏光板PLを用いて画像表示体22を法線方向から観察した場合に同じ色に見えた部分は、観察方向を傾けることにより異なる色を表示する可能性がある。
【0113】
上記の通り、この画像表示体22は、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合には、表示部DP1及びDP2にそれぞれ対応した第1及び第2パターンと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射されたか又はサブ画素SP1及びSP2の何れにもエネルギービームが照射されていない画素PXの配置に対応した第3パターンと、サブ画素SP1及びSP2の一方にのみエネルギービームが照射された画素PXの配置に対応した第4パターンとの重ね合わせを表示する。そして、この画像表示体22は、肉眼で観察した場合には、第1及び第2パターンを表示することなしに、第3及び第4パターンを表示する。
【0114】
この画像表示体22は、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合には、表示部DP1及びDP2にそれぞれ対応した第1及び第2パターンと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射されたか又はサブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射されていない画素PXの配置に対応した第3パターンと、サブ画素SP1及びSP2の一方にのみエネルギービームが照射された画素PXの配置に対応した第4パターンとの重ね合わせを表示する。そして、この画像表示体22は、肉眼で観察した場合には、第1及び第2パターンを表示することなしに、第3及び第4パターンを表示する。即ち、この画像表示体22には、可視像と潜像とが記録されている。従って、この画像表示体22は、複雑な視覚効果を示す。それ故、これを、例えば、図1に示す画像I1bの表示に利用すると、個人認証媒体1の偽造や改竄を防止する効果が向上する。
【0115】
また、この画像表示体22では、エネルギービームを照射することによって画像を書き込んでいる。エネルギービームを使用すると、サブ画素SP1及びSP2の寸法を小さくすることができるため、画像表示体22に高精細な画像を表示させることができ、従って、高画質を達成することができる。
【0116】
また、この画像表示体22では、液晶層228において炭化を生じさせている。内部で炭化を生じさせた液晶層228は、それ自体の偽造が困難である。それ故、この画像表示体22は偽造され難い。
【0117】
上述した画像表示体22には、様々な変形が可能である。
図13は、画像表示体の一変形例を概略的に示す断面図である。図14は、画像表示体の他の変形例を概略的に示す断面図である。図15は、画像表示体の更に他の変形例を概略的に示す断面図である。
【0118】
図13に示す画像表示体22は、液晶層228上に保護層227を更に含んでいること以外は、図2乃至図12を参照しながら説明した画像表示体22とほぼ同様である。保護層227は、液晶層228などを損傷から保護する。
【0119】
保護層227は、透過光の偏光を変化させないものであることが望ましい。保護層227の材料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリイミド樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は紫外線若しくは電子線硬化樹脂を、単独で又は混合して用いることができる。
【0120】
これら樹脂には、耐摩擦性等を付与するために、ポリエチレンワックス、カルナバワックス及びシリコンワックス等のワックス、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、シリカ、アルミナ及びタルク等の体質顔料、又はシリコーン油脂等の油脂類を、樹脂の透明性を損なわない範囲で添加することができる。
【0121】
また、図13に示す画像表示体22では、照射部IPにおいて、保護層227の表面又はその厚さのほぼ全体が炭化している。このように、エネルギービームの照射による炭化は、保護層227において生じさせてもよい。
【0122】
図14に示す画像表示体22は、照射部IPにおいて、配向層223の表面又はその厚さのほぼ全体が炭化していること以外は、図2乃至図12を参照しながら説明した画像表示体22と同様である。図15に示す画像表示体22は、照射部IPにおいて、散乱反射層224の表面又はその厚さのほぼ全体が炭化していること以外は、図2乃至図12を参照しながら説明した画像表示体22と同様である。
【0123】
通常、炭化によって反射率は低下するもののゼロではない。そのため、このように液晶層228の背面側で炭化を生じさせた場合、この炭化を生じさせた部分の前方に位置した液晶領域は表示に寄与し得る。それ故、例えば、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、炭化を生じさせた部分の前方に位置した液晶領域は着色して見える可能性がある。従って、液晶層228の背面側で炭化を生じさせると、より複雑な視覚効果を達成することができる。
【0124】
また、厚さ方向に炭化を生じさせた層、即ち、内部で炭化を生じさせた層は、それ自体の偽造が困難である。また、層間で炭化を生じさせた構造も、最表面上に印刷によって黒色パターンを形成することによって得られる構造と比較して、偽造が困難である。それ故、このような構造を採用した画像表示体22は偽造され難い。
【0125】
なお、特定の層でのみ炭化を生じさせるには、例えば、その層にのみ赤外線吸収剤を含有させればよい。また、エネルギービーム照射によって炭化を生じさせなくてもよい。エネルギービーム照射によって化学構造等の変化を生じ、それにより見え方が変化すればよい。
【0126】
エネルギービームを照射した照射部IPとエネルギービームを照射していない部分とでは、液晶層228の屈折率異方性が異なっていてもよい。即ち、エネルギービーム照射によって液晶層228の屈折率異方性が変化してもよい。この場合、液晶層228の背面側で炭化を生じさせれば、直線偏光板PLを用いて観察した場合に、これらの屈折率異方性の相違を表示に利用することができる可能性がある。即ち、このような画像表示体22は、例えば、直線偏光板PLを載置して観察した場合に、屈折率異方性が異なっている液晶領域に対応した部分が異なる色に見える可能性がある。従って、この画像表示体22は、より複雑な視覚効果を示す。
【0127】
ここでは、画素PXを2つのサブ画素SP1及びSP2で構成したが、画素PXを溝の長さ方向が異なる3つ以上のサブ画素で構成してもよい。この場合、より複雑な視覚効果を達成することができる。
【0128】
上述した画像表示体22は、ブランク媒体を用いて製造することができる。
図16は、ブランク媒体の一例を概略的に示す平面図である。
【0129】
このブランク媒体22Bは、照射部IPが設けられていないこと以外は、図2乃至図12を参照しながら説明した画像表示体22と同様の構造を有している。このようなブランク媒体22Bは、オンデマンドで画像表示体22を製造するのに適している。即ち、このブランク媒体22Bを予め準備しおき、必要なときに、これにエネルギービームを照射することにより、画像表示体22を得ることができる。
【0130】
上述した画像表示体22は、転写箔を用いて製造することも可能である。
図17は、図1に示す個人認証媒体の製造に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図である。図18は、図17に示す転写箔を用いて得られる画像表示体の一例を概略的に示す断面図である。
【0131】
図17に示す転写箔202は、例えば転写リボンである。転写箔202は、支持体226と、支持体226によって剥離可能に支持された転写材層22’とを含んでいる。
【0132】
支持体226は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体226は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体226の転写材層22’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0133】
転写材層22’は、剥離保護層227’と配向層223’と液晶層228’と散乱反射層224’とを含んでいる。剥離保護層227’と配向層223’と液晶層228’と散乱反射層224’とは、支持体226側からこの順に積層されている。転写材層22’にエネルギービーム線を照射して画像を書き込んだ後、その一部又は全部を、図18に示す画像表示体22として使用する。
【0134】
以上、パスポートとしての個人認証媒体100を例示したが、個人認証媒体100について上述した技術は、他の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証やIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。
【0135】
画像表示体22を貼り付ける基材の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示体22を貼り付ける基材は、プラスチック基板、金属基板、セラミックス基板、又はガラス基板であってもよい。
【0136】
