説明

画像表示装置、画像表示方法、プログラム

【課題】観察者が視認したいときだけ、観察者が視認すべき画像を表示する。
【解決手段】表示媒体に、第1領域と第2領域とからなる画像を表示する表示手段を有する画像表示装置であって、前記表示手段は、複数色の光を同時に照射すること、または、当該複数色の混合色を照射すること、により、前記第1領域を表示し、前記複数色の光を時分割で照射することにより、前記第2領域を表示し、前記第1領域と前記第2領域とが同色であると観察者に知覚され、前記画像と、当該観察者の前記画像に対する視線とが相対的に移動する結果生じる色割れ現象により、前記第1領域と前記第2領域との境界形状を当該観察者に視認させる画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、画像表示方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の観察者(運転者)に様々な画像を視認させるヘッドアップディスプレイが提案されている。当該ヘッドアップディスプレイとは、車両のフロントウインドウに実風景と重畳するように画像を投影表示して当該画像を観察者に対して視認させる。安全性の観点から、フロンウインドウに投影表示された画像によって、観察者の実風景の観察を妨げてはならない。
【0003】
例えば、特許文献1開示の技術では、フロントウインドウの端か否かで、投影表示させる画像の明瞭さを変化させ、観察者の実風景の視認性を確保している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フロントウインドウの端といえども、観察者にとって重要な車外物体(例えば、人間や、交通標識)が出現する可能性がある。図1に従来の投影表示される画像11と車外物体12との例を示す。図1の例では、画像11は、観察者に対して視認させるべき情報11とベース12からなり、情報11は「!マーク」とする。情報11は、透過性を有さないものとなり、ベース12は透過性を有するものとなる。また、車外物体12は、「PARK」の標識である。
【0005】
図1の例では、観察者は、車外物体12を視認し難い。何故なら、車外物体12(PARKの文字)のエッジを知覚した後に、情報11のエッジが重畳されることで、車外物体12のエッジの知覚が混乱するからである。図1の例の場合には、観察者(運転者)の安全を完全に担保することは出来ない。
【0006】
つまり、従来の技術では、常に、情報11を表示させていることから、観察者にとって、車外物体12の視認について不都合が生じる場合があるという問題があった。
【0007】
本発明では、このような問題点を鑑みて、観察者が視認したいときだけ、観察者が視認すべき画像を表示する画像表示装置、画像表示方法、プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、表示媒体に、第1領域と第2領域とからなる画像を表示する表示手段を有する画像表示装置であって、前記表示手段は、複数色の光を同時に照射すること、または、当該複数色の混合色を照射すること、により、前記第1領域を表示し、前記複数色の光を時分割で照射することにより、前記第2領域を表示し、前記第1領域と前記第2領域とが同色であると観察者に知覚され、前記画像と、当該観察者の前記画像に対する視線とが相対的に移動する結果生じる色割れ現象により、前記第1領域と前記第2領域との境界形状を当該観察者に視認させる画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像表示装置、画像表示方法、プログラムであれば、観察者が視認したいときだけ、観察者が視認すべき画像を表示することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の画像の一例を示した図。
【図2】本実施例の画像表示装置などを示した図。
【図3】本実施例の画像表示装置のハードウェア構成例を示した図。
【図4】本実施例の風景と画像とが重畳されている例を示した図。
【図5】本実施例の画像の一例を示した図。
【図6】本実施例の観察者の視線の一例を示した図。
【図7】本実施例の停止期間画像の一例を示した図。
【図8】本実施例の移動期間画像の一例を示した図。
【図9】本実施例の表示手段の機能構成例を示した図。
【図10】本実施例のパネルの一例を示した図。
【図11】本実施例の各色光の照射のタイミングチャートの一例を示した図。
【図12】本実施例の発光手段の一例を示した図。
【図13】本実施例の発光手段の一例を示した図。
【図14】別の実施形態の各色光の照射のタイミングチャートの一例を示した図。
