説明

画像表示装置

【課題】開口率を上げることのできる画像表示装置を提供すること。
【解決手段】基板15と、基板15上に形成され、電流が流れることで発光する有機EL素子4と、閾値電圧以上の電圧が印加されることで、有機EL素子4に流れる電流量を調整する駆動トランジスタTと、駆動トランジスタTに対して印加する前記閾値電圧以上の電圧に応じた電荷が蓄積される保持容量Cと、を備えた画像表示装置であって、保持容量Cは、平面視して有機EL素子4と重なる領域であって、基板15と有機EL素子4との間に設けられ、且つ有機EL素子4の発する光を透過することを特徴とする画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイ装置等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス状に配列された画素中に、発光層に注入された正孔と電子とが再結合することにより発光する有機EL(Electro Luminescence)素子と、アモルファスシリコンや多結晶シリコン等で形成される薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」という)等を含む画素回路とを備えた画像表示装置が提案されている。
【0003】
有機EL素子を用いた画像表示装置は、光透過性を有する基板上に形成された有機EL素子から前記基板を通して下方に光を放つボトムエミッション構造と、基板上に形成された有機EL素子から上方に光を放つトップエミッション構造とに分類できる。なお、ボトムエミッション構造の画像表示装置としては、特許文献1および2等が存在する。
【0004】
【特許文献1】特開2007−081094号公報
【特許文献2】特開2005−011571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボトムエミッション構造は、平面視して画素内において有機EL素子と画素回路とが重なる領域が大きいため、開口率(各画素の発光面積の割合)が小さくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、開口率を上げることのできる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る画像表示装置は、透明素子基板と、前記透明素子基板上に形成され、電流が流れることで発光する発光素子と、閾値電圧以上の電圧が印加されることで、前記発光素子に流れる電流量を調整するドライバ素子と、前記ドライバ素子に対して印加する前記閾値電圧以上の電圧に応じた電荷が蓄積される容量素子と、を備えた画像表示装置であって、前記容量素子は、平面視して前記発光素子と重なる領域であって、前記透明素子基板と前記発光素子との間に設けられ、且つ前記発光素子の発する光を透過することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る画像表示装置は、請求項1に記載の画像表示装置において、前記発光素子は、一対の電極間に電流が流れて発光するとともに、該一対の電極の一方が、前記容量素子の一方の電極であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る画像表示装置は、請求項1に記載の画像表示装置において、前記ドライバ素子は、平面視して前記容量素子と離間して設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る画像表示装置は、請求項1に記載の画像表示装置において、前記容量素子は、第1電極層と第2電極層との間に介在される誘電体層とを備え、前記発光素子の発する光のうち、発光ピーク波長をλとし、前記第1電極層の膜厚をd3、屈折率をn3とし、前記誘電体層の膜厚をd2、屈折率をn2とし、前記第2電極層の膜厚をd1、屈折率をn1とした場合に、λ=d1×n1=d2×n2=d3×n3の関係が成り立つように各層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、開口率を上げることの可能な画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる画像表示装置の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されないものとする。
【0013】
図1は、本実施の形態にかかる画像表示装置の1画素を構成する画素回路および発光素子としての有機EL素子を示す回路図であり、図2は、図1の画素回路および有機EL素子で構成された画像表示装置の1画素を示す透過上面図であり、図3は、図2のA−A矢視断面図である。なお、図2では、透明素子基板としての基板15、絶縁膜16、平坦化膜17、接着膜18、誘電体層7、層間絶縁膜19、有機発光層14、および、上部電極13を省略するとともに、第1電極層5において第2電極層6と重なって見えない部分を点線で描いている。なお、有機EL素子4は、一対の電極と、その電極間に介在される有機発光層14とを備えている。ここで、有機EL素子4の一対の電極のうち、基板15に近い方の電極を下部電極12とし、その上方に位置する電極を上部電極13とする。
