説明

画像表示装置用表面フィルム、偏光板、及び画像表示装置

【課題】生産性が高く、表面硬度が高く、搭載した画像表示装置の画像品位にも優れ、偏光板の薄型化に好適な光学フィルムを提供すること。
【解決手段】表面及び内部の少なくとも一方に散乱性を有する透明支持体の一方の面上に光学異方性層を有し、もう一方の面上にハードコート層を有する光学フィルムであって、該光学フィルムの波長550nmにおける面内レターデーション(Re(550))が80〜200nmであり、厚さ方向のレターデーション(Rth(550))が−120〜120nmである、画像表示装置用表面フィルムとして用いられる光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面及び/又は内部に散乱性を有する透明支持体の一方の面上に光学異方性層を有し、もう一方の面にハードコート層を有する光学フィルム、該光学フィルムを有する偏光板、及び画像表示装置に関する。特に、液晶表示装置用表面フィルムとして好適に用いられる光学フィルム、該光学フィルムを保護フィルムとして含む偏光板、また、前記ハードコート層が視認側になるように前記光学フィルムを表面に配置した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、薄型、軽量で、かつ消費電力が小さいことから広く使用されている。液晶表示装置は、液晶セル及び偏光板を含む。偏光板は、通常、保護膜と偏光膜とからなり、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜をヨウ素にて染色し、延伸を行い、その両面に保護膜を積層して得られる。透過型液晶表示装置では、一般的に、この偏光板を液晶セルの両側に取り付け、更には一枚以上の光学補償フィルム(位相差フィルム)が2つの偏光板の内側(液晶セル側)に配置されている。また、光学補償フィルムを前記保護膜として用いることもある。光学補償フィルムとしては例えば、基材フィルム(透明支持体)上にディスコティック液晶性化合物が配向状態を保った状態で固定化された光学異方性層を有するものが広く用いられている。
近年、液晶表示装置の高機能化のために、透過型液晶表示装置を用いた立体画像表示装置の開発が進められている。例えば特許文献1には、立体画像表示方法として、2つの偏光板の内側に液晶セルを配置した透過型液晶表示装置を基本に、λ/4の正面レターデーションを有する位相差フィルム(λ/4板)を視認側偏光板の外側にλ/4板の遅相軸と視認側偏光板の吸収軸が45°となるように配置し、出射光を円偏光化する時分割2眼立体視の透過型液晶表示装置が記載されている。
【0003】
λ/4の正面レターデーションを有する位相差フィルムとしては、延伸フィルムを用いるものと、透明支持体上に硬化型液晶性化合物によって形成される光学異方性層を有するものとが挙げられる。
このうち、延伸フィルムは一般に長さ方向又は幅方向に延伸して作成されるため、遅相軸は長さ方向に対し平行又は直交である。
偏光板の作成において、位相差フィルムと偏光子を貼り合わせる場合、位相差フィルムと偏光子がロール・トゥ・ロールで貼合されることが生産効率上好ましい。
一方、液晶表示装置では一般にポリビニルアルコールの延伸フィルムが偏光膜として用いられており、偏光の吸収軸は長さ方向と平行である。
従って、偏光軸に対して45°方向に遅相軸を有する位相差フィルムと偏光子をロール・トゥ・ロールで貼合するためには45°方向に遅相軸を有する位相差フィルムのロールフィルムが必要なため、延伸フィルムはロール・トゥ・ロールでの貼り合わせには適さない。
これに対し、硬化型液晶性化合物によって形成される光学異方性層を有する位相差フィルムは、ラビングなどの方法で液晶性化合物の配向方向を制御することで遅相軸の方向を自由に変えることができるため、ロール・トゥ・ロールでの貼り合わせに適している。
【0004】
特許文献2にはトリアセチルセルロースフィルムを透明支持体として重合性棒状液晶性化合物が配向した45°方向に遅相軸を有するロールフィルム状のλ/4板を作成し、それをロール・トゥ・ロールで偏光子と貼合して楕円偏光板を作成できることが示されている。このようにして作成される楕円偏光板は、「光学異方性層/配向膜/透明支持体/偏光子/保護フィルム」という構成を有し、液晶セルは光学異方性層側に、保護フィルムは表示装置の視認側に配置される。
特許文献2に記載はないが、表示装置の表面側に配置される保護フィルムは耐擦傷性の機能付与を目的に通常ハードコートフィルムが保護フィルムとして用いられることが考えられる。
一方、上記特許文献1の時分割2眼立体視の透過型液晶表示装置におけるλ/4板として上記特許文献2に記載の構成の楕円偏光板を用いた場合、光学異方性層が表示装置の視認側に配置されるために、耐擦傷性付与のためにハードコートフィルムが最表面に用いられることが好ましいと考えられる。光学異方性層の表面にハードコートフィルム(通常、透明支持体上にハードコート層を設けてなる)を設けようとすると、「ハードコート層/透明支持体/粘着剤層/光学異方性層(/配向膜)/透明支持体/偏光子/保護フィルム」という構成になり、表面の部材(偏光板)が厚くなってしまうという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−243705号公報
【特許文献2】特開2007−155970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上をまとめると、位相差と表面耐擦傷性を付与することができ、かつ薄型化の要求を満たす偏光板を提供することができる光学フィルムの開発が必要である。
本発明者らはハードコート層と光学異方性層の基材の共通化による表面部材の薄型化を検討し、透明支持体の一方の面にハードコート層を積層し、他方の面に光学異方性層に積層することで透明支持体を1つ省略できることに思い至った。すなわち、ハードコート層/透明支持体/(配向膜/)光学異方性層/偏光子/保護フィルムという構成を取ることで偏光板の薄型化が可能になることを見出した。
【0007】
また、上記構成を有する、光学異方性層を用いた時分割2眼立体視の透過型液晶表示装置に適した表面フィルムの開発に着手したところ、従来知られていなかった、新たな問題を発見した。
すなわち、透明支持体と光学異方性層との屈折率差に起因する干渉むらが発生し、それを搭載した液晶表示装置の表示品位を低下させるという問題である。特に、「ハードコート層/透明支持体/粘着剤層/光学異方性層/(配向膜/)透明支持体/偏光子/保護フィルム」という構成では、光学異方性層と隣接する透明支持体や粘着剤層の界面で発生する反射光による干渉ムラが顕著になることがわかった。
【0008】
本発明は、表面保護フィルムと位相差フィルムの機能を有する複合フィルムに関するもので、生産性が高く、表面硬度が高く、搭載した画像表示装置の画像品位にも優れ、偏光板の薄型化に好適な光学フィルムを提供することである。また、このような光学フィルムを用いた偏光板、該光学フィルム又は偏光板を搭載した画像表示装置にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ハードコート層と光学異方性層の基材を共通化し、透明支持体の一方の面上に光学異方性層を有し、もう一方の面にハードコート層を有する光学フィルムにおいて、基材として、表面及び/又は内部に散乱性を有する透明支持体を用い、かつ光学フィルムの光学特性を制御することで、これらの問題を全て解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
特に透明支持体として熱可塑性樹脂を主成分としてなり、該熱可塑性樹脂中に透光性粒子を含有させることで表面及び/又は内部に散乱性を付与したものは、干渉むらがなく、黒しまり性も良好で、表示性能が非常に優れていた。
また、上記の透明支持体を用い、円盤状液晶性化合物を含有する組成物から形成される光学異方性を有するものは斜め方向の画像品位にも特に優れていた。
【0010】
以下の構成により、本発明の上記課題は達成することができる。
【0011】
1.
表面及び内部の少なくとも一方に散乱性を有する透明支持体の一方の面上に光学異方性層を有し、もう一方の面上にハードコート層を有する光学フィルムであって、該光学フィルムの波長550nmにおける面内レターデーション(Re(550))が80〜200nmであり、厚さ方向のレターデーション(Rth(550))が−120〜120nmである、画像表示装置用表面フィルムとして用いられる光学フィルム。
2.
前記透明支持体が、熱可塑性樹脂を主成分とし、該熱可塑性樹脂中に平均粒径が0.5〜20μmの透光性粒子を含有する、上記1に記載の光学フィルム。
3.
前記透明支持体は、前記光学異方性層を有する側の面が実質的に平坦である、上記1又は2に記載の光学フィルム。
4.
前記透明支持体は、前記光学異方性層を有する側の表面から厚み方向に0〜20μmの領域に、粒径が0.5μm以上の粒子が実質的に存在しない、上記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
5.
前記透明支持体は、粒径が0.5μm以上の粒子が実質的に存在しない領域を有し、該領域が前記透明支持体のハードコート層を有する側の表面から厚み方向に5〜30μmの厚みを有する、上記1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
6.
前記熱可塑性樹脂と前記透光性粒子の屈折率差の絶対値が0.00〜0.05である、上記1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
7.
前記透光性粒子が、ポリn−ブチルメタクリレート樹脂、又はポリn−ブチルアクリレート樹脂を主成分としてなる、上記1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
8.
前記透明支持体と前記光学異方性層の間に配向膜を有する、上記1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
9.
前記透明支持体の波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションが20〜100nmである上記1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
10.
前記光学異方性層が液晶性化合物を含有する組成物から形成されたものである上記1〜9のいずれか1項に記載の光学フィルム。
11.
前記液晶性化合物がディスコティック液晶性化合物である上記10に記載の光学フィルム。
12.
前記光学フィルムのハードコート層を有する側の表面のJIS B0601に基づく算術平均粗さRaが0〜0.08μmである、上記1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルム。
13.
前記ハードコート層の前記透明支持体とは反対側に、前記透明支持体より屈折率の低い低屈折率層を有する上記1〜12のいずれか1項に記載の光学フィルム。
14.
長さ方向を基準に正面レターデーションの遅相軸が時計回り又は反時計回りに5〜85°である、長尺ロール状の上記1〜13のいずれか1項に記載の光学フィルム。
15.
少なくとも1つの保護膜と、偏光膜とを有する偏光板であって、前記少なくとも1つの保護膜が上記1〜14のいずれか1項に記載の光学フィルムであり、前記光学フィルムの光学異方性層側の表面と前記偏光膜とが貼合された偏光板。
16.
上記1〜14のいずれか1項に記載の光学フィルム、又は上記15に記載の偏光板を少なくとも1つ含む画像表示装置。
17.
視認側から、上記1〜14のいずれか1項に記載の光学フィルムと、偏光膜と、液晶セルとをこの順に有する液晶表示装置であって、前記光学フィルムが、ハードコート層が視認側に、光学異方性層が偏光膜側になるように配置された液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生産性が高く、表面硬度が高く、搭載した画像表示装置の画像品位(干渉むらがなく、光学補償に優れ、クロストークなどがない)にも優れ、偏光板やそれを搭載した画像表示装置の薄型化に寄与できる、画像表示装置用の表面フィルムとして好適な光学フィルムを提供することができる。
また、本発明の光学フィルムは、透過型液晶表示装置をベースとした立体型画像表示装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における透明支持体一例を示す断面図である。
【図2】本発明における透明支持体の一例を示す断面図である。
【図3】本発明における透明支持体の一例を示す断面図である。
【図4】流延ドラムを用いた溶液製膜装置を示す図である。
【図5】流延バンドを用いた溶液製膜装置を示す図である。
【図6】マルチマニホールド型の共流延ダイを示す図である。
【図7】フィードブロック型の共流延ダイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
【0015】
本発明の光学フィルムは、表面及び/又は内部に散乱性を有する透明支持体の一方の面上に光学異方性層を有し、もう一方の面上にハードコート層を有する光学フィルムであって、光学フィルムの波長550nmにおける面内レターデーション(Re(550))が80〜200nmであり、厚さ方向のレターデーション(Rth(550))が−120〜120nmである、画像表示装置用表面フィルムとして用いられる光学フィルムである。
【0016】
以下、本発明の光学フィルム、偏光板、画像表示装置に使用される材料、及びそれらの製造方法について詳細に説明する。
【0017】
[透明支持体]
本発明における透明支持体は表面及び/又は内部に散乱性を有する。本発明で透明支持体に表面散乱を有するとは、透明支持体の少なくとも一方の面に微細な凹凸形状を有することを意味する。また、本発明で透明支持体に内部散乱を有するとは透明支持体の内部に散乱体を有することを意味する。内部散乱は、透明支持体の内部に散乱体を導入することにより付与することができる。
透明支持体としては、透明プラスチックフィルム支持体が好ましい。
【0018】
本発明の光学フィルムは、透明支持体の一方の面に光学異方性層を有し、もう一方の面にハードコート層を有する。前記透明支持体において、光学異方性層を有する側の表面は実質的に平坦であることが好ましい。具体的には、透明支持体の光学異方性層を有する側の表面は算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)が0.08μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましく、0.03μm以下であることが更に好ましく、0.02μm以下であることが特に好ましい。
【0019】
一方、透明支持体のハードコート層を有する側の表面は凹凸形状があってもなくても構わないが、凹凸形状を有することが好ましい。具体的には、透明支持体のハードコート層を有する側の表面は算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)が0.09〜0.50μmであることが好ましく、0.10〜0.30μmであることがより好ましく、0.11〜0.25μmであることが更に好ましい。Raを上記範囲に抑制することで、干渉むらがなく黒しまり性にも優れた光学フィルムを作成することができる。
【0020】
本発明では透明支持体の表面ヘイズは1〜30%が好ましく、2〜20%がより好ましく、3〜10%が更に好ましい。また、内部ヘイズは0.5〜20%が好ましく、0.5〜10%がより好ましく、0.5〜5%が更に好ましい。
表面ヘイズと内部ヘイズをこの範囲に抑制することで、干渉むらがなく黒しまり性にも優れた光学フィルムを作成することができる。
【0021】
このような要件を満たした透明支持体は熱可塑性樹脂を主成分として、該熱可塑性樹脂中に透過性粒子を含有させて作成されることが好ましい。
【0022】
<透明支持体の材料>
[熱可塑性樹脂]
本発明の透明支持体を構成する主成分(透明支持体の固形分の51質量%以上99質量%以下の材料)は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、具体例には、セルロースエステル(好ましくはセルロースアシレートであり、例えばトリアセチルセルロース(セルローストリアセテート)、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルブチリルセルロース(セルロースアセテートブチレート)、アセチルプロピオニルセルロース)、ニトロセルロース、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例えばシンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリシクロアルカン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルケトン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、(メタ)アクリル系樹脂(アクリペットVRL20A:商品名、三菱レイヨン社製、特開2004−70296号公報や特開2006−171464号公報記載の環構造含有アクリル系樹脂)等が含まれる。
これらのなかでも、セルロースエステル(好ましくはセルロースアシレートであり、特に好ましくはセルローストリアセテート)、ポリカーボネート、又は変成ポリメチルメタクリレートが好ましく、セルロースエステル、又はポリカーボネートが特に好ましく、セルロースエステルが最も好ましい。
【0023】
本発明においては位相差むらがないことが好ましく、この点から、主成分となる熱可塑性樹脂は、セルロースアシレートであることが好ましく、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルブチリルセルロース、又はプロピオニルセルロースであることがより好ましい。
【0024】
本発明において好ましく用いることのできるセルロースアシレートとしてはセルロースの総炭素数2〜22のカルボン酸エステルが好ましい。例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、シクロアルキルカルボニルエステル、あるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれ更に置換された基を有していてもよい。
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基でもよく、特に限定されない。これらの好ましいアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、アダマンタンカルボニル基、フェニルアセチル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基などを挙げることができる。これらの中でも、より好ましいアシル基は、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、フェニルアセチル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基などである。
【0025】
本発明に好適に用いられるセルロースアシレートとしては、セルロースの水酸基への置換度が下記数式(7)及び(8)を満足するものが好ましい。
数式(7):2.3≦SA’+SB’≦3.0
数式(8):0≦SA’≦3.0
ここで、SA’はセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度、またSB’はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化したものである。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、水酸基がエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、置換度の総和(SA’+SB’)は、より好ましくは2.6〜3.0であり、特に好ましくは2.70〜3.00である。
また、SA’はより好ましくは1.4〜3.0であり、特には2.3〜2.9である。
【0026】
また、本発明においては、上記セルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の炭素原子数が3又は4であることが好ましい。これら炭素原子数のアシル基により置換された置換度は、上記数式(7)及び(8)に加え、更に、下記数式(9)を同時に満足することが好ましい。
数式(9): 0≦SB”≦1.2
ここで、SB”はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3又は4のアシル基の置換度を表す。
【0027】
なお、置換度はセルロース中の水酸基に結合した脂肪酸の結合度を測定し、計算によって得られる。測定方法としては、ASTM−D817−91、ASTM−D817−96に準拠して測定することができる。また、水酸基へのアシル基の置換の状態は、13C−NMR法によって測定される。
【0028】
本発明の透明支持体は構成するポリマー成分が実質的に熱可塑性樹脂からなることが好ましく、前記の数式(7)及び(8)を満足するセルロースアシレートからなることがより好ましい。「実質的に」とは、全ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上)を意味する。セルロースアシレートは単独若しくは2種類以上の併用であってもよい。
【0029】
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは230〜550、更に好ましくは230〜350であり、特に好ましくは粘度平均重合度240〜320である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0030】
またセルロースアシレートの数平均分子量Mnは、好ましくは7〜25×10の範囲、より好ましくは、8〜15×10の範囲にあることが望ましい。また、該セルロースアシレートの質量平均分子量Mwとの比、Mw/Mnは、好ましくは1.0〜5.0、より好ましくは1.0〜3.0である。なお、セルロースアシレートの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定でき、これを用いて上記Mn及びMwを算出し、Mw/Mnを計算することができる。
【0031】
[透光性粒子]
本発明における透明支持体は、前記熱可塑性樹脂に加えて、表面及び/又は内部散乱を付与するために透光性粒子を含有させることが好ましい。前記透光性粒子は略球状が好ましい。該熱可塑性樹脂中に含有される透光性粒子は、平均一次粒径が0.5〜20μmであることが好ましい。1〜15μmであることがより好ましく、2〜10μmが更に好ましく、3〜8μmが特に好ましい。平均一次粒径をこの範囲にすることで、ヘイズを抑えつつ干渉むらを解消することができる。
【0032】
透光性粒子の屈折率は1.40〜1.65が好ましく、更に好ましくは1.45〜1.60であり、最も好ましくは1.45〜1.55である。
本発明においては、透光性粒子と前記熱可塑性樹脂(透明支持体の透光性粒子を除いた部分)の屈折率差の絶対値は、0.00〜0.05が好ましく、0.00〜0.03がより好ましく、0.00〜0.02が更に好ましく、0.00〜0.01が特に好ましい。透光性粒子と熱可塑性樹脂の屈折率差をこの範囲にすることで、上記と同様に、ヘイズを抑えつつ干渉むらを解消することができる。
【0033】
前記透光性粒子の使用量は透光性粒子を含有するドープ中、熱可塑性樹脂100質量部に対し、3〜30質量部配合されることが好ましい。より好ましくは4〜25質量部であり、更に好ましくは5〜15質量部である。この範囲に制御することで、表面散乱と内部散乱を適切に制御することができる。
