説明

画像記録体の作製方法およびその作製装置

【課題】 プラスチックフィルムへの画像形成手段として電子写真装置を用いた画像記録体の作製方法及びその作製装置に関し、ゴミ、異物の混入のない画像記録体を高い生産性で製造することができる画像記録体の作製方法及びその作製装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも、フィルムの表面に電子写真方式により画像を形成する画像形成工程と、前記フィルムを、少なくとも支持体の片面と前記画像が形成された面とが互いに対面するように重ね合わせ積層体とする位置決め工程と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧する加熱圧着工程と、を含み、前記位置決め工程と前記加熱圧着工程との間、及び/または、前記画像形成工程と前記位置決め工程との間に、前記積層体、フィルム及び支持体のうちの少なくとも1つの表面をクリーニングするクリーニング工程を有する画像記録体の作製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置によって形成された画像を用いたプラスチックシート等の画像記録体の作製方法及びその作製装置に関し、より詳細には、顔写真入りキャッシュカードや社員証、学生証、個人会員証、居住証、各種運転免許証、各種資格取得証明等の非接触式又は接触式個人情報画像情報入り情報媒体、さらに医療現場などで用いる本人照合用画像シートや画像表示板、表示ラベルなどに用いられる画像記録体の作製方法及びその作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成技術の発達に伴って、凹版印刷、凸版印刷、平版印刷、グラビヤ印刷及びスクリーン印刷などの様々な印刷法により、同一品質の画像を、大量かつ安価に形成する手段が知られている。そして、このような印刷法は、ICカード、磁気カード、光カード、あるいはこれらが組み合わさったカードなど、所定の情報を納め、外部装置と接触又は非接触に交信可能な情報媒体の表面印刷にも多く用いられている。
【0003】
しかしながら、例えば上記スクリーン印刷は、印刷しようとする画像の数に応じた印刷版が多数必要であり、カラー印刷の場合には、さらにその色の数だけ印刷版が必要となる。そのため、これら印刷方法は、個人の識別情報(顔写真、氏名、住所、生年月日、各種免許証など)に個々に対応するには不向きである。
【0004】
上記問題点に対して、現在もっとも主流となっている画像形成手段は、インクリボン等を用いた昇華型や溶融型の熱転写方式を採用したプリンタ等による画像形成方法である。しかし、これらは個人の識別情報を容易に印字することはできるが、印刷速度を上げると解像度が低下し、解像度を上げると印刷速度が低下するという問題を依然抱えている。
【0005】
これに対して、電子写真方式による画像形成(印刷)は、像担持体表面を一様に帯電させ、画像信号に応じて露光し、露光部分と非露光部分との電位差による静電潜像を形成させ、その後、前記帯電と反対(あるいは同一)の極性を持つトナーと呼ばれる色粉(画像形成材料)を静電現像させることにより、前記像担持体表面に可視画像(トナー画像)を形成させる方法で行われる。カラー画像の場合は、この工程を複数回繰り返すこと、あるいは画像形成器を複数並配置することによりカラーの可視画像を形成し、これらを画像記録体に転写、定着(固定化:主に熱による色粉の溶融と冷却による固化)することによりカラー画像を得る方法で行われる。
【0006】
上述のように、電子写真方式では、像担持体表面の静電潜像を画像信号により電気的に形成するため、同じ画像を何度でも形成できるだけでなく、異なる画像に対しても容易に対応でき画像形成することが可能である。また、像担持体表面のトナー画像は、ほぼ完全に画像記録体表面に転移させることができ、像担持体表面にわずかに残存するトナー画像も、樹脂ブレードやブラシ等により容易に除去することができるため、多品種少量生産に向けた印刷物を容易に作製することが可能である。
【0007】
また、上記トナーは、通常、熱溶融性樹脂及び顔料、並びに場合によっては帯電制御剤などの添加剤を溶融混合し、この混練物を粉砕、微粒子化して形成される。さらに、前記電子写真方式における静電潜像は、上記微粒子化されたトナーに比べてかなり高い解像度を持っており、前記スクリーン印刷やインクリボンの熱転写方式の解像度と比べても十分な解像度が期待できる。
【0008】
カラー画像についても、カラートナーとしてシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの四原色を用い、これらを混合することにより、理論的に印刷と同様の色を再現できる。また、上記カラートナーでは、トナー樹脂と顔料とを比較的自由に配合できるため、トナーによる画像隠蔽性を増加させることは容易である。
【0009】
前述の電子写真装置を使用した各種カードの作製としては、既にいくつかの提案がなされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2004−188603号公報
【特許文献2】特開2004−195973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらに開示されている装置においては、高解像度のプラスチックシートを高い生産性で製造することができるが、以下に記す課題が存在する。
すなわち、電子写真方式で画像を形成された光透過性フィルムは帯電しており、除電しなければ空気中の埃等を吸着させる性質がある。従って、プラスチックシート作製装置の内部でプラスチックシートを作製しているとはいえ、位置決め工程、加熱圧着工程と通過する工程の中でゴミ、埃等が光透過性フィルムに付着する可能性は非常に高い。このゴミ、埃はプラスチックシートのディフェクトとして認識され、製造されたプラスチックシートの品質を劣化させるものである。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、プラスチックフィルムへの画像形成手段として電子写真装置を用いた画像記録体の作製方法及びその作製装置に関し、ゴミ、異物の混入のない画像記録体を高い生産性で製造することができる画像記録体の作製方法及びその作製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の手段により解決される。すなわち本発明は、
<1> 少なくとも、フィルムの表面に電子写真方式により画像を形成する画像形成工程と、前記フィルムを、少なくとも支持体の片面と前記画像が形成された面とが互いに対面するように重ね合わせ積層体とする位置決め工程と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧する加熱圧着工程と、を含む画像記録体の作製方法であって、
