説明

画像記録装置、及び制御プログラム

【課題】キャッピング処理及びキャップアウト処理のための時間だけ画像記録の開始が遅れ、ユーザにとって、画像記録を迅速に再開させるという使い勝手が悪くなるといった虞があった。
【解決手段】タイマカウンタ95が1枚の用紙Pに対する画像記録が終了すると、又はキャップアウトすると、時間のカウントを開始する。そして、10秒以内に給紙トレイ15が移動されると、キャッピングの開始時間を60秒後に設定する。一方で10秒以内に給紙トレイ15が移動されないと、キャッピング開始時間を10秒後に設定する。そして、設定された時間が経過したらキャッピングを開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する記録ヘッドをキャップすることで、記録ヘッドの乾燥を防ぐキャップ手段を備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被記録媒体に、記録ヘッドのノズル面からインクを吐出することで画像を記録する画像記録装置が知られている。この画像記録装置においては、乾燥によって生じるノズル面の目詰まりを防止するために、記録しない時はキャップによってノズル面を覆う処理であるキャッピング処理が行われる。そして、記録を再開する時は、ノズル面を覆うキャップをノズル面から外すキャップアウト処理が行われた後、画像記録が行われる。
【0003】
この種の画像記録装置の一例は、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の画像記録装置は、記録ヘッドを搭載し主走査方向に移動するキャリッジと、キャリッジがホーム位置に達したかを検知するホームセンサーと、ホーム位置に備えられる回復装置と、を備える。特許文献1に記載の画像記録装置においては、被記録媒体が交換する状態であると判断されると、キャリッジがホームセンサーの検出する位置まで戻る。そして、キャリッジがホームセンサーによって検出されると、回復装置の回復装置用モーターが駆動されて、記録ヘッドに対してキャッピング処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−117240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の画像記録装置のように、被記録媒体を補充する必要があると判断されると、直ちに記録ヘッドに対してキャッピング処理が行われている。しかしながら、キャッピング処理中に、ユーザが、被記録媒体を補充して、直ちに画像記録を再開したい場合でも、キャッピング処理に加え、さらに、キャップアウト処理が終了するまで画像記録の開始を待たなければならない。したがって、キャッピング処理及びキャップアウト処理のための時間だけ画像記録の開始が遅れ、ユーザにとって、画像記録を迅速に再開させるという使い勝手が悪くなるといった虞があった。
【0006】
本発明は、給紙トレイが装着位置に位置している状態、及び非装着位置に位置している状態のうち、いずれか一方の状態から他方の状態への遷移が第1時間内に検知されないときに、キャップ動作を第1時間の経過後に実行することにより、画像記録を迅速に再開することができる画像記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1に記載の画像記録装置は、被記録媒体を載置可能であり、装着位置及び非装着位置に移動可能な給紙トレイと、前記給紙トレイが前記装着位置に位置している状態で、前記給紙トレイに載置される被記録媒体を給送方向に沿って給送する給送手段と、前記給送手段によって給送される被記録媒体に対して、画像データに基づいてインクを吐出するノズル面を有し、当該ノズル面からインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドと、前記給紙トレイが前記装着位置に位置しているか又は前記非装着位置に位置しているかを検知するトレイ検知手段と、前記トレイ検知手段によって前記給紙トレイが前記装着位置に位置している状態、及び前記非装着位置に位置している状態のうち、いずれか一方の状態から他方の状態への遷移を検知する遷移検知手段と、前記ノズル面を覆うための当接位置と、前記ノズル面から離間する離間位置と間で移動可能なキャップと、前記キャップが前記当接位置から前記離間位置に移動したことを検知するキャップ検知手段と、前記当接位置から前記離間位置への移動が前記キャップ検知手段によって検知されたときからの経過時間を計測する計測手段と、前記計測手段によって計測される第1時間の経過後に、又は前記第1時間よりも長い第2時間の経過後に、前記キャップに前記ノズル面を覆わせるキャップ動作を実行するキャップ動作手段と、前記第1時間内に前記遷移検知手段によって前記遷移が検知された場合に、前記キャップ動作手段に前記キャップ動作の実行を前記第2時間後に行わせ、前記第1時間内に前記遷移検知手段によって前記遷移が検知されなかった場合に、前記キャップ動作手段に前記キャップ動作の実行を前記第1時間後に行わせるキャップ処理を実行する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の画像記録装置は、請求項1に記載の画像記録装置において、前記キャップ検知手段は、前記キャップが前記離間位置から前記当接位置に移動したことを検知するものであり、前記キャップをノズル面から離間させるキャップ解除動作を実行するキャップ解除手段、を備え、前記制御手段は、前記離間位置から前記当接位置への移動が前記キャップ検知手段によって検知された後に、前記遷移検知手段によって前記遷移が検知された場合に、前記キャップ解除手段に前記キャップ解除動作を実行させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の画像記録装置は、請求項2に記載の画像記録装置において、前記記録ヘッドは、前記給送方向と直交する主走査方向に往復移動可能であり、前記記録ヘッドから被記録媒体へインクを吐出する際の、前記主走査方向における前記記録ヘッドの移動開始位置を決定する決定手段、を備え、前記キャップは、給送される被記録媒体の通過領域から前記主走査方向において外れるキャップ動作位置に配置されており、前記制御手段は、前記キャップ検知手段によって前記キャップが前記離間位置から前記当接位置に移動したことが検知された後に、前記遷移検知手段によって前記遷移が検知された場合に、前記記録ヘッドを前記キャップ動作位置から前記移動開始位置へ移動させることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の画像記録装置は、請求項3に記載の画像記録装置において、実行されている前記キャップ動作を中断する中断手段、を備え、前記制御手段は、前記第1時間後に前記キャップ動作を実行している間に、前記遷移検知手段によって前記遷移が検知されるときに、前記中断手段によって前記キャップ動作を中断させ、前記第2時間後に前記キャップ動作を実行させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の画像記録装置は、請求項4に記載の画像記録装置において、前記制御手段は、前記キャップ動作が中断された後に、前記移動開始位置に前記記録ヘッドを移動させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の画像記録装置は、請求項1乃至5のいずれかに記載の画像記録装置において、前記画像データが、所定の解像度よりも高い解像度を示す画像データであるか否かを検知する画質検知手段、を備え、前記制御手段は、前記画質検知手段によって高い解像度を示す画像データであることが検知された場合に、前記第1時間後に前記キャップ動作を実行させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の画像記録装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の画像記録装置おいて、前記給紙トレイに画像を記録可能な被記録媒体が有るか否かを検知する有無検知手段と、前記有無検出手段によって被記録媒体が無いと検知された場合に、前記制御手段は、前記キャップ処理を実行することを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の画像記録装置は、請求項1乃至7のいずれかに記載の画像記録装置において、前記計測手段は、一枚の被記録媒体に対する画像の記録が終了したときからの経過時間を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の画像記録装置によれば、給紙トレイが装着位置に位置している状態、及び非装着位置に位置している状態のうち、いずれか一方の状態から他方の状態への遷移が第1時間内に検知されないときに、キャップ動作を第1時間の経過後に実行することにより、画像記録を迅速に再開することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】複合機10の斜視図である。
【図2】プリンタ部11を左右方向9から見た場合の断面を模式的に表した図である。
【図3】プリンタ部11を上下方向7から見た場合の断面を表した図である。
【図4】保守機構60を上下方向7から見た場合の断面図と、左右方向9から見た場合の断面図である。
【図5】給送部30と駆動伝達切換機構40との斜視図である。
【図6】駆動伝達切換機構40の詳細を表した斜視図である。
【図7】複合機10の電気的構成を表したブロック図である。
【図8】制御部90によって実行されるクック動作処理を示したフローチャートである。
【図9】制御部90によって実行されるメイン処理を示したフローチャートである。
【図10】制御部90によって実行されるキャップ処理を示したフローチャートである。
【図11】制御部90によって実行されるキャッピング10秒処理を示したフローチャートである。
【図12】制御部90によって実行されるキャッピング60秒処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る複合機10について説明する。なお、実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。複合機10は、図1に示す状態に設置されて使用される。本実施形態において、図1に矢印を付して示す3つの方向が、上下方向7、前後方向8、及び左右方向9である。図1に示す3つの方向は、他の図面においても同様である。本実施形態において、「向き」とは、一方の点から他方の離れた点に向く状態を意味し、「方向」とは、2つの離れた点の間で向く状態であり、一方の点から他方の離れた点に向く状態と、他方の離れた点から一方の点に向く状態とを含む意味である。
【0018】
<複合機10の概要>
図1を用いて、複合機10の外観について説明する。図1に示されるように、本発明の画像記録装置の一例である複合機10は、概ね薄型の直方体に形成されている。プリンタ部11が、複合機10の下部に設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。
【0019】
プリンタ部11は筐体14によって覆われている。前壁17が、筐体14の前側に配置され、上下方向7及び左右方向9にそれぞれ拡がっている。開口13が、前壁17の概ね中央部に形成されている。給紙トレイ15(本発明の給紙トレイの一例)及び排紙トレイ16が、開口13から前後方向に挿抜可能である。所望のサイズの用紙Pが給紙トレイ15に載置される。また、表示部18が前壁17の上方に配置されており、当該表示部18は複合機10の状態を表示する。
【0020】
複合機10は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称する)などの外部機器と接続可能であり、PCからの指示に従って複合機10が有する各種機能を実行する。
【0021】
<プリンタ部11の内部構造>