透光性粒子の密度は、単位面積あたり0.1g/m〜10.0g/mが好ましく、更に好ましくは、0.2g/m〜8.0g/m、最も好ましくは0.3g/m〜5.0g/mである。この範囲の使用量にすることで、所望の光散乱性を得ることができる。
【0034】
透光性粒子としては、無機粒子、及び有機粒子ともに用いることができる。
無機粒子としては、シリカやアルミナなどが挙げられる。例えば(株)マイクロンの球状シリカ、球状アルミナが挙げられる。
有機粒子としては、アクリルスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、シリコン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いはポリ弗化エチレン系樹脂等を挙げることができる。
【0035】
市販品としては、スチレン、アクリル系樹脂として、綜研化学(株)製のケミスノーMXシリーズ、SXシリーズや、積水化成品工業(株)製のテクポリマーなどが挙げられ、ベンゾグアナミン系樹脂としては、日本触媒(株)製のエポスター、メラミン系樹脂としては、日産化学(株)製のオプトビーズなどが挙げられる。
【0036】
透明支持体における熱可塑性樹脂との密着性の観点や、湿度や熱による界面剥離、脱落などの観点から、膨張率特性が熱可塑性樹脂に近い有機粒子を用いるのがより好ましく、樹脂粒子であることが更に好ましい。本発明では、透光性粒子は略球状の樹脂粒子であることが特に好ましい。
また、同様の観点で有機粒子の中でも、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリn−ブチルメタクリレート樹脂粒子、ポリn−ブチルアクリレート樹脂粒子、又はアクリルスチレン系樹脂粒子が特に好ましい。アクリルスチレン系樹脂粒子としてはポリメチルメタクリレート−スチレン共重合体粒子が特に好ましい。
本発明においては、透光性粒子は、ポリn−ブチルメタクリレート樹脂、又はポリn−ブチルアクリレート樹脂を主成分としてなることが好ましい。
【0037】
なお、本発明では「ポリn−ブチルメタクリレート樹脂を主成分とする」とは、重合単位中、n−ブチルメタクリレート由来の重合単位の含有量が最も多いことを意味する。n−ブチルメタクリレート由来の重合単位の含有量は50〜100質量%であることが好ましく、60〜95質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることが更に好ましい。
ポリn−ブチルアクリレート樹脂に関しても同様である。
【0038】
前記のように、本発明における透明支持体として好ましい態様はセルロースアシレートを主成分とし、該セルロースアシレート中に、ポリn−ブチルメタクリレート樹脂、ポリn−ブチルアクリレート樹脂を主成分としてなる平均一次粒径が0.5〜20μmの透光性粒子を含有する平均膜厚が20〜200μmである透明フィルムである。
【0039】
本発明における透明支持体は、前記熱可塑性樹脂及び前記透光性粒子以外にも以下の材料を好ましく含有することもできる。
【0040】
[可塑剤]
本発明においては、透明支持体に柔軟性を与え、寸法安定性を向上させ、耐湿性を向上させるために可塑剤を用いてもよい。
【0041】
セルロースアシレートを透明支持体の材料とする場合には、オクタノール/水分配係数(logP値)が0ないし10である可塑剤が特に好ましく用いられる。化合物のlogP値が10以下であれば、セルロースアシレートとの相溶性が良好で、粉吹きなどの不具合を生じることがなく、またlogP値が0よりも大きければ、親水性が高くなりすぎることがないのでセルロースアシレートフィルムの耐水性を悪化させるなどの弊害が生じにくいので、上記範囲内のものを用いることが好ましい。logP値として、更に好ましい範囲は1ないし8であり、特に好ましい範囲は2ないし7である。
【0042】
オクタノール/水分配係数(logP値)の測定は、日本工業規格(JIS)Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール/水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法[J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27巻21頁(1987)]、Viswanadhan’s fragmentation法[J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29巻163頁(1989)]、Broto’s fragmentation法[Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.,19巻71頁(1984)]などが好ましく用いられるが、中でもCrippen’s fragmentation法がより好ましい。ある化合物のlogPの値が、測定方法又は計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。
【0043】
好ましく添加される可塑剤としては、上記の物性の範囲内にある分子量190〜5000程度の低分子〜オリゴマー化合物が挙げられ、例えばリン酸エステル、カルボン酸エステル、ポリオールエステル等が用いられる。
【0044】
リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が含まれる。好ましくは、トリフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェートである。
【0045】
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート等が挙げられる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
これらの好ましい可塑剤は、25℃においてTPP(融点約50℃)以外は液体であり、沸点も250℃以上である。
【0046】
その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。グリコール酸エステルの例としては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなどがある。
【0047】
また、特開平5−194788号、特開昭60−250053号、特開平4−227941号、特開平6−16869号、特開平5−271471号、特開平7−286068号、特開平5−5047号、特開平11−80381号、特開平7−20317号、特開平8−57879号、特開平10−152568号、特開平10−120824号の各公報などに記載されている可塑剤も好ましく用いられる。これらの公報によると可塑剤の例示だけでなくその利用方法あるいはその特性についての好ましい記載が多数あり、本発明においても好ましく用いられるものである。
【0048】
その他の可塑剤としては、特開平11−124445号記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号記載の置換フェニルリン酸エステル類、特開2003−165868号等記載の芳香環とシクロヘキサン環を含有するエステル化合物などが好ましく用いられる。
【0049】
また、分子量1000〜10万の樹脂成分を有する高分子可塑剤も好ましく用いられる。例えば、特開2002−22956号公報に記載のポリエステル及びポリエーテル、特開平5−197073号公報に記載のポリエステルエーテル、ポリエステルウレタン又はポリエステル、特開平2−292342号公報に記載のコポリエステルエーテル、特開2002−146044号公報等記載のエポキシ樹脂又はノボラック樹脂等が挙げられる。
【0050】
これらの可塑剤は単独若しくは2種類以上を混合して用いてもよい。可塑剤の添加量はセルロースアシレート100質量部に対して2〜30質量部、特に5〜20質量部が好ましい。また、透光性粒子を含有する層には、セルロースアシレートと透光性粒子の親和性改良、脆性改良のために、可塑剤含率を高めることが好ましい。
【0051】
[紫外線吸収剤]
上記透明支持体には、光学異方性層に含まれるに液晶化合物等の材料の劣化防止のために、更に紫外線吸収剤(紫外線防止剤)を添加することが好ましい。
【0052】
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な画像表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものを用いることが好ましい。特に、波長380nmでの透過率が、20%以下であることが望ましく、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。このような紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、前記のような紫外線吸収性基を含有する高分子紫外線吸収化合物等があげられるが、これらに限定されない。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
【0053】
本発明において紫外線吸収剤の使用量は、透明支持体に用いられる熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1〜5.0質量部、好ましくは0.5〜4.0質量部、より好ましくは0.8〜2.5質量部である。
【0054】
本発明の透明支持体は、前記熱可塑性樹脂、前記透光性粒子、及びその他の成分を含有する組成物(ドープ)を用いて形成されることが好ましい。該光透明支持体を形成する組成物(ドープ)には、各調製工程において用途に応じた他の種々の添加剤(例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン等)、光学異方性コントロール剤、剥離剤、帯電防止剤、赤外吸収剤等)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。更にまた、赤外吸収剤としては例えば特開平2001−194522号公報に記載のものが使用できる。
【0055】
これらの添加剤の添加する時期は、ドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、透明支持体が多層から形成される場合、各層の熱可塑性樹脂・添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。上記の紫外線吸収剤を含めてこれらの詳細は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)16〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0056】
これらの添加剤の使用量は、透明支持体を構成する全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
【0057】
[溶媒]
透明支持体を形成する組成物(ドープ)には溶媒を含有することがレターデーションむらなどが生じ難く、好ましい。用いる溶媒としては有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲のものが好ましい。溶解度パラメーターは、例えばJ.Brandrup、E.H等の「PolymerHandbook(4th.edition)」、VII/671〜VII/714に記載の内容のものを表す。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報 段落番号[0020]、同11−60807号公報 段落番号[0037]等に記載の化合物)等が挙げられる。
【0058】
透明支持体を形成する材料は、有機溶媒に10〜30質量%溶解していることが好ましく(すなわち透明支持体を形成する組成物の固形分濃度は10〜30質量%であることが好ましく)、より好ましくは13〜27質量%であり、特には15〜25質量%である。これらの濃度に調製する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように調製してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。更に、予め高濃度の透明支持体を形成する材料の溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度の溶液としてもよい。
使用する溶媒は1種でも2種以上用いてもよい。
【0059】
<透明支持体の好ましい形態>
本発明の透明支持体は表面及び/又は内部の散乱性を有することが必要であり、散乱性を付与するために前記のように可塑性樹脂、平均粒径0.5〜20μmの透光性粒子、溶媒を含有するドープから作成されることが好ましい。しかしながら、このような方法で透明支持体を作成すると表面が凹凸になってしまう。本発明においては、少なくとも、光学異方性層を積層する面は実質的に平坦であることが好ましい。
透明支持体の一方の面を平坦にするために、透明支持体の一方の面(光学異方性層を積層する面)に、表面から厚み方向に0〜20μmの領域に、粒径が0.5μm以上の粒子が実質的に存在しないことが好ましい。
また、もう一方の面(ハードコート層を積層する面)も表面から厚み方向に0〜5μmの領域に、前記平均一次粒径が0.5μm以上の透光性粒子が実質的に存在しないことが、内部散乱と表面散乱を独立に制御する観点で好ましい。
【0060】
ここで、0.5μm以上の粒子が実質的に存在しないとは、フィルムの断面を10箇所、幅1mmに対応する部分を観察し、規定の膜厚領域に観察される0.5μm以上の粒子の総計が10個未満であることを意味する。
更に、平均一次粒径が0.5〜20μmの粒子散乱粒子を含むドープと、散乱粒子を含まないドープの積層によりフィルムが形成されることが上記観点で好ましい。
【0061】
本発明における透明支持体の膜厚は、20μm〜200μmが好ましく、より好ましくは20μm〜150μm、更に好ましくは25μm〜100μmである。
【0062】
<透明支持体の製造方法>
本発明における透明支持体を製造するには、共流延法(重層同時流延)、逐次流延法等の積層流延する方法を用いることができる。共流延法及び逐次流延法により製造する場合には、先ず、複数のドープ(熱可塑性樹脂、及び必要に応じて透光性粒子などを溶剤に溶かしたもの)を調製する。共流延法は、流延用支持体(バンド又はドラム)の上に、複数のドープ(3層あるいはそれ以上でも良い)を別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサ(流延ダイ)からドープを押出して各層を同時に流延し、適度に乾燥させた後に流延用支持体から剥ぎ取り、乾燥させて透明支持体を成形する流延法である。流延ダイは、図6に示したマルチマニホールド型、図7に示したフィードブロック型いずれでも使用できる。またドープ突出部には減圧チャンバーを設けた装置が好ましい。
図4及び図5は、流延を行う溶液成膜装置の例を示した図である。図4は流延用支持体に流延ドラムを用いた例であり、特にドラムを冷却することによりドープが流延用支持体に接触している間に冷却ゲル化、或いはゲルに近い状態にさせることができ、早いタイミングで剥ぎ取ることができ生産性が高い。図5は流延用支持体にエンドレスベルトを用いた例であり、ドープがベルトに接触している間に、自己支持性がある程度の濃度まで溶剤を乾燥させた後に剥ぎ取りを行う方法である。
【0063】
逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延し、乾燥させ、あるいは乾燥させることなく、その上に第2の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延し、以後、同様に第3以降のドープを逐次流延・積層し、適当な時期に流延用支持体から剥ぎ取り、乾燥させて透明支持体を成形する流延法である。また、剥ぎ取りから乾燥までの間に、透明支持体を一定方向に延伸しても構わない、具体的には例えば縦方向及び/又は横方向に0.9倍〜1.5倍程度延伸することが好ましい。
【0064】
以上のように、透明支持体を製造するには、共流延法、逐次流延法、及び溶融押出し製膜法のどの方法を用いてもよい。一般的に、逐次流延法では工程が複雑で大掛かりになり、フィルムの平面性を維持することが困難であるが、共流延法では工程が単純で、生産性が高いため、共流延法で製造することが好ましい。
【0065】
また、流延初期にレベリングしないように流延用支持体の温度は20℃以下にすることが好ましく、更に流延後に冷却ゲル化するように流延用支持体の温度を0℃以下にすることも好ましい。
【0066】
更に、共流延法において、前記透光性粒子を含有するドープが透明支持体の内層部に配置されることが好ましい。具体的には流延の際、流延用支持体面若しくは空気界面側に該ドープ以外の透光性粒子など平均粒径が0.5μm以上の粒子を実質上含まないドープを置くことが好ましい。
従って、透明支持体の深さ方向で透光性粒子の存在量の異なる領域が形成されていることが好ましく、更に透光性粒子存在量が多い領域は透明支持体の空気側最表面(A面)側に存在することが好ましく、A面側の表面から透明支持体の厚み方向深さでA面側表面から全体の10〜80%まで深さの領域に粒子中心が存在することが好ましく、更に好ましくはA面側表面から10〜75%まで深さ、最も好ましくはA面側表面から10〜50%までの深さに存在することが好ましい。
【0067】
透光性粒子を特定の深さ方向に偏析させるには、粒子含率の異なる複数のドープを同時又は逐次に流延したり、粒子含率の異なる複数の溶解した樹脂を共押し出しして透明支持体を形成したりすることができる。更に、剥離が起こらない限り、各層で熱可塑性樹脂の種類が異なっていても良い。例えばセルロースアシレートの置換基や置換量の異なるドープを積層させるなどが挙げられる。
【0068】
共流延で複数のドープを用いて透明支持体を形成する場合には、表層ドープ(両面にある場合は合計厚み)と基層ドープの厚み比{(表層ドープトータルの厚み/基層ドープの厚み)×100}は、5%〜120%が好ましく、10%〜100%がより好ましい。該厚み比が5%以上であると、均一な層を形成することが容易である。また、該厚み比が120%以下であれば、ドープの界面が安定し面状が損なわれる場合が少ない。ここで、ドープの厚みとは溶剤が揮発した後の厚みをいう。また、表層ドープ、基層ドープという言葉は、熱可塑性樹脂が溶剤に溶解したドープ状態で、流延ダイを通して相互に隣接して表層と基層を成している状態を表しており、溶剤が蒸発した後に透明支持体において必ずしも界面が存在することを表すものではない。
【0069】
本発明における共流延又は逐次流延による透明支持体の好ましい製造方法では、熱可塑性樹脂と平均一次粒径が0.5〜20μmであり、熱可塑性樹脂と実質屈折率差のない少なくとも1種の透光性粒子とを含む透光性粒子含有ドープと、0.5μm以上の粒子を実質的に含まない熱可塑性樹脂からなる前記透光性粒子含有ドープより低樹脂濃度の表面形状調整用ドープとをこの順番に流延して成膜することが好ましい。
ここで、透光性粒子含有ドープは基層ドープであってもよいし(図1の層2を形成)、表層ドープであってもよい(図2及び3の層4aを形成)。
表面形状調整用ドープは表層ドープ(図1の層4、図2及び3の層4bを形成)に対応する。
表面形状調整用ドープの熱可塑性樹脂濃度は、基層ドープの樹脂濃度より、0.1〜8.0質量%低いのが好ましく、1.0〜5.0質量%低いのがより好ましい。
【0070】
透光性粒子含有ドープは、0.5μm以上の粒子を実質的に含まない熱可塑性樹脂からなるドープ(図1の層3、図2及び3の層2を形成)上に流延してもよい。
また、上記複数のドープと支持体との間に、0.5μm以上の粒子を実質的に含まず隣接するドープより熱可塑性樹脂濃度が低い表層ドープ(図1及び3の層3)を流延してもよい。該ドープの樹脂濃度は、隣接するドープの樹脂濃度より、0.1〜8.0質量%低いのが好ましく、1.0〜5.0質量%低いのがより好ましい。
表層ドープの樹脂濃度を低濃度とすることにより乾燥中に「カワバリ」(すなわち、ドープ表面のみ乾燥が進み樹脂濃度が高くなり、ドープ内部の乾燥が進まなくなる状態)が生じず生産性を向上させることができる。また、図1(c)の態様において、層3のドープの樹脂濃度を低濃度とすることにより平滑なバック面(B面)が得られる。
【0071】
<ドープの調製>
セルロースアシレート等の透明支持体を形成する材料の溶液(ドープ)の調製について、その溶解方法は、上記のように特に限定されるものではなく、室温溶解法、冷却溶解法又は高温溶解方法により実施され、更にはこれらの組み合せで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても、その範囲内であればこれらの技術を適宜適用できるものである。これらの詳細、特に非塩素系溶媒系については、前記の公技番号2001−1745号の22〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。更にセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0072】
[ナーリング]
本発明における透明支持体は、幅広で薄膜であっても、ロール状態でハンドリングした際にブラックバンドの発生やフィルムの変形を抑制するために、透明支持体のフィルム端部にナーリング部を有することが好ましい。ナーリング部とは、透明長尺支持体の幅方向の端部に凹凸を付与して端部を嵩高くしたものであり、両端部に設けることが好ましい。ナーリング部として凹凸を付与する方法としては、フィルムに加熱されたエンボスロールを押し当てることにより形成することが出来る。エンボスロールには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることが出来る。本発明に係るナーリング部の高さは、フィルム表面からエンボス凸部までの高さを言う。ナーリングは、透明支持体の表裏の両面に設けることもでき、片面に3以上設けることもできる。ナーリング部の高さは、光学異方性層及びハードコート層を含む光学機能層全体の膜厚よりも1μm以上高くすることが好ましく、1本のナーリング部の幅は、5mm〜30mmの範囲であることが好ましい。フィルムの表裏の両面にナーリング部を設ける場合は、ナーリング部の高さの和が少なくとも1μm以上高くなればよい。1μm以上にすることで、ブラックバンドの発生やフィルムの変形を抑制効果が現れる。ナーリング部の高さは好ましくは光学機能層全体の膜厚よりも2μm〜10μmの範囲で高くすることである。この範囲にすることで、ブラックバンドの発生やフィルムの変形が防止でき、巻きずれやナーリング部のふくらみによる支持体変形などの弊害も発生しない。
【0073】
[光学異方性層]
本発明の光学フィルムが有する光学異方性層について説明する。光学異方性層とは、配向膜上に該層を形成することで位相差を生じさせる層をいう。本発明の光学フィルムは透明支持体の一方の面上に光学異方性層を有するが、透明支持体の一方の面上に配向膜を有し、該配向膜に接するように光学異方性層が設けられることが好ましい。すなわち、光学異方性層は、透明支持体の一方の面上に設けられた配向膜に、他の層を介さずに直接積層されることが好ましい。
また、本発明における光学異方性層は液晶性化合物を含有する組成物から形成されたものであることが好ましく、不飽和二重結合を有する重合性液晶性化合物を含有する組成物から形成されたものであることがより好ましい。
本発明における光学異方性層は、各種用途に合わせ材料及び製造条件を選択することができるが、重合性液晶性化合物を用いたλ/4膜が一つの好ましい態様である。
【0074】
まず、光学特性の測定方法について説明する。本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値(d)を基に、以下の式(A)、及び式(III)よりRthを算出することもできる。
【0075】
式(A):
【0076】
【数1】