前記位置決め工程と前記加熱圧着工程との間、及び/または、前記画像形成工程と前記位置決め工程との間に、前記積層体、フィルム及び支持体のうちの少なくとも1つの表面をクリーニングするクリーニング工程を有する画像記録体の作製方法である。
【0013】
上記発明では、加熱圧着工程の前に、前記積層体、フィルム及び支持体のうちの1以上の表面のゴミ、埃等を除去することが可能になるので、良品率の高い画像記録体の作製方法を得ることができる。
【0014】
<2> 前記フィルムが電子写真用ラミネートフィルムであり、前記位置決め工程が、前記支持体を介して、2つの前記電子写真用ラミネートフィルムをその画像が形成された面を互いに対面させて重ね合わせ積層体とする工程であり、前記加熱圧着工程が、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記支持体を2つの前記電子写真用ラミネートフィルムでラミネートする工程である<1>に記載の画像記録体の作製方法である。
【0015】
前記<1>の発明は、フィルムとして電子写真用ラミネートフィルムを用いて支持体をラミネートすることにより得られる画像記録体の場合に、ラミネート面やフィルム/支持体間のゴミの影響をなくすことができるため、特にその効果が発揮される。
【0016】
<3> 前記フィルムが電子写真用画像形成材料転写シートであり、前記画像形成工程が鏡像で画像形成材料からなる画像を形成する工程であり、前記加熱圧着工程の後に、さらに前記画像形成材料が冷却した後、前記電子写真用画像形成材料転写シートを支持体から剥し、画像形成材料が支持体に転写されることで画像が記録される剥離工程を含む<1>に記載の画像記録体の作製方法である。
【0017】
前記<1>の発明は、フィルムとして電子写真用画像形成材料転写シートを用いて支持体に画像を転写することにより得られる画像記録体の場合に、加圧面やフィルム/支持体間のゴミの影響をなくすことができるため、特にその効果が発揮される。
【0018】
<4> 少なくとも、フィルムの表面に電子写真方式により画像を形成する画像形成手段と、前記フィルムを、少なくとも支持体の片面と前記画像が形成された面とが互いに対面するように重ね合わせ積層体とする位置決め手段と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧する加熱圧着手段と、を含んでなる画像記録体の作製装置であって、
前記フィルムの搬送方向における前記位置決め手段と前記加熱圧着手段との間、及び/または、前記画像形成手段と前記位置決め手段との間に、前記積層体、フィルム及び支持体のうちの少なくとも1つの表面をクリーニングするクリーニング手段を設けた画像記録体の作製装置である。
【0019】
上記発明では、加熱圧着手段の前に、前記積層体、フィルム及び支持体のうちの1以上の表面のゴミ、埃等を除去することクリーニング装置を設けているので、良品率の高い画像記録体の作製装置を提供することができる。
【0020】
<5> 前記フィルムが電子写真用ラミネートフィルムであり、前記位置決め手段が、前記支持体を介して、2つの前記電子写真用ラミネートフィルムをその画像が形成された面を互いに対面させて重ね合わせ積層体とする手段であり、前記加熱圧着手段が、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記支持体を2つの前記電子写真用ラミネートフィルムでラミネートする手段である<4>に記載の画像記録体の作製装置である。
【0021】
前記<4>の発明は、フィルムとして電子写真用ラミネートフィルムを用いて支持体をラミネートすることにより得られる画像記録体を作製する場合に、ラミネート面やフィルム/支持体間のゴミの影響をなくすことができるため、特にその効果が発揮される。
【0022】
<6> 前記フィルムが電子写真用画像形成材料転写シートであり、前記画像形成手段が鏡像で画像形成材料からなる画像を形成する手段であり、前記フィルムの搬送方向における前記加熱圧着手段の後方に、さらに前記画像形成材料が冷却した後、前記電子写真用画像形成材料転写シートを支持体から剥し、画像形成材料が支持体に転写されることで画像が記録される剥離手段を含む<4>に記載の画像記録体の作製装置である。
【0023】
前記<4>の発明は、フィルムとして電子写真用画像形成材料転写シートを用いて支持体に画像を転写することにより得られる画像記録体を作製する場合に、加圧面やフィルム/支持体間のゴミの影響をなくすことができるため、特にその効果が発揮される。
【0024】
<7> 前記クリーニング手段が、少なくとも一対のクリーニングロール対を有する<4>に記載の画像記録体の作製装置である。
【0025】
上記<4>の発明では、クリーニング手段として一対のクリーニングロール対の間を前記積層体等を通過させることで、確実に前記積層体等の表面のゴミ、埃等を除去することが可能になる。
【0026】
<8> 前記クリーニング手段が、少なくとも前記積層体表面を除電する除電部材と一対のクリーニングロールとを有する<4>に記載の画像記録体の作製装置である。
【0027】
上記発明では、除電部材により前記積層体等を除電した後、一対のクリーニングロールの間を前記積層体を通過させるので、<7>に記載した画像記録体の作製装置よりも良品率の高い画像記録体の作製装置となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、プラスチックフィルムへの画像形成手段として電子写真装置を用いた画像記録体の作製方法、作製装置に関し、ゴミ、異物の混入のない画像記録体を高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、下記において実質的に同様の機能を有するものには、全図面通して同じ符号を付して説明し、場合によってはその説明を省略することがある。また、下記においては本発明の画像記録体の作製方法と共に、本発明の画像記録体の製造装置についても併せて説明する。
【0030】
本発明の画像記録体の作製方法は、少なくとも、フィルムの表面に電子写真方式により画像を形成する画像形成工程と、前記フィルムを、少なくとも支持体の片面と前記画像が形成された面とが互いに対面するように重ね合わせ積層体とする位置決め工程と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧する加熱圧着工程と、を含む画像記録体の作製方法であって、前記位置決め工程と前記加熱圧着工程との間、及び/または、前記画像形成工程と前記位置決め工程との間に、前記積層体、フィルム及び支持体のうちの少なくとも1つの表面をクリーニングするクリーニング工程を有することを特徴とする。
【0031】
