説明

画像補正装置および画像補正方法

【課題】光学歪み補正の補正率を高める技術を提供する。
【解決手段】画像データ圧縮部9は、ズーム機能を有する光学レンズを介して撮像された画像データを圧縮し、圧縮画像データとしてメモリ10に格納する。歪曲補正部11は、画像データに生じている光学歪みを補正する。画像データ伸張部13は、メモリ10に格納された圧縮画像データを伸張し、歪曲補正部11に補正させる。ここで画像データ圧縮部9は、撮像時の前記光学レンズのズーム値をもとに、メモリ10の容量におさまるように前記撮像された画像データを圧縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像補正装置に関し、特に光学レンズを介して撮像された被写体像を示す画像データを補正する画像補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズは、通常、製造時のバラつきなどによって生じる各光学レンズ固有の歪曲収差を有している。これらの光学レンズを介して被写体像を撮影すると、歪曲収差によって撮影画像が歪む「光学歪み」という現象が発生する。この光学歪みは光軸中心から対象性があり、撮影時の光学レンズのズーム値(焦点距離の値)によって大きく変動する。撮像装置におけるこの光学歪みの補正に関する技術は種々提案されており、それらの中には光学レンズの撮像時のズーム値から光学歪みの補正に必要な補正係数を算出し補正を行う技術が存在する(特許文献1参照)。
【0003】
また、光学歪みの補正においては、画像データを一時的に記憶するメモリが必要となる。しかし、一般にメモリは容量が大きければ大きいほど高額となり、またメモリのアクセス速度が高速であればあるほど高額となる。上述した種々提案されている光学歪みに関する技術の中には、光学歪みの補正時におけるメモリ領域の使用を効率化する技術も存在する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−219246号公報
【特許文献2】特開2006−222827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、光学歪みを補正するには光学歪みが生じている画像データを格納するメモリを必要とする。これらのメモリは高価であるため、限られたメモリ容量の範囲内で光学歪み補正の補正率を高める技術が望まれている。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、光学歪み補正の補正率を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のある態様は画像補正装置である。この装置は、ズーム機能を有する光学レンズを介して撮像された画像データを圧縮し、圧縮画像データとしてメモリに格納する画像データ圧縮部と、画像データに生じている光学歪みを補正する歪曲補正部と、前記メモリに格納された圧縮画像データを伸張し、前記歪曲補正部に補正させる画像データ伸張部とを含む。ここで前記画像データ圧縮部は、撮像時の前記光学レンズのズーム値をもとに、前記メモリの容量におさまるように前記撮像された画像データを圧縮する。
本発明の別の態様は画像補正方法である。この方法は、ズーム機能を有する光学レンズを介して撮像された画像データを取得するステップと、前記画像データの撮像時の前記光学レンズのズーム値をもとに、メモリの容量におさまるように圧縮し、圧縮画像データとして前記メモリに格納するステップと、前記メモリに格納された圧縮画像データを伸張してキャッシュメモリに格納するステップと、前記キャッシュメモリに格納された画像データの光学歪みを補正するステップとを含む。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学歪み補正の補正率を高める技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像補正装置の内部構造を模式的に示す図である。
【図2】光学レンズを通して撮像した像の光学歪みとその歪曲率を説明する図である。
【図3】ズーム値がMの場合における光学歪みと必要とするメインメモリの容量との関係を説明する図である。
【図4】ズーム値がNの場合における光学歪みと必要とするメインメモリの容量との関係を説明する図である。
【図5】実施の形態1に係る画像補正装置の処理の流れを説明するフローチャートの前半部である。
