説明

画像表示装置

【課題】非晶質酸化物を利用した新規な画像表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】アクティブマトリックス型の画像表示装置において、光制御素子を駆動するための電界効果型トランジスタの活性層12として、非晶質酸化物を用いる。アクティブマトリックス型の画像表示装置であって、光制御素子と、光制御素子を駆動するための電界効果型トランジスタと、を備え、電界効果型トランジスタの活性層は、電子キャリア濃度が1018/cm未満の非晶質酸化物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質酸化物をトランジスタの活性層に利用した画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶やエレクトロルミネッセンス(ElectroLuminescence:EL)技術等の進歩により、平面薄型画像表示装置(Flat Panel Display:FPD)が実用化されている。
【0003】
これらFPDは、ガラス基板上に設けた非晶質シリコン薄膜や多結晶シリコン薄膜を活性層に用いる電界効果型薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)のアクティブマトリックス回路により駆動されている。
【0004】
一方、これらFPDのより一層の薄型化、軽量化、耐破損性の向上を求めて、ガラス基板の替わりに軽量で可撓性のある樹脂基板を用いる試みも行われている。
【0005】
しかし、上述のシリコン薄膜を用いるトランジスタの製造は、比較的高温の熱工程を要し、一般的に耐熱性の低い樹脂基板上に直接形成することは困難である。
【0006】
そこで、低温での成膜が可能な、たとえばZnOを材料とした酸化物半導体薄膜を用いるTFTの開発が活発に行われている(特許文献1)。
【0007】
一方、従来の酸化物半導体薄膜を用いたTFTは、シリコンを用いたTFTに並ぶだけの充分な特性が得られていなかったためか、その応用技術を開発する技術水準には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−298062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、酸化物を活性層に用いたトランジスタを利用した、新規な画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の骨子は、アクティブマトリックス型の画像表示装置であって、
電気泳動粒子を含み構成されている光制御素子と、
該光制御素子を駆動するための電界効果型トランジスタと、を備え、
該電界効果型トランジスタの活性層はIn―Zn―Ga―O系酸化物、In―Zn―Ga―Mg−O系酸化物、In―Zn―O系酸化物、In―Sn―O系酸化物、In−O系酸化物、In―Ga―O系酸化物、及びSn−In−Zn―O系酸化物のうちのいずれかである非晶質酸化物を有し、該非晶質酸化物の電子キャリア濃度が1018/cm未満であり、
該電界効果型トランジスタは、ゲート電圧無印加時のソース−ドレイン端子間の電流が10マイクロアンペア未満であり、電界効果移動度が1cm/(V・秒)超であることを特徴とする。
【0011】
また、前記電界効果型トランジスタのゲート電極と該液晶との間には、該液晶側から配向膜および絶縁膜をこの順に有するのがよい。
【0012】
本発明者が酸化物半導体を検討したところ、ZnOは、一般に安定なアモルファス相を形成することができないことが判った。そして、殆どのZnOは多結晶相を呈するために、多結晶粒子間の界面でキャリアは散乱され、結果として電子移動度を大きくすることができないようである。
【0013】
また、ZnOには、酸素欠陥が入りやすく、キャリア電子が多数発生してしまうため、電気伝導度を小さくすることが難しい。このために、トランジスタのゲート電圧が無印加時でも、ソース端子とドレイン端子間に大きな電流が流れてしまい、TFTのノーマリーオフ動作を実現できないことが判った。また、トランジスタのオン・オフ比を大きくすることも難しいようである。
【0014】
また、本発明者は、特開2000−044236号公報に記載されている非晶質酸化物膜ZnIn(x+3y/2+3z/2)(式中、MはAl及びGaのうち少なくとも一つの元素である。)について検討した。この材料は、電子キャリア濃度が、1018/cm以上であり、単なる透明電極としては好適な材料である。
【0015】
しかし、電子キャリア濃度が1018/cm以上の酸化物をTFTのチャネル層に用いた場合、オン・オフ比が十分にとれず、ノーマリーオフ型のTFTにはふさわしくないことが分かった。
【0016】
つまり、従来の非晶質酸化物膜では、電子キャリア濃度が1018/cm未満の膜を得ることはできていなかった。
【0017】
そこで、本発明者は、電界効果型トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm未満の非晶質酸化物を用いているTFTを作製したところ、所望の特性のTFTが得られ、画像表示装置に適用できることを発見したのである。
【0018】
本発明者らは、InGaO(ZnO)、及びこの材料の成膜条件に関する研究開発を精力的に進めた結果、成膜時の酸素雰囲気の条件を制御することで、電子キャリア濃度を1018/cm未満にできることを見出した。
【0019】
本発明は、所望の電子キャリア濃度を実現した膜を用いた画像表示装置に関するものである。
【0020】
以下、具体的に本発明について説明する。
【0021】
本発明に用いられる前記光制御素子は、例えば液晶素子あるいは電気泳動粒子を含む素子のような非自発光の電気光学素子である。
【0022】
前記光制御素子を、液晶を利用して構成し、且つ
前記活性層と該液晶との間に、該液晶側から配向膜および絶縁膜をこの順に設けておくこともできる。
【0023】
前記光制御素子を、液晶を利用して構成し、且つ
前記電界効果型トランジスタのゲート電極と該液晶との間に、該液晶側から配向膜および絶縁膜をこの順に設けておくこともできる。
【0024】
前記絶縁膜は、例えば酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜である。
【0025】
本発明は、電界効果型トランジスタの出力により光透過率、もしくは光反射率が制御される光制御素子に関する。
【0026】
そして、光透過率制御素子、もしくは光反射率制御素子の電極に、In,Ga,Zn,Oを含む電子キャリア濃度が1018/cm未満である非晶質半導体を活性層として備えている電界効果型トランジスタの出力端子が接続されていることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の一実施形態は上記発光素子がエレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする。
【0028】
あるいは、本発明の一実施形態は上記光透過率制御素子もしくは光反射率制御素子が液晶セルであることを特徴とする。
【0029】
あるいは、本発明の一実施形態は上記光透過率制御素子もしくは光反射率制御素子が電気泳動型粒子セルであることを特徴とする。
【0030】
さらに本発明の一実施形態は、上記電気泳動型粒子セルが、流体と粒子を封止したカプセルを対向電極間に挟んだセルであることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の一実施形態は、上記光制御素子が、可撓性樹脂基体上に設けられていることを特徴とする。
【0032】
あるいは、本発明の一実施形態は上記光制御素子が、光透過性基体上に設けられていることを特徴とする。
【0033】
本発明の一実施形態はまた、アクティブマトリックス型に配線された複数の上記電界効果型トランジスタとともに、上記光制御素子が二次元的に複数配されていることを特徴とする。
【0034】
本発明の一実施形態はまた、テレビ受像機等の放送動画表示機器に関し、上記画像表示装置を具えることを特徴とする。
【0035】
本発明の一実施形態はまた、コンピュータ等のデジタル情報処理機器に関し、上記画像表示装置を具えることを特徴とする。
【0036】
本発明の一実施形態はまた、携帯電話、携帯型音楽再生機や携帯型動画再生機等の携帯型情報機器に関し、上記画像表示装置を具えることを特徴とする。
【0037】
本発明の一実施形態はまた、スチルカメラやムービーカメラ等の撮像機器に関し、それら撮像機器のビューファインダー用、撮影済画像の確認用、あるいは撮影情報の表示用等に、上記画像表示装置を具えることを特徴とする。
【0038】
本発明の一実施形態はまた、窓、扉、天井、床、内壁、外壁、仕切り等の建築構造物に関し、それら表面に画像を表示するための、上記画像表示装置を具えることを特徴とする。
【0039】
本発明の一実施形態はまた、車両、航空機、船舶等の移動体の、窓、扉、天井、床、内壁、外壁、仕切り等の構成物に関し、それら表面に画像を表示するための、上記画像表示装置を具えることを特徴とする。
【0040】
本発明の一実施形態はまた、公共交通機関車両内の広告手段や街中の広告板、広告塔等の広告機器に関し、それらに画像を表示するための、上記画像表示装置を具えることを特徴とする。
【0041】
また、本発明の一実施形態は、光透過率制御素子、もしくは光反射率制御素子の電極に、室温での電子キャリア濃度が1018/cm未満である非晶質酸化物を活性層としている電界効果型トランジスタの出力端子が、接続されている光制御素子である。
【0042】
また、本発明の一実施形態は、光透過率制御素子、もしくは光反射率制御素子の電極に、電子キャリア濃度が増加すると共に、電子移動度が増加する非晶質酸化物を活性層としている電界効果型トランジスタの出力端子が接続されている光制御素子である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、新規な画像表示装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】パルスレーザー蒸着法で成膜したIn−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物の電子キャリア濃度と成膜中の酸素分圧の関係を示すグラフである。
【図2】パルスレーザー蒸着法で成膜したIn−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物膜の電子キャリアの濃度と電子移動度の関係を示すグラフである。
【図3】アルゴンガスを用いた高周波スパッタ法で成膜したIn−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物膜の電気伝導度と成膜中の酸素分圧の関係を示すグラフである。
【図4】酸素分圧0.8Paの雰囲気中で、パルスレーザー蒸着法により成膜したInGaO(Zn1−xMgO)のxの値に対する電気伝導度、電子キャリア濃度、電子移動度の変化を示すグラフである。
【図5】トップゲート型TFT素子構造を示す模式図である。
【図6】Yをゲート絶縁膜として用いたトップゲート型TFT素子の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図7】光制御素子の模式的断面図である。