本発明においては、後述するように、プラスチックフィルム(フィルム)の表面にいわゆるトナー画像を形成し、このプラスチックフィルムと支持体とを加熱・加圧し、該支持体をラミネートあるいは支持体に前記トナー画像の転写を行うことにより画像記録体を作製する。
この際、前記のように作製後の画像記録体中にゴミや埃が混入することがあり、これらの異物は、画像記録体がカードなど人が直接所持し利用するような用いられ方をする場合には、画質欠陥として特に人の目につきやすく、情報記録媒体としての品質を大きく低下させてしまう。
【0032】
本発明者等は、上記画像記録体における画質欠陥の発生を低減させるため、前記フィルム等に付着するゴミや埃の除去をどのように行うことが効果的かについて検討を行った。その結果、特に本発明のような画像形成から加熱圧着までを連続的に行う装置においては、ゴミや埃の除去を画像形成後から加熱圧着までの間、特に加熱圧着の直前で行うことが有効であることを見出し本発明を完成させた。
【0033】
すなわち、前記のように人がカード(画像記録体)を手にして画質欠陥がないと感じるレベルは、画像記録体中、特に表面側近傍にほとんど異物が存在しないレベルであり、このようなレベルを達成するには、画像形成前のフィルム表面をクリーニングするよりは、画像形成後のフィルムや加熱圧着直前の積層体をクリーニングすることがより効果的であることがわかった。
上記効果を得ることができる本発明の画像記録体の作製方法を説明する前に、本発明により作製される画像記録体について簡単に説明する。
【0034】
図6に本発明の画像記録体の作製方法により作製される画像記録体の一例の構成断面図を示す。この画像記録体は、コアシート(支持体)の表裏に少なくとも一方の面にトナー画像が形成された電子写真用ラミネートフィルム(以下、「ラミネートフィルム」という場合がある)を重ね合わせラミネートされてなる。
図6に示すように、画像記録体は、コアシート1と画像2、4が形成された表面フィルム3及び裏面フィルム5(共に電子写真用ラミネートフィルム)とが、画像2、4が形成された側の面がコアシート1と各々と対向するように重ねられ、ラミネートされて構成されている。
【0035】
なお、画像記録体の構成は、図6に示す例のみに限定されるものではなく、例えば、表面フィルム3および裏面フィルム5のいずれか一方が非光透過性フィルムであってもよいし、画像2、4のうち、いずれか一方の画像の形成を省略してもよい。また、表面フィルム3及び/または裏面フィルム5(例えば、光非透過性フィルム)の片面に画像を形成し、その非画像面を対向させてラミネートする形態であってもよい。この場合、フィルムにおける画像形成面をさらに保護用フィルムでラミネートしてもよい。したがって、電子写真用ラミネートフィルム表面に形成される画像は正像であってもよいし、鏡像であってもよい。
【0036】
また、図7は本発明のプラスチックシートの作製方法により作製される他の画像記録体に関し、画像記録体の作製における加熱圧着前の状態と、加熱圧着、剥離後の画像記録体の一例を示す断面図である。図7中、100、200は電子写真用画像形成材料転写シート、300は被転写体(支持体)を表す。
図7(a)は、電子写真用画像形成材料転写シート(以下、「転写シート」という場合がある)100及び200と、被転写体300とを重ね合わせて積層体を構成した時の状態を示すものである。加熱圧着前は、画像形成材料(トナー、本発明においては転写シート上に鏡面で形成されたもの)130は転写シートの画像受像層120、220側、あるいは画像受像層120、220と被転写体300との界面に存在する。
【0037】
一方、図7(b)に示すように、加熱圧着、剥離後は、画像形成材料130は被転写体300の表面にほぼ完全に埋め込まれた状態となっており、その画像形成材料130の上層には保護層120、220が存在する。したがって、作製された画像記録体はそのまま印刷された画像記録体と同様の感触を有し、画像形成材料130も簡単に剥がれたりすることがなく、保護層120、220があるため擦れによる画像欠落等が発生しない。
【0038】
次に、上記画像記録体を得ることができる本発明の画像記録体の作製方法及びその作製装置について、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の画像記録体の作製方法を実施し得る本発明の画像記録体の作製装置の概略構成図である。この作製装置は、図6に示した画像記録体を作製するためのものであり、前記フィルムとして光透過性フィルム(電子写真用ラミネートフィルム)を用いている。
図1に示す画像記録体の作製装置は、画像形成装置(画像形成手段)10、丁合い装置20、クリーニング装置(クリーニング手段)50、加熱圧着装置(加熱圧着手段)30、から構成されている。
【0039】
画像形成装置10は、例えば、フィルムスタッカー11(フィルム収納部)と、画像形成部12と、フィルムスタッカー11から画像形成部12へ光透過性フィルムを搬送する搬送路13と、画像形成部12から排出口14へ画像形成後の光透過性フィルムを搬送する搬送路15とから構成されている。その他の構成は省略する。
【0040】
画像形成部12は、図示しないが、潜像を形成する潜像担持体と、該潜像を少なくともトナーを含む現像剤を用いて現像し、トナー画像を得る現像器と、現像されたトナー画像を光透過性フィルムに転写する転写器、光透過性フィルムに転写されたトナー画像を加熱・加圧して定着する定着器などを含む、公知の電子写真方式のカラー画像形成装置で構成されている。この構成により、本発明の画像記録体の作製方法における画像形成工程を行なうことができる。
【0041】
搬送路13、15は、駆動ローラ対を含む複数のローラ対やガイド(図示せず)から構成されており、さらに搬送路15には、光透過性フィルムの搬送方向を180°反転させる反転路16が設けられている。搬送路15と反転路16との分岐付近には、光透過性フィルムの案内方向を変更するカム17が設けられている。この反転路16で光透過性フィルムを往復させ、再び搬送路15に戻すと、光透過性フィルムの搬送方向が180°反転されると共に、光透過性フィルムの表裏が反転して搬送される。
【0042】
丁合い装置20は、コアシートスタッカー22と、丁合いトレイ(位置決め手段)25、コアシートスタッカー22から丁合いトレイ25へコアシートを供給する搬送路24と、画像形成装置10の排出口14から排出された光透過性フィルムを、丁合いトレイ25へ供給する搬送路21と、から構成されている。
【0043】
コアシートを丁合いトレイ25へ供給する搬送路24の排出部と、光透過性フィルムを丁合いトレイ25へ供給する搬送路21の排出部は、高さ方向に並列して設けられている。
【0044】
上記搬送路21としては、例えば、平滑な板状部材と、その表面を光透過性フィルムを搬送させるための搬送ロールが設けられた構成であってもよく、また回転するベルト状の搬送体で構成されていてもよい。そして光透過性フィルムが画像形成装置10から排出されるタイミングで搬送ロールやベルトが回転し、光透過性フィルムを丁合いトレイ25に搬送する。
