説明

画像表示装置およびプログラム

【課題】 ユーザにとって違和感の少ないオーバーレイ表示を実現する手段を提供する。
【解決手段】 画像表示装置は、画像を表示する表示部と、取得部と、制御部と、を備える。取得部は、表示部に表示すべき第1の画像の情報を取得する。制御部は、第1の画像に第2の画像を重畳させて表示部に表示させるとともに、第1の画像の色情報を用いて、第2の画像の色が第1画像の色と乖離しないように表示特性を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、画像表示装置において、各種の情報表示を画像上にオーバーレイして表示するものが従来から広く知られている。
【0003】
また、画像表示装置での色の見えは、周囲の視環境の条件に応じてそれぞれ異なることが従来から知られている。例えば、視覚の順応している輝度が高い視環境では、人間の目には輝度や彩度のコントラストが通常よりも高く知覚される。このことから、周囲の視環境に応じて、表示する画像のコントラストや明るさを補正する技術も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−83287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像表示装置でのオーバーレイ表示は、同じ色であっても合成する画像に応じて人間の視覚には見えが異なる。そのため、オーバーレイ表示によってユーザに違和感を与えてしまうことがあった。例えば、同じ赤色でも、白い画像の上に重畳させたときに比べ、黒い画像に重畳させた方が鮮やかに浮いて見える。
【0006】
そこで、本発明は、ユーザにとって違和感の少ないオーバーレイ表示を実現する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る画像表示装置は、画像を表示する表示部と、取得部と、制御部と、を備える。取得部は、表示部に表示すべき第1の画像の情報を取得する。制御部は、第1の画像に第2の画像を重畳させて表示部に表示させるとともに、第1の画像の色情報を用いて、第2の画像の色が第1画像の色と乖離しないように表示特性を調整する。
【0008】
上記の一態様の制御部は、重畳された画像のうちで第2の画像の表示位置を基準として設定された局所領域から取得した色情報を用いて、第2の画像の表示色を調整してもよい。
【0009】
上記の一態様の制御部は、第1の画像に対して階調変換処理を施して、第1の画像に対する第2の画像の色再現を調整してもよい。
【0010】
なお、上記の一態様の画像表示装置を含む撮像装置や、上記の一態様の画像表示装置で行われる処理をコンピュータに実行させるプログラムや、このプログラムを記憶したプログラム記憶媒体や、上記の一態様の画像表示装置で行われる処理方法は、いずれも本発明の具体的態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、主画像の色情報を用いてオーバーレイ表示の表示特性を調整し、ユーザにとって違和感の少ないオーバーレイ表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態での画像表示装置の構成例を示すブロック図
【図2】(a)主画像の表示例を示す図、(b)オーバーレイ表示を主画像に重畳させた表示例を示す図
【図3】第1実施形態の電子カメラにおける画像の表示制御の例を示す流れ図
【図4】図3のS106でのサブルーチンの例を示す流れ図
【図5】第1実施形態での第3LUTのトーンカーブの例を示す図
【図6】第1実施形態での第4LUTのトーンカーブの例を示す図
【図7】第1実施形態での第5LUTのトーンカーブの例を示す図
【図8】第2実施形態の電子カメラにおける画像の表示制御の例を示す流れ図
【図9】第2実施形態での画像の輝度と基準描画画素値pとの対応関係の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態の画像表示装置の構成例>
