説明

画像表示装置

【課題】超多視差の画像を表示できる。
【解決手段】本実施形態に係る画像表示装置は、発光源、光変調部、第1制御部、および表示部を含む。発光源は、光を出射する。光変調部は、全画素領域を複数に分割したうちの少なくとも1列の画素列を含む単位画素領域で表示される画像データに関して、単位画素領域に含まれる画素ごとに、光を変調して複数の位置及び該位置に対応する出射角度で決まる情報光を生成する。第1制御部は、前記情報光の光路を制御して、該情報光を前記単位画素領域に導く。表示部は、前記単位画素領域から該単位画素領域に対応する前記情報光を出射することにより視差画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旧来のブラウン管モニターから液晶パネルに代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)への移行は急速に進み、業務用モニターやパソコン用ディスプレイばかりでなく民生用のテレビといった、ほとんどすべての画像表示装置がFPDに置き換わりつつある。同時に、ハイビジョンへの映像の高画質化が図られている。このような状況で、新たな機能として立体(3D)表示についても盛んに開発が進められ、家庭においても3D放送などを楽しめるようになっている。
このような3D放送を視聴する手段として、専用メガネを着用する方式や、特殊なディスプレイによって専用メガネ無しで視聴する方式がある。
これらの視聴手段とは別の手段として、ホログラフィ技術を利用したホログラフィックディスプレイがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−115117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、専用メガネを着用する場合には、専用メガネ着用による違和感や疲労感があり、さらに運動視差が得られない。専用メガネを着用しない場合は、運動視差が得られるディスプレイも一部実用化されえているもののFPDの解像度と視差数との関係から視差数の増加には限界があり、それゆえに、立体視できる場所(視聴領域)が限られる。また、ホログラフィックディスプレイの場合は、動画表示に必要な空間光変調器(SLM)の画素ピッチや画素数あるいは表示データの計算量などに対する要求が過大であり、画素数(解像度)が増えるほど、コストの面で非常に不利になる。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、低コストで小型かつ容易に超多視差の画像を表示することができる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る画像表示装置は、発光源、光変調部、第1制御部、および表示部を含む。発光源は、光を出射する。光変調部は、全画素領域を複数に分割したうちの少なくとも1列の画素列を含む単位画素領域で表示される画像データに関して、単位画素領域に含まれる画素ごとに、光を変調して複数の位置及び該位置に対応する出射角度で決まる情報光を生成する。第1制御部は、前記情報光の光路を制御して、該情報光を前記単位画素領域に導く。表示部は、前記単位画素領域から該単位画素領域に対応する前記情報光を出射することにより視差画像を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る画像表示装置を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態に係る画像表示装置の情報光の光路を示す図。
【図3】第1の実施形態に係る画像表示装置の動作例を示すフローチャート。
【図4】スリットシャッターの一例を示す図。
【図5】表示部に含まれるレンズの一例を示す図。
【図6】光源制御部の変調データ生成処理の一例を示すフローチャート。
【図7】第1の実施形態の変形例に係る画像表示装置を示すブロック図。
【図8】第2の実施形態に係る画像表示装置の一例を示すブロック図。
【図9】第3の実施形態に係る画像表示装置の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
3D表示の画像を視聴する手段として、液晶シャッターや偏光素子などを内蔵したメガネを利用した方式は、FPDとの親和性が高いことから実用化が進み、現在でも数多くの製品が世に出ている。FPDには左眼用と右眼用との2D画像が交互に表示され、左眼用画像が左眼に、右眼用画像が右眼に入るようにメガネにて切り替えるという方式である。FPDのフレームレートを従来の2倍にする必要がある以外に技術的な負担は比較的小さいが、以下に記すようなデメリットも多く存在する。
