説明

画像表示装置の製造方法

【課題】遮光部を有する透光性保護材料を画像表示ユニットに接着する際に、遮光部に対応する領域において光学的に透明な液状接着剤をより完全に硬化させるための方法を提供する。
【解決手段】本開示の画像表示装置の製造方法は、画像表示面を有する画像表示ユニットを提供し;遮光部を有する透光性保護材料を提供し;画像表示ユニットの画像表示面と透光性保護材料の間に光学的に透明な液状接着剤を配置し;光学的に透明な液状接着剤を硬化して、画像表示ユニットと透光性保護材料を接着することを含み、光学的に透明な液状接着剤が、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む第1ベース剤と重合開始剤とを含有する第1組成物と、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む第2ベース剤と重合開始剤を分解することが可能な還元剤とを含有する第2組成物とから構成される2液レドックス型接着剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液型接着剤を用いて画像表示ユニットに保護材料を接着することを含む、画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピューターなどの電子デバイスおよびタッチパネルなどの光学ユニットのディスプレイパネル上には、ガラス板またはプラスチックフィルムで作られたシート状の保護材料が積層される。これらの保護材料は、ディスプレイの画像表示領域の外側の周辺領域にテープまたは接着剤を適用することにより、ディスプレイパネルに取り付けられる。これにより、ディスプレイパネルと保護材料との間に空隙が発生する。ディスプレイの光学性能は、内部反射表面の数を減らすことにより改善することができるため、ディスプレイパネルと保護材料の間の空隙をなくすことが望ましい。
【0003】
近年、より高い光透過率およびより明りょうな画像が得られることから、ディスプレイパネルと保護材料の間の空隙に透明材料を充填することが一般的となっている。透明材料として、転写型接着テープおよび紫外線硬化性液状接着剤のいずれも現在使用されている。特に大型ディスプレイ用途の透明材料として、紫外線硬化性の光学的に透明な液状接着剤(Liquid Optically Clear Adhesive、以下本願明細書ではLOCAとも呼ぶ)が現在最も多く使用されている。LOCAを用いる接着システムでは、紫外線硬化性の液体がディスプレイ上にディスペンサーを用いて塗布され、次にガラス板またはプラスチックシートが積層され、その後ガラス板またはプラスチックシートを通して紫外線照射が行われる。
【0004】
保護材料は、遮光またはディスプレイのデザインのために、印刷領域(通常は黒色)を表面に有する場合がある。この場合、印刷領域で光が遮られるため、紫外線(または可視光線)照射によりLOCAを硬化させることは非常に困難である。印刷領域下の硬化を改善するために、側方から光を照射することも行われているが、印刷領域の幅が大きい場合(例えば50mm幅)、側方からの光照射では深部まで十分に硬化させることができない場合がある。印刷領域下の硬化が不十分であると、その硬化の不十分な部分からLOCAの剥離または凝集破壊が生じる、あるいは透明材料の内部応力がディスプレイ面内で不均一であることに起因して画像のむらが生じる場合がある。また、垂直方向からの紫外線照射と側方からの紫外線照射の両方を行うための装置は複雑であり非常に高価である。
【0005】
特許文献1(国際公開2007/066590号)には、透明カバープレートまたはタッチパネルと液晶表示装置との全面貼り合わせの構成で、色むらの無く、また剥がれの無い表示機器が記載されており、透明カバープレートまたはタッチパネルと液晶表示装置とを接着した光学接着剤の硬さがショアA硬度1以上30以下であり、接着剤層の厚みが30〜200μmであることが記載されている。
【0006】
特許文献2(国際公開2008/123551号)には、「液晶表示パネル(8)等の画像表示部を有する基部(2)と、遮光部(5)を有する透光性の保護部(3)との間に光硬化型樹脂組成物(11)を介在させ、光硬化させて樹脂硬化物層(15)を形成する工程を有する画像表示装置(1)の製造方法において、光硬化型樹脂組成物(11)として、硬化収縮率が5%以下、硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以下、樹脂硬化物層(15)の可視光領域の光透過率を90%以上とする樹脂組成物(11)を使用する。さらに、少なくとも遮光部(5)と基部(2)との間に熱重合開始剤を含有する硬化型樹脂組成物(11a)を介在させ、該硬化型樹脂組成物(11a)を加熱する工程を設ける。これにより、遮光部(5)を備えた保護部(3)と画像表示部(8)との間に樹脂を介在させた薄型の画像表示装置(1)を製造するにあたり、画像表示部(1)の変形に起因する表示不良を生じさせることなく、高輝度及び高コントラストな表示を可能とし、かつ、遮光部(5)の形成領域の樹脂も十分に硬化させる」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2007/066590号
【特許文献2】国際公開2008/123551号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、印刷領域などの遮光部を有する透光性保護材料を、液晶ディスプレイなどの画像表示ユニットに接着する際に、遮光部に対応する領域において光学的に透明な液状接着剤をより完全に硬化させるための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施態様によれば、画像表示面を有する画像表示ユニットを提供し、遮光部を有する透光性保護材料を提供し、前記画像表示ユニットの画像表示面と前記透光性保護材料の間に光学的に透明な液状接着剤を配置し、前記光学的に透明な液状接着剤を硬化して、前記画像表示ユニットと前記透光性保護材料を接着することを含む、画像表示装置の製造方法であって、前記光学的に透明な液状接着剤が、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む第1ベース剤と重合開始剤とを含有する第1組成物と、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む第2ベース剤と前記重合開始剤を分解することが可能な還元剤とを含有する第2組成物とから構成される2液レドックス型接着剤である、画像表示装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、遮光部に対応する領域を含む、光学的に透明な液状接着剤の適用領域全面で均一な接着を達成することができるため、画像のむらの発生を抑えることができる。また、本開示によれば、遮光部からの保護材料の剥離を防止することができる。
