説明

画像表示装置

【課題】診断用画像データと過去に収集された参照用画像データを比較表示する際、好適な参照用画像データを短時間かつ正確に検索することが可能な画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置は、画像データにおける任意の領域を関心領域として設定する関心領域設定手段と、第1のラベル情報を前記関心領域に対して関連付けて入力することが可能となるように構成された第1のラベル情報入力手段と、前記関心領域の関心領域データと前記画像データを対応させて参照用画像データとして保存するデータ記憶手段と、前記第1のラベル情報に関連した第2のラベル情報を入力するための第2のラベル情報入力手段と、前記第2のラベル情報に対応する前記参照用画像データを抽出する参照用画像データ抽出手段と、前記抽出された前記参照用画像データを表示するための表示手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に係り、特に、画像診断装置によって収集された現行画像デー
タと過去画像データとの比較観察を可能にする画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断は、コンピュータ技術の発展に伴って実用化されたX線CT装置やMRI
装置等によって急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。
特に、近年のX線CT装置やMRI装置では、生体情報の検出装置や演算処理装置の高速
化、高性能化に伴って2次元画像データのリアルタイム表示が可能となり、更に、3次元
画像データの生成と表示も容易に行なわれるようになった。
【0003】
又、近年では、上述の医用画像診断装置による現行の検査にて収集した3次元画像デー
タ(以下では、診断用画像データと呼ぶ。)を用いて当該被検体の診断を行なう場合、過
去の検査にて収集され記憶部に保存された3次元画像データ(以下では、過去画像データ
と呼ぶ。)を参照用画像データとして読み出し、得られた参照用画像データと診断用画像
データとを比較表示することにより診断精度を向上させる方法も行なわれるようになった
。特に、現行の検査にて得られた診断用画像データの疾患部位において十分な解像度が得
られない場合、上述のような参照用画像データとの比較表示を行なうことにより診断精度
の低下を防止することができる。
【0004】
このような診断用画像データと参照用画像データとの比較表示を目的として、過去の検
査にて収集された多くの過去画像データの中から診断用画像データとの比較表示に好適な
過去画像データを参照用画像データとして選択するような場合、3次元画像データに対し
統計的な処理を行なって得られる特有の特徴量に基づいて所望の3次元画像データを検索
する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−117936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
診断用画像データ及び過去画像データの何れにおいても十分な解像度が得られている場
合には特許文献1に記載された方法を適用することにより好適な参照用画像データを得る
ことができる。しかしながら、既に述べたように、診断用画像データの疾患部位等におい
て十分な解像度が確保されていない場合、正確な統計的処理が不可能となるため参照用画
像データの検索が困難となる。又、過去画像データに対する統計的処理に多大の時間を要
するため診断効率が著しく低下するという問題点を有していた。
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、医用画像診断装置
による現行の検査にて収集された診断用画像データと過去の検査にて収集された参照用画
像データを比較表示する際、予め収集された多くの過去画像データの中から診断用画像デ
ータとの比較表示に好適な関心領域を有する参照用画像データを短時間かつ正確に検索す
ることが可能な画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の画像表示装置は、医用画像診断装
置によって生成された画像データに対して関心領域を設定する関心領域設定手段と、疾患
情報を含む第1のラベル情報を前記関心領域に関連付けて入力可能に構成された第1のラ
ベル情報入力手段と、前記第1のラベル情報入力手段によって前記第1のラベル情報が関
連付けられた前記関心領域の関心領域データと前記画像データを対応させて参照用画像デ
ータとして保存するデータ記憶手段と、前記第1のラベル情報に関連した第2のラベル情
報を入力するための第2のラベル情報入力手段と、前記第2のラベル情報に対応する前記
第1のラベル情報に関連付けられ、現行の検査にて収集された診断用画像データと前記第