【0014】
本画素回路は、n型TFTを用いたコモンカソード・ボトムエミッション構造である。画素回路は、容量素子としての保持容量C、ドライバ素子としての駆動トランジスタT、制御用トランジスタT、電源線1、走査線2、および、画像信号線3を備えて構成されており、本画素回路に有機EL素子4が接続されている。
【0015】
ボトムエミッション構造は、基板上方に乾燥剤を配置できるため、湿度に強いという利点がある一方、平面視して1画素内において有機EL素子4と画素回路とが重なる領域が大きい同一平面状に配置されるため、開口率(各画素の発光面積の割合)が小さくなるという問題がある。そして、開口率が小さいと画像表示装置においては、開口率が大きい画像表示装置と比較した場合、輝度を大きくしようとすると有機EL素子4に流れる電流量を多くしなければならない。その結果、有機発光層が酸化しやすくなり、ひいては有機EL素子4の製品寿命が短くなってしまう。
【0016】
画素の中で有機EL素子4に次いで場所を取るのは保持容量Cである。特に、TFTのチャネル層がアモルファスシリコンの場合、TFTの寄生容量が大きいため、その寄生容量の影響を小さくするために必要とする保持容量Cの面積は大きくなる。図1に示すように、有機EL素子4と保持容量Cとを電気的に直接接続し、有機EL素子4と保持容量Cとを基板上に重ねて配置する。具体的には、有機EL素子4の下部電極12と、保持容量Cの第2電極層6とを同一の層で形成する。さらに、保持容量Cの第1電極層5および誘電体層7を有機EL素子4が発する光が透過する材料から構成することにより、保持容量Cが形成されていた部分から有機EL素子4が発する光を取り出すことができる。これにより、画素の開口率を上げることができる。
【0017】
保持容量Cは、画像信号線3から供給された画像データ電位を保持する容量素子である。なお、画像データ電位とは、有機EL素子4の発光輝度に応じた電位のことであって、保持容量Cに画像データ電位が保持されることで、駆動トランジスタTのゲート電位を大きくし、それに応じた電流が駆動トランジスタTのソース・ドレイン間に流れることで、有機EL素子4を発光させることができる。
【0018】
かかる保持容量Cは、第1電極層5、第2電極層6、および、第1電極層5と第2電極層6の間に介在された誘電体層7を備えた構造を有している。そして、第1電極層5及び第2電極層6は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)又は錫酸化物等の光透過性を有する導電材料を用いて形成される。また、第1電極層5及び第2電極層6は、例えば、マグネシウム、銀、アルミニウム又はカルシウム等の材料、あるいはこれらの合金等を用いることができ、その厚みを30nm以下にすることによって、光透過性の電極とすることができる。また、誘電体層7は、例えば、窒化珪素又は酸化珪素等の光透過性の誘電体を用いることができる。従って、保持容量Cは、光を透過する材料からなるため、有機EL素子4の発する光の少なくとも一部を透過することができる。
【0019】
駆動トランジスタTは、保持容量Cに保持される画像データ電位により、該駆動トランジスタTに電流が流れるオン状態又は電流が流れないオフ状態に切り替えられることにより、有機EL素子4に流れる電流量を制御する。駆動トランジスタTは、ゲート電極8、ソース電極9、および、ドレイン電極10、および、チャネル層11を備えた構造を有している。
【0020】
駆動トランジスタTは、平面視して保持容量Cが設けられている領域と隣接する領域に設けられている。具体的には、有機発光層14と下部電極12とが直接接する領域と重ならない領域に駆動トランジスタTが設けられている。駆動トランジスタTは、ゲート電極8、ソース電極9及びドレイン電極10等の光を反射する金属材料から成り、有機EL素子4が発する光が照射することがある。また、駆動トランジスタTは、光が照射されることで、駆動トランジスタTの電気的特性に変化が生じることがある。そのため、有機EL素子4の発光領域の直下には、駆動トランジスタTが配設されない。なお、発光領域とは、有機発光層14の下面と下部電極12の上面とが直接接する領域のことであって、有機発光層14が下部電極12及び上部電極13から電圧を印加されることで、発光する領域のことをいう。
【0021】
制御用トランジスタTは、走査線2の電位に応じて保持容量Cと画像信号線3との電気的接続を制御するスイッチングトランジスタである。制御用トランジスタTは、走査線2の電位に応じて、該制御用トランジスタTがオン状態又はオフ状態に切り替えられる。そして、制御用トランジスタTがオン状態において、画像信号線3から供給される画像データ電位が保持容量Cに供給される。
【0022】