次に図2乃至図4を用いて、プリンタ部11の内部構造について説明する。図2に示されるように、プリンタ部11は、給送部30と、搬送ローラ対55と、記録部20と、排紙ローラ対56と、を備えている。給送部30(本発明の給送手段の一例)は、給紙トレイ15に載置される用紙Pを搬送路27へ給送する。搬送ローラ対55は、給送部30によって給紙された用紙Pを記録部20に搬送する。記録部20は、例えば、インクジェット記録方式の構成を有し、搬送ローラ対55によって搬送された用紙Pに画像を記録する。排紙ローラ対56は、記録部20によって記録された用紙Pを排紙トレイ16に排紙する。
【0022】
<給送部30>
図2に示されるように、給送部30が給紙トレイ15の上側に設けられている。給送部30は、給紙ローラ31、給紙アーム34、及びギア列35を備えている。給紙アーム34は、プリンタ部11のフレームに回動可能に取り付けられ、給紙トレイ15に対して接離可能に上下動することができる。給紙ローラ31は、給紙アーム34の端部により軸支されている。ギア列35は、給紙アーム34中に配列された複数のギアから構成される。給紙ローラ31は、ASFモータ202(図7参照)の駆動力がギア列35によって伝達されて回転する。給紙ローラ31は、給紙トレイ15上の用紙Pに圧接した状態で回転する。給紙ローラ31の回転により、積載された用紙Pが、搬送路27へ給送される。
【0023】
<給紙トレイ15>
図2に示されるように、給紙トレイ15は、斜壁部12を有する。該給紙トレイ15に載置される用紙Pが、給紙ローラ31によって給送されるときに、斜壁部12は、用紙Pを搬送路27に案内する。したがって、給紙トレイ15に載置される用紙Pは、斜壁部12に用紙Pが当接した状態で、搬送路27に向かって給送される。また、後述する給紙トレイセンサ100の当接部101が斜壁部12の後面側に当接する。
【0024】
<搬送路27>
図2に示されるように、搬送路27は、給紙トレイ15の後側の端部から上方且つプリンタ部11の前側へ曲がって、プリンタ部11の背面側(後側)から正面側(前側)へ延出されている。さらに、搬送路27は、搬送ローラ対55による挟持位置、記録部20の下側、及び排紙ローラ対56による挟持位置を通過して排紙トレイ16へ通じている。給紙トレイ15から給送された用紙Pは、搬送路27により下方から上方へUターンするように案内されて記録部20に至る。記録部20により画像記録が用紙Pに行われた後、記録された用紙Pは排紙トレイ16に排紙される。搬送路27は、記録部20などが配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド部材29及び内側ガイド部材28によって形成されている。
【0025】
<搬送ローラ対55、及び排紙ローラ対56>
以下、用紙Pが、搬送路27に沿って搬送される向き(図2に破線の矢印で示される向き)を、搬送向きAとして説明が行われる。
【0026】
図2に示されるように、搬送ローラ対55が、記録部20よりも搬送向きAの上流側に設けられている。搬送ローラ対55は、搬送路27に対して上側に配置された搬送ローラ55Aと搬送路27に対して下側に配置されたピンチローラ55Bとを有する。排紙ローラ対56が、記録部20よりも搬送向きAの下流側に設けられている。排紙ローラ対56は、搬送路27に対して下側に配置された排紙ローラ56Aと、搬送路27に対して上側に配置された拍車56Bとを有する。排紙トレイ16が排紙ローラ対56よりも搬送向きAの下流側に配置されている。排紙トレイ16は、記録部20よりも搬送向きAの下流側に設けられている。また、排紙ローラ対56は、搬送路27における記録部20及び排紙トレイ16の間に設けられている。
【0027】
<記録部20>
図2に示されるように、記録部20は、記録ヘッド21(本発明の記録ヘッドの一例)と、キャリッジ23と、プラテン22と、を備えている。キャリッジ23は、主走査方向(図2の紙面に垂直な方向、つまり左右方向9)へ往復移動する。記録ヘッド21は、キャリッジ23の下側に設けられている。また、記録ヘッド21は、その下面に、当該記録ヘッド21の下方に搬送された用紙Pに対してインクを吐出するノズル26を備える。プラテン22は、ノズル26の下方に配置され、搬送ローラ対55によって搬送される用紙Pを支持する。
【0028】
図3に示されるように、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色インクが、不図示のインクタンクからインクチューブ33を通じて、記録ヘッド21に供給される。記録ヘッド21は、ノズル26から、各色のインクを微小なインク滴として吐出する。つまり、キャリッジ23が左右方向9へ往復移動することにより、記録ヘッド21が用紙Pに対して走査されると共に、ノズル26から、各色のインクを微小なインク滴として吐出することで、プラテン22上を搬送される用紙Pに画像が記録される。
【0029】
図3に示されるように、記録部20には、一対の平板状のガイドレール24が前後方向8に所定の間隔を空けて配置されている。これら一対のガイドレール24は左右方向9に沿って延びている。キャリッジ23は、これら一対のガイドレール24を跨ぐようにして、該一対のガイドレール24上を摺動して往復移動される。
【0030】
また、前側のガイドレール24の上面には、ベルト駆動機構37が配置されている。ベルト駆動機構37は、駆動プーリ38と、従動プーリ39と、無端環状のタイミングベルト36とを備えている。駆動プーリ38は、前側のガイドレール24の右端部に設けられ、従動プーリ39は前側のガイドレール24の左端部に設けられている。タイミングベルト36は、各プーリ38、39を張架すると共に内側に歯を備える。駆動プーリ38の軸には、CRモータ201(図7参照)から駆動力が入力され、駆動プーリ38の回転によりタイミングベルト36が周運動する。タイミングベルト36は、キャリッジ23に固着されている。したがって、キャリッジ23の往復移動はタイミングベルト36の周運動によって実現される。
【0031】
また、図3に示されるように、プラテン22の左側には、廃インクトレイ42が配置されている。廃インクトレイ42は、記録ヘッド21から空吐出されたインクを受けるものである。また、この空吐出は所謂フラッシングと呼ばれる。記録ヘッド21は、フラッシングを実行することによって、ノズル26内の気泡や混色インクの除去等のメンテナンスが実行される。また、廃インクトレイ42には、フェルトが敷設されている。記録ヘッド21がフラッシングを実行すると、空吐出されたインクはこのフェルトに吸収される。
【0032】
<保守機構60>
次に、図3及び図4を用いて、保守機構60について説明する。保守機構60は、ノズル26の表面の乾燥を防止したり、ノズル26内の気泡や異物の除去を行う。図3に示されるように、プラテン22の右側には保守機構60が配置されている。保守機構60が配置される具体的な位置は、プラテン22上を搬送される用紙Pが通過し得る領域よりも左右方向9において右側に外れる退避位置(本発明のキャップ動作位置の一例)に、配置されている。保守機構60は、図4に示されるように、キャップ61(本発明のキャップの一例)と、リフトアップ機構62と、ポンプ180(図7参照)とを備える。
【0033】
キャップ61は、ノズル26と当接する当接位置(図4(C)参照)と、ノズル26から離間する離間位置(図4(B)参照)との間で移動可能である。なお、キャップ61の移動は、後述するリフトアップ機構62によって当接位置と離間位置との移動が実現される。キャップ61は、当接位置に位置している場合にノズル26の表面を覆う。キャップ61がノズル26の表面を覆う時は、まず、キャリッジ23が退避位置に移動する。次にリフトアップ機構62によってキャップ61が離間位置から当接位置に移動されることで、キャップ61がノズル26の表面を覆う。キャップ61の底部には吸気口が設けられており、吸気口は後述するポンプ180に接続されている。
【0034】
ポンプ180は、ロータリー式のチューブポンプである。ポンプ180は、回転体と、ケーシングと、ポンプチューブ63とを備える。回転体は、LFモータ203(図7参照)によって駆動されて回転される。また、回転体はさらに、転動ローラを回転可能に支持している。転動ローラは、ケーシング内の内壁に沿って転動する。ポンプチューブ63は、転動ローラと、ケーシングの内壁との間に配置されている。したがって、回転体がLFモータ203によって回転されると、転動ローラがポンプチューブ63をしごくように転動する。これにより、ポンプチューブ63内のインクが上流側から下流側へと移動する。そして、ポンプチューブ63内のインクは上流側のポンプ180から、下流側の廃液タンクへと押し出される。
【0035】
図4(B)に示されるようにリフトアップ機構62は、等長リンク64と、ホルダ65とを備える。等長リンク64は、左右方向9(図4(B)の紙面垂直方向)に沿って延びる軸を中心に回動可能である。また、等長リンク64は、ホルダ65と接続されている。また、ホルダ65は、キャップ61を支持する。図4(B)に示される姿勢から、図4(C)に示される姿勢へと、等長リンク64が回動すると、ホルダ65が上方へと移動する。ホルダ65の上方への移動に伴い、キャップ61が上方へ移動する。つまり、キャップ61の図4(B)に示される位置が離間位置であり、キャップ61の図4(C)に示される位置が当接位置である。なお、等長リンク64は、ASFモータ202に駆動よって回動される。
【0036】
そして、保守機構60は、キャップ61が当接位置に位置してノズル26を覆った状態で、ノズル26等からインクと共に気泡や異物を吸引除去するパージを実行する。つまり、ASFモータ202の正方向の駆動によって等長リンク64が回動し、ノズル26の表面とキャップ61とが当接する。このとき、キャップ61は当接位置に位置している。ノズル26の表面がキャップ61に覆われた状態で、LFモータ203が駆動されることでポンプ180が駆動される。すると、キャップ61の底部に設けられる吸気口を介してノズル26やノズル26の表面からインク、気泡、及び異物が吸引除去される。また、保守機構60は、印刷が所定時間されない場合に、ノズル26をキャップ61によって覆うことで、ノズル26の表面が乾燥することによるインクの目詰まりを防止する。
【0037】
<駆動伝達切換機構40>
次に、図5及び図6を用いてASFモータ202の駆動力を、給紙ローラ31の回転又はキャップの移動の双方の一方に切換える駆動伝達切換機構40について説明する。図5に示された駆動伝達切換機構40は、一対のガイドレール24の右側方、つまりキャリッジ23が右向きに移動する際の側に配置される。駆動伝達切換機構40は、ギア切換機構41を備える。
【0038】
図5に示されるようにギア切換機構41は、駆動ギア44と、切換ギア45と、この切換ギア45とそれぞれ噛合可能な歯を有する第1受けギア46A、第2受けギア46B、切換ギア45の保持を行う保持機構70と、を備えている。
【0039】
駆動ギア44は、ASFモータ202の駆動が伝達されて回転する。駆動ギア44の回転軸と略平行に支軸47が配置され、この支軸47に切換ギア45が通される。切換ギア45は、支軸47の軸周りに回転可能であって、且つ、支軸47の軸方向に沿って移動可能である。
【0040】
切換ギア45は、左右方向9における駆動ギア44の幅寸法よりも小さい幅寸法で形成される。また切換ギア45は、駆動ギア44の上記幅寸法の範囲内で左右方向9に沿って移動することで第1姿勢及び第2姿勢に姿勢変化し、いずれの姿勢においても駆動ギア44と噛合する。ここで、切換ギア45が駆動ギア44の左端部と噛合する姿勢を第1姿勢であり、切換ギア45が駆動ギア44の右端部と噛合する姿勢を第2姿勢である。
【0041】
第1受けギア46A及び第2受けギア46Bはそれぞれが互いに同径に形成され、回転軸が一直線上に並び且つ回転軸が支軸47の軸方向に沿うように配置されている。また、第1受けギア46Aは第1姿勢にある切換ギア45に噛合する位置に配置され、第2受けギア46Bは第2姿勢にある切換ギア45に噛合する位置に配置されている。切換ギア45は、第1受けギア46A、第2受けギア46Bの一方と噛合し、第1受けギア46A、第2受けギア46Bの一方を選択して回転させる機能を有する。