【0077】
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
【0078】
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・式(III)
【0079】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0080】
なお、本願実施例のRe(λ)、Rth(λ)は上記の方法のうち、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものとして算出した。
【0081】
[光学異方性層のレターデーション]
本発明における光学異方性層の波長550nmにおける正面レターデーションRe(550)は80〜200nmが好ましく、90〜180nmがより好ましく、100〜170nmが更に好ましい。
また、本発明の光学フィルムの波長550nmにおける正面レターデーションRe(550)は80〜200nmであり、100〜170nmがより好ましく、110〜160nmが更に好ましい。
波長550nmにおける正面レターデーションRe(550)を上記範囲に抑制することにより、例えば、時分割2眼立体視の透過型液晶表示装置に搭載した時の正面のクロストークや、輝度低下を抑制することができる。特に視認者が顔を傾けて見た時に効果が顕著である。
光学フィルムの波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションRth(550)は−120〜120nmであり、−70〜70nmが好ましく、−50〜50nmがより更に好ましく、−20〜20nmが特に好ましい。
Rth(550)を上記範囲に制御することにより、時分割2眼立体視の透過型液晶表示装置に搭載した時に斜め方向のクロストークや、輝度低下を抑制することができる。
上記の波長550nmにおける、Re(550)とRth(550)から算出されるNz(=Rth(550)/Re(550)+0.5)は−0.50〜1.50が好ましく、−0.10〜1.10がより好ましく、0.1〜0.9が更に好ましく、0.3〜0.7が特に好ましい。
【0082】
[液晶性化合物を含む光学異方性層]
本発明における光学異方性層は液晶性化合物を用いて形成されることが好ましい。用いられる液晶性化合物の種類については特に制限されない。例えば、低分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して得られる光学異方性層や、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して得られる光学異方性層を用いることもできる。なお本発明では、光学異方性層に液晶性化合物が用いられる場合であっても、光学異方性層は、該液晶性化合物が重合等によって固定されて形成された層であり、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。
前記のように本発明の光学異方性層は重合性基を有する液晶性化合物を含有する組成物から形成されることが好ましく、その場合、重合性基は不飽和二重結合を有する重合性基であることが好ましい。
また、重合性を有する液晶性化合物は多官能性液晶化合物でもよいし、単官能性液晶化合物でもよいが、多官能性液晶化合物であることがより好ましい。
【0083】
液晶性化合物は、ディスコティック液晶性化合物(円盤状液晶性化合物とも称する)でもよいし、棒状液晶性化合物でもよいが、本発明の光学フィルムで好ましい光学特性(特に波長550nmにおける厚さ方向のレターデーション)を得るためには、ディスコティック液晶性化合物がより好ましい。
【0084】
前記光学異方性層において、液晶性化合物の分子は、垂直配向、水平配向、ハイブリッド配向及び傾斜配向のいずれかの配向状態に固定化されていることが好ましい。視野角依存性が対称である位相差板を作製するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤面がフィルム面(光学異方性層の面方向)に対して実質的に垂直であるか、又は、棒状液晶性化合物の長軸がフィルム面(光学異方性層面)に対して実質的に水平であることが好ましい。ディスコティック液晶性化合物が実質的に垂直とは、フィルム面(光学異方性層面)とディスコティック液晶性化合物の円盤面とのなす角度の平均値が70°〜90°の範囲内であることを意味する。80°〜90°がより好ましく、85°〜90°が更に好ましい。棒状液晶性化合物が実質的に水平とは、フィルム面(光学異方性層面)と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が0°〜20°の範囲内であることを意味する。0°〜10°がより好ましく、0°〜5°が更に好ましい。
【0085】
本発明の光学フィルムにおいて光学異方性層は一層のみからなっていてもよいし、二層以上の光学異方性層の積層体であってもよい。
【0086】
前記光学異方性層は、棒状液晶性化合物又はディスコティック液晶性化合物等の液晶性化合物と、所望により、後述する重合開始剤や配向制御剤や他の添加剤を含む塗布液を、支持体上に塗布することで形成することができる。支持体上に配向膜を形成し、該配向膜表面に前記塗布液を塗布して形成するのが好ましい。
【0087】
光学異方性層形成用組成物中における液晶性化合物の含有量の好ましい範囲は、組成物の全固形分に対して(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物に対して)、50質量%以上であることが好ましく、70〜99質量%であることがより好ましく、80〜98質量%であることが更に好ましい。上記範囲にすることで充分な位相差を薄膜で発現させることができる。
【0088】
[ディスコティック液晶性化合物]
本発明では、前記光学フィルムが有する光学異方性層の形成に、ディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0089】
本発明において好ましく用いることのできるディスコティック液晶性化合物の具体例としては、特開2009−97002号公報[0038]〜[0069]記載の化合物(1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物)が挙げられる。また、トリフェニレン化合物で、波長分散の小さいディスコティック液晶性化合物としては、特開2007−108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられる。
【0090】
前記のようにディスコティック液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成する場合、フィルム面(光学異方性層面)とディスコティック液晶性化合物の円盤面とのなす角度の平均値が70°〜90°の範囲内であることが好ましく、80°〜90°がより好ましく、85°〜90°が更に好ましい。
透明支持体に求められる最適なレターデーションは光学異方性層を形成する材料によって異なる。光学異方性層がディスコティック液晶性化合物を含み、該ディスコティック液晶性化合物が上記角度で配向している場合、前記透明支持体の波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションRth(550)は20〜100nmが好ましく、30〜90nmがより好ましく、40〜80nmが特に好ましい。透明支持体のRth(550)を上記範囲に制御することにより、光学フィルムのRth(550)を前記の好ましい範囲に制御することができる。
また透明支持体の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)は0〜10nmが好ましく、0〜8nmがより好ましく、0〜6nmが特に好ましい。
透明支持体としてセルロースアシレートフィルムを用いると、上記の好ましい厚さ方向のレターデーション及び面内レターデーションを容易に得ることができる。透明支持体としてセルロースアシレートフィルムを用い、かつ、光学異方性層にディスコティック液晶性化合物を用いる態様は、前述した光学フィルムとしての好ましい光学特性を得る上で特に好ましい。
【0091】
[棒状液晶性化合物]
本発明では、光学異方性層に棒状液晶性化合物を用いてもよい。棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物を用いることができる。
【0092】
前記のように透明支持体に求められる最適なレターデーションは光学異方性層を形成する材料によって異なる。光学異方性層が棒状液晶性化合物を含み、該棒状液晶性化合物が上記角度で配向している場合、前記透明支持体の波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションRth(550)は−120〜20nmが好ましく、−100〜10nmがより好ましく、−80〜−50nmが特に好ましい。透明支持体のRth(550)を上記範囲に制御することにより、光学フィルムのRth(550)を前記の好ましい範囲に制御することができる。
また透明支持体の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)は0〜10nmが好ましく、0〜8nmがより好ましく、0〜6nmが特に好ましい。
【0093】
[垂直配向促進剤]
前記光学異方性層を形成する際に、液晶性化合物の分子を均一に垂直配向させるためには、配向膜界面側及び空気界面側において液晶性化合物を垂直に配向制御可能な配向制御剤を用いるのが好ましい。この目的のために、配向膜に、排除体積効果、静電気的効果又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を、液晶性化合物とともに含有する組成物を用いて光学異方性層を形成するのが好ましい。また、空気界面側の配向制御に関しては液晶性化合物の配向時に空気界面に偏在し、その排除体積効果、静電気的効果、又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を、液晶性化合物とともに含有する組成物を用いて光学異方性層を形成するのが好ましい。このような配向膜界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(配向膜界面側垂直配向剤)としては、ピリジニウム誘導体が好適に用いられる。空気界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(空気界面側垂直配向剤)としては、該化合物が空気界面側に偏在するのを促進する、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含む化合物が好適に用いられる。また、これらの化合物を配合することによって、例えば、液晶性組成物を塗布液として調製した場合に、該塗布液の塗布性が改善され、ムラ、ハジキの発生が抑制される。以下に垂直配向剤に関して詳細に説明する。
【0094】
[配向膜界面側垂直配向剤]
本発明に使用可能な配向膜界面側垂直配向剤としては、ピリジニウム誘導体(ピリジニウム塩)が好適に用いられ、化合物の具体例としては、特開2006−113500号公報明細書中[0058]〜[0061]に記載の化合物が挙げられる。
【0095】
前記光学異方性層形成用の組成物中における前記ピリジニウム誘導体の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、前記組成物(塗布液として調製した場合は溶媒を除いた液晶性組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0096】
[空気界面側垂直配向剤]
空気界面側垂直配向剤としては、下記フッ素系ポリマー(式(II)を部分構造として含む)又は一般式(III)で表される含フッ素化合物が好適に用いられる。
【0097】
まずフッ素系ポリマー(式(II)を部分構造として含む)について説明する。空気界面側垂直配向剤としては、フッ素系ポリマーが、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位と下記式(II)で表される繰り返し単位とを含む共重合体であることが好ましい。
【0098】
【化1】

