説明

画像表示媒体および画像形成方法

【課題】目視情報による認証が可能で、かつ、偽造防止効果の高い、個別情報がパターニングされたホログラム画像を有する画像表示媒体および画像形成方法を提供する。
【解決手段】カラー情報を持つ情報パターンのR,G,B分解画像をホログラムのドット転写により形成する。R,G,Bのドットのうち、転写されなかったドットについては、Rに対してC、Gに対してM、Bに対してYの、それぞれ補色関係にあるインクリボンを転写することで、ホログラムの観察領域においてはカラー情報を持ったホログラム画像が観察され、それ以外の領域においてはインクリボンによるカラー画像が観察される。また、画像表示媒体としては必ず6種類のリボンのうちの1種類が転写されたものとなるため、改竄が困難であり、高い偽造防止効果を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、パスポートや査証などの冊子、あるいは、カード等の個人認証媒体上に個人特定の要である顔画像や指紋を印刷、印字、描画する画像表示媒体およびこの画像表示媒体を形成する画像形成方法に係わり、特に、正当な所有者の顔や指紋の画像といった画像情報や、その本人の姓名、生年月日などの個人情報の印字内容を、回折格子および受像体を組み合わせることにより偽造困難にすることを目的とした画像表示媒体および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートや査証用ステッカ、あるいは、カード類といった個人認証に係わる情報記録媒体においては、従来、色々なセキュリティ手法が提案されてきている。たとえば、パスポートにおいては、現在使用されているパスポートはいわゆるICAO(International Civil Aviation Organization)の規定によれば、目視および光学文字識別方式の両方で読めなければならないとされている。
【0003】
ICAOの規定によれば、パスポートに使用する材質やセキュリティに関しては各国の自由裁量であり、セキュリティ機能として一般に使われているのは、有機溶剤等で反応する化学反応体、虹彩色のパールチップ、ファイバ(絹もしくは合成繊維、可視もしくは不可視、蛍光もしくは非蛍光)、ホログラムやマイクロ文字の印刷されたフィルムのセキュリティ糸、透かし模様等を盛り込んだ用紙や退色性インキ、蛍光インキ、感熱インキ、光学的に変化するインキ(いわゆるOVIなど)等の各種インキ、細線印刷、レインボ印刷、凹版印刷、ピクセル印刷等の様々な技法を組み込んでセキュリティと美観の同時向上を図っている。
【0004】
また、パスポートの目視確認情報としての顔写真は、従来、写真を貼り合わせたものであったが、近年では写真情報をデジタル化し、これをパスポートに再現する傾向にある。パスポートへの画像再現方法としては、昇華性(熱移行性)染料や、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプやワックス溶融タイプを用いた転写リボンによる感熱転写記録法、あるいは、電子写真法などが検討されている。
【0005】
パスポートへの画像再現方法としては、上記方式以外に、インクジェットプリンタによる記録法(たとえば、特許文献1参照)、CO2もしくはYAGレーザおよび感熱発色剤を使用したレーザ印字記録法(たとえば、特許文献2参照)、さらには、基材中に存在する炭素(C)を利用して基材の深さ方向にも印字記録するレーザエングレービング印字記録法(たとえば、特許文献3参照)などがある。
【0006】
査証用ステッカにおいても、ステッカ自体を剥がそうとしても綺麗に剥がすことが困難なように切り込みを一定パターン状に設けたものを使用するなどの工夫がされているものもある。
【0007】
さらに、この種の個人認識情報の入った画像表示体としては、画像情報に基づいて形成された画像パターンをポリ塩化ビニル等のカード基材上に備えたもの、あるいは、上記画像パターンに加えてホログラムや回折格子あるいは多層干渉を用いた光学的薄膜(光学設計によりカラーシフト等の効果を得られる)を用いることによる画像に代表される、いわゆるOVD(Optical Variable Device)画像を具備するもの等が知られている。
【0008】
ホログラムや回折格子のOVD技術は、高度な製造技術を要し、複製の難しいことから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、IDカード、プリペイドカード等のカード類に利用されてきた。さらには、その装飾性の高さから、包装材、書籍、パンフレット、POP等への利用も少なくない。
【0009】
OVDを物品に貼着するための手段として従来から転写箔を用いて転写形成するといった方法が採られている。この種の転写は、支持体上に剥離層、ホログラムや回折格子の画像パターンを形成されているレリーフ層と、公知の薄膜形成手段により形成される反射層、接着層を順次積層してなる構成のものが知られている。