【0045】
また、コアシートスタッカー22には、通常の給紙装置に備えられているようなピックアップロールや給紙ロールが備えられており、丁合いトレイ25がコアシートスタッカー22の排出口の位置に移動した直後のタイミングで給紙ロール等が回転し、丁合いトレイ25にコアシートを搬送する。
【0046】
丁合いトレイ25は、例えば、搬送路24の排出部と搬送路21の排出部からコアシート及び光透過性フィルムがそれぞれ供給されるように、例えば、その端部の一部が上下(図における上下方向)に張架されたベルト外壁に連結されており、当該ベルトの回転駆動に伴い昇降するよう構成されている。このような昇降手段に限らず、モーター駆動方式など、公知の昇降手段を適用させることができる。また、図示しないが、図5における積層されたコアシート1及び表面フィルム3、裏面フィルム5の端部を揃えて、位置決めする手段が設けられている(位置決め工程)。
【0047】
丁合いトレイ25には、コアシートを介して2つの光透過性フィルムを積層した積層体を仮止めする仮止め装置26が設けられている。この仮止め装置26は、例えば、ヒータなどにより加熱されるよう金属からなる一対の突片で構成されており、この加熱された一対の突片により積層体の端部を挟むことで、積層体の端部が熱溶着されて仮止めされる。
【0048】
なお、上記仮止め装置26は、図1のように丁合いトレイ25からクリーニング装置50への積層体の搬送路上に設けられる場合には、仮止め装置26は、仮止め時のみ丁合いトレイ25の端部に配置され、それ以外のときは上記搬送路から退避できる構造をとる必要がある。
【0049】
本実施形態において、クリーニング装置50は、丁合い装置20と加熱圧着装置30との間(位置決め工程と加熱圧着工程との間)に設置されている。このクリーニング装置50には、1対またはそれ以上のクリーニングロール対52が設置されており、このクリーニングロール対52のニップを通過することで、前記積層体上の表面ゴミ、埃が除去される(クリーニング工程)。このクリーニングロール対52としては、複数個設置することがゴミ、埃の除去性能を向上させることは言うまでもなく、クリーニングロール対52をクリーニングするクリーナ(図示せず)を設けることで、クリーニングロール対52の性能をより維持できるものである。
【0050】
クリーニングロール対52としては粘着ロールが用いられ、より具体的には、芯金の周囲にブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどの粘着性の弾性体を設けたものが用いられる。ただし、長期使用において内部の低分子化合物が染み出したり、材料そのものの一部が積層体表面に付着するような材料を用いることは好ましくない。
【0051】
なお、本実施形態においては粘着ロールからなるクリーニングロール対52を用いているが、本発明においてゴミ等の異物除去手段としてはこれに限られるわけではなく、ブラシ、エアーブローなどゴミを除去できるものであれば特に制限されない。
【0052】
また、前記クリーニングロール対52の上流側には、積層体の除電を行う除電部材51が設置されている。この除電部材51は除電ブラシであっても良いし、イオンを吹き付けるファン、ブロワーであっても構わない。このように除電部材51を設置することで、光透過性フィルムの静電気によるゴミ・埃の吸着力を減少させ、クリーニング装置50におけるゴミ・埃の除去性能を向上させることができる。
【0053】
本発明においては、クリーニング装置を画像形成装置と丁合い装置との間、丁合い装置と加熱圧着装置との間のいずれに設けてよいが、本実施形態のように、丁合い装置20と加熱圧着装置30との間に設置すること、すなわち加熱圧着装置30に入る直前の積層体の表裏をクリーニングすることが、加熱圧着後の画像記録体中のゴミ・埃を低減する上で最も好ましい。このことは、後述する一対のベルト対31から構成されるベルトニップ方式の加熱圧着装置30場合に顕著である。
【0054】
加熱圧着装置30は、一対のベルト対31から構成されるベルトニップ方式を採用することにより、プラスチックシートを容易にオンラインで作製できる構成となっている。前記ベルト対31は、一対のテンションロール対32と、一対のインレットロール対35とによりそれぞれ張架された状態でベルト対31が歪みを生じないように構成されている。
【0055】
そして、ベルト対31内部には、テンションロール対32とインレットロール対35との間に一対の加熱加圧ロール対34及び冷却ロール対33がそれぞれベルト31を介して両側から(図における上下方向から)、ベルト対31を圧接しするように配置されている。なお、テンションロール対32とインレットロール対35とはぞれぞれニップさせず、ベルト対31間に間隙が設けられるように設置されている。これにより、連続稼動によりベルト対31が蛇行しても稼動させながらベルトを所定の位置に戻すことが可能である。
【0056】
加熱圧着装置30においては、インレットロール対35の下流側に配置された加熱加圧ロール対34により積層体が加熱加圧される。この工程を経ることによって積層体は熱融着(ラミネート)される。
【0057】
熱融着された積層体は、加熱加圧ロール対34と冷却ロール対33との間で変形を生じないようにニップされており、平面性を維持したまま冷却ロール対33を通過し、排出トレイ41に排出される。
ラミネート後のプラスチックシート(画像記録体)は、例えば数枚分のカードのパターンとなっている場合は、1枚分ずつに裁断され表裏が光透過性フィルムでラミネートされたカード等となる。
【0058】
本発明により作製された画像記録体においては、前記のようにラミネート前にクリーニングが行われるため、例えば前記数枚分のカードのパターンとなっているA4サイズのプラスチックシートを連続100枚作製した場合にも、各カード(85.6mm×54mm)の範囲において目視によるゴミは全く観察されない。
【0059】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の画像記録体の作製装置の他の一例の概略構成図である。この作製装置は、図7に示した画像記録体を作製するためのものであり、前記フィルムとして電子写真用画像形成材料転写シートを用いている。
【0060】
この作製装置の構成は、第1の実施形態で説明した作製装置の加熱圧着装置30のさらに下流側に剥離装置(剥離手段)80を設けた構成であり、該剥離装置80以外の構成の詳細は、第1の実施形態における図1に示した作製装置と同様である。ただし、画像形成装置10においては、画像が転写シートから被転写体に転写されることから、鏡像で画像を形成する必要がある。
