画像表示体、転写箔及びラベル付き物品
【課題】複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示可能とする。
【解決手段】画素の1つ以上は、可視光透過性を有している表示要素220a及び220bを備え、表示要素220bは表示要素220aの前方に位置している。表示要素220aは、第1レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第1主面を有している光透過層223aを含み、第1レリーフ構造の配列は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を構造色の像として表示する。表示要素220bは、第2レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第2主面を有している光透過層223bを含み、第2レリーフ構造の配列は、上記照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第2画像を構造色の像として表示する。第2主面のうち第2レリーフ構造が設けられている領域は、第1主面のうち第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さい。
【解決手段】画素の1つ以上は、可視光透過性を有している表示要素220a及び220bを備え、表示要素220bは表示要素220aの前方に位置している。表示要素220aは、第1レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第1主面を有している光透過層223aを含み、第1レリーフ構造の配列は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を構造色の像として表示する。表示要素220bは、第2レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第2主面を有している光透過層223bを含み、第2レリーフ構造の配列は、上記照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第2画像を構造色の像として表示する。第2主面のうち第2レリーフ構造が設けられている領域は、第1主面のうち第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。
【0003】
例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0004】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用する感熱転写記録方式のプリンタは広く普及している。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、そこに別の顔画像を記録することは、必ずしも困難ではない。
【0006】
特許文献1には、上述した方法で顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録することが記載されている。また、特許文献2には、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録することが記載されている。更に、特許文献3には、通常の顔画像と、パール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置することが記載されている。
【0007】
これら技術をパスポートに適用すると、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認することはできるものの、パール顔料は粒径が大きいため、これを用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【0008】
特許文献4には、多層膜を転写リボンから基材上へと転写することが記載されている。また、特許文献4には、カラー画像を表示するべく、表示色が異なる多層膜を並置することが記載されている。
【0009】
通常、多層膜のパターンが表示する画像は、一般に流通している転写リボンを用いて再現することができないのに加え、肉眼で視認することができる。また、多層膜を転写する方法によると、パール顔料を用いた場合と比較して、優れた画質を達成できる。そして、この技術は、画像をオンデマンドで記録するのに適しており、個人情報の記録への応用が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【特許文献4】特開平10−49647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、より複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示できれば、不正を抑止する効果が更に向上すると考えている。そこで、本発明は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1側面は、前面を自然光で照明したときに前記前面を観察している観察者が肉眼で視認可能な画像を表示する画像表示体であって、二次元的に配列した複数の画素を具備し、前記複数の画素の1つ以上は、可視光透過性を有している第1表示要素を備え、前記第1表示要素は、第1レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第1主面を有している第1光透過層と、前記第1主面を被覆した第1反射層とを含み、前記第1表示要素を備えた前記画素の少なくとも1つは、可視光透過性を有している第2表示要素を、前記第1表示要素の前方に更に備え、前記第2表示要素は、第2レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第2主面を有している第2光透過層と、前記第2主面を被覆した第2反射層とを含み、前記第2主面のうち前記第2レリーフ構造が設けられている領域は、前記第1主面のうち前記第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さく、前記複数の画素の1つ以上が前記第1表示要素を備えていない場合、前記第1表示要素を含んでいない前記画素の各々は、任意に前記第2表示要素を備え、前記第1レリーフ構造の配列は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を構造色の像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に前記第1画像を構造色の像として表示しないか又は前記第1画像を前記第1方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示し、前記第2レリーフ構造の配列は、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に第2画像を構造色の像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第2画像を構造色の像として表示しないか又は前記第2画像を前記第2方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示する画像表示体である。
【0013】
本発明の第2側面は、前記複数の画素の1つ以上は、前記第1表示要素を備えており且つ前記第2表示要素を備えておらず、前記第1表示要素を備えており且つ前記第2表示要素を備えていない前記画素の各々は、可視光透過性を有しており且つ構造色を表示しない輝度調整要素を、前記第1表示要素の前方に更に備えた第1側面に係る画像表示体である。
【0014】
本発明の第3側面は、前記輝度調整要素は、前記第2主面に前記第2レリーフ構造が設けられていないこと以外は前記第2表示要素と構造、材料及び寸法が等しい第2側面に係る画像表示体である。
【0015】
本発明の第4側面は、鏡面反射層を前記複数の画素の後方に更に具備した第1乃至第3側面の何れかに係る画像表示体である。
【0016】
本発明の第5側面は、前記第1及び第2レリーフ構造の各々は回折格子又はホログラムである第1乃至第4側面の何れかに係る画像表示体である。
【0017】
本発明の第6側面は、前記第1及び第2レリーフ構造並びにそれらの配列は、前記観察者が右眼で前記第1及び第2画像の一方を視認し且つ左眼で前記第1及び第2画像の他方を視認したときに立体像を知覚するように構成されている第1乃至第5側面の何れかに係る画像表示体である。
【0018】
本発明の第7側面は、前記第1レリーフ構造は、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に第1構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第1構造色とは異なる第2構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第1及び第2構造色とは異なる第3構造色を表示するものとを含み、前記第2レリーフ構造は、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に第4構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第4構造色とは異なる第5構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第4及び第5構造色とは異なる第6構造色を表示するものとを含み、前記第1及び第2画像の各々は多色画像である第1乃至第6側面の何れかに係る画像表示体である。
【0019】
本発明の第8側面は、前記第1及び第2画像の少なくとも一方は個人情報を含んでいる第1乃至第7側面の何れかに係る画像表示体である。
【0020】
本発明の第9側面は、前面を自然光で照明したときに前記前面を観察している観察者が肉眼で視認可能な画像を表示する画像表示体であって、二次元的に配列した複数の画素を具備し、前記複数の画素の1つ以上は、可視光透過性を有している第1表示要素を備え、前記第1表示要素は、第1レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第1主面を有している第1光透過層と、前記第1主面を被覆した第1反射層とを含み、前記第1レリーフ構造は、特定の照明条件のもとで第1回折光を射出するように構成され、前記複数の画素の他の1つ以上は、前記第1表示要素を備えておらず、可視光透過性を有している第2表示要素を備え、前記第2表示要素は、第2レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第2主面を有している第2光透過層と、前記第2主面を被覆した第2反射層とを含み、前記第2レリーフ構造は、前記照明条件のもとで、前記第1レリーフ構造が前記第1回折光を射出する方向へ、前記第1回折光とは波長が異なる第2回折光を射出するように構成され、前記第2主面のうち前記第2レリーフ構造が設けられている領域は、前記第1主面のうち前記第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さく、前記第1表示要素を備えた前記画素の一部は、前記第2表示要素を、前記第1表示要素の前方に更に備え、前記画像表示体は、前記照明条件のもとで前記方向から観察した場合に、前記第1及び第2表示要素のうち前記第1表示要素のみを備えた前記画素に対応した領域と、前記第1及び第2表示要素のうち前記第2表示要素のみを備えた前記画素に対応した領域と、前記第1及び第2表示要素の双方を備えた前記画素に対応した領域とで色相が異なる構造色の画像を表示する画像表示体である。
【0021】
本発明の第10側面は、前記構造色の画像は個人情報を含んでいる第9側面に係る画像表示体である。
【0022】
本発明の第11側面は、前記個人情報は顔画像を含んでいる第8又は第10側面に係る画像表示体である。
【0023】
本発明の第12側面は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体と、前記画像表示体をその前面側で剥離可能に支持した支持体とを具備した転写箔である。
【0024】
本発明の第13側面は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備したラベル付き物品である。
【0025】
本発明の第14側面は、個人認証に使用される第13側面に係るラベル付き物品である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示することが可能となる。
【0027】
本発明の第1側面に係る画像表示体は、第1及び第2レリーフ構造を含んでいる。第1レリーフ構造の配列は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を構造色の像として表示し、この照明条件のもとで第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に第1画像を構造色の像として表示しないか又は第1画像を第1方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示する。第2レリーフ構造の配列は、上記照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第2画像を構造色の像として表示し、この照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第2画像を構造色の像として表示しないか又は第2画像を第2方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示する。従って、この画像表示体には、例えば、立体画像を表示させること、又は、観察方向に応じて異なる画像を表示させることができる。即ち、この画像表示体は、複雑な視覚効果を示す。
【0028】
また、同一平面に第1及び第2レリーフ構造を設ける場合、同一領域に第1及び第2画像の双方を表示させるためには、各画素を、第1レリーフ構造用のサブ画素と、第2レリーフ構造用のサブ画素とに分割しなければならない。この場合、高い解像度を達成するには、第1及び第2サブ画素を著しく小さくしなければならない。そのような画像表示体は、特に、オンデマンドで画像を記録するプロセスでの製造が難しい。それ故、高解像度を達成することが困難である。
【0029】
これに対し、第1側面に係る画像表示体では、第1レリーフ構造を含んだ第1表示要素の前方に、第2レリーフ構造を含んだ第2表示要素を配置している。この構成を採用した場合、第1及び第2サブ画素を交互に並ぶように配置する必要がない。従って、上述した問題を生じず、比較的容易に高解像度を達成することができる。即ち、高い画質で画像を表示することができる。
【0030】
更に、第1側面に係る画像表示体では、第1及び第2表示要素の双方を可視光透過性としている。それ故、例えば、第1及び第2表示要素に、同一の積層構造を採用することや、同一の材料を使用することが可能である。従って、第1方向から観察した場合における第1画像の明るさと、第2方向から観察した場合における第2画像の明るさとの比を、例えば、第1レリーフ構造が設けられている領域の面積と第2レリーフ構造が設けられている領域の面積との比に基づいて制御することができる。即ち、この画像表示体は、画像の明るさの制御が容易である。
【0031】
本発明の第2側面に係る画像表示体は、第1側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、以下の構成を採用している。即ち、複数の画素の1つ以上は、第1表示要素を備えており且つ第2表示要素を備えていない。第1表示要素を備えており且つ第2表示要素を備えていない画素の各々は、可視光透過性を有しており且つ構造色を表示しない輝度調整要素を、第1表示要素の前方に更に備えている。この構成を採用すると、例えば、第1方向から観察した場合に、第1表示要素を備えており且つ第2表示要素を備えていない画素が、第2表示要素を備えていないことに起因して第1及び第2表示要素の双方を備えた画素とは異なる色に見えるのを防止することができる。
【0032】
本発明の第3側面に係る画像表示体は、第2側面に係る画像表示体について上述した構成を採用している。そして、第3側面に係る画像表示体では、輝度調整要素は、第2主面に第2レリーフ構造が設けられていないこと以外は第2表示要素と構造、材料及び寸法が等しい。この構成を採用すると、例えば、第1方向から観察した場合に、第1表示要素を備えており且つ第2表示要素を備えていない画素が、第2表示要素を備えていないことに起因して第1及び第2表示要素の双方を備えた画素とは異なる色に見えるのをより確実に防止することができる。
【0033】
本発明の第4側面に係る画像表示体は、第1乃至第3側面の何れかについて上述した構成を採用しているのに加え、鏡面反射層を複数の画素の後方に更に具備している。この構成を採用すると、より明るい画像を表示することが可能である。
【0034】
本発明の第5側面に係る画像表示体は、第1乃至第4側面の何れかについて上述した構成を採用しているのに加え、第1及び第2レリーフ構造の各々は回折格子又はホログラムである。それ故、第1及び第2画像は、例えば観察方向を変化させることによって色の変化を生じ得る。即ち、この構成を採用すると、より複雑な視覚効果を達成することができる。また、このような視覚効果を達成する画像表示体は、偽造が困難である。
【0035】
本発明の第6側面に係る画像表示体は、第1乃至第5側面の何れかについて上述した構成を採用している。加えて、第6側面に係る画像表示体では、第1及び第2レリーフ構造並びにそれらの配列は、観察者が右眼で第1及び第2画像の一方を視認し且つ左眼で第1及び第2画像の他方を視認したときに立体像を知覚するように構成されている。このような視覚効果を達成する画像表示体は、偽造が困難である。
【0036】
本発明の第7側面に係る画像表示体は、第1乃至第6側面の何れかについて上述した構成を採用しているのに加え、以下の構成を採用している。即ち、第1レリーフ構造は、上記照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1構造色を表示するものと、この照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1構造色とは異なる第2構造色を表示するものと、この照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1及び第2構造色とは異なる第3構造色を表示するものとを含んでいる。第2レリーフ構造は、上記照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第4構造色を表示するものと、この照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第4構造色とは異なる第5構造色を表示するものと、この照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第4及び第5構造色とは異なる第6構造色を表示するものとを含んでいる。この構成を採用した画像表示体は、第1及び第2画像の各々として多色画像を表示し得る。
【0037】
本発明の第8側面に係る画像表示体は、第1乃至第7側面の何れかについて上述した構成を採用しているのに加え、前記第1及び第2画像の少なくとも一方は個人情報を含んでいる。この画像表示体が表示する個人情報の改竄は極めて困難である。
【0038】
本発明の第9側面に係る画像表示体は、第1及び第2レリーフ構造を含んでいる。この画像表示体は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に、第1及び第2表示要素のうち第1表示要素のみを備えた画素に対応した領域と、第1及び第2表示要素のうち第2表示要素のみを備えた画素に対応した領域と、第1及び第2表示要素の双方を備えた画素に対応した領域とで色相が異なる構造色の画像を表示する。この画像は、照明方向及び観察方向に応じて色変化を生じる。即ち、この画像表示体は、複雑な視覚効果を示す。
【0039】
また、同一平面に第1及び第2レリーフ構造を設ける場合、加法混色を利用した多色表示を行うためには、各画素を、第1レリーフ構造用のサブ画素と、第2レリーフ構造用のサブ画素とに分割しなければならない。この場合、高い解像度を達成するには、第1及び第2サブ画素を著しく小さくしなければならない。そのような画像表示体は、特に、オンデマンドで画像を記録するプロセスでの製造が難しい。それ故、高解像度を達成することが困難である。
【0040】
これに対し、第9側面に係る画像表示体では、第1レリーフ構造を含んだ第1表示要素の前方に、第2レリーフ構造を含んだ第2表示要素を配置している。この構成を採用した場合、第1及び第2サブ画素を交互に並ぶように配置する必要がない。従って、上述した問題を生じず、比較的容易に高解像度を達成することができる。即ち、高い画質で画像を表示することができる。
【0041】
更に、第9側面に係る画像表示体では、第1及び第2表示要素の双方を可視光透過性としている。それ故、例えば、第1及び第2表示要素に、同一の積層構造を採用することや、同一の材料を使用することが可能である。従って、第1レリーフ構造に表示させる構造色の明るさと、第2レリーフ構造に表示させる構造色の明るさとの比を、例えば、第1レリーフ構造が設けられている領域の面積と第2レリーフ構造が設けられている領域の面積との比に基づいて制御することができる。即ち、この画像表示体は、画像の明るさの制御が容易である。
【0042】
本発明の第10側面に係る画像表示体は、第9側面について上述した構成を採用しているのに加え、前記画像の少なくとも一方は個人情報を含んでいる。この画像表示体が表示する個人情報の改竄は極めて困難である。
【0043】
本発明の第11側面に係る画像表示体は、第8又は第10側面について上述した構成を採用しているのに加え、個人情報は顔画像を含んでいる。顔画像は、生体情報として一般的であり、目視による個人認証に適している。
【0044】
本発明の第12側面に係る転写箔は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体と、画像表示体をその前面側で剥離可能に支持した支持体とを具備している。このような転写箔の画像表示体をその支持体から基材上へと転写した場合、基材上に第1及び第2レリーフ構造の各々を直接形成した場合と比較して、基材の表面の凹凸が画質に及ぼす影響を小さくすることができる。
【0045】
