説明

画像表示装置

【課題】大容量メモリを用いることなく時間的な誤差拡散処理を行うとともに動画領域における画像表示品質の低下を抑制する。
【解決手段】画像表示に使用できるサブフィールドコードの中から上階調コードおよび下階調コードを生成する上下コード生成部と、空間誤差と直前フィールドの空間誤差の符号に基づき作成した時間誤差とを画像信号に加算した表示すべき階調に近い階調をもつコードを表示コードとして選択し、かつ表示すべき階調から表示コードの階調と所定の値とを減じた値を新たに発生した空間誤差として周辺画素に拡散する表示コード選択部80と、時間誤差を周辺画素に巡回させるとともに、表示コード選択部で作成した時間誤差と周辺画素から巡回されてきた時間誤差との和の絶対値が上階調コードの階調と下階調コードの階調との差よりも大きい場合に、上記和を前記所定の値として表示コード選択部に出力する時間誤差巡回部90とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点灯または非点灯の2値制御を組み合わせて階調を表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
点灯または非点灯の2値制御を行う表示装置として代表的なプラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対が複数形成された前面基板と、複数の平行なデータ電極が形成された背面基板とを対向配置し、その間に多数の放電セルが形成されている。そして放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色、緑色および青色の各色の蛍光体を励起発光させる。
【0003】
点灯または非点灯の2値制御を組み合わせて階調を表示する方法としては、1フィールドを点灯輝度の異なる複数のサブフィールドに分割し、点灯させるサブフィールドの組み合わせによって所望の階調を表示する、いわゆるサブフィールド法が一般的である。各サブフィールドは書込み期間および維持期間を有する。書込み期間では画像信号に応じた書込みパルスをデータ電極に印加して点灯させるべき放電セルで書込み放電を発生し壁電荷を形成する。そして維持期間では、走査電極と維持電極とからなる表示電極対にあらかじめ定められた数の維持パルスを印加して壁電荷を形成した放電セルで維持放電を発生させ、維持パルスの数に応じた輝度で点灯させる。
【0004】
プラズマディスプレイ装置は、入力した画像信号を、放電セルのサブフィールド毎の点灯・非点灯を示すサブフィールドコードに変換する画像信号処理回路を備えている。画像信号処理回路は、例えばROM等を用いた変換テーブルを用いて構成され、画像信号の1つの入力レベルに対して1つのサブフィールドコードが出力される。
【0005】
ところが、サブフィールド法で発生しやすい擬似輪郭を抑制するために、実際に表示する階調を制限し、かつ滑らかな階調表示と両立させるために、制限する階調を画像信号に応じて切り替える必要性が生じてきた。このような要望にこたえる方法として、例えば複数の変換テーブルを備え、映像信号の最小値および平均値からしきい値を算出し、このしきい値に基づき複数の変換テーブルの中から1つの変換テーブルを選択して、画像信号をサブフィールドコードに変換するプラズマディスプレイ装置が特許文献1に開示されている。
【0006】
一方、制限された階調を用いて滑らかな階調表示を行うための方法として誤差拡散処理がある。特許文献2には、同一フィールド内で空間的に誤差を拡散する方法、およびフィールドを越えて時間的に誤差を拡散する方法について記載されている。静止画を表示する場合には空間的に誤差を拡散させるとともに時間的にも誤差を拡散させることにより階調表示の滑らかさを格段に向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−098959号公報
【特許文献2】特開2005−106888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、パネルの大画面化、高精細度化、画像表示品質のさらなる向上とともに、多様な放送方式への対応、3Dディスプレイ表示等の多機能対応の要請等により、切り替えて使用する変換テーブルの数が膨大になり、変換テーブルを用いて画像信号処理回路を構成することが現実的ではなくなってきた。あるいは、変換テーブルを用いて構成した画像信号処理回路では、これらの要望にこたえることが難しくなってきた。
【0009】
また、時間的に誤差を拡散させる誤差拡散処理を行う場合には、誤差のデータを1フィールド遅延させる1フィールドメモリが必要となり、回路規模が大きくなるという課題もあった。加えて静止画と動画とを含む画像で時間的な誤差拡散を行うと、動画領域において画像表示品質が低下するという課題もあった。
【0010】
本発明はこれらの課題に鑑みなされたものであり、演算回路を用いて画像信号処理回路を構成し、かつ大容量メモリを用いることなく時間的な誤差拡散処理を行うとともに動画領域における画像表示品質の低下を抑制できる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、階調重みの定められた複数のサブフィールドで1フィールドを構成し、サブフィールドのそれぞれの点灯または非点灯の組合せを示すサブフィールドコードを用いて各画素で階調を表示する画像信号処理回路を備えた画像表示装置であって、画像信号処理回路は、画像表示に使用できるサブフィールドコードの中から画像信号の階調より大きくかつ最も近い階調をもつサブフィールドコードおよび画像信号の階調以下でかつ最も近い階調をもつサブフィールドコードをそれぞれ上階調コードおよび下階調コードとして生成する上下コード生成部と、現フィールドにおいて当該画素の周辺画素から拡散されてきた空間誤差と直前のフィールドにおいて当該画素で発生した空間誤差の符号に基づき作成した時間誤差とを画像信号の階調に加算して表示すべき階調を求め、上階調コードおよび下階調コードのうち表示すべき階調に近い階調をもつサブフィールドコードを表示コードとして選択するとともに、表示すべき階調から表示コードの階調と所定の値とを減じた値を当該画素で新たに発生した空間誤差として当該画素の周辺画素に拡散する表示コード選択部と、時間誤差を当該画素の周辺画素に巡回させるとともに、表示コード選択部で作成した時間誤差と当該画素の周辺画素から巡回されてきた時間誤差との和の絶対値が上階調コードの階調と下階調コードの階調との差よりも大きい場合に、表示コード選択部で作成した時間誤差と当該画素の周辺画素から巡回されてきた時間誤差との和を前記所定の値として表示コード選択部に出力する時間誤差巡回部とを有し、表示コードを用いてサブフィールドのそれぞれで各画素の点灯・非点灯を制御して階調を表示することを特徴とする。この構成により、演算回路を用いて画像信号処理回路を構成し、かつ大容量メモリを用いることなく時間的な誤差拡散処理を行うとともに動画領域における画像表示品質の低下を抑制できる画像表示装置を提供することができる。
【0012】