3D表示の視聴には専用メガネの着用が必須であり、いわゆる”ながら見”や2Dと3Dとの頻繁な切り替えに適さず、メガネを着用しないユーザ(視聴者)にとって3D表示は2重にぼけた画像と見えてしまう。これは言ってみれば2D表示と3D表示との間の互換性がメガネなしでは保てないということであり、本格的な3D放送の普及を妨げる一因ともなっている。また、3D表示を視聴するために専用メガネを着用する煩わしさもある。さらに、視聴者の位置にかかわらず左眼と右眼とに見える画像は変化しないため、運動視差(視聴位置の移動に伴って見える画像が変化する)が得らない。
これらのデメリットを回避するため、レンチキュラーやパララックスバリアといった技術に基づくディスプレイが開発され、メガネなしでの視聴や、多視差化による運動視差の獲得もできる。しかし、この方式は視差数の増加とともに使用されるFPDの解像度の増加が必要となってしまうため、視差数の増加にはおのずと限界がある。視差数が少ないと自然な立体視のできない視聴領域が増加するので、視聴領域が限られるという制約が生じる。本実施形態によれば、解像度を低下させることなく、超多視差の3次元画像を表示することができる。
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る画像再生装置について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る画像表示装置について図1のブロック図を参照して説明する。
第1の実施形態に係る画像表示装置100は、光源制御部101、電源制御回路102、光源103、第1制御回路104、第2制御回路105、偏光切替素子106、選択回路107、スリットシャッター108および表示部109を含む。光源制御部101は、メモリ110、記憶装置111、バス112、CPU(中央演算処理装置:Central Processing Unit)113、インターフェース114およびクロック115を含む。また、光源103は、発光源116とSLM(空間光変調器:Spatial Light Modulator)117とを含む。SLMは光変調部ともいう。さらに、第2制御回路105、偏光切替素子106、選択回路107およびスリットシャッター108をまとめて第1制御部ともいう。
【0010】
なお、以下の実施形態では、表示部109の画素数を横1920画素×縦1080画素(HD(High Definition)解像度)、1画素の大きさを1辺1mmの正方形、1画素の視差数をすべての画素において水平方向に240視差、表示フレームレート60Hzと設定する。なお、これに限らず、設計仕様に応じて各パラメータを変更してもよい。
【0011】
メモリ110は、SRAMなどの一般的なメモリであり、画素ごとに視差情報を有する画像データを一時的に記憶する。
記憶装置111は、画像データを記憶する。
バス112は、メモリ110、記憶装置111およびCPU113の間のデータのやりとりを行う。
CPU113は、バス112を介してメモリ110または記憶装置111から画像データを受け取り、画像データを表示させるため画素の視差情報を含む2次元データの生成などを処理を行う。
【0012】
インターフェース114は、CPUと、電源制御回路102、第1制御回路104、第2制御回路105および選択回路107との間のデータをやりとりを行う。
電源制御回路102は、CPU113からインターフェース114を介して制御信号を受け取り、制御信号に応じて発光源103を発光させたり、発光源103の発光を停止させるように制御する。
電源制御回路102は、CPU113からインターフェース114を介して制御信号を受け取り、発光源116の発光を制御する。
【0013】
発光源116は、例えば、LD(レーザダイオード:Laser Diode)などの発光素子であり、光を出射する。指向性の強さ、小型、低消費電力、長寿命、等の特長からLDを用いることが望ましいが、他に、発光ダイオード(LED)や有機EL、個体レーザ、ガスレーザ、あるいはSHG(Second Harmonic Generation)の利用や、ハロゲンランプ、水銀ランプなど一般的な汎用プロジェクタで用いられるような発光素子を利用してもよい。
【0014】
レーザやLEDの場合には、カラー化のためにRGB3原色を組み合わせるのが通常であるが、以下の説明では特別な場合を除き簡略化のためにRGB合わせて一つの発光源として扱う。発光源116から出射された光は必要に応じてピンホールやコリメートレンズ等により成形される。