本発明の第13側面に係るラベル付き物品は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体と、画像表示体を支持した基材とを具備している。このラベル付き物品は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示するのに加え、偽造が困難である。
【0046】
本発明の第14側面に係るラベル付き物品は、個人認証に使用される第13側面に係るラベル付き物品である。このラベル付き物品は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示するのに加え、改竄が困難である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一態様に係るラベル付き物品を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の一例を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示す構造のIII−III線に沿った断面図。
【図4】図2及び図3に示すラベル付き物品の画像表示体が含んでいる回折構造を概略的に示す平面図。
【図5】図2及び図3に示すラベル付き物品の画像表示体が含んでいる他の回折構造を概略的に示す平面図。
【図6】図2及び図3に示す構造を採用したラベル付き物品の製造において、第1表示要素の形成に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図7】図2及び図3に示す構造を採用したラベル付き物品の製造において、第2表示要素の形成に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図8】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の他の例を拡大して示す平面図。
【図9】図8に示す構造のIX−IX線に沿った断面図。
【図10】図8及び図9に示す構造を採用したラベル付き物品の製造に利用可能な二次転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図11】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を拡大して示す平面図。
【図12】図11に示す構造のXII−XII線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
図1は、本発明の一態様に係るラベル付き物品を概略的に示す平面図である。
図1に示すラベル付き物品100は、パスポートなどの冊子体である。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
【0050】
このラベル付き物品100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターン12が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0051】
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0052】
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0053】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0054】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0055】
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2及びI3を表示している。
画像I1a、I2及びI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2及びI3は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2及びI3の1つ以上を省略してもよい。
【0056】
画像I1a、I2及びI3は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2及びI3の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a、I2及びI3は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2及びI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0057】
画像I1bは、例えば、回折格子及びホログラムなどの回折構造が表示する画像である。画像I1bは、後で詳述するように、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプ又は熱ロールを用いた熱転写記録とをこの順に行うことにより形成する。
【0058】
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0059】
画像11bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像11bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0060】
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
【0061】
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像11a及び11bの少なくとも一方とを組み合わせると、ラベル付き物品100の改竄をより困難にすることができる。
【0062】
次に、表紙2の構造について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
図2は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の一例を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す構造のIII−III線に沿った断面図である。図4は、図2及び図3に示すラベル付き物品の画像表示体が含んでいる回折構造を概略的に示す平面図である。図5は、図2及び図3に示すラベル付き物品の画像表示体が含んでいる他の回折構造を概略的に示す平面図である。
【0063】
なお、X方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり、Y方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり且つX方向に対して垂直な方向であり、Z方向はX及びY方向に対して垂直な方向である。また、図2及び図3に示す構造は、表紙2のうち画像I1bに対応した部分である。
【0064】
表紙2は、図3に示すように、表紙本体21と画像表示体22とを含んでいる。
表紙本体21は、ラベル付き物品100の基材であって、典型的には紙片である。表紙本体21は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。表紙本体21は、ラベル付き物品100を閉じた状態において、折り丁1を挟み込むように二つ折りされている。
【0065】
画像表示体22は、多層構造を有している層である。画像表示体22は、ラベル付き物品100を閉じた状態において折り丁1と向き合う表紙本体21の主面に貼り付けられている。
【0066】
画像表示体22は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する画像表示層(図示せず)を含んでいる。この画像表示層が表示する画像は、典型的には画像I1aを含んでいる。
【0067】
この画像表示層は、光の吸収を利用して画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する。この画像表示層は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部に対応したパターン形状を有している。この画像表示層は、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とで構成することができる。このような画像表示層は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することにより得ることができる。また、この画像表示層の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0068】
この画像表示層は、パターニングされていなくてもよい。即ち、この画像表示層は、連続膜であってもよい。この場合、画像表示層は、例えば、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより得ることができる。
【0069】
この画像表示層は、省略することができる。例えば、この画像表示層は、画像表示体22の構成要素とせずに、表紙本体21上に設けてもよい。
【0070】
画像表示体22は、図3に示すように、第1表示要素220aと第2表示要素220bと樹脂層225と保護層227とを更に含んでいる。なお、図2において、破線は、二次元的に配列した複数の画素の境界を表している。
【0071】
第1表示要素220aは、画素の一部に対応して配列している。即ち、少なくとも1つの画素は、表示要素220aを含んでいる。ここでは、一例として、複数の画素が表示要素220aを含んでいること、即ち、表示要素220aの配列はパターンを形成していることとする。
【0072】
表示要素220aは、可視光透過性を有している。また、表示要素220aの配列は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に、第1画像を構造色の像、ここでは回折像として表示する。そして、表示要素220aの配列は、先の照明条件のもとで第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に、第1画像を回折像として表示しないか、又は、第1画像を第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示する。ここでは、表示要素220aの配列が回折像として表示する第1画像は、画像I1bの右眼用視差画像であるとする。
【0073】
表示要素220aは、第1光透過層223aと第1反射層224aと第1樹脂層225aと第1保護層227aとを含んでいる。
【0074】
光透過層223aは、光透過性、具体的には可視光透過性を有しており、典型的には透明層である。光透過層223aの一方の主面には、第1レリーフ構造として回折構造が設けられている。この回折構造は、例えば回折格子及び/又はホログラムであり、図4に示すように、光透過層223aの一方の主面に設けられた複数の溝Gaからなる。溝Gaは、同一の形状を有しており、一定のピッチで互いに平行に配列している。溝Gaの長さ方向は、X方向に対して反時計回りに傾いている。なお、図4に示す例では、溝Gaは円弧状に湾曲しているが、溝Gaは湾曲していなくてもよい。
【0075】
光透過層223aの材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、トリアジンアクリレート及びトリアジンメタアクリレートなどの熱硬化性樹脂、これらの混合物、又はラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料を使用することができる。光透過層223aは、光硬化性を有している樹脂を使用して形成してもよい。なお、このような透明樹脂を用いて得られる光透過層223aは、典型的には、波長が550nmの光に対する屈折率が1.3乃至1.7の範囲内にある。
【0076】
反射層224aは、表紙本体21と光透過層223aとの間に介在している。反射層224aは、光透過層223a上に形成されている。反射層224aは、光透過層223aのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。
【0077】
反射層224aは、可視光透過性を有している。反射層224aとしては、例えば、透明反射層を使用することができる。そのような反射層224aは、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。反射層224aが樹脂を含んでいる場合、反射層224aは、塗布又は印刷を利用して形成してもよい。
【0078】
反射層224aとして透明反射層を使用すると、反射層224aの背面側に絵柄及び文字等のパターンを配置した場合であっても、これを画像表示体22の前面側から視認することができる。
【0079】
透明反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。後者の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。透明反射層の材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。
【0080】
透明誘電体からなる単層構造の透明反射層は、光透過層223aとは屈折率が異なっている。典型的には、透明誘電体からなる単層構造の透明反射層は、光透過層223aと比較して、波長が550nmの光に対する屈折率がより大きい。
【0081】
透明誘電体からなる多層構造の透明反射層は、その光透過層223aと接触している部分が、光透過層223aとは異なる屈折率を有している。透明誘電体からなる多層構造の透明反射層は、典型的には、光透過層223aに最も近い層の上述した波長の光に対する屈折率が、光透過層223aのこの波長の光に対する屈折率と比較してより大きい。
【0082】
透明反射層として金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、錫、銅、銀、金、鉄、クロム、チタン、ニッケル及び銅などの単体金属又はそれらの合金を使用することができる。金属層は、厚い場合には遮光性であるが、薄くすると透明になる。一般に、厚さが20nm未満の金属層は透明である。また、厚さが20乃至40nmの範囲内にあるアルミニウム層の場合、或る観察条件のもとでは金属光沢を観察できるが、観察角度を変更するとその背景が透けて見える。
【0083】
透明反射層として、より厚い金属層を使用することも可能である。例えば、比較的厚い金属層を形成し、これに肉眼での識別が困難な径又は幅の開口を多数設ける。例えば、この金属層を、網点又は万線状にパターニングする。これにより、金属材料からなる透明反射層を得ることができる。
【0084】
透明反射層として、透明樹脂とこの中で分散した粒子とを含んだ層を使用してもよい。この粒子としては、例えば、単体金属及び合金などの金属材料からなる粒子、又は、透明金属酸化物及び透明樹脂などの透明誘電体からなる粒子を使用することができる。透明樹脂中には、粒子を分散させる代わりに、薄片を分散させてもよい。
【0085】
樹脂層225aは、表紙本体21と反射層224aとの間に介在している。樹脂層225aは、表示要素220aを表紙本体21に接着する役割を果たしている。樹脂層225aは、省略することができる。
【0086】
樹脂層225aは、例えば熱可塑性樹脂からなる。樹脂層225aの材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリビニルベンゼン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル(但し、アルキル基の炭素数は2乃至6)とから得られるポリビニル樹脂などのビニル樹脂、ゴム系材料、又は、これらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0087】
樹脂層225aには、ワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩及びエステル、可塑剤、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0088】
保護層227aは、光透過層223aのレリーフ構造が設けられた面の裏面を被覆している。保護層227aは、省略することができる。
【0089】
保護層227aは、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線又は電子線硬化樹脂などの樹脂からなる。転写箔を利用して表示要素220aのパターンを形成する場合は、柔軟性及び箔切れ性の観点で熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0090】
この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸エステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スリレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、又はそれらの混合物を使用することができる。箔切れ性や耐摩性を考慮して、この樹脂に、石油系ワックス及び植物系ワックスなどのワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩、エステル及びシリコーンオイルなどの滑材、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0091】
表示要素220aの径又は最小中心間距離は、例えば0.042乃至0.508mm(約600乃至約50 dots per inch)の範囲内とする。表示要素220aの配列に顔画像を表示させる場合には、表示要素220aの径又は最小中心間距離は、例えば0.042乃至0.169mm(約600乃至約150 dots per inch)の範囲内とする。この寸法を大きくすると、表示要素220aの配列に高精細な画像を表示させることが難しくなる。この寸法を小さくすると、表示要素220aのパターン形状の再現性が低下する。
【0092】
第2表示要素220bは、画素の一部に対応して配列している。即ち、少なくとも1つの画素は、表示要素220bを含んでいる。ここでは、一例として、複数の画素が表示要素220bを含んでいること、即ち、表示要素220bの配列はパターンを形成していることとする。
【0093】
また、表示要素220bを含んだ画素と、表示要素220aを含んだ画素とは、部分的に重複している。ここでは、一例として、一部の画素は表示要素220aを含み且つ表示要素220bを含んでおらず、他の一部の画素は表示要素220bを含み且つ表示要素220aを含んでおらず、更に他の一部の画素は表示要素220a及び220bを含み、残りの画素は表示要素220a及び220bを含んでいないこととする。
【0094】
表示要素220a及び220bを含んだ画素では、表示要素220bは、表示要素220aと向き合っている。表示要素220a及び220bを含んだ画素において、表示要素220aは、表示要素220bと表紙本体21との間に介在している。
【0095】
表示要素220bは、可視光透過性を有している。また、表示要素220bの配列は、特定の照明条件のもとで第2方向から観察した場合に、第2画像を構造色の像、ここでは回折像として表示する。そして、表示要素220bの配列は、先の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に、第2画像を回折像として表示しないか、又は、第2画像を第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示する。ここでは、表示要素220bの配列が回折像として表示する第2画像は、画像I1bの左眼用視差画像であるとする。
【0096】
なお、右眼用の視差画像と左眼用の視差画像とは、例えば、同一の被写体を異なる位置から同時に撮影することによって得られる画像である。観察者は、右眼用の視差画像と左眼用の視差画像とをそれぞれ右眼及び左眼で観察することにより立体画像を知覚する。
【0097】
表示要素220bは、第2光透過層223bと第2反射層224bと第2樹脂層225bと第2保護層227bとを含んでいる。
【0098】
光透過層223bは、可視光透過性、具体的には可視光透過性を有しており、典型的には透明層である。光透過層223bの一方の主面には、第2レリーフ構造として回折構造が設けられている。表示要素220a及び220bを含んだ各画素において、光透過層223bの主面のうち第2レリーフ構造が設けられている領域は、光透過層223aの主面のうち第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さい。
【0099】
光透過層223bの一方の主面に設けられている回折構造は、例えば回折格子及び/又はホログラムであり、図5に示すように、光透過層223bの一方の主面に設けられた複数の溝Gbからなる。溝Gbは、同一の形状を有しており、一定のピッチで互いに平行に配列している。溝Gbの長さ方向は、X方向に対して時計回りに傾いている。なお、図5に示す例では、溝Gbは円弧状に湾曲しているが、溝Gbは湾曲していなくてもよい。光透過層223aの材料としては、例えば、光透過層223aについて上述したものを使用することができる。
【0100】
反射層224bは、表紙本体21と光透過層223bとの間に介在している。反射層224bは、光透過層223b上に形成されている。反射層224bは、光透過層223bのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。
【0101】
反射層224bは、可視光透過性を有している。反射層224bとしては、例えば、反射層224aについて上述した透明反射層を使用することができる。
【0102】
樹脂層225bは、表紙本体21と反射層224bとの間に介在している。樹脂層225bの材料としては、例えば、樹脂層225aについて上述したものを使用することができる。樹脂層225bは、省略することができる。
【0103】
保護層227bは、光透過層223bのレリーフ構造が設けられた面の裏面を被覆している。保護層227bの材料としては、例えば、保護層227aについて上述したものを使用することができる。保護層227bは、省略することができる。
【0104】
樹脂層225は、表紙本体21と表示要素220a及び220bとを被覆している。樹脂層225は、可視光透過性を有しており、典型的には透明である。樹脂層225は、例えば熱可塑性樹脂からなる。樹脂層225は、省略することができる。
【0105】
保護層227は、樹脂層225上に設けられている。保護層227は、可視光透過性を有しており、典型的には透明である。保護層227は、例えばアクリル、ポリエチレン、ポリエステル等の樹脂からなる。保護層227は、省略することができる。