電源線1は、駆動トランジスタTに所定電圧を供給する。そして、駆動トランジスタTがオン状態のとき、有機EL素子4の両電極間に所定電圧に応じた電圧差が生じ、有機EL素子4に電流が流れ、該有機EL素子4が発光する。走査線2は、制御用トランジスタTをオン状態又はオフ状態に制御するための電位としての制御信号を供給する。画像信号線3は、有機EL素子4の発光輝度に対応する画像データ電位としての画像信号を保持容量Cに供給する。
【0023】
有機EL素子4は、アノードとしての下部電極12、カソードとしての上部電極13、および、下部電極12と上部電極13の間に介在され、有機発光材料からなる有機発光層14を少なくとも備えた構造を有している。本画素回路では、有機EL素子4の下部電極12を電源線1側に、上部電極13をグラウンド側にそれぞれ接続している。
【0024】
ここで、本実施の形態では、画素回路上で、有機EL素子4と保持容量Cとを直接接続するとともに、両者を平面視して重ね合わせる。そして、有機EL素子4の一対の電極のうち、一方の下部電極12と、保持容量Cの第2電極5とを、共通の電極とし、構造上は同一の層となる。
【0025】
下部電極12の材料としては、第2電極層6と同一の層とすることができるため、第2電極層6と同一材料からなる。また、上部電極13の材料としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム又は銀等の金属、あるいはこれらの合金等の材料から成る。なお、上部電極層14の厚みは、例えば50nm以上500nm以下に設定されている。
【0026】
また、有機発光層14の材料としては、例えば、Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体)等の発光性の材料で構成される。発光効率を高めるために、トリス[ピリジニル−kN−フェニル−kC]イリジウム等の有機金属化合物又クマリン等の色素をドーパント材料として、正孔輸送性又は電子輸送性を有するホスト材料にドープして有機発光層を構成してもよい。有機発光層を構成するドーパント材料の濃度は、例えば、0.5質量%以上20質量%以下とする。正孔輸送性を有するホスト材料の例としては、α−NPD、TPD等がある。電子輸送性を有するホスト材料の例としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,4−フェニレンビス(トリフェニルシラン)、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリ(9H−カルバゾール−9−イル)ベンゼン、CBP、Alq3又はSDPVBi等がある。なお、有機発光層の各層を構成する材料は、発する光の色に応じて、適当な材料が選択される。赤色の光を発するドーパント材料の例としては、トリス(1−フェニルイソキノリナト−C2,N)イリジウム又はDCJTB等がある。緑色の光を発するドーパント材料の例としては、トリス[ピリジニル−kN−フェニル−kC]イリジウム又はビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)等がある。青色の光を発するドーパント材料の例としては、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体又はアゾメチン亜鉛錯体等がある。有機発光層は、1層構造に限られることはなく、複数層構造であってもよい。このような有機EL素子4は、有機発光層14に注入された正孔と電子とが再結合することによって光を生じる機能を有する。
【0027】
さらに、画像表示装置はその構造上、基板15、絶縁膜16、平坦化膜17、接着膜18、および、層間絶縁膜19を備えている。基板15は、例えば、ガラスやプラスチック等の光を透過する材料からなる。また、基板15上に、駆動トランジスタTのゲート電極8に対して、ソース電極9及びドレイン電極10を絶縁するための絶縁膜16が形成されている。絶縁膜16は、例えば、窒化珪素、酸化珪素又は酸化窒化珪素等の光を透過する絶縁材料からなる。
【0028】
絶縁膜16上には、駆動トランジスタTに起因する表面の凹凸を低減するために、平坦化膜17が形成されている。駆動トランジスタTは、複数のゲート電極8等の複数の電気配線がパターニングされているため、その表面には凹凸が形成される。有機EL素子4を凹凸な表面上に形成すると、有機EL素子4を構成する電極層同士が短絡し、有機EL素子4が発光しないことがある。そのため、絶縁膜16及び駆動トランジスタT上には、平坦化膜17が形成される。かかる平坦化膜17は、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂又はシリコン樹脂等の光を透過する絶縁性を有する有機材料を用いることができる。なお、平坦化膜17の厚みは、例えば2μm以上5μm以下に設定されている。
【0029】
また、接着膜18は、平坦化膜17と層間絶縁膜19との間に形成されている。接着膜18は、平坦化膜17と層間絶縁膜19との両者の接着性を良好にすることができる。かかる接着膜18は、誘電体層7と同一の材料からなる。
