画像評価方法および装置・画像形成装置
【課題】入力情報に従って形成された静電潜像を、入力情報との関係で画像評価する画像評価方法を実現する。
【解決手段】帯電させた光導電性の感光体157に対し、入力パターンの形状および面積に関する情報を少なくとも有する入力情報に基づき、光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像161を形成し、この対応静電潜像161の面積を測定し、入力情報の面積と対応静電潜像161の面積との面積差を測定することにより画像評価を行なう。
【解決手段】帯電させた光導電性の感光体157に対し、入力パターンの形状および面積に関する情報を少なくとも有する入力情報に基づき、光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像161を形成し、この対応静電潜像161の面積を測定し、入力情報の面積と対応静電潜像161の面積との面積差を測定することにより画像評価を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像評価方法および装置・画像形成装置、より詳しくは、電子写真プロセスを利用した画像形成における静電潜像やトナー画像の評価、これらの評価を利用する画像形成の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを利用した画像形成は、従来からアナログ複写機やデジタル複写機、レーザプリンタ等の光プリンタ装置等の画像形成装置として広く実施されている。
【0003】
近時、主流となっている光走査や発光ダイオードアレイを用いる光書き込みによる画像形成により説明すると、電子写真プロセスでは「光導電性の感光体」が用いられる。
【0004】
光導電性の感光体はその表面が均一に帯電され、均一に帯電した感光体表面に対し光走査等による「光画像書き込み」が行なわれる。
【0005】
この光画像書き込みにより光照射された感光体部分では「光導電性」が生じて帯電電圧が減衰し、感光体表面に「書き込まれた画像に対応する電位分布」として「静電潜像」が形成される。
【0006】
形成された静電潜像は、トナーと呼ばれる微粒子を用いる現像により「トナー画像」として可視化される。
静電潜像を可視化したトナー画像は、一般には、シート状の記録媒体(以下「記録シート」と呼ぶ。)上に転写されたのち、記録シート状に定着される。
【0007】
画像形成の良否は、画像書き込みされる画像(オリジナル画像と称する。)がトナー画像としてどれほど良好に再現されるかにより定まる。この場合、「良好に再現される」ことは、必ずしも「形成された画像がオリジナル画像に忠実である」ことを意味しない。
【0008】
例えば、複写すべきオリジナルの原稿をスキャナで読み取って画像信号を生成し、この画像信号により光走査して静電潜像を形成する場合を考えると、オリジナルの原稿画像は必ずしも「理想的に良い画像」であるとは限らず、画像が擦れているものや汚れているもの、画像の濃さが十分でないものもある。
【0009】
このような場合には、読み取った画像情報信号を適宜に加工し、オリジナル画像の画質を高めるようにして画像信号を生成し、この画像信号により画像書き込みを行なう。
【0010】
このように、静電潜像を形成するのに用いる画像信号を「入力情報」と呼ぶ。
【0011】
そうすると、画像形成の良否は「入力情報にどれほど忠実な画像を形成できるか」により定まる。形成された画像を「出力画像」と呼ぶことにする。
【0012】
入力信号と出力画像との間には、静電潜像を形成する工程、形成された静電潜像をトナー画像とする現像工程、トナー画像を記録シート上に転写・定着する転写・定着工程等があり、これらの工程は何れも最終的に得られる出力画像の良否に影響する。しかし、出力画像の良否に最も大きく影響するのは、静電潜像の良否とトナー画像の良否とである。
【0013】
従って、画像形成を良好に実現するには、電子写真プロセスにおいて「入力信号に応じて形成される静電潜像が入力信号に対してどれほど忠実であるか」、また「静電潜像に対し、これを可視化したトナー画像がどれほど忠実であるか」を評価することが好ましい。
【0014】
しかしながら、現状では「入力情報と出力画像(トナー画像)との比較」のみに留まっている。
【0015】
電子写真プロセスにおいて光導電性の感光体に形成される静電潜像は、その名のとおり潜像であって、肉眼で直接にこれを見ることはできず、トナー画像として可視化されたものが目視できる。
【0016】
静電潜像は上記の如く肉眼により直接に目視できるものではないが、出願人は先に、静電潜像をディスプレイ上に表示して目視できるようにするとともに、静電潜像における電位の分布等を測定できる技術を提案した(特許文献1)。
【0017】