【0042】
第1受けギア46Aは、ASFモータ202の正転の駆動力を給紙ローラ31に伝え、給紙ローラ31による給紙を可能にする。第2受けギア46Bは、直接又はギアなどを介して保守機構60のリフトアップ機構62に駆動力を伝達し、リフトアップ機構62を介してキャップ61を移動させる。つまり、複合機10は、切換ギア45が第2姿勢にある状態においてASFモータ202を正回転すると、キャップ61が上昇してキャップ61がノズル26の吐出口を覆う待機状態になり、ASFモータ202を逆回転すると、キャップ61が下降してキャップ61がノズル26から外れた印刷可能状態とになる。
【0043】
保持機構70は、図5、及び図6に示されるように支軸47が通されるレバー部材71及び当接部材72と、レバー部材71の保持を行う保持部材73とを備えている。
【0044】
図6(C)に示されるように、レバー部材71は、支軸47が通される円柱状部71Aと、レバー突起71Bと、リブ71Cとを備える。レバー突起71Bは、円柱状部71Aの周面の左端部から径方向(図6(C)における上向き)に突出し、上述のキャリッジ23に設けられた当接片25(図6(A)、(B)参照)によって左方から当接される。リブ71Cは、レバー突起71Bの右面の下端部から右向きに突出する。また、リブ71Cは、円柱状部71Aの周方向における厚みが薄い板状に形成されている。そして、レバー部材71は、円柱状部71Aを通る支軸47の軸周りに回転可能且つ支軸47の軸方向に沿って移動可能である。レバー部材71は、不図示の第1弾性部材により右向きに付勢された切換ギア45によって左方より右向きへと押圧される。
【0045】
図6(C)に示されるように、当接部材72は、支軸47が通される筒部72Aと、制動片72Bと、を備える。制動片72Bは、筒部72Aの周面から径方向(図6(C)における上向き)に突出し、先端部が2股に別れたY字状に形成されている。そして、当接部材72は、支軸47の軸周りに回転可能且つ支軸47の軸方向に沿って移動可能である。筒部72Aは、切り欠かれた切欠部72Cを左端部に備え、この切欠部72Cの周面が螺旋面72Dである構成を有している。螺旋面72Dには、レバー部材71のリブ71Cの右端が当接する。
【0046】
したがって、当接部材72がレバー部材71に押し付けられると、レバー部材71は回転する。当接部材72は、不図示の第2弾性部材により、上述の第1弾性部材よりも大きな力で左向きに付勢されている。切換ギア45と当接部材72とレバー部材71とは、第1弾性部材及び第2弾性部材により互いに押し合い、支軸47の軸方向において一体で移動可能である。第1弾性部材及び第2弾性部材には、例えば、コイルスプリングが用いられる。
【0047】
図6(A)、(B)に示されるように、保持部材73は、支軸47の軸方向(左右方向9)に長い枠状に形成されている。保持部材73は、レバー部材71のレバー突起71Bが下方より挿通され、不図示のフレームに固定されている。ここで、左右方向9における保持部材73の長さ寸法は駆動ギア44の上記幅寸法よりも大きく設定され、且つ、レバー突起71Bは保持部材73よりも十分に小さく形成される。またレバー突起71Bは、枠状の保持部材73の内側を移動可能である。
【0048】
上述された当接部材72のY字状の制動片72Bは、2つの先端部間の離間寸法が保持部材73の前後方向8の長さ寸法よりも大きくなるように形成されている。そして、制動片72Bは、切換ギア45が第1姿勢にある場合において、保持部材73を挟む。制動片72Bが保持部材73を挟むことで、当接部材72の回転は、支軸47の軸周りに規制される。切換ギア45が第2姿勢にある場合においては、制動片72Bは保持部材73から外れる。つまり、第2姿勢において、当接部材72は支軸47の軸周りに回転可能である。
【0049】
次に、切換ギア45が第1姿勢、第2姿勢である場合及び姿勢変化する場合について説明する。キャリッジ23に設けられた当接片25がレバー突起71Bに当接していない場合においては、上述の第2弾性部材の付勢力によりレバー部材71が左向きに付勢される。すると、保持部材73に挿通されたレバー突起71Bは、保持部材73の左内側面73Aに押圧される。つまり、レバー突起71Bが左内側面73Aに押圧されている状態において、切換ギア45は第1姿勢である(図6(A)参照)。
【0050】
上述の第2弾性部材の付勢力によりレバー部材71に押し付けられた当接部材72は、螺旋面72Dによりレバー部材71を支軸47の周方向の一方の向きである向き49に付勢し、レバー突起71Bを保持部材73の前内周面73Bに押し付ける。前内周面73Bには、2つの切欠き75、76が形成されている。
【0051】
左内側面73Aに押圧されるレバー突起71Bが当接片25によって押されると、レバー突起71Bは切欠き75に嵌る。切欠75に嵌ったレバー突起71Bが当接片25により更に押されると、レバー突起71Bは切欠76に嵌る。切欠76に嵌ったレバー突起71Bは、当接片25に更に押されることで傾斜面76Aを滑り、保持部材73の右内側面73Cに当接する位置に移動する。つまり、レバー突起71Bが右内側面73Cに当接している状態において、切換ギア45は第2姿勢である(図6(B)参照)。
【0052】
キャリッジ23は、レバー突起71Bが保持部材73の右内側面73Cに押し付けられた位置において、ノズルの吐出口が保守機構60のキャップ61の上方に位置するように設けられている。つまり、ガイドレール24の右端がキャリッジ23の待機位置であって、キャリッジ23が待機位置にある場合は、切換ギア45は第2姿勢である。
【0053】
保持部材73は、待機位置にあったキャリッジ23が左向きに移動した際に、レバー突起71Bにおける支軸47の軸周りの回転を規制する規制片77を備えている。レバー突起71Bは、待機位置にあったキャリッジ23が左向きに移動してレバー突起71Bから離れると、第2弾性部材の付勢力と規制片77とにより保持部材73の後内側面73Dに沿って左向きに移動し、左内側面73A近くで規制片77から外れ、左内側面73A及び前内周面73Bに当接する位置に移動する。
【0054】
なお、キャリッジ23によってレバー突起71Bが移動すると、制御部90によって切換ギア45のギア面と、それぞれの受けギア46Aまたは46Bのギア面と、の噛合わせを良好にするクック動作処理が行われる。このクック動作処理については、後述する。
【0055】
<検知機構150>
次に図2及び図3を用いて、図7に示される検知機構150について説明する。検知機構150は、給紙トレイセンサ100と、レジセンサ110と、ASFロータリーエンコーダ120と、リニアエンコーダ130と、キャップセンサ140と、を備えている。
【0056】
<給紙トレイセンサ100>
図2に示されるようにプリンタ部11の筐体14の後壁19には、給紙トレイセンサ100(本発明のトレイ検知手段の一例)が設けられている。給紙トレイセンサ100は、当接部101と、支持棒102と、遮光部103と、光センサ104と、を備えている。当接部101は、筒状に形成されており、当該筒内には支持棒102が挿入されて支持される。支持棒102は、後壁19から前後方向8に沿って前方に延びている。そして当接部101は、支持棒102によって支持されると共に前後方向8に沿って移動可能である。さらに、当接部101は不図示の付勢部材によって、前側に向かって付勢されている。また、当接部101は、給紙トレイ15の斜壁部12の後面と当接する。遮光部103は、当接部101から上方向に延出するようにして、当接部101と一体的に構成されている。さらに遮光部103は、後壁19に設けられる光センサ104の光軸を遮断可能である。光センサ104は、光を発光する発光部と、発光された光を受光する受光部とを備えた周知の透過型のフォトインタラプタである。光センサ104は、発光部からの発光を受光部が受光するとONを示す信号を制御部90に送信し、一方で、発光部からの発光を受光部が受光しないとOFFを示す信号を制御部90に送信する。
【0057】
以下に給紙トレイセンサ100による給紙トレイ15の検知について説明する。例えば、給紙トレイ15が図2の点線に示される非装着位置(本発明の非装着位置の一例)に存在するとき、当接部101は不図示の付勢部材による前側への付勢によって図2の点線に示される位置に存在する。このときは、当接部101の遮光部103が光センサ104の光軸から退避している。したがって、給紙トレイ15が非装着位置に存在している場合は、光センサ104の光軸が遮断されていないので、当該光センサ104は、ONを示す信号を制御部90に送信する。なお、非装着位置とは、給紙トレイ15が、図2において、装着位置よりも前側の任意の位置である。つまり、給紙トレイ15が非装着位置に位置する場合では、給紙トレイ15の一部が複合機10の開口13内のいずれの位置に位置していても良いし、給紙トレイ15の全部が開口13外に位置していても良い。
【0058】
次に、図2に示されるように、ユーザによって給紙トレイ15が後ろ側に挿入されると、給紙トレイ15は点線で示される位置から実線で示される装着位置(本発明の装着位置の一例)までユーザによって移動される。給紙トレイ15の移動により、当接部101の遮光部103が光センサ104の光軸に進入する。したがって、給紙トレイ15が装着位置に存在している場合は、光センサ104の光軸が遮断されているので、当該光センサ104は、OFFを示す信号を制御部90に送信する。
【0059】
制御部90は、光センサ104によって送信されるON、またはOFFを示す信号によって給紙トレイ15が装着位置に存在するか、非装着位置に存在するかを判断する。
【0060】
<レジセンサ110>
図2に示されるように、プリンタ部11は、搬送路27を搬送される用紙Pを検知するレジセンサ110を備えている。レジセンサ110は、搬送路27において、搬送ローラ対55よりも搬送向きAの上流側に設けられている。レジセンサ110は、光センサ111と、検出子112A、112Bを有する回転体112と、を備えている。光センサ111は、光を発光する発光部と発光された光を受光する受光部とを備えた周知の透過型のフォトインタラプタである。光センサ111は、発光部からの発光を受光部が受光するとONを示す信号を制御部90に送信し、一方で、発光部からの発光を受光部が受光しないとOFFを示す信号を制御部90に送信する。回転体112は、支軸113を中心に回転可能に設けられている。検出子112Aは支軸113から搬送路27に突出している。回転体112に外力が加えられていない状態で、検出子112Bは、光センサ111の発光部から受光部に至る光軸に進入し、当該光軸を遮断している。回転体112が用紙Pの先端に押されることによって回転すると、検出子112Bは光軸から外れる。つまり、検出子112Bが光軸に進入すると、光センサ111はOFFを示す信号を制御部90に送信し、検出子112Bが光軸から外れると、光センサ111はONを示す信号を制御部90に送信する。
【0061】
<ASFロータリーエンコーダ120>
ASFロータリーエンコーダ120(図7参照)は、ASFモータ202(図7参照)のモータの回転軸に設けられる円盤状のディスクと、光センサとを備えている。ディスクには、その円周方向と直交するようにして、光が透過する透光部と光が透過しない非透光部とが交互に設けられている。光センサは、上述の透過型フォトインタラプタ等である。光センサは、発光部と受光部との間に透光部又は非透光部が通過するように配置される。そして、ASFモータ202が回転すると、発光部によって発光された光は、透光部と非透光部とによって、受光部によって受光されたり、受光されなくなる。そして、受光部は交互に繰り返される受光の有無によってパルス信号を生成し、生成したパルス信号を制御部90に送信する。制御部90は、ASFロータリーエンコーダ120によって送信されたパルス信号によってASFモータ202の回転量を検出する。
【0062】
<リニアエンコーダ130>
