説明

画像表示装置、及び画像表示装置における反射鏡の振動状態調整方法

【課題】光源からの出力エネルギーを増大させても、反射鏡の構造に弊害が生じるのを防止でき、その駆動条件に悪影響が及ぶのを防止できるようにする。
【解決手段】ミラー駆動制御部7は、第1LUT保持部19から微小ミラー1の温度変化に係わる過去の履歴データを読み出す。読み出した過去の履歴データに基づき、現時点での微小ミラー1の温度を推定する。推定した微小ミラー1の温度を、現時点での微小ミラー1の温度P tempとする。P tempによって、微小ミラー1の水平(H)方向の振動(揺動)条件、垂直(V)方向の振動(揺動)条件が変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から照射された光を受けて所定方向へ反射させることにより、被投影物体に画像情報を表示する反射鏡を備える画像表示装置、及び画像表示装置における反射鏡の振動状態調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術や、半導体レーザ技術の民生品への応用が試みられている。その一例として、可視光の波長成分から成るレーザ光を光源として画像を描画する画像表示装置への応用が挙げられる(例えば非特許文献1参照)。また、MEMS共振ミラーを備える画像表示装置において、レーザ光を該MEMS共振ミラーによりラスタースキャンして生成する、スクリーンへの投影画像の明度を均一にすることを目的とした提案がなされている。該提案では、RGB3原色の各画素画像データを出力してレーザスキャンを行う際に、水平方向のラスタースキャンの速度変化に対応してレーザ光の発光強度を調整することで、スクリーン上の輝点が均等な明るさになるようにする(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-343397号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Trends in Laser Light Sources for ProjectionDisplay(IDW '06 1939-1942(1939頁、Figure2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、垂直方向及び/又は水平方向に揺動自在に軸支されるMEMS共振ミラーを備える画像表示装置では、光源から照射されMEMS共振ミラーから反射されるレーザビーム光が投射されることによりスクリーン上に形成される画像の、色再現範囲の向上や高輝度化を、比較的低コストで容易に実現することができる。これは、近年における半導体レーザ技術の進歩によって、レーザ光源からの出力エネルギーの増大や、電/光変換効率の向上を図ることが可能になったことと、可視光内の発振波長の選択性の向上を図ることも可能になったことに拠るものである。
【0006】
しかし、反射ミラー(MEMS共振ミラー)におけるレーザビーム光の反射率は、一般に、可視光波長域で概ね90%前後であり、反射されなかった残り10%のレーザビーム光の成分は、MEMS共振ミラーに吸収されて、その殆どがMEMS共振ミラーにおいて熱に変換される。そのため、スクリーン上の投影画像の高輝度化を図るべく、レーザ光源からの出力エネルギーを増大させると、MEMS共振ミラーにおける熱量が増大して、MEMS共振ミラーの温度が上昇し、それによってMEMS共振ミラーの構造に様々な弊害が生じる虞がある。上記に加えて、垂直方向及び/又は水平方向に揺動自在に軸支されるMEMS共振ミラーの揺動条件に悪影響を及ぼす虞もあった。よって、従来の画像表示装置では、レーザ光源からの出力エネルギーを増大させることによってスクリーン上に形成される投影画像の高輝度化を図ることは、事実上困難であった。
【0007】
従って本発明の目的は、1軸方向、又は2軸方向に振動する反射鏡を備える画像表示装置において、投影画像の高輝度化を図るために光源からの出力エネルギーを増大させても、それによって反射鏡の構造に弊害が生じるのを防止でき、反射鏡の駆動条件に悪影響が及ぶのを防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に従う画像表示装置は、光源から照射された光を受けて所定方向へ反射させることにより、被投影物体に画像情報を表示する反射鏡と、上記反射鏡を所定方向に往復振動させる反射鏡振動機構と、上記光源の駆動状態に応じて、上記反射鏡の温度を推定する温度推定部と、上記温度推定部により推定された上記反射鏡の温度に適合するように、上記反射鏡振動機構による反射鏡の振動の状態を調整する振動状態調整部と、を備える。
【0009】
本発明の第1の観点に係る好適な実施形態では、上記反射鏡振動機構が、上記反射鏡を第1の軸方向に往復振動ざせる第1の振動機構と、上記反射鏡を上記第1の軸方向と直交する第2の軸方向に往復振動させる第2の振動機構と、を含む。
【0010】
上記とは別の実施形態では、上記温度推定部が、過去に上記光源から照射された所定時間毎の光量の累積値データに基づき、上記反射ミラーの温度を推定するようにしている。
【0011】
また、上記とは別の実施形態では、上記振動状態調整部が、上記温度推定部により推定された上記反射鏡の温度に見合う振動状態になるよう、上記反射鏡振動機構による上記反射鏡の振動の振幅、振動の周波数、及び振動の位相を適宜可変調整するようにしている。
【0012】
更に、上記とは別の実施形態では、上記振動状態調整部が行う上記反射鏡の振動状態の可変調整が、上記光源から照射され、上記反射鏡を介して反射された光の上記被投影物体における軌跡が、上記被投影物体における上記光の軌跡の理想的な状態に合致するようになされる。
【0013】
本発明の第2の観点に従う画像表示装置は、光源から照射された光を受けて所定方向へ反射させることにより、被投影物体に画像情報を表示する反射鏡と、上記反射鏡を所定方向に往復振動させる反射鏡振動機構と、上記反射鏡を介して上記被投影物体へ入射する光を検知したとき、所定の電気信号を出力する光検知部と、上記光検知部から出力される電気信号に基づき、上記反射鏡の振動状態を把握する振動状態把握部と、上記振動状態把握部により把握された上記反射鏡の振動状態に基づき、上記反射鏡の振動状態が所望の振動状態になるように上記反射鏡振動機構を制御する制御部と、を備える。
【0014】
本発明の第2の観点に係る好適な実施形態では、上記振動状態把握部が、上記光検知部からの電気信号の出力間隔を計測することにより得られる上記反射鏡の振動の振幅、振動の周波数、及び振動の位相を把握するようにしている。
【0015】
上記とは別の実施形態では、上記光検知部が、上記被投影物体における適宜な箇所に配置された、入射した光を所定方向に伝送する光伝送部材と、上記光伝送部材により伝送される光を入力して、所定の電気信号を出力する光/電変換素子と、を含む。
【0016】
また、上記とは別の実施形態では、上記光検知部が、上記被投影物体における適宜な複数の箇所に夫々配置されている。
【0017】
更に、上記とは別の実施形態では、上記光源が、上記反射鏡に向けて赤色光を照射する赤色光源と、上記反射鏡に向けて緑色光を照射する緑色光源と、上記反射鏡に向けて青色光を照射する青色光源と、を含む。
【0018】
本発明の第3の観点に従う画像表示装置における反射鏡の振動状態調整方法は、光源から照射された光を受けて所定方向へ反射させることにより、被投影物体に画像情報を表示する反射鏡と、上記反射鏡を所定方向に往復振動させる反射鏡振動機構と、を備え、上記光源の駆動状態に応じて、上記反射鏡の温度を推定する第1のステップと、上記第1のステップにおいて推定された上記反射鏡の温度に適合するように、上記反射鏡振動機構による反射鏡の振動の状態を調整する第2のステップと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、1軸方向、又は2軸方向に振動する反射鏡を備える画像表示装置において、投影画像の高輝度化を図るために光源からの出力エネルギーを増大させても、それによって反射鏡の構造に弊害が生じるのを防止でき、反射鏡の駆動条件に悪影響が及ぶのを防止できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図。
【図2】図1に記載した画像表示装置において行われるラスタースキャンの態様を示す説明図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図。
