説明

画像表示装置

【課題】コンパクトでありながら、組み立てコストを増大させることなく、高精細の画像を表示できる画像表示装置を提供する。
【解決手段】組み立て時等において、MEMSミラーの手前に設けたハーフミラーから反射したレーザビームを入射した検出器PDからの信号に基づいて、スポットの相対位置ズレを検出する。例えばラスター走査の末端では、画像を表示しないので、赤(R)、緑(G)、青(B)のレーザビームを順々に照射して、スポットの位置ズレを検出器PDで検出する。検出された位置ズレは、ソフト又はハード的に補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばレーザビーム等を走査して画像を表示する画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光等の光線を偏光・走査する光走査装置は、画像投影装置やレーザプリンタ等の光学機器に利用されている。この光走査装置については、多角柱ミラーをモータで回転させて反射光を走査するポリゴンミラーや、平面ミラーを電磁アクチュエータによって回転振動させるガルバノミラー等を有するものがある。しかし、このような光走査装置においては、ミラーやモータを電磁アクチュエータで駆動する機械的な駆動機構が必要となるが、その駆動機構はサイズが比較的大きく、また高価であることから、光走査装置の小型化を阻害するとともに高価格化を招くといった問題がある。
【0003】
そこで、光走査装置の小型化、低価格化及び生産性の向上を図るために、半導体製造技術を応用したシリコンやガラスを微細加工するマイクロマシニング技術を用いてミラーや弾性梁等の構成部品が一体成形されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の光走査装置(いわゆる、MEMSミラー)の開発が進んでいる。
【0004】
このようなMEMSミラーを用いた1次元走査の光走査装置を2組配置し、各々のミラーで反射される光線をそれぞれ水平走査、垂直走査することにより、投影面に2次元画像を表示させる画像投影装置が開発されている。また、水平走査及び垂直走査ができる2次元走査の光走査装置を用いれば、単体でラスター走査(水平走査及び垂直走査)でき、小型化及び低価格化に繋がる。
【0005】
例えば特許文献1には、MEMSミラーを用いてラスター走査を行うことで画像を表示できる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−268645号公報
【特許文献2】特表2010−509624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、カラー画像を表示するためには、異なる光源から、異なる色のレーザビームを画素毎に照射する必要があるが、光学系やミラーの配置によって、レーザビームの照射位置がずれた結果、色ズレを生じる恐れがある。しかしながら、色ズレをなくすための光学系やミラーの微調整は困難な作業であり、これにより組み立てコストの増大を招いている。又、温度変化や経時劣化等によって、色ズレが生じる恐れもあるが、その都度ミラーや光学系の再調整を行うことは困難である。
【0008】
これに対し特許文献2では、可動ミラーとスクリーンの間にハーフミラーを設け、ハーフミラーから反射された2つのビームを検出器で検出することで、ビームの位置ズレを検出する構成が開示されている。しかしながら、特許文献2の技術によれば、可動ミラーが傾動することにより、ハーフミラーに入射するビームの位置が大きく変動するから、ハーフミラーや検出器の受光面の面積を相当に大きく確保する必要があり、これにより装置の大型化を招くという問題がある。更に、特許文献2の検出器はCCD等の撮像素子を用いているために、コスト増を招くという問題がある。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、コンパクトでありながら、組み立てコストを増大させることなく、高精細の画像を表示できる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の画像表示装置は、
異なる色のレーザビームを出射するレーザ光源と、