【0011】
なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様および本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の一実施態様による、LOCAの配置手順を示す模式図である。
【図2】本開示の別の実施態様による、LOCAの配置手順を示す模式図である。
【図3】本開示の別の実施態様による、LOCAの配置手順を示す模式図である。
【図4A】実施例で用いたカバーシートの平面図である。
【図4B】実施例で用いたカバーシートの側面図である。
【図5】カバーシート、剥離処理ガラス板、およびそれらの間に配置されたLOCAを示す側面図である。
【図6】実施例で行った引張試験の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0014】
本明細書において、「レドックス重合」とは、重合開始剤と還元剤との間の酸化還元反応によって発生したラジカルによって進行する重合反応を意味する。
【0015】
「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0016】
「貯蔵弾性率」とは、−60℃〜200℃の温度範囲において、5℃/分の昇温速度および周波数1Hzの剪断モードで粘弾性測定を行ったときの、指定した温度における貯蔵弾性率(Pa)を意味する。
【0017】
本開示の画像表示装置の製造方法は、画像表示面を有する画像表示ユニットを提供し、遮光部を有する透光性保護材料を提供し、前記画像表示ユニットの画像表示面と前記透光性保護材料の間に光学的に透明な液状接着剤を配置し、前記光学的に透明な液状接着剤を硬化して、前記画像表示ユニットと前記透光性保護材料を接着することを含む。ここで、光学的に透明な液状接着剤は、第1ベース剤および重合開始剤を含有する第1組成物と、第2ベース剤および前記重合開始剤を分解することが可能な還元剤を含有する第2組成物とから構成される2液レドックス型接着剤である。
【0018】
画像表示ユニットとして、例えば、携帯電話やコンピューターなどの電子デバイス、タッチパネルなどの光学ユニットなどに含まれる、液晶ディスプレイユニット、有機ELディスプレイユニット、LEDディスプレイユニット、プラズマディスプレイユニットなどが挙げられる。このような画像表示ユニットは、画像表示領域およびその周辺領域から構成される画像表示面を有する。
【0019】
透光性保護材料は、画像表示ユニットの画像表示面の全体またはその一部分を覆うシート状の材料であり、例えば光学ガラスにより形成されたガラス板、アクリル樹脂などのプラスチックフィルムを使用することができる。製造コスト、耐衝撃性などの観点からプラスチックフィルム、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルムが有利に使用できる。透光性保護材料の厚さは、一般に約188μm以上、約3mm以下であり、光透過率は波長460〜720nmの範囲にわたって、一般に約85%以上であり、約90%以上であることが有利である。
【0020】
透光性保護材料は、例えば画像表示ユニットの周辺領域に対応する領域に、遮光部を有している。遮光部は、例えば、印刷によって、または遮光テープを貼り付けることによって、画像表示ユニットに対向する透光性保護材料の表面上に形成されるのが一般的である。また、遮光部は、画像表示ユニットの画像表示領域を囲む黒色枠状に形成されるのが一般的である。例えば遮光部が枠状の場合、その枠幅は、一般に約1mm以上、約100mm以下であり、本開示によれば、枠状の遮光部の枠幅が例えば約10mm以上と大きい、大型の画像表示装置を製造する場合であっても、遮光部の下の光学的に透明な液状接着剤を十分に硬化させることができる。
【0021】
画像表示ユニットの画像表示面と透光性保護材料の間に配置される、光学的に透明な液状接着剤(LOCA)は、第1ベース剤および重合開始剤を含有する第1組成物と、第2ベース剤および還元剤を含有する第2組成物とから構成され、第1組成物および第2組成物を混合したときに起こるレドックス重合によって硬化する、2液レドックス型接着剤である。レドックス重合は、還元剤を重合開始剤と共存させることにより、重合開始剤の分解反応の活性化エネルギーが低下し、常温でも活性ラジカルが容易に発生することを利用した重合反応である。そのため、本開示の方法においては、加熱および/または紫外線などの光照射を必要とせずに、LOCAを硬化することができる。
【0022】
第1組成物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物(例えば(メタ)アクリル系化合物、ジビニルフタレート、ジビニルスクシネート、ジアリルフタレートなどのビニル化合物など)を含む第1ベース剤と、重合開始剤とを含む。少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物として、光学特性、接着力などの観点から、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系オリゴマーおよび(メタ)アクリル系ポリマーが有利に使用できる。(メタ)アクリル系モノマーとして、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどの一官能性(メタ)アクリル系モノマー;メチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリル系モノマーなどが挙げられる。(メタ)アクリル系オリゴマーおよび(メタ)アクリル系ポリマーとして、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの一官能性(メタ)アクリレートオリゴマーまたはポリマー;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの多官能性ポリエーテル(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ポリエステル(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーまたはポリマー;末端(メタ)アクリル変性液状ポリブタジエン、末端(メタ)アクリル変性液状ポリイソプレンなどが挙げられる。少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物の種類およびその量は、第1組成物および硬化したLOCAが所望の特性(例えば粘度、硬化収縮率、貯蔵弾性率など)を有するように選択される。これらの化合物を単独で用いて第1ベース剤としてもよく、2種以上組み合わせて第1ベース剤とすることもできる。(メタ)アクリル系モノマーをあらかじめ部分的に重合させたシロップを使用することもできる。硬化後のLOCAの硬化収縮および内部応力が小さい傾向があることから、特に大型の画像表示装置の製造においては、第1ベース剤が(メタ)アクリル系オリゴマーまたは(メタ)アクリル系ポリマーを含むことが有利である。