【0010】
転写箔に刻まれたOVDパターン(ホログラムおよび回折格子パターン)は、微少な凹凸パターンをニッケル性のプレス版に複製し、レリーフ層に加熱押圧するという周知の方法により大量複製が行なわれている。
【0011】
また、上記反射層は屈折率の異なる透明な物質(以下、透明薄膜層と呼ぶ)を真空蒸着法等の公知の薄膜形成手段により形成することで、透明ホログラムや透明回折格子形成対となることは、公知の技術である。この場合、レリーフ層と透明薄膜層との間の屈折率差が大きいほど、反射率も大きくなることは、光学的見地からも明らかである。ただし、ここで、
(レリーフ層の屈折率)<(透明薄膜層の屈折率)
の関係がある。
【0012】
このようにして得られたホログラムまたは回折格子構造物は、偽造防止手段としてクレジットカード、キャッシュカード、会員証カード、社員証カード、プリペイドカード、運転免許証等の各種カード類、商品券、ギフト券、株券等の各種紙券類や申込用紙、領収書、複写伝票等の各種帳票類や、パスポート、通帳、年金手帳等の各種冊子類の他、本や手帳などの表紙やパネル等のディスプレイ用途等の一部または全体に貼着して使用されている。
【0013】
OVD転写箔は偽造防止効果としては、充分な機能を果たすが、パスポートのように顔写真などの画像形成後に該画像上にOVD転写層を熱的に転写して形成しているため、偽造技術の発達した現在では何らかの手法により転写層をいったん取り去り、画像情報等の改竄を行なった後に改めてOVD転写箔を載せるといったことが行なわれる可能性もある。
【0014】
また、顔写真などの画像情報を形成するする手段としての昇華転写方式、熱溶融性の転写リボン方式あるいは電子写真方式などのプリンタは、昨今では一般に広く普及している状況を考慮すると、画像形成部を取り除いた後の領域に新たに画像を形成することは、必ずしも困難とは言いきれなくなりつつある。
【0015】
上記のような問題を解決すべく、顔写真の他に個人を特定する情報を複数個入れる方法が考えられている。顔写真の中に電子透かし情報を入れ、その情報を同一媒体中のICチップに記憶して、電子透かし情報とICチップの情報とを照合することで認証する方法がある(たとえば、特許文献4参照)。
【0016】
また、顔写真情報の特徴点を数値化して、その値を2次元コード化し、同一媒体中に印字する。2次元コードのデータと顔写真の特徴点とを照合することで認証する方法がある(たとえば、特許文献5参照)。
【0017】
しかしながら、上記の方式では顔写真やICチップや2次元コードを読取るための専用のデコーダが必要であり、読取装置およびデコーダを所有している人以外認証できないという問題がある。
【0018】
他の検証方法として、目視情報による認証が可能な顔写真を複数個入れる方法が考えられる。前記方式で設けた顔写真の他に蛍光材料を用いて同じ顔写真を形成する方法がある(たとえば、特許文献6、7、8参照)。また、パール顔料を溶融型熱転写インクリボン化して顔写真を形成する方法がある(たとえば特許文献9参照)。
【0019】
しかしながら、上記蛍光材料を用いる方法では、紫外線ランプ(ブラックライト)を用いる必要があるため、認証できる場面が限られている。一方、パール顔料による顔写真は、目視による確認は可能であるが、パール顔料の粒子が大きいため、精細な画像の形成が困難なことより、あくまで補助的な認証にしかならないという問題がある。
【0020】
また、個人情報をホログラム化する方法として、ホログラムリボンを用いた直接熱転写方式(たとえば、特許文献10参照)が知られているが、この方式で形成された画像は平面的なものであり、高い偽造防止効果が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2002−226740号公報
【特許文献2】特開昭49−131142号公報
【特許文献3】特開2006−123174号公報
【特許文献4】特開2001−126046号公報
【特許文献5】特開2004−70532号公報
【特許文献6】特開平7−125403号公報
【特許文献7】特開2000−141863号公報
【特許文献8】特開2002−226740号公報
【特許文献9】特開2003−170685号公報