【0099】
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;Lは下記の連結基群から選ばれる2価の連結基又は下記の連結基群から選ばれる2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表し、
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR−(Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、−S−、−SO−、−P(=O)(OR)−(Rはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基;
Qはカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、又はホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩を表す。
【0100】
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有することを特徴とする。ポリマーの種類としては、「改訂 高分子合成の化学」(大津隆行著、発行:株式会社化学同人、1968)1〜4ページに記載があり、例えば、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリカーボナート類、ポリエーテル類、ポリアセタール類、ポリケトン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリアリレート類、PTFE類、ポリビニリデンフロライド類、セルロース誘導体などが挙げられる。前記フッ素系ポリマーは、ポリオレフィン類であることが好ましい。
【0101】
前記フッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基を側鎖に有するポリマーである。前記フルオロ脂肪族基は、炭素数1〜12であるのが好ましく、6〜10であるのがより好ましい。脂肪族基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状である場合は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、直鎖状の炭素数6〜10のフルオロ脂肪族基が好ましい。フッ素原子による置換の程度については特に制限はないが、脂肪族基中の50%以上の水素原子がフッ素原子に置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましい。フルオロ脂肪族基は、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合、チオエーテル結合、芳香族環などを介してポリマー主鎖と結合した側鎖に含まれる。
【0102】
フッ素系ポリマーとして本発明に好ましく用いられるフルオロ脂肪族基含有共重合体の具体例として、特開2006−113500公報の段落[0110]〜[0114]に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はそれら具体例によってなんら制限されるものではない。
【0103】
本発明に用いる前記フッ素系ポリマーの質量平均分子量は1,000,000以下であるのが好ましく、500,000以下であるのがより好ましく、100,000以下であり、10000以上であるのが更に好ましい。この範囲にすることで、溶解性を満足しつつ液晶性化合物の配向制御に有効である。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
【0104】
組成物中における前記フッ素系ポリマーの含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、光学異方性層の形成に用いる場合は、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜3質量%であるのが更に好ましい。前記フッ素系ポリマーの添加量が0.005質量%以上であると効果が十分であり、また8質量%以下であると、塗膜の乾燥が十分に行われ、光学フィルムとしての性能(例えばレターデーションの均一性等)に優れる。
【0105】
下記式(III)で表される含フッ素化合物。
(III) (R−L−(W)
式中、Rはアルキル基、末端にCF基を有するアルキル基、又は末端にCFH基を有するアルキル基を表し、mは1以上の整数を表す。複数個のRは同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF基又はCFH基を有するアルキル基を表す。Lは(m+n)価の連結基を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、又はホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩を表し、nは1以上の整数を表す。
【0106】
本発明に使用可能な式(III)にて表される含フッ素化合物の具体例として、特開2006−113500公報の段落[0136]〜[0140]に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はそれら具体例によってなんら制限されるものではない。
【0107】
組成物中における前記含フッ素化合物の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、光学異方性層の形成に用いる場合は、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜3質量%であるのが更に好ましい。
【0108】
[重合開始剤]
配向(好ましくは垂直配向)させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定する。固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0109】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることが更に好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
【0110】
光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることが更に好ましく、1〜5μmであることが最も好ましい。
【0111】
[不飽和二重結合を有する非液晶性化合物]
本発明の光学異方性層形成用組成物には不飽和二重結合を有する非液晶性の化合物を含有することが、隣接するハードコート層や配向膜との密着を強化するために好ましい。
不飽和二重結合を有する化合物は重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーであることが好ましく、重合性不飽和基を3つ以上有する多官能モノマーであることが更に好ましい。
【0112】
不飽和二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CHが好ましい。特に好ましくは下記の1分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いることができる。
【0113】
上記不飽和二重結合を有する非液晶性化合物の添加量は、液晶性化合物に対して1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、3〜15質量%であることが特に好ましい。
【0114】
重合性の不飽和結合を有する化合物の具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0115】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0116】
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、新中村化学工業(株)製NKエステル、日本化薬(株)製KAYARAD、大阪有機化学工業(株)製ビスコート等を挙げることができる。
【0117】
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、新中村化学工業(株)製NKエステル、日本化薬(株)製KAYARAD、大阪有機化学工業(株)製ビスコート等を挙げることができる。
【0118】
不飽和二重結合を有する非液晶性化合物の添加量は、不飽和二重結合を有する液晶性化合物に対して一般に0.5〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましく、2〜8質量%であることが特に好ましい。上記添加量が0.5質量%以上であると、密着改良効果が十分に得られるため好ましい。また、30質量%以下であると、膜厚当たりの位相差が低下しにくい点で優れる。
【0119】
[光学異方性層の他の添加剤]
上記の液晶性化合物等と共に、可塑剤、界面活性剤を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの素材は液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
【0120】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物、特開2005−62673号明細書中の段落番号[0069]〜[0126]記載の化合物が挙げられる。
【0121】
液晶性化合物とともに使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃が更に好ましい。
【0122】
本発明の液晶性化合物を含有する光学異方性層の表面は、液晶性化合物が欠陥なく配向するためには、平滑であることが好ましい。粗さ曲線の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)の範囲としては、0〜0.05μmが好ましく、更に好ましくは0.01〜0.04μmである。
【0123】
[塗布溶剤]
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0124】
[塗布方法]
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0125】
[配向膜]
本発明の光学フィルムは、透明支持体と光学異方性層の間に配向膜を有することが好ましい。
本発明では、配向膜の表面に前記光学異方性層形成用組成物を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させるのが好ましい。本発明の光学フィルムは、前記透明支持体と前記光学異方性層の間に配向膜を有することが好ましい。配向膜は液晶性化合物の配向方向を規定する機能を有するため、本発明の好ましい態様を実現する上で利用するのが好ましい。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを別の透明支持体上に転写して本発明における光学フィルム用光学基材(透明支持体上に光学異方性層を有する光学部材)を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。更に、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。
【0126】
ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが更に好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0127】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%が更に好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は100〜5000であることが好ましい。
【0128】
前記配向膜において、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性化合物を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性化合物を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる液晶性化合物とを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学異方性層と配向膜の密着性を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、光学異方性層に含まれる液晶性化合物と同様に、不飽和二重結合基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載の不飽和二重結合基を有する化合物等が挙げられる。
【0129】
光学異方性層と配向膜の密着性をより強くするために、配向膜ポリマーに不飽和二重結合を導入した上に、配向膜に光重合開始剤を含有させることが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
【0130】
配向膜形成用組成物中における不飽和二重結合を有する化合物の含有量の好ましい範囲は、組成物の全固形分に対して(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物に対して)、配向膜自身膜硬度と光学異方性層の密着性を得るために、50〜100質量%であることが好ましく、60〜100質量%であるのがより好ましく、70〜100質量%であるのが更に好ましい。
【0131】
光重合開始剤の使用量は、配向膜形成用組成物の不飽和二重結合基を有する化合物に対して0.5〜15質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1〜6質量%であることが特に好ましい。
【0132】
配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール及びジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0133】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%が更に好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
【0134】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤及び添加剤を含む溶液を透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることが更に好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0135】
配向膜形成時に利用する塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法又はロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましく、0.2〜5.0μmがより好ましく、0.3〜3.0μmが更に好ましく、0.4〜2.0μmが特に好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5が好ましい。
【0136】
配向膜は、透明支持体上に設けられることが好ましい。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
【0137】
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0138】
配向膜のラビング処理面に前記組成物を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させることで、前記光学異方性層を形成することができる。
【0139】
[ハードコート層]
本発明の光学フィルムにおけるハードコート層について説明する。
本発明において、ハードコート層とは、該層を形成することで透明支持体の鉛筆硬度が上昇する層をいう。実用的には、ハードコート層積層後の鉛筆硬度(JIS K5400)はH以上が好ましく、更に好ましくは2H以上であり、最も好ましくは3H以上である。
ハードコート層の厚みは、0.4〜35μmが好ましく、更に好ましくは1〜30μmであり、最も好ましくは1.5〜20μmである。
本発明においてハードコート層は1層でも複数でもかまわない。ハードコート層が複数層の場合、全てのハードコート層の膜厚の合計が上位範囲であることが好ましい。
本発明の光学フィルムのハードコート層の表面は平坦であって凹凸があっても構わない。また、必要に応じて、表面凹凸や内部散乱付与のためにハードコート層に透光性粒子を含有させることもできる。
【0140】
[ハードコート層形成材料物]
本発明において、ハードコート層は、不飽和二重結合を有する化合物、重合開始剤、必要に応じて、透光性粒子、含フッ素又はシリコーン系化合物、溶剤を含有する組成物を、支持体上に直接又は他の層を介して塗布・乾燥・硬化することにより形成することができる。以下各成分について説明する。
【0141】
[不飽和二重結合を有する化合物]
本発明のハードコート層形成用組成物には不飽和二重結合を有する化合物を含有することができる。不飽和二重結合を有する化合物はバインダーとして機能することができ、重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーであることが好ましい。該重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーは、硬化剤として機能することができ、塗膜の強度や耐擦傷性を向上させることが可能となる。重合性不飽和基は3つ以上であることがより好ましい。これらモノマーは、1又は2官能のモノマーと3官能以上のモノマーを併用して用いることもできる。
【0142】
不飽和二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CHが好ましい。特に好ましくは下記の1分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いることができる。
【0143】
重合性の不飽和結合を有する化合物の具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0144】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0145】
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKエステル A−TMMT、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA等を挙げることができる。多官能モノマーについては、特開2009−98658号公報の段落[0114]〜[0122]に記載されており、本発明においても同様である。
【0146】
不飽和二重結合を有する化合物としては、水素結合性の置換基を有する化合物であることが、支持体との密着性、低カール、後述する含フッ素又はシリコーン系化合物の固定性の点から好ましい。水素結合性の置換基とは、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの電気陰性度が大きな原子と水素結合とが共有結合で結びついた置換基を指し、具体的にはOH−、SH−、−NH−、CHO−、CHN−などが挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート類や水酸基を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。市販されている(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKオリゴ U4HA、同NKエステルA−TMM−3、日本化薬(株)製KAYARAD PET−30等を挙げることができる。
【0147】
本発明のハードコート層形成用組成物中の不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、十分な重合率を与えて硬度などを付与するため、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、50質量%以上が好ましく、60〜99質量%がより好ましく、70〜99質量%が更に好ましく、80〜99質量%が特に好ましい。
【0148】
[ハードコート層に含有させてもよい透光性粒子]
本発明の光学フィルムは、ハードコート層にハードコート層バインダーと屈折率差を有する光散乱性の微粒子を含有させることによって、内部ヘイズを付与することもできる。
本発明において、ハードコート層は前記のように1層でも複数層でも構わないが、ハードコート層に光散乱性の微粒子を含有させて内部ヘイズを付与する場合、光散乱性の微粒子を含有したハードコート層表面が不要な凹凸を発現することがある。前記のように本発明はハードコート積層側の表面が実質平坦であることが好ましく、この場合はハードコート層を2層構成とし、支持体に近い側のハードコート層にのみ光散乱性の微粒子を含有させるのも好ましい態様である。
【0149】
ハードコート層に用いることができる透光性粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子(屈折率1.49)、架橋ポリ(アクリル−スチレン)共重合体粒子(屈折率1.54)、メラミン樹脂粒子(屈折率1.57)、ポリカーボネート粒子(屈折率1.57)、ポリスチレン粒子(屈折率1.60)、架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61)、ポリ塩化ビニル粒子(屈折率1.60)、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子(屈折率1.68)、シリカ粒子(屈折率1.46)、アルミナ粒子(屈折率1.63)、ジルコニア粒子、チタニア粒子、又は中空や細孔を有する粒子等が挙げられる。
【0150】
なかでも架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子が好ましく用いられ、これらの粒子の中から選ばれた各透光性粒子の屈折率にあわせてバインダーの屈折率を調整することにより、本発明の光学フィルムのハードコート層に好適な表面凹凸、表面ヘイズ、内部ヘイズ、全ヘイズを達成することができる。
【0151】
バインダー(透光性樹脂)の屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましく、より好ましくは1.48〜1.65である。
また、透光性粒子と、ハードコート層のバインダーとの屈折率の差(「透光性粒子の屈折率」−「該透光性粒子を除くハードコート層の屈折率」)は、絶対値として、好ましくは0.05未満であり、より好ましくは0.001〜0.030、更に好ましくは0.001〜0.020である。ハードコート層中の透光性粒子とバインダーとの屈折率の差を0.05未満にすると、透光性粒子による光の屈折角度が小さくなり、散乱光が広角まで広がらず、光学異方性層の透過光の偏光を解消するなどの悪化作用が無く好ましい。
【0152】
上記の粒子とバインダーの屈折率差を実現するためには、透光性粒子の屈折率を調節しても、バインダーの屈折率を調節してもよい。
好ましい第1の態様としては、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを主成分としたバインダー(硬化後の屈折率が1.50〜1.53)とアクリル含率50〜100質量パーセントである架橋ポリ(メタ)アクリレート/スチレン重合体からなる透光性粒子を組み合わせて用いることが好ましい。低屈折率であるアクリル成分と高屈折率であるスチレン成分の組成比を調節することで、透光性粒子とバインダーとの屈折率差を0.05未満にすることが容易である。アクリル成分とスチレン成分の比率は質量比で50/50〜100/0が好ましく、更に好ましくは60/40〜100/0であり、最も好ましくは65/35〜90/10である。架橋ポリ(メタ)アクリレート/スチレン重合体からなる透光性粒子の屈折率としては、1.49〜1.55が好ましく、更に好ましくは1.50〜1.54であり、最も好ましくは1.51〜1.53である。
好ましい第2の態様としては、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを主成分としたバインダーに対して、1〜100nmの平均粒子サイズの無機微粒子を併用することで、モノマーと無機微粒子からなるバインダーの屈折率を調節し、既存の透光性粒子との屈折率差を調節するものである。無機粒子としては、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも一つの金属の酸化物、具体例としては、SiO、ZrO、TiO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO等が挙げられる。好ましくは、SiO、ZrO、Alなどが挙げられる。これら無機粒子は、モノマーの総量に対して1〜90質量%の範囲で混合して用いることができ、好ましくは5〜65質量%である。
ここで、該透光性粒子を除くハードコート層の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。前記透光性粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に透光性粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定される。
【0153】