図3に示されるようにリニアエンコーダ130は、エンコーダスケール131と、光センサ132と、を備える。エンコーダスケール131は、前側のガイドレール24上に、左右方向9に亘って張り渡されている。また、エンコーダスケール131には、左右方向9に、光が透過する透光部と光が透過しない非透光部とが交互に設けられている。光センサ132は、上述の透過型フォトインタラプタである。光センサは、発光部と受光部との間に透光部又は非透光部が通過するように配置される。そして、キャリッジ23が主走査方向に移動をすると、発光部によって発光された光は、透光部と非透光部とによって、受光部によって受光されたり、受光されなくなる。そして、受光部は交互に繰り返される受光の有無によってパルス信号を生成し、生成したパルス信号を制御部90に送信する。制御部90は、リニアエンコーダ130によって送信されたパルス信号によってキャリッジ23の移動量を検出する。
【0063】
<キャップセンサ140>
キャップ61の近傍には、キャップ61の位置を検知するキャップセンサ140(図7参照、本発明のキャップ検知手段の一例)が設けられている。キャップセンサ140は、例えば、摺動体と、光センサとを備える。摺動体は、キャップ61の姿勢変化に対応して上下に摺動する。光センサは上述の透過型のフォトインタラプタである。摺動体は、キャップ61が当接位置に位置するときに、光センサの発光部から受光部に至る光軸に進入して、光軸を遮断する。このとき光センサは、OFFを示す信号を制御部90に送信する。また、摺動体が光軸から外れた場合に、光センサは、ONを示す信号を制御部90に送信する。この光軸の遮断の有無によってキャップ61の位置が検知される。
【0064】
<電気的構成>
次に、図7を参照して、本発明の実施形態に係る複合機10の制御部90(本発明の制御手段の一例)について説明する。なお、制御部90が後述するフローチャートに従って、キャップ制御を行うことで本発明の各機能が実現される。制御部90は、CPU91、ROM92、RAM93、EEPROM94、タイマカウンタ95と、を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。なお、制御部90には、検知機構150、駆動部200、及び画像データ入力部210、が接続されている。
【0065】
ROM92は、CPU91が後述するクック動作処理、メイン処理及びキャップ処理を含む各種動作を制御するためのプログラムなどを格納する。
【0066】
RAM93は、CPU91が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域として使用される。また、RAM93は、キャップ時間フラグメモリ93Aと、画像データフラグメモリ93Bと、を備えている。
【0067】
キャップ時間フラグメモリ93Aには、キャップ時間を10秒(本発明の第1時間の一例である)に設定するか、60秒(本発明の第2時間の一例である)に設定するかを示すフラグが記憶される。キャップ時間については、後述される。制御部90が、図10乃至図12に示すフローチャートを実行して、キャップ時間を10秒に設定する場合には、制御部90がキャップ時間フラグメモリ93Aに「0」を記憶させる。一方で、キャップ時間を60秒に設定する場合には、制御部90がキャップ時間フラグメモリ93Aに「1」を記憶させる。なお、キャップ時間フラグメモリ93Aには、初期値として、「0」が記憶されている。
【0068】
画像データフラグメモリ93Bには、画像データが高画質記録であるか否かを示すフラグが記憶される。制御部90は、後述の画像データ入力部210により、画像データが高画質記録である旨を受信すると、制御部90は、画像データフラグメモリ93Bに「1」を記憶させる。一方で、画像データが高画質記録でない旨を受信すると、制御部90は、画像データフラグメモリ93Bに「0」を記憶させる。
【0069】
給紙トレイ移動フラグメモリ93Cには、給紙トレイ15が後述するキャップ処理中に移動したか否かを示すフラグが記憶されている。給紙トレイ15がキャップ処理中に一度も移動しない場合には「0」が記憶され、一度でも移動した場合には「1」が記憶される。なお、当該メモリ93Cに記憶されるフラグの変化は、後述する給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに記憶されるフラグに基づいて変化する。つまり、制御部90はキャップ処理開始後に、一度も給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに記憶されるフラグが遷移しない場合は「0」が記憶され、一度給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに記憶されるフラグが遷移した場合は「1」が記憶される。なお、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bのフラグが遷移したか否かを判断する後述のS202、S402、S420における制御部90の動作は、本発明の遷移検知手段の一例である。
【0070】
EEPROM94には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。EEPROM134は、キャップ時間メモリ94Aと、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bとを備えている。
【0071】
キャップ時間メモリ94Aには、キャップ時間が記憶されている。キャップ時間とは、キャップ61が記録ヘッド21から離間するキャップアウト(本発明のキャップ解除動作の一例)してから、または、一枚の用紙Pに対する画像記録が終了してから、記録ヘッド21がキャップ61によってキャッピングされるまでの時間である。本実施形態においては、キャップ時間として10秒と60秒とが記憶されている。10秒のキャップ時間は、ノズル26の表面におけるインクの乾燥が発生せず、且つ、記録部20による画像記録の画質が十分に保障できる範囲内の時間であり、保障時間として予め記憶される。60秒のキャップ時間は、ノズル26の表面におけるインクの乾燥が発生しない最大時間の範囲内の時間であり、許容時間として予め記憶される。なお、上述した10秒、及び60秒については、具体的な時間の一例に過ぎず、保証時間内であったり、許容時間内であれば、何秒で記憶されても良い。また、このキャップ時間は、ROM92に記憶されていても良い。
【0072】
また、このキャップ時間は、ユーザによって適宜変更されてもよい。ユーザがPCなどの外部機器を操作することで、このキャップ時間を変更すると、EEPROM134には、変更されたキャップ時間が記憶される。例えば、キャップ時間の選択肢としては、10秒、60秒のほかに5秒、30秒であったり、10秒、30秒が挙げられるが、この限りでないことは言うまでもない。
【0073】
給紙トレイ位置フラグメモリ94Bには、給紙トレイ15が装着位置に位置しているか、または非装着位置に位置しているかを表すフラグが記憶される。給紙トレイセンサ100によって、OFFを示す信号が制御部90に送信されると、制御部90は、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「0」を記憶する。このとき、給紙トレイ15は装着位置に位置している。一方で、給紙トレイセンサ100によって、ONを示す信号が制御部90に送信されると、制御部90は、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「1」を記憶する。「1」が記憶されている場合は、給紙トレイ15は非装着位置に位置している。
【0074】
タイマカウンタ95は、時間をカウントするカウント回路である。カウント回路は、例えば制御部90の一部としてハードウェアによって構成される。タイマカウンタ95は、キャップアウトしてから、又は記録部20による一枚の用紙Pに対する画像記録が終了してから、時間のカウントを開始する。なお、タイマカウンタ95は、ROM91に格納されたプログラムによって、つまりソフトウェアによって実現されてもよい。
【0075】
制御部90に接続される検知機構150は、上述した給紙トレイセンサ100、レジセンサ110、ASFロータリーエンコーダ120、リニアエンコーダ130及びキャップセンサ140を備える。そして、検知機構150は制御部90に各信号を送信する。制御部90は、送信された各信号に基づいて、CRモータ201、ASFモータ202、LFモータ203を制御する。
【0076】
制御部90に接続される駆動部200は、制御部90の指示に従ってCRモータ201、ASFモータ202、LFモータ203を駆動する。そしてCRモータ201は、逆転及び正転することで、キャリッジ23を主走査方向に往復移動させる。ASFモータ202は、切換ギア45が、第1姿勢であるときに、正転することで給紙ローラ31回転させる。また、切換ギア45が第2姿勢であるときに、正転することで、リフトアップ機構62を駆動してキャップ61を上昇させ、一方で逆転することで、リフトアップ機構62を駆動してキャップ61を下降させる。LFモータ203は、搬送ローラ対55、排紙ローラ対56及び、ポンプ180を駆動させる。
【0077】
制御部90に接続される画像データ入力部210は、PCなどの外部機器から複合機10に入力される画像データを入力し、入力された画像データを制御部90に出力する。制御部90は、キャップ制御の処理を実行する際に、画像データ入力部210に入力される画像データの判断を行う。なお、後述のS210、S302における制御部90の動作は、本発明の画質検知手段の一例である。また、本実施形態においては、画像データは、例えば、画像を記録する対象の用紙Pの大きさに関する情報、または、解像度に関する情報を含む。用紙Pの大きさに関する情報とは、例えば、用紙Pの寸法として、297mm×210mm(A4サイズ)や257mm×182mm(B5サイズ)といった具体的な寸法を示す情報でもよい。また、具体的な寸法ではなくA4、B5サイズの用紙サイズの概念を示す情報でもよい。また、解像度に関する情報としては、例えば、解像度として、600dpi×300dpi、600dpi×600dpi、1200dpi×600dpiといった具体的な解像度を示す情報でも良い。また、具体的な解像度ではなく、普通画質、高画質(普通画質よりも解像度が高い)といった解像度の概念を示す情報でもよい。また、本実施形態では一例として600dpi×600dpi以上の解像度を高画質とする。
【0078】
なお、画像データ入力部210によって画像データが制御部90に入力されると、制御部90は、記録ヘッド21を有するキャリッジ23の移動開始位置を決定する。なお、制御部90は、本発明の決定手段の一例である。このキャリッジ23の移動開始位置とは、画像データに従って記録ヘッド21からインクが吐出される際に、キャリッジ23が移動を開始する位置である。この移動開始位置としては、例えば、プラテン22に対して保守機構60と左右方向9において反対側の廃インクトレイ42上の位置が挙げられる。これは、画像記録前、つまりインクの吐出前に、廃インクトレイ42に向けてフラッシングを行うことで、記録ヘッド21内のインクの状態を良好にするためである。
【0079】
<クック動作処理>
キャリッジ23によってレバー突起71Bが姿勢変化されると、制御部90によってクック動作処理が実行される。以下、クック動作を図8を用いて説明する。このクック動作は、制御部90によってレバー突起71Bが、第1姿勢から第2姿勢、または第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化する必要があると判断されると、制御部90によって実行される。レバー突起71Bを第1姿勢から第2姿勢への姿勢変化は、記録部20による画像記録が完了してタイマカウンタ95のカウント値がキャップ時間に到達した時に実行される。レバー突起71Bを第2姿勢から第1姿勢への姿勢変化は、記録ヘッド21がキャップ61によってキャッピング中に、画像記録の指示がされた時に実行される。以下では、レバー突起71Bが第1姿勢から第2姿勢に変化した場合について説明する。
【0080】
