説明

画像表示装置及びその制御方法

【課題】自発光型の画像表示装置において、動画ぼやけの低減とフリッカーの抑制を両立し、高品質な画像表示を行うための技術を提供する。
【解決手段】画像表示装置が、アクティブマトリクス駆動される複数の表示素子を有する表示パネルと、入力された画像データを複数のブロックに分割し、各ブロックの輝度特徴値を求める輝度特徴値算出手段と、前記輝度特徴値算出手段で求められた各ブロックの輝度特徴値に基づいて、明るい画像であるほどホールド幅が大きく、暗い画像であるほどホールド幅が小さくなるように、各ブロックのホールド幅を決定するホールド幅決定手段と、前記画像データの各ブロックに対応する前記表示パネルの表示素子を、前記ホールド幅決定手段で決定された各ブロックのホールド幅で駆動することにより、前記画像データに基づく画像を表示させる表示制御手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及びその制御方法に関するもので、詳しくは、フリッカー妨害の低減と動画ぼやけの少ない高画質の維持を両立するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン受像機に代表される動画像の表示装置には、CRTが長年用いられてきたが、近年では液晶デバイスを用いたパネルが主流となりつつある。図8(A)、図8(B)を用いて液晶デバイスの特徴を説明する。図8(A)の横軸は時間を、縦軸は画素の明るさを示している。ここでのフレームレート(駆動周波数)は、60Hzである。この図が示すように、液晶デバイスは60分の1秒の間発光を持続するため、「ホールド型」のデバイスと呼ばれている。
【0003】
ホールド型のデバイスは、動きに対し、ぼやけ(残像)を生じやすいという欠点を有している。図8(B)はその説明図である。図8(B)の横軸は画面上の位置を、縦軸は時間を示している。この図は矩形の図形が画面の左から右に動く例である。このような動きを眼で追う場合、眼が追従する動きに対して、60分の1秒の間画素が同じ位置に留まった状態が、動きにする相対的な遅れとなる。ホールド時間が長いと、この遅れの幅が広くなり、画面上では、動画ぼやけとして知覚されることとなる。図8(B)の一番下の図形は、追従視している時の見え方を示したものであり、破線で示すように、エッジ部分で、ある幅をもったぼやけが検知される。
【0004】
また、CRTと同様な発光特性をもつデバイスとして、フィールドエミッションタイプの表示装置の開発も進んでいる。図9(A)は、これらのデバイスの発光特性を説明するための図である。図8(A)と同様、横軸が時間、縦軸が画素の明るさを示している。このタイプの表示装置は、例えば60分の1秒のうちの一瞬だけ発光するので、「インパルス型」と呼ばれている。図9(B)は、インパルス型デバイスの動特性を示している。インパルス型デバイスは、ホールド型デバイスのような動画ぼやけ(残像)が発生しないことが特徴である。
【0005】
しかしながら、インパルス型のデバイスは、60分の1秒の周期で発光の有無を繰り返すので、この点滅をフリッカーとして知覚しやすいという欠点を有している。フリッカーは面積が大きくなるほど、また輝度が高くなるほど、目立ちやすいという特性があるため、近年の表示装置の大画面化の流れの中では、特に問題となりやすい。
【0006】
特許文献1では、有機ELディスプレイにおいて動画ぼやけとフリッカーを抑制するため、画面中央部では発光デューティを小さくして動画ぼやけを低減し、明暗を検知しやすい周辺部ではデューティを大きくしてフリッカーを低減する方法が開示されている。また特許文献2では、有機ELディスプレイにおいて、動画速度に応じて発光デューティを制御することにより動画ぼやけを抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−127918号公報
