説明

画像表示装置及び画像表示方法

【課題】画像を投影した表示画面上に書き込んだ情報を表示した画像に最適なサイズで合成する。
【解決手段】画像を投影装置6で画像表示面5に投影し、画像表示部5の投影した画像に筆記具で追記事項を書き込み、書き込んだ追記事項の画像を投影した画像に合成するとき、追記事項の画像の線幅を変えずに投影した画像に適した線幅になるように投影した画像の変倍率を算出して拡大表示する。筆記具で追記事項を所定の領域に描画して追記事項の画像を投影した画像に合成することが指示されると、投影装置6で画像表示部5に投影している画像の投影光を一時遮光して撮影装置7により画像表示部5に描画された追記事項を撮影し、撮影した追記事項の画像を拡大して表示されている画像に合成して画像表示面5に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子化した文書や画像などを画面表示し、表示した画面に書き込み等をして各種情報を表示する画像表示装置及び画像表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の人が表示画面を見ながら必要な事項を書き込んで各種情報を表示する表示装置が特許文献1等に開示されている。特許文献1に示された画像表示装置は、画像表示部の透明なスクリーン等の天板に下側から画像を投影し、この画像表示部の表示画面上にホワイトボード用のマーカーペンによって書き込みを行い、書き込んだ内容を撮像手段で撮影し、撮影された画像から書き込み情報を抽出して表示画像に合成するようにしている。また、タッチセンサや電子ペン等によって表示画像に情報を入力するといった方法も公知である。
【0003】
このように画像表示部に画像を表示する場合、通常、画像表示装置で設定される解像度に基づき決定される表示可能なサイズを超える大きさの画像を表示するときは、その画像の一部領域のみを画面上で表示している。このため表示されている領域外の内容を表示させる場合には、縦及び横のスクロールによって画像表示装置の表示領域外の内容を表示させていた。しかしながらスクロールによって移動するまで、表示領域外の内容が分からないため、効率的に移動できず、使い勝手が悪かった。
【0004】
この使い勝手の悪さを解消するため、特許文献2に示すように、縮小表示を用いて画像表示装置で表示可能なサイズを超えた大きさの画像を表示し、操作者が所望の領域を選択してその領域を抽出して拡大表示するようにしている。また、特許文献3に示された画像表示装置は、画像から矩形領域を抽出し、表示画面より大きい場合は複数の小矩形領域に分割し、各矩形領域の重心点を画面遷移点として設定し、各矩形領域の遷移順序を設定して、各矩形領域を遷移順序で選択し、選択した矩形領域の画面遷移点を表示画面中心の基準点に合わせて選択した矩形領域を表示画面に表示している
【特許文献1】特開2004−109402号公報
【特許文献2】特開2001−100718号公報
【特許文献3】特開2004−233435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すように、画像を投影した表示画面上にホワイトボード用のマーカーペンによって書き込みを行って、その内容を撮影して表示画像に合成していると、書き込みを行った内容を撮影する撮影手段の解像度とペンの太さによって入力できる線の太さ(解像度)に限界がある。電子ペンやタッチセンサを利用する場合には、入力する線の太さを逐次設定しながら入力する方法もあるが、表示された画像の大きさによっては、電子ペンや人の指で細かい描画を行うのは困難である。
【0006】
また、特許文献2に示すように、画像表示装置で表示可能なサイズを超える大きさの画像を表示するとき、画像を縮小して表示して表示する所望の領域を選択して拡大表示する方法は、拡大縮小の操作に加えて縦横のスクロールを伴った移動操作を行う必要があり、非常に煩雑であるという短所がある。また、特許文献3に示すように、表示する画像を複数の小矩形領域に分割し、矩形領域の重心点を求め、スクロール動作によって隣接する図形の重心点が表示画面の中心点に重なるように移動する方法は、所定の動作により隣接する矩形領域に移動するものであり、任意の領域に移動するまでには複数回の移動動作を繰り返す必要があるという短所がある。
【0007】
