説明

画像記録装置

【課題】インクを吐出するノズル等の記録要素が劣化している場合に、その記録要素が故障する前に記録要素の使用を停止する。
【解決手段】インクを吐出する複数のノズル毎に設けられたヒータ抵抗の抵抗値を測定し、その抵抗値に基づいてヒータ抵抗が所定の状態よりも劣化しているかどうかを判定し、ヒータ抵抗が所定の状態よりも劣化している場合、ヒータ抵抗への電圧の印加を禁止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材に対して画像を記録する画像記録装置、例えば、カラープリンタ等の画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録ヘッドの記録素子としてのノズルからインクを吐出させ、記録紙上に画像記録を行なうインクジェット方式の画像記録装置が知られている。
【0003】
パーソナル・コンピュータや複写装置、ワード・プロセッサ等のOA機器は高機能化に伴うカラー化が進んでおり、これらの機器における画像形成(記録)装置の一つとして様々なカラー・インクジェット記録装置が提供されてきている。
【0004】
インクジェット記録装置の代表的なものとしては、記録ヘッド及びインクタンクを搭載するキャリッジと、記録紙を搬送する搬送機構と、これらの動作を制御する制御手段とを具えたものがある。複数の吐出口からインク液滴を吐出させる記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録紙の搬送方向(以下、副走査方向とも称する)と直交する方向(以下、主走査方向とも称する)にシリアル・スキャンさせ、この間に記録紙に対してインク吐出を行う。一方でこのスキャンとスキャンとの間に記録幅に関連した量で記録紙を間欠搬送し、複数のスキャンと紙搬送を行って全ての画像領域の記録を行なう。
【0005】
カラー記録を行なう場合は、複数種類のインクの色に応じて複数の記録ヘッドを備え、これらの記録ヘッドから吐出されるインク滴を重ねあわせることにより、または近接して着弾させることによりカラー画像を記録する。
【0006】
以上のように、インクジェット記録装置は、比較的簡便で優れた記録手段として幅広い産業分野で需要が高まっており、印字速度の高速化への要求や、より一層高品位である画像の提供が求められている。
【0007】
記録ヘッドの構造としては、一般的にヒータ抵抗と外部電気制御信号を受信するためのトランジスタスイッチとが直列にされた接続の電気回路に対して、所定の記録ヘッド駆動電圧をヒータ抵抗にバイアス電圧として印加させる。この状態で記録ヘッドからのインクの吐出、非吐出を決定する電気制御信号を外部から与え、トランジスタスイッチをONし、通電する。トランジスタスイッチをONし、通電するとヒータ抵抗に電流が流れ、ヒータ抵抗近傍のインクを膜沸騰させることで、インク吐出穴(ノズル)から記録紙に向けてインクを吐出させて画像形成を行う仕組みとなっている。
【0008】
上述したヒータ抵抗の抵抗値には製造上のばらつきが存在するが、インクの吐出特性の安定を図るための技術が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された技術においては、出荷検査時に記録ヘッド内の各ノズルのヒータ抵抗値を測定し、ヘッド内のメモリに情報を記憶させる。そして、その記憶された情報に基づいて、本体がノズル毎に制御を変え、測定されたヒータ抵抗値に最適な制御を行なうようにする方法である。
【0009】
ここで、何らかの要因でヘッドの断線、ショートといった回路の故障が発生し、吐出不良が発生してしまうことがある。インクが吐出されないノズルが存在すると、記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に駆動させた時に、その主走査方向に沿ってインクが吐出されないノズルの位置に記録媒体にすじ状のノイズが発生し、記録品位を著しく低下させることになってしまう。
【0010】
この記録品位の低下を防ぐ手段として、ノズルの吐出不良を検出する方法が特許文献2に開示されている。更にそれに加えて、吐出不良となった記録要素の代わりに、隣接する記録要素を用いて記録を行う方法が特許文献3に開示されている。また、マルチパス印字を行って、吐出不良となったノズルが本来記録を行うべき箇所の印字を、異なる走査の異なる記録要素によって印字を行う方法が特許文献4に開示されている、このように、ノズルの吐出不良を補完して、印字品位の低下を抑制する手段が提案されている。
