説明

画像表示装置

【課題】画面の位置に応じて入射角度が変化する光に対して最適な設計がなされた液晶プリズムを備える画像表示装置を提供する。
【解決手段】液晶プリズム素子3は、一対の対向基板13及び14と、Y軸方向に延びる稜線を有し、対向基板13及び14の間において、X軸方向に並列に配置される複数の三角プリズム17と、対向基板13及び14の間に形成される液晶層20とを含む。三角プリズム17は、対向基板13のX軸方向における中央側に位置する斜面と、側方側に位置する斜面と、底面とを有する。対向基板14上の少なくとも一部の領域に設けられる三角プリズム17が有する2つの斜面の両方が、対向基板に対して垂直とならないように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ディスプレイなどの画像を表示させるための画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、立体的な画像を表示することができる画像表示装置が普及している。例えば、特許文献1には、複数の観測者のそれぞれの眼に右眼用画像の光と左眼用画像の光とを交互に提示することによって、映像を立体視させる自動立体視ディスプレイが開示されている。特許文献1の装置では、観測者の眼球位置移動に追従するように、偏向手段による光屈折挙動を変化させている。この偏向手段は、2種類の混合しない液体を内包する液滴制御セルによって構成されており、液滴制御セルに電圧を印加することによって液体の界面を変化させて、液滴制御セルにプリズム機能を発揮させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−529485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の液滴制御セルに代わる光学素子としては、一対の対向基板の間に、ストライプ状に延びる複数の三角プリズムと液晶とを封入して構成され、印加電圧に応じて出射光の偏向角を変化させることができる液晶プリズム素子が知られている。
【0005】
しかしながら、液晶プリズム素子に入射する光の入射角度を画面中央から側方にかけて変化させる場合における、液晶プリズム素子の最適な形状については未だ検討されていない。
【0006】
それ故に、本発明は、画面の位置に応じて入射角度が変化する光に対して最適な設計がなされた液晶プリズムを備える画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像表示装置は、画像表示パネルと、画像表示パネルの背面側に配置されるバックライト装置と、画像表示パネルとバックライト装置との間に配置され、印加される電圧に応じて出射光の偏向方向を変化させる液晶プリズム素子と、ユーザの位置を検出する位置検出部と、位置検出部によって検出されたユーザの位置情報に基づいて、液晶プリズム素子に印加する電圧を制御する制御部とを備える。液晶プリズム素子は、一対の対向基板と、画像表示パネルの一辺と平行な第1の方向に延びる稜線を有し、対向基板の一方面に、第1の方向と直交する第2の方向に並列に配置される複数の三角プリズムと、対向基板の間に封入される液晶とを含む。対向基板上の少なくとも一部の領域に設けられる三角プリズムは、対向基板に対して垂直ではない2つの斜面を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、対向基板に対して垂直ではない2つの斜面を有する三角プリズムを、液晶プリズムの位置に応じて配置できるので、観測者の位置に追従して光の偏向角を変化させるのに最適な設計がなされた液晶プリズムを備える画像表示装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明の実施の形態に係る画像表示装置の概略構成図
【図1B】図1Aに示す画像表示装置の一部の分解斜視図
【図1C】図1Aに示す液晶プリズム素子の部分拡大図
【図2】比較例に係る液晶プリズム素子の構成を示す概略図
【図3】比較例に係る液晶プリズム素子における光のケラレを説明する図
【図4】実施例1に係る液晶プリズム素子における光のケラレを説明する図
