説明

画像記録装置

【課題】記録後の記録媒体が順次積層される場合に、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着することを抑制する。
【解決手段】積層重量算出部64が、排出トレイに排出された印刷済みの用紙について、当該用紙上に積層された一又は複数の用紙の重量である積層重量を算出する。吐出量算出部63が、用紙を分割した各ブロックにおけるインク吐出量のうち最大のインク吐出量を算出する。判断部67が、排出トレイに排出された用紙のそれぞれについて、積層重量により加えられる押圧力によって用紙に吐出されたインクが他の用紙に付着されるか否かを最大のインク吐出量に基づいて判断する。判断部67は、用紙に吐出されたインクが他の用紙に付着されると判断したとき排出禁止フラグをONにする。搬送制御部65は、排出禁止フラグがONとなっている排出トレイに次の用紙が排出されないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に向けて液体を吐出することによって、記録媒体に画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいて印刷速度が速くなると、先に排出された用紙に着弾したインクが乾燥する前に、先に排出された用紙上に次の用紙が排出されることがある。この場合、後から排出された用紙に先に排出された用紙上のインクが付着(いわゆる裏移り)されやすくなる。これを防止するため、各用紙の単位面積当りのインク吐出量から用紙上のインクの乾燥時間を算出し、乾燥時間が経過した後に次の用紙を排出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−323973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷速度が速くなると、単位時間あたりに排出される用紙の枚数が多くなる。この場合、先に排出された用紙上のインクがある程度乾燥していても、積載された用紙の重みにより発生した圧力により、先に排出された用紙上のインクが他の用紙に付着することがある。
【0005】
本発明の目的は、記録後の記録媒体が順次積層される場合に、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着することを抑制することができる画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像記録装置は、記録媒体に向けて液体を吐出することによって、記録媒体に画像を記録する記録手段と、前記記録手段により画像が記録される記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録手段により画像が記録された後に前記搬送手段によって搬送される記録媒体の排出先であって、排出された記録媒体が順次積層される1以上の排出トレイと、記録媒体に記録される画像に係る画像データを記憶する画像データ記憶手段と、前記画像データに基づいて、前記記録手段により記録媒体に吐出される単位面積当りの液体の吐出量を算出する吐出量算出手段と、前記1以上の排出トレイ上に存在する記録媒体について、当該記録媒体の上に積層された一又は複数の記録媒体の重量である積層重量を算出する積層重量算出手段と、前記吐出量算出手段により算出された記録媒体について単位面積当りの液体の吐出量及び前記積層重量算出手段により算出された前記積層重量に基づいて、前記積層重量により加えられる押圧力によって各記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されることを判断する判断手段と、前記記録手段及び前記搬送手段を制御する制御手段とを備えている。前記制御手段は、前記1以上の排出トレイ上に存在する記録媒体について、前記判断手段によって当該記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されると判断された場合、当該記録媒体が存在する前記1以上の排出トレイ上に記録媒体が排出されないように前記搬送手段を制御する。
【0007】
本発明によると、積層重量で発生する圧力により記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着すると判断されると、次の記録媒体がトレイ上に排出されるのが制限されるため、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着するのを抑制することができる。
【0008】