バッファメモリに記憶された画像データに基づいて、前記レーザ光源を変調するレーザ制御部と、
前記レーザ光源から出射された前記異なる色のレーザビームを結合させ光路を一致させる結合手段と、
前記結合手段から出射したレーザビームをスクリーンの水平方向及び垂直方向に走査する走査部と、
前記結合手段と前記走査部との間に配置され、前記結合手段から出射したレーザビームを、所定のタイミングで検出する検出器と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の原理を、図面を参照して説明する。図1は、本発明にかかる画像表示装置の一例の概略図である。図1において、画像表示装置は、赤色のレーザビームを出射する赤色光源LDrと、赤色のレーザビームを平行ビームに変換するコリメータCLrと、赤色のレーザビームを反射するミラーMRrと、青色のレーザビームを出射する青色光源LDbと、青色のレーザビームを平行ビームに変換するコリメータCLbと、青色のレーザビームを反射するが赤色のレーザビームは透過するダイクロミラーMRbと、緑色のレーザビームを出射する緑色光源LDgと、緑色のレーザビームを平行ビームに変換するコリメータCLbと、赤色のレーザビームと青色のレーザビームを反射するが緑色のレーザビームは透過するダイクロミラーMRgと、ハーフミラーHFと、メインミラーMMと、MEMSミラーMEMSと、センサレンズSLと、検出器PDとを有する。ハーフミラーHFは、ダイクロミラーMRgとメインミラーMMとの間に配置されている。
【0012】
赤色光源LDrから出射された赤色のレーザビームは、コリメータCLrを通過してミラーMRrで反射された後、ダイクロミラーMRbを透過する。又、青色光源LDbから出射された青色のレーザビームは、コリメータCLbを通過して、ダイクロミラーMRbで反射される。つまり、ダイクロミラーMRbから赤色のレーザビームと青色のレーザビームが出射され、ダイクロミラーMRgに入射する。一方、緑色光源LDgから出射された緑色のレーザビームは、コリメータCLbを通過して、更にダイクロミラーMRgを通過するが、ダイクロミラーMRgは赤色のレーザビームと青色のレーザビームを反射するので、各色のレーザビームは、ここで結合されて光路が一致するようになる。すなわち、ダイクロミラーMRgが結合手段を構成する。
【0013】
ダイクロミラーMRgから出射された各色のレーザビームは、ハーフミラーHFで一部が反射され、残りは通過して、更にメインミラーMMで反射され、MEMSミラーMEMSに入射する。MEMSミラーMEMSは、後述するように直交する2軸回りに傾くように駆動されるので、MEMSミラーMEMSからの反射光は、スクリーンSC上に水平方向及び垂直方向にラスター走査されることとなる。
【0014】
ここで、ダイクロミラーMRgから出射された各色のレーザビームのスポット位置がずれていると、色ズレを招く恐れがある。そこで、本発明においては、ハーフミラーHFで反射されたレーザビームをセンサレンズSLで集光し、検出器PDで受光することにより、レーザビームの位置ズレを検出している。又、ハーフミラーHFが、ダイクロミラーMRgとメインミラーMMとの間に配置されているので、MEMSミラーMEMSの傾動に影響されることなく、常にハーフミラーHFの一定の位置にレーザビームが照射されることとなり、これによりハーフミラーHFの面積を小さくでき、更には検出器PDの受光面の面積を小さくでき、もって画像表示装置のコンパクト化に貢献する。尚、レーザビームの位置ズレの検出は、例えば組み立て時に行うことで、ミラーや光学系の調整が容易になる。或いは、温度センサを設け、所定値を超えて温度変化が生じた場合に位置ズレの検出を行ったり、或いは衝撃センサを設け、所定値を超えて衝撃が生じた場合に位置ズレの検出を行うことができる。つまり、「所定のタイミング」とは、例えは組み立て時、温度変化時、衝撃発生時などがあるが、所定時間経過後など経時劣化時に行っても良い。又、検出器からの信号に応じて、ミラーや光学系を調整してハードウェアにて色ズレを解消しても良いが、後述するようにソフト的に色ズレを解消しても良い。
【0015】
