説明

画像診断装置及び画像処理装置

【課題】映像信号と非映像信号を同期させて生成した動画ファイル中の中から、所望の動作タイミングにおける動画の検索を容易にする画像診断装置及び画像処理装置を提供する。
【解決手段】検査対象を画像化する撮像部10と、撮像部10が撮像した画像から映像信号を作成する画像処理部20と、映像信号と、撮像部10を操作する操作者及び検査対象の、撮像中における動作・操作に関する音声信号と、を用いて動画ファイルを作成して記録する記録部30と、音声信号強度が所定の閾値以上であるか否かを監視する音声解析部と、音声信号強度が所定の閾値以上であることを操作者に通知する通知部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断装置及び画像処理装置に関し、特に診断時の診断精度を向上することができる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手術映像の記録は、診断の向上は勿論のこと、今後の手術技術の向上に有用な資料であり、後進指導、学会発表、インフォームド・コンセントの点などからも重要とされている。X線を通して得られる透視像をモニタに映像されるX線画像診断装置において、近年、診断を向上させるため、透視像の他に、透視像と異なる像(可視像等)を同一のモニタに映像させ、それを記録する試みがなされるようになってきた。その一例として、特許文献1に記載の画像診断装置では、画像診断装置が、映像信号から動画ファイルを作成する際に、動作タイミングに関する非映像情報を同時に動画ファイルに組み込む機能を持つ記録装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−269051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の画像診断装置では、動画ファイルに非映像情報を同時に組み込むことで、動画ファイルの再生時に術中の動作タイミングを知ることができるが、動画ファイルのうち、ある動作タイミングにおける動画を検索するために、動画ファイルを再生しながら術者が検索しなければならなかった。そのため、動画ファイルが長時間に及ぶ場合には、術者による検索の手間がかかるという問題が特に顕著となるという問題があった。また、特に嚥下検査では、検査対象が物を飲み込むときの音が耳では聴こえづらく、この音を頼りに術者が検索を行うのが困難であるという問題や、スピーカーがない環境では音声が聴こえないという問題があった。さらには、静止画として診断するときには音声が意味を成さないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、映像信号と非映像信号を同期させて生成した動画ファイルの中から、所望の動作タイミングにおける動画の検索を容易にする画像診断装置及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る画像診断装置は、検査対象を画像化する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像から映像信号を作成する画像処理手段と、前記映像信号と、前記撮像手段を操作する操作者及び前記検査対象の、撮像中における動作・操作に関する音声信号と、を用いて動画ファイルを作成して記録する記録手段と、前記音声信号強度が所定の閾値以上であるか否かを監視する音声解析手段と、前記音声信号強度が前記所定の閾値以上であることを通知する通知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
更に、透視像をモニタ上に表示させ記録する際に、術者や検査対象(被検体)の声などの音声信号の波形グラフを前記透視像と同期して同一モニタ上に表示し、音声から術中や検査対象の動作タイミングを通知してもよい。
【0008】
また、本発明に係る画像処理装置は、検査対象を画像化する撮像手段が撮像した画像から映像信号を作成する画像処理手段と、前記映像信号と、前記撮像手段を操作する操作者及び前記検査対象の、撮像中における動作・操作に関する音声信号と、を用いて動画ファイルを作成して記録する記録手段と、前記音声信号強度が所定の閾値以上であるか否かを監視する音声解析手段と、前記音声信号強度が前記所定の閾値以上であることを通知する通知手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によれば、録音した音声だけではわからないような術者の動作タイミングも、術者や検査対象の音声信号を用いてそのタイミングを探すことで、正確な術者や検査対象の動作タイミングを知ることができる。また、音声解析手段により音声の波形グラフを同期させて表示する場合には、音声が聞けないような環境や静止画として観察する場合でも、波形グラフを視認して動作タイミングを把握することにより正確な診断が可能となり、診断の向上や今後の手術技術の向上といった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係るX線透視装置の概要を示すブロック図
