説明

画像表示装置

【課題】蛍光体粒子を用いた画像表示装置において、明るく、コントラストが高い画像を表示可能とする。
【解決手段】画像表示装置100は、透光性を有する前面板101の内面側に複数の画素102が配置されて構成されている。各画素は、蛍光体粒子105が、該蛍光体粒子と同じ屈折率を有する背景媒質106中に分散した発光層104と、蛍光体粒子を励起して発光させる励起源103と、前面板と発光層との間に配置され、該前面板の内面に沿う方向に周期的な屈折率分布を有する屈折率分布構造107とにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各画素に含まれる蛍光体粒子を励起して発光させることにより画像を表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような画像表示装置として、図10に示す画素構造を有するものが知られている。図10には、1つの画素1002を示しており、このような画素構造を複数配列することで、画像表示装置1000が構成される。
前面板1001の内面側(背面側)に画素1002が設けられている。前面板1001は、可視光を透過させる透光性を有し、ガラスやプラスチック等で形成されている。
画素1002は、蛍光体粒子1005を含む発光層1003と、蛍光体粒子1005を励起するための励起源1004とで構成されている。発光層1003は、所定の真空度の領域1006内に蛍光体粒子1005を配置することで形成されている。蛍光体粒子1005の周囲に配置される媒質を背景媒質という。蛍光体粒子1005は、背景媒質中に分散している。
励起源1004は、基板上に電子放出素子と電極とを配列し、発光層1003の裏面に電極を設けることで構成される。電子放出素子に電界を加えることで、発光層1003に向けて電子が放出され、蛍光体粒子1005に電子が供給されて該蛍光体粒子1005が励起される。また、励起源1004の別の構成として、基板上に電極を配置し、発光層の前面あるいは背面にセルと電極を配列することで構成される。セルには、電流が流されることによってプラズマを発生し、紫外線を発生するガスが封入されている。セルに含まれるガスに電流を流すと、紫外線が発生して蛍光体粒子に照射される。これにより、蛍光体粒子が励起される。
蛍光体粒子1005が励起されると、蛍光体粒子1005の材料に起因する波長の光が発光する。発生した光は、前面板1001を透過して外部領域に表示光1007として射出する。
画像表示装置には、一般に、表示輝度が高く、かつ高いコントラストを有することが求められる。図10の画像表示装置1000において表示光(射出光)1007を増大させるためには、発光層1003で発生した光が外部領域に射出されるまでの間の光の損失を低減することが重要である。この損失の要因の一つとして、発光層1003と前面板1001との界面又は前面板1001と外部領域との界面における全反射の影響が大きい。
LED等の発光素子において、屈折率が異なる媒質で形成された2層の界面での全反射を抑制して射出光を増大させる方法として、該2層の間に光の波長程度の周期で屈折率が変化する微細構造(屈折率分布構造)を設ける手法が特許文献1,2にて開示されている。
特許文献1では、基板およびクラッド層、活性層、電極層からなる発光素子で、素子の外部とクラッド層の間又は外部と基板との間に屈折率分布構造を設けている。屈折率分布構造によって発光素子の内部で発生した光を回折させることによって、全反射する光を低減し、外部に射出する光の量を増大させる。
また、図10に示す画像表示装置1000において、コントラストを向上させるためには、外光の反射光を低減し、黒表示時の最低輝度を低くすることと重要である。外光は画像表示装置に外部領域から入射して装置内で反射され、外部領域に放出される。この反射して外部領域に放出される光を、外光反射光という。外光反射光は、正反射光と拡散反射光とに分類することができる。画像表示装置の画面に垂直な方向をz軸とすると、正反射光は、z軸に対して角度θをなす方向から装置に光を入射させた場合に、装置によって反射される光のうち入射面内においてz軸に対して角度−θの方向に放出される光である。また、拡散反射光は、画像表示装置に外光が入射した場合に、該装置によって反射されて外部領域に放出される光のうち、正反射光以外の光をいう。
画像表示装置1000において、外光反射光1010が増大する要因の一つとして、発光層1003における拡散反射光1009が挙げられる。カラー陰極線管に用いられる蛍光体粒子1005は、一般的に屈折率1.5〜2.5を有する媒質で、粒子径は数μm径のものが用いられている。このような蛍光体粒子1005が凝集された発光層1003に光が入射すると、蛍光体粒子1005とその周囲の背景媒質1006との界面で、屈折率差に起因した反射が起こる。また、反射光は、蛍光体粒子1005の形状によって、様々な方向に反射される。