【0023】
本開示の方法で使用できる重合開始剤として、ラジカル重合開始剤として一般に使用される、有機過酸化物、無機過酸化物およびアゾ化合物が挙げられる。貯蔵安定性の観点から、還元剤非存在下での重合開始剤自体の開裂温度が約80℃以上、約120℃以下であることが有利である。有機過酸化物として、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエートなどが挙げられ、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられ、アゾ化合物として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などが挙げられる。これらの中でも、硬化速度が高いことから有機過酸化物が有利に使用でき、硬化速度および貯蔵安定性の観点から、クメンヒドロペルオキシドおよびtert−ブチルペルオキシベンゾエートが特に有利に使用できる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。重合開始剤は、第1組成物の質量に対して約0.1質量%以上、約5質量%以下の範囲で使用することができる。
【0024】
第2組成物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む第2ベース剤と、上記重合開始剤を分解することが可能な還元剤とを含む。第2ベース剤に含まれる少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物の種類およびその量は、第1ベース剤に含まれる化合物と同様であってよい。第2ベース剤は第1ベース剤と同一であってもよく、異なっていてもよい。第1ベース剤と第2ベース剤が同一である場合、二液の混合性、硬化物の均一性という点で有利である。
【0025】
本開示の方法で使用できる還元剤として、有機アミン、有機チオ尿素、有機酸金属塩、有機金属キレート化合物、金属硫化物、金属酸化物などが挙げられる。有機アミンとして、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジンなどが挙げられる。有機チオ尿素として、メチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、アセチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、エチレンチオ尿素などが挙げられる。有機酸金属塩として、酢酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、2−エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸バナジウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸鉄などが挙げられる。有機金属キレート化合物として、バナジルアセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート、銅アセチルアセトナートなどが挙げられる。金属硫化物として、硫化銅、硫化コバルト、硫化マンガン、硫化ニッケル、硫化鉄など、金属酸化物として酸化銅などが挙げられる。これらの中でも、有機アミン、有機チオ尿素、有機酸金属塩、および有機金属キレート化合物が有利に使用できる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。還元剤は、第2組成物の質量に対して約0.05質量%以上、約5質量%以下の範囲で使用することができる。画像表示領域に相当する領域に第2組成物が適用される場合、還元剤として、当該還元剤に起因する着色が少ないものを選択することが望ましい。
【0026】
第1組成物および第2組成物は、可塑剤、粘着付与剤(タッキファイヤ)、スペーサ、非吸収性無機酸化物、シランカップリング剤、重合禁止剤などの任意成分をさらに含んでもよい。
【0027】
可塑剤は、硬化したLOCAの柔らかさおよび可撓性を向上させるために、第1組成物および/または第2組成物に添加することができる。可塑剤として、合成ゴムに一般に使用される可塑剤、例えばビス(2−エチルヘキシル)アジペートなど、植物油、鉱物油などの油が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。可塑剤の量は、第1組成物および第2組成物の合計質量に対して、一般に約0.1質量%以上、または約1質量%以上とすることができ、約20質量%以下、または約10質量%以下とすることができる。
【0028】
粘着付与剤は、硬化したLOCAの粘着力を増大させるために、第1組成物および/または第2組成物に添加することができる。粘着付与剤として、ウッドロジン、ガムロジン、トールロジンなどのロジン(松脂)、石油系原料から作られる炭化水素樹脂、樹木または果物のテルペン原料に由来するテルペン樹脂などが挙げられる。粘着付与剤の量は、第1組成物および第2組成物の合計質量に対して、一般に約0.01質量%以上、または約0.1質量%以上とすることができ、約20質量%以下、または約10質量%以下とすることができる。
【0029】
スペーサは、ビーズ形状のセラミック、ガラス、シリケート、ポリマーまたはプラスチックであってもよく、硬化したLOCAの層を特定の厚みに設定するために、第1組成物および/第2組成物に添加することができる。好ましくは、スペーサはほぼ球状であり、その直径は約1μm以上、または約50μm以上、約5mm以下、または約1mm以下である。
【0030】