【図8】光制御素子の模式的断面図である。
【図9】パルスレーザー蒸着装置を示す模式図である。
【図10】スパッタ成膜装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本発明に係るアクティブマトリックス型の画像表示装置に関して、図8を用いて説明する。
【0046】
同図において、11は基体あるいは基板、12は非晶質酸化物、13はソース電極、14はドレイン電極、18は電極(画素電極)、15はゲート絶縁膜、16はゲート電極、21と22は高抵抗膜、23は液晶又は電気泳動型粒子を含む部分である。この23が、本発明における光制御素子の一部を構成する。なお、20は電極(あるいは電極を備えている基板)である。電極には、例えば、ITOなどの透明電極が好適に用いられる。
本発明においては、液晶などにより構成される光制御素子を駆動するための電界効果型トランジスタの出力端子(ドレイン電極14に相当)が、光制御素子を構成する電極18に接続されている。
【0047】
なお、本発明でいう光制御素子とは、光変調素子ということもできる。
【0048】
そして、該電界効果型トランジスタの活性層12としては、電子キャリア濃度が1018/cm未満の非晶質酸化物を利用するのである。
【0049】
また、本発明に用いる非晶質酸化物としては、電子キャリア濃度が増加すると共に、電子移動度が増加する傾向を示す非晶質酸化物を用いることもできる。
【0050】
なお、光制御素子として、液晶を用いる場合は、前記高抵抗膜21あるいは22は液晶を配向させるための配向膜(例えばポリイミド)となる。
【0051】
図8において、17は層間絶縁膜であるが、この絶縁膜17と前記高抵抗膜21とを同じ材料で構成することもできる。
【0052】
但し、絶縁性を高めるという点からは、前記高抵抗膜(配向膜)21と絶縁膜17とを異なる材料で形成するのがよい。例えば、前記絶縁膜17として、酸化シリコンや窒化シリコンなどを用いる。
【0053】
特に、窒化シリコンなどで構成される絶縁膜17を用いて、非晶質酸化物あるいはゲート絶縁膜15と、液晶との間を分離しておくのが好ましい。これは、電界効果型トランジスタを構成するゲート絶縁膜や非晶質酸化物に液晶などからの予期しない原子やイオン種などの進入を抑制するためである。ゲート絶縁膜15と絶縁膜17の材料とを異ならせることもできる。
【0054】
なお、液晶と前記絶縁膜17の間に、前記配向膜以外に他の層が介在していてもよい。
(非晶質酸化物)
本発明に係る非晶質酸化物の電子キャリア濃度は、室温で測定する場合の値である。室温とは、例えば25℃であり、具体的には0℃から40℃程度の範囲から適宜選択されるある温度である。なお、本発明に係るアモルファス酸化物の電子キャリア濃度は、0℃から40℃の範囲全てにおいて、1018/cm未満を充足する必要はない。例えば、25℃において、キャリア電子密度1018/cm未満が実現されていればよい。また、電子キャリア濃度を更に下げ、1017/cm以下、より好ましくは1016/cm以下にするとノーマリオフのTFTが歩留まり良く得られる。
【0055】
なお、1018/cm未満とは、好ましくは1×1018/cm未満であり、より好適には、1.0×1018/cm未満である。
【0056】
電子キャリア濃度の測定は、ホール効果測定により求めることが出来る。
【0057】
なお、本発明において、アモルファス酸化物とは、X線回折スペクトルにおいて、ハローパターンが観測され、特定の回折線を示さない酸化物をいう。
【0058】
本発明のアモルファス酸化物における、電子キャリア濃度の下限値は、TFTのチャネル層として適用できれば特に限定されるものではない。下限値は、例えば、1012/cmである。
【0059】
従って、本発明においては、後述する各実施例のようにアモルファス酸化物の材料、組成比、製造条件などを制御して、例えば、電子キャリア濃度を、1012/cm以上1018/cm未満とする。より好ましくは1013/cm以上1017/cm以下、更には1015/cm以上1016/cm以下の範囲にすることが好ましいものである。
【0060】
前記非晶質酸化物としては、InZnGa酸化物のほかにも、In酸化物、InZn1−x酸化物(0.2≦x≦1)、InSn1−x酸化物(0.8≦x≦1)、あるいはIn(Zn、Sn)1−x酸化物(0.15≦x≦1)から適宜選択できる。
【0061】
なお、In(Zn、Sn)1−x酸化物は、In(ZnSn1−y1−x酸化物と記載することができ、yの範囲は1から0である。
【0062】
なお、ZnとSnを含まないIn酸化物の場合は、Inの一部をGaに置換することもできる。即ち、InGa1−x酸化物(0≦x≦1)の場合である。
【0063】
以下に、本発明者らが作製することに成功した電子キャリア濃度が1018/cm未満の非晶質酸化物について詳述する。
【0064】
上記酸化物とは、In−Ga−Zn−Oを含み構成され、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表され、電子キャリア濃度が1018/cm未満であることを特徴とする。
【0065】
また上記酸化物は、In−Ga−Zn−Mg−Oを含み構成され、結晶状態の組成がInGaO(Zn1−xMgO)(mは6未満の自然数、0<x≦1)で表され、電子キャリア濃度が1018/cm未満であることを特徴とする。
【0066】
なお、これらの酸化物で構成される膜において、電子移動度が1cm/(V・秒)超になるように設計することも好ましい。
【0067】
上記膜をチャネル層に用いれば、トランジスターオフ時のゲート電流が0.1マイクロアンペヤ未満のノーマリーオフで、オン・オフ比が10超のトランジスタ特性を実現できる。そして、可視光に対して、透明あるいは透光性を有し、フレキシブルなTFTが実現される。
【0068】
なお、上記膜は、伝導電子数の増加と共に、電子移動度が大きくなることを特徴とする。透明膜を形成する基板としては、ガラス基板、樹脂製プラスチック基板又はプラスチックフィルムなどを用いることができる。
【0069】
上記非晶質酸化物膜をチャネル層に利用する際には、Al,Y、又はHfOの1種、又はそれらの化合物を少なくとも二種以上含む混晶化合物をゲート絶縁膜に利用できる。
【0070】
また、非晶質酸化物中に、電気抵抗を高めるための不純物イオンを意図的に添加せず、酸素ガスを含む雰囲気中で、成膜することも好ましい形態である。
【0071】
本発明者らは、この半絶縁性酸化物アモルファス薄膜は、伝導電子数の増加と共に、電子移動度が大きくなるという特異な特性を見出した。そして、その膜を用いてTFTを作成し、オン・オフ比、ピンチオフ状態での飽和電流、スイッチ速度などのトランジスタ特性が更に向上することを見出した。即ち、非晶質酸化物を利用して、ノーマリーオフ型のTFTを実現できることを見出した。
【0072】
非晶質酸化物薄膜を膜トランジスタのチャネル層として用いると、電子移動度が1cm/(V・秒)超、好ましくは5cm/(V・秒)超にすることができる。
【0073】
電子キャリア濃度が、1018/cm未満、好ましくは、1016/cm未満のときは、オフ時(ゲート電圧無印加時)のドレイン・ソース端子間の電流を、10マイクロアンペヤ未満、好ましくは0.1マイクロアンペア未満にすることができる。
【0074】
また、該膜を用いれば、電子移動度が1cm/(V・秒)超、好ましくは5cm/(V・秒)超の時は、ピンチオフ後の飽和電流を10マイクロアンペア超にでき、オン・オフ比を10超とすることができる。
【0075】
TFTでは、ピンチオフ状態では、ゲート端子に高電圧が印加され、チャネル中には高密度の電子が存在している。
【0076】
したがって、本発明によれば、電子移動度が増加した分だけ、より飽和電流値を大きくすることができる。この結果、オン・オフ比の増大、飽和電流の増大、スイッチング速度の増大など、トランジスタ特性の向上が期待できる。
【0077】
なお、通常の化合物中では、電子数が増大すると、電子間の衝突により、電子移動度は減少する。
【0078】
なお、上記TFTの構造としては、半導体チャネル層の上にゲート絶縁膜とゲート端子を順に形成するスタガ(トップゲート)構造や、ゲート端子の上にゲート絶縁膜と半導体チャネル層を順に形成する逆スタガ(ボトムゲート)構造を用いることができる。
(第1の成膜法:PLD法)
結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物薄膜は、mの値が6未満の場合は、800℃以上の高温まで、非晶質状態が安定に保たれる。しかし、mの値が大きくなるにつれ、すなわち、InGaOに対するZnOの比が増大して、ZnO組成に近づくにつれ、結晶化しやすくなる。
【0079】
したがって、非晶質TFTのチャネル層としては、mの値が6未満であることが好ましい。
【0080】
成膜方法は、InGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして、気相成膜法を用いるのが良い。気相成膜法の中でも、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法が適している。さらに、量産性の観点から、スパッタ法が最も適している。
【0081】
しかしながら、通常の条件で該非晶質膜を作成すると、主として酸素欠損が生じ、これまで、電子キャリア濃度を1018/cm未満、電気伝導度にして、10S/cm以下にすることができなかった。そうした膜を用いた場合、ノーマリーオフのトランジスタを構成することができない。
【0082】
本発明者らは、図9で示される装置により、パルスレーザー蒸着法で作製したIn−Ga−Zn−Oを作製した。
【0083】
図9に示すようなPLD成膜装置を用いて、成膜を行った。
同図において、701はRP(ロータリーポンプ)、702はTMP(ターボ分子ポンプ)、703は準備室、704はRHEED用電子銃、705は基板を回転、上下移動するための基板保持手段、706はレーザー入射窓である。また、707は基板、708はターゲット、709はラジカル源、710はガス導入口、711はターゲットを回転、上下移動するためのターゲット保持手段、712はバイパスライン、713はメインライン、714はTMP(ターボ分子ポンプ)である。また、715はRP(ロータリーポンプ)、716はチタンゲッターポンプ、717はシャッターである。また、図中718はIG(イオン真空計)、719はPG(ピラニ真空計)、720はBG(バラトロン真空計)、721は成長室(チャンバー)である。
【0084】
KrFエキシマレーザーを用いたパルスレーザー蒸着法により、SiOガラス基板(コーニング社製1737)上にIn−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物半導体薄膜を堆積させた。堆積前の処理として、基板の超音波による脱脂洗浄を、アセトン,エタノール,超純水を用いて、各5分間行った後、空気中100℃で乾燥させた。
【0085】
前記多結晶ターゲットには、InGaO(ZnO)焼結体ターゲット(サイズ20mmΦ5mmt)を用いた。これは、出発原料として、In:Ga:ZnO(各4N試薬)を湿式混合した後(溶媒:エタノール)、仮焼(1000℃:2h)、乾式粉砕、本焼結(1550℃:2h)を経て得られるものである。こうして作製したターゲットの電気伝導度は、90(S/cm)であった。
