説明

画像表示体、転写箔及び個人認証媒体

【課題】複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示可能とする。
【解決手段】有色画像を表示する有色画像層と、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を回折像として表示し、この照明条件のもとで第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に第1画像を回折像として表示しないか又は第1画像を第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第1回折構造と、先の照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第1画像とは異なる第2画像を回折像として表示し、この照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第2画像を回折像として表示しないか又は第2画像を第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第2回折構造とを具備し、第1回折構造及び第2回折構造は、光透過性を有しており、有色画像層の前方で有色画像層と少なくとも部分的に向き合っている画像表示体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。
【0003】
例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0004】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用する感熱転写記録方式のプリンタは広く普及している。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、そこに別の顔画像を記録することは、必ずしも困難ではない。
【0006】
特許文献1には、上述した方法で顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録することが記載されている。また、特許文献2には、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録することが記載されている。更に、特許文献3には、通常の顔画像と、パール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置することが記載されている。
【0007】
これら技術をパスポートに適用すると、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認することはできるものの、パール顔料は粒径が大きいため、これを用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【0008】
特許文献4には、多層膜を転写リボンから基材上へと転写することが記載されている。また、特許文献4には、カラー画像を表示するべく、表示色が異なる多層膜を並置することが記載されている。
【0009】
通常、多層膜のパターンが表示する画像は、一般に流通している転写リボンを用いて再現することができないのに加え、肉眼で視認することができる。また、多層膜を転写する方法によると、パール顔料を用いた場合と比較して、優れた画質を達成できる。そして、この技術は、画像をオンデマンドで記録するのに適しており、個人情報の記録への応用が期待される。
【0010】
また、偽造防止効果を高めるために、回折格子等のホログラムを用いて立体画像を表現することもできる。回折格子からなるパターンにより立体像を表示する手法としては、特許文献5、6等で提案されている。
これらは、画素として、視差を持たせる方向,すなわち表示光(1次回折光)を出射させる方向に応じた回折格子(格子方向が異なる)からなるセルを用い、その方向毎に前記セルを使い分けて、合成画像を形成する手法である。
図16(a)に示すように、被写体となる3次元物体を、C1〜C4の種々の方向から撮影した2次元画像について、C1〜C4の各方向に応じた1次回折光を出射する4種類の回折格子セルを用いて、合成画像を形成した場合、
図16(b)に示すように、P1〜P4の各方向に応じた(それぞれ、C1〜C4の方向から撮影した)2次元画像が表示再生されることになり、同図では、観察者40の左目がP2(C2),観察者40の右目がP3(C3)の画像を視覚するため、立体感を伴って感じられることになる。
回折格子が直線であると、1次回折光の出射方向が限られるため、曲線の集まりからなる格子を用いると、前記方向に広がりを持たせることが可能となり、隣り合うセル間で1次回折光が出射しない領域を少なくすることが可能となる。
このことは、観察者が左右方向に視点を移動した際に、視覚される視差画像が切り替わるように感じられることを防ぎ、滑らかに視差が変化することに寄与する。類似の構成、効果を有する方式として、ホログラムを利用する方法もある。
【0011】
しかし、立体画像を表現すると、視差を持たせるため、複数の平面画像に分けて回折格子セルを設けていく。そのため、輝度が大きく低下し、視覚効果が激減してしまう。そのため、上記したように、紙面で表現をするとなおさら被転写面の紙面の凹凸を拾い、ホログラムの輝度も著しく減少して見づらくなり、目視での真偽判定が困難になる。これは、用意する二次元画像が多ければ多いほど、立体画像は滑らかになるがその分輝度の減少は大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【特許文献4】特開平10−49647号公報
【特許文献5】開平3−206401号公報
【特許文献6】特開平5−2148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、より複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示できれば、不正を抑止する効果が更に向上すると考えている。そこで、本発明は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1側面は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を回折像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に前記第1画像を回折像として表示しないか又は前記第1画像を前記第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第1回折構造と、
前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第1画像とは異なる第2画像を回折像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第2画像を回折像として表示しないか又は前記第2画像を前記第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第2回折構造と
有色画像を表示する有色画像層と、
を具備し、前記第1回折構造及び前記第2回折構造は、前記有色画像層の前方で前記有色画像層と少なくとも部分的に向き合っている画像表示体
である。
本発明の第2側面は、有色画像を表示する有色画像層と、
前記有色画像層の一方の主面に前記第1回折構造が設けられ、光透過性を有している第1反射層を備え、前記第1画像に対応した形状を有している第1画像表示層と、
前記有色画像層の一方の主面に前記第2回折構造が設けられ、光透過性を有している第2反射層を備え、前記第2画像に対応した形状を有しており第2画像表示層と
を具備し、
前記第1画像表示層と前記第2画像表示層は隣り合っており、
前記有色画像層は、前記第1画像表示層及び前記第2画像表示層と少なくとも部分的に重なり合った請求項1に記載の画像表示体。
である。
本発明の第3側面は、有色画像を表示し、光透過性を有している有色画像層と、
前記有色画像層の一方の主面に前記第1回折構造が設けられた第1反射層を備え、前記第1画像に対応した形状を有している第1画像表示層と、
前記有色画像層の一方の主面に前記第2回折構造が設けられた第2反射層を備え、前記第2画像に対応した形状を有しており第2画像表示層と
を具備し、
前記第1画像表示層と前記第2画像表示層は隣り合っており、
前記有色画像層は、前記第1画像表示層及び前記第2画像表示層と少なくとも部分的に重なり合った請求項1に記載の画像表示体
である。
本発明の第4側面は、前記第1画像表示層は、各中心が仮想的な平面格子の格子点上に位置している複数の第1ドット状部によって構成されており、
前記第2画像表示層は、各中心が仮想的な平面格子の格子点上に位置している複数の第2ドット状部によって構成されており、
前記複数の第1ドット状部と前記複数の第2ドット状部とは、隣り合っている請求項2乃至3に記載の画像表示体