非吸収性無機酸化物は、可視光領域で実質的に透明な材料であり、硬化したLOCAの屈折率を変更するために、第1組成物および/または第2組成物に添加することができる。非吸収性無機酸化物として、Al23、ZrO2、TiO2、V25、ZnO、SnO2、ZnS、SiO2およびそれらの混合物が挙げられる。非吸収性無機酸化物は、組成物中での分散性を向上させるために、シラン処理などの表面処理を有していてもよい。非吸収性無機酸化物は、一般に平均粒径が約1nm〜約100nmの粒状であり、硬化したLOCAの光学特性を損なわない範囲の量で添加することができる。
【0031】
第1組成物および第2組成物は、目的の画像表示装置を効率的に製造するのに適した粘度を有しており、これらの組成物の粘度は、当該組成物を適用するために使用する装置に従って適宜決定することができる。例えば、第1組成物および第2組成物の粘度は、温度25℃、せん断速度1秒-1で測定したときに、約100mPa・s以上、約200mPa・s以上、または約1000mPa・s以上であってよく、約10000mPa・s以下、約8000mPa・s以下、または約5000mPa・s以下であってよい。
【0032】
上記第1組成物および第2組成物から構成されるLOCAは、従来公知の方法、例えばディスペンス、スロットダイ押出、印刷(例えばスクリーン印刷またはステンシル印刷)などによって、画像表示ユニットの画像表示面と透光性保護材料の間に配置することができる。例えば、従来公知の2液型接着剤用カートリッジに第1組成物および第2組成物を別々に充填し、カートリッジ先端に取り付けられた混合ノズルを介して第1組成物および第2組成物を混合し、ノズル先端から混合物を画像表示ユニットの画像表示面または透光性保護材料の表面にディスペンスすることができる。LOCAの硬化後の厚さは、画像表示ユニットと透光性保護材料を接着するのに十分であるように決定することができる。例えば、LOCAの硬化後の厚さが約50μm以上、約400μm以下となるように、第1組成物および第2組成物の混合物を適用することができる。
【0033】
LOCAの第1組成物および第2組成物を混合せずに画像表示ユニットの画像表示面および/または透光性保護材料の表面にそれぞれ適用し、画像表示ユニットと透光性保護材料を隣接して配置することにより、第1組成物および第2組成物を互いに接触、混合させてLOCAのレドックス重合を進行させることもできる。この実施態様では、第1組成物および第2組成物は、互いに接触、混合するまで硬化しない。そのため、これら組成物のポットライフを配慮する必要はなく、製造工程の自由度を向上させることができる。また、接触・混合によって硬化が開始することから、ゴム系接着剤やホットメルト接着剤で必要とされるオープンタイムをなくすことができ、製造時のタクトタイムを短縮することができる。
【0034】
図1に、本開示の一実施態様によるLOCAの配置手順を模式的に示す。ここでは、画像表示装置20の画像表示面に第1組成物42がスロットダイ押出、印刷などにより適用される(図1上段左、上が平面図、下が側面図)。一方、枠状の遮光部32を有する透光性保護材料30の表面、図1では遮光部32が印刷などによって形成された表面に、第2組成物44が適用される(図1上段右、上が平面図、下が側面図)。第1組成物を透光性保護材料の表面に適用し、第2組成物を画像表示装置の画像表示面に適用することもできる(図1とは異なる。)。
【0035】
次に、画像表示ユニット20の画像表示面、すなわち第1組成物42を適用した面と、透光性保護材料30の第2組成物44を適用した面を対向させて、画像表示ユニット20と透光性保護材料30が配置される(図1中段、側面図)。図1では、空気が混入しないように、画像表示ユニット20と透光性保護材料30をある一辺で位置合せし、その辺とは垂直の方向に第1組成物と第2組成物が接触した部分が増加するように、透光性保護材料30を徐々に下げていく様子が示されている。この操作によって、第1組成物42と第2組成物44が接触し少なくとも部分的に混合される。このようにして、LOCA40が画像表示ユニット20の画像表示面と透光性保護材料30の間に配置される(図1下段、側面図)。
【0036】
LOCAの硬化後の厚さが画像表示ユニットと透光性保護材料を接着するのに十分であるように、第1組成物および第2組成物の適用厚さを決定することができる。例えば、LOCAの硬化後の厚さが約50μm以上、約400μm以下となるように、第1組成物および第2組成物をそれぞれ適用することができ、第1組成物および第2組成物の適用厚さは、それぞれ例えば約15μm以上、約350μm以下とすることができる。ある実施態様では、第2組成物の厚さは、第1組成物の厚さの約20%以内、または約10%以内である。別の実施態様では、第1組成物の厚さは、第2組成物の厚さの約20%以内、または約10%以内である。
【0037】
図2に、本開示の別の実施態様によるLOCAの配置手順を模式的に示す。ここでは、画像表示装置20の画像表示面に第1組成物42および第2組成物44がストライプ状で交互にディスペンス、スロットダイ押出などにより適用される(図2上段左、上が平面図、下が側面図)。第1組成物および第2組成物をストライプ状で交互に透光性保護材料の表面に適用することもできる(図2とは異なる。)。
【0038】
次に、画像表示ユニット20の画像表示面、すなわち第1組成物42および第2組成物44を適用した面と、透光性保護材料30の表面、図2では遮光部32が印刷などによって形成された表面を対向させて、画像表示ユニット20と透光性保護材料30が配置される(図2中段、側面図)。図2では、画像表示ユニット20と透光性保護材料30を位置合せし、第1組成物および第2組成物のストライプの長手方向に向かって、隣り合う第1組成物と第2組成物が接触していくように、透光性保護材料30を徐々に下げていく様子が示されている。この実施態様では、第1組成物と第2組成物のストライプの間に設けられた空隙が、積層時に画像表示ユニットと透光性保護材料の間にある空気を取り除くための排気通路として機能するため、LOCA中への気泡の混入を効果的に防止することができる。この操作によって、第1組成物42および第2組成物44が押し広げられて、その結果隣の第2組成物および第1組成物とそれぞれ接触し少なくとも部分的に混合される。このようにして、LOCA40が画像表示ユニット20の画像表示面と透光性保護材料30の間に配置される(図2下段、側面図)。
【0039】
LOCAの硬化後の厚さが画像表示ユニットと透光性保護材料を接着するのに十分であるように、第1組成物および第2組成物の適用厚さを決定することができる。例えば、LOCAの硬化後の厚さが約50μm以上、約400μm以下となるように、第1組成物および第2組成物をそれぞれ適用することができ、第1組成物および第2組成物の適用厚さは、それぞれ例えば約50μm以上、約400μm以下とすることができる。第1組成物および第2組成物の適用幅は、それぞれ例えば約1mm以上、約10mm以下とすることができる。最も近接する第1組成物と第2組成物の間隔は、例えば約2mm以上、約10mm以下とすることができる。