【0106】
表示要素220bの径又は最小中心間距離は、例えば0.042乃至0.508mm(約600乃至約50 dots per inch)の範囲内とする。表示要素220bの配列に顔画像を表示させる場合には、表示要素220bの径又は最小中心間距離は、例えば0.042乃至0.169mm(約600乃至約150 dots per inch)の範囲内とする。この寸法を大きくすると、表示要素220bの配列に高精細な画像を表示させることが難しくなる。この寸法を小さくすると、表示要素220bのパターン形状の再現性が低下する。
【0107】
この画像表示体22は、上述したように、回折光を利用して、画像I1bとして立体画像を表示する。即ち、この画像表示体22は、複雑な視覚効果を示す。
【0108】
また、同一平面に第1及び第2レリーフ構造を設ける場合、同一領域に第1及び第2画像の双方を表示させるためには、各画素を、第1レリーフ構造用のサブ画素と、第2レリーフ構造用のサブ画素とに分割しなければならない。この場合、高い解像度を達成するには、第1及び第2サブ画素を著しく小さくしなければならない。そのような画像表示体は、特に、オンデマンドで画像を記録するプロセスでの製造が難しい。それ故、高解像度を達成することが困難である。
【0109】
これに対し、上述した画像表示体22では、表示要素220a及び220bの双方を含んだ画素において、第1及び第2レリーフ構造が向き合うように表示要素220a及び220bを配置している。この構成を採用した場合、第1及び第2サブ画素を交互に並ぶように配置する必要がない。従って、上述した問題を生じず、比較的容易に高解像度を達成することができる。即ち、高い画質で画像を表示することができる。
【0110】
更に、この画像表示体22において、表示要素220a及び220bの双方を含んだ画素では、表示要素220bは、表示要素220aの前面側に位置している。それ故、このような画素において、第1レリーフ構造が設けられた領域の面積S1と第2レリーフ構造が設けられた領域の面積S2とを等しくすると、表示要素220bによる光吸収等に起因して、第1画像は第2画像と比較してより暗く表示されることがある。
【0111】
この画像表示体22において、表示要素220a及び220bの双方を含んだ画素では、第2レリーフ構造が設けられた領域の面積S2は、第1レリーフ構造が設けられた領域の面積S1と比較してより小さい。面積S2と面積S1との比S2/S1は、例えば0.5乃至0.9の範囲内にあり、典型的には0.7乃至0.8の範囲内にある。この比S2/S1を適宜設定することにより、第1及び第2画像の明るさを制御すること、例えば、表示要素220a及び220bにほぼ同じ明るさの視差画像を表示させることが可能となる。
【0112】
即ち、この画像表示体22は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示することが可能である。
【0113】
また、この画像表示体22は、構造色の画像I1bを表示する。このような画像表示体22は、偽造が困難であり、記録された情報の改竄も困難である。
【0114】
従って、この画像表示体22を含んだラベル付き物品100は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示するのに加え、偽造及び情報の改竄が困難である。
【0115】
次に、図6及び図7を参照しながら、ラベル付き物品100の製造方法を説明する。
図6は、図2及び図3に示す構造を採用したラベル付き物品の製造において、第1表示要素の形成に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図である。
【0116】
図6に示す転写箔201aは、例えば転写リボンである。転写箔201aは、支持体226aと、支持体226aによって剥離可能に支持された転写材層220a’とを含んでいる。
【0117】
支持体226aは、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体226aは、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体226aの転写材層220a’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0118】
転写材層220a’は、剥離保護層227a’と光透過層223a’と反射層224a’と樹脂層225a’とを含んでいる。
【0119】
剥離保護層227a’は、転写材層220a’の支持体226aからの剥離を安定化すると共に、表示要素220aの光透過層223a及び反射層224aを損傷から保護する役割を果たす。剥離保護層227a’の一部又は全部は、図3に示す保護層227aとして使用する。樹脂層225a’が剥離層の機能を有している場合は、剥離保護層227a’は省略することができる。
【0120】
光透過層223a’は、剥離保護層227a’上に形成されている。光透過層223a’の表面には、第1レリーフ構造として利用するレリーフ構造が設けられている。光透過層223a’の一部又は全部は、図3に示す光透過層223aとして使用する。
【0121】
反射層224a’は、光透過層223a’上に形成されている。光透過層223a’は、反射層224a’の光透過層223a’側の主面にレリーフ構造を形成している。反射層224a’の一部又は全部は、図3に示す反射層224aとして使用する。
【0122】
樹脂層225a’は、反射層224a’上に設けられている。樹脂層225a’は、接着剤としての役割を果たす。樹脂層225a’の一部又は全部は、図3に示す樹脂層225aとして使用する。樹脂層225a’は省略することができる。
【0123】
図7は、図2及び図3に示す構造を採用したラベル付き物品の製造において、第2表示要素の形成に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図である。
【0124】
図7に示す転写箔201bは、例えば転写リボンである。転写箔201bは、支持体226bと、支持体226bによって剥離可能に支持された転写材層220b’とを含んでいる。
【0125】
支持体226bは、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体226bは、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体226bの転写材層220b’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0126】
転写材層220b’は、剥離保護層227b’と光透過層223b’と反射層224b’と樹脂層225b’とを含んでいる。
【0127】
剥離保護層227b’は、転写材層220b’の支持体226bからの剥離を安定化すると共に、表示要素220bの光透過層223b及び反射層224bを損傷から保護する役割を果たす。典型的には、剥離保護層227b’の一部を、図3に示す保護層227bとして使用する。樹脂層225b’が剥離層の機能を有している場合は、剥離保護層227b’は省略することができる。
【0128】
光透過層223b’は、剥離保護層227b’上に形成されている。光透過層223b’の表面には、第1レリーフ構造として利用するレリーフ構造が設けられている。典型的には、光透過層223b’の一部を、図3に示す光透過層223bとして使用する。
【0129】
反射層224b’は、光透過層223b’上に形成されている。光透過層223b’は、反射層224b’の光透過層223b’側の主面にレリーフ構造を形成している。典型的には、反射層224b’の一部を、図3に示す反射層224bとして使用する。
【0130】
樹脂層225b’は、反射層224b’上に設けられている。樹脂層225b’は、接着剤としての役割を果たす。典型的には、樹脂層225b’の一部を、図3に示す樹脂層225bとして使用する。樹脂層225b’は省略することができる。
【0131】
転写箔201a及び201bを用いたラベル付き物品100の製造は、例えば、以下の方法により行う。
【0132】
まず、画像表示体22を省略したこと以外は図1乃至図3を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様の冊子体を準備する。
【0133】
次に、この冊子体の表紙本体21上に、画像I1a、I2及びI3を表示する画像表示層を形成する。
【0134】
次いで、サーマルヘッドを利用した熱転写によって、転写箔201aの支持体226aから、転写材層220a’の一部を、この冊子体の表紙本体21上へと転写して、表示要素220aからなる配列を形成する。続いて、サーマルヘッドを利用した熱転写によって、転写箔201bの支持体226bから、転写材層220b’の一部を、この冊子体の表紙本体21上へと転写して、表示要素220bからなる配列を形成する。
【0135】
その後、光透過層22が表示要素220a及び220bを被覆するように、光透過層225を間に挟んで、表紙本体21と保護層227とを貼り合せる。
【0136】
以上のようにして、図1乃至図5を参照しながら説明したラベル付き物品100を完成する。
【0137】
なお、ここでは、画像I1a、I2及びI3を表示する画像表示層を形成した後に、転写箔201a及び201bを用いた転写を行っているが、これら転写は、画像I1a、I2及びI3を表示する画像表示層を形成する前に行ってもよい。また、ここでは、画像I1a、I2及びI3を表示する画像表示層を冊子体の表紙本体21上に形成しているが、この画像表示層は、保護層227の光透過層225側の面に形成してもよい。
【0138】
上述した画像表示体22及びラベル付き物品100には、様々な変形が可能である。
図8は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の他の例を拡大して示す平面図である。図9は、図8に示す構造のIX−IX線に沿った断面図である。
【0139】
図8及び図9に示す構造は、以下の点を除き、図2及び図3を参照しながら説明した構造と同様である。
【0140】
即ち、図8及び図9に示す構造は、図2及び図3に示す構造とは、表示要素220a及び220bの各々が上下逆向きである。また、図8及び図9に示す構造では、表示要素220a及び220bは、等しい寸法を有している。そして、第1レリーフ構造は、図8及び図9に示す構造並びに図2及び図3に示す構造の何れにおいても、Z方向から見たときに、表示要素220aの全体に亘って広がっている。他方、第2レリーフ構造は、図2及び図3に示す構造では、Z方向から見たときに、表示要素220bの全体に亘って広がっているのに対し、図8及び図9に示す構造では、Z方向から見たときに、表示要素220bの一部にのみ広がっている。
【0141】
また、図8及び図9に示す構造は、樹脂層225の代わりに樹脂層2251及び2252を含んでいる。樹脂層2251及び2252の材料としては、例えば、樹脂層225について上述したものを使用することができる。樹脂層2251の材料と樹脂層2252の材料とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0142】
図8及び図9に示す構造は、樹脂層2251及び2252間に、鏡面反射層224を更に含んでいる。鏡面反射層224は、例えば、単体金属又は合金からなる。鏡面反射層224は、反射層224a及び224bと比較して可視光反射率がより高い。典型的には、鏡面反射層224は遮光性である。鏡面反射層224の材料としては、例えば、アルミニウム、錫、銅、銀、金、鉄、クロム、チタン、ニッケル及び銅などの単体金属又はそれらの合金を使用することができる。
【0143】
また、図8及び図9に示す構造は、輝度調整要素220cを更に含んでいる。輝度調整要素220cは、表示要素220aを含み且つ表示要素220bを含んでいない各画素において、表示要素220aを間に挟んで鏡面反射層224と向き合うように配置されている。
【0144】
輝度調整要素220cは、可視光透過性を有しており且つ構造色を表示しない。典型的には、輝度調整要素220cは、表示要素220bと、可視光透過率がほぼ等しい。例えば、表示要素220bの構造色を観察できない条件のもとでは、輝度調整要素220cは、表示要素220bとほぼ同じ色に見える。
【0145】
輝度調整要素220cは、様々な構造を有し得る。図8及び図9に示す例では、輝度調整要素220cは、レリーフ構造が設けられていないこと以外は表示要素220bと同様の構造を有している。
【0146】
即ち、輝度調整層220cは、光透過層223cと反射層224cと樹脂層225cと保護層227cとを含んでいる。
【0147】
光透過層223cは、構造色を呈するレリーフ構造が設けられていないこと以外は光透過層223bと同様である。典型的には、光透過層223cの両主面は平坦である。
【0148】
反射層224cは、光透過層223cの一方の主面上に形成されている。ここでは、反射層224cは、光透過層223cを間に挟んで表示要素220aと向き合っている。反射層224cは、光透過層223cに由来するレリーフ構造が設けられていないこと以外は、反射層224bとほぼ同様である。典型的には、反射層224cの厚さは、その透過率が反射層224bの透過率とほぼ等しくなるように設定する。
【0149】
樹脂層225cは、反射層224c上に設けられている。樹脂層225cは、反射層224cと保護層227との間に介在している。樹脂層225cは、樹脂層225bとほぼ同様である。
【0150】
保護層227cは、光透過層223cを間に挟んで反射層224cと向き合っている。保護層227cは、保護層227bとほぼ同様である。
【0151】
輝度調整層220cを省略した場合、表示要素220aの配列が表示する構造色の画像は、表示要素220bによる光の反射及び吸収等に起因して、表示要素220bの配列に対応した輝度のばらつきを生じ得る。これに対し、図8及び図9に示す構造を採用すると、そのような輝度のばらつきを抑制することができる。
【0152】
また、図8及び図9に示す構造は、鏡面反射層224を含んでいる。それ故、鏡面反射層224による反射光も表示に利用することができる。即ち、構造色をより明るく表示することができる。
【0153】
次に、図10を参照しながら、図8及び図9に示す構造を採用したラベル付き物品100の製造方法を説明する。
図10は、図8及び図9に示す構造を採用したラベル付き物品の製造に利用可能な二次転写箔の一例を概略的に示す断面図である。
【0154】
この二次転写箔202は、例えば転写リボンである。二次転写箔202は、支持体226と、支持体226によって剥離可能に支持された転写材層22’とを含んでいる。
【0155】
支持体226は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体226は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体226の転写材層22’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0156】
転写材層22’は、剥離保護層227’と、表示要素220a及び220bと、輝度調整要素220cと、樹脂層2251’及び2251’と、鏡面反射層224’とを含んでいる。
【0157】
剥離保護層227’は、支持体226上に形成されている。剥離保護層227’は、転写材層22’の支持体226からの剥離を安定化すると共に、表示要素220a及び220bを損傷から保護する役割を果たす。剥離保護層227’の一部又は全部を、図9に示す保護層227として使用する。
【0158】
表示要素220a及び220b並びに輝度調整要素220cは、剥離保護層227’上に形成されている。表示要素220a及び220b並びに輝度調整要素220cは、サーマルヘッドを利用した熱転写によって形成することができる。具体的には、表示要素220aは、例えば、図6を参照しながら説明した転写箔201aを用いて形成することができる。また、表示要素220bは、例えば、レリーフ構造を光透過層223b’の一方の主面の全体に設ける代わりに、画素に対応して島状に設けたこと以外は、図6を参照しながら説明した転写箔201bと同様の転写箔を用いて形成することができる。そして、輝度調整要素220cは、例えば、レリーフ構造を省略したこと以外は、図6を参照しながら説明した転写箔201bと同様の転写箔を用いて形成することができる。
【0159】
樹脂層2251’は、剥離保護層227’上に設けられている。樹脂層2251’は、表示要素220a及び220b並びに輝度調整要素220cを被覆している。樹脂層2251’は、転写材層22’に十分な強度を与えるとともに、鏡面反射層224’に略平坦な下地を提供する。樹脂層2251’の一部又は全部を、図9に示す樹脂層2251として使用する。樹脂層2251’は、例えば、剥離保護層227’上に樹脂を塗布することにより形成する。或いは、樹脂層2251’は、剥離保護層227’上に溶融樹脂をフィルム状に押し出すことにより得る。或いは、樹脂層2251’は、剥離保護層227’上に熱可塑性樹脂層を加熱しながら圧着させることにより得る。
【0160】
鏡面反射層224’は、樹脂層2251’上に設けられている。鏡面反射層224’の一部又は全部を、図9に示す反射層224として使用する。鏡面反射層224’は、例えば、金属箔を樹脂層2251’に接着させることにより得る。或いは、熱可塑性樹脂層と金属箔との積層体を、熱可塑性樹脂層を間に挟んで金属箔が剥離保護層227’と向き合うように、それらを加熱しながら圧着させることにより、樹脂層2251’と鏡面反射層224’とを同時に得る。
【0161】
樹脂層2251’は、鏡面反射層224’上に設けられている。樹脂層2251’の一部又は全部を、図9に示す樹脂層2251として使用する。樹脂層2251’は、例えば、鏡面反射層224’上に樹脂を塗布することにより形成する。或いは、樹脂層2251’は、鏡面反射層224’上に溶融樹脂をフィルム状に押し出すことにより得る。或いは、樹脂層2251’は、鏡面反射層224’上に熱可塑性樹脂層を加熱しながら圧着させることにより得る。
【0162】
樹脂層2251’と鏡面反射層224’との間又は上に又は剥離保護層227’と樹脂層2251’との間には、図1に示す画像I1a、I2及びI3の少なくとも1つを表示する画像表示層(図示せず)を更に形成することができる。そのような画像表示層を熱転写法によって形成する場合、昇華転写方式を採用してもよく、溶融転写方式を採用してもよく、それらの双方を採用してもよい。画像I1a及びI2は、モノクロ画像であってもよく、カラー画像であってもよい。後者の場合、これら画像I1a及びI2を表示する画像表示層は、例えば、1つ以上のインクリボンを用いて、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の着色層を形成するか、又は、赤、緑及び青の3色の着色層を形成することにより得られる。
【0163】
図8及び図9に示す構造を採用したラベル付き物品100の製造に際しては、まず、上述した二次転写箔202と、画像表示体22を省略したこと以外は図1乃至図3を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様の冊子体とを準備する。
【0164】
次に、支持体226上に形成した転写材層22’のうち画像表示体22として使用する部分を、支持体226から図9に示す表紙本体21上へと熱転写する。この熱転写には、例えばホットスタンプを利用する。なお、ホットスタンプを利用した熱転写の代わりに、熱ロール又はサーマルヘッドを利用した熱転写を行ってもよい。以上のようにして、表紙本体21に画像表示体22を貼り付ける。
【0165】
以上のようにして、図8及び図9に示す構造を採用したラベル付き物品100を完成する。
【0166】
この方法では、サーマルヘッドを利用した熱転写によって表示要素220a及び220bを形成する。サーマルヘッドを利用した場合に達成され得る精細度は、パール顔料を印刷する場合に達成され得る精細度よりも高い。
【0167】
また、サーマルヘッドを利用した熱転写によって表示要素220a及び220bを表紙本体21上に直接形成した場合、表紙本体21の表面粗さなどに起因して、高画質を達成することは難しいことがある。これに対し、上述した方法では、表示要素220a及び220bは、表紙本体21上に直接形成しない。即ち、この方法では、まず、剥離保護層227’上に形成し、その後、剥離保護層227’と共に表紙本体21上へと転写する。それ故、表紙本体21の表面粗さなどが画質に大きな影響を及ぼすことはない。
【0168】
従って、この方法によると、表示要素220a及び220bに、優れた画質の画像を表示させることが可能となる。
【0169】
また、この画像表示体22は、個人情報の一部を、ホログラム及び/又は回折格子を用いて表示する。ホログラム及び/又は回折格子が表示する個人情報、特には生体情報の改竄は極めて困難である。
【0170】
そして、この方法では、画像表示体22は、熱転写によって表紙本体21に支持させる。そのような画像表示体22は、表紙本体21から剥離しようとすると、容易に破壊される。
それ故、このラベル付き物品100は、改竄が困難である。
【0171】
ここでは、表示要素220aの配列に右眼用の視差画像を表示させ、表示要素220bの配列に左眼用の視差画像を表示させる構成を採用したが、表示要素220aの配列に左眼用の視差画像を表示させ、表示要素220bの配列に右眼用の視差画像を表示させる構成を採用してもよい。また、ここでは、表示要素220aの配列と表示要素220bの配列とを設けて2つの視差画像を表示する構成を採用したが、更に他の表示要素の配列を設けて、互いに異なる3つ以上の視差画像を表示可能としてもよい。即ち、観察角度を変化させることによって、立体画像の見え方が、被写体を実際に観察しているが如く変化する構成を採用してもよい。
【0172】
表示要素220aの配列と表示要素220bの配列とにモノクロ画像を表示させる代わりに、それらにカラー画像を表示させてもよい。例えば、表示要素220aの配列と表示要素220bの配列との各々を、表示色が赤、緑及び青色の3種の表示要素で構成してもよい。
【0173】
以上、パスポートとしてのラベル付き物品100を例示したが、ラベル付き物品100について上述した技術は、他の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証やIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。ラベル付き物品100について上述した技術は、個人認証媒体以外の物品に適用してもよい。例えば、上述した技術は、美術品及び工芸品などの物品に適用してもよい。
【0174】