【図2】記録部30の概要を示すブロック図
【図3】ビデオコンバータ36の構成を示すブロック図
【図4】記録プログラムの構成を示すブロック図
【図5】第一実施形態の処理の流れを示すフローチャート
【図6】記録プログラム34を起動したときの表示画面の一例を示す模式図
【図7】音声信号強度が閾値以上となったときの表示画面の一例を示す模式図であって、(a)は、閾値以上になったことを示すマーカーを表示した画面であり、(b)は、閾値以上になったことを示す枠313が強調表示された画面である。
【図8】第二実施形態の処理の流れを示すフローチャート
【図9】第二実施形態で表示される表示画面の一例を示す模式図
【図10】タイムスタンプの一例を示す模式図
【図11】第三実施形態の処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、X線画像診断装置(特にX線透視装置)を例にして本発明の実施の形態を説明するが、本発明はX線透視装置のほか、動画を生成する機能が付加された装置であれば、例えばMRI装置、PET装置、超音波診断装置、内視鏡装置など、すべての画像診断装置に適用することができる。また本発明は、これら画像診断装置を単独で用いるのではなく、2以上の画像診断装置からの映像信号を用いて、複合的な診断情報を提供する統合された画像診断装置にも適用することができ、より利用価値の高い診断情報を提供することができる。
【0012】
図1は、本実施形態に係るX線透視装置の概要を示すブロック図である。本実施形態に係るX線透視装置は、検査室マイク及び操作室マイクを外部音声信号として利用する。このX線透視装置は、主たる構成として、X線透視像を取得する撮像部10と、撮像部10が撮像した画像を処理し、映像信号を生成する画像処理部20と、画像処理部20が生成した映像信号1(透視像201)を入力し、動画ファイルを生成する記録部30とを備えており、画像処理部20と記録部30は、撮像部10が置かれた検査室とは別の操作室に配置されている。また検査室と操作室には、それぞれ、撮像中に室内で発せられた操作者や検査対象の音声などを検出し、音声信号を生成するマイク41、42が備えられている。これらマイク41、42が生成する音声信号1、2は、記録部30に送られる。
【0013】
撮像部10には、X線をパルス照射するX線源11と、X線源11から出て検査対象(ここでは患者)を透過したX線を検出するX線検出器12と、検査対象を寝かせてX線撮影に応じて移動し、あるいは角度を変更して良好な撮像ができるようにするための機構を備えた寝台装置13と、X線源11のパルス照射間隔の調整や、それに同期したX線検出器12からの画像信号の読出し、また寝台装置13の移動制御を行う制御装置14と、撮像の開始と終了を指示するためのスイッチ15とが備えられている。このスイッチ15を操作することにより、予め設定された透視条件(X線管の管電圧、管電流、曝照量(mAs)、曝照時間(msec))で連続的なX線の照射と透過X線検出とを行なう透視撮像を開始し或いは終了する。スイッチ15は、記録部30における記録開始のスイッチを兼ねている。
【0014】
画像処理部20は、X線検出器12が検出するX線の強度に対応する電気信号に対し、必要に応じて、フィルタ処理、差分処理等の信号処理を行うと共に、フレームごとに垂直同期信号を含む映像信号を生成する。画像処理部20には、撮像部10による撮像の開始と終了を指示するためのスイッチ21が備えられている。スイッチ21の機能は、撮像部10に備えられたスイッチ15と同様である。
【0015】
記録部30は、画像処理部20からの映像信号1が入力され、表示装置(モニタ等)への表示や記録媒体への記録を行なうための動画ファイルを作成するものであり、画像処理部20からの映像信号ほかに、外部の撮像手段であるカメラ(例えば、検査対象を撮像する可視光カメラ)50からの映像信号2も入力される。
【0016】
