説明

画像表示粒子および画像表示装置

【課題】透明基板および対向基板の間に、1種類以上の粒子を封入し、電位の異なる2種類の電極から該粒子に電界を与えて、粒子を飛翔移動させ画像を表示する画像表示装置において、工業的に有利に製造することができ、帯電極性の正負の性格付けと帯電量の確保が容易であり、飛翔移動が容易に行える画像表示粒子および画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示粒子として、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、スチレン系モノマーから選ばれる1種以上の樹脂成分を乳化重合及び会合して作製された粒子を用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、静電気を利用した粒子の飛翔移動に伴い画像を繰り返し画像表示、消去できる画像表示装置に用いられる画像表示粒子および該粒子を用いた画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】液晶(LCD)に代わる画像表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式などの技術を用いた画像表示装置(ディスプレイ)が提案されている。これらの画像表示装置は、LCDに比べて、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリー機能を有している等のメリットから、次世代の安価な表示装置として考えられ、携帯端末用表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。
【0003】最近、分散粒子と着色溶液からなる分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置する電気泳動方式が提案されている。しかしながら、電気泳動方式では、液中に粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅いという問題がある。また、低比重の溶液中に酸化チタンなどの高比重の粒子を分散させているために、沈降しやすく、分散状態の安定性維持が難しく、画像繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにし、見かけ上、このような欠点が現れ難くしているだけで、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0004】以上のような溶液中での挙動を利用した電気泳動方式に対し、最近では溶液を使わず、色と帯電極性が異なる2種類の粒子を2枚の基板間において、静電界をかけて互いに異なる方向の基板に飛翔移動させる表示装置も提案されている。この方式は電気泳動方式に対し乾式であるから粒子の移動抵抗が小さく応答速度が早いという長所がある。このような乾式表示装置の粒子飛翔による画像表示に用いる粒子は、一般的には、樹脂に着色剤を混練りしてペレットとした後、数段階の粉砕と分級を行って作製される。
【0005】このような乾式表示装置の粒子飛翔による画像表示に用いる粒子は、帯電極性の正負の性格付けと帯電量の確保が容易であると共に、基板間への充填性や飛翔移動性の面から球形であることが望ましいが、上記の粉砕による粒子作製方法では球形の粒子を得ようとする場合には、粉砕に大きなエネルギーを必要とするほか、粉砕に続いて、さらに物理的に粒子の角をとる工程が必要となるために、さらなるエネルギーが必要であり、工程もさらに複雑化するという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記実情に鑑みて鋭意検討されたものであり、粒子を飛翔移動させて行う画像表示装置において、工業的に有利に製造することができ、帯電極性の正負の性格付けと帯電量の確保が容易であり、飛翔移動が容易に行える画像表示粒子および画像表示装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、アクリル系モノマーや、メタクリル系モノマー、スチレン系モノマーを使用して、乳化重合とそれに続く会合とを用いて作製した球形の樹脂粒子が工業的に有利に製造することができ、クーロン力などにより飛翔移動する画像表示粒子として用いることによって、繰り返し使用時の安定性向上と低電圧での駆動、更には高応答速度を達成した画像表示粒子及び画像表示装置が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】すなわち本発明は、以下の画像表示粒子および画像表示装置を提供するものである。
1.透明基板及び対向基板の間に、1種類以上の粒子を封入し、電位の異なる2種類の電極から該粒子に電界を与えて粒子を飛翔移動させ画像を表示する画像表示装置に用いられる画像表示粒子であって、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、スチレン系モノマーから選ばれる1種以上の樹脂成分を乳化重合及び会合して作製されたものであることを特徴とする画像表示粒子。
