画像表示装置
【課題】 従来の画像表示装置には,精細度が低い長寿命,高輝度,及び良好な色再現性の全てを満たすことが出来ないという問題があった。
【解決手段】 上記目的は,本発明である,蛍光膜に励起エネルギを照射し発光させる励起手段を備える画像表示装置において、前記蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-y-zLnxScyMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはLu、Y、及Gdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx、y、及びzは0<x<1、0<y<1、0≦z<1を満たす蛍光体を含むことを特徴とする画像表示装置により,解決することが出来る。
【解決手段】 上記目的は,本発明である,蛍光膜に励起エネルギを照射し発光させる励起手段を備える画像表示装置において、前記蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-y-zLnxScyMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはLu、Y、及Gdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx、y、及びzは0<x<1、0<y<1、0≦z<1を満たす蛍光体を含むことを特徴とする画像表示装置により,解決することが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像表示に好適な,高精細,長寿命,高輝度かつ色再現性が良い蛍光膜に関する。また,それを用いた電子線励起ディスプレイ等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本特許における画像表示装置とは,電子線照射や光照射により蛍光体を励起し,発光させて画像情報を表示する装置のことである。これは,低速電子線ディスプレイパネル(フィールドエミッタ-ディスプレイ(FED)等),陰極線管(特に投射型陰極線管),プラズマディスプレイパネル(PDP)などをいう。また,前記陰極線管やパネルを表示部として,駆動装置や画像処理回路等を組込み画像を表示させるシステム全体も画像表示装置に含める。さらに、上記に示したような自発光の画像表示装置と共に、液晶などの非発光な表示部に、バックライトやサイドライトとして光源を備えた非自発光の画像表示装置も含む。
【0003】
以下、画像表示装置のうち、主に電界放出型ディスプレイ(FED)を取り上げ説明する。
【0004】
カラー画像を表示する薄型の画像表示装置である,電界放出型ディスプレイ(FED)等では,15kV以下の電圧で加速した電子線により蛍光膜を励起して画像を表示する。このようなディスプレイに用いられる低速電子線励起用蛍光膜では,表面に電子が溜まり,電子同士の反発により蛍光体への電子の侵入が妨げられる現象(チャージアップ)が少なくなるように、電気抵抗が低いことが求められる。現在このような条件を満たす蛍光膜としては,ZnS:Ag等の硫化物系蛍光体を用いた膜が知られている。しかし,これらの硫化物系蛍光体は電子線の照射のダメージにより分解しやすく,S元素を含んだ気体を放出することで,蛍光体の輝度の低下及び電子源カソードの劣化を招く。これらはディスプレイの寿命を短くする。
【0005】
特に,緑色発光蛍光体は,白色画面上で70%の輝度を占めるため,電子線の照射量が多く,劣化特性の改善が重要である。分解しにくく,輝度の劣化の少ない蛍光体は,たとえば,Y2SiO5:Tbの組成を有する蛍光体が知られている。この蛍光体の特徴は,高電流密度による励起で輝度飽和が少ないことであり,実用的な蛍光体として一般に用いられてきた。
【0006】
この蛍光体の特性向上では,特開平2-289679(特許文献1)に開示されているように,原料にGd,Tm,Sm及びEuのうち少なくともいずれか1つを含む化合物を混合し焼成することで,輝度及び輝度劣化の改善を図っている。また,特公昭61-21505(特許文献2)で開示されているように,原料にMnを含む添加物を混合し焼成することで,輝度の向上を図っている。また,特公平06-60354(特許文献3)に開示されているように,組成の一部をDy, Prで置換することにより,輝度の向上を図っている。また,特開2003-115481(特許文献4)に開示されているように,SiO2組成を過剰にすることによって,劣化の低減を図っている。また,特開2002-105450(特許文献5)に開示されているように,粒子形状を改善することで,輝度及び解像度の改善を図っている。また,特開2004-51931(特許文献6)に開示されているように,粒径分布を狭くすることで,輝度向上及び輝度劣化の低減を図っている。また,特開2002-105449(特許文献7)に開示されているように,Gdなどの元素を加えることで,輝度向上を図っている。
【0007】
また,分解しにくく,輝度の劣化の少ない他の蛍光体としては,Y3(Al,Ga)5O12:Tbなども挙げられる。
【0008】
しかし,上記分解しにくく,輝度の劣化の少ない蛍光体で形成された従来技術の蛍光膜では,発光色が黄色味がかり,色再現性が悪く画像表示装置に用いて良好な画質を得ることができない。従来にある蛍光体を用いた蛍光膜では,輝度が高く,分解しにくく輝度劣化が少なく,かつ色再現性のよい蛍光膜は得られなかった。
【0009】
【特許文献1】特開平2-289679
【特許文献2】特公昭61-21505
【特許文献3】特公平06-60354
【特許文献4】特開2003-115481
【特許文献5】特開2002-105450
【特許文献6】特開2004-51931
【特許文献7】特開2002-105449
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の画像表示装置には,長寿命,高輝度,及び良好な色再現性の全てを満たすことが出来ないという問題があった。本発明の目的は,長寿命,高輝度かつ色再現性のよい蛍光膜を用いた,画質の良い画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は,蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-y-zLnxScyMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはLu、Y、及Gdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx、y、及びzは0<x<1、0<y<1、0≦z<1を満たす蛍光体を含む画像表示装置により達成することが出来る。
【0012】
また,別の構成として,蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-zLnxMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはSc及びLuのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx及びzは0<x<1、0<z<1を満たし、かつ、X線回折において、位置が2θ=29°以上30°以下にあらわれる回折ピークの強度が,最も強く現れる回折ピーク強度の1/2以下である蛍光体を含む画像表示装置により,上記目的を達成することが出来る。
【0013】
さらに,別の構成として,蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-zTbxMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはSc、Lu、Y、及びGdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx及びzは0<x<1、0<z<1を満たし、かつ、X線回折において、位置が2θ=29°以上30°以下にあらわれる回折ピークの強度が,最も強く現れる回折ピーク強度の1/2以下である蛍光体を含む画像表示装置により上記目的を達成することが出来る。
【0014】
また,上記蛍光体の組成式における構成元素の比率zを,0<z<0.5の範囲とすれば,より望ましい特性を得られる。
【0015】
さらに,前記蛍光膜を形成する蛍光体の,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値が,0.25を越える値とすれば,より望ましい特性を得られる。
【0016】
さらに,前記蛍光膜を形成する蛍光体の,前記蛍光体の組成式におけるSiのモル比を,全体のモル比に対し0.8〜1.2の範囲とすれば,より望ましい特性を得られる。
【0017】
このような蛍光体は,Si以外の構成元素を同時に含む化合物を,Siを含む化合物と混合し,加熱焼成する事でより望ましい特性を得られる。
【0018】
また,このような蛍光体は,全ての構成元素を同時に含む化合物を加熱焼成する事でより望ましい特性を得られる。
【0019】
さらに,前記蛍光膜を形成する蛍光体の,前記蛍光膜の膜厚の範囲が,0.5μm以上40μm以下とすれば,より望ましい特性を得られる。
【0020】
また,該蛍光膜が,他の蛍光体の一種類もしくは複数の種類と混在することにより,より望ましい特性を得ることも出来る。
【0021】
そして,該蛍光膜に電子線を照射し発光させることを特徴とする画像表示装置により,上記目的を達成することが出来る。
【0022】
具体例としては,該蛍光膜を備えた投射管,もしくは該蛍光膜を備えた投射管を含む投射型テレビジョンにより,上記目的を達成することができる。また,該蛍光膜を備えたフィールドエミッターディスプレイにより,上記目的を達成することができる。
【0023】
また,該蛍光膜に,本発明の蛍光体が発光する波長範囲である,波長500nm以下の光を照射し発光させることを特徴とする画像表示装置により,上記目的を達成することができる。
【0024】
具体例としては,該蛍光膜を備えたプラズマディスプレイにより,上記目的を達成することができる。
【0025】
また,該蛍光膜を少なくとも一部に含む光源を備えたことを特徴とする画像表示装置により,上記目的を達成することが出来る。
【0026】
具体例としては,該蛍光膜を少なくとも一部に含む光源を用いて表示を行う液晶ディスプレイにより,上記目的を達成することが出来る。
【0027】
また,赤色発光,青色発光,緑色発光の3色の蛍光膜によりカラー表示を行う画像表示装置において,3色の蛍光膜のうち緑色発光蛍光膜を本発明とすることにより,上記目的を達成することが出来る。
【0028】
さらに,赤色発光,青色発光,緑色発光の3色の蛍光膜によりカラー表示を行う画像表示装置において,赤色発光蛍光膜の少なくとも一部にY2O3もしくはY2O2Sを成分とする蛍光体のうちいずれか1つもしくは両者を含み,かつ青色発光蛍光膜の少なくとも一部にZnSを成分とする蛍光体を含み,かつ緑色発光の蛍光膜を本発明とした画像表示装置により,より望ましい特性を得ることが出来る。
【0029】
上記本発明の作用について以下に詳述する。
【0030】
従来技術の蛍光体は,Tbxで付活された母材Y2-2xSiO5の原料を,Gd, Sc, Yb, Eu, Sm, Tm,Mn,Dy,Prなどを含む別の原料と混合し焼成することによって,組成Yの一部を置換し,特性の改善を図ってきた。
【0031】
それに対し,本発明は,Tbxで付活された母材La2-2xSiO5を元とし,Sc,Lu,Gd,及びYなどによって,Laの一部を置換する。
【0032】
このことによって,(La1-x-zTbxMz)2SiO5(ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはSc、Lu、Y、及びGdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx及びzは0<x<1、0<z<1を満たす数)で表され,かつ従来技術と異なる結晶を持つ蛍光体を得ることが出来る。この蛍光体は,寿命,輝度,及び色再現性に関して良好な特性を示すことを見いだした。
【0033】
本発明の蛍光体は,従来技術である,特開平2-289679(特許文献1),特公昭61-21505(特許文献2),特公平06-60354(特許文献3),特開2003-115481(特許文献4),特開2002-105450(特許文献5),特開2004-51931(特許文献6),特開2002-105449(特許文献7)で示されている蛍光体とは,異なる結晶となる。このことは,X線回折において、位置が2θ=29°以上30°以下にあらわれる回折ピークの強度が,最も強く現れる回折ピーク強度の1/2以下となる特徴で示される。
【0034】
また,従来技術の特開2003-115481(特許文献4)とは異なり,Siを化学量論に一致する組成とすることで,高い輝度を得ることが出来る。
【0035】
また,La,Tb,及びSc等の置換元素を同時に含む化合物を,Siを含む化合物と混合し,加熱焼成する事,または,La,Tb,Sc等の置換元素,及びSiを同時に含む化合物を加熱焼成する事により合成を行うことで,より望ましい特性を得ることが出来る。
【0036】
本発明の蛍光体の形態は,特に限定されず,単結晶でも多結晶でもよい。また,形状は,焼結体,粉体等いずれの形でも良い。ただし,画像表示装置に用いる場合,高温で反応させた粉体が良く用いられる。この場合,粉体の粒径は1μm〜20μm程度のものが用いられる。
【0037】
さらに,本発明の蛍光膜において,Y3(Al,Ga)5O12:Tb,Zn2SiO4:Mn,LaOCl:Tb,InBO3:Tb,LaPO4:Tb,Ce,Y2O3:Eu,BaMgAl10O17:Euなど,他の蛍光体の一種類もしくは複数の種類と混在させて使用することにより,より輝度を高めること,もしくは色再現性をよくすること,もしくは色を変更すること,もしくは寿命特性を向上することができる。
【0038】
また,従来技術の蛍光膜は,輝度を高くするため,40μmを越える厚みが必要であった。しかし,上記蛍光体を用いることにより,40μm以下でも十分実用に用いることができる高い輝度を得ることが出来る。本発明では,上記蛍光体を40μm以下の膜厚で用いることにより,高精細かつ高輝度の画像表示装置を得ることが出来る。
【0039】
実用に供する場合の使用方法として,本発明の蛍光体を含む蛍光膜を有する画像表示装置を用いることにより,画質のよい画像表示装置を提供することができる。
【0040】
本発明の蛍光体を含む蛍光膜を,フィールドエミッターディスプレイ(FED)等の,低速電子線を用いる画像表示装置に用いることによって,寿命が良く,輝度が高く,かつ色再現性が良い,良好な特性を示す画像表示装置を作成することができる。
【0041】
また,本発明を投射型ディスプレイに用いることにより,良好な特性を示す画像表示装置を得ることが出来る。投射型ディスプレイはRBG三色の三本の投射管によって構成される。このうち,緑色投射管のフェイスプレートに塗布する蛍光体として,本発明の蛍光体を単独で,もしくは本発明の蛍光体を含む緑色蛍光体混合物を用いることによって,良好な特性を示す画像表示装置を作成することができる。
【0042】
また,直視型ディスプレイ用ブラウン管(以下直視管と略)においても,フェイスプレートに塗布する三色の蛍光体のうち,緑色蛍光体として,本発明の蛍光体を単独もしくは混合物で用いることによって,良好な特性を示す画像表示装置を作成することができる。
【0043】
本発明は,高精細であり,かつ高電流励起における輝度が高く,また輝度劣化特性が優れているため,投射管用及びFED用蛍光体としての用途に最適である。
【0044】
また,本発明の蛍光体を含む蛍光膜を,プラズマディスプレイパネル(PDP)等の,紫外線励起による発光を行う画像表示装置に用いることによって,良好な特性を示す画像表示装置を作製することができる。
【0045】
また,本発明を,液晶を用いた画像表示装置の,バックライトもしくはサイドライト光源に用いることによって,良好な特性を示す画像表示装置を作製することができる。
【0046】
また,本発明の効果は,励起源の種類に限定されず,様々な電子線源や紫外線源などの,全ての種類の蛍光体励起を行う励起源において有効である.