【特許文献10】特開平10−049647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、高セキュリティ性を必要とされる画像表示媒体に対して、偽造や改竄あるいは変造に対する予防性能や、万一それらの不正がなされた場合であっても被疑不正品を観察等すると容易に発見できるような発見容易性能を実現し得る画像表示媒体および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の請求項1に係わる画像表示媒体は、特定の視域における観測色がR(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の3原色となる3種類のホログラムリボンと、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)のインクリボンとを用いて、微小面積のドットとして順次転写することにより情報パターンが形成された画像表示媒体であって、前記情報パターンは、Y,M,Cのインクリボンにより形成された情報パターンと、R,G,Bのホログラムリボンにより形成された情報パターンとが、実質的に同じ内容のカラー画像で形成され、かつ、同じ位置に重ねて形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項2に係わる画像表示媒体は、特定の視域における観測色がR,G,Bの3原色となる3種類のホログラムリボンと、Y,M,Cのインクリボンとを用いて、微小面積のドットとして順次転写することにより情報パターンが形成された画像表示媒体であって、前記情報パターンは、3分割された転写領域からなり、第1の領域にはRまたはCのどちらか一方が転写され、第2の領域にはGまたはMのどちらか一方が転写され、第3の領域にはBまたはYのどちらか一方が転写されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項3に係わる画像表示媒体は、ホログラムリボンの反射層は透明な反射層であることを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項4に係わる画像表示媒体は、ホログラムリボンの反射層は金属薄膜層であることを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項5に係わる画像表示媒体は、情報パターンは当該画像表示媒体の所有者または使用者の顔写真であることを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項6に係わる画像形成方法は、特定の視域における観測色がR,G,Bの3原色となる3種類のホログラムリボンと、Y,M,Cのインクリボンとを用いて、微小面積のドットとして順次転写することにより情報パターンを形成する画像形成方法であって、前記情報パターンを形成する際、転写領域を3分割し、第1の領域にはRまたはCのどちらか一方を転写し、第2の領域にはGまたはMのどちらか一方を転写し、第3の領域にはBまたはYのどちらか一方を転写することを特徴とする。
【0029】
本発明の請求項7に係わる画像形成方法は、ホログラムリボンとインクリボンとを同一の基材上に設け、全てのリボンの転写を同一のサーマルヘッドで行なうことを特徴とする。
【0030】
本発明の請求項8に係わる画像形成方法は、ホログラムリボンの転写とインクリボンの転写のうち、少なくともどちらか一方を中間転写箔上に行なった後、基材に転写することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の請求項1に係わる画像表示媒体によれば、特定の視域においては情報パターンがカラー情報を持ったホログラム画像として観察でき、ホログラムの回折光の観察できない視域においては情報パターンがインクリボンにより表現された印刷画像として観察できる。また、ホログラム画像と印刷画像の内容を同じものとし、かつ、同じ位置に形成することで、特定の視域においてはカラー情報を持ったホログラムによる特殊な視覚効果を得ることができ、ホログラム効果のない視域においてはその場所に情報パターンが存在することを明示することができる。さらに、実質的に内容が同じホログラム画像と印刷画像を組み合わせることで偽変造をより困難にすることができる。
【0032】
本発明の請求項2に係わる画像表示媒体によれば、特定の視域においては情報パターンがカラー情報を持ったホログラム画像として観察でき、ホログラムの回折光の観察できない視域においては情報パターンがインクリボンにより表現された印刷画像として観察でき、かつ、インクリボンの転写により形成されたドットが、RまたはCのどちらか一方が転写された第1の領域と、GまたはMのどちらか一方が転写された第2の領域と、BまたはYのどちらか一方が転写された第3の領域との3つの転写領域からなることで、ホログラム画像と印刷画像の内容が実質的に同じものとなり、かつ、同じ位置に観察できる。
【0033】
また、目視観察においては、特定の視域においてはカラー情報を持ったホログラムによる特殊な視覚効果を得ることができ、ホログラム効果のない視域においてはその場所に情報パターンが存在することを明示することができる。さらに、情報パターンを顕微鏡などで拡大観察した場合には、R,G,B,Y,M,Cの6種類のリボンにより転写されたドットが重なり合わず、かつ、抜けることもなく表現されており、偽変造を困難にすることができるとともに、偽変造品の判別も容易となる。