【図5】実施例2に係る液晶プリズム素子における光のケラレを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合もある。また、図面は、理解しやすくするために、主要な構成要素を模式的に示している。
【0011】
<1.画像表示装置の構成>
図1Aは、実施の形態に係る画像表示装置1の概略断面図であり、図1Bは、図1Aに示す画像表示装置1の一部の分解斜視図である。尚、図1Aにおいては、図1Bに記載の電極40a、40b、41a、41bの記載が省略されている。
【0012】
本実施の形態では、画像表示装置1に対して3次元直交座標系を設定し、座標軸を用いて方向を特定する。図1A及び1Bに示すように、X軸方向は、画像表示パネル4の表示面に対してユーザが正対したときの左右方向(水平方向)と一致している。Y軸方向は、画像表示パネル4の表示面に対してユーザが正対したときの上下方向に一致している。Z軸方向は、画像表示パネル4の表示面に対して垂直な方向に一致している。ここで、「正対」とは、例えば表示面に「A」という文字が表示されている場合において、ユーザがこの「A」という文字を正しい方向から見るように、表示面の真正面に向かって位置していることを意味する。また、図1A及び1Bは、画像表示装置1の上側から見た図に相当する。したがって、図1A及び1Bの左側が、視聴者から見た表示画面の右側となる。
【0013】
画像表示装置1は、光源切替型のバックライト2と、液晶プリズム素子3と、右眼用画像及び左眼用画像を交互に切り替えながら表示する画像表示パネル4と、画像表示装置1を使用しているユーザの位置検出を行う位置検出部38と、検出されたユーザの位置情報に基づいて、液晶プリズム素子3へ出力する液晶駆動電圧を制御する制御部6とから構成される。以下、各構成に対してそれぞれ詳細を述べる。
【0014】
バックライト2は、互いに対向する光源7a及び7bと、反射フィルム8と、導光板9と、光制御フィルム10とで構成される。反射フィルム8は導光板9の下面側に設けられており、光制御フィルム10は導光板9の上面側に設けられている。
【0015】
光源7a及び7bは、導光板9の一対の側面のそれぞれに沿って配置されており、X軸方向において互いに対向している。光源7aは、導光板9の左側面に配置されており、光源7bは導光板9の右側面に配置されている。光源7a及び7bは、それぞれY軸方向に配列された複数のLED素子を有している。光源7a及び7bは、画像表示パネル4に表示される左眼用画像及び右眼用画像の切り替えに同期して、交互に点灯及び点滅を繰り返す。すなわち、画像表示パネル4が右眼用画像を表示する場合は、光源7aが点灯して光源7bが消灯し、画像表示パネル4が左眼用画像を表示する場合は、光源7aが消灯して光源7bが点灯する。
【0016】
光源7a及び7bから出射された光は、導光板9の上面と下面とで全反射を繰り返しながら導光板9内に広がる。導光板9内で全反射角度を超える角度を持った光が導光板9の上面から出射される。導光板9の下面は、図1A及び1Bに示すように、複数の傾斜面35により構成されている。これらの傾斜面35により、導光板9内を伝搬する光は様々な方向に反射されるので、導光板9から出射する光の強度が上面全体にわたって均一になる。
【0017】
反射フィルム8は、導光板9の下面側に設けられている。導光板9の下面に設けられた傾斜面35の全反射角度を破った光は、反射フィルム8により反射され、再び導光板9内に入射し、最終的に上面から出射される。導光板9から出射された光は、光制御フィルム10に入射する。
【0018】
光制御フィルム10の下面には、三角形状の断面及びY軸方向に延びる稜線を有する複数のプリズム36が、X軸方向に並列に配置されている。すなわち、光制御フィルム10の下面には、三角形状の断面を有するプリズム36が1次元アレイ配置されている。また、光制御フィルム10の上面には、Y軸方向に延びる複数のシリンドリカルレンズ37がX軸方向に並列に配置されている。すなわち、光制御フィルム10の上面には、レンチキュラーレンズが形成されている。
【0019】
光制御フィルム10の下面に入射した光は、プリズム36によりZ軸方向に立ち上げられ、上面のレンチキュラーレンズにより集光され、液晶プリズム素子3に入射する。