透光性粒子の平均粒径は、1.0〜12μmが好ましく、より好ましくは3.0〜12μm、更に好ましくは4.0〜10.0μm、最も好ましくは4.5〜8μmである。屈折率差及び粒子サイズを上記範囲に設定することで、光の散乱角度分布が広角にまで広がらず、ディスプレイの文字ボケ、コントラスト低下を引き起こしにくい。添加する層の膜厚を厚くする必要がなく、カールやコスト上昇といった問題が生じにくい点で、12μm以下が好ましい。更に上記範囲内にすることは、塗工時の塗布量を抑えられ、乾燥が速く、乾燥ムラ等の面状欠陥を生じにくい点でも好ましい。
【0154】
透光性粒子の平均粒径の測定方法は、粒子の平均粒径を測る測定方法であれば、任意の測定方法が適用できるが、好ましくは透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とできる。
【0155】
透光性粒子の形状は特に限定されないが、真球状粒子の他に、異形粒子(例えば、非真球状粒子)といった形状の異なる透光性粒子を併用して用いてもよい。特に非真球状粒子の短軸をハードコート層の法線方向にそろえると、真球粒子に比べ、粒子径が小さなものが使用できるようになる。
【0156】
前記透光性粒子は、ハードコート層全固形分中に0.1〜40質量%含有されるように配合されることが好ましい。より好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%、である。透光性粒子の配合比を上記範囲にすることで内部ヘイズを好ましい範囲に制御することができる。
【0157】
また、透光性粒子の塗布量は、好ましくは10〜2500mg/m、より好ましくは30〜2000mg/m、更に好ましくは100〜1500mg/mである。
【0158】
本発明の光学フィルムにおいて、ハードコート層を有する側の表面のJIS B0601に基づく算術平均粗さRaが0〜0.08μmであることが、黒しまりの観点から好ましい。
【0159】
<透光性粒子調製、分級法>
透光性粒子の製造法は、懸濁重合法、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、分散重合法、シード重合法等を挙げることができ、いずれの方法で製造されてもよい。これらの製造法は、例えば「高分子合成の実験法」(大津隆行、木下雅悦共著、化学同人社)130頁及び146頁から147頁の記載、「合成高分子」1巻、p.246〜290、同3巻、p.1〜108等に記載の方法、及び特許第2543503号明細書、同第3508304号明細書、同第2746275号明細書、同第3521560号明細書、同第3580320号明細書、特開平10−1561号公報、特開平7−2908号公報、特開平5−297506号公報、特開2002−145919号公報等に記載の方法を参考にすることができる。
【0160】
透光性粒子の粒度分布はヘイズ値と拡散性の制御、塗布面状の均質性から単分散性粒子が好ましい。粒子径の均一さを表すCV値は15%以下が好ましく、より好ましくは13%以下、更に好ましくは10%以下である。更に平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。このような粒度分布を持つ粒子は、調製又は合成反応後に、分級することも有力な手段であり、分級の回数を上げることやその程度を強くすることで、望ましい分布の粒子を得ることができる。
分級には風力分級法、遠心分級法、沈降分級法、濾過分級法、静電分級法等の方法を用いることが好ましい。
【0161】
[光重合開始剤]
次に、ハードコート層形成用組成物に含有させることができる光重合開始剤について説明する。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009−098658号公報の段落[0133]〜[0151]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
【0162】
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0163】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア651」、「イルガキュア184」、「イルガキュア819」、「イルガキュア907」、「イルガキュア1870」(CGI−403/Irg184=7/3混合開始剤)、「イルガキュア500」、「イルガキュア369」、「イルガキュア1173」、「イルガキュア2959」、「イルガキュア4265」、「イルガキュア4263」、「イルガキュア127」、“OXE01”等;日本化薬(株)製の「カヤキュアーDETX−S」、「カヤキュアーBP−100」、「カヤキュアーBDMK」、「カヤキュアーCTX」、「カヤキュアーBMS」、「カヤキュアー2−EAQ」、「カヤキュアーABQ」、「カヤキュアーCPTX」、「カヤキュアーEPD」、「カヤキュアーITX」、「カヤキュアーQTX」、「カヤキュアーBTC」、「カヤキュアーMCA」など;サートマー社製の“Esacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KTO46,KT37,KIP150,TZT)”等、及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0164】
本発明のハードコート層形成用組成物中の光重合開始剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分多く、かつ開始点が増えすぎないよう十分少ない量に設定するという理由から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.5〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0165】
[溶剤]
本発明のハードコート層形成用組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、モノマーの溶解性、透光性粒子の分散性、塗工時の乾燥性等を考慮し、各種溶剤を用いることができる。係る有機溶剤としては、例えばジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、炭酸ジメチル、炭酸メチルエチル、炭酸ジエチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−プチロラクトン、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0166】
本発明のハードコート層形成用組成物の固形分の濃度は20〜80質量%の範囲となるように溶媒を用いるのが好ましく、より好ましくは30〜75質量%であり、更に好ましくは40〜70質量%である。
【0167】
本発明の光学フィルムとしては、長さ方向を基準に正面レターデーションの遅相軸が時計回り又は反時計回りに5〜85°である、長尺ロール状であることが好ましい。
【0168】
[光学フィルムの層構成]
本発明の光学フィルムは、透明支持体の一方の面上にハードコート層を有し、もう一方の面上に光学異方性層を有するが、更に目的に応じて、必要な機能層を単独又は複数層設けてもよい。例えば、反射防止層(低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層など屈折率を調整した層)、帯電防止層、紫外線吸収層などを設けることができる。ハードコート層が、帯電防止性、紫外線吸収性を有していてもよい。
【0169】
本発明の光学フィルムのより具体的な層構成の例を下記に示す。
光学異方性層/配向膜/透明支持体/ハードコート層
光学異方性層/配向膜/透明支持体/ハードコート層/オーバーコート層
光学異方性層/配向膜/透明支持体/ハードコート層/低屈折率層
光学異方性層/配向膜/透明支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/配向膜/透明支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/配向膜/透明支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/防汚層
上記構成のなかでも、ハードコート層側の最表層には、低屈折率層が設けられていることが好ましい。低屈折率層を設けることで、黒しまり感が更に向上する。
【0170】
[低屈折率層の材料]
以下に低屈折率層の材料について説明する。
【0171】
[無機微粒子]
低屈折率化、耐擦傷性改良の観点から、低屈折率層に無機微粒子を用いることが好ましい。該無機微粒子は、平均粒子サイズが5〜120nmであれば特に制限はないが、低屈折率化の観点からは、無機の低屈折率粒子が好ましい。
【0172】
無機微粒子としては、低屈折率であることからフッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点でシリカ微粒子が好ましい。これら無機粒子のサイズ(1次粒径)は、5〜120nmが好ましく、より好ましくは10〜100nm、20〜100nm、最も好ましくは30〜90nmである。
【0173】
無機微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒のしまりといった外観、積分反射率が悪化する。また、後述の中空シリカ微粒子を用いた場合は粒径が小さすぎると、空腔部の割合が減り屈折率の充分な低下が見込めない。無機微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であってもよい。
【0174】
無機微粒子の塗設量は、1mg/m〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5mg/m〜80mg/m、更に好ましくは10mg/m〜60mg/mである。少なすぎると、充分な低屈折率化が見込めなかったり、耐擦傷性の改良効果が減ったりし、多すぎると、低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒のしまりなどの外観や積分反射率が悪化する。
【0175】
(多孔質又は中空の微粒子)
低屈折率化を図るには、多孔質又は中空構造の微粒子を使用することが好ましい。特に中空構造のシリカ粒子を用いることが好ましい。これら粒子の空隙率は、好ましくは10〜80%、更に好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。中空微粒子の空隙率を上述の範囲にすることが、低屈折率化と粒子の耐久性維持の観点で好ましい。
【0176】
多孔質又は中空粒子がシリカの場合には、微粒子の屈折率は、1.10〜1.40が好ましく、更に好ましくは1.15〜1.35、最も好ましくは1.15〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。
【0177】
また、中空シリカは粒子平均粒子サイズの異なるものを2種以上併用して用いることができる。ここで、中空シリカの平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0178】
本発明において中空シリカの比表面積は、20〜300m/gが好ましく、更に好ましくは30〜120m/g、最も好ましくは40〜90m/gである。表面積は窒素を用いBET法で求めることができる。
【0179】
本発明においては、中空シリカと併用して空腔のないシリカ粒子を用いることができる。空腔のないシリカの好ましい粒子サイズは、30nm以上150nm以下、更に好ましくは35nm以上100nm以下、最も好ましくは40nm以上80nm以下である。
【0180】
[無機微粒子の表面処理方法]
また、本発明においては無機微粒子は常法によりシランカップリング剤等により表面処理して用いることができる。
特に、低屈折率層形成用バインダーへの分散性を改良するために、無機微粒子の表面はオルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物により処理がされているのが好ましく、処理の際に、酸触媒及び金属キレート化合物のいずれか、あるいは両者が使用されることが更に好ましい。無機微粒子の表面の処理方法については、特開2008−242314号公報の段落番号[0046]〜[0076]に記載されており、該文献に記載されたオルガノシラン化合物、シロキサン化合物、表面処理の溶媒、表面処理の触媒、金属キレート化合物などは本発明においても好適に用いることができる。
【0181】
低屈折率層には、(b2)重合性不飽和基を有する含フッ素又は非含フッ素モノマーを用いることができる。非含フッ素モノマーについては、ハードコート層で使用できるとして説明した不飽和二重結合を有する化合物も用いることが好ましい。含フッ素のモノマーとしては、下記一般式(1)で表され、フッ素を35質量%以上含有し、全ての架橋間分子量の計算値が500よりも小さい含フッ素多官能モノマー(d)を用いることが好ましい。
一般式(1): Rf2{−(L) m−Y}n
(一般式(1)中、Rf2は少なくとも炭素原子及びフッ素原子を含むn価の基を表し、nは3以上の整数を表す。Lは単結合又は二価の連結基を表し、mは0又は1を表す。Yは重合性不飽和基を表す。)
Rf2は酸素原子及び水素原子の少なくともいずれかを含んでも良い。また、Rf2は鎖状(直鎖又は分岐)又は環状である。
【0182】
Yは、不飽和結合を形成する2つの炭素原子を含む基であることが好ましく、ラジカル重合性の基であることがより好ましく、(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、及び−C(O)OCH=CHから選ばれるものが特に好ましい。これらの中でも、重合性の観点から、より好ましいのは、ラジカル重合性を有する(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、及びC(O)OCH=CHである。
【0183】
Lは二価の連結基を表し、詳しくは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、−S−、−N(R)−、炭素数1〜10のアルキレン基と−O−、−S−又はN(R)−を組み合わせて得られる基、炭素数6〜10のアリーレン基と−O−、−S−又はN(R)−を組み合わせて得られる基を表す。Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。Lがアルキレン基又はアリーレン基を表す場合、Lで表されるアルキレン基及びアリーレン基はハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物の具体例は、特開2010−152311号公報[0121]〜[0163]段落に記載されている。
【0184】
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムの製造方法は、透明支持体上に配向膜を形成し、該配向膜上に直接、不飽和二重結合を有する液晶性化合物を含有する光学異方性層形成用組成物を塗布し、電離放射線を照射し、不飽和二重結合を充分に残して硬化させる工程、及び該光学異方性層形成用組成物上に直接、ハードコート層形成用組成物を塗布し、電離放射線を照射し、ハードコート層を硬化するとともに、光学異方性層も硬化させる工程を有する。
光学異方性層を硬化する時に二重結合を残すことで、ハードコート層を塗布して、ハードコート層を硬化するとともに、光学異方性層も硬化させることにより、光学異方性層とハードコート層との界面で不飽和二重結合の重合により共有結合が形成されることで、密着性を向上させることができる。
ここで、不飽和二重結合を充分に残すとは光学異方性層硬化後の二重結合の残存率が30〜80%であることを意味し、二重結合の残存率が40〜70%であることが好ましく、45〜65%であることが更に好ましい。
【0185】
(ハードコート層の塗布方法)
本発明の光学フィルムに係るハードコート層は以下の方法で形成することができる。
まずハードコート層形成用組成物が調製される。次に、該組成物をディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法(米国特許2681294号明細書、特開2006−122889号公報参照)がより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。
【0186】
ハードコート層は、透明支持体上に塗布した後、溶剤を乾燥するために加熱されたゾーンにウェブで搬送される。その際の乾燥ゾーンの温度は25℃〜140℃が好ましく、乾燥ゾーンの前半は比較的低温であり、後半は比較的高温であることが好ましい。但し、各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。例えば、紫外線硬化樹脂と併用される市販の光ラジカル発生剤のなかには120℃の温風中で数分以内にその数10%前後が揮発してしまうものもあり、また、単官能、2官能のアクリレートモノマー等は100℃の温風中で揮発が進行するものもある。そのような場合には、前記のようにハードコート層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。
【0187】
また、ハードコート層の塗布組成物を基材フィルム上に塗布した後の乾燥風は、前記塗布組成物の固形分濃度が1〜50%の間は塗膜表面の風速が0.1〜2m/秒の範囲にあることが、乾燥ムラを防止するために好ましい。
また、ハードコート層の塗布組成物を基材フィルム上に塗布した後、乾燥ゾーン内で基材フィルムの塗布面とは反対の面に接触する搬送ロールと基材フィルムとの温度差が0℃〜20℃以内とすると、搬送ロール上での伝熱ムラによる乾燥ムラが防止でき、好ましい。
【0188】
溶剤の乾燥ゾーンの後に、ウェブで電離放射線照射によりハードコート層を硬化させるゾーンを通過させ、塗膜を硬化する。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm〜1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して塗膜を硬化するのが好ましい。その際、ウェブの幅方向の照射量分布は中央の最大照射量に対して両端まで含めて50〜100%の分布が好ましく、80〜100%の分布がより好ましい。更に表面硬化を促進する為に窒素ガス等をパージして酸素濃度を低下する必要がある際には、酸素濃度0.01%〜5%が好ましく、幅方向の分布は酸素濃度で2%以下が好ましい。紫外線照射の場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。また、硬化反応を促進するために、硬化時に温度を高めることもでき、25〜100℃が好ましく、更に好ましくは30〜80℃、最も好ましくは40〜70℃である。
【0189】
このようにして本発明のハードコート層が塗布・乾燥・硬化できる。また必要に応じてその他の機能層を設けることもできる。ハードコート層に加えてその他の機能層を積層する場合には、複数の層を同時に塗布してもよいし、逐次塗布してもよい。それらの層の製造方法は、ハードコート層の製造方法に準じて行うことができる。
【0190】
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光膜と該偏光膜の両面を保護する2枚の保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が本発明の光学フィルムであることが好ましい。
本発明の偏光板は、少なくとも1つの保護膜と偏光膜とを有する偏光板であって、前記少なくとも1つの保護膜が前記本発明の光学フィルムであり、前記光学フィルムの光学異方性層側と前記偏光膜とが貼合された偏光板であることがより好ましい。ここで、光学異方性層と偏光膜との貼合は、直接又は接着剤層や粘着剤層を介して貼り合わされることが好ましく、例えば透明支持体などの他の部材を間に介さないことが好ましい。他の部材を介さないことで、偏光板の薄型化に貢献でき、かつ干渉ムラが生じにくいため好ましい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
【0191】
偏光板は、光学フィルムの光学異方性層側が接着剤又は他の基材を介して偏光膜に接着しており、偏光膜のもう一方の側にも保護フィルムを有する構成が好ましく、更に好ましくは、光学フィルムの光学異方性層が接着剤を介して直接偏光膜に接着している構成である。光学異方性層と偏光膜の間の接着性を改良するために、光学異方性層の表面は表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線(UV)処理、火炎処理、鹸化処理、溶剤洗浄)を実施することが好ましい。また、光学異方性層の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。
また、偏光板を構成するもう一方の保護フィルムの偏光膜と反対側の面には粘着剤層を有していても良い。
【0192】
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、λ/4膜などに期待される光学性能に加え、物理強度、防汚性、耐久性に優れた偏光板が作製できる。
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置用表面フィルムとして好適に用いられる。
【0193】
また、本発明の偏光板は、光学補償機能を有することもできる。その場合、偏光膜の一方の面に本発明の光学フィルムを保護フィルムとして用い、別の面に光学補償フィルムを保護フィルムとして用いることが好ましい。
【0194】
[画像表示装置]
本発明の光学フィルム及び偏光板は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に好適に用いられる。特に液晶表示装置に用いることが好ましく、立体画像表示装置(3D表示装置)に適している。中でも時分割2眼立体視の透過型液晶表示装置に用いられることが特に好ましい。
【0195】
一般的に、液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。
本発明の液晶表示装置の好ましい態様は、視認側から、前記本発明における光学フィルムと、偏光膜と、液晶セルとをこの順に有する液晶表示装置であって、前記光学フィルムが、ハードコート層が視認側に、光学異方性層が偏光膜側になるように配置された液晶表示装置である。
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましい。
【実施例】
【0196】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0197】
〔透明支持体T11の作製〕
下記に示したドープ用組成に、夫々表1に示す透光性粒子を添加し各ドープを作製し、基層ドープと表層ドープを乾燥後の膜厚が表2に示した構成になるように同時に流延し、透明支持体T11を作製した。
透明支持体T11は、図4に示した流延装置を使い、表層1用のドープが鏡面仕上げし−10℃に冷却したドラム側になるように流延し、溶剤を揮発させながら冷却ゲル化させ、ウェブを剥ぎ取った。100℃の熱風にて残留溶剤量が10質量%になるまで乾燥し、その後140℃の熱風にて10分間乾燥させた。
【0198】
なお、基層ドープの固形分濃度は23質量%、透光性粒子を含まない表層ドープ及び透光性粒子を含む表層ドープの固形分濃度は18質量%になるように、メチレンクロライド:メタノールの90:10質量比の混合溶剤で調整した。
透明支持体の空気側最表面(A面)側に配される表層ドープの室温下における粘度は何れも20〜50Pa・sであった。ここで、表1の組成においては、上記固形分濃度に熱可塑性樹脂の濃度も比例する、即ち、上記固形分濃度が高いドープほど、熱可塑性樹脂の濃度も高い。
【0199】
〔透明支持体T12〜T24の作製〕
透明支持体T11に対しドープ用固形分組成C1に対し透光性粒子を表2に記載のものに変更し、ヘイズ、Ra、及びSmが表3に示す値になるように基層、表層2、表層3の厚みを表2のように変更し、透明支持体T12〜T24を作成した。なお、Ra及びSmの値は、表層3側の表面の凹凸形状についての値である。
【0200】
〔透明支持体T25の作製〕
透明支持体T11で使用したドープA1、B1、C1の紫外線吸収剤の量を全て1.1質量部から0.55質量部に変更し、それぞれ、ドープA10、B10、C10を調製した。
透明支持体T11で使用したドープA1、B1、C1をドープA10、B10、C10に変更した以外は、透明支持体T11と同様にしてT25を作成した。
【0201】
〔透明支持体T26の作製〕
透明支持体T11で使用したドープA1、B1、C1の紫外線吸収剤の量を全て1.1質量部から0.25質量部に変更し、それぞれ、ドープA20、B20、C20を調製した。
透明支持体T11で使用したドープA1、B1、C1をドープA20、B20、C20に変更した以外は、透明支持体T11と同様にしてT26を作成した。
【0202】
〔透明支持体T27の作製〕
透明支持体T11で使用したドープA1、B1、C1の紫外線吸収剤の量を全て1.1質量部から0.22質量部に変更し、それぞれ、ドープA30、B30、C30を調製した。
透明支持体T11で使用したドープA1、B1、C1をドープA30、B30、C30に変更した以外は、透明支持体T11と同様にしてT27を作成した。
【0203】
〔透明支持体T28の作製〕
透明支持体T11で使用したドープA1、B1、C1の紫外線吸収剤の量を全て1.1質量部から0質量部に変更し、それぞれ、ドープA40、B40、C40を調製した。
透明支持体T11で使用したドープA1、B1、C1をドープA40、B40、C40に変更した以外は、透明支持体T11と同様にしてT28を作成した。
【0204】
透明支持体T11〜T24において、各ドープから透光性粒子を除いて形成した膜の屈折率はいずれも1.48だった。この屈折率は熱可塑性樹脂であるセルローストリアセテートの屈折率と同じであるとみなすことができる。表2の膜厚は乾燥後の設計厚みを表記した。
【0205】
【表1】

