説明

画像記録装置

【課題】画像記録中の記録用紙を押さえる部材が搬送路に複数設けられた構成において、記録用紙が搬送中に傾斜することを防止する構成を提供する。
【解決手段】プリンタ部11は、搬送路65と、搬送路65の上方から、記録用紙35にインクを吐出するノズル39を有する記録部24と、画像記録中の記録用紙35を支持するプラテン42と、プラテン42の上方において、左右方向9に複数が離間されて設けられており、記録用紙35をプラテン42側へ押圧する押さえ片93を有した押さえ部材90A〜90Iと、ノズル39より搬送向き下流側に設けられており、記録用紙35を搬送向きへ搬送する第1ローラ対58と、を備えている。他の押さえ部材90A〜90Hよりも左右方向9の中央側の押さえ部材90Aは、押さえ片93が、他の押さえ部材90A〜90Hのものよりも、搬送向き下流側に位置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路を搬送されるシートに画像を記録可能な画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに画像を記録可能な画像記録装置の多くは、内部にシートの搬送路を備えている。画像記録装置は、シートをローラ対に挟持させることによって、シートを搬送路に沿って搬送させる。また、画像記録装置として、上方からシートにインクを吐出して画像を記録する記録部と、搬送路を挟んで記録部の下方に設けられており、シートを支持するプラテンとを備えたものがある。このような方式の画像記録装置として、インクジェットプリンタなどが知られている。
【0003】
シートを搬送路に沿って移動させるため、搬送路には、シートを押圧する部材(以下、押さえ部材とする)が設けられている。押さえ部材は、搬送路からシートが離反することを防止するものである。押さえ部材の一例は、ローラ又は拍車である。
【0004】
搬送路からシートが離反することを防止することは、画像記録の際には特に重要である。そのため、シートをプラテン側に向かって押圧するために、押さえ部材が用いられる。これにより、画像記録中のシートの浮き上がりを防止することができる。特許文献1には、シートの搬送と直交する方向に沿って設けられた複数の突起16(押さえ部材)によって、シートをプラテン側に向かって押圧する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−71532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、シートを搬送するローラ対は、記録部の上流側と下流側とにそれぞれ設けられている。シートが搬送され、シートの上流端が上流側のローラ対を通過すると、シートは下流側のローラ対にのみ挟持された状態となる。特許文献1に開示された発明では、上流側のローラ対(給送側駆動ローラ8及びレジストローラ9)の直下流側に押さえ部材が設けられているため、シートの上流端が押さえ部材を通過するとき、シートは下流側のローラ対(排送側駆動ローラ20及び排送用拍車21)によってのみ挟持されている。
【0007】
特許文献1に開示された発明のように、シートの搬送と直交する方向に沿って押さえ部材が複数設けられた構成では、シートの上流端が押さえ部材を完全に通過する際、押さえ部材によるシートの押圧状態が開放されるタイミングは、全ての押さえ部材について完全に同時とはならない場合がある。たとえば、シートが搬送された際に斜行し、最も外側の押さえ部材による押圧状態が最後まで維持された場合、ローラ対がシートを搬送する力は、当該押さえ部材による押圧位置を支点としてシートを回転させる回転モーメントとして作用する。たとえば、下流側から見て左端の押さえ部材による押圧状態が最後まで維持された場合、シートは、押圧位置を支点として時計回りに回転しようとする。これにより、シートが搬送されるべき角度に対して、より傾斜するおそれがある。シートが傾斜すると、画像がシートに対して傾いた状態に記録されてしまう。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、押さえ部材が複数設けられた構成において、シートが搬送中に傾斜することを防止する構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係る画像記録装置は、シートを搬送向きに沿って案内する搬送路において、シートに画像を記録する記録部と、表裏面の少なくとも一方から、搬送路を搬送されるシートを押圧する押さえ部材と、を備えている。上記押さえ部材は、上記搬送向きと直交する幅方向に複数が離間されて設けられており、他の上記押さえ部材よりも中央側に位置された少なくとも1つの上記押さえ部材は、他の上記押さえ部材よりも、上記搬送向きにおける下流側に位置されている。
【0010】
ここで、本発明における押さえ部材とは、シートを押圧するものであればよく、その形状や押圧の方法は限定されない。たとえば、押さえ部材は、平板形状のプレートであってもよいし、ローラ又は拍車であってもよい。
【0011】
搬送路を搬送されるシートは、押さえ部材によって押圧されることで、本来あるべき位置に維持される。シートが押さえ部材を通過する際、幅方向において他の押さえ部材よりも中央側に位置された少なくとも1つの押さえ部材が、他の押さえ部材よりも下流側に位置しているため、シートの上流端は、他の押さえ部材を完全に通過した後に、中央側の押さえ部材を完全に通過する。すなわち、中央側の押さえ部材による押圧状態が最後まで維持される。幅方向におけるシートの最も中央に近い位置が最後まで押圧された状態に維持されるため搬送向きの力が幅方向のうちのどちらか一方に向かって作用することはない。つまり、シートを傾ける回転モーメントが作用することが防止される。
【0012】