【0015】
第1制御回路104は、CPU113からインターフェース114を介して2次元データを受け取り、SLM117に2次元データを表示させるように制御する。
SLM117は、2次元配列状の変調デバイスであるデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)や液晶パネル(LCOSなど)を用いる。SLM117は、第2制御回路115から2次元データを受け取り、光の位置と出射角度で決まる情報光を生成する。ここで、光の位置と光の出射角度とは、画像の視差情報を示す。
なお、これより下流の光学系の簡素化やフレームレート向上の観点から2次元変調が一括してできるように2次元配列のデバイスが望ましいが、1次元配列のデバイスを利用して、光MEMSなどを利用した走査タイプの変調を行ってもかまわない。また、以下は、説明の簡略化のために階調表現の可能なパネルの使用を前提とするが、DMDのようにON/OFF表現のみが可能なデバイスの場合にはON/OFF時間比などの調整により階調表現すればよい。
SLM117の画素(ピクセル)は、通常、正方形もしくは正方形に近いアスペクト比の長方形であるが、本実施形態では、SLM117の変調領域での画素の大きさは水平方向に視差分だけ圧縮されていることが望ましい。例えばSLM117が横1920画素×縦1080画素のデバイスであるとすると、鉛直方向は表示部109の縦画素1列(1080画素)と1対1に対応するが、水平方向は表示部109の横画素8画素分と対応する。ここで、表示部109の横8画素×縦1080画素は、単位画素領域と呼ぶ。単位画素領域は、全画素領域を複数に分割したうちの少なくとも1列の画素列であり、本実施形態では、横1画素×縦1080画素を1列とすると、8列で単位画素領域である。表示部109の横8画素×240視差がSLM117の横1920画素により変調される。
【0016】
このため、本実施形態の光源103には、水平方向1:鉛直方向240という倍率変換のためのレンズを含んでもよい。レンズは、シリンドリカルレンズ等のレンズ群であり、レンズを使用せずにミラーなどを組み合わせてもよい。なお、以下の説明は、光源より出力されて変調された光は、水平方向8mm×鉛直方向1080mmの大きさに変換されている設定で行うが、下流の光学系にて倍率変換や全体の拡大または縮小を行う場合には、これ以外のアスペクト比や大きさであってもよい。全体的にコスト等を考慮したうえで適宜設計すればよい。
【0017】
第2制御回路105は、CPU113からインターフェース114を介して制御信号を受け取り、制御信号に応じて偏光切替素子106の動作を制御する。
偏光切替素子106は、例えば液晶や半波長板であり、第2制御回路105の制御によりSLM117を透過した光である情報光の偏光(P偏光、S偏光)を切り替える。
選択回路107は、CPU113からインターフェース114を介して制御信号を受け取り、制御信号に応じてスリットシャッター108の動作を制御する。
スリットシャッター108は、選択回路107からの制御に応じて、表示部109における所望の画素領域に情報光を通過させ、他の画素領域には情報光を入射させないように情報光を遮断するようにシャッターを切り替える。
【0018】
表示部109は、例えば後述のシリンドリカルレンズや拡散板を含み、スリットシャッター108を通過した情報光を単位画素領域から出射する。表示部109から出射された光は、レンズなどで拡散され、視差を有する画像(視差画像)として表示される。
【0019】
次に、本実施形態に係る画像表示装置の光源から表示部までの情報光の光路について図2を参照して説明する。
図2に係る画像表示装置は、光源103、偏光切替素子106、PBS(偏光ビームスプリッタ:polarized beam splitter)201、ミラー202、ハーフミラー203、スリットシャッター108、および表示部109を含む。光源103、偏光切替素子106、スリットシャッター108および表示部109は、図1と同様であるのでここでの説明は省略する。
PBS201は、光源から出射された光をP波とS波とに分岐する。
ミラー202は、一般的なミラーであり、表示部109への情報光の光路の制御に用いられる。
ハーフミラー203は、光の一方は直進、もう一方は反射するように光を2分割する。
【0020】
図2の例では、ハーフミラー203は光源103とPBS201との間に設置されているが、光源103内に設置してもよく、例えば、発光源116の直後、ビームを整形した直後、またはSLM117の前後などでもよい。
【0021】