【0011】
また、他の手段として、ヘッド駆動手段により消費電流予測可能なヘッド駆動(短パルス駆動)を行ない、その時のヘッド消費電流をヘッド電流検出手段により検出し、制御・予測手段により予測電流値と検出電流値を比較してヘッド故障を判断する方法が特許文献5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−168021号公報
【特許文献2】特開平11−188853号公報
【特許文献3】特開2001−315318号公報
【特許文献4】特開2000−211167号公報
【特許文献5】特開2006−218744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したような故障のノズルが存在すると、周辺の故障していないノズルに対してダメージを与え、寿命を早めてしまうという既知の問題があり、これを解決するにはノズルが故障する前に使用を停止する必要がある。
【0014】
しかしながら、特許文献2〜5に記載の技術においては、故障前にノズルの使用を停止することができず、故障ノズルを生じさせてしまい、記録ヘッド自体の寿命を早めてしまうという問題点がある。
【0015】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、インクを吐出するノズル等の記録要素が劣化している場合に、その記録要素が故障する前に記録要素の使用を停止することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、
インクを吐出する複数の記録要素毎に発熱抵抗体が設けられ、画像生成手段の制御によって前記発熱抵抗体に選択的に電圧を印加して当該発熱抵抗体を加熱することで前記複数の記録要素から被記録材に選択的にインクを吐出して記録を行う画像記録装置であって、
前記発熱抵抗体の抵抗値を測定する測定手段と、
前記測定手段にて測定された前記発熱抵抗体の抵抗値に基づいて当該発熱抵抗体が所定の状態よりも劣化しているかどうかを判定し、当該発熱抵抗体が前記所定の状態よりも劣化している場合、前記画像生成手段に対して当該発熱抵抗体への電圧の印加を禁止させる判定手段とを有する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明においては、インクを吐出する複数の記録要素毎に設けられた発熱抵抗体の抵抗値を測定し、その抵抗値に基づいて発熱抵抗体が所定の状態よりも劣化しているかどうかを判定し、発熱抵抗体が所定の状態よりも劣化している場合、その発熱抵抗体への電圧の印加を禁止させる構成としたため、インクを吐出するノズル等の記録要素が劣化している場合に、その記録要素が故障する前に記録要素の使用を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の画像記録装置の実施の一形態となるインクジェット記録装置の主に記録部の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の画像記録装置の実施例1の基本構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した記録ヘッドの内部構造を示す回路図である。
【図4】図2に示したインクジェット記録装置における、ノズルの寿命を判定する手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の画像記録装置の実施例2の基本構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示したインクジェット記録装置における、ノズルの寿命を判定する手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の画像記録装置の実施の一形態となるインクジェット記録装置の主に記録部の概略構成を示す斜視図である。
【0021】
本形態におけるインクジェット記録装置は図1に示すように、インクカートリッジ201及び記録素子列を収納したヘッドカートリッジ202がそれぞれキャリッジ203に着脱自在に装着されて被記録材となる記録紙209に記録を行うものである。
【0022】