(2) 本発明に係る画像記録装置は、シートを上記搬送向きへ搬送するローラ対と、上記搬送路を挟んで上記記録部の下方に設けられており、シートを支持するプラテンと、をさらに備えている。上記記録部は、シートにインクを吐出して画像を記録するノズルを有し、上記ローラ対は、上記ノズルより上記搬送向きにおける下流側に設けられており、上記押さえ部材は、上記ノズルより上記搬送向きにおける上流側且つ上記プラテンの上方において、上記幅方向に複数が離間されて設けられており、シートの上面に当接して、シートを上記プラテン側へ向かって押圧する当接部を有し、上記幅方向において、他の上記押さえ部材よりも中央側に位置された少なくとも1つの上記押さえ部材は、上記当接部が、他の上記押さえ部材の上記当接部よりも、上記搬送向きにおける下流側に位置されている。
【0013】
シートは、ローラ対の搬送力によって搬送され、上流端が押さえ部材の当接部を通過する。幅方向において他の押さえ部材よりも中央側に位置された少なくとも1つの押さえ部材の当接部が、他の押さえ部材の当接部よりも下流側に位置しているため、シートの上流端は、他の押さえ部材の当接部を完全に通過した後に、中央側の押さえ部材を完全に通過する。すなわち、中央側の押さえ部材による押圧状態が最後まで維持される。つまり、画像記録中のシートが浮き上がることを防止できると共に、シートが押さえ部材を通過するときに、シートを傾ける回転モーメントが作用することを防止できる。
【0014】
(3) 上記幅方向において、他のいずれの上記押さえ部材よりも中央側に位置された1つの上記押さえ部材は、上記当接部が、他のいずれの上記押さえ部材の上記当接部よりも、上記搬送向きにおける下流側に位置されていてもよい。
【0015】
本構成では、幅方向の最も中央に位置する1つの押さえ部材による押圧状態が最後まで維持される。
【0016】
(4) 上記当接部は、上記プラテンに対向し、シートと当接可能な当接面を有していてもよい。それぞれの上記押さえ部材の上記当接面が上記搬送向きに占める範囲は、隣接する上記押さえ部材の上記当接面が上記搬送向きに占める範囲と少なくとも部分的に重なっている。上記幅方向において、他の上記押さえ部材よりも中央側に位置された少なくとも1つの上記押さえ部材は、上記当接面の上記搬送向きにおける下流端が、他の上記押さえ部材の上記当接面の下流端よりも、下流側に位置されている。
【0017】
本構成では、シートは、当接部の当接面によって押圧される。本構成によると、シートが全ての押さえ部材を通過するまで、シートの上流端は常にいずれかの押さえ部材の当接面によって押圧された状態にある。これによりシートは更に傾きにくくなる。
【0018】
(5) 上記押さえ部材は、上記当接部がそれぞれ上記プラテン側に弾性的に付勢されたものであってもよい。上記搬送向きにおいて、他の上記押さえ部材よりも下流側に位置された少なくとも1つの上記押さえ部材の上記当接部が受ける付勢力が、他の上記押さえ部材の上記当接部が受ける付勢力よりも強い。
【0019】
仮に、シートを傾ける回転モーメントが作用した場合においても、中央の押さえ部材によってシートが比較的強く押圧されているため、シートは傾き難くなる。つまり、中央の押さえ部材による押圧力が強く設定されることで、シートの搬送は安定する。
【0020】
(6) 上記幅方向における中央側の上記押さえ部材ほど、上記当接部が、上記搬送向きにおける下流側に位置されていてもよい。
【0021】
本構成によると、シートに対する押圧は、幅方向の外側の押さえ部材によるものほど先に解除される。つまり、シートが搬送されるに伴って、押さえ部材がシートを押圧する力は、幅方向における中央側に集中する。これにより、上述したような回転モーメントは、より作用し難くなる。
【0022】
(7) 上記搬送路は、少なくとも、上記幅方向の寸法が第1サイズのシートと、上記幅方向の寸法が第1サイズよりも小さい第2サイズのシートとを搬送可能なものであってもよい。上記第1サイズのシートは、上記搬送路において、全ての上記押さえ部材の下方をそれぞれ搬送され、上記第2サイズのシートは、上記搬送路において、全ての上記押さえ部材の一部であって、隣接する一組の上記押さえ部材の下方をそれぞれ搬送される。上記一組の押さえ部材のうち、他の上記押さえ部材よりも上記幅方向における中央に位置された少なくとも1つの上記押さえ部材は、上記当接部が、上記一組の上記押さえ部材のうち、他の上記押さえ部材の上記当接部よりも、上記搬送向きにおける下流側に位置されている。
【0023】
本構成によると、第1サイズ及び第2サイズのシートのうち、いずれのシートの搬送においても、シートの幅方向における中央に近い位置が最後まで押圧された状態となる。つまり、搬送路を搬送されるいずれのサイズのシートについても、シートの傾きを防止することができる。
【0024】
(8) 上記プラテンは、上記幅方向における上記押さえ部材の間に、上方へ向かって突出され上記搬送向きに沿って複数のリブを有しており、上記押さえ部材は、上記当接部の少なくとも一部が、上記リブの上端よりも下方に位置されていてもよい。
【0025】
搬送されるシートは、押さえ部材とリブとの間を通過する際に、押さえ部材とリブとの双方に互いに反対向きに押さえ付けられる。そうすると、搬送向き下流側から見たシートの形状は、波形状となる。波形状にされたシートは、コシが強くなる。その結果、押さえ部材より搬送向き下流側においても、プラテンからのシートの浮き上がりを防止できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る画像記録装置によると、シートの上流端が押さえ部材を通過する際に、シートが傾斜することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る複合機10の斜視図である。
【図2】プリンタ部11の構成を示す模式図である。
【図3】記録部24の周辺を示す斜視図である。
【図4】図3のA−A切断線における断面斜視図である。なお、記録部24が省略されている。
【図5】押さえ部材90Dを示す図であり、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図、(E)は下面図、(F)は斜視図である。
【図6】押さえ部材90A〜90Iの位置関係を示す図である。
