説明

画像補正装置、補正画像生成方法、補正テーブル生成装置、補正テーブル生成方法、補正テーブル生成プログラムおよび補正画像生成プログラム

【課題】補正後の画像における違和感を低減ないし解消することを課題とする。
【解決手段】前記課題を解決するために、本発明の画像補正装置10は、入力画像を補正テーブル17に基づいて幾何補正する幾何補正部13を備え、補正テーブル17は、出力画像上の各画素位置に対応する被写体空間中の光線方向ベクトルを、被写体空間中における前記入力画像の投影中心位置である第1の投影中心位置よりも前記入力画像に対応する光軸の方向に関して後方に位置する第2の投影中心位置に基づいて算出し、前記光線方向ベクトルに基づき、前記画素位置に対応する被写体空間中の対応点が前記第1の投影中心位置からどの方向に存在するかを表すベクトルである原点基準光線方向ベクトルを算出し、前記原点基準光線方向ベクトルに対応する前記入力画像上の位置を抽出位置として算出し、前記抽出位置を前記出力画像の画素位置に対応付けていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚眼画像等の補正後の画像における違和感を低減ないし解消することができる画像補正装置などの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、監視カメラやテレビドアホンを始めとする幾つかの応用分野において、広い視野範囲の映像を一望したいという要望がある。そのため、光学系に魚眼レンズを採用し、水平画角180度程度の範囲を撮影するビデオカメラ等が実用化されている。しかし、それらの機器を用いて撮影した画像では、一般に、被写体空間中の直線が大きく湾曲して写っているため、撮影した画像に対して湾曲の度合いを低減するための幾何補正を施したいという要求がある。
【0003】
魚眼レンズには、その設計方針の違いにより、等距離射影方式、等立体角射影方式、正射影方式等、様々な射影方式が存在する。しかし、いずれの射影方式であっても、補正後の画像において表現すべき画角が180度未満であれば、透視変換を用いることで、魚眼レンズを用いて撮影された画像(以下、「魚眼画像」という。)における直線の湾曲を、設計値や従来技術によって推定された所与のパラメータと射影モデルとに基づいて、完全に補正することができる。
【0004】
魚眼画像の例を図18(a)および図19(a)に示す。図18(a)は、紙製の筒を撮影したものであり、図19(a)は、エントランスホールを撮影したものである。
また、これらの魚眼画像を透視変換を用いて左右方向の画角が広く確保されるように補正した例を、各々、図18(b)および図19(b)に示す。これらの補正例に示すように、透視変換を用いた補正結果は、直線となるべき部分は直線となるように補正されているものの、画像の周辺部が極端に引き伸ばされて遠近感が強調されており、違和感の大きな画像となっている。これは、補正した結果の画像で表現されている画角と、この画像を見る際の画角とが大きく異なることによって生じるものである。
【0005】
この問題を解決すべく考案された技術として特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の技術は、各々が略平面である正面と左右面とを滑らかにつないだ筒面を利用して、左右方向に180度を超える画角を確保しつつ、上下方向に伸びる直線状の被写体と光軸に向かう直線状の被写体が各々直線に見えるように、補正するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−311890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、出力画像の中心部分と左右端部分との中間付近で横方向の直線が急激に湾曲するため、例えば、被写体がカメラの前を横断するような場合において、違和感を覚えるという問題がある。
そこで、本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、補正後の画像における違和感を低減ないし解消することができる画像補正装置、補正画像生成方法、補正テーブル生成装置、補正テーブル生成方法、補正テーブル生成プログラムおよび補正画像生成プログラムを提供することを課題とする。例えば、図18(a)の魚眼画像を補正して図18(d)のような補正結果を得ること、あるいは、図19(a)の魚眼画像を補正して図19(c)のような補正結果を得ることが目的となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の画像補正装置は、入力画像を幾何補正して補正画像を生成する画像補正装置であって、前記入力画像を入力する画像入力部と、前記入力画像を記憶する画像記憶部と、前記入力画像を幾何補正するために用いる補正テーブルを記憶する補正テーブル記憶部と、前記画像記憶部に記憶された前記入力画像を前記補正テーブルに基づいて幾何補正する幾何補正部と、前記幾何補正部により補正された前記入力画像を前記補正画像として出力する画像出力部と、を備え、前記補正テーブルは、前記補正画像上の各画素位置に対応する被写体空間中の光線方向ベクトルを、前記被写体空間中における前記入力画像の投影中心位置である第1の投影中心位置よりも前記入力画像に対応する光軸の方向に関して後方に位置する第2の投影中心位置に基づいて算出し、前記光線方向ベクトルに基づき、前記画素位置に対応する被写体空間中の対応点が前記第1の投影中心位置からどの方向に存在するかを表すベクトルである原点基準光線方向ベクトルを算出し、前記原点基準光線方向ベクトルに対応する前記入力画像上の位置を抽出位置として算出し、前記抽出位置を前記補正画像の画素位置に対応付けることにより生成されたものであることを特徴とする。
なお、「補正テーブル」は、「補正情報」といった意味合いである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、魚眼画像等の補正後の画像における違和感を低減ないし解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の画像補正装置の構成を説明する図である。
【図2】本発明の補正テーブルの一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の画像補正装置における幾何補正部の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る補正テーブル生成装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る出力画像の画素座標と入力画像の座標を対応させるための座標系の変換を説明する図であり、(a)は、出力画像の座標系を示す図である。(b)は、出力画像のv軸方向を補正した中間画像の座標系を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る出力画像の画素座標と入力画像の座標を対応させるための座標系の変換を説明する図であり、(a)は、円筒面に基づいて、光線方向ベクトルを求めるための座標系の変換を説明する図である。(b)は、入力画像の座標系を示す図である。