この発明は、このような短所を改善し、画像を投影した表示画面上に書き込んだ情報を表示した画像に最適なサイズで合成するとともに、表示画面で表示可能なサイズを超える大きさの画像を表示するとき、スクロール動作の煩雑さを除去して画面の移動と表示を円滑に行うことができる画像表示装置と画像表示方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の画像表示装置は、画像を表示するとともに入力手段で入力情報が書き込み可能な表示部と、該表示部に入力手段で書き込んだ入力情報を取得する入力情報取得手段と、前記表示部に画像を表示するとともに前記入力情報取得手段で取得した入力情報を表示した画像に合成する制御装置とを有する画像表示装置において、前記制御装置は、前記表示部に表示された画像の表示拡大・縮小率を、表示する画像の物理的サイズと前記表示部の解像度と前記入力手段によって書き込まれる入力情報の物理的サイズ及び前記入力情報取得手段の分解能から決定することを特徴とする。
【0009】
前記制御装置は、前記表示部に全体が表示された画像を前記決定した画像の表示拡大・縮小率をもとに複数領域に分割し、分割した任意の領域が選択されたとき、選択された領域を前記決定した画像の表示拡大・縮小率をもとに変倍して前記表示部に表示する。
【0010】
また、制御装置は、前記変倍して表示した画像に前記入力情報を合成した後、前記複数領域に分割した画像に切り替えて表示する。
【0011】
さらに、制御装置は、前記表示部に表示した画像内の図形の中心位置を抽出し、抽出した中心点が前記表示部の中央になるようにして、前記決定した画像の表示拡大・縮小率をもとに変倍して前記表示部に表示しても良い。
【0012】
この画像内の図形の中心位置を抽出するとき、制御装置は、前記表示部に表示した画像を複数画素ごとにメッシュに分割し、分割した複数画素内の論理和をとり、連結パターンごとにラベリングを行い個々の図形ブロックを抽出し、抽出されたブロックの中心を求めて画像内の図形の中心位置を抽出することが望ましい。
【0013】
この発明の画像表示方法は、画像を表示した表示部に入力手段で入力情報を書き込み、書き込んだ入力情報を表示した画像に合成する画像表示方法において、前記表示された画像の表示拡大・縮小率を、表示する画像の物理的サイズと前記表示部の解像度と前記入力手段によって書き込まれる入力情報の物理的サイズ及び前記画像に合成する入力情報の分解能から決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、画像を表示した表示部に入力手段で入力情報を書き込み、書き込んだ入力情報を表示した画像に合成するとき、表示された画像の表示拡大・縮小率を、表示する画像の物理的サイズと表示部の解像度と入力手段によって書き込まれる入力情報の物理的サイズ及び画像に合成する入力情報の分解能から決定する事により、表示画像に適したサイズで入力情報を表示画像に描画することができる。
【0015】
また、表示部に全体が表示された画像を決定した画像の表示拡大・縮小率をもとに複数領域に分割し、分割した任意の領域が選択されたとき、選択された領域を前記決定した画像の表示拡大・縮小率をもとに変倍して前記表示部に表示することにより、簡単な処理で所望の領域を表示することができ、スクロール動作の煩雑さを除去して、より円滑に所望の画像領域を表示することができる。
【0016】
さらに、変倍して表示した画像に入力情報を合成した後、複数領域に分割した画像に切り替えて表示することにより、表示する画像のサイズが大きい場合でもスクロール動作を繰り返して目的の領域を捜す必要なしに入力情報を書き込む領域を選択することができる。
【0017】
また、表示部に表示した画像内の図形の中心位置を抽出し、抽出した中心点が表示部の中央になるようにして、決定した画像の表示拡大・縮小率をもとに変倍して表示部に表示することにより、スクロール動作を繰り返さずに迅速に入力情報を書き込む領域を選択することができる。
【0018】
この画像内の図形の中心位置を抽出するとき、表示した画像を複数画素ごとにメッシュに分割し、分割した複数画素内の論理和をとり、連結パターンごとにラベリングを行い個々の図形ブロックを抽出し、抽出されたブロックの中心を求めて画像内の図形の中心位置を抽出することにより、個々の図形ごとの中心位置を容易に抽出することができ、処理の高速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1はこの発明の画像表示装置の構成図である。図に示すように、画像表示装置1は表示装置2と制御装置3を有する。表示装置2は、装置本体4の一方の端部に画像表示面5を有し、装置本体4内には投影装置6と例えばCCDカメラからなる撮影装置7を有する。画像表示面5はホワイトボード用のマーカーペン等の筆記具で書き込みできる保護シート又は加工が施されたスクリーンで構成されている。投影装置6は制御装置3から出力された画像を画像表示面5に表示する。撮影装置7は画像表示面5に投影した画像にマーカーペン等の筆記具で書き込んだ追記情報の画像を撮影する。この撮影装置7で画像表示面5に書き込んだ追記事項を撮影するとき、投影装置7で投影された画像を撮影しないように投影光を一時遮光状態にする。この遮光状態にするとき、投影画像を全画面黒色にしても良いし、投影装置6に遮光板を設け、撮影の際に物理的に遮光するようにしても良い。ここで画像表示装置1は投影装置6と撮影装置7を画像表示面5の背面側に設置された背面投影型になっているが、一般的なプロジェクションテレビのように画像表示面5が垂直である縦型タイプでも良いし、投影装置6と撮影装置7を画像表示面5の前面側に設置しても良い。