【発明の効果】
【0047】
以上説明した通り,本発明により所期の目的を達成することができた。すなわち,本発明により,高精細,高輝度で劣化が少なく,かつ色再現性の良い,高画質の画像表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下,本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0049】
本発明の構成の画像表示装置に用いる蛍光膜を以下の方法で作製し,その特性を評価した。
【0050】
本発明に用いる蛍光体は,Scが組成として含まれた,共沈などの手法による化合物を原料に用いて合成を行った。すなわち,原料として,(La,Sc,Tb)2O3,及びSiO2を用いた。また,他の合成法として,これら全て,すなわちLa,Sc,Tb,Siが含まれた,共沈などの手法による化合物を用いても,結果としては,同等かもしくはさらによい結果が得られている。
【0051】
これらの材料の所定量をよく混合した。この混合物をアルミナるつぼに入れ,1400℃以上の温度で2時間以上焼成した。良好な特性となるよう,焼成時の雰囲気を制御した。焼成物を粉砕し,粒径数μm前後の蛍光体粉末を得た。
【0052】
このような方法で,組成を変化させて,(La1-x-yTbxScy)2SiO5で表される組成を持つ蛍光体をそれぞれ作製した。ここで,x,yは,0<x≦1,0<y≦1の範囲で変化させた。
【0053】
比較対象となる従来品は,Laの珪酸化合物が母体である,Scが含まれない,Tb付活La2SiO5蛍光体を,最適な組成となるように作製した。
【0054】
陰極線による発光特性を測定するために,これらの試料を,金属製の基板上に水沈降塗布し,40μm厚以下の蛍光膜を作製した。この蛍光膜に,真空度10-5Pa以上の真空中において,0.1〜1000μA/cm2の範囲の電流密度で電子線を照射し,輝度を測定した。加速電圧の範囲は5〜30kVとした。
【0055】
輝度は,膜面から20cm離れた位置でフォトトランジスタにより測定した。
【0056】
図1に,Sc濃度yを変化させた場合の,輝度のSc量依存性を示す。図には0.5までのグラフを示した。従来例(Sc濃度y=0)の輝度を100として示した。Sc濃度yが0を越える範囲で,輝度において従来例を上回ることがわかる。特に,Sc濃度が0を越え0.25以下の範囲において,十分な輝度向上を示した。
【0057】
さらに,図1に,実施例の発光について,CIE色度座標の色度値yのSc量依存性を同時に示した。緑色発光蛍光体において,色度値yは値が大きい程良好な色再現性を示す。実用的には,0.57以上であることが望ましい。図1より,本発明の蛍光体では,Sc濃度を増やしても大きな色度値yの変化はなく,全体の組成領域で良好な色再現性を示している。
【0058】
また,付活剤濃度xが0<x≦1の範囲における他の組成においても,Sc濃度yを変化させた場合,同様の結果となった。
【0059】
(La1-x-yTbxScy)2SiO5で表される組成において,さらにLaをLu,Y,Gd,のうち少なくとも一つの元素で置換した場合,上記と同様,もしくはさらに良好な特性を得ることが出来た。
【0060】
また,本発明の蛍光体における,全体組成1molに対する,含まれるSiのmol量を変化させ発光特性の変化を測定した。Si量が化学量論比に一致する1molの場合に,輝度が最も高い結果となった。これより,Siのmol量が1であることが望ましいことが示された。
【0061】
また,本発明の蛍光体について,粒径分布と,塗布方法に関して検討を行った。蛍光体の粒径分布は,コールターメーターを用いて測定を行い,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値を粒径分布の拡がりの指標として用いた。蛍光体をペーストに分散し,印刷法で塗布を行った場合,蛍光膜を形成する蛍光体の,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値が,0.25を越える場合に,良好な輝度特性を示した。
【0062】
また,本発明の蛍光体について,光励起による検討を行った。500nm以下の光励起により発光し,特に380nm以下の紫外光の励起により強い発光を示した。光励起においても,従来品より良好な特性を示した。特に,上記したように付活剤としてTbを用いるのみではなく,加えてCeを用いることにより,さらに良好な特性を示した。
【0063】
上記のように,本発明により,輝度が高く,かつ色再現性の良い蛍光膜を作製することが出来,これを用いて画像表示装置を作製することにより,良好な特性の画像表示装置を得ることが出来る。
【実施例2】
【0064】
本発明の構成の画像表示装置に用いる蛍光膜を以下の方法で作製し,その特性を評価した。
【0065】
本発明に用いる蛍光体は,Luが組成として含まれた,共沈などの手法による化合物を原料に用いて合成を行った。すなわち,原料として,(La,Lu,Tb)2O3,及びSiO2を用いた。また,他の合成法として,これら全て,すなわちLa,Lu,Tb,Siが含まれた,共沈などの手法による化合物を用いても,結果としては,同等かもしくはさらによい結果が得られている。
【0066】
これらの材料の所定量をよく混合した。この混合物をアルミナるつぼに入れ,1400℃以上の温度で2時間以上焼成した。良好な特性となるよう,焼成時の雰囲気を制御した。焼成物を粉砕し,粒径数μm前後の蛍光体粉末を得た。
【0067】
このような方法で,組成を変化させて,(La1-x-yTbxLuz)2SiO5で表される組成を持つ蛍光体をそれぞれ作製した。ここで,x,zは,0<x≦1,0<z≦1の範囲で変化させた。
【0068】
比較対象となる従来品は,Laの珪酸化合物が母体である,Luが含まれない,Tb付活La2SiO5蛍光体を,最適な組成となるように作製した。
【0069】
陰極線による発光特性を測定するために,これらの試料を,金属製の基板上に水沈降塗布し,40μm厚以下の蛍光膜を作製した。この蛍光膜に,真空度10-5Pa以上の真空中において,0.1〜1000μA/cm2の範囲の電流密度で電子線を照射し,輝度を測定した。加速電圧の範囲は5〜30kVとした。
【0070】
輝度は,膜面から20cm離れた位置でフォトトランジスタにより測定した。
【0071】
図2に,Lu濃度zを変化させた場合の,輝度のLu量依存性を示す。従来例(Lu濃度z=0)の輝度を100として示した。Lu濃度zが0を越える範囲で,輝度において従来例を上回ることがわかる。特に,Lu濃度が0を越え0.5以下の範囲において,十分な輝度向上を示した。
【0072】
さらに,図2に,実施例の発光について,CIE色度座標の色度値yのLu量依存性を同時に示した。緑色発光蛍光体において,色度値yは値が大きい程良好な色再現性を示す。実用的には,0.57以上であることが望ましい。図2より,本発明の蛍光体では,Lu濃度を増やしても大きな色度値yの変化はなく,全体の組成領域で良好な色再現性を示している。
【0073】
また,付活剤濃度xが0<x≦1の範囲における他の組成においても,Lu濃度zを変化させた場合,同様の結果となった。
【0074】
(La1-x-yTbxLuz)2SiO5で表される組成において,さらにLaをSc,Y,Gd,のうち少なくとも一つの元素で置換した場合,上記と同様,もしくはさらに良好な特性を得ることが出来た。
【0075】
また,本発明の蛍光体における,全体組成1molに対する,含まれるSiのmol量を変化させ発光特性の変化を測定した。Si量が化学量論比に一致する1molの場合に,輝度が最も高い結果となった。これより,Siのmol量が1であることが望ましいことが示された。
【0076】
また,本発明の蛍光体について,粒径分布と,塗布方法に関して検討を行った。蛍光体の粒径分布は,コールターメーターを用いて測定を行い,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値を粒径分布の拡がりの指標として用いた。蛍光体をペーストに分散し,印刷法で塗布を行った場合,蛍光膜を形成する蛍光体の,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値が,0.25を越える場合に,良好な輝度特性を示した。
【0077】
また,本発明の蛍光体について,光励起による検討を行った。500nm以下の光励起により発光し,特に380nm以下の紫外光の励起により強い発光を示した。光励起においても,従来品より良好な特性を示した。特に,上記したように付活剤としてTbを用いるのみではなく,加えてCeを用いることにより,さらに良好な特性を示した。
【0078】
上記のように,本発明により,輝度が高く,かつ色再現性の良い蛍光膜を作製することが出来,これを用いて画像表示装置を作製することにより,良好な特性の画像表示装置を得ることが出来る。
【実施例3】
【0079】
本発明の構成の画像表示装置に用いる蛍光膜を以下の方法で作製し,その特性を評価した。
【0080】
本発明に用いる蛍光体は,Luが組成として含まれた,共沈などの手法による化合物を原料に用いて合成を行った。すなわち,原料として,(La,Y,Tb)2O3,及びSiO2を用いた。また,他の合成法として,これら全て,すなわちLa,Y,Tb,Siが含まれた,共沈などの手法による化合物を用いても,結果としては,同等かもしくはさらによい結果が得られている。
【0081】
これらの材料の所定量をよく混合した。この混合物をアルミナるつぼに入れ,1400℃以上の温度で2時間以上焼成した。良好な特性となるよう,焼成時の雰囲気を制御した。焼成物を粉砕し,粒径数μm前後の蛍光体粉末を得た。
【0082】
このような方法で,組成を変化させて,(La1-x-yTbxYz)2SiO5で表される組成を持つ蛍光体をそれぞれ作製した。ここで,x,zは,0<x≦1,0<z≦1の範囲で変化させた。
【0083】
比較対象となる従来品は,Laの珪酸化合物が母体である,Yが含まれない,Tb付活La2SiO5蛍光体を,最適な組成となるように作製した。
【0084】
陰極線による発光特性を測定するために,これらの試料を,金属製の基板上に水沈降塗布し,40μm厚以下の蛍光膜を作製した。この蛍光膜に,真空度10-5Pa以上の真空中において,0.1〜1000μA/cm2の範囲の電流密度で電子線を照射し,輝度を測定した。加速電圧の範囲は5〜30kVとした。
【0085】
輝度は,膜面から20cm離れた位置でフォトトランジスタにより測定した。
【0086】
図3に,Y濃度zを変化させた場合の,輝度のY量依存性を示す。従来例(Y濃度z=0)の輝度を100として示した。Y濃度zが0を越える範囲で,輝度において従来例を上回ることがわかる。Y濃度が高くなる程,輝度向上を示した。
【0087】
さらに,図3に,実施例の発光について,CIE色度座標の色度値yのLu量依存性を同時に示した。緑色発光蛍光体において,色度値yは値が大きい程良好な色再現性を示す。実用的には,0.57以上であることが望ましい。図3より,本発明の蛍光体では,Y濃度を増やすと大きく色度値yが低下する。良好な色度値の範囲は,Y濃度が0.5以下の範囲である。
【0088】
また,付活剤濃度xが0<x≦1の範囲における他の組成においても,Y濃度zを変化させた場合,同様の結果となった。
【0089】
(La1-x-yTbxYz)2SiO5で表される組成において,さらにLaをSc,Lu,Gd,のうち少なくとも一つの元素で置換した場合,上記と同様,もしくはさらに良好な特性を得ることが出来た。
【0090】
また,本発明の蛍光体における,全体組成1molに対する,含まれるSiのmol量を変化させ発光特性の変化を測定した。Si量が化学量論比に一致する1molの場合に,輝度が最も高い結果となった。これより,Siのmol量が1であることが望ましいことが示された。
【0091】
また,本発明の蛍光体について,粒径分布と,塗布方法に関して検討を行った。蛍光体の粒径分布は,コールターメーターを用いて測定を行い,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値を粒径分布の拡がりの指標として用いた。蛍光体をペーストに分散し,印刷法で塗布を行った場合,蛍光膜を形成する蛍光体の,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値が,0.25を越える場合に,良好な輝度特性を示した。
【0092】
また,本発明の蛍光体について,光励起による検討を行った。500nm以下の光励起により発光し,特に380nm以下の紫外光の励起により強い発光を示した。光励起においても,従来品より良好な特性を示した。特に,上記したように付活剤としてTbを用いるのみではなく,加えてCeを用いることにより,さらに良好な特性を示した。
【0093】
上記のように,本発明により,輝度が高く,かつ色再現性の良い蛍光膜を作製することが出来,これを用いて画像表示装置を作製することにより,良好な特性の画像表示装置を得ることが出来る。
【実施例4】
【0094】
本発明の構成の画像表示装置に用いる蛍光体について,従来例との結晶の違いを評価した。
【0095】
本発明の蛍光体を,実施例1と同様に作製し,(La1-x-yTbxScy)2SiO5で表される組成を持つ蛍光体をそれぞれ作製した。ここで,x,yは,0<x≦1,0<y≦1の範囲で変化させた。
【0096】
比較対象となる従来品は,Yの珪酸化合物が母体である,Scが含まれない,Tb付活Y2SiO5蛍光体を,最適な組成となるように作製した。
【0097】
X線評価は,CuのKα特性線による回折線を,粉末X線回折装置を用い,θ-2θスキャンによる測定値を用いた。