まず、タイマカウンタ95のカウント値がキャップ時間に到達すると、制御部90は、図8のフローチャートで示すクック動作処理を実行する。すると制御部90は、キャリッジ23を、レバー突起71Bに向けて右向きに移動させる。そして、制御部90は、リニアエンコーダ130のパルス信号に基づいて、キャリッジ23がレバー突起71Bに当接して第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化させるまでキャリッジ23を移動させる(ステップS10:N、以下ステップS10をS10と省略する)。
【0081】
そして、レバー突起71Bが第2姿勢まで移動すると(S10:Y)、制御部90は、ASFモータ202を正方向に回転させる(S11)。次に制御部90は、ASFロータリーエンコーダ120のパルス信号を監視して、ASFモータ202の正回転が所定量行われるまでASFモータ202を回転させる(S12:N)。所定量とは、ASFロータリーエンコーダ120のパルス信号の立上りエッジが所定の回数を示す値である。そして、ASFモータ202が所定量正回転すると(S12:Y)、制御部90は、ASFモータ202を逆方向に回転させる(S13)。次に制御部90は、ASFロータリーエンコーダ120のカウント値を監視して、ASFモータ202の逆回転が所定量行われるまでASFモータ202を回転させる(S14:N)。所定量とは、ASFロータリーエンコーダ120のパルス信号の立上りエッジが所定の回数を示す値である。
【0082】
そして、ASFモータ202が所定量逆回転すると(S14:Y)、制御部90は、ASFモータ202の正回転及び逆回転を所定回数行われたか否かの判断をする(S15)。制御部90がASFモータ202の正回転及び逆回転が所定回数行われていないと判断すると(S15:N)、制御部90は、上述のS11乃至S14に示す動作を繰り返し実行する。制御部90がASFモータ202の正回転及び逆回転が所定回数行われたと判断すると(S15:Y)、制御部90は、クック動作処理を終了する。なお、このクック動作処理においては、確実に切換ギア45のギア面と、各受けギア46A又は46Bのギア面との噛み合わせを良好にするために、一般的に約5秒ほどの時間が要される。
【0083】
<メイン処理の説明>
次に、画像データ入力部210から制御部90に画像データが入力された場合に実行されるメイン処理について図9に示されるフローチャートを用いて説明する。
【0084】
給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「0」が記憶された状態で、画像データ入力部210から制御部90に画像データが入力されると、制御部90は、図9に示されるメイン処理を開始する。まず、メイン処理が開始されると、制御部90はキャップ61を記録ヘッド21から離間させるキャップアウト(S100)を行う。キャップアウトは、ASFモータ202を逆回転させることで実現される。このとき、同時に図8に示されるように、制御部90は、クック動作処理を実行する。このとき同時に、制御部90は、CRモータ201を駆動してキャリッジ23を移動開始位置に移動させる。そして、制御部90がASFモータ202を逆回転させて、キャップセンサ140がONを示す信号を制御部90に出力すると、制御部90は、タイマカウンタ95による時間のカウントを開始させる(S102)。次に、制御部90は、ASFモータの正回転を介して給紙ローラ31を回転させることで、給紙トレイ15中に積載される用紙Pの給紙を開始する(S104)。
【0085】
そして、制御部90は、給紙トレイ15に画像記録可能な用紙があるか否かの判断をする(S106)。この判断においては、給紙トレイ15に用紙が1枚も存在しない場合であったり、制御部90に入力される画像データ中の用紙サイズと給紙トレイ15中の用紙サイズとが合致していない場合は、否定判断する(S106:N)。給紙トレイ15に用紙が1枚も存在しない場合は、給紙ローラ31を所定時間回転させても、レジセンサ110の出力が変化しない場合である。画像データ中の用紙サイズと給紙トレイ15中の用紙サイズとが合致していない場合は、画像データ中の用紙サイズと、キャリッジ23に設けられる不図示のメディアセンサの出力結果によって、検知される用紙幅(左右方向9の大きさ)とが合致しない場合である。なお、S106における制御部90の判断は、有無検知手段の一例である。
【0086】
制御部90がS106において否定判断すると(S106:N)、後述するキャップ処理に移行する。また、制御部90がS106において肯定判断すると(S106:N)、タイマカウンタ95のカウント値をクリアする(S108)。これは、後述のように用紙Pに画像記録がされることによって記録ヘッド21からインクが吐出されてノズル26の表面の乾燥が抑制されるからである。
【0087】
そして、制御部90は、用紙Pを搬送する搬送動作と、用紙Pの搬送を停止させた状態で用紙Pに対してインクを吐出する吐出動作と、を繰り返して画像記録を行う(S110)。また、このS110の画像記録においては、制御部90によって任意のタイミングで廃インクトレイ42にキャリッジ23を移動させてフラッシングを行わせる。このフラッシングは、記録ヘッド21の全てのノズルからインクを吐出する。これにより、画像記録において、ノズル26面のインクの状態が良好に維持される。次に、一枚の用紙Pに対する画像の記録が完了すると、制御部90は、再びタイマカウンタ95による時間のカウントを開始させるとともに(S112)、用紙Pを排紙トレイ16に排出させる(S114)。次に、制御部90に入力される画像データが全頁に渡って記録され画像記録が終了したか否かを判断する(S116)。全頁に亘って画像記録が終了していない場合(S116:N)は、S104乃至S116の処理を繰り返し実行する。
【0088】
全頁に亘って画像記録が完了すると(S116:Y)、制御部90が図8に示すクック動作処理を行った後に、制御部90はキャップ61を記録ヘッド21へと当接させるキャッピングを行う(S118)。このキャッピングはASFモータ202を正回転させることで実現される。そして、制御部90がASFモータ202を正回転させて、キャップセンサ140がOFFを示す信号を制御部90に出力すると、キャッピングが完了し、メイン処理を終了する。
【0089】
<キャップ処理の説明>
次に、制御部90がS106において否定判断(S106:N)した場合に実行されるキャップ処理(本発明のキャップ処理の一例)について図10乃至図12に示されるフローチャートを用いて説明する。
【0090】
キャップ処理が制御部90によって実行されると、まず制御部90は、当該キャップ処理の実行が2回以上連続して実行されているか否かを判断する(S200)。2回以上連続してキャップ処理が実行されていることとは、キャップ処理後のS106において制御部90によって肯定判断がされない(S106:N)場合を示す。キャップ処理が2回以上連続して実行されていない、つまりキャップ処理が1回目である場合(S200:N)は、S202に進む。一方で、キャップ処理が2回以上連続して実行されると、制御部90は、S200において肯定判断をする(S200:Y)。
【0091】
<10秒内に画像記録を再開する場合>
ここで、タイマカウンタ95によるカウントの開始から10秒以内に画像記録が再開される場合について図10に示されるフローチャートを用いて説明する。ここで、10秒以内に画像記録が再開される場合は、タイマカウンタ95によるカウントの開始から10秒以内に給紙トレイ15がユーザによって移動されるという操作が2度行われて、画像記録再開の指示がされた場合である。
【0092】
S202では制御部90は、給紙トレイ15が移動した否かの判断をする(S202)。なお、S202の判断は、タイマカウンタ95によるカウントの開始から10秒の間行われる(S202:N、S204:N)。なお、制御部90による給紙トレイ15が移動したことの判断は、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに記憶されるフラグが、「0」(給紙トレイ15が装着)から「1」(給紙トレイ15が非装着)又は「1」から「0」に遷移したか否かによって判断する。メイン処理が開始された時は、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bには「0」が記憶されている。したがって、まず給紙トレイ15が移動した、つまり給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに記憶されるフラグが「0」から「1」に遷移すると(S202:Y)、制御部90は、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bのフラグに「0」が記憶されているか否かの判断をする(S216)。このとき、給紙トレイ移動フラグメモリ93Cには、「1」が記憶される。給紙トレイ位置フラグメモリ94Bが「0」から「1」に遷移した場合は、制御部90は、S216において否定判断をする(S216:N)。そして、制御部90は、給紙トレイ15が非装着位置にある旨を、PCなどの外部機器や表示部18を介してユーザに報知して(S218)、再びS202に戻る。
【0093】
制御部90は、カウント開始から10秒以内に給紙トレイ15が移動したと判断すると(S216:Y)再びS216に進む。今度は、給紙トレイ15が移動した、つまり給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに記憶されるフラグが「1」から「0」に遷移すると、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bには「0」が記憶されているので(S216:Y)、S220に進む。制御部90は、ユーザによる画像記録再開の指示を受けるためにタイマカウンタ95によるカウント開始から10秒間待機する(S220:N、S222:N)。そしてタイマカウンタ95によるカウント開始から10秒間の待機中に、ユーザによって画像データ入力部210から画像記録再開の指示がされると、キャップ処理を終了し、メイン処理(図9)のS104に進み、給紙を開始する。そして、給紙トレイ15に画像記録可能な用紙があると(S106:Y)、画像記録を実行する。
【0094】
このように、本実施形態の複合機10では、タイマカウンタ95によるカウントが開始されて10秒以内に、給紙トレイ15がユーザによって操作されたことをきっかけにして画像記録を開始する。これはつまり、10秒以内に給紙トレイが操作されない場合は、10秒後に画像記録を開始させないことでもある。これにより、複合機10は給紙トレイ15が2度操作された、つまり給紙トレイ15に適切な用紙Pが補充されたであろう場合にのみ、画像記録を開始する。よって、給紙トレイ15内に適切な用紙Pが無い状態で、画像記録を再開して再び、画像記録を中断することを抑制することができる。
【0095】
<10秒後にキャップされる場合>
ここで、タイマカウンタ95によるカウントの開始から10秒後にキャッピングを行う場合について図10及び図11に示されるフローチャートを用いて説明する。なお、10秒後にキャッピングを行う場合は、キャップ処理が開始された後、給紙トレイ15が一度も操作されない場合、又は制御部90に入力される画像データが高画質記録である場合である。
【0096】
S204またはS206において、タイマカウンタ95によるカウントの開始から10秒経過すると、制御部90は、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「1」(給紙トレイ15が非装着)が記憶されているか否かの判断をする(S206)。給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「1」が記憶されていることは、給紙トレイ15が非装着の位置にあることであり、つまり、ユーザにより一度操作されていることである。この場合、制御部90はS206において肯定判断をし(S206:Y)、S210に進む。また、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「0」が記憶されている場合、制御部90は、S206において否定判断をし(S206:N)、S208に進む。S208においては、給紙トレイ15が今までに移動した、つまり、給紙トレイ移動フラグメモリ93Cに「1」が記憶されているか否かの判断をする(S208)。ユーザによって給紙トレイ15が一度も操作されないと、つまり、給紙トレイ移動フラグメモリ93Cのフラグに「0」が記憶されていると制御部90は否定判断し(S208:N)、S214に進む。ユーザによって給紙トレイ15が一度操作された、つまり、給紙トレイ移動フラグメモリ93Cに記憶されるフラグとして「1」が記憶されていると、制御部90は肯定判断し(S208:Y)、S210に進む。