【0020】
制御装置3は、装置全体を管理するCPU8と制御情報や各種処理情報を記憶する情報記憶部9と操作入力部10と投影画像入力部11と画像記憶部12と投影制御部13と撮影制御部14と撮影画像抽出部15と変倍率演算部16及び画像合成部17を有する。情報記憶部9にはあらかじめ画像表示面5の横と縦のサイズa×b(mm)と横と縦の解像度sW×sH(pix)及び撮影装置7の解像度cW×cH(pix)があらかじめ格納されている。操作入力部10は、例えば各種操作キーを有するキーボードやマウス等からなり、操作者等が各種処理命令や各種情報、例えば画像表示部5に投影する画像の物理的サイズと画像表示面5に追記事項を描画するマーカーペン等の筆記具の太さpW及び表示した投影画像に合成する追記事項の画像の線幅iW等を入力する。投影画像入力部11は投影装置6で投影する画像を入力する。画像記憶部12は投影画像入力部11で入力した画像や撮影装置7で撮影した追記事項の画像を記憶する。投影制御部13は投影装置6の投影動作を制御する。撮影制御部14は撮影装置7の撮影動作を制御する。撮影画像抽出部15は撮影装置7で撮影した追記事項の画像を抽出する。変倍率演算部16は、画像表示面5の物理的サイズと表示する画像の物理的サイズと画像表示部5の解像度と撮影装置7の解像度及び画像表示部5に追記事項を書き込む筆記具の太さpW及び合成する追記事項の画像の線幅iWに応じて投影画像の変倍率を算出する。画像合成部17は投影画像に撮影した画像を合成する。
【0021】
この画像表示装置1で画像を投影装置6で画像表示面5に投影し、画像表示部5の投影した画像に筆記具で追記事項を書き込み、書き込んだ追記事項の画像を投影した画像に合成するときの処理を図3のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
まず、表示装置2の画像表示面5に表示する画像が記載された図面等の物理的サイズ、例えばA4サイズかA0サイズかを示す横と縦のサイズc×d(mm)を制御装置3の操作表示部10で入力して情報記憶部9に格納し(ステップS1)、表示する画像を投影画像入力部11で入力すると、CPU8は入力した画像を画像記憶部12に記憶する(ステップS2)。次に、操作入力部10で画像の表示指示が入力すると、CPU8は投影制御部13により投影装置6を駆動させて記憶した画像を画像表示面5に投影させて等倍表示する(ステップS3)。この投影した画像を観察している操作者等が投影した画像に筆記具で追記事項を描画するに際して筆記具の太さpW(mm)と追記事項の画面を表示した投影した画像に合成するときの追記事項の線幅iW(mm)を操作入力部10で入力すると、CPU8は入力した筆記具の太さpW(mm)と投影した画像に合成するときの追記事項の線幅iW(mm)を情報記憶部9に記憶させる(ステップS4)。
【0023】
この状態でCPU8は変倍率演算部16により表示している投影した画像の表示倍率を可変させる(ステップS5)。この投影した画像の表示倍率を可変するのは、画像表示部5に追記事項を書き込むマーカーペン等の筆記具は一般的に細いものを使用しても1.5mm程度が限界であり、通常、各種図面で使用する0.5mmや0.3mmといった線幅で細かい描画を行うことは困難であり、画像表示部5に投影した画像が複雑な形状の図面である場合には追記事項を記入するには適切でない。これに対して投影した画像に記入する追記事項の線幅を選択する手段を設け、追記事項の画像を投影した画像に合成するときに追記事項の画像を細線化処理や膨張処理によって選択された線幅に変換するという方法もあるが、画像表示部5に描画時は筆記具による線幅であり、小さな文字等を描画すれば文字はつぶれてしまったりして描画が困難である。そこで、変倍率演算部16は追記事項の画像の線幅を変えずに投影した画像に適した線幅になるように投影した画像の適切な変倍率を算出して投影した画像を変倍する。
【0024】