【0040】
このようにして、第1組成物および第2組成物を少なくとも部分的に混合させることによって、レドックス重合によるLOCAの硬化が進行し、それによって画像表示ユニットと透光性保護材料が接着される。LOCAは、一般に、室温にて10分〜24時間硬化させることにより、十分な強度の接着力を提供する。本開示のLOCAは、従来の熱硬化反応のような加熱を特に必要としないが、硬化反応をより促進するために例えば約50℃〜約100℃に加熱してもよい。
【0041】
硬化後のLOCAは、ほとんどまたは全く収縮しないことが望ましい。例えば硬化後のLOCAの収縮率が約5%以下であることが望ましい。また、硬化後のLOCAは、ショアA硬度が約30以下、約20以下、または約10以下の柔らかい領域を有してもよい。硬化後のLOCAの貯蔵弾性率は、約1×10Pa以上、または約1×10Pa以上であってよく、約1×10Pa以下、または約1×10Pa以下であってよい。
【0042】
硬化後のLOCAは目的とする用途に適した光透過率を有する。例えば、硬化後のLOCAは、波長460〜720nmの範囲にわたって約85%以上の光透過率を有してもよい。また、硬化後のLOCAの厚さ1mmあたりの光透過率は、460nmで約85%以上、530nmで約90%以上、および670nmで約90%であってよい。このような光透過特性は、画像表示装置がフルカラーディスプレイユニットを含む場合に、可視光領域全体にわたって均一に光を透過させるのに有利である。硬化後のLOCAの屈折率は、画像表示ユニットの画像表示面および/または透光性保護材料の屈折率と一致するか近い(例えば約1.4以上、約1.7以下)ことが望ましい。
【0043】
第1組成物および/または第2組成物は、光重合開始剤をさらに含んでもよい。この実施態様では、紫外線などの光を照射することにより、光重合とレドックス重合の両方の反応を平行して進行させることができる。光照射を行うと光照射部分のLOCAは速やかに硬化するため、この実施態様では、保護材料を画像表示ユニットに仮止めすることができる。また、光照射後、例えば暗所に製品を保管している間でもレドックス重合は進行するため、光重合のみによる通常の硬化工程よりも光照射時間を短くすることができ、製造時のタクトタイムの短縮および省電力化を達成することができる。光重合開始剤として、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンゾイル安息香酸、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、カンファーキノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。光重合開始剤は、第1組成物および第2組成物の合計質量に対し約0.1質量%以上、約5質量%以下の範囲で使用することができる。
【0044】
上記実施態様においては、例えば、第1組成物および第2組成物を図3に模式的に示すようにパターン塗布してもよい。ここでは、画像表示装置20の画像表示面の、透光性保護材料30の遮光部32に対応する周辺領域に第2組成物44がディスペンス、スロットダイなどにより適用される。第2組成物の適用部分以外の、第2組成物によって画定される内側の表面領域の少なくとも一部に、光重合開始剤をさらに含む第1組成物42が、スロットダイ、印刷などにより、例えば矩形状に適用される(図3上段左、上が平面図、下が側面図)。第1組成物および第2組成物の適用パターンは、図3に示したものに限定されず、例えば、LOCA中への気泡の混入を効果的に防止することができる様々な連続または不連続な幾何学的パターンを使用することができる。また、第1組成物および第2組成物を適用する対象およびその領域は、様々な組み合わせが可能である。すなわち、図3に示す実施態様も含め、画像表示ユニットの画像表示面または透光性保護材料のいずれか一方の、遮光部に対応する領域内に、第1組成物または第2組成物のいずれか一方を適用し、画像表示ユニットの画像表示面または透光性保護材料のいずれか一方の、適用された組成物の適用部分以外の領域の少なくとも一部に他方の組成物を適用することができる。
【0045】
次に、画像表示ユニット20の画像表示面、すなわち第1組成物42および第2組成物44を適用した面と、透光性保護材料30の表面、図3では遮光部32が印刷などによって形成された表面を対向させて、画像表示ユニット20と透光性保護材料30が配置される(図3中段、側面図)。図3では、画像表示ユニット20と透光性保護材料30を位置合せし、透光性保護材料30の中央から外側に向かって第1組成物42を押し広げて、周辺にある第2組成物44と接触するように、透光性保護材料30を徐々に下げていく様子が示されている。この操作によって、第1組成物42および第2組成物44が接触し少なくとも部分的に混合される。このようにして、LOCA40が画像表示ユニット20の画像表示面と透光性保護材料30の間に配置される(図3下段、側面図)。
【0046】
図3に示すように、画像表示ユニット20と透光性保護材料30を接触させた後、光重合開始剤の感光波長域に波長分布を有する光源を用いた一般的な紫外線照射装置を用いて光照射を行う。光源として、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、および無電極ランプが挙げられる。紫外線照射量は、一般に約500mJ/cm2以上、約6000mJ/cm2以下である。この光照射によって、第1組成物に含まれる光重合開始剤が分解して活性ラジカルを発生し、光照射部分のLOCAが速やかに硬化する。また、それ以外の第1組成物と第2組成物が少なくとも部分的に混合した部分においてはレドックス重合が平行して進行するため、遮光部に対応する領域ではレドックス重合によってLOCAが硬化する。この実施態様では、光重合とレドックス重合の両方を利用することにより、遮光部に対応する領域を含む、LOCAの適用領域全面で均一な接着を達成することができる。また、この実施態様では、第2組成物に含まれる還元剤が着色性の高い場合でも、第2組成物を遮光部に対応する領域内、すなわち外部から見えない領域に適用することにより、そのような還元剤を使用することができる。
【0047】