2のラベル情報に対応した前記第1のラベル情報を有する前記関心領域とが重畳された前
記参照用画像データを抽出する参照用画像データ抽出手段と、前記診断用画像データと、
前記参照用画像データ抽出手段が抽出した前記参照用画像データとを並列表示するための
表示手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医用画像診断装置による現行の検査にて収集された診断用画像データ
と過去の検査にて収集された参照用画像データを比較表示する際、予め収集された多くの
過去画像データの中から診断用画像データとの比較表示に好適な関心領域を有する参照用
画像データを短時間かつ正確に検索することができる。このため、被検体に対する診断効
率と診断精度を大幅に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例における画像表示装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】同実施例の画像表示装置が備える画像データ生成部の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】同実施例の3次元画像データに対する3次元関心領域の設定方法を説明するための図。
【図4】参照用画像データ候補の表示を目的として同実施例の表示部が生成する第2の表示データの具体例を示す図。
【図5】診断用画像データと参照用画像データとの比較表示を目的として同実施例の表示部が生成する第3の表示データの具体例を示す図。
【図6】同実施例における過去画像データの保存手順を示すフローチャート。
【図7】同実施例における診断用画像データと参照用画像データとの比較表示手順を示すフローチャート。
【図8】同実施例の表示部が生成する第3の表示データの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0012】
本発明の実施例における画像表示装置は、過去の検査にて生成された3次元画像データ
(過去画像データ)に3次元関心領域を設定し、この過去画像データと第1のラベル情報
を付加した前記3次元関心領域の位置情報(以下では、関心領域データと呼ぶ。)をデー
タ記憶部に保存する。一方、現行の検査において3次元画像データ(診断用画像データ)
を生成すると共に、このとき入力された第2のラベル情報に対応する第1のラベル情報が
付加された関心領域データとこの関心領域データを有した3次元関心領域が設定される複
数の過去画像データを参照用画像データ候補として前記データ記憶部から抽出する。そし
て、前記参照用画像データ候補の中から選択した参照用画像データと診断用画像データと
を比較表示する。
【0013】
尚、以下に述べる実施例では、医用画像診断装置による現行の検査にて収集された当該
被検体のボリュームデータに基づいて血管部位の3次元画像データを診断用画像データと
して生成し、この診断用画像データと当該被検体あるいは他の被検体に対する過去の検査
にて収集された血管部位の参照用画像データとの比較表示を行なう場合について述べるが
、診断対象部位は血管部位に限定されるものではなく、又、比較表示される診断用画像デ
ータ及び参照用画像データはMPR(Multi Planar Reconstruction)画像データ等の他の
画像データであっても構わない。更に、医用画像診断装置に対し独立して構成される画像
表示装置について述べるが、医用画像診断装置の内部に組み込まれた画像表示装置であっ
てもよい。
【0014】
(装置の構成と機能)
本実施例における画像表示装置の構成と機能につき図1乃至図6を用いて説明する。但
し、図1は、上述の画像表示装置の全体構成を示すブロック図であり、図2は、この画像
表示装置が備える画像データ生成部の具体的な構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示す画像表示装置100は、図示しない医用画像診断装置による現行の検査及び
過去の検査にて収集されたボリュームデータを保存するボリュームデータ記憶部1と、こ
のボリュームデータを処理して3次元画像データやMPR画像データを生成する画像デー
タ生成部2と、生成された3次元画像データの疾患部位等に対し3次元関心領域を設定す
る3次元関心領域設定部3と、当該被検体あるいは他の被検体に対する過去の検査にて収
集された3次元画像データ(過去画像データ)や前記被検体の疾患部位や疾患名等に対応
する第1のラベル情報が付加された前記3次元関心領域の位置情報(関心領域データ)を
保存するデータ記憶部4と、後述の入力部7から供給される第2のラベル情報に基づき、
当該被検体に対する現行の検査にて収集された3次元画像データ(診断用画像データ)と
の比較表示に好適な複数の過去画像データを参照用画像データ候補としてデータ記憶部4