この表示している投影した画像の表示倍率を可変するとき、変倍率演算部16は、情報記憶部9には記憶した画像表示面5の横と縦のサイズa×b(mm)と横と縦の解像度sW×sH(pix)と撮影装置7の解像度cW×cH(pix)と、入力した表示する画像が記載された図面等の横と縦のサイズc×d(mm)と筆記具の太さpW(mm)及び投影した画像に合成するときの追記事項の線幅iW(mm)により、投影した画像の表示倍率を決定する。すなわち、画像表示面5に表示された画像に筆記具で追記事項を書き込み、追記事項の画像を撮影装置7で撮影するとき、撮影装置7は画角を画像表示面5に合わせて設置しているため、解像度cW×cH(pix)でサイズa×b(mm)の画像表示面5を撮影する。この撮影した画像を表示した画像に合成する際、合成された画像と実際に画像表示面5に描画した追記事項の線分が一致するように合成する必要があるため、解像度cW×cH(pix)のサイズを解像度sW×sH(pix)に変換する。この場合は(sW/cW)×100(%)の画像サイズに変換するため、画像表示面5に太さpW(mm)で描かれた線分は{1・pW×(sW/cW)}の幅になる。この{1・pW×(sW/cW)}(mm)の幅が記入できる再細線であり、これよりも細線を描画したい場合は、投影した画像中で線幅iW(mm)が画像表示面5で筆記具の太さpW(mm)になるように投影した画像を拡大表示する。すなわち、表示した画像を(pW/iW)倍に拡大する。
【0025】
例えば画像表示面5が図4に示すように、40インチ(a×b=812mm×609mm)でA0サイズ(c×d=1188mm×810mm)の図面20を等倍表示する場合、画像表示面5の解像度sW×sH(pix)が1024×768(pix)であるとし、撮影装置7の解像度cW×cH(pix)が1280×960(pix)であるとし、筆記具の太さpW=1.5(mm)として画像表示面5に1.5(mm)の線が描かれ、撮影装置7で描画した画像表示面5を撮影すると、撮影装置7は1280×960(pix)の解像度で812×609(mm)を撮影する。この撮影した画像を表示しているA0サイズの投影した画像に合成する際、合成された画像と実際に画像表示面5に描画した線分が一致するように合成する必要があるため、1280×960(pix)のサイズをA0サイズに相当する1024×768(pix)に変換する。この場合は80%の画像サイズに変換するため、画像表示面5上に1.5(mm)で描かれた線分は1.5×0.8=1.2(mm)幅となる。これは太さpWが1.0(mm)の筆記具を使用しても、0.8(mm)の幅の線幅が限界となる。これに対して図面20には通常0.3(mm)や0.5(mm)の線幅が一般的に用いられているため、図面20の内容にあわせた細かい文字や図形の書き込みを行うのは困難である。そこで、画像表示面5に等倍表示されている画像に追記事項を太さpW=1.5(mm)の筆記具で描画し、この追記事項の画像を例えば線幅iW(mm)=0.3(mm)で等倍表示されている画像に表示する場合、0.3(mm)の線が画像表示面5で1.5(mm)で表示されるように等倍表示されている画像の変倍率を5倍に設定する。変倍率演算部16は算出した変倍率で等倍表示されている画像を拡大する。
【0026】
CPU8は変倍率演算部16で拡大した画像を、投影制御部13を介して投影装置6に送り画像表示面5に表示させる(ステップS6)。この拡大表示した画像を観察している操作者等が筆記具で追記事項を所定の領域に描画して操作入力部10から追記事項の画像を投影した画像に合成することが指示すると(ステップS7)、投影制御部13は投影装置6で画像表示部5に投影している画像の投影光を一時遮光する(ステップS8)。投影している画像が遮光されると、撮影制御部14は撮影装置7を駆動して画像表示部5に描画された追記事項を撮影し、撮影画像抽出部15は撮影装置7から撮影した追記事項の画像を抽出して画像記憶部12に記憶させる(ステップS9)。画像合成部17は画像記憶部12に記憶した追記事項の画像を拡大して表示されている画像に合成する(ステップS10)。この合成した画像を観測している観測者等が操作入力部10で等倍表示を指示すると、変倍率演算部16は演算した変倍率を等倍に戻して合成した画像を変倍し、合成した画像を投影装置6で画像表示面5に表示する(ステップS11)。このようにして画像表示面5に表示した画像に所望の線幅iW(mm)で追記事項を書き込むことができる。
【0027】
前記説明では追記事項を太さpW=1.5(mm)の筆記具で描画し、この追記事項の画像を線幅iW(mm)=0.3(mm)で等倍表示されている画像に表示する場合について説明したが、筆記具の太さpWを変えずに追記事項の画像を線幅iW(mm)は0.3(mm)や0.5(mm)あるいは0.7(mm)と任意の幅にすることができる。また、筆記具としてマーカーペン以外に電子ペンやタッチセンサパネルによって指で描画するような場合にも適用することができる。
【0028】
このように拡大表示された画像に太さpWの筆記具で追記事項を描画する場合、画像表示面5より表示する画像のサイズが大きいため、観察者等が表示された画像以外の領域を閲覧したい場合はスクロール動作によって画面を遷移させなくてはならない。しかしながら、サイズの大きな画面をスクロールして目的領域に到達するまでには時間もかかりわずらわしい。
【0029】