画像表示体22に表示させる画像は、顔画像に加えて他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよい。また、画像表示体22に表示させる画像は、生体情報に加えて非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよく、生体情報の代わりに非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1…折り丁、2…表紙、11…紙片、21…表紙本体、22…画像表示体、22’…転写材層、22B…ブランク媒体、100…個人認証媒体、202…転写箔、224…散乱反射層、224’…散乱反射層、226…支持体、227…保護層、227’…剥離保護層、228…液晶層、228’…液晶層、DP1…表示部、DP2…表示部、DP3…表示部、DP4…表示部、I1a…画像、I1b…画像、I2…画像、I3…画像、IA1…背景、IA2…菱形、IB1…背景、IB2…菱形、IC1…背景、IC2…菱形、ID1…背景、ID2…菱形、IP…照射部、PX…画素、SP1…サブ画素、SP2…サブ画素。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。
【0003】
例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0004】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用する感熱転写記録方式のプリンタは広く普及している。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、そこに別の顔画像を記録することは、必ずしも困難ではない。
【0006】
特許文献1には、上述した方法で顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録することが記載されている。また、特許文献2には、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録することが記載されている。更に、特許文献3には、通常の顔画像と、パール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置することが記載されている。
【0007】
これら技術をパスポートに適用すると、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認することはできるものの、パール顔料は粒径が大きいため、これを用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面は、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含み、前記複数のサブ画素の各々は、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、前記主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、前記配向領域を間に挟んで前記液晶領域と向き合っているか又は前記液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含み、前記複数の画素の各々において前記複数のサブ画素は前記長さ方向が互いに異なっており、前記複数の画素の少なくとも一部が含んでいる前記複数のサブ画素の1つ以上にエネルギービームを照射することによって画像が記録されている画像表示体である。
【0011】
本発明の第2側面は、前記複数の画素の各々は、前記複数のサブ画素の1つである第1サブ画素と、前記複数のサブ画素の他の1つである第2サブ画素とを含み、前記複数の画素の一部は第1表示部を構成し、前記複数の画素の他の一部は第2表示部を構成し、前記第1及び第2表示部の各々は、前記第1及び第2サブ画素の双方に前記エネルギービームが照射された前記画素と、前記第1及び第2サブ画素の一方にのみ前記エネルギービームが照射された前記画素とを含み、前記第1表示部では前記エネルギービームが照射された前記第2サブ画素が一様に分布し、前記第2表示部では前記エネルギービームが照射された前記第1サブ画素が一様に分布しており、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、前記第1及び第2表示部にそれぞれ対応した第1及び第2パターンと、前記第1及び第2サブ画素の双方に前記エネルギービームが照射されたか又は前記第1及び第2サブ画素の何れにも前記エネルギービームが照射されていない前記画素の配置に対応した第3パターンと、前記第1及び第2サブ画素の一方にのみ前記エネルギービームが照射された前記画素の配置に対応した第4パターンとの重ね合わせを表示し、肉眼で観察した場合に前記第1及び第2パターンを表示することなしに前記第3及び第4パターンを表示する請求項1に記載の画像表示体である。
【0012】
本発明の第3側面は、前記エネルギービームが照射された部分では構成材料の炭化を生じている第1又は第2側面に係る画像表示体である。
【0013】
本発明の第4側面は、前記炭化は、前記散乱反射領域内で生じているか、又は、前記液晶領域と前記散乱反射領域との間で生じている第3側面に係る画像表示体である。
【0014】
本発明の第5側面は、前記炭化は、前記液晶領域内で生じている第3側面に係る画像表示体である。
【0015】
本発明の第6側面は、前記エネルギービームが照射された前記1つ以上のサブ画素の各々は、前記エネルギービームが照射されておらず、このサブ画素と前記長さ方向が等しいサブ画素とは、前記液晶領域の屈折率異方性が異なっている第1乃至第5側面の何れか1つに係る画像表示体である。
【0016】
本発明の第7側面は、前記画像は個人情報を含んでいる第1乃至第6側面の何れか1つに係る画像表示体である。
【0017】
本発明の第8側面は、前記個人情報は顔画像を含んだ第7側面に係る画像表示体である。
【0018】
本発明の第9側面は、第1乃至第8側面の何れか1つに係る画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備した個人認証媒体である。
【0019】
本発明の第10側面は、エネルギービームを照射することによって画像が記録された画像表示体の製造に使用するブランク媒体であって、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含み、前記複数のサブ画素の各々は、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、前記主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、前記配向領域を間に挟んで前記液晶領域と向き合っているか又は前記液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含み、前記複数の画素の各々において前記複数のサブ画素は前記長さ方向が互いに異なっているブランク媒体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示することが可能となる。
【0021】
本発明の第1側面に係る画像表示体は、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含んでいる。そして、この画像表示体には、少なくとも一部の画素が含んでいるサブ画素の1つ以上にエネルギービームを照射することによって画像が記録されている。こうすると、各サブ画素の寸法を小さくすることができるため、画像表示体に高精細な画像を表示させることができ、従って、高画質を達成することができる。
【0022】
また、この画像表示体において、各サブ画素は、長さ方向が揃い且つこの長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、先の主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、配向領域を間に挟んで液晶領域と向き合っているか又は液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含んでいる。各画素において、その画素が含んでいるサブ画素は、先の長さ方向が互いに異なっている。
【0023】
例えば、エネルギービームを照射することによって肉眼で知覚可能な色変化を生じる場合、この画像表示体は、肉眼で観察した場合に、エネルギービームを照射した照射部とエネルギービームを照射していない非照射部とからなるパターンを表示する。そして、例えば、この画像表示体は、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合には、長さ方向が揃った複数の溝から各々がなるパターンと、肉眼で観察した場合に表示するパターンとの重ね合わせを表示し、長さ方向が揃った複数の溝から各々がなるパターンのうち、少なくとも照射部と重なり合っていない部分は、例えば、画像表示体をその法線の周りで回転させることにより、表示色を変化させる。即ち、この画像表示体は、複雑な視覚効果を示す。
【0024】
本発明の第2側面に係る画像表示体は、第1側面に係る画像表示体について上述した項性を採用するのに加え、画素の各々は、複数のサブ画素の1つである第1サブ画素と、複数のサブ画素の他の1つである第2サブ画素とを含んでいる。複数の画素の一部は第1表示部を構成し、他の一部は第2表示部を構成している。第1及び第2表示部の各々は、第1及び第2サブ画素の双方にエネルギービームが照射された画素と、第1及び第2サブ画素の一方にのみエネルギービームが照射された画素とを含んでいる。第1表示部ではエネルギービームが照射された第2サブ画素が均一に分布し、第2表示部ではエネルギービームが照射された第1サブ画素が均一に分布している。そして、この画像表示体は、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、第1及び第2表示部にそれぞれ対応した第1及び第2パターンと、第1及び第2サブ画素の双方にエネルギービームが照射されたか又は第1及び第2サブ画素の何れにもエネルギービームが照射されていない画素の配置に対応した第3パターンと、第1及び第2サブ画素の一方にのみエネルギービームが照射された画素の配置に対応した第4パターンとの重ね合わせを表示し、肉眼で観察した場合に第1及び第2パターンを表示することなしに第3及び第4パターンを表示する。即ち、この画像表示体は、肉眼で観察した場合と、偏光子を用いて観察した場合とで、互いに異なる画像を表示する。即ち、この画像表示体は、より複雑な視覚効果を示す。