2.粒子が球形である上記1の画像表示粒子。
3.粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)が60℃以上である上記1又は2の画像表示粒子。
4.粒子の平均径が0.1〜50μmである上記1〜3のいずれかの画像表示粒子。
5.粒子の帯電量が絶対値で10〜100μC/gである上記1〜4のいずれかの画像表示粒子。
6.粒子が、その表面と1mmの間隔をもって配置されたコロナ放電器に、8kVの電圧を印加してコロナ放電を発生させて表面を帯電させた場合に、0.3秒後における表面電位の最大値が300Vより大きい粒子である上記1〜5のいずれかの画像表示粒子。
7.透明基板及び対向基板の間に、1種類以上の粒子を封入し、電位の異なる2種類の電極から該粒子に電界を与えて粒子を飛翔移動させ画像を表示する画像表示装置であり、該粒子の中の少なくとも1種類の粒子が、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、スチレン系モノマーから選ばれる1種以上の樹脂成分を乳化重合及び会合して作製された粒子であることを特徴とする画像表示装置。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の画像表示装置は、透明基板および対向基板の間に、1種類以上の粒子を封入し、電位の異なる2種類の電極から該粒子に電界を与えて、粒子を飛翔移動させ画像を表示する画像表示装置である。この画像表示は、図1に示すように2種以上の色の異なる粒子を基板と垂直方向に移動させることによる表示方式と、図2に示すように1種の色の粒子を基板と平行方向に移動させることによる表示方式があり、そのいずれへも適用できるが、安定性の上から、前者の方式に適用するのが好ましい。図3は画像表示装置の構造を示す説明図であり、対向する基板1、基板2及び粒子3により形成され、必要に応じて隔壁4が設けられる。
【0010】基板に関しては、基板1、基板2の少なくとも一方は装置外側から粒子の色が確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。画像表示装置としての可撓性の有無は用途により適宜選択され、例えば、電子ペーパー等の用途には可撓性のある材料、携帯電話、PDA、ノートパソコン類の携帯機器表示等の用途には可撓性のない材料が用いられる。
【0011】基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネイトなどのポリマーシートや、ガラス、石英などの無機シートが挙げられる。基板厚みは、2〜5000μm、好ましくは5〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、厚すぎると、表示機能としての鮮明さ、コントラストの低下が発生し、特に、電子ペーパー用途の場合には可撓性に欠ける。
【0012】基板には、電極を設けない場合と電極を設ける場合がある。電極を設けない場合の表示方法は、基板外部表面に静電潜像を与え、その静電潜像に応じて発生する電界にて、所定の極性に帯電した、色のついた粒子を基板に引き寄せあるいは反発させることにより、静電潜像に対応して配列した粒子を透明な基板を通して表示装置外側から視認する方法である。なお、この静電潜像の形成は、電子写真感光体を用い通常の電子写真システムで行われる静電潜像を本発明の表示装置基板上に転写形成する、あるいは、イオンフローにより静電潜像を直接形成する等の方法で行うことができる。
【0013】電極を設ける場合の表示方法は、電極部位への外部電圧入力により、基板上の各電極位置に生じた電界により、所定の極性に帯電した色の粒子が引き寄せあるいは反発させることにより、静電潜像に対応して配列した粒子を透明な基板を通して表示装置外側から視認する方法である。電極は透明基板上に透明かつパターン形成可能である導電性材料で形成され、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属やITO、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の透明導電金属酸化物をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法等で薄膜状に形成したものや、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダに混合して塗布したものが用いられる。
【0014】導電剤としてはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムパークロレート等のカチオン性高分子電解質、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩等のアニオン性高分子電解質や導電性の酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム微粉末等が用いられる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障なければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。対向基板上には透明電極材料を使用することもできるが、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の非透明電極材料も使用できる。この場合の外部電圧印加は、直流あるいはそれに交流を重畳しても良い。各電極は帯電した粒子の電荷が逃げないように絶縁性のコート層を形成することが好ましい。このコート層は、負帯電粒子に対しては正帯電性の樹脂を、正帯電粒子に対しては負帯電性の樹脂を用いると粒子の電荷が逃げ難いので特に好ましい。