【図5】図4で示した受光部材の構成の一例を示す説明図。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図。
【図7】図6で示した画像表示装置を構成する各部の動作を示すタイミングチャート。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図。
【図9】図8で示したR映像信号変換部、G映像信号変換部、及びB映像信号変換部に夫々含まれる光源駆動部の内部構成を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面により詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【0023】
上記画像表示装置は、図1に示すように、MEMS共振ミラー(以下では「微小ミラー」と表記する。)1と、ミラー駆動・保持機構3と、ミラー駆動部5と、ミラー駆動制御部7と、光源9と、ビーム光生成レンズ11と、を備える。上記画像表示装置は、上記各部に加えて、更に、光源駆動制御部13と、光源駆動部15と、光量積算部17と、第1ルックアップテーブル保持部(以下では「第1LUT保持部」と表記する。)19と、RAM21と、アドレス生成部23、をも備える。
【0024】
アドレス生成部23は、第1入力端子25から入力される水平同期信号(以下、「H sync」と表記する。)と、第2入力端子27から入力される垂直同期信号(以下、「V sync」と表記する。)とに基づき、RAM21への書き込みアドレス信号(以下、「W add」と表記する。)を生成する。アドレス生成部23は、第3入力端子29からRAM21に入力されるビデオ信号(以下、「video」と表記する。)の、RAM21における記憶場所を指定すべく、上記生成したW addを、RAM21へ出力する。これにより、上記videoが、上記W addによって指定されたRAM21における記憶場所に格納される。
【0025】
アドレス生成部23は、ミラー駆動制御部7から出力される微小ミラー1の水平方向における振動(揺動)の基準信号である水平方向振動基準信号(以下、「H start」と表記する。)を入力する。アドレス生成部23は、上記H startに基づき、微小ミラー1の垂直方向における振動(揺動)の基準信号である垂直方向振動基準信号(以下、「V start」と表記する。)を生成し、該V startを、ミラー駆動制御部7に出力する。この場合、V startの生成のタイミングを、第2入力端子27からアドレス生成部23へのV syncの入力のタイミングと同期させるようにしても差し支えない。アドレス生成部23は、上記H startの入力タイミング、及び上記V startの生成・出力タイミングと同期させて、表示位置(座標)、即ち、ラスタースキャン中の画像情報の特定の画素(実際にはラスタースキャンを行っている期間内の特定時刻により定義ざれる)を示すレーザダイオードアドレス信号(以下、「LD Address」と表記する。)を生成する。そして、該LD Addressを、光源駆動制御部13に出力する。
【0026】
このLD Addressは、光源9である半導体レーザの駆動(ON/OFF)タイミングと、微小ミラー1の駆動タイミング、即ち、水平方向の振動(揺動)タイミング、垂直方向の振動(揺動)タイミングとを制御するのに必要な信号である。このLD Addressにより、光源駆動制御部13や光源駆動部15を通じて、光源(半導体レーザ)9の駆動(ON/OFF)が制御され、また、ミラー駆動制御部7、及びミラー駆動部5を通じて微小ミラー1の水平方向の振動(揺動)、及び垂直方向の振動(揺動)が制御される。換言すれば、光源9のON/OFF駆動と、微小ミラー1の2軸方向の揺動とにより行われるラスタースキャンによって、原画像情報に係わる投影画像がスクリーン上に形成される。そして、該投影画像における、上記LD Addressに対応する平面座標(X、Y)位置(画素)の輝度が、以下に説明するR AddressによりRAM21から光源駆動制御部13に出力されるLD videoに基づき、調整されることになる。LD Address、R Address、及びLD videoについては、後に詳述する。
【0027】
アドレス生成部23は、上述したLD Addressの生成と共に、上記H startの入力タイミング、及び上記V startの生成・出力タイミングと同期させて、R Addressを生成する。該R Address は、RAM21における上記LD Addressに対応するAddress(記憶場所)に格納されているvideoを読み出すためのアドレス信号である。該R Addressは、アドレス生成部23からRAM21に出力される。
【0028】
RAM21は、第3入力端子29からのvideoと、アドレス生成部23からのW Addressとを入力する。そして、該videoを、RAM21における、W Addressに対応する記憶場所に格納する。RAM21は、アドレス生成部23からのR Addressを入力すると共に、該R Addressに対応する記憶場所に格納されているvideoを、レーザダイオード、即ち、光源9を駆動するための信号であるLD videoとして光源駆動制御部13に出力する。
【0029】
光源駆動制御部13は、アドレス生成部23からのLD Addressと、RAM21からのLD videoとを夫々入力する。そして、該LD addressに見合った増幅率を求めると共に、求めた増幅率で該LD videoを増幅することによって、レーザダイオード、即ち、光源9を駆動するための信号であるLD AMPを生成すると共に、該生成したLD AMPを、光源駆動部15に出力する。
【0030】
光源駆動部15は、光源駆動制御部13から出力される上記LD AMPに基づき、光源9を駆動する。光源駆動部15は、光源駆動制御部13の制御下で、電源から光源9への給電をON/OFFすると共に、電源から光源9への給電がONのとき、上記LD AMPに基づいた増幅率で増幅した電力を、光源9に供給する。光源9に供給される駆動電力は、ラスタースキャンにおいて、水平方向の両端部、及びその近傍をスキャンしているときには、比較的小さくなるように、また、水平方向の中央部、及びその近傍をスキャンしているときには、比較的大きくなるように、光源駆動部15により調整される。また、ラスタースキャンにおいて、例えば、白色や暖色系統のような比較的明るい色の画素領域のスキャンに際しては、光源9に供給される駆動電力が大きくなるように、黒色や寒色系統のような比較的明るい色の画素領域のスキャンに際しては、光源9に供給される駆動電力が小さくなるように、光源駆動部15により調整される。
【0031】
本実施形態では、光源9には、ビーム状の光を照射することが可能で、且つ、光量変調が高速で容易に行えるレーザ光源が用いられる。本発明に係る光源9は、レーザ光源のみに限定されるものでないのは勿論である。レーザ光源に換えて、LED(発光ダイオード)、超高圧水銀ランプ、無電極ランプ等の何れかの光源を、該光源から照射された光をビーム状に集光させるための光学部品や、光量の変調部品と共に用いることとしても差し支えない。光源9は、上述したように、光源駆動制御部13の制御下で、電源から光源9に供給される駆動電力をON/OFFすると共に、該駆動電力がONのときに、該駆動電力を上述した態様で増幅して出力する光源駆動部15により駆動され、レーザ光を生成して出力する。
【0032】
ビーム光生成レンズ11は、光源9から照射されるレーザ光を受けて、レーザビーム光を生成し、該レーザビーム光を、微小ミラーに向けて出射する。
【0033】
光量積算部17は、予め設定されている基準時間内において光源9からビーム光生成レンザ11に向けて照射されるレーザ光の総発光量を求める。例えば、1秒間(基準時間内)に、60フレーム分の画像情報を、ラスタースキャンによりスクリーン上に投影画像として再生するものとすれば、光量積算部17は、光源駆動部15を通じて電源から光源9に供給される各フレーム毎の駆動電力量を、1秒が経過し、60フレーム分のラスタースキャンが完了するまで積算する。この駆動電力量の積算値から光源9の総発光量が算出される。上記積算値データには、各々のフレームに含まれる画素毎の駆動電力量データ、即ち、発光量データが含まれている。光量積算部17は、上記発光量の積算値データを得ると、該発光量データ(駆動電力の積算値データ)のヒストグラムを生成し、そのヒストグラムを、第1LUT保持部19に出力する。
【0034】