【図7】押さえ部材90A〜90C及びリブ85によって記録用紙35が波形状にされる様子を示す図である。
【図8】従来の構成において、記録用紙35が搬送中に傾斜する様子を示す図である。(A)は、傾斜する直前の状態、(B)は、傾斜した後の状態を示している。
【図9】複合機10の変形例において、押さえ部材90A〜90Iの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9(本発明の幅方向の一例)を定義する。
【0029】
図1に示されるように、複合機10は、薄型の直方体に概ね形成されており、下部にインクジェット記録方式のプリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能や、記録用紙35(図2、本発明のシートの一例)に画像を記録するプリント機能などの各種の機能を有している。なお、プリント機能以外の機能の有無は任意である。プリンタ部11は、正面に開口13が形成されたケーシング(筐体)14を有し、各種サイズの記録用紙35を載置可能なトレイ20が、開口13から前後方向8に挿抜可能である。つまり、トレイ20は、複合機10に装着及び脱抜可能である。
【0030】
[プリンタ部11の構成]
図2に示されるように、プリンタ部11は、トレイ20から記録用紙35をピックアップして給送する給紙部15と、トレイ20の上方に設けられており、給紙部15によって給紙された記録用紙35にインク滴を吐出して記録用紙35に画像を記録するインクジェット記録方式の記録部24(本発明の記録部の一例)などを備えている。
【0031】
[給紙部15]
図2に示されるように、給紙部15は、トレイ20の上方であって記録部24の下方に設けられている。給紙部15は、給紙ローラ25、給紙アーム26及び駆動伝達機構27を備えている。給紙ローラ25は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構27によって、給紙用モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、記録用紙35を以下で説明する湾曲路65Aに供給する。
【0032】
[搬送路65]
図2に示されるように、プリンタ部11の内部には、トレイ20の先端(後方側の端部)から記録部24を経て排紙保持部79に至る搬送路65(本発明の搬送路の一例)が形成されている。搬送路65は、トレイ20の先端から記録部24に至る間に形成された湾曲路65Aと、記録部24から排紙保持部79に至る間に形成された排紙路65Bとに区分される。
【0033】
湾曲路65Aは、トレイ20に設けられた分離傾斜板22の上端付近から記録部24に渡って延設された湾曲状の通路である。湾曲路65Aは、プリンタ部11の内部側を中心とする円弧形状に概ね形成されている。トレイ20から給送される記録用紙35は、湾曲路65Aを搬送方向に沿って搬送向き(図2において一点鎖線に付された矢印の向き、本発明の搬送向きの一例)に湾曲されて、記録部24の直下へ案内される。湾曲路65Aは、所定間隔を隔てて互いに対向する外側ガイド部材18と内側ガイド部材19によって区画されている。なお、外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19、更に後述する各ガイド部材82、83は、いずれも、図2の紙面垂直方向(図1の左右方向9)へ延出されている。
【0034】
排紙路65Bは、記録部24の直下から排紙保持部79に渡って延設された直線状の通路である。記録用紙35は、排紙路65Bを搬送向きに案内される。排紙路65Bは、記録部24が設けられている箇所においては、所定間隔を隔てて互いに対向する記録部24及びプラテン42(本発明のプラテンの一例)によって形成されており、記録部24が設けられていない箇所においては、所定間隔を隔てて互いに対向する上側ガイド部材82及び下側ガイド部材83によって区画されている。
【0035】
[記録部24]
図2,3に示されるように、記録部24は、トレイ20(図2)の上方に配置されている。記録部24は、キャリッジ33、及びキャリッジ33に搭載された記録ヘッド34(図2)を有している。キャリッジ33は、第1ガイドレール71及び第2ガイドレール72の間に掛け渡されて支持されている。第1ガイドレール71及び第2ガイドレール72は、左右方向9を長手方向とする略平板形状を呈しており、上下方向7における同程度の高さ位置において、前後方向8に離間されて設けられている。キャリッジ33は、記録ヘッド34と共に、第1ガイドレール71及び第2ガイドレール72に沿って左右方向9に往復動する。
【0036】
記録部24の下方であって搬送路65を挟んで記録部24と対向する位置には、記録用紙35を水平に保持、つまり支持するためのプラテン42が設けられている。記録ヘッド34は、左右方向9への往復移動過程において、インクカートリッジ(不図示)から供給されたインクを、第1ガイドレール71及び第2ガイドレール72の間に設けられた複数のノズル39(図2、本発明のノズルの一例)から、プラテン42上を搬送される記録用紙35に吐出する。これにより、搬送路65において記録用紙35に画像が記録される。プラテン42及び第1ガイドレール71の詳細な構成について、後に詳細に説明する。
【0037】
[搬送ローラ45、60、62]
図2に示されるように、外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19の搬送向きの下流端と記録部24との間には、第1搬送ローラ60及びピンチローラ61よりなる第1ローラ対58が設けられている。ピンチローラ61は、第1搬送ローラ60の下方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第1搬送ローラ60のローラ面に圧接されている。第1ローラ対58は、湾曲路65Aを搬送してきた記録用紙35を狭持してプラテン42上へ送る。
【0038】
