説明

画像表示体、画像表示体の作製方法および情報媒体

【課題】高セキュリティ性を必要とされる情報媒体に対して、より高品質に作製可能な画像表示体を提供する。
【解決手段】ホログラム転写箔を複数の画像セルとして被転写基材301へ熱転写して得られる画像表示体300であって、前記画像表示体300は、少なくとも基材31と、該基材31の一方の面に剥離層33、受像層37、接着層36、透明反射層35、ホログラム層34が積層されてなり、前記ホログラム層34は、レリーフ構造が記録されているレリーフ構造形成部と、レリーフ構造が記録されていないレリーフ構造非形成部を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポートや査証などの冊子または、カード等の個人認証媒体上に個人特定の要となる顔画像や指紋を印刷・印字・描画する画像表示体に関わるものであり、特に、正等な所有者の顔などの個人識別情報を、レリーフ構造を設けた構造体とオンデマンド印刷技術を組み合わせることにより、個人識別情報の形成を容易にし、個人認証を実施する審査官が識別しやすくなり、かつ偽造および改竄が困難となること、もしくは審査官が摘発しやすくする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0003】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、昇華性(熱移行性)染料や、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプやワックス溶融タイプを用いた転写リボンによる感熱転写記録法、あるいは電子写真法などが検討されている。
パスポートへの画像再現方法としては、上記方式以外に、インクジェットプリンターによる記録法や(例えば、特許文献1参照)、COもしくはYAGレーザーおよび感熱発色剤を使用したレーザー印字記録法(例えば、特許文献2参照)、さらには基材中に存在する炭素(C)を利用して基材の深さ方向にも印字記録するレーザーエングレービング印字記録法(例えば、特許文献3参照)などがある。
【0004】
さらに、この種の個人認識データの入った画像表示体としては、画像データに基づいて形成された画像パターンをポリ塩化ビニルなどのカード基材上に備えたもの、あるいは上記画像パターンに加えてホログラムや回折格子あるいは多層干渉を用いた光学的薄膜(光学設計によりカラーシフト等の効果が得られる)を用いることによる画像に代表されるいわゆるOVD(Optical Variable Device)画像を具備するもの等が知られている。
【0005】
これらホログラムや回折格子のOVD技術は、高度な製造技術を要し、複製の難しいことから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、IDカード、プリペイドカード等のカード類に利用されてきた。さらには、その装飾性の高さから、包装材、書籍、パンフレット、POP等への利用も少なくない。これらOVDを物品に貼着するための手段として、従来より転写箔を用いて転写形成するといった方法が採られている。この種の転写は、支持体上に剥離層、ホログラムや回折格子の画像パターンを形成するレリーフ層と、公知の薄膜形成手段により形成される反射層、接着層を順次接着してなる構成のものが知られている。これら、転写箔に刻まれたOVDパターン(ホログラムおよび回折格子パターン)は、微小な凹凸パターンをニッケル性のプレス版に複製し、レリーフ層に過熱押圧するという周知の方法により大量複製が行なわれる。
【0006】
また、上記反射層は屈折率の異なる透明な物質を真空蒸着法等の公知の薄膜形成手段により形成することで(以下透明薄膜層と呼ぶ)、透明ホログラムや透明回折格子形成体となることは、公知の技術である。この場合、レリーフ層と透明薄膜層との間の屈折率差が大きい程、反射率も大きくなることは、光学的見地からも明らかである。但し、ここで一般的には、
(レリーフ層の屈折率)<(透明薄膜層の屈折率)
の関係がある。
この様にして得られたホログラムまたは回折格子構造物は、偽造防止手段としてクレジットカード、キャッシュカード、会員証カード、社員証カード、プリペイドカード、運転免許証等の各種カード類、商品券、ギフト券、株券等の各種紙券類や申込用紙、領収書、複写伝票等の各種帳票類や、パスポート、通帳、年金手帳等の各種冊子類の他、本や手帳などの表紙やパネル等のディスプレイ用途等の一部または全体に貼着して使用されている。尚、本発明で述べている全体とは、概念的な意味であり、柄、パターン等を問わず、スポット状、ストライプ状、格子上に貼着されたものや、定型、不定形の網点状のドットで貼着されたものも含まれる。
このようなOVD転写箔は偽造防止効果としては、充分な機能を果たすが、パスポートの様に顔写真などの画像形成後に該画像上にOVD転写層を熱的に転写して形成しているため、偽造技術の発達した現在では何らかの手法により転写層をいったん取り去り、画像データ等の改竄を行った後に改めてOVD転写箔をのせるといったことが行われる可能性もでてきた。
【0007】
さらに、盗難されたパスポート等の認証媒体の顔写真と顔の形状・雰囲気が似ている人を選定して印字写真を顔の上から貼ることで、画像データの改竄が行われる可能性もある。
また、顔写真などの画像情報を形成する手段としての昇華転写方式、熱溶融性の転写リボン方式あるいは電子写真方式などのプリンタは、昨今では一般に広く普及している状況を考慮すると、画像形成部を取り除いた後の領域に新たに画像を形成することは、必ずしも困難とは、言いきれなくなりつつある。
上記のような問題を解決すべく、顔写真等の個人を特定する情報を複数個入れる方法が考えられている。たとえば顔写真の中に電子透かし情報をいれ、その情報を同一媒体中のICチップに記憶して、電子透かし情報とICチップの情報を照合することで認証する方法がある(例えば、特許文献4参照)。また、顔写真情報の特徴点を数値化して、その値を2次元コード化し、同一媒体中に印字し、2次元コードのデータと顔写真の特徴点を照合することで認証する方法もある(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