である。
本発明の第5側面は、回折像としての前記第1及び第2画像及び前記有色画像によって立体画像を表示する第1乃至第4側面の何れか1つに係る画像表示体である。
本発明の第6側面は、前記立体画像は個人情報を含んでいる第5側面に係る画像表示体である。
本発明の第7側面は、前記個人情報は顔画像を含んだ第6側面に係る画像表示体である。
本発明の第8側面は、第1乃至第7側面の何れか1つに係る画像表示体と、前記画像表示体を剥離可能に支持した支持体とを具備した転写箔である。
本発明の第9側面は、第1乃至第7側面の何れか1つに係る画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備した個人認証媒体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示することが可能となる。
本発明の第1側面に係る画像表示体は、レリーフ型の第1及び第2回折構造を含んでいる。第1回折構造は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を回折像として表示し、この照明条件のもとで第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に第1画像を回折像として表示しないか又は第1画像を第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示する。第2回折構造は、先の照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第1画像とは異なる第2画像を回折像として表示し、この照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第2画像を回折像として表示しないか又は第2画像を第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示する。従って、この画像表示体には、例えば、立体画像を表示させること、又は、観察方向に応じて異なる画像を表示させることができる。即ち、この画像表示体は、複雑な視覚効果を示す。
さらに、上記したホログラム立体画像と有色画像層により表示された有色画像を部分的に向き合わせて個別情報を表示することにより、ホログラム立体画像のみの場合と比較して、有色画像層という要素が加わることで偽造もさらに困難になり、セキュリティ性が上がる。
また、ホログラム立体画像と有色画像を組み合わせたことにより、フルカラーのホログラム立体画像を擬似的に表現することができ、従来のホログラムのみの画像と比較して個別情報の視認性も格段に上がり、高い画質で表示可能とすることができる。目視での真贋判定がしやすくなるため、個人認証媒体の真偽判定容易性が向上する。
本発明の第2側面に係る画像表示体は、第1側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、第1画像表示層は、有色画像層の一方の主面に第1回折構造が設けられ、光透過性を有している第1反射層を備え、第1画像に対応した形状を有している。第2画像表示層は、有色画像層の一方の主面に第2回折構造が設けられ、光透過性を有している第2反射層を備え、第2画像に対応した形状を有している。
この構成を採用した場合、観察者から画像表示体を観察した場合、有色画像層の表面に第1画像表示層及び第2画像表示層が積層され、第1画像表示層及び第2画像表示層が観察者側の面に配置された構造となっている。反射層に光透過性の材料を用いることによって、立体画像に加え下地の有色画像層の有色画像を視認することができる。そのため、ホログラム立体画像のみの場合と比較して偽造防止効果も上がり、再現、改竄をさらに困難にすることが可能となる。
また、ホログラム立体画像と有色画像を組み合わせたことにより、フルカラーのホログラム立体画像を擬似的に表現することができ、従来のホログラムのみの画像と比較して個別情報の視認性も格段に上がり、高い画質で表示可能とすることができる。目視での真贋判定がしやすくなるため、個人認証媒体の真偽判定容易性が向上する。
また、例えば、転写箔を利用して画像を記録することができる。従って、この構成は、オンデマンドで画像を記録するプロセスに適している。
本発明の第3側面に係る画像表示体は、第1側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、第1画像表示層は、有色画像層の一方の主面に第1回折構造が設けられた第1反射層を備え、第1画像に対応した形状を有している。第2画像表示層は、有色画像層の一方の主面に第2回折構造が設けられた第2反射層を備え、第2画像に対応した形状を有している。そして、有色画像を表示する有色画像層を具備し、有色画像層は、光透過性を有している。
この構成を採用した場合、観察者から画像表示体を観察した場合、第1画像表示層及び第2画像表示層が配置された表面に有色画像層が積層され、有色画像層が観察者側の面に配置された構造となっている。有色画像層に光透過性の材料を用いることによって、有色画像層による有色画像に加え下地のホログラム層の立体画像を視認することができる。そのため、ホログラム立体画像のみの場合と比較して偽造防止効果も上がり、再現、改竄をさらに困難にすることが可能となる。
さらに上述の構造を用いると、反射層における反射回折光の射出量を制限する必要がないため、様々な材料を用いて、反射回折光の射出量が大きな、視認性の高い立体画像を表示させることも可能となる。そのため、ホログラム立体画像のみの場合と比較して偽造防止効果も上がり、再現、改竄をさらに困難にすることが可能となる。
また、ホログラム立体画像と有色画像を組み合わせたことにより、フルカラーのホログラム立体画像を擬似的に表現することができ、従来のホログラムのみの画像と比較して個別情報の視認性も格段に上がり、高い画質で表示可能とすることができる。目視での真贋判定がしやすくなるため、個人認証媒体の真偽判定容易性が向上する。
また、例えば、転写箔を利用して画像を記録することができる。従って、この構成は、オンデマンドで画像を記録するプロセスに適している。
本発明の第4側面に係る画像表示体は、第2側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、第1画像表示層は、各中心が仮想的な平面格子の格子点上に位置している複数の第1ドット状部によって構成されており、第2画像表示層は、各中心が仮想的な平面格子の格子点上に位置している複数の第2ドット状部によって構成されている。そして、複数の第1ドット状部と複数の第2ドット状部とは少なくとも部分的に重なり合っている。この構成は、サーマルヘッドを用いた熱転写によって画像を記録するプロセスに適している。
本発明の第5側面に係る画像表示体は、第1側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、回折像としての前記第1及び第2画像によって立体画像を表示する。立体画像を表示する画像表示体は偽造が難しい。
本発明の第6側面に係る画像表示体は、第5側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、立体画像は個人情報を含んでいる。立体画像が表示する個人情報の改竄は極めて困難である。
本発明の第7側面に係る画像表示体は、第6側面に係る画像表示体について上述した構成を採用しているのに加え、個人情報は顔画像を含んでいる。顔画像は、生体情報として一般的であり、目視による個人認証に適している。
本発明の第8側面に係る転写箔は、第1乃至第7側面の何れか1つに係る画像表示体と、前記画像表示体を剥離可能に支持した支持体とを具備している。このような転写箔の支持体から基材上へと画像表示体を転写した場合、基材上に第1及び第2回折構造の各々を直接形成した場合と比較して、基材の表面の凹凸が画質に及ぼす影響を小さくすることができる。
本発明の第9側面に係る個人認証媒体は、第1乃至第7側面の何れか1つに係る画像表示体を具備している。それ故、この個人認証媒体は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示するのに加え、改竄が困難である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一態様に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す個人認証媒体の一部を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示す個人認証媒体のI−I線に沿った断面図。
【図4】図2及び図3に示す個人認証媒体の画像表示体が含んでいる回折構造を概略的に示す平面図。
【図5】図2及び図3に示す個人認証媒体の画像表示体が含んでいる他の回折構造を概略的に示す平面図。
【図6】比較例に係る個人認証媒体の一部を拡大して示す平面図。
【図7】図6に示す個人認証媒体のII−II線に沿った断面図。