【0098】
図4に,本発明の蛍光体のX線回折における最も強度が強いピーク付近のX線回折強度のグラフを示す。本発明は,従来例とは異なる結晶による異なる回折パターンを示し,新たな結晶を形成していることがわかる。例えば,本発明で最も強度が強い主ピークは2θ=27〜28°の範囲に存在する場合が多いが,従来例では30〜31°の範囲に存在する。
【0099】
本発明の蛍光体の結晶の,従来例と異なる特徴として,2θ=29〜30°の範囲にあるピークの強度が挙げられる。本発明では,最も強度が強いピークに対して,この範囲にあるピークの強度は,1/2以下である。それに対し,従来例では最も強度が強いピークに対して,この範囲にあるピークの強度は,8割程度である。この範囲にあるピークの強度により,本発明の従来例と異なる結晶を特徴づけることができる。
【0100】
図5に,本発明の実施例と,従来例との,紫外線励起による発光スペクトルの比較を示す。540nm付近での,緑色発光ピークを比較すると,本発明の実施例の方が,従来例よりも,短波長側にある。これは,緑色発光としては純色に近くなる方向である。また,480nm付近での,青色発光ピークを比較すると,本発明の実施例の方が,従来例よりも,ピーク強度が小さい。これは,緑色発光以外の発光が少なくなる方向である。
【0101】
これらの差異により,緑色発光の色再現性は,本発明の方が,従来例より良好である。これらの発光スペクトルの相違は,主に,本発明の蛍光体の結晶が,前記したように,従来例と異なることに起因している。
【0102】
上記のように,本発明により,色再現性の良い蛍光膜を作製することが出来,これを用いて画像表示装置を作製することにより,良好な特性の画像表示装置を得ることが出来る。
【実施例5】
【0103】
本発明の構成の画像表示装置を,蛍光膜の膜厚を変化させて作製し,特性を評価した。
【0104】
実施例1で示したScを含む蛍光体による,本発明の画像表示装置に使用される蛍光膜を,膜厚を5〜50μmの範囲で変化させ作製した。この蛍光体に電子線を照射し,実施例1の測定法に準じ,輝度を測定した。また,精細度の指標となるスポット径を測定した。
【0105】
スポット径とは,電子線が一点に照射された場合に,光って見える点の直径のことである。通常は,電子線を走査しながら測定する。走査して移動する発光点を,スリットにより移動方向に分解し発光強度の時間変化を測定した。その結果から,発光点内における位置による発光強度の変化を算出した。今回は,最大の発光強度(発光点の中心)に対して,発光強度が10%になる位置までを発光点と見て,10%となる位置間の距離をスポット径と定義した。
【0106】
スポット径は画面上での画素の大きさと関係しており,ある程度の大きさ以下としないと画像の精細度が失われる。望ましいスポット径は200μm以下,さらに望ましくは170〜180μm程度以下である。また,ハイビジョン等の高精細画像に十分対応するためには,150〜160μm程度以下が望ましい。
【0107】
蛍光体の膜厚は,蛍光膜の断面の厚さを走査電子顕微鏡を用いて測定した。また,非接触式の段差計を用い,基板やフェースパネルからの蛍光膜の厚さ測定も併せて実施した。これらの結果より,妥当な値を蛍光膜の膜厚とした。
【0108】
図6に,本発明における,蛍光膜の膜厚に対する,スポット径及び輝度の変化を示す。膜厚を薄くすると共に,スポット径が小さくなることがわかる。図より,前記したスポット径を得るための膜厚は,40μm以下,望ましくは30μm以下,さらに望ましくは21μm未満であることがわかる。
【0109】
また,図6より,膜厚を薄くすると共に,輝度が低下することがわかる。従来品輝度を100前後としているが,実用的に使用するためには,輝度80以上が望ましい。また,輝度90以上がさらに望ましい。図より,輝度90以上を得るための膜厚は10μm以上であることがわかる。
【0110】
上記のように,本発明により,精細度の高い蛍光膜を作製することが出来,これを用いて画像表示装置を作製することにより,高精細かつ高輝度の画像表示装置を得ることが出来る。
【実施例6】
【0111】
画像表示を行う緑色蛍光膜として,本発明の蛍光体による蛍光膜を有する,対角18cmサイズの緑色画像用投射型陰極線管を作製した。
【0112】
図7に,投射型陰極線管の断面の概念図を示す。同図において,投射型陰極線管は,ネック端に電子銃4を備え,フェイスプレート1の内面に,蛍光膜2及びメタルバック3を備えている。投射型陰極線管の蛍光膜は単色膜で構成されている。本発明の手段を用い,7インチバルブ中で水沈降により蛍光膜2を形成し,フィルミング,アルミバック蒸着を行い,電子銃等の部品を取り付け,排気,封止を行って陰極線管を完成させた。
【0113】
これらの本発明の陰極線管を用い,30kVの電圧を加え,TVスキャンにより102x76mmの大きさで照射される,0.1〜10mAの陰極線で励起した。以下に示す方法で,発光特性を測定した。
【0114】
輝度は,数十cm離れた位置から輝度計を用いて計測した。また,実施例2に準じた方法により,スポット径を測定した。
【0115】
これらの評価の結果,今回作製した陰極線管は,精細度において,従来品を上回った。かつ,輝度特性においても,従来品と同等以上であった。すなわち,本発明により,高精細かつ高輝度である,画質の良い画像表示装置を得た。
【実施例7】
【0116】
画像表示を行う緑色蛍光膜として,本発明の蛍光体による蛍光膜を有する,投射型テレビ画像表示装置を作製した。
【0117】
実施例6に示すように,本発明による対角18cmサイズの緑色画像用投射型陰極線管を作製した。さらに,他の青色画像用投射型陰極線管,及び赤色画像用投射型陰極線とを組み合わせて,投射型テレビ画像表示装置を作製した。
【0118】
図8に,本発明による投射型テレビ画像表示装置の模式図を示す。同図において,5は赤色画像用陰極線管,6は本発明の緑色画像用陰極線管,7は青色画像用陰極線管であり,これらに対向して一定距離はなした位置に映写スクリーン8が配置されている。また,前記各々の投射型陰極線管には,これらの中心軸と同一線上に投射レンズ系9が配置され,前記各々の投射型陰極線管のフェイスプレートに再生された単色の画像が集光拡大されて前記映写スクリーン8に投射され,3色が重ね合い合成されたカラー画像が得られる。
【0119】
実際には,投射型テレビ画像表示装置は,上記に示す各画像用陰極線管,映写スクリーン,及び投射レンズ系の外に,テレビ用チューナー,陰極線管駆動回路,画像信号処理回路等の画像表示用装置,また,音響用スピーカー,アンプなどの音響装置,また,スイッチやボリュームなどの操作用装置,また,全体を収める外装や,支えるフレームや台等によって構成されている。
【0120】
ここで,本実施例において,以下に示す各方法で,発光特性を測定した。輝度は,数十cm離れた位置から輝度計を用いて計測し,従来用いられている現行標準品の輝度を100として相対輝度で表した。測定は,30kVの電圧を加え,102x76mmの大きさで照射される,0.1〜10mAの陰極線で励起し測定した。
【0121】
蛍光体の発光色は,数十cm離れた位置から色度計を用いて測定した。発光色の比較は,x-yの色度座標の色度値yの比較により行った。
【0122】
輝度劣化特性の測定は,102x76mmの大きさで照射される,0.5mA前後の陰極線を1000時間照射連続照射し,その前後での輝度比により比較した。
【0123】
また,ハイビジョンなどの高精細画像を表示し,精細度を詳細に評価した。
【0124】
これらの評価の結果,今回作製した投射型テレビ画像表示装置は,精細度において,従来品を上回った。かつ,輝度及び輝度劣化特性においても,従来品と同等以上であった。すなわち,本発明により,長寿命,高精細かつ高輝度である,画質の良い画像表示装置を得た。
【実施例8】
【0125】
画像表示を行う緑色蛍光膜として,本発明の蛍光体による蛍光膜を有する,投射型テレビ画像表示装置を作製した。
【0126】
実施例6に示すように,本発明による対角18cmサイズの緑色画像用投射型陰極線管を作製した。さらに,他の青色画像用投射型陰極線管として,ZnS:Ag,Al蛍光体を含んだ蛍光膜による陰極線管を用いた。また,赤色画像用投射型陰極線として,Y2O3:Eu蛍光体を含む蛍光膜による陰極線管を用いた。これらを組み合わせて,投射型テレビ画像表示装置を作製した。
【0127】
実施例7と同様の構成により,同様の評価を実施した。
【0128】
これらの評価の結果,今回作製した投射型テレビ画像表示装置は,精細度において,従来品を上回った。かつ,輝度及び輝度劣化特性においても,従来品と同等以上であった。三色を合わせた評価における色調や画質において,特に良好な結果を得た。すなわち,本発明により,長寿命,高精細かつ高輝度である,画質の良い画像表示装置を得た。
【0129】
また,青色画像用投射型陰極線管として,ZnSを成分とする蛍光体を含んだ上記以外の蛍光膜による陰極線管を用いた場合も同様の結果を得た。また,赤色画像用投射型陰極線として,少なくとも一部にY2O3もしくはY2O2Sを成分とする蛍光体のうちいずれか1つもしくは両者を含む上記以外の蛍光膜による陰極線管を用いた場合も同様の結果を得た。これらを組み合わせることにより,画質の良い画像表示装置を得た。
【実施例9】
【0130】
画像表示を行う緑色蛍光膜として,Zn2SiO4:Mn蛍光体を混在させた本発明の蛍光膜を用いて,対角18cmサイズ緑色画像用投射型陰極線管を作製した。さらに,本発明の技術を用いた該緑色画像用投射型陰極線管と,他の青色画像用投射型陰極線管,及び赤色画像用投射型陰極線とを組み合わせて,投射型テレビ画像表示装置を作製した。装置の構成及び特性の測定方法は実施例7と同様である。
【0131】
上記混合膜において,全体に対するZn2SiO4:Mn蛍光体の重量比を,0〜1まで変化させ,CIE色度座標の色度値y及び相対輝度を測定した。緑蛍光体においては,色度値yが大きいほどいろ再現性が良く,良好な画像が得られる。Zn2SiO4:Mn蛍光体の重量比が増えるにしたがって,色度値yが増加し,良好な色再現性を示すことがわかる。一方,Zn2SiO4:Mn蛍光体の重量比が増えるにしたがって,輝度が低下する。色再現性の上では,Zn2SiO4:Mn蛍光体の重量比は多い方が良いが,実用に供する輝度を得るためには,重量比0.4以下の方が良い。この範囲での混合蛍光体を用いることで,良好な特性を持つ画像表示装置を提供することが出来る。
【0132】
また,Zn2SiO4:Mn蛍光体に替えて,LaOCl:Tb蛍光体やInBO3:Tb蛍光体など,本発明と発光の色度が異なるその他の蛍光体を本発明に混在させ陰極線管を作製した。その結果,上記と同様の結果が得られた。
【実施例10】
【0133】
画像表示を行う緑色蛍光膜として,Y3(Al,Ga)5O12:Tb 蛍光体を混在させた本発明の蛍光膜を用いて,対角18cmサイズ緑色画像用投射型陰極線管を作製した。さらに,本発明の技術を用いた該緑色画像用投射型陰極線管と,他の青色画像用投射型陰極線管,及び赤色画像用投射型陰極線とを組み合わせて,投射型テレビ画像表示装置を作製した。装置の構成及び特性の測定方法は実施例7と同様である。
上記混合膜において,全体に対するY3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体の重量比を,0〜1まで変化させ,色度値y,相対輝度及び輝度劣化特性を測定した。それにより,Y3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体の重量比を増やすと,相対輝度及び輝度劣化特性が向上するが,色度値yが低下するという結果を得た。実用に供することのできる色度値は,Y3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体の重量比0.6以下で得る事ができる。この範囲での混合蛍光体を用いることで,輝度が高く輝度劣化の少ない,良好な特性を持つ画像表示装置を提供することが出来る。
【0134】
また,Y3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体に替えて,本発明と輝度や劣化特性が異なるその他の蛍光体を本発明に混在させ陰極線管を作製した。その結果,上記と同様の結果が得られた。
【実施例11】
【0135】
本発明の構成の含む蛍光膜を,プラズマディスプレイパネル(PDP)に適用した。図9にプラズマディスプレイパネルのセル構造を示す。また,図10に,プラズマディスプレイパネルの構成を示す。このような構造の本発明によるプラズマディスプレイを作製した。
【0136】
特性を評価した結果,今回作製した本発明によるプラズマディスプレイは,寿命,及び輝度において,従来品を上回った。かつ,色再現性おいても,従来品と同等以上であった。すなわち,本発明により,特性の良い画像表示装置を得た。
【実施例12】
【0137】
本発明の構成の蛍光膜を,低速電子線による励起を行うフィールドエミッターディスプレイ(FED)に適用した。図11にフィールドエミッターディスプレイのセル構造を示す。このような構造の本発明によるフィールドエミッターディスプレイを作製した。
【0138】
特性を評価した結果,今回作製した本発明によるフィールドエミッターディスプレイは,寿命,及び輝度において,従来品を上回った。かつ,色再現性においても,従来品と同等以上であった。すなわち,本発明により,特性の良い画像表示装置を得た。
【0139】
また,ここでは,スピント型と呼ばれる電子線源による例を示したが,メタル−インシュレータ−メタル(MIM)型の電子線源や,カーボンナノチューブ(CNT)を用いた電子線源など,全ての種類の電子線源に於いても,本発明は有効である.