【図15】別の実施形態の画像の一例を示した図。
【図16】別の実施形態の画像の一例を示した図。
【図17】本実施例の画像表示装置の処理フローの一例を示した図。
【図18】別の実施形態の各色光の照射のタイミングチャートの一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の各実施形態において、機能構成例、処理フローの説明では、同じ処理については、同じ参照番号、同じステップ番号を付加し、重複説明を省略する。
<実施形態1>
本発明の画像表示装置は、様々な状況で用いることが出来るが、本実施形態1では、観察者が乗った移動体に画像表示装置を搭載した場合を説明する。また、移動体とは、例えば、車両であり、観察者とは、例えば、運転者である。
【0012】
図2に、本実施形態1の画像表示装置101や、観察者105などについて示す。図2の例では、画像表示装置101は、表示媒体102に画像を投影して表示する。表示媒体102とは、画像が表示される媒体であり、図2の例では、透過性を有する車両のフロントガラスである。以下では、表示媒体102をフロントガラス102であるとし、観察者を運転者105という場合もある。また、運転者105は、運転者の眼103により、透過性を有するフロントガラス102を通じて、景色104を視認することが出来る。
【0013】
図3に、本実施形態1の画像表示装置101のハードウェア機能構成例を示す。図3に示すように、本実施例の画像表示装置101は、CPU1010、主記憶手段1012、補助記憶手段1014、外部記憶装置I/F手段1016、画像処理手段1020、制御手段1022、入力手段1024、表示手段1026を含む。
【0014】
CPU1010は、主記憶手段1012に記憶されたプログラムを実行し、各手段の制御やデータの演算、加工を行う。
【0015】
主記憶手段1012は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などであり、CPU1010が実行する基本ソフトウェアであるOSやアプリケーションソフトウェアなどのプログラムやデータを記憶又は一時保存する記憶装置である。
【0016】
補助記憶手段1014は、HDD(Hard Disk Drive)などであり、アプリケーションソフトウェアなどに関連するデータを記憶する記憶装置である。外部記憶装置I/F手段1016は、データ伝送路を介して接続された記憶媒体1018(例えば、ICカード、CD,DVD、フラッシュメモリなど)と画像表示装置101とのインタフェース(バス、イーサネット(登録商標)、電話回線、無線など)である。
【0017】
また、記憶媒体1018に、所定のプログラムを格納し、当該プログラムは外部記憶装置I/F手段1016を介して画像表示装置101にインストールされ、インストールされた所定のプログラムは画像表示装置101により実行可能となる。
【0018】
画像処理手段1020は、様々な画像を処理して、後述する表示手段1026に表示させる。制御手段1022は、表示手段1026等の制御を行なう。入力手段1024は様々な情報が入力される。表示手段1026は、フロントガラス102に様々な画像を表示させる。
[画像300について]
図4に、フロントガラス102に表示された本実施例の画像300を示す。図4Aの例では、表示手段1026は、フロントガラス102の全領域のうち、上方左端の領域300aに画像300を投影表示させている。このように、画像300をフロントガラス102の上方に画像300を表示させることで、図4Bに示すように、重要な車外物体203である歩行者と重畳することはない。従って、運転者105は、人物である車外物体203の観察に支障を生じさせることはない。しかし、図4Bに示すように、交通標識である車外物体204と重畳する可能性がある。
【0019】
図5に、本実施形態の画像300の一例を示す。図3の例での画像300は、第1領域301と第2領域302とからなり、透過性がある。第2領域302は、運転者(観察者)105に対して、視認させる領域である。第1領域301とは、画像300の全領域のうち、第2領域302以外の画像である。
【0020】
また、画像とは、文字、図形、記号、パターン、またはこれらのうち少なくとも2つを組み合わせたものである。図5の例では、第2領域302は、「!」マークの形状の領域である。また、第1領域301は、画像300全体の領域から、「!」マークが切り抜かれた領域である。
【0021】