請求項2に記載の画像表示装置は、請求項1に記載の発明において、前記検出器は、画面の水平方向及び垂直方向に対応する方向に2行2列で4分割された検出面を有することを特徴とする。4分割された検出面を有するシンプルな構成であるので、検出器として例えばCCD等の撮像素子を用いる場合に比べ、コストを低く抑えることができる。
【0016】
図2は、本発明の一例にかかる検出器PDの検出面を示す図である。図2に示すように、ハーフミラーHFで反射されたレーザビームを受光する検出器PDは、2行2列で4分割された検出面を有し、ここでは反時計回りに各検出面の受光信号をそれぞれA,B,C,Dとすると、A、Dを出力する検出面が画面の水平方向に対応し、A、Bを出力する検出面が画面の垂直方向に対応するものとする。
【0017】
図2の例では、検出面に集光されたレーザビームの水平方向のズレは、((A+B)−(C+D))/(A+B+C+D)で表され、またレーザビームの垂直方向のズレは、((A+D)−(B+C))/(A+B+C+D)で表される。よって、かかる値に相当する量だけ、ミラーや光学系を調整してハードウェアにて色ズレを解消しても良いし、ソフト的に色ズレを解消しても良い。又、(A+B+C+D)を計算することで、迅速にビーム強度が分かることから、高速応答を必要とする、光源のパワーモニタとして用いることもでき、これは検出器として撮像素子を用いる場合に比べて大きな利点となる。
【0018】
請求項3に記載の画像表示装置は、請求項1又は2に記載の発明において、前記レーザ制御部は、前記検出器からの信号に応じて、バッファメモリに記憶された画像データ中の各色データの出力タイミングを変更することを特徴とする。
【0019】
バッファメモリに記憶された画像データ中の各色データの出力タイミングを変更することで、ソフト的にスポットの位置ズレを調整するができ、ハードウェアの調整が不要で、画像を表示したまま色ズレの調整を行える。
【0020】
図3は、画面上の画素に形成されたスポットの概略図であり、Y方向が画面の垂直方向であり、X方向が画面の水平方向であるものとする。ここで、検出器PDからの信号によりY方向に位置ズレが生じていた時を考える。例えば1ライン分だけスポットが上方向にずれている場合、そのスポットの描画を1ラインの画素分だけ後にずらせばよい。つまり、バッファに記憶された画像データのアドレスを1ラインの画素分(例えば1024画素)だけ後ろにシフトすれば、(N−1)ラインのスポットSPyを、Nラインの対応する画素上のスポットSPとして形成できる。これにより垂直方向のスポットの位置ズレを調整できる。
【0021】
請求項4に記載の画像表示装置は、請求項3に記載の発明において、前記出力タイミングの変更は、オンデューティ信号のタイミングの変更であることを特徴とする。
【0022】
図3において、検出器PDからの信号によりX方向に位置ズレが生じていた時を考える。かかる場合、スポットの形成タイミングは、光源の駆動タイミングに対応するので、例えば図3で点線で示すように、スポットSPxが本来の位置(不図示の他色の2つのスポットと重なる位置)より画面右側にずれている場合、ラスター走査が右方に向かって行われている場合には、光源を発光させるオンデューティ信号(HIで発光LOで消灯)を早め、或いはラスター走査が左方に向かって行われている場合には、光源を発光させるオンデューティ信号を遅くすることで、実線で示すように、適切な位置にスポットSPを形成できることとなる。これにより水平方向のスポットの位置ズレを調整できる。
【0023】
請求項5に記載の画像表示装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記検出器は、前記スクリーンの画像以外の場所に走査される前記レーザビームを検出することを特徴とする。例えば図8に示すように、ラスター走査の終端位置において、画像を表示するフレーム外に、赤、青、緑と順にレーザビームを照射することによって、検出器上でスポットの位置ズレを確認できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、組み立てコストを増大させることなく、高精細の画像を表示できる画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかる画像表示装置の一例の概略図である。