【0025】
本発明の第3側面に係る画像表示体は、第1又は第2側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、エネルギービームが照射された部分で構成材料の炭化を生じている。このような画像表示体は、肉眼で観察した場合に、非照射部において明色、例えば白色を表示し、照射部において暗色、例えば黒色を表示する。即ち、この画像表示体は、肉眼で観察した場合に視認性に優れた画像を表示する。
【0026】
本発明の第4側面に係る画像表示体では、第3側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、炭化を、散乱反射領域内で生じさせているか、又は、液晶領域と散乱反射領域との間で生じさせている。通常、炭化によって反射率は低下するもののゼロではないので、このように液晶領域の背面側で炭化を生じさせた場合、この炭化を生じさせた部分の前方に位置した液晶領域は表示に寄与し得る。それ故、例えば、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、炭化を生じさせた部分の前方に位置した液晶領域は着色して見える可能性がある。このように、この画像表示体は、より複雑な視覚効果を示す。
【0027】
また、内部で炭化を生じさせた散乱反射領域内は、それ自体の偽造が困難である。他方、液晶領域と散乱反射領域との間で炭化を生じさせた構造は、液晶領域の前方に印刷によって黒色パターンを形成することによって得られる構造と比較して、偽造が困難である。それ故、この画像表示体は偽造され難い。
【0028】
本発明の第5側面に係る画像表示体では、第3側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、炭化を液晶領域内で生じさせている。内部で炭化を生じさせた液晶領域内は、それ自体の偽造が困難である。それ故、この画像表示体は偽造され難い。
【0029】
本発明の第6側面に係る画像表示体では、第1乃至第5側面の何れか1つに係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、エネルギービームが照射された1つ以上のサブ画素の各々は、エネルギービームが照射されておらず、このサブ画素と先の長さ方向が等しいサブ画素とは、液晶領域の屈折率異方性が異なっている。このような画像表示体は、例えば、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、屈折率異方性が異なっている液晶領域に対応した部分が異なる色に見える可能性がある。即ち、この画像表示体は、より複雑な視覚効果を示す。
【0030】
本発明の第7側面に係る画像表示体は、第1乃至第6側面の何れか1つに係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、画像が個人情報を含んでいる。この画像表示体が表示する個人情報の改竄は極めて困難である。
【0031】
本発明の第8側面に係る画像表示体は、第7側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、個人情報は顔画像を含んでいる。顔画像は、生体情報として一般的であり、目視による個人認証に適している。
【0032】
本発明の第9側面に係る個人認証媒体は、第1乃至第8側面の何れか1つに係る画像表示体と、この画像表示体を支持した基材とを具備している。それ故、この個人認証媒体は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示するのに加え、改竄が困難である。
【0033】
本発明の第10側面に係るブランク媒体は、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含んでいる。これらサブ画素の各々は、長さ方向が揃い且つこの長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、先の主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、配向領域を間に挟んで液晶領域と向き合っているか又は液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含んでいる。そして、画素の各々において、この画素が含んでいるサブ画素は、先の長さ方向が互いに異なっている。このようなブランク媒体には、サブ画素の一部にエネルギービームを照射することによって画像を記録することができる。このようにして得られる画像表示体は、第1側面に係る画像表示体について上述したのと同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一態様に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す個人認証媒体に採用可能な構造の一例を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示す構造の一部を拡大して示す平面図。
【図4】図2に示す構造の他の部分を拡大して示す平面図。
【図5】図2に示す構造の更に他の部分を拡大して示す平面図。
【図6】図2に示す構造の更に他の部分を拡大して示す平面図。
【図7】第1サブ画素に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図8】第2サブ画素に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図9】エネルギービームを照射したサブ画素の一例を概略的に示す断面図。
【図10】肉眼で観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の一例を示す平面図。
【図11】偏光子を用いて斜め方向から観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の一例を示す斜視図。
【図12】偏光子を用いて斜め方向から観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の他の例を示す斜視図。
【図13】画像表示体の一変形例を概略的に示す断面図。
【図14】画像表示体の他の変形例を概略的に示す断面図。
【図15】画像表示体の更に他の変形例を概略的に示す断面図。
【図16】ブランク媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図17】図1に示す個人認証媒体の製造に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図18】図17に示す転写箔を用いて得られる画像表示体の一例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0036】
図1は、本発明の一態様に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図である。
図1に示す個人認証媒体100は、パスポートなどの冊子体である。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
【0037】
この個人認証媒体100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターン12が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0038】
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0039】
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0040】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0041】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0042】
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2及びI3を表示している。
画像I1a、I2及びI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2及びI3は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2及びI3の1つ以上を省略してもよい。
【0043】
画像I1a、I2及びI3は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2及びI3の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a、I2及びI3は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームなどのエネルギービームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2及びI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0044】