【図6】実施の形態1に係る画像補正装置の処理の流れを説明するフローチャートの後半部である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る画像補正装置の歪み補正処理の流れを説明するフローチャートの前半部である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る画像補正装置の歪み補正処理の流れを説明するフローチャートの後半部である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
実施の形態1の概要を述べる。実施の形態1に係る画像補正装置は、撮像時の光学レンズにおけるズーム値が一定値を下回った際、メモリに順次格納する画像データを圧縮し、メモリから読み出すときに圧縮された画像データを伸張することで、圧縮伸張処理なしではメモリ容量を上回る画像データを必要とするズーム値で撮像された画像データに対しても、補正処理を実現できるようにする。
【0012】
図1は、実施の形態1に係る画像補正装置100の内部構造を模式的に示す図である。画像補正装置100は、光学系1、光学制御部2、歪み補正値記憶部3、撮像素子4、歪み補正値取得部5、画像前処理部6、画像補正部7、メインメモリ10、画像後処理部14、記録部15、記録媒体16、および出力部17を含む。
【0013】
光学系1はズーム機能を有したレンズである。光学系1は複数枚のレンズを含み、被写体からの光情報を結像して取得する。撮像素子4は、光学系1から取得した光情報を電気情報に変換する。撮像素子4は、例えばCMOS(Complementary metal Oxide Semiconductor)イメージセンサや、CCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサなどを用いて実現できる。画像前処理部6は、撮像素子4が変換した電気情報をRGB各色の信号に変換する。画像前処理部6が変換する信号はRGB信号に限られず、例えばYUV信号であってもよい。
【0014】
光学制御部2は、光学系1のレンズを制御する。光学制御部2はまた、撮像時における光学系1のズーム値を出力する。歪み補正値記憶部3は、光学系1のズーム値についての複数のサンプル値と、その時に撮像される像の歪みを補正するための「歪み補正値」(詳細は後述する)とを紐づけて記憶する。歪み補正値取得部5は、光学制御部2から取得した光学系1における撮像時のズーム値をもとに、歪み補正値記憶部3を参照して歪み補正値を取得する。歪み補正値記憶部3に撮像時のズーム値が格納されていない場合には、歪み補正値取得部5は、歪み補正値を補間計算により取得する。
【0015】
画像補正部7は、画像前処理部6から取得した複数ライン分の画素の画像データと、歪み補正値取得部5から取得した歪み補正値とをもとに、光学歪みを補正した画像データを作成する。詳細は後述するが、画像補正部7は、画像前処理部6から取得した画像データをメインメモリ10に格納し、次いで歪み補正を実行する領域の画像(画素)をメインメモリ10から読み出して歪み補正を実行する。これらを実現するために、画像補正部7は、画像データ制御部8、画像データ圧縮部9、画像データ伸張部13、キャッシュメモリ12、および歪曲補正部11をさらに含む。
【0016】
画像データ制御部8は、画像補正部7の各部を統括的に制御する。画像データ制御部8は、画像データ圧縮部9に画像データを圧縮させたり、画像データ伸張部に圧縮された画像データを伸張させたり、あるいは歪曲補正部11に画像データの歪み補正を実行させたりする。
【0017】
画像データ圧縮部9は、画像前処理部6を介して取得した画像データを圧縮し、圧縮画像データとしてメインメモリ10に格納する。ここで画像データ圧縮部9は、光学レンズの撮像時のズーム値をもとに、メインメモリ10の容量におさまるように画像データを圧縮する。より具体的には、画像データ制御部8が、光学制御部2から取得した撮像時の光学系1におけるズーム値に基づいて後述する画像データの圧縮処理をするか否かを決定する。画像データの圧縮処理をすることが決定した場合、画像データ圧縮部9は、画像データを圧縮する。このため、画像データを圧縮しなくてもメインメモリ10に格納できるのであれば、画像データ圧縮部9は画像データを圧縮しないこともあり得る。したがって、本明細書において「画像データを圧縮する」とは、圧縮率が100%の場合、すなわち圧縮しない場合も含む。なお、本明細書において「圧縮率」とは、圧縮前のデータサイズに対する圧縮後のデータサイズの割合を百分率で表したものとする。
【0018】