【実施例13】
【0140】
本発明の構成の蛍光膜を,液晶ディスプレイのバックライトに適用した。バックライトに用いた冷陰極線管(CCFL)の構造の模式図を図12に示す。また,本発明のその他の構成のバックライトとして用いた希ガス(キセノン)ランプの構造の模式図を図13に示す。また,本発明のその他の構成のバックライトとして用いた平面(キセノン)ランプの構造の模式図を図14に示す。
【0141】
これらのバックライトの蛍光膜として,本発明による蛍光膜を用いた。蛍光膜には,Y2O3:Eu蛍光体,及びBaMgAl10O17:Eu蛍光体を混在させることにより,白色の発光を得た。また,LaPO4:Tb,Ce蛍光体,及び一般的にSCA:Euと呼称される蛍光体のいずれか,もしくは両者を,上記蛍光体のいずれか,もしくは両者と共に,もしくは別途に混在させたものも作製した。
【0142】
これらのバックライトを用いて,液晶ディスプレイを作製した。図15に,冷陰極管を用いた場合の,液晶ディスプレイの構造を分解斜視図として模式的に示した図を示す。
【0143】
特性を評価した結果,今回作製した本発明による液晶ディスプレイは,輝度において,従来品を上回った。かつ,色再現性においても,従来品と同等以上であった。すなわち,本発明により,高輝度かつ画質の良い画像表示装置を得た。
【0144】
また,本発明の構成によれば,光源の種類はここに示したものに限らず他のものでも十分な効果を上げることが出来る。例えば,熱陰極管(HCFL)(Hot Cathode Fluorescent Lamp)などにおいて特に効果を上げることが出来る。また,バックライトに限らず,サイドライトや,フロントプロジェクションの光源として用いても十分な効果を上げることが出来る。
【0145】
本発明により,従来品より輝度が高く,画質の良い液晶ディスプレイを作製することができた。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の実施例となる画像表示装置に含まれる蛍光体のSc濃度yと,蛍光体の輝度との関係について示した本発明の特性曲線である。
【図2】本発明の実施例となる画像表示装置に含まれる蛍光体のSc濃度yによる,蛍光体のX線回折ピークの変化について示した図である。
【図3】従来技術となる画像表示装置に含まれる蛍光体のSc濃度yによる,蛍光体のX線回折ピークの変化について示した図である。
【図4】本発明の実施例となる蛍光体と,従来例とのX線回折ピークの比較を示した図である。
【図5】本発明の実施例となる蛍光体と,従来例との発光スペクトルの比較を示した図である。
【図6】本発明の実施例となる画像表示装置に含まれる蛍光膜の膜厚と,スポット径及び輝度との関係について示した本発明の特性曲線である。
【図7】本発明の実施例となる陰極線管の断面構造を模式的に示した構成図である。
【図8】本発明の実施例となる投射型テレビ画像装置の構造を模式的に示した構成図である。
【図9】本発明の実施例となる,プラズマディスプレイパネルのセル構造を模式的に示した図である。
【図10】本発明の実施例となる,プラズマディスプレイパネルの構造を模式的に示した図である。
【図11】本発明の実施例となる,フィールドエミッタディスプレイパネルのセル構造を模式的に示した図である。
【図12】本発明の実施例となる,液晶ディスプレイに用いられる冷陰極管(CCFL)の構造を模式的に示した図である。
【図13】本発明の実施例となる,液晶ディスプレイに用いられる希ガスランプの構造を模式的に示した図である。
【図14】本発明の実施例となる,液晶ディスプレイに用いられる平面バックライトの構造を模式的に示した図である。
【図15】本発明の実施例となる,液晶ディスプレイの構造を分解斜視図として模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0147】
1 フェイスプレート、2 蛍光膜、3 メタルバック、4 電子銃、5 赤色画像用陰極線管、6 緑色画像用陰極線管、7 青色画像用陰極線管、8 映写スクリーン、9 投射レンズ系、10 蛍光体、11 隔壁、12 アドレス電極、13 背面基板ガラス、14 前面基板ガラス、15 誘電体層、16 保護膜MgO、17 表示電極、18 緑蛍光体層、19 赤蛍光体層、20 青蛍光体層、21 フェイスプレート、22 蛍光膜、23 リアプレート、24 陰極、25 抵抗膜、26 絶縁膜、27 ゲート、28 円錐型金属、29 FED型電子源、
30 ガラス管、31 蛍光体、32 電極、33 放電媒体、34 密閉容器(背面ガラス34A、前面ガラス34B)、35 誘電体、36 バックライトユニット、37 液晶素子、38 筐体(下)、39 反射板
40 白色光源(例えばCCFL)、41 拡散板、42 プリズムシート、43 偏光反射板、44 インバータ、45 筐体(上)。
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像表示に好適な,高精細,長寿命,高輝度かつ色再現性が良い蛍光膜に関する。また,それを用いた電子線励起ディスプレイ等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本特許における画像表示装置とは,電子線照射や光照射により蛍光体を励起し,発光させて画像情報を表示する装置のことである。これは,低速電子線ディスプレイパネル(フィールドエミッタ-ディスプレイ(FED)等),陰極線管(特に投射型陰極線管),プラズマディスプレイパネル(PDP)などをいう。また,前記陰極線管やパネルを表示部として,駆動装置や画像処理回路等を組込み画像を表示させるシステム全体も画像表示装置に含める。さらに、上記に示したような自発光の画像表示装置と共に、液晶などの非発光な表示部に、バックライトやサイドライトとして光源を備えた非自発光の画像表示装置も含む。
【0003】
以下、画像表示装置のうち、主に電界放出型ディスプレイ(FED)を取り上げ説明する。
【0004】
カラー画像を表示する薄型の画像表示装置である,電界放出型ディスプレイ(FED)等では,15kV以下の電圧で加速した電子線により蛍光膜を励起して画像を表示する。このようなディスプレイに用いられる低速電子線励起用蛍光膜では,表面に電子が溜まり,電子同士の反発により蛍光体への電子の侵入が妨げられる現象(チャージアップ)が少なくなるように、電気抵抗が低いことが求められる。現在このような条件を満たす蛍光膜としては,ZnS:Ag等の硫化物系蛍光体を用いた膜が知られている。しかし,これらの硫化物系蛍光体は電子線の照射のダメージにより分解しやすく,S元素を含んだ気体を放出することで,蛍光体の輝度の低下及び電子源カソードの劣化を招く。これらはディスプレイの寿命を短くする。
【0005】
特に,緑色発光蛍光体は,白色画面上で70%の輝度を占めるため,電子線の照射量が多く,劣化特性の改善が重要である。分解しにくく,輝度の劣化の少ない蛍光体は,たとえば,Y2SiO5:Tbの組成を有する蛍光体が知られている。この蛍光体の特徴は,高電流密度による励起で輝度飽和が少ないことであり,実用的な蛍光体として一般に用いられてきた。
【0006】
この蛍光体の特性向上では,特開平2-289679(特許文献1)に開示されているように,原料にGd,Tm,Sm及びEuのうち少なくともいずれか1つを含む化合物を混合し焼成することで,輝度及び輝度劣化の改善を図っている。また,特公昭61-21505(特許文献2)で開示されているように,原料にMnを含む添加物を混合し焼成することで,輝度の向上を図っている。また,特公平06-60354(特許文献3)に開示されているように,組成の一部をDy, Prで置換することにより,輝度の向上を図っている。また,特開2003-115481(特許文献4)に開示されているように,SiO2組成を過剰にすることによって,劣化の低減を図っている。また,特開2002-105450(特許文献5)に開示されているように,粒子形状を改善することで,輝度及び解像度の改善を図っている。また,特開2004-51931(特許文献6)に開示されているように,粒径分布を狭くすることで,輝度向上及び輝度劣化の低減を図っている。また,特開2002-105449(特許文献7)に開示されているように,Gdなどの元素を加えることで,輝度向上を図っている。
【0007】
また,分解しにくく,輝度の劣化の少ない他の蛍光体としては,Y3(Al,Ga)5O12:Tbなども挙げられる。
【0008】
しかし,上記分解しにくく,輝度の劣化の少ない蛍光体で形成された従来技術の蛍光膜では,発光色が黄色味がかり,色再現性が悪く画像表示装置に用いて良好な画質を得ることができない。従来にある蛍光体を用いた蛍光膜では,輝度が高く,分解しにくく輝度劣化が少なく,かつ色再現性のよい蛍光膜は得られなかった。
【0009】
【特許文献1】特開平2-289679
【特許文献2】特公昭61-21505
【特許文献3】特公平06-60354
【特許文献4】特開2003-115481
【特許文献5】特開2002-105450
【特許文献6】特開2004-51931
【特許文献7】特開2002-105449
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の画像表示装置には,長寿命,高輝度,及び良好な色再現性の全てを満たすことが出来ないという問題があった。本発明の目的は,長寿命,高輝度かつ色再現性のよい蛍光膜を用いた,画質の良い画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は,蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-y-zLnxScyMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはLu、Y、及Gdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx、y、及びzは0<x<1、0<y<1、0≦z<1を満たす蛍光体を含む画像表示装置により達成することが出来る。