したがって、本実施形態の作製装置によれば、さらに加熱圧着後の積層体から電子写真用画像形成材料転写シートを剥がし、画像形成材料を支持体に転写することができる(剥離工程)。
【0061】
本実施形態における加熱圧着までの工程については第1の実施形態と同様であるので省略する。
加熱圧着された積層体は、次に剥離装置80へと搬送される。剥離装置80に搬送された積層体は、図7(a)に示す構成となっており、例えばその先端右端部に切欠きがあり、その部分では第1の転写シート110と第2の転写シート210とは被転写体300に接着することなく、一定の隙間をあけて対峙している。積層体先端部がエア噴出しノズル83にさしかかると、ノズルから圧縮空気が噴射される。すると、第1の転写シート110及び第2の転写シート210の端部が被転写体300より浮き上がり、ガイド82の先端が第1の転写シート110と被転写体300との間及び第2の転写シート210と被転写体300との間に入る。さらに、積層体が搬送されるにつれ、2つの転写シート110、210はガイド82に沿って被転写体300と分離する方向に搬送され、被転写体300から剥がされる。
【0062】
次いで、被転写体300は排出トレイ84に排出され、記録済み被転写体(画像記録体)が得られる。ここで、記録済み被転写体に個別の画像が複数形成されている場合、この各画像毎に裁断し、所定のサイズの画像記録体を得る。
【0063】
また、第1の転写シート110及び第2の転写シート210は、その後図示しない経路を通って転写シート排出トレイ81に排出される。排出された転写シートは、転写シートスタッカーに戻して、再度画像記録を行ってもよい。
【0064】
以上のように、本実施形態の画像記録体の作製装置では、加熱圧着された積層体から転写シートを剥がし、画像形成材料を被転写体に転写することで画像記録体が得られるが、本実施形態においても、第1の実施形態同様、加熱圧着工程の前に前記積層体表面上のゴミ、埃等を除去することが可能になるので、積層体の表面にゴミが存在した場合の転写むらを発生させることがなく、良品率の高い画像記録体の作製装置を得ることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の画像記録体の作製装置の他の一例の概略構成図である。この作製装置は、図6に示した画像記録体を作製するためのものであり、前記フィルムとして光透過性フィルム(電子写真用ラミネートフィルム)を用いている。
【0066】
図3に示す作製装置は、クリーニング装置60を画像形成装置10と丁合い装置20との間(画像形成工程と位置決め工程との間)に設置している以外は、第1の実施形態で説明した図1に示す作製装置の構成と同様である。このように構成することで、画像形成装置10から排出された画像が形成された光透過性フィルム(電子写真用ラミネートフィルム)の表裏をクリーニングすることが可能となる。すなわち、図6に示す積層体におけるコアシート1と光透過性フィルム3,5との間のゴミ、埃を除去することが可能となり、結果として、積層体のゴミ、埃を減少させることができ、良品率の高いプラスチックシート(画像記録体)の作製装置を得ることができる。
【0067】
なお、図3におけるクリーニングロール62及び除電部材61の機能については、それぞれ第1の実施形態におけるクリーニングロール52及び除電部材51と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
また、図3に示した作製装置において、丁合い装置20と加熱圧着装置30との間に、さらに第1の実施形態で説明したクリーニング装置50を設置してもよい。このような構成とすることにより、連続して画像記録体作製を行った場合における不良品(カードサイズの面積において目視で確認できるゴミ等が1つ以上存在するもの)発生率をさらに低減することができる。
【0069】
一方、図3に示した作製装置の加熱圧着装置30のさらに下流側に、第2の実施形態で説明した剥離装置80を配置し、フィルムとして電子写真用画像形成材料転写シートを用い鏡像で画像形成を行うことにより、第2の実施形態と同様にして、記録済み被転写体における転写むらだけでなくトナー画像の欠陥発生も抑制できるため、図7(b)に示すような画像記録体を高い良品率で得ることができる。
【0070】
(第4の実施形態)
図4は、本発明の画像記録体の作製装置の他の一例の概略構成図である。この作製装置は、図6に示した画像記録体を作製するためのものであり、前記フィルムとして光透過性フィルム(電子写真用ラミネートフィルム)を用いている。
【0071】
図4に示す作製装置は、コアシートスタッカー22から丁合いトレイ25へコアシート1を供給する搬送路24上(画像形成工程と位置決め工程との間)にクリーニング装置70を設置している以外は、第1の実施形態で説明した図1に示す作製装置の構成と同様である。このように構成することで、コアシートスタッカー22から排出されたコアシート(支持体)の表裏をクリーニングすることが可能となる。すなわち、図6に示すコアシート1と光透過性フィルム3,5との間のゴミ、埃を除去することが可能となり、結果として、積層体のゴミ、埃を減少させることができ、良品率の高いプラスチックシート(画像記録体)の作製装置を得ることができる。
【0072】
なお、図4におけるクリーニングロール72及び除電部材71の機能については、それぞれ第1の実施形態におけるクリーニングロール52及び除電部材51と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0073】
また、図4に示した作製装置において、丁合い装置20と加熱圧着装置30との間に、さらに第1の実施形態で説明したクリーニング装置50を設置してもよい。このような構成とすることにより、連続して画像記録体作製を行った場合における不良品(カードサイズの面積において目視で確認できるゴミ等が1つ以上存在するもの)発生率をさらに低減することができる。
【0074】
一方、図4に示した作製装置の加熱圧着装置30のさらに下流側に、第2の実施形態で説明した剥離装置80を配置し、フィルムとして電子写真用画像形成材料転写シートを用い鏡像で画像形成を行うことにより、第2の実施形態と同様にして、記録済み被転写体における転写むらだけでなくトナー画像の欠陥発生も抑制できるため、図7(b)に示すような画像記録体を高い良品率で得ることができる。
【0075】
(第5の実施形態)
図5は、本発明の画像記録体の作製装置の他の一例の概略構成図である。この作製装置は、図6に示した画像記録体を作製するためのものであり、前記フィルムとして光透過性フィルム(電子写真用ラミネートフィルム)を用いている。
【0076】