画像データ圧縮部9が画像データを圧縮してメインメモリ10に格納した場合、画像データ伸張部13は、圧縮画像データを伸張して、キャッシュメモリ12に格納する。より具体的には、画像データ制御部8が、画像データ圧縮部9に画像データを圧縮させてメインメモリ10に格納させた場合、メインメモリ10から読み出す補正用画素を画像データ伸張部13に伸張させる。
【0019】
歪曲補正部11は、画像データ制御部8を介して歪み補正値取得部5から取得した歪み補正値をもとに、キャッシュメモリ12に格納された補正用画像データに含まれる光学歪みを補正する。具体的な補正方法については後述する。
【0020】
画像後処理部14は、画像補正部7が歪み補正処理をした画像データを記録媒体16に記録するための画像信号に変換する。記録部15は、画像後処理部14で変換された画像信号を記録媒体16に記録する。出力部17は、記録媒体16に記録した画像信号を読み出し図示しない表示部に出力する。
【0021】
以下、歪曲補正部11による光学歪みの補正について説明する。
【0022】
図2は光学レンズを通して撮像した場合の像の光学歪みとその歪曲率とを説明する図である。光学レンズを通して被写体像を撮影し、その被写体像を示す画像データを記録する場合、光学レンズが有する固有の歪曲収差に起因して、撮像画像の周辺に歪みが生じる。この歪みは、一般に光学歪みと称され、画像の角部が外側に伸びる「糸巻き型」と、逆に角部が縮む「たる型」との2種類に分けられる。何れの歪みも光学中心からの距離によって歪み量が決まることが一般的に知られている。
【0023】
図2(a)は「たる型」の歪みを例示する図である。図2(a)は、本来点Aに撮像されるべき点が、歪みによって点A’に撮像されていることを図示している。点Aおよび点A’の画像の中心からの距離をそれぞれL1、L2とするとき、点Aにおける歪曲率Dは以下の式(1)で定義され、その単位は[%]である。
歪曲率D[%]=100×(L2−L1)/L1 (1)
ここで画像の中心は、光学系の中心軸と一致しているものとする。
【0024】
図2(a)に示すようなたる型の歪みの場合、歪曲率Dは負の値となる。反対に、糸巻き型歪みの場合、歪曲率Dは正の値となる。ここで式(1)をL2について解くと、以下の式(2)を得る。
L2=(100+D)/100×L1 (2)
【0025】
式(2)より、歪曲率Dを用いることで、中心からの距離がL1となる点Aに本来存在すべき画素が、歪みの生じている画像上においてどの位置に存在するかを求めることができる。具体的には、中心からの距離L1に、歪曲率Dを用いて計算される係数を乗じた距離であるL2が、本来点Aに存在すべき画素が存在する位置である。式(2)を用いて求めた位置に存在する画素を点Aの位置に戻す画像処理を施すことにより、歪みの生じた画像を補正することができる。したがって、以下、歪曲率Dと歪み補正値とを同じ意味で用いる。
【0026】
図2(b)は、ある固定されたズーム値において、dst0〜dst4までの5点における歪み補正値を求める場合のそのサンプリング点を例示する図である。図2(c)は、図2(b)のサンプリング点dst4の位置における、ズーム値と歪み補正値との関係を模式的に示す図である。歪み補正値記憶部3には、各サンプリング点におけるズーム値と歪み補正値とが紐づけられて格納されている。図2(c)に示すように、ズーム値と歪み補正値とは複数点が記憶されている。歪み補正値取得部5は、歪み補正値記憶部3に撮像時のズーム値が格納されていない場合には、歪み補正値を補間計算により取得する。補間計算は、例えば公知のスプライン補間を用いることで実現できる。図2(b)および図2(c)においてサンプリング数をいくつにするかは、正確性とデータ量とのトレードオフの関係になるため、コスト等を鑑みて実験により定めればよく、例えば20点程度である。
【0027】
図3および図4は、ズーム値がそれぞれMとNとの場合における光学歪みと必要メインメモリ10容量との関係を説明する図である。以下本明細書において、ズーム値Mはズーム値Nよりも大きな値であるとする。
【0028】
図3(a)はズーム値Mにおける「たる型」の歪みを示す図である。図3(a)の光学歪みを補正するために必要なメインメモリ10のライン数は、前記式(2)を用いてすべてのラインにおけるすべての画素についての点Aと点A’との関係を求めることで算出することができる。具体的に、図3(a)の光学歪みを補正するために必要なメインメモリ10のライン数は、図3(b)で示すmとなる。ここで、メインメモリ10の水平方向の画素数をWとすると、ズーム値Mにおける歪曲率Dmの光学歪みを補正するために必要なメインメモリ10容量Qは、以下の式(3)で表される。
=RGB信号データ量×W×m (3)
【0029】