【0015】隔壁は各表示素子の四周に設けるのが好ましい。隔壁を平行する二方向に設けることもできる。これにより、基板平行方向の余分な粒子移動を阻止し、耐久繰り返し性、メモリー保持性を介助すると共に、基板間の間隔を均一にかつ補強し画像表示板の強度を上げることもできる。隔壁の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、スクリーン版を用いて所定の位置にペーストを重ね塗りするスクリーン印刷法や、基板上に所望の厚さの隔壁材をベタ塗りし、隔壁として残したい部分のみレジストパターンを隔壁材上に被覆した後、ブラスト材を噴射して隔壁部以外の隔壁材を切削除去するサンドブラスト法や、該基板上に感光性樹脂を用いてレジストパターンを形成し、レジスト凹部へペーストを埋込んだ後レジスト除去するリフトオフ法(アディティブ法)や、該基板上に、隔壁材料を含有した感光性樹脂組成物を塗布し、露光・現像により所望のパターンを得る感光性ペースト法や、該基板上に隔壁材料を含有するペーストを塗布した後、凹凸を有する金型等を圧着・加圧成形して隔壁形成する鋳型成形法等、種々の方法が採用される。さらに鋳型成形法を応用し、鋳型として感光性樹脂組成物により設けたレリーフパターンを使用する、レリーフ型押し法も採用される。
【0016】本発明の画像表示粒子は、負又は正帯電性の着色粒子で、クーロン力などにより飛翔移動するものであり、該粒子の中の少なくとも1種類の粒子が、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、スチレン系モノマーから選ばれる1種以上の樹脂成分を乳化重合および会合して作製される。本発明の画像表示粒子の製造方法の手順の一例を示せば次のようになる。先ず、モノマー中に着色剤、必要に応じて荷電制御剤を添加し、ホモジナイザーやホモミキサー等の各種攪拌装置を用いてモノマーに着色剤、必要に応じて荷電制御剤等の添加剤を溶解あるいは分散させる。この溶液あるいは分散液を、乳化剤(分散安定剤)を含有した水系媒体中にホモミキサーやホモジナイザーなどの攪拌機を使用して乳化分散させる。この系に水溶性の重合開始剤を加えて加熱して乳化重合を進行させて、ポリマー粒子を作製する。その後、凝集剤を加え塩析、会合させると同時に、形成されたポリマー自体のガラス転移点温度(Tg)以上の温度で加熱して粒子同士を融着させて融着粒子を形成しながら、徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止させ、さらに加熱、攪拌しながら粒子形状を球形になるように制御する。続いて濾過、洗浄を数回繰り返したのち、加熱乾燥することにより、本発明の画像表示粒子を作製する。
【0017】このように、画像表示粒子として、アクリル系モノマーや、メタクリル系モノマー、スチレン系モノマーを使用したラジカル重合タイプの樹脂成分を使用することにより、帯電極性の正負の性格付けと帯電量の確保が容易となる。たとえば、負帯電の樹脂粒子を得たい場合には、スチレン主体で重合を行い、正帯電の樹脂粒子を得たい場合には、アクリル系モノマーやメタクリル系モノマーに、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル等を共重合させる方法が採られる。このようにモノマーの選択と配合割合により帯電の制御が可能である。なお、モノマーのみで帯電量が不足な場合には、荷電制御剤をモノマーに溶かし込むことにより、容易に帯電量の制御が可能である。
【0018】本発明の粒子原料に用いられるアクリル系モノマーとしては、アクリル酸モノマー、アクリル酸メチルモノマー、アクリル酸ブチルモノマー、アクリロニトリルモノマーが挙げられ、メタクリル系モノマーとしては、メタクリル酸モノマー、メタクリル酸メチルモノマー、メタクリル酸n−ブチルモノマー、メタクリル酸t−ブチルモノマー、メタクリル酸グリシジルモノマー、メタクリル酸ヒドロキシエチルモノマー、メタクロロニトリルモノマー、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチルモノマー、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルモノマーが挙げられ、スチレン系モノマーとしては、スチレンモノマーおよびメチルスチレンモノマーが挙げられる。また、このようなモノマーを2種以上混合することもできる。