またこのX線透視装置には、作成した動画ファイルを表示するとともに操作者の操作用ユーザーインターフェイス(GUI)を兼ねるモニタ31(スピーカー付)やマウス32やキーボードからなる入力装置及び外部記憶装置60が備えられている。なお図では、モニタ31や入力装置が記録部30に接続された状態を示しているが、画像処理部20と記録部30とは同一のワークステーションに組み込むことができ、その場合には、そのワークステーションに備えられた入出力装置が、上記モニタ31や入力装置となる。また画像処理部20と記録部30とが、別個のコンピュータ上に構築されている場合には、それぞれがモニタや入力装置を備えていてもよい。
【0017】
記録部30の詳細を図2に示す。図2は、記録部30の概要を示すブロック図である。記録部30は、X線透視装置の画像処理部20からの映像信号1と、カメラ50からの映像信号2とを入力し、それぞれの画面を含む画像信号を生成するビデオコンバータ36と、検査室マイク41からの音声信号1と、操作室マイク42からの音声信号2とを入力し、それらを合成したディジタル音声信号を生成する音声ミキサー37と、ビデオコンバータ36から出力される画像信号と音声ミキサー37から出力される音声信号とを用いて動画ファイルを生成するキャプチャー38と、動画ファイルの生成に用いられる種々の画像ファイルやプログラムを格納するメモリ39と、記録部30の動作を制御する主制御部35とを備えている。記録部30の各部は、メモリ39に予め格納された所定の記録プログラム34を主制御部35にロードすることによって動作する。キャプチャー38で合成された音声付動画ファイルは、モニタ31に表示されたり、外部記憶装置60に動画ファイルとして保存されたりする。
【0018】
次に図3に基づいてビデオコンバータ36について説明する。図3は、ビデオコンバータ36の構成を示すブロック図である。ビデオコンバータ36は、アナログ信号である各映像信号1、2をディジタル信号に変換するA/D変換器361a、361bと、各ディジタル映像信号を、テレビ画像の視野サイズを変えずにフレーム毎に記憶する主画像用フレームメモリ362a、362bと、各ディジタル映像信号を、テレビ画像の視野サイズを縮小してフレーム毎に記憶する副画像用フレームメモリ363a、363bと、一方の映像信号の主画像用フレームメモリの出力と他方の映像信号の副画像用フレームメモリの出力を選択するための切替スイッチ364と、主画像用フレームメモリと副画像用フレームメモリとの合成された出力をアナログ信号に変換するD/A変換器365とを備えている。主画像用フレームメモリ及び副画像用フレームメモリへの書き込み、読み出し並びに切替スイッチ364の動作は主制御部35(記録プログラム34)により制御される。
【0019】
主制御部35は、主画像用フレームメモリ及び副画像用フレームメモリの画像データを、それぞれアドレスを指定して読み出し、D/A変換器365を介してキャプチャー38に入力する。キャプチャー38は、音声ミキサー37から出力されたディジタル音声信号を加え、モニタ31で表示可能なファイル形式の音声付動画ファイルに変換する。このとき、主制御部35の記録プログラム34に含まれる音声解析プログラムにより、ディジタル音声信号解析が行われ、波形グラフが生成される。生成された波形グラフも、キャプチャー38に出力される。そして、キャプチャー38において、波形グラフを含む動画ファイルが生成され、モニタ31に動画として表示されるとともに、磁気テープ、光ディスク、DVD等の外部記憶装置60に格納される。
【0020】
次に図4に基づいて記録プログラム34の構成について説明する。図4は、記録プログラムの構成を示すブロック図である。
【0021】
記録プログラム34は、ビデオコンバータ36、音声ミキサー37、キャプチャー38における映像信号と音声信号の合成処理及び外部記憶装置60への書込処理やモニタ31への表示処理を行う記録制御部34aと、音声信号1、音声信号2、又は音声ミキサー37から出力される音声信号(音声信号1と音声信号2との合成信号)の信号強度から波形グラフを作成したり、音声信号強度が閾値以上であるか否かを監視する音声解析部34bと、音声信号強度が閾値以上であることを術者に知らせる通知部34cと、音声信号強度が閾値以上であるときの映像信号を基に静止画像からなるインデックス画像を生成・表示するインデックス画像処理部34dと、音声信号強度が閾値以上であるときの映像信号が記録された時の、記録開始時を基準としたときの時刻を記録するタイムスタンプ生成部34eと、指定されたインデックス画像やタイムスタンプに記録された開始時刻から動画ファイルを再生したり、指定されたインデックス画像や開始時刻よりも所定時間前から動画ファイルを再生する再生部34fと、音声信号強度が閾値未満となったときからの経過時間を計測し、所定時間以上経過したか否かを監視する計時部34gと、映像信号の画質モードを高画質モード及び低画質モードに調整する画質調整部34hと、を備える。