図6に、運転者の眼103の視線205の一例について示す。また、運転者105は、「フロントガラス102の左上の領域300aに、画像表示装置101により画像300が表示されていること」を認識しているとする。一般的に、車両運転中では、運転者105は、図6に示すように、視線205を大きく移動させる。
【0022】
そして、運転者105は、太線で示す視線2052のように、時折、左上に表示されている画像300も視認する。そして、視線2052のように、画像300上を視線205が移動している期間(つまり、運転者105が画像300をチラ見している期間)の画像を「移動期間画像」という。また、運転者105が、画像300を視認しているが、視線205が移動していない場合(つまり、運転者105が視線を変えずに画像300を視認している場合)の画像を「停止期間画像」という。本実施例の画像300は、移動期間画像と停止期間画像とは異なって運転者105には視認される。
【0023】
図7に停止期間画像の一例を示す。図7に示すように、第2領域302と第1領域301とが同色・同明度であると観察者に対して、認識される。また、図7の例では、画像300(つまり、第2領域302と第1領域301の色)は透過性がある。従って、車外物体204と画像300とが重畳された場合でも、運転者106は車外物体204を視認することが出来る。なお、図7では、図面を分かり易くするために、画像300は透過性のある灰色で記載されているが、実際は透過性のある白色である。
【0024】
図8に、移動期間画像の一例を示す。図8の例では、視線205の移動方向が方向αの場合には、第1領域301と第2領域302の境界形状は、色割れ現象(カラーブレーキング現象)が生じる。
【0025】
当該色割れ現象とは、運転者105の視線205の移動によって、運転者105の眼103の網膜上の3色の積分時間比率がずれることで発生する現象である。色割れ現象が生じることにより、図8に示すように、第1領域301と第2領域302の境界形状305(第2領域302の輪郭部分)が色づき、運転者105に対して、境界形状305を視認させることが出来る。
【0026】
図8の例では、当該色割れ現象により、運転者105は、当該方向αに沿って、尾を引くように、赤色の境界形状305R、緑色の境界形状305G、青色の境界形状305Bを視認できる。以下では、各色の境界形状を総称して境界形状305という。
[画像300の表示の手法]
次に、画像300の表示の手法について説明する。表示手段1026は、複数色の光の時分割で照射することで、第2領域302をフロントガラス102に投影表示する。また、表示手段1026は、複数色を同時に照射する、または、複数色の混合色の光を照射することで、第1領域301をフロントガラス102に表示させる。図9に表示手段1026の機能構成例を簡単に示す。図9の例では、表示手段1024は、発光手段10262と、パネル10264を含む。そして、制御手段1022の制御により、発光手段10262を発光させて光を照射し、パネル10264で反射させて、フロントガラス102に画像300を表示させる。
【0027】
図10にパネル10264の概略構成例を示す。図10の例では、パネル10264はDMD(Digital Mirror Device)パネルであるとし、かつ、単板パネルであるとする。図10の例のパネル10264には、複数のマイクロミラー素子10266が2次元的にアレイ配列されている。マイクロミラー素子10266は、発光手段10262から照射された光を反射させる。マイクロミラー素子10266の数は、フロントガラス102に投影表示する画像300の画素数と同数である。
【0028】
制御手段1022の制御により、全てのマイクロミラー素子10266は、その鏡面を第1の方向または第2の方向に向けることが出来る。
【0029】
マイクロミラー素子10266の鏡面が第1の方向を向いている場合には、当該マイクロミラー素子に照射された光は、フロントガラス102に投影させることが出来る。また、マイクロミラー素子10266の鏡面が第2の方向を向いている場合には、当該マイクロミラー素子に照射された光は、フロントガラス102に投影させないようにすることが出来る。このように制御手段1022は、それぞれのマイクロミラー素子の向きを第1の方向または第2の方向に向けることで、所望の画像300をフロントガラス102に投影表示させることが出来る。
【0030】
発光手段10262は、複数色の光、および、複数色の混合色の光を照射することが出来る。この例では、複数色とは、赤色、緑色、青色とする。そして、当該複数色の混合色とは、白色である。
【0031】