に保管された多くの過去画像データの中から抽出する参照用画像データ抽出部5を備えて
いる。
【0016】
更に、画像表示装置100は、参照用画像データ抽出部5によって抽出された参照用画
像データ候補の表示やこれら参照用画像データ候補の中から選択された参照用画像データ
と診断用画像データとの比較表示等を行なう表示部6と、MPR画像データに対する2次
元関心領域の設定、ラベル情報(第1のラベル情報及び第2のラベル情報)の入力、参照
用画像データの選択、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部7と、画像表示装置10
0が有する上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部8を備えている。
【0017】
次に、上述の各ユニットの具体例につき更に詳しく説明する。
【0018】
図1のボリュームデータ記憶部1は、大容量の記憶回路を有し、図示しないX線CT装
置やMRI装置等の医用画像診断装置を用いた現行の検査及び過去の検査にて収集されネ
ットワークあるいは記憶媒体を介して供給されたボリュームデータを保存する。
【0019】
画像データ生成部2は、図2に示すように3次元画像データ生成部21と2次元画像デ
ータ生成部22を有している。
【0020】
3次元画像データ生成部21は、ボリュームデータ生成部1から供給されるボリューム
データをレンダリング処理してボリュームレンダリング画像データやサーフィスレンダリ
ング画像データ等の3次元画像データを生成する機能を有し、例えば、不透明度・色相設
定部211とレンダリング処理部212を備えている。そして、不透明度・色相設定部2
11は、ボリュームデータのボクセル値やボクセルの位置情報等に基づいて各ボクセルの
不透明度や色相を設定し、レンダリング処理部212は、不透明度・色相設定部211に
よって設定された不透明度や色相の情報に基づいてボリュームデータをレンダリング処理
し3次元画像データを生成する。
【0021】
一方、2次元画像データ生成部22は、ボリュームデータ生成部1から供給されるボリ
ュームデータに対してMPR断面を設定するMPR断面設定部221と、このMPR断面
におけるボリュームデータのボクセルを抽出してMPR画像データを生成するMPR画像
データ生成部222を備えている。例えば、ボリュームデータを用いて血管部位のMPR
画像データを生成する場合、上述のMPR断面設定部221は、前記ボリュームデータに
おける血管内腔の中心軸を芯線データとして生成する芯線データ生成部と、前記芯線デー
タが直線状に伸展されるように前記ボリュームデータを再構築してストレートボリューム
データを生成するストレートボリュームデータ生成部(何れも図示せず)を有している。
そして、前記芯線データ生成部は、前記ボリュームデータを用いて生成され表示部6に表
示された3次元画像データの血管内腔に対して入力部7が指定する始点及び終点を血管内
腔に沿って繋ぐことにより芯線データを生成する。尚、この芯線データの具体的な生成方
法については特開2008−67991号公報等に記載されているため詳細な説明は省略
する。
【0022】
一方、前記ストレートボリュームデータ生成部は、上述の芯線データが直線状に伸展さ
れるようにボリュームデータを再構築してストレートボリュームデータを生成する。即ち
、このストレートボリュームデータ生成部は、ボリュームデータの血管内腔に設定された
芯線データに垂直な複数の平面におけるボクセルを抽出し、これらの平面が互いに平行と
なり芯線データが直線状に形成されるように前記ボクセルを再配置する。そして、これら
のボクセルに対し補間等の処理を行なってストレートボリュームデータを生成すると共に
直線状の芯線データを含む第1のMPR断面及び前記芯線データに垂直な第2のMPR断
面をストレートボリュームデータに対して設定する。
【0023】
次いで、図2の2次元画像データ生成部22に設けられたMPR画像データ生成部22
2は、MPR断面設定部221によって設定された第1のMPR断面におけるストレート
ボリュームデータのボクセルを抽出して血管の縦断面を示す第1のMPR画像データを生
成し、同様にして、第2のMPR断面におけるストレートボリュームデータのボクセルを
抽出して血管の横断面を示す第2のMPR画像データを生成する。
【0024】
図1に戻って、3次元関心領域設定部3は、画像データ生成部2にて生成され表示部6
に表示された第1のMPR画像データ及び第2のMPR画像データに対し入力部7が設定
する2次元関心領域の位置情報を処理して上述の3次元画像データに対し3次元関心領域
を設定する。この3次元関心領域の設定方法につき図3を用いて更に詳しく説明する。
【0025】
図3は、過去の検査において画像データ生成部2が生成し表示部6において表示された