【0019】乳化重合する際の重合開始剤としては、水溶性ラジカル重合開始剤を使用することができる。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素等を挙げることができる。乳化剤(分散安定剤)としては、高級アルコール硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチレンオキサイド付加物、ゼラチン等、一般的な界面活性剤を使用することができる。また、分散安定剤として酸化チタン、シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト等を挙げることができる。
【0020】得られたポリマー粒子を水系媒体中で会合させる際に用いる凝集剤には特に限定はないが、金属塩から選択されるものが好適に用いられる。具体的には、一価の金属塩として、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、二価の金属塩として例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類の金属塩、マンガン、銅等の二価の金属塩、鉄、アルミニウム等、三価の金属塩等が挙げられ、具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができる。これらは組み合わせて使用してもよい。
【0021】本発明の画像表示粒子(以下、単に粒子と云う)の特徴は以上の乳化重合および会合により球形粒子を得ることであり、球形であるため流動性に優れている。粒子を構成する樹脂としては、ガラス転移点温度(Tg)が60℃以上のものが好ましく、さらに好ましくは80℃以上のものである。Tgが60℃未満では、粒子の変形が起きやすく、繰り返し耐久性が悪くなる。
【0022】本発明の画像表示粒子の平均粒径は、0.1〜50μmが好ましく、特に1〜30μmが好ましい。粒径がこの範囲より小さいと粒子の電荷密度が大きすぎて電極や基板への鏡像力が強すぎ、メモリー性はよいが、電界を反転した場合の追随性が悪くなる。反対に粒子径がこの範囲より大きいと、追随性は良いが、メモリー性が悪くなる。なお、本発明において平均粒子径(μm)は、Mastersizer2000(Malvern instruments Ltd.) 測定機に各粒子を投入し、付属のソフト(体積基準分布を基に粒子径分布、粒子径を算出するソフト)を用いて、粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒径をμmで表した数値である。
【0023】粒子を負又は正に帯電させる方法は、特に限定されないが、コロナ放電法、電極注入法、摩擦法等の粒子を帯電する方法が用いられる。粒子の帯電量は絶対値で10〜100μC/gの範囲が好ましく、特に20〜60μC/gが好ましい。帯電量がこの範囲より低いと電界の変化に対する応答速度が低くなり、メモリー性も低くなる。帯電量がこの範囲より高いと電極や基板への鏡像力が強すぎ、メモリー性はよいが、電界を反転した場合の追随性が悪くなる。粒子はその帯電電荷を保持する必要があるので、1010Ω・cm以上の絶縁粒子が好ましく、特に1012Ω・cm以上の絶縁粒子が好ましい。
【0024】また、本発明の画像表示粒子は、以下の述べる方法で評価した電荷減衰性の低い粒子が更に好ましい。即ち、粒子を、別途、プレス、加熱溶融、キャストなどにより、厚み5〜100μm範囲のフィルム状にして、そのフィルム表面と1mmの間隔をもって配置されたコロナ放電器に、8KVの電圧を印加してコロナ放電を発生させて表面を帯電させ、その表面電位の変化を測定し判定する。この場合、0.3秒後における表面電位の最大値が300Vより大きく、好ましくは400Vより大きくなるように、粒子構成材料を選択、作製することが望ましい。なお、上記表面電位の測定は、例えば図4R>4に示した装置(QEA社製CRT2000)により行なうことが出来る。この装置の場合は、前述したフィルムを表面に配置したロールシャフト両端部をチャック21にて保持し、小型のコロトロン放電器22と表面電位計23とを所定間隔離して併設した計測ユニットを上記ロールシャフトに配置したフィルムの表面と1mmの間隔を持って対向配置し、上記ロールシャフトを静止した状態のまま、上記計測ユニットをロールシャフトの一端から他端まで一定速度で移動させることにより、表面電荷を与えつつその表面電位を測定する方法が好適に採用される。測定環境は温度25±3℃、湿度55±5RH%とする。
【0025】本発明の画像表示装置における粒子には、上記の樹脂構造を持つ粒子とは異なる他粒子を含むことができる。この他粒子は、例えば樹脂、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等から選択することができる。樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフイン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられ、特に基板との付着力を制御する上から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。2種以上混合することもできる。