また、記録シート上のトナー画像の反射特性や階調性についての評価は、特許文献2、3等により知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、入力情報に従って形成された静電潜像を、入力情報との関係で画像評価できる画像評価方法の実現、さらに、出力画像であるトナー画像を、静電潜像との関係で画像評価できる画像評価方法の実現、これらの方法を実施するための画像評価装置の実現、このようにして実現される画像評価を画像形成に生かすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1記載の画像評価方法は「帯電させた光導電性の感光体に対し、入力パターンの形状および面積の情報を少なくとも有する入力情報に基づき、光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成し、形成された対応静電潜像の面積を測定し、入力情報の面積と対応静電潜像の面積との面積差を測定する」ことを特徴とする。
【0020】
上記のように、入力情報は「入力パターンの形状および面積の情報」を少なくとも有する。
【0021】
光導電性の感光体は均一に帯電され、入力情報に基づき光画像書き込みにより「入力パターンの形状・面積」に対応する形状・面積を持つ「対応静電潜像」が形成される。
「光画像書き込み」としては、光走査による書き込みや、発光素子アレイを用いる画像書き込みを用いることができる。
【0022】
光画像書き込みのための「入力パターンを構成する情報」即ち「入力情報」は、例えばコンピュータ等で生成させることができる。あるいは、入力情報として面積・形状を設定された可視パターン画像をスキャナで読み取った画像信号もしくはこの画像信号を適宜に加工した信号を「入力情報」とすることもできる。
【0023】
請求項1記載の画像評価方法では、上記の如く、入力パターンに応じ手形成された対応静電潜像の面積が測定され、入力パターンの面積(入力情報の一部として与えられる。)との面積差が測定される。
【0024】
上記面積差が0に近いほど、対応静電潜像は入力パターンに忠実であると考えられる。
【0025】
入力パターンの面積は、入力情報をコンピュータ等で生成する場合であれば「生成データの1つ」として与えることができる。また、所定のパターンをスキャナで読み取って入力パターンの情報の一部とする場合には、スキャナ上において「パターンの像を構成している受光素子の数」をカウントするなどして面積を知ることができる。
【0026】
また入力パターンの形状は、光画像書き込みにおける「画素ごとの発光情報」として与えることができる。
【0027】
対応静電潜像の面積の測定に関しては、具体的な例に即して後述する。
【0028】
請求項1記載の画像評価方法は、入力パターンが均一の画像濃度のものである場合に実施できることは勿論であるが、入力パターンに階調性を持たせることもできる。
【0029】
即ち、請求項2記載のように「階調:Iの異なるN(≧2)個の入力パターンPIに対応するN個の対応静電潜像を形成し、入力パターンPIに対応する対応静電潜像MIの面積:SIと、入力パターンPIの面積:SPIとの面積差を、階調:Iごとに測定することができる。
【0030】
この請求項2記載の画像評価方法において、入力パターンPIの面積:SPIを、階調:Iに対して直線的に変化させ、対応静電潜像MIの面積:SIの「階調:Iに対する変化」の「面積:SPIの直線的変化に対する差」を測定することができる(請求項3)。
【0031】
請求項4記載の画像評価装置は上記請求項1〜3の任意の1に記載の画像評価方法を実施する装置であって、帯電手段と、入力情報生成手段と、対応静電潜像形成手段と、面積測定手段と、演算処理手段とを有する。
「帯電手段」は、光導電性の感光体を帯電させる手段である。帯電手段としては、従来から知られているコロナ放電器等の非接触型のものや、帯電ブラシ・帯電ローラ等の接触型のもの、さらには実施例において後述する「荷電粒子を走査する方式のもの」等を適宜用いることができる。
【0032】
「入力情報生成手段」は、感光体に作用させる入力パターンの入力情報を生成する手段であり、例えば、入力情報を直接に生成するコンピュータや、前述の画像をスキャナで読み取った読み取り信号に基づいて入力情報を生成する構成のものを適宜用いることができる。勿論、入力情報は少なくとも「入力パターンの形状・面積との情報」を含んで生成される。
【0033】
「対応静電潜像形成手段」は、均一に帯電された感光体に対して「入力情報に基づいて光画像書き込み」を行い、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成する手段であり、例えば、光走査装置等を用いることができる。
【0034】
「面積測定手段」は、対応静電潜像の面積を測定する手段である。面積測定手段については、実施例に即して詳述する。
【0035】
「演算処理手段」は、対応静電潜像の測定された面積を用い、少なくとも入力パターンの面積(入力情報として与えられている。)との差を含む演算処理を行なう。