しかしながら、上記方法では顔写真やICチップや2次元コードを読み取るための専用のデコーダーが必要となり、読み取り装置およびデコーダーを所有している人以外の認証は出来ないという問題がある。
また、他の方法として、顔写真などの画像情報をホログラムまたは回折格子等で形成するといった、ホログラムリボンを用いた直接熱転写方式が知られている(例えば特許文献6及び特許文献7参照)。これにより、カラー画像による顔写真等の改竄と同時にホログラム画像の改竄も行わなければならなくなるため、より改竄を困難にすることができる。
【0009】
しかしながら、上記方法で顔写真など高解像度が求められる画像情報を形成する場合、ホログラムリボンはインクリボンと比べて温度検知の性能が劣るため微細なドットが打ちづらく、ホログラムリボンの材料のキレ性や転写性が重要となる。この解決手段の一つとして、ホログラムリボンに微粒子を混入させてキレ性を上げる方法が考えられたが、微粒子の散乱によってホログラムリボンに多少の濁りが生じ、回折光の射出しない角度で印字部分が濁って視認される可能性がある。また顔写真などの画像情報を、異なる空間周波数のホログラムリボンを部分的に重ねて形成する場合、異なる空間周波数のホログラムリボンが重なって転写される部分と1種類の空間周波数のホログラムリボンのみで転写されている部分とで濁りの差が生じ、重なって転写される部分の視認性を落とす可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−226740号公報
【特許文献2】特開昭49−131142号公報
【特許文献3】特開2006−123174号公報
【特許文献4】特開2001−126046号広報
【特許文献5】特開2004−70532号広報
【特許文献6】特開平10−049647号公報
【特許文献7】特願平8−24226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされた発明であり、高セキュリティ性を必要とされる情報媒体(代表例としてはパスポート、査証、あるいは各種のカード類、等)に対して、より高品質に作製可能な画像表示体及び画像表示体の作製方法を提供することを目的とする。また、視認性を向上させ、偽造や改竄あるいは変造に対する予防性能や、万一それらの不正が為された場合でも、被疑不製品を、観察などによって容易に発見することが可能な、高品質の画像表示体の印字、及びその画像表示体を転写して得られる情報媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成すべくなされた請求項1に記載の発明は、ホログラム転写箔を複数の画像セルとして被転写基材へ熱転写して得られる画像表示体であって、前記画像表示体は、少なくとも基材と、該基材の一方の面に剥離層、受像層、接着層、透明反射層、ホログラム層が積層されてなり、前記ホログラム層は、レリーフ構造が記録されているレリーフ構造形成部と、レリーフ構造が記録されていないレリーフ構造非形成部を含むことを特徴とする画像表示体である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記複数の画像セルは、微小面積のドット形状あるいは微小幅の線形状で形成されることを特徴とする請求項1記載の画像表示体である。
請求項3に記載の発明は、前記画像表示体の透過率ηは、前記接着層に含まれる無機微粒子の含有率ρと関係式(1),(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示体である。
関係式(1);η<1.8ρ+0.15
関係式(2);0.02<ρ<1.0
請求項4に記載の発明は、ホログラム転写箔を複数の画像セルとして被転写基材へ熱転写して得られる画像表示体を作製する作成画像表示体の作製方法であって、前記画像表示体は、少なくとも基材と、該基材の一方の面に剥離層、受像層、接着層、透明反射層、ホログラム層を積層し、前記ホログラム層は、レリーフ構造が記録されているレリーフ構造形成部と、レリーフ構造が記録されていないレリーフ構造非形成部を含むことを特徴とする画像表示体の作製方法である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記複数の画像セルは、微小面積のドット形状あるいは微小幅の線形状で形成することを特徴とする請求項4に記載の画像表示体の作製方法である。
請求項6に記載の発明は、前記画像表示体の透過率ηは、前記接着層に含まれる無機微粒子の含有率ρと関係式(1),(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項4又は5に記載の画像表示体の作製方法である。
関係式(1);η<1.8ρ+0.15
関係式(2);0.02<ρ<1.0
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至3に記載の画像表示体を転写して作製することを特徴とする情報媒体である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1から6に記載した発明によれば、ホログラム層のレリーフ構造部から形成された、所有者に関する個別情報を有する画像表示体及び画像表示体の作製方法を提供することが可能となる。この画像表示体は転写箔を熱転写することで得られるため、撮影や描画等で作製するよりも早く、そして安価に作製可能である。ここでは、無機微粒子を加えた接着層により、ホログラム転写箔の転写部分の切れ性や転写性を向上することができるため、高解像度な画像の作成が可能となる。さらに、無機微粒子を混入させることで個別情報を有する画像表示体の視認性を下げることのないようレリーフ構造形成部の配置されていない部分へレリーフ構造非形成部を転写することで、画像の全面が同一の層で形成されている画像表示体を得る事ができるため、高品質な画像の作成が可能となる。