インクカートリッジ201は、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクを個別に貯留するものであり、それぞれの貯留室を一体に構成するものである。ヘッドカートリッジ202は、インクカートリッジ201に貯留されるそれぞれのインクに対応した記録素子列が1色あたり2つ、合計8つの収納された1つのユニットの形態で用いられる。すなわち、ヘッドカートリッジ202には、Bk、C、M及びYそれぞれのインクを吐出する記録素子列が各色2つ、これが4色分あり合計8つの記録素子が収納される。キャリッジ203は、ガイド軸210と摺動自在に係合することにより、ガイド軸210に沿って図中x方向に移動することができる。
【0023】
キャリッジ203に対向する面には、エンコーダスケール204が設けられており、150lpiの間隔でスリットが設けられている。そして、エンコーダセンサ(不図示)が発光した光をこのエンコーダスケール204に照射して、キャリッジ203の走査位置に応じ、その透過光に基づいたA相及びB相信号を出力する。B相信号はA相信号よりも90度遅れた位相関係にある。
【0024】
記録紙209は、一対の給紙ローラ207,208に挟持されながらキャリッジ203に対向する領域に給紙されてくる。そして、記録紙209は、紙送りローラ205と補助ローラ206とに挟持されて図中y方向に搬送されていく。
【0025】
(実施例1)
図2は、本発明の画像記録装置の実施例1の基本構成を示すブロック図である。
【0026】
本実施例における画像記録装置は図2に示すように、画像生成手段となる画像生成IC101と、記録ヘッド104と、オンキャリッジIC109と、電圧源選択回路107と、第1の電圧源105及び第2の電圧源106とを有している。
【0027】
画像生成IC101は、インクジェット記録装置本体に備えられホストから送られてきた画像データを受信し、受信した画像データを、記録ヘッド104からインクを吐出するための駆動データへと加工する。そして、記録ヘッド104がインクを吐出するタイミングを与える駆動タイミング信号と共に、加工した駆動データを記録ヘッド104へ送信する。画像生成IC101内部には、記録データ生成回路102と、記録タイミング生成回路103とが備えられている。記録データ生成回路102は、画像データを記録ヘッド104からインクを吐出するための駆動データへと加工し、記録ヘッド104へ送信する。記録タイミング生成回路103は、記録ヘッド104がインクを吐出するタイミングを与える駆動タイミング信号を生成し、記録ヘッド104へ送信する。また、記録タイミング生成回路103にて生成される駆動タイミング信号は、オンキャリッジIC109内の、A/D変換回路110にも送信される。これについてはA/D変換回路110の説明時に後述する。
【0028】
記録ヘッド104は、画像生成IC101から送信された駆動データと駆動タイミングに基づいて、記録要素となる複数のノズルから選択的にインクを吐出し、記録紙209上に画像を形成する。複数のノズルのそれぞれには、発熱抵抗体となるヒータ抵抗が設けられており、画像生成IC101の制御によってこのヒータ抵抗に選択的に電圧が印加されてヒータ抵抗が加熱されることでインクを吐出する。また、記録ヘッド104は、その内部にROM等の不揮発性の記憶装置(不図示)を備えており、出荷検査時に測定した記録ヘッド104内の複数のノズルそれぞれのヒータ抵抗値を記憶している。
【0029】
図3は、図2に示した記録ヘッド104の内部構造を示す回路図である。
【0030】
図2に示した記録ヘッド104は図3に示すように、複数のノズル毎に、ヒータ抵抗301が設けられている。また、ヒータ抵抗301のそれぞれには、ヒータ抵抗301に流れる電流の通電/非通電のスイッチ制御を行うための電流スイッチ制御用トランジスタ(MOSFET)302が接続されている。さらに、この電流スイッチ制御用トランジスタ302のゲート端子にはANDゲート303が接続されており、画像生成IC101から送信される駆動データ信号と駆動タイミング信号が入力される。そして、画像生成IC101から送信される駆動データ信号により、インクの吐出を行う所望のノズルに対応する入力信号をアサートし、インクの吐出を行う所望のタイミングで駆動タイミング信号をアサートすることで、ANDゲート303の出力がアサートされ、電流スイッチ制御用トランジスタ302のゲート端子に電圧を選択的に印加する。