【図2】本発明の一例にかかる検出器PDの検出面を示す図である。
【図3】画面上の画素に形成されたスポットの概略図である。
【図4】本発明の一実施の形態による画像表示装置1の全体構成を示すブロック図である。
【図5】画像表示装置1の斜視図である。
【図6】光スキャナ9の詳細な構成を示す平面図である。
【図7】2次元走査ミラー15の図6のVII-VII方向の断面図である。
【図8】2次元走査ミラー15を用いたレーザビームWの偏向を行う状態を表示する図である。
【図9】スポットの位置ズレを検出するフローチャートである。
【図10】スポットのズレを示す概念図である。
【図11】データの入れ替えの例を示す図である。
【図12】本実施の形態の変形例にかかる画像表示装置の図1と同様な図である。
【図13】本実施の形態の変形例にかかる検出器の図2と同様な図である。
【図14】別な変形例にかかる画像表示装置の図12と同様な図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図4は、本発明の一実施の形態による画像表示装置1の全体構成を示すブロック図である。図5は、画像表示装置1の斜視図である。画像表示装置1は、例えば光スキャナプロジェクタに搭載され、レーザ光源7(7r,7g,7b)、コリメータCL(CLr、CLg、CLb)、レーザ制御部100、ダイクロミラー8(8r,8g,8b)、ハーフミラーHF、検出器PD、光スキャナ9(走査部)、位相検出部110、及び同期信号出力部120を備えている。
【0027】
レーザ制御部100は、フレームメモリ2、画像処理用メモリ3,ラインバッファメモリ4、表示コントローラ5、変調器6(6r,6g,6b)、ドライバ13、及びシステムコントローラ14を備え、レーザ光源7を制御する。
【0028】
フレームメモリ2は、水平同期信号及び垂直同期信号に基づいて、主画像の画像データ(以下、「主画像データ」と表す。)を1フレーム単位で一時的に記憶する。ここで、主画像としては、例えば、映画、テレビ番組等が挙げられる。なお、主画像データは、例えばR,G,Bの色成分からなるカラーの画像データとするが、モノクロの画像データであってもよい。
【0029】
画像処理用メモリ3に記憶された画像データは、表示画像の歪みを補正する処理や、垂直方向にスポットをずらす処理等を施される。
【0030】
ラインバッファメモリ4は、画像処理用メモリ3の第1の領域と第2の領域から交互に、水平方向の複数ライン単位で順次に出力される主画像データを記憶する。
【0031】
表示コントローラ5は、水平同期信号及び垂直同期信号に基づいて、フレームメモリ2への1フレームの主画像データの書き込み制御、画像処理用メモリ3における画像処理、画像処理用メモリ3からラインバッファメモリ4への画像データの書き込み制御、及びラインバッファメモリ4から画像データを1画素単位で順次に変調器6に出力させる制御等を行う。ここで、ライバッファメモリ4に記憶された画像データは、R色成分が変調器6rに出力され、G色成分が変調器6gに出力され、B色成分が変調器6bに出力される。
【0032】
具体的には、表示コントローラ5は、同期信号出力部120から垂直同期信号が入力されると、1フレーム分の主画像データをフレームメモリ2に記憶させる。また、ラインバッファメモリ4に、キャラクターメモリ3に記憶された副画像データの先頭の1ライン分を記憶させる。そして、ラインバッファメモリ4に記憶された副画像データを1画素単位で順次に変調器6に出力させる。
【0033】
そして、水平同期信号が入力されると、ラインバッファメモリ4に次の1ライン分の副画像データを記憶させ、ラインバッファメモリ4から次の1ライン分の副画像データを1画素単位で順次に変調器6に出力させる。これにより、スクリーン10に主画像データで強度が変調されたレーザビームがラスター走査され、主画像が表示されることになる。ラスター走査が画面右下まで行われれば、再びレーザビームを画面左上まで戻す。その間に、フレームバッファ2には新たな画像データが読み込まれ、上述のようにして、次の画像を表示する準備がなされる。以上を繰り返すことで、複数枚の画像を表示できる。
【0034】
