説明

画像表示体及び個人認証媒体及びブランク媒体

【課題】改竄が困難で、且つより複雑で特徴のある視覚効果を示し、真贋の判断を容易に行うことが可能である個別情報記録技術を提供する。
【解決手段】支持体から個人認証媒体の基材上へと転写されて、個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体であって、前記支持体によって剥離可能に支持され、光透過性を有している下地層と、ホログラム及び/又は回折格子を含み、サーマルヘッドを用いた熱転写によって前記下地層上に転写された第1画像表示層を具備し、前記第1画像表示層は前記個人情報の少なくとも一部及び微小隠蔽画像を含んだ第1画像を表示し、前記下地層と向き合い、光の吸収を利用して第2画像を表示する第2画像表示層とを具備する画像表示体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。
【0003】
例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0004】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用する感熱転写記録方式のプリンタは広く普及している。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、そこに別の顔画像を記録することは、必ずしも困難ではない。
【0006】
特許文献1には、上述した方法で顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録することが記載されている。また、特許文献2には、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録することが記載されている。更に、特許文献3には、通常の顔画像と、パール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置することが記載されている。
【0007】
これら技術をパスポートに適用すると、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認することはできるものの、パール顔料は粒径が大きいため、これを用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【0008】
また、個人認証媒体に記録された顔画像の見え方が、単純で視覚効果がない見え方である場合、顔画像が複雑で特徴のある視覚効果である場合と比較して、その改竄が容易である。また、顔画像を単純な見え方で表示した場合、改竄、偽造された顔画像を目視で容易に判断することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、改竄が困難で、且つより複雑で特徴のある視覚効果を示し、真贋の判断を容易に行うことが可能である個別情報記録技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、
支持体から個人認証媒体の基材上へと転写されて、個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体であって、
前記支持体によって剥離可能に支持され、光透過性を有している下地層と、
ホログラム及び/又は回折格子を含み、サーマルヘッドを用いた熱転写によって前記下地層上に転写された第1画像表示層を具備し、
前記第1画像表示層は前記個人情報の少なくとも一部及び微小隠蔽画像を含んだ第1画像を表示し、
前記下地層と向き合い、光の吸収を利用して第2画像を表示する第2画像表示層と
を具備する画像表示体
である。
また、第2の発明は、
前記第1画像は、個人情報を含んだ画像を複数表示可能であり、
特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1サブ画像を回折像として表示し、
前記照明条件のもとで前記第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に前記第1サブ画像を回折像として表示しないか又は前記第1サブ画像を前記第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第1サブ回折構造と、
前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第1サブ画像とは異なる第2サブ画像を回折像として表示し、
前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第2サブ画像を回折像として表示しないか又は前記第2サブ画像を前記第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第2サブ回折構造と
を具備し、
前記第1サブ画像もしくは前記第2サブ画像のどちらか一方が、微小画像を含んでいる請求項1に記載の画像表示体
である。
また、第3の発明は、
前記第1画像表示層は複数のドット状部を含み、前記複数のドット状部の各中心は仮想的な平面格子の格子点上に位置し、前記平面格子の格子点の間隔は前記サーマルヘッドで熱転写する基本単位であるドット状部の中心間距離と等しい請求項1乃至2のいずれかに記載の画像表示体
である。
また、第4の発明は、
前記微小隠蔽画像は、前記サーマルヘッドで熱転写する基本単位であるドット状部の径に包含されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像表示体
である。
また、第5の発明は、
前記微小隠蔽画像は、前記平面格子の格子点の間隔とほぼ等しく、または整数倍の間隔で配列したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像表示体
である。
また、第6の発明は、
前記微小隠蔽画像の一辺の長さは、1μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像表示体
である。
また、第7の発明は、
前記微小隠蔽画像は、文字又は記号又は数字又はそれらの組み合わせからなる肉眼で視認不可能なマイクロ文字であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像表示体
である。
また、第8の発明は、
前記個人情報は顔画像を含んでいることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像表示体
である。
また、第9の発明は、
前記第2画像は前記個人情報の他の一部を含んだ請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像表示体
である。
また、第10の発明は、
前記第1画像は、前記個人情報の一部である第1個人情報を含み、前記第2画像は前記個人情報の一部である第2個人情報を含み、前記第1及び第2個人情報は同一人物の顔画像であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の画像表示体