【0086】
成長室の到達真空を2×10−6(Pa)にして、成長中の酸素分圧を6.5(Pa)に制御して成膜を行った。
【0087】
チャンバー721内酸素分圧は6.5Pa、基板温度は25℃である。
【0088】
なお、ターゲット708と被成膜基板707間の距離は、30(mm)であり、入射窓716から入射されるKrFエキシマレーザーのパワーは、1.5−3(mJ/cm/pulse)の範囲である。また、パルス幅は、20(nsec)、繰り返し周波数は10(Hz)、そして照射スポット径は、1×1(mm角)とした。
【0089】
こうして、成膜レート7(nm/min)で成膜を行った。
得られた薄膜について、薄膜のすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは認めらなかったことから、作製したIn−Ga−Zn−O系薄膜はアモルファスであるといえる。
【0090】
さらに、X線反射率測定を行い、パターンの解析を行った結果、薄膜の平均二乗粗さ(Rrms)は約0.5nmであり、膜厚は約120nmであることが分かった。蛍光X線(XRF)分析の結果、薄膜の金属組成比はIn:Ga:Zn=0.98:1.02:4であった。
【0091】
電気伝導度は、約10−2S/cm未満であった。電子キャリア濃度は約1016/cm以下、電子移動度は約5cm/(V・秒)と推定される。
【0092】
光吸収スペクトルの解析から、作製したアモルファス薄膜の禁制帯エネルギー幅は、約3eVと求まった。以上のことから、作製したIn−Ga−Zn−O系薄膜は、結晶のInGaO(ZnO)の組成に近いアモルファス相を呈しており、酸素欠損が少なく、電気伝導度が小さな透明な平坦薄膜であることが分かった。
【0093】
具体的に図1を用いて説明する。同図は、In−Ga−Zn−Oから構成され、結晶状態を仮定した時の組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜を本実施例と同じ条件下で作成する場合の特性図である。この特性図は、酸素分圧を変化させた場合に、成膜された酸化物の電子キャリア濃度の変化を示したものである。
【0094】
本実施例と同じ条件下で酸素分圧を4.5Pa超の高い雰囲気中で、成膜することにより、図1に示すように、電子キャリア濃度を1018/cm未満に低下させることができた。この場合、基板の温度は意図的に加温しない状態で、ほぼ室温に維持されている。フレキシブルなプラスチックフィルムを基板として使用するには、基板温度は100℃未満に保つことが好ましい。
【0095】
酸素分圧をさらに大きくすると、電子キャリア濃度をさらに低下させることができる。例えば、図1に示す様に、基板温度25℃、酸素分圧5Paで成膜したInGaO(ZnO)薄膜では、さらに、電子キャリア数を1016/cmに低下させることができた。
【0096】
得られた薄膜は、図2に示す様に、電子移動度が1cm/(V・秒)超であった。しかし、本実施例のパルスレーザー蒸着法では、酸素分圧を6.5Pa以上にすると、堆積した膜の表面が凸凹となり、TFTのチャネル層として用いることが困難となる。
【0097】
従って、酸素分圧4.5Pa超、望ましくは5Pa超、6.5Pa未満の雰囲気で、パルスレーザー蒸着法を用いる。この方法で、結晶状態における組成InGaO(ZnO)(mは6未満の数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜を作製すれば、ノーマリーオフのトランジスタを構成することができる。
【0098】
また、該薄膜の電子移動度は、1cm/V・秒超が得られ、オン・オフ比を10超に大きくすることができた。
【0099】
以上、説明したように、本実施例に示した条件下でPLD法によりInGaZn酸化物の成膜を行う場合は、酸素分圧を4.5Pa以上6.5Pa未満になるように制御することが望ましい。
【0100】
なお、電子キャリア濃度を1018/cm未満を実現するためには、酸素分圧の条件、成膜装置の構成や、成膜する材料や組成などに依存する。
【0101】
次に、上記装置における酸素分圧6.5Paの条件で、アモルファス酸化物を作製し、図5に示すトップゲート型MISFET素子を作製した。具体的には、まず、ガラス基板(1)上に上記のアモルファスIn−Ga−Zn−O薄膜の作製法により、チャンネル層(2)として用いる厚さ120nmの半絶縁性アモルファスInGaO(ZnO)膜を形成した。
【0102】
さらにその上に、チャンバー内酸素分圧を1Pa未満にして、パルスレーザー堆積法により電気伝導度の大きなInGaO(ZnO)及び金膜をそれぞれ30nm積層する。そして、フォトリゾグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。最後にゲート絶縁膜(3)として用いるY膜を電子ビーム蒸着法により成膜した(厚み:90nm、比誘電率:約15、リーク電流密度:0.5MV/cm印加時に10−3A/cm)。その上に金を成膜し、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。
【0103】
MISFET素子の特性評価
図6に、室温下で測定したMISFET素子の電流−電圧特性を示す。ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことからチャネルがn型半導体であることが分かる。これは、アモルファスIn−Ga−Zn−O系半導体がn型であるという事実と矛盾しない。IDSはVDS=6V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的な半導体トランジスタの挙動を示した。利得特性を調べたところ、VDS=4V印加時におけるゲート電圧VGSの閾値は約−0.5Vであった。また、V=10V時には、IDS=1.0×10−5Aの電流が流れた。これはゲートバイアスにより絶縁体のIn−Ga−Zn−O系アモルファス半導体薄膜内にキャリアを誘起できたことに対応する。
【0104】
トランジスタのオン・オフ比は、10超であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約7cm(Vs)−1の電界効果移動度が得られた。作製した素子に可視光を照射して同様の測定を行なったが、トランジスタ特性の変化は認められなかった。
【0105】
本実施例によれば、電子キャリア濃度が小さく、したがって、電気抵抗が高く、かつ電子移動度が大きいチャネル層を有する薄膜トランジスタを実現できる。
【0106】
なお、上記したアモルファス酸化物は、電子キャリア濃度の増加と共に、電子移動度が増加し、さらに縮退伝導を示すという優れた特性を備えていた。
【0107】
本実施例では、ガラス基板上に薄膜トランジスタを作製したが、成膜自体が室温で行えるので、プラスチック板やフィルムなどの基板が使用可能である。
【0108】
また、本実施例で得られたアモルファス酸化物は、可視光の光吸収が殆どなく、透明なフレキシブルTFTを実現できる。
【0109】
(第2の成膜法:スパッタ法(SP法))
雰囲気ガスとしてアルゴンガスを用いた高周波SP法により、成膜する場合について説明する。
SP法は、図10に示す装置を用いて行った。同図において、807は被成膜基板、808はターゲット、805は冷却機構付き基板保持手段、814は、ターボ分子ポンプ、815はロータリーポンプ、817はシャッターである。また、818はイオン真空計、819はピラニ真空計、821は成長室(チャンバー)、830はゲートバルブである。
【0110】
被成膜基板807としては、SiOガラス基板(コーニング社製1737)を用意した。成膜前処理として、この基板の超音波脱脂洗浄を、アセトン、エタノール、超純水により各5分ずつ行った後、空気中100℃で乾燥させた。
【0111】
ターゲット材料としては、InGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体(サイズ20mmφ5mmt)を用いた。
【0112】
この焼結体は、出発原料として、In:Ga:ZnO(各4N試薬)を湿式混合(溶媒:エタノール)し、仮焼(1000℃:2h)、乾式粉砕、本焼結(1550℃:2h)を経て作製した。このターゲット808の電気伝導度は90(S/cm)であり、半絶縁体状態であった。
【0113】
成長室821内の到達真空は、1×10−4(Pa)であり、成長中の酸素ガスとアルゴンガスの全圧は、4〜0.1×10−1(Pa)の範囲での一定の値とした。そして、アルゴンガスと酸素との分圧比を変えて、酸素分圧を10−3〜2×10−1(Pa)の範囲で変化させた。
【0114】
また、基板温度は、室温とし、ターゲット808と被成膜基板807間の距離は、30(mm)であった。
【0115】
投入電力は、RF180Wであり、成膜レートは、10(nm/min)で行った。
【0116】
得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、作製したIn−Zn−Ga−O系膜はアモルファス膜であることが示された。
【0117】
さらに、X線反射率測定を行い、パターンの解析を行った結果、薄膜の平均二乗粗さ(Rrms)は約0.5nmであり、膜厚は約120nmであることが分かった。蛍光X線(XRF)分析の結果、薄膜の金属組成比はIn:Ga:Zn=0.98:1.02:4であった。
【0118】
成膜時の雰囲気の酸素分圧を変化させ、得られたアモルファス酸化物膜の電気伝導度を測定した。その結果を図3に示す。
【0119】
図3に示すように、酸素分圧を3×10−2Pa超の高い雰囲気中で、成膜することにより、電気伝導度を10S/cm未満に低下させることができた。
【0120】
酸素分圧をさらに大きくすることにより、電子キャリア数を低下させることができた。
【0121】
例えば、図3に示す様に、基板温度25℃、酸素分圧10−1Paで成膜したInGaO(ZnO)薄膜では、さらに、電気伝導度を約10−10S/cmに低下させることができた。また、酸素分圧10−1Pa超で成膜したInGaO(ZnO)薄膜は、電気抵抗が高すぎて電気伝導度は測定できなかった。この場合、電子移動度は測定できなかったが、電子キャリア濃度が大きな膜での値から外挿して、電子移動度は、約1cm/V・秒と推定された。
【0122】
すなわち、酸素分圧3×10−2Pa超、望ましくは5×10−1Pa超のアルゴンガス雰囲気で、スパッタ蒸着法で作製したIn−Ga−Zn−Oから構成され、結晶状態における組成InGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜を作製した。この透明アモルファス酸化物薄膜を用いて、ノーマリーオフで、かつオン・オフ比を10超のトランジスタを構成することができた。
【0123】
本実施例で示した装置、材料を用いる場合は、スパッタによる成膜の際の酸素分圧としては、例えば、3×10−2Pa以上、5×10−1Pa以下の範囲である。なお、パルスレーザー蒸着法およびスパッタ法で作成された薄膜では、図2に示す様に、伝導電子数の増加と共に、電子移動度が増加する。
【0124】
上記のとおり、酸素分圧を制御することにより、酸素欠陥を低減でき、その結果、電子キャリア濃度を減少できる。また、アモルファス状態では、多結晶状態とは異なり、本質的に粒子界面が存在しないために、高電子移動度のアモルファス薄膜を得ることができる。
