説明

画像記録装置

【課題】異なる種類の被記録媒体を用いた場合であっても、切断粉の発生を抑制する画像記録装置を提供する。
【解決手段】ロール状の被記録媒体21を搬送する搬送手段3と、被記録媒体21の搬送方向Aと交差する方向に移動しながら被記録媒体21を切断する切断手段10と、切断手段10が被記録媒体21を切断する際に発生する、被記録媒体21の切断粉の量を測定する測定手段40と、測定手段40による切断粉の量の測定結果に応じて、切断手段10の移動速度を制御する制御手段50と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状の被記録媒体をシート状に切断するための切断手段を備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像記録装置として、ロール状の被記録媒体を収容し、記録ヘッドの走査(往復動作)により被記録媒体に画像データを記録して、画像データが記録された被記録媒体をページ毎に切断するものがある。
【0003】
この種の画像記録装置では、画像データが入力されると、被記録媒体がプラテンまで送られ、その上部で記録ヘッドが往復動作を行い、その往復動作により1走査分の画像が被記録媒体に記録される。1走査分の画像が記録された被記録媒体は、搬送ローラによって間欠的に所定のピッチで送られ、その後、再び記録ヘッドの走査により1走査分の画像が記録される。これを繰り返すことで、ページ全体に画像が記録される。画像が記録された被記録媒体の記録済み部が、装置の外部に設けられた排紙部材に案内され、切断手段により切断される。こうしてページ毎に切断された被記録媒体は、排紙部材の下方に設けられたスタック部材に収納される。
【0004】
図5は、上記の一連の動作における切断後の被記録媒体を示す断面図であり、切断面と交差する断面を示している。被記録媒体は、切断手段の刃によって厚み方向(図の上下方向)に押されながら切断される。そのため、切断後の被記録媒体122の切断面122cは、表面側がダレ形状122a、裏面側がバリ形状122bに変形してしまう。その結果、被記録媒体の表面のコート層が剥離したり、裏面のバリ形状122bが剥れ、切断粉が発生したりする。
【0005】
このような切断面の変形を抑制可能な切断装置として、特許文献1には、切断手段の刃先が、先端側の第1の刃先部と、先端側の刃先部に続いて形成され、先端側の刃先部より小さい刃先角の第2の刃先部とを有する切断装置が開示されている。この切断装置によれば、第2の刃先部とプラスチックフィルムとの接触摩擦力を抑えることにより、フィルムの切断面の変形を抑制することができる。
【0006】
しかしながら、上述の画像記録装置の切断手段として、特許文献1に記載の切断装置をに適用したとしても、被記録媒体のコート層の剥離が起こる場合がある。すなわち、画像が記録された被記録媒体121が、図6に示すように、斜めに垂れ下がった状態で切断手段110により切断されると、切断位置付近では、被記録媒体121の表面であるコート層の面が引っ張られた状態になる。そのため、被記録媒体121は、コート層に引張応力が生じた状態で切断され、コート層が剥離してしまう。
【0007】
このような問題に対して、特許文献2には、排紙部材(図6の符号107に相当)上にある被記録媒体の高さを調節する高さ切換部材を備えた画像記録装置が開示されている。この高さ切換え部材により、被記録媒体の切断時に、排紙部材上での被記録媒体の高さを、記録ヘッドと被記録媒体との隙間を保持するためのプラテンの高さよりも高くすることができる。その結果、切断位置付近において、被記録媒体の表面であるコート層の面が引張られた状態で切断されることがなくなる。すなわち、切断時にコート層に引張応力が生じなくなるため、被記録媒体のコート層が剥離せず、正常な切断面を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−246590号公報
【特許文献2】特開2007−160553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の画像記録装置を用い、切断時にコート層に引張応力が生じさせないようにしても、被記録媒体の中には、表面のコート層がもろく、切断時にコート層が剥離して切断粉を発生させてしまうものもある。すなわち、特許文献2に記載の画像記録装置は、そのような被記録媒体に対応できるように構成されておらず、したがって、異なる種類の被記録媒体を用いた場合に、それに応じて切断粉の発生を抑制し、正常な切断面を得ることが困難である。