図1は、第1実施形態での画像表示装置の構成例を示すブロック図である。本実施形態では、画像表示装置が電子カメラに組み込まれている例を説明する。
【0014】
電子カメラは、撮像部11と、モニタ12と、測光センサ13と、CPU15と、メディアI/F16と、メモリ17と、ユーザの各種操作を受け付ける操作部18とを有する。なお、撮像部11、モニタ12、測光センサ13、メディアI/F16、メモリ17、操作部18は、それぞれCPU15と接続されている。
【0015】
撮像部11は、被写体の像を撮像して撮影画像のデータを生成する。この撮像部11は、被写体の像を撮像する撮像素子と、撮像素子の出力にアナログおよびデジタルの信号処理を施す信号処理回路を含んでいる。なお、図1では、撮像部11に含まれる各要素の図示は省略する。
【0016】
モニタ12は、CPU15の表示制御により、撮像部11で撮像された画像や、メディアI/F16またはメモリ17から読み込んだ再生画像や、電子カメラの設定画面などを表示する。本実施形態のモニタ12は、例えば、電子カメラの筐体背面に配置される液晶ディスプレイパネルで構成される。
【0017】
測光センサ13は、電子カメラ周囲の環境光の明るさを検出し、環境光による外部照明条件を取得する。例えば、屋外や窓際などで電子カメラが使用される場合、上記の環境光には、自然光源(太陽)から照射される自然光の成分が含まれる。なお、測光センサ13の取付位置は、装置外部の光を取り込める位置であれば特に限定されるものではない。一例として、本実施形態での測光センサ13は、電子カメラの筐体背面側においてモニタ12の近傍に配置されるものとする。
【0018】
CPU15は、電子カメラの動作を統括的に制御するプロセッサである。例えば、電子カメラが被写体の像を撮像する撮影モードにおいて、CPU15は記録用の静止画像や動画像を撮像部11に撮像させる。また、撮影モードでの撮像部11は、CPU15の制御により、静止画撮影の撮影待機時にも所定間隔毎に観測用の画像(スルー画像)を連続的に撮像する。
【0019】
そして、CPU15は、モニタ12に対して表示対象の画像のデータを出力するとともに、モニタ12での画像の表示輝度を調整する表示制御を実行する。例えば、静止画撮影時または動画撮影時には、CPU15の表示制御によって、スルー画像または動画像がモニタ12に表示される。また、電子カメラの再生モードでは、CPU15の表示制御によって、後述の記憶媒体19などに記憶された静止画像や動画像がモニタ12に再生表示される。
【0020】
また、CPU15は、画像のデータに対して階調変換処理や色空間変換処理などの画像処理を施す。
【0021】
さらに、CPU15は、表示対象の画像(主画像)上に各種のオブジェクト(オーバーレイ表示)を重畳させてモニタ12に表示させることができる。ここで、オーバーレイ表示としては、一例として、電子カメラの撮影モードでフォーカス位置を示す枠表示、撮影可能枚数などの情報を示す文字表示、撮影時の構図決定を補助するための格子線表示、電池残量などを図形で示すアイコン表示、ユーザの入力に基づく描画線の表示などが挙げられる。なお、図2(a)に、主画像の表示例を示す。また、図2(b)に、オーバーレイ表示のオブジェクトとしてフォーカス位置を示す枠を主画像に重畳させた表示例を示す。
【0022】
メディアI/F16は、不揮発性の記憶媒体19を接続するためのコネクタを有している。そして、メディアI/F16は、コネクタに接続された記憶媒体19に対してデータの書き込み/読み込みを実行する。上記の記憶媒体19は、ハードディスクや、半導体メモリを内蔵したメモリカードなどで構成される。なお、図1では記憶媒体19の一例としてメモリカードを図示する。
【0023】
メモリ17は、上記の表示制御プログラムや、この表示制御プログラムで使用される各種のデータ(ルックアップテーブル(LUT)のデータ、色変換マトリクスのデータ、モニタ12の白色点のデータ、オーバーレイ表示のオブジェクトの描画パターン情報など)を記憶する不揮発性メモリである。なお、メモリ17は、撮像部11で撮影された画像のデータを記憶する記録領域を有していてもよい。
