説明

画像表示装置

【課題】タッピングによる入力段における誤検出を低減するプロジェクター装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置は、ユーザーにより入力される振動に応じた信号を出力する振動センサーと、自装置内の温度を検出する温度センサーと、前記温度センサーが検出した温度に応じて冷却ファンの回転数を設定するファン制御部と、前記ファン制御部により設定される前記冷却ファンの回転数に応じた信号を除去するフィルタリング処理を前記振動センサーが出力する信号に対して行い、前記フィルタリング処理された信号より外部から入力された振動を示す振動情報を検出する振動検出部と、前記振動検出部が検出した前記振動情報に応じた処理を実行する制御部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を与えることで操作できる画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター装置の起動、停止、機能調整などの操作は、通常、ユーザーがプロジェクター装置に備えられたボタンスイッチや、リモコンのボタンスイッチなどを用いて行うか、あるいは、スクリーンに投射されるメニュー画面を見ながらプロジェクター装置又はリモコンのボタンスイッチを用いて行う。このような、プロジェクター装置に備えられたボタンスイッチや、リモコンのボタンスイッチは、ユーザーインターフェースと広く認知され用いられており、近年のプロジェクター装置の多機能化に伴い、プロジェクター装置及びリモコンのボタンスイッチの数が増加する傾向にある。
【0003】
また、プロジェクター装置の多機能化に伴い、スクリーンに投影されたメニュー画面を見ながら操作をする場合、ユーザーは、プロジェクター装置の機能をグループごとに分けた階層構造として表示されるメニュー画面を選択して、所望の機能を選択する。そのため、ユーザーが所望の機能を選択するまでに複数の操作を行う必要があるので、所望の機能を選択するまでに時間を要することが多く、また、その操作が煩雑であるため、ユーザーの利便性を低下させる要因の1つとなっている。
【0004】
上述の問題に対して、煩雑さを解決するボタンスイッチ以外の入力手段として、加速度センサーや慣性センサーなどを用いて、装置を軽く叩く(タッピング)ことにより入力を行う技術がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−317031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のタッピングによる入力手段をプロジェクター装置に用いた場合、プロジェクター装置が備える冷却ファンによる振動をタッピングとして誤って入力を検出してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、タッピングによる入力手段における誤検出を低減するプロジェクター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記問題を解決するために、本発明は、ユーザーにより入力される振動に応じた信号を出力する振動センサーと、自装置内の温度を検出する温度センサーと、前記温度センサーが検出した温度に応じて冷却ファンの回転数を設定するファン制御部と、前記ファン制御部により設定される前記冷却ファンの回転数に応じた信号を除去するフィルタリング処理を前記振動センサーが出力する信号に対して行い、前記フィルタリング処理された信号より外部から入力された振動を示す振動情報を検出する振動検出部と、前記振動検出部が検出した前記振動情報に応じた処理を実行する制御部とを具備することを特徴とする画像表示装置である。
これにより、ユーザーが画像表示装置に振動を入力する動作の検出において、冷却ファンの回転により生じる振動に起因する振動をタッピングとして誤検出することを低減することができる。
【0009】
(2)また、本発明は、上記記載の発明において、外部から入力される画像情報に基づく画像を表示する画像表示部を具備し、前記制御部は、前記振動検出部が検出した前記振動情報に応じて、前記画像情報に基づく画像を前記画像表示部に表示させるか否かの処理を選択することを特徴とする。
これにより、振動情報により画像表示装置に画像を表示させるか否かを選択でき、振動情報を不正利用防止のパスワードとすることにより、不正利用を防ぐことができる。
【0010】
(3)また、本発明は、上記記載の発明において、前記振動情報に対応付けて前記画像表示部が行う前記表示処理を記憶する記憶部を備え、前記制御部は、前記振動検出部が検出した前記振動情報に対応する前記表示処理を読み出して、読み出した前記表示処理を選択し、前記画像表示部に実行させることを特徴とする。
これにより、複数の表示処理と振動情報とを対応付けて記憶部に記憶させることにより、振動を画像表示装置に入力する動作に応じて複数の表示処理からユーザーが所望の表示処理を選択することができる。