【0031】
電圧源105は、21.5Vの電圧源であり、通常の印字動作を行う際の電圧源となる。また、電圧源106は、5Vの電圧源であり、記録ヘッド104内のノズルに設けられたヒータ抵抗の劣化状態を示す寿命判定を行う際の電圧源となる。
【0032】
電圧源選択回路107は、記録ヘッド104へ供給する電圧源を、内部の回路を切り替えることで電圧源105と電圧源106とのいずれかから選択する。記録紙209への記録を行う場合は電圧源105による電圧がヒータ抵抗301に印加され、また、ヒータ抵抗301の抵抗値を測定する場合は電圧源106による電圧がヒータ抵抗301に印加されるように記録ヘッド104へ供給する電圧源を内部の回路によって切り替える。なお、電圧源選択回路107の切り替えを行うのは、画像生成IC101でもよいし、後述するオンキャリッジIC109でもよい。
【0033】
電圧源105と電圧源選択回路107及びA/D変換回路110との間には抵抗108が接続されている。電圧源選択回路107により、電圧源106による電圧を記録ヘッド104に印加し、画像生成IC101から送信される駆動データ信号と駆動タイミング信号により、1つのヒータ抵抗301にのみ電流を流すようにした場合、5Vを抵抗108とヒータ抵抗301とで分圧した電圧値がA/D変換回路110に印加される。これにより、ヒータ抵抗301の抵抗値が測定されることになり、電圧源106、抵抗108及び電圧源選択回路107とから、本発明における測定手段が構成される。
【0034】
オンキャリッジIC109は、測定されたヒータ抵抗301の抵抗値を読み込み、対応するノズルの寿命を判定する。オンキャリッジIC109内部には、A/D変換回路110と、判定手段となるヒータ抵抗寿命判定回路111と、LUT112とが備えられている。A/D変換回路110は、記録タイミング生成回路103にて生成された、記録ヘッド104がインクを吐出するための駆動タイミング信号をトリガとして、入力されたアナログ電圧値をデジタル値に変換し、変換したデータをヒータ抵抗寿命判定回路111へ送信する。このタイミングでA/D変換を行うことにより、抵抗108と測定を行うヒータ抵抗301とで5Vを分圧したアナログ電圧値を取り込むことが可能となる。LUT112は、A/D変換回路110が出力する値とヒータ抵抗値が対応付けされたテーブルを保持する。ヒータ抵抗寿命判定回路111は、A/D変換回路110からデータを受信すると、LUT112を参照し、注目するノズルに設けられたヒータ抵抗の抵抗値を導き出す。そして、導き出した抵抗値と、出荷検査時に測定したそのノズルに設けられたヒータ抵抗の抵抗値とを比較し、導き出した抵抗値が、出荷検査時に測定された抵抗値よりも予め決められた範囲となる10%以上変動しているかどうかを確認することで、そのヒータ抵抗が所定の状態よりも劣化しているかどうかを判定する。導き出した抵抗値が、出荷検査時に測定された抵抗値よりも10%以上変動していた場合、そのヒータ抵抗が所定の状態よりも劣化していると判定し、記録データ生成回路102に対してそのヒータ抵抗が設けられたノズルについての駆動データの送信を停止する。これにより、ヒータ抵抗が所定の状態よりも劣化していて寿命であると判定されたノズルのその後の使用を禁止する。
【0035】
ここで、ノズルの寿命判定を行う場合に、記録ヘッド104へ供給する電圧源を5Vとする理由について説明する。
【0036】
通常の印字を行う場合には21.5Vの電圧を約1マイクロ秒程度印加し、ヒータ抵抗301を急激に熱することでヒータ抵抗301の近傍のインクを膜沸騰させインクを吐出させる。しかし、ヒータ抵抗301に電圧を長時間印加し続けると、ヒータ抵抗301にダメージが与えられることや、最悪の場合、ヒータ抵抗301が断線してしまう恐れがある。
【0037】
一方、ヒータ抵抗301の抵抗値を測定するためには、電圧を印加した後、A/D変換回路110へ入力される電圧が安定するまでの時間を考慮すると数十マイクロ秒程度の時間が必要とされる。
【0038】
このため、ノズルの寿命測定を行う場合は電圧源を5Vとして、数十マイクロ秒程度通電してもヒータ抵抗301にダメージを与えないようにしている。なお、本実施例では、寿命測定用の電圧源は5Vとしているが、ヒータ抵抗301にダメージを与えないレベルであれば、それ以外の電圧値でも構わない。