である。
また、第11の発明は、
前記第1画像表示層を間に挟んで、前記下地層と向き合った接着層を更に具備した請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像表示体
である。
また、第12の発明は、
請求項1乃至11の何れか1項に記載の画像表示体と、前記支持体から前記画像表示体が転写された前記基材とを具備した個人認証媒体
である。
また、第13の発明は、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載された個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体の製造に使用するブランク媒体であって、
前記ブランク媒体は、支持体と、支持体によって剥離可能に支持された転写材層220とを含んでおり、
前記転写材層は、少なくとも回折構造形成層を備えており、
前記回折構造形成層は、互いに交差する第1及び第2方向に複数配列された微小隠蔽画像を有することを特徴とするブランク媒体
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、改竄が困難で、且つ優れた画質で特徴のある視覚効果の画像を表示し、真贋の判断を容易に行うことが可能な個人認証媒体が提供される。
第1の発明によると、支持体から個人認証媒体の基材上へと転写されるものであって、この支持体によって剥離可能に支持され、光透過性を有している下地層と、ホログラム及び/又は回折格子を含み、サーマルヘッドを用いた熱転写によって下地層上に転写された第1画像表示層とを具備している。サーマルヘッドを利用した熱転写によって第1画像表示層を個人認証媒体の基材上に直接形成した場合、基材の表面粗さなどに起因して、高画質を達成することは難しい。これに対し、この画像表示体では、第1画像表示層は、個人認証媒体の基材上にではなく、下地層上に形成されている。そして、個人情報の少なくとも一部を含んだ第1画像表示層は、下地層と共に個人認証媒体の基材上へと転写される。それ故、基材の表面粗さなどが画質に大きな影響を及ぼすことはない。従って、この画像表示体を使用すると、優れた画質の画像を表示する個人認証媒体が得られる。
さらに、下地層と向き合い、光の吸収を利用して第2画像を表示する第2画像表示層を更に具備している。第2画像は、第1画像と比較して視認性に優れている。それ故、第1及び第2画像表示層を併用すると、視認性に優れた画像とを画像表示体に表示させることができる。
また、第1画像表示層は、微小隠蔽画像を含んだ第1画像を表示し、このような微小隠蔽画像を記録するプロセスは精度が必要となり製造が難しい。それ故、この画像表示体は、改竄が困難となる。
さらに、個人情報の一部を、ホログラム及び/又は回折格子を用いて表示する。ホログラム及び/又は回折格子が表示する個人情報の改竄は極めて困難である。そして、この画像表示体は、熱転写によって個人認証媒体の基材に貼り付けられる。このようにして個人認証媒体の基材に貼り付けた画像表示体は、基材から剥離しようとすると、容易に破壊される。それ故、この画像表示体を用いると、改竄が困難な個人認証媒体が得られる。
また、第2の発明によると、第1画像は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1サブ画像を回折像として表示し、前記照明条件のもとで第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に第1サブ画像を回折像として表示しないか又は第1サブ画像を第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第1サブ回折構造を含んでいる。
また、前記照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第1サブ画像とは異なる第2サブ画像を回折像として表示し、前記照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第2サブ画像を回折像として表示しないか又は第2サブ画像を第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第2サブ回折構造を含んでいる。
このことにより、特定の照明条件のもとで第1サブ画像は第1方向から観察することができ、第2サブ画像は第2方向から観察することができる。ここで、第1サブ画像もしくは第2サブ画像のどちらか一方が、微小画像を含んでいる。このため、第1画像表示層の微小画像を含んでいないサブ画像を観察すれば、個人情報の顔画像を観察することができ、微小画像を含んでいる方のサブ画像を観察すれば、個人情報の顔画像とともに微小画像を観察することができる。
これにより画像表示体は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示するのに加え、改竄が困難である。
また、第3の発明によると、第1画像表示層は複数のドット状部を含み、複数のドット状部の各中心は仮想的な平面格子の格子点上に位置し、平面格子の格子点の間隔はサーマルヘッドで熱転写する際の基本単位であるドット状部の中心間距離と等しい画像表示体である。この構成は、サーマルヘッドを用いた熱転写によって画像を記録するプロセスに適している。
また、第4の発明によると、微小隠蔽画像は、前記サーマルヘッドで熱転写する基本単位であるドット状部の径に包含される。このことにより前記サーマルヘッドで熱転写する基本単位であるドット状部に微小隠蔽画像の全体が含まれるようになる。
また、第5の発明によると、微小隠蔽画像の配列の間隔は、前記平面格子の格子点の間隔と等しく、または整数倍の間隔で配列している。このため、微小隠蔽画像の配列間隔は、サーマルヘッドで熱転写する基本単位であるドット状部の中心間距離と等しい場合には、全てのドット状部に微小隠蔽画像が含まれ、微小隠蔽画像の配列間隔が、熱転写する基本単位であるドット状部の中心間距離の整数倍の間隔で配列した場合には、全てのドット状部に微小隠蔽画像は含まれず、配列した間隔で含まれる構成となる。
また、第6の発明によると、微小隠蔽画像の一辺の長さは、1μm以上300μm以下としている。一般的に300μm以下の大きさのマイクロ文字は、肉眼では認識が不可能とされ、印刷物等の使用者がルーペや光学顕微鏡等での拡大観察によって真偽判定を行うことが可能である。また特に1μm以上50μm程度以下の微小なマイクロ文字は、精度良く製造することが困難であるので、製造技術の面でもより高い偽造防止効果が期待できる。
また、第7の発明によると、微小隠蔽画像は、文字又は記号又は数字又はそれらの組み合わせからなる肉眼で視認不可能なマイクロ文字である。これらのマイクロ文字により共通した情報、例えばパスポートの場合には、国名や発行地などの情報を記録し、また、IDカードの場合には、会社名や所属などの情報を記録しておくことで、もし、この画像表示体が偽造されてもこの微小隠蔽画像を確認することで、真偽判定を行うことができる。