【0125】
なお、ガラス基板の代わりに厚さ200μmのポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルムを用いた場合にも、得られたInGaO(ZnO)アモルファス酸化物膜は、同様の特性を示した。
【0126】
なお、ターゲットとして、多結晶InGaO(Zn1−xMgO)(mは6未満の自然数、0<x≦1)を用いれば、1Pa未満の酸素分圧下でも、高抵抗非晶質InGaO(Zn1−xMgO)膜を得ることができる。
【0127】
例えば、Znを80at%のMgで置換したターゲットを使用した場合、酸素分圧0.8Paの雰囲気で、パルスレーザー堆積法で得られた膜の電子キャリア濃度を1016/cm未満とすることができる(電気抵抗値は、約10−2S/cmである。)。
【0128】
こうした膜の電子移動度は、Mg無添加膜に比べて低下するが、その程度は少なく、室温での電子移動度は約5cm/(V・秒)で、アモルファスシリコンに比べて、1桁程度大きな値を示す。同じ条件で成膜した場合、Mg含有量の増加に対して、電気伝導度と電子移動度は、共に低下するので、Mgの含有量は、好ましくは、20%超、85%未満(xにして、0.2<x<0.85)である。
【0129】
上記した非晶質酸化物膜を用いた薄膜トランジスタにおいて、Al,Y、HfO、又はそれらの化合物を少なくとも二つ以上含む混晶化合物をゲート絶縁膜とすることが好ましい。
【0130】
ゲート絶縁薄膜とチャネル層薄膜との界面に欠陥が存在すると、電子移動度の低下及びトランジスタ特性にヒステリシスが生じる。また、ゲート絶縁膜の種類により、リーク電流が大きく異なる。このために、チャネル層に適合したゲート絶縁膜を選定する必要がある。Al膜を用いれば、リーク電流を低減できる。また、Y膜を用いればヒステリシスを小さくできる。さらに、高誘電率のHfO膜を用いれば、電子移動度を大きくすることができる。また、これらの膜の混晶を用いて、リーク電流、ヒステリシスが小さく、電子移動度の大きなTFTを形成できる。また、ゲート絶縁膜形成プロセス及びチャネル層形成プロセスは、室温で行うことができるので、TFT構造として、スタガ構造及び逆スタガ構造いずれをも形成することができる。
【0131】
このように形成したTFTは、ゲート端子、ソース端子、及び、ドレイン端子を備えた3端子素子で、セラミックス、ガラス、又はプラスチックなどの絶縁基板上に成膜した半導体薄膜を、電子又はホールが移動するチャネル層として用いたものである。また、このTFTはゲート端子に電圧を印加して、チャンネル層に流れる電流を制御し、ソース端子とドレイン端子間の電流をスイッチングする機能を有するアクテイブ素子である。
【0132】
なお、酸素欠損量を制御して所望の電子キャリア濃度を達成できていることが本発明においては重要である。
【0133】
上記記載においては、非晶質酸化物膜の酸素量(酸素欠損量)の制御を、成膜時に酸素を所定濃度含む雰囲気中で行うことで制御している。しかし、成膜後、当該酸化物膜を酸素を含む雰囲気中で後処理して酸素欠損量を制御(低減あるいは増加)することも好ましいものである。
【0134】
効果的に酸素欠損量を制御するには、酸素を含む雰囲気中の温度を0℃以上300℃以下、好ましくは、25℃以上、250℃以下、更に好ましくは100℃以上200℃以下で行うのがよい。
【0135】
勿論、成膜時にも酸素を含む雰囲気中で行い、且つ成膜後の後処理でも酸素を含む雰囲気中で後処理してもよい。また、所定の電子キャリア濃度(1018/cm未満)を得られるのであれば、成膜時には、酸素分圧制御は行わないで、成膜後の後処理を酸素を含む雰囲気中で行ってもよい。
【0136】
なお、本発明における電子キャリア濃度の下限としては、得られる酸化物膜をどのような素子や回路あるいは装置に用いるかにもよるが、例えば1014/cm以上である。
【0137】
(材料系の拡大)
さらに、組成系を拡大して研究を進めた結果、Zn,In及びSnのうち、少なくとも1種類の元素の酸化物からなるアモルファス酸化物で、電子キャリア濃度が小さく、かつ電子移動度が大きいアモルファス酸化物膜を作製できることを見出した。
【0138】
また、このアモルファス酸化物膜は、伝導電子数の増加と共に、電子移動度が大きくなるという特異な特性を有することを見出した。
【0139】
その膜を用いてTFTを作成し、オン・オフ比、ピンチオフ状態での飽和電流、スイッチ速度などのトランジスタ特性に優れたノーマリーオフ型のTFTを作成できる。
【0140】
本発明には、以下(a)から(h)の特徴を有する酸化物を用いることができる。
(a)室温での電子キャリア濃度が、1018/cm未満のアモルファス酸化物。
(b)電子キャリア濃度が増加すると共に、電子移動度が増加することを特徴とするアモルファス酸化物。
なおここで、室温とは0℃から40℃程度の温度をいう。アモルファスとは、X線回折スペクトルにおいて、ハローパターンのみが観測され、特定の回折線を示さない化合物をいう。また、ここでの電子移動度は、ホール効果測定で得られる電子移動度をいう。
(c)室温での電子移動度が、0.1cm/V・秒超であることを特徴とする上記(a)又は(b)に記載されるアモルファス酸化物。
(d)縮退伝導を示す上記(b)から(c)のいずれかに記載されるアモルファス酸化物である。なお、ここでの縮退伝導とは、電気抵抗の温度依存性における熱活性化エネルギーが、30meV以下の状態をいう。
(e)Zn,In及びSnのうち、少なくとも1種類の元素を構成成分として含む上記(a)から(d)のいずれかに記載されるアモルファス酸化物。
(f)上記(e)に記載のアモルファス酸化物に、Znより原子番号の小さい2族元素M2(M2は、Mg,Ca)、Inより原子番号の小さい3属元素M3(M3は、B,Al、Ga、Y),Snより小さい原子番号の小さい4属元素M4(M4は、Si,Ge,Zr)、5属元素M5(M5は、V,Nb,Ta)およびLu、Wのうち、少なくとも1種類の元素を含むアモルファス酸化物膜。
(g)結晶状態における組成がIn1−xM3(Zn1−yM2O)(0≦x、y≦1、mは0又は6未満の自然数)である化合物単体又はmの異なる化合物の混合体である(a)から(f)のいずれかに記載のアモルファス酸化物膜。M3たとえば、Gaであり、M2は例えば、Mgである。
【0141】
(h)ガラス基板、金属基板、プラスチック基板又はプラスチックフィルム上に設けた上記(a)から(g)記載のアモルファス酸化物膜。
【0142】
また、本発明は、(10)上記記載のアモルファス酸化物、又はアモルファス酸化物膜をチャネル層に用いた電界効果型トランジスタである。
【0143】
なお、電子キャリア濃度が1018/cm未満、1015/cm超のアモルファス酸化物膜をチャネル層に用い、ソース端子、ドレイン端子及びゲート絶縁膜を介してゲート端子を配した電界効果型トランジスタを構成する。ソース・ドレイン端子間に5V程度の電圧を印加したとき、ゲート電圧を印加しないときのソース・ドレイン端子間の電流を約10−7アンペヤにすることができる。
【0144】
酸化物結晶の電子移動度は、金属イオンのs軌道の重なりが大きくなるほど、大きくなり、原子番号の大きなZn,In,Snの酸化物結晶は、0.1から200cm/(V・秒)の大きな電子移動度を持つ。
【0145】
さらに、酸化物では、酸素と金属イオンとがイオン結合している。
【0146】
そのため、化学結合の方向性がなく、構造がランダムで、結合の方向が不均一なアモルファス状態でも、電子移動度は、結晶状態の電子移動度に比較して、同程度の大きさを有することが可能となる。
【0147】
一方で、Zn,In,Snを原子番号の小さな元素で置換することにより、電子移動度は小さくなる、こうした結果により、本発明のよるアモルファス酸化物の電子移動度は、約0.01cm/(V・秒)から20cm/(V・秒)である。
【0148】
上記酸化物を用いてトランジスタのチャネル層を作製する場合、トランジスタにおいて、Al、Y、HfO、又はそれらの化合物を少なくとも二つ以上含む混晶化合物をゲート絶縁膜とすることが好ましい。
【0149】
ゲート絶縁薄膜とチャネル層薄膜との界面に欠陥が存在すると、電子移動度の低下及びトランジスタ特性にヒステリシスが生じる。また、ゲート絶縁膜の種類により、リーク電流が大きく異なる。このために、チャネル層に適合したゲート絶縁膜を選定する必要がある。Al膜を用いれば、リーク電流を低減できる。また、Y膜を用いればヒステリシスを小さくできる。さらに、高誘電率のHfO膜を用いれば、電界効果移動度を大きくすることができる。また、これらの化合物の混晶からなる膜を用いて、リーク電流、ヒステリシスが小さく、電界効果移動度の大きなTFTを形成できる。また、ゲート絶縁膜形成プロセス及びチャネル層形成プロセスは、室温で行うことができるので、TFT構造として、スタガ構造及び逆スタガ構造いずれをも形成することができる。
【0150】
In酸化物膜は、気相法により成膜でき、成膜中の雰囲気に水分を、0.1Pa程度添加することにより、アモルファス膜が得られる。
【0151】
また、ZnO及びSnOは、アモルファス膜を得ることは難しいが、Inを、ZnOの場合には20原子量%程度、SnOの場合には、90原子量%程度添加することによりアモルファス膜を得ることができる。特に、Sn−In―O系アモルファス膜を得るためには、雰囲気中に窒素ガスを0.1Pa程度導入すればよい。
【0152】
上記のアモルファス膜に、Znより原子番号の小さい2族元素M2(M2は、Mg,Ca)、Inより原子番号の小さい3属元素M3(M3は、B,Al、Ga、Y),Snより小さい原子番号の小さい4属元素M4(M4は、Si,Ge,Zr)、5属元素M5(M5は、V,Nb,Ta)およびLu、Wのうち、少なくとも1種類の複合酸化物を構成する元素を添加できる。
【0153】
それにより、室温での、アモルファス膜をより安定化させることができる。また、アモルファス膜が得られる組成範囲を広げることができる。
【0154】
特に、共有結合性の強い、B,Si,Geの添加は、アモルファス相安定化に有効であるし、イオン半径の差の大きいイオンから構成される複合酸化物は、アモルファス相が安定化する。
【0155】
たとえば、In−Zn−O系では、Inが約20原子%超の組成範囲でないと、室温で安定なアモルファス膜は得難いが、MgをInと当量添加することにより、Inが約15原子量%超の組成範囲で、安定なアモルファス膜を得ることができる。
【0156】
気相法による成膜において、雰囲気を制御することにより、電子キャリア濃度が、1018/cm未満、1015/cm超のアモルファス酸化膜を得ることができる。
【0157】
アモルファス酸化物の成膜方法としては、パルスレーザー蒸着法(PLD法)、スパッタ法(SP法)及び電子ビーム蒸着法などの気相法を用いるのがよい。気相法の中でも、材料系の組成を制御しやすい点では、PLD法が、量産性の点からは、SP法が適している。しかし、成膜法は、これらの方法に限られるのものではない。
(PLD法によるIn−Zn−Ga−O系アモルファス酸化膜の成膜)
KrFエキシマレーザーを用いたPLD法により、ガラス基板(コーニング社製1737)上にIn−Zn―Ga―O系アモルファス酸化物膜を堆積させた。このとき、InGaO(ZnO)及びInGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をそれぞれターゲットとした。