【図8】図1乃至図3に示す個人認証媒体の製造に使用可能な二次転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図9】一変形例に係る個人認証媒体の一部を拡大して示す平面図。
【図10】図9に示す個人認証媒体のIII−III線に沿った断面図。
【図11】図1、図9乃至図10に示す一変形例に係る個人認証媒体の製造に使用可能な二次転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図12】図1乃至図3に係る個人認証媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図13】図1乃至図3に係る個人認証媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図14】図1乃至図3に係る個人認証媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図15】図1乃至図3に係る個人認証媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図16】従来技術による立体画像を表現する手法を模式的に示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の一態様に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図である。
図1に示す個人認証媒体100は、パスポートなどの冊子体である。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
この個人認証媒体100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターン12が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0019】
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0020】
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0021】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0022】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0023】
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2及びI3を表示している。
画像I1a、I2及びI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2及びI3は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2及びI3の1つ以上を省略してもよい。
【0024】
画像I1a、I2及びI3は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2及びI3の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a、I2及びI3は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2及びI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0025】
画像I1bは、回折格子及びホログラムなどの回折構造が表示する画像である。画像I1bは、後で詳述するように、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプ又は熱ロールを用いた熱転写記録とをこの順に行うことにより形成する。
【0026】
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0027】
画像11bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像11bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0028】
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
【0029】
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像11a及び11bの少なくとも一方とを組み合わせると、個人認証媒体100の改竄をより困難にすることができる。また、画像I3は、回折格子及びホログラムなどの回折構造が表示する画像を用いても良い。公知のホログラム技術を用いて上記画像と組み合わせると、個人認証媒体100の改竄をより困難にすることができる。透明ホログラムであると下地の画像を視認できるため好ましい。
【0030】
次に、表紙2の構造について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
図2は、図1に示す個人認証媒体の一部を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す個人認証媒体のI−I線に沿った断面図である。図4は、図2及び図3に示す個人認証媒体の画像表示体が含んでいる回折構造を概略的に示す平面図である。図5は、図2及び図3に示す個人認証媒体の画像表示体が含んでいる他の回折構造を概略的に示す平面図である。
【0031】
なお、X方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり、Y方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり且つX方向に対して垂直な方向であり、Z方向はX及びY方向に対して垂直な方向である。また、図2及び図3に示す構造は、表紙2のうち画像I1bに対応した部分である。
【0032】
表紙2は、図3に示すように、表紙本体21と画像表示体22とを含んでいる。
表紙本体21は、個人認証媒体100の基材であって、典型的には紙片である。表紙本体21は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。表紙本体21は、個人認証媒体100を閉じた状態において、折り丁1を挟み込むように二つ折りされている。
【0033】
画像表示体22は、多層構造を有している層である。画像表示体22は、個人認証媒体100を閉じた状態において折り丁1と向き合う表紙本体21の主面に貼り付けられている。
【0034】
画像表示体22は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する画像表示層(図示せず)を含んでいる。この画像表示層が表示する画像は、典型的には画像I1aを含んでいる。
【0035】
この画像表示層は、光の吸収を利用して画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する。この画像表示層は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部に対応したパターン形状を有している。この画像表示層は、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とで構成することができる。このような画像表示層は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することにより得ることができる。また、この画像表示層の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0036】
この画像表示層は、パターニングされていなくてもよい。即ち、この画像表示層は、連続膜であってもよい。この場合、画像表示層は、例えば、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより得ることができる。
【0037】
この画像表示層は、省略することができる。例えば、この画像表示層は、画像表示体22の構成要素とせずに、表紙本体21上に設けてもよい。
【0038】
画像表示体22は、図3に示すように、画像表示層220a及び220bと有色画像層300と樹脂層225と保護層227とを更に含んでいる。
【0039】
画像表示層220aは、パターンを形成しており、有色画像層300と少なくとも部分的に重なり合っている。ここでは、画像表示層220aは、有色画像層300の前方で、有色画像層300と部分的に重なり合っている。
【0040】
画像表示層220aは、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に、第1画像を回折像として表示する。そして、画像表示層220aは、先の照明条件のもとで第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に、第1画像を回折像として表示しないか、又は、第1画像を第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示する。ここでは、画像表示層220aが回折像として表示する第1画像は、画像I1bの右眼用視差画像であるとする。