また、偽造防止などのセキュリティ用途の画像表示体22及び中間転写媒体202を例示したが、画像表示体22及び中間転写媒体202について上述した技術は、偽造防止以外の用途に適用してもよい。例えば、上述した技術は、学習教材及び玩具などの用途に適用してもよい。
【0175】
画像表示体22を貼り付ける基材の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示体22を貼り付ける基材は、プラスチック基板、金属基板、セラミックス基板、又はガラス基板であってもよい。
【0176】
表示要素220a及び220bに表示させる画像は、顔画像に加えて他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよい。また、表示要素220a及び220bに表示させる画像は、生体情報に加えて非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよく、生体情報の代わりに非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0177】
表示要素220a及び220bに立体画像を表示させる代わりに、それらに互いに異なる平面画像を表示させてもよい。即ち、先の画像表示体22には、観察角度に応じて表示画像が切り替わる構成を採用してもよい。
【0178】
表示要素220a及び220bには、回折格子及びホログラム以外のレリーフ構造を設けてもよい。例えば、表示要素220a及び220bには、構造色を表示するレリーフ構造として、光散乱異方性を有している光散乱構造を設けてもよい。
【0179】
光散乱異方性を有している光散乱構造は、光透過層225a又は225bの表面に設けられた複数の凹部及び/又は凸部を含んでいる。これら凹部及び/又は凸部は、Z方向から見た場合に略一方向に延びた形状を有している。そして、これら凹部及び/又は凸部は、長さ及び幅の少なくとも一方が不規則である。或いは、これら凹部及び/又は凸部は、不規則に配置されている。例えば、これら凹部及び/又は凸部は、幅方向のピッチ及び長さ方向の位置の少なくとも一方が不規則である。或いは、これら凹部及び/又は凸部は、長さ及び幅の少なくとも一方が不規則であり且つ不規則に配置されている。
【0180】
このような光散乱構造は、凹部及び/又は凸部の長さ方向に対して平行な面内における光散乱能は低いが、凹部及び/又は凸部の長さ方向に対して垂直な面内における光散乱能は高い。従って、表示要素220aと表示要素220bとで凹部及び/又は凸部の長さ方向を異ならしめると、例えば、観察者に、表示要素220aが射出する散乱光及び表示要素220bが射出する散乱光を、それぞれ、右眼及び左眼で知覚させることができる。
【0181】
画像表示体22及びラベル付き物品100には、更に他の変形が可能である。
図11は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を拡大して示す平面図である。図12は、図11に示す構造のXII−XII線に沿った断面図である。
【0182】
図11及び図12に示す構造は、以下の点を除き、図8及び図9を参照しながら説明した構造と同様である。
【0183】
即ち、図11及び図12に示す構造は、輝度調整要素220cを含んでいない。そして、図11及び図12に示す構造は、表示要素220a及び220bの代わりに、表示要素220A乃至220Cを含んでいる。表示要素220A乃至220Cの各々は、以下の点を除いて、表示要素220a又は220bと同様である。
【0184】
第1表示要素220Aは、画素の少なくとも一部に対応して配列している。即ち、少なくとも1つの画素は、表示要素220Aを含んでいる。
【0185】
表示要素220Aは、可視光透過性を有している。また、表示要素220Aは、特定の照明条件のもとで、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第1波長を有している回折光を第2方向へ射出するように構成されている。ここでは、一例として、第1波長の回折光は青色光であるとする。
【0186】
表示要素220Aは、第1光透過層223Aと第1反射層224Aと第1樹脂層225Aと第1保護層227Aとを含んでいる。
【0187】
光透過層223Aは、光透過性、具体的には可視光透過性を有しており、典型的には透明層である。光透過層223Aの材料としては、例えば、光透過層223a又は223bについて上述したものを使用することができる。
【0188】
光透過層223Aの一方の主面には、第1レリーフ構造が設けられている。ここでは、第1レリーフ構造は、光透過層223Aの一方の主面の全体に設けられている。第1レリーフ構造は、光透過層223Aの一方の主面の一部にのみ設けられていてもよい。
【0189】
第1レリーフ構造は、回折構造、即ち、回折格子及び/又はホログラムである。第1レリーフ構造は、特定の照明条件、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第1波長を有している回折光を第2方向へ射出する。
【0190】
反射層224Aは、光透過層223Aのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224Aは、可視光透過性を有している。反射層224Aとしては、例えば、上述した透明反射層を使用することができる。
【0191】
樹脂層225Aは、反射層224Aを被覆している。樹脂層224Aの材料としては、例えば、樹脂層225aまたは225bについて上述したものを使用することができる。
【0192】
保護層227Aは、光透過層223Aのレリーフ構造が設けられた面の裏面を被覆している。保護層227Aの材料としては、例えば、保護層227a又は227bについて上述したものを使用することができる。保護層227Aは、省略することができる。
【0193】
第2表示要素220Bは、画素の一部に対応して配列している。即ち、少なくとも1つの画素は、表示要素220Bを含んでいる。
【0194】
また、表示要素220Bを含んだ画素と、表示要素220Aを含んだ画素とは、部分的に重複している。ここでは、一例として、一部の画素は表示要素220Aを含み且つ表示要素220Bを含んでおらず、他の一部の画素は表示要素220Bを含み且つ表示要素220Aを含んでおらず、更に他の一部の画素は表示要素220A及び220Bを含み、残りの画素は表示要素220A及び220Bを含んでいないこととする。
【0195】
表示要素220A及び220Bを含んだ画素では、表示要素220Bは、表示要素220Aと向き合っている。表示要素220A及び220Bを含んだ画素において、表示要素220Aは、表示要素220Bと表紙本体21との間に介在している。
【0196】
表示要素220Bは、可視光透過性を有している。また、表示要素220Bは、上記の照明条件のもとで、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第2波長を有している回折光を第2方向へ射出するように構成されている。第2波長は、第1波長とは異なっている。ここでは、一例として、第2波長の回折光は赤色光であるとする。
【0197】
表示要素220Bは、第2光透過層223Bと第2反射層224Bと第2樹脂層225Bと第2保護層227Bとを含んでいる。
【0198】
光透過層223Bは、光透過性、具体的には可視光透過性を有しており、典型的には透明層である。光透過層223Bの材料としては、例えば、光透過層223a又は223bについて上述したものを使用することができる。
【0199】
光透過層223Bの一方の主面には、第2レリーフ構造が設けられている。ここでは、第2レリーフ構造は、光透過層223Bの一方の主面の一部にのみ設けられていている。この主面のうち第2レリーフ構造が設けられている領域は、光透過層223Aの上記主面のうち第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さい。
【0200】
第2レリーフ構造は、回折構造、即ち、回折格子及び/又はホログラムである。第2レリーフ構造は、上記の照明条件、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第2波長を有している回折光を第2方向へ射出する。
【0201】
反射層224Bは、光透過層223Bのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224Bは、可視光透過性を有している。反射層224Bとしては、例えば、上述した透明反射層を使用することができる。
【0202】
樹脂層225Bは、反射層224Bを被覆している。樹脂層224Bの材料としては、例えば、樹脂層225aまたは225bについて上述したものを使用することができる。
【0203】
保護層227Bは、光透過層223Bのレリーフ構造が設けられた面の裏面を被覆している。保護層227Bの材料としては、例えば、保護層227a又は227bについて上述したものを使用することができる。保護層227Bは、省略することができる。
【0204】
第3表示要素220Cは、画素の一部に対応して配列している。即ち、少なくとも1つの画素は、表示要素220Cを含んでいる。
【0205】
また、表示要素220Cを含んだ画素と、表示要素220A及び220Bの少なくとも一方を含んだ画素とは、部分的に重複している。ここでは、一例として、一部の画素は表示要素220Aを含み且つ表示要素220B及び220Cを含んでおらず、他の一部の画素は表示要素220A及び220Bを含み且つ表示要素220Cを含んでおらず、更に他の一部の画素は表示要素220A乃至220Cを含み、更に他の一部の画素は220Bを含み且つ表示要素220A及び220Cを含んでおらず、更に他の一部の画素は表示要素220B及び220Cを含み且つ表示要素220Aを含んでおらず、更に他の一部の画素は220Cを含み且つ表示要素220A及び220Bを含んでおらず、残りの画素は表示要素220A乃至220Cを含んでいないこととする。
【0206】
表示要素220A及び220Cを含んだ画素では、表示要素220Cは、表示要素220Aと向き合っている。表示要素220A及び220Cを含んだ画素において、表示要素220Aは、表示要素220Cと表紙本体21との間に介在している。
【0207】
表示要素220B及び220Cを含んだ画素では、表示要素220Cは、表示要素220Bと向き合っている。表示要素220B及び220Cを含んだ画素において、表示要素220Bは、表示要素220Cと表紙本体21との間に介在している。
【0208】
表示要素220Cは、可視光透過性を有している。また、表示要素220Cは、上記の照明条件のもとで、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第3波長を有している回折光を第2方向へ射出するように構成されている。第3波長は、第1及び第2波長とは異なっている。ここでは、一例として、第3波長の回折光は緑色光であるとする。
【0209】
表示要素220Cは、第3光透過層223Cと第3反射層224Cと第3樹脂層225Cと第3保護層227Cとを含んでいる。
【0210】
光透過層223Cは、光透過性、具体的には可視光透過性を有しており、典型的には透明層である。光透過層223Cの材料としては、例えば、光透過層223a又は223bについて上述したものを使用することができる。
【0211】
光透過層223Cの一方の主面には、第3レリーフ構造が設けられている。ここでは、第3レリーフ構造は、光透過層223Cの一方の主面の一部にのみ設けられていている。この主面のうち第3レリーフ構造が設けられている領域は、光透過層223Bの上記主面のうち第2レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さい。
【0212】
第3レリーフ構造は、回折構造、即ち、回折格子及び/又はホログラムである。第3レリーフ構造は、上記の照明条件、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第3波長を有している回折光を第2方向へ射出する。
【0213】
反射層224Cは、光透過層223Cのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224Cは、可視光透過性を有している。反射層224Cとしては、例えば、上述した透明反射層を使用することができる。
【0214】
樹脂層225Cは、反射層224Cを被覆している。樹脂層224Cの材料としては、例えば、樹脂層225aまたは225bについて上述したものを使用することができる。
【0215】
保護層227Cは、光透過層223Cのレリーフ構造が設けられた面の裏面を被覆している。保護層227Cの材料としては、例えば、保護層227a又は227bについて上述したものを使用することができる。保護層227Cは、省略することができる。
【0216】
この構成を採用した場合、各画素に、第1波長の回折光による青色、第2波長の回折光による赤色、又は第3波長の回折光による緑色を表示させることができるのに加え、それらの加法混色によって生じる色を表示させることも可能である。即ち、各画素を表示色が異なるサブ画素へと分割することなしに、多色画像を表示することができる。
【0217】
また、この構造では、第1レリーフ構造が設けられている領域の面積と、第2レリーフ構造が設けられている領域の面積と、第3レリーフ構造が設けられている領域の面積とを、この順に小さくしている。こうすると、それらの面積比を適宜設定することにより、例えば、表示要素220A乃至220Cの何れか1つのみを含んだ画素と、表示要素220A乃至220Cの何れか2つを含んだ画素と、表示要素220A乃至220Cを含んだ画素との各々において、目標とする色相を容易に再現することができる。
【0218】
なお、この構造において、表示要素220A乃至220Cの何れか1つは省略してもよい。或いは、この構造は、表示要素220A乃至220Cとは回折光の波長が異なる他の表示要素を更に含んでいてもよい。回折構造として回折格子を設ける場合、回折光の波長は、格子定数及び/又は溝の長さ方向によって制御することができる。
【0219】
また、この構造は、図8及び図9を参照しながら説明した輝度調整要素220cを更に含んでいてもよい。
【0220】
図11及び図12を参照しながら説明した構造を利用して、多色の立体画像を表示することも可能である。例えば、各画素を右眼用のサブ画素と左眼用のサブ画素とで構成し、図11及び図12の画像表示体22において各画素において採用していた構造を、各サブ画素に採用してもよい。或いは、各画素において、表示色が互いに異なる複数の右眼用表示要素と、表示色が互いに異なる複数の左眼用表示要素とを積層してもよい。即ち、図11及び図12を参照しながら説明した構造は、図2及び図3を参照しながら説明した構造又は図8及び図9を参照しながら説明した構造と組み合わせてもよい。勿論、多色の立体画像を表示する構成を採用する代わりに、観察角度に応じて表示画像が切り替わる構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0221】
1…折り丁、2…表紙、11…紙片、12…印刷パターン、21…表紙本体、22…画像表示体、22’…転写材層、100…ラベル付き物品、201a…転写箔、201b…転写箔、220a…第1表示要素、220A…第1表示要素、220a’…転写材層、220b…第2表示要素、220B…第2表示要素、220b’…転写材層、220c…輝度調整要素、220C…第3表示要素、223a…第1光透過層、223A…第1光透過層、223a’…光透過層、223b…第2光透過層、223B…第2光透過層、223b’…光透過層、223c…光透過層、223C…第3光透過層、224…鏡面反射層、224’…鏡面反射層、224a…第1反射層、224A…第1反射層、224a’…反射層、224b…第2反射層、224B…第2反射層、224b’…反射層、224c…反射層、224C…第3反射層、225…樹脂層、225a…第1樹脂層、225A…第1樹脂層、225a’…樹脂層、225b…第2樹脂層、225B…第2樹脂層、225b’…樹脂層、225c…樹脂層、225C…第3樹脂層、226…支持体、226a…支持体、226b…支持体、227…保護層、227’…剥離保護層、227a…第1保護層、227A…第1保護層、227a’…剥離保護層、227b…第2保護層、227B…第2保護層、227b’…剥離保護層、227c…保護層、227C…第3保護層、2251…樹脂層、2251’…樹脂層、2252…樹脂層、2252’…樹脂層、Ga…溝、Gb…溝、I1a…画像、I1b…画像、I2…画像、I3…画像。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。
【0003】
例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0004】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用する感熱転写記録方式のプリンタは広く普及している。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、そこに別の顔画像を記録することは、必ずしも困難ではない。
【0006】
特許文献1には、上述した方法で顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録することが記載されている。また、特許文献2には、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録することが記載されている。更に、特許文献3には、通常の顔画像と、パール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置することが記載されている。
【0007】
これら技術をパスポートに適用すると、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認することはできるものの、パール顔料は粒径が大きいため、これを用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【0008】
特許文献4には、多層膜を転写リボンから基材上へと転写することが記載されている。また、特許文献4には、カラー画像を表示するべく、表示色が異なる多層膜を並置することが記載されている。
【0009】
通常、多層膜のパターンが表示する画像は、一般に流通している転写リボンを用いて再現することができないのに加え、肉眼で視認することができる。また、多層膜を転写する方法によると、パール顔料を用いた場合と比較して、優れた画質を達成できる。そして、この技術は、画像をオンデマンドで記録するのに適しており、個人情報の記録への応用が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【特許文献4】特開平10−49647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、より複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示できれば、不正を抑止する効果が更に向上すると考えている。そこで、本発明は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1側面は、前面を自然光で照明したときに前記前面を観察している観察者が肉眼で視認可能な画像を表示する画像表示体であって、二次元的に配列した複数の画素を具備し、前記複数の画素の1つ以上は、可視光透過性を有している第1表示要素を備え、前記第1表示要素は、第1レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第1主面を有している第1光透過層と、前記第1主面を被覆した第1反射層とを含み、前記第1表示要素を備えた前記画素の少なくとも1つは、可視光透過性を有している第2表示要素を、前記第1表示要素の前方に更に備え、前記第2表示要素は、第2レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第2主面を有している第2光透過層と、前記第2主面を被覆した第2反射層とを含み、前記第2主面のうち前記第2レリーフ構造が設けられている領域は、前記第1主面のうち前記第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さく、前記複数の画素の1つ以上が前記第1表示要素を備えていない場合、前記第1表示要素を含んでいない前記画素の各々は、任意に前記第2表示要素を備え、前記第1レリーフ構造の配列は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を構造色の像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に前記第1画像を構造色の像として表示しないか又は前記第1画像を前記第1方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示し、前記第2レリーフ構造の配列は、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に第2画像を構造色の像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第2画像を構造色の像として表示しないか又は前記第2画像を前記第2方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示する画像表示体である。
【0013】
本発明の第2側面は、前記複数の画素の1つ以上は、前記第1表示要素を備えており且つ前記第2表示要素を備えておらず、前記第1表示要素を備えており且つ前記第2表示要素を備えていない前記画素の各々は、可視光透過性を有しており且つ構造色を表示しない輝度調整要素を、前記第1表示要素の前方に更に備えた第1側面に係る画像表示体である。
【0014】
本発明の第3側面は、前記輝度調整要素は、前記第2主面に前記第2レリーフ構造が設けられていないこと以外は前記第2表示要素と構造、材料及び寸法が等しい第2側面に係る画像表示体である。
【0015】
本発明の第4側面は、鏡面反射層を前記複数の画素の後方に更に具備した第1乃至第3側面の何れかに係る画像表示体である。
【0016】
本発明の第5側面は、前記第1及び第2レリーフ構造の各々は回折格子又はホログラムである第1乃至第4側面の何れかに係る画像表示体である。
【0017】
本発明の第6側面は、前記第1及び第2レリーフ構造並びにそれらの配列は、前記観察者が右眼で前記第1及び第2画像の一方を視認し且つ左眼で前記第1及び第2画像の他方を視認したときに立体像を知覚するように構成されている第1乃至第5側面の何れかに係る画像表示体である。
【0018】