第1LUT保持部19は、所定の基準時間が経過する毎に光量積算部17から出力される発光量のヒストグラムを、蓄積する。第1LUT保持部19に蓄積される上記基準時間毎の発光量のヒストグラムが、微小ミラー1における温度分布がどのようになっているか、や微小ミラー1の温度がどのように変化しているかを示す過去の履歴データとなる。第1LUT保持部19は、ミラー駆動制御部7からのデータ読み出し要求に応じて、蓄積している上記過去の履歴データを、ミラー駆動制御部7に出力する。
【0035】
ミラー駆動制御部7は、上述したH startを、アドレス生成部23に出力すると共に、アドレス生成部23から出力される上記V startを入力する。ミラー駆動制御部7は、第1LUT保持部19から、所定の基準時間帯別に格納されている微小ミラー1の温度変化に係わる過去の履歴データを読み出すと共に、該読み出した過去の履歴データに基づき、現時点での微小ミラー1の温度がどのようになっているかを推定する。そして、その推定した微小ミラー1の温度を、現時点での微小ミラー1の温度P tempとする。
【0036】
ここで、微小ミラー1の温度P tempは、各々のフレームに含まれる各画素の明暗に影響されるから、上記温度P tempは、RAM21より光源駆動制御部13に出力される上述したLD videoの変化に連動する。これは、微小ミラー1を構成する材料により、微小ミラー1に入射するレーザビーム光のうちの、反射されずに吸収されたものが熱になるためであり、この微小ミラー1を構成する材料の温度特性によって、微小ミラー1の水平(H)方向の振動(揺動)条件、垂直(V)方向の振動(揺動)条件が変更される。
【0037】
ミラー駆動制御部7は、予め設定されている、微小ミラー1の温度値を所定値に設定するのに必要な水平(H)方向の揺動(振動)条件である複数の揺動(振動)周波数 H Freq、複数の揺動(振動)振幅 H AMP、及び複数の揺動(振動)位相 H phasの中から、上記P tempを得るのに最適なH Freq、H AMP、及びH phasを選択する。これと同時に、ミラー駆動制御部7は、上述したH start、V startに基づき、予め設定されている、微小ミラー1の温度値を所定値に設定するのに必要な垂直(V)方向の揺動(振動)条件である複数の揺動(振動)周波数 V Freq、複数の揺動(振動)振幅 V AMP、及び複数の揺動(振動)位相 V phasの中から、上記P tempを得るのに最適な V Freq、V AMP、及びV phasを選択する。
【0038】
ミラー駆動制御部7は、上述したH Freq、H AMP、H phas、V Freq、V AMP、及びV phasを、ミラー駆動部5に出力する。
【0039】
ミラー駆動部5は、上記H Freq、H AMP、H phas、V Freq、V AMP、及びV phasを、ミラー駆動制御部7から入力すると、これらの信号に基づき、微小ミラー1を水平(H)方向に駆動(揺動)するためのミラー駆動信号であるH drive、及び垂直(V)方向に駆動(揺動)するためのミラー駆動信号であるV driveを、夫々生成する。ミラー駆動部5は、上記ミラー駆動信号H drive、及びV driveを、ミラー駆動・保持機構3に出力する。
【0040】
ミラー駆動・保持機構3は、微小ミラー1を水平(H)方向に揺動自在に保持する水平(H)方向駆動・保持機構3aと、微小ミラー1を垂直(V)方向に揺動自在に保持する垂直(V)方向駆動・保持機構3bと、から構成されている。ミラー駆動・保持機構3において、水平(H)方向駆動・保持機構3aによる微小ミラー1の水平(H)方向への揺動速度は、垂直(V)方向駆動・保持機構3bによる微小ミラー1の垂直(H)方向への揺動速度よりも十分に大きな値になっている。そのため、微小ミラー1のH方向への揺動が幾度か繰り返された後に、V方向への揺動が1回だけ行われることになる。
【0041】
例えば、図1に記載の画像表示装置において、VGA(Video Graphics Array)の(640画素×480ライン)に相当する画像情報を、60Hzの更新速度で表示する(1秒間に60フレーム分の画像情報を表示する。)場合、微小ミラー1のH方向への振動(揺動)数は、15KHz以上になり、V方向への振動(揺動)数は、30Hz以上になる関係が成立する。換言すれば、微小ミラー1のV方向への振動(揺動)の半周期で、微小ミラー1のH方向への振動(揺動)が250回以上発生することになる。以下では、簡単のため、微小ミラー1がV方向へ1回振動(揺動)する間に、H方向へ3回振動(揺動)するものとして説明する。
【0042】
ミラー駆動・保持機構3において、ミラー駆動部5からH driveが出力されると、水平(H)方向駆動・保持機構3aは、該, H driveに基づき、微小ミラー1を水平(H)方向に揺動し、ミラー駆動部5からV driveが出力されると、垂直(V)方向駆動・保持機構3bは、該V driveに基づき、微小ミラー1を垂直(V)方向に揺動する。即ち、ミラー駆動・保持機構3は、ミラー駆動部5から出力されるH drive、及びV driveに応じて、微小ミラー1を2軸方向(即ち、H軸方向、V軸方向)に揺動自在に保持している。
【0043】
微小ミラー1は、主にシリコンを材料として構成されており、既述のように入射したビーム光を全て反射する訳ではない(反射率が100%ではない)。僅かではあるが、入射したビーム光の略10%程度が微小ミラー1に吸収され、それにより微小ミラー1が発熱する。微小ミラー1は、ビーム光生成レンズ11を通じてビーム状に集光された光源9からのレーザ光を受光すると共に、水平(H)方向駆動・保持機構3aにより水平(H)方向に、垂直(V)方向駆動・保持機構3bにより垂直(V)方向に、夫々揺動される。
【0044】
これにより、微小ミラー1から反射されるレーザビーム光は、スクリーン上の符号31で示す画像情報の表示領域に照射され、破線33で示すような軌跡でラスタースキャンが行われる。なお、表示領域31の縦方向の辺に平行な軸には、微小ミラー1の垂直(V)方向の振動(揺動)に係わる時間tv(v0、v1、v2、v3、v4、v5)が、表示領域31の横方向の辺に平行な軸には、微小ミラー1の水平(H)方向の振動(揺動)に係わる時間th(h0、h1、h2、h3、h4)が、夫々プロットされている。上記レーザビーム光のラスタースキャンの軌跡33は、上記表示領域31における縦方向に沿う中心線h2の上端寄りの位置を開始点として、軸thに平行な線分v0と軸tvに平行な線分h4との交点(tv、th)=(v0、h4)、及び軸thに平行な線分v1と軸tvに平行な線分h0との交点(tv、th)=(v1、h0)を通る。上記ラスタースキャンの軌跡33は、軸thに平行な線分v2と線分h4との交点(tv、th)=(v2、h4)、軸thに平行な線分v3と線分h0との交点(tv、th)=(v3、h0)、及び軸thと平行な線分v4と線分h4との交点(tv、th)=(v4、h4)をも通る。上記ラスタースキャンの軌跡33は、更に、軸thと平行な線分v5と線分h0との交点(tv、th)=(v5、h0)、及び上記表示領域31の下端側の辺と中心線h2との交点をも通る。
【0045】
即ち、上述したラスタースキャンでは、微小ミラー1のV方向への振動(揺動)の半周期で、微小ミラー1のH方向への振動(揺動)が3回発生することになる。
【0046】
図2は、図1に記載の画像表示装置において行われるラスタースキャンの態様を示す説明図である。
【0047】
図2において、図2(a)で示す状態1は、ラスタースキャンの理想状態を示すもので、図1において示したように、中心線h2の上端寄りの位置をラスタースキャンの開始点として、交点(tv、th)=(v0、h4)、交点(tv、th)=(v1、h0)、交点(tv、th)=(v2、h4)、交点(tv、th)=(v3、h0)、交点(tv、th)=(v4、h4)、及び交点(tv、th)=(v5、h0)を経て、表示領域31の下端側の辺と中心線h2との交点に達する。
【0048】
ミラー駆動制御部7において設定される、上述した各々のミラー駆動(揺動)条件であるH AMP、H Freq、H phas、V AMP、V Freq、及びV phasが固定された状態で、微小ミラー1に入射するレーザビーム光の量が変動し、それによって微小ミラー1の温度P tempが変化すると、適確なラスタースキャンが行えなくなる可能性が生じる。図2(b)で示す状態2は、ラスタースキャンの軌跡33が、交点(tv、th)=(v0、h4)、交点(tv、th)=(v2、h4)、及び交点(tv、th)=(v4、h4)に到達せずに、ラスタースキャンの開始点である中心線h2の上端寄りの位置から表示領域31の下端側の辺と中心線h2との交点に達している。また、図2(c)で示す状態3は、図2(b)で示した状態2において到達しなかった上記各交点に加えて、更に、交点(tv、th)=(v1、h0)、交点(tv、th)=(v3、h0)、及び交点(tv、th)=(v5、h0)にも到達せずに、ラスタースキャンの開始点である中心線h2の上端寄りの位置から表示領域31の下端側の辺と中心線h2との交点に達している。
