説明

画像補正装置

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は画像処理装置に関するものである。
〔従来の技術〕
陰極線管(以下CRTという)を用いて画像の色補正(彩度、明度、色相の単独或いはそれらの任意の組み合わせの補正)をする場合、CRT画面全体を例えば上から順に補正演算し、その補正結果を上から順に表示していた。
〔発明が解決しようとする問題点〕
この方法によると画面全体のデーター量と補正演算装置の処理能力によって全画面を補正するに要する時間(補正時間)が決定されるので特に補正装置の処理能力に対して画面全体のデーター量が多い場合(例えば一画面の画素数が多い場合又は諧調数が多い場合)には補正時間が非常に長くなるという欠点があり、これを短縮するには高価な高速処理能力のコンピュータによる補正演算装置が必要になるという欠点があった。
従来の装置であっても補正結果を途中迄表示させ、該途中迄の補正結果で判断してその補正を採用するか否かを決定しても良いが、従来補正演算の順序及び補正結果を表示する順序は予め決まっており、例えば画面の上から水平・垂直走査順に補正演算を行い、補正結果を逐次表示する様に構成されている場合は、着目点が画面の下部にあるとその着目点の補正結果を確認するのに結局全画面を補正するのに要する時間と同等の時間を要する事になり、問題は解決されない。
本発明はこれらの欠点を解決し、高価な高速演算処理が可能の信号補正処理装置(高速演算処理能力を有するコンピュータ)を必要とせずに短時間で試行錯誤的な画像の補正作業を完了することを可能とする画像補正装置を実現することを目的としている。
〔問題点を解決する為の手段〕
上記目的の為本発明では、1画面分の画像信号を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された1画面分の画像信号を画像として表示する画像表示部と、画像表示部に表示された画像の任意の点を指定する位置指定手段と、記憶手段に記憶された、位置指定手段により指定された任意の点を含む小領域に関する、画像信号を画像として表示する部分表示部と、操作されることにより、画像信号の色に関する変数を任意に補正する補正信号を発生する補正信号発生手段と、補正信号発生手段からの補正信号に基づいて、小領域のみの画像信号に対する小領域補正、又は1画面分の画像信号に対する全画面補正をする補正手段と、補正手段の処理を小領域補正から全画面補正に切り換える切換え手段とを備えることとする。
〔作用〕
本発明では所望の点の微小領域をサンプル点として抽出して該微小領域内のデーターを補正演算しているから演算時間が短く、その結果をCRTに表示するのに要する時間も短い。
該表示によって所望の補正がなされる事が確認されれば、操作によって該補正演算と同様の補正演算を全画面に適用し、演算結果をCRTに表示し、所望の補正がなされていなければ該サンプル点の演算結果をキャンセルして他の補正演算を短時間にて行い、その結果を表示して再度視認可能とする。従って試行錯誤的な手順による補正が能率良く短時間で行う事が出来る。
〔実施例〕
第1図は本発明の実施例を示すハードウエアー図であり、1はCRT画面上の1画素または微小領域を指定する位置指定手段であって、例えばタブレット(磁気式或いは感圧式)と呼ばれるCRT画面上のX,Y座標上の絶対位置を抵抗値に置き換え、更にそれを電圧に変換して出力するものや、マウスと呼ばれる光電式或いはメカ式のロータリーエンコーダにより相対的に座標系での位置を出力するもの等が使用される。2はA/D変換器で、例えば0〜5Vの範囲の電圧を0〜255の数値に変換し、ディジタルデーターを扱うマイクロコンピュータ等に入力可能の信号とする。一般的にはA/D変換用ICを用いる。ビット数は8ビットに限らない。3は座標変換器でA/D変換器2のディジタル数値データーをCRT画面上のX,Y座標系に合った画像メモリのアドレス数値に変換する。一般的にはデコーダが使用されるがこの機能をソフトウエアーで賄っても良い。即ちA/D変換器2の出力を直接補正演算処理装置(コンピュータ)に取り込んで、ソフトウエアーで変換しても良い。4は補正信号発生装置でCRT上の画像の色や濃度等の補正をする為の入力装置であり、可変抵抗器により補正の量を入力する。一般的にはボリュウムを用いるが、タブレットやマウス等も使用できる。5は2と同様のA/D変換器である。6は座標変換器で前記補正信号発生装置4からの色が補正に関する信号(をA/D変換器5によってA/D変換された信号)によってある色をR,G,B3軸座標上での補正に変換する為のものであり、一般的にはデコーダーが使用されるが、この機能をソフトウエアーで賄っても良い。即ちA/D変換器5の出力を直接コンピュータに取り込んで、ソフトウエアーで変換しても良い。7は画像信号の補正演算をする信号補正演算処理装置で通常マイクロコンピュータで構成される。