また本発明の画像表示装置の時間誤差巡回部は、入力した値をそれぞれ所定の期間遅延する複数の遅延部と、複数の遅延部の出力にそれぞれ所定の係数を乗算する複数の乗算部と、表示コード選択部で作成した時間誤差と複数の乗算部の出力とを加算する加算部と、加算部の出力の絶対値が上階調コードの階調および下階調コードの階調の差未満の場合には加算部の出力を遅延部のそれぞれに出力し、加算部の出力の絶対値が上階調コードの階調および下階調コードの階調の差以上の場合には加算部の出力を前記所定の値として表示コード選択部に出力する分配部とを有する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、演算回路を用いて画像信号処理回路を構成し、かつ大容量メモリを用いることなく時間的な誤差拡散処理を行うとともに動画領域における画像表示品質の低下を抑制できる画像表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における画像表示装置のパネルの分解斜視図である。
【図2】同画像表示装置のパネルの電極配列図である。
【図3】同画像表示装置のパネルの各電極に印加する駆動電圧波形図である。
【図4】1フィールド期間を8個のサブフィールドで構成した場合のコードセットの一例を示す図である。
【図5】同画像表示装置の回路ブロック図である。
【図6】同画像表示装置の画像信号処理回路の回路ブロック図である。
【図7A】同画像表示装置の基底コードセットの一例を示す図である。
【図7B】同画像表示装置の基底コードセットの一例を示す図である。
【図7C】同画像表示装置の基底コードセットの一例を示す図である。
【図8A】同画像表示装置のルールにより生成される中間コードセットの一例を示す図である。
【図8B】同画像表示装置のルールにより生成される中間コードセットの一例を示す図である。
【図8C】同画像表示装置のルールにより生成される中間コードセットの一例を示す図である。
【図9】同画像表示装置の表示コード選択部の回路ブロック図である。
【図10】同画像表示装置における空間誤差拡散回路の動作を説明する図である。
【図11】同画像表示装置の時間誤差作成部の動作を説明する図である。
【図12】同画像表示装置の時間誤差巡回部および表示コード選択部の回路ブロック図である。
【図13】同画像表示装置の画像信号処理回路の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の他の実施の形態における画像表示装置の表示コード選択部の回路ブロック図である。
【図15A】同画像表示装置で使用するディザパターンの一例を示す図である。
【図15B】同画像表示装置で使用するディザパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態における画像表示装置について、プラズマディスプレイパネルを用いたプラズマディスプレイ装置を例に、図面を用いて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における画像表示装置のパネル10の分解斜視図である。ガラス製の前面基板11上には、走査電極12と維持電極13とからなる表示電極対14が複数形成されている。そして表示電極対14を覆うように誘電体層15が形成され、その誘電体層15上に保護層16が形成されている。背面基板21上にはデータ電極22が複数形成され、データ電極22を覆うように誘電体層23が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁24が形成されている。そして、隔壁24の側面および誘電体層23上には赤色、緑色および青色の各色に点灯する蛍光体層25が設けられている。
【0017】
これら前面基板11と背面基板21とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対14とデータ電極22とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンとの混合ガスが封入されている。放電空間は隔壁24によって複数の区画に仕切られており、表示電極対14とデータ電極22とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが点灯することにより画像が表示される。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態における画像表示装置のパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極12およびn本の維持電極13が配列され、列方向に長いm本のデータ電極22が配列されている。そして1対の走査電極12および維持電極13と1つのデータ電極22とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
【0019】
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作について説明する。プラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち階調重みの定められた複数のサブフィールドで1フィールドを構成し、サブフィールドのそれぞれで各画素の点灯・非点灯を制御して階調を表示する。
【0020】
それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する初期化動作を行う。書込み期間では、点灯させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する書込み動作を行う。そして維持期間では、サブフィールド毎にあらかじめ決められた階調重みに応じた数の維持パルスを表示電極対に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて点灯させる。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態における画像表示装置のパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。
【0022】
サブフィールドSF1の初期化期間Tiの前半部では、データ電極22、維持電極13にそれぞれ電圧0(V)を印加し、走査電極12には、電圧Vi1から電圧Vi2まで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。すると走査電極12と維持電極13、走査電極12とデータ電極22との間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして走査電極12上に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極22上および維持電極13上には正の壁電圧が蓄積される。ここで、電極上の壁電圧とは電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0023】