プラテン42と上側ガイド部材82及び下側ガイド部材83との間、つまりプラテン42よりも搬送向きの下流側には、第2搬送ローラ62及び拍車63よりなる第2ローラ対59(本発明のローラ対の一例)が設けられている。拍車63は、第2搬送ローラ62の上方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第2搬送ローラ62のローラ面に圧接されている。第2ローラ対59は、ニップ位置をプラテン50に近接させて配置されている。第2搬送ローラ62及び拍車63は、記録部24で画像を記録された記録用紙35を狭持して搬送向きの下流側へ搬送する。
【0039】
各搬送ローラ60、62は、搬送用モータ(不図示)から駆動伝達機構(不図示)を介して回転駆動力が伝達されて回転される。前記の駆動伝達機構は、遊星ギヤなどから構成されており、搬送用モータが正回転及び逆回転方向のいずれに回転されても、各搬送ローラ60、62を一回転方向へ回転させる。これにより、記録用紙35は搬送向きへ搬送される。
【0040】
第2ローラ対59よりも搬送向きの下流側に、第3搬送ローラ45と拍車46よりなる第3ローラ対44が設けられている。拍車46は、第3搬送ローラ45の上方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第3搬送ローラ45のローラ面に圧接されている。
【0041】
第3搬送ローラ45は、搬送用モータから駆動力が伝達されて、回転される。これにより、記録用紙35は第3搬送ローラ45及び拍車46に挟持されて搬送向きの下流側へ搬送され、排紙保持部79に排紙される。
【0042】
[プラテン42]
図2〜4に示されるように、プラテン42は、上述された第1ローラ対58の直下流側(前後方向8の前方)に設けられている。プラテン42は、記録部24に対向するように上方へ向けられた支持面84(図3)を有している。支持面84は、搬送路65(図2)に露出されて、搬送路65の下面の一部を区画している。支持面84から上方に向かってリブ85(図3,4,7、本発明のリブの一例)が突出されている。リブ85は、支持面84に沿って、前後方向8における支持面84の後端から前方に向かって伸びている。リブ85の前端(搬送向きの下流端)は、最も後方にあるノズル39よりも後方に位置している。リブ85は、左右方向9に離間されて複数が設けられている。
【0043】
[第1ガイドレール71]
前後方向8におけるプラテン42の後端付近において、搬送ローラ60の上方に所定の間隔を隔てて第1ガイドレール71が設けられている。第1ガイドレール71は、左右方向9を長辺とする概ね矩形の平板形状を呈しており、表裏面がそれぞれプラテン42の支持面84と略平行になるように設けられている。第1ガイドレール71は、搬送路65を左右方向9に亘って横断し、両端部を支持されている。第1ガイドレール71は、左右方向9に沿って、後述の押さえ部材90A〜90I(図3〜5、本発明の押さえ部材の一例)をそれぞれ取り付けるための複数の取付部73A〜73I(図3,6)を有している。各取付部73A〜73Iは、第1ガイドレール71の表裏面を上下方向7に貫通する4つの挿入孔74(図3,6)によって構成されている。各挿入孔74に押さえ部材90A〜90Iの挿入突起95(図3〜6)が挿入されて、押さえ部材90A〜90Iが第1ガイドレール71に取り付けられている。なお、全ての取付部73A〜73Iが、前後方向8において同一の位置にあるわけではなく、取付部73A〜73Iは、前後方向8において互いに位置がずらされている。これにより、押さえ部材90A〜90Iも、前後方向8において互いに位置がずらされて取り付けられている。詳細については後述する。
【0044】
[押さえ部材90A〜90I]
押さえ部材90A〜90Iは、プラテン42のリブ85と協働し、搬送される記録用紙35を波形状にする部材である。図4,6に示されるように、左右方向9におけるプラテン42の中央に1つの押さえ部材90Aが配置されている(図3においては、キャリッジ33により隠れている)。押さえ部材90Aの左右方向9における両外側に押さえ部材90B〜90Iが所定距離ずつ離間されて配置されている。押さえ部材90Bと押さえ部材90C、押さえ部材90Dと押さえ部材90E、押さえ部材90Fと押さえ部材90G、及び押さえ部材90Hと押さえ部材90Iは、それぞれ押さえ部材90Aに対して対称な位置に配置されている。これは、記録用紙35を、左右対称な波形状にするためである。
【0045】
以下、各図を参照して押さえ部材90A〜90Iについて説明する。以下の説明において、押さえ部材90Dを例に挙げているが、押さえ部材90A〜90C,90E〜90Gは、押さえ部材90Dと同様の構成である。また、押さえ部材90H,90Iは、押さえ部材90A〜90Gと形状が一部相違しているが、この相違点については後述する。なお、図5に示される上下方向7、前後方向8及び左右方向9は、押さえ部材90A〜90Iを第1ガイドレール71に取り付けた状態における方向である。
【0046】
図4,5に示されるように、押さえ部材90Dは、板状の基部91と、前後方向8における基部91の前面から湾曲して下方へ延びる湾曲片92と、湾曲片92の下端から水平面に対して若干傾斜して前方斜め下へ延出された押さえ片93(本発明の当接部の一例)と、を備えた樹脂成型品である。基部91の上面からは、補強用の複数の補強リブ94(図5)と、第1ガイドレール71の挿入孔74(図3,6)に挿入される4個の挿入突起95(図3〜6)とが上向きへ突出されている。4個の挿入突起95は、前後方向8及び左右方向9に2個づつ並ぶ位置に配置されている。
【0047】
挿入突起95の突出の先端部(上端部)には、第1ガイドレール71の上面に引っ掛かる前後一対の爪96,97(図5)が設けられている。爪96は、挿入突起95の突出の先端部(上端部)から前後方向8における前向きへ突出されている。爪97は、挿入突起95の突出の先端部(上端部)から前後方向8における後向へ突出されている。押さえ部材90Dの取り付け時において、挿入突起95は、第1ガイドレール71の下側から挿入孔74に挿入された後、左右方向9における左方へスライドされる。挿入孔74は左側が右側よりも内径が小さくされているため、爪96,97が挿入孔74に嵌合した状態となる。こうして、押さえ部材90Dが第1ガイドレール71に固定されている。