以下、光源103から表示部109までの情報光の光路について説明する。
光源103より出射された光は偏光切替素子106とPBS201とを通過し、2つの光路に交互に切り替えられる。また、発光源116を2種類用意して、それぞれの偏光方向が直交するように組み合わせれば、偏光切替素子106の応答速度に縛られることなく光路の切替周波数を高くすることができる。また、機械的にスリットシャッター108またはミラー202の動作により制御してもよく、必要な応答速度で切り替えられればいかなる方法によって制御してもよい。さらに、光出力や応答速度の点などで問題がない場合には、光路切り替えを省略し、ハーフミラー等で単純に分岐するだけでもよい。
【0022】
切り替えられた情報光は、それぞれが表示部109の左半分と右半分とを時間的に交互に担う。本実施形態では、表示部109の左半分がミラー1枚とハーフミラー119枚、右半分がミラー2枚とハーフミラー118枚の合計240の単位画素領域(1つの画素領域あたり表示部横1920画素(8画素×240視差)×縦1080画素)に情報光が振り分けられる。なお、ハーフミラー203やミラー202によらずに、光ファイバー等の光導波路によって情報光を振り分けてもかまわない。いずれの場合でも、瞬間的には左半分と右半分それぞれについて、120分の1ずつの光パワーで表示部109の各単位画素領域に同時に同じ情報光が照射されることになる。
【0023】
ハーフミラー203またはミラー202の配置により、光パワーに画素領域ごとのばらつきがある場合は、NDフィルターなどにより調整を行ってもよいし、光源制御部101においてばらつきを抑制するような制御を加えてもよい。
【0024】
スリットシャッター108には、ミラー202またはハーフミラー203を経た情報光が入射され、それぞれ表示に必要な画素領域を除いて光が遮断され、情報光が選択的に表示部109に到達する。スリットシャッター108は液晶のほか、機械的にシャッターまたはミラーの動作による方法など、所望の画素領域を表示できる方法であれば、いかなる方法でもよい。
【0025】
次に、第1の実施形態に係る画像表示装置の動作例について図3のフローチャートを参照して説明する。
ステップS301では、カウンタPを1に設定する。
ステップS302では、偏光切替素子106が、表示部109の左半分を表示させるための光路に切り替える。
ステップS303では、スリットシャッター108が、表示部109の左半分と右半分とのうち、それぞれP番目の画素領域に相当する部分を開いて透過状態とする。
【0026】
ステップS304では、第1制御回路104が、光源制御部101から視差情報を含む2次元データを受け取り、2次元データをSLM117に表示させる。
ステップS305では、電源制御回路102が、光源103から光を一定時間発光する。これにより、上述した光路をたどり、SLM117を通過した情報光が表示部109が表示される。
【0027】
ステップS306では、電源制御回路102が、発光源116がRGB光源である場合に、RGBの3色全てについて発光したかどうかを判定する。RGBの3色全てについて発光した場合はステップS307に進み、RGBの3色全てについて発光していない場合は、ステップS305に戻り、RGBを切り替えて、光源103が全ての色を発光するまで繰り返す。
【0028】
ステップS307では、偏光切替素子106が、表示部109の右半分を表示させるための光路に切り替える。
【0029】
ステップS308では、ステップS304と同様に、第1制御回路104が、2次元データをSLM117に表示させる。
【0030】
ステップS309では、電源制御回路102が、光源103から光を一定時間発光する。ステップS305と同様に、表示部109にSLM117を通過した情報光が表示される。
【0031】
ステップS310では、電源制御回路102が、発光源116がRGB光源である場合に、RGBの3色全てについて発光したかどうかを判定する。RGBの3色全てについて発光した場合はステップS311に進み、RGBの3色全てについて発光していない場合は、ステップS309に戻り、RGBを切り替えて、光源が次の色を発光する。
【0032】
ステップS311では、カウンタPが表示部の半分の画素領域について処理を終えたかどうかを判定する。ここでは、カウンタPが120に達したかどうかを判定する。半分の画素領域の処理を終えた場合は、ステップS301へ戻りPを初期値1に設定し、同様の処理を行う。処理を終えていない場合は、次の単位画素領域について処理するために、Pを1つインクリメントし、ステップS302へ戻り同様の処理を繰り返す。
【0033】