【0022】
以下、上述した記録部30の動作を中心に、X線透視装置の動作を説明する。
【0023】
<第一実施形態>
第一実施形態は、音声信号強度が閾値以上となったことを術者に知らせる態様である。以下、図5から図7に基づいて第一実施形態を説明する。図5は、第一実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。図6は、記録プログラム34を起動したときの表示画面の一例を示す模式図である。図7は、音声信号強度が閾値以上となったときの表示画面の一例を示す模式図であって、(a)は、閾値以上になったことを示すマーカーを表示した画面であり、(b)は、閾値以上になったことを示す枠313が強調表示された画面である。以下、図5のステップに沿って説明する。
【0024】
記録部30の電源を入れると自動的に記録プログラム34及びそれに含まれる音声解析部34bが起動する(ステップS101)。表示画面がモニタ31に表示される(ステップS102)。表示画面には、図6に示すように、記録開始のアイコン211が表示され、記録プログラム34は、マウス32やキーボードの入力操作を受け付ける。画面に表示された記録開始のアイコン211もしくは、画像処理部20の透視のスイッチ21及び/又は撮像部10のスイッチ15がONにされると(ステップS103)これと同期して、透視像(映像信号1)と外部入力映像(映像信号2)が記録部30に記録される(ステップS104)。
【0025】
具体的には、アナログ信号である映像信号1と映像信号2とは、ビデオコンバータ36において、それぞれA/D変換された後、視野サイズの異なるフレームメモリ(主画面用フレームメモリ、副画面用フレームメモリ)に記憶される。切替スイッチ364が、例えば主画面用フレームメモリから読み出された映像信号1と、副画面用フレームメモリから読み出された映像信号2とを選択するように設定されている場合には、映像信号1の画像に映像信号2の画像をはめ込んだ動画ファイルが作成される。
【0026】
また、操作室マイク42から得られる操作室音声と検査室マイク41から得られる検査室音声の2つの音声信号は、記録部30の音声ミキサー37によりミキシングされ1つの音声信号となり、記録プログラムにより透視像(映像信号1)と外部入力映像(映像信号2)とともに1つのデータ(動画ファイル)として記録される。それにより記録された映像には、術中の映像と同期した検査室と操作室の音声が付加される。動画ファイルの作成及び音声付加についての一連の処理は記録制御部34aにより実行される。
【0027】
透視が終了して、画像処理部20の透視のスイッチ21及び/又は撮像部10のスイッチ15がOFFにされると(ステップS105)、映像の記録と音声の記録(動画ファイルの作成)を一旦停止する(ステップS106)。その後、記録プログラムの終了動作が行われると(ステップS110)、記録プログラムを終了する(ステップS111)。記録プログラムの終了動作が行われない場合は、ステップS102へ戻り、記録開始ボタンを表示して記録開始操作の待機となる。
【0028】
一方、上記ステップS101において記録プログラムが起動すると、音声信号の強度監視処理も開始する(ステップS107)。音声解析部34bは、音声ミキサー37から出力されるディジタル音声信号の解析を開始する。具体的には、音声解析部34bは、横軸が時間軸、縦軸がディジタル音声信号の強度を示す波形グラフ311を生成・表示するとともに、音声信号強度と所定の閾値との比較を行う。ここでいう所定の閾値とは、映像信号のうち注目したいタイミングにおいて、検査対象又は術者から生じた音声信号を識別可能な値である。例えば、検査対象の嚥下動作により生じる音声信号などがある。
【0029】
音声解析部34bは、音声信号強度が閾値以上か否かの判断を行い(ステップS108)、閾値未満であれば、ステップS108へ戻り、音声信号強度の監視と判定とを継続する。閾値以上であれば、音声信号強度が閾値以上となったことを示すマーカー若しくは枠を表示する(ステップS109)。その後、ステップS107へ戻り、音声信号強度が閾値以上の場合は、マーカー・枠の表示を続行し、閾値未満になるとマーカー・枠の表示を停止する。本実施形態では、閾値以上であることを通知する手段として、上記の如くマーカーと枠とを例示したが、通知手段はこれに限らない。例えば、閾値以上となったタイミングでの波形グラフ311を表示したり、また後述する第二実施形態でインデックス画像を生成・表示したりなど、操作者が閾値以上になったことを知りうる画面表示・ブザーのような音声通知は、本明細書でいう通知に含むものである。