本発明において、前記吐出量算出手段は、記録媒体に画定される複数のブロックのそれぞれについて単位面積当りの液体の吐出量を算出し、前記判断手段は、前記吐出量算出手段により算出された前記ブロックのそれぞれについて単位面積当りの液体の吐出量に基づいて、前記積層重量により加えられる押圧力によって記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されることを判断することが好ましい。これによると、判断をブロック単位で行うため、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着するか否かを迅速に判断することができる。
【0009】
また、本発明において、前記積層重量算出手段は、前記1以上の排出トレイ上に記録媒体が存在しているか否かを検知する記録媒体センサを含んでおり、前記判断手段は、記録媒体が前記1以上の排出トレイ上に排出されないように前記制御手段が前記搬送手段を制御した後に、当該制御に係る前記1以上の排出トレイ上に記録媒体が存在していないことを前記記録媒体センサが検知したとき、前記判断を解除することが好ましい。これによると、例えばユーザがトレイから記録媒体を取り除いた後に、画像の記録を迅速に再開させることができる。
【0010】
さらに、本発明において、前記判断手段は、記録媒体が前記1以上の排出トレイ上に排出されないように前記制御手段が前記排出手段を制御した後に、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されると判断した記録媒体が記録されてから所定時間が経過すると、前記判断を解除することが好ましい。これによると、記録媒体の排出が制限されている間に記録媒体上の液体が乾燥したときには、制限が解除されて記録媒体の排出が再開されるようにすることができるため、記録のスループットが低下するのを抑制することができる。
【0011】
加えて、本発明において、前記1以上の排出トレイは複数の排出トレイからなり、前記制御手段は、前記複数の排出トレイ上に存在する記録媒体について、前記判断手段によって当該記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されると判断された場合、次の記録媒体が他の前記複数の排出トレイに排出されるように前記搬送手段を制御することが好ましい。これによると、記録のスループットが低下するのを防止することができる。
【0012】
また、本発明において、記録媒体に画像が記録されてからの経過時間を算出する経過時間算出手段を有し、前記判断手段は、前記判断を行う際、前記経過時間算出手段により算出された経過時間が短いほど、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されやすくなるよう判断することが好ましい。これによると、経過時間を考慮することで、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着するか否かを判断を正確に行うことができる。このため、記録のスループットが低下するのを抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明において、記録媒体の種類を把握する記録媒体把握手段を有し、前記判断手段は、前記記録媒体把握手段により把握された記録媒体の種類に基づいて前記判断を行うことが好ましい。これによると、記録媒体の材質により液体の浸透度合いが異なり、浸透しやすい程裏移りがしにくくなることを考慮することで、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着するか否かを判断を正確に行うことができる。このため、記録のスループットが低下するのを抑制することができる。
【0014】
加えて、本発明において、前記吐出量算出手段は液体の種類ごとに前記液体の吐出量を算出し、前記判断手段は、液体の種類ごとに算出された前記液体の吐出量に基づいて前記判断を行うことが好ましい。これによると、液体の種類による浸透度合いの違いを考慮することで、を考慮することで、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着するか否かを判断を正確に行うことができる。このため、記録のスループットが低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、積層重量で発生する圧力により記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着すると判断されると、次の記録媒体がトレイ上に排出されるのが制限されるため、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態によるインクジェットプリンタの概略側面図である。
【図2】図1に示す制御装置の機能ブロック図である。