【0041】
画像表示層220aは、回折構造形成層223aと反射層224aと樹脂層225aと保護層227aとを含んでいる。
【0042】
回折構造形成層223aは、光透過性、特には可視光透過性を有しており、典型的には透明層である。回折構造形成層223aの一方の主面には、レリーフ型の回折構造として回折格子が設けられている。この回折構造は、図4に示すように、回折構造形成層223aの一方の主面に設けられた複数の溝Gaからなる。溝Gaは、同一の形状を有しており、一定のピッチで互いに平行に配列している。溝Gaの長さ方向は、X方向に対して反時計回りに傾いている。なお、図4に示す例では、溝Gaは円弧状に湾曲しているが、溝Gaは湾曲していなくてもよい。
【0043】
回折構造形成層223aの材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、トリアジンアクリレート及びトリアジンメタアクリレートなどの熱硬化性樹脂、これらの混合物、又はラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料を使用することができる。回折構造形成層223aは、光硬化性を有している樹脂を使用して形成してもよい。なお、このような透明樹脂を用いて得られる回折構造形成層223aは、典型的には、波長が550nmの光に対する屈折率が1.3乃至1.7の範囲内にある。
【0044】
反射層224aは、表紙本体21と回折構造形成層223aとの間に介在している。反射層224aは、回折構造形成層223a上に形成されている。反射層224aは、回折構造形成層223aのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。
反射層224aとしては、例えば、透明反射層又は不透明な反射層を使用することができる。そのような反射層224aは、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。反射層224aが樹脂を含んでいる場合、反射層224aは、塗布又は印刷を利用して形成してもよい。
【0045】
なお、図2及び図3で例示した構造の場合、反射層224aは、透明であることが好ましく、例えば光透過性を有している。反射層224aとして透明反射層を使用すると、反射層224aの背面側に絵柄及び文字等のパターンを配置した場合であっても、これを画像表示体22の前面側から視認することができる。
【0046】
透明反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。後者の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。透明反射層の材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。
【0047】
透明誘電体からなる単層構造の透明反射層は、回折構造形成層223aとは屈折率が異なっている。典型的には、透明誘電体からなる単層構造の透明反射層は、回折構造形成層223aと比較して、波長が550nmの光に対する屈折率がより大きい。
【0048】
透明誘電体からなる多層構造の透明反射層は、その回折構造形成層223aと接触している部分が、回折構造形成層223aとは異なる屈折率を有している。透明誘電体からなる多層構造の透明反射層は、典型的には、回折構造形成層223aに最も近い層の上述した波長の光に対する屈折率が、回折構造形成層223のこの波長の光に対する屈折率と比較してより大きい。
【0049】
透明反射層として金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、錫、銅、銀、金、鉄、クロム、ニッケル及び銅などの単体金属又はそれらの合金を使用することができる。金属層は、厚い場合には遮光性であるが、薄くすると透明になる。例えば、厚さが20乃至40nmの範囲内にあるアルミニウム層の場合、或る観察条件のもとでは金属光沢を観察できるが、観察角度を変更するとその背景が透けて見える。
【0050】
透明反射層として、より厚い金属層を使用することも可能である。例えば、比較的厚い金属層を形成し、これに肉眼での識別が困難な径又は幅の開口を多数設ける。例えば、この金属層を、網点又は万線状にパターニングする。これにより、金属材料からなる透明反射層を得ることができる。
【0051】
不透明な金属反射層の材料としては、例えば、透明反射層としての金属層に関して上述した材料を使用することができる。不透明な金属反射層は、典型的には、肉眼での識別が困難な径又は幅の開口は設けられておらず、光を遮るのに十分な厚さを有している。
【0052】
透明反射層又は不透明な反射層として、透明樹脂とこの中で分散した粒子とを含んだ層を使用してもよい。この粒子としては、例えば、単体金属及び合金などの金属材料からなる粒子、又は、透明金属酸化物及び透明樹脂などの透明誘電体からなる粒子を使用することができる。透明樹脂中には、粒子を分散させる代わりに、薄片を分散させてもよい。
【0053】
また、反射層に用いる上述の材料のうち少なくとも一つまたはその組み合わせから選ばれることによって、目的や用途に応じて柔軟に画像表示体を作成することができるようになるので構造を複雑にすることができるだけでなく、個別情報をより正確に、より微細に、より見易く表示することが可能となる。
【0054】
樹脂層225aは、反射層224a上に形成されている。樹脂層225aは、省略することができる。
樹脂層225aは、例えば熱可塑性樹脂からなる。樹脂層225aの材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリビニルベンゼン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル(但し、アルキル基の炭素数は2乃至6)とから得られるポリビニル樹脂などのビニル樹脂、ゴム系材料、又は、これらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0055】
樹脂層225aには、ワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩及びエステル、可塑剤、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0056】
保護層227aは、表紙本体21と回折構造形成層223aとの間に介在している。保護層227aは、省略することができる。
保護層227aは、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線又は電子線硬化樹脂などの樹脂からなる。転写箔を利用して画像表示層220aのパターンを形成する場合は、柔軟性及び箔切れ性の観点で熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0057】
この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸エステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スリレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、又はそれらの混合物を使用することができる。箔切れ性や耐摩性を考慮して、この樹脂に、石油系ワックス及び植物系ワックスなどのワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩、エステル及びシリコーンオイルなどの滑材、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
【0058】
画像表示層220bは、パターンを形成しており、有色画像層300と少なくとも部分的に重なり合っている。ここでは、画像表示層220bは、有色画像層300の前方で、有色画像層300と部分的に重なり合っている。
【0059】
画像表示層220bは、上記の照明条件のもとで第2方向から観察した場合に、第1画像とは異なる第2画像を回折像として表示する。そして、画像表示層220bは、この照明条件のもとで第1方向から観察した場合に、第2画像を回折像として表示しないか、又は、第2画像を第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示する。ここでは、画像表示層220bが回折像として表示する第2画像は、画像I1bの左眼用視差画像であるとする。
【0060】
なお、右眼用の視差画像と左眼用の視差画像とは、例えば、同一の被写体を異なる位置から同時に撮影することによって得られる画像である。観察者は、右眼用の視差画像と左眼用の視差画像とをそれぞれ右眼及び左眼で観察することにより立体画像を知覚する。