【0049】
即ち、状態2、及び状態3は、何れも水平(H)方向における振動(揺動)の振幅が不足していることを示している。
【0050】
次に、図2(d)で示す状態4は、ラスタースキャン33の軌跡が、上述した交点(tv、th)=(v0、h4)、交点(tv、th)=(v1、h0)、交点(tv、th)=(v2、h4)、交点(tv、th)=(v3、h0)、交点(tv、th)=(v4、h4)、及び交点(tv、th)=(v5、h0)を大きく超えて、ラスタースキャンの開始点である中心線h2の上端寄りの位置から表示領域31の下端側の辺と中心線h2との交点に達している。
【0051】
即ち、状態4は、微小ミラー1の水平(H)方向における振動(揺動)の振幅が過大であることを示している。
【0052】
次に、図2(e)で示す状態5は、ラスタースキャン33の軌跡が、ラスタースキャンの開始点である中心線h2の上端寄りの位置から線分v0と交わる位置までの間の時間領域と、線分v0と交わる位置から線分v1と交わるまでの間の時間領域と、においては、微小ミラー1の水平(H)方向における振動(揺動)の振幅が過大であるため、本来であれば交わるべき交点(tv、th)=(v0、h4)、及び交点(tv、th)=(v1、h0)を大きく超えている。また、ラスタースキャンの軌跡33が、線分v4と交わる位置から線分v5と交わる位置までの時間領域においては、微小ミラー1の水平(H)方向における振動(揺動)の振幅が不足しているため、本来であれば交わるべき交点(tv、th)=(v4、h4)、及び交点(tv、th)=(v5、h0)には大幅に達していない。微小ミラー1の水平(H)方向における振動(揺動)の振幅が適正値であるのは、ラスタースキャンの軌跡33が、線分v2と交わる位置から線分v3と交わる位置までの間の時間領域のみである。
【0053】
次に、図2(f)で示す状態6は、ラスタースキャン33の軌跡が、ラスタースキャンの開始点である中心線h2の上端寄りの位置から線分v0と交わる位置までの間の時間領域と、線分v0と交わる位置から線分v1と交わるまでの間の時間領域と、においては、微小ミラー1の水平(H)方向における振動(揺動)の振幅が不足しているため、本来であれば交わるべき交点(tv、th)=(v0、h4)、及び交点(tv、th)=(v、h0)には大幅に達していない。また、ラスタースキャンの軌跡33が、線分v4と交わる位置から線分v5と交わる位置までの時間領域においては、微小ミラー1の水平(H)方向における振動(揺動)の振幅が過大であるため、本来であれば交わるべき交点(tv、th)=(v、h4)、及び交点(tv、th)=(v、h0)を大きく超えている。微小ミラー1の水平(H)方向における振動(揺動)の振幅が適正値であるのは、ラスタースキャンの軌跡33が、線分v2と交わる位置から線分v3と交わる位置までの間の時間領域のみである。
【0054】
よって、ラスタースキャンの軌跡33が、図2(b)で示す状態2、及び図2(c)で示す状態3の場合には、微小ミラー1の水平(H)方向における振動(揺動)の振幅を増大させることにより、図2(a)で示す状態1に制御すべく、ミラー駆動制御部7は、ミラー駆動部5に出力する揺動(振動)振幅の制御信号であるH AMPを可変調整する。また、ラスタースキャンの軌跡33が、図2(d)で示す状態4の場合には、微小ミラー1の水平(H)方向における振動(揺動)の振幅を減少させることにより、図2(a)で示す状態1に制御すべく、ミラー駆動制御部7は、ミラー駆動部5に出力する揺動(振動)振幅の制御信号であるH AMPを可変調整する。
【0055】
更に、ラスタースキャンの軌跡33が、図2(e)で示す状態5、及び図2(f)で示す状態6の場合には、夫々微小ミラー1の水平(H)方向における振動(振幅)の振幅を適宜増大させたり、減少させたりすることにより、図2(a)で示す状態1に制御すべく、ミラー駆動制御部7は、ミラー駆動部5に出力する振動(揺動)振幅の制御信号であるH
AMPを可変調整する。
【0056】
なお、ミラー駆動制御部7は、上記振動(揺動)振幅の制御信号H AMPの可変調整に代えて、上記振動(揺動)周波数の制御信号であるH Freqを可変調整することにより、微小ミラー1の水平(H)方向における振動(振幅)の振幅の増大/減少を図ることとしてもよい。微小ミラー1の水平(H)方向における振動(揺動)の振幅の増減を、H AMPの可変調整により行うか、H Freqの可変調整により行うかを問わず、これらの可変調整と同期して振動(揺動)位相の制御信号 V phasを可変調整することにより、上述した水平方向振動基準信号であるH startを生成することで、微小ミラー1の水平(H)方向における振動(揺動)の振幅を一定に制御し、且つ、該振幅に見合った光源9の駆動信号であるLD videoに基づくレーザ光が光源9から照射されることになる。
【0057】
なお、図2(g)で示す状態7の場合は、図2(a)で示した状態1の場合と同様、ラスタースキャンの理想状態を示しており、図2(h)で示す状態8の場合は、垂直(V)方向における微小ミラー1の振動(揺動)の振幅が不足していることを示している。次に、図2(i)で示した状態9の場合は、垂直(V)方向における振動(揺動)の振幅が過大であることを示しており、図2(j)で示した状態10の場合は、ラスタースキャンの軌跡33が図の下方に向かうにつれて正弦波の周期が長くなることを示している。次に、図2(k)で示した状態11の場合は、図2(j)で示した状態10の場合とは逆に、ラスタースキャンの軌跡33が図の下方に向かうにつれて正弦波の周期が短くなることを示している。
【0058】
更に、図2(l)で示した状態12の場合は、図2(f)で示した状態6に類似した状態と、図2(k)で示した状態11とを組み合わせた状態を示しており、水平(H)方向にも、垂直(V)方向にも、微小ミラー1の振動(揺動)の振幅が変化することを示している。
【0059】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、微小ミラー1の温度と、微小ミラー1が取り得る水平(H)方向の振動(揺動)の振幅との間に相関関係がある場合に、光源9からのレーザ光の発光量に基づいて微小ミラー1の温度を設定すると共に、微小ミラー1の温度が該温度設定値になるよう、H AMP、又は、H Freqを可変調整することで、ラスタースキャンの軌跡33を、図2(a)で示した状態1になるよう制御し、それにより、元画像情報を、スクリーン上の表示領域に安定的に投影表示することができる。
【0060】
上述した本発明の第1の実施形態では、微小ミラー1の温度に応じてミラー駆動制御部7により設定される微小ミラー1の駆動(揺動)条件(H AMP、H Freq、H phas、V AMP、V Freq、及びV phas等)の最適化を図ることとしたが、微小ミラー1を強制冷却することにより、微小ミラー1の温度を制御するようにして、微小ミラー1の駆動を安定化させてもよい。また、H AMPや、H Freqを可変調整せずに、Ld videoに基づくレーザビーム光の照射開始の位相を可変させることで、対応してもよい。
【0061】
なお、V Freqを固定として、H Freqを可変調整するに際し、同期の乱れが生じるが、垂直(V)方向の振動(揺動)において、振動(揺動)方向が反転する間、水平(H)方向の振動(揺動)を停止させ、垂直(V)方向の振動(揺動)が開始する時点に同期して、再度水平(H)方向の振動を開始させることにより、垂直(V)方向の振動と、水平(H)方向の振動との同期を図るようにしてもよい。更には、H Freq、H AMP、H phasを可変調整するに際し、ラスタースキャンを行いながら、各々の画素を通過する時間が異なる場合には、各々の画素毎の積算光量が一定になるよう、光源9から出力されるレーザ光の強度を増減するようにしてもよい。
【0062】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【0063】