また、第8の発明によると、個人情報は顔画像を含んでいることを特徴としている。顔画像は、生体情報として一般的であり、目視による個人認証に適している。
また、第9の発明によると、改竄が困難で、且つ優れた画質で特徴のある視覚効果の画像を表示し、真贋の判断を容易に行うことが可能な個人認証媒体が提供される。
また、第10の発明によると、第1画像は、個人情報の一部である第1個人情報を含み、第2画像は個人情報の一部である第2個人情報を含み、第1及び第2個人情報は同一人物の顔画像としている。これにより画像表示体は、第1画像のみが個人情報を含んでいる画像表示体と比較して偽造がより困難である。
【0013】
また、第11の発明によると、画像表示体は、第1画像表示層を間に挟んで、下地層と向き合った接着層を更に設けてある。接着層は、支持体から個人認証媒体の基材上へ画像表示体の転写の際に、画像表示体を基材に強固に密着させる。また、接着層は、ホログラム及び/又は回折格子の複製を困難にする。
また、第12の発明によると、個人認証媒体は、上述の何れか1つに記載の画像表示体を具備している。それ故、この個人認証媒体は、改竄が困難で、且つ優れた画質で特徴のある視覚効果の画像を表示し、真贋の判断を容易に行うことが可能である。
また、第13の発明によると、本発明のブランク媒体を用いることによって、改竄が困難で、且つ優れた画質で特徴のある視覚効果の画像を表示し、真贋の判断を容易に行うことが可能な個人認証媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一態様に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1の個人認証媒体に含まれる画像表示体の一部を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示す画像表示体のIII−III線に沿った断面図。
【図4】図1の個人認証媒体に含まれる画像表示体の他の一部を拡大して示す平面図。
【図5】図4に示す画像表示体のV−V線に沿った断面図。
【図6】図2乃至図5に示す画像表示体の製造に使用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す断面図。
【図7】図2乃至図5に示す画像表示体の製造に使用可能なブランク媒体の微小隠蔽画像の一例を概略的に示す平面図。
【図8】図6に示すブランク媒体を用いて製造可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図9】使用済みのブランク媒体の一例を概略的に示す断面図。
【図10】図2乃至図5に示す画像表示体が含んでいる回折構造を概略的に示す平面図。
【図11】図2乃至図5に示す画像表示体が含んでいる他の回折構造を概略的に示す平面図。
【図12】図1の個人認証媒体に含まれる画像表示体の回折格子配列の一例を概略的に示す平面図。
【図13】図1の個人認証媒体に含まれる画像表示体の回折格子配列の他の一例を概略的に示す平面図。
【図14】図13に示す画像表示体の回折格子配列を用いた画像表示の一例を概略的に示す平面図。
【図15】図14に示す画像表示体の表示画像の一例を概略的に示す平面図。
【図16】図14に示す画像表示体の他の表示画像の一例を概略的に示す平面図。
【図17】図10乃至図13に示す画像表示体の表示画像の一例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の一態様に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図である。
図1に示す個人認証媒体100は、パスポートなどの冊子体である。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
【0017】
この個人認証媒体100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターン12が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0018】
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0019】
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0020】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0021】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0022】
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2及びI3を表示している。
画像I1a、I2及びI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2及びI3は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2及びI3の1つ以上を省略してもよい。
【0023】
画像I1a、I2及びI3は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2及びI3の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a、I2及びI3は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2及びI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0024】
画像I1bは、ホログラム及び/又は回折格子が表示する画像である。画像I1bは、後で詳述するように、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプ又は熱ロールを用いた熱転写記録とをこの順に行うことにより形成する。
【0025】
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0026】
画像I1bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像I1bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0027】
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
【0028】
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像I1a及びI1bの少なくとも一方とを組み合わせると、個人認証媒体100の改竄をより困難にすることができる。
【0029】