ここで、図3(c)に示すように、ズーム値M>ズーム値Nを前提として、ズーム値Mにおける歪曲率をDm、ズーム値Nにおける歪曲率をDnとする。Dm、Dnとも「たる型」の歪曲率を示す負の歪曲率であるため、Dn<Dmとなる。以下、歪曲率の大小関係を比較するときは、その絶対値をとることにする。すなわち、|Dm|<|Dn|であるから、Dnの方がDmに対してより高い歪曲率を有すものとする。
【0030】
図4(a)はズーム値Nにおける「たる型」の歪みを示す図であり、式(3)と同様にして図2(a)の光学歪みを補正するために必要なメインメモリ10のライン数を求めると、図4(b)で示すnとなる。したがって、ズーム値Nにおける歪曲率Dnの光学歪みを補正するために必要なメインメモリ10容量Qは、以下の式(4)で表される。
=RGB信号データ量×W×n (4)
ここで、|Dm|<|Dn|であるため、m<nとなる。
【0031】
歪曲率の絶対値が大きければ大きいほど光学歪みの補正に必要なメインメモリ10の容量は大きくなる。仮にメインメモリ10容量が前記式(3)と同値である場合、歪曲率Dmの光学歪み補正は実行することができるが、Dmより高い歪曲率の補正はメインメモリ10の容量不足により実行できず、したがって歪曲率Dnの光学歪み補正は実行できない。
【0032】
そこで、メインメモリ10容量が前記式(3)と同値であっても、歪曲率Dnの光学歪みを補正するために、画像データ制御部8は、画像データ圧縮部9に画像データを圧縮させる。画像データ圧縮部9が圧縮すべき画像データ量の圧縮率の最大値をCとしたとき、
C×W×n≦W×m (5)
で表される式(5)を満たす圧縮処理を実行できれば、メインメモリ10は圧縮処理後の画像データを格納することが可能となる。
【0033】
画像データ量の圧縮率CはRGB信号データ量をRGB各8bitの24bitとすると、24bitを18bitに圧縮した場合はC=0.75となり、24bitを12bitに圧縮した場合はC=0.5となる。画像データ圧縮部9は、圧縮伸張処理は公知であるゼロ圧縮やハフマンコードを利用した圧縮など、種々の圧縮伸張アルゴリズムが利用できるが、圧縮後のビット幅が一定とならない可変長データ圧縮伸張回路の実装は計算コストの増大から回路規模が大きくなるため、固定長データ圧縮伸張回路の実装が好ましい。
【0034】
圧縮率Cの値がより低くなる圧縮伸張アルゴリズムを使用することで、メインメモリ10容量に制限がある場合であっても、より高い歪曲率の光学歪み補正が可能となる。しかしながら、より圧縮率Cが低くデータの可逆性がない圧縮伸張アルゴリズムを使用した場合、補正後の画像データは正しい数値より外れた数値となり、最終的には出力画像の画質劣化の要因ともなりうる。
【0035】
図3(c)は撮像時における光学系1のズーム値と補正量(歪曲率)の関係を示す図である。画像データ制御部8は、出力画像の画質劣化を抑えるため、光学制御部2から取得する撮像時における光学系1のズーム値が所定の閾値Tより大きいズーム値である場合は画像データ圧縮部9に画像データの圧縮処理を実行させない。ここで、所定の閾値Tは、画像データの圧縮処理を行わなくてもメインメモリ10容量が不足しないか否かを判断するための基準値である。例えば、メインメモリ10の容量Qが式(3)で表されるQとすると、閾値T=Mとなる。
【0036】
画像データ制御部8は、光学制御部2から取得する撮像時における光学系1のズーム値が閾値Tより小さいズーム値である場合、画像データの圧縮処理が必要であると判断し、画像データ圧縮部9に画像データの圧縮処理をさせる。これにより、圧縮処理の必要ない補正率における光学歪み補正においては出力画像の画質劣化を伴わず、圧縮処理の必要な補正率における光学歪み補正においては出力画像の画質劣化を伴うことにはなるが、光学歪み補正自体は実行することが可能となる。
【0037】
図5は、実施の形態1に係る画像補正装置100の処理の流れを説明するフローチャートの前半部である。本フローチャートにおける処理は、例えば画像補正装置100が起動したときに開始する。
【0038】
撮像素子4は、被写体から放出され光学制御部2によってズーム値の制御を受けた光学系1で集光された光信号を電気信号に変換する(S0)。画像前処理部6は、撮像素子4が変換した電気信号を画像データに変換する(S1)。ここで画像前処理部6は、撮像素子4が変換したが総データの左上を先頭としてラインごとに順次に右下に至るまで、画像データを画像補正部7に出力する。この時点では光学歪み補正処理を行っていないため、画像データには光学歪みが発生している。
【0039】