初期化期間Tiの後半部では、維持電極13に正の電圧Veを印加し、走査電極12には、電圧Vi3からVi4まで緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。すると走査電極12と維持電極13、走査電極12とデータ電極22との間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして走査電極12上の負の壁電圧および維持電極13上の正の壁電圧が弱められ、データ電極22上の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。
【0024】
なお、初期化期間の動作としては、サブフィールドSF2の初期化期間に示したように、電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を走査電極12に印加するだけでもよい。この場合には、直前のサブフィールドで維持放電を行った放電セルで選択的に初期化放電が発生する。
【0025】
続く書込み期間Twでは、維持電極13に電圧Veを印加し、走査電極12に電圧Vcを印加する。
【0026】
次に、1行目の走査電極12に電圧Vaの走査パルスを印加するとともに、データ電極22のうち1行目に点灯させるべき放電セルのデータ電極22に電圧Vdの書込みパルスを印加する。するとデータ電極22上と走査電極12上との交差部の電圧差は放電開始電圧を超え、データ電極22と走査電極12との間および維持電極13と走査電極12との間に書込み放電が発生する。そして走査電極12上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極13上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極22上にも負の壁電圧が蓄積される。
【0027】
このようにして、1行目に点灯させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルスを印加しなかったデータ電極22と走査電極12との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで行い、書込み期間Twが終了する。
【0028】
続く維持期間Tsでは、維持電極13に電圧0(V)を印加するとともに走査電極12に電圧Vsの維持パルスを印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極12上と維持電極13上との電圧差が放電開始電圧を超え、走査電極12と維持電極13との間で維持放電が発生し蛍光体層25が発光して放電セルが点灯する。そして走査電極12上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極13上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極22上にも正の壁電圧が蓄積される。
【0029】
ただし、書込み期間Twにおいて書込み放電を起こさなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間Tiの終了時における壁電圧が保たれる。
【0030】
続いて、走査電極12には電圧0(V)を、維持電極13には電圧Vsの維持パルスをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは再び維持放電が起こり、維持電極13上に負の壁電圧が蓄積され走査電極12上に正の壁電圧が蓄積される。以降、階調重みに応じた数の維持パルスを走査電極12と維持電極13とに交互に印加して、放電セルを点灯させる。
【0031】
そして、維持期間Tsの最後には、維持電極13を電圧0(V)に戻した後、電圧Vrまで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を走査電極12に印加する。すると、維持放電を起こした放電セルの維持電極13と走査電極12との間で弱い放電が起こり、走査電極12上と維持電極13上との間の壁電圧が弱められる。その後、走査電極12に印加する電圧を電圧0(V)に戻す。こうして維持期間Tsが終了する。
【0032】
続くサブフィールドSF2およびそれ以降のサブフィールドの動作は維持パルスの数を除いて上述した動作とほぼ同様である。
【0033】
なお、本実施の形態において各電極に印加する電圧値は、例えば、電圧Vi1=140(V)、電圧Vi2=340(V)、電圧Vi3=200(V)、電圧Vi4=−190(V)、電圧Vc=−60(V)、電圧Va=−200(V)、電圧Vs=200(V)、電圧Vr=200(V)、電圧Ve=130(V)、電圧Vd=70(V)である。ただしこれらの値は、単に一例を挙げたに過ぎず、パネル10の特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。
【0034】
このようにしてサブフィールド法においては、1フィールドをあらかじめ階調重みの定められた複数のサブフィールドで構成し、放電セルを点灯させるサブフィールドの組合せにより階調を表示している。以下、サブフィールドのそれぞれの点灯または非点灯の組合せを「サブフィールドコード」または単に「コード」と呼び、複数のコードの集合を「コードセット」と呼ぶ。
【0035】
なお説明を簡単にするために、黒を表示したときの階調を「0」とし、階調重み「N」に対応する階調を「N」と表記する。また図面では、「階調重み」を単に「重み」と記載している。
【0036】
図4は、1フィールド期間を8個のサブフィールドで構成した場合のコードセットの一例を示す図である。ここで最も左の列に示した数値は階調を示し、その右側にはその階調を表示する際に各サブフィールドで放電セルを点灯させるか否か、すなわちサブフィールドコードを示している。ここで空欄は非点灯、「1」は点灯を示す。例えば図4において、階調「2」を表示するためには、サブフィールドSF2でのみ放電セルを点灯させればよく、この場合のサブフィールドコードは「01000000」である。また階調「14」を表示するためには、サブフィールドSF1、SF2、SF3およびSF5で放電セルを点灯させればよく、この場合のサブフィールドコードは「11101000」である。
【0037】
図5は、本発明の実施の形態における画像表示装置30の回路ブロック図である。画像表示装置30は、パネル10、画像信号処理回路31、データ電極駆動回路32、走査電極駆動回路33、維持電極駆動回路34、タイミング発生回路35および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
【0038】
画像信号処理回路31は、階調重みの定められた複数のサブフィールドで1フィールドを構成し、サブフィールドのそれぞれの点灯または非点灯の組合せを示すサブフィールドコードを用いてパネル10の各画素で階調を表示するための信号処理回路である。そして画像信号を入力し、階調を表示するためのサブフィールドコードである表示コードを出力する。詳細は後述するが、本実施の形態においては画像信号から表示コードへの変換を、変換テーブルを用いるのではなく、論理計算を用いて実行している。