この上述したステップを表示フレームレート60Hzで、全画素分繰り返すことにより、視聴者は、240個の視差を有する3次元画像として見ることができる。
【0034】
上述のステップにおいて、スリットシャッター108は右半分用の画面と左半分用の画面との2か所の画素領域部分が透過状態になる。なお、上述の光路の切り替えをさらに多段にすればするほど、スリットシャッターの応答速度は遅くてもかまわなくなる。
つまり、例えば、光路切り替えを1段増やして合計2段(切り替えに必要な素子は3組)とし、切り替えられる光路を4系統とすれば、スリットシャッター108に必要な応答速度は半分になる。この場合スリットシャッターは常に4か所の画素領域部分が透過状態になっている。さらには、1つのSLM117の受け持つ画素領域を減らし、その分、光源103の数を増やせば、スリットシャッター108等の応答速度の条件はさらに緩和される。例えば光源103を2つとしてそれぞれが上記の半分である120の画素領域を受け持てば、SLM117や偏光切替素子106、スリットシャッター108などの応答速度は半分で済む。極端な場合、光源103を240個用意して、画素領域と1対1で対応するように設置すれば、偏光切替素子106やスリットシャッター108などは不要となり、SLM117も表示部109の表示フレームレートと同じ60fpsで表示できれば充分ということになる。全体的にコスト等を考慮したうえで適宜設計すればよい。
【0035】
次に、スリットシャッター108の一例について図4を参照して説明する。
図4(a)は、分割した情報光が表示部109の左半分と右半分とを担う場合であり、図4(b)は、分割した情報光が表示部109を単位領域ごとに交互に担う場合である。
【0036】
AとBとは、図2においてPBS201により切り替えられる2つの光路と対応し、一方の光路に切り替えられている時はAと示される領域に光源からの光が照射され、もう一方の光路に切り替えられている時はBに照射される。
【0037】
切り替えられた光は、図4(a)に示すような、それぞれ表示部109の左半分と右半分とを時間的に交互に担うとして上述したが、図4(b)のように、切り替えられた光が表示部の端から順番に交互に並ぶように配置しても構わない。ただしその場合、図2に示したミラー202およびハーフミラー203の配置も、切替光路Aと切替光路Bとが表示部において交互に並ぶように変更する必要がある。図4(b)のように配置すれば、スリットシャッターの単位画素領域の幅を倍に、表示部の分割数を半分にすることができる。すなわち、図4(a)の場合は、スリットシャッター108の単位画素領域を8画素として、表示部109を240列に分割するが、図4(b)の場合は、スリットシャッター108の単位画素領域を16画素として、表示部109を120列に分割する。
【0038】
なお、図4のAとBとの領域に、それぞれ直交する偏光フィルターを設ければ、前記PBSの役割を代替することができるため、PBSはハーフミラーに置き換えることができる。
【0039】
次に、表示部109に含まれるレンズの一例について図5を参照して説明する。
図5は1画素分のシリンドリカルレンズ500を示す。スリットシャッター108を透過した情報光は、表示部109に含まれるシリンドリカルレンズおよび拡散板(いずれも図2には図示せず)を経て出射され、視聴者の目に届く。
シリンドリカルレンズ500は、入射光を240視差に振り分け、同時に充分に大きな視野角を得るためのもので、複数レンズの組み合わせでもよいし、1画素ごとの同心円のレンズでもよい。SLM117の画素ごとの情報光は水平方向に240分の1mmずつずれて、シリンドリカルレンズ500に入射するが、このずれが240視差分の異なる角度となって充分に広い角度範囲に出射されればよい。すなわち、1画素あたり水平方向240個に分割された光導波路(光ファイバー列など)の出射側を広げて、入射した情報光が出射角度に直接導波されるようにしてもよい。
【0040】
なお、図5に示すシリンドリカルレンズ500は、発光源116にRGB3色を用いる場合のシリンドリカルレンズであり、色収差が問題となる場合に、シリンドリカルレンズを鉛直方向に3段階に分け、それぞれがRGBに最適なレンズ設計となるように設置する。RGBの光を鉛直方向にずらすには、発光源116の位置をずらしたり、ダイクロイックミラーやRGB発光の切り替えと同期した振動ミラーを利用したりすることによって光軸をずらせばよい。
【0041】
さらに、このレンズを縦1列のシリンドリカルレンズではなく1画素単位にして、鉛直方向にも水平方向と同様に視差を得られるように設計し、さらに、光源103やスリットシャッター108やその他光学系を鉛直方向にも展開すれば、水平方向だけでなく鉛直方向にも視差を生成できるように容易に実現できる。