【0010】
そこで本発明は、異なる種類の被記録媒体を用いた場合であっても、切断粉の発生を抑制する画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明の画像記録装置は、ロール状の被記録媒体を搬送する搬送手段と、被記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動しながら被記録媒体を切断する切断手段と、切断手段が被記録媒体を切断する際に発生する、被記録媒体の切断粉の量を測定する測定手段と、測定手段による切断粉の量の測定結果に応じて、切断手段の移動速度を制御する制御手段と、を有している。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、異なる種類の被記録媒体を用いた場合であっても、切断粉の発生を抑制する画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像記録装置の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】被記録媒体の切断粉の量を測定する紙紛量測定手段の概略斜視図である。
【図3】制御部とその周辺部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の画像記録装置の他の実施形態を概略的に示す部分断面図である。
【図5】従来の画像記録装置における切断後の被記録媒体を示す断面図である。
【図6】従来の画像記録装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の画像記録装置としてのシリアルタイプのインクジェットプリンタの一実施形態を示す概略斜視図である。
【0016】
まず、本実施形態のインクジェットプリンタの構成について説明する。
【0017】
インクジェットプリンタ1は、ロール状の被記録媒体21を搬送する搬送ローラ(搬送手段)3と、レール2に沿って往復運動可能に支持され、搬送ローラ3によって搬送される被記録媒体21に記録を行う記録ヘッド11と、を有している。また、記録ヘッド11と対向する位置には、記録ヘッド11と被記録媒体21とのギャップを保証するとともに、プリンタ本体のシャーシを兼用するプラテン4が配置されている。
【0018】
プラテン4に対して、被記録媒体21の搬送方向Aの下流側には、搬送方向Aと交差する方向に移動する丸刃ユニット(切断手段)10と、丸刃ユニット10の移動経路に沿って配置された固定刃6とが設けられている。丸刃ユニット10は、回転数が変更可能なモータ30によって駆動され、移動速度が可変である。丸刃ユニット10が移動することで、固定刃6の刃先に一致したカットライン23に沿って被記録媒体21を切断することができる。
【0019】
丸刃ユニット10および固定刃6のさらに下流側には、被記録媒体21の、画像が記録された部分(記録済み部)21aを、プリンタ外部へと案内するための排紙部材7が設けられている。本実施形態では、排紙部材7は、丸刃ユニット10によってシート状に切断された記録済み部21aを、排紙部材7よりも下方に配置されたスタック部材(図示せず)に排紙するように案内する。
【0020】
次に、本実施形態のインクジェットプリンタにおいて、被記録媒体が給紙され、スタック部材に排紙されるまでの一連の動作について説明する。
【0021】
まず、被記録媒体21が、給紙手段(図示せず)から給紙され、搬送ローラ3によりプラテン4まで搬送される。そして、プラテン4の上部に配置された記録ヘッド11が、レール2に沿って往復動作を行う。記録ヘッド11の1回の走査(往動または復動)により、画像が被記録媒体21に記録されると、被記録媒体21は、搬送ローラ3により搬送方向Aに間欠的に所定のピッチで搬送される。その後、再び記録ヘッド11が往復動作を行い、1走査分の画像が被記録媒体21に記録される。これを繰り返すことで、ページ全体に画像が記録される。
【0022】
画像記録動作が終了すると、被記録媒体21は搬送ローラ3により所定の切断位置まで搬送される。そのとき、制御部(後述)から出力された切断開始信号を受信することでモータ30が駆動され、丸刃ユニット10が、図で見て左側から右側に向かって、切断後の位置10aまで矢印Bの方向に移動する。これにより、搬送方向Aの下流側にある記録済み部21aが、カットライン23に沿って切断され、被記録媒体21から切り離される。シート状に切断された記録済み部21aは、排紙部材7によりプリンタ外部に案内され、排紙部材7よりも下方に配置されたスタック部材に排紙される。