【0039】
以下に、上記のように構成されたインクジェット記録装置における、ノズルの寿命を判定する手順について説明する。
【0040】
図4は、図2に示したインクジェット記録装置における、ノズルの寿命を判定する手順を説明するためのフローチャートである。
【0041】
ノズルの寿命判定のための測定を開始すると(ステップ501)、まず、電圧源選択回路107を切り替えて、記録ヘッド104へ供給する電圧源を5Vの電圧源106とする(ステップ502)。
【0042】
次に、抵抗値の測定を行うヒータ抵抗301が設けられたノズルのみを通電するような駆動データを画像生成IC101から記録ヘッド104に送信する(ステップ503)。これにより、5Vを抵抗108とヒータ抵抗301とで分圧した電圧値がA/D変換回路110に印加される。
【0043】
そして、A/D変換回路110において、記録タイミング生成回路103にて生成された駆動タイミング信号をトリガとして、印加されたアナログ電圧値をデジタル値に変換し、変換したデータをヒータ抵抗寿命判定回路111へ送信する(ステップ504)。
【0044】
ヒータ抵抗寿命判定回路111においては、LUT112を参照して注目するノズルに設けられたヒータ抵抗301の抵抗値を導出する(ステップ505)。
【0045】
そして、ヒータ抵抗寿命判定回路111において、ステップ505で導出した抵抗値が出荷検査時に測定された抵抗値よりも10%以上変動しているか否かを判定する(ステップ506)。
【0046】
ステップ505で導出した抵抗値が10%以上変動していた場合は、そのヒータ抵抗301が所定の状態よりも劣化していると判定し、記録データ生成回路102に対してそのヒータ抵抗301が設けられたノズルについての駆動データの送信を停止する。これにより、ヒータ抵抗が所定の状態よりも劣化していて寿命であると判定されたノズルのその後の使用を禁止する(ステップ507)。
【0047】
そして、全てのノズルについて、ヒータ抵抗301の抵抗値の測定が終了したかどうかを判断し(ステップ508)、終了している場合は、電圧源選択回路107を切り替えて、記録ヘッド104へ供給する電圧源を21.5Vの電圧源105とする(ステップ509)。
【0048】
そして、測定を終了する。
【0049】
また、抵抗値が10%以上変動していない場合は、ステップ507の処理は行わずにステップ508の処理に移行し、また、全てのノズルについてヒータ抵抗301の抵抗値の測定が終了していない場合は、ステップ503に戻り、まだ測定を行っていないノズルに設けられたヒータ抵抗の抵抗値の測定を行う。
【0050】
上述したように、本実施例においては、実機動作中の所定のタイミングに、ノズルの寿命を判定することを可能にし、故障前にノズルの使用を停止することが可能となる。
【0051】
なお、本実施例においては、ヒータ抵抗301の抵抗値が、出荷検査時に測定された抵抗値よりも10%以上変動していた場合に、そのノズル使用を禁止するようにしているが、この変動割合については任意であり、5%であっても20%であってもノズルが故障する前であれば良い。また、測定を行うタイミングについては、タイミングを規定する要素が特に無いので、任意で構わず、所定の印字枚数毎でも良いし、所定の時間毎でも良い。
【0052】
(実施例2)
図5は、本発明の画像記録装置の実施例2の基本構成を示すブロック図である。
【0053】
本実施例における画像記録装置は図4に示すように、画像生成手段となる画像生成IC401と、記録ヘッド404と、オンキャリッジIC409と、電圧源選択回路407と、第1の電圧源405及び第2の電圧源406とを有している。
【0054】
画像生成IC401は、インクジェット記録装置本体に備えられホストから送られてきた画像データを受信し、受信した画像データを、記録ヘッド404からインクを吐出するための駆動データへと加工する。そして、記録ヘッド404がインクを吐出するタイミングを与える駆動タイミング信号と共に、加工した駆動データを記録ヘッド404へ送信する。画像生成IC401内部には、記録データ生成回路402と、記録タイミング生成回路403とが備えられている。記録データ生成回路402は、画像データを記録ヘッド404からインクを吐出するための駆動データへと加工し、記録ヘッド404へ送信する。記録タイミング生成回路403は、記録ヘッド404がインクを吐出するタイミングを与える駆動タイミング信号を生成し、記録ヘッド404へ送信する。また、記録タイミング生成回路403にて生成される駆動タイミング信号は、オンキャリッジIC409内の、A/D変換回路410にも送信される。これについてはA/D変換回路410の説明時に後述する。