例えば、鉛直方向にも120視差を生成するためには、画素領域の1単位を横8画素×縦9画素としてこれに光源103も対応させ(縦9画素×120視差をSLMの縦1080画素が変調)、スリットシャッター108を水平240分割×鉛直120分割とし、ミラー202とハーフミラー203による振り分けも240×120=28,800の画素領域に対応すればよい。
【0042】
拡散板を用いる場合は、鉛直方向のみに光を拡散させる機能を持つことが望ましい。拡散角度が小さい、あるいは拡散板を設置しない場合には、表示部109に対向したスクリーンに画像を投影することも可能であり、一種のプロジェクタとして機能させることができる。また、表示部109を曲面にすることも容易である。特に円筒状にすることは容易で、ハーフミラーやスリットシャッター、シリンドリカルレンズ等を円筒状に配置すれば、特に大きな技術的困難さを伴わずに実現可能である。
【0043】
次に、光源制御部101の変調データ生成処理について図6のフローチャートを参照して説明する。
【0044】
ステップS601では、ある画素の1つの視差角度について、そのベクトルの延長上にある表示すべき物点の輝度と色とを計算する。
【0045】
ステップS602では、視差数分の計算が終了したかどうかを判定する。本実施形態では、240個の視差に関する物点の輝度と色との計算が終了したかどうかを判定する。
【0046】
視差数分の計算が終了した場合は、ステップS603に進み、視差数分の計算が終了していない場合は、ステップS601に進み、次の視差について計算し、視差数分の計算が終了するまでステップS601の処理を繰り返す。
【0047】
ステップS603では、所定の画素数に対する処理が終了したかどうかを判定する。所定の画素数に対する処理が終了した場合は、ステップS604に進み、所定の画素数に対する処理が終了していない場合は、ステップS601へ戻り、ステップS601からステップS603までの同様の処理を繰り返す。なお、所定の画素数とは、全画素数でもよいし、単位画素領域で用いる画素数でもよい。
【0048】
ステップS604では、変調データをSLM117に表示する。その後次の時刻において、ステップS601からステップS604までの処理を繰り返す。
【0049】
なお、ステップS601における表示すべき物点の輝度と色とは、例えば以下のような手法で計算される。まず、表示対象物(人物、物体、背景など)の情報を計算機内部に生成する。これは、カメラなどで撮影された実際の像でもよいし、計算機により合成された仮想的な像であってもよく、3次元位置、明るさ、色が後述する方法によって取得可能であればよい。この情報は、表示面に対して裏表いずれに位置してもよい。次に、表示面の1つの画素の1つの視差と、その視差ベクトル上にあって、その視差の光を観察する想定観察者の目の位置に着目する。最後に、その視差ベクトルと表示対象物との交点のうち、最も目に近い点の色と輝度とを計算機により求める。目の裏側(表示面に向き合わない側)の交点は採用しないが、最も目に近い点が半透明の場合には、透明度や輝度に応じて2番目以降に目に近い点も考慮して色と輝度とを計算する。空間的なゆがみなどの特殊な効果を加える場合には、その効果の内容に応じて交点の計算方法を変更すればよい。着目した1つの画素、1つの視差についての計算が終了したら、それ以降は着目する画素と視差とを順次切り替えていくことで、最終的に全視差、全画素が計算されることになる。
【0050】
(第1の実施形態の変形例)
上述した実施形態では、表示部109において多視差である1つの3次元画像を表示する場合を示すが、ユーザの位置によって全く異なる画像を表示してもよい。
本変形例に係る画像表示装置について図7のブロック図を参照して説明する。
本変形例に係る画像表示装置700は、図1に示す画像表示装置100に加えて、検出部701を含む。
【0051】
検出部701は、ユーザの眼の位置を含むユーザ位置を検出する。検出したユーザ位置を光源制御部101へ送る。
例えば、240個の視差を左右120視差ずつに分け、ユーザ位置に応じて、左右で異なる画像を出力すれば、表示部109の左側、右側にいるそれぞれのユーザに対して異なる画像を表示することができる。
【0052】