【0016】
請求項7に記載した発明によれば、ホログラム層のレリーフ構造部から形成された、所有者に関する個別情報を有する情報媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一態様に係る情報媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す情報媒体に熱転写可能な画像表示体の一部分を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示す画像表示体のI−I線に沿った断面図。
【図4】図1に示す情報媒体に熱転写可能な画像表示体の他の一部分を拡大して示す平面図。
【図5】図4に示す画像表示部のII−II線に沿った断面図。
【図6】図2乃至図5に示す画像表示体の作製に使用可能なホログラム転写箔の一例を概略的に示す平面図。
【図7】図6に示すホログラム転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図8】図7に示すホログラム転写箔を被転写基材に転写して画像表示体を得る転写方法を概略的に示す断面図。
【図9】図8に示す転写方法で作製した画像表示体の一例を概略的に示す断面図。
【図10】図9に示す画像表示体を転写して作製した情報媒体の一例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る情報媒体100を概略的に示す平面図である。
【0019】
図1に示す情報媒体100は、パスポートなどの冊子体である。図1には、開いた状態を描いている。
図1において、情報媒体100は、画像1a,1b及び画像2を表示している。画像1a及び画像2は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像1a及び画像2は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。
【0020】
画像1a及び画像2は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、画像1a及び画像2の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれら二つ以上の組み合わせを利用することができるが、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザービームで描画することにより画像1a及び画像2を形成することもできる。また、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像2の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0021】
画像1bは、ホログラム及び/又は回折格子のレリーフ構造が表示する画像である。画像1bは、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプ又は熱ロールを用いた熱転写記録とをこの順に行なうことによって形成する。
画像1a及び画像1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像1aが含んでいる顔画像と、画像1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。 また、画像1a及び画像1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0022】
画像1bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像1bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。画像2は、非生体個人情報と個人情報及び非個人情報を含んでいる。画像2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の一つ以上を構成している。
【0023】
次に、情報媒体100に熱転写可能な画像表示体の構造について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
図2は、図1に示す情報媒体100に熱転写可能な画像表示体300の一部分を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す画像表示体300のI−I線に沿った断面図である。図4は、図1に示す情報媒体100に熱転写可能な画像表示体300の他の一部分を拡大して示す平面図である。図5は、図4に示す画像表示体300のII−II線に沿った断面図である。
【0024】
画像セル32a,32c,32dは、ホログラム及び/又は回折格子のレリーフ構造を含んでいる。画像セル32a,32c,32dは、図2乃至図5に示すように、画像1bに対応したパターン形状を有している。画像セル32a,32c,32dの構造及び形成方法については、後で詳述する。画像セル32bはホログラム及び/又は回折格子のレリーフ構造を含んでいない。画像セル32b,32dは、図2乃至図5に示すように、画像セル32aが形成されている部分以外の面積を埋めている。すなわち、画像1bのネガ画像に対応したパターン形状を有している。
【0025】
剥離層33は、画像セル32a,32b,32c,32dを被覆している。剥離層33は、光透過性を有しており、典型的には透明である、剥離層33は、例えば樹脂から成る。
次に、図6乃至図9を参照しながら、画像セル32a,32b,32c,32dの構造と画像表示体300の製造方法および情報媒体100の製造方法を説明する。