【0024】
<第1実施形態での画像表示装置の動作例>
次に、図3の流れ図を参照しつつ、本実施形態の電子カメラにおける画像の表示制御の例を説明する。図3の流れ図の処理は、撮影モードまたは再生モードの起動操作を受け付けたときに、CPU15が表示制御プログラムを実行することで開始される。
【0025】
(ステップS101)
CPU15は、モニタ12に表示させる主画像としての入力画像を取得する。例えば、撮影モードであれば、CPU15は撮像部11に被写体を撮像させるとともに、撮像部11から入力画像としてスルー画像または動画像を順次取得する。また、再生モードであれば、CPU15は、メモリ17または記憶媒体19から再生表示する入力画像を取得する。
【0026】
(ステップS102)
CPU15は、入力画像(S101)の色空間(例えばsRGBやAdobe RGBなど)の情報を取得する。例えば、撮影モードの場合には、CPU15は撮像部11の色空間の設定情報を取得すればよい。また、再生モードの場合には、CPU15は入力画像のデータに対応付けされているメタデータ(例えば画像ファイルのヘッダ領域のデータ)から色空間の情報を取得すればよい。
【0027】
(ステップS103)
CPU15は、外部照明条件の情報を取得する。一例として、S103でのCPU15は、測光センサ13の出力から照度値M’を取得するとともに、下式(1)により外部照明条件として周囲輝度(Ys_abs’)を求める。
Ys_abs’=M’/π …(1)
(ステップS104)
CPU15は、入力画像の色空間の情報(S102)を用いて、メモリ17に記憶されているデータから第1LUTと第1マトリクスとを選択する。
【0028】
ここで、第1LUTは、入力画像の階調特性を線形に変換するための階調変換LUTである。例えば、入力画像の色空間がsRGBである場合、CPU15は、sRGBの階調変換LUT(γ=2.2)を第1LUTとして選択する。また、第1マトリクスは、入力画像の色空間をモニタ12の出力色空間(R’G’B’と表記する)に変換するための色変換マトリクスである。例えば、入力画像の色空間がsRGBである場合、CPU15は、画像の色空間をsRGBからR’G’B’に変換する色変換マトリクスを第1マトリクスとして選択する。なお、本実施形態でのLUTおよび色変換マトリクスは、例えば電子カメラの製造者が予め製造工程で生成したものをそれぞれ用いればよい。
【0029】
(ステップS105)
CPU15は、モニタ12の表示特性に応じて、メモリ17に記憶されているLUTから第2LUTを選択する。ここで、第2LUTは、モニタ12の表示特性を考慮して出力画像の階調を最適化するための階調変換LUTである。例えば、モニタ12の階調特性を示すγ’が1.8であるとき、CPU15は、1/γ’=1/1.8の階調特性をもつLUTを第2LUTとして選択する。
【0030】
(ステップS106)
CPU15は、図4に示すサブルーチン(S201−S207)の処理により、モニタ12の表示照明条件としての表示輝度(Yw_abs’)を設定する。
【0031】
ステップS201:CPU15は、入力画像について予め想定されている想定視環境(モニタ12の想定輝度Yw_abs、想定の周囲輝度Ys_abs)の情報と、モニタ12の輝度調節範囲(Lmin−Lmax)の情報とを取得する。ここで、撮影モードの場合、CPU15は、メモリ17に予め記憶されている想定視環境の情報とモニタ12の輝度調節範囲の情報とをそれぞれ取得すればよい。また、再生モードの場合、CPU15は、入力画像のデータに対応付けされているメタデータから想定視環境情報を取得し、モニタ12の輝度調節範囲の情報をメモリ17から取得すればよい。
【0032】
ステップS202:CPU15は、モニタ12の想定輝度Yw_absと想定の周囲輝度Ys_absとの比に、実測した周囲輝度Ys_abs’を乗じて、モニタ12の輝度目標値Ltpを求める。具体的には、CPU15は、下式(2)により輝度目標値Ltpを求めればよい。
Ltp=Ys_abs’*Yw_abs/Ys_abs …(2)