【0034】
本発明の請求項3に係わる画像表示媒体によれば、ホログラムリボンに用いる反射層を透明な薄膜層とすることで、ホログラムリボンが転写される部分であっても、被転写媒体にあらかじめ印字または印刷された情報が視認可能となる。
【0035】
本発明の請求項4に係わる画像表示媒体によれば、ホログラムリボンに用いる反射層を不透明な金属薄膜層とすることで、ホログラム画像の反射光および回折光を増大させ、視覚効果の向上が図れる。
【0036】
本発明の請求項5に係わる画像表示媒体によれば、形成する情報パターンを当該画像表示媒体の所有者または使用者の顔写真とすることで、本人確認が容易となる。
【0037】
本発明の請求項6に係わる画像形成方法によれば、リボン転写により形成するドットを、RまたはCのどちらか一方を転写する第1の領域と、GまたはMのどちらか一方を転写する第2の領域と、BまたはYのどちらか一方を転写する第3の領域との3つの転写領域とすることで、ホログラム画像と印刷画像の内容が実質的に同じで、かつ、同じ位置に形成できる。
【0038】
本発明の請求項7に係わる画像形成方法によれば、ホログラムリボンとインクリボンとを同一の基材上に設け、熱転写を1つのサーマルヘッドで行なうことで、ドットの転写位置精度の高い画像形成が可能となる。
【0039】
本発明の請求項8に係わる画像形成方法によれば、ホログラムリボンとインクリボンの少なくとも一方を中間転写方式にすることにより、より転写品質の高い画像形成が可能となる。中間転写方式は最終的に転写する基材の段差の影響を受けないため、高品質な転写が可能となり、また、中間箔がオーバーレイとなり、転写されたドットを保護するため、より高い耐久性および偽造防止性を有することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ホログラム画像を転写・形成した画像表示媒体の観察方法を示す模式図。
【図2】本発明の第1の実施例に係るホログラムリボンの構成を模式的に示す縦断側面図。
【図3】本発明の第1の実施例に係る画像表示媒体の構成を模式的に示す平面図。
【図4】本発明の第2の実施例に係る画像表示媒体の構成を模式的に示す平面図。
【図5】図4におけるA−A矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、本発明の画像表示媒体は、ホログラムリボンおよびインクリボンを基材または中間箔に転写するプロセスと、リボンを中間箔上に転写した場合には前記中間箔を基材上に転写するプロセスとにより形成されるものであり、必要に応じて他の媒体およびプロセスを有しても良いものである。
【0042】
まず、本発明に用いられるホログラムリボンについて説明する。
本発明に用いられるホログラムリボンは、ホログラム画像を有する転写箔であり、少なくともバックコート層、支持体、剥離層、ホログラム形成層、反射層、接着層からなる。ホログラムリボンは、熱転写により基材または中間箔上に接着した後、支持体から剥離する機能を有する。中間箔上に転写されたホログラムリボンはその後さらに基材上へ熱転写されるため、ホログラムリボンに求められる機能としては、中間箔上への転写時の熱だけでなく基材上への転写時の熱にも十分耐えられる耐熱性が挙げられる。
また、ホログラムリボンは個別情報のパターンを表現するために微小なドットで転写されるため、支持体から剥離する際には良好な箔切れ性が要求される。
【0043】
本発明におけるホログラムリボンの転写時におけるドットサイズは、特に限定されるものではないが、ドットの一辺の長さが0.042mmから0.508mmの間(600dpiから50dpiの間)が好ましいが、パターニングされたホログラム図柄を対象となる個人の顔写真にする場合には、ドットの一辺の長さが0.042mmから0.169mmの間(600dpiから150dpiの間)であることが好ましい。これは、ドットサイズが大きくなると情報パターンの表現力が低下し、逆にドットサイズが小さくなると転写時のばらつきの影響が大きくなるためである。
【0044】
ホログラムリボンは、ホログラム画像に反射性を与え、ホログラム効果を増大させるために反射層を設けている。反射層としては反射透明性を有する透明な薄膜層や不透明な金属薄膜層を用いることができる。
【0045】
透明な薄膜層の材質としては、ホログラム形成層とは屈折率の異なる物質の連続薄膜や、厚みが200Å未満の金属薄膜等があげられ、実例としては、硫化亜鉛、二酸化チタン等があるが、これに限定されるものではない。
金属薄膜層の材質は、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金、銅の中から選択される単体又はそれらの混合物、合金等である。
【0046】