さらに、鉛直方向のユーザ位置を検出することにより、年齢層に応じて異なる画像を表示することもできる。例えば、一般的に、身長の高さが「男性>女性>子供」といえるので、このユーザ位置に基づいて、ユーザ位置の高さが第1閾値以上であれば、男性が関心を持つと想定される画像を表示し、第1閾値未満かつ第2閾値以上であれば、女性が関心を持つと想定される画像を表示する。第2閾値未満であれば、子供が関心を持つ画像を表示するといったように、ニーズに合わせた画像を表示することができる。
【0053】
また、検出部701としてヘッドトラッキング装置を用いれば、特定のユーザ位置を追跡し、特定のユーザにだけ、他のユーザとは異なる画像を表示することもできる。
【0054】
以上に示した第1の実施形態によれば、単位画素領域ごとに表示すべき多数の視差情報を含む画像データに関して、複数の位置および該位置に対応する出射角度できまる情報光を、偏光切替素子および液晶スリットで選択された単位画素領域から出射することにより、低コスト、かつ小型で簡易な構成で超多視差の3次元画像を生成することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、光源103から表示部109までの間の、画素領域への光路の制御は、偏光切替素子106、PBS201、ミラー202、ハーフミラー203およびスリットシャッター108により実現されたが、第2の実施形態では、ポリゴンミラーにより、光路の制御を実現する。
【0056】
ポリゴンミラーを用いた第2の実施形態に係る画像表示装置の一例について図8を参照して説明する。
図8に示す画像表示装置800は、光源103、ポリゴンミラー801および表示部109を含む。
ポリゴンミラー801は、一般的な多面体の柱状ミラーであり、鏡面を複数有する。ポリゴンミラー801は、最適化された回転速度で一定方向に回転する。これにより、光源103から出射した光は、ポリゴンミラー801の回転に伴って表示面の一端から他端まで水平方向に、表示部109の画素領域に対して順次照射される。図8の例では、ポリゴンミラー801は反時計回りに回転し、光源から出射した光は表示部109の左側の画素領域から右側の画素領域にかけて照射されることになる。
なお、この場合、表示部109への情報光の入射角度は、画素列ごとに水平方向では異なるので、画素列ごとに、対応するシリンドリカルレンズの設計を入射角に適したものにするか、入射角の違いを補償するような光学素子(ウェッジなど)を用いればよい。
【0057】
以上に示した第2の実施形態によれば、多数のハーフミラー群およびスリットシャッターの代わりにポリゴンミラーを用いることで、第1の実施形態と同様に超多視差の3次元画像を表示することができ、かつ画像表示装置における部品数を減らすことができる。
【0058】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態に示す光学系を用いて、表示部109に入射された外部の光を検出して、外部の状況に応じて映像を表示したり、超多視差のカメラとして用いる点が異なる。
【0059】
第3の実施形態に係る画像表示装置の一例について図9を参照して説明する。
第3の実施形態に係る画像表示装置900は、光源103、偏光切替素子106、PBS201、光検出素子901、ミラー202、ハーフミラー203、スリットシャッター108、および表示部109を含む。第1の実施形態に係る画像表示装置100と異なる点は、PBS201を2つ含み、PBS201同士の間に、偏光切替素子106が設置され、光検出素子901を含む点である。
【0060】
光検出素子901は、PBS201から分岐した光を受け取り、光量を検出する。この光検出素子901によって表示部109に入射する外部からの光量を検出することができ、外部の状況に応じた映像を表示することができる。例えば、第3の実施形態に係る画像表示装置900が街頭に設置されている場合、光検出素子901で検出された光量が閾値以上である場合、すなわち日中の時間帯では、主婦層や学生などが関心を持つと想定される映像を表示し、光検出素子901で検出された光量が閾値未満、すなわち夕方から夜にかけての時間帯では、サラリーマンなどが関心を持つと想定される映像を表示することができる。
【0061】
また、光検出素子901にイメージセンサを用いて、上述の拡散板の拡散角度が小さい、あるいは拡散板を設置しない場合は、一種の超多視差の画像を撮像するカメラとして利用してもよい。なお、図9おいて偏光切替素子106が図示する位置に存在しない場合、表示部109の右側からの光のみが光検出素子901まで導かれ、左側は光源103の方へ導かれてしまうことになる。これを回避するためには、例えば上述の通りに光路切り替えを省略し、ハーフミラー等で単純に分岐するだけの構成とし、スリットシャッター108を同時に1画素領域のみ透過するようにすればよい。