【0061】
画像表示層220bは、回折構造形成層223bと反射層224bと樹脂層225bと保護層227bとを含んでいる。
回折構造形成層223bは、光透過性、特には可視光透過性を有しており、典型的には透明である。回折構造形成層223bの一方の主面には、レリーフ型の回折構造として回折格子が設けられている。この回折構造は、図5に示すように、回折構造形成層223bの一方の主面に設けられた複数の溝Gbからなる。溝Gbは、同一の形状を有しており、一定のピッチで互いに平行に配列している。溝Gbの長さ方向は、X方向に対して時計回りに傾いている。なお、図5に示す例では、溝Gbは円弧状に湾曲しているが、溝Gbは湾曲していなくてもよい。回折構造形成層223aの材料としては、例えば、回折構造形成層223aについて上述したものを使用することができる。
【0062】
反射層224bは、表紙本体21と回折構造形成層223bとの間に介在している。反射層224bは、回折構造形成層223b上に形成されている。反射層224bは、回折構造形成層223bのレリーフ構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。
【0063】
反射層224bは、光透過性を有している。反射層224bとしては、例えば、反射層224aについて上述した透明反射層を使用することができる。
【0064】
樹脂層225bは、反射層224b上に形成されている。樹脂層225bの材料としては、例えば、樹脂層225aについて上述したものを使用することができる。樹脂層225bは、省略することができる。
【0065】
保護層227bは、表紙本体21と回折構造形成層223bとの間に介在している。保護層227bの材料としては、例えば、保護層227aについて上述したものを使用することができる。保護層227bは、省略することができる。
【0066】
樹脂層225は、表紙本体21と画像表示層220a及び220bとを被覆している。樹脂層225は、光透過性を有しており、典型的には透明である。樹脂層225は、例えば熱可塑性樹脂からなる。樹脂層225は、省略することができる。
【0067】
保護層227は、樹脂層225上に設けられている。保護層227は、光透過性を有しており、典型的には透明である。保護層227は、例えばアクリル、ポリエチレン、ポリエステル等の樹脂からなる。
【0068】
画像表示層220a及び220bは、ほぼ同じ明るさの視差画像を表示するように設計する。例えば、反射層224a及び224bの反射率又は透過率を適宜設定することにより、画像表示層220aが表示する視差画像と画像表示層220bが表示する視差画像とで明るさをほぼ等しくすることができる。
【0069】
この画像表示体22は、上述したように、画像I1bとして立体画像を表示する。即ち、この画像表示体22は、複雑な視覚効果を示す。
【0070】
有色画像層300は、例えば一般的なインクリボン材料を用いた転写箔を使用し、昇華転写方式および/または溶融転写方式で微小面積のドットを複数転写して設けることで個別情報の有色画像を表示したものである。なお有色画像は、モノクロ画像であってもよく、カラー画像であってもよい。後者の場合、これら画像I1a及びI2を表示する画像表示層は、例えば、1つ以上の転写箔を用いて、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の着色層を形成するか、又は、赤、緑及び青の3色の着色層を形成することにより得られる。
【0071】
画像I2表を表示する画像表示層は、なるべく彩度を抑え、明度を高くして薄くゴースト画像となるように表示できると良い。カラーの彩度が強すぎると、上層にある第2個別情報表示層56で表現される画像を打ち消してしまう場合があるためである。目安としては、例えば、日本色研配色体系(Practical Color Co−ordinate System)でペール・トーン、ライトグレイッシュ・トーン、ライトトーン、ソフトトーン等が妥当である。また、画像I1aで表示する画像表示層で用いる配色よりもなるべく彩度を抑え、明度を高くして薄くゴースト画像となるように表示できると良い。
【0072】
また、画像表示体22に関して上述した構成を採用すると、比較的容易に高解像度を達成することができる。これについて、図2、図3、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0073】
図6は、比較例に係る個人認証媒体の一部を拡大して示す平面図である。図7は、図6に示す個人認証媒体のII−II線に沿った断面図である。
【0074】
図6及び図7に示す構造では、画像表示層220a及び220bを積層することなしに、画像表示層220aと画像表示層220bとを並置している。具体的には、画像表示層220aと画像表示層220bは隣り合っており、画像表示層220a用の列と画像表示層220b用の列とをX方向に交互に繰り返し並べ、画像表示層220a及び画像表示層220bを、それぞれ、画像表示層220a用の列及び画像表示層220b用の列に複数配置している。
【0075】
この構造を採用した場合、立体画像を表示することができるものの、画像を表示できる視野角が狭く、観察者の見る角度によっては、画像を確認することができない。また、画像表示層に設けられている反射層が光透過性である場合、上記理由だけでなく、反射回折光も少なくなるため、より画像を認識することが困難になる。
【0076】
これに対し、図2及び図3に示す構造を採用した場合には、図6及び図7の構造に有色画像層300が加わった構造をしている。有色画像層300の表面に画像表示層220a及び220bを積層することなしに、画像表示層220aと画像表示層220bとを並置している。画像表示層220aと画像表示層220bは隣り合っており、画像表示層220a用の列と画像表示層220b用の列とをX方向に交互に繰り返し並べ、画像表示層220a及び画像表示層220bを、それぞれ、画像表示層220a用の列及び画像表示層220b用の列に複数配置している。そして、画像表示層220a及び220bは光透過性を有している反射層を備えている。また、画像表示層220a及び220bを有する面が観察者側を向いている。そのため、擬似的にフルカラーの立体画像として認識することができ、これまでに無い視覚効果を観察者に与え、高い解像度及び高い視認性を達成することができる。また、視認性が高いため、目視による真偽判定が容易になる。さらに有色画像を備えているため、視野角を広くすることが可能となる。
【0077】
次に、図8を参照しながら、個人認証媒体100の製造方法を説明する。
図8は、図1乃至図3に示す個人認証媒体の製造に使用可能な二次転写箔の一例を概略的に示す断面図である。
【0078】
図8に示す転写箔202は、例えば転写リボンである。転写箔202は、支持体226と、支持体226によって剥離可能に支持された転写材層22’とを含んでいる。
【0079】
支持体226は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体226は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体226の転写材層22’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0080】
転写材層22’は、剥離保護層227’と樹脂層225’と画像表示層220a及び220bと有色画像層300を含んでいる。
【0081】
剥離保護層227’は、転写剤層22’の支持体226からの剥離を安定化すると共に、画像表示層220a及び220bを損傷から保護する役割を果たす。剥離保護層227’の一部又は全部を、図3に示す保護層227として使用する。樹脂層225’が剥離層の機能を有している場合は、剥離保護層227’は省略することができる。
【0082】
樹脂層225’は、剥離保護層227’上に形成されている。樹脂層225’は、転写剤層22’に十分な強度を与える役割を果たす。樹脂層225’の材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂を使用すると、この樹脂層225’の一部又は全部を、図3に示す樹脂層225として使用することができる。
【0083】
樹脂層225’上には、有色画像層300と、画像表示層220a及び画像表示層220bとがこの順に積層されている。有色画像層300及び画像表示層220a及び220bの各々は、例えば、別途用意した転写箔の支持体から、この支持体によって剥離可能に支持された転写材層の一部を、サーマルヘッドを用いて樹脂層225’上へと熱転写することによって形成する。
【0084】
このようにして得られる有色画像層300及び画像表示層220a及び220bは、サーマルヘッドを利用した熱転写によって形成するので、典型的には、図2及び図3に示すように複数のドット状部からなる。有色画像層300を構成しているドット状部の各中心は、仮想的な平面格子の格子点上に位置している。画像表示層220aを構成しているドット状部の各中心は、仮想的な平面格子の格子点上に位置している。同様に、画像表示層220bを構成しているドット状部の各中心は、仮想的な平面格子の格子点上に位置している。