図11に、表示手段1026が照射する光のタイミングチャートを示す。図11では、第2領域302を表示するための光の照射と、第1領域301を表示するための光の照射とでは異なる。このように、赤色照射期間、緑色照射期間、青色照射期間、白色照射期間、とを1周期として、複数色の光を照射する。図11の例では、1周期は1/60secとする。そうすると、赤色照射期間、緑色照射期間、青色照射期間、白色照射期間とはそれぞれ1/240secとなる。
【0032】
そして、表示手段1026は、赤色照射期間、緑色照射期間、青色照射期間それぞれにおいて、赤色の光、青色の光、緑色の光を照射することで(つまり、赤色の光、青色の光、緑色の光を時分割で照射することで)、第2領域302を表示させる。また、白色照射期間で白色の光を照射することで、第1領域301を表示させる。
【0033】
このように、表示手段1026は、複数色の光(図11の例では、赤色、青色、緑色)の1つずつを所定間隔で照射することで、第2領域302をフロントガラス102に表示させる。また、表示手段1026は、複数色の混合色(図11の例では白色)を照射することで、第1領域301をフロントガラス102に表示させる。
【0034】
なお、図11において、赤色照射が終了した時から緑色照射が開始する時まで間隔時間tが設けられている。当該間隔時間tを設けずに、赤色光、青色光、緑色光を連続して発光させると、第2領域302の明度が第2画像の明度よりも強くなってしまう場合がある。第2領域302の明度が第2画像の明度よりも強くなると、停止期間画像であっても、第2領域が視認されてしまい、図1のような状態になる。従って、当該間隔時間tを設けることが好ましい。
【0035】
また、図11では、赤色光、青色光、緑色光の照射時間sが全て同じになっているが、停止期間画像の場合に、第2領域302と第1領域301とが同色、同明度になれば、赤色光、青色光、緑色光の照射時間は異なるようにしてもよい。
【0036】
また、図11では、赤色光→緑色光→青色光→白色光の順番で照射しているが、停止期間画像の場合に、第2領域302と第1領域301とが同色、同明度になれば、照射する光の順番を入れ替えても良い。
【0037】
第2領域302については、1/240秒以下という非常に短い周期で、3色光をフロントガラス300に照射させる。従って、運転者105の眼103の網膜上で時間積分されて画像300が停止期間画像である場合には、第2領域302は、混合色(つまり、白色)として視認される。また、第1領域301については、白色光が照射されることで表示されているので、運転者105は、第1領域301は白色であるとして視認する。
【0038】
つまり、図7に示すように、画像300が停止期間画像である場合には、第2領域302および第1領域301は、同じ白色であると視認される。また、図8に示すように、画像300が、移動期間画像である場合(つまり、運転者105が画像300をチラ見した場合)には、境界形状305(図8参照)で色割れ現象が発生して、運転者105に対して、境界形状305を視認させることが出来る。次に、発光手段10262の構成例について2つ説明する。
[第1の発光手段10262の構成例]
図12に第1の発光手段10262の構成例を示す。図12の例では、発光手段10262は、光源701と変換手段702とを含む。ここで、光源701は、白色光を発光するものであるとする。そして、変換手段702は薄板形状であり、カラーホイールとも呼ばれ、赤色フィルタ7021、緑色フィルタ7022、青色フィルタ7023、白色フィルタ7024からなる。
【0039】
制御手段1022(図3参照)の制御により、変換手段702は、軸7025を中心として、所定速度で回転する。そして、光源701は、変換手段702の軸7025以外の箇所に対して、白色光を照射する。そうすると、図11に記載のようなタイムチャートで、パネル10264に対して、各色の光を照射することが出来る。なお、図11のように白色照射期間を他の色の照射期間よりも長くする場合には、白色フィルタ7024に、白色光が当たる期間を長くするように、変換手段7024を回転させればよい。また、図12の例では、画像300を表示し続けている期間は、光源701も発光し続ける。
【0040】
また、図12の例では、光源701を白色光源とし、変換手段7024の各フィルタを赤色フィルタ7021、緑色フィルタ7022、青色フィルタ7023、白色フィルタ7024とした。その他の例として、変換手段702により、赤色光、緑色光、青色光、白色光に変換されるのであれば、光源701の色、各フィルタの色は何でもよい。この第1の発光手段10262を用いた表示手段1026では、当該発光手段10262中の変換手段702により、複数色の光(赤色、緑色、青色)、および、複数色の混合色(白色)の光に変換して、パネル10264に照射する。