【0020】
図1Cは、図1Aに示す液晶プリズム素子の部分拡大図である。以下、図1A〜1Cを併せて参照しながら、液晶プリズム素子3の詳細を説明する。
【0021】
液晶プリズム素子3は、左側の光源7aから出射され、導光板9及び光制御フィルム10を通じて入射した光が、ユーザの右眼の位置に集光するように、偏光方向を制御する。また、右側の光源7bから出射され、導光板9及び光制御フィルム10を通じて入射した光が、ユーザの左眼の位置に集光するように、偏光方向を制御する。
【0022】
より詳細には、液晶プリズム素子3は、一対の対向基板13及び14と、対向基板13及び14の間に封入される複数のプリズム17及び液晶層20と、対向基板13の内面に設けられる電極40a及び40bと、対向基板14の内面に設けられる電極41a及び41bと、電極40a及び40b上に設けられる配向膜18と、プリズム17の2つの斜面上に設けられる配向膜19とを備える。更に、ガラス基板13及び14の外面には、入射光及び出射光の偏向方向を揃えるための偏光子21及び22がそれぞれ設けられている。ここで、本実施形態では偏光子21および22の透過軸はY軸方向としている。つまり、Y軸方向以外の振動方向成分の光は吸収される。
【0023】
プリズム17は、三角形の断面とY軸方向に延びる稜線とを有する三角柱形状であり、2つの斜面、すなわち、対向基板14の中央側の斜面61と、対向基板14の側方側の斜面62と、底面63とを有する。
【0024】
図1及び2から理解されるように、複数のプリズム17が、電極41a及び41b上にX軸方向に並べて設けられている。複数のプリズム17の断面形状は、液晶プリズム素子3の全体で左右対称となるように構成されている。説明を容易にするために、プリズム17の形成領域を図1A及び1Bにおける左半分及び右半分に二分し、左側の領域をR1、領域R1とX軸方向に隣接する右側の領域をR2とする。また、領域R1及びR2の境界線(中央線)を通過し、かつ、画像表示パネル4の表示面と直交する平面を、P1とする。XZ平面と平行な平面上で見たときに、領域R1に配置されるプリズム17の断面形状と、領域R2に配置されるプリズム17の断面形状とは、図1A及び1Bに示すように、平面P1に対して対称となるように設計されている。
【0025】
本実施形態では、対向基板14上の少なくとも一部の領域に設けられるプリズム17が有する斜面61及び62の両方が対向基板14に対して直交しないように、プリズム17の形状が設計されている。視聴者の目の位置に光を集光させるためには、液晶プリズム素子3の中央部から出射される光の出射角と比べて、液晶プリズム素子3の側方部から出射される光の出射角の方が大きくなる。したがって、対向基板14のうち、少なくとも画面右端及び画面左端に設けられるプリズム17の斜面61及び62を対向基板14と直交しないように構成することが好ましい。また、液晶プリズム素子3から出射される光の出射角は、X軸方向に沿って中央部から側方部にかけて連続的にまたは段階的に大きくなるので、斜面61及び底面63がなす角度と、斜面62及び底面63がなす角度とが、対向基板14上のX軸方向の位置に応じて変化していることが好ましい。尚、斜面61及び62の具体的な設計例については、後述する。
【0026】
電極40aは、対向基板13の内面の領域R1に形成され、電極40bは、対向基板13の内面の領域R2に形成されている。同様に、電極41aは、対向基板14の内面の領域R1に形成され、電極41bは、対向基板14の内面の領域R2に形成されている。
更に、プリズム17の表面上及び電極40a及び40b上には、液晶分子の配向方向を所望の方向に制御するための配向処理を施した配向膜18及び19が設けられている。配向膜18及び19は、電極40a、40b、41a、41bに電圧が印加されていない状態で、液晶分子の長軸がY軸方向となるように液晶分子を配向させる。ただし、液晶分子の配向が均一に保てるのであれば、配向膜18及び19はなくても良い。
【0027】