本発明に用いられるホログラムリボンのパターンは、それぞれ3原色であるR(レッド),G(グリーン),B(ブルー)のリボンに対応した空間周波数を有する必要がある。ホログラムパターンの空間周波数は、必要とする色の波長、照射光の角度、および、視域に応じて決定される。たとえば、Rホログラムエリア、Gホログラムエリア、Bホログラムエリアには、それぞれ次のような空間周波数を有するホログラムパターンが形成されている。
Rホログラムエリア…1140(line/mm)
Gホログラムエリア…1310(line/mm)
Bホログラムエリア…1540(line/mm)
次いで、この画像表示媒体の観察方法を図1に基づき説明する。その観察方法は、たとえば、画像表示媒体1の表面の天頂方向45度から白色照射光100を照射し、正面の0度の位置である観察点101で観察する。この観察方法を前提として、R,G,Bそれぞれの色を、R光の波長620nm、G光の波長540nm、B光の波長460nmと規定することにより、空間周波数、波長および入反射角の関係式から、R,G,Bそれぞれのホログラムエリアに形成されるホログラムパターンの空間周波数を決定した。
【0047】
次に、本発明に用いられるインクリボンについて説明する。
本発明に用いられるインクリボンは、昇華転写方式および/または溶融転写方式のインクリボンであり、情報パターンとは別に画像表示媒体に顔写真および/または個人情報を含んだ文字情報を転写するプロセスを組み合わせることができる。一般的なインクリボンと同様に、Y,M,Cの多色転写を行なうことが可能である。インクリボンの転写はホログラムリボンの転写の前または後に行なうことができ、インクリボンはホログラムリボンと一体のロールとすることもできる。また、Y,M,Cに加え黒(K)のインクリボンを組み合わせることも可能である。
【0048】
次に、本発明に用いられる基材について説明する。
本発明に用いられる基材は、リボンまたは中間箔が転写される被転写体であり、パスポート、査証、あるいは、各種のカード類が想定されるが、限定されるものではない。また、必要に応じて細紋パターンや接着アンカなどを設けることができる。基材は転写したリボンまたは中間箔を剥離する際に紙剥けや層間剥離、破断等が発生しないだけの強度が求められる。
【0049】
次に、本発明に用いられる中間箔について説明する。
本発明に用いられる中間箔は、リボンが転写される被転写体であると同時に、中間箔自身が基材へ転写される転写体である。層構成としては少なくとも支持体、剥離保護層、被転写層からなるが、必要に応じて保護層と被転写層の間にホログラム形成層、反射層などを設けることができる。また、被転写層は必要に応じて受像層および/あるいは接着層としての機能も併せ持つことができる。
【0050】
被転写層が接着層としての機能を持たない場合には、中間箔はホログラムリボンを被転写層に転写された後、後述の接着リボンが被転写層上に転写され、基材上へ熱転写される。中間箔は熱転写により基材上に接着した後、支持体から剥離することで、剥離保護層が最表面に表出する。中間箔に用いる剥離保護層は、リボンの転写時には十分な密着性があり、基材への転写時には確実に剥離することが求められる。
【0051】
中間箔は、基材へ転写された後は画像表示媒体の表面に露出するため、情報パターンや印刷された細紋パターンの視認性を上げるために透明であることが望ましいが、視認可能な範囲で着色することも可能である。また、中間箔の一部に網点、万線、および、図形のいずれかまたは組み合わせにより表現される不透明な反射層を設けることも可能であるが、その下に表示される情報パターンや印刷された細紋パターンは隠蔽されることになる。
【0052】
次に、本発明に用いられる接着リボンについて説明する。
本発明に用いられる接着リボンは、中間箔の被転写層と基材との密着性向上に加え、中間箔上に転写されたホログラムリボンおよび/またはインクリボンと基材との密着性を向上させることで、画像表示媒体としての耐久性向上のために用いられる。接着リボンの転写はホログラムリボンおよび/またはインクリボンの転写の後に行なうが、接着リボンはホログラムリボンおよび/またはインクリボンと一体のロールとすることもできる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
【0054】
まず、第1の実施例について説明する。
【0055】
図2は、第1の実施例に係るホログラムリボンの構成を模式的に示すものである。図2に例示するように、支持体11の一方の面に剥離層12、ホログラム形成層13、反射層14、接着層15がその順番に積層形成されている。また、支持体11の他方の面にバックコート層16が形成されている。ホログラムリボンは転写箔であり、サーマルヘッドを用いて被転写媒体に微小面積のドットとして順次転写され、情報パターンを形成する。
【0056】