そこで追記事項を描画する領域を選択する場合、操作入力部10で投影した画像の全体を表示することが指示されると、変倍率演算部16は、画像表示面5のサイズと投影した画像の図面サイズにより変倍率を算出して投影した画像を縮小する。例えば前記のようにサイズ(c×d=1188mm×810mm)のA0の図面20全体を40インチ(a×b=812mm×609mm)の画像表示面5に表示する場合は、A0の図面20を68%に縮小する。一方、太さpW=1.5(mm)の筆記具で追記事項を描画して線幅iW(mm)=0.3(mm)で等倍表示されている画像に表示する場合、等倍表示されている画像を5倍に拡大する必要がある。そこで縮小して全体表示した画像を追記事項を描画するために拡大するには、全体表示した画像を変倍率α=5/0.68=7.35倍で拡大する必要がある。この全体表示した画像から追記事項を描画する領域を選択するために、画像表示面5に全体表示した画像を変倍率αに応じて分割する。例えば画像表示面5のサイズは1024×768(pix)であるから、図5に示すように、1024/7.35≒140(pix)と768/7.35≒104(pix)で分割して分割線21で分割領域22を表示する。この分割領域22の任意の領域を操作入力部10で選択すると変倍率演算部16はその分割領域22の変倍率α=7.35倍で拡大して画像表示面5に表示させる。
【0030】
この拡大して画像表示面5に追記事項を描画して合成した後、表示している画像をCPU8で領域を分割して全体表示した画像に切り替える。このように追記事項を描画して合成した後、領域を分割して全体表示した画像に切り替えることにより、ある領域への描画が終了した後に、再び任意の領域を選択し拡大表示して追記事項を書き込んで合成することができ、画像表示面5より表示する画像のサイズが大きい場合でもスクロール動作を繰り返して目的の領域を捜す必要なしに追記事項を書き込む領域を選択することができる。
【0031】
前記説明では、画像表示面5の縮小して全体表示した画像を変倍率αに応じて分割した場合について説明したが、図6に示すように、筆記具の太さや実際に描画したい線幅や表示画像サイズ及び表示画面サイズから計算して画像表示面5の分割画素数の選択領域枠23を設け、この分割画素数の選択領域枠23を操作入力部10のマウス等で移動することにより追記事項を描画する任意の領域を選択することもできる。このように筆記具の太さや実際に描画したい線幅等により分割画素数の選択領域枠23を設けることにより、複数の線幅に応じた選択領域枠23を得ることができるとともに、その領域の選択を容易にすることができる。
【0032】
前記説明では、画像表示面5に全体表示した画像を複数の分割領域22に分割したり、筆記具の太さや実際に描画したい線幅等により分割画素数の選択領域枠23を求めて追記事項を書き込む領域を選択する場合について説明したが、画像表示面5に全体表示した画像から追記事項を書き込む領域を直接選択するようにしても良い。この場合は、画像表示面5に全体表示した画像中の各図形の中心点を検出し、検出した中心点が画像表示面5の中心と一致するように、全体表示した画像を移動し、この状態で画像を所定の変倍率αで拡大表示することにより、筆記具で書き込んだ追記事項を描画したい線幅で画像の図形に合成することができる。
【0033】
この全体表示した画像中の各図形の中心点を抽出する方法として、図7(a)に示すように、画像24中の図形26のブロックを抽出し、図形26の2値化画像に対してx軸方向とy軸方向への射影をとることにより図形26の矩形領域27を抽出する。この抽出した矩形領域27の中心点を抽出することにより図形26の中心点を抽出することができる。この矩形図形27の中心点を抽出するには、図7(a)に示すように、x軸とy軸方向の射影の2等分垂線の交点を図形26の中心とする。これは図形の配置状態によっては実際の中心点とは若干のずれを起こす可能性もあるが、表示方法としては大勢に影響を及ぼさず、高速に処理を行うことができる。また、例えば図7(b)に示すように、矩形領域27の対角線の交点を中心点としても良い。また、射影変換の場合、図7(c)に示すように、同一軸方向に対して重なるように図形23が並んでいる場合、射影では図形23のブロック分けが出来ず、ブロック化するには複雑な処理が必要になってくる。こうした図形群に対しては、射影を用いた方法から個々の図形群への分離は困難であるため、画像に対して複数画素単位でのオアパターンをとり、これにラベリングを行うことにより複雑な図形群であっても図形単位の分割が可能になる。さらに、複数画素ごとの処理であるため、1画素ごとの処理に比べ高速な処理が可能になる。
【0034】