【0030】
また、層間絶縁膜19は、有機EL素子4の発光する領域を取り囲むように、下部電極12及び接着膜18上に形成されている。かかる層間絶縁膜19は、下部電極12と上部電極13とが短絡するのを防止している。なお、層間絶縁膜19は、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の有機絶縁材料、あるいは窒化珪素、酸化珪素又は酸化窒化珪素等の無機絶縁材料から成る。層間絶縁膜19の厚みは、例えば0.5μm以上2μm以下に設定されている。
【0031】
上述したように構成された画素回路の駆動について説明する。まず、走査線2を高電位にして制御用トランジスタTをオン状態として導通させる。そして、画像信号線3を介して保持容量Cに適切な画像データ電位を保持し、駆動トランジスタTをオン状態に設定する。その後、走査線2を低電位にして制御用トランジスタTをオフ状態として非導通にする。その結果、保持容量Cに保持された画像データ電位によって、駆動トランジスタTをオン状態に維持することができる。
【0032】
そして、有機EL素子4の発光について説明する。駆動トランジスタTがオン状態に維持されているときに、電源線1をグラウンドに対して高電位にする。このとき、駆動トランジスタTに流れる電流は保持容量Cに保持された画像データ電位に応じて制御されている。そのため、電源線1がグラウンドよりも高電位であるため、電源線1からグラウンドに向かって電流が流れ、有機EL素子4の有機発光層14が発光する。
【0033】
そして、有機発光層14より下側に形成された第2電極層6、誘電体層7、第1電極層5、平坦化膜17、絶縁膜16、および、基板15が光を透過させるため、有機発光層14が発光した光は基板15から外部に向かって放射される。この時、有機EL素子4と重なる保持容量C形成部は開口部となるので、画素の開口率を効果的に大きくすることができる。本実施形態によれば、画素内において、平面視して保持容量Cと重なる領域にまで有機EL素子4を配設することができ、発光面積を大きくすることができる。しいては、画素の開口率を大きくすることができ、有機EL素子4の発する光を外部に取り出しやすくする外部取出効率を向上させることができる。
【0034】
(画像表示装置の製造方法)
次に、図1〜図3に示される構成を有する画像表示装置の製造方法について説明する。図4−1〜図4−18は、本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【0035】
最初に、基板15上に、ゲート層20を成膜する(図4−1)。ここで、基板15の材料としては、例えば、ガラスが用いられ、その厚さは、本例では、0.7mmである。また、ゲート層20の材料としては、例えば、アルミニウム合金又はモリブデン合金が用いられ、その厚さは、本例では、300nmである。その後、レジストの塗布、露光、現像、ゲート層20のエッチング、レジストの剥離を順番に行うことにより、ゲート層20を所定の形状にパターニングする(図4−2)。なお、図4−2では、ゲート層20から走査線2および駆動トランジスタTのゲート電極8が形成される。
【0036】
次に、絶縁膜16を成膜し、さらに、a−Si(アモルファスシリコン)層21を成膜する(図4−3)。ここで、絶縁膜16の材料としては、例えば、窒化珪素が用いられ、その厚さは、本例では、350nmである。また、アモルファスシリコンの厚さは、本例では、100nmである。次に、レジストの塗布、露光、現像、a−Si層21のエッチング、レジストの剥離を順番に行うことにより、a−Si層21を所定の形状にパターニングする(図4−4)。なお、図4−4では、a−Si層21から駆動トランジスタTのチャネル層11が形成される。
【0037】
次に、ソース・ドレイン層22を成膜する(図4−5)。ここで、ソース・ドレイン層22の材料としては、例えば、アルミニウムが用いられ、その厚さは、本例では、300nmである。その後、レジストの塗布、露光、現像、ソース・ドレイン層22のエッチング、レジストの剥離を順番に行うことにより、ソース・ドレイン層22を所定の形状にパターニングする(図4−6)。なお、図4−6では、ソース・ドレイン層22から駆動トランジスタTのソース電極9およびドレイン電極10が形成される。
【0038】
次に、平坦化膜17を塗布する(図4−7)。ここで、平坦化膜17の材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂又はノボラック樹脂が用いられ、その厚さは、本例では、3μmである。その後、露光、現像、硬化を順番に行うことにより、駆動トランジスタTのドレイン電極10の上部が露出した平坦化膜17を形成する(図4−8)。
【0039】