【0026】
図6は、図2乃至図5に示す画像表示体300の製造に使用可能なホログラム転写箔200の一例を概略的に示す平面図である。図7は、図6に示すホログラム転写箔200の一例を概略的に示す断面図である。図8は、図7に示すホログラム転写箔200を被転写基材に転写して画像表示体を得る転写方法を概略的に示す断面図である。図9は、図8に示す転写方法で作製した画像表示体300の一例を概略的に示す断面図である。
【0027】
図6乃至図7に示すホログラム転写箔200は、例えば転写リボンである。ホログラム転写箔200は、基材21、剥離層23、ホログラム層24、透明反射層25、無機微粒子を含む接着層26を備えている。
基材21は、例えば樹脂フィルム又はシートである。基材21は、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン(PE)等のプラスチック材料から成る。
【0028】
剥離層23は、基材21を容易に剥離するためのものであって、基材21の表面上に形成されている。この剥離層23の材料としては、基材21から剥離しやすいものであればよく、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂にシリコーンやフッ素系の添加剤を加えたもの、あるいはフッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂などが挙げられる。剥離層23は、光透過性を有しており、典型的には透明である。
【0029】
ホログラム層24はホログラム転写箔200の一方の表面上に剥離層23を介して形成されている。このホログラム層24の材料としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン等の光硬化性樹脂、またはアクリルニトリルスチレン共重合体樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂、またはポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができ、上記の樹脂を所望の構造に賦型して硬化させることで剥離層23の表面上にホログラム層24を形成することができる。
【0030】
なお、ホログラム層24を形成する樹脂の硬化物は全て光透過性であり、屈折率は一般的には1.5程度である。また、ホログラム層24の膜厚は、耐熱性、箔切れ性、熱転写性を向上させるために薄いほうがよく、1.5μm以下であることが好ましい。
ホログラム層24は、ホログラム及び/又は回折格子のレリーフ構造形成部H1,H3,H4を含んでいる。このレリーフ構造形成部H1,H3,H4のパラメータとしては、
(1)レリーフ構造の空間周波数(格子線のピッチ:単位長さ当たりの格子線の本数)
(2)レリーフ構造の方向(格子線の方向)
があり、上記(1)に応じて、その画像セルが光って見える色が変化し、上記(2)に応じて、その画像セルが光って見える方向が変化する。
【0031】
本発明におけるホログラム転写箔200は、例えば、図6に示すように、レリーフ構造形成部H1と、レリーフ構造が記録されていないレリーフ構造非形成部H2、H1とは上記(1)のみを変化させたレリーフ構造形成部H3及び、H3とは上記(2)のみを変化させたレリーフ構造形成部H4を順に並べたホログラム層24より成る。このとき、H1とH3とでは定点で見える色が異なり、H1及びH3とH4とでは、見える角度が異なる。図示していないが、例えばレリーフ構造の空間周波数を異ならせたレリーフ構造形成部を3種類設け、定点での色の見え方がR,G,Bの3色になるようにすれば、フルカラーの画像を得ることが可能となる。
【0032】
透明反射層25は、ホログラム層24に入射した光を反射するものであって、ホログラム層24の表面上に形成されている。透明反射層25は省略することができるが、透明反射層を設けるとレリーフ構造形成部が表示する画像の視認性が向上する。
透明反射層25は、透明被膜または金属被膜のいずれであってもよく、透明反射層25が透明被膜からなる場合、ホログラム層24と屈折率が異なる誘電体層、誘電体多層膜、もしくは恒屈折率材料を透明被膜の材料として用いることが望ましい。特に、屈折率が2.0以上であるZnS、TiO、PbTiO、ZrO、ZnTe、PbCrO等を用いることが好ましい。これは、ホログラム層24との屈折率差が小さいと、ホログラム層24のレリーフ構造形成部による回折光の視覚効果が弱まってしまうためである。具体的には、ホログラム層24と透明被膜の屈折率差は少なくとも0.5以上あると良い。また、透明被膜の膜圧は50nm〜100nm程度であることが好ましい。
【0033】
透明反射層25が金属被膜からなる場合は、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金、銅の中から選択される単体又はそれらの混合物、合金等を用いることができる。こちらも、膜厚は50nm〜100nmが好ましい。
接着層26は透明反射層25を被転写基材301の表面上に接着するためのものであって、ホログラム層24と透明反射層25の表面上に形成されている。接着層26の材料としては、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂に無機微粒子を添加させたものである。
【0034】
添加させる無機微粒子としては、例えばシリカ等がある。この無機微粒子を、溶剤に対して固形分比10〜40で加えるのが好ましい。また、接着層26の層厚は、0.2〜1.0μmが好ましい。
ホログラム転写箔200は微小面積のドットあるいは微小幅の線形状で転写されるため、箔切れ性が要求される。無機微粒子を添加させるのは箔の切れ性を良くするためである。また、無機微粒子の添加は、例えば図4乃至図5に示すように、画像セルの上に画像セルを重ねて転写する場合、先に転写する画像セルと後に転写する画像セルの密着性を向上させる効果も持つ。