【図3】図1に示すインクジェットプリンタの印刷動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、搬送機構20と、搬送機構20によって搬送された用紙Pに、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインク滴をそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド2と、ガイド31と、ニップローラ32、33と、排出機構45と、4つの排出トレイ55a〜55dと、制御装置16とを有している。なお、搬送機構20、ガイド31、ニップローラ32、33及び排出機構45が、搬送手段を構成している。
【0019】
搬送機構20は、2つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8と、搬送ベルト8のループ内において4つのインクジェットヘッド2と対向するように配置されたプラテン19とを有している。ベルトローラ6は、駆動ローラであって、図示しない搬送モータから駆動力が与えられることで回転する。ベルトローラ7は、従動ローラであって、ベルトローラ6の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って回転する。搬送ベルト8の外周面に載置された用紙Pは、図1右方へと搬送される。
【0020】
インクジェットヘッド2の下面は、インク滴が吐出される複数の吐出口が配列された吐出面となっている。プラテン19は、搬送ベルト8を内周側から支持する。これにより、搬送ベルト8の上側ループの外周面とインクジェットヘッド2の吐出面とが対向しつつ平行になり、画像形成に適した所定間隔の隙間が形成されている。搬送ベルト8によって搬送されてきた用紙Pが4つのインクジェットヘッド2のすぐ下方を通過する際に、各インクジェットヘッド2から用紙Pの上面に向けて各色のインク滴が順に吐出され、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。画像が形成された用紙Pは、搬送機構20によってさらに図1右方に搬送され、ガイド31に到達する。
【0021】
ガイド31は、搬送機構20によって搬送されている画像が形成された用紙Pを排出機構45まで案内する。ニップローラ32、33は、ガイド31に案内されている用紙Pを挟持しつつ駆動することによって、当該用紙Pに搬送力を与えている。これにより、用紙Pは、ガイド31に沿って反転しつつ図1中左方へと搬送される。
【0022】
排出機構45は、ガイド31を、排出トレイ55a〜55dに対応するガイド51a〜51dのいずれかと接続する。ガイド31に案内されつつ搬送されてきた用紙Pは、排出機構45によってガイド31に接続されたガイド51a〜51dのいずれかに案内されると共に、ニップローラ52a〜52dによって図1中左方にさらに搬送される。
【0023】
4つの排出トレイ55a〜55dは、鉛直方向に配列されている。ガイド51a〜51dに案内されつつ搬送されてきた用紙Pは、対応する排出トレイ55a〜55dに排出される。このとき、画像が印刷された印刷面が(鉛直方向に関する)下方を向いた状態で、用紙Pが排出トレイ55a〜55dに排出される。
【0024】
4つの排出トレイ55a〜55dのそれぞれと対向する位置に用紙センサ56a〜56dが配置されている。用紙センサ56a〜56dは、対向する排出トレイ55a〜55dに印刷済みの用紙Pが存在するか否かを検知する。
【0025】
次に、図2を参照しつつ、制御装置16について説明する。制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置16を構成する各機能部は、これらハードウェアとEEPROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図2に示すように、制御装置16は、印刷指令記憶部61と、ヘッド制御部62と、吐出量算出部63と、積層重量算出部64と、搬送制御部65と、経過時間算出部66と、判断部67とを有している。
【0026】
印刷指令記憶部61(記録媒体把握手段を含む)は、クライアント端末から送信された印刷指令を記憶する。印刷指令には、用紙Pに印刷されるべき画像に係る画像データ、印刷枚数、用紙サイズ、用紙Pの種類(例えば、普通紙、上質紙、フォト用紙)などが含まれている。画像データは、画像データ記憶部61aに記憶される。なお、クライアント端末からの印刷指令を受信する受信装置は図示を省略する。
【0027】
ヘッド制御部62は、画像データ記憶部61aに記憶された画像データに係る画像が用紙Pに印刷されるように、各インクジェットヘッド2からのインク吐出を制御する。