【0097】
S210においては、制御部90は、当該制御部90に入力される画像データが、高画質記録であるか否かの判断をする(S210)。具体的には、制御部90は、画像データフラグメモリ93Bに記憶されるフラグが「0」(低画質記録)か「1」(高画質記録)かによって判断する。そして、高画質記録である、つまり制御部90が画像データフラグメモリ93Bに「1」が記憶されていると判断すると(S210:Y)、S214に進む。
【0098】
S214においては、制御部90は、キャッピング開始時間が10秒に設定されているか否かの判断をする(S214)。具体的には、制御部90は、キャップ時間フラグメモリ93Aに記憶されるフラグが「0」(10秒後にキャッピング開始)か「1」(60秒後にキャッピング開始)かによって判断する。なお、先述したようにキャップ時間フラグメモリ93Aには、初期値として、「0」が記憶されているので(S214:Y)、S224に示されるキャッピング10秒処理(図11参照)に移行する。
【0099】
図11のフローチャートに示されるキャッピング10秒処理に移行すると、まず、制御部90は、キャッピング動作(本発明のキャップ動作の一例)を開始し(S300)、次いでS302に進む。このキャッピング動作には、クック動作処理(図8参照)と、クック動作処理後にASFモータ202を正回転させてキャップを上昇させる上昇動作とを含む。S302においては、制御部90が、当該制御部90に入力される画像データが、高画質記録であるか否かの判断をする(S302)。つまり、制御部90が画像データフラグメモリ93Bに「1」が記憶されていると判断すると(S302:Y)、S306に進む。また、制御部90が画像データフラグメモリ93Bに「0」が記憶されていると判断すると(S302:N)、S304に進む。S304においては、制御部90が、キャッピング動作開始中に給紙トレイ15が移動したか否かの判断をする。つまり、制御部90は、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに記憶されるフラグの遷移が無い場合は(S304:N)、S306に進む。
【0100】
そして、S306に進むとキャッピング動作が完了するまで上述のS302及びS304を繰り返しつつ(S306:N)、終了していないキャッピング動作を完了させて、記録ヘッド21をキャッピングする(S306:Y)。このキャッピング動作が完了したことの判断は、キャップセンサ140によってOFFを示す信号が制御部90に出力されたことによって判断される。キャッピング動作が完了(S306:Y)すると、S312に示すキャッピング60秒処理に進む。なお、S300及びS306における制御部90の動作は、本発明のキャップ動作手段の一例である。
【0101】
このように本実施形態の複合機10では、画像データが高画質記録である場合であったり、タイマカウンタ95によるカウントが開始されて10秒以内に、給紙トレイ15がユーザによって一度も操作されない場合は、制御部90は、10秒後にキャッピング動作を開始する。キャッピング開始後においても、給紙トレイ15がユーザによって一度も操作されない限りキャッピング動作を継続してキャッピングをする。これにより、以下の効果を奏する。つまり、高画質記録においては、画質を保証するために、画像記録時においてはノズル26の表面の乾燥の影響がないことが好ましい。したがって、高画質記録においては、給紙トレイ15の操作の如何に関わらずタイマカウンタ95のカウントの開始から10秒後にキャッピングを行う。これにより、ノズル26の表面の乾燥により、高画質印刷の画質が低下することを抑制することができる。
【0102】
<10秒後のキャッピング動作が中断される場合>
ここで、キャッピング動作を中断させる場合について図11に示されるフローチャートを用いて説明する。なお、キャッピング動作が中断される場合は、タイマカウンタ95によるカウントの開始から10秒後のキャッピング動作中に、給紙トレイ15が移動した場合である。
【0103】
S304において、キャッピング動作完了前に(S306:N)、制御部90によって給紙トレイ15が移動したと判断すると(S304:Y)、キャッピング動作を中断する(S308、)。なお、S308における制御部90の動作は、キャップ中断手段の一例である。S304における肯定判断(S304:Y)は、キャッピング動作完了前に(S306:N)に、制御部90によって給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに記憶されるフラグの遷移があったと判断された場合である。キャッピング動作中断は、例えば、キャッピング動作のうち、クック動作中にS308に進んだ場合は、新たに、レバー突起71Bを第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化させて、クック動作処理を実行する。また、キャップ上昇動作中にS308に進んだ場合は、正回転していたASFモータ202を逆回転させてキャップ61を下降させるキャップ下降動作を行う。その後、レバー突起71Bを第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化させて、クック動作処理を実行する。
【0104】
そして、クック動作処理の実行中に、制御部90は、記録ヘッド21を有するキャリッジ23を移動開始位置に移動させる(S310)。例えば、移動開始位置としては、上述したように、廃インクトレイ42上の位置である。そして、S310の処理が終わると、S312に示すキャッピング60秒処理に進む。
【0105】
<60秒後にキャップされる場合>
ここで、タイマカウンタ95によるカウントの開始から60秒後にキャッピングを行う場合について主に図10乃至図12に示されるフローチャートを用いて説明する。なお、60秒後にキャッピング動作が行われる場合は、タイマカウンタ95による開始から10秒以内に給紙トレイ15が移動された場合や、キャッピング動作が中断された場合である。
【0106】
まず、図10に示されるフローチャートを用いて説明する。S206において、制御部90が、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「1」が記憶されている場合であって(S206:Y)、または、今までに給紙トレイ15が移動した場合であって(S208:Y)、高画質記録でない場合(S212:N)であると判断すると、制御部90は、キャッピング開始時間を60秒に設定する(S212)。具体的には、制御部90は、キャップ時間フラグメモリ93Aに記憶されるフラグを「1」に記憶する。すると、キャップ時間フラグメモリ93Aには「1」が記憶されているため、S214の処理においては否定判断(S214:N)され、キャッピング60秒処理に進む(S226)。
【0107】
また、S214において肯定判断(S214:Y)されて、キャッピング10秒処理の開始後、S306が肯定判断(S306:Y)、またはS310の処理が実行されると、キャッピング60秒処理に進む(S312)。
【0108】
なお、図12のフローチャートに示されるキャッピング60秒処理に進んだ場合は、給紙トレイ15の状態として以下の3つの場合が挙げられる。第1の場合は、給紙トレイ15が一度も操作されない、つまり、給紙トレイ15が装着されたまま制御部90によってキャッピングが10秒後に行われた場合である。第2の場合は、タイマカウンタ95によるカウントの開始から10秒以内に給紙トレイ15が非装着位置に移動された、つまり給紙トレイ15が一度は操作されている場合である。第3の場合は、10秒後のキャッピング動作中に非装着位置にある給紙トレイ15が装着位置に移動された、つまり給紙トレイ15が一度は操作されている場合である。以下、3つの場合についてそれぞれ説明する。
【0109】
<第1の場合の動作>
第1の場合とは上述したように、給紙トレイ15が一度も操作されない、つまり、給紙トレイ15が装着されたまま制御部90によってキャッピングが10秒後に行われた場合である。
【0110】
キャッピング60秒処理に進むと、まず、制御部90は、タイマカウンタ95のカウントが60秒を経過したか否かを判断する(S400)。制御部90がS400において否定判断(S400:N)した場合は、次に制御部90は、給紙トレイ15が移動したか否かの判断をする(S402)。給紙トレイ15が移動していない場合は(S402:N)、S404に進むが、この第1の場合においては、給紙トレイ15は一度も操作されていない、つまり、給紙トレイ移動フラグメモリ93Cのフラグに「0」が記憶されているので、制御部90は、否定判断し(S404:N)、S400に戻る。また、給紙トレイ15が移動した場合は(S402:Y)、S408に進み、制御部90は、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「0」が記憶されているか否かの判断をする(S408)。第1の場合においては、一度給紙トレイ15が移動すると、非装着位置に位置する、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bのフラグに「1」が記憶されるので、S408において制御部90は否定判断をする(S408:N)。そして、制御部90は、給紙トレイ15が非装着位置にある旨を、PCなどの外部機器や表示部18を介してユーザに報知して(S406)、再びS400に戻る。
【0111】
その後、再び給紙トレイ15が移動される(S402:Y)、つまり装着位置に移動すると、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bのフラグに「0」が記憶されるため、S408において制御部90は肯定判断をする(S408:Y)。そして、制御部90は、タイマカウンタ95のカウントが60秒を経過するまで、ユーザによる画像記録再開の指示を待つ(S410:N、S412:N)。
【0112】
そして、制御部90は、ユーザによる画像記録再開の指示を受けると(S412:Y)、キャップセンサ140がOFFを示す信号を制御部90に出力しているか否かの判断をする(S414)。第1の場合においては、タイマカウンタ95によるカウントの開始から10秒後に行われるキャッピング動作が完了している、つまりキャップセンサ140はOFFを示す信号を制御部90に出力している。よって、S414においては、制御部90は、肯定判断(S414:Y)をし、図9のフローチャートに示すS100に戻る。
【0113】
次に、S400、S410においてタイマカウンタ95によるカウントの開始から60秒経過した場合(S400:Y、S410:Y)について説明する。タイマカウンタ95によるカウントの開始から60秒経過すると、制御部90は、キャップセンサがOFFを示す信号を制御部90に出力しているか否かの判断をする(S416)。上述したように、第1の場合においては、キャップセンサ140は制御部90にOFFを示す信号を出力しているので、制御部90はS416において肯定判断をし(S416:Y)、S420に進む。
【0114】