過去画像データD1、第1のMPR画像データD2及び第2のMPR画像データD3を示
している。画像表示装置100の操作者は、表示部6に表示されたこれらの画像データの
観測下にて第1のMPR画像データD2に重畳表示されているスライドバーSbを入力部
7に設けられた入力デバイスを用いて芯線方向dへ順次移動させ、このスライドバーSb
の位置情報に基づいて画像データ生成部2が生成した第2のMPR画像データD3に対し
て2次元関心領域Raを設定する。そして、3次元関心領域設定部3は、入力部7からシ
ステム制御部8を介して供給される複数からなる2次元関心領域Raの位置情報を芯線方
向dに対し補間処理して3次元関心領域Rbを形成し、この3次元関心領域Rbを過去画
像データD1に設定する。
【0026】
尚、図3におけるPa及びPbは、血管Vsの内腔に設定された始点及び終点を示し、
Cpは、始点Paと終点Pbを繋いで形成される芯線データを示している。又、図3の右
領域には、3次元関心領域Rbの関心領域データに付加される第1のラベル情報(例えば
、「狭窄部」)の表示部が設けられている。
【0027】
再び図1へ戻って、データ記憶部4は、図示しない過去画像データ記憶部と関心領域デ
ータ記憶部を有している。前記過去画像データ記憶部には、過去の検査にて画像データ生
成部2の3次元画像データ生成部21が生成した過去画像データ(3次元画像データ)が
画像データ識別情報を付帯情報として保存され、前記関心領域データ記憶部には、3次元
関心領域設定部3から供給される3次元関心領域の関心領域データが入力部7から供給さ
れる第1のラベル情報及び前記画像データ識別情報を付帯情報として保存される。
【0028】
即ち、過去の検査において収集された過去画像データが前記過去画像データ記憶部に保
存され、この過去画像データに対して設定された3次元関心領域の関心領域データが疾患
部位や疾患名等に対応する第1のラベル情報を付帯情報として前記関心領域データ記憶部
に保存される。そして、過去画像データと関心領域データは夫々のデータに付加された画
像データ識別情報によって対応付けられている。
【0029】
次に、参照用画像データ抽出部5は、上述の関心領域データ記憶部の関心領域データに
付加されている第1のラベル情報を検索するラベル情報検索部と、検索された第1のラベ
ル情報を有する3次元関心領域の関心領域データと前記3次元関心領域が設定される過去
画像データをデータ記憶部4の関心領域データ記憶部及び過去画像データ記憶部から抽出
するデータ抽出部((何れも図示せず)を備えている。
【0030】
前記ラベル情報検索部は、現行の検査において入力部7からシステム制御部8を介して
供給される第2のラベル情報を受信し、データ記憶部4の関心領域データ記憶部に保存さ
れた多数の関心領域データの各々に付加されている第1のラベル情報の中から第2のラベ
ル情報に対応する(即ち、同一のラベル情報あるいは類似したラベル情報を有する)第1
のラベル情報を検索する。
【0031】
そして、前記データ抽出部は、前記ラベル情報検索部によって検索された第1のラベル
情報を有する複数の関心領域データを前記関心領域データ記憶部に保存された多くの関心
領域データの中から抽出し、更に、これらの関心領域データが設定された複数からなる過
去画像データを参照用画像データ候補として前記過去画像データ記憶部に保存された多く
の過去画像データの中から抽出する。
【0032】
次に、表示部6は、表示データ生成部61とモニタ62を備え、3次元関心領域の設定
を目的とした3次元画像データやMPR画像データの表示、参照用画像データ候補の表示
、更には診断用画像データと参照用画像データとの比較表示等を行なう。
【0033】
即ち、表示部6の表示データ生成部61は、過去画像データに対する3次元関心領域の
設定に際し、画像データ生成部2が生成した過去画像データ、第1のMPR画像データ及
び第2のMPR画像データを合成して第1の表示データを生成する(図3参照)。又、表
示データ生成部61は、参照用画像データ候補の表示に際し、入力部7から供給される第
2のラベル情報に基づいてデータ記憶部4から抽出された参照用画像データ候補にデータ
記憶部4から抽出された関心領域データに基づく3次元関心領域を重畳する。そして、3
次元関心領域が重畳された複数からなる参照用画像データ候補を並列配置して第2の表示
データを生成する。
【0034】
図4は、第2の表示データの具体例を示したものであり、例えば、第2のラベル情報に
基づいて過去画像データC−1乃至C−6とこれらの過去画像データに対応した関心領域
データがデータ記憶部4から抽出された場合、表示データ生成部61は、前記関心領域デ
ータに基づく3次元関心領域Rb−1乃至Rb−6が重畳された過去画像データC−1乃
至C−6を並列配置して第2の表示データを生成する。