【0028】
吐出量算出部63は、画像データ記憶部61aに記憶された画像データに基づいて、インクの種類(ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)ごとに、各用紙Pについて画定される複数のブロック(例えば、紙面全体を2×3の領域に分割した計6個のブロック)のそれぞれについて、インクジェットヘッド2から吐出される単位面積当りのインク吐出量を算出すると共に、算出した各ブロックのインク吐出量の最大値を最大インク吐出量xに決定する。
【0029】
積層重量算出部64は、排出トレイ55a〜55d上に排出された印刷済みの用紙Pのそれぞれについて、当該用紙P上に積層された一又は複数の用紙Pの重量である積層重量を算出する。なお、積層重量算出部64は、各用紙P上に排出された他の用紙Pの数をカウントすると共に、カウントした値に用紙Pの重量を乗ずることで積層重量を算出する。また、積層重量算出部64は、排出禁止フラグ(後述)がONからOFFに切り替わったとき、当該排出禁止フラグに対応する排出トレイ55a〜55d上に排出されたすべての用紙Pに関する積層重量をリセットする。
【0030】
搬送制御部65は、用紙Pが所定の搬送速度でインクジェットヘッド2の下方を通過するように搬送機構20を制御すると共に、画像が印刷された用紙Pが排出トレイ55a〜55dのいずれかに排出されるように排出機構45を制御する。また、判断部67によって排出トレイ55a〜55dの排出禁止フラグ(後述)がONとなっているとき、搬送制御部65は、排出禁止フラグがOFFとなっている他の排出トレイ55a〜55dがあれば、当該他の排出トレイ55a〜55dに次の用紙Pが排出されるように排出機構45を制御する。また、搬送制御部65は、全ての排出トレイ55a〜55dの排出禁止フラグがONとなっていれば、用紙Pが搬送されないように搬送機構20及び排出機構45を制御する。
【0031】
経過時間算出部66は、排出トレイ55a〜55d上に排出された用紙Pのそれぞれについて、用紙Pに画像が印刷されてからの経過時間を算出する。
【0032】
判断部67は、排出トレイ55a〜55dに排出された用紙Pのそれぞれについて、吐出量算出部63が決定した最大インク吐出量x、経過時間算出部66が算出した経過時間、印刷指令記憶部61に記憶された用紙Pの種類、及び、積層重量算出部64が算出した積層重量に基づいて、積層重量により加えられる押圧力によって用紙Pに吐出されたインクが他の用紙P(本実施形態においては、下方に隣接する用紙P)に付着されるか否かを判断する。
【0033】
具体的には、判断部67は、排出トレイ55a〜55dに排出された用紙Pのそれぞれについて、インクの種類(ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)ごとに、積層重量により加えられる押圧力によって用紙Pに吐出されたインクが他の用紙Pに付着される限界積層枚数yを算出する。限界積層枚数yは、y=α/xで算出される。係数αは、インクの種類、経過時間及び浸透度に係る用紙Pの種類から、予め記憶されたテーブルを参照して決定される。なお、このテーブルは、インクの粘度が低くなるにつれて係数αが大きくなるように、経過時間が短くなるにつれて係数αが小さくなるように、用紙Pの浸透性が高くなるにつれて係数αが大きくなるように決定されている。判断部67は、用紙Pが印刷される直前に、排出トレイ55a〜55dに排出された用紙Pのそれぞれについて、限界積層枚数yを算出し、積層重量を用紙Pの一枚あたりの重量で除した積層枚数y’が、算出した限界積層枚数y以上となったときに、用紙Pに吐出されたインクが他の用紙Pに付着されると判断する。
【0034】
判断部67は、用紙Pに吐出されたインクが他の用紙Pに付着されると判断すると、当該用紙Pが排出されている排出トレイ55a〜55dについて、排出禁止フラグをONにする。上述したように、搬送制御部65は、排出禁止フラグがONとなっている排出トレイ55a〜55dについては、用紙Pが排出されないように排出機構45を制御する。
【0035】
判断部67は、排出禁止フラグをONとしてから用紙Pが完全に乾燥するのに要する時間である所定時間が経過すると、当該排出禁止フラグに係る排出トレイ55a〜55dに排出された用紙Pが全て乾燥したと判断し、当該排出禁止フラグをOFFにする。また、判断部67は、排出禁止フラグをONとした後に、当該排出禁止フラグに係る排出トレイ55a〜55dに対向する用紙センサ56a〜56dが印刷済みの用紙Pの存在を検知しなくなったとき、言い換えれば、ユーザが当該排出トレイ55a〜55dから印刷済みの用紙Pを取り出したときは、当該排出トレイ55a〜55dの排出禁止フラグをOFFにする。これにより、当該排出トレイ55a〜55dに対する次の用紙Pの排出が可能となる。