今までに、給紙トレイ15が一度も操作されずに60秒経過した場合は、制御部90は、給紙トレイ15が非装着位置に移動されて、さらに装着位置に移動されるまで、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに記憶されるフラグが「1」から「0」に遷移するまで待機する。(S420:Y、S426:N)。給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに記憶されるフラグが「1」から「0」に遷移するまでは、制御部90は、給紙トレイ15が非装着位置にある旨を、PCなどの外部機器や表示部18を介してユーザに報知する(S424)。そして、給紙トレイ15が、非装着位置から装着位置に移動、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「0」が記憶されると(S426:Y)、制御部90は、ユーザによる画像記録再開の指示を待つ(S428:N)。そして、制御部90はユーザによる画像記録再開の指示を受けると(S428:Y)、図9フローチャートに示すS100に戻る。
【0115】
給紙トレイ15が非装着位置に位置する状態で60秒経過した場合は、制御部90は、給紙トレイ15が装着位置に移動されるまで、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bのフラグに「0」が記憶されるまで待機する。(S420:Y、S426:N)。制御部90は、給紙トレイ15が非装着位置にある旨を、PCなどの外部機器や表示部18を介してユーザに報知する(S424)。そして、給紙トレイ15が、非装着位置から装着位置に移動、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「0」が記憶されると(S426)、制御部90は、ユーザによる画像記録再開の指示を待つ(S428:N)。そして、制御部90はユーザによる画像記録再開の指示を受けると(S428:Y)、図9フローチャートに示すS100に戻る。
【0116】
給紙トレイ15が、非装着位置から装着位置に位置した状態で60秒経過した場合は、給紙トレイ15が移動していなくとも(S420:N)、S422に進み、今までに給紙トレイ15が移動されているのでS422において制御部90は肯定判断をする(S422:Y)。そして、S426に進み給紙トレイ15が装着位置に位置する、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bには「0」が記憶されているため、S426において制御部90は、肯定判断をし(S426:Y)、次に、制御部90は、ユーザによる画像記録再開の指示を待つ(S428:N)。そして、制御部90はユーザによる画像記録再開の指示を受けると(S428:Y)、図9フローチャートに示すS100に戻る。
【0117】
<第2の場合の動作>
第2の場合とは上述したように、タイマカウンタ95によるカウントの開始から10秒以内に給紙トレイ15が非装着位置に移動された、つまり給紙トレイ15が一度は操作されている場合である。この第2の場合においては、キャッピング処理開始後、キャッピングは完了していない。
【0118】
キャッピング60秒処理に進むと、まず、制御部90は、タイマカウンタ95のカウントが60秒を経過したか否かを判断する(S400)。制御部90がS400において否定判断(S400:N)した場合は、次に制御部90は、給紙トレイ15が移動した否かの判断をする(S402)。給紙トレイ15が移動していない場合は(S402:N)、S404に進むが、この第2の場合においては、給紙トレイ15は一度操作されている、つまり、給紙トレイ移動フラグメモリ93Cのフラグに「1」が記憶されているので、制御部90は、肯定判断する(S404:Y)。次にS408に進み給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「0」が記憶されているか否かの判断をする(S408)。第2の場合においては、一度給紙トレイ15が移動すると、非装着位置にある、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bのフラグに「1」が記憶されるので、S408において制御部90は否定判断をする(S408:N)。そして、制御部90は、給紙トレイ15が非装着位置にある旨を、PCなどの外部機器や表示部18を介してユーザに報知して(S406)、再びS400に戻る。
【0119】
その後、再び給紙トレイ15が移動される(S402:Y)、つまり装着位置に移動すると、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bのフラグに「0」が記憶されるため、S408において制御部90は肯定判断をする(S408:Y)。そして、制御部90は、タイマカウンタ95のカウントが60秒を経過するまで、ユーザによる画像記録再開の指示を待つ(S410:N、S412:N)。
【0120】
そして、制御部90は、ユーザによる画像記録再開の指示を受けると(S412:Y)、キャップセンサ140がOFFを示す信号を制御部90に出力しているか否かの判断をする(S414)。第2の場合においては、タイマカウンタ95によるカウントの開始から10秒後に行われるキャッピング動作が完了していない、つまりキャップセンサ140はONを示す信号を制御部90に出力している。よって、S414においては、制御部90は、否定判断(S414:Y)をし、図9のフローチャートに示すS102に戻る。
【0121】
次に、S400、S410においてタイマカウンタ95によるカウントの開始から60秒経過した場合(S400:Y、S410:Y)について説明する。タイマカウンタ95によるカウントの開始から60秒経過すると、制御部90は、キャップセンサがOFFを示す信号を制御部90に出力しているか否かの判断をする(S416)。上述したように、第2の場合は、キャップセンサ140は制御部90にONを示す信号を出力しているので、制御部90はS414において否定判断をする(S416:Y)。次に、記録ヘッド21のキャッピングを完了し(S418)、S420に進む。なお、S418における制御部90の動作は、本発明のキャップ動作手段の一例である。
【0122】
給紙トレイ15が非装着位置に位置する状態で60秒経過した場合は、制御部90は、給紙トレイ15が装着位置に移動されるまで、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bのフラグに「0」が記憶されるまで待機する。(S420:Y、S426:N)。制御部90は、給紙トレイ15が非装着位置にある旨を、PCなどの外部機器や表示部18を介してユーザに報知する(S424)。そして、給紙トレイ15が、非装着位置から装着位置に移動、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「0」が記憶されると(S422)、制御部90は、ユーザによる画像記録再開の指示を待つ(S428:N)。そして、制御部90はユーザによる画像記録再開の指示を受けると(S428:Y)、図9フローチャートに示すS100に戻る。
【0123】
給紙トレイ15が、非装着位置から装着位置へ移動して装着位置に位置した状態で60秒経過した場合は、給紙トレイ15が移動していなくとも(S420:N)、S422に進み、今までに給紙トレイ15が移動されている、つまり、給紙トレイ移動フラグメモリ93Cのフラグに「1」が記憶されているので、S422において制御部90は肯定判断をする(S422:Y)。そして、S426に進み給紙トレイ15が装着位置に位置する、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bには「0」が記憶されているため、S426において制御部90は、肯定判断をし(S426:Y)、次に、制御部90は、ユーザによる画像記録再開の指示を待つ(S428:N)。そして、制御部90はユーザによる画像記録再開の指示を受けると(S428:Y)、図9フローチャートに示すS100に戻る。
【0124】
<第3の場合の動作>
第3の場合とは上述したように、10秒後のキャッピング動作中に非装着位置にある給紙トレイ15が装着位置に移動された、つまり給紙トレイ15が一度は操作されている場合である。この第3の場合では、キャッピング動作が中断されているので、キャップ処理開始後、キャッピングは完了していない。
【0125】
キャッピング60秒処理に進むと、まず、制御部90は、タイマカウンタ95のカウントが60秒を経過したか否かを判断する(S400)。制御部90がS400において否定判断(S400:N)した場合は、次に制御部90は、S402に進む。ここで、給紙トレイ15が移動していなくとも(S402:N)、S404に進むが、この第3の場合においては、給紙トレイ15は一度操作されている、つまり、給紙トレイ移動フラグメモリ93Cにはフラグとして「1」が記憶されているので、制御部90は、肯定判断する(S404:Y)。次にS408に進み、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bに「0」が記憶されているか否かの判断をする(S408)。第3の場合においては、給紙トレイ15が二度操作されて、装着位置にある、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bのフラグに「0」が記憶されるので、S408において制御部90は肯定判断をする(S408:Y)。そして、制御部90は、タイマカウンタ95のカウントが60秒を経過するまで、ユーザによる画像記録再開の指示を待つ(S410:N、S412:N)。
【0126】
そして、制御部90は、ユーザによる画像記録再開の指示を受けると(S412:Y)、キャップセンサ140がOFFを示す信号を制御部90に出力しているか否かの判断をする(S414)。第3の場合においては、タイマカウンタ95によるカウントの開始から10秒後に行われるキャッピング動作が完了していない、つまりキャップセンサ140はONを示す信号を制御部90に出力している。よって、S414においては、制御部90は、否定判断(S414:Y)をし、図9のフローチャートに示すS102に戻る。
【0127】
次に、S400、S410においてタイマカウンタ95によるカウントの開始から60秒経過した場合(S400:Y、S410:Y)について説明する。タイマカウンタ95によるカウントの開始から60秒経過すると、制御部90は、キャップセンサがOFFを示す信号を制御部90に出力しているか否かの判断をする(S416)。上述したように、第3の場合は、キャップセンサ140は制御部90にONを示す信号を出力しているので、制御部90はS414において否定判断をする(S416:N)。次に、記録ヘッド21のキャッピングを完了し(S418)、S420に進む。
【0128】
第3の場合においては、給紙トレイ15が、非装着位置から装着位置に位置した状態で60秒経過した場合なので、給紙トレイ15が移動していなくとも(S420:N)、S422に進み、今までに給紙トレイ15が移動されている、つまり、給紙トレイ移動フラグメモリ93Cのフラグに「1」が記憶されているので、S422において制御部90は肯定判断をする(S422:Y)。そして、S426に進み、給紙トレイ15が装着位置に位置する、つまり、給紙トレイ位置フラグメモリ94Bには「0」が記憶されているため、S426において制御部90は、肯定判断をし(S426:Y)、次に、制御部90は、ユーザによる画像記録再開の指示を待つ(S428:N)。そして、制御部90はユーザによる画像記録再開の指示を受けると(S428:Y)、図9フローチャートに示すS100に戻る。なお、S414又はS428と、S100における制御部90の動作は、本発明のキャップ解除手段の一例である。
【0129】
<本実施形態の作用効果>
上述したように、制御部90は、タイマカウンタ95による時間のカウント開始から10秒以内に、給紙トレイ15が移動していないと判断したら、キャッピング動作の開始を10秒後に設定する。これにより、記録ヘッド21のノズル26面の表面の乾燥を防止する。一方で、制御部90は、タイマカウンタ95による時間のカウント開始から10秒以内に、給紙トレイ15が移動したと判断したら、キャッピングの動作の開始を60秒後に設定する。よって、本発明の実施形態である複合機10は、キャッピング動作の開始を10秒後から60秒後に設定することで、キャッピングまでの時間を延長する。つまり、この延長された時間(60秒)内にユーザが画像記録の再開の指示をすれば、キャップアウトの時間を削減することができるので、画像記録が迅速に再開される。