【0012】
また,別の構成として,蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-zLnxMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはSc及びLuのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx及びzは0<x<1、0<z<1を満たし、かつ、X線回折において、位置が2θ=29°以上30°以下にあらわれる回折ピークの強度が,最も強く現れる回折ピーク強度の1/2以下である蛍光体を含む画像表示装置により,上記目的を達成することが出来る。
【0013】
さらに,別の構成として,蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-zTbxMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはSc、Lu、Y、及びGdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx及びzは0<x<1、0<z<1を満たし、かつ、X線回折において、位置が2θ=29°以上30°以下にあらわれる回折ピークの強度が,最も強く現れる回折ピーク強度の1/2以下である蛍光体を含む画像表示装置により上記目的を達成することが出来る。
【0014】
また,上記蛍光体の組成式における構成元素の比率zを,0<z<0.5の範囲とすれば,より望ましい特性を得られる。
【0015】
さらに,前記蛍光膜を形成する蛍光体の,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値が,0.25を越える値とすれば,より望ましい特性を得られる。
【0016】
さらに,前記蛍光膜を形成する蛍光体の,前記蛍光体の組成式におけるSiのモル比を,全体のモル比に対し0.8〜1.2の範囲とすれば,より望ましい特性を得られる。
【0017】
このような蛍光体は,Si以外の構成元素を同時に含む化合物を,Siを含む化合物と混合し,加熱焼成する事でより望ましい特性を得られる。
【0018】
また,このような蛍光体は,全ての構成元素を同時に含む化合物を加熱焼成する事でより望ましい特性を得られる。
【0019】
さらに,前記蛍光膜を形成する蛍光体の,前記蛍光膜の膜厚の範囲が,0.5μm以上40μm以下とすれば,より望ましい特性を得られる。
【0020】
また,該蛍光膜が,他の蛍光体の一種類もしくは複数の種類と混在することにより,より望ましい特性を得ることも出来る。
【0021】
そして,該蛍光膜に電子線を照射し発光させることを特徴とする画像表示装置により,上記目的を達成することが出来る。
【0022】
具体例としては,該蛍光膜を備えた投射管,もしくは該蛍光膜を備えた投射管を含む投射型テレビジョンにより,上記目的を達成することができる。また,該蛍光膜を備えたフィールドエミッターディスプレイにより,上記目的を達成することができる。
【0023】
また,該蛍光膜に,本発明の蛍光体が発光する波長範囲である,波長500nm以下の光を照射し発光させることを特徴とする画像表示装置により,上記目的を達成することができる。
【0024】
具体例としては,該蛍光膜を備えたプラズマディスプレイにより,上記目的を達成することができる。
【0025】
また,該蛍光膜を少なくとも一部に含む光源を備えたことを特徴とする画像表示装置により,上記目的を達成することが出来る。
【0026】
具体例としては,該蛍光膜を少なくとも一部に含む光源を用いて表示を行う液晶ディスプレイにより,上記目的を達成することが出来る。
【0027】
また,赤色発光,青色発光,緑色発光の3色の蛍光膜によりカラー表示を行う画像表示装置において,3色の蛍光膜のうち緑色発光蛍光膜を本発明とすることにより,上記目的を達成することが出来る。
【0028】
さらに,赤色発光,青色発光,緑色発光の3色の蛍光膜によりカラー表示を行う画像表示装置において,赤色発光蛍光膜の少なくとも一部にY2O3もしくはY2O2Sを成分とする蛍光体のうちいずれか1つもしくは両者を含み,かつ青色発光蛍光膜の少なくとも一部にZnSを成分とする蛍光体を含み,かつ緑色発光の蛍光膜を本発明とした画像表示装置により,より望ましい特性を得ることが出来る。
【0029】
上記本発明の作用について以下に詳述する。
【0030】
従来技術の蛍光体は,Tbxで付活された母材Y2-2xSiO5の原料を,Gd, Sc, Yb, Eu, Sm, Tm,Mn,Dy,Prなどを含む別の原料と混合し焼成することによって,組成Yの一部を置換し,特性の改善を図ってきた。
【0031】
それに対し,本発明は,Tbxで付活された母材La2-2xSiO5を元とし,Sc,Lu,Gd,及びYなどによって,Laの一部を置換する。
【0032】
このことによって,(La1-x-zTbxMz)2SiO5(ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはSc、Lu、Y、及びGdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx及びzは0<x<1、0<z<1を満たす数)で表され,かつ従来技術と異なる結晶を持つ蛍光体を得ることが出来る。この蛍光体は,寿命,輝度,及び色再現性に関して良好な特性を示すことを見いだした。
【0033】
本発明の蛍光体は,従来技術である,特開平2-289679(特許文献1),特公昭61-21505(特許文献2),特公平06-60354(特許文献3),特開2003-115481(特許文献4),特開2002-105450(特許文献5),特開2004-51931(特許文献6),特開2002-105449(特許文献7)で示されている蛍光体とは,異なる結晶となる。このことは,X線回折において、位置が2θ=29°以上30°以下にあらわれる回折ピークの強度が,最も強く現れる回折ピーク強度の1/2以下となる特徴で示される。
【0034】
また,従来技術の特開2003-115481(特許文献4)とは異なり,Siを化学量論に一致する組成とすることで,高い輝度を得ることが出来る。
【0035】
また,La,Tb,及びSc等の置換元素を同時に含む化合物を,Siを含む化合物と混合し,加熱焼成する事,または,La,Tb,Sc等の置換元素,及びSiを同時に含む化合物を加熱焼成する事により合成を行うことで,より望ましい特性を得ることが出来る。
【0036】
本発明の蛍光体の形態は,特に限定されず,単結晶でも多結晶でもよい。また,形状は,焼結体,粉体等いずれの形でも良い。ただし,画像表示装置に用いる場合,高温で反応させた粉体が良く用いられる。この場合,粉体の粒径は1μm〜20μm程度のものが用いられる。
【0037】
さらに,本発明の蛍光膜において,Y3(Al,Ga)5O12:Tb,Zn2SiO4:Mn,LaOCl:Tb,InBO3:Tb,LaPO4:Tb,Ce,Y2O3:Eu,BaMgAl10O17:Euなど,他の蛍光体の一種類もしくは複数の種類と混在させて使用することにより,より輝度を高めること,もしくは色再現性をよくすること,もしくは色を変更すること,もしくは寿命特性を向上することができる。
【0038】
また,従来技術の蛍光膜は,輝度を高くするため,40μmを越える厚みが必要であった。しかし,上記蛍光体を用いることにより,40μm以下でも十分実用に用いることができる高い輝度を得ることが出来る。本発明では,上記蛍光体を40μm以下の膜厚で用いることにより,高精細かつ高輝度の画像表示装置を得ることが出来る。
【0039】
実用に供する場合の使用方法として,本発明の蛍光体を含む蛍光膜を有する画像表示装置を用いることにより,画質のよい画像表示装置を提供することができる。
【0040】
本発明の蛍光体を含む蛍光膜を,フィールドエミッターディスプレイ(FED)等の,低速電子線を用いる画像表示装置に用いることによって,寿命が良く,輝度が高く,かつ色再現性が良い,良好な特性を示す画像表示装置を作成することができる。
【0041】
また,本発明を投射型ディスプレイに用いることにより,良好な特性を示す画像表示装置を得ることが出来る。投射型ディスプレイはRBG三色の三本の投射管によって構成される。このうち,緑色投射管のフェイスプレートに塗布する蛍光体として,本発明の蛍光体を単独で,もしくは本発明の蛍光体を含む緑色蛍光体混合物を用いることによって,良好な特性を示す画像表示装置を作成することができる。
【0042】
また,直視型ディスプレイ用ブラウン管(以下直視管と略)においても,フェイスプレートに塗布する三色の蛍光体のうち,緑色蛍光体として,本発明の蛍光体を単独もしくは混合物で用いることによって,良好な特性を示す画像表示装置を作成することができる。
【0043】
本発明は,高精細であり,かつ高電流励起における輝度が高く,また輝度劣化特性が優れているため,投射管用及びFED用蛍光体としての用途に最適である。
【0044】
また,本発明の蛍光体を含む蛍光膜を,プラズマディスプレイパネル(PDP)等の,紫外線励起による発光を行う画像表示装置に用いることによって,良好な特性を示す画像表示装置を作製することができる。
【0045】
また,本発明を,液晶を用いた画像表示装置の,バックライトもしくはサイドライト光源に用いることによって,良好な特性を示す画像表示装置を作製することができる。
【0046】
また,本発明の効果は,励起源の種類に限定されず,様々な電子線源や紫外線源などの,全ての種類の蛍光体励起を行う励起源において有効である.