【0055】
記録ヘッド404は、画像生成IC401から送信された駆動データと駆動タイミングに基づいて、記録要素となる複数のノズルから選択的にインクを吐出し、記録紙209上に画像を形成する。複数のノズルのそれぞれには、発熱抵抗体となるヒータ抵抗が設けられており、画像生成IC401の制御によってこのヒータ抵抗に選択的に電圧が印加されてヒータ抵抗が加熱されることでインクを吐出する。また、記録ヘッド404は、その内部にROM等の不揮発性の記憶装置(不図示)を備えており、出荷検査時に測定した記録ヘッド404内の複数のノズルそれぞれのヒータ抵抗値を記憶している。なお、記録ヘッド404の内部構造は、図3に示したものと同様のものとなっている。
【0056】
電圧源405は、21.5Vの電圧源であり、通常の印字動作を行う際の電圧源となる。また、電圧源406は、5Vの電圧源であり、記録ヘッド404内のノズルに設けられたヒータ抵抗の劣化状態を示す寿命判定を行う際の電圧源となる。
【0057】
電圧源選択回路407は、記録ヘッド404へ供給する電圧源を、内部の回路を切り替えることで電圧源405と電圧源406とのいずれかから選択する。記録紙209への記録を行う場合は電圧源405による電圧がヒータ抵抗に印加され、また、ヒータ抵抗の抵抗値を測定する場合は電圧源406による電圧がヒータ抵抗に印加されるように記録ヘッド404へ供給する電圧源を内部の回路によって切り替える。なお、電圧源選択回路107の切り替えを行うのは、画像生成IC401でもよいし、後述するオンキャリッジIC409でもよい。
【0058】
電圧源405と電圧源選択回路407及びA/D変換回路410との間には抵抗408が接続されている。電圧源選択回路407により、電圧源406による電圧を記録ヘッド404に印加し、画像生成IC401から送信される駆動データ信号と駆動タイミング信号により、1つのヒータ抵抗にのみ電流を流すようにした場合、5Vを抵抗408とヒータ抵抗とで分圧した電圧値がA/D変換回路410に印加される。これにより、ヒータ抵抗の抵抗値が測定されることになり、電圧源406、抵抗408及び電圧源選択回路407とから、本発明における測定手段が構成される。
【0059】
オンキャリッジIC409は、測定されたヒータ抵抗の抵抗値を読み込み、対応するノズルの寿命を判定する。オンキャリッジIC409内部には、A/D変換回路410と、判定手段となるヒータ抵抗寿命判定回路411と、LUT412と、記憶手段となるRAM413と、バス414とが備えられている。A/D変換回路110は、記録タイミング生成回路103にて生成された、記録ヘッド404がインクを吐出するための駆動タイミング信号をトリガとして、入力されたアナログ電圧値をデジタル値に変換し、変換したデータをRAM413に格納する。このタイミングでA/D変換を行うことにより、抵抗408と測定を行うヒータ抵抗とで5Vを分圧したアナログ電圧値を取り込むことが可能となる。LUT412は、A/D変換回路410が出力する値とヒータ抵抗値が対応付けされたテーブルを保持する。ヒータ抵抗寿命判定回路411は、注目するノズルについて、所定の周期で過去3回前までに測定したヒータ抵抗の抵抗値をRAM413から読み出し、LUT412を参照し、それぞれについてヒータ抵抗の抵抗値を導き出す。そして、導き出した抵抗値の最小値と最大値との差が、その3回のうち最も過去の抵抗値の10%以上であるかどうかを確認することで、ヒータ抵抗の抵抗値の変動量が所定値よりも大きいかどうかを判定する。そのヒータ抵抗が所定の状態よりも劣化しているかどうかを判定する。導き出した抵抗値の最小値と最大値との差が、その3回のうち最も過去の抵抗値の10%以上であり、ヒータ抵抗の抵抗値の変動が所定値よりも大きな場合、そのヒータ抵抗が所定の状態よりも劣化していると判定し、記録データ生成回路402に対してそのヒータ抵抗が設けられたノズルについての駆動データの送信を停止する。これにより、ヒータ抵抗が所定の状態よりも劣化していて寿命であると判定されたノズルのその後の使用を禁止する。
【0060】