画像I1bは、複数の画素の配列が表示する画像である。画像I1bは、後で詳述するように、エネルギービームを照射することによって書き込まれている。
【0045】
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0046】
画像11bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像11bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0047】
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
【0048】
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像11a及び11bの少なくとも一方とを組み合わせると、個人認証媒体100の改竄をより困難にすることができる。
【0049】
次に、表紙2の構造について、図2乃至図9を参照しながら説明する。
図2は、図1に示す個人認証媒体に採用可能な構造の一例を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す構造の一部を拡大して示す平面図である。図4は、図2に示す構造の他の部分を拡大して示す平面図である。図5は、図2に示す構造の更に他の部分を拡大して示す平面図である。図6は、図2に示す構造の更に他の部分を拡大して示す平面図である。図7は、第1サブ画素に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。図8は、第2サブ画素に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。図9は、エネルギービームを照射したサブ画素の一例を概略的に示す断面図である。
【0050】
なお、X方向は後述する画像表示体の表示面に平行な方向であり、Y方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり且つX方向に対して垂直な方向であり、Z方向はX及びY方向に対して垂直な方向である。また、図2に示す構造は、表紙2のうち画像I1bに対応した部分に採用可能な構造である。
【0051】
この表紙2は、図7乃至図9に示すように、表紙本体21と画像表示体22とを含んでいる。
表紙本体21は、個人認証媒体100の基材であって、典型的には紙片である。表紙本体21は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。表紙本体21は、個人認証媒体100を閉じた状態において、折り丁1を挟み込むように二つ折りされている。
【0052】
画像表示体22は、多層構造を有している層である。画像表示体22は、個人認証媒体100を閉じた状態において折り丁1と向き合う表紙本体21の主面に貼り付けられている。
【0053】
画像表示体22は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する画像表示層(図示せず)を含んでいる。この画像表示層が表示する画像は、典型的には画像I1aを含んでいる。
【0054】
この画像表示層は、光の吸収を利用して画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する。この画像表示層は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部に対応したパターン形状を有している。この画像表示層は、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とで構成することができる。このような画像表示層は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することにより得ることができる。また、この画像表示層の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0055】
この画像表示層は、パターニングされていなくてもよい。即ち、この画像表示層は、連続膜であってもよい。この場合、画像表示層は、例えば、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームなどのエネルギーで描画することにより得ることができる。
【0056】
この画像表示層は、省略することができる。例えば、この画像表示層は、画像表示体22の構成要素とせずに、表紙本体21上に設けてもよい。
【0057】
画像表示体22は、図7乃至図9に示すように、配向層223と、散乱反射層224と、液晶層228とを更に含んでいる。
【0058】
配向層223は、透明であり、典型的には光学的に略等方性である。配向層223は、液晶層228内のメソゲン基の配向方向を制御する。
【0059】
配向層223は、長さ方向が揃った複数の溝が各々の前面に設けられ、溝の長さ方向が異なる複数の配向領域を含んでいる。ここでは、配向層223は、溝の長さ方向がX方向に揃った第1配向領域と、溝の長さ方向がY方向に揃った第2配向領域とを含んでいる。
【0060】
第1及び第2配向領域は、X方向とY方向とに交互に配列している。即ち、ここでは、第1及び第2配向領域は、市松模様状に配列している。第1及び第2配向領域は、市松模様状に配列していなくてもよい。例えば、第1及び第2配向領域は、ストライプ状に配列していてもよい。
【0061】
第1及び第2配向領域の各々において、溝の長さは、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。また、長さ方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。更に、幅方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。
【0062】
溝を略平行とし且つピッチを適宜設定することなどにより、これら溝で回折格子を構成することができる。或いは、例えば、様々な長さの溝を或る程度ランダムでありながら、平均的には一方向に配置するように並べた場合、これら溝で一方向性拡散パターンを形成することができる。なお、この一方向性拡散パターンは、溝の長さ方向に垂直な面内での拡散能が、配向層223の主面に垂直であり且つ溝の長さ方向に平行な面内での拡散能と比較してより大きい光拡散特性、即ち、光散乱異方性を示すパターンである。ここでは、簡略化のため、第1及び第2配向領域に設けられた溝は一方向性拡散パターンを構成しておらず、回折格子を構成していることとする。
【0063】
配向層223は、例えば以下の方法によって形成することができる。
まず、基材上にレジストを塗布する。このレジスト層を、配向層223の溝又はそれらの間の筋に対応した形状にパターニングして、原版を得る。レジスト層のパターニングには、例えば、電子線描画を利用する。次に、電鋳を利用して、原版の表面に設けられたレリーフ構造を複製し、複製版を得る。そして、この複製版を熱圧して、その表面に設けられたレリーフ構造を樹脂層の表面に転写することにより、配向層223を得る。
【0064】
液晶層228は、配向層223の溝が設けられた面を被覆している。液晶層228は、固化された液晶材料からなる。
【0065】
液晶層228は、例えば、以下の方法により形成する。即ち、配向層223の溝が設けられた面に、重合性及び/又は架橋性の液晶材料を塗布し、溝に沿って配向した後、この塗膜を固化させる。この液晶材料としては、例えば、光重合タイプのネマチック液晶又はスメクチック液晶材料を使用する。この場合、塗膜の固化は、例えば、紫外線などの光を照射することにより行う。以上のようにして、液晶層228を得る。なお、重合性及び/又は架橋性の液晶材料の代わりに、ガラス転移温度が個人認証媒体100の使用温度範囲の上限値と比較してより高い液晶材料を使用してもよい。
【0066】
液晶層228は、遅相軸の向きが互いに異なる複数の液晶領域を含んでいる。即ち、液晶層228は、メソゲン基の配向方向が互いに異なる複数の液晶領域を含んでいる。ここでは、液晶層228は、第1及び第2液晶領域を含んでいる。第1及び第2液晶領域は、それぞれ、配向層223の第1及び第2配向領域上に位置している。
【0067】
第1及び第2液晶領域の各々では、メソゲン基は、これと隣接した配向領域に設けられた溝の長さ方向に対して略平行に配向している。液晶領域の遅相軸は、溝の長さ方向に対して略平行である。この画像表示体22には、第1及び第2液晶領域を利用して潜像が記録されている。
【0068】
散乱反射層224は、配向層223の背面側に位置している。散乱反射層224は、光散乱性を有している。散乱反射層224は、直線偏光などの偏光を照射した場合に、入射光の偏光状態をほぼ維持したまま散乱反射する。散乱反射層224は、肉眼で観察した場合及び偏光子を介して観察した場合の双方において、画像表示体22が表示する画像の視認性を向上させる役割を果たす。
【0069】
なお、散乱反射層224は、複数の散乱反射領域を含んでいる。ここでは、散乱反射層224は、第1及び第2散乱反射領域を含んでいる。第1及び第2散乱反射領域は、それぞれ、配向層223の第1及び第2配向領域の背面側に位置している。
【0070】
散乱反射層224は、例えば、アルミニウムなどの金属粒子を光透過性の樹脂中に分散させてなる。
【0071】
金属粒子は、金属又は合金からなる。金属又は合金としては、例えば、アルミニウム、白金、金、銀、銅、チタン、ビスマス、ゲルマニウム、インジウム、錫、又はそれらの1つ以上を含んだ合金を使用することができる。これらの中でも、アルミニウムは、可視域、赤外域及び近紫外域の全体に亘って反射率が高い。しかも、アルミニウムは、酸化に対する耐性が高い。従って、金属粒子としては、アルミニウム粒子を使用することが好ましい。