次に、表紙2の構造について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
図2は、図1の個人認証媒体に含まれる画像表示体の一部を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す画像表示体のIII−III線に沿った断面図である。図4は、図1の個人認証媒体に含まれる画像表示体の他の一部を拡大して示す平面図である。図5は、図4に示す画像表示体のV−V線に沿った断面図である。
【0030】
図2及び図3に示す構造は、表紙2のうち画像I1aに対応した部分である。他方、図4及び図5に示す構造は、表紙2のうち画像I1bに対応した部分である。なお、X方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり、Y方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり且つX方向に対して垂直な方向であり、Z方向はX及びY方向に対して垂直な方向である。
【0031】
表紙2は、図3及び図5に示すように、表紙本体21と画像表示体22とを含んでいる。
【0032】
表紙本体21は、個人認証媒体100の基材であって、典型的には紙片である。表紙本体21は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。表紙本体21は、個人認証媒体100を閉じた状態において、折り丁1を挟み込むように二つ折りされている。
【0033】
画像表示体22は、多層構造を有している層である。画像表示体22は、個人認証媒体100を閉じた状態において折り丁1と向き合う表紙本体21の主面に貼り付けられている。
【0034】
画像表示体22は、画像表示層210及び220aと剥離保護層227とを含んでいる。
画像表示層210は、光の吸収を利用して画像I1aを表示する。画像表示層210は、図2及び図3に示すように、画像I1aに対応したパターン形状を有している。この画像表示層210は、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とで構成することができる。このような画像表示層210は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することにより得ることができる。
【0035】
画像表示層210は、パターニングされていなくてもよい。即ち、画像表示層210は、連続膜であってもよい。この場合、画像表示層210は、例えば、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより得ることができる。
【0036】
画像表示層220aは、ホログラム及び/又は回折格子を含んでいる。画像表示層220aは、図4及び図5に示すように、画像I1bに対応したパターン形状を有している。画像表示層220aの構造及び形成方法については、後で詳述する。
【0037】
剥離保護層227は、画像表示層210及び220aと表紙本体21とを被覆している。剥離保護層227は、光透過性を有しており、典型的には透明である。剥離保護層227は、例えば樹脂からなる。
【0038】
なお、表紙2のうち画像I2に対応した部分には、例えば、表示させる画像が異なること以外は、画像I1aに対応した部分に関して上述したのとほぼ同様の構造を採用することができる。表紙2のうち画像I1aに対応した部分と画像I2に対応した部分とは、同一の積層構造を有していてもよく、異なる積層構造を有していてもよい。
【0039】
次に、図6乃至図9を参照しながら、個人認証媒体100の製造方法と画像表示層220aの構造とを説明する。
【0040】
図6は、図2乃至図5に示す画像表示体の製造に使用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す断面図である。図7は、図2乃至図5に示す画像表示体の製造に使用可能なブランク媒体の微小隠蔽画像の一例を概略的に示す平面図である。図8は図6に示すブランク媒体を用いて製造可能な転写箔の一例を概略的に示す断面図である。図9は、使用済みのブランク媒体の一例を概略的に示す断面図である。
【0041】
図6に示すブランク媒体201は、例えば転写リボンである。ブランク媒体201は、支持体221と、支持体221によって剥離可能に支持された転写材層220とを含んでいる。
【0042】
支持体221は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体221は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に優れた材料からなる。支持体221の転写材層220を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
【0043】
転写材層220は、剥離層222と回折構造形成層223と反射層224と接着層225とを含んでいる。
【0044】
剥離層222は、支持体221上に形成されている。剥離層222は、転写剤層220の支持体221からの剥離を安定化すると共に、画像表示層220aの表紙本体21への接着を促進する役割を果たす。剥離層222は、光透過性を有しており、典型的には透明である。剥離層222は、例えば熱可塑性樹脂からなる。剥離層222は、省略することができる。
【0045】
回折構造形成層223は、剥離層222上に形成されている。回折構造形成層223は、回折構造として、ホログラム及び回折格子の少なくとも一方を含んでいる。ここでは、回折構造形成層223は、表面に回折構造としてレリーフ構造が設けられた透明層である。透明層の材料としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂などの樹脂を使用することができる。なお、回折構造形成層223は、体積ホログラムであってもよい。
【0046】
反射層224は、回折構造形成層223上に形成されている。反射層224は省略することができるが、反射層224を設けると、回折構造が表示する画像の視認性が向上する。
【0047】
反射層224としては、例えば、透明反射層又は不透明な金属反射層を使用することができる。反射層224は、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。
【0048】
透明反射層としては、例えば、回折構造形成層223とは屈折率が異なる透明材料からなる層を使用することができる。透明材料からなる透明反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。後者の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。この透明材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。
【0049】