図3は、第1の実施例に係る画像表示媒体1の構成を模式的に示すものである。図3に例示するように、基材2上に、特定の視域における観測色がR,G,Bの3原色となる3種類のホログラムリボン21と、Y,M,Cのインクリボン22とが転写されることで表現される情報パターン23が形成されている。
【0057】
図3に示すように、情報パターン23は、横に並んだ3つのドットを1単位とし、この単位で白201、赤色202、緑色203、青色204、黄色205、紅色206、藍色207、黒色208の8色の表現が可能である。白色を表現する場合には、R,G,B全てのホログラムリボンを転写して表現する。赤色、緑色、青色を表現する場合には、それぞれRホログラムリボン+Mインクリボン+Yインクリボン、Gホログラムリボン+Cインクリボン+Yインクリボン、Bホログラムリボン+Cインクリボン+Mインクリボンを転写することで表現する。黄色、紅色、藍色を表現する場合には、それぞれRホログラムリボン+Gホログラムリボン+Yインクリボン、Rホログラムリボン+Bホログラムリボン+Mインクリボン、Gホログラムリボン+Bホログラムリボン+Cインクリボンを転写することで表現する。黒色を表現する場合には、Y,M,C全てのインクリボンを転写して表現する。図3の例では、全てのリボンが基材2上に重なり合うことなく直接転写されている。
【0058】
このような構成により、画像表示媒体1を特定の角度から見た時には、特定の視域における観測色がR,G,Bの3原色となる3種類のホログラムリボン21により、情報パターン23は8色のディザ画像として色情報を持ったホログラムパターンとして視認できる。一方、画像表示媒体1をホログラムの回折光が観察されない角度から見たときには、ホログラムパターンは観察されず、インクリボン22により形成された情報パターン23のみが視認できる。
【0059】
以下、第1の実施例に係る画像表示媒体1の作成方法について具体例を説明する。
まず、ホログラムリボンを作成する。すなわち、支持体11として厚みが12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、剥離層12、ホログラム形成層13の順にグラビアコータで印刷を行なった。オーブンでの乾燥後、剥離層12の膜厚は0.6μm、ホログラム形成層13の膜厚は0.7μmであった。
【0060】
次に、この剥離層12、ホログラム形成層13を形成したフィルムをロールエンボス装置にて熱プレスを行なうことで、ホログラム形成層13にホログラムパターンを成形した。
【0061】
次に、ホログラム形成層13上に反射層14としてアルミ蒸着を行ない、金属薄膜層を形成した。アルミ蒸着の膜厚は50nmであった。
【0062】
次に、この反射層14を形成したフィルムに接着層15の印刷を行ない、さらに支持体11の反対面にバックコートを行なうことでバックコート層16を形成し、ホログラムリボンを得た。接着層15、バックコート層16ともに膜厚は0.6μmであった。
【0063】
次に、インクリボンを作成する。すなわち、支持体として厚みが4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、バックコート層、昇華シアン層、昇華マゼンタ層、昇華イエロー層の順にグラビアコータで印刷を行なうことで、インクリボンを得た。オーブンでの乾燥後、バックコート層の膜厚は0.8μmであった。
【0064】
次に、情報パターン23としてフルカラーの顔画像情報を用意し、縦150dpi、横100dpiの8色(赤、緑、青、黄、紅、藍、白、黒)のディザ画像に変換した。
【0065】
この変換したディザ画像をR,G,Bに色分解し、それぞれの情報に基づき該当する色のホログラムリボンを転写した。転写はサーマルヘッドを用いて、白色プラスチックカード上に行なった。このとき、ドットの横方向を3分割し、300dpi相当の幅でホログラムリボン同士が重ならないように転写を行なった。配置の順序は右からR,G,Bとした。
【0066】
同様に、上記変換したディザ画像をY,M,Cに色分解し、それぞれの情報に基づき該当する色のインクリボンを転写した。ホログラムリボンと同様、ドットの横方向を3分割し、300dpi相当の幅でインクリボン同士が重ならないように転写を行なった。配置の順序を右からC,M,Yとし、ホログラムリボンを転写した白色プラスチックカード上に、位置合わせを行ない転写することで、全てのリボンが重なることなく転写された、本発明の画像表示媒体1を得た。
【0067】
次に、第2の実施例について説明する。
【0068】
図4、図5は、第2の実施例に係る画像表示媒体1の構成を模式的に示すものである。図4に例示するように、基材2上に、第1の実施例と同様に、ホログラムリボン21およびY,M,Cのインクリボン22により表現される情報パターン23が形成され、さらに、この情報パターン23の上に中間箔3が形成されている。この場合、図5に示すように、中間箔3は情報パターン23を覆うように基材2上に形成されている。
【0069】