図3で示す画像表示装置は、図1で示した構成から光量積算部17、及び第1LUT保持部19を除去すると共に、新たに温度検出部35、検出温度値積算部37、及び第2ルックアップテーブル保持部(以下では「第2LUT保持部」と表記する。)39と、を付加した点で、図1で示した(本発明の第1の実施形態に係る)画像表示装置と相違する。その他の構成については、図1で示した構成と同一であるので、図3において、図1で示した物と同一物には同一符号を付して、それらの詳細な説明を省略する。
【0064】
図3において、温度検出部35は、微小ミラー1の近傍に配置されており、微小ミラー1の温度を検出して、検出した温度値に応じた電気信号を検出温度値積算部37に出力する。検出温度値積算部37は、温度検出部35から出力される温度検出信号を入力し、予め設定されている基準時間内における微小ミラー1の温度値の累積値データを求める。例えば、1秒間(基準時間内)に、60フレーム分の画像情報を、ラスタースキャンによりスクリーン上に投影画像として再生するものとすれば、検出温度値積算部37は、温度検出部35から出力される各フレーム毎の検出温度値を、1秒が経過し、60フレーム分のラスタースキャンが完了するまで積算する。
【0065】
この検出温度値の積算データには、各々のフレームに含まれる画素毎の検出温度値の積算データが含まれている。検出温度値積算部37は、上記検出温度値の積算データを得ると、該積算データのヒストグラムを生成し、そのヒストグラムを、第2LUT保持部39に出力する。
【0066】
第2LUT保持部39は、所定の基準時間が経過する毎に検出温度値積算部37から出力される上記積算データのヒストグラムを、蓄積する。第2LUT保持部39に蓄積される上記基準時間毎の積算データのヒストグラムが、微小ミラー1における温度分布がどのようになっているか、や微小ミラー1の温度がどのように変化しているかを示す過去の履歴データとなる。第2LUT保持部39は、ミラー駆動制御部7からのデータ読み出し要求に応じて、蓄積している上記過去の履歴データを、ミラー駆動制御部7に出力する。なお、ミラー駆動制御部7は、図1で示した本発明の第1の実施形態におけると同様の処理手順で、既述のような微小ミラー1の駆動(揺動)条件を設定する。
【0067】
よって、本実施形態においても、微小ミラー1の振動(揺動)によるラスタースキャンの軌跡33を、図2(a)で示すラスタースキャンの理想状態に近づけるよう、制御することが可能になる。
【0068】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、微小ミラー1の温度変化を適確に把握することができると共に、検知した微小ミラー1の温度変化に適した駆動(揺動)条件を定めて、微小ミラー1を等振動周波数や等振動振幅量や等振動位相となる安定状態で駆動(揺動)させることが可能になる。
【0069】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【0070】
図4で示す画像表示装置は、図1で示した構成に加えて、新たに、受光部材41と、光/電変換素子43と、状態検出部45と、比較部47と、を備える点で、図1で示した(本発明の第1の実施形態に係る)画像表示装置と相違する。その他の構成については、図1で示した構成と同一であるので、図4において、図1で示した物と同一物には同一符号を付して、それらの詳細な説明を省略する。
【0071】
図4において、受光部材41は、ライン状の部材である。
受光部材41は、微小ミラー1からの反射光が照射(投射)し得る領域の少なくとも一部であって、上記表示領域31を遮らず、且つ、ラスタースキャンの軌跡33が(図2(a)で示したような)理想状態にある場合の、水平(H)方向の振動(揺動)の一方の端の位置に、図4における軸tvに沿って配置される。なお、軸tvは、既述のように、微小ミラー1の垂直(V)方向における振動(振幅)の方向を示す。受光部材41は、微小ミラー1からの反射光を受光すると共に、受光した反射光を特定方向に反射、若しくは屈折させる。受光部材41については、更に詳述する。
【0072】
光/電変換素子43は、受光部材41から反射、若しくは屈折された光を受光する位置に設置されている。光/電変換素子43は、ラスタースキャンの軌跡33において、上述した水平(H)方向の振動(揺動)が、図4で示すように受光部材41の配置位置と交わるタイミングで、上記受光部材41から反射、若しくは屈折された光を受光する。そして、該受光した光に起因した起電力を生じ、該起電力により所定の電気信号PD1を状態検出部45に出力する。換言すれば、光/電変換素子43は、上述した水平(H)方向の振動(揺動)が、受光部材41と交わるタイミングで、間欠的に上記電気信号PD1を状態検出部45に出力することになる。
【0073】
状態検出部45は、光/電変換素子43からの電気信号PD1を入力して、該電気信号PD1に基づき、微小ミラー1の動作状態を検出する。即ち、状態検出部45は、光/電変換素子43から間欠的に出力される上記電気信号PD1の出力タイミングの間隔を計測することにより、微小ミラー1の動作状態を示す振動(揺動)周波数データ、振動(揺動)振幅データ、及び振動(揺動)位相データを取得する。状態検出部45は、上記取得した振動(揺動)周波数データ、振動(揺動)振幅データ、及び振動(揺動)位相データを含む信号LD outを、比較部47に出力する。
【0074】
比較部47は、状態検出部45から出力される上記信号LD outと、アドレス生成部23から出力される上述した信号LD Addressと、を入力する。既述のように、アドレス生成部23から出力される信号LD Addressは、光源9である半導体レーザの駆動(ON/OFF)タイミングと、微小ミラー1の駆動タイミング、即ち、水平方向の振動(揺動)タイミング、垂直方向の振動(揺動)タイミングとを制御するのに必要な信号である。該信号LD Addressから、微小ミラー1の適正な駆動(揺動)条件であるH Freq、H AMP、及びH phasを把握することが可能である。
【0075】
比較部47は、上記信号LD outと、上記信号LD Addressとを比較し、該比較結果をミラー駆動制御部7に出力する。ミラー駆動制御部7は、比較部47から出力される上記比較結果に基づいて、ミラー駆動部5に出力する、微小ミラー1の駆動(揺動)条件であるH Freq、H AMP、H phas、V AMP、V Freq、及びV phasを、再度可変調整する。
【0076】
図5は、図4で示した受光部材41の構成の一例を示す説明図である。
【0077】
図5に示すように、受光部材41は、全体として略直方体形状を呈する光ファイバによって構成されている。即ち、受光部材41は、微小ミラー1からの反射光を受光する受光面が、平面で矩形状を呈していると共に、内部が光の透過・拡散体と、鏡面とのハーフミラー構造になっている。
【0078】
なお、上述したラスタースキャンの軌跡33が、受光部材41を通ることで、状態検出部45は、受光部材41、及び光/電変換素子43を通じて微小ミラー1の動作状態を示す振動(揺動)周波数データ、振動(揺動)振幅データ、及び振動(揺動)位相データとして、水平(H)方向の振動(揺動)状態を示すH Freq、H AMP、及びH phasに加えて、垂直(V)方向の振動(揺動)状態を示すV AMP、V Freq、及びV phasをも取得する。
【0079】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態によれば、微小ミラー1からの反射光(ラスタースキャンの軌跡)(33)が、受光部材41と交わるタイミングが、ミラー駆動制御部7において設定される適正な振動(揺動)周波数、適正な振動(揺動)振幅、及び適正な振動(揺動)位相になるよう、微小ミラー1の駆動(揺動)条件を可変調整することにより、微小ミラー1の温度に適した駆動(揺動)条件で、微小ミラー1を安定的に駆動(揺動)させることが可能になる。
【0080】
また、上述したラスタースキャンの軌跡33が、受光部材41上で振動(揺動)方向を変更しながら受光部材41の長尺方向に沿って移動する場合においても、状態検出部45が、上記振動(揺動)方向の変更を、受光部材41、及び光/電変換素子43を通じて検出することができるから、ラスタースキャンの軌跡33における振動(揺動)方向が変更され得る受光部材41上の複数の位置に、夫々光/電変換素子43を配置する必要がないので、部品コストの低減を図ることが容易である。
【0081】
本発明の第3の実施形態では、受光部材41が、微小ミラー1からの反射光が照射(投射)し得る領域の少なくとも一部に配置されるものとして説明したが、受光部材41の配置の態様は、上記態様にのみ限定されるものでないのは勿論である。受光部材41の配置箇所が表示領域31外であったとしても、上記配置の態様におけると同等の検出結果が得られるような配置の態様で上記受光部材41を配置するのであれば、問題はない。