【図7】円筒面に基づいて、光線方向ベクトルを求めるための座標系の変換を説明する図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る補正テーブル生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態に係る補正テーブル生成装置における後退位置基準光線方向算出部の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1実施形態に係る補正テーブル生成装置における補正テーブル修正部の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態に係る補正テーブル生成装置の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る出力画像の画素座標と入力画像の座標を対応させるための座標系の変換を説明する図であり、(a)は、出力画像の座標系を示す図である。(b)は、経度緯度座標系を示す図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る出力画像の画素座標と入力画像の座標を対応させるための座標系の変換を説明する図であり、(a)は、経度および補正緯度と、円筒面に基づいて、光線方向ベクトルを求めるための座標系を示す図である。(b)は、入力画像の座標系を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る被写体空間中の直線が出力画像上で湾曲する場合と湾曲しない場合を説明するための図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る補正テーブル生成装置における補正緯度算出部が緯度を補正する際に用いる関数を説明する図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る補正テーブル生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第2実施形態に係る補正テーブル生成装置における後退位置基準光線方向算出部の動作を示すフローチャートである。
【図18】魚眼画像(入力画像)に従来技術および本発明を適用した結果を示す図であり、(a)は、魚眼画像(入力画像)を示す図である。(b)は、(a)の魚眼画像(入力画像)に従来技術である透視変換を用いて補正した結果の補正画像(出力画像)の一例である。(c)は、(a)の魚眼画像(入力画像)に本発明を適用した結果の補正画像の一例であり、第1実施形態において、補正テーブル修正処理を行わない場合の例である。(d)は、本発明を適用した結果の補正画像(出力画像)の一例である。
【図19】魚眼画像(入力画像)に従来技術および本発明を適用した結果を示す図であり、(a)は、魚眼画像(入力画像)を示す図である。(b)は、(a)の魚眼画像(入力画像)に従来技術である透視変換を用いて補正した結果の補正画像(出力画像)の一例である。(c)は、本発明を適用した結果の補正画像(出力画像)の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。
図1に示すように、画像補正装置10は、魚眼画像などの入力画像を取り込んで、その画像を補正し、補正画像を出力画像として出力するものである。
画像生成装置30は、画像データを生成して画像補正装置10に供給するものである。本実施形態では、画像生成装置30は、水平画角および垂直画角がともに180度であるような等距離射影方式の円周魚眼レンズを備えたデジタルビデオカメラである場合を例として説明する。
画像表示装置40は、画像補正装置10で補正された補正画像(出力画像)を表示するディスプレイ等である。
【0012】
補正テーブル生成装置20は、画像補正装置10の後記する補正テーブル記憶部15に格納する補正テーブル17を生成するものである。補正テーブル生成装置20は、例えば、パーソナルコンピュータで構成される。
補正テーブル生成装置20は、補正テーブル17を生成した後、幾何補正部13がこの補正テーブル17を用いた幾何補正処理を実施するより前に、この補正テーブル17を画像補正装置10に送信する。
なお、補正テーブル17の更新が必要ない場合、即ち、補正テーブル17の生成に関係するパラメータに変更がない場合には、補正テーブル生成装置20は、生成した補正テーブル17を画像補正装置10に送信した後、画像補正装置10から切り離しておくことができる。
【0013】
[画像補正装置10の構成]
図1に示すように、画像補正装置10は、画像入力部11と、画像記憶部12と、幾何補正部13と、画像出力部14と、補正テーブル記憶部15と、補正テーブル更新部16とを備えている。
【0014】
画像入力部11は、画像生成装置30から供給される入力画像を読み込んで、画像記憶部12に書き込むものである。読み込んだ入力画像の各画素の画素値は、基準色(本実施形態ではR,G,Bの3種類とする)ごとに「0」から「255」までの256通りの整数値のうちの一つの値を取るような、デジタル化された値である。
【0015】
画像生成装置30からの入力画像の読み込みは、画像生成装置30の構成に対応したインターフェースを用いて実施すればよく、例えば、画像生成装置30からアナログ信号として入力画像が供給される場合にはA/D変換器を備えた構成とすればよいし、USB(Universal Serial Bus)インターフェース等によって、デジタル信号として入力画像が供給される場合には、それに対応するインターフェースを備えた構成とすればよい。
【0016】
画像記憶部12は、画像生成装置30から供給される入力画像全体を格納するものであり、少なくとも入力画像の2画面分が格納できる容量の大きさのメモリ(RAM;Random Access Memory)を備えるものである。画像記憶部12は、1画面分を画像入力部11からの書き込み用に、残りの1画面分を幾何補正部13からの読み出し用に、1画面毎に役割を交互に交代しながら使用する。
【0017】
幾何補正部13は、後記する補正テーブル記憶部15に格納された補正テーブル17に基づいて、画像記憶部12に格納された入力画像に幾何補正を行い、幾何補正を行った結果である出力画像(補正画像)を画像出力部14に対して出力するものである。幾何補正部13は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成されている。なお、この幾何補正部13が行う処理の詳細は、後に詳述する(図3参照)。
【0018】
画像出力部14は、幾何補正部13から出力された出力画像(補正画像)を適切な映像信号に変換して画像表示装置40に対して出力するものである。例えば、画像表示装置40がアナログ映像信号を表示するように構成されている場合には、D/A変換器を備えた構成とすればよい。
【0019】
補正テーブル記憶部15は、後記する補正テーブル17を記憶しておくものであり、例えば、書き換え可能な不揮発性メモリである。
補正テーブル更新部16は、補正テーブル生成装置20から送信される補正テーブル17を受信して補正テーブル記憶部15に格納するものであり、補正テーブル生成装置20側のインターフェースに合わせて、例えばUSBインターフェースやIEEE1394インターフェース等を備えた構成とすればよい。
【0020】