[第2の発光手段10262の構成例]
次に、第2の発光手段10262について説明する。図13に、第2の発光手段10262の機能構成例を示す。図13の例では、発光手段10262は、制御手段1022と、複数の光源704、705、706とを含む。複数の光源704、705、706はそれぞれ赤色光、緑色光、青色光を発光する赤色光源704、緑色光源705、青色光源706である。また、制御手段1022は、赤色光源704、緑色光源705、青色光源706それぞれの発光のタイミングを制御することから、発光制御手段1022ともいう。
【0041】
図14に発光制御手段1022の各光源704、705、706の発光のタイミングチャートを示す。図14の例では、赤色照射期間、緑色照射期間、青色照射期間、白色照射期間、とを1周期として、複数色の光を照射する。また、1周期を1/60secとする。そうすると、赤色照射期間、緑色照射期間、青色照射期間、白色照射期間とはそれぞれ1/240secとなる。
【0042】
図14の例では、発光制御手段1022は、赤色照射期間、緑色照射期間、青色照射期間それぞれにおいて、赤色の光、青色の光、緑色の光を1つずつ発光させることで、第2領域302を表示させる。また、発光制御手段1022は、白色照射期間で、赤色光源704、緑色光源705、青色光源706を同時に発光させることで、白色光を照射して第1領域301を表示させる。この第2の発光手段10262を用いた表示手段1026では、複数の光源704、705、706の1つずつの発光により、複数色の光(赤色、緑色、青色)を照射し、複数の光源704、705、706を同時に発光させることで、白色光をパネル10264に照射する。
【0043】
また、赤色光源704、緑色光源705、青色光源706を同時に発光させることで、白色光を照射したが、白色光を発光する白色光源を別個に設けて、白色を照射するようにしてもよい。
【0044】
このように、表示手段1026は、第1の発光手段10262を用いた場合には、複数色(赤色、緑色、青色)の混合色(白色)を照射することにより、第1領域301を表示する。また、表示手段1026は、第2の発光手段10262を用いた場合には、複数色の光を同時に発光することにより、第1領域301を表示する。
【0045】
発光手段10262の例は、これらに限られず、他の手法を用いても良い。
【0046】
また、上記説明では、複数の色を赤色、青色、緑色としたが、「第1画像を表示するために照射する複数の光の色の混合色」=「第2画像を表示するために照射する光の色」となれば、複数の色はどのような色であってもよい。
【0047】
また、図11などで、時分割周期を「1/60sec」としたが、第1領域301と第2領域302とが同色に知覚され、かつ、色割れ現象が生じるのであれば、時分割周期を他の値としてもよい。
【0048】
この実施形態1の画像表示装置であれば、赤色、青色、緑色の光を時分割で照射することで、第2領域302を表示させる。また、赤色、青色、緑色の混合色である白色光を照射するか、赤色、青色、緑色の光を同時に照射することで、第1領域301を表示させる。従って、画像300が透過性のあるものであり、画像300が停止期間画像である場合には、図7に示すように、第2領域302と第1領域301とが同色となり、画像300と車外物体204とが重畳したとしても、運転者は、車外物体204を視認することが出来る。
【0049】
また、図8に示すように、画像300が移動期間画像である場合には、色割れ現象が生じ、運転者は、境界形状305を視認することが出来る。従って、観察者が視認したいときだけ、観察者が視認すべき境界形状305を視認することが出来る。
【0050】
また、上記の例では、観測者の視線が移動し、画像300が静止している場合について説明した。その他の例として、観測者の視線が停止して、画像300が移動するような場合であっても、色割れ現象が生じることから、同様の効果を奏することが出来る。例えば、表示媒体を移動物体(例えば、車体)の壁(車体の側面)とする。この場合に当該壁に画像表示装置101により画像300を表示させれば、観察者の視線が停止していたとしても、観察者は、境界形状305を視認することが出来る。つまり、表示媒体102と観察者の視線が相対的に移動すれば、同様の効果を奏することが出来る。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第2領域の境界形状の好ましい形状について説明する。図15Aに画像600を示す。第2領域602の境界形状は矩形状であり、辺6022と辺6024とを有する。また、第2領域602の境界形状のうち、観察者105の視線の方向と平行な部分(輪郭)については、色割れ現象は生じないことが知られている。