【0039】
データ電極駆動回路32は、画像信号処理回路31から出力された各色の表示コードを用いてサブフィールドのそれぞれで各画素の点灯・非点灯を制御する書込みパルスに変換し、データ電極22のそれぞれに印加して階調を表示する。
【0040】
タイミング発生回路35は水平同期信号、垂直同期信号に基づき、各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。走査電極駆動回路33は、タイミング信号に基づき図3に示した駆動電圧波形を作成し、走査電極12のそれぞれに印加する。維持電極駆動回路34は、タイミング信号に基づき図3に示した駆動電圧波形を作成し、維持電極13のそれぞれに印加する。
【0041】
図6は、本発明の実施の形態における画像表示装置30の画像信号処理回路31の回路ブロック図である。画像信号処理回路31は、属性検出部40と、基底コード生成部50と、ルール生成部60と、上下コード生成部70と、表示コード選択部80と、時間誤差巡回部90とを有する。
【0042】
属性検出部40は、画像信号とそれを表示する画素の位置との関係を特定するとともに、各画素に対応する画像信号の時間微分、空間微分等に基づき、動画領域・静止画領域の検出、明るさが変化する画像の輪郭部の検出等を行う。そしてそれらを各画素に対応する画像信号の属性として出力する。
【0043】
基底コード生成部50は、入力した画像信号の階調(以下、「入力階調」と呼称する)よりも大きくかつ最も近い階調をもつ基底コードを上階調基底コードとして生成し出力する。ここで基底コードとは、点灯するサブフィールドのうち最も階調重みの大きいサブフィールドの階調重みよりも小さい階調をもつ全てのサブフィールドが点灯するサブフィールドとなるコードである。基底コードはサブフィールドコードの基本となるコードであって、階調重みの小さいサブフィールドから順にひとつずつまたは2つずつ点灯させて生成したコードである。またこのようにして生成したコードセットを基底コードセットと呼ぶ。
【0044】
図7A〜図7Cは、本発明の実施の形態における画像表示装置の基底コードセットの一例を示す図である。図7Aは、NTSC規格で用いられることが多い基底コードセットの一例である。この基底コードセットは、階調重みの小さいサブフィールドを先頭に、階調重みが順次大きくなるようにサブフィールドを配列する。そして階調重みの小さいサブフィールドから順にひとつずつ点灯させて生成したコードセットである。したがってこの基底コードセットに含まれる基底コードの数は、(1フィールドを構成するサブフィールドの数+1)である。
【0045】
また図7Bは、PAL規格で用いられることが多い基底コードセットの一例である。この基底コードセットは、階調重みが順次大きくなるように配列されたサブフィールド群を2つ有する。そして階調重みの小さいサブフィールドから順にひとつまたは2つずつ点灯させて生成したコードセットである。したがってこの基底コードセットに含まれる基底コードの数は、(1フィールドを構成するサブフィールドの数+1)以下である。
【0046】
また図7Cは、3D(立体視)用ディスプレイ装置で用いられる基底コードセットの一例である。この基底コードセットは、階調重みの最も小さいサブフィールドを先頭に配置し、次に階調重みの最も大きいサブフィールドを配置し、以降は階調重みが順次小さくなるようにサブフィールドを配列する。そして最も階調重みの小さいサブフィールドから順にひとつずつ点灯させて生成したコードセットである。
【0047】
本実施の形態においては、基底コード生成部50は、基底コード記憶部52と基底コード選択部54とを有する。基底コード記憶部52は、基底コードセットと各基底コードの表示する階調とを記憶している。基底コード選択部54は、基底コードのそれぞれの階調と入力階調とを比較して、入力階調を超えかつ最も近い階調の基底コードを選択し、上階調基底コードとして出力する。
【0048】
ルール生成部60は、選択した上階調基底コードに非点灯サブフィールドを追加して画像表示に用いるコードの数を増やすためのルールを、画像信号および画像信号に付随する属性に基づき生成する。しかし無制限に非点灯サブフィールドを追加することはできない。例えば全てのサブフィールドを非点灯サブフィールドとして生成されたコードの階調は「0」となるが、このようなルールは許されない。また階調重みの大きいサブフィールドに多くの非点灯サブフィールドを追加することはできない。
【0049】
ルール生成部60で生成が許されるルールは、上階調基底コードの階調以下であって、入力階調以下でありかつ最も近い階調の基底コードの階調(下階調基底コード)以上の階調をもつコードを生成するルールである。ルール生成部60で生成されるルールは、詳細は後述するが、1つめに追加する非点灯サブフィールドに関するルール、2つめに追加する非点灯サブフィールドに関するルール、非点灯を禁止するサブフィールドに関するルールで記述される。
【0050】
上下コード生成部70は、画像表示に使用できるサブフィールドコードの中から、画像信号の階調より大きくかつ最も近い階調をもつサブフィールドコードおよび画像信号の階調以下でかつ最も近い階調をもつサブフィールドコードをそれぞれ上階調コードおよび下階調コードとして生成する。
【0051】
本実施の形態においては、基底コード生成部50で生成した上階調基底コードにルール生成部60で生成したルールを適用して生成できるサブフィールドコードの中から、入力階調より大きくかつ最も近い階調をもつサブフィールドコードを上階調コードとして生成し、入力階調以下でかつ最も近い階調をもつサブフィールドコードを下階調コードとして生成する。
【0052】
本実施の形態においては、上下コード生成部70は、中間コード生成部72と、上下コード選択部74とを有する。
【0053】
中間コード生成部72は、上階調基底コードに非点灯サブフィールドを追加して画像表示に使用するコードを生成する。こうして生成されたコードを「中間コード」と呼称する。また中間コードにもとの上階調基底コードを加えたテーブルを「中間コードセット」と称する。
【0054】
図8A〜図8Cは、本発明の実施の形態における画像表示装置のルールにより生成される中間コードセットの一例を示す図である。図8Aは、1つめに追加する非点灯サブフィールドに関するルール「非点灯サブフィールドを1つ追加する」というルールを図7Aに示した基底コード「11111100」に適用して生成した中間コードセットを示す図である。この例では基底コードに6つの点灯サブフィールドSF1〜SF6が存在するので、このうちの1つを非点灯サブフィールドに変更することにより6個の中間コードが得られる。ただし中間コード「11111000」は基底コードに等しく、それ以外の5個のコードが新たに生成された中間コードである。
【0055】