補正テーブル17は、幾何補正部13が出力する出力画像(補正画像)の各々の画素に対して、それらの画素の画素値を、画像記憶部12に記憶された入力画像(魚眼画像)上のどの画素を参照して決定するかを定義したものである。本実施形態においては、補正テーブル17として、リサンプリングテーブル、具体的には「幾何補正部13が出力する出力画像の各々の画素に対して、それらの画素に対応する画像記憶部12に記憶された入力画像上の2次元座標値を表す固定小数点数の組(x,y)を対応付けたテーブル」を使用する。補正テーブル17は、後述(図8乃至図10参照)の方法によって補正テーブル生成装置20によって生成された後、補正テーブル更新部16を介して補正テーブル記憶部15に格納される。
【0021】
リサンプリングテーブル(補正テーブル)17は、例えば図2に示すように、出力画像上の画素座標(u,v)と入力画像上の座標(x,y)とを対応付けている。図2は、u軸方向の画素数が640画素、v軸方向の画素数が480画素の場合のリサンプリングテーブル(補正テーブル)17の例である。なお、u,vは、整数であるが、x,yは、必ずしも整数ではない。また、出力画像上の画素座標(u,v)に対応付けられる入力画像上の座標(x,y)が入力画像の範囲外の座標となる場合には、あらかじめ定めた例外値、例えば(−1,−1)などの値を(u,v)に対応付けて格納しておく。
【0022】
[画像補正装置10における幾何補正部13の動作]
次に、画像補正装置10における幾何補正部13の動作について図3を参照(構成は適宜図1を参照)して説明する。
まず、画像記憶部12に入力画像が記憶されており、補正テーブル記憶部15にリサンプリングテーブル(補正テーブル)17が記憶されていることを前提とする。
【0023】
図3のフローチャートに示すように、ステップS1において、幾何補正部13は、カウンタのNの値を「0」にする。
【0024】
ステップS2において、幾何補正部13は、出力画像のN番目の画素の座標(u,v)に対応する入力画像上の座標(x,y)を決定する。
具体的には、まず、幾何補正部13は、カウンタのNの値を出力画像のu軸方向の画素数で割った商をvの値、余りをuの値として(すなわち、u軸方向の画素数が「B」である場合、N=v・B+u)、出力画像上の画素座標(u,v)を算出する。次に、幾何補正部13は、リサンプリングテーブル(補正テーブル)17に基づいて、出力画像上の画素座標(u,v)に対応する入力画像上の座標(x,y)を決定する。
【0025】
ステップS3において、幾何補正部13は、決定した入力画像上の座標(x,y)に基づいて、出力画像のN番目の画素の画素値を算出する。具体的には、例えば、入力画像上の座標(x,y)に基づき、基準色毎(つまりRGB毎)に、入力画像上の四近傍画素の画素値を用いた双線形補間によって出力画像の画素値を定めるようにすればよい。なお、出力画像の画素値の算出には、バイキュービック補間等、他の従来技術を用いてもよい。
また、幾何補正部13は、入力画像上に対応する座標値がない場合、すなわち、リサンプリングテーブル(補正テーブル)17に基づいて決定した入力画像上の座標(x,y)が、あらかじめ定めた例外値であった場合には、その出力画像の画素値を例外値、例えば、「黒」すなわち(R,G,B)=(0,0,0)とする。
【0026】
ステップS4において、幾何補正部13は、出力画像の全画素について画素値の算出が完了したか否かを判定する。
出力画像の全画素について画素値の算出が完了したと判定した場合(ステップS4・Yes)、幾何補正部13は、幾何補正処理を終了する。
一方、出力画像の画素のうち画素値の算出が完了していない画素があると判定した場合(ステップS4・No)、幾何補正部13は、カウンタのNの値に「1」を加える(ステップS5)。その後、ステップS2に戻って処理を続ける。
出力画像の全画素について画素値の算出が完了したか否かを判定するには、カウンタのNの値と出力画像の画素数とを比較することによって判定すればよい。
【0027】
[補正テーブル生成装置20の構成]
図4に示すように、補正テーブル生成装置20は、後退位置基準光線方向算出部23と、原点基準光線方向算出部24と、抽出位置算出部25と、抽出位置登録部26と、補正テーブル修正部27とを備える。
なお、本実施形態では、抽出位置登録部26により出力されたリサンプリングテーブル(補正テーブル)17aを、補正テーブル修正部27により修正し、修正したリサンプリングテーブル(補正テーブル)17を出力する形態について説明する。リサンプリングテーブル(補正テーブル)を修正する必要のないときは、補正テーブル修正部27の構成は必要ではなく、以下の説明の中間画像の代わりに出力画像を直接生成するものとして処理すればよい
【0028】
後退位置基準光線方向算出部23は、中間画像上の画素座標(u,v’)に対応する被写体空間中の光線方向ベクトルを、後記する後退位置基準光線方向ベクトル(X’,Y’,Z’)として算出するものである。
ここで、中間画像とは、補正テーブル修正処理を行う前のリサンプリングテーブル(補正テーブル)17aを用いて、画像補正装置10において、入力画像を補正し、出力した場合の画像に相当する。
【0029】
後退位置基準光線方向算出部23は、次の(1)式によって、中間画像上の画素座標(u,v’)から、後退位置基準光線方向ベクトル(X’,Y’,Z’)を算出する。
【0030】
【数1】

【0031】
これにより、図5(b)に示す中間画像のuv’座標系から、図6(a)に示すX’Y’Z’座標系へ座標系を変換する。ここで、図5(b)におけるO’’(uc, v’c)は中間画像の中心位置の座標である。wは、u軸方向のスケールを正規化するための定数であり、uの値に等しく設定される。また、出力画像および中間画像全体でのスケールの整合性を確保するため、v軸方向及びv’軸方向のスケールの正規化に対しても使用される。
また、図6(a)に示すように、Θは、後退位置基準での半画角に相当するものであり、設計値として予め与えられる値である。P(u,v’)は、後退位置基準光線方向ベクトルQK1(X’,Y’,Z’)へ変換される。K1は、円筒面51上の点である。なお、このように変換する理由は、後述する。
【0032】
原点基準光線方向算出部24は、後退位置基準光線方向ベクトル(X’,Y’,Z’)から、原点基準光線方向ベクトル(X,Y,Z)を算出するものである。原点基準光線方向算出部24は、次の(2)式によって、原点基準光線方向ベクトル(X,Y,Z)を算出する。
【0033】
【数2】

【0034】
これにより、図6(a)に示すように、X’Y’Z’座標系から、XYZ座標系へ変換する。後退位置基準光線方向ベクトルQK1(X’,Y’,Z’)は、原点基準光線方向ベクトルOK1(X,Y,Z)へ変換される。
【0035】
抽出位置算出部25は、入力される原点基準光線方向ベクトル(X,Y,Z)から、入力画像上の座標(x,y)を抽出位置として算出するものである。抽出位置とは、入力画像上の座標(x,y)であり、出力画像上の画素座標(u,v)または中間画像上の画素座標(u,v’)に存在する画素の画素値を入力画像上から抽出する際の位置である。本実施形態の入力画像は等距離射影方式の魚眼レンズを用いて撮影されたものであるため、抽出位置算出部25は、例えば、次の(3)式によって、入力画像上の座標(x,y)を算出する。