次に、第1電極層5を成膜する(図4−9)。ここで、第1電極層5の材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)が用いられ、その厚さは、本例では、450nmである。その後、レジストの塗布、露光、現像、第1電極層5のエッチング、レジストの剥離を順番に行うことにより、第1電極層5を所定の形状にパターニングする(図4−10)。
【0040】
次に、接着膜18を成膜する(図4−11)。ここで、接着膜18の材料としては、例えば、窒化珪素が用いられ、その厚さは、本例では、450nmである。その後、レジストの塗布、露光、現像、接着膜18のエッチング、レジストの剥離を順番に行うことにより、接着膜18を所定の形状にパターニングする(図4−12)。
【0041】
次に、第2電極層6を成膜する(図4−13)。ここで、第2電極層6の材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)が用いられ、その厚さは、本例では、50nmである。その後、レジストの塗布、露光、現像、第2電極層6のエッチング、レジストの剥離を順番に行うことにより、第2電極層6を所定の形状にパターニングする(図4−14)。なお、前述した様に、第2電極層6は、下部電極12の役割も有する。さらに、第2電極層6と第1電極層5の間に配置された接着膜18は、誘電体層7の役割を有する。
【0042】
次に、層間絶縁膜19を塗布する(図4−15)。ここで、層間絶縁膜19の材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂又はノボラック樹脂が用いられ、その厚さは、本例では、1μmである。その後、露光、現像、硬化を順番に行うことにより、第2電極層6の上部が露出した層間絶縁膜19を形成する(図4−16)。
【0043】
次に、有機発光層14を成膜する(図4−17)。ここで、有機発光層14の材料としては、例えば、Alq3が用いられ、その厚さは、本例では、0.5nmである。最後に、上部電極13を成膜する(図4−18)。ここで、上部電極13の材料としては、例えば、カルシウム又はマグネシウムが用いられ、その厚さは、本例では、100nmである。以上の工程を経て、図1〜図3に示される構成を有する画像表示装置が完成する。
【0044】
(変形例1)
本発明は、有機EL素子4と保持容量Cとが直接接続されているボトムエミッション構造であれば適用することが可能である。図5は、本実施の形態にかかる画像表示装置の1画素を構成する画素回路および有機EL素子4の第1の変形例を示す回路図である。本画素回路は、図1の画素回路と比べて、制御用トランジスタT、閾値電圧検出用トランジスタTth、制御用トランジスタTを制御するための制御信号を供給するT制御線23、および、閾値電圧検出用トランジスタTthを制御するための制御信号を供給するTth制御線24をさらに備える。また、有機EL素子4の下部電極12がグラウンド側に、上部電極13が電源線1側に接続されている点が異なっている。
【0045】
本例でも同様に、有機EL素子4の下部電極12と、保持容量Cの第2電極層6とを光を透過する同一の層で形成し、さらに、保持容量Cの第1電極層5および誘電体層7を光を透過する材料から構成することによって、画素の開口率を大きくすることができる。
【0046】
(変形例2)
また、本実施の形態にかかる画像表示装置において、保持容量Cの第2電極層6、誘電体層7、および、第1電極層5の各光路長(膜厚dと屈折率nとの積)を、所望の波長の整数倍にすることで、有機EL素子4が発光する光のうち特定の波長を強めることができる。つまり、第1電極層5と第2電極層6との間に、有機EL素子4が発する光が共振する定在波が発生するように、保持容量Cを構成する各層の厚みを調整する。図6は、本実施の形態にかかる画像表示装置の1画素を構成する画素回路および有機EL素子4の第2の変形例を示す断面図である。図のように、第2電極層6の膜厚をd1、屈折率をn1とし、誘電体層7の膜厚をd2、屈折率をn2とし、第1電極層5の膜厚をd3、屈折率をn3とする。そして、有機EL素子が発光する光で強めたい波長(光強度が最大となる波長)である発光ピーク波長をλとすると、λ=d1×n1=d2×n2=d3×n3の関係が成り立つように各層を形成することにより、発光ピーク波長λの光を強めることができる(発光スペクトルを細くすることができる)。なお、λ=d1×n1=d2×n2=d3×n3の関係が成り立つとは、0.9≦(d1×n1)/λ≦1.1、0.9≦(d2×n2)/λ≦1.1、0.9≦(d3×n3)/λ≦1.1の関係式を満たす場合も該当する。
【0047】
本実施形態によれば、有機EL素子4の直下に保持容量Cを設けるとともに、両者の間で電極層を共通に使用する。さらに、有機EL素子4と保持容量Cの各層の厚みを調整することによって、有機EL素子4と保持容量Cにて、それぞれ定在波を発生させることができる。その結果、有機EL素子4が発光する強まった光を保持容量Cを介して、外部に効率良く取り出すことができる。
【0048】
(変形例3)