【0158】
成膜装置は、既述の図9に記載されている装置を用い、成膜条件は、当該装置を用いた場合と同様とした。
【0159】
基板温度は25℃である。得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、2種類のターゲットから作製したIn−Zn−Ga−O系膜は、いずれもアモルファス膜であることが示された。
【0160】
さらに、ガラス基板上のIn−Zn―Ga―O系アモルファス酸化物膜のX線反射率測定を行い、パターンの解析を行った結果、薄膜の平均二乗粗さ(Rrms)は約0.5nmであり、膜厚は約120nmであることが分かった。
【0161】
蛍光X線(XRF)分析の結果、InGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして得られた膜の金属組成比はIn:Ga:Zn=1.1:1.1:0.9であった。また、InGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして得られた膜の金属組成比は、In:Ga:Zn=0.98:1.02:4であった。
【0162】
成膜時の雰囲気の酸素分圧を変化させ、InGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして得られたアモルファス酸化膜の電子キャリア濃度を測定した。その結果を図1に示す。酸素分圧が4.2Pa超の雰囲気中で成膜することにより、電子キャリア濃度を1018/cm未満に低下させることができた。この場合、基板の温度は意図的に加温しない状態でほぼ室温に維持されている。また、酸素分圧が6.5Pa未満の時は、得られたアモルファス酸化物膜の表面は平坦であった。
【0163】
酸素分圧が5Paの時、InGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして得られたアモルファス酸化膜の電子キャリア濃度は1016/cm、電気伝導度は、10−2S/cmであった。また、電子移動度は、約5cm/V・秒と推測された。光吸収スペクトルの解析から、作製したアモルファス酸化物膜の禁制帯エネルギー幅は、約3eVと求まった。
【0164】
酸素分圧をさらに大きくすると、電子キャリア濃度をさらに低下させることができた。図1に示す様に、基板温度25℃、酸素分圧6Paで成膜したIn−Zn−Ga−O系アモルファス酸化物膜では、電子キャリア濃度を8×1015/cm(電気伝導:約8×10−3S/cm)に低下させることができた。得られた膜は、電子移動度が1cm/(V・秒)超と推測された。しかし、PLD法では、酸素分圧を6.5Pa以上にすると、堆積した膜の表面が凸凹となり、TFTのチャネル層として用いることが困難となった。
【0165】
InGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとし、異なる酸素分圧で成膜したIn−Zn−Ga−O系アモルファス酸化物膜に関して、電子キャリア濃度と電子移動度の関係を調べた。その結果を図2に示す。電子キャリア濃度が、1016/cmから1020/cmに増加すると、電子移動度は、約3cm/(V・秒)から約11cm/(V・秒)に増加することが示された。また、InGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして得られたアモルファス酸化膜に関しても、同様の傾向が見られた。
【0166】
ガラス基板の代わりに厚さ200μmのポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルムを用いた場合にも、得られたIn−Zn−Ga−O系アモルファス酸化物膜は、同様の特性を示した。
【0167】
(PLD法によるIn−Zn−Ga−Mg−O系アモルファス酸化物膜の成膜)
ターゲットとして多結晶InGaO(Zn1−xMgO)(0<x≦1)を用い、PLD法により、ガラス基板上にInGaO(Zn1−xMgO)(0<x≦1)膜を成膜した。
【0168】
成膜装置は、図9に記載の装置を用いた。
【0169】
被成膜基板としては、SiOガラス基板(コーニング社製1737)を用意した。その基板に前処理として、超音波脱脂洗浄を、アセトン、エタノール、超純水により各5分間ずつ行った後、空気中100℃で.乾燥させた。ターゲットとしては、InGa(Zn1−xMgO)(x=1−0)焼結体(サイズ20mmΦ5mmt)を用いた。
【0170】
ターゲットは、出発原料In:Ga:ZnO:MgO(各4N試薬)を、湿式混合(溶媒:エタノール)、仮焼(1000℃:2h)、乾式粉砕、本焼結(1550℃:2h)を経て作製した。
【0171】
成長室到達真空は、2×10−6(Pa)であり、成長中の酸素分圧は、0.8(Pa)とした。基板温度は、室温(25℃)で行い、ターゲットと被成膜基板間の距離は、30(mm)であった。
【0172】
なお、KrFエキシマレーザーのパワーは、1.5(mJ/cm/pulse)、パルス幅は、20(nsec)、繰り返し周波数は、10(Hz)、照射スポット径は、1×1(mm角)とした。
【0173】
成膜レートは、7(nm/min)であった。
【0174】
雰囲気は酸素分圧0.8Paで、基板温度は25℃である。得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、作製したIn−Zn−Ga−Mg−O系膜はアモルファス膜であることが示された。得られた膜の表面は平坦であった。
【0175】
異なるx値のターゲットを用いて、酸素分圧0.8Paの雰囲気中で成膜したIn−Zn−Ga−Mg−O系アモルファス酸化物膜の電気伝導度、電子キャリア濃度及び電子移動度のx値依存性を調べた。
【0176】
その結果を、図4に示す。x値が0.4超のとき、酸素分圧0.8Paの雰囲気中で、PLD法により成膜したアモルファス酸化物膜では、電子キャリア濃度を1018/cm未満にできることが示された。また、x値が0.4超のアモルファス酸化物膜では、電子移動度は、1cm/V・秒超であった。
【0177】
図4に示すように、Znを80原子%のMgで置換したターゲットを使用した場合、酸素分圧0.8Paの雰囲気で、パルスレーザー堆積法で得られた膜の電子キャリア濃度を1016/cm未満とすることができる(電気抵抗値は、約10−2S/cmである。)。こうした膜の電子移動度は、Mg無添加膜に比べて低下するが、その程度は少なく、室温での電子移動度は約5cm/(V・秒)で、アモルファスシリコンに比べて、1桁程度大きな値を示す。同じ条件で成膜した場合、Mg含有量の増加に対して、電気伝導度と電子移動度は、共に低下するので、Mgの含有量は、好ましくは、20原子%超、85原子%未満(xにして、0.2<x<0.85)、より好適には0.5<x<0.85である。
【0178】
ガラス基板の代わりに厚さ200μmのポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルムを用いた場合にも、得られたInGaO(Zn1−xMgO)(0<x≦1)アモルファス酸化物膜は、同様の特性を示した。
(PLD法によるInアモルファス酸化物膜の成膜)
KrFエキシマレーザーを用いたPLD法により、In多結晶焼結体をターゲットとして、厚さ200μmのPETフィルム上にIn膜を成膜した。
【0179】
装置は、図9に示した装置を用いた。被成膜基板として、SiOガラス基板(コーニング社製1737)を用意した。
【0180】
この基板の前処理として、超音波脱脂洗浄を、アセトン、エタノール、超純水で各5分間ずつ行った後、空気中100℃で乾燥させた。
【0181】
ターゲットとしては、In焼結体(サイズ20mmΦ5mmt)を用いた。これは、出発原料In(4N試薬)を仮焼(1000℃:2h)、乾式粉砕、本焼結(1550℃:2h)を経て準備した。
【0182】
成長室到達真空は、2×10−6(Pa)、成長中の酸素分圧は、5(Pa)、基板温度は室温とした。
【0183】
酸素分圧は5Pa、水蒸気分圧は0.1Paとし、さらに、酸素ラジカル発生装置に200Wを印加して、酸素ラジカルを発生させた。
【0184】
ターゲットと被成膜基板間の距離は、40(mm)、KrFエキシマレーザーのパワーは0.5(mJ/cm/pulse)、パルス幅は、20(nsec)、繰り返し周波数は、10(Hz)、照射スポット径は1×1(mm角)であった。
【0185】
成膜レートは、3(nm/min)であった。
【0186】
得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、作製したIn−O系膜はアモルファス膜であることが示された。膜厚は、80nmであった。
【0187】
得られたIn−O系アモルファス酸化物膜の電子キャリア濃度は5×1017/cmで、電子移動度は、約7cm/V・秒であった。
【0188】
(PLD法によるIn−Sn−O系アモルファス酸化物膜の成膜)
KrFエキシマレーザーを用いたPLD法により、(In0.9Sn0.1)O3.1多結晶焼結体をターゲットとして、厚さ200μmのPETフィルム上にIn−Sn−O系酸化物膜を成膜した。
【0189】
具体的には、被成膜基板として、SiOガラス基板(コーニング社製1737)を用意した。基板前処理として、超音波脱脂洗浄をアセトン、エタノール、超純水を用いて各5分間ずつ行った。その後、空気中100℃で乾燥させた。
【0190】
ターゲットは、In−SnO焼結体(サイズ20mmφ5mmt)を準備した。これは、出発原料として、In−SnO(4N試薬)を湿式混合(溶媒:エタノール)、仮焼(1000℃:2h)、乾式粉砕、本焼結(1550℃:2h)を経て得られる。
【0191】
基板温度は室温である。酸素分圧は5(Pa)、窒素分圧は、0.1(Pa)とし、さらに、酸素ラジカル発生装置に200Wを印加して、酸素ラジカルを発生させた。
【0192】
ターゲットと被成膜基板間の距離は、30(mm)とし、KrFエキシマレーザーのパワーは、1.5(mJ/cm/pulse)、パルス幅は、20(nsec)とした。また、繰り返し周波数は、10(Hz)、照射スポット径は、1×1(mm角)であった。成膜レートは、6(nm/min)であった。
【0193】
得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、作製したIn−Sn−O系膜はアモルファス膜であることが示された。
【0194】
得られたIn−Sn−Oアモルファス酸化物膜の電子キャリア濃度は、8×1017/cmで、電子移動度は、約5cm2/V・秒であった。膜厚は、100nmであった。
(PLD法によるIn−Ga−O系アモルファス酸化物膜の成膜)
被成膜基板として、SiOガラス基板(コーニング社製1737)を用意した。
【0195】
基板の前処理として、超音波脱脂洗浄をアセトン、エタノール、超純水を用いて、各5分間行った後、空気中100℃で乾燥させた。
【0196】
ターゲットとして、(In1−x−(Ga(X=0−1)焼結体(サイズ20mmΦ5mmt)を用意した。なお、例えばx=0.1の場合は、ターゲットは、(In0.9Ga0.1多結晶焼結体ということになる。
【0197】