図5に示す作製装置は、第1、第3、第4の実施の形態で各々説明したクリーニング装置50,60,70を全て設置した構成となっており、それら以外の構成の詳細は、第1の実施形態で説明した各構成と同様である。このように構成することで、丁合い前の光透過性フィルム及びコアシート(電子写真用ラミネートフィルム及び支持体)のクリーニングを実施することができ、さらに、図6に示すコアシート1と光透過性フィルム3,5との積層体の表裏面をクリーニングすることが可能となり、良品率の極めて高いプラスチックシート(画像記録体)の作製装置を得ることができる。
【0077】
一方、図5に示した作製装置の加熱圧着装置30のさらに下流側に、第2の実施形態で説明した剥離装置80を配置し、フィルムとして電子写真用画像形成材料転写シートを用い鏡像で画像形成を行うことにより、第2の実施形態と同様にして、記録済みの被転写体における転写むらだけでなくトナー画像の欠陥発生も抑制できるため、図7(b)に示すような画像記録体を極めて高い良品率で得ることができる。
【0078】
次に、本発明に用いられる支持体、フィルムについて説明する。なお本発明においては、前述のように、図6に示す画像記録体の場合は、支持体はコアシート1、フィルムは電子写真用ラミネートフィルム3、5であり、図7に示す画像記録体の場合は、支持体は被転写体300、フィルムは転写シート100、200である。
【0079】
(支持体)
−コアシート−
本発明において用いられるコアシートは、プラスチックシート(画像記録体)としたときの光透過性フィルムに形成された画像が見えやすいよう不透明であることが好ましく、白色に着色されていることがより好ましい。
【0080】
コアシートの材質としては、プラスチックが使用される。具体的には、アセテートフィルム、三酢酸セルローズフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、塩化ビニールなどがあり、中でもポリエステルフィルム、塩化ビニール等が好ましく用いられる。
【0081】
コアシートとしては、これらに顔料や染料などが添加され着色される。また、コアシートは、フィルム状、板状であってもよいし、可とう性を有しない程度、または、コアシートとしての要求に必要な強度を有する程度に厚みを有する形状であってもよい。
【0082】
本発明に用いられるコアシートとしては、厚さ50〜5000μmの範囲のプラスチックからなるフィルムを用いることが好ましく、厚さ100〜1000μmの範囲のPETフィルムを用いることがより好ましい。
【0083】
−被転写体−
本発明において用いられる被転写体は、金属、プラスチック、セラミックなどであり、さらにこれらはシート状のものが好ましい。
本発明に用いられる被転写体としては、プラスチック製のシートが好ましく、特に、画像記録体としたときに形成された画像が見えやすいよう不透明であることが好ましく、白色化したプラスチック製のシートが代表的に使用される。
【0084】
上記プラスチック製のシート用樹脂としては、前記電子写真用画像形成材料転写シートの基体に用いたものと同様なものを用いることができ、ポリアセテートフィルム、三酢酸セルローズフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂フィルムなどを好ましく用いることができる。
【0085】
上記の中でも、ポリエステルフィルム、特に、PET(ポリエチレンテレフタレート)のエチレングリコール成分の半分前後を1,4−シクロへキサンメタノール成分に置き換えたPETGと呼ばれるものや、前記PETにポリカーボネートを混ぜアロイ化させたもの、さらに二軸延伸しないPETで、A−PETと呼ばれる非晶質系ポリエステル等をより好ましく用いることができる。
【0086】
本発明においては、被転写体の少なくとも画像が転写される側の面が、前記PETGを含むことが好ましい。画像転写面をPETGとすることにより、転写された画像形成材料(トナー)を被転写体表面にほとんど完全に埋め込ませることができ、最終的な画像記録体の表面を電子写真画像形成材料転写シートの表面形状と同様にすることができる。
【0087】
なお、本発明の画像記録体がICカードや磁気カード等として用いられる場合には、必要に応じてコアシートや被転写体にICチップ、アンテナ、磁気ストライプ、外部端子などが埋め込まれる。また、磁気ストライプ、ホログラム等が印刷されたり、必要文字情報がエンボスされる場合がある。
【0088】
(フィルム)
−電子写真用ラミネートフィルム−
本発明における電子写真用ラミネートフィルムに使用可能な基体は、透明性を有することが必要である。ここで、透明性とは、例えば、可視光領域の光をある程度、透過する性質をいい、本発明においては、少なくとも形成された画像が、画像が形成された面と反対側の面から基体を通して目視できる程度に透明であればよい。
【0089】
上記基体としては、前記コアシートの材料として用いることができるプラスチックのフィルムを同様に使用することができる。
また、上記各種プラスチックのフィルムの中でも、ポリエステルフィルム、特に、前記PETGや、前記PETにポリカーボネートを混ぜアロイ化させたもの、さらに二軸延伸しないPETで、A−PETと呼ばれる非晶質系ポリエステル等をより好ましく用いることができる。
【0090】
上記基体のビカット軟化温度は、70〜130℃の範囲であることが好ましく、80〜120℃の範囲であることがより好ましい。
上記ビカット軟化温度が70℃に満たないと、加熱圧着工程において、コアシート(コア)に光透過性フィルムを十分に密着・接着させることができない場合がある。また、ビカット軟化温度が130℃を超えると、上記密着・接着は十分でっても画像(画像形成材料)または後述する塗工層が軟化しすぎてしまい、画像に欠陥(画像流れ)が発生してしまう場合がある。
【0091】
上記ビカット軟化温度とは熱可塑性樹脂の軟化温度評価の一方法から測定されるものであって、その測定方法は、成形されたプラスチック材料の耐熱性を試験する方法として、熱可塑性樹脂に対しては、JIS K7206やASTM D1525、ISO306にその方法が規定されている。
【0092】
一方、基体の少なくとも片面の表面抵抗率が1×108〜1×1013Ωの範囲であることが好ましく、1×109〜1×1011Ωの範囲であることがより好ましい。
上記表面抵抗率が1×108Ωに満たないと、特に、高温高湿時に画像記録体の抵抗値が低くなりすぎ、例えば転写部材からの転写トナーが乱れる場合があり、また、表面抵抗率が1×1013Ωを超えると、画像記録体として使用される光透過性フィルムの抵抗値が高くなりすぎ、例えば転写部材からのトナーをフィルム表面に移行できず、転写不良による画像欠陥が発生する場合がある。
【0093】
なお、上記表面抵抗率は、23℃、55%RHの環境下で、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「HRプローブ」)を用い、JIS K6991に従って測定することができる。