【0082】
図6は、本発明の第4の実施形態に係る画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【0083】
図6で示す画像表示装置は、図4で示した受光部材41、及び光/電変換素子43が、図4で示した配置位置に加えて、該配置位置と表示領域31の中心線h2を中心として対称になる位置にも配置されており、状態検出部45が、図6の左側の光/電変換素子43から出力される電気信号PD1と、図6の右側の光/電変換素子43から出力される電気信号PD2とに基づいて、微小ミラー1の動作状態を検出するようにした点で、図4で示した画像表示装置と構成が相違する。その他の構成については、図4で示した構成と同一であるので、図6において、図4で示した物と同一物には同一符号を付して、それらの詳細な説明を省略する。
【0084】
上記構成において、状態検出部45は、光/電変換素子43、43から夫々間欠的に出力される上記2つの電気信号PD1、PD2の出力タイミングの間隔を計測すると共に、上記電気信号の出力の有無をも検出することにより、微小ミラー1の動作状態を示す振動(揺動)周波数データ、振動(揺動)振幅データ、及び振動(揺動)位相データを取得し、上記取得した振動(揺動)周波数データ、振動(揺動)振幅データ、及び振動(揺動)位相データを含む信号LD outを、比較部47に出力する。比較部47では、上記信号LD outと、上記信号LD Addressとを比較し、該比較結果をミラー駆動制御部7に出力する。以後の処理手順については、図4にて説明した内容と略同一であるので、説明を省略する。
【0085】
図7は、図6で示した画像表示装置を構成する各部の動作を示すタイミングチャートである。
【0086】
図7において、図7(a)は、ミラー駆動制御部7からアドレス生成部23に出力される振動水平方向振動基準信号、即ち、H start信号の波形を、図7(b)は、アドレス生成部23から比較部47に出力されるレーザダイオードアドレス信号、即ち、LD Address信号の波形を、夫々示す。次に、図7(c)は、ミラー駆動部5からミラー駆動・保持機構3の水平(H)方向駆動・保持機構3aに出力されるH drive信号(即ち、微小ミラー1を水平(H)方向に駆動(揺動)するためのミラー駆動信号)の波形を示す。
【0087】
次に、図7(d)は、ラスタースキャンの軌跡33が、例えば図2(a)において状態1で示したような理想状態にあるときの微小ミラー1の水平(H)方向の振動(揺動)の波形を、図7(e)は、ラスタースキャンの軌跡33が状態1であるときの一方の光/電変換素子43から状態検出部45に出力される電気信号PD1の波形を、夫々示す。次に、図7(f)は、ラスタースキャンの軌跡33が状態1であるときの他方の光/電変換素子43から状態検出部45に出力される電気信号PD2の波形を、図7(g)は、ラスタースキャンの軌跡33が状態1であるときの状態検出部45から比較部47に出力されるLD out信号の波形を、夫々示す。
【0088】
次に、図7(h)は、ラスタースキャンの軌跡33が、例えば図2(b)で示す状態2であるときの微小ミラー1の水平(H)方向の振動(揺動)の波形を、図7(i)は、ラスタースキャンの軌跡33が状態2であるときの一方の光/電変換素子43から状態検出部45に出力される電気信号PD1の波形を、夫々示す。次に、図7(j)は、ラスタースキャンの軌跡33が状態2であるときの他方の光/電変換素子43から状態検出部45に出力される電気信号PD2の波形を、図7(k)は、ラスタースキャンの軌跡33が状態2であるときの状態検出部45から比較部47に出力されるLD out信号の波形を、夫々示す。
【0089】
次に、図7(l)は、ラスタースキャンの軌跡33が、例えば図2(c)で示す状態3であるときの微小ミラー1の水平(H)方向の振動(揺動)の波形を、図7(m)は、ラスタースキャンの軌跡33が状態3であるときの一方の光/電変換素子43から状態検出部45に出力される電気信号PD1の波形を、夫々示す。次に、図7(n)は、ラスタースキャンの軌跡33が状態3であるときの他方の光/電変換素子43から状態検出部45に出力される電気信号PD2の波形を、図7(o)は、ラスタースキャンの軌跡33が状態3であるときの状態検出部45から比較部47に出力されるLD out信号の波形を、夫々示す。
【0090】
図7に示すように、H start信号は、ラスタースキャンの軌跡33の水平(H)方向の振動(揺動)が、表示領域31の一方の端部に到達した時間を示すh0と、表示領域31の他方の端部に到達した時間を示すh4とにおいて、夫々1発ずつミラー駆動制御部7からアドレス生成部23に出力される。換言すれば、H start信号は、ラスタースキャンの軌跡33の水平(H)方向の振動(揺動)の半周期毎に、ミラー駆動制御部7からアドレス生成部23に出力される。図7では、H start 信号の立ち上がりから次のH start 信号の立ち上がりまでの時間を1Hで表している。
【0091】
LD Address信号は、H start 信号の立ち上がりから一定の時間遅れを経て立ち上がる。図7において、第1発目のLD Address 信号が立ち上がるのは、第1発目のH start 信号が立ち上がる時間h4で示される位置から後の、時間h3で示される位置である。この第1発目のLD Address信号が立ち下がるのは、時間h3から後の時間h1で示される位置である。次に、第2発目のLD Address 信号が立ち上がるのは、第2発目のH start 信号が立ち上がる時間h0で示される位置から後の、時間h1で示される位置であり、この第2発目のLD Address信号が立ち下がるのは、時間h1から後の時間h3で示される位置である。次に、第3発目のLD Address 信号が立ち上がるのは、第3発目のH start 信号が立ち上がる時間h4で示される位置から後の、時間h3で示される位置であり、この第3発目のLD Address信号が立ち下がるのは、時間h3から後の時間h1で示される位置である。
【0092】
次に、第4発目のLD Address 信号が立ち上がるのは、第4発目のH start 信号が立ち上がる時間h0で示される位置から後の、時間h1で示される位置であり、この第4発目のLD Address信号が立ち下がるのは、時間h1から後の時間h3で示される位置である。更に、第5発目のLD Address 信号が立ち上がるのは、第5発目のH start 信号が立ち上がる時間h4で示される位置から後の、時間h3で示される位置である。H drive信号は、第1発目のH start信号の立ち上がりから第3発目のH start信号の立ち上がりまでの間、第3発目のH start信号の立ち上がりから第5発目のH start信号の立ち上がりまでの間を、夫々1周期とする正弦波の信号である。
【0093】
図7(d)で示す微小ミラー1の水平(H)方向の振動(揺動)の波形は、図から明らかなように、H drive信号と同様に正弦波で示され、その周期も、H drive信号の周期と略同一である。上記水平(H)方向の振動(揺動)の波形は、時間h2から時間h4までの分、H drive信号と位相がずれている。図7(e)において、第1発目のPD1信号は、第1発目のLD Address信号が立ち下がる時間h1で立ち上がり、第2発目のPD1信号は、第2発目のLD Address信号が立ち上がる時間h1で立ち下がる。第3発目のPD1信号は、第3発目のLD Address信号が立ち下がる時間h1で立ち上がり、第4発目のPD1信号は、第4発目のLD Address信号が立ち上がる時間h1で立ち下がる。
【0094】
図7(f)において、第1発目のPD2信号は、第1発目のLD Address信号が立ち上がる時間h3で立ち下がり、第2発目のPD2信号は、第2発目のLD Address信号が立ち下がる時間h3で立ち上がる。第3発目のPD2信号は、第3発目のLD Address信号が立ち上がる時間h3でたち下がり、第4発目のPD2信号は、第4発目のLD Address信号が立ち下がる時間h3で立ち上がる。第5発目のPD2信号は、第5発目のLD Address信号が立ち上がる時間h3で立ち下がる。図7(g)において、第1発目のLD out信号は、第1発目のLD Address信号と、第2発目のLD out信号は、第2発目のLD Address信号と、第3発目のLD out信号は、第3発目のLD Address信号と、第4発目のLD out信号は、第4発目のLD Address信号と、第5発目のLD out信号は、第5発目のLD Address信号と、夫々同期している。