【0030】
次に、図6に基づいて記録プログラム34を起動したときの表示画面について説明する。モニタ31には、画像処理装置20から得られる透視像201とカメラ50から得られる外部入力映像501、録画開始を始めるアイコン211、検査中の検査対象の検査対象番号212、及び波形グラフ311が表示される。
【0031】
図7は、音声信号強度が閾値以上となったときの表示画面の一例を示す模式図であって、(a)は、閾値以上になったことを示すマーカーを表示した画面であり、(b)は、閾値以上になったことを示す枠313が強調表示された画面である。
【0032】
音声解析部34bが、音声信号強度が閾値以上になったことを検出すると、その検出結果を通知部34cに出力する。通知部34cは、マーカー312を表示画面に点灯表示すると共に波形グラフ311を非表示しにして、透視像201の表示領域を大きくしたり(図7(a)参照)、表示画面に枠313を表示すると共に波形グラフ311を非表示にして、透視像201の表示領域を大きくする(図7(b)参照)。
【0033】
音声解析部34bが、音声信号強度が閾値未満になったことを検出すると、その検出結果を通知部34cに出力し、表示画面からマーカー312や枠313を消して、波形グラフ311を再度表示する。
【0034】
本実施形態によれば、記録したから映像を基に診断した際に、映像からだけでは判断できない術者の動作タイミングを、映像と術者や検査対象の音声を同期させることと、音声信号の波形311が表示されることと、により正確な術者・検査対象の動作タイミングを知ることが可能となる。また、音声が再生できないような環境であっても、音声信号の強弱がグラフとなってモニタ上に表示されることにより、正確な診断が可能となる。
【0035】
更に、音声信号強度が閾値以上となると、その旨を術者に通知することにより、注意を喚起してより正確な診断に資することができる。さらに波形グラフの表示エリアも必要なくなる。
【0036】
<第二実施形態>
第二実施形態は、音声信号強度が閾値以上となると、そのタイミングで撮影された映像信号のフレームを用いてインデックス画像を生成し、表示する態様である。以下、図8、図9、図10に基づいて第二実施形態について説明する。図8は第二実施形態の処理の流れを示すフローチャートであり、図9は、第二施形態で表示される表示画面の一例を示す模式図であり、図10は、タイムスタンプの一例を示す模式図である。図8のうち、第一実施形態と同様の処理を行うステップについては説明を省略して、本実施形態について説明する。
【0037】
本実施形態では、音声信号強度が閾値以上となった場合の処理が、第一実施形態と異なる。すなわち、音声信号強度が閾値以上となると(ステップS108)、音声解析部34bは、その検出結果をインデックス画像処理部34dに出力する。インデックス画像処理部34dは、音声信号強度が閾値以上となった最初のフレームを間引きしてインデックス画像を生成し、モニタ31に表示する(ステップS201)。インデックス画像は、表示するだけでもよいが、キャプチャー38に取り込んで、映像信号1、映像信号2と共に合成してもよい。これにより、動画ファイルの再生時にもインデックス画像を表示させることができる。
【0038】
更に、音声解析部34bは、音声信号強度が閾値以上になったことを示す検出結果をタイムスタンプ生成部34eに出力する。タイムスタンプ生成部34eは、映像信号の記録開始時を基準として、音声信号強度が閾値以上となったとき時刻をタイムスタンプに書き込む(ステップS202)。このとき、記録開始時刻と同時に生成されたインデックス画像の識別情報と関係づけておく。そして、録画ファイルと共にタイムスタンプを記録しておき、録画ファイルの再生時に、インデックス画像を表示するとともに、表示された任意のインデックス画像を指定すると、再生部34fが指定されたインデックス画像の識別情報を基にタイムスタンプを検索し、指定されたインデックス画像の記録時刻を抽出し、その記録時刻から動画ファイルを再生するように構成してもよい。
【0039】