【0062】
以上に示した第3の実施形態によれば、外部の光量を検出することで、外部の状況に応じた画像を提供することができ、さらに超多視差の画像を撮像可能なカメラとして利用することもできる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
100,700,800,900・・・画像表示装置、101・・・光源制御部、102・・・電源制御回路、103・・・光源、104・・・第1制御回路、105・・・第2制御回路、106・・・偏光切替素子、107・・・選択回路、108・・・スリットシャッター、109・・・表示部、110・・・メモリ、111・・・記憶装置、112・・・バス、114・・・インターフェース、115・・・クロック、115・・・制御回路、116・・・発光源、202・・・ミラー、203・・・ハーフミラー、500・・・シリンドリカルレンズ、701・・・検出部、801・・・ポリゴンミラー、901・・・光検出素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する発光源と、
全画素領域を複数に分割したうちの少なくとも1列の画素列を含む単位画素領域で表示される画像データに関して、単位画素領域に含まれる画素ごとに、光を変調して複数の位置及び該位置に対応する出射角度で決まる情報光を生成する光変調部と、
前記情報光の光路を制御して、該情報光を前記単位画素領域に導く第1制御部と、
前記単位画素領域から該単位画素領域に対応する前記情報光を出射することにより視差画像を表示する表示部と、を具備することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記光変調部は、前記単位画素領域に含まれる画素と該画素ごとの前記表示部で表示される前記視差画像の視差数とを乗算した数に対応する情報光を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記光の色および該光の強度を制御し、前記単位画素領域ごとの光を時分割で生成する第2制御部をさらに具備し、
前記第1制御部は、前記第2制御部に応じて、単位画素領域へ情報光が入射するように前記光路を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、レンズ群を含むことを特徴する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記第1制御部は、ミラーおよび光導波路の少なくともいずれか一方により前記情報光を前記表示部へ制御することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記第1制御部は、前記単位画素領域へ該単位画素領域に対応する情報光の制御を、シャッターにより行うことを特徴する請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項7】
ユーザの眼の位置を含むユーザ位置を検出する第1検出部をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記第1制御部および前記第2制御部は、前記表示部から出射された光が3次元画像を表示するように制御することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記第1制御部および前記第2制御部は、前記表示部から出射された光が、該表示部に対する、ユーザの眼の位置を含むユーザ位置によって異なる画像を表示するように制御することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記第1制御部および前記第2制御部は、前記第1検出部により検出されたユーザ位置に応じて、前記表示部で表示される画像を制御することを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記表示部に外部から入射される外部光の光量を検出する第2検出部をさらに具備し、
前記第1制御部は、前記第2検出部へ外部光を導くように光路を制御することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−9196(P2013−9196A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141095(P2011−141095)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】