【0072】
金属粒子を光透過性樹脂中に分散させてなる散乱反射層224には、画像表示体22を表紙本体21に接着するための接着層としての役割を担わせることができる。この場合、光透過性樹脂としては、例えば、感熱接着剤及び感圧接着剤などの接着剤として使用可能な樹脂を使用する。この樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリベンゾイミダゾール、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、メラミン樹脂、レゾルシノール樹脂、又はそれらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0073】
散乱反射層224として、表面に微細な凹凸構造が設けられた金属層を使用してもよい。このような散乱反射層224は、例えば、微細な凹凸構造が設けられた下地上にアルミニウム等の金属又は合金を蒸着することによって得られる。
【0074】
散乱反射層224として、微細凹凸構造が設けられた1層又は多層の誘電体層を使用してもよい。散乱反射層224として多層の誘電体層を使用する場合、例えば、下地上に微細な凹凸構造を設けておき、その上に硫化亜鉛等の高屈折率材料とフッ化マグネシウム等の低屈折率材料とを交互に蒸着することによって散乱反射層224を得ることができる。
【0075】
各配向領域と、その前面側及び背面側に位置した液晶領域及び散乱反射領域とは、サブ画素を構成している。ここでは、第1配向領域と第1液晶領域と第1散乱反射領域とは、図2乃至図7に示すサブ画素SP1を構成している。また、第2配向領域と第2液晶領域と第2散乱反射領域とは、図2乃至図6及び図8に示すサブ画素SP2を構成している。そして、X方向に隣り合った一対のサブ画素SP1及びSP2は、図2乃至図6に示す画素PXを構成している。画素PXは、X方向とY方向とに配列している。
【0076】
サブ画素SP1及びSP2の一部は、レーザビーム及び電子ビームなどのエネルギービームが照射されている。図2乃至図6及び図9において、参照符号IPは、エネルギービームを照射した照射部を表している。
【0077】
照射部IPは、例えば、他の部分と比較して反射率がより小さい。例えば、照射部IPでは、液晶層228においてその構成材料の少なくとも一部が炭化している。炭化した照射部IPは、図1に示す画像I1bの表示に利用される。ここでは、一例として、照射部IPでは液晶層228の構成材料が炭化しており、この炭化を生じた照射部IPは黒色を表示することとする。
【0078】
なお、図2では、理解を容易にするために構造を簡略化している。従って、図2に示す構造が表示する画像は、図1に示す画像表示体22が表示する画像I1bと一致しない。
【0079】
レーザビームの照射には、例えば、CO2レーザ、LD励起YAGレーザ又はLD励起YVO4レーザを使用することができる。レーザビームとしては、例えば、波長が赤外域にある1062nmのレーザビーム又は波長が可視域にある532nmのレーザビームを使用する。
【0080】
波長が1062nmのレーザビームを使用した場合、液晶層228に赤外光を吸収する材料を添加することにより、レーザによる印字を、効率よく高速で行うことが可能となる。この場合には、赤外線吸収剤は、その吸収波長域が、使用するレーザの波長を含むように選択する。
【0081】
この画像表示体22は、図2に示すように、照射部IPの配置に応じて4つの表示部DP1乃至DP4に区分される。
【0082】
表示部DP1では、図3に示すように、エネルギービームが照射されたサブ画素SP2が一様に分布している。そして、サブ画素SP1には、一部にのみエネルギービームが照射されておいる。即ち、表示部DP1は、サブ画素SP1及びSP2のうちサブ画素SP2にのみエネルギービームが照射された画素PXと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射された画素PXとによって構成されている。そして、エネルギービームが照射されたサブ画素SP1は、菱形のパターンを形成している。なお、「一様に分布している」ことは、規則的に配列していることを必要としている訳ではない。
【0083】
表示部DP2では、図4に示すように、エネルギービームが照射されたサブ画素SP1が一様に分布している。そして、サブ画素SP2には、一部にのみエネルギービームが照射されておいる。即ち、表示部DP2は、サブ画素SP1及びSP2のうちサブ画素SP1にのみエネルギービームが照射された画素PXと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射された画素PXとによって構成されている。そして、エネルギービームが照射されたサブ画素SP2は、菱形のパターンを形成している。
【0084】
表示部DP3では、図5に示すように、エネルギービームが照射されていないサブ画素SP1が一様に分布している。そして、サブ画素SP2には、一部にのみエネルギービームが照射されておいる。即ち、表示部DP3は、サブ画素SP1及びSP2のうちサブ画素SP2にのみエネルギービームが照射された画素PXと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射されていない画素PXとによって構成されている。そして、エネルギービームが照射されたサブ画素SP2は、菱形のパターンを形成している。
【0085】
表示部DP4では、図6に示すように、エネルギービームが照射されていないサブ画素SP2が一様に分布している。そして、サブ画素SP1には、一部にのみエネルギービームが照射されておいる。即ち、表示部DP4は、サブ画素SP1及びSP2のうちサブ画素SP1にのみエネルギービームが照射された画素PXと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射されていない画素PXとによって構成されている。そして、エネルギービームが照射されたサブ画素SP1は、菱形のパターンを形成している。
【0086】
次に、この画像表示体22が、肉眼で観察した場合に表示する画像について、図10を参照しながら説明する。
図10は、肉眼で観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の一例を示す平面図である。
【0087】
上記の通り、照射部IPは、白色光で照明した場合に黒色を表示する。そして、ここでは、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に、白色を表示することとする。また、サブ画素SP1及びSP2のピッチは、例えば100μm程度と、十分に小さいこととする。そして、エネルギービームが照射されていないサブ画素SP1及びSP2は、同一の構造を有していることとする。
【0088】
この場合、白色光で照明し、肉眼で観察したときには、サブ画素SP1及びSP2の双方がエネルギービームを照射された画素PXは黒色を表示し、サブ画素SP1及びSP2の双方がエネルギービームを照射されていない画素PXは白色を表示する。そして、サブ画素SP1及びSP2の一方のみがエネルギービームを照射された画素PXは、加法混色によって灰色を表示する。従って、画像表示体22は、図10に示すように、表示部DP1及びDP2の各々では、灰色の背景と黒色の菱形とを表示し、表示部DP3及びDP4の各々では、白色の背景と灰色の菱形とを表示する。
【0089】
なお、このとき、表示部DP1及びDP2が表示する黒色は同一であり、表示部DP3及びDP4が表示する白色も同一である。そして、表示部DP1乃至DP4が表示する灰色も同一である。
【0090】
次に、偏光子を用いて正面方向から観察した場合に画像表示体22が表示する画像について説明する。
図2に示す画像表示体22の上に直線偏光板を載置し、白色光で照明して、正面から直線偏光板を介して画像表示体22を観察した場合、画像表示体22が表示する画像は、直線偏光板の透過軸とX方向又はY方向とが成す角度に応じて変化する。例えば、直線偏光板の透過軸がX方向又はY方向に平行である場合、画像表示体22は、全体的に明るさが暗いこと以外は、図10を参照しながら説明したのとほぼ同様の画像を表示する。そして、直線偏光板の透過軸がX方向又はY方向に対して45°の角度を成している場合、画像表示体22は、表示部DP1及びDP2では、例えば着色した背景IA1及びIB1と、黒色の菱形IA2及びIB2とを表示する。そして、この場合、画像表示体22は、表示部DP3及びDP4では、例えば、表示部DP1及びDP2が表示する背景IA1及びIB1と比較してより明るく着色した背景IC1及びID1と、表示部DP1及びDP2が表示する背景IA1及びIB1と同様に着色した菱形IC2及びID2とを表示する。
【0091】
直線偏光板の透過軸がX方向又はY方向に対して成す角度を45°とした場合に、画像表示体22が上述した画像を表示する理由を以下に説明する。
【0092】
直線偏光板に照明光として白色光を照射すると、直線偏光板は、その透過軸に平行な偏光面(電場ベクトルの振動面)を有する直線偏光を透過させ、その透過軸に垂直な偏光面を有する直線偏光を吸収する。ここで、白色光は、可視光域内の全ての波長成分を含んだ連続スペクトル光を意味する。例えば、白色光は、可視領域の全域で全ての単位波長幅当りの光のエネルギーが等しい連続スペクトル光である。
【0093】
エネルギービームを照射していないサブ画素SP1に入射した直線偏光は、図7に示す液晶層228を透過する。サブ画素SP1では、液晶層228の遅相軸はX方向に対して45°の角度を成している。従って、例えば、先の直線偏光のうち、或る特定波長λ0の光成分は、液晶層228を透過することにより右円偏光へと変換され、残りの光成分は、液晶層228を透過することにより右楕円偏光へと変換される。
【0094】