【発明の効果】
【0047】
以上説明した通り,本発明により所期の目的を達成することができた。すなわち,本発明により,高精細,高輝度で劣化が少なく,かつ色再現性の良い,高画質の画像表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下,本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0049】
本発明の構成の画像表示装置に用いる蛍光膜を以下の方法で作製し,その特性を評価した。
【0050】
本発明に用いる蛍光体は,Scが組成として含まれた,共沈などの手法による化合物を原料に用いて合成を行った。すなわち,原料として,(La,Sc,Tb)2O3,及びSiO2を用いた。また,他の合成法として,これら全て,すなわちLa,Sc,Tb,Siが含まれた,共沈などの手法による化合物を用いても,結果としては,同等かもしくはさらによい結果が得られている。
【0051】
これらの材料の所定量をよく混合した。この混合物をアルミナるつぼに入れ,1400℃以上の温度で2時間以上焼成した。良好な特性となるよう,焼成時の雰囲気を制御した。焼成物を粉砕し,粒径数μm前後の蛍光体粉末を得た。
【0052】
このような方法で,組成を変化させて,(La1-x-yTbxScy)2SiO5で表される組成を持つ蛍光体をそれぞれ作製した。ここで,x,yは,0<x≦1,0<y≦1の範囲で変化させた。
【0053】
比較対象となる従来品は,Laの珪酸化合物が母体である,Scが含まれない,Tb付活La2SiO5蛍光体を,最適な組成となるように作製した。
【0054】
陰極線による発光特性を測定するために,これらの試料を,金属製の基板上に水沈降塗布し,40μm厚以下の蛍光膜を作製した。この蛍光膜に,真空度10-5Pa以上の真空中において,0.1〜1000μA/cm2の範囲の電流密度で電子線を照射し,輝度を測定した。加速電圧の範囲は5〜30kVとした。
【0055】
輝度は,膜面から20cm離れた位置でフォトトランジスタにより測定した。
【0056】
図1に,Sc濃度yを変化させた場合の,輝度のSc量依存性を示す。図には0.5までのグラフを示した。従来例(Sc濃度y=0)の輝度を100として示した。Sc濃度yが0を越える範囲で,輝度において従来例を上回ることがわかる。特に,Sc濃度が0を越え0.25以下の範囲において,十分な輝度向上を示した。
【0057】
さらに,図1に,実施例の発光について,CIE色度座標の色度値yのSc量依存性を同時に示した。緑色発光蛍光体において,色度値yは値が大きい程良好な色再現性を示す。実用的には,0.57以上であることが望ましい。図1より,本発明の蛍光体では,Sc濃度を増やしても大きな色度値yの変化はなく,全体の組成領域で良好な色再現性を示している。
【0058】
また,付活剤濃度xが0<x≦1の範囲における他の組成においても,Sc濃度yを変化させた場合,同様の結果となった。
【0059】
(La1-x-yTbxScy)2SiO5で表される組成において,さらにLaをLu,Y,Gd,のうち少なくとも一つの元素で置換した場合,上記と同様,もしくはさらに良好な特性を得ることが出来た。
【0060】
また,本発明の蛍光体における,全体組成1molに対する,含まれるSiのmol量を変化させ発光特性の変化を測定した。Si量が化学量論比に一致する1molの場合に,輝度が最も高い結果となった。これより,Siのmol量が1であることが望ましいことが示された。
【0061】
また,本発明の蛍光体について,粒径分布と,塗布方法に関して検討を行った。蛍光体の粒径分布は,コールターメーターを用いて測定を行い,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値を粒径分布の拡がりの指標として用いた。蛍光体をペーストに分散し,印刷法で塗布を行った場合,蛍光膜を形成する蛍光体の,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値が,0.25を越える場合に,良好な輝度特性を示した。
【0062】
また,本発明の蛍光体について,光励起による検討を行った。500nm以下の光励起により発光し,特に380nm以下の紫外光の励起により強い発光を示した。光励起においても,従来品より良好な特性を示した。特に,上記したように付活剤としてTbを用いるのみではなく,加えてCeを用いることにより,さらに良好な特性を示した。
【0063】
上記のように,本発明により,輝度が高く,かつ色再現性の良い蛍光膜を作製することが出来,これを用いて画像表示装置を作製することにより,良好な特性の画像表示装置を得ることが出来る。
【実施例2】
【0064】
本発明の構成の画像表示装置に用いる蛍光膜を以下の方法で作製し,その特性を評価した。
【0065】
本発明に用いる蛍光体は,Luが組成として含まれた,共沈などの手法による化合物を原料に用いて合成を行った。すなわち,原料として,(La,Lu,Tb)2O3,及びSiO2を用いた。また,他の合成法として,これら全て,すなわちLa,Lu,Tb,Siが含まれた,共沈などの手法による化合物を用いても,結果としては,同等かもしくはさらによい結果が得られている。
【0066】
これらの材料の所定量をよく混合した。この混合物をアルミナるつぼに入れ,1400℃以上の温度で2時間以上焼成した。良好な特性となるよう,焼成時の雰囲気を制御した。焼成物を粉砕し,粒径数μm前後の蛍光体粉末を得た。
【0067】
このような方法で,組成を変化させて,(La1-x-yTbxLuz)2SiO5で表される組成を持つ蛍光体をそれぞれ作製した。ここで,x,zは,0<x≦1,0<z≦1の範囲で変化させた。
【0068】
比較対象となる従来品は,Laの珪酸化合物が母体である,Luが含まれない,Tb付活La2SiO5蛍光体を,最適な組成となるように作製した。
【0069】
陰極線による発光特性を測定するために,これらの試料を,金属製の基板上に水沈降塗布し,40μm厚以下の蛍光膜を作製した。この蛍光膜に,真空度10-5Pa以上の真空中において,0.1〜1000μA/cm2の範囲の電流密度で電子線を照射し,輝度を測定した。加速電圧の範囲は5〜30kVとした。
【0070】
輝度は,膜面から20cm離れた位置でフォトトランジスタにより測定した。
【0071】
図2に,Lu濃度zを変化させた場合の,輝度のLu量依存性を示す。従来例(Lu濃度z=0)の輝度を100として示した。Lu濃度zが0を越える範囲で,輝度において従来例を上回ることがわかる。特に,Lu濃度が0を越え0.5以下の範囲において,十分な輝度向上を示した。
【0072】
さらに,図2に,実施例の発光について,CIE色度座標の色度値yのLu量依存性を同時に示した。緑色発光蛍光体において,色度値yは値が大きい程良好な色再現性を示す。実用的には,0.57以上であることが望ましい。図2より,本発明の蛍光体では,Lu濃度を増やしても大きな色度値yの変化はなく,全体の組成領域で良好な色再現性を示している。
【0073】
また,付活剤濃度xが0<x≦1の範囲における他の組成においても,Lu濃度zを変化させた場合,同様の結果となった。
【0074】
(La1-x-yTbxLuz)2SiO5で表される組成において,さらにLaをSc,Y,Gd,のうち少なくとも一つの元素で置換した場合,上記と同様,もしくはさらに良好な特性を得ることが出来た。
【0075】
また,本発明の蛍光体における,全体組成1molに対する,含まれるSiのmol量を変化させ発光特性の変化を測定した。Si量が化学量論比に一致する1molの場合に,輝度が最も高い結果となった。これより,Siのmol量が1であることが望ましいことが示された。
【0076】
また,本発明の蛍光体について,粒径分布と,塗布方法に関して検討を行った。蛍光体の粒径分布は,コールターメーターを用いて測定を行い,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値を粒径分布の拡がりの指標として用いた。蛍光体をペーストに分散し,印刷法で塗布を行った場合,蛍光膜を形成する蛍光体の,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値が,0.25を越える場合に,良好な輝度特性を示した。
【0077】
また,本発明の蛍光体について,光励起による検討を行った。500nm以下の光励起により発光し,特に380nm以下の紫外光の励起により強い発光を示した。光励起においても,従来品より良好な特性を示した。特に,上記したように付活剤としてTbを用いるのみではなく,加えてCeを用いることにより,さらに良好な特性を示した。
【0078】
上記のように,本発明により,輝度が高く,かつ色再現性の良い蛍光膜を作製することが出来,これを用いて画像表示装置を作製することにより,良好な特性の画像表示装置を得ることが出来る。
【実施例3】
【0079】
本発明の構成の画像表示装置に用いる蛍光膜を以下の方法で作製し,その特性を評価した。
【0080】
本発明に用いる蛍光体は,Luが組成として含まれた,共沈などの手法による化合物を原料に用いて合成を行った。すなわち,原料として,(La,Y,Tb)2O3,及びSiO2を用いた。また,他の合成法として,これら全て,すなわちLa,Y,Tb,Siが含まれた,共沈などの手法による化合物を用いても,結果としては,同等かもしくはさらによい結果が得られている。
【0081】
これらの材料の所定量をよく混合した。この混合物をアルミナるつぼに入れ,1400℃以上の温度で2時間以上焼成した。良好な特性となるよう,焼成時の雰囲気を制御した。焼成物を粉砕し,粒径数μm前後の蛍光体粉末を得た。
【0082】
このような方法で,組成を変化させて,(La1-x-yTbxYz)2SiO5で表される組成を持つ蛍光体をそれぞれ作製した。ここで,x,zは,0<x≦1,0<z≦1の範囲で変化させた。
【0083】
比較対象となる従来品は,Laの珪酸化合物が母体である,Yが含まれない,Tb付活La2SiO5蛍光体を,最適な組成となるように作製した。
【0084】
陰極線による発光特性を測定するために,これらの試料を,金属製の基板上に水沈降塗布し,40μm厚以下の蛍光膜を作製した。この蛍光膜に,真空度10-5Pa以上の真空中において,0.1〜1000μA/cm2の範囲の電流密度で電子線を照射し,輝度を測定した。加速電圧の範囲は5〜30kVとした。
【0085】
輝度は,膜面から20cm離れた位置でフォトトランジスタにより測定した。
【0086】
図3に,Y濃度zを変化させた場合の,輝度のY量依存性を示す。従来例(Y濃度z=0)の輝度を100として示した。Y濃度zが0を越える範囲で,輝度において従来例を上回ることがわかる。Y濃度が高くなる程,輝度向上を示した。
【0087】
さらに,図3に,実施例の発光について,CIE色度座標の色度値yのLu量依存性を同時に示した。緑色発光蛍光体において,色度値yは値が大きい程良好な色再現性を示す。実用的には,0.57以上であることが望ましい。図3より,本発明の蛍光体では,Y濃度を増やすと大きく色度値yが低下する。良好な色度値の範囲は,Y濃度が0.5以下の範囲である。
【0088】
また,付活剤濃度xが0<x≦1の範囲における他の組成においても,Y濃度zを変化させた場合,同様の結果となった。
【0089】
(La1-x-yTbxYz)2SiO5で表される組成において,さらにLaをSc,Lu,Gd,のうち少なくとも一つの元素で置換した場合,上記と同様,もしくはさらに良好な特性を得ることが出来た。
【0090】
また,本発明の蛍光体における,全体組成1molに対する,含まれるSiのmol量を変化させ発光特性の変化を測定した。Si量が化学量論比に一致する1molの場合に,輝度が最も高い結果となった。これより,Siのmol量が1であることが望ましいことが示された。
【0091】
また,本発明の蛍光体について,粒径分布と,塗布方法に関して検討を行った。蛍光体の粒径分布は,コールターメーターを用いて測定を行い,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値を粒径分布の拡がりの指標として用いた。蛍光体をペーストに分散し,印刷法で塗布を行った場合,蛍光膜を形成する蛍光体の,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値が,0.25を越える場合に,良好な輝度特性を示した。
【0092】
また,本発明の蛍光体について,光励起による検討を行った。500nm以下の光励起により発光し,特に380nm以下の紫外光の励起により強い発光を示した。光励起においても,従来品より良好な特性を示した。特に,上記したように付活剤としてTbを用いるのみではなく,加えてCeを用いることにより,さらに良好な特性を示した。
【0093】
上記のように,本発明により,輝度が高く,かつ色再現性の良い蛍光膜を作製することが出来,これを用いて画像表示装置を作製することにより,良好な特性の画像表示装置を得ることが出来る。
【実施例4】
【0094】
本発明の構成の画像表示装置に用いる蛍光体について,従来例との結晶の違いを評価した。
【0095】
本発明の蛍光体を,実施例1と同様に作製し,(La1-x-yTbxScy)2SiO5で表される組成を持つ蛍光体をそれぞれ作製した。ここで,x,yは,0<x≦1,0<y≦1の範囲で変化させた。
【0096】
比較対象となる従来品は,Yの珪酸化合物が母体である,Scが含まれない,Tb付活Y2SiO5蛍光体を,最適な組成となるように作製した。
【0097】
X線評価は,CuのKα特性線による回折線を,粉末X線回折装置を用い,θ-2θスキャンによる測定値を用いた。