【0035】
上記ホログラム転写箔200を被転写基材301の表面上に転写して画像表示体300を得る方法を図8に示す。図7に示すホログラム転写箔200から図8(b)に示すような画像表示体300を得る場合は、図8(a)に示すように、ホログラム転写箔200を被転写基材301の表面上にホログラム転写箔200の基材21が上側となるように置き、ホログラム転写箔200の上面に熱圧15を図中に示す破線の間で加える。その後、熱圧15が加えられていない部分を被転写基材301から引き剥がすと、熱圧15が加えられた部分の基材21と剥離層23との間で剥離が生じる。これにより、図8(b)に示すように、熱圧15が加えられたホログラム転写箔200のみが被転写基材301の表面上に転写されるため、被転写基材301の表面上の所要位置にホログラム転写箔200が転写された画像表示体300を得ることができる。
【0036】
画像表示体300の製造においては、例えば、まず、撮像装置を用いて、人物の顔を撮影する。或いは、印画から顔画像や文字情報等を読み取る。これにより、画像情報を電子情報として得る。
次に、図9に示す被転写基材301を準備する。この被転写基材301は、基材31と、剥離層33及び受像層37とを含んでいる。上記基材31としては、例えば図7の基材21について例示したものを使用することができる。なお、図9において、34はホログラム層、35は透明反射層を示している。
【0037】
剥離層33は、剥離層33と画像セル32a,32b,32cの基材31からの剥離を容易にするためのものである。剥離層33としては、例えば図7の剥離層23について例示したものを使用することができる。
受像層37は、回折構造として、ホログラム及び回折格子の少なくとも一方を含んでいてもよい。例えば、受像層37の表面には、回折構造としてレリーフ構造が設けられていてもよい。こうすると、この回折構造が表示する画像と画像セル32a,32cが表示する画像とを重ねることまたは並べることができる。
【0038】
被転写基材301は、パターニングされた金属反射層、例えば不透明な金属反射層を更に含んでいてもよい。例えば、受像層37上に/又は剥離層33と受像層37との間にパターニングされた金属反射層を設け、この金属反射層に、網点、万線、他の図形、又はそれらの組み合わせを表示させてもよい。このようなパターンは、例えば、画像表示体300又は情報媒体100の真偽判定に利用することができる。
【0039】
次いで、この被転写基材301上に、先の顔画像あるいは文字情報に対応させた画像セル32a,32b,32cを形成する。具体的には、先の画像情報に基づいて図6及び図7に示すホログラム転写箔200から画像セル32a,32b,32cを順に図9に示す受像層37上へと熱転写する。この熱転写は、サーマルヘッドを利用して、ホログラム転写箔200から画像セルとして受像層37へと熱転写される部分が、先の顔画像あるいは文字情報に対応したポジ/ネガパターンを有するように行なう。
【0040】
ここでは、図6及び図7中のレリーフ構造形成部H1,H3が画像セル32a、32cにそれぞれ順に対応し、レリーフ構造非形成部H2が画像セル32bに対応している。
このようにして得られる画像セル32a,32b,32cは、サーマルヘッドを利用した熱転写によって形成するので、典型的には図2乃至図5に示すように複数のドット形状あるいは線形状から成る。これらドット状部あるいは線状部の各中心は、図2及び図4に破線で示す仮想的な平面格子の格子点上に位置している。
【0041】
なお、図2および図4において、先の平面格子は正方格子であるが、この平面格子は、三角格子及び矩形格子などの他の格子であってもよい。
ドット状部の径又は、線状部の線幅は、例えば0.085乃至0.508mm(約300乃至約50 dots per inch)の範囲内とし、典型的には0.085乃至0.169mm(約300乃至約150 dots per inch)の範囲内とする。この寸法を大きくすると、画像セル12a,12a’,12b,12b’で顔画像を表示する場合、高精細な画像を表示させることが難しくなる。また、この寸法を小さくすると、画像セルのパターン形状の再現性が低下する。
【0042】
図6乃至図7の接着層26に関する記述の中で示したとおり、図9に示す接着層36は、主剤となる樹脂に無機微粒子を添加させたものである。無機微粒子の添加は箔の切れ性と密着性を向上させる一方で、微粒子自体が光を散乱するため、結果としてホログラム転写箔200に濁りが生じる。ホログラム転写箔200の濁りは、画像セルを被転写基材301に転写することで大幅に低減するが、完全な透明とはならず、画像セルのある部分と無い部分とで透過率に微小の差が生じる。この微小な差は、画像セルから回折光が射出する角度では視認性に影響を与えないが、回折光が射出しない角度で観察した場合は、画像セルが転写されている部分のみがうすく濁って見え、画像表示体300の視認性を低下させる可能性がある。
【0043】
そこで、上記を改善すべく、図9では、画像セル32aを転写しない部分、すなわち、先の顔画像あるいは文字情報に対応したパターン以外の部分で画像セル32bを転写している。これにより、被転写基材301の受像層37の上面にある転写部第一層320が表現する画像情報は、全体が均一な透過率をもつため、画像表示体300の観察角度による視認性の低下を免れることができる。
【0044】
また、図9の画像セル32bの部分に、画像セル32bではなく、画像セル32aと異なるパラメータ(空間周波数及び/又は方向)を持つレリーフ構造からなる画像セルを配置してもよい。これにより、被転写基材301の受像層37の上面にある転写部第一層320で表現される画像情報は、全体が均一な透過率をもつだけでなく、観察角度を変えることで表示したい画像のポジーネガ画像が視認され、視認性を向上させる一方で、偽造防止性をも向上させることができる。
【0045】