歪み補正値取得部5は、歪み補正値記憶部3に記憶したズーム値についての複数のサンプル値を参照して、光学制御部2における撮像時のズーム値と同値、または最も近いサンプル値、及びこのサンプル値に対応する歪み補正値を抽出するとともに、撮像時のズーム値とサンプル値の差に応じた補間計算によって、実際の歪み補正値を取得する(S2)。
【0040】
画像補正部7内の画像データ制御部8は、光学制御部2から取得した撮像時のズーム値をもとに、画像データ圧縮部9に画像データの圧縮処理をさせる必要があるか否かの判定を行う(S3)。
【0041】
画像データ制御部8が画像データ圧縮部9に画像データの圧縮処理をさせる必要があると判断した場合(S3のY)、画像データ圧縮部9は画像データの圧縮処理を行う(S4)。
【0042】
画像データ制御部8が画像データ圧縮部9に画像データの圧縮処理をさせる必要がないと判断した場合(S3のN)、画像データ圧縮部9は圧縮処理をしない
【0043】
画像データ圧縮部9は、画像データをラインメモリであるメインメモリ10に書き込む(S5)。メインメモリ10は容量に上限があるため、画像データ制御部8は、メインメモリ10がいっぱいである場合、上位のライン、すなわち画像データを記録したタイミングが最も過去のラインから順に消去して新しいラインを記録する。
【0044】
図6は、実施の形態1に係る画像補正装置100の処理の流れを説明するフローチャートの後半部である。
【0045】
画像補正部7の画像データ制御部8は、光学制御部2から取得した撮影時のズーム値における歪み補正値をもとに、1ライン分の歪み補正処理に必要な水平画素位置、垂直ラインを計算し、メインメモリ10に記録した複数ライン分の全画素画像データから補正用画像データを読み出す位置を決定する(S6)。
【0046】
画像補正部7の画像データ制御部8は、ステップS6の結果をもとに、補正用画像データをメインメモリ10から画像データ伸張部13に読み出させる(S7)。
【0047】
画像補正部7の画像データ制御部8は、画像データ圧縮部9に画像データを圧縮させたか否かの判定をする(S8)。
【0048】
画像データ圧縮部9が画像データを圧縮した場合(S8のY)、画像データ制御部8は、画像データ伸張部13に、画像データ圧縮部9がした圧縮処理に対応した伸張処理を実行させるとともに、伸張した補正用画像データをキャッシュメモリ12に格納させる(S9)。
【0049】
画像データ圧縮部9が画像データを圧縮していない場合(S8のN)、画像データ制御部8は、画像データ伸張部13に伸張処理を実行させずに、補正用画像データをキャッシュメモリ12に格納させる。
【0050】
画像補正部7の歪曲補正部11は、画像データ制御部8の制御の下、キャッシュメモリ12に保持した歪み補正処理に必要な水平画素位置、垂直ラインの画像データ、及び、その周辺画素位置、ライン位置における画像データを取り出して画素補間処理を行い、1点の画素位置における歪み補正処理した結果の画像データを算出する(S10)。なお、キャッシュメモリ12の空き容量が不足する場合、画像データ伸張部13は、キャッシュメモリ12に格納されている古い画像データに新しい画像データを上書きする。
【0051】
1ライン分の処理が終了した場合、画像データ制御部8は、全ラインの補正が終了しているかどうかを判定し(S11)、全入力ラインの補正が終了していない場合(S11のN)、ステップS6に戻る。
【0052】
全ラインの補正が終了している場合(S11のY)、画像後処理部14は、補正された画像データを記録媒体16に記録する際の信号仕様の変換や圧縮処理等の信号変換を行う(S12)。記録部15は、画像後処理部14より取得した画像信号を記録媒体16に記録する(S13)。出力部17は、記録媒体16に記録した画像信号を図示しない表示部で表示するための仕様にあわせて表示する(S14)。記録媒体16に記録した画像信号が表示されると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0053】
以上の構成による動作は以下のとおりである。ユーザが実施の形態1に係る画像補正装置100を用いて画像を撮像すると、歪み補正値取得部5は撮像時のズーム値と、歪み補正値記憶部3から取得したズーム値のサンプル値、及び、このサンプル値に対応する歪み補正値とに基づいて、撮像時のズーム値に対応する歪み補正値を補間計算によって取得する。画像データ制御部8は、光学制御部2から取得したズーム値に基づいて、画像データ圧縮部9に画像データの圧縮処理をさせるか否かを決定する。画像データ制御部8は歪み補正値をもとに光学歪みを補正するために必要な補正用画像データ位置を決定する。画像データ制御部8に画像データを圧縮させた場合、画像データ制御部8は、画像データ伸張部13に補正用画像データを伸張させる。