【0098】
図4に,本発明の蛍光体のX線回折における最も強度が強いピーク付近のX線回折強度のグラフを示す。本発明は,従来例とは異なる結晶による異なる回折パターンを示し,新たな結晶を形成していることがわかる。例えば,本発明で最も強度が強い主ピークは2θ=27〜28°の範囲に存在する場合が多いが,従来例では30〜31°の範囲に存在する。
【0099】
本発明の蛍光体の結晶の,従来例と異なる特徴として,2θ=29〜30°の範囲にあるピークの強度が挙げられる。本発明では,最も強度が強いピークに対して,この範囲にあるピークの強度は,1/2以下である。それに対し,従来例では最も強度が強いピークに対して,この範囲にあるピークの強度は,8割程度である。この範囲にあるピークの強度により,本発明の従来例と異なる結晶を特徴づけることができる。
【0100】
図5に,本発明の実施例と,従来例との,紫外線励起による発光スペクトルの比較を示す。540nm付近での,緑色発光ピークを比較すると,本発明の実施例の方が,従来例よりも,短波長側にある。これは,緑色発光としては純色に近くなる方向である。また,480nm付近での,青色発光ピークを比較すると,本発明の実施例の方が,従来例よりも,ピーク強度が小さい。これは,緑色発光以外の発光が少なくなる方向である。
【0101】
これらの差異により,緑色発光の色再現性は,本発明の方が,従来例より良好である。これらの発光スペクトルの相違は,主に,本発明の蛍光体の結晶が,前記したように,従来例と異なることに起因している。
【0102】
上記のように,本発明により,色再現性の良い蛍光膜を作製することが出来,これを用いて画像表示装置を作製することにより,良好な特性の画像表示装置を得ることが出来る。
【実施例5】
【0103】
本発明の構成の画像表示装置を,蛍光膜の膜厚を変化させて作製し,特性を評価した。
【0104】
実施例1で示したScを含む蛍光体による,本発明の画像表示装置に使用される蛍光膜を,膜厚を5〜50μmの範囲で変化させ作製した。この蛍光体に電子線を照射し,実施例1の測定法に準じ,輝度を測定した。また,精細度の指標となるスポット径を測定した。
【0105】
スポット径とは,電子線が一点に照射された場合に,光って見える点の直径のことである。通常は,電子線を走査しながら測定する。走査して移動する発光点を,スリットにより移動方向に分解し発光強度の時間変化を測定した。その結果から,発光点内における位置による発光強度の変化を算出した。今回は,最大の発光強度(発光点の中心)に対して,発光強度が10%になる位置までを発光点と見て,10%となる位置間の距離をスポット径と定義した。
【0106】
スポット径は画面上での画素の大きさと関係しており,ある程度の大きさ以下としないと画像の精細度が失われる。望ましいスポット径は200μm以下,さらに望ましくは170〜180μm程度以下である。また,ハイビジョン等の高精細画像に十分対応するためには,150〜160μm程度以下が望ましい。
【0107】
蛍光体の膜厚は,蛍光膜の断面の厚さを走査電子顕微鏡を用いて測定した。また,非接触式の段差計を用い,基板やフェースパネルからの蛍光膜の厚さ測定も併せて実施した。これらの結果より,妥当な値を蛍光膜の膜厚とした。
【0108】
図6に,本発明における,蛍光膜の膜厚に対する,スポット径及び輝度の変化を示す。膜厚を薄くすると共に,スポット径が小さくなることがわかる。図より,前記したスポット径を得るための膜厚は,40μm以下,望ましくは30μm以下,さらに望ましくは21μm未満であることがわかる。
【0109】
また,図6より,膜厚を薄くすると共に,輝度が低下することがわかる。従来品輝度を100前後としているが,実用的に使用するためには,輝度80以上が望ましい。また,輝度90以上がさらに望ましい。図より,輝度90以上を得るための膜厚は10μm以上であることがわかる。
【0110】
上記のように,本発明により,精細度の高い蛍光膜を作製することが出来,これを用いて画像表示装置を作製することにより,高精細かつ高輝度の画像表示装置を得ることが出来る。
【実施例6】
【0111】
画像表示を行う緑色蛍光膜として,本発明の蛍光体による蛍光膜を有する,対角18cmサイズの緑色画像用投射型陰極線管を作製した。
【0112】
図7に,投射型陰極線管の断面の概念図を示す。同図において,投射型陰極線管は,ネック端に電子銃4を備え,フェイスプレート1の内面に,蛍光膜2及びメタルバック3を備えている。投射型陰極線管の蛍光膜は単色膜で構成されている。本発明の手段を用い,7インチバルブ中で水沈降により蛍光膜2を形成し,フィルミング,アルミバック蒸着を行い,電子銃等の部品を取り付け,排気,封止を行って陰極線管を完成させた。
【0113】
これらの本発明の陰極線管を用い,30kVの電圧を加え,TVスキャンにより102x76mmの大きさで照射される,0.1〜10mAの陰極線で励起した。以下に示す方法で,発光特性を測定した。
【0114】
輝度は,数十cm離れた位置から輝度計を用いて計測した。また,実施例2に準じた方法により,スポット径を測定した。
【0115】
これらの評価の結果,今回作製した陰極線管は,精細度において,従来品を上回った。かつ,輝度特性においても,従来品と同等以上であった。すなわち,本発明により,高精細かつ高輝度である,画質の良い画像表示装置を得た。
【実施例7】
【0116】
画像表示を行う緑色蛍光膜として,本発明の蛍光体による蛍光膜を有する,投射型テレビ画像表示装置を作製した。
【0117】
実施例6に示すように,本発明による対角18cmサイズの緑色画像用投射型陰極線管を作製した。さらに,他の青色画像用投射型陰極線管,及び赤色画像用投射型陰極線とを組み合わせて,投射型テレビ画像表示装置を作製した。
【0118】
図8に,本発明による投射型テレビ画像表示装置の模式図を示す。同図において,5は赤色画像用陰極線管,6は本発明の緑色画像用陰極線管,7は青色画像用陰極線管であり,これらに対向して一定距離はなした位置に映写スクリーン8が配置されている。また,前記各々の投射型陰極線管には,これらの中心軸と同一線上に投射レンズ系9が配置され,前記各々の投射型陰極線管のフェイスプレートに再生された単色の画像が集光拡大されて前記映写スクリーン8に投射され,3色が重ね合い合成されたカラー画像が得られる。
【0119】
実際には,投射型テレビ画像表示装置は,上記に示す各画像用陰極線管,映写スクリーン,及び投射レンズ系の外に,テレビ用チューナー,陰極線管駆動回路,画像信号処理回路等の画像表示用装置,また,音響用スピーカー,アンプなどの音響装置,また,スイッチやボリュームなどの操作用装置,また,全体を収める外装や,支えるフレームや台等によって構成されている。
【0120】
ここで,本実施例において,以下に示す各方法で,発光特性を測定した。輝度は,数十cm離れた位置から輝度計を用いて計測し,従来用いられている現行標準品の輝度を100として相対輝度で表した。測定は,30kVの電圧を加え,102x76mmの大きさで照射される,0.1〜10mAの陰極線で励起し測定した。
【0121】
蛍光体の発光色は,数十cm離れた位置から色度計を用いて測定した。発光色の比較は,x-yの色度座標の色度値yの比較により行った。
【0122】
輝度劣化特性の測定は,102x76mmの大きさで照射される,0.5mA前後の陰極線を1000時間照射連続照射し,その前後での輝度比により比較した。
【0123】
また,ハイビジョンなどの高精細画像を表示し,精細度を詳細に評価した。
【0124】
これらの評価の結果,今回作製した投射型テレビ画像表示装置は,精細度において,従来品を上回った。かつ,輝度及び輝度劣化特性においても,従来品と同等以上であった。すなわち,本発明により,長寿命,高精細かつ高輝度である,画質の良い画像表示装置を得た。
【実施例8】
【0125】
画像表示を行う緑色蛍光膜として,本発明の蛍光体による蛍光膜を有する,投射型テレビ画像表示装置を作製した。
【0126】
実施例6に示すように,本発明による対角18cmサイズの緑色画像用投射型陰極線管を作製した。さらに,他の青色画像用投射型陰極線管として,ZnS:Ag,Al蛍光体を含んだ蛍光膜による陰極線管を用いた。また,赤色画像用投射型陰極線として,Y2O3:Eu蛍光体を含む蛍光膜による陰極線管を用いた。これらを組み合わせて,投射型テレビ画像表示装置を作製した。
【0127】
実施例7と同様の構成により,同様の評価を実施した。
【0128】
これらの評価の結果,今回作製した投射型テレビ画像表示装置は,精細度において,従来品を上回った。かつ,輝度及び輝度劣化特性においても,従来品と同等以上であった。三色を合わせた評価における色調や画質において,特に良好な結果を得た。すなわち,本発明により,長寿命,高精細かつ高輝度である,画質の良い画像表示装置を得た。
【0129】
また,青色画像用投射型陰極線管として,ZnSを成分とする蛍光体を含んだ上記以外の蛍光膜による陰極線管を用いた場合も同様の結果を得た。また,赤色画像用投射型陰極線として,少なくとも一部にY2O3もしくはY2O2Sを成分とする蛍光体のうちいずれか1つもしくは両者を含む上記以外の蛍光膜による陰極線管を用いた場合も同様の結果を得た。これらを組み合わせることにより,画質の良い画像表示装置を得た。
【実施例9】
【0130】
画像表示を行う緑色蛍光膜として,Zn2SiO4:Mn蛍光体を混在させた本発明の蛍光膜を用いて,対角18cmサイズ緑色画像用投射型陰極線管を作製した。さらに,本発明の技術を用いた該緑色画像用投射型陰極線管と,他の青色画像用投射型陰極線管,及び赤色画像用投射型陰極線とを組み合わせて,投射型テレビ画像表示装置を作製した。装置の構成及び特性の測定方法は実施例7と同様である。
【0131】
上記混合膜において,全体に対するZn2SiO4:Mn蛍光体の重量比を,0〜1まで変化させ,CIE色度座標の色度値y及び相対輝度を測定した。緑蛍光体においては,色度値yが大きいほどいろ再現性が良く,良好な画像が得られる。Zn2SiO4:Mn蛍光体の重量比が増えるにしたがって,色度値yが増加し,良好な色再現性を示すことがわかる。一方,Zn2SiO4:Mn蛍光体の重量比が増えるにしたがって,輝度が低下する。色再現性の上では,Zn2SiO4:Mn蛍光体の重量比は多い方が良いが,実用に供する輝度を得るためには,重量比0.4以下の方が良い。この範囲での混合蛍光体を用いることで,良好な特性を持つ画像表示装置を提供することが出来る。
【0132】
また,Zn2SiO4:Mn蛍光体に替えて,LaOCl:Tb蛍光体やInBO3:Tb蛍光体など,本発明と発光の色度が異なるその他の蛍光体を本発明に混在させ陰極線管を作製した。その結果,上記と同様の結果が得られた。
【実施例10】
【0133】
画像表示を行う緑色蛍光膜として,Y3(Al,Ga)5O12:Tb 蛍光体を混在させた本発明の蛍光膜を用いて,対角18cmサイズ緑色画像用投射型陰極線管を作製した。さらに,本発明の技術を用いた該緑色画像用投射型陰極線管と,他の青色画像用投射型陰極線管,及び赤色画像用投射型陰極線とを組み合わせて,投射型テレビ画像表示装置を作製した。装置の構成及び特性の測定方法は実施例7と同様である。
上記混合膜において,全体に対するY3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体の重量比を,0〜1まで変化させ,色度値y,相対輝度及び輝度劣化特性を測定した。それにより,Y3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体の重量比を増やすと,相対輝度及び輝度劣化特性が向上するが,色度値yが低下するという結果を得た。実用に供することのできる色度値は,Y3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体の重量比0.6以下で得る事ができる。この範囲での混合蛍光体を用いることで,輝度が高く輝度劣化の少ない,良好な特性を持つ画像表示装置を提供することが出来る。
【0134】
また,Y3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体に替えて,本発明と輝度や劣化特性が異なるその他の蛍光体を本発明に混在させ陰極線管を作製した。その結果,上記と同様の結果が得られた。
【実施例11】
【0135】
本発明の構成の含む蛍光膜を,プラズマディスプレイパネル(PDP)に適用した。図9にプラズマディスプレイパネルのセル構造を示す。また,図10に,プラズマディスプレイパネルの構成を示す。このような構造の本発明によるプラズマディスプレイを作製した。
【0136】
特性を評価した結果,今回作製した本発明によるプラズマディスプレイは,寿命,及び輝度において,従来品を上回った。かつ,色再現性おいても,従来品と同等以上であった。すなわち,本発明により,特性の良い画像表示装置を得た。
【実施例12】
【0137】
本発明の構成の蛍光膜を,低速電子線による励起を行うフィールドエミッターディスプレイ(FED)に適用した。図11にフィールドエミッターディスプレイのセル構造を示す。このような構造の本発明によるフィールドエミッターディスプレイを作製した。
【0138】
特性を評価した結果,今回作製した本発明によるフィールドエミッターディスプレイは,寿命,及び輝度において,従来品を上回った。かつ,色再現性においても,従来品と同等以上であった。すなわち,本発明により,特性の良い画像表示装置を得た。
【0139】
また,ここでは,スピント型と呼ばれる電子線源による例を示したが,メタル−インシュレータ−メタル(MIM)型の電子線源や,カーボンナノチューブ(CNT)を用いた電子線源など,全ての種類の電子線源に於いても,本発明は有効である.