本発明の第7側面は、前記第1レリーフ構造は、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に第1構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第1構造色とは異なる第2構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第1及び第2構造色とは異なる第3構造色を表示するものとを含み、前記第2レリーフ構造は、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に第4構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第4構造色とは異なる第5構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第4及び第5構造色とは異なる第6構造色を表示するものとを含み、前記第1及び第2画像の各々は多色画像である第1乃至第6側面の何れかに係る画像表示体である。
【0019】
本発明の第8側面は、前記第1及び第2画像の少なくとも一方は個人情報を含んでいる第1乃至第7側面の何れかに係る画像表示体である。
【0020】
本発明の第9側面は、前面を自然光で照明したときに前記前面を観察している観察者が肉眼で視認可能な画像を表示する画像表示体であって、二次元的に配列した複数の画素を具備し、前記複数の画素の1つ以上は、可視光透過性を有している第1表示要素を備え、前記第1表示要素は、第1レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第1主面を有している第1光透過層と、前記第1主面を被覆した第1反射層とを含み、前記第1レリーフ構造は、特定の照明条件のもとで第1回折光を射出するように構成され、前記複数の画素の他の1つ以上は、前記第1表示要素を備えておらず、可視光透過性を有している第2表示要素を備え、前記第2表示要素は、第2レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第2主面を有している第2光透過層と、前記第2主面を被覆した第2反射層とを含み、前記第2レリーフ構造は、前記照明条件のもとで、前記第1レリーフ構造が前記第1回折光を射出する方向へ、前記第1回折光とは波長が異なる第2回折光を射出するように構成され、前記第2主面のうち前記第2レリーフ構造が設けられている領域は、前記第1主面のうち前記第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さく、前記第1表示要素を備えた前記画素の一部は、前記第2表示要素を、前記第1表示要素の前方に更に備え、前記画像表示体は、前記照明条件のもとで前記方向から観察した場合に、前記第1及び第2表示要素のうち前記第1表示要素のみを備えた前記画素に対応した領域と、前記第1及び第2表示要素のうち前記第2表示要素のみを備えた前記画素に対応した領域と、前記第1及び第2表示要素の双方を備えた前記画素に対応した領域とで色相が異なる構造色の画像を表示する画像表示体である。
【0021】
本発明の第10側面は、前記構造色の画像は個人情報を含んでいる第9側面に係る画像表示体である。
【0022】
本発明の第11側面は、前記個人情報は顔画像を含んでいる第8又は第10側面に係る画像表示体である。
【0023】
本発明の第12側面は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体と、前記画像表示体をその前面側で剥離可能に支持した支持体とを具備した転写箔である。
【0024】
本発明の第13側面は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備したラベル付き物品である。
【0025】
本発明の第14側面は、個人認証に使用される第13側面に係るラベル付き物品である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示することが可能となる。
【0027】
本発明の第1側面に係る画像表示体は、第1及び第2レリーフ構造を含んでいる。第1レリーフ構造の配列は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を構造色の像として表示し、この照明条件のもとで第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に第1画像を構造色の像として表示しないか又は第1画像を第1方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示する。第2レリーフ構造の配列は、上記照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第2画像を構造色の像として表示し、この照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第2画像を構造色の像として表示しないか又は第2画像を第2方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示する。従って、この画像表示体には、例えば、立体画像を表示させること、又は、観察方向に応じて異なる画像を表示させることができる。即ち、この画像表示体は、複雑な視覚効果を示す。
【0028】
また、同一平面に第1及び第2レリーフ構造を設ける場合、同一領域に第1及び第2画像の双方を表示させるためには、各画素を、第1レリーフ構造用のサブ画素と、第2レリーフ構造用のサブ画素とに分割しなければならない。この場合、高い解像度を達成するには、第1及び第2サブ画素を著しく小さくしなければならない。そのような画像表示体は、特に、オンデマンドで画像を記録するプロセスでの製造が難しい。それ故、高解像度を達成することが困難である。
【0029】
これに対し、第1側面に係る画像表示体では、第1レリーフ構造を含んだ第1表示要素の前方に、第2レリーフ構造を含んだ第2表示要素を配置している。この構成を採用した場合、第1及び第2サブ画素を交互に並ぶように配置する必要がない。従って、上述した問題を生じず、比較的容易に高解像度を達成することができる。即ち、高い画質で画像を表示することができる。
【0030】
更に、第1側面に係る画像表示体では、第1及び第2表示要素の双方を可視光透過性としている。それ故、例えば、第1及び第2表示要素に、同一の積層構造を採用することや、同一の材料を使用することが可能である。従って、第1方向から観察した場合における第1画像の明るさと、第2方向から観察した場合における第2画像の明るさとの比を、例えば、第1レリーフ構造が設けられている領域の面積と第2レリーフ構造が設けられている領域の面積との比に基づいて制御することができる。即ち、この画像表示体は、画像の明るさの制御が容易である。
【0031】
本発明の第2側面に係る画像表示体は、第1側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、以下の構成を採用している。即ち、複数の画素の1つ以上は、第1表示要素を備えており且つ第2表示要素を備えていない。第1表示要素を備えており且つ第2表示要素を備えていない画素の各々は、可視光透過性を有しており且つ構造色を表示しない輝度調整要素を、第1表示要素の前方に更に備えている。この構成を採用すると、例えば、第1方向から観察した場合に、第1表示要素を備えており且つ第2表示要素を備えていない画素が、第2表示要素を備えていないことに起因して第1及び第2表示要素の双方を備えた画素とは異なる色に見えるのを防止することができる。
【0032】
本発明の第3側面に係る画像表示体は、第2側面に係る画像表示体について上述した構成を採用している。そして、第3側面に係る画像表示体では、輝度調整要素は、第2主面に第2レリーフ構造が設けられていないこと以外は第2表示要素と構造、材料及び寸法が等しい。この構成を採用すると、例えば、第1方向から観察した場合に、第1表示要素を備えており且つ第2表示要素を備えていない画素が、第2表示要素を備えていないことに起因して第1及び第2表示要素の双方を備えた画素とは異なる色に見えるのをより確実に防止することができる。
【0033】
本発明の第4側面に係る画像表示体は、第1乃至第3側面の何れかについて上述した構成を採用しているのに加え、鏡面反射層を複数の画素の後方に更に具備している。この構成を採用すると、より明るい画像を表示することが可能である。
【0034】
本発明の第5側面に係る画像表示体は、第1乃至第4側面の何れかについて上述した構成を採用しているのに加え、第1及び第2レリーフ構造の各々は回折格子又はホログラムである。それ故、第1及び第2画像は、例えば観察方向を変化させることによって色の変化を生じ得る。即ち、この構成を採用すると、より複雑な視覚効果を達成することができる。また、このような視覚効果を達成する画像表示体は、偽造が困難である。
【0035】
本発明の第6側面に係る画像表示体は、第1乃至第5側面の何れかについて上述した構成を採用している。加えて、第6側面に係る画像表示体では、第1及び第2レリーフ構造並びにそれらの配列は、観察者が右眼で第1及び第2画像の一方を視認し且つ左眼で第1及び第2画像の他方を視認したときに立体像を知覚するように構成されている。このような視覚効果を達成する画像表示体は、偽造が困難である。
【0036】
本発明の第7側面に係る画像表示体は、第1乃至第6側面の何れかについて上述した構成を採用しているのに加え、以下の構成を採用している。即ち、第1レリーフ構造は、上記照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1構造色を表示するものと、この照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1構造色とは異なる第2構造色を表示するものと、この照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1及び第2構造色とは異なる第3構造色を表示するものとを含んでいる。第2レリーフ構造は、上記照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第4構造色を表示するものと、この照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第4構造色とは異なる第5構造色を表示するものと、この照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第4及び第5構造色とは異なる第6構造色を表示するものとを含んでいる。この構成を採用した画像表示体は、第1及び第2画像の各々として多色画像を表示し得る。
【0037】
本発明の第8側面に係る画像表示体は、第1乃至第7側面の何れかについて上述した構成を採用しているのに加え、前記第1及び第2画像の少なくとも一方は個人情報を含んでいる。この画像表示体が表示する個人情報の改竄は極めて困難である。
【0038】
本発明の第9側面に係る画像表示体は、第1及び第2レリーフ構造を含んでいる。この画像表示体は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に、第1及び第2表示要素のうち第1表示要素のみを備えた画素に対応した領域と、第1及び第2表示要素のうち第2表示要素のみを備えた画素に対応した領域と、第1及び第2表示要素の双方を備えた画素に対応した領域とで色相が異なる構造色の画像を表示する。この画像は、照明方向及び観察方向に応じて色変化を生じる。即ち、この画像表示体は、複雑な視覚効果を示す。
【0039】
また、同一平面に第1及び第2レリーフ構造を設ける場合、加法混色を利用した多色表示を行うためには、各画素を、第1レリーフ構造用のサブ画素と、第2レリーフ構造用のサブ画素とに分割しなければならない。この場合、高い解像度を達成するには、第1及び第2サブ画素を著しく小さくしなければならない。そのような画像表示体は、特に、オンデマンドで画像を記録するプロセスでの製造が難しい。それ故、高解像度を達成することが困難である。
【0040】
これに対し、第9側面に係る画像表示体では、第1レリーフ構造を含んだ第1表示要素の前方に、第2レリーフ構造を含んだ第2表示要素を配置している。この構成を採用した場合、第1及び第2サブ画素を交互に並ぶように配置する必要がない。従って、上述した問題を生じず、比較的容易に高解像度を達成することができる。即ち、高い画質で画像を表示することができる。
【0041】
更に、第9側面に係る画像表示体では、第1及び第2表示要素の双方を可視光透過性としている。それ故、例えば、第1及び第2表示要素に、同一の積層構造を採用することや、同一の材料を使用することが可能である。従って、第1レリーフ構造に表示させる構造色の明るさと、第2レリーフ構造に表示させる構造色の明るさとの比を、例えば、第1レリーフ構造が設けられている領域の面積と第2レリーフ構造が設けられている領域の面積との比に基づいて制御することができる。即ち、この画像表示体は、画像の明るさの制御が容易である。
【0042】
本発明の第10側面に係る画像表示体は、第9側面について上述した構成を採用しているのに加え、前記画像の少なくとも一方は個人情報を含んでいる。この画像表示体が表示する個人情報の改竄は極めて困難である。
【0043】
本発明の第11側面に係る画像表示体は、第8又は第10側面について上述した構成を採用しているのに加え、個人情報は顔画像を含んでいる。顔画像は、生体情報として一般的であり、目視による個人認証に適している。
【0044】
本発明の第12側面に係る転写箔は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体と、画像表示体をその前面側で剥離可能に支持した支持体とを具備している。このような転写箔の画像表示体をその支持体から基材上へと転写した場合、基材上に第1及び第2レリーフ構造の各々を直接形成した場合と比較して、基材の表面の凹凸が画質に及ぼす影響を小さくすることができる。
【0045】
本発明の第13側面に係るラベル付き物品は、第1乃至第11側面の何れかに係る画像表示体と、画像表示体を支持した基材とを具備している。このラベル付き物品は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示するのに加え、偽造が困難である。
【0046】
本発明の第14側面に係るラベル付き物品は、個人認証に使用される第13側面に係るラベル付き物品である。このラベル付き物品は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示するのに加え、改竄が困難である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一態様に係るラベル付き物品を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の一例を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示す構造のIII−III線に沿った断面図。
【図4】図2及び図3に示すラベル付き物品の画像表示体が含んでいる回折構造を概略的に示す平面図。
【図5】図2及び図3に示すラベル付き物品の画像表示体が含んでいる他の回折構造を概略的に示す平面図。
【図6】図2及び図3に示す構造を採用したラベル付き物品の製造において、第1表示要素の形成に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図7】図2及び図3に示す構造を採用したラベル付き物品の製造において、第2表示要素の形成に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図8】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の他の例を拡大して示す平面図。
【図9】図8に示す構造のIX−IX線に沿った断面図。
【図10】図8及び図9に示す構造を採用したラベル付き物品の製造に利用可能な二次転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図11】図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を拡大して示す平面図。
【図12】図11に示す構造のXII−XII線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
図1は、本発明の一態様に係るラベル付き物品を概略的に示す平面図である。
図1に示すラベル付き物品100は、パスポートなどの冊子体である。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
【0050】
このラベル付き物品100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターン12が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0051】
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0052】
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0053】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0054】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0055】
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2及びI3を表示している。
画像I1a、I2及びI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2及びI3は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2及びI3の1つ以上を省略してもよい。
【0056】
画像I1a、I2及びI3は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2及びI3の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a、I2及びI3は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2及びI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0057】
画像I1bは、例えば、回折格子及びホログラムなどの回折構造が表示する画像である。画像I1bは、後で詳述するように、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプ又は熱ロールを用いた熱転写記録とをこの順に行うことにより形成する。
【0058】
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0059】
画像11bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像11bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0060】
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
【0061】
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像11a及び11bの少なくとも一方とを組み合わせると、ラベル付き物品100の改竄をより困難にすることができる。
【0062】
次に、表紙2の構造について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
図2は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の一例を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す構造のIII−III線に沿った断面図である。図4は、図2及び図3に示すラベル付き物品の画像表示体が含んでいる回折構造を概略的に示す平面図である。図5は、図2及び図3に示すラベル付き物品の画像表示体が含んでいる他の回折構造を概略的に示す平面図である。
【0063】
なお、X方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり、Y方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり且つX方向に対して垂直な方向であり、Z方向はX及びY方向に対して垂直な方向である。また、図2及び図3に示す構造は、表紙2のうち画像I1bに対応した部分である。
【0064】
表紙2は、図3に示すように、表紙本体21と画像表示体22とを含んでいる。
表紙本体21は、ラベル付き物品100の基材であって、典型的には紙片である。表紙本体21は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。表紙本体21は、ラベル付き物品100を閉じた状態において、折り丁1を挟み込むように二つ折りされている。
【0065】
画像表示体22は、多層構造を有している層である。画像表示体22は、ラベル付き物品100を閉じた状態において折り丁1と向き合う表紙本体21の主面に貼り付けられている。
【0066】
画像表示体22は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する画像表示層(図示せず)を含んでいる。この画像表示層が表示する画像は、典型的には画像I1aを含んでいる。
【0067】
この画像表示層は、光の吸収を利用して画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する。この画像表示層は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部に対応したパターン形状を有している。この画像表示層は、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とで構成することができる。このような画像表示層は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することにより得ることができる。また、この画像表示層の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0068】
この画像表示層は、パターニングされていなくてもよい。即ち、この画像表示層は、連続膜であってもよい。この場合、画像表示層は、例えば、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより得ることができる。