ここで色信号の補正即ち色の3要素即ち彩度、明度、色相をそれぞれに変化させる具体的手法について以下説明する。
ある色はR,G,B(3原色)の各ベクトルの合成ベクトルで表される。ここで3原色R,G,Bのベクトルはそれぞれ互いに120°で交わるベクトルであると考えると、全ての色は該3本のベクトルによって数値的に表される。そして全ての画像の色は信号補正演算処理装置(コンピュータ)内のメモリに3色のベクトル値として記憶されているから補正信号発生装置からの情報に従ってR,G,Bの数値を調節して3要素即ち彩度、明度、色相をそれぞれに調節する。
明度の調節であればその色が持っているグレーの色成分を加減する様にR,G,B信号のスカラー量を調節する。
彩度の調節であれば他の2要素を変化させない様にR,G,B各ベクトル量を増減させ、ある色のベクトルのスカラー量のみを変化させる。
色相の調節であればある色のベクトルのスカラー量を変化させない様にしながらある色に関係するR,G,B各ベクトルの量を増減させ、ある色のベクトルの位相量のみを変化させる 補正信号発生装置4の具体的構成は、例えば色の3要素毎のボリュームを3個備え、それぞれの抵抗変化に基づく電圧変化をA/D変換器5でディジタル変換し、座標変換器6にて色ベクトルの数値に変換し、その後に信号補正演算処理装置7に入力し、補正演算が行われる。信号補正演算処理装置7は、以下の機能をソフトウエアーによって実現する。
■画像入力機器(第1図の11画像入力装置)よりCRT表示用の画像ディジタルデーターを読取り、そのデーターをフレームメモリ8に入力する機能。
■装置1、2、4を通過して来たXY座標データーを読取りそのデーターを基にCRT画面上の指定された位置にカーソルを表示し、該カーソルで表示した部分の画素をメモリに記憶する機能。
■指定された位置の画素データーを拡大してCRT画面上に表示する機能。
■拡大した部分の画素データーを、装置4、5、6を通過して来た補正データーを基に変換し、それをCRT画面に表示する機能。
■全画面補正スイッチ10の入力により、■で補正した変換を全画面の画素データーに対して行いそれをCRT画面上に表示する機能。
8はビデオフレームメモリで、ディジタル画像データーを記憶する装置で、常時CRTにアナログのビデオ信号を出力する為に、ビデオ信号に同期したD/A変換器を備えている。例えば1画面の解像度は横512画素、縦512画素、深さ8bit合計256Kbytesである。解像度を更に上げる場合はメモリ容量を上げる必要がある。
フレームメモリはR,G,Bの3色用を備える。各画素の色は1つのベクトルを考え、R,G,Bの3本のベクトルに分解出来る事は前述の通りである。そしてある画素の色を補正する場合はこれらR,G,Bの各ベクトルの合成ベクトルによって表されるベクトルの量或いは向きを変化させる事である事も前述の通りである。
9はCRT、10は前記位置指定手段で指定された微小領域に於ける補正演算と同一の補正演算を全画面の画像信号に対して行う全画面補正スイッチ、11は原画となる画像信号を信号補正演算処理装置7内のメモリに記憶させる為の画像入力装置である。
第2図はCRT9の画面表示の一実施例で9aは画像表示画面、9bは拡大表示画面、9cは位置指定手段による指定位置を表す十文字マークである。
以下実施例の動作を述べる。
位置指定手段1からの信号はA/D変換回路2でA/D変換され、座標変換器3で画面上の位置を表すXY座標上の数値信号に変換されて信号補正演算処理装置7に入力される。一方補正信号発生装置4からの信号はA/D変換回路5でA/D変換され、座標変換器6で補正の内容がR,G,Bの座標上の数値信号に変換されて信号補正演算処理装置7に入力される。信号補正演算処理装置7では位置指定手段1で指定された微小領域の画像信号を、補正信号発生装置4の補正信号に従って補正演算してCRT9の拡大表示画面9bに表示する様構成される。
本実施例の動作の手順は、まずCRT9の画像表示画面9aの補正したい画素又は微小領域に位置指定手段1を操作する事により画像表示画面9a内に表示される十文字マーク9cを視認しながら前記補正したい画素又は微小領域に移動する。そして補正信号発生装置4を操作する。すると該十文字マーク9cによって指定された一点を含む予め決められた面積の小領域の画像信号は信号補正処理回路7によって補正演算され、その結果は拡大表示画面9bに拡大表示される。この時補正の為の所要時間は極く小領域であるが故に高速処理能力の補正信号処理回路でなくても充分短時間であるから操作者にとっては略リアルタイムの表示である。よって操作者はこの拡大表示画面9bに表示される画像を視認しながら補正操作装置4を操作して所望の補正を迅速に行う。この結果が良ければ、即ち所望の補正が拡大表示画面9bにて確認されたら画面全体の補正に移る。画面全体の補正は全画面補正スイッチ10を操作して全画面補正信号を信号補正処理回路7に出力し、前記拡大表示画面9bで確認された補正と同様の補正を全画面の画像信号に対して補正演算する。演算結果はフレームメモリ8にメモリされCRT9に全画面補正後の画像信号を出力し、9aに表示する。