LOCAの硬化後の厚さは、画像表示ユニットと透光性保護材料を接着するのに十分であるように決定することができる。例えば、LOCAの硬化後の厚さが約50μm以上、約400μm以下となるように、第1組成物および第2組成物をそれぞれ適用することができ、第1組成物および第2組成物の適用厚さは、それぞれ例えば約50μm以上、約400μm以下とすることができる。
【実施例】
【0048】
<実施例で用いた材料の略称>
AA:アクリル酸
LA:ラウリルアクリレート
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
NK Ester AM−90G:メトキシポリエチレングリコール400アクリレート(新中村化学工業株式会社製)
4−HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
NK Ester A−400:ポリエチレングリコール400ジアクリレート(新中村化学工業株式会社製)
V−190:エトキシエトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)
Light Ester P−1M:2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学株式会社製)
Paracron SN−50:アクリルポリマー(根上工業株式会社製)
SR489D:トリデシルアクリレート(Sartomer社製)
Bisomer PPA6:ウレタンアクリレート(Cognis社製)
SSM−7:ウレタンアクリレート(根上工業株式会社製)
SSM−9:ウレタンアクリレート(根上工業株式会社製)
Pinecrystal KE−311:水素化ロジンエステル(荒川化学工業株式会社製)
KBM−503:メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
DOA:ビス(2−エチルヘキシル)アジペート(新日本化学工業株式会社製)
Irgacure(登録商標)651:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製)
Lucirin(登録商標)TPO−L:エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(BASF社製)
Irganox 1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製)
ADEKASTUB AO503:ジトリデシルチオジプロピオネート(株式会社ADEKA製)
PERCUMYL(登録商標)H−80:クメンヒドロペルオキシド(日油株式会社製)
ET:エチレンチオ尿素
VO(AcAc)2:バナジルアセチルアセトナート
【0049】
<印刷領域を有するカバーシート(保護材料)の作製>
黒色印刷の代わりに、黒色テープ(65μm厚)をガラス板(53mm×100mm×2mm)の各長辺に貼り付けた。テープの幅は10mmであった。次に、スペーサとして、ガラス板の各角に、4mm×4mmの大きさの3M 8197テープ(175μm厚)を貼り付けた。図4Aおよび4Bに、作製したカバーシート50の上面図および側面図をそれぞれ模式的に示す。ここでは、ガラス板52に黒色テープ54が貼り付けられ、その上にスペーサ56が貼り付けられている。
【0050】
<剥離処理ガラス板の作製>
EGC−1720(3M NOVEC(商標) Electronic Coating EGC−1720という商品名で3Mカンパニーから入手可能)を用いてガラス板(53mm×100mm×2mm)を剥離処理した。先ず、ガラス板をEGC−1720の中に数秒間入れた。次に、100℃のオーブンに30分間置いた。最後に、HFE−7200(3M NOVEC(商標) Engineered Fluid HFE−7200という商品名で3Mカンパニーから入手可能)ですすいで、剥離処理ガラス板を得た。この剥離処理ガラス板の剥離処理面は、本開示における画像表示ユニットの画像表示面を模擬したものである。
【0051】
<例1>
LOCAを以下の工程によって調製した。最初に、LA 50質量部、NK Ester AM−90G 30質量部、4−HBA 20質量部、およびIrgacure(登録商標)651 0.04質量部をガラスフラスコ中で混合し、低圧紫外線光源を用いて、窒素パージ下で部分的に光重合して、粘ちょうなシロップ(約1000mPa・s)を得た。次に、得られたシロップ 20質量部、NK Ester A−400 0.2質量部、およびPERCUMYL(登録商標)H−80 0.8質量部を混合して、液状組成物1Aを調製した。また、別途、得られたシロップ 20質量部、NK Ester A−400 0.2質量部、およびET 0.05質量部を混合して、液状組成物1Bを調製した。液状組成物1Aおよび1Bを脱気した後に、それぞれ2液型カートリッジ(混合比1:1)に充填した。次に、混合ノズルをカートリッジに取り付け、液状組成物1Aおよび1Bを混合したLOCAを、剥離処理ガラス板(53mm×100mm×2mm)上にディスペンスした。続いて、その上に、上記のとおり作製したカバーシートを、黒色テープおよびスペーサを有するカバーシートの面がLOCAをコーティングしたガラス板の面と向かい合うように配置し、カバーシートの面をLOCAに接触させることによって、ガラス板に積層した。図5に、カバーシート50、剥離処理ガラス板60、およびそれらの間に配置されたLOCA40の側面図を模式的に示す。
【0052】
最後に、比較例と比較する目的で、黒色テープを透過する光を遮蔽するためのアルミニウムテープを黒色テープに沿ってガラス板に貼り付けた。さらに、端面全体をアルミニウムテープで覆った。15分後、アルミニウムテープおよび剥離処理ガラス板を剥がした。LOCAの表面を目視で観察した。
【0053】
<比較例1>
例1で調製したシロップ 20質量部、NK Ester A−400 1質量部、およびLucirin(登録商標)TPO−L 2.5質量部を混合した。得られた混合物を脱気した後に、剥離処理ガラス板(53mm×100mm×2mm)上にディスペンスした。続いて、その上に、上記のとおり作製したカバーシートを、例1と同様に積層した。黒色テープを透過する光を遮蔽するためのアルミニウムテープを黒色テープに沿ってガラス板に貼り付け、さらに、端面全体をアルミニウムテープで覆った。
【0054】
次に、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製F300S(V−バルブ、120W/cm)を用いて紫外線照射を行った。UV Power Puck II(EIT製)で測定した紫外線エネルギーは、2693mJ/cm2(UV−A)、1018mJ/cm2(UV−B)および37mJ/cm2(UV−C)であった。