【特許文献2】特開2006−215141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アクティブマトリクス駆動される自発光型の表示装置の場合、上記のように発光デューティ(発光期間又はホールド期間ともよぶ)を制御することで、動画ぼやけを低減したり、フリッカーを抑制したりすることができる。しかしながら、動画ぼやけの低減とフリッカーの抑制はトレードオフの関係にあり、それらを同時満足することは難しい。特許文献1では、画面中央部で動画ぼやけ低減を優先し、周辺部でフリッカー抑制を優先するという方法を採用しているが、例えば中央部に明るい物体が存在し、周辺部に動きの速い物体が存在するような映像では、フリッカーも動画ぼやけも目立つ結果となる。すなわち、従来は、どのような映像に対しても動画ぼやけとフリッカーの両方を低減することのできる好適な方法は存在しなかった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、自発光型の画像表示装置において、動画ぼやけの低減とフリッカーの抑制を両立し、高品質な画像表示を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様は、画像表示装置であって、アクティブマトリクス駆動される複数の表示素子を有する表示パネルと、入力された画像データを複数のブロックに分割し、各ブロックの輝度特徴値を求める輝度特徴値算出手段と、前記輝度特徴値算出手段で求められた各ブロックの輝度特徴値に基づいて、明るい画像であるほどホールド幅が大きく、暗い画像であるほどホールド幅が小さくなるように、各ブロックのホールド幅を決定するホールド幅決定手段と、前記画像データの各ブロックに対応する前記表示パネルの表示素子を、前記ホールド幅決定手段で決定された各ブロックのホールド幅で駆動することにより、前記画像データに基づく画像を表示させる表示制御手段と、を有する画像表示装置を提供する。
【0011】
本発明の第2態様は、アクティブマトリクス駆動される複数の表示素子を有する表示パネルを備える画像表示装置の制御方法であって、入力された画像データを複数のブロックに分割し、各ブロックの輝度特徴値を求める輝度特徴値算出ステップと、前記輝度特徴値算出ステップで求められた各ブロックの輝度特徴値に基づいて、明るい画像であるほどホールド幅が大きく、暗い画像であるほどホールド幅が小さくなるように、各ブロックのホールド幅を決定するホールド幅決定ステップと、前記画像データの各ブロックに対応する前記表示パネルの表示素子を、前記ホールド幅決定ステップで決定された各ブロックのホールド幅で駆動することにより、前記画像データに基づく画像を表示させる表示制御ステップと、を有する画像表示装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自発光型の画像表示装置において、動画ぼやけの低減とフリッカーの抑制を両立し、高品質な画像表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の画像表示装置のブロック図。
【図2】第1の実施形態のホールド幅の制御を説明する図。
【図3】表示画像と各ブロックのホールド幅の一例を示す図。
【図4】第2の実施形態の画像表示装置のブロック図。
【図5】第2の実施形態のホールド幅の制御を説明するための図。
【図6】表示画像の種類、動き速度、ホールド幅の関係を示す表。
【図7】第2の実施形態のホールド幅の制御の変形例を説明する図。
【図8】従来のホールド型デバイスの特性を説明するための図。
【図9】従来のインパルス型デバイスの特性を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、複数の自発光型の表示素子をアクティブマトリクス駆動する方式の画像表示装置において、表示する画像に応じて動画ぼやけとフリッカーを適応的に抑制する技術に関する。ここで自発光型の表示素子としては、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、電子放出素子(冷陰極素子)と蛍光体からなる発光素子などがある。OLEDを表示素子として用いる表示装置は有機ELディスプレイとよばれ、電子放出素子と蛍光体からなる発光素子を表示素子として用いる表示装置はフィールドエミッションディスプレイとよばれる。
【0015】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、画像を複数のブロック(領域)に分割し、各ブロックの部分的な輝度特徴値(本例ではAPL値)を検出し、その輝度特徴値に応じてブロック毎のホールド幅を適応的に決定するという構成を採用する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。図2は、第1の実施形態におけるホールド幅の制御を説明するための図である。