尚、対向基板13及び14、プリズム17の形成材料としては、ガラスまたは樹脂を用いることができる。プリズム17の材料として樹脂を用いる場合、一例として、ガラス基板上にUV硬化樹脂をインプリントすることによって、プリズム17を形成することができる。液晶プリズム素子3は、電極41a及び41bを成膜した対向基板14上にプリズム17の一次元配列を形成した後、対向基板14と、電極40a及び40bを成膜した対向基板13とを貼り合わせ、対向基板13及び14の間に液晶を封入することによって作製できる。
【0028】
液晶プリズム素子3は、外部からの印加電圧の大きさに応じて、透過する光の偏向角度の大きさを制御できる素子である。その原理を簡単に述べる。通常、液晶分子は楕円体形状をしており、長手方向と短手方向とで誘電率が異なる。このため、液晶層20は、入射光の偏光方向毎に屈折率が異なる複屈折の性質を有する。また、液晶分子の配向(ダイレクタ)の向きが光の偏光方向に対して相対的に変化すれば、液晶層20の屈折率も変化する。そのため、ある印加電圧を与えて発生させた電場により液晶の配向を変化させると、透過する光に対する屈折率が変わるため、光の屈折角である偏向角が変化する。
【0029】
本実施形態では、液晶層20を構成する材料としては1軸性のポジ型液晶を用いた場合を考える。そして、前述のとおり、電圧が印加されていない場合には液晶分子をY軸方向に配向し、電圧が印加された場合は、液晶分子をZ軸方向に配向する場合を考える。
【0030】
偏光子21および22の透過軸がY軸方向であるため、電圧が印加されていない場合の液晶層20の屈折率は異常光屈折率、電圧が印加された場合の液晶層20の屈折率は常光屈折率となる。
【0031】
一般的に、液晶プリズム素子3等のアクティブ素子で光を偏向させる場合に、偏向角を大きくするためには、Δn(=異常光に対する屈折率ne−常光に対する屈折率no)が大きな液晶材料を用いることが望ましい。しかしながら、市販されている中でΔnが大きな液晶材料は少なく、一般的に、Δnは約0.2程度である。
【0032】
また、同じ液晶材料で用いて液晶プリズムを構成しても配向方向の設計、電場のかけ方が液晶プリズム素子の能力である偏向角や、電力や、スイッチングスピードなどといった素子性能を大きく左右する重要な項目である。
【0033】
尚、液晶プリズム素子3では、プリズム17の斜面の傾斜方向が、画面の中心線(平面P1)を境界にして左右で異なっている。液晶プリズム素子3では、出射光をプリズム17の傾斜面から遠ざける方向(図2における左上方向に相当)への偏向と比べて、出射光をプリズム17の傾斜面に近づける方向(図2における右上方向)への偏向の効率が低いという性質がある。そこで、プリズム17の傾斜面を平面P1に対して対称とし、プリズム17の傾斜面を画面の中央部の前方に向けることによって、液晶プリズム素子3は、画面の左端近傍に入射した光を画面の右前方へと効率的に偏向することができ、画面の右端近傍に入射した光を画面の左前方へと効率的に偏向することができる。この場合、液晶プリズム素子3の左右の領域に異なる電圧が印加される。そのために、電極40a及び40bと、電極41a及び41bとは、画面中央で分離されている。同一基板内にある電極を2つとも接地端子として用いる場合は中央で分離しなくても良い。
【0034】
液晶プリズム素子3を透過した光は、画像表示パネル4に入射する。画素表示パネル4の一例として、In−Plane−Switching方式のパネルが挙げられる。ただし、画像表示パネル4として他の方式の画像表示パネルを採用することもできる。画像表示パネル4を透過した光は、指向性を持ち、視聴者の眼の位置に集光される。
【0035】
画像表示装置1は、右眼用画像と左眼用画像の切り替えに同期させて、光源7a及び7bの切り替えを行っている。また、右眼用画像と左眼用画像との切り替えを120Hz以上の周波数で行うことで、ユーザは右眼用画像と左眼用画像とに基づいて立体画像を認識することができる。
【0036】
位置検出部38は、カメラ5と視聴位置算出部39とを含む。カメラ5は、ユーザの画像を所定周期で撮影する。視聴位置算出部39は、カメラ5によって撮影された画像を解析し、ユーザの視聴位置を表す視聴位置情報を算出する。カメラ5が行う画像解析には、顔や顔の一部(眼や鼻など)の位置を認識する公知のアルゴリズムを利用できる。また、視聴位置算出部39が求める視聴位置情報は、ユーザの目の位置を表すものであることが好ましいが、眼の位置に代えて顔や鼻等の位置を表しても良い。