【0051】
図15Bに観察者105の視線205の移動方向がαの場合に生じる色割れ現象が生じることで、観察者105に視認される画像について示す。図15Bに示すように、観察者の視線の移動方向が方向αである場合には、当該方向αと平行な部分である辺6024については色割れ現象が生じず、観察者は、当該辺6024を視認することは出来ない。
【0052】
一方、当該方向αと平行な部分ではない辺6022については色割れ現象が生じるので、観察者は、当該辺6022を視認することが出来る。なお、観察者105は、色割れ現象により、辺6022について、赤色の辺6022R、緑色の辺6022G、青色の辺6022Bを視認することが出来る。
【0053】
つまり、第2領域602の境界形状は、観察者の視線と画像300との相対的移動方向と平行な部分を含まないことが好ましい。何故なら、図15で説明したように、観察者の視線と画像300の相対的移動方向と平行な部分(図15の例では、辺6022)については色割れ現象が生じず、観察者は当該色割れ現象が生じない部分を視認することが出来ないからである。
【0054】
図16Aに、他の画像650の一例を示す。画像650の第2領域652の境界形状は平行四辺形状である。当該第2領域652は、観察者の視線と画像300の相対的移動方向と平行な部分を含まない。図16Bに、観察者の視線の移動方向がαの場合に生じる色割れ現象が生じることで、観察者に視認される画像について示す。図16Bに示すように、第2領域652の全ての部分において、色割れ現象が生じ、観察者105は、第2領域652の全ての部分を視認することが出来る。図16Bの例では、第2領域652の赤色の辺651R、第2領域652の緑色の辺651G、第2領域652の青色の辺651Bが観察者105に視認される。
【0055】
この実施形態2の画像表示装置であれば、観察者の視線の移動方向が予め予想される場合には、境界形状305は、当該予想される視線の移動方向と平行な部分を含ませないようにする。従って、境界形状305の全ての部分において、色割れ現象を生じさせることができ、観察者は境界形状305の全ての部分を認識できるからである。
[実施形態3]
実施形態3では、運転者105などが、フロントガラス102(表示媒体)を透過して視認できる風景(映像)104(図2参照)と、第2領域302と、のどちらかを優先して視認するかを選択することが出来る。以下では、風景104より第2領域302の境界形状305を優先して視認するモードを画像優先モード(第1モード)とする。また、境界形状305より風景104を優先して視認するモードを風景優先モード(第2モード)とする。
【0056】
例えば、運転者105が運転中の場合には、安全性の観点から、境界形状305より風景104を優先して視認する必要があるので、風景優先モードを選択することが好ましい。また、運転者105が乗車している車両が停車している場合には、画像優先モードを選択することが好ましい。車両が、運転中では風景優先モードを自動選択し、停車中では画像優先モードを自動選択するようにしてもよい。
【0057】
図17に本実施形態3の処理フローを示す。まず、ステップS2において、表示手段1026は、画像300をフロントガラス102に表示させる。そして、ステップS4において、CPU1010が判断手段として機能し、現在のモード設定を判断する。運転手105が設定したモード、または、車両が自動設定したモードについての情報は、入力手段1024(図3参照)から入力される。
【0058】
CPU1010が、現在のモードは画像優先モードであると判断すると、ステップS6において、制御手段1022(図3参照)は、境界形状305の視認性上昇処理を行なう。ここで、境界形状305の視認性とは、観察者105が、境界形状305を視認できる度合いを示すものである。視認性が高ければ観察者105は境界形状305を視認しやすくなり、視認性が低ければ観察者105は、境界形状305を視認しがたくなる。
【0059】
ステップS62において、制御手段1022は、複数の光を照射する周期T(図11参照)を短く設定する。図17の例では、制御手段1022は、周期T=1/120secと設定する。このように、制御手段1022が、周期Tを短くすることで、色割れ現象をより生じ易くさせ、境界形状305の視認性を上昇させることが出来る。
【0060】