反射された光の一部は、外部領域に放出され、他の一部は他の蛍光体粒子1005の表面で数回反射した後に外部領域に放出されて外光反射光1010となる。外光反射光1010が画面に垂直な方向から画像表示装置100内に入射した場合、該画面に垂直な方向に反射する光は正反射光1008であり、他の方向に反射する光は拡散反射光1009である。
画像表示装置100においては、この拡散反射光1009が大きく、画面全体の輝度が上昇することによって、コントラストが低下する。したがって、コントラストを向上させるためには、拡散反射光1009を低減することが必要である。
蛍光体粒子を用いた画像表示装置に関して、拡散反射光を低減する方法が特許文献2にて開示されている。特許文献2の方法では、蛍光体粒子の周囲に、ケイ酸アルカリ塩を充填した発光層を用いる。特許文献2には、このような発光層を用いることで、蛍光体粒子と、蛍光体粒子の周囲との屈折率差を小さくすることができ、これにより、蛍光体粒子の表面で発生する反射光を軽減でき、この結果、拡散反射光が低減されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,779,924号明細書
【特許文献2】特開2005−026140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にて開示された手法のように、蛍光体粒子の周囲に媒質を充填すると、発光層の有効屈折率が増大する。発光層の有効屈折率が増大すると、発光層と前面板との界面における屈折率差が増大する。これによって、発光層と前面板の界面におけるフレネル反射が増大し、正反射光が増大する。さらに、発光層の拡散反射光が低減すると、発光層を通過し、発光層の裏面に到達する光が増大する。この光は、発光層の裏面で反射され、発光層および前面板を伝搬して、外部領域へ放出される正反射光となる。このため、蛍光体粒子の周囲に媒質を充填すると、拡散反射光は減少するが、正反射光が増大する。したがって、特許文献1にて開示された手法では、外光反射光の低減効果は小さく、コントラストの向上効果は小さい。
また、発光層の有効屈折率が大きくなると、発光層と前面板との屈折率差が増大し、全反射角が小さくなる。このため、発光層で発生した光のうち前面板を通って外部領域に放出される表示光が減少する。
本発明は、蛍光体粒子を用いた画像表示装置であって、明るく、コントラストが高い画像を表示可能な画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面としての画像表示装置は、透光性を有する前面板の内面側に複数の画素が配置されて構成されている。各画素は、蛍光体粒子が、該蛍光体粒子と同じ屈折率を有する背景媒質中に分散した発光層と、蛍光体粒子を励起して発光させる励起源と、前面板と発光層との間に配置され、該前面板の内面に沿う方向に周期的な屈折率分布を有する屈折率分布構造とにより構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、蛍光体粒子を用いた画像表示装置において、発光層で発生する光を効率良く外部領域に放出させて明るい画像を表示することができるようにするとともに、外光反射光を低減して表示画像のコントラストを高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1である画像表示装置の構成を示す断面図。
【図2】実施例1の画像表示装置に外部領域からの外光が画面に垂直な方向から入射したときに屈折率分布構造で発生する反射回折光の伝搬の様子を示す図。
【図3】実施例1の画像表示装置に外部領域からの外光が画面に垂直な方向から入射したときに屈折率分布構造で発生する透過回折光の伝搬の様子を示す図。
【図4】実施例1の画像表示装置において発光層で発生した光の伝搬の様子を示す図。
【図5】実施例1の画像表示装置における屈折率分布構造の例を示す図。
【図6】実施例1の画像表示装置に外部領域から波長550nmの光が入射したときの正反射率と拡散反射率を示す図。
【図7】実施例1の画像表示装置において、発光層の内部から外部領域に向けて光を発生させた場合に外部領域に放出される光の強度を示す図。
【図8】本発明の実施例2である画像表示装置の構成を示す断面図。
【図9】実施例2の画像表示装置における屈折率分布構造の例を示す図。
【図10】従来の画像表示装置の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0009】
図1には、本発明の実施例1である画像表示装置100の概略構成を示す。図1は画像表示装置100のxz断面を示している。