ステップS203:CPU15は、LminがLtp以下か(Lmin≦Ltp)否かを判定する。上記要件を満たす場合(Yes側)、CPU15はS204に処理を移行させる。一方、上記要件を満たさない場合(No側)、CPU15はS207に処理を移行させる。
【0033】
ステップS204:CPU15は、LtpがLmax以下か(Ltp≦Lmax)否かを判定する。上記要件を満たす場合(Yes側)、CPU15はS205に処理を移行させる。一方、上記要件を満たさない場合(No側)、CPU15はS206に処理を移行させる。
【0034】
ステップS205:この場合は、輝度目標値Ltpがモニタ12の輝度調節範囲内にある。よって、CPU15は、輝度目標値Ltpをそのままモニタ12の表示輝度Yw_abs’に設定する(Yw_abs’=Ltp)。そして、CPU15はS107の処理に復帰する。
【0035】
ステップS206:この場合は、輝度目標値Ltpがモニタ12の輝度調節範囲の下限値Lminを下回る。よって、CPU15は、輝度調節範囲の下限値Lminをモニタ12の表示輝度Yw_abs’に設定する(Yw_abs’=Lmin)。そして、CPU15はS107の処理に復帰する。
【0036】
ステップS207:この場合は、輝度目標値Ltpがモニタ12の輝度調節範囲の上限値Lmaxを上回る。よって、CPU15は、輝度調節範囲の上限値Lmaxをモニタ12の表示輝度Yw_abs’に設定する(Yw_abs’=Lmax)。そして、CPU15はS107の処理に復帰する。以上で図4のサブルーチンの説明を終了する。
【0037】
(ステップS107)
CPU15は、入力画像で想定されている周囲輝度とモニタ12の輝度との比(Rsw=Ys_abs/Yw_abs)と、実際の周囲輝度とモニタ12の輝度との比(Rsw’=Ys_abs’/Yw_abs’)とを用いて、メモリ17に記憶されている階調変換LUTから第3LUTを選択する。なお、第3LUTとして選択される階調変換LUTは、モニタ12の表示領域のサイズおよびモニタ12の標準観察距離(例えば、電子カメラ等の携帯機器の背面ディスプレイであれば約50cm)から求めたユーザの視角を基準として、このユーザの視角内での環境光の影響に応じてトーンカーブが決定されている。
【0038】
ここで、第3LUTは、主にモニタ12の輝度よりも周囲が暗い場合に画像のコントラスト感を改善するための階調変換LUTである。図4に、本実施形態での第3LUTのトーンカーブの例を示す。Rswに対してRsw’が十分小さい場合、第3LUTのトーンカーブは中間部が押し下げられた形状となり、暗部コントラストを抑えるように階調が補正される。Rswに対してRsw’が十分大きい場合、第3LUTのトーンカーブは中間部が押し上げられた形状となり、暗部コントラストを立てるように階調が補正される。RswとRsw’とがほぼ同程度の場合、第3LUTのトーンカーブはほぼ線形となる。
【0039】
なお、一例として、S107でのCPU15は、以下の表1に示すRswおよびRsw’の条件に基づいて、図5のトーンカーブに対応するLUTのうちから第3LUTを選択すればよい。
【0040】
【表1】

【0041】
(ステップS108)
CPU15は、R’G’B’と輝度/彩度の分離した色空間との間で画像の色空間を変換する第2マトリクスを設定する。一例として、本実施形態でのCPU15は、R’G’B’とYCCとの間で画像の色空間を変換する色変換マトリクスを第2マトリクスとして設定する。なお、変換先の色空間はYCCに限定されず、例えばHSVやL***であってもよい。また、変換先の色空間がHSVやL***の場合には、S108での色空間の変換手段として式を用いたり、あるいは3次元色変換テーブルを用いたりしてもよい。
【0042】
(ステップS109)
CPU15は、実際の周囲輝度とモニタ12の輝度との比(Rsw’)を用いて、メモリ17に記憶されているLUTから、輝度成分Yに関する第4LUTと、彩度成分Cに関する第5LUTとをそれぞれ選択する。
【0043】