次に、ステップS64において、制御手段1022は、光源701や704〜706(図12や図13参照)の電力を大きく設定する。図17の例では、制御手段1022は、光源電力=200Wと設定する。このように、光源の光量を上昇させることで、第2領域302や第1領域301の明度を向上させることができるので、境界形状305の視認性を上昇させることが出来る。なお、ステップS62の処理とステップS64の処理はどちらを先に行なってもよく、並列的に行なってもよい。
【0061】
一方、CPU1010が、現在のモードは風景優先モードであると判断すると、ステップS8において、制御手段1022は、視認性低下処理を行なう。ステップS82において、制御手段1022は、複数の光を照射する周期T(図11参照)を画像優先モードの場合よりも長く設定する。図17の例では、制御手段1022は、周期T=1/60secと設定する。このように、制御手段1022が、周期Tを長くすることで、色割れ現象を生じにくくし、第2領域302の視認性を低下させ、風景104を視認させやすくすることが出来る。
【0062】
次に、ステップS84において、制御手段1022は、光源701や704〜706(図12や図13参照)の電力を画像優先モードと比較して小さく設定する。図17の例では、制御手段1022は、光源電力=100Wと設定する。このように、光源の光量を低下させることで、第1領域301や第2領域302の明度を低下させることができるので、第2領域302の視認性を低下させ、風景104を視認させやすくすることが出来る。なお、ステップS82の処理とステップS84の処理はどちらを先に行なってもよく、並列的に行なってもよい。
【0063】
また、ステップS6の視認性上昇処理はステップS62やステップS64の処理に限られることはなく、ステップS8の視認性低下処理はステップS82やステップS84の処理に限られることはない。
【0064】
このように、本実施形態3では、制御手段1022は、画像優先モード(第1モード)が設定された場合の境界形状の視認性を、風景優先モード(第2モード)が設定された場合の第1画像の視認性301よりも高める。従って、運転者105にとって、安全性を更に高めることが出来、かつ、使い勝手の良いものとなる。
[その他の実施形態]
図2などでは、表示装置101が透過性のあるフロントガラス102に、透過性のある画像300を投影表示した。その他の例として、表示装置101を液晶モニタに組み込んで実施しても良い。当該液晶モニタとは、封止した液晶層に加えられる電圧の制御により、光源で発光された光をスクリーン方向へ透過させる量を変化させる。
【0065】
図18に、表示装置101を液晶モニタに組み込んだ場合の各色光のタイミングチャートの一例を示す。図18の縦軸は、第1領域301、第2領域302それぞれをスクリーンに表示させる強度を示す。図18の例では、第1領域301を表示するために、赤色光、緑色光、青色光を同時に半強度で常にスクリーンに照射する。第2領域302を表示するために赤色光、緑色光、青色光を順番に最高強度でスクリーンに照射する。
【0066】
本実施例の画像表示装置101では、液晶モニタに表示させる場合には、画像300が透過性を有さないように(つまり、ベタ画像)で用いてもよく、画像300が透過性を有するように用いてもよく、液晶モニタの仕様用途によって使い分ければよい。
【0067】
また、上記説明では、表示媒体を、フロントガラスなど透過性を有するものとして説明したが、透過性を有さない(不透明な)紙などに画像300を表示するようにしてもよい。
【0068】
また、図2では、フロントガラス102に画像300を投影表示したヘッドアップディスプレイとして、画像表示装置101を用いたが、ヘッドマウントディスプレイとして、画像表示装置101を用いても良い。
【0069】
また、画像300全体を2値画像(例えば、白色、黒色のみの画像)としてもよい。この場合には、第2領域302を白色とし、第1領域301を黒色とすればよい。また、画像300全体を多値画像としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
101 画像表示装置
102 表示媒体
103 観察者の眼
104 風景
105 観察者
203 車外物体
204 車外物体
205 観察者の視線
300 画像
301 第1領域
302 第2領域
701 白色光源
702 変換手段
704 赤色光源
705 緑色光源
706 青色光源
10262 発光手段
10264 パネル
1000 CPU
1012 主記憶手段
1014 補助記憶手段
1016 外部記憶装置I/F手段
1018 記憶媒体
1020 画像処理手段
1022 制御手段
1024 入力手段