これら右円偏光及び右楕円偏光は、配向層223に入射する。
配向層223を透過した回折光としての右円偏光及び右楕円偏光は、散乱反射層224によって反射される。右円偏光及び右楕円偏光は、それぞれ、散乱反射層224によって反射されることにより、左円偏光及び左楕円偏光へと変換される。また、散乱反射層224は光散乱性を有しているので、この反射光は散乱光である。
【0095】
この散乱光としての左円偏光及び左楕円偏光は、配向層223を透過する。配向層223の前面には回折格子が設けられているが、散乱反射層224からの反射光が散乱光であるのに加え、通常の環境中では照明光の入射角も様々である。それゆえ、散乱反射層224からの反射光は、散乱光として液晶層228に入射する。
【0096】
この入射光は、散乱光であるので、正面方向へ進行する光成分と、斜め方向へ進行する光成分とを含んでいる。正面方向へ進行する光成分のうち、特定波長λ0の左円偏光は、液晶層228を透過することにより偏光面が直線偏光板の透過軸に対して垂直な直線偏光へと変換される。そして、残りの光成分は、液晶層228を透過することにより、左楕円偏光若しくは左円偏光又は右楕円偏光若しくは右円偏光へと変換される。
【0097】
即ち、直線偏光板の透過軸に対して平行な偏光面を有する光成分のみに着目した場合、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1では、このサブ画素SP1に入射する光成分の強度に対するこのサブ画素SP1が射出する光成分の強度の比は、波長依存性を有することとなる。換言すれば、直線偏光板に入射する照明光の強度に対する直線偏光板が射出する表示光の強度の比は、波長依存性を有することとなる。従って、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1は、着色光を射出する。なお、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1が着色光を射出する理由については、後で数式を参照しながら説明する。
【0098】
エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2は、溝の長さ方向が90°異なっている点でのみ相違している。それゆえ、エネルギービームを照射していないサブ画素SP2は、円偏光又は楕円偏光の偏光面の回転方向が逆であること以外は、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1について説明したのと同様に振舞う。従って、エネルギービームを照射していないサブ画素SP2は、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1と同様に着色光を射出する。
【0099】
このように、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々は、着色光を射出する。それ故、サブ画素SP1及びSP2の何れにもエネルギービームが照射されていない画素PXは、着色して見える。そして、サブ画素SP1及びSP2の一方にのみエネルギービームが照射された画素PXは、サブ画素SP1及びSP2の何れにもエネルギービームが照射されていない画素PXと比較して暗く着色して見える。
【0100】
ここで、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々が着色光を射出する理由について、数式を参照しながら説明する。なお、これらサブ画素SP1及びSP2において、液晶層228は、波長λ0の光に対して四分の一波長板としての役割を果たすとする。
【0101】
透過軸がX方向又はY方向に対して45°の角度を成すように配置した直線偏光板が法線方向に射出した波長λ0の直線偏光は、偏光面がX方向に垂直な直線偏光成分と偏光面がY方向に垂直な直線偏光成分との和であると考えることができる。エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々では、液晶層228のX方向についての屈折率は異常光線屈折率ne及び常光線屈折率noの一方であり、Y方向についての屈折率は異常光線屈折率ne及び常光線屈折率noの他方である。従って、液晶層228は、これら直線偏光成分に、往路と復路との各々でλ0/4の位相差を与える。即ち、液晶層228は、これら直線偏光成分に合計でλ0/2の位相差を与える。そのため、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2が法線方向に射出する波長λ0の光は、直線偏光板を透過できない。
【0102】
ところで、リターデイションReは、下記等式(1)に示すように、液晶層の膜厚dとその複屈折性Δnとに依存する。
Re=Δn×d …(1)
ここで、Δn=ne−noである。
【0103】
一対の直線偏光板をそれらの透過軸が直交するように向かい合わせ、それらの間に液晶層をその光学軸が直線偏光板の透過軸に対して45°の角度を成すように介在させる。一方の直線偏光板をその法線方向から波長λの光で照明した場合、液晶層に入射する光の強度をI0とし、他方の直線偏光板を透過する光の強度をIとすると、強度Iは、下記等式(2)で表すことができる。
I=I0×sin2(Re×π/λ) …(2)
複屈折性Δnは波長依存性を有しており、複屈折性Δnと波長nとは比例関係にはない。それゆえ、等式(2)から明らかなように、透過光のスペクトルは、入射光のスペクトルとは異なるプロファイルを有することとなる。
【0104】
このように、液晶層を一対の直線偏光板で挟むと、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる透過光を得ることができる。これと同様に、液晶層を直線偏光板と反射層とで挟んだ場合にも、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる反射光を得ることができる。このような理由で、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2は着色光を射出する。
【0105】
次に、偏光子を用いて斜め方向から観察した場合に画像表示体22が表示する画像について説明する。
図11は、偏光子を用いて斜め方向から観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の一例を示す斜視図である。
【0106】
図11には、透過軸がX方向又はY方向に対して45°の角度を成すように直線偏光板PLを画像表示体22の上に載置し、白色光で照明して、X方向に垂直な面内で観察方向を傾けた場合に、画像表示体22が表示する画像を描いている。このような条件のもとで画像表示体22が表示する画像は、直線偏光板PLを介して正面方向から観察した場合に画像表示体22が表示する画像とは異なっている。
【0107】
具体的には、図11に示す条件のもとでは、画像表示体22は、例えば、表示部DP1においては、直線偏光板PLを介して法線方向から観察した場合とは異なる色に着色した背景IA1と、黒色の菱形IA2とを表示し、表示部DP2においては、直線偏光板PLを介して法線方向から観察した場合とは異なり且つ表示部DP1が表示する背景IA1の色とも異なる色に着色した背景IB1と、黒色の菱形IB2とを表示する。そして、この場合、画像表示体22は、表示部DP3においては、表示部DP1が表示する背景IA1の色と表示部DP2が表示する背景IB1の色との加法混色によって得られる色の背景IC1と、表示部DP1が表示する背景IA1と同じ色の菱形とを表示し、表示部DP4においては、表示部DP3が表示する背景IC1と同じ色の背景ID1と、表示部DP2が表示する背景IB1と同じ色の菱形ID2とを表示する。
【0108】
この状態から、観察方向をZ方向に平行な軸の周りで90°回転させると、画像表示体22が表示する画像が変化する。
【0109】
図12は、偏光子を用いて斜め方向から観察した場合に図2に示す構造が表示する画像の他の例を示す斜視図である。
【0110】
図12には、観察方向をZ方向に平行な軸の周りで90°回転させたこと以外は、図11を参照しながら説明したのと同様の条件のもとで、画像表示体22が表示する画像を描いている。この条件のもとでは、画像表示体22は、表示部DP1においては、図11に示す条件のもとで表示部DP2が表示する背景IB1と同じ色の背景IA1と、黒色の菱形IA2とを表示し、表示部DP2においては、図11に示す条件のもとで表示部DP1が表示する背景IA1と同じ色の背景IB1と、黒色の菱形IB2とを表示する。そして、この場合、画像表示体22は、表示部DP3においては、表示部DP1が表示する背景IA1の色と表示部DP2が表示する背景IB1の色との加法混色によって得られる色の背景IC1と、表示部DP1が表示する背景IA1と同じ色の菱形IC2とを表示し、表示部DP4においては、表示部DP3が表示する背景IC1と同じ色の背景ID1と、表示部DP2が表示する背景IB1と同じ色の菱形ID2とを表示する。
【0111】
このように、直線偏光板PLを用いた場合、画像表示体22は、観察方向を傾けると、法線方向から観察した場合とは異なる画像を表示する。特に、法線方向から観察した場合に同じ色に見えていた部分が、観察方向を傾けることにより異なる色に見えるようになる。この理由を、以下に説明する。
【0112】
図10を参照しながら説明した観察条件からX方向に垂直な面内で観察方向を傾けると、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々では、液晶層228の光路長が長くなるのに加え、複屈折性Δnが変化する。即ち、観察方向を傾けると、エネルギービームを照射していないサブ画素SP1及びSP2の各々で液晶層228のリターデイションが変化する。それ故、直線偏光板PLを用いて画像表示体22を法線方向から観察した場合に同じ色に見えた部分は、観察方向を傾けることにより異なる色を表示する可能性がある。