【0023】
このような構成に加えて、本実施形態のインクジェットプリンタは、被記録媒体の切断時に被記録媒体のコート層から剥離する切断粉(以下、「紙紛」という)の量を測定する紙紛量測定手段を備えている。さらに、インクジェットプリンタは、紙紛測定手段による紙紛量の測定結果に応じて、丸刃ユニット(切断手段)の移動速度を制御する制御部(制御手段)を備えている。これらの構成により、本実施形態では、以下に示すように紙紛の発生を抑制することが可能となる。
【0024】
図2は、本実施形態の紙紛量測定手段を概略的に示す斜視図である。図3は、制御部とその周辺部(丸刃ユニットおよび紙紛量測定手段)の構成を示すブロック図である。
【0025】
紙紛量測定手段40は、丸刃ユニット10の移動経路の端部、つまり固定刃6の端部に設けられた紙紛集積板41と、紙紛集積板41の上方にそれぞれ設けられた発光ダイオード(LED)42およびフォトダイオード43と、を有している。紙紛集積板41は、例えば10mm×10mmの着色した部材からなり、被記録媒体の切断時に発生する紙紛が、紙紛集積板41に落下して付着するようになっている。LED42は、紙紛集積板41上に付着した紙紛に光を照射する光源として機能する。フォトダイオード43は、LED光による紙紛からの反射光を受光する受光手段として機能する。フォトダイオード43の出力信号が紙紛量に依存するため、この出力信号により、被記録媒体の切断時に発生する固有の紙紛量を検知することができる。
【0026】
次に、図1から図3を参照して、測定された紙紛量に応じて丸刃ユニットの移動速度を設定するまでの具体的な方法について説明する。
【0027】
まず、新規に被記録媒体21がインクジェットプリンタ1に投入されたことが制御部50で確認されると、LED42から紙紛集積板(所定領域)41へLED光が照射され、その反射光がフォトダイオード43で検出される。このとき検出された値が、その時点での紙紛集積板41上の汚れや残留紙紛の状態を加味した参照値として、制御部50に記憶される。なお、新規に被記録媒体が投入されたかどうかの確認は、インクジェットプリンタの本体側に被記録媒体が装着されたときに行われる。
【0028】
参照値が得られた後で、被記録媒体21の先端部分の汚れ、折れ等を除去するために、被記録媒体21のプレカットが行われ、それと同時に、被記録媒体21の切断時に発生する紙紛量が測定される。
【0029】
プレカットが開始されると、被記録媒体21は、搬送ローラ3により搬送方向Aに給紙され、例えば被記録媒体先端から5mmの部分が切断される所定の切断位置まで搬送される。そのとき、制御部50から切断開始信号が出力され、丸刃ユニット10を駆動するモータ30が駆動される。そして、丸刃ユニット10および固定刃6による切断が行われ、被記録媒体21の先端から5mmの部分が切断される。
【0030】
このプレカット終了後、LED42から紙紛集積板41へLED光が照射され、紙紛集積板41に付着した被記録媒体の紙紛量に応じた反射光がフォトダイオード43で検出される。このとき検出された値が、被記録媒体の紙紛量に応じた測定値として制御部50に入力され、上述の参照値と比較される。そして、測定値と参照値との差分から、被記録媒体の切断(プレカット)時に生じた最終的な紙紛量である最終値(差分値)が算出される。こうして算出された最終値が、制御部50に予め設定された基準値と比較され、その大小関係により、被記録媒体21のプレカット終了後以降に丸刃ユニット10が使用される場合の移動速度(切断速度)が決定される。
【0031】
制御部50による丸刃ユニット10の切断速度の決定は、以下のように行われる。
【0032】
最終値が基準値を下回る場合は、紙紛からの反射光量が少なく、すなわち紙紛からの反射が少ない状態に対応する。したがって制御部50は、そのときの被記録媒体は紙紛の発生が少ない被記録媒体であると判断し、丸刃ユニット10の切断速度をデフォルト(初期速度)に設定する。
【0033】
それに対して、最終値が基準値を上回る場合は、紙紛からの反射光量が多く、すなわち紙紛からの反射が多い状態に対応する。したがって制御部50は、そのときの被記録媒体は紙紛の発生が多い被記録媒体であると判断し、丸刃ユニット10をデフォルトに対して減速して動作させるように、切断速度を設定する。切断速度をより低速に設定することで、被記録媒体の表面であるコート層への衝撃を緩和することができ、コート層の一部もしくは基材からの紙紛の発生を軽減することができる。主要な被記録媒体である、普通紙、マット紙、および光沢紙において、紙紛の発生が多い被記録媒体と少ない被記録媒体とを比較した場合、切断速度に30%の速度差をつけることで紙紛の発生を抑制することが可能となる。そのため、上記切断速度の減速幅は30%であることが好ましい。