【0036】
【数3】

【0037】
これにより、図6(a)に示すXYZ座標系から、図6(b)に示す入力画像のxy座標系へ変換する。ここで、O’’’(xc, yc)は入力画像の像円の中心の座標である。また、Rは像円の半径であり、半画角90度に対応する長さである。原点基準光線方向ベクトルOK1(X,Y,Z)は、P(x,y)へ変換される。
なお、xc, ycおよびRは、設計値として予め補正テーブル生成装置20に登録されているものとする。また、本発明における撮像パラメータの種類はこれらに限るものではなく、使用する射影モデルに応じて種々変更することができるほか、1枚または複数の入力画像から、従来技術を用いて推定するようにしてもよい。例えば、像円の中心の座標O’’’(xc, yc)および像円の半径Rについては、像円の外側の部分が通常黒くなっている(画素値として(R,G,B)の各々に非常に小さい値が格納されている)ことを利用して、円の推定を行うことで、従来技術によって推定可能である。さらに、(3)式の代わりに、従来技術による、光学系の歪み補正のための、より高次の項まで含めた補正式を使用するようにしてもよい。
【0038】
抽出位置登録部26は、抽出位置算出部25により算出された入力画像上の座標(x,y)を中間画像上の画素座標(u,v’)に対応付けてリサンプリングテーブル(補正テーブル)17aに登録するものである。なお、抽出位置算出部25により算出された入力画像上の座標(x,y)が入力画像の範囲外の座標である場合には、前述のとおり、あらかじめ定めた例外値、例えば(−1,−1)などの値を(u,v)に対応付けて登録しておく。
なお、ここまでで生成されたリサンプリングテーブル(補正テーブル)17aを用いて、画像補正装置10により、入力画像を補正して出力すると、中間画像が生成される。この中間画像をさらに補正した画像を得るため、補正テーブル生成装置20は、補正テーブル修正部27を備える。
【0039】
補正テーブル修正部27は、仮想的な被写体として円筒面を使用していることなどに起因する、図18(c)に見られるような、補正結果が縦長になる現象を緩和するための処理を行うものである。具体的には、既に生成されているリサンプリングテーブル(補正テーブル)17aの座標(u,v’)に対応する入力画像上の座標(x,y)を、座標(u,v)に対応付けてリサンプリングテーブル(補正テーブル)17に登録する。このとき、uは整数であり、v’は必ずしも整数ではないが、vに関して線形補間等の従来の補間方法を用いて算出できる。例えば、v’を切り上げて求めた整数v1とv’を切り下げて求めた整数v2において、リサンプリングテーブル(補正テーブル)17aの(u,v1)、(u,v2)にそれぞれ対応する(x,y)の値を参照し、xおよびyについて各々線形補間すればよい。なお、リサンプリングテーブル(補正テーブル)の(u,v1)、(u,v2)にそれぞれ対応する(x,y)の値のうち、少なくとも一方が例外値である場合には、線形補間等は行わず、座標(u,v)に対応する座標として例外値を登録する。
【0040】
補正量Δvは、例えば、次の(4)式によって算出する。また、参照位置のv座標v’は、例えば、(5)式によって算出する。
【0041】
【数4】

【0042】
【数5】

【0043】
これにより、図5(a)に示す出力画像のuv座標系と、図5(b)に示すuv’座標系とを対応付けたこととなる。ここで、v’は、中間画像におけるv’軸方向の中心位置の座標である。また、vは、出力画像におけるv軸方向の中心位置の座標である。P(u,v)は、P(u,v’)に対応付けられたこととなる。なお、(4)式は、図18(c)の観察からも分かるように、補正画像の上下端に近付くにしたがって、すなわち、縦方向の中心から離れるにしたがって、必要な補正量が増加することを考慮して、補正量を2次関数で表したものであり、他の関数を用いてもよい。
【0044】
このように、本実施形態では、補正テーブル修正部27により、v軸方向の修正が成されるため、リサンプリングテーブル(補正テーブル)17aの作成の際、予め出力画像よりも広い範囲について作成しておく。具体的には、上下方向について、各々、(4)式に「v=0」を代入して得られるΔvの値よりも1画素分だけ広い範囲(端数切り上げ)について作成しておけばよい。これにより、修正時のデータの不足を回避できる。
【0045】
次に、(1)式および(2)式により、上述したように変換して座標を対応付ける理由を、図7を用いて説明する。
図7は被写体空間であるXYZ座標系の「Y=0」の断面図である。XYZ座標系の、原点Oを中心とする半径1の球面50上の「Z≧0」の領域が、入力画像(魚眼画像)の情報と対応付けられる領域である。ここで、Z軸は、入力画像を得る際の魚眼レンズの光軸に対応する。また、原点Oは、入力画像を得る際の魚眼レンズの投影中心位置に対応する。すなわち、原点Oは、本発明における第1の投影中心位置となる。
【0046】
本実施形態では、中心軸が点Qを通りY軸と平行であるような円筒面51と、球面50とが、位置(0,0,1)に存在する点A0において接するように、投影中心となる点Qの位置(0,0,1−r)を決定する。点Qを中心とする円の半径rは、(1)式によって求める。この点Qが、第2の投影中心位置(後退位置)である。また、Θは、設計値としてあらかじめ与えられる値であり、例えば、「25度」を用いればよい。
【0047】
次に、被写体が円筒面51上に存在すると仮定して、点Qを基準にした光線方向を決定する。すなわち、中間画像上の座標(u,v’)に対応するXZ平面上の角度θを、(1)式によって求める。そして、点Qを投影中心として、円筒面51上の点K1を、(1)式によって算出する。ここで、点Qを基準とした点K1の位置ベクトルQK1が、後退位置基準光線方向ベクトルである。
なお、本実施形態では、後退位置基準光線方向ベクトルのY’成分については、(1)式に示すように、正射影とスケール変換によって求めている。スケール変換の係数は、点Oと点A2(または点A1)との間の距離r・sinΘである。このスケール変換の係数は、中間画像(出力画像)が正方形の場合に縦横の表現可能な範囲が同一となるような値として定めたものであるが、これに限るものではない。
【0048】
次に、原点Oを基準にした光線方向を決定する。すなわち、原点Oを投影中心として、円筒面51上の点K1を、(2)式によって算出する。ここで、原点Oを基準とした点K1の位置ベクトルOK1が原点基準光線方向ベクトルである。点K2は、ベクトルOK1と球面50との交点であり、点K1は、点K2を介して、入力画像の座標(x,y)と1対1に対応する。
【0049】
以上のような方法により、原点Oを基準とした水平画角180度の範囲は、点Qを基準として点A1から点A2までを見渡す範囲、すなわち、水平画角2Θの範囲として表現することができるため、補正画像で表現されている画角と補正画像を観賞する画角との乖離が緩和されることになり、補正画像を観賞するときの違和感を低減することができる。
【0050】
なお、点Qは、入力画像を得る際の光軸の向きを基準として、点Oよりも後方、すなわち、第1の投影中心位置Oから第2の投影中心位置Qへの方向ベクトルと、光軸の方向ベクトルとの内積が負値となるような点であればよい。また、球面50と円筒面51とが点A0において、必ずしも接する必要はなく、点Qを固定して円筒面51に関する円の半径を大きくする等、本発明の具体的な実施形態については、図7に示した幾何学的な関係に限るものではない。