なお、第4LUT、第5LUTとして選択される階調変換LUTは、モニタ12の表示領域のサイズおよびモニタ12の標準観察距離から求めたユーザの視角を基準として、このユーザの視角内での環境光の影響に応じてトーンカーブが決定されている。例えば、電子カメラのモニタ12(背面ディスプレイ)は、パーソナルコンピュータのディスプレイやテレビ等と比べて小型であるため、ユーザの視角も小さくなる。そのため、電子カメラのモニタ12の場合には、周囲の照明の影響が大きくなることを考慮して上記のLUTの特性が予め調整されている。
【0044】
ここで、第4LUTおよび第5LUTは、主にモニタ12の輝度よりも周囲が明るい場合に画像のコントラスト感を向上させるための階調変換LUTである。モニタ12よりも周囲が明るい場合、人間の視覚は画像の輝度よりも周囲の高い輝度に順応するため、画像の輝度および彩度のコントラストが通常よりもユーザには低く知覚される。
【0045】
図6に、本実施形態での第4LUTのトーンカーブの例を示す。Rsw’が十分小さい場合、第4LUTのトーンカーブはほぼ線形となる。一方、Rsw’が大きくなるにつれて、第4LUTのトーンカーブは、低輝度部分の階調をつぶして中間調のコントラストを高くするS字状に変化する。
【0046】
一般に周囲の輝度が高い場合、ユーザには画像の暗部がフレアにより白浮きして知覚される。そのため、高輝度環境下で選択される第4LUTは、低輝度部分の階調をつぶすことでフレアの影響を抑制しつつ、中間部での階調差を大きくする。これにより、高輝度環境下での画像のコントラスト感が保たれる。
【0047】
次に、図7に、本実施形態での第5LUTのトーンカーブの例を示す。第5LUTのトーンカーブはいずれも線形であるが、Rsw’の大きさに比例してトーンカーブの傾きも大きくなる。これにより、高輝度環境下においてユーザに低く知覚される画像の彩度が調整される。
【0048】
なお、一例として、S109でのCPU15は、以下の表2に示すRsw’の条件に基づいて、図6のトーンカーブに対応するLUTのうちから第4LUTを選択すればよい。同様に、S109でのCPU15は、以下の表2に示すRsw’の条件に基づいて、図7のトーンカーブに対応するLUTのうちから第5LUTを選択すればよい。
【0049】
【表2】

【0050】
(ステップS110)
CPU15は、第3LUT、第4LUTおよび第5LUTの組み合わせに応じて、オーバーレイ表示の基準描画画素値pを決定する。上記の基準描画画素値は、第3LUTから第5LUTによって明るさや彩度が変化した画像に合わせて、オーバーレイ表示のオブジェクトの明るさを調整するために用いられる。
【0051】
一例として、オブジェクトの階調範囲が8bit(0−255)であるときに、CPU15は、以下の表3に示すLUTの組み合わせから基準描画画素値pを求めればよい。
【0052】
【表3】

【0053】
ここで、表3の同じ行(第4LUTおよび第5LUTが共通する場合)では、表1で選択される第3LUTの(1)から(6)の順(Rsw’の値が大きくなる順)に、基準描画画素値pの値は大きくなる。同様に、表3の同じ列(第3LUTが共通する場合)では、表2で選択される第4LUTおよび第5LUTの(1)から(5)の順(Rsw’の値が大きくなる順)に、基準描画画素値pの値は大きくなる。
【0054】
そして、CPU15は、基準描画画素値pを用いて、オブジェクトのRGB階調値を設定する。例えば、オーバーレイ表示のオブジェクトを赤色で描画する場合、CPU15は、オブジェクトのRGB階調値を(R,G,B)=(p,0,0)に設定すればよい。また、オーバーレイ表示のオブジェクトを明るい無彩色で描画する場合、CPU15は、オブジェクトのRGB階調値を(R,G,B)=(p,p,p)に設定すればよい。また、オーバーレイ表示のオブジェクトをグレーで描画する場合、CPU15は、オブジェクトのRGB階調値を(R,G,B)=(0.5p,0.5p,0.5p)に設定すればよい。
【0055】
(ステップS111)
CPU15は、環境光下での入力画像の見えを改善した補正画像を生成する。一例として、S111でのCPU15は、以下の(イ)−(ヘ)の処理を順次実行する。