【0035】
更に、表示データ生成部61は、診断用画像データと参照用画像データの比較表示に際
し、現行の検査において生成された診断用画像データと上述の参照用画像データ候補の中
から選択された参照用画像データを並列配置して第3の表示データを生成する。
【0036】
図5は、第3の表示データの具体例を示したものであり、表示データ生成部61は、診
断用画像データ(図5(a))と3次元関心領域Rbが重畳された参照用画像データ(図
5(b))を並列配置して第3の表示データを生成する。そして、表示データ生成部61
によって生成された第1の表示データ乃至第3の表示データの各々は、必要に応じて所定
の変換処理が施されモニタ62に表示される。
【0037】
尚、図4及び図5に示したように、第2の表示データを構成する参照用画像データ候補
の各々には、上述の第1のラベル情報が付加された関心領域データに基づく3次元関心領
域が重畳され、同様にして、第3の表示データを構成する参照用画像データに対しても3
次元関心領域が重畳される。この場合、所定の色相及び不透明度が設定された3次元関心
領域を参照用画像データ候補や参照用画像データに重畳することにより3次元関心領域の
強調表示が可能となる。特に、第1のラベル情報に対応する3次元関心領域と他のラベル
情報に対応する3次元関心領域が同一の参照用画像データ候補や参照用画像データに重畳
されている場合、第1のラベル情報に対応する3次元関心領域を上述の方法によって強調
表示することにより他のラベル情報に対応する3次元関心領域との識別を容易に行なうこ
とができる。
【0038】
一方、入力部7は、操作パネル上に表示パネルやキーボード、トラックボール、マウス
、選択ボタン、入力ボタン等の入力デバイスを備え、過去の検査にて生成された第2のM
PR画像データに対し所定の幾何学形状あるいは任意形状の2次元関心領域を設定する関
心領域設定機能71、3次元関心領域の関心領域データに対しラベリングを行なうラベル
情報入力機能72、更には、複数からなる参照用画像データ候補の中から参照用画像デー
タを選択する画像データ選択機能73を有している。又、被検体情報の入力、各種画像デ
ータの生成条件や表示条件の設定、第1のMPR画像データにおけるスライドバーの位置
設定、過去画像データの血管内腔に対する始点及び終点の設定、3次元関心領域に対する
不透明度や色相の設定、更には、各種コマンド信号の入力等も上述の表示パネルや入力デ
バイスを用いて行なわれる。
【0039】
システム制御部8は、図示しないCPUと記憶回路を備え、前記記憶回路には、入力部
7にて入力/設定/選択された各種の情報が保存される。そして、前記CPUは、これら
の情報に基づいて画像表示装置100の各ユニットを統括的に制御し、データ記憶部4に
保管された多くの過去画像データの中から第2のラベル情報に対応する複数からなる過去
画像データを参照用画像データ候補として抽出する。そして、これらの参照用画像データ
候補の中から選択された参照用画像データと現行の検査にて収集された診断用画像データ
との比較表示を行なう。
【0040】
(過去画像データの保存手順)
次に、本実施例における過去画像データの保存手順につき図6のフローチャートを用い
て説明する。
【0041】
3次元関心領域が設定された過去画像データの保存に際し、画像表示装置100のボリ
ュームデータ記憶部1には、医用画像診断装置による過去の検査にて収集されネットワー
クあるいは記憶媒体等を介して供給された当該被検体あるいは他の被検体のボリュームデ
ータが保存される(図6のステップS1)。
【0042】
次いで、画像データ生成部2の3次元画像データ生成部21は、ボリュームデータ記憶
部1から読み出した前記ボリュームデータのボクセルに対し不透明度や色相を設定した後
レンダリング処理して3次元画像データを生成し、得られた3次元画像データを表示部6
のモニタ62に表示する(図6のステップS2)。
【0043】
表示部6に表示された上述の3次元画像データを観測した画像表示装置100の操作者
は、入力部7に備えられた入力デバイスを用いて、例えば、前記3次元画像データに示さ
れた血管内腔の中心部に対して始点及び終点を設定する。
【0044】
そして、入力部7からシステム制御部8を介して始点及び終点の位置情報を受信した画
像データ生成部2の2次元画像データ生成部22は、上述のボリュームデータに設定した
始点及び終点を血管内腔に沿って繋ぐことにより芯線データを生成し、この芯線データが
直線状に伸展されるように前記ボリュームデータを再構築してストレートボリュームデー
タを生成する。そして、直線状の芯線データを含む第1のMPR断面とこの芯線データに
垂直な第2のMPR断面をストレートボリュームデータに対して設定する。
【0045】
更に、2次元画像データ生成部22は、第1のMPR断面におけるストレートボリュー