【0037】
制御部6は、視聴位置算出部39によって求められた視聴位置情報に基づいて、液晶プリズム素子3に印加する電圧値を制御する。より詳細には、ユーザの視聴位置が、図1Aに示すように、画面中央から左端側に移動した場合、領域R1では、液晶層20の屈折率をプリズム17の屈折率より小さく、領域R2では、液晶層20の屈折率をプリズム17の屈折率より大きくすることによって、プリズム17からの出射光をユーザから見て右方向に偏向させる。このとき、光を偏向しない時の印加電圧に対して、領域R1への印加電圧をより大きく、領域R2への印加電圧より小さくすることによって、領域R1の偏向角と領域R2の偏向角とを揃えることができる。逆に、ユーザの視聴位置が、画面中央から右端側に移動した場合、領域R1では液晶層20の屈折率をプリズム17の屈折率より大きく、領域R2では、液晶層20の屈折率をプリズム17の屈折率より小さくすることによって、プリズム17からの出射光をユーザから見て左方向に偏向させる。このとき、光を偏向しない時の印加電圧に対して、領域R2への印加電圧をより小さく、領域R1への印加電圧より大きくすることによって、領域R1の偏向角と領域R2の偏向角とを揃えることができる。
【0038】
尚、印加電圧に対する液晶プリズム3の偏向角及び光の集光点の位置情報は設計段階で想定できるため、予め印加電圧と位置情報とを関連付けたデータを用意し、画像表示装置1が備える記憶装置に格納しておけば良い。また、製品完成後、キャリブレーションを行って、集光点の位置の補正を行っても良い。
【0039】
以上説明した視聴位置情報に基づく偏向制御を所定の周期毎に繰り返し行うことによって、画像表示装置1に対して視聴者が自由に移動した場合でも、任意の場所で、立体画像を視聴する事が可能となる。よって、本発明によれば、視域の広い画像表示装置を実現できる。また、光を視聴者の目の位置に集光させることで、高輝度かつ省エネの画像表示装置1を実現できる。
【0040】
尚、本実施の形態では、光源7a及び7bで共用されているが、光源7a用の導光板と光源7b用の導光板とを設け、2枚の導光板を重ねて配置しても良い。
【0041】
また、プリズムとレンチキュラーレンズとが一体になった制御フィルム10に代えて、プリズムシート及びレンチキュラーレンズシートを別個に設けても良い。
【0042】
更に、バックライト2は、図1A及び1Bに記載された構成に限定されず、左右の画像信号の切り替えと同期して、右眼用の光と左眼用の光とを時分割で交互に出射できるものであれば、他の構成を採用しても良い。
【0043】
更に、本実施の形態では、液晶プリズム3内のプリズム17の傾斜面の向きを領域R1及びR2で異ならせ、平面P1に対して対称となるように構成しているが、プリズムの傾斜面の向きを液晶プリズム3全体で一定としても良い。この場合、本実施の形態のように、液晶プリズム3の領域R1及びR2で電極を分ける代わりに、表示画面全領域にわたって、1つの電極を設ける。しかしながら、配向変化に対する光線の偏向角及び透過効率の面で、2つの領域R1及びR2に分けてプリズム17及び電極を設けることがより好ましい。
【0044】
更に、本実施の形態では、視差のある右眼用画像及び左眼用画像を時分割で表示する立体画像表示装置を例として説明したが、視差のない画像を表示しても良い。この場合、光源7a及び7bを交互に点滅させる代わりに、常時点灯させる。3次元画像に限らず、二次元画像を表示する際にも、視聴者の動きに追従して、視聴者の眼付近にのみ画像を縮小投影させることにより、省エネだけでなく、周辺の人から表示されている内容を覗かれることも防止でき、プライバシー保護も向上できる。
【0045】
<2.液晶プリズムの説明>
本発明に係る液晶プリズム素子の最適な設計の説明に先だって、まず、比較例に係る液晶プリズム素子の構成を説明する。以下の説明の設定条件として、視聴者と画像表示装置との垂直距離(図1Aのh)を300mmとし、画像表示パネル4の幅(図1Aのw)を221mm、液晶材料の異常光屈折率neを1.737とし、常光屈折率noを1.537(Δn=0.2)とし、プリズムの屈折率nを1.6とした。また、上述の条件では、バックライト2から出射され、画面中央にいる視聴者に向かう光線が液晶プリズム素子に入射する光線角度は、画面中央では0°、画面右端では20.2°となる。