【0113】
上記の通り、この画像表示体22は、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合には、表示部DP1及びDP2にそれぞれ対応した第1及び第2パターンと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射されたか又はサブ画素SP1及びSP2の何れにもエネルギービームが照射されていない画素PXの配置に対応した第3パターンと、サブ画素SP1及びSP2の一方にのみエネルギービームが照射された画素PXの配置に対応した第4パターンとの重ね合わせを表示する。そして、この画像表示体22は、肉眼で観察した場合には、第1及び第2パターンを表示することなしに、第3及び第4パターンを表示する。
【0114】
この画像表示体22は、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合には、表示部DP1及びDP2にそれぞれ対応した第1及び第2パターンと、サブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射されたか又はサブ画素SP1及びSP2の双方にエネルギービームが照射されていない画素PXの配置に対応した第3パターンと、サブ画素SP1及びSP2の一方にのみエネルギービームが照射された画素PXの配置に対応した第4パターンとの重ね合わせを表示する。そして、この画像表示体22は、肉眼で観察した場合には、第1及び第2パターンを表示することなしに、第3及び第4パターンを表示する。即ち、この画像表示体22には、可視像と潜像とが記録されている。従って、この画像表示体22は、複雑な視覚効果を示す。それ故、これを、例えば、図1に示す画像I1bの表示に利用すると、個人認証媒体1の偽造や改竄を防止する効果が向上する。
【0115】
また、この画像表示体22では、エネルギービームを照射することによって画像を書き込んでいる。エネルギービームを使用すると、サブ画素SP1及びSP2の寸法を小さくすることができるため、画像表示体22に高精細な画像を表示させることができ、従って、高画質を達成することができる。
【0116】
また、この画像表示体22では、液晶層228において炭化を生じさせている。内部で炭化を生じさせた液晶層228は、それ自体の偽造が困難である。それ故、この画像表示体22は偽造され難い。
【0117】
上述した画像表示体22には、様々な変形が可能である。
図13は、画像表示体の一変形例を概略的に示す断面図である。図14は、画像表示体の他の変形例を概略的に示す断面図である。図15は、画像表示体の更に他の変形例を概略的に示す断面図である。
【0118】
図13に示す画像表示体22は、液晶層228上に保護層227を更に含んでいること以外は、図2乃至図12を参照しながら説明した画像表示体22とほぼ同様である。保護層227は、液晶層228などを損傷から保護する。
【0119】
保護層227は、透過光の偏光を変化させないものであることが望ましい。保護層227の材料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリイミド樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は紫外線若しくは電子線硬化樹脂を、単独で又は混合して用いることができる。
【0120】
これら樹脂には、耐摩擦性等を付与するために、ポリエチレンワックス、カルナバワックス及びシリコンワックス等のワックス、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、シリカ、アルミナ及びタルク等の体質顔料、又はシリコーン油脂等の油脂類を、樹脂の透明性を損なわない範囲で添加することができる。
【0121】
また、図13に示す画像表示体22では、照射部IPにおいて、保護層227の表面又はその厚さのほぼ全体が炭化している。このように、エネルギービームの照射による炭化は、保護層227において生じさせてもよい。
【0122】
図14に示す画像表示体22は、照射部IPにおいて、配向層223の表面又はその厚さのほぼ全体が炭化していること以外は、図2乃至図12を参照しながら説明した画像表示体22と同様である。図15に示す画像表示体22は、照射部IPにおいて、散乱反射層224の表面又はその厚さのほぼ全体が炭化していること以外は、図2乃至図12を参照しながら説明した画像表示体22と同様である。
【0123】
通常、炭化によって反射率は低下するもののゼロではない。そのため、このように液晶層228の背面側で炭化を生じさせた場合、この炭化を生じさせた部分の前方に位置した液晶領域は表示に寄与し得る。それ故、例えば、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、炭化を生じさせた部分の前方に位置した液晶領域は着色して見える可能性がある。従って、液晶層228の背面側で炭化を生じさせると、より複雑な視覚効果を達成することができる。
【0124】
また、厚さ方向に炭化を生じさせた層、即ち、内部で炭化を生じさせた層は、それ自体の偽造が困難である。また、層間で炭化を生じさせた構造も、最表面上に印刷によって黒色パターンを形成することによって得られる構造と比較して、偽造が困難である。それ故、このような構造を採用した画像表示体22は偽造され難い。
【0125】
なお、特定の層でのみ炭化を生じさせるには、例えば、その層にのみ赤外線吸収剤を含有させればよい。また、エネルギービーム照射によって炭化を生じさせなくてもよい。エネルギービーム照射によって化学構造等の変化を生じ、それにより見え方が変化すればよい。
【0126】
エネルギービームを照射した照射部IPとエネルギービームを照射していない部分とでは、液晶層228の屈折率異方性が異なっていてもよい。即ち、エネルギービーム照射によって液晶層228の屈折率異方性が変化してもよい。この場合、液晶層228の背面側で炭化を生じさせれば、直線偏光板PLを用いて観察した場合に、これらの屈折率異方性の相違を表示に利用することができる可能性がある。即ち、このような画像表示体22は、例えば、直線偏光板PLを載置して観察した場合に、屈折率異方性が異なっている液晶領域に対応した部分が異なる色に見える可能性がある。従って、この画像表示体22は、より複雑な視覚効果を示す。
【0127】
ここでは、画素PXを2つのサブ画素SP1及びSP2で構成したが、画素PXを溝の長さ方向が異なる3つ以上のサブ画素で構成してもよい。この場合、より複雑な視覚効果を達成することができる。
【0128】
上述した画像表示体22は、ブランク媒体を用いて製造することができる。
図16は、ブランク媒体の一例を概略的に示す平面図である。
【0129】
このブランク媒体22Bは、照射部IPが設けられていないこと以外は、図2乃至図12を参照しながら説明した画像表示体22と同様の構造を有している。このようなブランク媒体22Bは、オンデマンドで画像表示体22を製造するのに適している。即ち、このブランク媒体22Bを予め準備しおき、必要なときに、これにエネルギービームを照射することにより、画像表示体22を得ることができる。
【0130】
上述した画像表示体22は、転写箔を用いて製造することも可能である。
図17は、図1に示す個人認証媒体の製造に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図である。図18は、図17に示す転写箔を用いて得られる画像表示体の一例を概略的に示す断面図である。
【0131】
図17に示す転写箔202は、例えば転写リボンである。転写箔202は、支持体226と、支持体226によって剥離可能に支持された転写材層22’とを含んでいる。
【0132】
支持体226は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体226は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体226の転写材層22’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0133】
転写材層22’は、剥離保護層227’と配向層223’と液晶層228’と散乱反射層224’とを含んでいる。剥離保護層227’と配向層223’と液晶層228’と散乱反射層224’とは、支持体226側からこの順に積層されている。転写材層22’にエネルギービーム線を照射して画像を書き込んだ後、その一部又は全部を、図18に示す画像表示体22として使用する。
【0134】
以上、パスポートとしての個人認証媒体100を例示したが、個人認証媒体100について上述した技術は、他の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証やIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。
【0135】
画像表示体22を貼り付ける基材の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示体22を貼り付ける基材は、プラスチック基板、金属基板、セラミックス基板、又はガラス基板であってもよい。
【0136】