画像表示装置100は、前面板101と、該前面板101の内面側(背面側)に配置された画素102とにより構成されている。なお、図1には、1つの画素102のみを示しているが、画素102を前面板101の内面に沿った2次元方向に複数配列することで、2次元画像を表示可能な画像表示装置100が実現される。
前面板101は、可視光を透過させる透光性を有する(透明な)媒質で形成されており、ガラスやプラスチック等の材料で形成されている。
画素102は、発光層104と、微細周期構造である屈折率分布構造107と、励起源103とにより構成されている。屈折率分布構造107は、前面板101と発光層104との間に配置されている。励起源103は、発光層104の背面側(屈折率分布構造107とは反対側)に配置されている。
発光層104は、蛍光体粒子105を、蛍光体粒子105と同じ屈折率を有する背景媒質106中に分散させることで構成されている。ここにいう「同じ屈折率」は、必ずしも完全に同じである必要はなく、同じとみなせる範囲で差を有していてもよい。さらに言えば、真空の屈折率(1.0)よりも蛍光体粒子105の屈折率に近い屈折率であればよい。蛍光体粒子105は、数μmの粒子径を有している。
屈折率分布構造107は、異なる屈折率を有する2種類以上の媒質で構成されている。屈折率分布構造107は、前面板101の内面、言い替えれば、画像表示装置100の画面に沿う(前面板101の内面が平面であればそれに平行な)方向であるxy平面内において、周期的な屈折率分布を有する構造である。屈折率分布の周期は、可視光波長と同程度から数倍程度の長さを有する。
励起源103は、蛍光体粒子105に電子を注入して蛍光体粒子105を励起し、発光させるための層である。励起源103は、例えば、基板上に電子放出素子と電極を配置し、発光層104の裏面に電極を設けることで構成される。電子放出素子に電界を加えると、発光層に向けて電子が放出され、蛍光体粒子106に電子が供給され、蛍光体粒子106が励起されて発光する。発生した光は、屈折率分布構造107および前面板101を透過して画像表示装置100の外部領域に放出され、+z方向に伝搬する表示光108となる。
本実施例の画像表示装置100において、コントラストを向上させることができる理由について次に説明する。
画像表示装置100の外部領域から該装置100に入射する光(外光)は、外部領域と前面板101との界面を透過して屈折率分布構造107に到達する。屈折率分布構造107に到達した光は、屈折率分布構造107が有する周期的な屈折率分布によって回折され、複数の回折光に分かれる。複数の回折光は、回折次数によって、異なる方向に伝搬する光となる。回折光のうち+z方向に進む光を反射回折光といい、−z方向に進む光を透過回折光という。
図2には、画像表示装置100に外部領域からの外光109が画面(前面板101)に垂直な方向から入射したときに屈折率分布構造107で発生する反射回折光の伝搬の様子を示している。反射回折光のうち前面板101と外部領域との界面における全反射角よりも大きな角度で伝搬する光は、界面で全反射される。全反射された光は、外部領域に放出されず、前面板101内を伝搬して減衰する。この光を減衰光112という。
一方、全反射角度よりも小さい角度で伝搬する回折光は、外部領域に放出され、外光反射光となる。このときの外光反射光を外光反射光1という。また、画面に垂直な方向に伝搬する光を正反射光110といい、それ以外の方向に伝搬する光を拡散反射光111という。
屈折率分布構造107を設けて外光109を回折させ、減衰光112を発生させると、他の回折光の強度が減少するため、外部領域に放出される外部反射光1を減少させることができる。また、外光反射光1が、正反射光110と拡散反射光111とに分割されることによって、屈折率分布構造107を設けない場合と比べて、正反射光110が低減する。屈折率分布構造107を設けてその構造を適切に設計することで、回折光を発生させ、外光反射光1あるいは正反射光110を低減することができる。
図3には、画像表示装置100に外部領域からの外光109が画面(前面板101)に垂直な方向から入射したときに屈折率分布構造107で発生する透過回折光の伝搬の様子を示している。透過回折光は、複数の回折光に分かれ、各回折光の回折次数に応じた方向に伝搬する。
前述したように、発光層104は、蛍光体粒子105を該蛍光体粒子105と同じ屈折率を有する背景媒質中に分散配置した層となっているため、発光層104を光が伝搬しても、拡散反射光は発生しない。このため、発光層104を、真空中に蛍光体粒子105を配置して層として形成した場合と比べて、大幅に拡散反射光が減少する。
各回折光は、発光層104の裏面に到達し、その一部は反射され、他の一部は吸収される。反射された光は、発光層104を再び伝搬し、屈折率分布構造107によって回折されて複数の回折光に分かれる。これら複数の回折光のうち、一部の光は反射回折光となり、発光層104の裏面での反射と、屈折率分布構造107による回折を繰り返しながら、発光層104をxy面内方向に伝搬する。そして、図3には示していないが、画素と画素を区切る側壁に到達して吸収される。