また、図9に示すように、画像セル32aと画像セル32bで転写部第一層320を埋めた画像表示体300に、転写部第二層321として、32aとは異なるパラメータ(空間周波数及び/又は方向)を持つ画像セル32cを転写させてもよい。また、図示していないが、転写部第二層321の画像セル32cが配置されていない部分に、画像セル32bを配置してもよく、画像セル32a及び画像セル32cと異なるパラメータ(空間周波数及び/又は方向)を持つレリーフ構造からなる画像セルを配置してもよい。
【0046】
また、転写部第二層321の上に更に複数の層を追加して転写することも可能である。このとき、例えば定点での色の見え方がR,G,Bの3色になるよう、異なる空間周波数の画像セルを重ねることもできる。この場合、フルカラーの画像を得ることができ、表示画像の視認性がより向上する。
【0047】
画像セルを多数重ねる場合、画像セルが多数重なっている部分と画像セルが転写されていない部分とでは透過率の差が大きくなるため、視認性にも影響を与える。これを改善すべく、少なくとも転写部第一層320において、先の画像情報あるいは文字情報に対応して配置する画像セル以外の部分に、それとは異なるパラメータを持つ画像セル/あるいはレリーフ構造非形成部からなる画像セルを配置させて層全体が均一な透過率をもつようにするのが有効である。
【0048】
図6乃至図7の接着層26に関する記述の中で示したとおり、図9に示す接着層36の無機微粒子の添加量は溶剤に対し固形分比10〜40とする。無機微粒子の添加量が固形分比10以下だと、ホログラム転写箔200の箔切れ性が不十分となる。また、無機微粒子の添加量が固形分比40を超えると、ホログラム転写箔を被転写基材に転写した状態でも濁りがはっきりと確認され、その結果、画像表示体300の視認性を著しく低下させる。
【0049】
ここで、無機微粒子の固形分比を100で割った値を無機微粒子の含有率ρとする。また、接着層26の総厚(接着層の層の厚み×転写部の層数)を前記無機粒子の含有率ρと積算したものを接着層26の濁度εとする。
また、ホログラム転写箔200を被転写基材に転写して得られる画像表示体300の、レリーフ構造が形成されていない部分を測定した値、具体的には、分光式変角色差計を用い、入射光角度を45度とし受光器の角度=0度で受光した時の分光輝度値を、照射光源の分光輝度値で割った平均値を、画像表示体300の透過率ηとする。
【0050】
接着層26の濁度εと画像表示体300の透過率ηとは比例関係にあり、ここでは、画像表示体300の透過率ηは、接着層26の濁度ε×1.8+0.15よりも小さい値となる。また、接着層26の濁度εは、0.02よりも大きく1.0よりも小さくなるように設定する。例えば、無機微粒子の添加量が固形分比10で、接着層26の総厚が0.2μm(接着層=0.2μmで層数を1とする)の場合、接着層26の濁度ε=0.02となる。また、例えば、無機微粒子の添加量が固形分比40で、接着層26の総厚が2.4μm(接着層=0.6μmで層数を4とする)の場合、接着層26の濁度ε=0.96となる。
【0051】
次に、画像表示体300を熱転写して作製する情報媒体について、図10を参照しながら説明する。
図10は、図9に示す画像表示体300を転写して作製した情報媒体100の一例を概略的に示す断面図である。
図10に示す情報媒体100は、図9に示す画像表示体300を、基材31から基材11へ熱転写して得られる。この熱転写には、例えばホットスタンプを利用する。なお、ホットスタンプを利用した熱転写の代わりに、熱ロール又はサーマルヘッドを利用した熱転写を行なってもよい。以上のようにして、情報媒体100を得る。
【0052】
基材11には、接着強さを高めるために、接着アンカー層を形成しておいてもよい。
情報媒体100を基材31に高い接着強さで接着させることが難しい場合、接着層を介して、基材11へと熱転写してもよい。例えば、接着リボンを使用してもよい。これを使用すると、情報媒体100と基材11との接着強さを高めることができる。なお、この方法によると、図10に示すように、画像セルと基材11との間に接着層46が介在した構造が得られる。
【0053】
以上、パスポートとしての情報媒体100を例示したが、情報媒体100について上述した技術は、他の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証やIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。
画像表示体300を貼り付ける基材の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示体300を貼り付ける基材は、プラスチック基板、金属基板、セラミックス基板、又はガラス基板であってもよい。
【0054】
画像表示体300を貼り付ける基材が、例えば、表面粗さの小さい基材であった場合、図9を参照しながら示した、表示画像を形成している画像セル以外の部分を、パラメータの異なる画像セル/あるいはレリーフ構造非形成部を持つ画像セルで埋めるという方法は特に有効である。これは、画像セルの有無による濁りの差が、表面粗さの小さい基材では視認しやすいためである。
【実施例】
【0055】
<例1:画像表示体D1の製造>
以下のようにしてホログラム転写箔200を製造した。
まず、基材21として、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この基材21上に、グラビアコータを用いて、剥離層23と熱可塑性樹脂層とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離層23の材料としてはアクリル樹脂を使用し、熱可塑性樹脂層の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離層23及び熱可塑性樹脂層の乾燥後の膜厚は、それぞれ、0.6μm及び0.7μmであった。
【0056】