更に、再生部34fは、再生時に指定された時刻よりも所定時間、例えば2秒前から再生するように構成してもよい。これにより、例えば、嚥下の直前から動画ファイルを再生することができ、診断に必要な映像が一部欠損して再生されると言った不具合を回避することができる。
【0040】
図9は、インデックス画像が表示された表示画面の一例を示す図である。画像処理装置20から得られる透視像201とカメラ50から得られる外部入力映像501、録画開始を始めるアイコン211、検査中の検査対象の検査対象番号212、及び波形グラフ311と、生成された4つのインデックス画像314a、314b、314c、314dが透視画像201の下に表示される。各インデックス画像の下には、一検査中に生成されたインデックス画像の順序を示す連番315を表示してもよい。
【0041】
図10は、タイムスタンプの一例を示す図である。図10のタイムスタンプでは、各インデックス画像の識別情報、「0001.jpeg」、「0002.jpeg」「0003.jpeg」、「0004.jpeg」と、各インデックス画像の連番、「1/4」、「2/4」、「3/4」、「4/4」、と、そのインデックス画像に対応するフレームが記録された時刻、「00:05:00」「00:06:00」、「00:10:30」、「00:12:20」と、が関連付けられて格納されている。
【0042】
上記では、インデックス画像生成・表示処理と、タイムスタンプ処理との両方を行うとして説明したが、インデックス画像生成・表示処理のみを行ってもよい。
【0043】
本実施形態によれば、インデックス画像を生成・表示により、音声信号強度が閾値以上となったことを術者に知らせることができる。また、タイムスタンプの同時生成を行い、インデックス画像を用いて再生タイミングを指定することにより、所望する映像信号の検索が容易となる。また、タイムスタンプや、連番のみをモニタ31に表示して、連番やタイムスタンプに記録された開始時刻を指定し、再生部34fがこの指定された時刻又はそれより所定時刻前からの動画ファイルを再生するように構成してもよい。
【0044】
<第三実施形態>
第三実施形態は、音声信号強度が閾値未満の状態が所定時間経過すると、映像信号の画質を下げて記録し、復帰指示が入力されると、画質を通常モードに復帰する実施形態である。以下、図11に基づいて第三実施形態について説明する。図11は第三実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。図11のうち、第一実施形態と同様の処理を行うステップについては説明を省略して、本実施形態について説明する。
【0045】
ステップS103で映像・音声記録が開始すると、高画質モードで映像信号の記録が開始する(ステップS301)。ここでいう「高画質モード」とは、例えば、一般的な動画ファイルのフレームレートである30(フレーム/秒)を適用したり、一フレームあたりの画素数を動画ファイルとして設定可能な最大値(以下「高画素数」という)に設定することをいう。
【0046】
画質モードの変更がなく(ステップS302)、記録終了操作もなければ(ステップS303)、ステップS302に戻り、高画質モードでの映像・音声記録を続行する。記録終了操作がされると(ステップS303)、映像・音声記録が一旦終了する(ステップS106)。
【0047】
一方、音声信号強度の監視処理において、ステップS108において、音声信号強度が閾値以上であると判定されると、その旨を通知する処理、例えば、第一実施形態に係るマークや枠の表示、又は第二実施形態に係るインデックス画像の表示といった通知処理が行われる(ステップS304)。音声信号強度が閾値未満であると判定されると、計時部34gは、タイム計測を開始し(ステップS305)、予め設定された所定時間(例えば30秒)が経過したか否かを判断する(ステップS306)。所定時間が経過しなければ、ステップS108に戻り音声信号強度の監視と判定を続行する。その間、計時部34gによるタイム計測は続行される。
【0048】
経過時間が、予め設定された所定時間を過ぎると、計時部34gから所定時間が経過したことを示す信号が出力される。画質調整部34hは、映像信号の記録品質を高画質モードから低画質モードに変更する(ステップS302)。ここでいう「低画質モード」とは、高画質モードとの相対で決まるモードであって、相対的に画質が低下する代わりに動画ファイルの容量を少なくできるモードである。例えば、高画質モードにおいて適用されるフレームレートよりも相対的に少ないフレームレート、例えば15(フレーム/秒)に落としたり、一フレームあたりの画素数を高画素数から間引きし、相対的に低画素数に落としたりする処理がある。
【0049】