【0095】
図7(h)で示す微小ミラー1の水平(H)方向の振動(揺動)の波形も、図7(d)で示す微小ミラー1の水平(H)方向の振動(揺動)の波形と同様、正弦波であるが、振幅の最大値が、図7(d)で示した振動(揺動)の波形のそれよりも、やや小さくなっている。位相については、図7(d)で示した振動(揺動)の波形のそれと略同一である。PD1信号については、何れも時間h0で立ち下がるようになっており、また、PD2信号については、何れも時間h4で立ち下がるようになっている。更に、LD out信号については、第1発目、第3発目、第5発目のLD out信号が、夫々時間h4で立ち上がり、時間h0で立ち下がるようになっており、また、第2発目、第4発目のLD out信号が、夫々時間h4で立ち上がり、時間h0で立ち下がるようになっている。
【0096】
図7(l)で示す微小ミラー1の水平(H)方向の振動(揺動)の波形も、図7(d)、図7(h)で示す微小ミラー1の水平(H)方向の振動(揺動)の波形と同様、正弦波であるが、振幅の最大値が、図7(d)で示した振動(揺動)の波形のそれよりも、相当に小さくなっている。位相については、図7(d)、図7(h)で示した振動(揺動)の波形のそれと略同一である。PD1信号、PD2信号、及びLD out信号については、何れも出力されていない。
【0097】
以上説明したように、本発明の第4の実施形態によれば、上述した本発明の第3の実施形態におけるよりも、より一層適正な振動(揺動)周波数、適正な振動(揺動)振幅、及び適正な振動(揺動)位相になるよう、微小ミラー1の駆動(揺動)条件を可変調整することが可能になり、それにより、より精度の高い、微小ミラー1の駆動(揺動)条件を設定して、微小ミラー1を安定的に駆動(揺動)させることが可能になる。
【0098】
図8は、本発明の第5の実施形態に係る画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【0099】
図8で示す画像表示装置は、光源、及びビーム光生成レンズが、図4において符号9で示した光源、及び符号11で示したビーム光生成レンズに加えて、符号57で示した光源、及び符号59で示したビーム光生成レンズ、符号61で示した光源、及び符号63で示したビーム光生成レンズが備えられている点で、図4で示した画像表示装置と構成が相違する。図8では、光源9が青色(B)のレーザ光を照射するための光源として、ビーム光生成レンズ11が光源9から照射された青色のレーザ光を受けて、青色のレーザビーム光を生成し、該青色のレーザビーム光を微小ミラー1に向けて出射するビーム光生成レンズとして用いられる。また、光源57は緑色(G)のレーザ光を照射するための光源として、ビーム光生成レンズ59は光源57から照射された緑色のレーザ光を受けて、緑色のレーザビーム光を生成し、該緑色のレーザビーム光を微小ミラー1に向けて出射するビーム光生成レンズとして用いられる。更に、光源61は赤色(R)のレーザ光を照射するための光源として、ビーム光生成レンズ63は光源61から照射された赤色のレーザ光を受けて、赤色のレーザビーム光を生成し、該赤色のレーザビーム光を微小ミラー1に向けて出射するビーム光生成レンズとして用いられる。
【0100】
また、図8で示す画像表示装置では、上記3つの光源9、57、61に夫々対応させて、3つの映像信号変換部、即ち、R(赤色)映像信号変換部51、G(緑色)映像信号変換部53、及びB(青色)映像信号変換部55が備えられている。これらの映像信号変換部51,53、55は、何れも構成が同一であり、図4で示した光源駆動制御部13、光源駆動部15、光量積算部17、及び第1LUT保持部19を含む。これら各部については、既に詳述しているので、重複する説明を省略する。図7では、R映像信号変換部51が、光源61(赤色のレーザ光を照射する)の駆動を、G映像信号変換部53が、光源57(緑色のレーザ光を照射する)の駆動を、B映像信号変換部55が、光源9(青色のレーザ光を照射する)の駆動を、夫々制御する。なお、上記以外の構成については、図4で示した構成と同一であるので、図8において、図4で示した物と同一物には同一符号を付して、それらの詳細な説明を省略する。
【0101】
上記構成において、R映像信号変換部51は、アドレス生成部23からのLD Addressと、RAM21からのLD videoの一種であるR videoとを夫々入力する。該R videoは、赤色(R)映像信号に係わる明/暗情報(赤色(R)映像信号に係わる画素毎の明るさを示す情報)を含んでいる。R映像信号変換部51は、LD addressに見合った増幅率を求め、その求めた増幅率で該R videoを増幅することによって、光源61を駆動するための信号であるLD AMPを生成すると共に、該生成したLD AMPで、光源61を駆動する。これにより、光源61から照射される赤色のレーザ光の光量が変調される。G映像信号変換部53も、R映像信号変換部51におけると同様に、アドレス生成部23からのLD Addressと、RAM21からのG videoとを夫々入力する。該G videoは、緑色(G)映像信号に係わる明/暗情報(緑色(G)映像信号に係わる画素毎の明るさを示す情報)を含んでいる。G映像信号変換部53は、LD addressに見合った増幅率を求め、その求めた増幅率で該G videoを増幅することによって、光源57を駆動するための信号であるLD AMPを生成すると共に、該生成したLD AMPで、光源57を駆動する。これにより、光源57から照射される緑色のレーザ光の光量が変調される。B映像信号変換部55も、G映像信号変換部53やR映像信号変換部51におけると同様に、アドレス生成部23からのLD Addressと、RAM21からのB videoとを夫々入力する。該B videoは、青色(B)映像信号に係わる明/暗情報(青色(B)映像信号に係わる画素毎の明るさを示す情報)を含んでいる。B映像信号変換部55は、LD addressに見合った増幅率を求め、その求めた増幅率で該B videoを増幅することによって、光源9を駆動するための信号であるLD AMPを生成すると共に、該生成したLD AMPで、光源9を駆動する。これにより、光源9から照射される青色のレーザ光の光量が変調される。
【0102】
R映像信号変換部51、G映像信号変換部53、B映像信号変換部55は、夫々上記処理動作と並行して、微小ミラー1における温度分布がどのようになっているか、や微小ミラー1の温度がどのように変化しているかを示す過去の履歴データとなる、基準時間単位での発光量のヒストグラムを夫々生成し、蓄積する。そして、ミラー駆動制御部7からのデータ読み出し要求に応じて、蓄積している上記過去の履歴データを、ミラー駆動制御部7に出力する。ミラー駆動制御部7は、上記履歴データに基づき、現時点での微小ミラー1の温度がどのようになっているかを推定し、その推定した微小ミラー1の温度を、現時点での微小ミラー1の温度P tempとする。以下の処理手順については、既述のとおりである。
【0103】
図9は、図8で示したR映像信号変換部51、G映像信号変換部53、及びB映像信号変換部55に夫々含まれる光源駆動部15(図1、図3、図4、及び図6で示した)の内部構成を示す機能ブロック図である。
【0104】
上記光源駆動部15は、図9に示すように、4個のPWM(パルス幅変調)回路67、69,71、73と、4個のパルス増幅回路75、77、79、81と、加算器83と、を備える。PWM回路67、69、71、73の入力側は、各々(図1、図3、図4、及び図6で示した)光源駆動制御部13の出力端子65に接続されている。即ち、4個のPWM回路67、69,71、73は、何れも、光源駆動制御部13の出力端子65に対し、並列接続されている。パルス増幅回路75は、PWM回路67の出力側に、パルス増幅回路77は、PWM回路69の出力側に、パルス増幅回路79は、PWM回路71の出力側に、パルス増幅回路81は、PWM回路73の出力側に、夫々接続されている。加算器83の入力側は、パルス増幅回路75、77、79、81の出力側に接続されている。
【0105】
PWM回路67、69、71、73は、出力端子65を通じて光源駆動制御部13から出力される8ビット分の信号LD AMPを、夫々2ビット分ずつ入力し、入力した2ビット分の信号が示す元画像データの各画素毎の明/暗情報に基づき、上記入力した2ビット分の信号に対し、パルス幅変調を施す。(即ち、表示領域31に表示されるべき画像データ中の1画素が表示される時間を示す上記入力した信号LD AMP(パルス信号)のON時間幅(即ち、光源(9、57,61)の発光時間幅)を可変調整する。)これにより、既述の表示領域31に、各画素毎に256階調の範囲内で明るさがランク付けされた元画像データの投影画像が、表示されることになる。