【0055】
紫外線照射後、アルミニウムテープおよび剥離処理ガラス板を剥がした。LOCAの表面を目視で観察した。
【0056】
レドックス重合を利用する例1のLOCAの表面は完全に硬化しており、透光性領域と黒色テープで遮蔽された領域の間で違いは見られなかった。一方、比較例1のLOCAの表面は完全に硬化しておらず、黒色テープで遮蔽された領域の一部は液状のままであった。これは、この領域では紫外線が届かず重合が起こらなかったためと考えられる。
【0057】
<光学特性>
硬化した接着剤の透過率およびヘイズを、NDH2000(日本電色工業株式会社製)を用いて、それぞれJIS K7136(ISO14782)およびJIS K7361−1(ISO13468−1)に従って評価した。黒色テープを貼り付けなかった以外は、例1と同様にサンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0058】
<例2>
LOCAを以下の工程によって調製した。最初に、Paracron SN−50 15質量部、2−EHA 68質量部、V−190 12.75質量部、AA 4.25質量部、およびNK Ester A−400 0.5質量部をボトル中で混合した。混合物の粘度は約1700mPa・sであった。次に、得られた混合物 20質量部、およびPERCUMYL(登録商標)H−80 0.8質量部を混合して、液状組成物2Aを調製した。また、別途、得られた混合物 20質量部、およびET 0.05質量部を混合して、液状組成物2Bを調製した。液状組成物2Aおよび2Bを脱気した後に、それぞれ2液型カートリッジ(混合比1:1)に充填した。光学特性の評価用サンプルを例1と同様に作製した。結果を表1に示す。
【0059】
<例3>
LOCAを以下の工程によって調製した。最初に、SSM−7 25質量部、SSM−9 50質量部、LA 10質量部、Pinecrystal KE−311 15質量部、およびKBM−503 0.5質量部をボトル中で混合した。混合物の粘度は約5500mPa・sであった。次に、得られた混合物 20質量部、およびPERCUMYL(登録商標)H−80 0.8質量部を混合して、液状組成物3Aを調製した。また、別途、得られた混合物 20質量部、Light Ester P−1M 0.2質量部、およびVO(AcAc)2 0.05質量部を混合して、液状組成物3Bを調製した。液状組成物3Aおよび3Bを脱気した後に、それぞれ2液型カートリッジ(混合比1:1)に充填した。光学特性の評価用サンプルを例1と同様に作製した。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
<接着試験(引張試験)>
例2および例3の接着剤の硬化後の接着力を引張試験によって評価した。評価サンプルを以下のように作製して試験した。
【0062】
(1)液状組成物2Aおよび2B、または3Aおよび3Bを混合する。
(2)スペーサとして、打ち抜き加工によって200μm厚のシートに直径20mmの円形の穴を形成したものを用意する。スペーサの円形の穴が偏光子積層アルミニウム板の中央に位置するように、スペーサを偏光子積層アルミニウム板の上に配置する。
(3)(1)で得られた混合物を、スペーサの円形の穴の内側で偏光子積層アルミニウム板の上に所定量滴下する。
(4)その上にガラス板を配置し、さらにガラス板を押し付けて、過剰量の混合物をスペーサの円形の穴から外に排除し、その円形の穴を混合物で満たす。このようにして、混合物を直径20mm、厚さ200μmの薄い円板形状に保持する。
(5)サンプルを室温で一晩放置する。
(6)サンプルからスペーサを切断して除去する。
(7)図6に示すように、偏光子積層アルミニウム板80を固定し、ガラス板70を垂直方向(矢印の方向)に10mm/分の速度で引っ張る。接着力は直径20mmの円の面積あたりのニュートン(N/20mmΦ)として測定した。
【0063】
結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
<例4〜6および比較例2のLOCAの調製>
LOCAを以下の工程によって調製した。最初に、SSM−7 65質量部、SR489D 7質量部、PPA6 3質量部、Pinecrystal KE−311 15質量部、DOA 10質量部、KBM−503 0.5質量部、Lucirin(登録商標)TPO−L 1質量部、Irganox 1076 1質量部、およびAO503 1質量部をボトル中で混合した。得られた混合物の粘度は約3000mPa・sであった。この混合物を比較例2で使用した。
【0066】
次に、得られた混合物 40質量部およびPERCUMYL(登録商標)H−80 1.6質量部を混合して、液状組成物4Aを調製した。また、別途、得られた混合物 40質量部およびVO(AcAc)2 0.1質量部を混合して、液状組成物4Bを調製した。
【0067】
<印刷領域を有するカバーシート(保護材料)の作製>
黒色印刷の代わりに、黒色テープ(65μm厚)をガラス板(53mm×100mm×2mm)の各長辺に貼り付けた。テープの幅は10mmであった。次に、スペーサとして、ガラス板の各角に、4mm×4mmの大きさの3M 8195テープ(125μm厚)を貼り付けた。図4Aおよび4Bに、作製したカバーシート50の上面図および側面図をそれぞれ模式的に示す。ここでは、ガラス板52に黒色テープ54が貼り付けられ、その上にスペーサ56が貼り付けられている。
【0068】
<剥離処理ガラス板の作製>
8172J(光学的に透明な接着剤、3M社製)をガラス板(53mm×100mm×2mm)の上に積層し、Cerapeel MIB(T)(シリコーン処理ライナー、東レフィルム加工株式会社製)をその上に積層して、剥離処理ガラス板を得た。この剥離処理ガラス板の剥離処理面は、本開示における画像表示ユニットの画像表示面を模擬したものである。
【0069】
<例4>
液状組成物4Aを剥離処理ガラス板上に100μm厚でコーティングし、液状組成物4Bをカバーシート上に100μm厚でコーティングした。上記2つの基材のコーティング面が向かい合い接触するようにしてこれらの基材を配置したことにより、レドックス重合が開始した。12時間後、剥離処理ガラス板を剥がし、LOCAの表面を目視で観察したところ、LOCAは完全に硬化していた。
【0070】
<例5>