変調器6(6r,6g,6b)は、それぞれラインバッファメモリ4から1画素単位で順次に出力される画像データのR,G,B成分を用いて、図2に示すようなオンデューティ信号制御にて、レーザ光源7r,7g,7bから射出されるR,G,Bのレーザビームの強度を変調する。
【0035】
レーザ光源7r,7g,7bは、例えば、レーザダイオードにより構成され、それぞれ、赤(R)、緑(G)、青(B)のレーザビームを射出する。コリメータCLr、CLg、CLbは、赤(R)、緑(G)、青(B)のレーザビームを平行ビームに変換する。
【0036】
ダイクロミラー8(8r,8g,8b)は、レーザ光源7r,7g,7bから射出されたレーザビームを合波して、一本のレーザビームWにする。検出器PDは、図2に示すような検出面を有し、ハーフミラーHFにより反射されたレーザビームWの一部を検出する。
【0037】
光スキャナ9は、例えば2次元の光スキャナにより構成され、水平同期信号及び垂直同期信号に基づいて、レーザビームWを2次元的に走査(ラスター走査)し、スクリーン10に画像を表示する。スクリーン10は、ラスター走査されるレーザビームWが投影されて、画像を表示させる。
【0038】
検出器PDは、レーザ光源7r,7g,7bから射出されるレーザビームの強度を各々モニタし、モニタ信号を変調器6r,6g,6bに出力する機能も有する。なお、変調器6r,6g,6bは、このモニタ信号から、レーザビームの強度の時間平均値が既定値になるようにレーザ光源7r,7g,7bをAPC(auto power control)制御する。これにより、レーザビームの発振強度が安定化されると共に、レーザ光源7の破損が防止される。
【0039】
位置検出部(PR)12は、例えば赤外発光ダイオード等の発光素子及びフォトトランジスタ等の受光素子を含むフォトリフレクタにより構成され、発光素子から出力された光を対象物であるミラー部16(図6参照)に当て、反射光を受光素子で検出し、ミラー部16の水平方向及び垂直方向の傾斜角度を示す検出信号を位相検出部110に出力する。
【0040】
システムコントローラ14は、ドライバ13を介して光スキャナ9への駆動信号を出力すると共に、主画像を表示しない場合、画像を表示しない黒画像を表示するように表示コントローラ5に指示する。
【0041】
位相検出部110は、位置検出部12により検出された検出信号を用いてミラー部16の水平方向及び垂直方向の傾斜角度を検出する。
【0042】
同期信号出力部120は、位相検出部110により検出されたミラー部16の傾斜角度に基づいて水平同期信号及び垂直同期信号を表示コントローラ5に出力する。ここで、同期信号出力部120は、位相検出部110により検出された水平方向の傾斜角度が1ラインの走査を開始する角度となった場合に水平同期信号を出力すればよい。また、同期信号出力部120は、位相検出部110により垂直方向の傾斜角度が1フレームの先頭の1ラインの走査を開始する角度となった場合に垂直同期信号を出力すればよい。
【0043】
次に、光スキャナ9の動作について説明する。図6は、光スキャナ9の詳細な構成を示す平面図である。光スキャナ9は、2次元走査ミラー15により構成され、2次元走査ミラー15を図5の筐体BXに固定する固定枠70と、固定枠70の内側に可動部分として枠状に形成された可動枠30と、可動枠30の内側に形成された方形状のミラー部16とを備えている。
【0044】
ミラー部16は、ミラー部16の中心を通るY軸に沿って外方へ延びるトーションバー21,22を介して、Y軸方向の両側から可動枠30に弾性的に支持されている。また、可動枠30は、Y軸に直交し、ミラー部16の中心を通るX軸近傍の端部30a,30b,30c,30dのそれぞれに一端が接続された曲がり梁41,42,43,44により、X軸の両側から固定枠70に弾性的に支持されている。これらの固定枠70、曲がり梁41〜44、可動枠30、ミラー部16、及びトーションバー21,22は、シリコン基板の異方性エッチングにより一体的に形成されている。
【0045】
また、ミラー部16の表面には、金やアルミニウム等の金属薄膜による反射膜が形成されており、入射光線の反射率が高められている。また、曲がり梁41,42,43,44の表面には、電気−機械変換素子である圧電素子51,52,53,54が接着等により貼り付けられ、4つのユニモルフ部61,62,63,64が形成されている。曲がり梁41〜44は、圧電素子51〜54の曲げ変形により、可動枠30にY軸及びX軸回りに独立に傾動トルクを作用させ、可動枠30をY軸及びX軸を2軸で回動させる。