【0054】
このように、撮像時における光学系1のズーム値に基づいて、画像データを圧縮処理および伸張処理をするか否かを制御することで、メインメモリ10容量の不足により高い補正率の光学歪み補正処理が実行できない場合には、画像データを圧縮することでメインメモリ10に格納し、光学歪み補正処理を実行することが可能となる。画像データを圧縮する場合、圧縮伸張処理によって画質劣化を伴うことにもなりうるが、画像データを圧縮しなくてもメインメモリ10の容量が不足しない場合には、従来と同等の画質性能を保ちつつ補正率の光学歪み補正処理が実現できる。
【0055】
以上説明したように、実施の形態1に係る画像補正装置100によれば、特定のズーム値区間において歪曲率が高く、一定量のメモリでは補正できない画像データの入力に対して、画質劣化を抑えながら光学歪み補正を実現できる。
【0056】
(実施の形態2)
実施の形態2の概要を述べる。実施の形態2に係る画像補正装置101は、光学レンズにおけるズーム値の取り得る範囲を複数の領域に分割し、分割したそれぞれの領域に対して個別の圧縮伸張アルゴリズムを用意し、撮像時のズーム値に基づいた圧縮伸張アルゴリズムを使用して画像データの圧縮伸張処理を実行する、圧縮処理後の画像データをメモリへ書き込み、メモリから読み出した画像データに対して伸張処理をすることで、圧縮伸張処理なしではメモリ量の不足により補正処理を実行できないズーム値における補正処理を実行しつつ、複数の圧縮率の圧縮伸張アルゴリズムを適宜使用することで、圧縮伸張による画質劣を極力抑えた補正処理を実行できる。
【0057】
実施の形態2に係る画像補正装置101は、実施の形態1に係る画像補正装置100と内部構造は同等であるため、画像補正装置101の内部構造を示す図として図1を流用して説明する。以下、実施の形態1に係る画像補正装置100と重複する説明は適宜省略または簡略化して記載する。
【0058】
以下、図1を実施の形態2に係る画像補正装置101の内部構造を模式的に示す図として以下を説明する。画像補正装置101は、光学系1、光学制御部2、歪み補正値記憶部3、撮像素子4、歪み補正値取得部5、画像前処理部6、画像補正部7、メインメモリ10、画像後処理部14、記録部15、記録媒体16、および出力部17を含む。
【0059】
画像補正装置101において、画像データ圧縮部9は、圧縮率の異なる複数の圧縮アルゴリズムを有する。画像データ制御部8は、光学制御部2から取得したズーム値が光学系1におけるズーム値の取り得る範囲を複数の領域に分割したどの領域に該当するかによって、画像データ圧縮部9に使用させる圧縮アルゴリズムを切り替る。以下、説明の便宜上、圧縮アルゴリズムの数を3つとし、ズーム値の取り得る範囲を3つの領域に分割する場合について説明するが、圧縮アルゴリズムの数やズーム値の取り得る範囲の分割数は3に限られないことは当業者には容易に理解されることである。
【0060】
画像データ制御部8は、画像データ圧縮部9において選択された圧縮アルゴリズムに対応する伸張アルゴリズムを使用して画像データ伸張部13に補正用画像データを伸張させる。
【0061】
図4(c)は光学系1の取り得るズーム値区間と、分割領域の一例を示す図である。図4(c)のズーム値Oからズーム値Nまでを領域Fa、ズーム値Nからズーム値Mまでを領域Fb、ズーム値M以上の領域をFcとする。領域Faにおける歪曲率の絶対値は最も大きく、領域Fcにおける歪曲率の絶対値が最も小さい。
【0062】
画像データ圧縮部9は、画像データ制御部8を介して光学制御部2から取得した撮像時における光学系1のズーム値が領域Faの範囲内である場合、圧縮率Cの値が最も低く、画質が最も劣化しうる不可逆圧縮アルゴリズムAを用いて画像データを圧縮する。ズーム値が領域Fcの範囲内である場合、画像データ圧縮部9は、圧縮率Cの値が最も高く、画質劣化の生じない可逆圧縮アルゴリズムCを用いて画像データを圧縮する。ズーム値が領域Fbの範囲内である場合には、両者の中間的な性質を持つ圧縮アルゴリズムBを用いて画像データを圧縮する。
【0063】
画像データ伸張部13は、ズーム値が領域Faの範囲内である場合、画像データ圧縮部9が実行した圧縮アルゴリズムAに対応する伸張アルゴリズムAを用いて補正用画像データを伸張する。画像データ伸張部13は、ズーム値が領域Fcの範囲内である場合、圧縮アルゴリズムCに対応する伸張アルゴリズムCを用いて補正用画像データを伸張する。同様に、画像データ伸張部13は、ズーム値が領域Fbの範囲内である場合、圧縮アルゴリズムBに対応する伸張アルゴリズムBを使用して補正用画像データを伸張する。