【0048】
湾曲片92は、円弧状に湾曲している。これは、湾曲片92が第1搬送ローラ60に接触することを回避するためである。湾曲片92は、撓まないように、補強リブ98により補強されている。
【0049】
湾曲片92の下端部には、第1ローラ対58のニップ位置の前後方向8における前側から前方斜め下へ向かって傾斜する傾斜面99が設けられている。傾斜面99には、複数のガイドリブ99A(図5)が、傾斜面99の傾斜する向き(前方斜め下向き)に沿って延びて設けられている。複数のガイドリブ99Aは、左右方向9へ離間されて配置されている。ガイドリブ99Aの突出の先端により、記録用紙35の搬送向きにおける下流端が押さえ片93へ案内される。
【0050】
押さえ片93は、前後方向8における前端が後端よりも下方に位置するように水平面に対して若干傾斜された板状に形成されている。前後方向8における押さえ片93の前端(搬送向き下流端)は、前後方向8における記録ヘッド34のノズル39の後側に位置しており、ノズル39に近接している。
【0051】
押さえ片93が傾斜されているのは、搬送される記録用紙35が押さえ片93とプラテン42の支持面84(図3,7)との間において詰まらないようにするためである。また、押さえ片93が板状にされているのは、小さくされた記録ヘッド34とプラテン42の支持面84との隙間に押さえ片93を配置するためである。前後方向8における押さえ片93の前端をノズル39に近接させるのは、ノズル39に近い位置において記録用紙35を押さえて画像記録の精度を良くするためである。ここで、記録用紙35を押さえる押さえ片93の下側面が本発明の当接面の一例である。
【0052】
押さえ片93は、上下方向7へ弾性変形し易いように、前後方向8における前方へ向かうにつれて左右方向9における両端が互いに近づくように傾斜する先細りの形状にされている。押さえ片93の前端部は、搬送される記録用紙35を波形状にする際に撓む。また、押さえ片93は、厚みが若干厚い記録用紙35が搬送されたり、複数枚の記録用紙35が重送されたときにも撓み、記録用紙35が押さえ片93とプラテン42との間において詰まることを抑制する。
【0053】
図3,6に示されるように、押さえ部材90H,90Iは、記録用紙35を押さえる部分の形状が押さえ部材90A〜90Gのものと相違している。詳細には、押さえ部材90H,90Iは、押さえ部材90A〜90Gの押さえ片93に相当する部分が先細り形状にはなっておらず、概ね矩形の形状を呈している。押さえ部材90H,90Iは、左右方向9の両外側において、記録用紙35の左右両端を押さえるものである。そのため、搬送中に記録用紙35の端部が左右方向9の内側に外れることを防止するため、押さえ片93に幅広な形状が採用されている。
【0054】
[押さえ部材90A〜90Iの位置関係]
上述したように、第1ガイドレール71の取付部73A〜73Iの位置が、前後方向8において互いにずらされているため、押さえ部材90A〜90I、つまり押さえ片93の前端も同様に、前後方向8において互いに位置がずらされている。以下、図6を参照しながら詳細に説明する。なお、図6において、最も後方に位置する押さえ部材90H,90Iにおける押さえ片93の前端の位置が仮想直線であるラインL1によって示されている。
【0055】
第1ガイドレール71において、左右方向9の最も中央に位置する押さえ部材90Aに対応する取付部73Aは、他のいずれの取付部73B〜73Iよりも前後方向8の前方に位置している。そのため、図6に示されるように、左右方向9において最も中央に位置する押さえ部材90Aは、押さえ片93の前端が、他のいずれの押さえ部材90B〜90Iのものよりも前後方向8の前方に位置している。つまり、ラインL1に対して、最も前方にはみ出している。
【0056】
押さえ部材90Aの両外側に隣接してそれぞれ設けられた押さえ部材90B,90Cに対応する取付部73B,73Cは、取付部73Aよりも僅かに前後方向8の後方に位置している。そのため、押さえ部材90B,90Cは、押さえ片93の前端が、押さえ部材90Aのものよりも僅かに前後方向8の後方に位置している。つまり、ラインL1に対して前方にはみ出す長さが押さえ部材90Aのものよりも短い。
【0057】
押さえ部材90B,90Cの両外側に隣接してそれぞれ設けられた押さえ部材90D,90Eに対応する取付部73D,73Eは、取付部73B,73Cよりも僅かに前後方向8の後方に位置している。そのため、押さえ部材90D,90Eは、押さえ片93の前端が、押さえ部材90B,90Cのものよりも僅かに前後方向8の後方に位置している。つまり、ラインL1に対して前方にはみ出す長さが押さえ部材90B,90Cのものよりも短い。
【0058】
押さえ部材90D,90Eの両外側に隣接してそれぞれ設けられた押さえ部材90F,90Gに対応する取付部73F,73Gは、取付部73D,73Eよりも僅かに前後方向8の後方に位置している。そのため、押さえ部材90F,90Gは、押さえ片93の前端が、押さえ部材90D,90Eのものよりも僅かに前後方向8の後方に位置している。つまり、ラインL1に対して前方にはみ出す長さが押さえ部材90D,90Eのものよりも短い。
【0059】
押さえ部材90F,90Gの両外側に隣接してそれぞれ設けられた押さえ部材90H,90Iに対応する取付部73H,73Iは、取付部73F,73Gよりも僅かに前後方向8の後方に位置している。そのため、押さえ部材90H,90Iは、押さえ片93の前端が、押さえ部材90F,90Gのものよりも僅かに前後方向8の後方に位置している。上述したようにこの位置を基準にラインL1が定義されている。
【0060】