【0130】
さらに、キャッピング動作が開始してキャッピング動作が終了、つまり、ノズル26面がキャップ61に覆われると、制御部90は、給紙トレイ15が移動して、且つ給紙トレイ15が装着位置に位置しない限り、キャップアウトをしない。換言すれば、制御部90は、給紙トレイ15が移動して、且つ給紙トレイが装着位置に位置すると、キャップアウトを行う。これにより、ユーザによって給紙トレイ15が移動されない、つまり、用紙Pが給紙トレイ15に補充されず、画像記録の再開の指示がされたとしても、制御部90は、キャップアウトしない。したがって、給紙トレイ15に用紙Pが補充されずに、キャップアウトをすることによりノズル26面の表面が乾燥してしまうという事態を防止することができる。
【0131】
さらに、キャッピング動作が終了して、給紙トレイ15が移動されて、且つ給紙トレイ15が装着位置に位置すると、制御部90は、記録ヘッド21を有するキャリッジ23を移動開始位置に移動させておく。この処理は、具体的にはS414またはS428での肯定判断後のS100の処理である。この移動開始位置とは、記録ヘッド21からインクを吐出する際の、キャリッジ23が移動を開始する位置である。したがって、制御部90は、記録ヘッド21を有するキャリッジ23が移動開始位置に移動させるので、画像記録の再開のときに、キャリッジ23の移動のための時間を削減でき、より一層画像記録の再開を迅速に行うことが出来る。
【0132】
さらに、キャッピング動作中、つまりキャッピング動作の開始から終了までの間に給紙トレイ15が移動されると、制御部90は、キャッピング動作を中断する。そして、中断後は、制御部90は、移動開始位置にキャリッジ23を移動させる。また、制御部90は、キャッピング動作の開始を60秒後に設定する。そして、キャッピング動作が中断されると、制御部90は、キャップ61を記録ヘッド21から離間させるためにクック動作やキャップ下降動作を開始する。つまり、例え10秒後のキャッピング動作中に、給紙トレイ15が移動されたとしても、キャッピング動作を60秒後に延長する。よって、この延長された時間(60秒)内にユーザが画像記録の再開の指示をすれば、キャップアウトの時間を削減することができるので、画像記録が迅速に再開される。また、制御部90は、キャッピング動作の中断後は、移動開始位置にキャリッジ23を移動させるので、画像記録の再開のときに、キャリッジ23の移動のための時間を削減できるので、より一層画像記録の再開を迅速に行うことが出来る。
【0133】
さらに、画像データが高画質記録を示している場合は、制御部90は、10秒後に強制的にキャッピング動作を開始させて、キャッピング動作を終了させる。これにより、高画質記録時に、ノズル26面の表面が乾燥して、画質が低下するといったことを抑制することができる。
【0134】
<変形例>
本実施形態においては、制御部90による、画像データ中の用紙サイズと給紙トレイ15中の用紙サイズとが合致するか否かの判断を、画像データ中の用紙サイズと、キャリッジ23に設けられる不図示のメディアセンサの出力結果とによって行った。しかし、当該判断はこれに限らない。例えばユーザがPCなどの外部機器から、給紙トレイ15内に載置される用紙サイズを複合機10に記憶させておく。つまり、制御部90は、画像データ中の用紙サイズと給紙トレイ15中の用紙サイズとが合致するか否かの判断を、画像データが入力された場合に、画像データに含まれる用紙サイズと、複合機10に記憶された用紙サイズとを照合して行ってもよい。なお、この複合機10に記憶される用紙サイズと、入力される画像データに含まれる用紙サイズとの照合によって画像データ中の用紙サイズと給紙トレイ15中の用紙サイズとが合致するか否かの判断する制御部90の動作は、本発明の有無検知手段の一例である。
【0135】
本実施形態においては、記録ヘッド21を有するキャリッジ23の移動開始位置を廃インクトレイ42上の位置としたが、これに限らない。例えば、画像データに従って、用紙Pに対する最初のインクの吐出開始位置よりも、インクを吐出するキャリッジ23の走査向きの上流側に所定距離離れた位置であってもよい。所定距離としては、例えば、キャリッジ23の加速距離が挙げられる。
【0136】
本実施形態においては、キャップ61の移動はASFモータ202の正逆回転により実現されたが、これに限らない。例えば、キャリッジ23の当接片25と当接して姿勢変化する被当接部材が、保守機構60に設けられ、当該被当接部材の姿勢変化に連動して、キャップ61の移動が実現されてもよい。
【0137】
本実施形態においては、キャップ61が当接位置にあるか否かの検知は、光センサを含むキャップセンサによって実現されたが、これに限らない。例えば、ASFロータリーエンコーダ120によって検知されるASFモータ202の回転量によって実現されてもよい。この場合、制御部90は、ASFモータ202の正回転の回転量がある所定の回転量になった場合に、キャップ61が当接位置にあると検知する。また、制御部90は、ASFモータ202の逆回転の回転量がある所定の回転量になった場合に、キャップ61が離間位置にあると検知する。
【0138】
本実施形態では、キャップ処理からメイン処理に移行する際は、ユーザによる画像記録再開の指示がされてから移行したが、これに限らない。例えば、給紙トレイ15が二度操作されて、給紙トレイ位置フラグ94Bのフラグが「0」に記憶された段階で、メイン処理に移行しても良い。具体的には、図10のフローチャートに示されるS220、図12のフローチャートに示されるS412、S428を省略してもよい。S220を省略する場合は、S222も省略する。そして、S216において制御部90が肯定判断(S216:Y)した場合に、S104に移行する。S412を省略する場合は、S410も省略する。そして、S408において制御部90が肯定判断(S408:Y)した場合に、S414に移行する。S428を省略した場合には、S426において制御部90が肯定判断(S426:Y)をした場合に、S100に移行する。例えば、給紙トレイ15が二度操作されて、給紙トレイ位置フラグ94Bのフラグが「0」に記憶された段階で、メイン処理に移行して、画像記録を再開すると、ユーザによる画像記録の再開の指示を待つことがないため、より迅速に画像記録を再開することができる。
【符号の説明】
【0139】
10 ・・・複合機
15 ・・・給紙トレイ
21 ・・・記録ヘッド
22 ・・・プラテン
23 ・・・キャリッジ
26 ・・・ノズル
31 ・・・給紙ローラ
60 ・・・保守機構
61 ・・・キャップ
90 ・・・制御部
95 ・・・タイマカウンタ
100・・・トレイセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を載置可能であり、装着位置及び非装着位置に移動可能な給紙トレイと、
前記給紙トレイが前記装着位置に位置している状態で、前記給紙トレイに載置される被記録媒体を給送方向に沿って給送する給送手段と、
前記給送手段によって給送される被記録媒体に対して、画像データに基づいてインクを吐出するノズル面を有し、当該ノズル面からインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドと、
前記給紙トレイが前記装着位置に位置しているか又は前記非装着位置に位置しているかを検知するトレイ検知手段と、
前記トレイ検知手段によって前記給紙トレイが前記装着位置に位置している状態、及び前記非装着位置に位置している状態のうち、いずれか一方の状態から他方の状態への遷移を検知する遷移検知手段と、
前記ノズル面を覆うための当接位置と、前記ノズル面から離間する離間位置と間で移動可能なキャップと、
前記キャップが前記当接位置から前記離間位置に移動したことを検知するキャップ検知手段と、
前記当接位置から前記離間位置への移動が前記キャップ検知手段によって検知されたときからの経過時間を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測される第1時間の経過後に、又は前記第1時間よりも長い第2時間の経過後に、前記キャップに前記ノズル面を覆わせるキャップ動作を実行するキャップ動作手段と、
前記第1時間内に前記遷移検知手段によって前記遷移が検知された場合に、前記キャップ動作手段に前記キャップ動作の実行を前記第2時間後に行わせ、前記第1時間内に前記遷移検知手段によって前記遷移が検知されなかった場合に、前記キャップ動作手段に前記キャップ動作の実行を前記第1時間後に行わせるキャップ処理を実行する制御手段と、を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記キャップ検知手段は、前記キャップが前記離間位置から前記当接位置に移動したことを検知するものであり、
前記キャップをノズル面から離間させるキャップ解除動作を実行するキャップ解除手段、を備え、
前記制御手段は、前記離間位置から前記当接位置への移動が前記キャップ検知手段によって検知された後に、前記遷移検知手段によって前記遷移が検知された場合に、前記キャップ解除手段に前記キャップ解除動作を実行させることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドは、前記給送方向と直交する主走査方向に往復移動可能であり、
前記記録ヘッドから被記録媒体へインクを吐出する際の、前記主走査方向における前記記録ヘッドの移動開始位置を決定する決定手段、を備え、
前記キャップは、給送される被記録媒体の通過領域から前記主走査方向において外れるキャップ動作位置に配置されており、
前記制御手段は、前記キャップ検知手段によって前記キャップが前記離間位置から前記当接位置に移動したことが検知された後に、前記遷移検知手段によって前記遷移が検知された場合に、前記記録ヘッドを前記キャップ動作位置から前記移動開始位置へ移動させることを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
実行されている前記キャップ動作を中断する中断手段、を備え、
前記制御手段は、前記第1時間後に前記キャップ動作を実行している間に、前記遷移検知手段によって前記遷移が検知されるときに、前記中断手段によって前記キャップ動作を中断させ、前記第2時間後に前記キャップ動作を実行させることを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記キャップ動作が中断された後に、前記移動開始位置に前記記録ヘッドを移動させることを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記画像データが、所定の解像度よりも高い解像度を示す画像データであるか否かを検知する画質検知手段、を備え、
前記制御手段は、前記画質検知手段によって高い解像度を示す画像データであることが検知された場合に、前記第1時間後に前記キャップ動作を実行させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記給紙トレイに画像を記録可能な被記録媒体が有るか否かを検知する有無検知手段と、
前記有無検出手段によって被記録媒体が無いと検知された場合に、前記制御手段は、前記キャップ処理を実行することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記計測手段は、一枚の被記録媒体に対する画像の記録が終了したときからの経過時間を計測することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−71407(P2013−71407A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214024(P2011−214024)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】