ムデータのボクセルを抽出して血管の縦断面を示す第1のMPR画像データを生成し、第
2のMPR断面におけるストレートボリュームデータのボクセルを抽出して血管の横断面
を示す第2のMPR画像データを生成する。そして、得られた第1のMPR画像データ及
び第2のMPR画像データは、上述の3次元画像データと共に表示部6のモニタ62に表
示される(図6のステップS3)。
【0046】
表示部6において3次元画像データ及びMPR画像データの表示が行なわれたならば、
操作者は、第1のMPR画像データに重畳表示されたスライドバーSbを、入力部7の入
力デバイスを用いて芯線方向へ所定間隔で移動させる。そして、このスライドバーSbが
設定された位置に対して画像データ生成部2の2次元画像データ生成部22が生成した第
2のMPR画像データの血管部位に対して2次元関心領域を設定する(図6のステップS
4)。
【0047】
一方、3次元関心領域設定部3は、入力部7からシステム制御部8を介して供給される
複数からなる2次元関心領域の位置情報を芯線方向に対し補間処理して3次元関心領域を
形成し(図6のステップS5)、得られた3次元関心領域を上述の3次元画像データに設
定して表示部6のモニタ62に表示する(図6のステップS6)。
【0048】
表示部6に表示された上述の3次元画像データを観察した操作者は、この3次元画像デ
ータに設定された3次元関心領域の妥当性を確認した後、入力部7において当該疾患部位
に対応する第1のラベル情報を入力する(図6のステップS7)。
【0049】
そして、画像データ生成部2の3次元画像データ生成部21にて生成された上述の3次
元画像データは過去画像データとして画像データ識別情報と共にデータ記憶部4の過去画
像データ記憶部に保存される。一方、3次元関心領域設定部3から供給された3次元関心
領域の関心領域データは、入力部7から供給された第1のラベル情報及び前記画像データ
識別情報を付帯情報としてデータ記憶部4の関心領域データ記憶部に保存される(図6の
ステップS8)。
【0050】
(診断用画像データと参照用画像データとの比較表示手順)
次に、本実施例における診断用画像データと参照用画像データとの比較表示手順につき
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
過去画像データの中から抽出/選択された参照用画像データと現行の検査にて収集され
た診断用画像データとの比較表示に際し、画像表示装置100のボリュームデータ記憶部
1には、医用画像診断装置による現行の検査にて収集されネットワークあるいは記憶媒体
等を介して供給された当該被検体のボリュームデータが保存される(図7のステップS1
1)。
【0052】
画像データ生成部2の3次元画像データ生成部21は、ボリュームデータ記憶部1から
読み出した前記ボリュームデータのボクセルに対し不透明度や色相を設定した後レンダリ
ング処理して診断用画像データとしての3次元画像データを生成し、得られた診断用画像
データを表示部6のモニタ62に表示する(図7のステップS12)。
【0053】
表示部6に表示された上述の診断用画像データにおける疾患部位の解像度が不十分ゆえ
に参照用画像データとの比較表示が必要と判断した画像表示装置100の操作者は、入力
部7において前記疾患部位に対応する第2のラベル情報を入力した後、診断用画像データ
と参照用画像データとの比較表示を実行するためのコマンド信号を入力する(図7のステ
ップS13)。
【0054】
入力部7からシステム制御部8を介して上述のコマンド信号及び第2のラベル情報を受
信した参照用画像データ抽出部5のラベル情報検索部は、データ記憶部4の関心領域デー
タ記憶部に保存された複数からなる関心領域データの各々に付加されている第1のラベル
情報の中から第2のラベル情報に対応する第1のラベル情報を検索する。そして、参照用
画像データ抽出部5のデータ抽出部は、関心領域データ記憶部に保存された多くの関心領
域データの中から前記ラベル情報検索部が検索した第1のラベル情報を有する複数の関心
領域データを抽出し、更に、過去画像データ記憶部に保存された多くの過去画像データの
中から前記関心領域データの3次元関心領域が設定される複数の過去画像データを参照用
画像データ候補として抽出する。そして、参照用画像データ候補の各々に前記関心領域デ
ータに基づく3次元関心領域を重畳して表示部6のモニタ62に表示する(図7のステッ
プS14)。
【0055】
次に、表示部6に表示された複数からなる参照用画像データ候補を観察した操作者は、
これらの参照用画像データ候補の中から診断用画像データとの比較表示に好適な参照用画
像データを入力部7の入力デバイスを用いて選択する(図7のステップS15)。そして
、表示部6は、上述のステップS12において生成された診断用画像データとステップS