【0046】
ここで、可動枠30の回動動作について図7を用いて説明する。図7(a)〜(e)は2次元走査ミラー15の図6のVII-VII方向の断面図である。なお、図7(a)は静止時を示し、図7(b)〜(e)は駆動時を示している。
【0047】
図7(a)に示すように、圧電素子51,52の表裏には、それぞれ上部プラス(+)電極511,521、下部マイナス(−)電極512、522が設けられており、上部(+)電極511(521)と下部(−)電極512(522)との間に分極反転を起こさない範囲で交流電圧を印加することで、圧電素子51、52を伸縮させ、ユニモルフ部61,62を厚み方向に変位させる。同様に、圧電素子53,54の表裏には、それぞれ上部(+)電極531,541(図略)、下部(−)電極532,542(図略)が設けられている。
【0048】
最初に、X軸回りの回動動作について説明する。ドライバ13が圧電素子51に伸びる方向の電圧を印加し、圧電素子52に圧電素子51と逆位相の縮む方向の電圧を印加すると、ユニモルフ部61,62の一端は、固定枠70に固定・保持されているので、図7(b)に示すように、ユニモルフ部61は下方に曲がり、一方、ユニモルフ部62は上方に曲がる。同様に、圧電素子53,54にも圧電素子51,52とそれぞれ同じ位相の電圧を印加すると、ユニモルフ部63は下方に曲がり、一方、ユニモルフ部64は上方に曲がる。
【0049】
これにより、可動枠30にはX軸を中心とした傾動トルクが作用し、可動枠30はX軸を中心として矢印P方向に傾く。また、圧電素子51〜54に、図7(b)の場合とは逆位相の電圧を印加すると、前述と同様の原理で、図7(c)に示すように、可動枠30にはX軸を中心とした傾動トルクが作用し、X軸を中心として矢印Q方向に傾く。そして、圧電素子51〜54にこのような位相関係を保った交流電圧を印加すると、ユニモルフ部61〜64は、交流電圧に追従して上下方向の振動を繰り返し、可動枠30にシーソー的な傾動トルクが作用され、可動枠30はX軸を中心として所定変位角度まで回転振動する。
【0050】
次に、Y軸回りの回動動作についついて説明する。ドライバ13が圧電素子51,52のいずれにも伸びる方向の電圧を印加すると、それぞれのユニモルフ部61,62の一端は、固定枠70に固定・保持されているので、図7(d)に示すように、いずれも下方に曲がる。一方、圧電素子53、54に圧電素子51、52と逆位相の縮む方向の電圧を印加すると、図7(e)に示すように、ユニモルフ部63、64はいずれも上方に曲がる。これにより、可動枠30にはY軸を中心とした傾動トルクが作用し、可動枠30はY軸を中心として傾く。
【0051】
そして、圧電素子51〜54にこのような位相関係を保った交流電圧を印加すると、ユニモルフ部61〜64は、交流電圧に追従して上下方向の振動を繰り返し、可動枠30にシーソー的な傾動トルクが作用し、可動枠30はY軸を中心として所定変位角度まで回転振動する。
【0052】
このように、ドライバ13から4つのユニモルフ部61〜64にそれぞれ所定の電圧を印加することにより、可動枠30によって支持されているミラー部16のX軸及びY軸周りの傾きを任意に制御することができる。また、曲がり梁41〜44は、Y軸及びX軸を挟んで対称に配置され、曲がり梁41〜44に設けられたそれぞれの圧電素子51〜54は、同じ位相あるいは互いに180度異なる逆位相の駆動信号で駆動されるようにしたので、可動枠30を片振れなしにY軸及びX軸の2軸で独立して回動させることができる。
【0053】
次に、2次元走査ミラー15を用いたレーザビームWの偏向を行う方法について、図8を用いて説明する。レーザ光源7から射出されたレーザビームWを2次元走査ミラー15でラスター走査して画像を生成する。
【0054】
ここで、水平方向の走査周波数は例えば30kHz、垂直方向の走査周波数は例えば60Hz程度である。また、ミラー部16の水平、垂直方向の傾斜角度はそれぞれほぼ±10度である。また、ミラー部16の水平走査は正弦波の駆動電圧を用いた機械共振振動を行うことから、水平方向の走査領域の左右の周辺部は水平走査速度が極端に低下する。そのため、図8に示すように、画像表示領域17の水平域は、走査領域18の全てを使用せずに少し内側の領域としている。