【0026】荷電制御剤としては、特に制限はないが、正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフエニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。また、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、弗素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0027】着色剤としては、以下に例示すような、有機又は無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などがある。黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルフアストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどがある。橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKなどがある。
【0028】赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレツド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどがある。紫色顔料としては、マンガン紫、フアストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどがある。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどがある。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどがある。
【0029】体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどがある。更に、塩基性、酸性、分散、直接染料などの各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどがある。これらの着色剤は、単独で或いは複数組合せて用いることができる。
【0030】本発明の画像表示装置における透明基板と対向基板の間隔は、粒子が飛翔移動でき、コントラストを維持できれば良いが、通常10〜5000μm、好ましくは30〜500μmに調整される。粒子充填量は、基板間の空間体積に対して、10〜80%、好ましくは20〜70%を占める体積になるように充填するのが良い。
【0031】本発明の画像表示粒子および画像表示装置は、ノートパソコン、PDA、携帯電話などのモバイル機器の画像表示部、電子ブック、電子新聞などの電子ペーパー、看板、ポスター、黒板などの掲示板、コピー機、プリンター用紙代替のリライタブルペーパー、電卓、家電製品の画像表示部、ポイントカードなどのカード画像表示部などに用いられる。
【0032】
【実施例】次に実施例を示して、本発明を更に具体的に説明する。但し本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0033】実施例1正帯電粒子とする画像表示粒子は、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを加えた水系乳化液中に、ターシャリーブチルメタクリレートモノマー80質量部とメタクリル酸2−(ジアチルアミノ)エチルモノマー20質量部に、カップリング剤処理して親油性とした酸化チタン20質量部を分散させて得た混合モノマー液をホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)を用いて乳化分散させて、ここに重合開始剤として過硫酸カリウムを加えて乳化重合を行い、ポリマー微粒子を調製した後に、凝集剤として22重量%塩化ナトリウム水溶液を添加してポリマー微粒子を会合する方法で作製した。得られた粒子は球形で白色で、粒子の粒径は5〜10μmであり、帯電量は+41μC/gであった。また、得られた粒子を、その表面がコロナ放電器から1mmの位置において、コロナ放電器に8kVの電圧を印加してコロナ放電を発生させて粒子表面を帯電させ、0.3秒後における表面電位の最大値を測定したところ、400Vであった。粒子の樹脂成分のガラス転移点温度(Tg)は91℃であった。
【0034】負帯電粒子とする画像表示粒子は、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを加えた水系乳化液中に、スチレンモノマー100質量部に負帯電の荷電制御剤として含金属アゾ系化合物(ボントロンS34:オリエント化学(株)製 商品名)5質量部を溶かし込み、さらに黒色顔料としてカーボンブラック(MA100:三菱化学(株)製 商品名)3質量部を分散させて得た混合モノマー液をホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)を用いて乳化分散させて、ここに重合開始剤として過硫酸カリウムを加えて乳化重合を行い、ポリマー微粒子を調製した後に、凝集剤として22重量%塩化ナトリウム水溶液を添加してポリマー微粒子を会合する方法で作製した。得られた粒子は球形で黒色で、粒子の粒径は5〜10μmであり、帯電量は−50μC/gであった。また、得られた粒子を、その表面がコロナ放電器から1mmの位置において、コロナ放電器に8kVの電圧を印加してコロナ放電を発生させて粒子表面を帯電させ、0.3秒後における表面電位の最大値を測定したところ、460Vであった。粒子の樹脂成分のガラス転移点温度(Tg)は105℃であった。