【0206】
表1で「PnBMA」は平均一次粒径が5μmのポリnブチルメタクリレート樹脂を主成分とした真球状樹脂粒子を意味し、nブチルメタクリレート80質量%と架橋剤モノマーとしてエチレングリコールジメタアクリレート20質量%との共重合体粒子である。
【0207】
【表2】

【0208】
使用した材料を以下に示す。
セルローストリアセテート:アセチル置換度2.86、粘度平均重合度310
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN326/TINUVIN328の20/80質量%の混合物、それぞれチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
R972:一次粒径約16nm、AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製
PnBMA:架橋ポリn−ブチルメタクリレート真球状粒子を意味する。nブチルメタクリレート80質量%と、架橋剤モノマーとしてエチレングリコールジメタアクリレート20質量%とを水性懸濁重合法にて共重合させて合成した。
PnBA:架橋ポリn−ブチルアクリレート真球状粒子を意味する。nブチルアクリレート80質量%と、架橋剤モノマーとしてエチレングリコールジアクリレート20質量%とを水性懸濁重合法にて共重合させて合成した
PnBMA−PMMA:架橋ポリn−ブチルメタクリレート−ポリメチルメタクリレート共重合体真球状粒子を意味する。nブチルメタクリレート50質量%、メチルメタクリレート30質量%と、架橋剤モノマーとしてエチレングリコールジメタアクリレート20質量%とを水性懸濁重合法にて共重合させて合成した。
PMMA:架橋ポリメチルメタクリレート真球状粒子を意味する。
PMMA−PSt−1:架橋ポリメチルメタクリレート−スチレン共重合真球状粒子を意味する。メチルメタクリレートとスチレンの合計を80質量%として固定し、エチレングリコールジメタアクリレート20質量%とし、屈折率が1.51、平均粒径5μmになるように、メチルメタクリレートとスチレンの添加量比と粒径を調整して、水性懸濁重合法にて合成した。
PMMA−PSt−2:架橋ポリメチルメタクリレート−スチレン共重合真球状粒子を意味する。メチルメタクリレートとスチレンの合計を80質量%として固定し、エチレングリコールジメタアクリレート20質量%とし、屈折率が1.53、平均粒径5μmになるように、メチルメタクリレートとスチレンの添加量比と粒径を調整して、水性懸濁重合法にて合成した。
透明支持体T14、T21では透光性粒子として、「SSX−105:架橋ポリメチルメタクリレート真球状粒子、平均粒径5μm、積水化成品工業(株)製」を用いた。
【0209】
粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定した。表2には透光性粒子の屈折率、透光性粒子と熱可塑性樹脂との屈折率差Δも記載した。
【0210】
〔透明支持体の評価〕
(1−1)ヘイズ
[1]JIS−K7136に準じて、得られた透明支持体の全ヘイズ値(H)を測定する:日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH2000を用いた。
[2]透明支持体の表面及び裏面に顕微鏡用イマージョンオイル(ニコン(株)製イマージョンオイルTYPE A、屈折率n=1.515)を数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S9111、MATSUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られた光学フィルムを密着し、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみを挟みこんで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hin)として算出した。
[3]上記[1]で測定した全ヘイズ(H)から上記[2]で算出した内部ヘイズ(Hin)を引いた値をフィルムの表面ヘイズ(Hout)として算出した。
【0211】
(1−2)透明支持体の断面形状観察:粒子の厚み方向位置の観察
ミクロトームにて透明支持体の断面を粒子の中心を通るように切削し、走査型電子顕微鏡にて基材断面を観察し、粒子界面のA面表面まで及びB面表面までの距離(厚み)を測定した。
【0212】
上記透明支持体は全て、表層3側の表面から厚み方向に0〜5μmの領域に粒径0.5μm以上の粒子が実質的に存在せず、該領域が最大で30μmであった。また、表層1側の表面から厚み方向に0〜20μmの領域には粒径0.5μm以上の粒子が存在しなかった。
【0213】
(1−3)表面凹凸形状の観察
透明支持体の表層3の表面について、Ra及びSmをJIS−B0601(1994、2001)に準じ、小坂研究所(株)製、サーフコーダー MODEL SE−3500を用いて測定した。
【0214】
(1−4)波長550nmにおけるRe及びRth
透明支持体の波長550nmにおけるRe及びRthを本文記載の方法で測定した。
【0215】
【表3】