前面板101を伝搬する回折光のうち、前面板101と外部領域との界面における全反射角よりも大きな角度で伝搬する光は、外部領域に放出されず、前面板101内を伝搬して減衰する。このときの減衰する光と、発光層104の裏面や画素と画素を区切る側壁で吸収される光を合わせて、減衰光115という。
一方、全反射角度よりも小さい角度で伝搬する回折光は、外部領域に放出され、外光反射光2となる。このとき、画面に垂直な方向に伝搬する光を正反射光113といい、それ以外の方向に伝搬する光を拡散反射光114という。透過回折光のうち減衰光115が大きくなると、他の回折光の強度が減少するため、外部領域に放出される外部反射光2は減少する。また、外光反射光2が、正反射光113と拡散反射光114に分かれることによって、屈折率分布構造107を設けない場合と比べて、正反射光113が低減する。
屈折率分布構造107を設け、その構造を適切に設計することで、回折光を発生させ、外光反射光2あるいは正反射光113を低減することができる。
以上説明したように、本実施例の画像表示装置100では、発光層104を、蛍光体粒子105を該蛍光体粒子105と同じ屈折率を有する背景媒質106中に分散して配置した層とすることで、発光層104で発生する拡散反射光を大幅に抑制することができる。また、屈折率分布構造107を前面板101と発光層104の間に設け、その構造を適切に設計することで、回折光を発生させて減衰光を発生させることができる。減衰光を発生させることによって、外光反射光を低減することができる。さらに、屈折率分布構造107によって回折光を発生させることで、外光反射光を正反射光と拡散反射光に分け、正反射光を低減させることができる。これらの効果によって、正反射光および拡散反射光が低減し、外光反射光が低減するので、高いコントラストを有する画像表示装置100を実現することができる。
次に、本実施例の画像表示装置100において、表示光が増大する理由について説明する。
図4には、画像表示装置100において、発光層104で発生した光の伝搬の様子を示している。発光層104において発生する光は、すべての方向に向かって伝搬する光を含んでいる。この光が屈折率分布構造107に入射すると、光は回折し、複数の回折光に分かれる。各回折光は、その回折次数によって異なる方向に伝搬する。これらの回折光のうち、前面板101と外部領域との界面の全反射角以内の光は、外部領域に放出され、表示光となる。
図4において、x軸と点線117で示した線とがなす角度は、前面板101と外部領域との界面における全反射角を表している。また、x軸と点線118で示した線とがなす角度は、屈折率分布構造107を設けない場合において、発光層104と前面板101を接合した場合の界面における全反射角を表している。
図4中の光線116のように、発光層102に存在する光のうち全反射角よりも大きな角度で伝搬する光に注目する。この光は、屈折率分布構造107を設けない場合は、前面板101と外部領域との界面、あるいは発光層104と前面板101との界面において全反射され、外部領域に放出されない光である。屈折率分布構造107を設けない場合は、このような光は外部領域に抽出されずに損失となる。
このような光が屈折率分布構造107に入射すると、屈折率分布構造107によって回折され、複数の回折光に分かれる。各回折光は、その回折次数によって異なる方向に伝搬する光となる。このうち、一部の光は、前面板101を全反射角以内の角度で伝搬する光119となり、前面板101と外部領域との界面における全反射の影響を受けずに外部領域に放出される。屈折率分布構造107を適切に設計することで、前面板101と外部領域との界面における全反射角以内の方向に伝搬する回折光を増大させることができる。そして、外部領域に放出される表示光を増大させることができる。
このように、画像表示装置100の屈折率分布構造107を適切に設計することで、正反射光および拡散反射光を低減し、外光反射光を低減することができる。また、発光層101から外部領域に放出する光を増大させることができる。これらの効果によって、高いコントラストを有し、表示光の輝度を増大させた画像表示装置を得ることができる。
次に、屈折率分布構造107の例を図5に示す。図5の(a),(b)はそれぞれ、屈折率分布構造107のxy平面図およびyz平面図である。
屈折率分布構造107は、第1の媒質で形成された層10に、第2の媒質で形成された円柱構造部11が、前述した前面板101の内面に沿う方向に相当するxy平面内において2次元的に周期的に配置された構造を有する。この構造により、屈折率分布構造107は、xy平面内において2次元的に周期的な屈折率分布を有する。