【0051】
[補正テーブル生成装置20の基本動作]
次に、補正テーブル生成装置20の基本動作について図8を参照(構成は適宜図4を参照)して説明する。
【0052】
図8のフローチャートに示すように、ステップS10において、補正テーブル生成装置20は、カウンタのMの値を「0」にする。
ステップS11において、補正テーブル生成装置20は、後退位置基準光線方向ベクトル算出処理を行う。なお、この処理については、後で詳述する(図9参照)。
ステップS12において、原点基準光線方向算出部24は、後退位置基準光線方向ベクトル(X’,Y’,Z’)から、原点基準光線方向ベクトル(X,Y,Z)を算出する。
【0053】
ステップS13において、抽出位置算出部25は、原点基準光線方向ベクトル(X,Y,Z)に対応する入力画像上の座標(x,y)を算出する。
ステップS14において、抽出位置登録部26は、算出した座標(x,y)をリサンプリングテーブル(補正テーブル)17aの中間画像上の画素座標(u,v’)に対応付けて登録する。
【0054】
ステップS15において、補正テーブル生成装置20は、中間画像の全画素についてリサンプリングテーブル(補正テーブル)17aへの登録が完了したか否かを判定する。
中間画像の全画素についてリサンプリングテーブル(補正テーブル)17aへの登録が完了した場合は(ステップS15・Yes)、補正テーブル生成装置20は、補正テーブル生成処理を終了する。
一方、中間画像の画素のうちリサンプリングテーブル(補正テーブル)17aへの登録が完了していない画素がある場合は(ステップS15・No)、補正テーブル生成装置20は、カウンタのMの値に「1」を加える(ステップS16)。その後、ステップS11に戻って処理を続ける。
なお、中間画像の全画素に対してリサンプリングテーブル(補正テーブル)17aへの登録が完了したか否かは、カウンタのMの値と中間画像の画素数とを比較することによって判定すればよい。
【0055】
[後退位置基準光線方向ベクトル算出処理]
次に、ステップS11(図8参照)の後退位置基準光線方向ベクトル算出処理について図9を参照して説明する。
図9のフローチャートに示すように、ステップS111において、まず、後退位置基準光線方向算出部23は、カウンタのMの値を中間画像のu軸方向の画素数で割った商をv’の値、余りをuの値として(すなわち、u軸方向の画素数が「B」である場合、N=v’・B+u)、中間画像上の画素座標(u,v’)を算出する。次に、後退位置基準光線方向算出部23は、中間画像上の座標(u,v’)に対応する後退位置基準の角度θを、(1)式により算出する。
ステップS112において、後退位置基準光線方向算出部23は、前記角度θに対応する後退位置基準光線方向ベクトルのX成分(X’)とZ成分(Z’)を、(1)式により算出する。
【0056】
ステップS113において、後退位置基準光線方向算出部23は、中間画像上のM番目の画素の座標(u,v’)に対応する後退位置基準光線方向ベクトルのY成分(Y’)を、(1)式により算出する。その後、後退位置基準光線方向ベクトル算出処理を終了する。
【0057】
[補正テーブル修正処理]
次に、補正テーブル修正処理について図10を参照して説明する。この処理は、前述した補正テーブル生成装置20の基本動作の終了後、リサンプリングテーブル(補正テーブル)17aの修正が必要な場合に動作する。
【0058】
図10のフローチャートに示すように、ステップS20において、補正テーブル修正部27は、カウンタのMの値を「0」にする。
ステップS21において、補正テーブル修正部27は、出力画像上のM番目の画素の座標(u,v)に対応する補正量Δvを、(4)式により算出する。なお、カウンタのMの値から出力画像上の画素の座標(u,v)を算出する方法は、図9のステップS111で示した方法と同様である。
ステップS22において、補正テーブル修正部27は、リサンプリングテーブル(補正テーブル)17aを参照して、座標(u,v’)に対応する入力画像上の座標(x,y)を算出する。
【0059】
ステップS23において、補正テーブル修正部27は、算出した座標(x,y)を新たに生成するリサンプリングテーブル(補正テーブル)17の座標(u,v)に対応する位置に登録する。ここで、 vに対応するv’の求め方は、(5)式による。
ステップS24およびステップS25については、前述したステップS15およびステップS16と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
以上の動作によって、特定の領域付近で横方向の直線が急激に湾曲するという現象を抑えつつ、補正画像で表現されている画角と補正画像を観賞する画角との乖離が緩和されることになり、補正画像を観賞するときの違和感を低減することができる。
【0061】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について、図11〜図17を参照して説明する。
[補正テーブル生成装置20Aの構成]
図11に示すように、補正テーブル生成装置20Aは、第1実施形態の補正テーブル生成装置20と比較して、補正テーブル修正部27はないが、経度緯度算出部21と、補正緯度算出部22と、後退位置基準光線方向算出部23Aと、原点基準光線方向算出部24Aとを備える。なお、第1実施形態の構成と同一の構成には同一の符号を付して、重複した説明は省略する。
【0062】
経度緯度算出部21は、出力画像上の画素座標(u,v)に対応する経度λおよび緯度Φを算出するものである。例えば、経度緯度算出部21は、世界地図の作成で利用されている図法のうち、非投射円筒図法の一つである、メルカトル図法を用いて、経度λおよび緯度Φを算出する。本実施形態では、出力画像の左端の画素座標を経度「−Θ」、出力画像の右端の画素座標を経度「Θ」に対応付けるため、u軸方向のスケールを正規化するための定数「w」を用いて、次の(6)式によって算出する。
【0063】
【数6】

【0064】
これにより、図12(a)に示す出力画像のuv座標系から、図12(b)に示す経度緯度座標系へ座標系を変換する。ここで、Θは半画角に相当する設計値(図7参照)であり、例えば、「80度」とする。O’(u,v)は、出力画像の中心位置の座標である。例えば、出力画像のu軸方向の画素数が640画素である場合、uの値は「(0+639)/2」によって算出される「319.5」という値となる。vについても同様に算出すればよい。wは、u軸方向のスケールを正規化するための定数であり、uの値に等しく設定され、出力画像全体でのスケールの整合性を確保するため、v軸方向のスケールの正規化に対しても使用される。P(u,v)は、P(λ,Φ)に変換される。
【0065】
補正緯度算出部22は、入力される経度λおよび緯度Φから、後退位置基準光線方向ベクトルの算出に用いる緯度である補正緯度φを算出するものである。例えば、補正緯度算出部22は、次の(7)式によって、補正緯度φを算出する。
【0066】
【数7】

【0067】
これにより、図12(b)に示すように、経度緯度座標系において緯度方向に関する補正を行う。P(λ,Φ)は、P(λ,φ)に変換される。なお、このような補正をする理由は、後述する。