【0216】
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT01)の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、固形分濃度22質量%のセルロースアセテート溶液(ドープD)を調製した。
【0217】
[セルロースアセテート溶液(ドープD)の組成]
アセチル置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
紫外線吸収剤(チヌビン328 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.9質量部
紫外線吸収剤(チヌビン326 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
【0218】
上記ドープDに平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)をセルロースアセテート100質量部に対して0.02質量部添加したマット剤入りドープEを調製した。ドープEはドープDと同じ溶剤組成で固形分濃度が19質量%になるように調節した。
【0219】
ドープDを主流とし、マット剤入りドープEを最下層及び最上層になるようにして、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムをはがし140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフィルムT01を作製した。マット剤入りの最下層及び最上層はそれぞれ厚みが3μmに、主流は厚みが74μmになるように流量を調節した。
【0220】
得られた長尺状のセルロースアセテートフィルムT01の幅は2300mmであり、厚さは80μmであった。また、波長550nmにおける面内レターデーション(Re)は3nm、厚さ方向のレターデーション(Rth)は45nmであった。また、380nmの透過率は3.8%で、450〜650nmの平均透過率は92%だった。
レターデーションの測定は本明細書に記載の方法で行った。
透過率は、分光光度計で測定した。
【0221】
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT02)の作製>
上記で作成したドープDを主流とし、マット剤入りドープEを最下層及び最上層になるようにして、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムをはがし140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフィルムT02を作製した。マット剤入りの最下層及び最上層はそれぞれ厚みが3μmに、主流は厚みが34μmになるように流量を調節した。
【0222】
得られた長尺状のセルロースアセテートフィルムT02の幅は2300mmであり、厚さは40μmであった。また、波長550nmにおける面内レターデーション(Re)は3nm、厚さ方向のレターデーション(Rth)は20nmであった。また、380nmの透過率は19.5%で、450〜650nmの平均透過率は92%だった。
レターデーションの測定は本明細書に記載の方法で行った。
透過率は、分光光度計で測定した。
【0223】
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT03)の作製>
(セルロースアセテート溶液Fの調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Fを調製した。
[セルロースアセテート溶液Fの組成]
アセチル置換度2.94のセルロースアセテート 100質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402質量部
メタノール(第2溶媒) 60質量部
【0224】
(マット剤溶液の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、更に30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
[マット剤溶液組成]
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアセテート溶液F 10.3質量部
【0225】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液を調製した。
[添加剤溶液組成]
下記の光学的異方性低下剤 49.3質量部
下記の波長分散調整剤 4.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアセテート溶液F 12.8質量部
【0226】
【化2】

【0227】
【化3】

【0228】
(セルロースアセテートフィルムT03の作製)
上記セルロースアセテート溶液Fを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、添加剤溶液4.1質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成で光学的異方性を低下する化合物及び波長分散調整剤のセルロースアセテートに対する質量比はそれぞれ12質量%、1.2質量%であった。残留溶剤量30質量%でフィルムをバンドから剥離し、140℃で40分間乾燥させ、幅2300mm、厚さ80μmの長尺状のセルロースアセテートフィルムT03を製造した。得られたフィルムの面内レターデーション(Re)は1nm(遅相軸はフィルム長手方向と垂直な方向)、厚さ方向のレターデーション(Rth)は−1nmであった。また、380nmの透過率は90%で、450〜650nmの平均透過率は92%だった。
【0229】
<光学基材F111の作成>
《液晶性化合物を含む光学異方性層の形成》
(アルカリ鹸化処理)
セルロースアシレートフィルムT11を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/mで塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテートフィルムを作製した。
【0230】
[アルカリ溶液組成]
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤 SF−1:C1429O(CHCHO)20
1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
【0231】
(配向膜の形成)
上記のように鹸化処理した長尺状のセルロースアセテートフィルムに、下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。配向膜の厚みは0.7μmだった。
【0232】
[配向膜塗布液の組成]
下記の変性ポリビニルアルコール 100質量部
水 3710質量部
メタノール 1190質量部
グルタルアルデヒド 5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー2959、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 3質量部
【0233】
【化4】

【0234】
(ディスコティック液晶性化合物を含む光学異方性層の形成)
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は反時計回りに45°の方向とした。
【0235】
下記の組成のディスコティック液晶性化合物を含む塗布液を上記作製した配向膜上に#3.6のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶性化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量100mJ/cmの紫外線を照射して液晶性化合物の配向を固定化し、厚さ1.6μmの光学異方性層を形成し巻き取り、光学基材F111を得た。
作製した光学基材F111は、550nmにおけるReが125nmあった。支持体の長さ方向に対して、遅相軸は時計回りに45°の方向であった。ディスコティック液晶性化合物の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。光学異方性層側表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)は0.01〜0.04μmの範囲にあり、平滑性の高いものであった。
【0236】
[光学異方性層塗布液の組成]
下記のディスコティック液晶性化合物 100質量部
下記アクリレートモノマー 5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 0.5質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.2質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP3) 0.1質量部
メチルエチルケトン 189質量部
【0237】
【化5】

【0238】
アクリレートモノマー:
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)
【0239】
【化6】

【0240】
【化7】

【0241】
【化8】

【0242】
<光学基材F101〜F103、F112〜F128の作成>
表4に示すように光学基材F111に対し、セルロースアセテートフィルムをT01〜T03、T11〜T28に変更した以外は光学基材F111の製造方法と同様にして光学基材F101〜F103、F112〜F128を作製した。作製した光学基材F101〜F103、F112〜F128はいずれも、550nmにおけるReが125nmであり、光学異方性層側表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)は0.01〜0.04μmの範囲にあり、平滑性の高いものであった。
【0243】
<光学基材F129〜F136の作成>
光学基材F111に対し、Reの値が表4に示す値になるように光学異方性層の厚みを変更した以外は光学基材F1の製造方法と同様にして光学基材F129〜F136を作製した。光学異方性層側表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)は全て0.01〜0.04μmの範囲にあり、平滑性の高いものであった。
【0244】
<光学基材F211の作成>
光学基材F111で使用した光学異方性層形成前の基材(配向膜を形成したもの)の配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は反時計回りに45°の方向とした。
配向膜上に特開2004−272202号公報の[0117]に記載の第1光学異方性用塗布液(棒状液晶性化合物を含む)を用い、550nmにおけるReが125nmになるように塗布量を調整し、照度400mW/cm、照射量100mJ/cmの紫外線を照射して液晶性化合物の配向を固定化し、光学異方性層を形成し巻き取り、光学基材F211を得た。
【0245】
作製した光学基材F211は、550nmにおけるReが125nmあった。支持体の長手方向に対して、遅相軸は時計回りに45°の方向であった。棒状液晶性化合物のフィルム面に対する平均傾斜角は0°であり、棒状液晶性化合物がフィルム面に対して水平に配向していることを確認した。光学異方性層側表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)は0.01〜0.04μmの範囲にあり、平滑性の高いものであった。
【0246】
<光学基材F201、F203、F221の作成>
光学基材F211に対し、セルロースアシレートフィルムをT01、T03、T21に変更した以外は光学基材F211の製造方法と同様に光学基材F201、F203、F221を得た。
支持体の長手方向に対して、遅相軸は時計回りに45°の方向であった。棒状液晶性化合物のフィルム面に対する平均傾斜角は0°であり、棒状液晶がフィルム面に対して水平に配向していることを確認した。550nmにおけるReが125nmあった。光学異方性層側表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)は0.01〜0.04μmの範囲にあり、平滑性の高いものであった。
【0247】
<光学基材F230の作成>
光学基材F211に対し、ラビングローラーの回転軸は時計回りに45°の方向に変更した以外は光学基材F211の製造方法と同様に光学基材F230を得た。
【0248】
作製した光学基材F230は、550nmにおけるReが125nmあった。支持体の長手方向に対して、遅相軸は反時計回りに45°の方向であった。棒状液晶性分子のフィルム面に対する平均傾斜角は0°であり、棒状液晶がフィルム面に対して水平に配向していることを確認した。光学異方性側表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)は0.01〜0.04μmの範囲にあり、平滑性の高いものであった。
【0249】
〔ハードコート層の積層〕
下記に示す各層形成用塗布液を調製した。
(ハードコート層用塗布液HC−1の調製)
PET−30(100%) 60.0g
ビスコート360(100%) 36.0g
イルガキュア127(100%) 3.2g
CABポリマー(20%溶液) 7.0g
SP−13(5%溶液) 2.3g
MIBK 60.0g
MEK 26.0g
【0250】
上記ハードコート層用塗布液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して塗布液を調製した。上記塗布液において硬化後のマトリックスの屈折率は1.525であった。
【0251】
使用した材料を以下に示す。
・PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
・ビスコート360:エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート[大阪有機化学(株)製]
・CABポリマー:セルロースアセテートブチレート(20%溶液)[イーストマン・ケミカル(株)製531・1のMIBK溶液]
・イルガキュア127:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
・MEK:メチルエチルケトン
・MIBK:メチルイソブチルケトン
・レベリング剤
(SP-13):下記フッ素ポリマーの5%MEK溶液
【0252】
【化9】

【0253】
(低屈折率層用塗布液Ln−1の調製)
各成分を下記のように混合し、MEK/MMPG−Acの90/10混合物(質量比)
に溶解して固形分5質量%の低屈折率層塗布液を調製した。
【0254】
(Ln−1の組成)
下記のパーフルオロオレフィン共重合体(P−1) 15質量部
DPHA 7質量部
RMS−033 5質量部
下記の含フッ素モノマー(M−1) 20質量部
中空シリカ粒子(固形分として) 50質量部
イルガキュア127 3質量部
【0255】
使用した化合物を以下に示す。
【0256】
【化10】