また、本実施の形態にかかる画像表示装置において、第1電極層5を有機EL素子4が発光する光の発光ピーク波長よりはるかに薄くし、さらに、誘電体層7および第2電極層6の各膜厚dを、所望の波長の整数倍にすることで、有機EL素子4が発光する光のうち特定の波長を強めることができる。なお、第1電極層5は、例えば、マグネシウム、銀、アルミニウム又はカルシウム等の材料を用いる。さらに、第1電極層5の厚みを100nm以下にすることによって、光透過性の電極とすることができる。
【0049】
図7は、本実施の形態にかかる画像表示装置の1画素を構成する画素回路および有機EL素子の第3の変形例を示す断面図である。図のように、第2電極層6の膜厚をd1、屈折率をn1とし、誘電体層7の膜厚をd2、屈折率をn2とし、第1電極層5の膜厚を発光ピーク波長λよりはるかに薄いd3とする。そして、λ=d1×n1=d2×n2の関係がほぼ成り立つように各層を形成することにより、発光ピーク波長λの光を強めることができる。
【0050】
さらに、第1電極層5、第2電極層6及び誘電体層7の厚みを調整する。つまり、第1電極層5と第2電極層6との間にて有機EL素子4の発する光を強める構造とする。そして、第1電極層5の直下に、外光を吸収する光吸収層25を設ける。光吸収層25は、外部から有機ELディスプレイ内に入射する外光を吸収する機能を備えている。また、光吸収層25は、外光を吸収するとともに、有機EL素子4が発する光は外部に効率良く取り出すことができる。
【0051】
光吸収層25は、エネルギーギャップ(HOMO−LUMO)が1eV以下の材料から成り、例えばポルフィリン類及びフラーレン類の混合物、ポルフィリン環及びフラーレン基を同一分子内に有する化合物類、シアニン系ポリメチン色素、又はスチリル系ポリメチン色素等の材料から成る。また、光吸収層25は、有機EL素子4の発する光のうち、定在波が外部に出射されるように、定在波の節となる位置に該当する第1電極層5の直下に配置されている。そのため、光吸収層25の厚みは、5nm以上25nm以下に設定されている。光吸収層25の厚みを5nm以上とすることで、外光又は定在波の波長と異なる光を十分に吸収することができる。また、光吸収層25の厚みを25nm以下にすることで、必要以上に有機EL素子4の発する光を吸収することがなく、有機ELディスプレイ1の輝度が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施の形態にかかる画像表示装置の1画素を構成する画素回路および有機EL素子を示す回路図である。
【図2】図1の画素回路および有機EL素子で構成された画像表示装置の1画素の上面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4−1】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−2】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−3】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−4】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−5】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−6】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−7】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−8】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−9】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−10】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−11】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−12】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−13】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−14】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−15】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−16】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−17】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図4−18】本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【図5】本実施の形態にかかる画像表示装置の1画素を構成する画素回路および有機EL素子の第1の変形例を示す回路図である。