RAM413は、A/D変換回路410が出力したデータを格納する。これにより、RAM413には、ヒータ抵抗毎に、所定の周期で測定された複数の抵抗値が格納されている。RAM413の容量については、総ノズル数とA/D変換回路410が出力するビット長と過去何回分の測定データを保持するかにより決定する。
【0061】
バス414は、A/D変換回路410とヒータ抵抗寿命判定回路411とRAM413とを接続するものである。
【0062】
以下に、上記のように構成されたインクジェット記録装置における、ノズルの寿命を判定する手順について説明する。
【0063】
図6は、図5に示したインクジェット記録装置における、ノズルの寿命を判定する手順を説明するためのフローチャートである。
【0064】
ノズルの寿命判定のための測定を開始すると(ステップ601)、まず、電圧源選択回路407を切り替えて、記録ヘッド404へ供給する電圧源を5Vの電圧源406とする(ステップ602)。
【0065】
次に、抵抗値の測定を行うヒータ抵抗が設けられたノズルのみを通電するような駆動データを画像生成IC401から記録ヘッド404に送信する(ステップ603)。これにより、5Vを抵抗408とヒータ抵抗とで分圧した電圧値がA/D変換回路410に印加される。
【0066】
次に、A/D変換回路410において、記録タイミング生成回路403にて生成された駆動タイミング信号をトリガとして、印加されたアナログ電圧値をデジタル値に変換する(ステップ604)。
【0067】
そして、デジタル値に変換したデータをRAM413に格納する(ステップ605)。
【0068】
その後、ヒータ抵抗寿命判定回路411において、RAM413に過去3回分の測定データが存在するか否かを判断し(ステップ606)、過去3回分の測定データが存在しない場合にはステップ603に戻る。
【0069】
一方、RAM413に過去3回分の測定データが存在する場合は、ヒータ抵抗寿命判定回路411において、RAM413から過去3回分のデータを読み出す(ステップ607)。
【0070】
次に、ヒータ抵抗寿命判定回路411において、LUT412を参照し、RAM413から読み出した3回分のデータのそれぞれについて、ノズルに設けられたヒータ抵抗の抵抗値を導出する(ステップ608)。
【0071】
そして、ヒータ抵抗寿命判定回路411において、ステップ608にて導出した抵抗値の最小値と最大値の差が、その3回のうち最も過去の抵抗値の10%以上であるか否かを判断する。ステップ608にて導出した抵抗値の最小値と最大値の差が、その3回のうち最も過去の抵抗値の10%以上である場合は、そのヒータ抵抗が所定の状態よりも劣化しており、ノズルの寿命と判定し(ステップ609)、記録データ生成回路402に対してそのヒータ抵抗が設けられたノズルについての駆動データの送信を停止する(ステップ610)。
【0072】
そして、全てのノズルについて、ヒータ抵抗の抵抗値の測定が終了したかどうかを判断し(ステップ611)、終了している場合は、電圧源選択回路407を切り替えて、記録ヘッド404へ供給する電圧源を21.5Vの電圧源405とする(ステップ612)。
【0073】
そして、測定を終了する。
【0074】
また、ステップ608にて導出した抵抗値の最小値と最大値の差が、その3回のうち最も過去の抵抗値の10%以上でない場合は、ステップ610の処理は行わずにステップ611の処理に移行し、また、全てのノズルについてヒータ抵抗の抵抗値の測定が終了していない場合は、ステップ603に戻り、まだ測定を行っていないノズルに設けられたヒータ抵抗の抵抗値の測定を行う。
【0075】
上述したように、本実施例においては、実機動作中の所定のタイミングに、ノズルの寿命を判定することを可能にし、故障前にノズルの使用を停止することが可能となる。
【0076】
なお、本実施例においては、過去3回に測定した抵抗値の最小値と最大値の差が最も過去の抵抗値の10%以上であった場合に、以後、そのノズルの使用を禁止するようにしている。しかしながら、過去何回分の抵抗値を参照するかは任意であり、また、過去に測定した抵抗値の最小値と最大値の差と比較する抵抗値は、そのうちの何回目の抵抗値であっても良いし、また、過去に測定した最小値と最大値の差が、参照する抵抗値の何%であるかは任意である。また、測定を行うタイミングについては、タイミングを規定する要素が特に無いので、任意で構わず、所定の印字枚数毎でも良いし、所定の時間経過毎でも良い。