1026 表示手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特開2010−234959号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示媒体に、第1領域と第2領域とからなる画像を表示する表示手段を有する画像表示装置であって、
前記表示手段は、
複数色の光を同時に照射すること、または、当該複数色の混合色を照射すること、により、前記第1領域を表示し、
前記複数色の光を時分割で照射することにより、前記第2領域を表示し、
前記第1領域と前記第2領域とが同色であると観察者に知覚され、
前記画像と、当該観察者の前記画像に対する視線とが相対的に移動する結果生じる色割れ現象により、前記第1領域と前記第2領域との境界形状を当該観察者に視認させる画像表示装置。
【請求項2】
前記表示手段は、透過性のある前記表示媒体に、透過性のある前記画像を投影表示することを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記観察者が前記表示媒体を透過して視認する映像より、前記境界形状を優先して前記観察者に視認させる第1モード、または、
前記境界形状より、前記映像を優先して前記観察者に視認させる第2モードが設定可能であり、
前記第1モードが設定された場合の前記境界形状の視認性を、前記第2モードが設定された場合の前記境界形状の視認性よりも高める制御手段を有することを特徴とする請求項2記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記第1モードが設定された場合の前記複数色の光の照射の周期を、前記第2モードが設定された場合の当該周期よりも短くすることを特徴とする請求項3記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記境界形状は、前記相対的移動方向と平行な部分を含まないことを特徴とする請求項1〜4何れか1項記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記第1領域は、前記複数色の混合色の光が照射されることにより表示される場合に、
前記表示手段は、
1つの光源と、
前記1つの光源からの光を、前記複数色の光、および、前記複数色の混合色の光に変換する変換手段を含む特徴とする請求項1〜5何れか1項記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記表示手段は、
それぞれが前記複数色の光それぞれを発光する複数の光源と、
前記複数の光源を同時に発光させることで、前記第1領域を表示し
前記複数の光源を時分割で発光させることにより、前記第2領域を表示する光源制御手段を含むことを特徴とする請求項1〜5何れか1項記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記複数色は、赤色、緑色、青色であることを特徴とする請求項1〜7何れか1項記載の画像表示装置。
【請求項9】
表示媒体に、第1領域と第2領域とからなる画像を表示する表示手段を有する画像表示装置を用いた画像表示方法であって、
前記表示手段は、
複数色の光を同時に照射すること、または、当該複数色の混合色を照射すること、により、前記第1領域を表示し、
前記複数色の光を時分割で照射することにより、前記第1領域と同色に知覚されるように、前記第2領域を表示し、
前記画像と、観察者の前記画像に対する視線とが相対的に移動する結果生じる色割れ現象により、前記第1領域と前記第2領域との境界形状を前記観察者に視認させる画像表示方法。
【請求項10】
表示媒体に、第1領域と第2領域とからなる画像を表示する表示手段を有するコンピュータを、当該表示手段の制御を行なう制御手段として機能させるプログラムであって、
前記制御手段は、前記表示手段に対して、
複数色の光を同時に照射すること、または、当該複数色の混合色を照射すること、により、前記第1領域を表示させ、
前記複数色の光を時分割で照射することにより、前記第1領域と同色に知覚されるように、前記第2領域を表示させ、
前記画像と、観察者の前記画像に対する視線とが相対的に移動する結果生じる色割れ現象により、前記第1領域と前記第2領域との境界形状を前記観察者に視認させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−109149(P2013−109149A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253964(P2011−253964)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】