【0056】
(イ)CPU15は、入力画像の各画素において、第1LUTによるRGBの各画素値の階調変換処理を行う。
【0057】
(ロ)CPU15は、上記(イ)の処理後の画像に対して、第1マトリクスによる色変換処理を施す。これにより、画像の色空間はR’G’B’に変換される。
【0058】
(ハ)CPU15は、上記(ロ)の処理後の画像に対して、第2LUTおよび第3LUTによる階調変換処理をそれぞれ施す。なお、この階調変換処理は、画像の各画素において各色の画素値でそれぞれ行われる。
【0059】
(ニ)CPU15は、上記(ハ)の処理後の画像に対して、第2マトリクスによる色変換処理を施す。これにより、画像の色空間はYCCに変換される。
【0060】
(ホ)CPU15は、YCCに変換された画像の輝度面(Y)に対して、第4LUTによる階調変換処理を施す。また、CPU15は、YCCに変換された画像の彩度面(C)に対して、第5LUTによる階調変換処理を施す。
【0061】
(へ)CPU15は、上記(ホ)の処理後の画像に対して、第2マトリクスによる逆色変換処理を施す。これにより、画像の色空間は再びR’G’B’に変換される。以上により、補正画像が生成される。
【0062】
(ステップS112)
CPU15は、モニタ12の表示輝度をYw_abs’に調整する。一例として、本実施形態ではモニタ12が液晶ディスプレイパネルであるので、CPU15は、予めメモリ17に記憶された情報に基づいて、モニタ12の輝度がYw_abs’となるようにバックライトの印可電圧を制御すればよい。
【0063】
(ステップS113)
CPU15は、補正画像にオブジェクトをオーバーレイ表示させる。これにより、S110で決定したRGB階調値でオブジェクトが描画された補正画像(S111)がモニタ12に表示される(図2(b)参照)。以上で、図3の流れ図の説明を終了する。
【0064】
本実施形態の電子カメラは、測光センサ13の出力による外部照明条件(Ys_abs’)と、モニタ12の表示照明条件(Yw_abs’)とを用いて、環境光下での画像の見えを元の入力画像よりも改善した補正画像をモニタ12に表示する。
【0065】
例えば、モニタ12の輝度よりも周囲が暗い場合を考える。このとき、人間の視覚では、周囲がモニタ12の輝度と同程度の場合よりも、画像の暗部コントラストが高く知覚される。しかし、本実施形態の電子カメラは、かかる場合には、第3LUTによる階調変換処理で補正画像のコントラストを入力画像よりも低く補正する。
【0066】
一方、モニタ12の輝度よりも周囲が明るい場合を考える。このとき、人間の視覚は画像の輝度よりも周囲の高い輝度に順応するため、周囲がモニタ12の輝度と同程度の場合よりも、画像の輝度および彩度のコントラストがユーザには低く知覚される。しかし、本実施形態の電子カメラは、かかる場合には第4LUTおよび第5LUTによる階調変換処理で補正画像の輝度および彩度のコントラストを高く補正する。
【0067】
また、本実施形態での電子カメラは、補正画像の明るさに応じてオブジェクトの明るさを規定する基準描画画素値pを決定する。そして、電子カメラは、基準描画画素値pを用いて、オーバーレイ表示のオブジェクトの表示色を補正画像に合わせて調整する。
【0068】
例えば、モニタ12の輝度よりも周囲が非常に暗い場合(表1で(1)が選択される場合)、第3LUTのトーンカーブは中間部が押し下げられた形状となり、入力画像は暗く補正される。このとき、表3で選択される基準描画画素値pは、周囲が明るい場合に比べて相対的に小さな値となるので、オーバーレイ表示のオブジェクトも暗くなる。
【0069】
例えば、モニタ12の輝度よりも周囲が非常に明るい場合(表2で(5)が選択される場合)、第4LUTのトーンカーブは、低輝度部分の階調をつぶして中間部を押し上げるS字状となり、第5LUTのトーンカーブの傾きも大きくなる。このとき、表3で選択される基準描画画素値pは、周囲が暗い場合に比べて相対的に大きな値となるので、オーバーレイ表示のオブジェクトは明るくなって、画像とのコントラストが明瞭となる。