15において参照用画像データ候補の中から選択された参照用画像データを表示部6のモ
ニタ62において比較表示する(図7のステップS16)。
【0056】
以上述べた本発明の実施例によれば、医用画像診断装置による現行の検査にて収集され
た診断用画像データと過去の検査にて収集された参照用画像データを比較表示する際、予
め収集された多くの過去画像データの中から診断用画像データとの比較表示に好適な関心
領域を有する参照用画像データを短時間かつ正確に検索することができる。このため、当
該被検体に対する診断効率と診断精度を大幅に向上させることが可能となる。
【0057】
特に、本実施例によれば、疾患部位や疾患名等に対応したラベル情報に基づいて3次元
関心領域を有する参照用画像データを過去画像データの中から検索しているため、診断用
画像データの解像度が不十分な場合においても、この診断用画像データとの比較表示に用
いる参照用画像データを確実に検索することができる。又、参照用画像データの検索は、
特許文献1に記載されているような複雑な画像処理や信号処理を必要としないため極めて
短時間で行なうことができる。
【0058】
又、本実施例では、参照用画像データあるいは参照用画像データ候補に対し所定の色相
や不透明度が設定された3次元関心領域が重畳されるため、診断対象部位が存在する領域
を強調させて表示することができる。
【0059】
更に、本実施例では、過去の検査にて入力した第1のラベル情報と現行の検査にて入力
した第2のラベル情報を照合することにより複数の過去画像データを参照用画像データ候
補として自動抽出し、次いで、操作者の判断によって前記参照用画像データ候補の中から
参照用画像データを選択しているため、診断用画像データとの比較表示に最良な参照用画
像データを高い確度で検索することができる。
【0060】
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は上述の実施例に限定されるもの
ではなく、種々変形して実施することが可能である。例えば、上述の実施例では、医用画
像診断装置に対し独立して構成される画像表示装置について述べたが、医用画像診断装置
の内部に組み込まれた画像表示装置であってもよい。又、血管部位を診断対象部位とした
場合について述べたが他の疾患部位であっても構わない。
【0061】
更に、上述の実施例では、第1のラベル情報と第2のラベル情報との照合によって過去
の検査にて収集された多くの過去画像データの中から複数の過去画像データを参照用画像
データ候補として抽出し、これらの参照用画像データ候補の中から診断用画像データとの
比較表示に好適な参照用画像データを選択する場合について述べたが、参照用画像データ
候補として1つの過去画像データが抽出された場合には、この過去画像データを参照用画
像データとしてもよい。尚、第2のラベル情報に類似した第1のラベル情報の検索は、通
常のデータベース検索技術を適用することが可能である。
【0062】
又、上述の実施例では、図3乃至図5に示すように1つの過去画像データに対して1つ
の3次元関心領域を設定する場合について述べたが、1つの過去画像データに対して2つ
以上の3次元関心領域を設定してもよく、これら複数の3次元関心領域に対して同じ第1
のラベル情報を設定してもよい。
【0063】
更に、診断用画像データと参照用画像データとの比較表示において、同一方向から得ら
れた3次元画像データを並列表示する場合について述べたが、これに限定されるものでは
なく、3次元画像データの方向は任意に更新させてよく、又、これらの相対的なサイズも
任意に更新しても構わない。
【0064】
一方、上述の実施例では、医用画像診断装置による過去の検査にて収集された当該被検
体あるいは他の被検体のボリュームデータに基づいて過去画像データとしての3次元画像
データを生成し、現行の検査にて収集された当該被検体のボリュームデータに基づいて診
断用画像データとしての3次元画像データを生成する場合について述べたが、過去画像デ
ータ及び診断用画像データは前記ボリュームデータを用いて生成されるMPR画像データ
やMIP(Maximum Intensity Projection)画像データ等であってもよい。又、MPR画像
データは、ボリュームデータのボクセルを再配置して構築されるストレートボリュームデ
ータを用いて生成しても構わない。
【0065】
この場合、入力部7は、3次元画像データ、MPR画像データ及びMIP画像データの
何れかを表示するための表示モード選択機能を新たに備え、画像データ生成部2は、ボリ
ュームデータ記憶部1から供給されるボリュームデータを入力部7からシステム制御部8
を介して供給される表示モード選択信号に従って処理することにより過去画像データ及び
診断用画像データの生成を行なう。
【0066】
図8は、ストレートボリュームデータに対し芯線データCpを含むMPR断面(第1の