【0085】
なお、図2及び図3において有色画像層300の配置については、正方格子や三角格子及び矩形格子などのほかの格子を用いても良く、それら平面格子は、それらの格子点が互いから離間していてもよい。格子点の間隔が短く、各格子点での画素が隣接していると高精細な画像を表示することができる。
【0086】
なお、図2に示す配置では、先の平面格子は正方格子であるが、この平面格子は、三角格子及び矩形格子などの他の格子であってもよい。また、図2では、画像表示層220aを構成しているドット状部の中心が格子点上に位置している仮想的な平面格子と、画像表示層220bを構成しているドット状部の中心が格子点上に位置している仮想的な平面格子とは同一であるが、それらは異なっていてもよい。例えば、それら平面格子は、それらの格子点が互いから離間していてもよい。
【0087】
また、画像表示層220a及び220bの各々について、ドット状部は、隣り合っていればよい。例えば、図2では、画像表示層220a及び220bの各々について、隣り合ったドット状部は、それらの輪郭が1点で接するように配置されている。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と等しい。隣り合ったドット状部は、互いから離間していてもよい。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより小さくてもよい。或いは、隣接したドット状部は、部分的に重なり合っているが如く配置されていてもよい。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより大きくてもよい。
【0088】
ドット状部の径又はドット状部の最小中心間距離は、例えば0.042乃至0.508mm(約600乃至約50 dots per inch)の範囲内とする。画像表示層220a及び220bに顔画像を表示させる場合には、ドット状部の径又はドット状部の最小中心間距離は、例えば0.042乃至0.169mm(約600乃至約150 dots per inch)の範囲内とする。この寸法を大きくすると、画像表示層220a及び220bに高精細な画像を表示させることが難しくなる。この寸法を小さくすると、画像表示層220a及び220bのパターン形状の再現性が低下する。
【0089】
なお、上述の転写方式以外にも、有色画像層用の転写箔と画像表示層用の転写箔を一つのロールにまとめ、一つの層に同時に転写して設けて個別情報を表示する形にしても良い。その場合、カラー有色画像層のドットで転写された部分と、ホログラム層のドットで転写された部分が被らないように設定する必要がある。
【0090】
樹脂層225’上に又は剥離保護層227’と樹脂層225’との間には、図1に示す画像I1a及びI2を表示する画像表示層(図示せず)を更に形成する。この画像表示層を樹脂層225’上に形成する場合、この画像表示層は、樹脂層225’上に画像表示層220bを形成する前に形成してもよく、樹脂層225’上に画像表示層220bを形成した後であって画像表示層220aを形成する前に形成してもよく、樹脂層225’上に画像表示層220aを形成した後に形成してもよい。
【0091】
図1に示す画像I1a及びI2を表示する画像表示層を熱転写法によって形成する場合、昇華転写方式を採用してもよく、溶融転写方式を採用してもよく、それらの双方を採用してもよい。画像I1a及びI2は、モノクロ画像であってもよく、カラー画像であってもよい。後者の場合、これら画像I1a及びI2を表示する画像表示層は、例えば、1つ以上のインクリボンを用いて、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の着色層を形成するか、又は、赤、緑及び青の3色の着色層を形成することにより得られる。
【0092】
樹脂層225’上に又は剥離保護層227’と樹脂層225’との間には、図1に示す画像I3を表示する層(図示せず)を更に形成してもよい。画像I3を表示する層を樹脂層225’上に形成する場合、この層は、樹脂層225’上に画像表示層220bを形成する前に形成してもよく、樹脂層225’上に画像表示層220bを形成した後であって画像表示層220aを形成する前に形成してもよく、樹脂層225’上に画像表示層220aを形成した後に形成してもよい。或いは、画像I3を表示する層は、樹脂層225’上に又は剥離保護層227’と樹脂層225’との間に形成する代わりに、表紙本体21上に形成してもよい。画像I3を表示する層は、例えば、画像I1a及びI2を表示する画像表示層に関して説明したのと同様の方法により形成することができる。
【0093】
次に、支持体226上に形成した転写材層22’のうち画像表示体22として使用する部分を、支持体226から図3に示す表紙本体21上へと熱転写する。この熱転写には、例えばホットスタンプを利用する。なお、ホットスタンプを利用した熱転写の代わりに、熱ロール又はサーマルヘッドを利用した熱転写を行ってもよい。以上のようにして、表紙本体21に画像表示体22を貼り付ける。
【0094】
表紙本体21上には、上述のように、画像I3を表示する層を形成しておいてもよい。また、表紙本体21上には、接着強さを高めるために、接着アンカー層を形成しておいてもよい。
【0095】
画像表示体22を表紙本体21に高い接着強さで接着させることが難しい場合、転写材層22’のうち画像表示体22として使用する部分は、接着層を介して、表紙本体21上へと熱転写してもよい。例えば、接着リボンを使用してもよい。これを使用すると、画像表示体22と表紙本体21との接着強さを高めることができる。なお、この方法によると、画像表示体22と表紙本体21との間に接着層が介在した構造が得られる。
【0096】
画像表示体22を表紙本体21に高い接着強さで接着させることが難しい場合であって、画像I1a及びI2を表示する画像表示層を画像表示層220a及び220bの形成後に形成するときには、接着リボンの機能を追加したインクリボンを使用してもよい。こうすると、インクリボンとは別に接着リボンを使用する必要がなくなる。
【0097】
また、図1に示す画像I1a、I2及びI3を表示する層は、画像表示体22を表紙本体21に接着した後に保護層227上に設けてもよい。
【0098】
以上のようにして画像表示体22を表紙本体21上に熱転写した後、必要な工程を適宜実施する。このようにして、図1乃至図5を参照しながら説明した個人認証媒体100を得る。
【0099】
この方法では、サーマルヘッドを利用した熱転写によって有色画像層300及び画像表示層220a及び220bを形成する。サーマルヘッドを利用した場合に達成され得る精細度は、パール顔料を印刷する場合に達成され得る精細度よりも高い。
【0100】
また、サーマルヘッドを利用した熱転写によって有色画像層300及び画像表示層220a及び220bを表紙本体21上に直接形成した場合、表紙本体21の表面粗さなどに起因して、高画質を達成することは難しい。これに対し、上述した方法では、有色画像層300及び画像表示層220a及び220bは、表紙本体21上に直接形成しない。即ち、この方法では、まず、剥離保護層227’上に形成し、その後、剥離保護層227’と共に表紙本体21上へと転写する。それ故、表紙本体21の表面粗さなどが画質に大きな影響を及ぼすことはない。
【0101】
従って、この方法によると、有色画像層300及び画像表示層220a及び220bに、優れた画質の画像を表示させることが可能となる。
【0102】
また、この画像表示体22は、個人情報の一部を、有色画像とホログラム及び/又は回折格子による立体画像を組み合わせて表示する。有色画像とホログラム及び/又は回折格子による立体画像の組み合わせが表示する個人情報、特には生体情報の改竄は極めて困難である。
【0103】
また、従来輝度が低く目視で見えづらかった立体画像も、有色画像層300による有色画像と組み合わせて表現されているため、非常に見やすくなり、有色画像層300による有色画像のカラー効果も併せて、擬似的にフルカラーの立体画像として認識することができる。
【0104】
そして、この方法では、画像表示体22は、熱転写によって表紙本体21に支持させる。そのような画像表示体22は、表紙本体21から剥離しようとすると、容易に破壊される。
それ故、この個人認証媒体100は、改竄が困難である。
【0105】
上述した画像表示体22には、様々な変形が可能である。
図9は、一変形例に係る個人認証媒体の一部を拡大して示す平面図である。図10は、図9に示す個人認証媒体のIII−III線に沿った断面図である。
【0106】
図1乃至図5を参照しながら説明した画像表示体22では、観察する環境によっては、画像表示層220a及び画像表示層220bは光透過性の材料を用いているため反射回折光の射出量が十分に得られず、画像表示体22の画像が暗く見えることがある。