以上より、左右方向9の外側に設けられた押さえ部材ほど、押さえ片93の前端が前後方向8の前方に位置することになる。また、押さえ部材90Aに対して対称な位置に設けられた2つの押さえ部材については、押さえ片93の前端が前後方向8の同じ位置にある。つまり、押さえ部材90Bと押さえ部材90C、押さえ部材90Dと押さえ部材90E、押さえ部材90Fと押さえ部材90G、及び押さえ部材90Hと押さえ部材90Iは、それぞれ、押さえ片93の前端が前後方向8の同じ位置にある。
【0061】
ただし、図6に示されるように、それぞれの押さえ部材90A〜90Iの押さえ片93は、左右方向9において少なくとも部分的に重なった状態にある。つまり、押さえ部材90A〜90Iは、押さえ片93が前後方向8に離間してしまうほど大きくはずらされていない。
【0062】
押さえ部材90A〜90Iが、前後方向8においてずらされる距離は、当業者が任意に決定することができる。たとえば、本実施形態において、互いに隣接する押さえ部材は、前後方向8に互いに2mm程度ずらされている。したがって、押さえ部材90Aと押さえ部材90H,90Iとは、互いに8mm程度ずらされている。
【0063】
[記録用紙35の搬送]
本発明に係るプリンタ部11は、サイズの異なる少なくとも2種類の記録用紙35に画像を記録することができる。画像を記録可能な記録用紙35のサイズは、当業者が適宜決定することができるものであるが、一例として、A判、B判、L判(89×127mm)、ハガキサイズ(100.0×148.0mm)などが挙げられる。ここで、2種類の記録用紙35のうち、大きい方を第1サイズの記録用紙35、小さい方を第2サイズの記録用紙35とする。
【0064】
第1サイズの記録用紙35は、搬送状態における左右方向9の幅が、搬送路65の左右方向9の幅よりも僅かに短い。搬送中に第1サイズの記録用紙35が左右方向9に占める第1範囲W1が、図6に示されている。第1範囲W1は、押さえ部材90Hの概ね中央から、押さえ部材90Iの概ね中央までに亘っている。記録用紙35がプラテン42を搬送される際、第1サイズの記録用紙35は、押さえ部材90A〜90Iの下方をそれぞれ通過し、押さえ部材90A〜90Iによってそれぞれ押圧される。
【0065】
一方、第2サイズの記録用紙35は、搬送状態における左右方向9の幅が、第1サイズの記録用紙35よりも更に短い。搬送中に第2サイズの記録用紙35が左右方向9に占める第2範囲W2が、図6に示されている。第2範囲W2は、押さえ部材90Bの左側から押さえ部材90Cの右側までに亘っている。つまり、第2サイズの記録用紙35は、押さえ部材90A〜90Cの下方をそれぞれ通過し、押さえ部材90A〜90Cによってそれぞれ押圧される。
【0066】
まずは第1サイズの記録用紙35がプラテン42の周辺を搬送される様子を説明する。記録用紙35は、搬送路65を搬送されて記録部24に供給される。搬送路65を搬送される過程において、記録用紙35は、第1ローラ対58の間に挟持された状態となる。記録用紙35が第1ローラ対58の間に挟持された後、記録用紙35の下流端(前後方向8の前端)は、プラテン42上に送られる。そして、記録用紙35の下流端が押さえ部材90A〜90Iの押さえ片93に到達すると、記録用紙35は、プラテン42のリブ85と押さえ部材90A〜90Iの押さえ片93とに挟み込まれた状態となり、図7に示されるように、左右方向9に沿った波形状に湾曲される。
【0067】
記録用紙35の下流端が各押さえ片93を抜けた後も、上流側がリブ85と押さえ部材90A〜90Iの押さえ片93とに挟み込まれた状態にあるため、プラテン42の周辺においては記録用紙35の波形状が維持される。記録用紙35はその状態において、プラテン42上を搬送される。
【0068】
記録用紙35の一部が記録ヘッド34の下方を通過すると、そこには画像が記録される。記録用紙35の下流端は、記録ヘッド34の下方を通過した後、第2ローラ対59に挟持された状態となる。つまり、記録用紙35は、記録ヘッド34よりも上流側において、第1ローラ対58に挟持されており、記録ヘッド34よりも下流側において、第2ローラ対59に挟持されている。記録用紙35は、これらのローラの搬送力によって搬送される。
【0069】
続けて、記録用紙35の上流端が第1ローラ対58を通過すると、記録用紙35は、第2ローラ対59にのみ挟持された状態となる。記録用紙35は、第2搬送ローラ62の搬送力によって、上流端が押さえ部材90A〜90Iの下方をそれぞれ通過し、記録用紙35の波形状は解除される。記録用紙35の全ての部分が記録ヘッド34の下方を通過することで、画像の記録が完了する。プラテン42を通過した記録用紙35は、第3ローラ対44に向けて搬送される。
【0070】
ここで、押さえ部材90A〜90Iはそれぞれ上述されたような位置関係にあるため、記録用紙35の上流端が押さえ部材90A〜90Iを通過するとき、左右方向9の外側の押さえ部材90A〜90Iによる押圧ほど先に解除されることになる。つまり、記録用紙35の上流端は、最初に押さえ部材90H,90Iの押さえ片93の下流端を通過し、押さえ部材90H,90Iによる押圧が解除される。続けて、記録用紙35の上流端は、押さえ部材90F,90Gの押さえ片93の下流端を通過し、押さえ部材90F,90Gによる押圧が解除される。続けて、記録用紙35の上流端は、押さえ部材90D,90Eの押さえ片93の下流端を通過し、押さえ部材90D,90Eによる押圧が解除される。続けて、記録用紙35の上流端は、押さえ部材90B,90Cの押さえ片93の下流端を通過し、押さえ部材90B,90Cによる押圧が解除される。続けて、記録用紙35の上流端は、押さえ部材90Aの押さえ片93の下流端を通過し、押さえ部材90Aによる押圧が解除される。以上の流れによって、記録用紙35は、押さえ部材90A〜90Iを完全に通過する。
【0071】
続けて、第2サイズの記録用紙35がプラテン42の周辺を搬送される様子を説明する。第2サイズの記録用紙35の搬送の流れは、第1サイズの記録用紙35のものと同様であるため、重複している部分は省略する。第2サイズの記録用紙35の搬送は、記録用紙35を押圧して湾曲させる押さえ部材が、押さえ部材90A〜90Cの3つのみである点において、第1サイズの記録用紙35のものと相違する。