MPR断面)を設定して生成した診断用画像データとしてのMPR画像データ(a)と、
参照用画像データとしてのMPR画像データ(b)を示しており、参照用画像データとし
てのMPR画像データには2次元あるいは3次元の関心領域Rcが重畳される。
【符号の説明】
【0067】
1…ボリュームデータ記憶部
2…画像データ生成部
21…3次元画像データ生成部
211…不透明度・色相設定部
212…レンダリング処理部
22…2次元画像データ生成部
221…MPR断面設定部
222…MPR画像データ生成部
3…3次元関心領域設定部
4…データ記憶部
5…参照用画像データ抽出部
6…表示部
61…表示データ生成部
62…モニタ
7…入力部
71…関心領域設定機能
72…ラベル情報入力機能
73…画像データ選択機能
8…システム制御部
100…画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像診断装置によって生成された画像データにおける任意の領域を関心領域として
設定する関心領域設定手段と、
疾患情報を含む第1のラベル情報を、操作者が前記関心領域に対して関連付けて入力す
ることが可能となるように構成された第1のラベル情報入力手段と、
前記第1のラベル情報入力手段によって前記第1のラベル情報が関連付けられた前記関
心領域の関心領域データと前記画像データを対応させて参照用画像データとして保存する
データ記憶手段と、
前記第1のラベル情報に関連した第2のラベル情報を入力するための第2のラベル情報
入力手段と、
前記第2のラベル情報に対応する前記第1のラベル情報に関連付けられた前記参照用画
像データを抽出する参照用画像データ抽出手段と、
前記参照用画像データ抽出手段が抽出した前記参照用画像データを表示するための表示
手段とを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記抽出された参照用画像データと、現行の検査にて収集された診断
用画像データとを比較表示することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記画像データは、前記医用画像診断装置によって収集されたボリュームデータをレン
ダリング処理することにより生成された3次元画像データであって、
前記関心領域設定手段は、前記画像データとしての3次元画像データに対して3次元関
心領域を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記関心領域設定手段は、前記ボリュームデータの異なる複数のMPR断面にて生成さ
れたMPR画像データの各々に対して2次元関心領域を設定し、これら2次元関心領域の
位置情報を補間処理して前記3次元関心領域を設定することを特徴とする請求項3記載の
画像表示装置。
【請求項5】
前記画像データは、前記医用画像診断装置によって収集されたボリュームデータを処理
することにより生成された3次元画像データ、MPR(Multi Planar Reconstruction)画
像データ及びMIP(Maximum Intensity Projection)画像データの少なくとも何れかであ
ることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記参照用画像データを、前記参照用画像データ抽出手段が前記第2のラベル情報に基
づいて前記データ記憶手段から抽出した複数からなる前記参照用画像データ候補の中から
選択する画像データ選択手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいず
れか一項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記画像データ選択手段は、前記表示手段によって並列表示された前記複数からなる参
照用画像データ候補の中から前記参照用画像データを選択することを特徴とする請求項6
記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記関心領域は、1つの前記画像データに対して複数設定されることを特徴とする請求
項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−46770(P2013−46770A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−218798(P2012−218798)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2008−299122(P2008−299122)の分割
【原出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】