【0107】
図9及び図10に示す構造では、観察者から見て有色画像層300が、画像表示層220a及び画像表示層220bを備えた面に対して、観察者側の表面に配置された構造となっている。
【0108】
図9及び図10に示す構造の場合、画像表示層220a及び画像表示層220bの反射層は、上述の反射層224a、224bを用いれば良いが、好ましくは反射回折光を多く射出できる材料を用いる。
【0109】
また、有色画像層300は、上述の材料を用いれば良いが、光透過性を備えていることが好ましい。画像表示層220a及び画像表示層220bによる立体画像の視認性を確保するためである。
【0110】
また、下地の画像表示層220a及び画像表示層220bによる立体画像の視認性を確保するために、有色画像層300は、不透明な材料を用いた場合、これに肉眼での識別が困難な径又は幅の開口を多数設ける。例えば、この有色画像層を、網点又は万線状にパターニングする。
【0111】
本形態の効果としては、基本的には前記した通りであるが、立体画像を表現している画像表示層220a及び画像表示層220bの反射層に反射回折光の射出量の多い材料を用いることが可能であるため、輝度も非常に高くより視認性が向上している。また、画像表示層220a及び画像表示層220bの観察者側に有色画像層300を重ね合わせて表現されているため、更に有色画像層のカラー効果も併せて、擬似的にフルカラーの立体画像として認識することができる。
【0112】
また、図2、図3、図6乃至図11では、画像表示層220aと画像表示層220bとを設けて2つの視差画像を用いて立体画像を表示する構成を採用したが、互いに異なる視差画像を表示する3つ以上の画像表示層を設けて、複数の立体画像を表示させる構造を採用しても良い。即ち、観察角度を変化させることによって、立体画像の見え方が、被写体を実際に観察しているが如く変化する構成を採用してもよい。視差画像の組み合わせを増やすことによって、本発明の画像表示体及び個人認証媒体の立体画像をより高精細に、より滑らかに表現することができる。
【0113】
複数の視差画像を組み合わせた構成の別の一例を図12乃至図15に示す。
【0114】
図12乃至図13では、有色画像層300の表面に第1の立体画像を知覚する右眼用視差画像である画像表示層220a及び左眼用視差画像である画像表示層220bの組み合わせに加え、第2の立体画像を知覚する右眼用視差画像である画像表示層220c及び左眼用視差画像である画像表示層220dの組み合わせが配置された構造を示している。これにより2種類の立体画像と1種類の有色画像を画像I1bに表示することが可能となる。
【0115】
図12では左から画像表示層220b、画像表示層220d、画像表示層220a、画像表示層220cの順に配置され、水平方向(X方向)及び垂直方向(Y方向)に各画像形成層がドット状に繰り返し配置されている。このように、一つの立体画像を表示する左右眼用の視差画像となる画像表示層が離間した構造であるとしても複数の立体画像を表示することが可能である。
【0116】
一方、図13は、画像表示層220aと画像表示層220bが水平方向(X軸方向)に隣接しており、画像表示層220cと画像表示層220dが水平方向(X軸方向)に隣接しており、垂直方向(Y方向)に繰り返し配置された構造である。このように、一つの立体画像を表示する左右眼用の視差画像となるそれぞれの画像表示層が隣接した構造であるとしても複数の立体画像を表示することが可能である。
【0117】
図14乃至図15では、有色画像層300の表面に、第1の立体画像を知覚する右眼用視差画像である画像表示層220a及び左眼用視差画像である画像表示層220bの組み合わせに加え、第2の立体画像を知覚する右眼用視差画像である画像表示層220c及び左眼用視差画像である画像表示層220dの組み合わせ、第3の立体画像を知覚する右眼用視差画像である画像表示層220e及び左眼用視差画像である画像表示層220fの組み合わせ、第4の立体画像を知覚する右眼用視差画像である画像表示層220g及び左眼用視差画像である画像表示層220hの組み合わせがそれぞれ配置された構造を示している。これにより4種類の立体画像と1種類の有色画像を画像I1bに表示することが可能となる。
【0118】
図14では水平方向(X方向)の左から各立体画像の左眼用視差画像を表示する画像表示層220b、画像表示層220d、画像表示層220fが配列されている。本図ではこれらを左眼用視差画像群Lとする。また、水平方向(X方向)の左から各立体画像の右眼用視差画像を表示する画像表示層220h、画像表示層220a、画像表示層220c、画像表示層220e、画像表示層220gの順に配置されている。本図ではこれらを右眼用視差画像群Rとする。左眼用視差画像群L及び右眼用視差画像群Rは互いに隣接し、水平方向及び垂直方向(Y方向)に繰り返し配置されている。
【0119】
また、図15では、各立体画像の左眼用視差画像を表示する画像表示層220b、画像表示層220d、画像表示層220fが水平方向及び垂直方向にマトリックス状に配列されている。本図ではこれらを左眼用視差画像群Lとする。また、各立体画像の右眼用視差画像を表示する画像表示層220h、画像表示層220a、画像表示層220c、画像表示層220e、画像表示層220gが水平方向及び垂直方向にマトリックス状に配列されている。本図ではこれらを右眼用視差画像群Rとする。左眼用視差画像群L及び右眼用視差画像群Rは互いに隣接し、水平方向及び垂直方向(Y方向)に繰り返し配置されている。
【0120】
本図の構成は、立体画像を表示するために対応する右眼用視差画像と左眼用視差画像の各画像表示層の距離を、図14の構成に比べて短く配置できるため、複数の立体画像を表示できるとともに視認性を確保することもできる。
【0121】
なお、図12乃至15で示した画像表示層の配置に限定される必要はなく、左眼用視差画像群L及び右眼用視差画像群Rは画像を表示するために必要な箇所に配置されていればよい。各視差画像群の中の画像表示層の有無についても、目的やデザインによって適宜調整すれば良い。また、図9乃至図10で示した画像表示体についても、上述の構成を用いることが可能である。
【0122】
また、図12乃至図15に示す個人認証媒体の製造に二次転写箔を使用しても良い。ホログラムリボンの熱転写による立体画像の表現の仕方としては、例えば4方向から被写体を撮影して二次元画像を4枚用意し、かつ視差を持たせる方向に回折光を出射させる回折格子(格子方向が異なる)からなるセルを4種類用意し、その方向毎に前記セルを使い分けて、前記4枚の合成画像を二次元で形成する。さらに、合成画像をコンピューターのプログラム上で作成し、そのデータをサーマルヘッド等の熱転写装置にアウトプットし、予め用意した4種類の回折格子からなるホログラムリボンを用いてそれぞれの回折格子セルを合成画像の狙った場所へ転写していくと、熱転写方式によって立体画像を表現することができる。
【0123】
予め、個人認証媒体を所有する人間の顔写真を前記方法で複数種類の方向から撮影すれば、上記に示したホログラムリボンの熱転写により、個別情報をオンデマンドで立体画像として媒体に表現することが可能となる。
【0124】
以上、パスポートとしての個人認証媒体100を例示したが、個人認証媒体100について上述した技術は、他の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証やIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。
【0125】
画像表示体22を貼り付ける基材の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示体22を貼り付ける基材は、プラスチック基板、金属基板、セラミックス基板、又はガラス基板であってもよい。
【0126】
画像表示層220aに表示させる画像は、顔画像に加えて他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよい。また、画像表示層220aに表示させる画像は、生体情報に加えて非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよく、生体情報の代わりに非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0127】
画像表示層220a及び220bに立体画像を表示させる代わりに、それらに互いに異なる平面画像を表示させてもよい。即ち、先の画像表示体22には、観察角度に応じて表示画像が切り替わる構成を採用してもよい。
【実施例1】
【0128】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
【0129】
まず、中間転写箔フィルムを作成した。支持体として厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、剥離層・ホログラム形成層の順にグラビアコーターで印刷を行った。オーブンでの乾燥後、剥離層の膜厚は0.6μm、ホログラム形成層の膜厚は0.7μmであった。