図1において、画像表示装置は、画像メモリ101、駆動ホールド幅決定回路(ホールド幅決定手段)104、表示制御回路(表示制御手段)105、表示パネル106、フリッカー量検出回路(輝度特徴値算出手段)107を備えている。
【0017】
画像信号100として入力される1フレーム分の画像データは画像メモリ101に一時的に記憶される。フリッカー量検出回路107は、画像メモリ101から1フレーム分の画像データを受け取り、その画像データを複数のブロックに分割する。本実施形態では、上段、中段、下段の3つのブロックに画像が分けられる。そしてフリッカー量検出回路107は、各ブロックの部分画像から、ブロックごとに輝度の平均であるAPL(Average Picture Level)値を算出する。ブロックごとのAPL値は駆動ホールド幅決定回路10
4に入力される。
【0018】
駆動ホールド幅決定回路104は、APL値に基づいて、ブロックごとの駆動ホールド幅(ホールド幅、発光デューティ、又は発光期間ともよぶ)を決定する。表示制御回路105は、決定された駆動ホールド幅で、各ブロックに対応する表示パネル106上の表示素子を駆動することで、画像信号100に基づく画像表示を行う。
【0019】
続いて、図面を用いて具体的な駆動方法について説明をする。図2(A)は、APL値と駆動ホールド幅の対応関係を示すテーブルの例である。横軸がAPL値であり、縦軸が駆動ホールド幅である。なおAPL値は0〜1.0の範囲に正規化されている。図2(B)は、それぞれのAPL値に対応する駆動ホールド幅と輝度を模式的に示している。駆動周波数は60Hzの例である。
【0020】
一般的に、画像が明るいほどフリッカーが目立ち、画像が暗いほどフリッカーが目立ちにくい傾向がある。そこで、APL値が大きいほどホールド幅を大きくしてフリッカー抑制効果を強くし、逆にAPL値が小さいほどホールド幅を小さくして動画ぼやけ低減効果を強くする。具体的に本実施形態では、APL値が閾値TH2より大きく、画像がフル階調の白表示に近い場合には、ホールド幅が最大となるようにし、APL値が閾値TH1より小さく、画像が黒表示に近い場合には、ホールド幅が最小となるようにする。TH1<TH2である。APL値がTH1とTH2の間の値である場合は、APL値に比例してホールド幅を変化させる。
【0021】
人の眼が検知する表示画像の明るさは、表示素子の発光輝度と発光時間の積にほぼ比例
する。それゆえ、ブロックごとに単純にホールド幅(発光時間)を異ならせると、ホールド幅の小さいブロックほど暗く見えてしまい、画像の明るさに面内ばらつきが生じる。そこで、図2(B)に示すように、ホールド幅に応じて輝度を調整するとよい。すなわち、ホールド幅が大きいほど輝度を小さく(ホールド幅が小さいほど輝度を大きく)して、ブロック間で明るさのばらつきが生じないようにするとよい。
【0022】
図3は、表示パネル106に表示される画像と各ブロックのホールド幅の一例を示している。上段のブロックAの画像は暗い背景の中に明るい動く物体30が存在する画像であり、中段のブロックBの画像は白い背景の中に暗い動く物体31が存在する画像であり、下段のブロックCは白い背景のみの画像である。APL値は、ブロックAが最も小さく、ブロックCが最も大きい。図3に示すように、APL値が小さいブロックAでは、小さいホールド幅が選択され、インパルス型デバイスに近い駆動が行われる。したがって、ブロックA内の動く物体に関しては動画ぼやけの発生を低減できる。また、ブロックAの画像は暗いため、ホールド幅を小さくしてもフリッカーの問題が生じることはない。APL値が大きいブロックCでは、大きいホールド幅が選択され、ホールド型デバイスに近い駆動が行われる。これにより、明るい画像であるブロックCにおいて、フリッカーの発生を抑制することができる。また、中間の画像特性をもつブロックBにおいては、中間のホールド幅が選択され、フリッカーの抑制と動画ぼやけの低減の両方の効果を得ている。
【0023】
ホールド幅を可変にする駆動方法としてはどのような方法を用いてもよい。例えば、フルHDの表示パネル(1080ライン)を3ブロックに等分した場合、1ブロックには360ラインが含まれる。1/60秒の3分の1の時間、すなわち1/180秒をこのブロックの駆動期間に割り当てるとすると、1ラインずつ順次発光させた場合は、各ラインのホールド幅は約0.015msecとなり、10ラインずつ発光させた場合は、約0.15msecとなる。このようにライン順次駆動における発光ライン数を変えることでホールド幅を変えることができる。ただしこの方法に限らず、いわゆる黒挿入のようにブロック全体のラインの発光/消灯をホールド幅(発光デューティ)に従って一斉に切り替えてもよいし、ラインごと又はエリアごとに任意のタイミングで発光を開始するようにしてもよい。