また、低画質モードのうち、フレームレートを落とす処理が行われると、画質調整部34hは、その低いフレームレートを示す信号を撮像部10の制御装置14に出力し、制御装置14がその低いフレームレートに合わせて、X線のパルス照射間隔を落としてもよい。これにより、低画質モード時における被曝量の低減を図ることができる。
【0050】
画質調整部34hは、図示を省略するものの、低画質モードで記録している間は、モニタ31の表示画面に高画質モードに復帰させるための復帰ボタンを表示する。このスイッチは、画質調整部34hに対して、高画質モードに復帰(調整)させるための指示を入力するためのものである。
【0051】
その後、変更後の低画質モードで映像信号との記録を開始する(ステップS307)。通知部34cは、低画質モードで映像信号が記録されていることを、術者に通知してもよい。術者は、必要な場合、例えば、検査対象に嚥下を指示する前に、復帰ボタンをマウス32でクリックすると(ステップS308)、ステップS302へ戻り、画質調整部34hは、低画質モードから高画質モードに変更して映像信号の記録を開始する。
【0052】
復帰ボタンが操作されず、記録終了操作もされない場合(ステップS309)は、ステップS307に戻り低画質モードでの映像・音声記録が続行される。記録終了操作が行われると(ステップS309)映像・音声記録が一旦終了する(ステップS106)。
【0053】
本実施形態によれば、音声信号強度が閾値未満の場合には、動画ファイルの容量を小さくすることができる。一般に、音声信号強度が閾値未満の場合は、待機状態であったり、検査対象の診断部位の変化が見られない部分であったりすることが多いので、この部分の動画ファイルの容量を小さくする。一方、例えば嚥下を指示するなど、診断上、重要な映像信号が得られる場面では、高画質モードで映像信号を記録する。これにより、動画ファイル全体の診断能は維持しつつ、動画ファイル全体の容量を小さくすることで、外部記憶装置などのハードウェア資源の節約に供することができる。
【0054】
<その他の実施形態>
第一実施形態及び第二実施形態までは、撮像中にリアルタイムに映像信号と音声信号の合成処理及び音声信号強度の監視、更にこれに付随する通知処理、インデックス生成・表示、タイムスタンプ生成処理を行ったが、医用画像撮像装置で得た映像信号と音声信号とを記録しておき、リアルタイムではなく後からこれらの映像信号と音声信号とを読み出して、第一、第二実施形態と同様の処理を行ってもよい。また、後から映像信号と音声信号とを読み出して、一定の画質モード(例えば高画質モード)で記録された映像信号に対して、第三実施形態と同様の処理を行い、画質モードを変更する編集作業を行ってもよい。
【0055】
更に、記録された映像信号、音声信号を読み出して行う処理は、X線画像診断装置などの医用画像撮像装置に限らず、演算・制御装置と、出入力装置と、記録装置と、を備えたワークステーションやパーソナルコンピュータで行ってもよい。また、第三実施形態において、音声信号強度が閾値を超えると通知処理を行うとしていたが、第三実施形態における通知処理は必須ではない。すなわち、通知処理をすることなく、画像記録モードを変更する処理のみを行ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10:撮像部、20:画像処理部、30:記録部、41、42:マイク、50:カメラ、60:外部記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を画像化する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した画像から映像信号を作成する画像処理手段と、
前記映像信号と、前記撮像手段を操作する操作者及び前記検査対象の、撮像中における動作・操作に関する音声信号と、を用いて動画ファイルを作成して記録する記録手段と、
前記音声信号強度が所定の閾値以上であるか否かを監視する音声解析手段と、
前記音声信号強度が前記所定の閾値以上であることを通知する通知手段と、
を備えたことを特徴とする画像診断装置。
【請求項2】
前記音声解析手段が、前記音声信号強度が前記所定の閾値以上となったことを検出したタイミングで撮像された、前記映像信号を構成するフレームに基づいて、静止画像からなるインデックス画像を生成し、表示するインデックス画像処理手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項3】