この複数画素単位のラベリング方法は、図8(a)に示すように、表示した投影画像をN×n画素のメッシュ29に分割し、図8(b)に示すように、N×n画素中に1画素でも図形領域が存在するときは、図8(c)に示すように、このN×n画素のメッシュ29にラベリングを行う。そして周囲のメッシュ部と比較して連結しているものは同じラベリングを行うことにより、図8(d)に示すように、図形25ごとにラベリングされてブロック分けが可能になる。このN×n画素は適宜設定することが可能であり、表示する画像によってこの設定を変更して円滑に処理を行うことができる。
【0035】
このように、投影した画像25をメッシュ29に分割してオアパターンをとってブロック化することにより、射影方法のように図形の重なりが問題になることもなく、また、1画素ごとの処理ではないので、高速な処理が可能となる。さらに、個々の図形ごとにブロック分けしてラベリングがされているので、個々の図形ごとの重心を求めることがより容易になり処理も高速化できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の画像表示装置の構成図である。
【図2】画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】画像表示装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】画像表示面と表示する画像のサイズを示す模式図である。
【図5】分割した画像表示面を示す模式図である。
【図6】画像表示面の分割画素数の選択領域を示す模式図である。
【図7】画像中の図形の中心点を抽出する方法を示す模式図である。
【図8】図形毎にラベリングしてブロック分けする方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0037】
1;画像表示装置、2;表示装置、3;制御装置、4;装置本体、5;画像表示面、
6;投影装置、7;撮影装置、8;CPU、9;情報記憶部、10;操作入力部、
11;投影画像入力部、12;画像記憶部、13;投影制御部、14;撮影制御部、
15;撮影画像抽出部、16;変倍率演算部、17;画像合成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するとともに入力手段で入力情報が書き込み可能な表示部と、該表示部に入力手段で書き込んだ入力情報を取得する入力情報取得手段と、前記表示部に画像を表示するとともに前記入力情報取得手段で取得した入力情報を表示した画像に合成する制御装置とを有する画像表示装置において、
前記制御装置は、前記表示部に表示された画像の表示拡大・縮小率を、表示する画像の物理的サイズと前記表示部の解像度と前記入力手段によって書き込まれる入力情報の物理的サイズ及び前記入力情報取得手段の分解能から決定することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記表示部に全体が表示された画像を前記決定した画像の表示拡大・縮小率をもとに複数領域に分割し、分割した任意の領域が選択されたとき、選択された領域を前記決定した画像の表示拡大・縮小率をもとに変倍して前記表示部に表示する請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記変倍して表示した画像に前記入力情報を合成した後、前記複数領域に分割した画像に切り替えて表示する請求項2記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記表示部に表示した画像内の図形の中心位置を抽出し、抽出した中心点が前記表示部の中央になるようにして、前記決定した画像の表示拡大・縮小率をもとに変倍して前記表示部に表示する請求項1記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記表示部に表示した画像を複数画素ごとにメッシュに分割し、分割した複数画素内の論理和をとり、連結パターンごとにラベリングを行い個々の図形ブロックを抽出し、抽出されたブロックの中心を求めて前記画像内の図形の中心位置を抽出する請求項4記載の画像表示装置。
【請求項6】
画像を表示した表示部に入力手段で入力情報を書き込み、書き込んだ入力情報を表示した画像に合成する画像表示方法において、
前記表示された画像の表示拡大・縮小率を、表示する画像の物理的サイズと前記表示部の解像度と前記入力手段によって書き込まれる入力情報の物理的サイズ及び前記画像に合成する入力情報の分解能から決定することを特徴とする画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−249921(P2007−249921A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76464(P2006−76464)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】