【0055】
垂直走査はノコギリ波の駆動電圧を用いて行われていることから、ミラー部16の走査の直線性の良好な領域のみを通常の画像表示に使用するので、水平走査と同様、通常の画像表示領域17の垂直域は、走査領域18の全てを使用せずに少し内側の領域としている。
【0056】
次に、画像表示装置1の動作について説明する。電源が投入されると、システムコントローラ14は、表示コントローラ5に、黒画像データをラインバッファメモリ4へ出力するように指示する。
【0057】
上述したように、入力される画像データに応じて、ラインバッファメモリ4への画像データが書き込まれる。
【0058】
変調器6は、レーザ光源7を発振させ、ラインバッファメモリ4から画像データを1画素単位で読み出し、読み出した画像データを用いてレーザ光源7から射出されるレーザビームを変調する。
【0059】
レーザ光源7から射出された3本のレーザビームはダイクロミラー8により一本のレーザビームWに合波され、ミラー部16に入射する。
【0060】
レーザビームWは、走査駆動されるミラー部16によりラスター走査され、スクリーン10上に投影され、これにより高精細な画像を形成できる。
【0061】
図9は、スポットの位置ズレを検出するフローチャートである。組み立て時等において、検出器PDからの信号に基づいて、スポットの相対位置ズレを検出する。例えば図8のラスター走査の末端EDでは、画像を表示しないので、赤(R)、緑(G)、青(B)のレーザビームを順々に照射して、スポットの位置ズレを検出器PDで検出する。検出位置は、ラスター走査の末端EDに限らず、始端でも良いし、表示画像に影響が及ばない箇所ならいずれも可能である。
【0062】
ここで、図9のステップS101において、赤色レーザビームを出射して、検出器PDでスポット位置を検出する。次に、ステップS102において、緑色レーザビームを出射して、検出器PDでスポット位置を検出する。次に、ステップS103において、青色レーザビームを出射して、検出器PDでスポット位置を検出する。
【0063】
更に、ステップS104にて、スポットの相対ズレ量を検出して基準スポットを求める。ここでは、最も進んでいるスポットを基準として遅延をかけるものとする。図10に示す例では、あらかじめ設定された基準スポット(赤)に対して、緑、青のスポットの時間的な相対的なずれ量(前・後)の補正をかけるものとする。
【0064】
ステップS105で、相対ズレ量に応じて、データの入れ替えや出力タイミングの変更を行う。図11にデータの入れ替えの例を示す。左からの走査では、赤の画像データ(R0、R1,R2、・・・)に対して、緑の画像データ(G0,G1,G2、・・・)を1画素分後ろへずらし、青の画像データ(B0,B1,B2、・・・)を3画素分後ろへずらしている(図11(a)参照)。尚、折り返し後(右からの走査)は、逆に赤の画像データに対して、緑及び青の画像データは前にずらすこととなる(図11(b)参照)。
【0065】
尚、温度センサを設け、所定値を超えて温度変化が生じた場合に位置ズレの検出を行ったり、或いは衝撃センサを設け、所定値を超えて衝撃が生じた場合に位置ズレの検出を行ったり、タイマを設けて、前回の検出から所定時間が過ぎた場合位置ズレの検出を行うこともできる。
【0066】
図4に示す変調器6として、AOM(Acoustic Optical Modulator)を採用してもよい。この場合、変調器6r,6g,6bをレーザ光源7r,7g,7bとダイクロミラー8r,8g,8bとの間に設置すればよい。又、MEMSミラーの代わりに、ポリゴンミラーやガルバノミラー等を用いることができる。
【0067】
図12は、本実施の形態の変形例にかかる画像表示装置の図1と同様な図である。又、図13は、本実施の形態の変形例にかかる検出器の図2と同様な図である。図12に示す変形例では、センサレンズの代わりに、ホログラム回折素子HDEと、カラーフィルタCFとを設けている。又、本実施の形態の変形例にかかる検出器PDは、図13に示すように、3つの検出領域R1,R2、R3を設けており、各領域は図2と同様に4分割されている。