図8Bは、1つめに追加する非点灯サブフィールドに関するルール「非点灯サブフィールドを1つ追加する」に加えて、2つめに追加する非点灯サブフィールドに関するルール「新たに生成された中間コードのうちで階調の最も小さいコードのサブフィールドSF2に非点灯サブフィールドを追加する」というルールを、基底コード「11111100」に適用して生成した中間コードセットを示す図である。この例では6個の中間コードが新たに生成される。
【0056】
図8Cは、1つめに追加する非点灯サブフィールドに関するルール「非点灯サブフィールドを1つ追加する」に加えて、非点灯を禁止するサブフィールドに関するルール、「サブフィールドSF1、SF2の非点灯を禁止する」というルールを基底コード「11111100」に適用して生成した中間コードセットを示す図である。この例では3個の中間コードが新たに生成される。
【0057】
このように中間コード生成部72は、基底コード生成部50が生成した上階調基底コードにルール生成部60で生成されたルールを適用して中間コードセットを生成する。
【0058】
上下コード選択部74は、中間コード生成部72で生成した中間コードセットに含まれるコードそれぞれの階調と入力階調とを比較して、入力階調より大きくかつ最も近い階調をもつコードを上階調コードとして選択し出力する。また入力階調以下でかつ最も近い階調をもつコードを下階調コードとして選択し出力する。
【0059】
表示コード選択部80は、現フィールドにおいて当該画素の周辺画素から拡散されてきた空間誤差と直前のフィールドにおいて当該画素で発生した空間誤差の符号に基づき作成した時間誤差とを、画像信号の当該画素の階調に加算して表示すべき階調を求める。そして上階調コードおよび下階調コードのうち表示すべき階調に近い階調をもつサブフィールドコードを表示コードとして選択する。そして、表示すべき階調から表示コードの階調と所定の値とを減じた値を当該画素で新たに発生した空間誤差として同一フィールド内で当該画素の周辺画素に拡散する。さらに、上階調コードおよび下階調コードのどちらを表示コードとして選択したかを示す1ビット情報にもとづき、後述するように、静止画領域の画像信号に対してフィールドを越えた時間的な誤差拡散を行う。
【0060】
図9は、本発明の実施の形態における画像表示装置30の表示コード選択部80の回路ブロック図である。表示コード選択部80は、表示コード出力部81と、減算部82と、遅延部83a〜83dと、乗算部84a〜84dと、加算部85と、1F遅延部86と、時間誤差作成部87とを有する。
【0061】
表示コード出力部81は、上階調コード、下階調コード、表示すべき諧調を入力する。そして上階調コードおよび下階調コードのうち、表示すべき階調に近いほうのコードを表示コードとして出力する。このとき表示すべき階調と表示コードの階調との差を求め、減算部82に出力する。さらに上階調コードおよび下階調コードのどちらを表示コードとして選択したかをしめす1ビット情報を1F遅延部86に出力する。
【0062】
減算部82は、表示コード出力部81から出力される空間誤差から時間誤差巡回部90の出力を減算して、新しく発生した空間誤差として出力する。詳細については後述するが、静止画領域では時間誤差巡回部90の出力は「0」となるので、減算部82は表示コード出力部81の出力をそのまま出力する。
【0063】
遅延部83aは表示コード出力部81から出力される誤差を1画素分遅延し、遅延部83bは同誤差を(1ライン−1画素)分遅延し、遅延部83cは同誤差を1ライン分遅延し、遅延部83dは同誤差を(1ライン+1画素)分遅延する。そして乗算部84aは1画素分遅延した誤差に係数k4をかけ、乗算部84bは(1ライン−1画素)分遅延した誤差に係数k3をかけ、乗算部84cは1ライン分遅延した誤差に係数k2をかけ、乗算部84dは(1ライン+1画素)分遅延した誤差に係数k1をかける。
【0064】
加算部85は、入力階調に、乗算部84a〜84dから出力される空間誤差を加算し、さらに後述する時間誤差作成部87から出力される時間誤差を加算する。そしてこれらの誤差を加算した階調を表示すべき階調として表示コード出力部81に出力する。
【0065】
ここで、表示コード出力部81と、遅延部83a〜83dと、乗算部84a〜84dと、加算部85とは誤差を空間的に拡散する空間誤差拡散回路を構成する。
【0066】
図10は、本発明の実施の形態における画像表示装置における空間誤差拡散回路の動作を説明する図である。図10の中心に示した画素(当該画素)には、左上の画素で発生した空間誤差に係数k1をかけた値が拡散され、上の画素で発生した空間誤差に係数k2をかけた値が拡散され、右上の画素で発生した空間誤差に係数k3をかけた値が拡散され、左の画素で発生した空間誤差に係数k4をかけた値が拡散される。また当該画素で発生した空間誤差に係数k4をかけた値を右の画素に拡散し、当該画素で発生した空間誤差に係数k3をかけた値を左下の画素に拡散し、当該画素で発生した空間誤差に係数k2をかけた値を下の画素に拡散し、当該画素で発生した空間誤差に係数k1をかけた値を右下の画素に拡散する。
【0067】
本実施の形態においては、各係数の値を、k1=1/16、k2=4/16、k3=3/16、k4=8/16と設定するか、または、k1=3/16、k2=4/16、k3=1/16、k4=8/16と設定する。何れの値に設定するかは乱数を用いて決定している。
【0068】
1F遅延部86は、表示コード出力部81でどちらのコードを選択したかを示す1ビット情報を、1フィールド期間遅延する。このように1F遅延部86が扱う情報は1ビットであるため、記憶容量の小さい1ビットのフィールドメモリで1F遅延部86を構成することができる。
【0069】
時間誤差作成部87は、前フィールドにおいて当該画素でどちらのコードが選択されたかを示す1ビット情報と、当該画素の現フィールドにおける入力階調に基づき、当該画素の時間誤差を作成し加算部85に出力する。
【0070】
図11は、本発明の実施の形態における画像表示装置の時間誤差作成部87の動作を説明する図である。時間誤差作成部87は、現フィールドにおける入力階調X、および入力階調Xに対する上階調Xuと下階調Xdとを用いて、時間誤差Etを次のように作成する。
前フィールドにおいて下階調Xdを選択した場合は、
Et=M・(X−Xd)
前フィールドにおいて上階調Xuを選択した場合は、
Et=M・(X−Xu)
ここで、Mは時間誤差の寄与の大きさを決める定数であり、Mの値が大きいほど時間誤差の寄与は大きくなる。本実施の形態においては、例えば、M=1/4である。
【0071】
このように時間誤差作成部87は、正の定数Mを用いて、直前のフィールドで発生した空間誤差の符号が正の場合には[(定数M)×{(画像信号の階調X)−(下階調コードの階調Xd)}]を時間誤差Etとして出力し、直前のフィールドで発生した空間誤差の符号が負の場合には[(定数M)×{(画像信号の階調X)−(上階調コードの階調Xu)}]を時間誤差Etとして出力する。
【0072】
静止画領域の画像信号に対して、当該画素の時間誤差が作成できる理由について、以下に説明する。静止画領域では、前フィールドにおける当該画素の入力階調Xと現フィールドにおける当該画素の入力階調Xとは等しい。そのため前フィールドにおける当該画素の上階調Xuおよび下階調Xdと現フィールドにおける当該画素の上階調Xuおよび下階調Xdも等しいと考えてよい。