【0070】
よって、本実施形態の電子カメラは、異なる視環境下でも補正画像およびオーバーレイ表示の見えが比較的よく一致する。したがって、本実施形態の電子カメラでは、ユーザにとって違和感の大きいオーバーレイ表示(補正画像に対してオーバーレイ表示が浮いて見える、補正画像に対してオーバーレイ表示が目立ちすぎる等)を抑制できる。
【0071】
<第2実施形態の説明>
次に、図8の流れ図を参照しつつ、第2実施形態の画像表示装置(電子カメラ)の動作例を説明する。第2実施形態は、画像から取得した明るさの情報を用いて、オーバーレイ表示の表示色を調整する例である。図7の流れ図の処理は、撮影モードまたは再生モードの起動操作を受け付けたときに、CPU15が表示制御プログラムを実行することで開始される。
【0072】
ここで、第2実施形態の画像表示装置としては、図1に示す電子カメラの構成をそのまま用いることができる。そのため、第2実施形態では、画像表示装置の構成の説明は省略する。なお、第2実施形態の場合には、図1の電子カメラの構成から測光センサ13を省略してもよい。
【0073】
ステップS301:CPU15は、モニタ12に表示させる主画像としての入力画像を取得する。このS301の処理は上記のS101の処理に対応するので、重複説明は省略する。
【0074】
ステップS302:CPU15は、入力画像(S301)の色空間の情報を取得する。このS302の処理は上記のS102の処理に対応するので、重複説明は省略する。
【0075】
ステップS303:CPU15は、入力画像の色空間の情報(S302)を用いて、メモリ17に記憶されているデータから第1LUTと第1マトリクスとを選択する。このS303の処理は上記のS104の処理に対応するので、重複説明は省略する。
【0076】
ステップS304:CPU15は、モニタ12の表示特性に応じて、メモリ17に記憶されているLUTから第2LUTを選択する。このS304の処理は上記のS105の処理に対応するので、重複説明は省略する。
【0077】
ステップS305:CPU15は、入力画像の明るさを参照して、オーバーレイ表示のオブジェクトの表示色を調整する。
【0078】
例えば、S305でのCPU15は、画像全体の平均輝度に基づいてオブジェクトの表示色を調整してもよい。この場合、CPU15は、入力画像の色空間をYCbCrに変換し、Y面の画素値を用いて入力画像全体の平均輝度Yを求める。そして、CPU15は、画像の平均輝度から基準描画画素値pを求める変換テーブル(あるいは変換式)を用いて、基準描画画素値pを求める。そして、CPU15は、上記のS110と同様の処理により、基準描画画素値pを用いてオブジェクトのRGB階調値を設定すればよい。
【0079】
ここで、図9に、画像の輝度と基準描画画素値pとの対応関係の一例を示す。図9の例では、オブジェクトの背景となる画像の輝度が高いほど、基準描画画素値pの値も高くなる。
【0080】
また、S305でのCPU15は、各々のオブジェクトについて、それぞれ個別に基準描画画素値pを求めるようにしてもよい。この場合、CPU15は、入力画像のうちでオブジェクトの表示位置を基準として局所領域を設定する。そして、CPU15は、局所領域内の平均輝度値を用いて、対象となるオブジェクトに適用する基準描画画素値pを求めればよい。なお、上記の局所領域は、対象となるオブジェクトが含まれるように、オブジェクトよりも大きなサイズに設定される。また、局所領域の形状は、オブジェクトの輪郭と相似形であってもよく、あるいは矩形や円形等であってもよい。
【0081】
なお、S305の説明では、輝度値としてYCbCr色空間のYの値を用いる例を説明したが、例えば三刺激値(XYZ)のYの値を用いるようにしてもよい。
【0082】
ステップS306:CPU15は、入力画像に対して第1LUT、第1マトリクス、第2LUTを適用し、モニタ12に出力する補正画像を生成する。
【0083】
ステップS307:CPU15は、補正画像にオブジェクトをオーバーレイ表示させる。これにより、S305で決定したRGB階調値でオブジェクトが描画された補正画像がモニタ12に表示される。以上で、図8の流れ図の説明を終了する。