これは、出発原料:In−Ga(4N試薬)を、湿式混合(溶媒:エタノール)、仮焼(1000℃:2h)、乾式粉砕、本焼結(1550℃:2h)を経て得られる。
【0198】
成長室到達真空は、2×10−6(Pa)であり、成長中の酸素分圧は、1(Pa)とした。
【0199】
基板温度は、室温で行い、ターゲットと被成膜基板間の距離は、30(mm)、KrFエキシマレーザーのパワーは、1.5(mJ/cm/pulse)、パルス幅は、20(nsec)であった。そして、繰り返し周波数は、10(Hz)、照射スポット径は、1×1(mm角)であった。成膜レートは、6(nm/min)であった。
【0200】
基板温度は25℃である。酸素分圧は1Paであった。得られた膜に関し、膜面にすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは検出されず、作製したIn−Ga−O系膜はアモルファス膜であることが示された。膜厚は、120nmであった。
【0201】
得られたIn−Ga−Oアモルファス酸化物膜の電子キャリア濃度は、8×1016/cmで、電子移動度は、約1cm/V・秒であった。
(In−Zn−Ga−O系アモルファス酸化物膜を用いたTFT素子の作製(ガラス基板))
TFT素子の作製
図5に示すトップゲート型TFT素子を作製した。
【0202】
まず、ガラス基板(1)上に、InGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとし、酸素分圧5Paの条件で、前述したPLD装置を用いて、In−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物膜を作製した。チャンネル層(2)として用いる厚さ120nmのIn−Ga−Zn−O系アモルファス膜を形成した。
【0203】
さらにその上に、チャンバー内の酸素分圧を1Pa未満にして、PLD法により電気伝導度の大きなIn−Ga−Zn−O系アモルファス膜及び金膜をそれぞれ30nm積層した。そして、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。
【0204】
最後にゲート絶縁膜(3)として用いるY膜を電子ビーム蒸着法により成膜した(厚み:90nm、比誘電率:約15、リーク電流密度:0.5MV/cm印加時に10−3A/cm)。そして、その上に金を成膜し、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。チャネル長は、50μmで、チャネル幅は、200μmであった。
【0205】
TFT素子の特性評価
図6に、室温下で測定したTFT素子の電流−電圧特性を示す。ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことからチャネルがn型伝導であることが分かる。
【0206】
これは、アモルファスIn−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物膜がn型伝導体であるという事実と矛盾しない。IDSはVDS=6V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的な半導体トランジスタの挙動を示した。利得特性を調べたところ、VDS=4V印加時におけるゲート電圧VGSの閾値は約−0.5Vであった。
【0207】
また、V=10V時には、IDS=1.0×10−5Aの電流が流れた。これはゲートバイアスにより絶縁体のIn−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物膜内にキャリアを誘起できたことに対応する。
【0208】
トランジスタのオン・オフ比は、10超であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約7cm(Vs)−1の電界効果移動度が得られた。作製した素子に可視光を照射して同様の測定を行なったが、トランジスタ特性の変化は認められなかった。
【0209】
なお、アモルファス酸化物の電子キャリア濃度を1018/cm未満にすることでTFTのチャネル層として適用できる。この電子キャリア濃度としては、1017/cm以下がより好ましく、1016/cm以下にすると更に好ましかった。
(In−Zn−Ga−O系アモルファス酸化物膜を用いたTFT素子の作製(アモルファス基板))
図5に示すトップゲート型TFT素子を作製した。まず、ポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルム(1)上に、PLD法により、酸素分圧5Paの雰囲気で、チャンネル層(2)として用いる厚さ120nmのIn−Zn−Ga−O系アモルファス酸化物膜を形成した。このとき、InGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとした。
【0210】
さらにその上に、チャンバー内酸素分圧を1Pa未満にして、PLD法により電気伝導度の大きなIn−Zn−Ga−O系アモルファス酸化物膜及び金膜をそれぞれ30nm積層した。そして、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。最後にゲート絶縁膜(3)を電子ビーム蒸着法により成膜して、その上に金を成膜し、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。チャネル長は、50μmで、チャネル幅は、200μmであった。ゲート絶縁膜として、Y(厚さ:140nm),Al(厚さ:130μm)及びHfO(厚さ:140μm)を用いた3種類の上記の構造を有するTFTを作成した。
【0211】
TFT素子の特性評価
PETフィルム上に形成したTFTの室温下で測定した電流−電圧特性は、図6と同様であった。すなわち、ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことから、チャネルがn型伝導であることが分かる。これは、アモルファスIn−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物膜がn型伝導体であるという事実と矛盾しない。IDSはVDS=6V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的なトランジスタの挙動を示した。また、V=0のときには、Ids=10−8A,Vg=10V時には、IDS=2.0×10−5Aの電流が流れた。これはゲートバイアスにより絶縁体のIn−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物膜内に電子キャリアを誘起できたことに対応する。
【0212】
トランジスタのオン・オフ比は、10超であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約7cm(Vs)−1の電界効果移動度が得られた。
【0213】
PETフィルム上に作成した素子を、曲率半径30mmで屈曲させ、同様のトランジスタ特性の測定を行ったが、トランジスタ特性に変化は認められなかった。また、可視光を照射して同様の測定を行なったが、トランジスタ特性の変化は認められなかった。
【0214】
ゲート絶縁膜としてAl膜を用いたTFTでも、図6に示したものと類似のトランジスタ特性を示したが、V=0のときには、Ids=10−8A,Vg=10V時には、IDS=5.0×10−6Aの電流が流れた。トランジスタのオン・オフ比は、10超であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約2cm(Vs)−1の電界効果移動度が得られた。
【0215】
ゲート絶縁膜としてHfO膜を用いたTFTでも、図6に示したものと類似のトランジスタ特性を示したが、V=0のときには、Ids=10−8A,Vg=10V時には、IDS=1.0×10−6Aの電流が流れた。トランジスタのオン・オフ比は、10超であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約10cm(Vs)−1の電界効果移動度が得られた。
(PLD法によるInアモルファス酸化物膜を用いたTFT素子の作成)
図5に示すトップゲート型TFT素子を作製した。まず、ポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルム(1)上に、PLD法により、チャンネル層(2)として用いる厚さ80nmのInアモルファス酸化物膜を形成した。
【0216】
さらにその上に、チャンバー内酸素分圧を1Pa未満にして、さらに酸素ラジカル発生装置への印加電圧をゼロにして、PLD法により、電気伝導度の大きなInアモルファス酸化物膜及び金膜をそれぞれ30nm積層した。そして、フォトリゾグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。最後にゲート絶縁膜(3)として用いるY膜を電子ビーム蒸着法により成膜した。そして、その上に金を成膜して、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。
【0217】
TFT素子の特性評価
PETフィルム上に形成したTFTの室温下で測定した電流−電圧特性を測定した。ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことからチャネルがn型半導体であることが分かる。これは、In−O系アモルファス酸化物膜がn型伝導体であるという事実と矛盾しない。IDSはVDS=5V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的なトランジスタの挙動を示した。また、V=0V時には、2×10−8A、V=10V時には、IDS=2.0×10−6Aの電流が流れた。これはゲートバイアスにより絶縁体のIn−O系アモルファス酸化物膜内に電子キャリアを誘起できたことに対応する。
【0218】
トランジスタのオン・オフ比は、約10であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約10cm(Vs)−1の電界効果移動度が得られた。ガラス基板上に作成したTFT素子も同様の特性を示した。
【0219】
PETフィルム上に作成した素子を、曲率半径30mmで曲げ、同様のトランジスタ特性の測定を行ったが、トランジスタ特性に変化は認められなかった。
(PLD法によるIn−Sn−O系アモルファス酸化物膜を用いたTFT素子の作成)
図5に示すトップゲート型TFT素子を作製した。まず、ポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルム(1)上に、PLD法により、チャンネル層(2)として用いる厚さ100nmのIn−Sn−O系アモルファス酸化物膜を形成した。さらにその上に、チャンバー内酸素分圧を1Pa未満にして、さらに酸素ラジカル発生装置への印加電圧をゼロにして、PLD法により、電気伝導度の大きなIn−Sn−O系アモルファス酸化物膜及び金膜をそれぞれ30nm積層した。そして、フォトリゾグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。最後にゲート絶縁膜(3)として用いるY膜を電子ビーム蒸着法により成膜し、その上に金を成膜して、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。