【0011】
(4)また、本発明は、上記記載の発明において、前記画像表示装置は、前記画像情報に基づく画像をスクリーンに投射するプロジェクター装置であることを特徴とする。
これにより、振動をプロジェクター装置に入力する動作によりプロジェクター装置を操作することができる。
【0012】
この発明によれば、タッピングによる入力の誤検出を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態におけるプロジェクター装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本実施形態におけるプロジェクター装置の構成の一例を示す概略図である。
【図3】本実施形態におけるプロジェクター装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施するための形態を図面を参照して説明する。ここでは、画像表示装置の一例として、プロジェクター装置を用いて説明をする。
図1は、本実施形態におけるプロジェクター装置100の構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように、プロジェクター装置100は、タッピング入力部10と、キー入力部20と、制御部30と、画像表示部40と、冷却部50と、記憶部60とを具備する。タッピング入力部10は、ジャイロセンサー11(振動センサー)と、振動検出部12とを備える。冷却部50は、ファン制御部51と、温度センサー52と、冷却ファン53とを備える。
【0015】
ジャイロセンサー11は、角速度センサーであり、検出した振動に応じた信号を出力するセンサーである。また、ジャイロセンサー11は、ユーザーによりプロジェクター装置100を軽く叩いて振動を与える(タッピング)ことによりプロジェクター装置100に入力された振動に応じた信号を出力する。
【0016】
振動検出部12は、冷却ファン53が発生する振動による信号をジャイロセンサー11が出力した信号から除去するローパスフィルター12Aを有し、冷却ファン53の回転数に応じてローパスフィルター12Aが除去する周波数帯域を変化させる。また、振動検出部12は、ローパスフィルター12Aにより高周波帯域の信号を除去するフィルタリング処理を行い、高周波帯域の信号を除去した信号からユーザーにより入力された振動の回数を検出し、検出した振動の回数を振動情報として制御部30に出力する。
【0017】
ここで、振動検出部12は、高周波帯域の信号を除去した信号の振幅、すなわち、入力された振動の大きさ、が予め定めた閾値を超えた回数を振動の回数として検出する。
また、振動検出部12が有するローパスフィルター12Aにより除去される高周波帯域の範囲は、プロジェクター装置100の構成や、冷却ファン53のモーターの大きさ及びファンの大きさなどにより異なるため、シミュレーションや、実機による測定結果などに基づいて定められる。また、振動の回数を検出するための閾値も、同様に、シミュレーションや、実機による測定の結果に基づいて定められる。更に、ローパスフィルター12Aは、冷却ファン53の回転数に応じて、複数の除去する高周波数帯域から1つを選択する構成を有している。
【0018】
キー入力部20には、プロジェクター装置100に備えられたボタンスイッチをユーザーが操作することによる操作情報、例えば、電源の供給を開始してプロジェクター装置100を起動するなどの情報が入力される。
画像表示部40は、外部から入力される画像情報に基づく画像を表示する。記憶部60には、画像表示部40が行う画像表示の処理と、振動検出部12が出力する振動情報とが対応付けてられて予め記憶されている。
【0019】
制御部30は、キー入力部20に入力された操作情報に応じて、プロジェクター装置100の動作、例えば、外部より入力される画像情報を画像表示部40に出力して画像情報に基づく画像を表示するなどの制御を行う。また、制御部30は、キー入力部20に入力される操作情報に応じて、プロジェクター装置100の他の機能部、タッピング入力部10、キー入力部20、…、記憶部60に電源を供給して起動すると共に、冷却部50に冷却を開始する、すなわち、冷却ファン53を駆動させる制御を行う。
【0020】
また、制御部30は、振動検出部12が出力する振動情報(振動回数)に対応付けられた画像表示部40が行う表示処理を記憶部60から読み出して、読み出した表示処理を行う。ここで、画像表示部40が行う表示処理は、例えば、表示する画像の明るさの変更や、コントラストの変更などの画像調整、表示する画像を一時停止するフリーズ機能、画像の表示を停止して画像情報以外の黒い画像を表示するミュート機能などである。
【0021】
ファン制御部51は、制御部30から駆動の指示が入力されると、冷却ファン53を駆動する制御を行う。また、ファン制御部51は、温度センサー52が検出するプロジェクター装置100内の温度に応じて冷却ファン53の回転数(回転速度)を設定し、冷却ファン53によりプロジェクター装置100内の空気を外部に排出させる量を制御して、プロジェクター装置100内の温度を予め定めた温度以下に保つ制御を行う。例えば、ファン制御部51は、プロジェクター装置100内の温度が高い場合、冷却ファン53の回転数を高くし、プロジェクター装置100内の温度が低い場合、冷却ファン53の回転数を低くする。