【0046】
(比較例)
図2は、比較例に係る液晶プリズム素子の構成を示す概略図である。より詳細には、図2(a)は、画面中央に配置されるプリズムの断面形状を示し、図2(b)は、画面右端に配置されるプリズムの断面形状を示す。
【0047】
視聴者が画面中央にいる場合、液晶層とプリズムとで屈折率を同じにするために、液晶の屈折率が1.6となるように液晶プリズム素子への印加電圧を制御する。視聴者が画面左端に移動した場合は、右側の領域R2の液晶層の屈折率を1.737、左側の領域R1の液晶層の屈折率を1.537となるように液晶プリズム素子への印加電圧を制御する。一方、視聴者が画面右端に移動した場合は、右側の領域R2の液晶層の屈折率を1.537、左側の領域R1の液晶層の屈折率を1.737となるように液晶プリズム素子への印加電圧を制御する。このような液晶層の屈折率変化によって光線を視聴者方向に偏向することができるように、画像表示パネルの中央及び右端のプリズムのプリズム角を設計する。
【0048】
画面中央のプリズムが画面左端に位置する視聴者に向けて入射光を偏向する場合、液晶プリズム素子の入射面に対して入射角0°で入射した光を、画面左端前方に向けて20°の出射角に偏向させる必要がある。視聴者が画面左端にいる状態では、プリズムの屈折率は1.6、液晶層の屈折率は1.737なので、スネルの法則から計算すると、液晶プリズム素子の入射面に対してプリズムの屈折面がなす角度は74°となる(図2(a))。一方、画面右端のプリズムが画面左端に位置する視聴者まで入射光を偏向する場合、液晶プリズム素子の入射面に対して入射角20.2°で入射した光を、画面左端前方に向けて36°の出射角に偏向する必要がある。視聴者が画面左端にいる状態では、プリズム部の屈折率は1.6、液晶部の屈折率は1.737なので、スネルの法則から計算すると、第1方向と屈折面がなすプリズム部の角度は83°となる(図2(b))。このようにして、各領域におけるプリズムの角度が決定される。上記の構成とすることで、画面中央に対して±110.5mmの範囲を走査可能な表示装置を実現することができる。
【0049】
図3は、比較例に係る液晶プリズム素子における光のケラレを説明する図である。
【0050】
図2では、画面中央と画面右端のプリズムのみを示したが、実際にはプリズムは画面の左右方向に複数配列されている。プリズムを透過して液晶層に入射した光線は視聴者の位置に向けて出射されるが、図3(a)に示すように、入射光の一部は、隣接するプリズムの壁面に入射し迷光となる。この迷光が発生すると、透過光量が減少し、表示が暗くなる。
【0051】
プリズム部の底面に入射する光線の位置を変化させながら光線追跡シミュレーションを行い、迷光の発生するプリズムの領域を算出した。そして、プリズム領域に対して、迷光の発生する領域の割合を光のケラレ量と定義した。
【0052】
図3(b)は、画面中央と画面右端のプリズムについて、プリズムの角度を変化させながらケラレ量を算出したグラフである。プリズムの角度(プリズム素子の入射面と屈折面がなす角)が0°の場合にはプリズムが存在しないため、ケラレ量は0%となる。プリズムの角度を増加させていくと、ケラレ量が増加する。同じプリズムの角度では画面中央のプリズムにおけるケラレ量に対して、画面右端のプリズムにおけるケラレ量のほうが大きくなる。これは、画面中央における光線角度の変化が0°から20°であるのに対して、画面右端における光線角度の変化は20°から36°となるためである。すなわち、図3(a)に示すように、画面中央より外側においては、プリズムの屈折面に対して光が斜め方向から入射するので、隣のプリズムにケラレやすくなる。
【0053】
上記の計算結果に基づき、画面中央のプリズム角を74°とし、画面右端のプリズム角を83°とすると、図3(b)のグラフより、画面中央におけるケラレ量は33%、画面右端におけるケラレ量は100%となる。つまり、画面右端のプリズムではすべての光が迷光となり、偏向した光が視聴者に届かない状況となる。