【0220】
TFT素子の特性評価
PETフィルム上に形成したTFTの室温下で測定した電流−電圧特性を測定した。ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことからチャネルがn型半導体であることが分かる。これは、In−Sn−O系アモルファス酸化物膜がn型伝導体であるという事実と矛盾しない。IDSはVDS=6V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的なトランジスタの挙動を示した。また、V=0V時には、5×10−8A、V=10V時には、IDS=5.0×10−5Aの電流が流れた。これはゲートバイアスにより絶縁体のIn−Sn−O系アモルファス酸化物膜内に電子キャリアを誘起できたことに対応する。
【0221】
トランジスタのオン・オフ比は、約10であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約5cm(Vs)−1の電界効果移動度が得られた。ガラス基板上に作成したTFT素子も同様の特性を示した。
PETフィルム上に作成した素子を、曲率半径30mmで曲げ、同様のトランジスタ特性の測定を行ったが、トランジスタ特性に変化は認められなかった。
(PLD法によるIn−Ga−O系アモルファス酸化物膜を用いたTFT素子の作成)
図5に示すトップゲート型TFT素子を作製した。まず、ポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルム(1)上に、実施例6に示した成膜法により、チャンネル層(2)として用いる厚さ120nmのIn−Ga−O系アモルファス酸化物膜を形成した。さらにその上に、チャンバー内の酸素分圧を1Pa未満にして、さらに酸素ラジカル発生装置への印加電圧をゼロにして、PLD法により、電気伝導度の大きなIn−Ga−O系アモルファス酸化物膜及び金膜をそれぞれ30nm積層した。そして、フォトリゾグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。最後にゲート絶縁膜(3)として用いるY膜を電子ビーム蒸着法により成膜し、その上に金を成膜して、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。
【0222】
TFT素子の特性評価
PETフィルム上に形成したTFTの室温下で測定した電流−電圧特性を測定した。ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことからチャネルがn型半導体であることが分かる。これは、In−Ga−O系アモルファス酸化物膜がn型伝導体であるという事実と矛盾しない。IDSはVDS=6V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的なトランジスタの挙動を示した。また、V=0V時には、1×10−8A、V=10V時には、IDS=1.0×10−6Aの電流が流れた。これはゲートバイアスにより絶縁体のIn−Ga−O系アモルファス酸化物膜内に電子キャリアを誘起できたことに対応する。
【0223】
トランジスタのオン・オフ比は、約10であった。また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約0.8cm(Vs)−1の電界効果移動度が得られた。ガラス基板上に作成したTFT素子も同様の特性を示した。
【0224】
PETフィルム上に作成した素子を、曲率半径30mmで曲げ、同様のトランジスタ特性の測定を行ったが、トランジスタ特性に変化は認められなかった。
【0225】
なお、アモルファス酸化物の電子キャリア濃度を1018/cm未満にすることでTFTのチャネル層として適用できる。この電子キャリア濃度としては、1017/cm以下がより好ましく、1016/cm以下にすると更に好ましかった。
(第2の実施形態)
また、本発明は、電界効果型TFTの出力端子であるドレインに、エレクトロルミネッセンス素子などの発光素子、液晶セルや電気泳動型粒子セルの光透過率制御素子もしくは光反射率制御素子の入力電極が接続された光制御素子に関する。
【0226】
図7を用いて説明する。
【0227】
基体11上に堆積しパターニングした非晶質酸化物半導体膜12と、ソース電極13と、ドレイン電極14とゲート絶縁膜15と、ゲート電極16からTFTが構成されている。
ドレイン電極14に、層間絶縁膜17を介して電極18が接続されており、電極18は発光層19と接し、さらに発光層19が電極20と接している。
【0228】
発光層19に注入する電流を、ソース電極13からドレイン電極14に非晶質酸化物半導体膜12に形成されるチャネルを介して流れる電流値によって制御する。即ち、ゲート電極16により印加される電圧によって制御することができる。
【0229】
ここで、発光層19は無機もしくは有機のエレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
【0230】
また、図8に示すように、ドレイン電極14が延長されて電極18を兼ねており、これを高抵抗膜21、22に挟まれた液晶セルや電気泳動型粒子セル23からなる光透過率制御素子もしくは光反射率制御素子へ電圧を印加する電極18とすることもできる。
【0231】
この構成により、これら光透過率制御素子もしくは光反射率制御素子に印加する電圧を、ソース電極13からドレイン電極14に非晶質酸化物半導体膜12に形成されるチャネルを介して流れる電流値によって制御することが可能となる。
【0232】
即ち、TFTのゲート6の電圧によって制御することができる。ここで光透過率制御素子もしくは光反射率制御素子が流体と粒子を絶縁性皮膜中に封止したカプセルである場合、高抵抗膜21、22は、不要である。
【0233】
上述の2例においてTFTとしては、トップゲートのコプレナー型の構成で代表させたが、本発明は必ずしも本構成に限定されるものではない。TFTの出力端子であるドレイン電極と発光素子の接続が位相幾何的に同一であれば、スタッガ型等、他の構成も可能である。
【0234】
また、上述の2例においては、発光素子、光透過率制御素子もしくは光反射率制御素子を駆動する一対の電極が、基体と平行に設けられた例を図示したが、本発明は必ずしも本構成に限定されるものではない。
【0235】
TFTの出力端子であるドレイン電極と発光素子の接続が位相幾何的に同一であれば、いずれかの電極もしくは両電極が基体と垂直に設けられていてもよい。
【0236】
さらに、上述の2例においては、発光素子、光透過率制御素子もしくは光反射率制御素子に接続されるTFTをひとつだけ図示したが、本発明は必ずしも本構成に限定されるものではない。
【0237】
図中に示したTFTが、さらに本発明による別のTFTに接続されていてもよく、図中のTFTはそれらTFTによる回路の最終段であればよい。
【0238】
ここで、発光素子、光透過率制御素子もしくは光反射率制御素子を駆動する一対の電極が、基体と平行に設けられた場合、発光素子もしくは光反射率制御素子ならば、いずれかの電極が発光波長もしくは反射光の波長に対して透明である必要がある。あるいは光透過率制御素子ならば、両電極とも透過光に対して透明である必要がある。なお、本発明における、透明とは、実質的に透明である場合は勿論、光透過性があるものを含む概念である。
【0239】
さらに、本発明のTFTでは、全ての構成体を透明にすることも可能であり、これにより、透明な光制御素子を形成することもできる。また、軽量可撓で透明な樹脂製プラスチック基板など低耐熱性基体の上にも、かかる光制御素子を設けることができる。
【0240】
アクティブマトリックス型に配線された複数の上記TFTとともに、第1あるいは第2の実施形態で述べた前記光制御素子を、二次元的に複数配列させることもできる。
【0241】
たとえば、光制御素子を駆動するひとつのTFTのゲート電極5が、アクティブマトリックスのゲート線に接続され、同TFTのソース電極が信号先に配線されたアクティブマトリックス回路を構成する。こうすることで、各光制御素子を画素とした画像表示装置を提供することができる。
【0242】
さらに、互いに発光波長、透過光波長あるいは反射光波長の異なる隣接する複数の光制御素子で、一画素を構成すれば、カラー画像表示装置を提供することも可能である。勿論、この場合に、カラーフィルタを用いることもできる。
(その他の実施形態)
また、本発明は、上記画像表示装置を具えたテレビ受像機等の放送動画表示機器である。本発明の画像表示装置は、とくに携帯型の放送動画表示機器に軽量化と可撓性と破損時の安全性を与える効果を有する。
【0243】
また、本発明は、上記画像表示装置を具えたコンピュータ等のデジタル情報処理機器である。
【0244】
本発明の画像表示装置は、軽量可撓ゆえに据え置き型コンピュータディスプレイの設置の自由度と可搬性を与える。さらに、たとえばノート型コンピュータや個人用デジタル支援機器など携帯型のデジタル情報処理機器に軽量化と可撓性と破損時の安全性を与える効果を有する。
【0245】
また、本発明は、上記画像表示装置を具えた携帯電話、携帯型音楽再生機、携帯型動画再生機、ヘッドマウントディスプレイ等の携帯型情報機器である。本発明の画像表示装置は、これら携帯型情報機器に軽量化と可撓性と破損時の安全性を与える効果を有する。とくに透明化された本発明の画像表示装置をヘッドマウントディスプレイに用いる場合、シースルーの機器を提供することができる。
【0246】
また、本発明は、上記画像表示装置を具えたスチルカメラやムービーカメラ等の撮像機器である。本発明の画像表示装置は、これら撮像機器に軽量化と可撓性と破損時の安全性を与える効果を有する。
【0247】
また、本発明は、上記画像表示装置を具えた、窓、扉、天井、床、内壁、外壁、仕切り等の建築構造物である。本発明の画像表示装置は軽量可撓で透明化も可能であるゆえに、それら建築構造物に容易に付加することが可能であるばかりでなく、画像を表示しないときには建築構造物としての外観を損なうことがない効果を有する。
【0248】
また、本発明は、上記画像表示装置を具えた、車両、航空機、船舶等の移動体の、窓、扉、天井、床、内壁、外壁、仕切り等の構成物である。
【0249】
本発明の画像表示装置は軽量可撓で透明化も可能であるゆえに、それら建築構造物に容易に付加することが可能である。さらに、画像を表示しないときには建築構造物としての外観を損なうことがない効果を有する。移動体の外界を監視、観察するための透明な窓に本発明の透明化した画像表示装置を用いる場合、必要なときのみに情報画像を表示し、不要なときには外界の監視、観察を損なわない効果を有する。
【0250】
また、本発明は、上記画像表示装置を具えた、公共交通機関車両内の広告手段や街中の広告板、広告塔等の広告機器である。本発明の画像表示装置は、従来、主として印刷物など可変性のない媒体によって担われて来たそれらに広告機器に、随時変更可能であるばかりか、動画による表現も可能である。
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。
【0251】
まず、本発明に適用できる非晶質酸化物を利用したTFTの形成方法について説明する。