9bの表示を見て、補正結果が悪ければ更に補正信号発生装置4を操作してその結果を拡大表示画面9bにて確認して補正を繰り返すことになるが、その場合の補正は微小領域である為演算も短時間で完了し、補正の結果は補正操作と略リアルタイムに拡大表示部9bに表示されるので確認作業は非常に迅速で、試行錯誤的補正には特に能率的である。
第3図は本願発明の装置の動作を示すフローチャートである。第3図(a)乃至(d)は第3図に示すフローチャートのサブルーチンを表し、第3図(a)は画像入力に関するフローチャート、第3図(b)はカーソル移動拡大表示に関するフローチャート、第3図(c)は小領域画面補正に関するフローチャート、第3図(d)は全領域画面補正に関するフローチャートである。
〔発明の効果〕
以上のように本発明によれば,補正装置の演算処理能力が低く、従って演算処理スピードの遅い装置であっても、画面全体の補正演算に先立って画面上の任意の極く微小領域(サンプル点)の補正を短時間で演算し、その結果を拡大表示する様構成される為、補正操作と略リアルタイムで補正結果がCRT画面にて確認出来るので試行錯誤的な色(色相、明度、彩度)の補正に要する時間の飛躍的短縮が可能である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例のハードウェアーの構成を示すブロック図、第2図は画面表示の一実施例、第3図はフローチャート。
(主要部分の符号の説明)
1……位置指定手段
2,5……A/D変換器
3,6……座標変換器
4……補正信号発生装置
7……信号補正処理回路
8……ビデオフレームメモリ
9……CRT
9a……画像表示画面
9b……拡大表示画面
9c……十文字マーク
10……全画面補正スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】1画面分の画像信号を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記1画面分の画像信号を画像として表示する画像表示部と、前記画像表示部に表示された画像の任意の点を指定する位置指定手段と、前記記憶手段に記憶された、前記位置指定手段により指定された任意の点を含む小領域に関する、画像信号を画像として表示する部分表示部と、操作されることにより、前記画像信号の色に関する変数を任意に補正する補正信号を発生する補正信号発生手段と、前記補正信号発生手段からの補正信号に基づいて、前記小領域のみの画像信号に対する小領域補正、又は前記1画面分の画像信号に対する全画面補正をする補正手段と、前記補正手段の処理を前記小領域補正から前記全画面補正に切り換える切換え手段とを備えることを特徴とする画像補正装置。
【請求項2】前記画像信号の色に関する変数は、明度、彩度、および色相であることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の画像補正装置。
【請求項3】前記画像表示部と前記部分表示部とは、1つの表示装置内に形成されることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の画像補正装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第3図(a)】
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【第3図(b)】
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【第3図(c)】
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【第3図(d)】
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【特許番号】第2569437号
【登録日】平成8年(1996)10月24日
【発行日】平成9年(1997)1月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−235072
【出願日】昭和62年(1987)8月26日
【公開番号】特開平1−55585
【公開日】平成1年(1989)3月2日
【出願人】(999999999)株式会社ニコン
【参考文献】
【文献】特開 昭61−208577(JP,A)
【文献】特開 昭61−267179(JP,A)