また、電子写真用ラミネートフィルムにおいて、片面のみが上記範囲の表面抵抗率を有する場合には、当該面は画像が形成される側の面であることが好ましい。
【0094】
前記基体の少なくとも片面の表面抵抗率を1×108〜1×1013Ωの範囲に制御するにあたっては、基体となるフィルム製造時、直接界面活性剤、高分子導電剤や導電性微粒子などを樹脂中に添加したり、上記フィルム表面に界面活性剤を塗工したり、金属薄膜を蒸着したり、あるいは接着剤などに界面活性剤などを適量添加したりすることで調整することができる。
【0095】
前記基体の厚さは、50〜500μmの範囲が好ましく、75〜150μmの範囲がより好ましい。厚さが50μmに満たないと搬送不良となる場合があり、300μmを超えると転写不良による画像劣化となる場合がある。
【0096】
本発明における電子写真用ラミネートフィルムは、基体の片面に画像受像層が形成されることが好ましく、またこの画像受像層が形成される面と反対側の面に機能性制御手段が設けられることが好ましい。
前記機能性制御手段は、光沢性、耐光性、抗菌性、難燃性、離型性、及び帯電性を制御する機能から選択される少なくとも1つ以上の機能を有するものであることが好ましく、具体的には、基体の表面に対し、光沢性、耐光性、抗菌性、難燃性、離型性、導電性、さらに好ましくは耐湿性、耐熱性、撥水性、耐磨耗性及び耐傷性などの様々な機能を付加及び/または向上させるために設けられる。これにより、前記機能性制御手段を有する電子写真用ラミネートフィルムは、様々な使用条件に対して耐性を有することができる。
【0097】
−電子写真用画像形成材料転写シート−
本発明に用いられる電子写真用画像形成材料転写シートの基体としては、前記光透過性フィルムの基体の材料と同様のものを用いることができる。
本発明に用いられる転写シートは、前記基体の少なくとも片面に画像受像層を有し、該画像受像層が少なくとも離型性材料を含有し、かつ該画像受像層の表面抵抗率が、23℃、55%RHにおいて、1.0×108〜3.2×1013Ωの範囲であることが好ましい。
【0098】
すなわち前記転写シートでは、表面に設けられた画像受像層が適切な表面抵抗率範囲を有するため、電子写真方式での画像形成でも転写不良等が発生することなく、良好な画像形成を行うことができる。また、前記画像受像層には離型性材料が含まれており、該離型性材料は後述するような画像形成材料を被転写体に良好に転写できるだけでなく、電子写真方式での画像定着特性にも優れたものである。
【0099】
前記離型性材料は、転写シートにおいて画像形成材料を一旦定着し固定化すると共に、被転写体と加熱圧着されたときには上記画像形成材料を離型する画像受像層に用いられるものである。したがって、前記離型性材料としては、電子写真において画像形成材料として一般的に使用されるトナーに対して密着性と、離型性とを有することが望ましい。
【0100】
このような離型性材料としては、特に制限されないが、シリコーン系ハードコート材料を含むものであることが離型性を有し、さらにフィルム搬送時における表層傷を抑制することができる点で好ましい。
【0101】
<試験例>
(試験例1)
図1に示すような画像記録体の作製装置を用い、フィルムとして光透過性フィルム(電子写真用ラミネートフィルム)を用いてプラスチックシートの作製を行った。この作製装置におけるクリーニング装置50は、ブチルゴム(JIS 硬度:40〜70)からなる直径50mmのクリーニングロール対52を1対配置し、除電装置は配置されていない構成となっている。また、クリーニング装置50での積層体の搬送速度を7mm/secとした。
【0102】
画像形成装置10では、フィルムスタッカー11にセットしたPETG樹脂からなる透明フィルム(A4サイズ、厚さ:100μm、表面抵抗率:2.8×1010Ω、ビカット軟化温度:78℃)の表面に、定着時のラミネートフィルムの表面温度が、95〜100℃の範囲として、ベタ画像を含むカラーの鏡像画像(85.6mm×54mmのカードサイズ画像が8個配置されたもの)が印字され、鏡像画像が形成されるようになっている。
【0103】
一方、丁合い装置20では、コアスタッカー22にセットした表面がPETGで内部がA−PETであるA4サイズの白色シート(三菱樹脂社製:ディアクレールW2012、A4サイズ、厚さ:500μm、ビカット軟化温度:85℃)に対し、丁合いトレイ25を介してこの白色シートの表裏に、前記ラミネートフィルムを各フィルムの四隅の位置が合うようにして画像面(ラミネート面)で重ね合わせ、位置決めした後、積層体として仮留め装置26により仮留めが行われるようになっている。
【0104】
加熱圧着装置30におけるベルト対31を構成するベルトは、表面が鏡面加工され表面の十点平均粗さRzが2μmのステンレス製の無端ベルトであり、周長は1000mm、幅は340mm、厚さは0.2μmである。このベルトを、ラミネート部に装着してベルト対31を形成し、加熱加圧ロール対34に1MPaの加圧がかかるようにセットされている。
なお、本装置において、積層体の搬送速度は7mm/sec、ラミネート部における加熱加圧ロール対34の設定温度を150℃とした。
【0105】
以上のような構成によるプラスチックシートの作製を、連続して100枚行った。次いで、作製されたプラスチックシートを各々カードサイズに裁断して、各々のカードについて目視によりゴミ、埃の有無を確認したが、全てのカードにおいて欠陥は認められなかった。
【0106】
次に、前記作製装置におけるクリーニング装置50を取り外した以外は同様の構成として、前記プラスチックシートの作製を連続して100枚行った。そして、作製後のプラスチックシートから得られた各カードについて同様にゴミ、埃の有無を確認したところ、30%のカードにゴミ等の混入による欠陥が認められた。
【0107】
(試験例2)
図2に示すような画像記録体の作製装置を用い、フィルムとして電子写真用画像形成材料転写シートを用いて画像記録体の作製を行った。なお、この作製装置におけるクリーニング装置50や損他の装置の構成は、試験例1で用いたものと同様である。
【0108】
画像形成装置10におけるフィルムスタッカー11に、基体がPETからなる転写シート(A4サイズ、厚さ:100μm、表面抵抗率:5.4×1011Ω、シリコーン微粒子を含むシリコーンハードコート剤からなる1μm厚の画像受像層を設けたもの)を、丁合い装置20におけるコアスタッカー22に、表面がPETGで内部がA−PETであるA4サイズの白色シート(三菱樹脂社製:ディアクレールW2012、A4サイズ、厚さ:500μm)をセットして、試験例1と同様にして連続100枚の積層体を作製し、続けてそれらの表裏から剥離装置80により転写シートを剥離した。
【0109】
次いで、作製された記録済み被転写体を各々カードサイズに裁断して、各々のカードについて目視によりゴミ、埃の有無を確認したが、全てのカードにおいて欠陥は認められなかった。