或いは、透明反射層として、厚さが20nm未満の金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金及び銅などの単体金属又はそれらの合金を使用することができる。
【0050】
不透明な金属反射層としては、より厚いこと以外は透明反射層について上述したのと同様の金属層を使用することができる。
【0051】
接着層225は、反射層224上に形成されている。接着層225は、例えば熱可塑性樹脂からなる。接着層225は、省略することができる。
【0052】
回折構造形成層223には、微小隠蔽画像300が記録してある。図7に微小隠蔽画像の一例を示した。
微小隠蔽画像は、文字又は記号又は数字又はそれらの組み合わせからなる肉眼で視認不可能なマイクロ文字を用いる。ここでは微小隠蔽画像300としては文字列「TOP」を表現し、文字高さ301としてはサーマルヘッドで熱転写する際のドット状部の径より小さくする必要がある。また、配列するピッチ302はドット状部の径又はドット状部の最小中心間距離と等しくする必要がある。但し、ドット状部の中に必ず微小隠蔽画像が入る必要がなければ、ピッチ302が最小中心間距離と等しくなくてもよい。
【0053】
一般的に300μm以下の大きさのマイクロ文字は、肉眼では認識が不可能とされ、特に1μm以上50μm程度以下の微小なマイクロ文字は、精度良く製造することが困難であるので、製造技術の面でもより高い偽造防止効果が期待できる。
【0054】
微小隠蔽画像は回折構造である必要はなく、回折構造ではなく周囲と異なる構造、たとえば深さが異なるなど、印刷物等の使用者がルーペや光学顕微鏡等での拡大観察によって確認することが可能であればよい。また、回折構造であってもよい。この場合には回折格子の角度を微小隠蔽画像のパターンの部分だけ異なる角度にする等の方法を用いる。
なお、本件では、微小画像の一例として、文字又は記号又は数字又はそれらの組み合わせからなる肉眼で視認不可能なマイクロ文字を挙げているがそれに限定する必要は無く、例えばマークや商標、デザインなどを採用しても良い。
【0055】
また、微小隠蔽画像300は、互いに交差する第1及び第2方向に配列されている。微小隠蔽画像300の各中心は、仮想的な平面格子の格子点上に位置し、前記平面格子の格子点の間隔は前記サーマルヘッドで熱転写する基本単位であるドット状部の中心間距離と等しいと、各ドット状部に隠蔽画像を付与することが可能となるため好ましい。
【0056】
個人認証媒体100の製造においては、例えば、まず、撮像装置を用いて、人物の顔を撮影する。或いは、印画から顔画像を読み取る。これにより、画像情報を電子情報として得る。この顔画像は、必要に応じて画像処理する。
【0057】
次に、図8に示す積層体203を準備する。この積層体203は、多層構造を有している層であって、支持体226と、その上に順次形成された剥離保護層227及び樹脂層228とを含んでいる。支持体226上に形成された多層構造は、下地層を構成している。支持体226は、この下地層を剥離可能に支持している。
【0058】
支持体226としては、例えば、支持体221について例示したものを使用することができる。
【0059】
剥離保護層227は、剥離保護層227と画像表示層220aとからなる転写剤層220の支持体226からの剥離を安定化すると共に、画像表示層220aを損傷から保護する役割を果たす。剥離保護層227としては、例えば、剥離層222について例示したものを使用することができる。樹脂層228が剥離層の機能を有している場合は、剥離保護層227は省略することができる。
【0060】
樹脂層228は、光透過性を有しており、典型的には透明である。樹脂層228は、先の下地層に、十分な強度を与える役割を果たす。樹脂層228の材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂を使用すると、この樹脂層228を、画像表示体22を表紙本体21に接着するための接着層として利用することができる。
【0061】
樹脂層228は、回折構造として、ホログラム及び回折格子の少なくとも一方を含んでいてもよい。例えば、樹脂層228の表面には、回折構造としてレリーフ構造が設けられていてもよい。こうすると、この回折構造が表示する画像と画像表示層220aが表示する画像I1bとを重ねること又は並べることができる。
【0062】
積層体203は、パターニングされた金属反射層、例えば不透明な金属反射層を更に含んでいてもよい。例えば、樹脂層228上に又は剥離保護層227と樹脂層228との間にパターニングされた金属反射層を設け、この金属反射層に、網点、万線、他の図形、又はそれらの組み合わせを表示させてもよい。このようなパターンは、例えば、画像表示体22又は個人認証媒体100の真偽判定に利用することができる。
【0063】
次いで、この積層体203上に、先の顔画像に対応したパターンを有している画像表示層220aを形成する。具体的には、先の画像情報に基づいて、図6に示す支持体221から、転写材層220の一部を画像表示層220aとして、図7に示す樹脂層228上へと熱転写する。この熱転写は、サーマルヘッドを利用して、転写材層220のうち樹脂層228上へと熱転写される部分が、先の顔画像に対応したパターンを有するように行う。これにより、支持体226と剥離保護層227と樹脂層228と画像表示層220aとを含んだ転写箔202を得る。転写箔202は、例えば転写リボンである。
【0064】
このようにして得られる画像表示層220aは、サーマルヘッドを利用した熱転写によって形成するので、典型的には、図4及び図5に示すように複数のドット状部からなる。これらドット状部の各中心は、図4に破線で示す仮想的な平面格子の格子点上に位置している。
【0065】
なお、図4において、先の平面格子は正方格子であるが、この平面格子は、三角格子及び矩形格子などの他の格子であってもよい。また、図4では、隣り合ったドット状部は、それらの輪郭が1点で接するように配置されている。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と等しい。隣り合ったドット状部は、互いから離間していてもよい。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより小さくてもよい。或いは、隣接したドット状部は、部分的に重なり合っているが如く配置されていてもよい。即ち、各ドット状部の径は、ドット状部の最小中心間距離と比較してより大きくてもよい。
【0066】
ドット状部の径又はドット状部の最小中心間距離は、例えば0.085乃至0.508mm(約300乃至約50 dots per inch)の範囲内とする。画像表示層220aに顔画像を表示させる場合には、ドット状部の径又はドット状部の最小中心間距離は、例えば0.085乃至0.169mm(約300乃至約150 dots per inch)の範囲内とする。この寸法を大きくすると、画像表示層220aに高精細な画像を表示させることが難しくなる。この寸法を小さくすると、画像表示層220aのパターン形状の再現性が低下する。
【0067】