【0068】
本変形例によれば、ダイクロミラーMRgから出射された各色のレーザビームは、ハーフミラーHFで一部が反射される。ハーフミラーHFで反射されたレーザビームをホログラム回折素子HDEに入射させることで、赤色のレーザビームと青色のレーザビームと緑色のレーザビームとに分解することができる。その後、ホログラム回折素子HDEから出射された各色レーザビームは、カラーフィルタCFを通過することで相互の干渉が防止され、更にPDの受光面に入射する。このとき、赤色のレーザビームは領域R1に入射し、青色のレーザビームは領域R2に入射し、緑色のレーザビームは領域R3に入射して、上述したように4分割された検出面A〜Dに入射することで、同時に演算を行うことができる。又、各領域R1〜R3は、各々感度補正できるので、高精度に強度を検出できる。感度補正は回路側のゲインを変えることでも可能である。それ以外の構成は図1の例と同様である。本変形例によれば、同時に3色のレーザビームの演算ができるため、特に検出器PDをパワーモニタとして用いる際に有効である。尚、検出器PDは、各領域毎に分割した3つの検出器からなっていても良い。又、カラーフィルタCFは必ずしも設ける必要はない。
【0069】
図14は、別の変形例にかかる画像表示装置の図12と同様な図である。本変形例が、図12の変形例と異なる点は、ハーフミラーを省略する代わりに、メインミラーMMをハーフミラーとし、メインミラーMMを通過した一部のレーザビームをホログラム回折素子HDEに入射させている。それ以外の構成は、図12の例と同様である。
【符号の説明】
【0070】
CLb コリメータ
CLr コリメータ
HF ハーフミラー
LDb 青色光源
LDg 緑色光源
LDr 赤色光源
MEMS MEMSミラー
MM メインミラー
MRb ダイクロミラー
MRg ダイクロミラー
MRr ミラー
PD 検出器
SL センサレンズ
2 フレームメモリ
3 画像処理用メモリ
4 ラインバッファメモリ
6,6r,6g,6b 変調器
7,7r,7g,7b レーザ光源
8,8r,8g,8b ダイクロミラー
9 光スキャナ
10 スクリーン
14 システムコントローラ
15 2次元走査ミラー
16 ミラー部
17 画像表示領域
18 走査領域
100 レーザ制御部
120 同期信号出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色のレーザビームを出射するレーザ光源と、
バッファメモリに記憶された画像データに基づいて、前記レーザ光源を変調するレーザ制御部と、
前記レーザ光源から出射された前記異なる色のレーザビームを結合させ光路を一致させる結合手段と、
前記結合手段から出射したレーザビームをスクリーンの水平方向及び垂直方向に走査する走査部と、
前記結合手段と前記走査部との間に配置され、前記結合手段から出射したレーザビームを、所定のタイミングで検出する検出器と、を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記検出器は、画面の水平方向及び垂直方向に対応する方向に2行2列で4分割された検出面を有することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記レーザ制御部は、前記検出器からの信号に応じて、バッファメモリに記憶された画像データ中の各色データの出力タイミングを変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記出力タイミングの変更は、オンデューティ信号のタイミングの変更であることを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記検出器は、前記スクリーンの画像以外の場所に走査される前記レーザビームを検出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−145755(P2012−145755A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3879(P2011−3879)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】