【0022】
次に、図2は、本実施形態におけるプロジェクター装置100の構成の一例を示す概略図である。図2に示すように、ジャイロセンサー11は、プロジェクター装置100の内部に備えられ、ユーザーによりプロジェクター装置100に入力される振動、例えば、ユーザーによりプロジェクター装置100の筐体を「トントン」と叩く振動を検出する。
【0023】
なお、ジャイロセンサー11が配置される位置は、外部から入力された振動を検出しやすい位置、例えば、プロジェクター装置100の筐体を支える足が取り付けられる四隅のいずれかである。また、ユーザーが天面を叩くことが予想できる場合、プロジェクター装置100の天面に備えてもよい。
【0024】
続いて、図3は、本実施形態におけるプロジェクター装置100の動作を示すフローチャートである。
プロジェクター装置100は、ユーザーの操作によりキー入力部20にプロジェクター装置100を起動する操作情報が入力されると、制御部30がキー入力部20に入力された操作情報に応じて、タッピング入力部10、キー入力部20、…、記憶部60に電源を供給して起動すると共に、制御部30が、タッピング入力部10から振動情報を待つ(ステップS11)。
【0025】
タッピング入力部10の振動検出部12は、ジャイロセンサー11が出力する信号から冷却ファン53の回転数に応じた高周波帯域の信号を除去するフィルタリング処理をして、ユーザーによりプロジェクター装置100に振動が入力されたか否かを判定する(ステップS12)。
【0026】
振動を検出しない場合(ステップS12:No)、制御部30は、タッピング入力部10から振動情報が出力されるのを待つ(ステップS11に戻る)。
振動を検出した場合(ステップS12:Yes)、振動検出部12は、ジャイロセンサー11が出力した信号に応じて、プロジェクター装置100に入力された振動の回数を振動情報として、制御部30に出力する。制御部30は、振動検出部12が出力した振動情報の振動回数に対応付けられた画像表示部40の表示処理を記憶部60から読み出して、読み出した表示処理を示す情報を画像表示部40に出力し、画像表示部40に読み出した表示処理(A処理、B処理、…、N処理のうちいずれか1つの処理)を行わせる制御を行う(ステップS14−1、S14−2、…、S14−N)。
【0027】
ここで、A処理、B処理、…、N処理は、例えば、表示する画像の明るさの変更や、コントラストの変更などの画像調整、表示する画像を一時停止するフリーズ機能、画像の表示を停止するミュート機能などである。
【0028】
上述の動作により、プロジェクター装置100は、ジャイロセンサー11が振動に応じて出力する信号に対して、冷却ファン53に起因する振動の信号を除去するフィルタリング処理をしてユーザーにより入力された振動を振動検出部12により検出することで、ユーザーのタッピングによる入力の検出精度を向上させることができる。また、振動検出部12が行うフィルタリング処理は、プロジェクター装置100の内部の温度により変化する冷却ファン53の回転数に応じて、除去する高周波帯域の信号を設定することにより、振動の誤検出を防ぎ、タッピングによる入力検出の精度を向上させることができる。
【0029】
また、プロジェクター装置100は、ユーザーがプロジェクター装置100の筐体を軽く叩く(タッピング)により、スイッチボタンなどを介してキー入力部20から操作情報を入力せずともプロジェクター装置100の操作を行うことができる。これにより、ユーザーが頻繁に使用する画像表示部40の表示処理と、振動情報の振動回数(タッピング回数)とを対応付けて予め記憶させておくことにより、煩雑なボタンスイッチ操作を行わずとも、プロジェクター装置100の操作を行うことができ、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0030】
また、画像表示部40が、外部から入力される画像情報に基づいた画像の表示を開始するために、ユーザーがプロジェクター装置100に振動を入力する操作(タッピング)を必ず必要とすることで、タッピングをプロジェクター装置100の使用を開始するパスワードロックを解除するパスワードとして利用することができる。このように、タッピングによる振動情報をパスワードとして扱うことにより、プロジェクター装置100を外部から見ただけではパスワード入力がタッピングであることが容易に想像できないため、プロジェクター装置100を利用する権限のないユーザーが不正に利用することを防ぐことが可能となる。
【0031】
なお、振動検出部12は、ジャイロセンサー11が出力する信号より振動回数を検出するとして説明したが、振動回数と共に、検出した振動それぞれの間の時間間隔を含む振動情報を出力するようにしてもよい。例えば、「トン、トン、トン」と「トン、ト、トン」とのように、振動の間隔が異なる入力を異なる振動情報として扱う。