表1は、このような構成の屈折率分布構造107を前面板101と発光層104の間に配置した場合における、外部領域からxy平面に垂直な方向から波長550nmの光が入射したときの反射回折光および透過回折光の回折効率と伝搬角度(回折角度)を示している。
ここでは、屈折率分布構造107における第1の媒質の屈折率を2.3とし、第2の媒質の屈折率を1.0とする。また、屈折率分布構造107を、図5に示したベクトルA1およびA2を基本ベクトルとし、基本ベクトルの和あるいは差で表される位置に円柱構造部11を配置した三角格子構造(2次元格子構造)を有する構造とする。
ベクトルA1は、格子周期12の長さをaとするとき、(0.5a,√3a/0.5,0.0)のベクトルである。また、ベクトルA2は、(0.5a,−√3a/0.5,0.0)のベクトルである。格子周期12は1350nm、円柱構造部11の直径13は675nmの長さを有する。屈折率分布構造107のxz断面における長さ14は、900nmの長さを有するとする。
前面板101は、屈折率1.5を有する媒質により形成されたものとし、発光層104は、屈折率2.3の媒質で形成された蛍光体粒子105を、屈折率2.3の背景媒質106中に分散して配置した層とする。また、発光層104の背面側に励起源103が配置され、発光層104と励起源103との界面における反射率を80%とする。
なお、回折効率の計算および後に述べる外光反射率、表示光の強度の計算は、転送行列法を用いて行った。
【0010】
【表1】

【0011】
表1に示すように、屈折率分布構造107に外光が入射すると、この光は複数の回折光に分かれる。前面板101と外部領域との界面における全反射角は41.8°であり、±3次の反射回折光は、前面板101と外部領域との全反射角よりも大きな伝搬角度となっている。このような光は、前面板104と外部領域との界面で全反射され、前面板104の中を伝搬して減衰する光となる。また、2次から−2次の反射回折光のうち、0次の回折光は正反射光となる光であり、それ以外の回折光は拡散反射光となる光であり、外光反射光が、正反射光と拡散反射光に分かれることが分かる。
図6には、画像表示装置100に外部領域から波長550nmの光が入射したときの正反射率と拡散反射率を示している。縦軸は反射率を表している。正反射率は、xy平面に垂直な方向から光が入射したときのxy平面に垂直な方向に反射される光の割合として算出した。また、拡散反射率は、xz平面内でz軸に対して45度の角度を有する光が入射したときにxy平面に垂直な方向に反射される光の割合として算出した。
図7には、発光層104の内部から外部領域に向けて光を発生させた場合において外部領域に放出される光の強度を示している。表示光の強度は、外部領域に抽出された光をすべて積算することで算出した。なお、図7の縦軸に示した表示光の強度の値は、屈折率分布構造107を設けない場合における表示光の強度の値で規格化した値である。また、図6および図7には、屈折率分布構造107を設けない場合の正反射率および拡散反射率の値を示した。
図6に示すように、屈折率分布構造107を設けると、屈折率分布構造107を設けない場合と比べて、正反射率が大幅に低減できる。これは、屈折率分布構造107を設けることによって、外光反射光が正反射光および拡散反射光に分かれているからである。また、図7の表示光の強度の値を見ると、屈折率分布構造107を設けることによって、大幅に強度が増加していることが分かる。
以上のように、本実施例の画像表示装置100では、背景媒質106を蛍光体粒子105と同じ屈折率を有する媒質とし、図5で示した屈折率分布構造107を前面板101と発光層104の間に設けることによって、外光反射光を低減することができる。さらに、屈折率分布構造107を設けることによって、発光層104から外部領域へ放出される光を増大させることができる。これらの効果によって、高いコントラストを有し、明るい画像を表示できる画像表示装置を実現できる。
なお、励起源103は、基板上に電極を配置し、発光層104の前面あるいは背面にセルと電極を配列した構成としてもよい。セルには、電流を流すことによってプラズマを発生し、紫外線を発生するガスが封入される。セルに含まれるガスに電流を流すと、紫外線が発生し、蛍光体粒子に照射されることで、蛍光体粒子が励起される。
また、屈折率分布構造107は、図5で示した構造に制限されるものではなく、図5とは異なる構造パラメータを有する構造であってもよい。三角格子構造は、構造の対称性が良く、屈折率分布構造に入射する光の角度依存性が少ないため、画像表示装置100からの外光反射光あるいは表示光の強度の角度依存性を低減することができる。