以下、第2の実施例に係る画像表示媒体1の作成方法について具体例を説明する。
まず、ホログラムリボンを作成する。すなわち、ホログラムリボンは、アルミ蒸着をZnS蒸着に変更し、透明な反射層を設けたことを除き、第1の実施例と同様に作成した。
【0070】
次に、中間箔3を作成する。すなわち、支持体として厚みが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、剥離保護層、被転写層の順にグラビアコータで印刷を行なうことで、中間箔3を得た。オーブンでの乾燥後、剥離保護層の膜厚は1.2μm、被転写層の膜厚は1.0μmであった。
【0071】
次に、サーマルヘッドを用いて、中間箔3の被転写層上にホログラムリボン21およびインクリボン22を転写した後、接着アンカを印刷した厚紙上に中間箔3を転写した。以上により、基材2、情報パターン23、中間箔3の構成を有する本発明の画像表示媒体1を得た。
【0072】
以上のように構成した本実施例の画像表示媒体1は、インクリボン22による情報パターン23とホログラムリボン21による情報パターンとの構成画像の一致と、印字ドットの表現方法により、高い偽造防止性を有するものとなる。
【符号の説明】
【0073】
1…画像表示媒体、2…基材、3…中間箔、11…支持体、12…剥離層、13…ホログラム形成層、14…反射層、15…接着層、16…バックコート層、21…ホログラムリボン、22…インクリボン、23…情報パターン、100…白色照射光、101…観察点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の視域における観測色がR(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の3原色となる3種類のホログラムリボンと、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)のインクリボンとを用いて、微小面積のドットとして順次転写することにより情報パターンが形成された画像表示媒体であって、
前記情報パターンは、Y,M,Cのインクリボンにより形成された情報パターンと、R,G,Bのホログラムリボンにより形成された情報パターンとが、実質的に同じ内容のカラー画像で形成され、かつ、同じ位置に重ねて形成されていることを特徴とする画像表示媒体。
【請求項2】
特定の視域における観測色がR,G,Bの3原色となる3種類のホログラムリボンと、Y,M,Cのインクリボンとを用いて、微小面積のドットとして順次転写することにより情報パターンが形成された画像表示媒体であって、
前記情報パターンは、3分割された転写領域からなり、第1の領域にはRまたはCのどちらか一方が転写され、第2の領域にはGまたはMのどちらか一方が転写され、第3の領域にはBまたはYのどちらか一方が転写されていることを特徴とする画像表示媒体。
【請求項3】
前記ホログラムリボンの反射層は透明な反射層であることを特徴とする請求項1または2記載の画像表示媒体。
【請求項4】
前記ホログラムリボンの反射層は金属薄膜層であることを特徴とする請求項1または2記載の画像表示媒体。
【請求項5】
前記情報パターンは当該画像表示媒体の所有者または使用者の顔写真であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像表示媒体。
【請求項6】
特定の視域における観測色がR,G,Bの3原色となる3種類のホログラムリボンと、Y,M,Cのインクリボンとを用いて、微小面積のドットとして順次転写することにより情報パターンを形成する画像形成方法であって、
前記情報パターンを形成する際、転写領域を3分割し、第1の領域にはRまたはCのどちらか一方を転写し、第2の領域にはGまたはMのどちらか一方を転写し、第3の領域にはBまたはYのどちらか一方を転写することを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
前記ホログラムリボンと前記インクリボンとを同一の基材上に設け、全てのリボンの転写を同一のサーマルヘッドで行なうことを特徴とする請求項6記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記ホログラムリボンの転写と前記インクリボンの転写のうち、少なくともどちらか一方を中間転写箔上に行なった後、基材に転写することを特徴とする請求項6または7記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−221054(P2011−221054A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86536(P2010−86536)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】