【0054】
(実施例1)
図4は、実施例1に係る液晶プリズム素子における光のケラレを説明する図である。
【0055】
実施例1に係る液晶プリズム素子において、画面中央に配置されるプリズムの断面形状は図2(a)で示したものと同じ直角三角形である。これに対して、画面右端部及び左端部に配置されるプリズム17aは、斜面61及び底面63のなす角度と、斜面62及び底面63のなす角度とが略等しくなるように形成される。すなわち、画面右端部分及び左端部分に配置されるプリズム17aの断面は、図4に示すような、二等辺三角形である。図4と図2(b)とを比較すると、画面中央側の斜面61及び底面63のなす角度は83°で同じである。一方、画面側方側の斜面62及び底面63がなす角度は、図2(b)では90°であったのに対して、図4では83°となっている。
【0056】
このように構成すると、図4に示す領域41に入射した光線は、プリズム17aに隣接するプリズム17bもしくはプリズム17a自身の斜面62に入射することなく、液晶層20を透過して視聴者まで届く。一方、領域42に入射した光線は、プリズム17aに隣接するプリズム17bの斜面62もしくはプリズム17a自身の斜面62に入射して迷光となる。この時のケラレ量を上述の光線追跡シミュレーションにより計算すると50%となる。比較例ではケラレ量100%であるので、実施例1に係るプリズムの設計によって画面右端及び左端においてケラレ量を50%改善できることがわかる。
【0057】
(実施例2)
図5は、実施例2に係る液晶プリズム素子における光のケラレを説明する図である。
【0058】
実施例2に係る液晶プリズム素子において、画面中央に配置されるプリズムの断面形状は図2(a)で示したものと同じ直角三角形である。これに対して、画面右端部及び左端部に配置されるプリズム17aは、プリズム17aの斜面62と、プリズム17aの側方側に隣接するプリズム17cの斜面61から出射される光線の出射方向とがほぼ平行となるように形成されている。
【0059】
画面右端に配置されるプリズムについてより詳細に説明すると、まず、画面左端に位置する視聴者に向けて画面右端の液晶プリズムから出射された光線の角度は次の数1により表される。
【数1】

ここで、
h:視聴者と表示装置の距離、
w:液晶パネルの幅
である。
【0060】
したがって、液晶層内での光線の角度は、次の数2により表される。
【数2】

ここで、
n:液晶材料の異常光屈折率
である。
【0061】
したがって、画面右端にあるプリズムの斜面62と底面63とがなす角度は、次の数3により表される。
【数3】

【0062】
ここで、図5と図2(b)と比較すると、画面中央側の斜面61と底面63とがなすプリズムの角度は83°で同じである。一方で、画面側方側の斜面62と底面63とがなすプリズムの角度は、図2(b)では90°であるのに対して、図5では70°となっている。プリズムの底面63の垂線に対して20°で入射した光線はスネルの法則に従って屈折し、プリズムの底面の垂線に対して20°の角度で液晶層に出射されるためである。したがって、20°で液晶層20に出射した光線と斜面62とが略平行となるようにするため、画面側方側の斜面62と底面63とがなすプリズムの角度が70°に設定されている。
【0063】
このように構成することで、領域51、53を透過した光線は液晶層20を透過し、隣接したプリズム17bの壁面に入射することなく視聴者まで届く。一方、領域52を通過した光線は液晶層に到達することなく、プリズムの画面側方側の斜面に入射し、迷光となる。この時のケラレ量を上述の光線追跡シミュレーションによって計算すると30%となる。比較例ではケラレ量100%であり、本実施の形態のプリズムにおいてはケラレ量が70%改善できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、視聴者の位置情報に基づき自動的に光線を視聴者の位置に偏向させるので、高輝度、高効率、高解像度の画像表示装置を実現でき、3次元画像の表示用途だけでなく、2次元画像の表示用途にも広く適用することができる。また、本発明は、簡便な構成で3D液晶表示装置やプライバシーディスプレイ等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 画像表示装置