【実施例13】
【0140】
本発明の構成の蛍光膜を,液晶ディスプレイのバックライトに適用した。バックライトに用いた冷陰極線管(CCFL)の構造の模式図を図12に示す。また,本発明のその他の構成のバックライトとして用いた希ガス(キセノン)ランプの構造の模式図を図13に示す。また,本発明のその他の構成のバックライトとして用いた平面(キセノン)ランプの構造の模式図を図14に示す。
【0141】
これらのバックライトの蛍光膜として,本発明による蛍光膜を用いた。蛍光膜には,Y2O3:Eu蛍光体,及びBaMgAl10O17:Eu蛍光体を混在させることにより,白色の発光を得た。また,LaPO4:Tb,Ce蛍光体,及び一般的にSCA:Euと呼称される蛍光体のいずれか,もしくは両者を,上記蛍光体のいずれか,もしくは両者と共に,もしくは別途に混在させたものも作製した。
【0142】
これらのバックライトを用いて,液晶ディスプレイを作製した。図15に,冷陰極管を用いた場合の,液晶ディスプレイの構造を分解斜視図として模式的に示した図を示す。
【0143】
特性を評価した結果,今回作製した本発明による液晶ディスプレイは,輝度において,従来品を上回った。かつ,色再現性においても,従来品と同等以上であった。すなわち,本発明により,高輝度かつ画質の良い画像表示装置を得た。
【0144】
また,本発明の構成によれば,光源の種類はここに示したものに限らず他のものでも十分な効果を上げることが出来る。例えば,熱陰極管(HCFL)(Hot Cathode Fluorescent Lamp)などにおいて特に効果を上げることが出来る。また,バックライトに限らず,サイドライトや,フロントプロジェクションの光源として用いても十分な効果を上げることが出来る。
【0145】
本発明により,従来品より輝度が高く,画質の良い液晶ディスプレイを作製することができた。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の実施例となる画像表示装置に含まれる蛍光体のSc濃度yと,蛍光体の輝度との関係について示した本発明の特性曲線である。
【図2】本発明の実施例となる画像表示装置に含まれる蛍光体のSc濃度yによる,蛍光体のX線回折ピークの変化について示した図である。
【図3】従来技術となる画像表示装置に含まれる蛍光体のSc濃度yによる,蛍光体のX線回折ピークの変化について示した図である。
【図4】本発明の実施例となる蛍光体と,従来例とのX線回折ピークの比較を示した図である。
【図5】本発明の実施例となる蛍光体と,従来例との発光スペクトルの比較を示した図である。
【図6】本発明の実施例となる画像表示装置に含まれる蛍光膜の膜厚と,スポット径及び輝度との関係について示した本発明の特性曲線である。
【図7】本発明の実施例となる陰極線管の断面構造を模式的に示した構成図である。
【図8】本発明の実施例となる投射型テレビ画像装置の構造を模式的に示した構成図である。
【図9】本発明の実施例となる,プラズマディスプレイパネルのセル構造を模式的に示した図である。
【図10】本発明の実施例となる,プラズマディスプレイパネルの構造を模式的に示した図である。
【図11】本発明の実施例となる,フィールドエミッタディスプレイパネルのセル構造を模式的に示した図である。
【図12】本発明の実施例となる,液晶ディスプレイに用いられる冷陰極管(CCFL)の構造を模式的に示した図である。
【図13】本発明の実施例となる,液晶ディスプレイに用いられる希ガスランプの構造を模式的に示した図である。
【図14】本発明の実施例となる,液晶ディスプレイに用いられる平面バックライトの構造を模式的に示した図である。
【図15】本発明の実施例となる,液晶ディスプレイの構造を分解斜視図として模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0147】
1 フェイスプレート、2 蛍光膜、3 メタルバック、4 電子銃、5 赤色画像用陰極線管、6 緑色画像用陰極線管、7 青色画像用陰極線管、8 映写スクリーン、9 投射レンズ系、10 蛍光体、11 隔壁、12 アドレス電極、13 背面基板ガラス、14 前面基板ガラス、15 誘電体層、16 保護膜MgO、17 表示電極、18 緑蛍光体層、19 赤蛍光体層、20 青蛍光体層、21 フェイスプレート、22 蛍光膜、23 リアプレート、24 陰極、25 抵抗膜、26 絶縁膜、27 ゲート、28 円錐型金属、29 FED型電子源、
30 ガラス管、31 蛍光体、32 電極、33 放電媒体、34 密閉容器(背面ガラス34A、前面ガラス34B)、35 誘電体、36 バックライトユニット、37 液晶素子、38 筐体(下)、39 反射板
40 白色光源(例えばCCFL)、41 拡散板、42 プリズムシート、43 偏光反射板、44 インバータ、45 筐体(上)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光膜に励起エネルギを照射し発光させる励起手段を備える画像表示装置において、前記蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-y-zLnxScyMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはLu、Y、及Gdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx、y、及びzは0<x<1、0<y<1、0≦z<1を満たす蛍光体を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
蛍光膜に励起エネルギを照射し発光させる励起手段を備える画像表示装置において、前記蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-zLnxMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはSc及びLuのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx及びzは0<x<1、0<z<1を満たし、かつ、X線回折において、位置が2θ=29°以上30°以下にあらわれる回折ピークの強度が,最も強く現れる回折ピーク強度の1/2以下である蛍光体を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
蛍光膜に励起エネルギを照射し発光させる励起手段を備える画像表示装置において、前記蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-zLnxMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはSc、Lu、Y、及びGdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx及びzは0<x<1、0<z<1を満たし、かつ、X線回折において、位置が2θ=29°以上30°以下にあらわれる回折ピークの強度が,最も強く現れる回折ピーク強度の1/2以下である蛍光体を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の画像表示装置において,前記蛍光体の組成式における構成元素の比率yが,0<y<0.25であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光体の組成式における構成元素の比率zが,0<z<0.5であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光膜を形成する蛍光体の,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値が,0.25を越える値であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光体の組成式におけるSiのモル比を,全体のモル比に対し0.8〜1.2の範囲としたことを特徴とする画像評価装置。
【請求項8】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光体が,Si以外の構成元素を同時に含む化合物を,Siを含む化合物と混合し,加熱焼成する事により得られたものである事を特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光体が,全ての構成元素を同時に含む化合物を加熱焼成する事により得られたものである事を特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光膜の膜厚の範囲が,0.5μm以上40μm以下である事を特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光膜が,他の蛍光体の一種類もしくは複数の種類と混在することを特徴とする画像表示装置。
【請求項12】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光膜に電子線を照射し発光させることを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において、前記画像表示装置は、前記蛍光膜が形成されたフェイスプレート及び前記蛍光膜に画像情報に基づいて電子ビームを照射し発光させる電子源を有する投射型陰極線管と、前記投射型陰極線管から投影される画像を表示するスクリーンとを備えた投射型テレビジョンであることを特徴とする画像表示装置。
【請求項14】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において、前記画像表示装置は、前記蛍光膜が形成された基体と、前記蛍光膜に画像情報に基づいて励起エネルギを照射し発光させる励起手段とを有する平面画像表示パネルを備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項15】
請求項14記載の画像表示装置において、前記蛍光膜に画像情報に基づいて励起エネルギを照射し発光させる励起手段は、前記基体に形成された蛍光膜に対向して電界放出型電子源を備えると共に、前記電界放出型電子源が前記画像情報に基づいて発生する電子線を励起エネルギとして前記蛍光膜に照射し発光させる手段を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項16】
請求項14記載の画像表示装置において、前記蛍光膜に画像情報に基づいて励起エネルギを照射し発光させる励起手段は、ガス放電用電極と放電用希ガスとを含むプラズマ発生手段を備えると共に、前記プラズマ発生手段が前記画像情報に基づいてプラズマ放電を起こすことにより発生する光を前記蛍光膜に照射し発光させる手段を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項17】
蛍光膜が形成されたフェイスプレート及び前記蛍光膜に画像情報に基づいて電子ビームを照射し発光させる電子源を有する赤信号用、緑信号用、青信号用の3本の投射型陰極線管と、前記投射型陰極線管から投影される画像を表示するスクリーンとを備えた投射型カラーテレビジョンであって、前記緑信号用投射型陰極線管のフェイスプレートに形成された蛍光膜は、請求項1乃至3いずれか記載の蛍光膜であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項18】
蛍光膜を有する光源と、液晶パネルとを備えた画像表示装置において、前記蛍光膜が,請求項1乃至3いずれか記載の蛍光膜であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項19】
請求項18記載の画像表示装置において、前記画像表示装置は、前記光源として、赤色発光蛍光体、緑色発光蛍光体及び青色発光蛍光体を含む蛍光膜を有する冷陰極管構造の白色発光蛍光ランプと、前記蛍光ランプをバックライトとする液晶パネルとを備えた画像表示装置であって、前記蛍光膜が,請求項1乃至3いずれか記載の蛍光膜であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項20】
蛍光膜を有する蛍光ランプにおいて、前記蛍光膜が,請求項1乃至3いずれか記載の蛍光膜であることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項21】
請求項19記載の蛍光ランプにおいて、前記蛍光ランプは、赤色発光蛍光体、緑色発光蛍光体及び青色発光蛍光体を含む蛍光膜を有する冷陰極線構造の白色発光蛍光ランプ。
【請求項1】
蛍光膜に励起エネルギを照射し発光させる励起手段を備える画像表示装置において、前記蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-y-zLnxScyMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはLu、Y、及Gdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx、y、及びzは0<x<1、0<y<1、0≦z<1を満たす蛍光体を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
蛍光膜に励起エネルギを照射し発光させる励起手段を備える画像表示装置において、前記蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-zLnxMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはSc及びLuのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx及びzは0<x<1、0<z<1を満たし、かつ、X線回折において、位置が2θ=29°以上30°以下にあらわれる回折ピークの強度が,最も強く現れる回折ピーク強度の1/2以下である蛍光体を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
蛍光膜に励起エネルギを照射し発光させる励起手段を備える画像表示装置において、前記蛍光膜を形成する蛍光体の少なくとも一部に、組成が一般式(La1-x-zLnxMz)2SiO5で表され、ただし、式中のLnはTb及びCeのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のMはSc、Lu、Y、及びGdのうち少なくとも一つの元素を表し、式中のx及びzは0<x<1、0<z<1を満たし、かつ、X線回折において、位置が2θ=29°以上30°以下にあらわれる回折ピークの強度が,最も強く現れる回折ピーク強度の1/2以下である蛍光体を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の画像表示装置において,前記蛍光体の組成式における構成元素の比率yが,0<y<0.25であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光体の組成式における構成元素の比率zが,0<z<0.5であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光膜を形成する蛍光体の,粒径重量分布の4分位偏差値(QD)の値が,0.25を越える値であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光体の組成式におけるSiのモル比を,全体のモル比に対し0.8〜1.2の範囲としたことを特徴とする画像評価装置。
【請求項8】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光体が,Si以外の構成元素を同時に含む化合物を,Siを含む化合物と混合し,加熱焼成する事により得られたものである事を特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光体が,全ての構成元素を同時に含む化合物を加熱焼成する事により得られたものである事を特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光膜の膜厚の範囲が,0.5μm以上40μm以下である事を特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光膜が,他の蛍光体の一種類もしくは複数の種類と混在することを特徴とする画像表示装置。
【請求項12】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において,前記蛍光膜に電子線を照射し発光させることを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において、前記画像表示装置は、前記蛍光膜が形成されたフェイスプレート及び前記蛍光膜に画像情報に基づいて電子ビームを照射し発光させる電子源を有する投射型陰極線管と、前記投射型陰極線管から投影される画像を表示するスクリーンとを備えた投射型テレビジョンであることを特徴とする画像表示装置。
【請求項14】
請求項1乃至4いずれか記載の画像表示装置において、前記画像表示装置は、前記蛍光膜が形成された基体と、前記蛍光膜に画像情報に基づいて励起エネルギを照射し発光させる励起手段とを有する平面画像表示パネルを備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項15】
請求項14記載の画像表示装置において、前記蛍光膜に画像情報に基づいて励起エネルギを照射し発光させる励起手段は、前記基体に形成された蛍光膜に対向して電界放出型電子源を備えると共に、前記電界放出型電子源が前記画像情報に基づいて発生する電子線を励起エネルギとして前記蛍光膜に照射し発光させる手段を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項16】
請求項14記載の画像表示装置において、前記蛍光膜に画像情報に基づいて励起エネルギを照射し発光させる励起手段は、ガス放電用電極と放電用希ガスとを含むプラズマ発生手段を備えると共に、前記プラズマ発生手段が前記画像情報に基づいてプラズマ放電を起こすことにより発生する光を前記蛍光膜に照射し発光させる手段を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項17】
蛍光膜が形成されたフェイスプレート及び前記蛍光膜に画像情報に基づいて電子ビームを照射し発光させる電子源を有する赤信号用、緑信号用、青信号用の3本の投射型陰極線管と、前記投射型陰極線管から投影される画像を表示するスクリーンとを備えた投射型カラーテレビジョンであって、前記緑信号用投射型陰極線管のフェイスプレートに形成された蛍光膜は、請求項1乃至3いずれか記載の蛍光膜であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項18】
蛍光膜を有する光源と、液晶パネルとを備えた画像表示装置において、前記蛍光膜が,請求項1乃至3いずれか記載の蛍光膜であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項19】
請求項18記載の画像表示装置において、前記画像表示装置は、前記光源として、赤色発光蛍光体、緑色発光蛍光体及び青色発光蛍光体を含む蛍光膜を有する冷陰極管構造の白色発光蛍光ランプと、前記蛍光ランプをバックライトとする液晶パネルとを備えた画像表示装置であって、前記蛍光膜が,請求項1乃至3いずれか記載の蛍光膜であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項20】
蛍光膜を有する蛍光ランプにおいて、前記蛍光膜が,請求項1乃至3いずれか記載の蛍光膜であることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項21】
請求項19記載の蛍光ランプにおいて、前記蛍光ランプは、赤色発光蛍光体、緑色発光蛍光体及び青色発光蛍光体を含む蛍光膜を有する冷陰極線構造の白色発光蛍光ランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−66045(P2008−66045A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240940(P2006−240940)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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