【0130】
このフィルムを、固定図柄ホログラム版を用いてロールエンボス装置にて熱プレスを行い、ホログラム形成層に固定図柄ホログラムを成形した。
【0131】
固定図柄ホログラム形成層上にZnS蒸着を行い、透明薄膜層を設けた。ZnS蒸着の膜厚は80nmであった。また、このフィルムに接着層の印刷を行った。膜厚は0.6μmであった。
【0132】
上記のようにして中間箔を得た。
【0133】
次に、ホログラム転写リボンを作成した。基材として厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、剥離層・ホログラム形成層の順にグラビアコーターで印刷を行った。オーブンでの乾燥後、剥離層の膜厚は0.6μm、ホログラム形成層の膜厚は0.7μmであった。
【0134】
このフィルムを、フィルムの流れ方向に4種類のベタ柄ホログラムが並んだ版を用いてロールエンボス装置にて熱プレスを行い、ホログラム形成層に4種類のホログラムベタ柄を成形した。
【0135】
ホログラム形成層上にZnS蒸着を行い、透明薄膜層を設けた。ZnS蒸着の膜厚は80nmであった。また、このフィルムに接着層の印刷を行った。接着層の膜厚は0.6μmであった。
【0136】
上記フィルムを転写リボンサイズの幅にスリットして小分けし、それぞれを繋ぎ合わせてホログラム転写リボンを作成した。
【0137】
更に、公知のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクリボンを用意した。
【0138】
サーマルヘッドを用いて、中間箔の接着層上の狙った位置にホログラム転写リボンを転写し立体顔画像を表現し、その後、立体顔画像に重ねてインクリボンを転写して有色顔画像を表現した。
なお、予め被写体となる人物の顔写真を4方向から撮影し、合成画像を二次元で表現し、かつそれぞれ視差に持たせる方向に回折光を射出する回折格子からなるホログラムを上記のように4種類用意しておく。そして、合成画像において、それぞれの回折格子セルが転写される位置をコンピューター上のプログラムで設定しておき、サーマルヘッドの機械にアウトプットすることで上記立体画像の表現を行った。
また、有色顔画像は、従来通りの方法で色のコントラストを低くして表現した。
【0139】
次に、ホログラム転写リボンやインクリボンを転写した面全体に、受像層を印刷し、更に同様のインクリボンにて受像層上に顔写真および文字情報を印字し、情報印字側から被転写用の支持体である紙面上に中間箔を転写することにより、本発明の個人認証媒体を得た。
【0140】
以上のように構成した本実施例の個人認証媒体は、個別情報部分が立体顔画像と有色顔画像の重なりにより、非常に目視で見やすくなり、擬似的なフルカラーの立体画像として認識することができた。また、顔写真と個別情報部分を見比べることにより、容易に真偽判定ができることも分かった。そのため、万が一偽造、改竄品が出回った際に、目視で容易に真偽判定が行える高いセキュリティ性を有する個人認証媒体が完成した。
【実施例2】
【0141】
基本的には、実施例1と同じであるが、ホログラム転写リボンの透明蒸着の代わりにアルミ蒸着層を設けた。膜厚は80nmであった。
【0142】
サーマルヘッドでの転写は、中間箔の接着層上の狙った位置にインクリボンを転写して有色顔画像を表現し、その後、ホログラム転写リボンを有色顔画像に重ねて転写して立体顔画像を表現した。
【0143】
実施例1と同様に、ホログラム転写リボンやインクリボンを転写した面全体に、受像層を印刷し、更に同様のインクリボンにて受像層上に顔写真および文字情報を印字し、情報印字側から被転写用の支持体である紙面上に中間箔を転写することにより、本発明の個人認証媒体を得た。
【0144】
以上のように構成した本実施例の個人認証媒体は、個別情報部分が立体顔画像と有色顔画像の重なりに、かつアルミ蒸着層により実施例1以上に見やすくなり、擬似的なフルカラーの立体画像として認識することができた。また、顔写真と個別情報部分を見比べることにより、容易に真偽判定ができることも分かった。そのため、万が一偽造、改竄品が出回った際に、目視で容易に真偽判定が行える高いセキュリティ性を有する個人認証媒体が完成した。
【符号の説明】
【0145】
1…折り丁、2…表紙、11…紙片、21…表紙本体、9…立体像、10…画像表示体、22…画像表示体、22’…転写材層、33…回折光、40…観察者、100…個人認証媒体、202…転写箔、220a…画像表示層、220b…画像表示層、220c…画像表示層、220d…画像表示層、220e…画像表示層、220f…画像表示層、220g…画像表示層、220h…画像表示層、223a…回折構造形成層、223b…回折構造形成層、224a…反射層、224b…反射層、225…樹脂層、225a…樹脂層、225b…樹脂層、225’…樹脂層、226…支持体、227…保護層、227’…剥離保護層、227a…保護層、227b…保護層、C1〜C4…カメラ、Ga…溝、Gb…溝、I1a…画像、I1b…画像、I2…画像、I3…画像、P1〜P4…視域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1画像を回折像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に前記第1画像を回折像として表示しないか又は前記第1画像を前記第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第1回折構造と、
前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第1画像とは異なる第2画像を回折像として表示し、前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第2画像を回折像として表示しないか又は前記第2画像を前記第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第2回折構造と
有色画像を表示する有色画像層と、
を具備し、前記第1回折構造及び前記第2回折構造は、前記有色画像層の前方で前記有色画像層と少なくとも部分的に向き合っている画像表示体。
【請求項2】
前記有色画像層の一方の主面に前記第1回折構造が設けられ、光透過性を有している第1反射層を備え、前記第1画像に対応した形状を有している第1画像表示層と、
前記有色画像層の一方の主面に前記第2回折構造が設けられ、光透過性を有している第2反射層を備え、前記第2画像に対応した形状を有しており第2画像表示層と
を具備し、
前記第1画像表示層と前記第2画像表示層は隣り合っており、
前記有色画像層は、前記第1画像表示層及び前記第2画像表示層と少なくとも部分的に重なり合った請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記有色画像層の一方の主面に前記第1回折構造が設けられた第1反射層を備え、前記第1画像に対応した形状を有している第1画像表示層と、
前記有色画像層の一方の主面に前記第2回折構造が設けられた第2反射層を備え、前記第2画像に対応した形状を有しており第2画像表示層と
を具備し、
前記第1画像表示層と前記第2画像表示層は隣り合っており、
前記有色画像層は、前記第1画像表示層及び前記第2画像表示層と少なくとも部分的に重なり合った請求項1に記載の画像表示体。
【請求項4】
前記第1画像表示層は、各中心が仮想的な平面格子の格子点上に位置している複数の第1ドット状部によって構成されており、
前記第2画像表示層は、各中心が仮想的な平面格子の格子点上に位置している複数の第2ドット状部によって構成されており、
前記複数の第1ドット状部と前記複数の第2ドット状部とは、隣り合っているこ請求項2乃至3に記載の画像表示体。
【請求項5】
前記有色画像層及び、回折像としての前記第1及び第2画像によって立体画像を表示する請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項6】
前記立体画像は個人情報を含んでいる請求項5に記載の画像表示体。
【請求項7】
前記個人情報は顔画像を含んだ請求項6に記載の画像表示体。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像表示体と、前記画像表示体を剥離可能に支持した支持体とを具備した転写箔。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像表示体と、
前記画像表示体を支持した基材と
を具備した個人認証媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−128209(P2011−128209A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283992(P2009−283992)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】