【0084】
上記の第2実施形態の電子カメラは、入力画像の明るさに応じてオーバーレイ表示のオブジェクトの表示色を調整するので、ユーザにとって違和感の大きいオーバーレイ表示(補正画像に対してオーバーレイ表示が浮いて見える、補正画像に対してオーバーレイ表示が目立ちすぎる等)を抑制できる。
【0085】
上記実施形態では、ディスプレイ周囲の明るさに応じて入力画像を補正し、補正された入力画像の明るさに応じてオーバーレイ表示の表示輝度を補正した。しかし、周囲の明るさだけでなく、周囲の環境光の色に応じて入力画像の色を補正した場合は、補正された入力画像の色に応じてオーバーレイ表示の表示色を補正してもよい。この場合、周囲の環境光の色に応じて入力画像の色順応変換を行うが、オーバーレイ表示の表示色については同様の色変換によって変換した色を使用すればよい。
【0086】
<実施形態の補足事項>
(変形例1)
上記の各実施形態では、電子カメラに実装された画像表示装置の例を説明した。しかし、本発明の画像表示装置は、テレビ、プロジェクタ、パーソナルコンピュータのディスプレイ、自動車に搭載されるナビゲーションシステムのモニタなどにも適用できる。また、本発明の画像表示装置は、電子カメラ以外の携帯可能なモニタ付きの電子機器(携帯電話、フォトビューア、携帯ゲーム機、電子書籍のビューアなど)に適用することができる。なお、これらの画像表示装置の基本構成は、撮像部11がない点を除いて図1の構成と同様であるので図示は省略する。
【0087】
(変形例2)
上記の各実施形態では、モニタ12が液晶ディスプレイである例を説明した。しかし、本発明の画像表示装置のモニタは、有機ELなどの他の表示デバイスであってもよい。
【0088】
(変形例3)
上記の第1実施形態のS110の処理において、CPU15は、第2実施形態のS305の処理と同様に、画像の輝度値から基準描画画素値pを決定するようにしてもよい。
【0089】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。
【符号の説明】
【0090】
11…撮像部、12…モニタ、13…測光センサ、15…CPU、16…メディアI/F、17…メモリ、18…操作部、19…記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示すべき第1の画像の情報を取得する取得部と、
前記第1の画像に第2の画像を重畳させて前記表示部に表示させるとともに、前記第1の画像の色情報を用いて、前記第2の画像の色が前記第1画像の色と乖離しないように表示特性を調整する制御部と、
を備える画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記制御部は、重畳された画像のうちで前記第2の画像の表示位置を基準として設定された局所領域から取得した前記色情報を用いて、前記第2の画像の表示色を調整する画像表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像表示装置において、
前記制御部は、前記第1の画像に対して階調変換処理を施して、前記第1の画像に対する前記第2の画像の色再現を調整する画像表示装置。
【請求項4】
表示装置に表示すべき第1の画像の情報を取得する取得処理と、
前記第1の画像に第2の画像を重畳させて前記表示部に表示させるとともに、前記第1の画像の色情報を用いて、前記第2の画像の色が前記第1画像の色と乖離しないように表示特性を調整する表示制御処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−203438(P2011−203438A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69930(P2010−69930)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】