剥離処理ガラス板上に、液状組成物4Aおよび4Bを長さ約100mm、幅約3mm、ストライプ間隔約2mmで、それぞれ4本ずつ交互にストライプ状にディスペンスした後、カバーシートをその上に積層した。積層によって、液状組成物4Aおよび4Bが混合され、レドックス重合が開始した。12時間後、剥離処理ガラス板を剥がし、LOCAの表面を目視で観察したところ、LOCAは完全に硬化していた。
【0071】
<例6>
液状組成物4Aを、カバーシートの透光性領域に対応する、剥離処理ガラス板の領域上にのみコーティングし、液状組成物4Bを、カバーシートの遮光部(黒色テープ貼り付け部分)に対応する、剥離処理ガラス板の領域内にのみディスペンスした後、カバーシートをその上に積層した。積層によって、液状組成物4Aは遮光部の下まで広がり、この部分で液状組成物4Aおよび4Bが混合され、レドックス重合が開始した。透光性領域の液状組成物4Aを硬化するために、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製F300S(H−バルブ、120W/cm)を用いて紫外線照射(2J/cm2)を行った。12時間後、剥離処理ガラス板を剥がし、LOCAの表面を目視で観察したところ、LOCAは完全に硬化していた。
【0072】
<比較例2>
本比較例用の混合物を、剥離処理ガラス板上にディスペンスし、カバーシートをその上に積層した。フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製F300S(H−バルブ、120W/cm)を用いて紫外線照射(2J/cm2)を行うことにより、比較サンプルを作製した。剥離処理ガラス板を剥がし、LOCAの表面を目視で観察したところ、LOCAの表面は完全に硬化しておらず、遮光部の下のLOCAは液状のままであった。これは、遮光部の下の領域では紫外線が届かず重合が起こらなかったためと考えられる。
【符号の説明】
【0073】
10 画像表示装置
20 画像表示ユニット
30 透光性保護材料
32 遮光部
40 光学的に透明な液状接着剤
42 第1組成物
44 第2組成物
50 カバーシート
52 ガラス板
54 黒色テープ
56 スペーサ
60 剥離処理ガラス板
70 ガラス板
80 偏光子積層アルミニウム板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示面を有する画像表示ユニットを提供し、
遮光部を有する透光性保護材料を提供し、
前記画像表示ユニットの画像表示面と前記透光性保護材料の間に光学的に透明な液状接着剤を配置し、
前記光学的に透明な液状接着剤を硬化して、前記画像表示ユニットと前記透光性保護材料を接着する
ことを含む、画像表示装置の製造方法であって、
前記光学的に透明な液状接着剤が、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む第1ベース剤と重合開始剤とを含有する第1組成物と、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む第2ベース剤と前記重合開始剤を分解することが可能な還元剤とを含有する第2組成物とから構成される2液レドックス型接着剤である、画像表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物が、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、または(メタ)アクリル系ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合開始剤が有機過酸化物である、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記還元剤が、有機アミン、有機チオ尿素、有機酸金属塩、有機金属キレート化合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1組成物および/または前記第2組成物が光重合開始剤を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光学的に透明な液状接着剤を硬化する工程が光重合反応を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1組成物および前記第2組成物の粘度が、25℃、せん断速度1秒-1で測定したときに、100mPa・s以上、10000mPa・s以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1ベース剤と前記第2ベース剤が同一である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記光学的に透明な液状接着剤を配置する工程が、前記第1組成物または前記第2組成物のいずれか一方を前記画像表示ユニットの画像表示面に適用し、他方を前記透光性保護材料に適用すること、および前記画像表示ユニットの画像表示面と前記透光性保護材料を対向させて配置することにより、前記第1組成物および前記第2組成物を少なくとも部分的に混合することを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記光学的に透明な液状接着剤を配置する工程が、前記画像表示ユニットの画像表示面および前記透光性保護材料の間に、前記第1組成物および前記第2組成物をストライプ状で交互に配置すること、および前記画像表示ユニットの画像表示面と前記透光性保護材料を対向させて配置することにより、前記第1組成物および前記第2組成物を少なくとも部分的に混合することを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記光学的に透明な液状接着剤を配置する工程が、前記画像表示ユニットの画像表示面または前記透光性保護材料のいずれか一方の、前記遮光部に対応する領域内に、前記第1組成物または前記第2組成物のいずれか一方を適用し、前記画像表示ユニットの画像表示面または前記透光性保護材料のいずれか一方の、前記適用された組成物の適用部分以外の領域の少なくとも一部に他方の組成物を適用すること、および前記画像表示ユニットの画像表示面と前記透光性保護材料を対向させて配置することにより、前記第1組成物および前記第2組成物を少なくとも部分的に混合することを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219180(P2012−219180A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86146(P2011−86146)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】