前記インデックス画像処理手段は、複数のインデックス画像を生成・表示した際に、各インデックス画像に、当該インデックス画像が生成された順序を示す連番を付記表示する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像診断装置。
【請求項4】
前記表示されたインデックス画像のうち、任意のインデックス画像を指定する第一指定手段と、
前記指定されたインデックス画像に対応するフレームから、前記動画ファイルを再生する第一再生手段と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像診断装置。
【請求項5】
前記第一再生手段は、指定されたインデックス画像に対応するフレームを基準として、それよりも所定時間前の前記動画ファイルから再生する、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像診断装置。
【請求項6】
前記音声解析手段が、前記音声信号強度が前記所定の閾値以上となったことを検出した時刻を記録したタイムスタンプを生成するタイムスタンプ生成手段と、
前記タイムスタンプに記録された任意の時刻を指定する第二指定手段と、
前記指定された任意の時刻から前記動画ファイルを再生する第二再生手段と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の画像診断装置。
【請求項7】
前記第二再生手段は、指定された時刻を基準として、それよりも所定時間前の前記動画ファイルから再生する、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像診断装置。
【請求項8】
前記音声解析手段が前記音声信号強度が前記所定の閾値未満であることを検出してからの経過時間が、規定時間を超えたか否かを監視する計時部と、
前記計時部が、前記経過時間が前記規定時間を超えたことを検出すると、前記映像信号から前記動画ファイルを生成する際の画質を、相対的に高画質モードから相対的に低画質モードに変更する画質調整手段と、
前記映像信号から前記動画ファイルを生成する際の画質を、前記相対的に低画質モードから前記相対的に高画質モードに復帰させるための復帰手段と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一つに記載の画像診断装置。
【請求項9】
前記低画質モードは、前記高画質モードにおけるフレームレートよりも相対的に低いフレームレートを用いた画質モードである、又は前記低画質モードは、一フレーム当たりの画素数が、前記高画質モードにおける一フレーム当たりの画素数よりも少ない画素数を用いた画質モードである、
ことを特徴とする請求項8に記載の画像診断装置。
【請求項10】
前記撮像手段は、X線をパルス照射するX線照射手段と、前記パルス照射の間隔を可変する制御手段と、前記検査対象を透過したX線を検出するX線検出器と、を備えたX線透視装置であり、
前記制御手段は、前記パルス照射の間隔を、前記低画質モードにおけるフレームレート、及び前記高画質モードにおけるフレームレートに一致させる、
ことを特徴とする請求項9に記載の画像診断装置。
【請求項11】
前記動画ファイルを表示する表示手段を更に備え、
前記通知手段は、前記音声信号強度が前記所定の閾値以上であることを示すマーク、前記音声信号強度が前記所定の閾値以上であることを示す画面枠、若しくは前記音声解析手段が生成した一方の軸が時間軸であり、他方の軸が音声信号強度を示す波形グラフ、のうちの少なくとも一つを、前記表示手段の表示画面上に表示する、
ことを特徴とする請求項1乃至10の何れか一つに記載の画像診断装置。
【請求項12】
検査対象を画像化する撮像手段が撮像した画像から映像信号を作成する画像処理手段と、
前記映像信号と、前記撮像手段を操作する操作者及び前記検査対象の、撮像中における動作・操作に関する音声信号と、を用いて動画ファイルを作成して記録する記録手段と、
前記音声信号強度が所定の閾値以上であるか否かを監視する音声解析手段と、
前記音声信号強度が前記所定の閾値以上であることを通知する通知手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−217632(P2012−217632A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86633(P2011−86633)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】