【0035】得られた2種類の粒子を等量混合攪拌して摩擦帯電させる方法で粒子を帯電させてから、この混合粒子を、200μmのスペーサーを介して配置し、一方が内側ITO処理されたガラス基板と、もう一方が銅基板であるセル中に空間率70%で充填し、画像表示装置を得た。ITOガラス基板、銅基板それぞれを電源に接続し、ITOガラス基板を低電位に、銅基板を高電位になるように250Vの直流電圧を印加すると、正帯電粒子は低電位極に、負帯電粒子は高電位極にそれぞれ飛翔し、ガラス基板を通して観察される画像表示装置は白色に表示された。次に印加電圧の電位を逆にすると、粒子はそれぞれ逆極に飛翔して、ガラス基板を通して観察される画像表示装置は黒色に表示された。電圧印加に対する応答時間を測定したところ1msec であった。各表示において、電圧印加を停止して1日間放置したが、粒子は基板に付着したままで、表示は保たれていた。また、印加電圧の電位反転を10000回繰り返したが、応答時間に変化は見られなかった。
【0036】
【発明の効果】本発明の画像表示粒子は、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、スチレン系モノマーから選ばれる1種以上を重合してなり、該粒子の内、少なくとも1種以上の粒子が上記モノマーを含む粒子原料を乳化重合および会合によって作製された球形粒子を用いるものであるが この粒子作製方法では、樹脂ペレット粉砕や物理的に粒子の角をとる工程が不要であり、複雑な工程や大きなエネルギーを必要としない。また、該粒子は帯電極性の正負の性格付けが容易で、帯電性の付与が十分に行われ、小さい駆動電圧により飛翔移動が行えるので、応答速度が速く、繰り返し表示に対する耐久性も高い。従って、本発明の画像表示粒子は、乾式画像表示装置に工業的に極めて有利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電画像表示装置における表示方式を示す説明図である。
【図2】本発明の静電画像表示装置における表示方式を示す説明図である。
【図3】本発明の静電画像表示装置の構造を示す説明図である。
【図4】表面電位の測定法を示す説明図である。
【符号の説明】
1、2:基板
3:粒子
4:隔壁
21:チャック
22:コロトロン放電器
23:表面電位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明基板及び対向基板の間に、1種類以上の粒子を封入し、電位の異なる2種類の電極から該粒子に電界を与えて粒子を飛翔移動させ画像を表示する画像表示装置に用いられる画像表示粒子であって、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、スチレン系モノマーから選ばれる1種以上の樹脂成分を乳化重合及び会合して作製されたものであることを特徴とする画像表示粒子。
【請求項2】 粒子が球形である請求項1に記載の画像表示粒子。
【請求項3】 粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)が60℃以上である請求項1又は請求項2に記載の画像表示粒子。
【請求項4】 粒子の平均径が0.1〜50μmである請求項1〜3のいずれかに記載の画像表示粒子。
【請求項5】 粒子の帯電量が絶対値で10〜100μC/gである請求項1〜4のいずれかに記載の画像表示粒子。
【請求項6】 粒子が、その表面と1mmの間隔をもって配置されたコロナ放電器に、8kVの電圧を印加してコロナ放電を発生させて表面を帯電させた場合に、0.3秒後における表面電位の最大値が300Vより大きい粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の画像表示粒子。
【請求項7】 透明基板及び対向基板の間に、1種類以上の粒子を封入し、電位の異なる2種類の電極から該粒子に電界を与えて粒子を飛翔移動させ画像を表示する画像表示装置において、該粒子の中の少なくとも1種類の粒子が、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、スチレン系モノマーから選ばれる1種以上の樹脂成分を乳化重合及び会合して作製された粒子であることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【公開番号】特開2003−315850(P2003−315850A)
【公開日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−125981(P2002−125981)
【出願日】平成14年4月26日(2002.4.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)