ただし、屈折率分布構造107は三角格子構造を有するものでなくてもよく、正方格子構造や長方格子構造等の2次元格子構造であってもよい。このような構造は、被加工基板にレジストを塗布し、2回の2光束干渉露光と現像を行うことでパターン付きのレジストマスクを形成し、被加工基板をエッチングすることで、容易に作製することができる。
また、屈折率分布構造107は、1次元的に周期的な屈折率分布を有する構造や、3次元的に周期的な屈折率分布を有する構造であってもよい。さらに、屈折率分布構造107を、異なる屈折率を有する3種類以上の媒質で構成したり、背景媒質106や前面板101と同じ媒質で構成したりしてもよい。
発光層104を構成する蛍光体粒子105およびその周囲の背景媒質106は、本実施例で示した屈折率を有する媒質以外の媒質でもよい。また、前面板101の屈折率、発光層104と励起源103との界面における反射率は、本実施例で示した値に制限されるものではない。
【実施例2】
【0012】
図8には、本発明の実施例2である画像表示装置200の構成を示す。図8は画像表示装置200のxz断面を示している。
画像表示装置200は、前面板201と、該前面板201の内面側に配置された赤色、緑色、青色を表示する画素213,214,215とにより構成されている。赤色、緑色および青色は第1の色、第2の色および第3の色に相当し、画素213,214,215は第1の画素、第2の画素および第3の画素に相当する。なお、本実施例では、画素213,214,215が赤色、緑色および青色を表示する場合ついて説明するが、これらの画素によって他の色を表示するようにしてもよい。
なお、図8には、各色用の画素213,214,215を1つずつ示しているが、画素213,214,215を前面板101の内面に沿った2次元方向に複数ずつ配列することで、2次元カラー画像を表示可能な画像表示装置200が実現される。
前面板201は、可視光を透過させる透光性を有する(透明な)媒質で形成されており、ガラスやプラスチック等の材料で形成されている。
画素213,214,215は、発光層202と、微細周期構造である屈折率分布構造210,211,212と、励起源203とにより構成されている。そして、発光層202および屈折率分布構造210,211,212は、各色用の画素213,214,215において互いに異なる。
屈折率分布構造210,211,212は、前面板201と発光層202との間に配置されている。励起源203は、発光層202の背面側(屈折率分布構造とは反対側)に配置されている。
画素213,214,215の発光層202にはそれぞれ、赤色、緑色および青色の波長の光を発生する蛍光体粒子204,205,206が背景媒質207,208,209中に分散されている。蛍光体粒子204,205,206は互いに異なる屈折率を有し、背景媒質207,208,209はそれぞれ、蛍光体粒子204,205,206と同じ屈折率を有する。つまり、背景媒質207,208,209も互いに異なる屈折率を有する。「同じ屈折率」の意味は、実施例1にて説明した通りである。
ただし、蛍光体粒子204,205,206および背景媒質207,208,209の屈折率がすべて異なる必要はなく、画素213,214,215のうち少なくとも1つの画素の蛍光体粒子および背景媒質の屈折率が、他の画素のそれらと異なればよい。
また、屈折率分布構造210,211,212はそれぞれ、異なる屈折率を有する2種類の媒質により構成され、前面板201の内面に沿う方向に相当するxy平面内において2次元的に周期的に配置された構造を有する。この構造により、屈折率分布構造210,211,212は、xy平面内において2次元的に周期的な屈折率分布を有する。また、屈折率分布の周期は、可視光波長と同程度から数倍程度の長さを有している。
ただし、屈折率分布構造210,211,212がすべて異なる構造を有する必要はなく、それらのうち少なくとも1つの屈折率分布構造が他の屈折率分布構造と異なる構造を有すればよい。
屈折率分布構造210,211,212の例を、図9の(a),(b),(c)に示す。屈折率分布構造210,211,212は、yz断面の長さが同じであり、xy平面内において互いに異なる構造を有する。屈折率分布構造210,211,212は、第1の媒質で形成された層20に、第2の媒質で形成された円柱構造部21が周期的に配置された三角格子構造を有する。屈折率分布構造210,211,212は、屈折率分布の周期22,23,24が互いに異なる。
励起源203は、蛍光体粒子204,205,206を励起し、発光させるための層である。励起源203は、例えば、基板上に電子放出素子と電極を配置し、発光層102の裏面に電極を設けることで構成される。電子放出素子に電界を加えると、発光層に向けて電子が放出され、蛍光体粒子204,205,206に電子が供給され、これらが励起されて発光する。発生した光は、屈折率分布構造210,211,212および前面板201を透過して外部領域に放出されて表示光216,217,218となる。