【0069】
この画像表示層は、省略することができる。例えば、この画像表示層は、画像表示体22の構成要素とせずに、表紙本体21上に設けてもよい。
【0070】
画像表示体22は、図3に示すように、第1表示要素220aと第2表示要素220bと樹脂層225と保護層227とを更に含んでいる。なお、図2において、破線は、二次元的に配列した複数の画素の境界を表している。
【0071】
第1表示要素220aは、画素の一部に対応して配列している。即ち、少なくとも1つの画素は、表示要素220aを含んでいる。ここでは、一例として、複数の画素が表示要素220aを含んでいること、即ち、表示要素220aの配列はパターンを形成していることとする。
【0072】
表示要素220aは、可視光透過性を有している。また、表示要素220aの配列は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に、第1画像を構造色の像、ここでは回折像として表示する。そして、表示要素220aの配列は、先の照明条件のもとで第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に、第1画像を回折像として表示しないか、又は、第1画像を第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示する。ここでは、表示要素220aの配列が回折像として表示する第1画像は、画像I1bの右眼用視差画像であるとする。
【0073】
表示要素220aは、第1光透過層223aと第1反射層224aと第1樹脂層225aと第1保護層227aとを含んでいる。
【0074】
光透過層223aは、光透過性、具体的には可視光透過性を有しており、典型的には透明層である。光透過層223aの一方の主面には、第1レリーフ構造として回折構造が設けられている。この回折構造は、例えば回折格子及び/又はホログラムであり、図4に示すように、光透過層223aの一方の主面に設けられた複数の溝Gaからなる。溝Gaは、同一の形状を有しており、一定のピッチで互いに平行に配列している。溝Gaの長さ方向は、X方向に対して反時計回りに傾いている。なお、図4に示す例では、溝Gaは円弧状に湾曲しているが、溝Gaは湾曲していなくてもよい。
【0075】
光透過層223aの材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、トリアジンアクリレート及びトリアジンメタアクリレートなどの熱硬化性樹脂、これらの混合物、又はラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料を使用することができる。光透過層223aは、光硬化性を有している樹脂を使用して形成してもよい。なお、このような透明樹脂を用いて得られる光透過層223aは、典型的には、波長が550nmの光に対する屈折率が1.3乃至1.7の範囲内にある。
【0076】
反射層224aは、表紙本体21と光透過層223aとの間に介在している。反射層224aは、光透過層223a上に形成されている。反射層224aは、光透過層223aのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。
【0077】
反射層224aは、可視光透過性を有している。反射層224aとしては、例えば、透明反射層を使用することができる。そのような反射層224aは、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。反射層224aが樹脂を含んでいる場合、反射層224aは、塗布又は印刷を利用して形成してもよい。
【0078】
反射層224aとして透明反射層を使用すると、反射層224aの背面側に絵柄及び文字等のパターンを配置した場合であっても、これを画像表示体22の前面側から視認することができる。
【0079】
透明反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。後者の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。透明反射層の材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。
【0080】
透明誘電体からなる単層構造の透明反射層は、光透過層223aとは屈折率が異なっている。典型的には、透明誘電体からなる単層構造の透明反射層は、光透過層223aと比較して、波長が550nmの光に対する屈折率がより大きい。
【0081】
透明誘電体からなる多層構造の透明反射層は、その光透過層223aと接触している部分が、光透過層223aとは異なる屈折率を有している。透明誘電体からなる多層構造の透明反射層は、典型的には、光透過層223aに最も近い層の上述した波長の光に対する屈折率が、光透過層223aのこの波長の光に対する屈折率と比較してより大きい。
【0082】
透明反射層として金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、錫、銅、銀、金、鉄、クロム、チタン、ニッケル及び銅などの単体金属又はそれらの合金を使用することができる。金属層は、厚い場合には遮光性であるが、薄くすると透明になる。一般に、厚さが20nm未満の金属層は透明である。また、厚さが20乃至40nmの範囲内にあるアルミニウム層の場合、或る観察条件のもとでは金属光沢を観察できるが、観察角度を変更するとその背景が透けて見える。
【0083】
透明反射層として、より厚い金属層を使用することも可能である。例えば、比較的厚い金属層を形成し、これに肉眼での識別が困難な径又は幅の開口を多数設ける。例えば、この金属層を、網点又は万線状にパターニングする。これにより、金属材料からなる透明反射層を得ることができる。
【0084】
透明反射層として、透明樹脂とこの中で分散した粒子とを含んだ層を使用してもよい。この粒子としては、例えば、単体金属及び合金などの金属材料からなる粒子、又は、透明金属酸化物及び透明樹脂などの透明誘電体からなる粒子を使用することができる。透明樹脂中には、粒子を分散させる代わりに、薄片を分散させてもよい。
【0085】
樹脂層225aは、表紙本体21と反射層224aとの間に介在している。樹脂層225aは、表示要素220aを表紙本体21に接着する役割を果たしている。樹脂層225aは、省略することができる。
【0086】
樹脂層225aは、例えば熱可塑性樹脂からなる。樹脂層225aの材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリビニルベンゼン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル(但し、アルキル基の炭素数は2乃至6)とから得られるポリビニル樹脂などのビニル樹脂、ゴム系材料、又は、これらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0087】
樹脂層225aには、ワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩及びエステル、可塑剤、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0088】
保護層227aは、光透過層223aのレリーフ構造が設けられた面の裏面を被覆している。保護層227aは、省略することができる。
【0089】
保護層227aは、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線又は電子線硬化樹脂などの樹脂からなる。転写箔を利用して表示要素220aのパターンを形成する場合は、柔軟性及び箔切れ性の観点で熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0090】
この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸エステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スリレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、又はそれらの混合物を使用することができる。箔切れ性や耐摩性を考慮して、この樹脂に、石油系ワックス及び植物系ワックスなどのワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩、エステル及びシリコーンオイルなどの滑材、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0091】
表示要素220aの径又は最小中心間距離は、例えば0.042乃至0.508mm(約600乃至約50 dots per inch)の範囲内とする。表示要素220aの配列に顔画像を表示させる場合には、表示要素220aの径又は最小中心間距離は、例えば0.042乃至0.169mm(約600乃至約150 dots per inch)の範囲内とする。この寸法を大きくすると、表示要素220aの配列に高精細な画像を表示させることが難しくなる。この寸法を小さくすると、表示要素220aのパターン形状の再現性が低下する。
【0092】
第2表示要素220bは、画素の一部に対応して配列している。即ち、少なくとも1つの画素は、表示要素220bを含んでいる。ここでは、一例として、複数の画素が表示要素220bを含んでいること、即ち、表示要素220bの配列はパターンを形成していることとする。
【0093】
また、表示要素220bを含んだ画素と、表示要素220aを含んだ画素とは、部分的に重複している。ここでは、一例として、一部の画素は表示要素220aを含み且つ表示要素220bを含んでおらず、他の一部の画素は表示要素220bを含み且つ表示要素220aを含んでおらず、更に他の一部の画素は表示要素220a及び220bを含み、残りの画素は表示要素220a及び220bを含んでいないこととする。
【0094】
表示要素220a及び220bを含んだ画素では、表示要素220bは、表示要素220aと向き合っている。表示要素220a及び220bを含んだ画素において、表示要素220aは、表示要素220bと表紙本体21との間に介在している。
【0095】
表示要素220bは、可視光透過性を有している。また、表示要素220bの配列は、特定の照明条件のもとで第2方向から観察した場合に、第2画像を構造色の像、ここでは回折像として表示する。そして、表示要素220bの配列は、先の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に、第2画像を回折像として表示しないか、又は、第2画像を第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示する。ここでは、表示要素220bの配列が回折像として表示する第2画像は、画像I1bの左眼用視差画像であるとする。
【0096】
なお、右眼用の視差画像と左眼用の視差画像とは、例えば、同一の被写体を異なる位置から同時に撮影することによって得られる画像である。観察者は、右眼用の視差画像と左眼用の視差画像とをそれぞれ右眼及び左眼で観察することにより立体画像を知覚する。
【0097】
表示要素220bは、第2光透過層223bと第2反射層224bと第2樹脂層225bと第2保護層227bとを含んでいる。
【0098】
光透過層223bは、可視光透過性、具体的には可視光透過性を有しており、典型的には透明層である。光透過層223bの一方の主面には、第2レリーフ構造として回折構造が設けられている。表示要素220a及び220bを含んだ各画素において、光透過層223bの主面のうち第2レリーフ構造が設けられている領域は、光透過層223aの主面のうち第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さい。
【0099】
光透過層223bの一方の主面に設けられている回折構造は、例えば回折格子及び/又はホログラムであり、図5に示すように、光透過層223bの一方の主面に設けられた複数の溝Gbからなる。溝Gbは、同一の形状を有しており、一定のピッチで互いに平行に配列している。溝Gbの長さ方向は、X方向に対して時計回りに傾いている。なお、図5に示す例では、溝Gbは円弧状に湾曲しているが、溝Gbは湾曲していなくてもよい。光透過層223aの材料としては、例えば、光透過層223aについて上述したものを使用することができる。
【0100】
反射層224bは、表紙本体21と光透過層223bとの間に介在している。反射層224bは、光透過層223b上に形成されている。反射層224bは、光透過層223bのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。
【0101】
反射層224bは、可視光透過性を有している。反射層224bとしては、例えば、反射層224aについて上述した透明反射層を使用することができる。
【0102】
樹脂層225bは、表紙本体21と反射層224bとの間に介在している。樹脂層225bの材料としては、例えば、樹脂層225aについて上述したものを使用することができる。樹脂層225bは、省略することができる。
【0103】
保護層227bは、光透過層223bのレリーフ構造が設けられた面の裏面を被覆している。保護層227bの材料としては、例えば、保護層227aについて上述したものを使用することができる。保護層227bは、省略することができる。
【0104】
樹脂層225は、表紙本体21と表示要素220a及び220bとを被覆している。樹脂層225は、可視光透過性を有しており、典型的には透明である。樹脂層225は、例えば熱可塑性樹脂からなる。樹脂層225は、省略することができる。
【0105】
保護層227は、樹脂層225上に設けられている。保護層227は、可視光透過性を有しており、典型的には透明である。保護層227は、例えばアクリル、ポリエチレン、ポリエステル等の樹脂からなる。保護層227は、省略することができる。
【0106】
表示要素220bの径又は最小中心間距離は、例えば0.042乃至0.508mm(約600乃至約50 dots per inch)の範囲内とする。表示要素220bの配列に顔画像を表示させる場合には、表示要素220bの径又は最小中心間距離は、例えば0.042乃至0.169mm(約600乃至約150 dots per inch)の範囲内とする。この寸法を大きくすると、表示要素220bの配列に高精細な画像を表示させることが難しくなる。この寸法を小さくすると、表示要素220bのパターン形状の再現性が低下する。
【0107】
この画像表示体22は、上述したように、回折光を利用して、画像I1bとして立体画像を表示する。即ち、この画像表示体22は、複雑な視覚効果を示す。
【0108】
また、同一平面に第1及び第2レリーフ構造を設ける場合、同一領域に第1及び第2画像の双方を表示させるためには、各画素を、第1レリーフ構造用のサブ画素と、第2レリーフ構造用のサブ画素とに分割しなければならない。この場合、高い解像度を達成するには、第1及び第2サブ画素を著しく小さくしなければならない。そのような画像表示体は、特に、オンデマンドで画像を記録するプロセスでの製造が難しい。それ故、高解像度を達成することが困難である。
【0109】
これに対し、上述した画像表示体22では、表示要素220a及び220bの双方を含んだ画素において、第1及び第2レリーフ構造が向き合うように表示要素220a及び220bを配置している。この構成を採用した場合、第1及び第2サブ画素を交互に並ぶように配置する必要がない。従って、上述した問題を生じず、比較的容易に高解像度を達成することができる。即ち、高い画質で画像を表示することができる。
【0110】
更に、この画像表示体22において、表示要素220a及び220bの双方を含んだ画素では、表示要素220bは、表示要素220aの前面側に位置している。それ故、このような画素において、第1レリーフ構造が設けられた領域の面積S1と第2レリーフ構造が設けられた領域の面積S2とを等しくすると、表示要素220bによる光吸収等に起因して、第1画像は第2画像と比較してより暗く表示されることがある。
【0111】
この画像表示体22において、表示要素220a及び220bの双方を含んだ画素では、第2レリーフ構造が設けられた領域の面積S2は、第1レリーフ構造が設けられた領域の面積S1と比較してより小さい。面積S2と面積S1との比S2/S1は、例えば0.5乃至0.9の範囲内にあり、典型的には0.7乃至0.8の範囲内にある。この比S2/S1を適宜設定することにより、第1及び第2画像の明るさを制御すること、例えば、表示要素220a及び220bにほぼ同じ明るさの視差画像を表示させることが可能となる。
【0112】
即ち、この画像表示体22は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示することが可能である。
【0113】
また、この画像表示体22は、構造色の画像I1bを表示する。このような画像表示体22は、偽造が困難であり、記録された情報の改竄も困難である。
【0114】
従って、この画像表示体22を含んだラベル付き物品100は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示するのに加え、偽造及び情報の改竄が困難である。
【0115】
次に、図6及び図7を参照しながら、ラベル付き物品100の製造方法を説明する。
図6は、図2及び図3に示す構造を採用したラベル付き物品の製造において、第1表示要素の形成に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図である。
【0116】
図6に示す転写箔201aは、例えば転写リボンである。転写箔201aは、支持体226aと、支持体226aによって剥離可能に支持された転写材層220a’とを含んでいる。
【0117】
支持体226aは、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体226aは、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体226aの転写材層220a’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0118】
転写材層220a’は、剥離保護層227a’と光透過層223a’と反射層224a’と樹脂層225a’とを含んでいる。
【0119】
剥離保護層227a’は、転写材層220a’の支持体226aからの剥離を安定化すると共に、表示要素220aの光透過層223a及び反射層224aを損傷から保護する役割を果たす。剥離保護層227a’の一部又は全部は、図3に示す保護層227aとして使用する。樹脂層225a’が剥離層の機能を有している場合は、剥離保護層227a’は省略することができる。
【0120】
光透過層223a’は、剥離保護層227a’上に形成されている。光透過層223a’の表面には、第1レリーフ構造として利用するレリーフ構造が設けられている。光透過層223a’の一部又は全部は、図3に示す光透過層223aとして使用する。
【0121】
反射層224a’は、光透過層223a’上に形成されている。光透過層223a’は、反射層224a’の光透過層223a’側の主面にレリーフ構造を形成している。反射層224a’の一部又は全部は、図3に示す反射層224aとして使用する。
【0122】
樹脂層225a’は、反射層224a’上に設けられている。樹脂層225a’は、接着剤としての役割を果たす。樹脂層225a’の一部又は全部は、図3に示す樹脂層225aとして使用する。樹脂層225a’は省略することができる。
【0123】
図7は、図2及び図3に示す構造を採用したラベル付き物品の製造において、第2表示要素の形成に利用可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図である。
【0124】
図7に示す転写箔201bは、例えば転写リボンである。転写箔201bは、支持体226bと、支持体226bによって剥離可能に支持された転写材層220b’とを含んでいる。
【0125】
支持体226bは、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体226bは、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体226bの転写材層220b’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0126】
転写材層220b’は、剥離保護層227b’と光透過層223b’と反射層224b’と樹脂層225b’とを含んでいる。
【0127】
剥離保護層227b’は、転写材層220b’の支持体226bからの剥離を安定化すると共に、表示要素220bの光透過層223b及び反射層224bを損傷から保護する役割を果たす。典型的には、剥離保護層227b’の一部を、図3に示す保護層227bとして使用する。樹脂層225b’が剥離層の機能を有している場合は、剥離保護層227b’は省略することができる。
【0128】
光透過層223b’は、剥離保護層227b’上に形成されている。光透過層223b’の表面には、第1レリーフ構造として利用するレリーフ構造が設けられている。典型的には、光透過層223b’の一部を、図3に示す光透過層223bとして使用する。
【0129】
反射層224b’は、光透過層223b’上に形成されている。光透過層223b’は、反射層224b’の光透過層223b’側の主面にレリーフ構造を形成している。典型的には、反射層224b’の一部を、図3に示す反射層224bとして使用する。
【0130】
樹脂層225b’は、反射層224b’上に設けられている。樹脂層225b’は、接着剤としての役割を果たす。典型的には、樹脂層225b’の一部を、図3に示す樹脂層225bとして使用する。樹脂層225b’は省略することができる。
【0131】
転写箔201a及び201bを用いたラベル付き物品100の製造は、例えば、以下の方法により行う。
【0132】
まず、画像表示体22を省略したこと以外は図1乃至図3を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様の冊子体を準備する。
【0133】
次に、この冊子体の表紙本体21上に、画像I1a、I2及びI3を表示する画像表示層を形成する。
【0134】
次いで、サーマルヘッドを利用した熱転写によって、転写箔201aの支持体226aから、転写材層220a’の一部を、この冊子体の表紙本体21上へと転写して、表示要素220aからなる配列を形成する。続いて、サーマルヘッドを利用した熱転写によって、転写箔201bの支持体226bから、転写材層220b’の一部を、この冊子体の表紙本体21上へと転写して、表示要素220bからなる配列を形成する。