なお、使用済みのブランク媒体201には、図9に示すように、転写材層220の一部220bが、画像表示層220aのネガパターンとして残留している。このネガパターンは、画像表示層220aの照合に利用することができる。
【0068】
また、ブランク媒体201の一部を利用して剥離保護層227上に画像表示層220aを形成するのに加え、ブランク媒体201の他の部分を利用して、別途用意した基材上に、非生体個人情報や画像表示層220aを形成した日付及び時間など履歴情報を表示するパターンを熱転写してもよい。こうすると、使用済みのブランク媒体201を、画像表示層220aの照合に利用できるのに加え、他の情報の照合にも利用することができる。
【0069】
画像表示層220aを形成する前に、樹脂層228上に又は剥離保護層227と樹脂層228との間に他の層を形成しておいてもよい。例えば、樹脂層228上に又は剥離保護層227と樹脂層228との間に、反射層を形成しておいてもよく、ホログラム及び/又は回折格子を形成しておいてもよく、それらの双方を形成しておいてもよい。
【0070】
この反射層は、連続膜であってもよく、パターニングされていてもよい。後者の場合、反射層のパターンは、網点、万線、図形、又はそれらの組み合わせであってもよい。また、この反射層は、光透過性を有していてもよく、不透明であってもよい。なお、このホログラム及び/又は回折格子は、典型的には、回折構造形成層223が含んでいるホログラム及び/又は回折格子とは、光学特性を異ならしめる。
【0071】
樹脂層228上に又は剥離保護層227と樹脂層228との間には、図2及び図3に示す画像表示層210を更に形成する。樹脂層228上に画像表示層210を形成する場合、画像表示層210は、樹脂層228上に画像表示層220aを形成する前に形成してもよく、樹脂層228上に画像表示層220aを形成した後に形成してもよい。
【0072】
熱転写法によって画像表示層210を形成する場合、昇華転写方式を採用してもよく、溶融転写方式を採用してもよく、それらの双方を採用してもよい。画像表示層210が表示する画像は、モノクロ画像であってもよく、カラー画像であってもよい。後者の場合、画像表示層210は、例えば、1つ以上のインクリボンを用いて、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の着色層を形成するか、又は、赤、緑及び青の3色の着色層を形成することにより得られる。
【0073】
樹脂層228上に又は剥離保護層227と樹脂層228との間には、図1に示す画像I3を表示する層(図示せず)を更に形成してもよい。画像I3を表示する層を樹脂層228上に形成する場合、この層の形成は、樹脂層228上に画像表示層220aを形成する前に行ってもよく、樹脂層228上に画像表示層220aを形成した後に行ってもよい。或いは、画像I3を表示する層は、樹脂層228上に又は剥離保護層227と樹脂層228との間に形成する代わりに、表紙本体21上に形成してもよい。画像I3を表示する層は、例えば、画像表示層210に関して説明したのと同様の方法により形成することができる。
【0074】
次に、支持体226上に形成した転写材層のうち画像表示体22として使用する部分を、支持体226から図3及び図5に示す表紙本体21上へと熱転写する。この熱転写には、例えばホットスタンプを利用する。なお、ホットスタンプを利用した熱転写の代わりに、熱ロール又はサーマルヘッドを利用した熱転写を行ってもよい。以上のようにして、表紙本体21に画像表示体22を貼り付ける。
【0075】
表紙本体21上には、上述のように、画像I3を表示する層を形成しておいてもよい。また、表紙本体21上には、接着強さを高めるために、接着アンカー層を形成しておいてもよい。
【0076】
画像表示体22を表紙本体21に高い接着強さで接着させることが難しい場合であって、画像表示層220aの形成後に画像表示層210を形成するときには、接着リボンの機能を追加したインクリボンを使用してもよい。こうすると、インクリボンとは別に接着リボンを使用する必要がなくなる。
【0077】
以上のようにして画像表示体22を表紙本体21上に熱転写した後、必要な工程を適宜実施する。このようにして、図1乃至図5を参照しながら説明した個人認証媒体100を得る。
【0078】
この方法では、サーマルヘッドを利用した熱転写によって画像表示層220aを形成する。サーマルヘッドを利用した場合に達成され得る精細度は、パール顔料を印刷する場合に達成され得る精細度よりも高い。
【0079】
また、サーマルヘッドを利用した熱転写によって画像表示層220aを表紙本体21上に直接形成した場合、表紙本体21の表面粗さなどに起因して、高画質を達成することは難しい。これに対し、上述した方法では、画像表示層220aは、表紙本体21上に直接形成しない。即ち、この方法では、まず、剥離保護層227上に形成し、その後、剥離保護層227と共に表紙本体21上へと転写する。それ故、表紙本体21の表面粗さなどが画質に大きな影響を及ぼすことはない。
【0080】
従って、この方法によると、画像表示層220aに、優れた画質の画像を表示させることが可能となる。
【0081】
また、この画像表示体22は、個人情報の一部を、ホログラム及び/又は回折格子を用いて表示する。ホログラム及び/又は回折格子が表示する個人情報、特には生体情報の改竄は極めて困難である。
【0082】
そして、この方法では、画像表示体22は、熱転写によって表紙本体21に支持させる。そのような画像表示体22は、表紙本体21から剥離しようとすると、容易に破壊される。それ故、この個人認証媒体100は、改竄が困難である。
【0083】
次に、図10乃至図13を参照しながら、本発明の第2側面に係る画像表示体の態様について説明する。図10、図11は図2乃至図5に示す画像表示体が含んでいる回折構造を概略的に示す平面図である。図12、図13は図1の個人認証媒体に含まれる画像表示体の回折格子配列の一例を概略的に示す平面図である。なお、図10乃至図13においても、X方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり、Y方向は画像表示体の表示面に平行な方向であり且つX方向に対して垂直な方向であり、Z方向はX及びY方向に対して垂直な方向である。
【0084】
本発明の第2側面に係る画像表示体では、第1画像は、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1サブ画像を回折像として表示し、前記照明条件のもとで第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に第1サブ画像を回折像として表示しないか又は第1サブ画像を第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第1サブ回折構造を含んでいる。ここで、第1サブ回折構造は図10に示すような、回折構造320aである。
【0085】