【0073】
このとき、例えば直前のフィールドにおいて下階調Xdを選択した場合は、直前のフィールドにおいて発生した空間誤差の符号は正である。ここで現フィールドにおける入力階調Xが下階調Xd付近の階調であれば、直前のフィールドにおいて発生した空間誤差は小さいと考えられる。そのため時間誤差Etは正の小さな値または「0」である。しかし現フィールドにおける入力階調Xが上階調Xu付近の階調であれば直前のフィールドにおいても正の大きな空間誤差が発生したと考えられる。そのため時間誤差Etは正の大きな値である。
【0074】
また、例えば前フィールドにおいて上階調Xuを選択した場合は、直前のフィールドにおいて発生した空間誤差の符号は負である。ここで現フィールドにおける入力階調Xが下階調Xd付近の階調であれば、直前のフィールドにおいて負の大きな空間誤差が発生したと考えられる。そのため時間誤差Etは負の大きな値である。しかし現フィールドにおける入力階調Xが上階調Xu付近の階調であれば、直前のフィールドにおいて発生した空間誤差は小さいと考えられる。そのため時間誤差Etは負の小さな値または「0」である。
【0075】
このように本実施の形態においては、表示コード選択部80は、空間誤差の符号を1ビット情報として次のフィールドまで遅延する1ビットフィールドメモリで構成された1F遅延部86と、静止画領域において、直前のフィールドで発生した空間誤差の符号が正の場合には画像信号の階調が上階調コードの階調に近いほど絶対値の大きい正の値を時間誤差として出力し、直前のフィールドで発生した空間誤差の符号が負の場合には画像信号の階調が下階調コードの階調に近いほど絶対値が大きい負の値を時間誤差として出力する時間誤差作成部87とを有する。そして表示コード出力部81と、1F遅延部86と、時間誤差作成部87と、加算部85とが誤差を時間的に拡散する時間誤差拡散回路を構成し、静止画領域において誤差を時間的および空間的に拡散させることにより、階調表示の滑らかさを格段に向上させている。
【0076】
ただしここで注意すべきは、時間誤差Etは前フィールドから拡散された実際の誤差ではない。図9から明らかなように、表示コード出力部81から出力される実際の誤差は、すべて空間誤差として隣接画素に拡散される。そのため、時間誤差の空間平均が「0」にならない場合は時間誤差の全体は保存されず、階調が忠実に表示されなくなる。しかしながら、静止画領域においては、時間誤差作成部87で作成した時間誤差は空間平均すると「0」となる。そのため、階調表示の忠実性が損なわれるおそれはない。
【0077】
一方、動画領域の画像信号に対しては、直前のフィールドにおける当該画素の入力階調Xと現フィールドにおける当該画素の入力階調Xとは必ずしも等しくない。また直前のフィールドにおける当該画素の上階調Xuおよび下階調Xdと現フィールドにおける当該画素の上階調Xuおよび下階調Xdも等しいとはかぎらない。そのため、動画領域において時間誤差作成部87で作成した時間誤差は空間平均すると必ずしも「0」にならず、階調表示の忠実性が損なわれるおそれがある。時間誤差巡回部90は、時間誤差の空間平均が「0」にならない場合であっても階調表示の忠実性を補償することにより、動画領域における画像表示品質の低下を抑制するために設けている。
【0078】
時間誤差巡回部90は、時間誤差を当該画素の周辺画素に巡回させるとともに、表示コード選択部80で作成した時間誤差と当該画素の周辺画素から巡回されてきた時間誤差との和の絶対値が上階調コードの階調と下階調コードの階調との差よりも大きい場合に、表示コード選択部80で作成した時間誤差と当該画素の周辺画素から巡回されてきた時間誤差との和を所定の値として表示コード選択部80に出力する。そして、表示コード選択部80は、表示すべき階調から表示コードの階調と時間誤差巡回部90から出力された所定の値とを減じた値を当該画素で新たに発生した空間誤差として当該画素の周辺画素に拡散する。
【0079】
図12は、本発明の実施の形態における画像表示装置30の時間誤差巡回部90および表示コード選択部80の回路ブロック図である。時間誤差巡回部90は、分配部91と、遅延部93a〜93dと、乗算部94a〜94dと、加算部95とを有する。
【0080】
分配部91は、加算部95の出力の絶対値が上階調コードの階調Xuおよび下階調コードの階調Xdの差(Xu−Xd)未満の場合には加算部95の出力を遅延部93a〜93dのそれぞれに出力する。このとき表示コード選択部80の減算部82には何も出力しない(または「0」を出力する)。一方、加算部95の出力の絶対値が上階調コードの階調Xuおよび下階調コードの階調Xdの差(Xu−Xd)以上の場合には加算部95の出力を所定の値として表示コード選択部80に出力する。このとき遅延部93a〜93dのそれぞれには何も出力しない(または「0」を出力する)。
【0081】
遅延部93a〜93dは入力した値をそれぞれ所定の期間遅延し、乗算部94a〜94dは遅延部93a〜93dの出力にそれぞれ所定の係数を乗算する。本実施の形態においては、遅延部93aは分配部91から出力される値を1画素分遅延し、遅延部93bは同値を(1ライン−1画素)分遅延し、遅延部93cは同値を1ライン分遅延し、遅延部93dは同値を(1ライン+1画素)分遅延する。そして乗算部94aは遅延部93aの出力に係数k4をかけ、乗算部94bは遅延部93bの出力に係数k3をかけ、乗算部94cは遅延部93cの出力に係数k2をかけ、乗算部94dは遅延部93dの出力に係数k1をかける。
【0082】
加算部95は、表示コード選択部80の時間誤差作成部87で作成した時間誤差と乗算部94a〜94dの出力とを加算する。そして加算した値を分配部91に出力する。
【0083】
ここで、分配部91と、遅延部93a〜93dと、乗算部94a〜94dと、加算部95とは表示コード選択部80の空間誤差拡散回路と類似の回路を構成する。
【0084】
上述したように、静止画領域において時間誤差作成部87で作成した時間誤差は空間平均すると「0」となる。そのため、時間誤差巡回部90の加算部95の出力の絶対値が上階調コードの階調Xuおよび下階調コードの階調Xdの差(Xu−Xd)以上になることはなく、分配部91は表示コード選択部80の減算部82に何も出力しない(または「0」を出力する)。このように静止画領域においては、表示コード選択部80は時間誤差巡回部90の影響を受けることなく、空間的に誤差を拡散させるとともに時間的にも誤差を拡散させる誤差拡散動作を行う。
【0085】
一方、動画領域においては、分配部91に入力した時間誤差の巡回値の絶対値が上階調コードの階調Xuおよび下階調コードの階調Xdの差(Xu−Xd)以上になった場合には、分配部91は加算部95の出力を所定の値として表示コード選択部80の減算部82に出力する。すると減算部82は、表示コード出力部81から出力された空間誤差から所定の値を減じた値を新たに発生した空間誤差として拡散する。これにより、時間誤差の空間平均が「0」にならない動画領域においても誤差の全体は保存されるので、階調表示の忠実性が損なわれるおそれはない。