【0252】
(非晶質In−Ga−Zn−OTFTの形成)
スパッタ法により、InGaO(ZnO)組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして、表面処理を施したポリエーテルサルフィン系の透明プラスチック基板上に50nmの膜厚のIn−Ga−Zn−O系非晶質酸化物半導体膜を堆積する。
【0253】
チャンバー内酸素分圧は5×10−2Pa、基板温度は25℃である。この非晶質酸化物半導体膜をフォトリソグラフィー法で30μm×15μmの島にパターニングする。
【0254】
次に、同じ成膜法とパターニング法により、この島の長辺方向と平行に、50nm厚のITO膜からなる35μm×10μmと30μm×10μmの二種類の島を互いに非晶質酸化物半導体膜の島の中央で5μmの間隔を空けて形成する。
【0255】
ただし、これらITO膜の島はそれぞれ長辺方向の端を30μm×10μmの非晶質酸化物半導体膜の島と位置を合わせる。
【0256】
すなわち、30μm×10μmの非晶質酸化物半導体膜の島は、短辺方向両端の30μm×5μmの領域でITO膜と接している。
【0257】
35μm×10μmのITO膜の島は、短辺方向に5μm、長辺方向片側に5μmほど非晶質酸化物半導体膜の島からはみ出し、30μm×10μmのITO膜の島は短辺方向にのみ5μmほど非晶質酸化物半導体膜の島からはみ出している。
【0258】
次に同様の方法で、100nm厚のY膜を40μm×15μmの島として、30μm×15μmの非晶質酸化物半導体膜の島と、重心と長辺を合わせて設ける。
【0259】
最後に、同じく50nm厚のITO膜を30μm×5μmの島として、30μm×15μmの非晶質酸化物半導体膜の島の中央に長辺を平行にして形成する。
【0260】
以上の工程により、35μm×10μmと30μm×10μmのITO膜の島がそれぞれソース電極およびドレイン電極となる。これら両島の間隙に位置する非晶質酸化物半導体膜がチャネル領域となり、Y膜がゲート絶縁層となる。そして、最上部にある30μm×5μmのITO膜の島がゲート電極となる。このように、電界効果型のn−チャネルTFTが構成されている。
【0261】
このようなTFTは、電界効果移動度が5cm−1−1、閾値電圧が1V、オン/オフ比が3桁以上程度の特性を示す。
【0262】
なお、本発明の一実施形態のように、光透過性の基体に用いる場合、たとえば、眼鏡型の情報機器や、建築構造物、移動体の窓などのような光透過性の部材として用いる場合、いわゆるシースルーの画像表示機器が提供可能となる。
【0263】
本発明に係る電界効果型トランジスタは、活性層を含めて、可視光に対して透明、あるいは透光性を有するために、上記窓を透過した外光と本発明の装置、機器の表示画像を同一の光軸上に見ることができるからである。
(実施例1:上記TFTを用いた光制御素子の作製)
上記TFTにおいて、ドレイン電極をなすITO膜の島の短辺を100μmまで延長し、延長された90μmの部分を残し、ソース電極およびゲート電極への配線を確保した上で、TFTを絶縁層で被覆する。
【0264】
この上にポリイミド膜(配向膜)を塗布し、ラビング工程を施す。
【0265】
一方で、同じくプラスチック基板上にITO膜とポリイミド膜を形成し、ラビング工程を施したものを用意する。上記TFTを形成した基板と別途用意した基板とを、5μmの空隙を空けて対向して配置し、ここにネマチック液晶を注入する。
【0266】
さらにこの構造体の両側に一対の偏光板を設ける。
【0267】
ここで、TFTのソース電極に電圧を印加し、ゲート電極の印加電圧を変化させると、ドレイン電極から延長されたITO膜の島の一部である30μm×90μmの領域のみ、光透過率が変化する。
【0268】
またその透過率は、TFTがオン状態となるゲート電圧の下ではソース−ドレイン間電圧によっても連続的に変化させることができる。
【0269】
本実施例において、TFTを形成する基板として白色のプラスチック基板を用い、TFTの各電極を金に置き換える。そして、ポリイミド膜と偏光板を用いずに、白色と透明のプラスチック基板の空隙に、粒子と流体を絶縁性皮膜にて被覆したカプセルを充填させる。粒子としては電気泳動粒子を用いる。
【0270】
上述したTFTによって、延長されたドレイン電極と上部のITO膜間の電圧が制御される。カプセル内の粒子が上下に移動することによって、透明基板側から見た延長されたドレイン電極領域の反射率を制御することができる。
【0271】
また、本実施例において、TFTを複数隣接して形成して、たとえば、通常の4トランジスタ1キャパシタ構成の電流制御回路を構成する。そして、その最終段トランジスタのひとつに、図7で示したTFTを用いて、発光素子を駆動することもできる。
【0272】
たとえば、上述のITO膜をドレイン電極とするTFTを用い、ドレイン電極から延長されたITO膜の島の一部である30μm×90μmの領域に電荷注入層と発光層からなる有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する。
(実施例2:上記光制御素子を用いる画像表示装置)
上述の光制御素子を二次元に配列させる。たとえば、実施例1の光透過率制御素子もしくは光反射率制御素子を用いる。
【0273】
TFTを含めて約30μm×115μmの面積を占める光制御素子を、短辺方向に40μmピッチ、長辺方向に120μmピッチでそれぞれ7425×1790個方形配列する。長辺方向に7425個のTFTのゲート電極を貫くゲート配線を1790本設ける。そして、1790個のTFTのソース電極が、非晶質酸化物半導体膜の島から5μmはみ出した部分を短辺方向に貫く信号配線を7425本設ける。
【0274】
それぞれを、ゲートドライバ回路、ソースドライバ回路に接続する。さらに各光制御素子と同サイズで位置を合わせRGBが長辺方向に反復するカラーフィルタを表面に設ける。こうして、約211ppiでA4サイズのアクティブマトリックス型カラー画像表示装置を構成することができる。
【0275】
また、実施例1の発光素子を用いる光制御素子においても、ひとつの光制御素子に含まれる4つのTFTの内、第一TFTのゲート電極をゲート線に配線し、第二TFTのソース電極を信号線に配線する。さらに、発光素子の発光波長を、長辺方向にRGBで反復させれば、同じ解像度の発光型カラー画像表示装置を構成することができる。
【0276】
ここで、アクティブマトリックスを駆動するドライバ回路は、画素のTFTと同じ本発明のTFTを用いて構成しても良いし、既存のICチップを用いても良い。
(実施例3:上記画像表示装置を具える機器)
上述の画像表示装置に放送受信装置、音声画像処理装置など放送動画表示機器置に必須の装置を付加し、電源やインタフェイスとともに薄型の筐体に収める。これにより軽量薄型で落下や衝撃に対して安全性の高い放送動画表示機器を提供する。
【0277】
また、上述の画像表示装置に中央プロセッサ、記憶装置、ネットワーク装置などデジタル情報処理機器に必須の装置を接続し、電源やインタフェイスとともに薄型の筐体に収める。これにより軽量薄型で可搬性の高い一体型デジタル情報処理機器を提供する。
【0278】
また、上述の画像表示装置の面積と光制御素子数を減じて、対角で2−5インチ程度に制限し、これにプロセッサ、記憶装置、ネットワーク装置など携帯型情報機器に必須の装置を接続し、電源やインタフェイスとともに小型で薄型の筐体に収める。これにより軽量小型薄型で落下や衝撃に対して安全性の高い携帯型情報機器を提供する。
【0279】
また、同様の小型画像表示装置に撮像装置、記憶装置、信号処理装置など撮像機器に必須の装置を接続し、電源やインタフェイスとともに小型で軽量の筐体に収める。これにより軽量小型で落下や衝撃に対して安全性の高い撮像機器を提供する。
【0280】
また、逆にひとつの光制御素子のサイズを拡大すると共に、表示面積を拡大した画像表示装置を、上述の建築構造物に添付するか、組み込むことにより、任意の画像を表示することが可能なそれら建築構造物を提供する。
【0281】
また、上述の画像表示装置を移動体の構成物として組み込むことにより、任意の画像を表示することが可能なそれら移動体の構成物を提供する。
【0282】
また、上述の画像表示装置を広告機器の一部として組み込むことにより、任意の画像を表示することが可能なそれら広告機器を提供する。
【産業上の利用可能性】
【0283】
本発明に係る光制御素子および画像表示装置は、軽量薄型で破損に対する安全性の高い放送動画表示機器、デジタル情報処理機器、携帯情報機器、撮像機器、建築構造物、移動体の構成物、広告機器等に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0284】
11 基体
12 非晶質酸化物半導体膜
13 ソース電極
14 ドレイン電極
15 ゲート絶縁膜
16 ゲート電極
17 層間絶縁膜
18 電極
19 発光層
20 電極
21,22 高抵抗膜
23 液晶セル又は電気泳動型粒子セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動粒子を含み構成されている光制御素子と、
該光制御素子を駆動するための電界効果型トランジスタと、を備え、
該電界効果型トランジスタの活性層は、In―Zn―Ga―O系酸化物、In―Zn―Ga―Mg−O系酸化物、In―Zn―O系酸化物、In―Sn―O系酸化物、In−O系酸化物、In―Ga―O系酸化物、及びSn−In−Zn―O系酸化物のうちのいずれかである非晶質酸化物を有し、該非晶質酸化物の電子キャリア濃度が1018/cm未満であり、
該電界効果型トランジスタは、ゲート電圧無印加時のソース−ドレイン端子間の電流が10マイクロアンペア未満であり、電界効果移動度が1cm/(V・秒)超であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記光制御素子が、可撓性樹脂基体上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記光制御素子が、光透過性基体上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置、放送受信装置、及び音声処理装置を有する放送動画表示機器。
【請求項5】
前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置、中央プロセッサ、及び記憶装置を有する一体型デジタル情報処理機器。
【請求項6】
前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置、プロセッサ、及び記憶装置を有する携帯型情報処理機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−151485(P2012−151485A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53401(P2012−53401)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【分割の表示】特願2005−325365(P2005−325365)の分割
【原出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】