【0064】
図7は、実施の形態2に係る画像補正装置101の処理の流れを説明するフローチャートの前半部である。本フローチャートにおいて、ステップS20からステップS22までの各処理は、それぞれ図5におけるステップS0からステップS2までの各処理と同様である。
【0065】
画像補正部7内の画像データ制御部8は、光学制御部2から取得した撮像時のズーム値から画像データに対して圧縮処理が必要であるか判定を行う(S23)。
【0066】
画像データ制御部8が圧縮処理が必要であると判断した場合(S23のY)、画像データ制御部8は、光学制御部2から取得した撮像時のズーム値がズーム値領域Fa、Fb、Fcのいずれに該当するか判定し、画像データ圧縮部9に使用させる画像データの圧縮アルゴリズムを選択する(S24)。
【0067】
画像データ圧縮部9は、画像データ制御部8が選択した圧縮アルゴリズムを使用して画像データを圧縮する。
【0068】
画像データ制御部8が圧縮処理が必要ないと判断した場合(S23のN)、画像データ制御部8は画像データ圧縮部9に特段の処理をさせない。
【0069】
ステップS26の処理は、図5におけるステップS5の処理と同様である。
【0070】
図8は、実施の形態2に係る画像補正装置101の処理の流れを説明するフローチャートの後半部である。
【0071】
ステップS27からステップS29までの各処理は、それぞれ図6におけるステップS6からステップS8までの各処理と同様である。
【0072】
画像データ圧縮部9が画像データを圧縮した場合(S29のY)、画像データ制御部8は、ステップS24において選択した圧縮アルゴリズムに対応する伸張アルゴリズムを選択する(S30)。
【0073】
画像データ制御部8は、ステップS30において選択した伸張アルゴリズムを使用して画像データ伸張部13に補正用画像データを伸張させるとともに、伸張した補正用画像データをキャッシュメモリ12に格納させる(S31)。
【0074】
画像データ圧縮部9が画像データを圧縮していない場合(S29のN)、画像データ制御部8は、画像データ伸張部13に特段の処理をさせない。ステップ32からステップ36までの各処理は、それぞれ図6におけるステップS10からステップS36までの各処理と同様である。
【0075】
以上の構成による動作は以下のとおりである。ユーザが実施の形態2に係る画像補正装置101を用いて画像を撮像すると、歪み補正値取得部5は撮像時のズーム値と、歪み補正値記憶部3から取得したズーム値のサンプル値、及び、このサンプル値に対応する歪み補正値とに基づいて、撮像時のズーム値に対応する歪み補正値を補間計算によって取得する。画像データ圧縮部9は、画像データ制御部8を介して光学制御部2から取得したズーム値に基づいて選択された圧縮アルゴリズムを使用して画像データを圧縮する。画像データ制御部8は、歪み補正値をもとに光学歪みを補正するために必要な補正用画像データ位置を決定する。画像データ伸張部13は、画像データ圧縮部9が実行した圧縮アルゴリズムに対応する伸張アルゴリズムを使用して補正用画像データを伸張する。
【0076】
これにより、撮像時における光学レンズのズーム値に基づいて、画像データの圧縮伸張アルゴリズムを圧縮率の異なる複数の圧縮伸張アルゴリズムから適切なアルゴリズムを選択して圧縮伸張処理をすることが可能となる。メインメモリ10の容量に上限があり、メインメモリ10容量の不足により高い補正率の光学歪み補正処理が実行できない場合には、圧縮伸張処理をすることで光学歪み補正が可能となる。圧縮伸張処理による画質劣化を伴う場合があるものの、複数の圧縮伸張アルゴリズムを適宜使い分けることにより、画質劣化を歪曲率に応じて段階的に制御できる。
【0077】
以上説明したように、実施の形態2に係る画像補正装置101によれば、特定のズーム値区間において歪曲率が高く、一定量のメモリでは補正できない画像データの入力に対して、画質劣化を段階的に調整しながら光学歪み補正を実現できる。
【0078】
特に、特定のズーム値区間において歪曲率が高く、一定量のメモリでは補正できない画像データの入力に対しては、画像データの圧縮処理・伸張処理を行うことで、光学歪みの補正を実現することができる。また、画像データの圧縮アルゴリズムにおいて、圧縮率・伸張率を不可逆の領域に高めることで、画質劣化を伴う場合があるものの、光学歪み補正することが可能な歪曲率の範囲を広げることが可能となる。圧縮処理や伸張処理をしなくてもメモリ量が十分である場合には、不可逆の圧縮処理・伸張処理を用いず、画質劣化のない光学歪み補正を実現することも可能となる。