次に、ロールエンボス装置を用いた熱プレスにより、熱可塑性樹脂の表面に、ホログラムとしてのレリーフ構造を形成した。このとき、形成した回折構造の深さは約100nmであり、空間周波数は1000本/mmとした。また、同一の熱可塑性樹脂の表面に、レリーフ構造を形成したのと同じ面積だけレリーフ構造を形成していない部分を設けた。
【0057】
次いで、熱可塑性樹脂のレリーフ構造上に、蒸着法により硫化亜鉛からなる透明反射層25を形成した。透明反射層25の膜厚は50nmとした。
更に、この透明反射層上に、熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂に無機微粒子としてシリカを添加させた接着層26を、グラビアコータを用いて形成した。シリカの添加量は溶剤に対し固形分比20とし、接着層26の膜厚は0.6μmとした。
【0058】
以上のようにして図7に示すホログラム転写箔200を完成した。
次に、画像表示体300を、以下の方法により製造した。
まず、基材31として、厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この基材31上に、グラビアコータを用いて、剥離層33と受像層37とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離層33の材料としてはアクリル樹脂を使用し、受像層37の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離層33及び受像層37の乾燥後の膜厚は、それぞれ、1.2μm及び1.0μmであった。
【0059】
次に、300dpiのサーマルヘッドを用いた熱転写を行なうことにより、空間周波数1000本/mmの画像セル32cを基材21から受像層37上へと転写することにした。画像セルの転写は、ホログラム転写箔のうち、レリーフ構造が形成されている部分で画像情報を表示し、次にレリーフ構造が形成されていない部分で画像情報のネガ画像となる情報を表示した。
【0060】
以上のようにして作製した画像表示体を「画像表示体D1」と呼ぶ。
<例2:画像表示体D2の製造>
以下のようにしてホログラム転写箔200を製造した。
まず、基材21として、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この基材21上に、グラビアコータを用いて、剥離層23と熱可塑性樹脂層とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離層23の材料としてはアクリル樹脂を使用し、熱可塑性樹脂層の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離層23及び熱可塑性樹脂層の乾燥後の膜厚は、それぞれ、0.6μm及び0.7μmであった。
【0061】
次に、ロールエンボス装置を用いた熱プレスにより、熱可塑性樹脂の表面に、ホログラムとしてのレリーフ構造を2種形成した。このとき、形成した回折構造の深さは共に約100nmであり、空間周波数はそれぞれ500本/mmと1000本/mmとし、格子角度は同一とした。また、同一の熱可塑性樹脂の表面に、レリーフ構造を形成したのと同じ面積だけレリーフ構造を形成していない部分を設けた。
次いで、熱可塑性樹脂のレリーフ構造上に、蒸着法により硫化亜鉛からなる透明反射層25を形成した。透明反射層25の膜厚は50nmとした。
【0062】
更に、この透明反射層上に、熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂に無機微粒子としてシリカを添加させた接着層26を、グラビアコータを用いて形成した。シリカの添加量は溶剤に対し固形分比20とし、接着層26の膜厚は0.6μmとした。
以上のようにしてホログラム転写箔200を完成した。
【0063】
次に、図9に示す画像表示体300を、以下の方法により製造した。
まず、基材31として、厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この基材31上に、グラビアコータを用いて、剥離層33と受像層37とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離層33の材料としてはアクリル樹脂を使用し、受像層37の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離層33及び受像層37の乾燥後の膜厚は、それぞれ、1.2μm及び1.0μmであった。
【0064】
次に、300dpiのサーマルヘッドを用いた熱転写を行なうことにより、空間周波数500本/mmの画像セル32a,レリーフ構造が記録されていない画像セル32b,空間周波数1000本/mmの画像セル32cを、基材21から受像層37上へと転写することにした。画像セルの転写は、画像情報のうち文字情報を画像セル32aで表示し、次に文字情報のネガ画像を画像セル32bで表示して転写部第一層320を得た後、個人情報の顔画像を画像セル32cで表示した。
【0065】
以上のようにして作製した画像表示体を「画像表示体D2」と呼ぶ。
<比較例1:画像表示体D3の製造>
以下のようにしてホログラム転写箔200を製造した。
まず、基材21として、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この基材21上に、グラビアコータを用いて、剥離層23と熱可塑性樹脂層とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離層23の材料としてはアクリル樹脂を使用し、熱可塑性樹脂層の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離層23及び熱可塑性樹脂層の乾燥後の膜厚は、それぞれ、0.6μm及び0.7μmであった。
【0066】