【0068】
後退位置基準光線方向算出部23Aは、入力される経度λおよび補正緯度φに対応する被写体空間中の光線方向ベクトルを、後記する後退位置基準光線方向ベクトル(X’,Y’,Z’)として算出するものである。後退位置基準光線方向算出部23Aは、次の(8)式によって、後退位置基準光線方向ベクトル(X’,Y’,Z’)を算出する。
【0069】
【数8】

【0070】
これにより、図12(b)に示す経度緯度座標系から、図13(a)に示すX’Y’Z’座標系へ変換する。この座標系は、被写体空間の座標系である。ここで、第1実施形態と同様に、Z軸は、入力画像を得る際の光軸に対応する。また、原点Oは、入力画像を得る際の投影中心位置に対応し、第1の投影中心位置となる。原点Oから光軸に沿って後方に点Qがあり、この点Qが第2の投影中心位置(後退位置)である。後退位置基準光線方向ベクトルQK0(X’,Y’,Z’)は、点Qから経度λ、緯度φの地点に向かう、長さが「1」に正規化された方向ベクトルである。ここで(6)式より、λの変動する範囲は、−Θ≦λ≦Θである。P(λ,φ)は、後退位置基準光線方向ベクトルQK0(X’,Y’,Z’)に変換される。
【0071】
原点基準光線方向算出部24Aは、次の(9)式によって、原点基準光線方向ベクトル(X,Y,Z)を算出するものである。
【0072】
【数9】

【0073】
これにより、図13(a)に示すように、X’Y’Z’座標系から、XYZ座標系へ変換する。後退位置基準光線方向ベクトルQK0(X’,Y’,Z’)は、原点基準光線方向ベクトルOK1(X,Y,Z)へ変換される。原点基準光線方向ベクトルOK1(X,Y,Z)は、点Qから後退位置基準光線方向ベクトルQK0(X’,Y’,Z’)の方向に半直線を延ばした際に円筒面51と交差する点K1の、原点Oを基準とした位置ベクトルである。
【0074】
抽出位置算出部25および抽出位置登録部26は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
ここで、補正緯度算出部22において、緯度Φから補正緯度φへ補正する理由を図14および図15を参照して説明する。
図14において、点Qは、第2の投影中心位置であり、点Aは、点Qを中心とする単位球面上で、経度0度、緯度0度の点に対応している。平面52は、ベクトルQAに直交する被写体空間中の平面である。直線53は、平面52と三角形QACが乗る平面(XZ平面)との交線である。長方形ABDCは、平面52上の長方形である。
【0076】
メルカトル図法は、球面を平面へ投影する手法であり、球面上の等経度線と等緯度線は、いずれも投影先の平面上で直線となる。したがって、図14に示す直線AB、直線ACおよび直線CDは、経度緯度平面へ展開したときに、湾曲せずに直線となる。なぜなら、直線ABと直線CDは、点Qを中心とする単位球面上では等経度線となり、直線ACは、単位球面上では緯度0度の等緯度線となるからである。一方、点Cの経度となる∠AQCがλ1である時、線分QCの長さは線分QAの長さに比べて「1/cos(λ1)」の長さになっているため、点Bの緯度となる∠AQBのΦ0と点Dの緯度となる∠CQDのΦ1とは、「tan(Φ1)=tan(Φ0)・cos(λ1)」という関係にある。すなわち、直線BDは等緯度線とならないため、メルカトル図法で表現した際に、投影先の経度緯度平面上で直線とならずに湾曲してしまう。
【0077】
そこで、直線BDの湾曲を低減するために、例えば、(7)式を用いる。ここで、直線BDの湾曲を完全に無くそうとすると「f(λ)=cos(λ)」となるが、f(λ)としてこの関数を用いた場合、補正緯度算出部22に入力された経度λが90度の場合に、入力された緯度Φの値に依存せず、補正緯度φが「0」となる。これは、出力画像の左右端に近付くにしたがって縦方向の拡大率が非常に大きくなることを意味しており、出力画像を観賞するユーザにとって、望ましいことではない。
【0078】
そのため、f(λ)として、「f(λ)=cos(λ)」ではなく、(7)式のf(λ)のような近似式を用いる。例えば、図15は0≦λ≦(π/2)におけるf(λ)のグラフを示したものであり、曲線60は「cos(λ)」を、曲線61は(7)式のf(λ)をそれぞれ表している。このとき、λの絶対値が小さい領域、すなわち出力画像の中央付近では、曲線61は曲線60に近い方が望ましい。なぜなら、直線の湾曲がよりよく補正されるからである。一方、f(λ)の値が0に近くなるほど縦方向の拡大率が大きくなるため、曲線61の最小値は、ある程度の大きさを維持するように設計することが望ましい。
【0079】
より具体的には、(7)式のf(λ)は、次のような条件を満たすように設計されたものである。これらの条件を満たす関数であれば、補正緯度算出部22が緯度を補正する際に用いる関数は、(7)式の関数に限るものではない。
第一の条件は「f(λ)≦1」である。これは、λの定義域の全域に渡って、補正が誤った方向に為されないことを保証する条件である。
第二の条件は「あるΛが存在して、f(Λ)<1」である。ここでΛはλの定義域に含まれる値である。これは、少なくとも1つ以上のλの値に対して、補正が正しい方向に為されることを保証する条件である。
第三の条件は「cos(λ)≦f(λ)」である。これは、λの定義域の全域に渡って、補正し過ぎないことを保証する条件である。
【0080】
第四の条件は「f(λ)/cos(λ)は広義単調増加する」である。これは、緯度補正の程度が、波打つことなく徐々に弱まっていくための条件である。
第五の条件は「0<G<1なる所与の定数Gに対して、f(λ)≧G」である。これは、出力画像全域における縦方向の拡大率を所定の範囲内に収めるための条件である。Gの値は許容できる縦方向の拡大率や許容できる横線の湾曲度合いに基づいてあらかじめ決めておけばよいが、Gの値が大きくなると縦方向の拡大率は抑えられるものの横線の湾曲に対する補正の度合いが弱くなり、Gの値が小さくなると横線の湾曲に対する補正の度合いは強くなるものの縦方向の拡大率が大きくなってしまう可能性が出てくるため、0.2以上0.5以下程度の値を使用するのがよい。
【0081】
[補正テーブル生成装置20Aの動作]
次に、補正テーブル生成装置20Aの動作について図16を参照(構成は適宜図11を参照)して説明する。
【0082】
図16のフローチャートに示すように、ステップS10において、補正テーブル生成装置20Aは、カウンタのMの値を「0」にする。
ステップS11Aにおいて、補正テーブル生成装置20Aは、後退位置基準光線方向ベクトル算出処理を行う。なお、この処理については、後で詳述する(図17参照)。
ステップS12Aにおいて、原点基準光線方向算出部24Aは、後退位置基準光線方向ベクトル(X’,Y’,Z’)を、(9)式により原点基準光線方向ベクトル(X,Y,Z)に変換する。
ステップS13およびステップS14の処理は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0083】
ステップS15Aにおいて、補正テーブル生成装置20Aは、出力画像の全画素についてリサンプリングテーブル(補正テーブル)17Aへの登録が完了したか否かを判定する。
出力画像の全画素についてリサンプリングテーブル(補正テーブル)17Aへの登録が完了した場合は(ステップS15A・Yes)、補正テーブル生成装置20Aは、補正テーブル生成処理を終了する。