【0079】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0080】
(変形例1)
上述した実施の形態2においては、光学レンズにおけるズーム値の取り得る範囲を複数の領域に分割し、分割したそれぞれの領域に対して個別の圧縮伸張アルゴリズムを用意する場合、すなわち、圧縮率を離散的に用意する場合について説明した。画像データ圧縮部9は、圧縮率を連続的に変更可能なアルゴリズムを用いてもよい。これにより、メインメモリ10に画像データを格納する際に圧縮処理が必要な場合に、圧縮後の画像データがメインメモリ10にちょうど収まるように圧縮率を設定することができる。一般に、圧縮率の高い圧縮が施された画像データは、圧縮率が低い圧縮が施された画像データよりも、画像の劣化が抑制できる。メインメモリ10の利用限度まで圧縮率を高めることにより、画像劣化を抑えつつ、画像補正を実行できるようになる点で有利である。
【符号の説明】
【0081】
1 光学系、 2 光学制御部、 3 補正値記憶部、 4 撮像素子、 5 補正値取得部、 6 画像前処理部、 7 画像補正部、 8 画像データ制御部、 9 画像データ圧縮部、 10 メインメモリ、 11 歪曲補正部、 12 キャッシュメモリ、 13 画像データ伸張部、 14 画像後処理部、 15 記録部、 16 記録媒体、 17 出力部、 100、101 画像補正装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズーム機能を有する光学レンズを介して撮像された画像データを圧縮し、圧縮画像データとしてメモリに格納する画像データ圧縮部と、
画像データに生じている光学歪みを補正する歪曲補正部と、
前記メモリに格納された圧縮画像データを伸張し、前記歪曲補正部に補正させる画像データ伸張部とを含み、
前記画像データ圧縮部は、撮像時の前記光学レンズのズーム値をもとに、前記メモリの容量におさまるように前記撮像された画像データを圧縮することを特徴とする画像補正装置。
【請求項2】
撮像時のズーム値と所定の閾値との大小関係から、前記画像データ圧縮部に画像データを圧縮させるか否かを決定する画像データ制御部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の画像補正装置。
【請求項3】
前記画像データ圧縮部は、圧縮率の異なる複数の圧縮アルゴリズムを有し、
前記画像データ制御部は、撮像時のズーム値をもとに前記複数の圧縮アルゴリズムの中からひとつのアルゴリズムを選択し、選択したアルゴリズムを用いて前記画像データ圧縮部に画像データを圧縮させることを特徴とする請求項2に記載の画像補正装置。
【請求項4】
前記画像データ制御部は、前記画像データ圧縮部に画像データを圧縮させて前記メモリに格納させた場合、前記メモリに格納された圧縮画像データを前記画像データ伸張部に伸張させることを特徴とする請求項2または3に記載の画像補正装置。
【請求項5】
予め決定される値であり、前記光学レンズが有する歪曲収差によって前記画像データに生ずる光学歪みの補正に用いる値である歪み補正値を記憶する歪み補正値記憶部とをさらに含み、
前記歪曲補正部は、前記画像データ伸張部が伸張した画像データの各画素を、それぞれ補正対象画素とするとともに、当該補正対象画素の位置と、前記歪み補正記憶部から取得した歪み補正値とをもとに、前記補正対象画素を補正するための補正用画素位置を算出し、この補正用画素位置に基づいて前記補正対象画素を補正することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の画像補正装置。
【請求項6】
ズーム機能を有する光学レンズを介して撮像された画像データを取得するステップと、
前記画像データの撮像時の前記光学レンズのズーム値をもとに、メモリの容量におさまるように圧縮し、圧縮画像データとして前記メモリに格納するステップと、
前記メモリに格納された圧縮画像データを伸張してキャッシュメモリに格納するステップと、
前記キャッシュメモリに格納された画像データの光学歪みを補正するステップとを含むことを特徴とする画像補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−110647(P2013−110647A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255355(P2011−255355)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】