【0086】
次に、画像信号処理回路31の動作について説明する。なお以下では、図7Aに示した基底コードセットを使用し、図8Aに示したルール、すなわち「点灯サブフィールドの1つを非点灯サブフィールドに変更する」というルールを追加すると仮定して説明する。
【0087】
図13は、本発明の実施の形態における画像表示装置の画像信号処理回路31の動作を示すフローチャートである。
【0088】
(ステップS41)1つの画素に対応する画像信号を入力し、属性検出部40がその画像信号に付随する属性を検出する。
【0089】
例えば、このときの画素に対応する画像信号の階調値(入力階調)が「25」であり、動画領域の画像信号であったとする。
【0090】
(ステップS50)基底コード生成部50が、画像信号に対する上階調基底コードを選択する。
【0091】
基底コード生成部50は、基底コード記憶部52に記憶されている基底コードセットの基底コードそれぞれの階調と入力階調とを比較して、入力階調よりも大きくかつ最も近い階調をもつ基底コードを上階調基底コードとして選択し出力する。ここでは入力階調が「25」であるので、階調「32」をもつ基底コード「11111100」が階調基底コードとして出力される。
【0092】
(ステップS61)ルール生成部60が中間コードセット生成のためのルールを生成する。ここでは「非点灯サブフィールドを1つ追加する」という基本的なルールを追加する。
【0093】
(ステップS72)中間コード生成部72が中間コードセットを生成する。
【0094】
中間コード生成部72は、ルール生成部60が生成したルールに従って中間コードを生成する。ここでは、基底コード「11111100」のサブフィールドSF1〜SF6を非点灯サブフィールドに置き換えることにより、6つの中間コード「11111000」、「11110100」、「11101100」、「11011100」、「10111100」、「01111100」を生成する。こうして図8Aに示した中間コードセットが得られる。
【0095】
(ステップS74)上下コード選択部74が上階調コードと下階調コードを選択する。
【0096】
上下コード選択部74は、中間コードセットの各コードの階調と入力階調とを比較して、入力階調よりも大きくかつ最も近い階調をもつコードを上階調コードとして選択する。また入力階調以下であってかつ最も近い階調をもつコードを下階調コードとして選択する。ここでは入力階調が「25」であるので、上階調コードとして階調「27」をもつコード「11101100」を選択する。また下階調コードとして階調「24」をもつコード「11110100」を選択する。
【0097】
(ステップS80)表示コード選択部80の時間誤差作成部87は、前フィールドにおいて当該画素でどちらのコードが選択されたかを示す1ビット情報と、当該画素の現フィールドにおける入力階調と上階調コードおよび下階調コードとに基づき、当該画素の時間誤差を作成する。
【0098】
例えば入力階調が「25」であり、1F遅延部86から出力される1ビット情報が下階調を示す「0」であれば、時間誤差は、「(25−24)/4」=「0.25」である。また入力階調が「25」であり、1F遅延部86から出力される1ビット情報が上階調を示す「1」であれば、時間誤差は、「(25−27)/4」=「−0.5」である。
【0099】
(ステップS81)表示コード選択部80の加算部85が表示すべき階調を算出する。
【0100】
加算部85は、入力階調に乗算部84a〜84dから出力された空間誤差および時間誤差作成部87から出力された時間誤差を加算して、対応する画素で表示すべき階調を算出する。例えば入力階調が「25」であり、時間誤差が「−0.5」であり、空間誤差の合計が「0.85」であれば、表示すべき階調は「25.35」である。また入力階調が「25」であり、時間誤差が「0.25」であり、誤差の合計が「0.85」であれば、表示すべき階調は「26.1」である。
【0101】
このとき同時に、時間誤差巡回部90の加算部95は、時間誤差作成部87から出力された時間誤差に、乗算部94a〜94dの出力を加算して、分配部91に出力する。
【0102】
(ステップS82)表示コード選択部80の表示コード出力部81が表示に使用する表示コードを決定し出力する。
【0103】
表示コード出力部81は、表示すべき階調と上階調コードの階調および下階調コードの階調とを比較する。そして表示すべき階調が上階調コードの階調に近い場合は、実際の表示に用いる表示コードとして上階調コードを出力する。また表示すべき階調が下階調コードの階調に近い場合は、実際の表示に用いる表示コードとして下階調コードを出力する。
【0104】
例えば、表示すべき階調が「25.35」であれば表示コードとして階調「24」をもつコード「11110100」を出力し、表示すべき階調が「26.1」であれば表示コードとして階調「27」をもつコード「11101100」を出力する。
【0105】
このとき同時に、時間誤差巡回部90の分配部91は、加算部95の出力の絶対値が上階調コードの階調および下階調コードの階調の差未満の場合には加算部95の出力を遅延部93a〜93dのそれぞれに出力し、上階調コードの階調および下階調コードの階調の差以上の場合には加算部95の出力を所定の値として表示コード選択部80の減算部82に出力する。
【0106】
上階調コードの階調および下階調コードの階調の差が「3」であるので、例えば加算部95の出力が「−3.2」であれば、分配部91は減算部82に「−3.2」を出力する。また、例えば加算部95の出力が「−2.5」であれば、分配部91は減算部82に「0」を出力する。
【0107】
(ステップS83)表示コード選択部80の表示コード出力部81が誤差を算出して減算部82に出力するとともに、上階調コードおよび下階調コードのどちらを表示コードとして選択したかをしめす1ビット情報を1F遅延部86に出力する。
【0108】
表示コード出力部81は、表示すべき階調から表示コードの階調を減じた値を減算部82に出力する。例えば、表示すべき階調が「25.35」であり表示コードの階調が「24」であれば誤差「1.35」を減算部82に出力し、下階調コード選択を示す1ビット情報「0」を1F遅延部86に出力する。そして分配部91の出力が「−3.2」であれば、減算部82は空間誤差「1.35」から「−3.2」を減じて、新たな空間誤差として「4.55」を遅延部83a〜83dへ出力する。
【0109】
また、表示すべき階調が「26.1」であり表示コードの階調が「27」であれば誤差「−0.9」を減算部82に出力し、上階調コード選択を示す1ビット情報「1」を1F遅延部86に出力する。そして分配部91の出力が「0」であれば、減算部82は空間誤差「1.35」を新たな空間誤差としてそのまま遅延部83a〜83dへ出力する。
【0110】
そしてステップS41に戻る。
【0111】