【0024】
以上述べたように、本実施形態の駆動方法によれば、ブロックごとの輝度特徴値に応じてブロックごとにホールド幅を決定したことで、自発光型の画像表示装置において、動画ぼやけの低減とフリッカーの抑制を両立し、高品質な画像表示を行うことができる。
また、明るい画像を表示するには大きい駆動電力が必要となるが、本実施形態では、明るい画像にパルス幅が広く波高値が小さい駆動波形を用いるため、パルス幅が狭く波高値が大きいピーク状の駆動波形を用いた場合に比べて消費電力の低減を図ることができる。
【0025】
なお、本実施形態では3つのブロックに分割したが、2つのブロックや4つ以上のブロックに分割してもよい。またラインごとにホールド幅を可変することもできる。また上下の分割だけでなく、左右に分割したり、タイル状に(上下左右に)分割したりすることも可能である。またブロックの形状も矩形に限らず、任意に設定してよい。
【0026】
また、ブロックのサイズ(縦幅、横幅など)は固定でもよいし、可変でもよい。可変にする場合は、1つの画像内の輝度特徴値の分布に合わせてブロックの境界を決めるとよい。例えば、ラインごと(又はエリアごと)に輝度特徴値を求め、公知のクラスタリング手法により、同じような輝度特徴値をもつ複数のライン(又は複数のエリア)をグルーピングすることで、ブロック境界を決めることができる。このような方法によれば、画像の中の明るい部分と暗い部分の分布に合わせて適切なブロックサイズ及びブロック境界が設定されるため、動画ぼやけの低減とフリッカーの抑制の効果をより高めることができる。
【0027】
また、APL値とホールド幅の対応関係は図2(A)のものに限られない。例えば、閾値TH1、TH2は、0≦TH1<TH2≦1.0を満たせば、どのような値に設定してもよい。また閾値を1つだけ設け、APL値が閾値以下の場合は小さいホールド幅、APL値が閾値より大きい場合は大きいホールド幅というように二段階に切り替える構成でもよい。またTH1とTH2の間では、ホールド幅を線形ではなく、非線形に変化させてもよい。
【0028】
[第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、画像を複数のブロックに分割し、各ブロックの輝度特徴値と動き速度を検出し、その輝度特徴値と動き速度に応じてブロック毎のホールド幅を適応的に決定するという構成を採用する。
【0029】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。図4において、第1の実施形態の構成(図1)と同じ機能ブロックには同一の符号が付されている。すなわち、第2の実施形態の画像表示装置は、動画速度検出回路(速度検出手段)108を備える点が特徴である。
動画速度検出回路108は、画像メモリ101から2フレーム分の画像データを受け取り、各ブロックの部分画像における動き速度を検出する。ここでは、ブロックマッチングなどの公知の手法によりフレーム間の動きベクトルを求め、1つのブロック内での最大の動きベクトルをそのブロックの動き速度(フレームあたりの画像の移動ピクセル数(pixel per frame(以下ppfと記す))とする。ブロック毎のppf値は駆動ホールド幅決
定回路104に入力される。
【0030】
続いて、図面を用いて具体的な駆動方法について説明をする。図5は、APL値と動き速度と駆動ホールド幅の対応関係を示すテーブルの例である。横軸がAPL値であり、縦軸が駆動ホールド幅である。なおAPL値は0〜1.0の範囲に正規化されている。
【0031】
図5において「(動画)」と記載したグラフは、第1の実施形態のものと同じである。すなわち、APL値が大きいほどホールド幅を大きくしてフリッカー抑制効果を強くし、逆にAPL値が小さいほどホールド幅を小さくして動画ぼやけ低減効果を強くしたものである。一方、図5において「(静止画:0ppf)」と記載したグラフは、写真画像のような動きのない静止画を表している。このような静止画の場合は、動画ぼやけは元々問題とならないため、APL値に関係なくホールド幅最大の駆動を行う。すなわち、静止画表示の場合は、パルス幅が広く且つ波高値の小さい駆動波形が用いられるため、図5の動画や高速動画に比べて、効率の良い(消費電力の小さい)駆動が可能となる。また、本発明者による知見によると、ある程度速い動画(32ppf超)に対しては、フリッカーよりも動画ぼやけの方が気になるためAPL値に関係なく、動画応答性にすぐれたホールド幅の狭い駆動とする。