【0084】
一方、出力画像の画素のうちリサンプリングテーブル(補正テーブル)17Aへの登録が完了していない画素がある場合は(ステップS15A・No)、補正テーブル生成装置20Aは、カウンタのMの値に「1」を加える(ステップS16)。その後、ステップS11Aに戻って処理を続ける。
なお、出力画像の全画素に対してリサンプリングテーブル(補正テーブル)17Aへの登録が完了したか否かは、カウンタのMの値と出力画像の画素数とを比較することによって判定すればよい。
【0085】
[後退位置基準光線方向ベクトル算出処理]
次に、ステップS11A(図16参照)の光線方向ベクトル算出処理ついて、図17を参照して説明する。
【0086】
図17のフローチャートに示すように、ステップS111Aにおいて、経度緯度算出部21は、出力画像上のM番目の画素の座標(u,v)に対応する経度緯度(λ、Φ)を、(6)式により算出する。なお、カウンタのMの値から出力画像上の画素の座標(u,v)を算出する方法は、図9のステップS111で示した方法と同様である。
ステップS112Aにおいて、補正緯度算出部22は、(7)式により補正緯度算出処理を行う。
ステップS113Aにおいて、後退位置基準光線方向算出部23Aは、経度緯度算出部21が算出した経度λと、補正緯度算出部22が算出した補正緯度φとに基づいて、(8)式により後退位置基準光線方向ベクトル(X’,Y’,Z’)を算出する。その後、後退位置基準光線方向ベクトル算出処理を終了する。
【0087】
以上の動作によって、第1実施形態とは異なる後退位置基準光線方向ベクトル算出処理を用いた場合においても、特定の領域付近で横方向の直線が急激に湾曲するという現象を抑えつつ、補正画像で表現されている画角と補正画像を観賞する画角との乖離が緩和されることになり、補正画像を観賞するときの違和感を低減することができる。
【0088】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができる。
【0089】
例えば、画像生成装置30は、例示したものに限るものではなく、広角レンズを備えたデジタルカメラ、等距離射影方式を始めとする各種の射影方式で設計された魚眼レンズを備えたデジタルカメラ、広角レンズや魚眼レンズを備えたビデオカメラ、それらの機器によって撮影された映像を記憶した記憶媒体を再生する映像再生機器等、種々変更が可能である。入力画像の射影方式が変更される場合、(3)式を、入力画像の射影方式に適した式に変更すればよく、そのような変更は容易である。
【0090】
また、画像出力部14に接続する装置は、画像表示装置40に限るものではなく、例えば、補正された画像を記憶する記憶装置や、補正された画像を別のシステムに転送する伝送装置を接続する等、本発明を適用する用途に応じて種々変更することができる。
【0091】
また、カウンタの値から出力画像または中間画像の画素座標を算出する方法については、ラスタースキャンの順序で画素が参照されるようにするため、例えばカウンタNの値を出力画像のu軸方向の画素数で割った商をv、余りをuとして画素座標(u,v)を算出するようにしたが、出力画像または中間画像の画素の参照順序はこれに限るものではない。
【0092】
また、補正テーブル17はリサンプリングテーブルに限るものではない。例えば、画像補正装置10の構成を、幾何補正部13が出力画像上の画素座標(u,v)に対応する入力画像上の座標(x,y)をその都度計算しながら補正を行うような構成とする場合には、入力画像に関するパラメータおよび出力画像に関するパラメータを補正テーブル17として補正テーブル記憶部15に記憶しておけばよい。その場合、補正テーブル17としてリサンプリングテーブルを使用する場合に比べて、補正テーブル記憶部15の記憶容量も少なくてすむ。
なお、そのような構成とした場合、幾何補正部13は、出力画像上の画素座標に対応する入力画像上の座標を求める方法として、図8から図10、あるいは、図16および図17に示すフローをそのまま実行する。ただし、算出した座標(x,y)をリサンプリングテーブルへ登録する(ステップS14)必要はなく、算出した座標(x,y)に基づいて即座に出力画像の画素値を決定すればよい。あるいは、幾何補正部13は、出力画像上の画素座標(u,v)から、該座標に対応する入力画像上の座標(x,y)を直接算出できるような合成関数を予め作成しておき、該合成関数を用いるような構成としてもよい。また、補正テーブル更新部16がキーボード等のデータ入力装置を備える構成として、出力画像に関するパラメータをユーザが変更できるようにしてもよい。
【0093】
また、本発明の実施形態の説明では、魚眼画像の縦横方向と出力画像の縦横方向とを一致させる例において説明を行ったが、本発明の実施形態はこれに限るものではない。例えば、3軸加速度センサを備えた魚眼カメラを用いる場合、このカメラから得られた被写体空間中の重力方向の情報を基に、重力方向が出力画像の縦方向に一致するようなリサンプリングテーブルを生成するようにしてもよい。具体的には、魚眼画像と地表面との対応付けを行う際に、従来技術によって座標系の向きを回転させるだけでよく、そのような変更は容易である。
【0094】
また、後退位置基準光線方向ベクトル算出処理の方法は、例示したものに限る必要はなく、種々変更が可能である。また、出力画像で表現する経度の範囲についても、−90度から90度の範囲に限るものではない。
【0095】
また、画像入力部11で読み込んだ入力画像の各画素の画素値は、基準色(R,G,B)毎に「0」から「255」までの256通り(8ビット)の整数値のうちの一つの値を取るような、デジタル化した値であるとしたが、本発明の実施形態はこれに限るものではない。例えば、各基準色で表現できる階調を「0」から「1023」までの1024通り(10ビット)に増やす等の変更をしてもよい。当該変更によって入力画像で表現できる階調と出力画像で表現できる階調との間に差異が生じる場合であっても、従来技術で容易に対処可能である。
また、例えば基準色として(R,G,B,C(シアン),Y(イエロー))の5色を用いるような、多原色への対応も、従来技術を利用することで容易に実施できる。
【0096】
また、補正テーブル記憶部15は、SDメモリーカード等、画像補正装置10から着脱可能な記憶媒体を用いることで実施してもよい。その場合、補正テーブル生成装置20がSDメモリーカードライタ等を備え、補正テーブル生成装置20で生成したリサンプリングテーブル(補正テーブル)17を、前記SDメモリーカードライタを介して補正テーブル記憶部15に登録するような構成とすることで、画像補正装置10が補正テーブル更新部16を備える必要がなくなるため、リサンプリングテーブル(補正テーブル)17の更新頻度が低い場合に好適である。
【0097】
また、本発明の実施形態の説明では、原点基準光線方向ベクトルを、後退位置基準光線方向ベクトルから円筒面51を介して算出するようにしたが、本発明の実施形態はこれに限るものではなく、第1の投影中心位置Oと第2の投影中心位置Qを同じ側に含むような、円筒面以外の曲面を介して原点基準光線方向ベクトルを算出するような構成することも可能である。例えば、第2の投影中心位置を通る直線を軸として持つような楕円筒面を介して算出するようにしてもよい。また、出力画像で表現する経度の範囲が180度よりも狭い場合には、Z軸に垂直な平面を介して算出するようにしてもよい。さらに、出力画像上で許される直線の湾曲の度合いが大きい場合には、第2の投影中心位置の側から見て「凹」となるような、筒面以外の形状の曲面を介して算出することもできる。