次に、ロールエンボス装置を用いた熱プレスにより、熱可塑性樹脂の表面に、ホログラムとしてのレリーフ構造を2種形成した。このとき、形成した回折構造の深さは共に約100nmであり、空間周波数はそれぞれ500本/mmと1000本/mmとし、格子角度は同一とした。
次いで、熱可塑性樹脂のレリーフ構造上に、蒸着法により硫化亜鉛からなる透明反射層25を形成した。透明反射層25の膜厚は50nmとした。
【0067】
更に、この透明反射層上に、熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂に無機微粒子としてシリカを添加させた接着層26を、グラビアコータを用いて形成した。シリカの添加量は溶剤に対し固形分比20とし、接着層26の膜厚は0.6μmとした。
以上のようにしてホログラム転写箔200を完成した。
【0068】
次に、比較例となる画像表示体300を、以下の方法により製造した。
まず、基材31として、厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。この基材31上に、グラビアコータを用いて、剥離層33と受像層37とをこの順に形成し、これらをオーブンで乾燥させた。剥離層33の材料としてはアクリル樹脂を使用し、受像層37の材料としてはアクリルポリオールを使用した。剥離層33及び受像層37の乾燥後の膜厚は、それぞれ、1.2μm及び1.0μmであった。
【0069】
次に、300dpiのサーマルヘッドを用いた熱転写を行なうことにより、パラメータの異なる画像セルを、基材21から受像層37上へと転写することにした。画像セルの転写は、画像情報のうち文字情報を、空間周波数500本/mmの画像セル32aで表示し、次に、個人情報の顔画像を空間周波数1000本/mmの画像セル32cで表示した。
【0070】
以上のようにして作製した画像表示体を「画像表示体D3」と呼ぶ。
以上のようにして製造した画像表示体D1を、回折光の射出しない角度で観察したところ、画像表示部分とそれ以外の部分の差が観察されず、視認性の良好な画像表示体が得られた。
また、画像表示体D2を、回折光の射出しない角度で観察したところ、画像表示部分とそれ以外の部分の差が観察されず、また、画像表示体D2を90度回転させた時には、画像表示部分のネガ画像が回折光を射出して観察され、視認性の良好な画像表示体が得られた。
【0071】
また、画像表示体D2と画像表示体D3とを比較したところ、文字情報が形成されている部分で視認性に差が生じた。画像表示体D3では、顔画像を観察する角度において、文字情報がうっすらと濁って観察されたが、画像表示体D2では濁りによる文字情報の出現が無く、画像表示体D3よりも視認性の良好な画像表示体が得られた。
【符号の説明】
【0072】
1a,1b,2…画像、11,21,31…基材、15…熱圧、16…熱圧を加えた箇所、23,33…剥離層、24,34…ホログラム層、25,35…透明反射層、26,36…無機微粒子を含む接着層、31…基材、32a,32b,32c,32d…画像セル、37…受像層、46…接着層、100…情報媒体、200…ホログラム転写箔、300…画像表示体、301…被転写基材、320…転写部第一層、321…転写部第二層、H1,H3,H4…レリーフ構造形成部、H2…レリーフ構造非形成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラム転写箔を複数の画像セルとして被転写基材へ熱転写して得られる画像表示体であって、
前記画像表示体は、
少なくとも基材と、該基材の一方の面に剥離層、受像層、接着層、透明反射層、ホログラム層が積層されてなり、
前記ホログラム層は、
レリーフ構造が記録されているレリーフ構造形成部と、レリーフ構造が記録されていないレリーフ構造非形成部を含むことを特徴とする画像表示体。
【請求項2】
前記複数の画像セルは、微小面積のドット形状あるいは微小幅の線形状で形成されることを特徴とする請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記画像表示体の透過率ηは、前記接着層に含まれる無機微粒子の含有率ρと関係式(1),(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示体。
関係式(1);η<1.8ρ+0.15
関係式(2);0.02<ρ<1.0
【請求項4】
ホログラム転写箔を複数の画像セルとして被転写基材へ熱転写して得られる画像表示体を作製する作成画像表示体の作製方法であって、
前記画像表示体は、
少なくとも基材と、該基材の一方の面に剥離層、受像層、接着層、透明反射層、ホログラム層を積層し、
前記ホログラム層は、
レリーフ構造が記録されているレリーフ構造形成部と、レリーフ構造が記録されていないレリーフ構造非形成部を含むことを特徴とする画像表示体の作製方法。
【請求項5】
前記複数の画像セルは、微小面積のドット形状あるいは微小幅の線形状で形成することを特徴とする請求項4に記載の画像表示体の作製方法。
【請求項6】
前記画像表示体の透過率ηは、前記接着層に含まれる無機微粒子の含有率ρと関係式(1),(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項4又は5に記載の画像表示体の作製方法。
関係式(1);η<1.8ρ+0.15
関係式(2);0.02<ρ<1.0
【請求項7】
請求項1乃至3の何れかに記載の画像表示体を転写して作製することを特徴とする情報媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−92683(P2013−92683A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235142(P2011−235142)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】