【0032】
更に詳細に動画ぼやけに関する説明をする。例えば、本発明者の知見によると、図6の表に示すように、動き速度に対して、動画ぼやけのないホールド幅が規定される。なお図6の表は、TVモニタがフルHD(有効画素数1920本×1080本)で60P(駆動周波数60Hz)の場合の例を示している。
【0033】
まず、動画の速度は、表示画像の種類により大きく異なる。表示画像の種類により画面の一端から他端に移動するのに要する時間が異なり、それは、例えば1フレームあたりのピクセル数(ppf値)で表される。例えば、静止画では、画像は動かないため0ppfであり、ゆっくりパンする風景画などでは、一端から他端まで約8秒掛かる。各表示画像の動き速度は、以下の式で表せる。
【0034】
風景画:4(ppf)=水平解像度1920(本)/(60(Hz)×約8(秒))
ドラマ:8(ppf)=水平解像度1920(本)/(60(Hz)×約4(秒))
スポーツ:16(ppf)=水平解像度1920(本)/(60(Hz)×約2(秒))
ゲーム・テロップ:32(ppf)=水平解像度1920(本)/(60(Hz)×約1(秒))
高速動画像:64(ppf)=水平解像度1920(本)/(60(Hz)×約0.5(秒))
【0035】
前記の動き速度に対する動画ぼやけについて、本発明者らが評価した結果は、以下のとおりである。なお、駆動周波数が60Hz、すなわち、1フレーム周期が1/60(秒)=16.7msの場合を考えている。静止画に関しては、動画ぼやけのないホールド幅は16.7msとなり、完全なホールド幅の駆動(以後ホールド率1と表記する)の駆動も可能であった。4ppfの風景画では、動画ぼやけのないホールド幅は、8.4ms(ホールド率0.5)以下のホールド幅となる。ドラマなどでは、4.2ms(ホールド率0.25)以下、スポーツなどでは、2.1ms(ホールド率0.12)以下、ゲーム・テロップなどでは、1.1ms(ホールド率0.06)以下となる。更に高速な動画などでは、0.5ms(ホールド率0.03)以下のホールド幅となる。
【0036】
図7を用いて、図6の評価結果を考慮したAPL値および動画速度と駆動波形のホールド幅の制御方法の一例について説明をする。写真画像などの動きの無い静止画(0ppf)においては、APL値に関係なくホールド幅最大(ホールド率1)の駆動を行う。風景画など4ppfの動画に関しては、動画ぼやけの目立たないホールド率は0.5である。ここでは、APL値が0の場合にホールド率を0.5とし、APL値が大きくなるにしたがってホールド率を増している。同様に、ドラマなど8ppfの動画に関しては、APL値が0の場合にホールド率を0.25とし、APL値が大きくなるにしたがってホールド率を増している。スポーツなど16ppfの動画に関しては、APL値が0〜TH1の場合にホールド率を0.125とし、APL値がTH1より大きくなるとホールド率を増している。ゲーム・テロップなど32ppfの動画に関しては、APL値が0〜TH2の場合にホールド率を0.06とし、APL値がTH2より大きくなるとホールド率を増している。64ppfの高速動画に関しては、APL値に関係なく、ホールド率を0.03で固定している。
【0037】
以上述べたように、本実施形態の駆動方法によれば、ブロックごとの輝度特徴値と動き速度に応じてブロックごとにホールド幅を決定したことで、動画ぼやけの低減とフリッカーの抑制を両立し、高品質な画像表示を行うことができる。特に本実施形態では、動きの速いブロック、つまり動画ぼやけが問題となりやすいブロックほど、ホールド幅が小さく制御されるため、動画ぼやけの低減を確実に図ることができる。
【0038】
なお、ブロックの数、サイズ、形状、分割の方向などは、第1の実施形態と同様、任意に設定することができる。また、第1の実施形態でも述べたように、ラインごと(又はエリアごと)に輝度特徴値を求め、公知のクラスタリング手法により、同じような輝度特徴値をもつ複数のライン(又は複数のエリア)をグルーピングすることで、ブロック分割を行うこともできる。