【0135】
その後、光透過層22が表示要素220a及び220bを被覆するように、光透過層225を間に挟んで、表紙本体21と保護層227とを貼り合せる。
【0136】
以上のようにして、図1乃至図5を参照しながら説明したラベル付き物品100を完成する。
【0137】
なお、ここでは、画像I1a、I2及びI3を表示する画像表示層を形成した後に、転写箔201a及び201bを用いた転写を行っているが、これら転写は、画像I1a、I2及びI3を表示する画像表示層を形成する前に行ってもよい。また、ここでは、画像I1a、I2及びI3を表示する画像表示層を冊子体の表紙本体21上に形成しているが、この画像表示層は、保護層227の光透過層225側の面に形成してもよい。
【0138】
上述した画像表示体22及びラベル付き物品100には、様々な変形が可能である。
図8は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の他の例を拡大して示す平面図である。図9は、図8に示す構造のIX−IX線に沿った断面図である。
【0139】
図8及び図9に示す構造は、以下の点を除き、図2及び図3を参照しながら説明した構造と同様である。
【0140】
即ち、図8及び図9に示す構造は、図2及び図3に示す構造とは、表示要素220a及び220bの各々が上下逆向きである。また、図8及び図9に示す構造では、表示要素220a及び220bは、等しい寸法を有している。そして、第1レリーフ構造は、図8及び図9に示す構造並びに図2及び図3に示す構造の何れにおいても、Z方向から見たときに、表示要素220aの全体に亘って広がっている。他方、第2レリーフ構造は、図2及び図3に示す構造では、Z方向から見たときに、表示要素220bの全体に亘って広がっているのに対し、図8及び図9に示す構造では、Z方向から見たときに、表示要素220bの一部にのみ広がっている。
【0141】
また、図8及び図9に示す構造は、樹脂層225の代わりに樹脂層2251及び2252を含んでいる。樹脂層2251及び2252の材料としては、例えば、樹脂層225について上述したものを使用することができる。樹脂層2251の材料と樹脂層2252の材料とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0142】
図8及び図9に示す構造は、樹脂層2251及び2252間に、鏡面反射層224を更に含んでいる。鏡面反射層224は、例えば、単体金属又は合金からなる。鏡面反射層224は、反射層224a及び224bと比較して可視光反射率がより高い。典型的には、鏡面反射層224は遮光性である。鏡面反射層224の材料としては、例えば、アルミニウム、錫、銅、銀、金、鉄、クロム、チタン、ニッケル及び銅などの単体金属又はそれらの合金を使用することができる。
【0143】
また、図8及び図9に示す構造は、輝度調整要素220cを更に含んでいる。輝度調整要素220cは、表示要素220aを含み且つ表示要素220bを含んでいない各画素において、表示要素220aを間に挟んで鏡面反射層224と向き合うように配置されている。
【0144】
輝度調整要素220cは、可視光透過性を有しており且つ構造色を表示しない。典型的には、輝度調整要素220cは、表示要素220bと、可視光透過率がほぼ等しい。例えば、表示要素220bの構造色を観察できない条件のもとでは、輝度調整要素220cは、表示要素220bとほぼ同じ色に見える。
【0145】
輝度調整要素220cは、様々な構造を有し得る。図8及び図9に示す例では、輝度調整要素220cは、レリーフ構造が設けられていないこと以外は表示要素220bと同様の構造を有している。
【0146】
即ち、輝度調整層220cは、光透過層223cと反射層224cと樹脂層225cと保護層227cとを含んでいる。
【0147】
光透過層223cは、構造色を呈するレリーフ構造が設けられていないこと以外は光透過層223bと同様である。典型的には、光透過層223cの両主面は平坦である。
【0148】
反射層224cは、光透過層223cの一方の主面上に形成されている。ここでは、反射層224cは、光透過層223cを間に挟んで表示要素220aと向き合っている。反射層224cは、光透過層223cに由来するレリーフ構造が設けられていないこと以外は、反射層224bとほぼ同様である。典型的には、反射層224cの厚さは、その透過率が反射層224bの透過率とほぼ等しくなるように設定する。
【0149】
樹脂層225cは、反射層224c上に設けられている。樹脂層225cは、反射層224cと保護層227との間に介在している。樹脂層225cは、樹脂層225bとほぼ同様である。
【0150】
保護層227cは、光透過層223cを間に挟んで反射層224cと向き合っている。保護層227cは、保護層227bとほぼ同様である。
【0151】
輝度調整層220cを省略した場合、表示要素220aの配列が表示する構造色の画像は、表示要素220bによる光の反射及び吸収等に起因して、表示要素220bの配列に対応した輝度のばらつきを生じ得る。これに対し、図8及び図9に示す構造を採用すると、そのような輝度のばらつきを抑制することができる。
【0152】
また、図8及び図9に示す構造は、鏡面反射層224を含んでいる。それ故、鏡面反射層224による反射光も表示に利用することができる。即ち、構造色をより明るく表示することができる。
【0153】
次に、図10を参照しながら、図8及び図9に示す構造を採用したラベル付き物品100の製造方法を説明する。
図10は、図8及び図9に示す構造を採用したラベル付き物品の製造に利用可能な二次転写箔の一例を概略的に示す断面図である。
【0154】
この二次転写箔202は、例えば転写リボンである。二次転写箔202は、支持体226と、支持体226によって剥離可能に支持された転写材層22’とを含んでいる。
【0155】
支持体226は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体226は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体226の転写材層22’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0156】
転写材層22’は、剥離保護層227’と、表示要素220a及び220bと、輝度調整要素220cと、樹脂層2251’及び2251’と、鏡面反射層224’とを含んでいる。
【0157】
剥離保護層227’は、支持体226上に形成されている。剥離保護層227’は、転写材層22’の支持体226からの剥離を安定化すると共に、表示要素220a及び220bを損傷から保護する役割を果たす。剥離保護層227’の一部又は全部を、図9に示す保護層227として使用する。
【0158】
表示要素220a及び220b並びに輝度調整要素220cは、剥離保護層227’上に形成されている。表示要素220a及び220b並びに輝度調整要素220cは、サーマルヘッドを利用した熱転写によって形成することができる。具体的には、表示要素220aは、例えば、図6を参照しながら説明した転写箔201aを用いて形成することができる。また、表示要素220bは、例えば、レリーフ構造を光透過層223b’の一方の主面の全体に設ける代わりに、画素に対応して島状に設けたこと以外は、図6を参照しながら説明した転写箔201bと同様の転写箔を用いて形成することができる。そして、輝度調整要素220cは、例えば、レリーフ構造を省略したこと以外は、図6を参照しながら説明した転写箔201bと同様の転写箔を用いて形成することができる。
【0159】
樹脂層2251’は、剥離保護層227’上に設けられている。樹脂層2251’は、表示要素220a及び220b並びに輝度調整要素220cを被覆している。樹脂層2251’は、転写材層22’に十分な強度を与えるとともに、鏡面反射層224’に略平坦な下地を提供する。樹脂層2251’の一部又は全部を、図9に示す樹脂層2251として使用する。樹脂層2251’は、例えば、剥離保護層227’上に樹脂を塗布することにより形成する。或いは、樹脂層2251’は、剥離保護層227’上に溶融樹脂をフィルム状に押し出すことにより得る。或いは、樹脂層2251’は、剥離保護層227’上に熱可塑性樹脂層を加熱しながら圧着させることにより得る。
【0160】
鏡面反射層224’は、樹脂層2251’上に設けられている。鏡面反射層224’の一部又は全部を、図9に示す反射層224として使用する。鏡面反射層224’は、例えば、金属箔を樹脂層2251’に接着させることにより得る。或いは、熱可塑性樹脂層と金属箔との積層体を、熱可塑性樹脂層を間に挟んで金属箔が剥離保護層227’と向き合うように、それらを加熱しながら圧着させることにより、樹脂層2251’と鏡面反射層224’とを同時に得る。
【0161】
樹脂層2251’は、鏡面反射層224’上に設けられている。樹脂層2251’の一部又は全部を、図9に示す樹脂層2251として使用する。樹脂層2251’は、例えば、鏡面反射層224’上に樹脂を塗布することにより形成する。或いは、樹脂層2251’は、鏡面反射層224’上に溶融樹脂をフィルム状に押し出すことにより得る。或いは、樹脂層2251’は、鏡面反射層224’上に熱可塑性樹脂層を加熱しながら圧着させることにより得る。
【0162】
樹脂層2251’と鏡面反射層224’との間又は上に又は剥離保護層227’と樹脂層2251’との間には、図1に示す画像I1a、I2及びI3の少なくとも1つを表示する画像表示層(図示せず)を更に形成することができる。そのような画像表示層を熱転写法によって形成する場合、昇華転写方式を採用してもよく、溶融転写方式を採用してもよく、それらの双方を採用してもよい。画像I1a及びI2は、モノクロ画像であってもよく、カラー画像であってもよい。後者の場合、これら画像I1a及びI2を表示する画像表示層は、例えば、1つ以上のインクリボンを用いて、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の着色層を形成するか、又は、赤、緑及び青の3色の着色層を形成することにより得られる。
【0163】
図8及び図9に示す構造を採用したラベル付き物品100の製造に際しては、まず、上述した二次転写箔202と、画像表示体22を省略したこと以外は図1乃至図3を参照しながら説明したラベル付き物品100と同様の冊子体とを準備する。
【0164】
次に、支持体226上に形成した転写材層22’のうち画像表示体22として使用する部分を、支持体226から図9に示す表紙本体21上へと熱転写する。この熱転写には、例えばホットスタンプを利用する。なお、ホットスタンプを利用した熱転写の代わりに、熱ロール又はサーマルヘッドを利用した熱転写を行ってもよい。以上のようにして、表紙本体21に画像表示体22を貼り付ける。
【0165】
以上のようにして、図8及び図9に示す構造を採用したラベル付き物品100を完成する。
【0166】
この方法では、サーマルヘッドを利用した熱転写によって表示要素220a及び220bを形成する。サーマルヘッドを利用した場合に達成され得る精細度は、パール顔料を印刷する場合に達成され得る精細度よりも高い。
【0167】
また、サーマルヘッドを利用した熱転写によって表示要素220a及び220bを表紙本体21上に直接形成した場合、表紙本体21の表面粗さなどに起因して、高画質を達成することは難しいことがある。これに対し、上述した方法では、表示要素220a及び220bは、表紙本体21上に直接形成しない。即ち、この方法では、まず、剥離保護層227’上に形成し、その後、剥離保護層227’と共に表紙本体21上へと転写する。それ故、表紙本体21の表面粗さなどが画質に大きな影響を及ぼすことはない。
【0168】
従って、この方法によると、表示要素220a及び220bに、優れた画質の画像を表示させることが可能となる。
【0169】
また、この画像表示体22は、個人情報の一部を、ホログラム及び/又は回折格子を用いて表示する。ホログラム及び/又は回折格子が表示する個人情報、特には生体情報の改竄は極めて困難である。
【0170】
そして、この方法では、画像表示体22は、熱転写によって表紙本体21に支持させる。そのような画像表示体22は、表紙本体21から剥離しようとすると、容易に破壊される。
それ故、このラベル付き物品100は、改竄が困難である。
【0171】
ここでは、表示要素220aの配列に右眼用の視差画像を表示させ、表示要素220bの配列に左眼用の視差画像を表示させる構成を採用したが、表示要素220aの配列に左眼用の視差画像を表示させ、表示要素220bの配列に右眼用の視差画像を表示させる構成を採用してもよい。また、ここでは、表示要素220aの配列と表示要素220bの配列とを設けて2つの視差画像を表示する構成を採用したが、更に他の表示要素の配列を設けて、互いに異なる3つ以上の視差画像を表示可能としてもよい。即ち、観察角度を変化させることによって、立体画像の見え方が、被写体を実際に観察しているが如く変化する構成を採用してもよい。
【0172】
表示要素220aの配列と表示要素220bの配列とにモノクロ画像を表示させる代わりに、それらにカラー画像を表示させてもよい。例えば、表示要素220aの配列と表示要素220bの配列との各々を、表示色が赤、緑及び青色の3種の表示要素で構成してもよい。
【0173】
以上、パスポートとしてのラベル付き物品100を例示したが、ラベル付き物品100について上述した技術は、他の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証やIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。ラベル付き物品100について上述した技術は、個人認証媒体以外の物品に適用してもよい。例えば、上述した技術は、美術品及び工芸品などの物品に適用してもよい。
【0174】
また、偽造防止などのセキュリティ用途の画像表示体22及び中間転写媒体202を例示したが、画像表示体22及び中間転写媒体202について上述した技術は、偽造防止以外の用途に適用してもよい。例えば、上述した技術は、学習教材及び玩具などの用途に適用してもよい。
【0175】
画像表示体22を貼り付ける基材の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示体22を貼り付ける基材は、プラスチック基板、金属基板、セラミックス基板、又はガラス基板であってもよい。
【0176】
表示要素220a及び220bに表示させる画像は、顔画像に加えて他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよい。また、表示要素220a及び220bに表示させる画像は、生体情報に加えて非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよく、生体情報の代わりに非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0177】
表示要素220a及び220bに立体画像を表示させる代わりに、それらに互いに異なる平面画像を表示させてもよい。即ち、先の画像表示体22には、観察角度に応じて表示画像が切り替わる構成を採用してもよい。
【0178】
表示要素220a及び220bには、回折格子及びホログラム以外のレリーフ構造を設けてもよい。例えば、表示要素220a及び220bには、構造色を表示するレリーフ構造として、光散乱異方性を有している光散乱構造を設けてもよい。
【0179】
光散乱異方性を有している光散乱構造は、光透過層225a又は225bの表面に設けられた複数の凹部及び/又は凸部を含んでいる。これら凹部及び/又は凸部は、Z方向から見た場合に略一方向に延びた形状を有している。そして、これら凹部及び/又は凸部は、長さ及び幅の少なくとも一方が不規則である。或いは、これら凹部及び/又は凸部は、不規則に配置されている。例えば、これら凹部及び/又は凸部は、幅方向のピッチ及び長さ方向の位置の少なくとも一方が不規則である。或いは、これら凹部及び/又は凸部は、長さ及び幅の少なくとも一方が不規則であり且つ不規則に配置されている。
【0180】
このような光散乱構造は、凹部及び/又は凸部の長さ方向に対して平行な面内における光散乱能は低いが、凹部及び/又は凸部の長さ方向に対して垂直な面内における光散乱能は高い。従って、表示要素220aと表示要素220bとで凹部及び/又は凸部の長さ方向を異ならしめると、例えば、観察者に、表示要素220aが射出する散乱光及び表示要素220bが射出する散乱光を、それぞれ、右眼及び左眼で知覚させることができる。
【0181】
画像表示体22及びラベル付き物品100には、更に他の変形が可能である。
図11は、図1に示すラベル付き物品に採用可能な構造の更に他の例を拡大して示す平面図である。図12は、図11に示す構造のXII−XII線に沿った断面図である。
【0182】
図11及び図12に示す構造は、以下の点を除き、図8及び図9を参照しながら説明した構造と同様である。
【0183】
即ち、図11及び図12に示す構造は、輝度調整要素220cを含んでいない。そして、図11及び図12に示す構造は、表示要素220a及び220bの代わりに、表示要素220A乃至220Cを含んでいる。表示要素220A乃至220Cの各々は、以下の点を除いて、表示要素220a又は220bと同様である。
【0184】
第1表示要素220Aは、画素の少なくとも一部に対応して配列している。即ち、少なくとも1つの画素は、表示要素220Aを含んでいる。
【0185】
表示要素220Aは、可視光透過性を有している。また、表示要素220Aは、特定の照明条件のもとで、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第1波長を有している回折光を第2方向へ射出するように構成されている。ここでは、一例として、第1波長の回折光は青色光であるとする。
【0186】
表示要素220Aは、第1光透過層223Aと第1反射層224Aと第1樹脂層225Aと第1保護層227Aとを含んでいる。
【0187】
光透過層223Aは、光透過性、具体的には可視光透過性を有しており、典型的には透明層である。光透過層223Aの材料としては、例えば、光透過層223a又は223bについて上述したものを使用することができる。
【0188】
光透過層223Aの一方の主面には、第1レリーフ構造が設けられている。ここでは、第1レリーフ構造は、光透過層223Aの一方の主面の全体に設けられている。第1レリーフ構造は、光透過層223Aの一方の主面の一部にのみ設けられていてもよい。
【0189】
第1レリーフ構造は、回折構造、即ち、回折格子及び/又はホログラムである。第1レリーフ構造は、特定の照明条件、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第1波長を有している回折光を第2方向へ射出する。
【0190】
反射層224Aは、光透過層223Aのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224Aは、可視光透過性を有している。反射層224Aとしては、例えば、上述した透明反射層を使用することができる。
【0191】
樹脂層225Aは、反射層224Aを被覆している。樹脂層224Aの材料としては、例えば、樹脂層225aまたは225bについて上述したものを使用することができる。
【0192】
保護層227Aは、光透過層223Aのレリーフ構造が設けられた面の裏面を被覆している。保護層227Aの材料としては、例えば、保護層227a又は227bについて上述したものを使用することができる。保護層227Aは、省略することができる。
【0193】
第2表示要素220Bは、画素の一部に対応して配列している。即ち、少なくとも1つの画素は、表示要素220Bを含んでいる。
【0194】
また、表示要素220Bを含んだ画素と、表示要素220Aを含んだ画素とは、部分的に重複している。ここでは、一例として、一部の画素は表示要素220Aを含み且つ表示要素220Bを含んでおらず、他の一部の画素は表示要素220Bを含み且つ表示要素220Aを含んでおらず、更に他の一部の画素は表示要素220A及び220Bを含み、残りの画素は表示要素220A及び220Bを含んでいないこととする。
【0195】
表示要素220A及び220Bを含んだ画素では、表示要素220Bは、表示要素220Aと向き合っている。表示要素220A及び220Bを含んだ画素において、表示要素220Aは、表示要素220Bと表紙本体21との間に介在している。
【0196】
表示要素220Bは、可視光透過性を有している。また、表示要素220Bは、上記の照明条件のもとで、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第2波長を有している回折光を第2方向へ射出するように構成されている。第2波長は、第1波長とは異なっている。ここでは、一例として、第2波長の回折光は赤色光であるとする。
【0197】
表示要素220Bは、第2光透過層223Bと第2反射層224Bと第2樹脂層225Bと第2保護層227Bとを含んでいる。
【0198】
光透過層223Bは、光透過性、具体的には可視光透過性を有しており、典型的には透明層である。光透過層223Bの材料としては、例えば、光透過層223a又は223bについて上述したものを使用することができる。
【0199】
光透過層223Bの一方の主面には、第2レリーフ構造が設けられている。ここでは、第2レリーフ構造は、光透過層223Bの一方の主面の一部にのみ設けられていている。この主面のうち第2レリーフ構造が設けられている領域は、光透過層223Aの上記主面のうち第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さい。
【0200】
第2レリーフ構造は、回折構造、即ち、回折格子及び/又はホログラムである。第2レリーフ構造は、上記の照明条件、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第2波長を有している回折光を第2方向へ射出する。
【0201】
反射層224Bは、光透過層223Bのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224Bは、可視光透過性を有している。反射層224Bとしては、例えば、上述した透明反射層を使用することができる。
【0202】
樹脂層225Bは、反射層224Bを被覆している。樹脂層224Bの材料としては、例えば、樹脂層225aまたは225bについて上述したものを使用することができる。
【0203】
保護層227Bは、光透過層223Bのレリーフ構造が設けられた面の裏面を被覆している。保護層227Bの材料としては、例えば、保護層227a又は227bについて上述したものを使用することができる。保護層227Bは、省略することができる。