前述したように、本実施例の画像表示装置200では、赤色、緑色および青色の画素213,214,215の蛍光体粒子204,205,206および背景媒質207,208,209はそれぞれ、互いに異なる屈折率を有する。画素ごとに異なる背景媒質207,208,209を用いることで、同じ屈折率を有する背景媒質を用いた場合と比べて、蛍光体粒子との屈折率差を小さくすることができ、拡散反射光をより抑制することができる。これにより、高いコントラストを有する画像表示装置を得ることができる。
また、前述したように、本実施例の画像表示装置200では、各画素に含まれる屈折率分布構造210,211,212が互いに異なる構造を有する。蛍光体粒子204,205,206および背景媒質207,208,209がそれぞれ互いに異なる屈折率を有するために、発光層202の有効屈折率も画素ごとに異なっている。また、蛍光体粒子204,205,206から発生する光の波長も互いに異なる波長となる。
一般に、周期的な屈折率分布構造の反射および透過回折光の回折効率および回折角度は、屈折率分布構造の構造パラメータの他に、反射側および透過側の媒質の屈折率と、入射光の波長とで決定される。実施例1で述べたように、屈折率分布構造で発生する回折光の回折効率および回折角度が変わると、正反射光、拡散反射光および表示光の強度は変化する。そこで、各画素に含まれる発光層の有効屈折率および発光波長を考慮して、画素ごとに屈折率分布構造を適切に設計する。これにより、同じ構造を有する屈折率分布構造を各画素に設けた場合と比べて、正反射光と拡散反射光の抑制効果および表示光の増大効果を向上させることができる。これにより、高いコントラストを有し、表示光を増大させた画像表示装置を実現することができる。
なお、本実施例では、実施例1と同様に、屈折率分布構造が三角格子構造である場合について説明したが、正方格子構造や長方格子構造であってもよく、1次元的又は3次元的な屈折率分布を有する構造を用いてもよい。もちろん、屈折率分布構造は、異なる屈折率を有する3種類以上の媒質で構成してもよく、背景媒質や前面板と同じ媒質を用いて構成してもよい。
また、各画素に同じ屈折率の背景媒質を用い、各画素に設ける屈折率分布構造を互いに異ならせたり、各画素に同じ構造を有する屈折率分布構造を設け、各画素で用いる背景媒質の屈折率を互いに異ならせたりしてもよい。また、各画素に設ける屈折率分布構造のyz断面における厚さが互いに異なっていてもよい。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0013】
明るく、コントラストが高い画像を表示可能な画像表示装置を提供する。
【符号の説明】
【0014】
100 画像表示装置
101 前面板
102 画素
103 励起源
104 発光層
105 蛍光体粒子
106 背景媒質
107 屈折率分布構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する前面板の内面側に複数の画素が配置された画像表示装置であって、
前記各画素は、
蛍光体粒子が、該蛍光体粒子と同じ屈折率を有する背景媒質中に分散した発光層と、
前記蛍光体粒子を励起して発光させる励起源と、
前記前面板と前記発光層との間に配置され、該前面板の内面に沿う方向に周期的な屈折率分布を有する屈折率分布構造とにより構成されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記屈折率分布構造は、前記内面に沿う方向において、2次元格子構造を有することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記複数の画素は、第1の色、第2の色および第3の色をそれぞれ表示する第1の画素、第2の画素および第3の画素を含み、
前記第1、第2および第3の画素のうち少なくとも1つの画素の前記屈折率分布構造が、他の画素の前記屈折率分布構造と異なる構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記複数の画素は、第1の色、第2の色および第3の色をそれぞれ表示する第1の画素、第2の画素および第3の画素を含み、
前記第1、第2および第3の画素のうち少なくとも1つの画素の前記蛍光体粒子および前記背景媒質の屈折率が、他の画素の前記蛍光体粒子および前記背景媒質の屈折率と異なることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−138631(P2011−138631A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296242(P2009−296242)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】