【0072】
搬送の過程において、記録用紙35は、押さえ部材90A〜90Cによってそれぞれ押圧された状態になる。記録用紙35が押さえ部材90A〜90Cを通過する際、記録用紙35の上流端は、最初に押さえ部材90B,90Cの押さえ片93の下流端を通過し、押さえ部材90B,90Cによる押圧が解除される。続けて、記録用紙35の上流端は、押さえ部材90Aの押さえ片93の下流端を通過し、押さえ部材90Aによる押圧が解除される。以上の流れによって、記録用紙35は、押さえ部材90A〜90Iを完全に通過する。
【0073】
以上より、本実施形態によると、第1サイズ及び第2サイズのいずれのサイズの記録用紙35においても、左右方向9の外側の押さえ部材による押圧ほど先に解除され、押さえ部材90Aによる押圧が最後に解除される。
【0074】
[実施形態の作用効果]
押さえ部材90A〜90Iが左右方向9に一列に並べられた従来の構成では、記録用紙35が押さえ部材90A〜90Iを通過する過程において、押さえ部材90H又は押さえ部材90Iによる記録用紙35に対する押圧が最後まで維持されることがある。このような状況は、記録用紙35が僅かに傾いている場合に特に発生しやすい。たとえば、図8(A)の例では、記録用紙35は、左側が僅かに上流側に位置するように傾いている。この場合、押さえ部材90Hによる押圧が最後まで維持される。そうすると、第2ローラ対59が記録用紙35を搬送する力F1の一部が、押さえ部材90Hによる押圧位置P1を支点として、記録用紙35を時計回りの向きD1に回転させる力に変換される。つまり記録用紙35を回転させる回転モーメントが作用する。この回転モーメントにより、記録用紙35は、たとえば、図8(B)に示されるように更に大きく傾斜してしまう。
【0075】
本実施形態によると、第1サイズ及び第2サイズのいずれのサイズの記録用紙35においても、左右方向9の外側の押さえ部材による押圧が先に解除され、押さえ部材90Aによる押圧が最後に解除される。押さえ部材90Aは、左右方向9の最も中央側に設けられているため、記録用紙35が押さえ部材90Aにのみ押圧された状態において、第2ローラ対59による搬送向きの力が作用したとしても、その力が記録用紙35を回転させる回転モーメントとして作用することはない。
【0076】
また、それぞれの押さえ部材90A〜90Iの押さえ片93は、左右方向9において少なくとも部分的に重なった状態にあるため、記録用紙35が押さえ部材90A〜90Iを完全に通過するまで、記録用紙35の上流端がいずれかの押さえ部材90A〜90Iに押圧された状態にある。これにより、記録用紙35を回転させる回転モーメントが作用する可能性は更に低減される。
【0077】
また、押さえ部材90A〜90Iの押さえ片93の一部が、プラテン42のリブ85の上端よりも下方に位置しているため、押さえ片93とリブ85とに挟み込まれた記録用紙35は、左右方向9に沿った波形状に湾曲される。これにより、搬送向きにおける記録用紙35のコシが強くなり、プラテン42からの浮き上がりが防止される。
【0078】
[変形例]
上述された実施形態において、押さえ部材90A〜90Iは、左右方向9における外側のものほど、搬送向き上流側に設けられていた。しかしながら、中央の押さえ部材90Aが搬送向きの最下流側に設けられていれば、他の押さえ部材90B〜90Iの位置は、上述された実施形態のものとは多少異なっていてもよい。たとえば、図9に示されるように、押さえ部材90A,D〜90Iは、左右方向9における外側のものほど搬送向き上流側に設けられており、押さえ部材90B,90Cは、搬送向きにおいて、押さえ部材90H,90Iと同じ位置に設けられていてもよい。なお、図9では、押さえ部材90H,90Iにおける押さえ片93の前端の位置が仮想直線であるラインL2によって示されている。
【0079】
あるいは、押さえ部材90B〜90Iは、搬送向きにおいて同じ位置に設けられ、左右方向9において一列に並べられていてもよい。その場合、押さえ部材90Aのみが、他の押さえ部材90B〜90Iよりも搬送向き下流側に設けられる。
【0080】
あるいは、押さえ部材90Aが設けられず、押さえ部材90B,90Cは、左右方向9の中央側に寄せられて設けられていてもよい。その場合、押さえ部材90B,90Cは、搬送向きにおいて同じ位置に設けられ、他の押さえ部材90D〜90Iよりも搬送向き下流側に設けられる。つまり、搬送向き最下流側に配置される押さえ部材が複数あってもよい。
【0081】
また、上述した実施形態において、第2サイズのシートは、中央の3つの押さえ部材90A〜90Cの下方を搬送されるものであったが、第2サイズのシートが占める左右方向9の範囲W2は、搬送路65の中央からずらされていてもよい。たとえば、第2サイズのシートは、左右方向9における搬送路65の中央よりも右側において、3つの押さえ部材90C,90E,90Gの下方を搬送されるものであってもよい。その場合、押さえ部材90C,90E,90Gの中では、中央の押さえ部材90Eが搬送向きの最も下流側に設けられる。そして、全ての押さえ部材90A〜90Eの中では、押さえ部材90Aが最も下流側に設けられる。
【0082】
また、上述した実施形態において、押さえ部材90B〜90Iの押さえ片93は、湾曲片92によってプラテン42の支持面84側に弾性付勢されていてもよい。その場合の付勢力は、押さえ部材90Aのものが最も大きくされていてもよい。これにより、記録用紙35は、左右方向9における中央側において最も大きな力によって押さえられるため、記録用紙35が上述したような形に傾きにくく、搬送が安定する。
【0083】
また、上述した実施形態において、9個の押さえ部材90B〜90Iが設けられていたが、押さえ部材の数は、左右方向9における搬送路65の幅や搬送される記録用紙35の寸法に応じて適宜変更される。
【0084】
また、上述した実施形態において、押さえ部材90A〜90Iは、それぞれ第1ガイドレール71に取り付けられたものであったが、押さえ部材90A〜90Iが一体の部材として構成されていてもよい。また、押さえ部材90A〜90Iは、第1ガイドレール71とは異なる部材に支持されて、搬送路65に配置されていてもよい。