【0257】
【化11】

【0258】
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
・RMS−033:シリコーン系多官能アクリレート(Gelest製、Mwt=28000)
・イルガキュア127:光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
・中空シリカ:中空シリカ粒子分散液(平均粒子サイズ45nm、屈折率1.25、表面をアクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理、MEK分散液濃度20%)
・MEK:メチルエチルケトン
・MMPG−Ac:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0259】
上記低屈折率層用塗布液は孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して塗布液を調製した。上記低屈折率層用塗布液Ln−1を塗布硬化してなる低屈折率層の硬化後の屈折率は1.36であった。
【0260】
[光学フィルム試料の作製]
(光学フィルム試料101の作製)
上記で作製した光学基材F111をロール形態から巻き出して、透明支持体の光学異方性層が設けられている側とは反対側の表面に、ハードコート層用塗布液HC−1を使用し、特開2006−122889号公報実施例1記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、更に窒素パージ下酸素濃度約0.1体積%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量100mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ巻き取った。ハードコート層の膜厚は10μmになるよう塗布量を調整した。
【0261】
更に上記で作成したハードコートフィルムをロール形態から巻き出してハードコート層が塗設されている側に低屈折率層用塗布液Ln−1を塗布し、光学フィルム試料101を作成した。低屈折率層の乾燥条件は60℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm、照射量300mJ/cmの照射量とした。低屈折率層の屈折率は1.36、膜厚は95nmであった。
【0262】
(光学フィルム試料102〜114、121〜139の作製)
上記で作製した光学フィルム試料101に対し表4に示すように、光学基材を変更した以外は光学フィルム試料101と同様にして光学フィルム試料102〜114、121〜139を作成した。
【0263】
(光学フィルム試料115〜118の作製)
上記で作製した光学フィルム試料101〜104に対しハードコート層用塗布液HC−1を塗布した後の照射量を100mJ/cmから300mJ/cmに変更し、低屈折率層を積層しない点を変更した以外は光学フィルム試料101〜104と同様にして光学フィルム試料115〜118を作成した。
【0264】
(光学フィルム試料119の作製)
上記で作製した光学フィルム試料114に対しハードコート層も低屈折率層も積層しないもの、すなわち、光学基材F101を光学フィルム試料119とした。
【0265】
(光学フィルム試料120の作製)
上記で作製した光学フィルム試料101に対し光学基材F111をセルロースアセテートフィルムT01に変更した以外は光学フィルム試料101と同様にして光学フィルム試料120を作成した。この構成では光学異方性層が積層されていなかった。
【0266】
(光学フィルム試料140の作製)
上記で作製した光学基材F230と光学フィルム試料120を粘着剤で貼合し、光学フィルム試料140を作成した。貼合面は光学基材F230の光学異方性層と光学フィルム試料120のハードコート層を積層していない面である。
【0267】
(光学フィルムの特性の測定)
以下の方法により光学フィルムの諸特性の測定を行った。
(光学フィルムの特性の測定)
(1)光学フィルムの表面形状
光学フィルムの光学異方性層が形成されていないハードコート層側の表面のRa(粗さ曲線の算術平均粗さ)をJIS B 0601:1998に準拠して測定した。
【0268】
(2)ヘイズ(Hz)
以下の測定により、得られた光学フィルムの全ヘイズ(H)、内部ヘイズ(Hi)、表面ヘイズ(Hs)を測定した。
1.JIS−K7136に準じて得られたフィルムのヘイズ値(H)を測定する。この値を全ヘイズとする。
2.得られたフィルムのハードコート層側の表面及び裏面にシリコーンオイルを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S9111、MATSUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみを挟みこんで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hi)として算出した。
3.上記1で測定した全ヘイズ(H)から上記2で算出した内部ヘイズ(Hi)を引いた値をフィルムの表面ヘイズ(Hs)として算出した。
【0269】
(3)平均反射率(積分球反射率)
光学フィルムの裏面、すなわちハードコート層が塗設されていない側の表面をサンドペーパーで粗面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態で、表面側を、分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの積分球反射率の算術平均値を用いた。
【0270】
(4)鉛筆硬度
耐傷性の指標としてJIS K 5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。光学フィルムを温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、ハードコート層側の表面に、JISS 6006に規定する2H〜5Hの試験用鉛筆を用いて、4.9Nの荷重にて、鉛筆で引っ掻き試験を5回繰り返し、温度25℃、湿度60%RHの条件で24時間放置した後に、以下の基準で評価し、OKとなる最も高い硬度を評価値とした。
鉛筆硬度が2Hに満たないものは問題のレベルである。
OK:5回の評価において傷が2つ以下
NG:5回の評価において傷が3つ以上
【0271】
(5)耐光性
(株)スガ試験機社製スーパーキセノンウェザーメーターSX75で、ブラックパネル温度60℃、相対湿度50%の環境下、300〜400nmの紫外線強度が150W/mの条件で100時間光を照射した後のフィルム着色と正面レターデーション(Re)を測定した。照射光には300nm以上の紫外光と可視光が含まれていた。
【0272】
(6)380nmの透過率
透明支持体を25℃60%RHで2時間以上放置した後、透過率を分光光度計“U−3210”{(株)日立製作所}を用いて380nmの透過率を測定した。
【0273】
(7)波長550nmにおけるRe及びRth
波長550nmにおけるRe及びRthを本文記載の方法で測定した。
【0274】
[偏光板及び画像表示装置の作製]
上記作製した光学フィルムは、画像表示装置での評価を行うため、以下の偏光板加工を行い画像表示装置での評価を行った。
上記で作製した光学フィルムの光学異方性層の表面をMEKで洗浄した。洗浄後のフィルム表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理した各フィルムと、同様にアルカリ鹸化処理したVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=50/125)を用意し、これらの光学異方性層が偏光膜側となるようにして偏光膜を間に挟んで貼り合わせ、光学フィルムとVA用位相差フィルムが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板101〜140を作製した。このとき光学フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸のなす角度が45度になるようにした。
【0275】
(実装)
TV:SAMSUNG社製UN46C7000(3D−TV)の視認側の偏光板をはがし、上記作製した偏光板のVA用位相差フィルムとLCセルを粘着剤を介して貼合し、立体表示装置を作製した。
LCシャッターメガネ:SAMSUNG社製 SSG−2100AB(LCシャッターメガネ)の目と反対側(パネル側)の偏光板をはがし、そこに上記作製した光学フィルム試料101の光学異方性層側を粘着剤を介して貼合し、LCシャッターメガネを作製した。ここでメガネに貼合した光学フィルムの遅相軸は、TVに貼合した偏光板に含まれる光学フィルムの遅相軸と直交するようにした。
【0276】
(表示装置の評価)
蛍光灯のある部屋で、パネル面の照度がおよそ200luxとなる環境下で、上記作製したLCシャッターメガネをかけ、3D映像を鑑賞した。
画像の評価は、3D画像の正面から見た時の立体感及び正面と斜めから見た時のクロストークを以下の基準で官能評価した。
【0277】
(1)立体感
正面から観察し、立体感が見られるものを○、立体感が見られないものを×とした。
【0278】
(2)クロストーク
正面と左右斜め40°方向から見た時のクロストーク(二重像)を観察し、以下の4段階評価を行った。
◎:クロストークが全く見えない
○:よく観るとクロストークはあるが気にならない。
△:クロストークが僅かに見える。(ここまでが許容レベル)
×:クロストークがはっきり見える。(問題のレベル)
【0279】
(3)黒しまり感
視認側表面にフィルムを貼った偏光板を配置した液晶表示装置について黒しまり感を官能評価した。
上記で作成した表示装置を並列に並べて同時に相対比較する方法で行い、明室下で真正面から電源off時の黒味をそれぞれのフィルムで比較し、以下の基準で評価した。黒味の強いほど画面のしまり感も強いという基準で表した。
【0280】
◎:黒味が強く、画面が非常に強くしまって見える。
○:黒味が強く、画面が強くしまって見える。
○△:黒味が強いが僅かにグレー味が見られる、画面はしまって見える。
△:黒いがグレー味があって、画面のしまり感が弱い。(ここまでが許容レベル)
×:かなりグレー味が強く、画面のしまり感がない。(問題のレベル)
【0281】
(干渉斑の評価)
干渉斑は以下の方法により4段階評価した。
干渉斑の評価;上記の表示装置の正面50cm手前から三波長蛍光灯(ナショナルパルック蛍光灯FL20SS・EX−D/18)でサンプルを照らし、干渉斑を観察し、下記の基準により評価した。
◎ :干渉むらが全く見えない
〇 :干渉むらがほとんど見えない
○△:干渉むらが弱く見えるところがある。
△ :干渉むらが全体に弱く見える(ここまでが許容レベル)
× :干渉むらが全体に強く見える(問題のレベル)
【0282】
上記の各項目での評価結果を表4及び5に示す。
【0283】
【表4】

【0284】
【表5】

【0285】
表4及び表5に示す結果から以下のことが明らかである。
1.表面及び/又は内部に散乱性を有する透明支持体上の一方の面に光学異方性層を有し、もう一方の面にハードコート層を有する光学フィルムにおいて、光学異方性層が不飽和二重結合を有する液晶化合物を含有する組成物から形成され、光学フィルムの550nmにおける面内レターデーションが80〜200nmであり、波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションが−120〜120nmであるものは立体表示装置に適している。(試料No.129〜No.134等)
2.熱可塑性樹脂に透光性粒子を含有させることで透明支持体に表面及び/又は内部に散乱を付与した透明支持体を用いたものは黒しまりに優れている。
3.更に、透明支持体の内部ヘイズを5%以下に抑え、ハードコート層積層面に凹凸形状を設け、光学異方性層積層面を平坦にした透明支持体を用いたものは、干渉むら抑制効果が高く、黒しまりに優れている。(試料No.101〜No.106等)
4.Nzファクターが0〜1.0のものは更に斜め方向のクロストークが少なく、表示性能に優れている。(試料No.137に対してNo.138の比較等)
5.円盤状液晶化合物で光学異方性層を形成したものは、棒状液晶化合物から光学異方性層を形成したものに対し、斜め方向のクロストークが見えず、視認性に優れている。
(試料No.137、138に対し、試料No.101、111等)
6.波長380nmの透過率が50%以下の紫外線吸収性の透明支持体を用いることで、耐光性試験後の正面レターデーション変化を大幅に抑制することができる。(試料No.111、114、121、122、123の比較)
【符号の説明】
【0286】
1 透明支持体
2 基層
3 表層
4、4a、4b 表層
5 透光性粒子
11 攪拌機
12 移送ポンプ
13 濾過器
14 ストックタンク
15a バック層用流延送液ポンプ
15b 基層用流延送液ポンプ
15c 表層用流延送液ポンプ
15d 最表層用流延送液ポンプ
16a 添加剤注入ポンプ(溶剤、マット剤、他)
16c 添加剤注入ポンプ(溶剤、透光性粒子、他)
16d 添加剤注入ポンプ(溶剤、透光性粒子、他)
17 流延ダイ
18 流延バンド
19 減圧チャンバー
20 流延ドラム
30 流延ダイ
32 マニホールド
33 フィードブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び内部の少なくとも一方に散乱性を有する透明支持体の一方の面上に光学異方性層を有し、もう一方の面上にハードコート層を有する光学フィルムであって、該光学フィルムの波長550nmにおける面内レターデーション(Re(550))が80〜200nmであり、厚さ方向のレターデーション(Rth(550))が−120〜120nmである、画像表示装置用表面フィルムとして用いられる光学フィルム。
【請求項2】
前記透明支持体が、熱可塑性樹脂を主成分とし、該熱可塑性樹脂中に平均粒径が0.5〜20μmの透光性粒子を含有する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記透明支持体は、前記光学異方性層を有する側の面が実質的に平坦である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記透明支持体は、前記光学異方性層を有する側の表面から厚み方向に0〜20μmの領域に、粒径が0.5μm以上の粒子が実質的に存在しない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記透明支持体は、粒径が0.5μm以上の粒子が実質的に存在しない領域を有し、該領域が前記透明支持体のハードコート層を有する側の表面から厚み方向に5〜30μmの厚みを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂と前記透光性粒子の屈折率差の絶対値が0.00〜0.05である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記透光性粒子が、ポリn−ブチルメタクリレート樹脂、又はポリn−ブチルアクリレート樹脂を主成分としてなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記透明支持体と前記光学異方性層の間に配向膜を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記透明支持体の波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションが20〜100nmである請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記光学異方性層が液晶性化合物を含有する組成物から形成されたものである請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記液晶性化合物がディスコティック液晶性化合物である請求項10に記載の光学フィルム。
【請求項12】
前記光学フィルムのハードコート層を有する側の表面のJIS B0601に基づく算術平均粗さRaが0〜0.08μmである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項13】
前記ハードコート層の前記透明支持体とは反対側に、前記透明支持体より屈折率の低い低屈折率層を有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項14】
長さ方向を基準に正面レターデーションの遅相軸が時計回り又は反時計回りに5〜85°である、長尺ロール状の請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項15】
少なくとも1つの保護膜と、偏光膜とを有する偏光板であって、前記少なくとも1つの保護膜が請求項1〜14のいずれか1項に記載の光学フィルムであり、前記光学フィルムの光学異方性層側の表面と前記偏光膜とが貼合された偏光板。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の光学フィルム、又は請求項15に記載の偏光板を少なくとも1つ含む画像表示装置。
【請求項17】
視認側から、請求項1〜14のいずれか1項に記載の光学フィルムと、偏光膜と、液晶セルとをこの順に有する液晶表示装置であって、前記光学フィルムが、ハードコート層が視認側に、光学異方性層が偏光膜側になるように配置された液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−168295(P2012−168295A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27915(P2011−27915)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】