【0036】
以下、図3を参照しつつ、インクジェットプリンタ1の印刷動作について説明する。インクジェットプリンタ1は、クライアント端末から送信された印刷指令を受信したときに印刷動作を開始する。図3に示すように、印刷動作が開始されると、吐出量算出部63は、画像データ記憶部61aに記憶された画像データに基づいて、インクの種類ごとに最大インク吐出量xを決定する。そして、判断部67が、排出トレイ55a〜55dに排出された用紙Pのそれぞれについて、最大インク吐出量x、経過時間及び用紙Pの種類に基づいてインクの種類ごとに限界積層枚数yを算出する。さらに、判断部67は、積層枚数y’が、算出した限界積層枚数y以上となっていれば、用紙Pに吐出されたインクが他の用紙Pに付着されていると判断して、排出禁止フラグをONにする(S101)。
【0037】
次に、判断部67は、排出トレイ55a〜55dについて、排出禁止フラグをONとしてから所定時間が経過しているか否かを判断する(S102)。判断部67は、所定時間が経過していると判断したときは(S102:YES)、当該排出トレイ55a〜55dに係る排出禁止フラグをOFFにする(S103)。さらに、判断部67は、排出禁止フラグに係る排出トレイ55a〜55dに対向する用紙センサ56a〜56dが印刷済みの用紙Pを検知しなくなったか否かを判断する(S104)。判断部67は、用紙センサ56a〜56dが印刷済みの用紙Pを検知しなくなったと判断したときは(S104:YES)、当該排出トレイ55a〜55dに係る排出禁止フラグをOFFにする(S105)。
【0038】
搬送制御部65は、排出禁止フラグがOFFとなっている排出トレイ55a〜55dが存在するか否かを判断する(S106)。搬送制御部65は、排出禁止フラグがOFFとなっている排出トレイ55a〜55dが存在していないと判断すれば(S106:NO)、S102以降の処理を繰り返す。搬送制御部65は、排出禁止フラグがOFFとなっている排出トレイ55a〜55dが存在していると判断すれば(S106:YES)、用紙Pの搬送が開始されるように搬送機構20を制御する。また、ヘッド制御部62が、画像データ記憶部61aに記憶された画像データに係る画像が当該用紙Pに印刷されるように、各インクジェットヘッド2からのインク吐出を制御する。さらに、搬送制御部65は、当該用紙Pが、排出禁止フラグがOFFとなっている排出トレイ55a〜55dに排出されるように、排出機構45を制御する(S107)。以上で、図3のフローチャートを終了する。
【0039】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ1によると、積層重量で発生する圧力により用紙Pに吐出されたインクが他の用紙Pに付着すると判断されると、次の用紙Pが当該排出トレイ55a〜55d上に排出されるのが禁止されるため、用紙Pに吐出されたインクが他の用紙Pに付着するのを抑制することができる。
【0040】
また、吐出量算出部63が、用紙Pに画定される複数のブロックのそれぞれについて算出した単位面積当りのインク吐出量の最大値である最大インク吐出量xを決定し、判断部67が、最大インク吐出量xに基づいて限界積層枚数yを算出するため、用紙Pに吐出されたインクが他の用紙Pに付着するか否かを迅速に判断することができる。
【0041】
さらに、判断部67は、排出禁止フラグをONとした後に、当該排出禁止フラグに係る排出トレイ55a〜55dに対向する用紙センサ56a〜56dが印刷済みの用紙Pの存在を検知しなくなったとき、当該排出トレイ55a〜55dの排出禁止フラグをOFFにするため、ユーザがトレイから記録媒体を取り除いた後に、印刷を迅速に再開させることができる。
【0042】
加えて、判断部67は、排出トレイ55a〜55dについて、排出禁止フラグをONとしてから所定時間が経過すると当該排出禁止フラグをOFFにするため、用紙Pの排出が禁止されている間に用紙P上のインクが乾燥したときには印刷が再開され、印刷のスループットが低下するのを抑制することができる。
【0043】
また、判断部67によって排出トレイ55a〜55dの排出禁止フラグがONとなっているとき、搬送制御部65は、排出禁止フラグがOFFとなっている排出トレイ55a〜55dに次の用紙Pが排出されるように排出機構45を制御する。これによると、印刷のスループットが低下するのを防止することができる。
【0044】
さらに、判断部67は、用紙Pに画像が印刷されてからの経過時間が短いほど、係数αを小さくして用紙Pに吐出されたインクが他の用紙Pに付着されやすいと判断するため、当該判断を正確に行うことができる。これにより、印刷のスループットが低下するのを抑制することができる。これは、用紙Pに画像が印刷されてからの経過時間が長くなると用紙Pに吐出されたインクが乾燥し、他の用紙Pにインクが付着しにくくなることを考慮したものである。