画像表示体22に表示させる画像は、顔画像に加えて他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよい。また、画像表示体22に表示させる画像は、生体情報に加えて非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよく、生体情報の代わりに非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1…折り丁、2…表紙、11…紙片、21…表紙本体、22…画像表示体、22’…転写材層、22B…ブランク媒体、100…個人認証媒体、202…転写箔、224…散乱反射層、224’…散乱反射層、226…支持体、227…保護層、227’…剥離保護層、228…液晶層、228’…液晶層、DP1…表示部、DP2…表示部、DP3…表示部、DP4…表示部、I1a…画像、I1b…画像、I2…画像、I3…画像、IA1…背景、IA2…菱形、IB1…背景、IB2…菱形、IC1…背景、IC2…菱形、ID1…背景、ID2…菱形、IP…照射部、PX…画素、SP1…サブ画素、SP2…サブ画素。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含み、前記複数のサブ画素の各々は、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、前記主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、前記配向領域を間に挟んで前記液晶領域と向き合っているか又は前記液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含み、前記複数の画素の各々において前記複数のサブ画素は前記長さ方向が互いに異なっており、前記複数の画素の少なくとも一部が含んでいる前記複数のサブ画素の1つ以上にエネルギービームを照射することによって画像が記録されている画像表示体。
【請求項2】
前記複数の画素の各々は、前記複数のサブ画素の1つである第1サブ画素と、前記複数のサブ画素の他の1つである第2サブ画素とを含み、前記複数の画素の一部は第1表示部を構成し、前記複数の画素の他の一部は第2表示部を構成し、前記第1及び第2表示部の各々は、前記第1及び第2サブ画素の双方に前記エネルギービームが照射された前記画素と、前記第1及び第2サブ画素の一方にのみ前記エネルギービームが照射された前記画素とを含み、前記第1表示部では前記エネルギービームが照射された前記第2サブ画素が一様に分布し、前記第2表示部では前記エネルギービームが照射された前記第1サブ画素が一様に分布しており、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、前記第1及び第2表示部にそれぞれ対応した第1及び第2パターンと、前記第1及び第2サブ画素の双方に前記エネルギービームが照射されたか又は前記第1及び第2サブ画素の何れにも前記エネルギービームが照射されていない前記画素の配置に対応した第3パターンと、前記第1及び第2サブ画素の一方にのみ前記エネルギービームが照射された前記画素の配置に対応した第4パターンとの重ね合わせを表示し、肉眼で観察した場合に前記第1及び第2パターンを表示することなしに前記第3及び第4パターンを表示する請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記エネルギービームが照射された部分では構成材料の炭化を生じている請求項1又は2に記載の画像表示体。
【請求項4】
前記炭化は、前記散乱反射領域内で生じているか、又は、前記液晶領域と前記散乱反射領域との間で生じている請求項3に記載の画像表示体。
【請求項5】
前記炭化は、前記液晶領域内で生じている請求項3に記載の画像表示体。
【請求項6】
前記エネルギービームが照射された前記1つ以上のサブ画素の各々は、前記エネルギービームが照射されておらず、このサブ画素と前記長さ方向が等しいサブ画素とは、前記液晶領域の屈折率異方性が異なっている請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項7】
前記画像は個人情報を含んでいる請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項8】
前記個人情報は顔画像を含んだ請求項7に記載の画像表示体。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の画像表示体と、
前記画像表示体を支持した基材と
を具備した個人認証媒体。
【請求項10】
エネルギービームを照射することによって画像が記録された画像表示体の製造に使用するブランク媒体であって、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含み、前記複数のサブ画素の各々は、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、前記主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、前記配向領域を間に挟んで前記液晶領域と向き合っているか又は前記液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含み、前記複数の画素の各々において前記複数のサブ画素は前記長さ方向が互いに異なっているブランク媒体。
【請求項1】
規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含み、前記複数のサブ画素の各々は、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、前記主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、前記配向領域を間に挟んで前記液晶領域と向き合っているか又は前記液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含み、前記複数の画素の各々において前記複数のサブ画素は前記長さ方向が互いに異なっており、前記複数の画素の少なくとも一部が含んでいる前記複数のサブ画素の1つ以上にエネルギービームを照射することによって画像が記録されている画像表示体。
【請求項2】
前記複数の画素の各々は、前記複数のサブ画素の1つである第1サブ画素と、前記複数のサブ画素の他の1つである第2サブ画素とを含み、前記複数の画素の一部は第1表示部を構成し、前記複数の画素の他の一部は第2表示部を構成し、前記第1及び第2表示部の各々は、前記第1及び第2サブ画素の双方に前記エネルギービームが照射された前記画素と、前記第1及び第2サブ画素の一方にのみ前記エネルギービームが照射された前記画素とを含み、前記第1表示部では前記エネルギービームが照射された前記第2サブ画素が一様に分布し、前記第2表示部では前記エネルギービームが照射された前記第1サブ画素が一様に分布しており、直線偏光を照射し、直線偏光子を介して観察した場合に、前記第1及び第2表示部にそれぞれ対応した第1及び第2パターンと、前記第1及び第2サブ画素の双方に前記エネルギービームが照射されたか又は前記第1及び第2サブ画素の何れにも前記エネルギービームが照射されていない前記画素の配置に対応した第3パターンと、前記第1及び第2サブ画素の一方にのみ前記エネルギービームが照射された前記画素の配置に対応した第4パターンとの重ね合わせを表示し、肉眼で観察した場合に前記第1及び第2パターンを表示することなしに前記第3及び第4パターンを表示する請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記エネルギービームが照射された部分では構成材料の炭化を生じている請求項1又は2に記載の画像表示体。
【請求項4】
前記炭化は、前記散乱反射領域内で生じているか、又は、前記液晶領域と前記散乱反射領域との間で生じている請求項3に記載の画像表示体。
【請求項5】
前記炭化は、前記液晶領域内で生じている請求項3に記載の画像表示体。
【請求項6】
前記エネルギービームが照射された前記1つ以上のサブ画素の各々は、前記エネルギービームが照射されておらず、このサブ画素と前記長さ方向が等しいサブ画素とは、前記液晶領域の屈折率異方性が異なっている請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項7】
前記画像は個人情報を含んでいる請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項8】
前記個人情報は顔画像を含んだ請求項7に記載の画像表示体。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の画像表示体と、
前記画像表示体を支持した基材と
を具備した個人認証媒体。
【請求項10】
エネルギービームを照射することによって画像が記録された画像表示体の製造に使用するブランク媒体であって、規則的に配列し、各々が複数のサブ画素を含んだ複数の画素を含み、前記複数のサブ画素の各々は、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が一方の主面に設けられた配向領域と、前記主面に支持されると共に固化された液晶材料からなる液晶領域と、前記配向領域を間に挟んで前記液晶領域と向き合っているか又は前記液晶領域を間に挟んで前記配向領域と向き合い、偏光性を有している照明光を照射した場合に偏光性を有している散乱光を反射光として射出する散乱反射領域とを含み、前記複数の画素の各々において前記複数のサブ画素は前記長さ方向が互いに異なっているブランク媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−126199(P2011−126199A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288177(P2009−288177)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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