【0077】
また、インクジェット記録装置においては、一般的に、ノズルにおけるインクの吐出不良を検出する不良検出手段が設けられている。そこで、上述した実施例1,2において、ヒータ抵抗寿命判定回路111,411にて所定の状態よりも劣化していると判定されたヒータ抵抗が設けられたノズルについては、その判定後はインクの吐出不良の検出を行わない構成とすることにより、吐出不良検出動作全体に要する時間を短縮することが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
101,401 画像生成IC
102,402 記録データ生成回路
103,403 記録タイミング生成回路
104,404 記録ヘッド
105,106,405,406 電圧源
107,407 電圧源選択回路
108,408 抵抗
109,409 オンキャリッジIC
110,410 A/D変換回路
111,411 ヒータ抵抗寿命判定回路
112,412 LUT
201 インクカートリッジ
202 ヘッドカートリッジ
203 キャリッジ
204 エンコーダスケール
205 紙送りローラ
206 補助ローラ
207,208 給紙ローラ
209 記録紙
210 ガイド軸
301 ヒータ抵抗
302 電流スイッチ制御用トランジスタ
303 ANDゲート
413 RAM
414 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数の記録要素毎に発熱抵抗体が設けられ、画像生成手段の制御によって前記発熱抵抗体に選択的に電圧を印加して当該発熱抵抗体を加熱することで前記複数の記録要素から被記録材に選択的にインクを吐出して記録を行う画像記録装置であって、
前記発熱抵抗体の抵抗値を測定する測定手段と、
前記測定手段にて測定された前記発熱抵抗体の抵抗値に基づいて当該発熱抵抗体が所定の状態よりも劣化しているかどうかを判定し、当該発熱抵抗体が前記所定の状態よりも劣化している場合、前記画像生成手段に対して当該発熱抵抗体への電圧の印加を禁止させる判定手段とを有する画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置において、
画像生成手段の制御によって前記発熱抵抗体に選択的に電圧を印加するための電圧源を有し、
該電圧源は、第1の電圧源と、該第1の電圧源よりも低い電圧を前記発熱抵抗体に印加する第2の電圧源とを有し、
被記録材への記録を行う場合は前記第1の電圧源による電圧が前記発熱抵抗体に印加され、また、前記発熱抵抗体の抵抗値を測定する場合は前記第2の電圧源による電圧が前記発熱抵抗体に印加されるように、前記画像生成手段の制御によって前記発熱抵抗体に選択的に印加される電圧を切り替える電圧源選択手段を有する画像記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像記録装置において、
前記判定手段は、前記発熱抵抗体の抵抗値が予め決められた範囲から外れていた場合、当該発熱抵抗体が前記所定の状態よりも劣化していると判定する画像記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像記録装置において、
1つの前記発熱抵抗体毎に前記測定手段にて所定の周期で測定された複数の抵抗値を格納するための記憶手段を有し、
前記判定手段は、前記記憶手段に格納された前記複数の抵抗値の変動量が所定値よりも大きな場合、当該発熱抵抗体が前記所定の状態よりも劣化していると判定する画像記録装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像記録装置において、
前記記録要素におけるインクの吐出不良を検出する不良検出手段を有し、
該不良検出手段は、前記判定手段にて前記所定の状態よりも劣化していると判定された発熱抵抗体が設けられた記録要素については、当該判定後はインクの吐出不良の検出を行わない画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−82080(P2013−82080A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221774(P2011−221774)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】