この回折構造320aは、複数の溝Gaからなる。溝Gaは、同一の形状を有しており、一定のピッチで互いに平行に配列している。溝Gaの長さ方向は、X方向に対して反時計回りに傾いている。なお、図10に示す例では、溝Gaは円弧状に湾曲しているが、溝Gaは湾曲していなくてもよい。
【0086】
回折構造320aは、特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に、第1サブ画像を回折像として表示する。そして、回折構造320aは、先の照明条件のもとで第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に、第1サブ画像を回折像として表示しないか、又は、第1サブ画像を第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示する。ここでは、回折構造320aが回折像として表示する第1サブ画像は、正面より右方向に回折光を射出する画像である。
【0087】
次に、本発明の第2側面に係る画像表示体は、前記照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第1サブ画像とは異なる第2サブ画像を回折像として表示し、前記照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第2サブ画像を回折像として表示しないか又は第2サブ画像を第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第2サブ回折構造を含んでいる。ここで、第2サブ回折構造は図11に示すような、回折構造320bである。
【0088】
この回折構造320bは、複数の溝Gbからなる。溝Gbは、同一の形状を有しており、一定のピッチで互いに平行に配列している。溝Gbの長さ方向は、X方向に対して時計回りに傾いている。なお、図11に示す例では、溝Gbは円弧状に湾曲しているが、溝Gaと同様に溝Gbは湾曲していなくてもよい。
【0089】
回折構造320bは、前記照明条件のもとで第2方向から観察した場合に第1サブ画像とは異なる第2サブ画像を回折像として表示し、前記照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第2サブ画像を回折像として表示しないか又は第2サブ画像を第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示する。ここでは、回折構造320aが回折像として表示する第2サブ画像は、正面より左方向に回折光を射出する画像である。
【0090】
このことにより、特定の照明条件のもとで第1サブ画像は第1方向から、つまり右方向から観察することができ、第2サブ画像は第2方向から、つまり左方向から観察することができる。
【0091】
また、図10や図11のような曲線形状の回折構造を組み合わせると、直線形状の回折構造を組み合わせた場合と異なる視覚効果を得ることができる。曲線形状の回折構造を用いると回折光が射出する視域が広範囲となる。例えば、第1サブ画素と第2サブ画素が射出する回折光の視域が重なっている箇所がある場合、右目で第1サブ画素を視認し、左目で第2サブ画素を視認する範囲が発生し、両者の画像を同時に視認することが可能となる。
【0092】
また、例えば以下のような配置にすると、各画像がムラ無く視認することができる。
図12には、本発明の第2側面に係る画像表示体の回折格子配列の一例を示す。画像表示体310は第1サブ回折構造の回折構造320aと第2サブ回折構造の回折構造320bにより構成され、ここでは、各サブ回折構造がX方向に直線的に配置してある。
【0093】
図13は、本発明の第2側面に係る画像表示体の回折格子配列の他の一例を示す。画像表示体311は第1サブ回折構造の回折構造320aと第2サブ回折構造の回折構造320bにより構成され、ここでは、各サブ回折構造が市松状に配置してある。
【0094】
次に、図14乃至図17を参照しながら、本発明の第2側面に係る画像表示体の態様について具体的な画像表示の例を説明する。図14は図13に示す画像表示体の回折格子配列を用いた画像表示の一例を概略的に示す平面図である。図15、図16は図14に示す画像表示体の表示画像の一例を概略的に示す平面図である。図17は図10乃至図13に示す画像表示体の表示画像の一例を概略的に示す平面図である。
【0095】
図14の画像表示体330は、図13で示した画像表示体311の回折格子配列と同様な配列で、第1サブ回折構造の回折構造340aと第2サブ回折構造の回折構造340bにより構成されている。
【0096】
図15は図14で示した画像表示体330のうち、第1サブ回折構造の回折構造340aに着目したもので、画像を構成する画素の数が少ないため、判別しにくいが画像のイメージとしては、「O」を示している。つまり、画像表示体330を右方向から観察するとこのような画像が観察することができる。
【0097】
図16は図14で示した画像表示体330のうち、第2サブ回折構造の回折構造340bに着目したもので、画像のイメージとしては、Xを示している。このため、画像表示体330を左方向から観察するとこの画像が観察することができる。
【0098】
例えば、上述の画像表示体の第1サブ画像に個人情報の顔画像を記録し、一方、第2サブ画像に微小画像を記録ししても良い。この微小画像の一辺の長さは、300μm以上であり、文字又は記号又は数字又はそれらの組み合わせからなる肉眼で視認可能な微細文字としている。
【0099】
図17は、このようなサブ画像の組み合わせによる画像表示体の表示画像を観察した一例を示す図である。観察画像350aは画像表示体を右方向から観察したもので、観察画像350bは画像表示体を中央から観察したもので、観察画像350cは画像表示画像を左方向から観察した様子を示す。
【0100】
画像表示画像を左方向から観察した場合には、観察画像350cに示すように個人情報の顔画像351が観察でき、中央から観察した場合には、左目には顔画像351が入射し、右目には微細文字352が入射するため、観察画像350bに示すように顔画像351と微細文字352が重なって観察される。また、画像表示画像を右方向から観察した場合には、観察画像350aに示すように微細文字352が観察できる。
【0101】
特に、中央から観察した場合には、顔画像351と微細文字352が重なったように見えるが、左右の目に異なる画像が入射していることから、通常観察するような画像とは異なった特異な感覚で認知される。これにより画像表示体は、複雑な視覚効果を示す画像を高い画質で表示するのに加え、改竄が困難である。
【0102】
一般的に300μm以上の大きさの文字は、肉眼では認識が可能とされ、これらの文字により共通した情報、例えばパスポートの場合には、国名や発行地などの情報を記録し、また、IDカードの場合には、会社名や所属などの情報を記録しておくことで、目視により真贋の判断を容易に行うことが可能となる。
【0103】