【0106】
パルス増幅回路75、77、79、81は、夫々対応するPWM回路67、69、71、73から出力されるON時間幅が可変調整された後の2ビット分の信号(パルス信号)を入力し、それら2ビット分の(パルス)信号のON時間幅の波形を(パルス)増幅する。そして、該(パルス)増幅した後の信号を、夫々加算器83に出力する。
【0107】
加算器83は、パルス増幅回路75、77、79、81から夫々出力されるパルス増幅が施された後の(パルス)信号を加算する。これにより、元画像データ中の或る画素についての256階調中の特定の1階調を示す光源駆動信号が生成される。加算器83は、該生成された光源駆動信号を、光源(9、57、61)に出力する。
【0108】
以上説明したように、本発明の第5の実施形態によれば、投影画像の高輝度化を図るために光源からの出力エネルギー(即ち、光源からの発光量)を増大させたとしても、ミラー駆動・保持機構3による微小ミラー1の水平(H)方向、及び垂直(V)方向への揺動に対し、表示領域31上に投影画像を表示するための光源(9、57、61)からのレーザ光の照射時期を精度良く同期させることが可能になり、それによって微小ミラー1の構造に弊害が生じるのを防止でき、微小ミラー1の駆動(揺動)条件に悪影響が及ぶのを防止でき、且つ、安定的な画像表示が可能になった。
【0109】
また、光/電変換素子43から間欠的に出力される電気信号PD1に基づき、微小ミラー1が水平(H)方向、及び垂直(V)方向に揺動する毎に、表示領域31上に投影画像の表示が開始されてから表示が終了するまでの時間に対応する表示領域31上の位置を決めることで、微小ミラー1の揺動の幅が変動する状態にあっても、表示領域31における投影画像の表示位置を固定することが容易であり、安定した状態で元画像データの再現が可能になる。
【0110】
また、微小ミラー1を水平(H)方向、及び垂直(V)方向に揺動させた状態で、元画像データを表示領域31に表示するに際し、光源(9、57、61)から照射されるレーザ光の強度をステップ状に調整することが可能であり、精度の良い明/暗階調表示の実現が可能である。また、複数のパルス増幅回路(75、77、79、81)から夫々出力される信号を加算器83において加算することで、回路動作の処理速度を上げること無く、元画像データを構成する各画素の明/暗の度合をより細かく表現するために、階調数の増大を図ることも容易になる。更に、微小ミラー1の揺動方向において互いに隣接する画素同士の間でのレーザビーム光の重なりを、各階調毎に決めることで、各々の画素の精細度(画素の広がり)の制御も容易に行える。
【0111】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 MEMS共振ミラー(微小ミラー)
3 ミラー駆動・保持機構
3a 水平(H)方向駆動・保持機構
3b 垂直(V)方向駆動・保持機構
5 ミラー駆動部
7 ミラー駆動制御部
9 光源
11 ビーム光生成レンズ
13 光源駆動制御部
15 光源駆動部
17 光量積算部
19 第1ルックアップテーブル保持部(第1LUT保持部)
21 RAM
23 アドレス生成部
25 第1入力端子
27 第2入力端子
29 第3入力端子
31 表示領域
33 ラスタースキャンの軌跡
35 温度検出部
37 検出温度値積算部
39 第2ルックアップテーブル保持部(第2LUT保持部)
41 受光部材
43 光/電変換素子
45 状態検出部
47 比較部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射された光を受けて所定方向へ反射させることにより、被投影物体に画像情報を表示する反射鏡と、
前記反射鏡を所定方向に往復振動させる反射鏡振動機構と、
前記光源の駆動状態に応じて、前記反射鏡の温度を推定する温度推定部と、
前記温度推定部により推定された前記反射鏡の温度に適合するように、前記反射鏡振動機構による反射鏡の振動の状態を調整する振動状態調整部と、
を備える画像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像表示装置において、
前記反射鏡振動機構が、前記反射鏡を第1の軸方向に往復振動ざせる第1の振動機構と、前記反射鏡を前記第1の軸方向と直交する第2の軸方向に往復振動させる第2の振動機構と、を含む画像表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像表示装置において、
前記温度推定部が、過去に前記光源から照射された所定時間毎の光量の累積値データに基づき、前記反射ミラーの温度を推定するようにした画像表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像表示装置において、
前記振動状態調整部が、前記温度推定部により推定された前記反射鏡の温度に見合う振動状態になるよう、前記反射鏡振動機構による前記反射鏡の振動の振幅、振動の周波数、及び振動の位相を適宜可変調整するようにした画像表示装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像表示装置において、
前記振動状態調整部が行う前記反射鏡の振動状態の可変調整が、前記光源から照射され、前記反射鏡を介して反射された光の前記被投影物体における軌跡が、前記被投影物体における前記光の軌跡の理想的な状態に合致するようになされる画像表示装置。
【請求項6】
光源から照射された光を受けて所定方向へ反射させることにより、被投影物体に画像情報を表示する反射鏡と、
前記反射鏡を所定方向に往復振動させる反射鏡振動機構と、
前記反射鏡を介して前記被投影物体へ入射する光を検知したとき、所定の電気信号を出力する光検知部と、
前記光検知部から出力される電気信号に基づき、前記反射鏡の振動状態を把握する振動状態把握部と、
前記振動状態把握部により把握された前記反射鏡の振動状態に基づき、前記反射鏡の振動状態が所望の振動状態になるように前記反射鏡振動機構を制御する制御部と、
を備える画像表示装置。
【請求項7】
請求項6記載の画像表示装置において、
前記振動状態把握部が、前記光検知部からの電気信号の出力間隔を計測することにより得られる前記反射鏡の振動の振幅、振動の周波数、及び振動の位相を把握するようにした画像表示装置。
【請求項8】
請求項6記載の画像表示装置において、
前記光検知部が、前記被投影物体における適宜な箇所に配置された、入射した光を所定方向に伝送する光伝送部材と、前記光伝送部材により伝送される光を入力して、所定の電気信号を出力する光/電変換素子と、を含む画像表示装置。
【請求項9】
請求項8記載の画像表示装置において、
前記光検知部が、前記被投影物体における適宜な複数の箇所に夫々配置されている画像表示装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像表示装置において、
前記光源が、前記反射鏡に向けて赤色光を照射する赤色光源と、前記反射鏡に向けて緑色光を照射する緑色光源と、前記反射鏡に向けて青色光を照射する青色光源と、
を含む画像表示装置。
【請求項11】
光源から照射された光を受けて所定方向へ反射させることにより、被投影物体に画像情報を表示する反射鏡と、
前記反射鏡を所定方向に往復振動させる反射鏡振動機構と、
を備え、
前記光源の駆動状態に応じて、前記反射鏡の温度を推定する第1のステップと、
前記第1のステップにおいて推定された前記反射鏡の温度に適合するように、前記反射鏡振動機構による反射鏡の振動の状態を調整する第2のステップと、
を有する画像表示装置における反射鏡の振動状態調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−41289(P2013−41289A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−206293(P2012−206293)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【分割の表示】特願2007−223752(P2007−223752)の分割
【原出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】