【0045】
加えて、判断部67は、用紙Pにインクが浸透しやすい程裏移りがしにくくなることを考慮し、用紙Pの浸透性が高くなるにつれて、係数αを大きくして用紙Pに吐出されたインクが他の用紙Pに付着されにくくなるように判断するため、当該判断を正確に行うことができる。これにより、印刷のスループットが低下するのを抑制することができる。
【0046】
加えて、判断部67が、インクの粘度が低くなるにつれて、係数αを大きくして用紙Pに吐出されたインクが他の用紙Pに付着されにくくなるように判断するため、当該判断を正確に行うことができる。これにより、印刷のスループットが低下するのを抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態では、限界積層枚数yを算出するための係数αをテーブルで決定する構成となっているが、最大インク吐出量xや経過時間などのパラメータの少なくとも一部が、限界積層枚数yを算出する数式に組み込まれていてもよい。
【0048】
また、上述の実施形態においては、判断部67が、最大インク吐出量xに基づいて限界積層枚数yを算出する構成であるが、用紙P全体に吐出された吐出量に基づいて限界積層枚数yを算出する構成であってもよい。
【0049】
さらに、上述の実施形態においては、判断部67が、排出禁止フラグをONとした後に、当該排出禁止フラグに係る排出トレイ55a〜55dに対向する用紙センサ56a〜56dが印刷済みの用紙Pの存在を検知しなくなったとき、当該排出トレイ55a〜55dの排出禁止フラグをOFFにする構成であるが、ユーザがトレイから記録媒体を取り除いたことを検知する他の手段を用いて排出禁止フラグをOFFにする構成であってもよい。
【0050】
加えて、上述の実施形態においては、判断部67が、排出トレイ55a〜55dについて、排出禁止フラグをONとしてから所定時間が経過すると当該排出禁止フラグをOFFにする構成であるが、所定時間が経過しても当該排出禁止フラグをOFFにしない構成であってもよい。
【0051】
また、上述の実施形態においては、判断部67によって排出トレイ55a〜55dの排出禁止フラグがONとなっているとき、搬送制御部65は、排出禁止フラグがOFFとなっている排出トレイ55a〜55dに次の用紙Pが排出されるように排出機構45を制御する構成であるが、用紙Pの搬送が停止されるように搬送機構20を制御する構成であってもよい。
【0052】
また、上述の実施形態においては、搬送機構20に用紙Pの給紙機構が含まれていないが、搬送機構20に給紙機構が含まれていてもよい。給紙機構については、例えば公知の給紙トレイ及び給紙ローラなどが該当する。そして、判断部67によって排出トレイ55a〜55dの排出禁止フラグがONとなっているとき、搬送制御部65が給紙機構による用紙Pの給紙をしない(給紙を停止)ように搬送機構20を制御する構成であってもよい。
【0053】
さらに、上述の実施形態においては、判断部67が、経過時間、用紙Pの種類及びインクの種類によって係数αを変化させる構成であるが、これらの一部のみで係数αを変化させる構成であってもよい。
【0054】
また、上述の実施形態においては、吐出量算出部63はインクの種類毎に最大インク吐出量xを算出し、判断部67が当該最大インク吐出量xに基づいて限界積層枚数yを算出する構成であるが、全ての種類のインクについての最大インク吐出量に基づいて限界積層枚数を算出する構成であってもよい。
【0055】
本発明は、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。また、レーザープリンタにも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 インクジェットプリンタ
2 インクジェットヘッド
16 制御装置
20 搬送機構
45 排出機構
55a〜55d 排出トレイ
56a〜55d 用紙センサ
61 印刷指令記憶部
61a 画像データ記憶部
62 ヘッド制御部
63 吐出量算出部
64 積層重量算出部
65 搬送制御部
66 経過時間算出部
67 判断部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に向けて液体を吐出することによって、記録媒体に画像を記録する記録手段と、
前記記録手段により画像が記録される記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録手段により画像が記録された後に前記搬送手段によって搬送される記録媒体の排出先であって、排出された記録媒体が順次積層される1以上の排出トレイと、