【図6】本実施の形態にかかる画像表示装置の1画素を構成する画素回路および有機EL素子の第2の変形例を示す断面図である。
【図7】本実施の形態にかかる画像表示装置の1画素を構成する画素回路および有機EL素子の第3の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 電源線
2 走査線
3 画像信号線
4 有機EL素子
5 第1電極層
6 第2電極層
7 誘電体層
8 ゲート電極
9 ソース電極
10 ドレイン電極
11 チャネル層
12 下部電極
13 上部電極
14 有機発光層
15 基板
16 絶縁膜
17 平坦化膜
18 接着膜
19 層間絶縁膜
20 ゲート層
21 a−Si層
22 ソース・ドレイン層
23 T制御線
24 Tth制御線
25 光吸収層
保持容量
駆動トランジスタ
制御用トランジスタ
制御用トランジスタ
th 閾値電圧検出用トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明素子基板と、
前記透明素子基板上に形成され、電流が流れることで発光する発光素子と、
閾値電圧以上の電圧が印加されることで、前記発光素子に流れる電流量を調整するドライバ素子と、
前記ドライバ素子に対して印加する前記閾値電圧以上の電圧に応じた電荷が蓄積される容量素子と、を備えた画像表示装置であって、
前記容量素子は、平面視して前記発光素子と重なる領域であって、前記透明素子基板と前記発光素子との間に設けられ、且つ前記発光素子の発する光を透過することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記発光素子は、一対の電極間に電流が流れて発光するとともに、該一対の電極の一方が、前記容量素子の一方の電極であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記ドライバ素子は、平面視して前記容量素子と離間して設けられていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記容量素子は、第1電極層と第2電極層との間に介在される誘電体層とを備え、
前記発光素子の発する光のうち、発光ピーク波長をλとし、前記第1電極層の膜厚をd3、屈折率をn3とし、前記誘電体層の膜厚をd2、屈折率をn2とし、前記第2電極層の膜厚をd1、屈折率をn1とした場合に、λ=d1×n1=d2×n2=d3×n3の関係が成り立つように各層を形成することを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図4−5】
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【図4−6】
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【図4−7】
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【図4−8】
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【図4−9】
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【図4−10】
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【図4−11】
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【図4−12】
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【図4−13】
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【図4−14】
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【図4−15】
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【図4−16】
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【図4−17】
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【図4−18】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−152221(P2010−152221A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332275(P2008−332275)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】