【0204】
第3表示要素220Cは、画素の一部に対応して配列している。即ち、少なくとも1つの画素は、表示要素220Cを含んでいる。
【0205】
また、表示要素220Cを含んだ画素と、表示要素220A及び220Bの少なくとも一方を含んだ画素とは、部分的に重複している。ここでは、一例として、一部の画素は表示要素220Aを含み且つ表示要素220B及び220Cを含んでおらず、他の一部の画素は表示要素220A及び220Bを含み且つ表示要素220Cを含んでおらず、更に他の一部の画素は表示要素220A乃至220Cを含み、更に他の一部の画素は220Bを含み且つ表示要素220A及び220Cを含んでおらず、更に他の一部の画素は表示要素220B及び220Cを含み且つ表示要素220Aを含んでおらず、更に他の一部の画素は220Cを含み且つ表示要素220A及び220Bを含んでおらず、残りの画素は表示要素220A乃至220Cを含んでいないこととする。
【0206】
表示要素220A及び220Cを含んだ画素では、表示要素220Cは、表示要素220Aと向き合っている。表示要素220A及び220Cを含んだ画素において、表示要素220Aは、表示要素220Cと表紙本体21との間に介在している。
【0207】
表示要素220B及び220Cを含んだ画素では、表示要素220Cは、表示要素220Bと向き合っている。表示要素220B及び220Cを含んだ画素において、表示要素220Bは、表示要素220Cと表紙本体21との間に介在している。
【0208】
表示要素220Cは、可視光透過性を有している。また、表示要素220Cは、上記の照明条件のもとで、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第3波長を有している回折光を第2方向へ射出するように構成されている。第3波長は、第1及び第2波長とは異なっている。ここでは、一例として、第3波長の回折光は緑色光であるとする。
【0209】
表示要素220Cは、第3光透過層223Cと第3反射層224Cと第3樹脂層225Cと第3保護層227Cとを含んでいる。
【0210】
光透過層223Cは、光透過性、具体的には可視光透過性を有しており、典型的には透明層である。光透過層223Cの材料としては、例えば、光透過層223a又は223bについて上述したものを使用することができる。
【0211】
光透過層223Cの一方の主面には、第3レリーフ構造が設けられている。ここでは、第3レリーフ構造は、光透過層223Cの一方の主面の一部にのみ設けられていている。この主面のうち第3レリーフ構造が設けられている領域は、光透過層223Bの上記主面のうち第2レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さい。
【0212】
第3レリーフ構造は、回折構造、即ち、回折格子及び/又はホログラムである。第3レリーフ構造は、上記の照明条件、例えば、第1方向から白色光で照明した場合に、可視域内の第3波長を有している回折光を第2方向へ射出する。
【0213】
反射層224Cは、光透過層223Cのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224Cは、可視光透過性を有している。反射層224Cとしては、例えば、上述した透明反射層を使用することができる。
【0214】
樹脂層225Cは、反射層224Cを被覆している。樹脂層224Cの材料としては、例えば、樹脂層225aまたは225bについて上述したものを使用することができる。
【0215】
保護層227Cは、光透過層223Cのレリーフ構造が設けられた面の裏面を被覆している。保護層227Cの材料としては、例えば、保護層227a又は227bについて上述したものを使用することができる。保護層227Cは、省略することができる。
【0216】
この構成を採用した場合、各画素に、第1波長の回折光による青色、第2波長の回折光による赤色、又は第3波長の回折光による緑色を表示させることができるのに加え、それらの加法混色によって生じる色を表示させることも可能である。即ち、各画素を表示色が異なるサブ画素へと分割することなしに、多色画像を表示することができる。
【0217】
また、この構造では、第1レリーフ構造が設けられている領域の面積と、第2レリーフ構造が設けられている領域の面積と、第3レリーフ構造が設けられている領域の面積とを、この順に小さくしている。こうすると、それらの面積比を適宜設定することにより、例えば、表示要素220A乃至220Cの何れか1つのみを含んだ画素と、表示要素220A乃至220Cの何れか2つを含んだ画素と、表示要素220A乃至220Cを含んだ画素との各々において、目標とする色相を容易に再現することができる。
【0218】
なお、この構造において、表示要素220A乃至220Cの何れか1つは省略してもよい。或いは、この構造は、表示要素220A乃至220Cとは回折光の波長が異なる他の表示要素を更に含んでいてもよい。回折構造として回折格子を設ける場合、回折光の波長は、格子定数及び/又は溝の長さ方向によって制御することができる。
【0219】
また、この構造は、図8及び図9を参照しながら説明した輝度調整要素220cを更に含んでいてもよい。
【0220】
図11及び図12を参照しながら説明した構造を利用して、多色の立体画像を表示することも可能である。例えば、各画素を右眼用のサブ画素と左眼用のサブ画素とで構成し、図11及び図12の画像表示体22において各画素において採用していた構造を、各サブ画素に採用してもよい。或いは、各画素において、表示色が互いに異なる複数の右眼用表示要素と、表示色が互いに異なる複数の左眼用表示要素とを積層してもよい。即ち、図11及び図12を参照しながら説明した構造は、図2及び図3を参照しながら説明した構造又は図8及び図9を参照しながら説明した構造と組み合わせてもよい。勿論、多色の立体画像を表示する構成を採用する代わりに、観察角度に応じて表示画像が切り替わる構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0221】
1…折り丁、2…表紙、11…紙片、12…印刷パターン、21…表紙本体、22…画像表示体、22’…転写材層、100…ラベル付き物品、201a…転写箔、201b…転写箔、220a…第1表示要素、220A…第1表示要素、220a’…転写材層、220b…第2表示要素、220B…第2表示要素、220b’…転写材層、220c…輝度調整要素、220C…第3表示要素、223a…第1光透過層、223A…第1光透過層、223a’…光透過層、223b…第2光透過層、223B…第2光透過層、223b’…光透過層、223c…光透過層、223C…第3光透過層、224…鏡面反射層、224’…鏡面反射層、224a…第1反射層、224A…第1反射層、224a’…反射層、224b…第2反射層、224B…第2反射層、224b’…反射層、224c…反射層、224C…第3反射層、225…樹脂層、225a…第1樹脂層、225A…第1樹脂層、225a’…樹脂層、225b…第2樹脂層、225B…第2樹脂層、225b’…樹脂層、225c…樹脂層、225C…第3樹脂層、226…支持体、226a…支持体、226b…支持体、227…保護層、227’…剥離保護層、227a…第1保護層、227A…第1保護層、227a’…剥離保護層、227b…第2保護層、227B…第2保護層、227b’…剥離保護層、227c…保護層、227C…第3保護層、2251…樹脂層、2251’…樹脂層、2252…樹脂層、2252’…樹脂層、Ga…溝、Gb…溝、I1a…画像、I1b…画像、I2…画像、I3…画像。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面を自然光で照明したときに前記前面を観察している観察者が肉眼で視認可能な画像を表示する画像表示体であって、
二次元的に配列した複数の画素を具備し、
前記複数の画素の1つ以上は、可視光透過性を有している第1表示要素を備え、前記第1表示要素は、第1レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第1主面を有している第1光透過層と、前記第1主面を被覆した第1反射層とを含み、
前記第1表示要素を備えた前記画素の少なくとも1つは、可視光透過性を有している第2表示要素を、前記第1表示要素の前方に更に備え、前記第2表示要素は、第2レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第2主面を有している第2光透過層と、前記第2主面を被覆した第2反射層とを含み、前記第2主面のうち前記第2レリーフ構造が設けられている領域は、前記第1主面のうち前記第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さく、
前記複数の画素の1つ以上が前記第1表示要素を備えていない場合、前記第1表示要素を含んでいない前記画素の各々は、任意に前記第2表示要素を備え、
前記第1レリーフ構造の配列は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を構造色の像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に前記第1画像を構造色の像として表示しないか又は前記第1画像を前記第1方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示し、
前記第2レリーフ構造の配列は、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に第2画像を構造色の像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第2画像を構造色の像として表示しないか又は前記第2画像を前記第2方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示する画像表示体。
【請求項2】
前記複数の画素の1つ以上は、前記第1表示要素を備えており且つ前記第2表示要素を備えておらず、前記第1表示要素を備えており且つ前記第2表示要素を備えていない前記画素の各々は、可視光透過性を有しており且つ構造色を表示しない輝度調整要素を、前記第1表示要素の前方に更に備えた請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記輝度調整要素は、前記第2主面に前記第2レリーフ構造が設けられていないこと以外は前記第2表示要素と構造、材料及び寸法が等しい請求項2に記載の画像表示体。
【請求項4】
鏡面反射層を前記複数の画素の後方に更に具備した請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項5】
前記第1及び第2レリーフ構造の各々は回折格子又はホログラムである請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項6】
前記第1及び第2レリーフ構造並びにそれらの配列は、前記観察者が右眼で前記第1及び第2画像の一方を視認し且つ左眼で前記第1及び第2画像の他方を視認したときに立体像を知覚するように構成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項7】
前記第1レリーフ構造は、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に第1構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第1構造色とは異なる第2構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第1及び第2構造色とは異なる第3構造色を表示するものとを含み、前記第2レリーフ構造は、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に第4構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第4構造色とは異なる第5構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第4及び第5構造色とは異なる第6構造色を表示するものとを含み、前記第1及び第2画像の各々は多色画像である請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項8】
前記第1及び第2画像の少なくとも一方は個人情報を含んでいる請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項9】
前面を自然光で照明したときに前記前面を観察している観察者が肉眼で視認可能な画像を表示する画像表示体であって、
二次元的に配列した複数の画素を具備し、
前記複数の画素の1つ以上は、可視光透過性を有している第1表示要素を備え、前記第1表示要素は、第1レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第1主面を有している第1光透過層と、前記第1主面を被覆した第1反射層とを含み、前記第1レリーフ構造は、特定の照明条件のもとで第1回折光を射出するように構成され、
前記複数の画素の他の1つ以上は、前記第1表示要素を備えておらず、可視光透過性を有している第2表示要素を備え、前記第2表示要素は、第2レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第2主面を有している第2光透過層と、前記第2主面を被覆した第2反射層とを含み、前記第2レリーフ構造は、前記照明条件のもとで、前記第1レリーフ構造が前記第1回折光を射出する方向へ、前記第1回折光とは波長が異なる第2回折光を射出するように構成され、前記第2主面のうち前記第2レリーフ構造が設けられている領域は、前記第1主面のうち前記第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さく、
前記第1表示要素を備えた前記画素の一部は、前記第2表示要素を、前記第1表示要素の前方に更に備え、
前記画像表示体は、前記照明条件のもとで前記方向から観察した場合に、前記第1及び第2表示要素のうち前記第1表示要素のみを備えた前記画素に対応した領域と、前記第1及び第2表示要素のうち前記第2表示要素のみを備えた前記画素に対応した領域と、前記第1及び第2表示要素の双方を備えた前記画素に対応した領域とで色相が異なる構造色の画像を表示する画像表示体。
【請求項10】
前記構造色の画像は個人情報を含んでいる請求項9に記載の画像表示体。
【請求項11】
前記個人情報は顔画像を含んでいる請求項8又は10に記載の画像表示体。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の画像表示体と、
前記画像表示体をその前面側で剥離可能に支持した支持体と
を具備した転写箔。
【請求項13】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備したラベル付き物品。
【請求項14】
個人認証に使用される請求項13に記載のラベル付き物品。
【請求項1】
前面を自然光で照明したときに前記前面を観察している観察者が肉眼で視認可能な画像を表示する画像表示体であって、
二次元的に配列した複数の画素を具備し、
前記複数の画素の1つ以上は、可視光透過性を有している第1表示要素を備え、前記第1表示要素は、第1レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第1主面を有している第1光透過層と、前記第1主面を被覆した第1反射層とを含み、
前記第1表示要素を備えた前記画素の少なくとも1つは、可視光透過性を有している第2表示要素を、前記第1表示要素の前方に更に備え、前記第2表示要素は、第2レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第2主面を有している第2光透過層と、前記第2主面を被覆した第2反射層とを含み、前記第2主面のうち前記第2レリーフ構造が設けられている領域は、前記第1主面のうち前記第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さく、
前記複数の画素の1つ以上が前記第1表示要素を備えていない場合、前記第1表示要素を含んでいない前記画素の各々は、任意に前記第2表示要素を備え、
前記第1レリーフ構造の配列は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を構造色の像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に前記第1画像を構造色の像として表示しないか又は前記第1画像を前記第1方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示し、
前記第2レリーフ構造の配列は、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に第2画像を構造色の像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第2画像を構造色の像として表示しないか又は前記第2画像を前記第2方向から観察した場合と比較してより暗い構造色の像として表示する画像表示体。
【請求項2】
前記複数の画素の1つ以上は、前記第1表示要素を備えており且つ前記第2表示要素を備えておらず、前記第1表示要素を備えており且つ前記第2表示要素を備えていない前記画素の各々は、可視光透過性を有しており且つ構造色を表示しない輝度調整要素を、前記第1表示要素の前方に更に備えた請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記輝度調整要素は、前記第2主面に前記第2レリーフ構造が設けられていないこと以外は前記第2表示要素と構造、材料及び寸法が等しい請求項2に記載の画像表示体。
【請求項4】
鏡面反射層を前記複数の画素の後方に更に具備した請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項5】
前記第1及び第2レリーフ構造の各々は回折格子又はホログラムである請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項6】
前記第1及び第2レリーフ構造並びにそれらの配列は、前記観察者が右眼で前記第1及び第2画像の一方を視認し且つ左眼で前記第1及び第2画像の他方を視認したときに立体像を知覚するように構成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項7】
前記第1レリーフ構造は、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に第1構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第1構造色とは異なる第2構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第1及び第2構造色とは異なる第3構造色を表示するものとを含み、前記第2レリーフ構造は、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に第4構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第4構造色とは異なる第5構造色を表示するものと、前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第4及び第5構造色とは異なる第6構造色を表示するものとを含み、前記第1及び第2画像の各々は多色画像である請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項8】
前記第1及び第2画像の少なくとも一方は個人情報を含んでいる請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項9】
前面を自然光で照明したときに前記前面を観察している観察者が肉眼で視認可能な画像を表示する画像表示体であって、
二次元的に配列した複数の画素を具備し、
前記複数の画素の1つ以上は、可視光透過性を有している第1表示要素を備え、前記第1表示要素は、第1レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第1主面を有している第1光透過層と、前記第1主面を被覆した第1反射層とを含み、前記第1レリーフ構造は、特定の照明条件のもとで第1回折光を射出するように構成され、
前記複数の画素の他の1つ以上は、前記第1表示要素を備えておらず、可視光透過性を有している第2表示要素を備え、前記第2表示要素は、第2レリーフ構造が少なくとも一部に設けられた第2主面を有している第2光透過層と、前記第2主面を被覆した第2反射層とを含み、前記第2レリーフ構造は、前記照明条件のもとで、前記第1レリーフ構造が前記第1回折光を射出する方向へ、前記第1回折光とは波長が異なる第2回折光を射出するように構成され、前記第2主面のうち前記第2レリーフ構造が設けられている領域は、前記第1主面のうち前記第1レリーフ構造が設けられている領域と比較して面積がより小さく、
前記第1表示要素を備えた前記画素の一部は、前記第2表示要素を、前記第1表示要素の前方に更に備え、
前記画像表示体は、前記照明条件のもとで前記方向から観察した場合に、前記第1及び第2表示要素のうち前記第1表示要素のみを備えた前記画素に対応した領域と、前記第1及び第2表示要素のうち前記第2表示要素のみを備えた前記画素に対応した領域と、前記第1及び第2表示要素の双方を備えた前記画素に対応した領域とで色相が異なる構造色の画像を表示する画像表示体。
【請求項10】
前記構造色の画像は個人情報を含んでいる請求項9に記載の画像表示体。
【請求項11】
前記個人情報は顔画像を含んでいる請求項8又は10に記載の画像表示体。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の画像表示体と、
前記画像表示体をその前面側で剥離可能に支持した支持体と
を具備した転写箔。
【請求項13】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備したラベル付き物品。
【請求項14】
個人認証に使用される請求項13に記載のラベル付き物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−68537(P2012−68537A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214481(P2010−214481)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]