2 バックライト
3 液晶プリズム素子
4 画像表示パネル
5 カメラ
6 制御部
7a、7b 光源
8 反射フィルム
9 導光板
10 光制御フィルム
13 対向基板
14 対向基板
17 プリズム
20 液晶層
61、62 斜面
63 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置であって、
画像表示パネルと、
前記画像表示パネルの背面側に配置されるバックライト装置と、
前記画像表示パネルと前記バックライト装置との間に配置され、印加される電圧に応じて出射光の偏向方向を変化させる液晶プリズム素子と、
ユーザの位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部によって検出されたユーザの位置情報に基づいて、前記液晶プリズム素子に印加する電圧を制御する制御部とを備え、
前記液晶プリズム素子は、一対の対向基板と、前記画像表示パネルの一辺と平行な第1の方向に延びる稜線を有し、前記一対の対向基板の間において、前記第1の方向と直交する第2の方向に並列に配置される複数の三角プリズムと、前記対向基板の間に封入される液晶とを含み、
前記三角プリズムは、前記対向基板の前記第2方向における中央側に位置する第1の斜面と、前記対向基板の前記第2方向における側方側に位置する第2の斜面と、底面とを有し、
前記対向基板上の少なくとも一部の領域に設けられる三角プリズムが有する前記第1の斜面及び前記第2の斜面の両方が、前記対向基板に対して垂直ではない、画像表示装置。
【請求項2】
前記第1の斜面及び前記底面がなす角度と、前記第2の斜面及び前記底面がなす角度とが、前記対向基板上の前記第2方向の位置に応じて変化する、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記対向基板の側方側に位置する三角プリズムの前記第2の斜面及び底面がなす角度は、前記対向基板の中央部に位置する三角プリズムの前記第2の斜面及び底面がなす角度より小さい、請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記対向基板上の前記一部の領域に設けられる前記三角プリズムにおいて、前記第1の斜面及び前記底面がなす角度と、前記第2の斜面及び前記底面がなす角度とが略等しい、請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記対向基板上の前記一部の領域に設けられる前記三角プリズムにおいて、前記第2の斜面及び前記底面のなす角度は、当該三角プリズムの側方に隣接する三角プリズムの前記第1の斜面から出射される光線の出射方向とほぼ平行となるように設定される、請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記画像表示パネルには、視差が与えられた右眼用画像信号及び左眼用画像信号が時分割で交互に入力され、
前記バックライト装置は、
一対の側面を有し、前記側面から入射された光を出射面に導く導光板と、
前記側面の一方に対向するように配置され、右眼用画像を表示するための照明光を出射する第1の光源と、
前記側面の他方に対向するように配置され、左眼用画像を表示するための照明光を出射する第2の光源と、
前記第1の光源および前記第2の光源から出射された光を前記表示パネル中央の前方に偏向する光制御シートとを含み、
前記右眼用画像信号と前記左眼用画像信号との切り替えに同期して、前記第1の光源及び前記第2の光源が交互に点灯する、請求項1に記載の画像表示装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−113920(P2013−113920A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257981(P2011−257981)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】