【符号の説明】
【0098】
10 画像補正装置
11 画像入力部
12 画像記憶部
13 幾何補正部
14 画像出力部
15 補正テーブル記憶部
16 補正テーブル更新部
17,17a,17A リサンプリングテーブル(補正テーブル)
20,20A 補正テーブル生成装置
21 経度緯度算出部
22 補正緯度算出部
23,23A 後退位置基準光線方向算出部
24,24A 原点基準光線方向算出部
25 抽出位置算出部
26 抽出位置登録部
27 補正テーブル修正部
30 画像生成装置
40 画像表示装置
O 第1の投影中心位置
Q 第2の投影中心位置
51 円筒面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像を幾何補正して補正画像を生成するために用いる補正テーブルを生成する補正テーブル生成装置であって、
前記補正画像上の各画素位置に対応する被写体空間中の光線方向ベクトルを、前記被写体空間中における前記入力画像の投影中心位置である第1の投影中心位置よりも前記入力画像に対応する光軸の方向に関して後方に位置する第2の投影中心位置に基づいて算出する後退位置基準光線方向算出部と、
前記光線方向ベクトルに基づき、前記画素位置に対応する被写体空間中の対応点が前記第1の投影中心位置からどの方向に存在するかを表すベクトルである原点基準光線方向ベクトルを算出する原点基準光線方向算出部と、
前記原点基準光線方向ベクトルに対応する前記入力画像上の位置を抽出位置として算出する抽出位置算出部と、
前記抽出位置を前記補正画像の画素位置に対応付けて前記補正テーブルに登録する抽出位置登録部と、
を備えたことを特徴とする補正テーブル生成装置。
【請求項2】
入力画像を幾何補正して補正画像を生成する画像補正装置であって、
前記入力画像を入力する画像入力部と、
前記入力画像を記憶する画像記憶部と、
前記入力画像を幾何補正するために用いる補正テーブルを記憶する補正テーブル記憶部と、
前記画像記憶部に記憶された前記入力画像を前記補正テーブルに基づいて幾何補正する幾何補正部と、
前記幾何補正部により補正された前記入力画像を前記補正画像として出力する画像出力部と、
を備え、
前記補正テーブルは、前記補正画像上の各画素位置に対応する被写体空間中の光線方向ベクトルを、前記被写体空間中における前記入力画像の投影中心位置である第1の投影中心位置よりも前記入力画像に対応する光軸の方向に関して後方に位置する第2の投影中心位置に基づいて算出し、前記光線方向ベクトルに基づき、前記画素位置に対応する被写体空間中の対応点が前記第1の投影中心位置からどの方向に存在するかを表すベクトルである原点基準光線方向ベクトルを算出し、前記原点基準光線方向ベクトルに対応する前記入力画像上の位置を抽出位置として算出し、前記抽出位置を前記補正画像の画素位置に対応付けることにより生成されたものであること
を特徴とする画像補正装置。
【請求項3】
入力画像を幾何補正して補正画像を生成する画像補正装置であって、
前記入力画像を入力する画像入力部と、
前記入力画像を記憶する画像記憶部と、
前記補正画像上の各画素位置に対応する被写体空間中の光線方向ベクトルを、前記被写体空間中における前記入力画像の投影中心位置である第1の投影中心位置よりも前記入力画像に対応する光軸の方向に関して後方に位置する第2の投影中心位置に基づいて算出し、前記光線方向ベクトルに基づき、前記画素位置に対応する被写体空間中の対応点が前記第1の投影中心位置からどの方向に存在するかを表すベクトルである原点基準光線方向ベクトルを算出し、前記原点基準光線方向ベクトルに対応する前記入力画像上の位置を抽出位置として算出し、前記画像記憶部に記憶された入力画像と前記抽出位置とに基づいて前記補正画像の各画素の画素値を決定する幾何補正部と、
前記幾何補正部によって各画素の画素値が決定された前記補正画像を出力する画像出力部と、
を備えたことを特徴とする画像補正装置。
【請求項4】
入力画像を幾何補正して補正画像を生成するために用いる補正テーブルを生成する補正テーブル生成装置における補正テーブル生成方法であって、
前記補正テーブル生成装置の後退位置基準光線方向算出部が、前記補正画像上の各画素位置に対応する被写体空間中の光線方向ベクトルを、前記被写体空間中における前記入力画像の投影中心位置である第1の投影中心位置よりも前記入力画像に対応する光軸の方向に関して後方に位置する第2の投影中心位置に基づいて算出する後退位置基準光線方向算出ステップと、
前記補正テーブル生成装置の原点基準光線方向算出部が、前記光線方向ベクトルに基づき、前記画素位置に対応する被写体空間中の対応点が前記第1の投影中心位置からどの方向に存在するかを表すベクトルである原点基準光線方向ベクトルを算出する原点基準光線方向算出ステップと、
前記補正テーブル生成装置の抽出位置算出部が、前記原点基準光線方向ベクトルに対応する前記入力画像上の位置を抽出位置として算出する抽出位置算出ステップと、
前記補正テーブル生成装置の抽出位置登録部が、前記抽出位置を前記補正画像の画素位置に対応付けて前記補正テーブルに登録する抽出位置登録ステップと、
を含むことを特徴とする補正テーブル生成方法。
【請求項5】
入力画像を幾何補正して補正画像を生成する画像補正装置における補正画像生成方法であって、
前記画像補正装置の画像入力部が、前記入力画像を入力する画像入力ステップと、
前記画像補正装置の画像記憶部が、前記入力画像を記憶する画像記憶ステップと、
前記画像補正装置の幾何補正部が、前記補正画像上の各画素位置に対応する被写体空間中の光線方向ベクトルを、前記被写体空間中における前記入力画像の投影中心位置である第1の投影中心位置よりも前記入力画像に対応する光軸の方向に関して後方に位置する第2の投影中心位置に基づいて算出し、前記光線方向ベクトルに基づき、前記画素位置に対応する被写体空間中の対応点が前記第1の投影中心位置からどの方向に存在するかを表すベクトルである原点基準光線方向ベクトルを算出し、前記原点基準光線方向ベクトルに対応する前記入力画像上の位置を抽出位置として算出し、前記画像記憶ステップで記憶された入力画像と前記抽出位置とに基づいて前記補正画像の各画素の画素値を決定する幾何補正ステップと、
前記画像補正装置の画像出力部が、前記幾何補正ステップによって各画素の画素値が決定された前記補正画像を出力する画像出力ステップと、
を含むことを特徴とする補正画像生成方法。
【請求項6】
請求項4に記載の補正テーブル生成方法をコンピュータに実行させるための補正テーブル生成プログラム。
【請求項7】
請求項5に記載の補正画像生成方法をコンピュータに実行させるための補正画像生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−99899(P2012−99899A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243503(P2010−243503)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】