【0085】
また、上述した実施形態において、左右方向9に隣接する各押さえ部材90A〜90Iの間に、場所によって複数のリブ85が設けられていたが、隣接する各押さえ部材90A〜90Iの間には、更に多くのリブ85が設けられていてもよいし、1つのリブ85のみが設けられていてもよい。
【0086】
また、上述した実施形態において、押さえ部材90A〜90Iは、基部91と、湾曲片92と、押さえ片93とから構成されるものであったが、押さえ部材90A〜90Iの形状は、記録用紙35を押圧可能なものであれば上述した実施形態の形状に限定されるものではない。たとえば、押さえ部材90A〜90Iは、それぞれが、記録用紙35に上方から当接し、記録用紙35を下方に押圧する複数のローラ又は拍車であってもよい。その場合、ローラ又は拍車の位置関係は、上述した実施形態における押さえ部材90A〜90Iと同様である。つまり、左右方向9における中央側のものほど、搬送向きの下流側に設けられる。なお、複数のローラ又は拍車の外周部のうち、記録用紙35と当接する部分が本発明の当接部に相当する。
【符号の説明】
【0087】
24・・・記録部
35・・・記録用紙(シート)
39・・・ノズル
42・・・プラテン
59・・・第2ローラ対(ローラ対)
65・・・搬送路
85・・・リブ
90A〜90I・・・押さえ部材
93・・・押さえ片(当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送向きに沿って案内する搬送路において、シートに画像を記録する記録部と、
表裏面の少なくとも一方から、搬送路を搬送されるシートを押圧する押さえ部材と、を備え、
上記押さえ部材は、上記搬送向きと直交する幅方向に複数が離間されて設けられており、
他の上記押さえ部材よりも中央側に位置された少なくとも1つの上記押さえ部材は、他の上記押さえ部材よりも、上記搬送向きにおける下流側に位置されている画像記録装置。
【請求項2】
シートを上記搬送向きへ搬送するローラ対と、
上記搬送路を挟んで上記記録部の下方に設けられており、シートを支持するプラテンと、をさらに備え、
上記記録部は、シートにインクを吐出して画像を記録するノズルを有し、
上記ローラ対は、上記ノズルより上記搬送向きにおける下流側に設けられており、
上記押さえ部材は、上記ノズルより上記搬送向きにおける上流側且つ上記プラテンの上方において、上記幅方向に複数が離間されて設けられており、シートの上面に当接して、シートを上記プラテン側へ向かって押圧する当接部を有し、
上記幅方向において、他の上記押さえ部材よりも中央側に位置された少なくとも1つの上記押さえ部材は、上記当接部が、他の上記押さえ部材の上記当接部よりも、上記搬送向きにおける下流側に位置されている請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記幅方向において、他のいずれの上記押さえ部材よりも中央側に位置された1つの上記押さえ部材は、上記当接部が、他のいずれの上記押さえ部材の上記当接部よりも、上記搬送向きにおける下流側に位置されている請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記当接部は、上記プラテンに対向し、シートと当接可能な当接面を有しており、
それぞれの上記押さえ部材の上記当接面が上記搬送向きに占める範囲は、隣接する上記押さえ部材の上記当接面が上記搬送向きに占める範囲と少なくとも部分的に重なっており、
上記幅方向において、他の上記押さえ部材よりも中央側に位置された少なくとも1つの上記押さえ部材は、上記当接面の上記搬送向きにおける下流端が、他の上記押さえ部材の上記当接面の下流端よりも、下流側に位置されている請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記押さえ部材は、上記当接部がそれぞれ上記プラテン側に弾性的に付勢されたものであり、
上記搬送向きにおいて、他の上記押さえ部材よりも下流側に位置された少なくとも1つの上記押さえ部材の上記当接部が受ける付勢力が、他の上記押さえ部材の上記当接部が受ける付勢力よりも強い請求項1から4のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記幅方向における中央側の上記押さえ部材ほど、上記当接部が、上記搬送向きにおける下流側に位置されている請求項1から5のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記搬送路は、少なくとも、上記幅方向の寸法が第1サイズのシートと、上記幅方向の寸法が第1サイズよりも小さい第2サイズのシートとを搬送可能なものであり、
上記第1サイズのシートは、上記搬送路において、全ての上記押さえ部材の下方をそれぞれ搬送され、
上記第2サイズのシートは、上記搬送路において、全ての上記押さえ部材の一部であって、隣接する一組の上記押さえ部材の下方をそれぞれ搬送され、
上記一組の押さえ部材のうち、他の上記押さえ部材よりも上記幅方向における中央に位置された少なくとも1つの上記押さえ部材は、上記当接部が、上記一組の上記押さえ部材のうち、他の上記押さえ部材の上記当接部よりも、上記搬送向きにおける下流側に位置されている請求項1から6のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項8】
上記プラテンは、上記幅方向における上記押さえ部材の間に、上方へ向かって突出され上記搬送向きに沿って伸びる複数のリブを有しており、
上記押さえ部材は、上記当接部の少なくとも一部が、上記リブの上端よりも下方に位置されている請求項1から7のいずれかに記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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