以上、パスポートとしての個人認証媒体100を例示したが、個人認証媒体100について上述した技術は、他の個人認証媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証やIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。
【0104】
画像表示体22を貼り付ける基材の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示体22を貼り付ける基材は、プラスチック基板、金属基板、セラミックス基板、又はガラス基板であってもよい。
【0105】
画像表示層220aに表示させる画像は、顔画像に加えて他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよい。また、画像表示層220aに表示させる画像は、生体情報に加えて非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよく、生体情報の代わりに非生体個人情報及び非個人情報の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…折り丁、2…表紙、11…紙片、21…表紙本体、22…画像表示体、22’…転写材層、100…個人認証媒体、201…転写箔、202…転写箔、210…画像表示層、220a…画像表示層、220b…画像表示層、223…回折構造形成層、223b…回折構造形成層、223c…下地層、224…反射層、225…接着層、226…支持体、227…剥離保護層、228…樹脂層、300…微小隠蔽画像、301…高さ、302…ピッチ、310…画像表示体、311…画像表示体、320a…回折構造、320b…回折構造、330…画像表示体、340a…回折構造、340b…回折構造、350a…観察画像、350b…観察画像、350c…観察画像、351…顔画像、352…微細文字、Ga…溝、Gb…溝、I1a…画像、I1b…画像、I2…画像、I3…画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体から個人認証媒体の基材上へと転写されて、個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体であって、
前記支持体によって剥離可能に支持され、光透過性を有している下地層と、
ホログラム及び/又は回折格子を含み、サーマルヘッドを用いた熱転写によって前記下地層上に転写された第1画像表示層を具備し、
前記第1画像表示層は前記個人情報の少なくとも一部及び微小隠蔽画像を含んだ第1画像を表示し、
前記下地層と向き合い、光の吸収を利用して第2画像を表示する第2画像表示層と
を具備する画像表示体。
【請求項2】
前記第1画像は、個人情報を含んだ画像を複数表示可能であり、
特定の照明条件のもとで第1方向から観察した場合に第1サブ画像を回折像として表示し、
前記照明条件のもとで前記第1方向とは異なる第2方向から観察した場合に前記第1サブ画像を回折像として表示しないか又は前記第1サブ画像を前記第1方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第1サブ回折構造と、
前記照明条件のもとで前記第2方向から観察した場合に前記第1サブ画像とは異なる第2サブ画像を回折像として表示し、
前記照明条件のもとで前記第1方向から観察した場合に前記第2サブ画像を回折像として表示しないか又は前記第2サブ画像を前記第2方向から観察した場合と比較してより暗い回折像として表示するレリーフ型の第2サブ回折構造と
を具備し、
前記第1サブ画像もしくは前記第2サブ画像のどちらか一方が、微小画像を含んでいる請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記第1画像表示層は複数のドット状部を含み、前記複数のドット状部の各中心は仮想的な平面格子の格子点上に位置し、前記平面格子の格子点の間隔は前記サーマルヘッドで熱転写する基本単位であるドット状部の中心間距離と等しい請求項1乃至2のいずれかに記載の画像表示体。
【請求項4】
前記微小隠蔽画像は、前記サーマルヘッドで熱転写する基本単位であるドット状部の径に包含されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項5】
前記微小隠蔽画像は、前記平面格子の格子点の間隔とほぼ等しく、または整数倍の間隔で配列したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像表示体。
【請求項6】
前記微小隠蔽画像の一辺の長さは、1μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項7】
前記微小隠蔽画像は、文字又は記号又は数字又はそれらの組み合わせからなる肉眼で視認不可能なマイクロ文字であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項8】
前記個人情報は顔画像を含んでいることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項9】
前記第2画像は前記個人情報の他の一部を含んだ請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像表示体。
【請求項10】
前記第1画像は、前記個人情報の一部である第1個人情報を含み、前記第2画像は前記個人情報の一部である第2個人情報を含み、前記第1及び第2個人情報は同一人物の顔画像であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項11】
前記第1画像表示層を間に挟んで、前記下地層と向き合った接着層を更に具備した請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像表示体。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の画像表示体と、前記支持体から前記画像表示体が転写された前記基材とを具備した個人認証媒体。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載された個人情報を含んだ画像を表示する画像表示体の製造に使用するブランク媒体であって、
前記ブランク媒体は、支持体と、支持体によって剥離可能に支持された転写材層220とを含んでおり、
前記転写材層は、少なくとも回折構造形成層を備えており、
前記回折構造形成層は、互いに交差する第1及び第2方向に複数配列された微小隠蔽画像を有することを特徴とするブランク媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−170179(P2011−170179A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34800(P2010−34800)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】