【0034】
ここで、図4を参照して、紙紛量の測定値(最終値)の精度をより向上させる、本発明のインクジェットプリンタの他の実施形態について説明する。図4は、本実施形態のインクジェットプリンタの一部を概略的に示す断面図である。
【0035】
上述した実施形態では、参照値の測定は、紙紛集積板41上の汚れや残留紙紛はそのままの状態で行われていたが、本実施形態では、そのような紙紛集積板41の表面を清掃した後で行われる。これにより、参照値のレベルをより低くすることができ、測定値と参照値との差分から算出される最終値の精度をより向上させることができる。このために、本実施形態のインジェットプリンタ1は、モータ70の駆動により固定刃6が延びる方向(図中矢印C参照)に移動して、紙紛集積板41の表面を清掃する清掃部材80を備えている。
【0036】
本実施形態では、まず、新規に被記録媒体21がインクジェットプリンタ1に投入されたことが制御部50で確認されると、参照値を測定する前に、紙紛量測定手段40の測定対象領域となる紙紛集積板41の清掃が行われる。すなわち、清掃部材80が、モータ70の駆動により紙紛集積板41に接触しながら紙紛集積板41上を往復移動することで、紙紛集積板41が清掃される。その後、LED42から紙紛集積板41へLED光が照射され、その反射光がフォトダイオード43で検出される以降の動作は、上述した実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0037】
1 インクジェットプリンタ
3 搬送ローラ
10 丸刃ユニット
40 紙紛量測定手段
50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状の被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記被記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動しながら該被記録媒体を切断する切断手段と、
前記切断手段が前記被記録媒体を切断する際に発生する、前記被記録媒体の切断粉の量を測定する測定手段と、
前記測定手段による前記切断粉の量の測定結果に応じて、前記切断手段の移動速度を制御する制御手段と、
を有する画像記録装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記測定結果として、前記被記録媒体が切断される前に予め測定された、所定領域内での前記切断粉の量と、前記被記録媒体が切断された後で測定される、前記所定領域内での前記切断粉の量との差分値に応じて、前記切断手段の移動速度を制御するようになっている、請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記差分値と予め設定された基準値とを比較し、その大小関係に応じて、前記切断手段の移動速度を設定するようになっている、請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記差分値が前記基準値を下回るときに、前記切断手段の移動速度を初期速度に設定し、前記差分値が前記基準値を上回るときに、前記切断手段の移動速度を前記初期速度よりも低速に設定するようになっている、請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記測定手段が前記切断粉の量を測定する前記所定領域を清掃する清掃手段をさらに有する、請求項2から4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記測定手段が、前記切断粉に光を照射する光源と、前記切断粉からの反射光を受光する受光手段とを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111702(P2013−111702A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260214(P2011−260214)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】