その場合、記憶部60には、検出した振動それぞれの間の時間間隔と、振動回数とを含む振動情報と、画像表示部40が行う画像表示の表示処理とが対応付けて記憶される。制御部30は、上述の時間間隔と振動回数を含む振動情報に対応付けられた画像表示部40が行う画像表示の表示処理を記憶部60から読み出して、画像表示部40を制御する。更に、振動情報が検出した振動それぞれの間の時間間隔を含むことにより、振動情報のパスワードとしてのセキュリティ機能は更に向上し、プロジェクター装置100を利用する権限のないユーザーによる不正利用をより防ぐことが可能となる。
【0032】
なお、記憶部60には、画像表示部40が行う画像表示の表示処理と、振動検出部12が出力する振動情報とが対応付けてられて予め記憶されているとしたが、ユーザーが画像表示部40の行う画像表示の表示処理と、振動情報との対応付けを行ってもよい。その場合、ユーザーの操作によりキー入力部20から対応付けの登録を行う旨の操作情報が入力され、制御部30が、キー入力部20から入力された操作情報により、振動検出部12が出力する振動情報と、画像表示部40の行う画像表示の表示処理とを対応付けて記憶部60に書き込んで記憶する。
【0033】
なお、本実施形態のプロジェクター装置100として、例えば、光源が放射した白色光を、3原色成分である赤色光、青色光、緑色光に分離し、各色光ごとに各色光用の液晶ライトバルブ(光変調素子)に従って、画像データに応じた変調光に変調し、再合成したフルカラーの変調光を投映レンズを介してスクリーンに拡大投写する、いわゆる液晶3板式プロジェクター等が利用可能である。
また、プロジェクター装置100は、液晶プロジェクターには限定されず、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)を用いたプロジェクター等であってもよい。
【0034】
なお、画像表示装置は、プロジェクターに限られず、例えば、液晶画面を有するディスプレイ装置や通信端末等であってもよい。
また、プロジェクター装置100のキー入力部20は、プロジェクター装置100に設けられるボタンスイッチを例に説明したが、本発明はこれに限られず、例えば、リモコン等から操作情報を受信し、遠隔操作がなされる構成であってもよい。
また、ジャイロセンサー11は、角速度センサー以外にも、検出した振動に応じた信号を出力するセンサーを用いてもよい。
【符号の説明】
【0035】
100…プロジェクター装置、10…タッピング入力部、11…ジャイロセンサー
12…振動検出部、20…キー入力部、30…制御部、40…画像表示部
50…冷却部、51…ファン制御部、52…温度センサー
53…冷却ファン、60…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーにより入力される振動に応じた信号を出力する振動センサーと、
自装置内の温度を検出する温度センサーと、
前記温度センサーが検出した温度に応じて冷却ファンの回転数を設定するファン制御部と、
前記ファン制御部により設定される前記冷却ファンの回転数に応じた信号を除去するフィルタリング処理を前記振動センサーが出力する信号に対して行い、前記フィルタリング処理された信号より外部から入力された振動を示す振動情報を検出する振動検出部と、
前記振動検出部が検出した前記振動情報に応じた処理を実行する制御部と
を具備する
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
外部から入力される画像情報に基づく画像を表示する画像表示部を具備し、
前記制御部は、
前記振動検出部が検出した前記振動情報に応じて、前記画像情報に基づく画像を前記画像表示部に表示させるか否かの処理を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記振動情報に対応付けて前記画像表示部が行う前記表示処理を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記振動検出部が検出した前記振動情報に対応する前記表示処理を読み出して、読み出した前記表示処理を選択し、前記画像表示部に実行させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記画像表示装置は、
前記画像情報に基づく画像をスクリーンに投射するプロジェクター装置である
ことを特徴とする請求項1から請求項3に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−197704(P2010−197704A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42298(P2009−42298)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】