【0110】
次に、前記作製装置におけるクリーニング装置50を取り外した以外は同様の構成として、前記記録済み被転写体の作製を連続して100枚行った。そして、作製後のプラスチックシートから得られた各カードについて同様にゴミ、埃の有無を確認したところ、50%のカードにゴミ等の混入による欠陥が認められた。
【0111】
以上の説明したように、本発明の画像記録体の作製装置(作製方法)では、加熱圧着工程の前に前記積層体やフィルム、支持体表面上のゴミ、埃等を除去することが可能になるので、良品率の高い画像記録体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の画像記録体の作製装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の画像記録体の作製装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の画像記録体の作製装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の画像記録体の作製装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の画像記録体の作製装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明の画像記録体の作製装置により作製される画像記録体の一例の構成断面図を示す。
【図7】本発明の画像記録体の作製装置により作製される画像記録体の他の一例の構成断面図を示す。
【符号の説明】
【0113】
1 コアシート(支持体)
2、4 画像
3 表面フィルム(電子写真用ラミネートフィルム)
5 裏面フィルム(電子写真用ラミネートフィルム)
10 画像形成装置
11 フィルムスタッカー
12 画像形成部
13、15、21、24 搬送路
14 排出口
16 反転路
17 カム
20 丁合い装置
22 コアスタッカー
23 裏面フィルムスタッカー
25 丁合いトレイ(位置決め部)
26 仮留め装置
30 加熱圧着装置
31 ベルト対
32 テンションロール対
33 冷却ロール対
34 加熱加圧ロール対
35 インレットロール対
50、60、70 クリーニング装置
51 除電装置
52 クリーニングロール
80 剥離装置
100、200 電子写真用画像形成材料転写シート(フィルム)
300 被転写体(支持体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、フィルムの表面に電子写真方式により画像を形成する画像形成工程と、前記フィルムを、少なくとも支持体の片面と前記画像が形成された面とが互いに対面するように重ね合わせ積層体とする位置決め工程と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧する加熱圧着工程と、を含む画像記録体の作製方法であって、
前記位置決め工程と前記加熱圧着工程との間、及び/または、前記画像形成工程と前記位置決め工程との間に、前記積層体、フィルム及び支持体のうちの少なくとも1つの表面をクリーニングするクリーニング工程を有することを特徴とする画像記録体の作製方法。
【請求項2】
前記フィルムが電子写真用ラミネートフィルムであり、前記位置決め工程が、前記支持体を介して、2つの前記電子写真用ラミネートフィルムをその画像が形成された面を互いに対面させて重ね合わせ積層体とする工程であり、前記加熱圧着工程が、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記支持体を2つの前記電子写真用ラミネートフィルムでラミネートする工程であることを特徴とする請求項1に記載の画像記録体の作製方法。
【請求項3】
前記フィルムが電子写真用画像形成材料転写シートであり、前記画像形成工程が鏡像で画像形成材料からなる画像を形成する工程であり、前記加熱圧着工程の後に、さらに前記画像形成材料が冷却した後、前記電子写真用画像形成材料転写シートを支持体から剥し、画像形成材料が支持体に転写されることで画像が記録される剥離工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像記録体の作製方法。
【請求項4】
少なくとも、フィルムの表面に電子写真方式により画像を形成する画像形成手段と、前記フィルムを、少なくとも支持体の片面と前記画像が形成された面とが互いに対面するように重ね合わせ積層体とする位置決め手段と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧する加熱圧着手段と、を含んでなる画像記録体の作製装置であって、
前記フィルムの搬送方向における前記位置決め手段と前記加熱圧着手段との間、及び/または、前記画像形成手段と前記位置決め手段との間に、前記積層体、フィルム及び支持体のうちの少なくとも1つの表面をクリーニングするクリーニング手段を設けたことを特徴とする画像記録体の作製装置。
【請求項5】
前記フィルムが電子写真用ラミネートフィルムであり、前記位置決め手段が、前記支持体を介して、2つの前記電子写真用ラミネートフィルムをその画像が形成された面を互いに対面させて重ね合わせ積層体とする手段であり、前記加熱圧着手段が、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記支持体を2つの前記電子写真用ラミネートフィルムでラミネートする手段であることを特徴とする請求項4に記載の画像記録体の作製装置。
【請求項6】
前記フィルムが電子写真用画像形成材料転写シートであり、前記画像形成手段が鏡像で画像形成材料からなる画像を形成する手段であり、前記フィルムの搬送方向における前記加熱圧着手段の後方に、さらに前記画像形成材料が冷却した後、前記電子写真用画像形成材料転写シートを支持体から剥し、画像形成材料が支持体に転写されることで画像が記録される剥離手段を含むことを特徴とする請求項4に記載の画像記録体の作製装置。
【請求項7】
前記クリーニング手段が、少なくとも一対のクリーニングロール対を有することを特徴とする請求項4に記載の画像記録体の作製装置。
【請求項8】
前記クリーニング手段が、少なくとも前記積層体表面を除電する除電部材と一対のクリーニングロールとを有することを特徴とする請求項4に記載の画像記録体の作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−259618(P2006−259618A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80562(P2005−80562)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】