【0039】
また、APL値と動き速度とホールド幅の対応関係は図5や図7のものに限られない。例えば、ホールド幅をAPL値に対して非線形に変化させてもよい。また、0ppf、4ppf、8ppf・・・のように動き速度を離散的に設定するのではなく、任意の動き速度に対してホールド幅を求められるようにしてもよい。これは任意の動き速度に関するテーブルをもたせることでも実現できるし、離散的な動き速度のテーブルを補間することで
も実現できる。また、第2の実施形態では、動きベクトル検出によりブロックごとの動き速度を求めたが、入力画像信号のコンテンツの種類(カテゴリ)の情報が取得できる場合には、図6のような画像と動き速度の対応テーブルを参照して、動き速度の情報を得ることも好ましい。
【0040】
また、上述した各実施形態では輝度特徴値としてAPL値を用いたが、画像の明るさ又は暗さを示す指標であればどのような特徴値を用いてもよい。例えば、輝度の最大値、最小値、最頻値などを利用できる。
【符号の説明】
【0041】
100:画像信号、104:駆動ホールド幅決定回路、105:表示制御回路、106:表示パネル、107:フリッカー量検出回路、108:動画速度検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置であって、
アクティブマトリクス駆動される複数の表示素子を有する表示パネルと、
入力された画像データを複数のブロックに分割し、各ブロックの輝度特徴値を求める輝度特徴値算出手段と、
前記輝度特徴値算出手段で求められた各ブロックの輝度特徴値に基づいて、明るい画像であるほどホールド幅が大きく、暗い画像であるほどホールド幅が小さくなるように、各ブロックのホールド幅を決定するホールド幅決定手段と、
前記画像データの各ブロックに対応する前記表示パネルの表示素子を、前記ホールド幅決定手段で決定された各ブロックのホールド幅で駆動することにより、前記画像データに基づく画像を表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記輝度特徴値はAPL値であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記輝度特徴値算出手段は、1フレームの画像データにおける輝度特徴値の分布に合わせてブロックの境界を決めることを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
入力された画像データの各ブロックにおける動き速度を求める速度検出手段をさらに有し、
前記ホールド幅決定手段は、前記輝度特徴値算出手段で求められた各ブロックの輝度特徴値に加え、前記速度検出手段で求められた各ブロックの動き速度に基づいて、動きが遅く且つ明るい画像であるほどホールド幅が大きく、動きが速く且つ暗い画像であるほどホールド幅が小さくなるように、各ブロックのホールド幅を決定するものである
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記動き速度は、フレームあたりの移動ピクセル数であることを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
アクティブマトリクス駆動される複数の表示素子を有する表示パネルを備える画像表示装置の制御方法であって、
入力された画像データを複数のブロックに分割し、各ブロックの輝度特徴値を求める輝度特徴値算出ステップと、
前記輝度特徴値算出ステップで求められた各ブロックの輝度特徴値に基づいて、明るい画像であるほどホールド幅が大きく、暗い画像であるほどホールド幅が小さくなるように、各ブロックのホールド幅を決定するホールド幅決定ステップと、
前記画像データの各ブロックに対応する前記表示パネルの表示素子を、前記ホールド幅決定ステップで決定された各ブロックのホールド幅で駆動することにより、前記画像データに基づく画像を表示させる表示制御ステップと、
を有することを特徴とする画像表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−181353(P2012−181353A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44176(P2011−44176)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】