このようにして本実施の形態における画像信号処理回路31は、画像信号から表示コードへの変換を、変換テーブルを用いるのではなく、論理計算を用いて実行している。また大容量メモリを用いることなく時間的な誤差拡散処理を行っている。また、時間誤差の空間平均が「0」にならない動画領域においても誤差の全体は保存されるので、階調表示の忠実性が損なわれるおそれはない。
【0112】
なお、本実施の形態においては、表示コード選択部80で時間的および空間的誤差拡散を行う構成について説明した。しかし本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば誤差拡散に加えてディザ処理を行う構成であってもよい。
【0113】
図14は、本発明の他の実施の形態における画像表示装置30の表示コード選択部80の回路ブロック図である。図14には、図9に示した表示コード選択部80の回路ブロックに、ディザ選択部89が追加されている。
【0114】
ディザ選択部89は、画像信号およびその属性に基づき、記憶している複数のディザパターンの中から1つのディザパターンを選択する。また対応する画像信号の画素の位置に基づき、選択したディザパターンの対応するディザ要素を選択して出力し、さらに選択したディザ要素に上階調コードの階調と下階調コードの階調との差を乗じてディザ値を求める。
【0115】
図15A、図15Bは、本発明の実施の形態における画像表示装置で使用するディザパターンの一例を示す図である。図14Aは、最も単純な2値ディザを示す図であり、ディザ要素「+0.25」と「−0.25」とが市松状に配列されている。また図14Bは、4値ディザの一例を示す図であり、2画素×2画素のブロックのそれぞれにディザ要素「+0.375」、「+0.125」、「−0.375」、「−0.125」が配列されている。
【0116】
そして加算部85は、入力階調とディザ値と時間誤差と空間誤差とを加算して表示すべき階調を算出する。表示コード出力部81は、上階調コードおよび下階調コードのうち、表示すべき階調に近いほうのコードを表示コードとして出力する。このとき表示すべき階調と表示コードの階調との差を求め、減算部82に出力する。さらに上階調コードおよび下階調コードのどちらを表示コードとして選択したかを示す1ビット情報を1F遅延部86に出力する。
【0117】
なお本実施の形態においては、基底コード生成部50は、基底コード記憶部52を有し、基底コード記憶部52に基底コードセットがあらかじめ記憶されている構成について説明した。しかし本発明はこれに限定されるものではない。例えば基底コード生成ルールがあらかじめ定められており、基底コード生成ルールに基づき順次生成される基底コードの階調と入力階調とを比較する構成であってもよい。
【0118】
また本実施の形態においては、上下コード生成部70は、中間コード生成部72で中間コードセットを生成した後に、上下コード選択部74で上階調コードおよび下階調コードを選択する構成について説明した。しかし本発明はこれに限定されるものではない。例えば、階調が大きくなる順に中間コードを生成すると同時に入力階調と比較する構成であってもよい。
【0119】
また、本実施の形態において用いた具体的な各数値は、単に一例を挙げたに過ぎず、画像表示装置の仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、演算回路を用いて画像信号処理回路を構成し、かつ大容量メモリを用いることなく時間的な誤差拡散処理を行うとともに動画領域における画像表示品質を抑制できるので、画像表示装置として有用である。
【符号の説明】
【0121】
10 パネル
12 走査電極
13 維持電極
22 データ電極
30 画像表示装置
31 画像信号処理回路
40 属性検出部
50 基底コード生成部
52 基底コード記憶部
54 基底コード選択部
60 ルール生成部
70 上下コード生成部
72 中間コード生成部
74 上下コード選択部
80 表示コード選択部
81 表示コード出力部
82 減算部
83a〜83d,93a〜93d 遅延部
84a〜84d,94a〜94d 乗算部
85,95 加算部
86 1F遅延部
87 時間誤差作成部
89 ディザ選択部
90 時間誤差巡回部
91 分配部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階調重みの定められた複数のサブフィールドで1フィールドを構成し、サブフィールドのそれぞれの点灯または非点灯の組合せを示すサブフィールドコードを用いて各画素で階調を表示する画像信号処理回路を備えた画像表示装置であって、
前記画像信号処理回路は、
画像表示に使用できるサブフィールドコードの中から、画像信号の階調より大きくかつ最も近い階調をもつサブフィールドコードおよび前記画像信号の階調以下でかつ最も近い階調をもつサブフィールドコードをそれぞれ上階調コードおよび下階調コードとして生成する上下コード生成部と、
現フィールドにおいて当該画素の周辺画素から拡散されてきた空間誤差と直前のフィールドにおいて当該画素で発生した空間誤差の符号に基づき作成した時間誤差とを前記画像信号の階調に加算して表示すべき階調を求め、前記上階調コードおよび前記下階調コードのうち前記表示すべき階調に近い階調をもつサブフィールドコードを表示コードとして選択するとともに、前記表示すべき階調から前記表示コードの階調と所定の値とを減じた値を当該画素で新たに発生した空間誤差として当該画素の周辺画素に拡散する表示コード選択部と、
前記時間誤差を当該画素の周辺画素に巡回させるとともに、前記表示コード選択部で作成した前記時間誤差と当該画素の周辺画素から巡回されてきた時間誤差との和の絶対値が前記上階調コードの階調と前記下階調コードの階調との差よりも大きい場合に、前記表示コード選択部で作成した前記時間誤差と当該画素の周辺画素から巡回されてきた時間誤差との和を前記所定の値として前記表示コード選択部に出力する時間誤差巡回部とを有し、
前記表示コードを用いてサブフィールドのそれぞれで各画素の点灯・非点灯を制御して階調を表示することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記時間誤差巡回部は、
入力した値をそれぞれ所定の期間遅延する複数の遅延部と、
複数の前記遅延部の出力にそれぞれ所定の係数を乗算する複数の乗算部と、
前記表示コード選択部で作成した前記時間誤差と複数の前記乗算部の出力とを加算する加算部と、
前記加算部の出力の絶対値が上階調コードの階調および下階調コードの階調の差未満の場合には前記加算部の出力を前記遅延部のそれぞれに出力し、前記加算部の出力の絶対値が上階調コードの階調および下階調コードの階調の差以上の場合には前記加算部の出力を前記所定の値として前記表示コード選択部に出力する分配部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate


【公開番号】特開2013−104939(P2013−104939A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247180(P2011−247180)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】