記録媒体に記録される画像に係る画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
前記画像データに基づいて、前記記録手段により記録媒体に吐出される単位面積当りの液体の吐出量を算出する吐出量算出手段と、
前記1以上の排出トレイ上に存在する記録媒体について、当該記録媒体の上に積層された一又は複数の記録媒体の重量である積層重量を算出する積層重量算出手段と、
前記吐出量算出手段により算出された記録媒体について単位面積当りの液体の吐出量及び前記積層重量算出手段により算出された前記積層重量に基づいて、前記積層重量により加えられる押圧力によって各記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されることを判断する判断手段と、
前記記録手段及び前記搬送手段を制御する制御手段とを備えており、
前記制御手段は、
前記1以上の排出トレイ上に存在する記録媒体について、前記判断手段によって当該記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されると判断された場合、当該記録媒体が存在する前記1以上の排出トレイ上に記録媒体が排出されないように前記搬送手段を制御することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記吐出量算出手段は、記録媒体に画定される複数のブロックのそれぞれについて単位面積当りの液体の吐出量を算出し、
前記判断手段は、前記吐出量算出手段により算出された前記ブロックのそれぞれについて単位面積当りの液体の吐出量に基づいて、前記積層重量により加えられる押圧力によって記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されることを判断することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記積層重量算出手段は、前記1以上の排出トレイ上に記録媒体が存在しているか否かを検知する記録媒体センサを含んでおり、
前記判断手段は、記録媒体が前記1以上の排出トレイ上に排出されないように前記制御手段が前記搬送手段を制御した後に、当該制御に係る前記1以上の排出トレイ上に記録媒体が存在していないことを前記記録媒体センサが検知したとき、前記判断を解除することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記判断手段は、記録媒体が前記1以上の排出トレイ上に排出されないように前記制御手段が前記排出手段を制御した後に、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されると判断した記録媒体が記録されてから所定時間が経過すると、前記判断を解除することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像記録装置、
【請求項5】
前記1以上の排出トレイは複数の排出トレイからなり、
前記制御手段は、
前記複数の排出トレイ上に存在する記録媒体について、前記判断手段によって当該記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されると判断された場合、次の記録媒体が他の前記複数の排出トレイに排出されるように前記搬送手段を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
記録媒体に画像が記録されてからの経過時間を算出する経過時間算出手段を有し、
前記判断手段は、前記判断を行う際、前記経過時間算出手段により算出された経過時間が短いほど、記録媒体に吐出された液体が他の記録媒体に付着されやすくなるよう判断することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
記録媒体の種類を把握する記録媒体把握手段を有し、
前記判断手段は、前記記録媒体把握手段により把握された記録媒体の種類に基づいて前記判断を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記吐出量算出手段は液体の種類ごとに前記液体の吐出量を算出し、
前記判断手段は、液体の種類ごとに算出された前記液体の吐出量に基づいて前記判断を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−250391(P2012−250391A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123514(P2011−123514)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】