演算処理手段が行なう演算処理には、面積差の演算(請求項2の場合における階調:Iごとの面積差も含む)のみならず、請求項3の場合における「対応静電潜像MIの面積:SIの階調:Iに対する変化の、面積:SPIの直線的変化に対する差」を求める演算を含めることができることは言うまでも無い。
【0036】
請求項5記載の画像評価方法は以下の如き方法である。
帯電させた光導電性の感光体に対し、入力パターンの形状および面積の情報を少なくとも有する入力情報に基づき、光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成し、この対応静電潜像の面積を測定する。
一方、上記入力情報と同一内容の入力情報により可視像用静電潜像を形成し、形成された可視像用静電潜像をトナーにより可視化してトナー画像とし、このトナー画像の面積を測定する。
【0037】
そして、対応静電潜像の面積と、トナー画像の面積の差を測定する。
【0038】
対応静電潜像と可視像用静電潜像とは、同一の感光体もしくは同一種の感光体に形成される。「同一種の感光体」は、同一の入力情報による光画像書き込みにより「少なくとも同じ面積の対応静電潜像」を形成される感光体であり、互いに異なる感光体である。この場合には、対応静電潜像を形成するときの入力情報と、可視像用静電潜像を形成するときの入力情報は「内容的には同一」であるが、光画像書き込みは「異なる感光体」に対してなされる。このとき、入力情報の内容が同一であるので、対応静電潜像と可視像用静電潜像とは、静電潜像の面積・形状は同一である。
【0039】
換言すれば、互いに異なる感光体に形成される対応静電潜像と可視像用静電潜像が同一になるような入力情報が「内容的に同一の入力情報」であり、対応静電潜像をトナー画像として可視化したものとすれば、この可視化されたトナー画像は可視像用静電潜像を可視化したトナー画像と同じものになる。
【0040】
「同一の感光体」の場合には、同一の感光体に対して対応静電潜像が形成され、この対応静電潜像が可視像用静電潜像でもありうる。勿論、対応静電潜像と可視像用静電潜像とは、同一の感光体に対して、同一内容の入力情報を別個に用いて、別個の静電潜像として形成することもできる。
【0041】
請求項5記載の画像評価方法はまた、階調:Iの異なるN(≧2)個の入力パターンに対応するN個の対応静電潜像を形成し、これらN個の対応静電潜像MIの面積:SIを測定し、上記N個の入力パターンと同一内容の入力情報により形成されたN個の可視像用静電潜像をトナーにより可視化してN個のトナー画像TIとし、このトナー画像TIの面積:STIを測定し、面積:SIとSTIとを、階調:Iごとに測定する構成とすることができる(請求項6)。
【0042】
請求項6記載の画像評価方法においては、入力パターンPIを階調:I(N≧I≧1)応じて変化させ、対応静電潜像MIの面積:SIを階調:Iに対して直線的に変化させ、同一内容の入力パターンにより形成されたN個の可視像用静電潜像をトナーにより可視化してN個のトナー画像TIとし、このトナー画像の面積:STIを測定し、面積:SIの階調:Iに対する変化の、面積STIの階調性:Iに対する変化に対する差を測定する構成とすることができる(請求項7)。
【0043】
請求項8記載の画像評価装置は、請求項5〜7の任意の1に記載の画像評価方法を実施する装置であって、帯電手段と、入力情報生成手段と、対応静電潜像形成手段と、面積測定手段と、可視像形成手段と、可視像面積測定手段と、演算処理手段とを有する。
【0044】
「帯電手段」は、光導電性の感光体を帯電させる手段である。
「入力情報生成手段」は、感光体に作用させる入力パターンの入力情報を生成する手段である。
【0045】
「対応静電潜像形成手段」は、感光体に上記入力情報に基づき光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成する手段である。
【0046】
「面積測定手段」は、対応静電潜像の面積を測定する手段である。
【0047】
「可視像形成手段」は、入力情報生成手段による対応静電潜像形成用の入力パターンと同一内容の入力情報を用いて可視像用静電潜像を形成し、この可視像用静電潜像をトナーによるトナー画像として可視化する手段である。
【0048】
「可視像面積測定手段」は、可視像形成手段により形成されたトナー画像のトナー画像面積を測定する手段である。
【0049】
「演算処理手段」は、面積測定手段により測定された対応静電潜像面積と、可視像面積測定手段により測定されたトナー画像面積を用い、少なくとも「対応静電潜像面積とトナー画像面積の差を含む演算処理」を行なう。
【0050】
この発明の画像形成装置は「電子写真プロセスを利用する画像形成装置」であって、上記請求項1、2、3、5、6、7の何れかに記載の画像評価方法、もしくは請求項4または8に記載の画像評価装置により得られた入力情報と対応静電潜像との面積差情報、対応静電潜像面積とトナー画像面積との面積差情報の少なくとも一方に応じて、画像形成条件を調整制御する制御手段を有することを特徴とする(請求項9)。
【発明の効果】
【0051】
以上に説明したように、この発明によれば、新規な画像評価方法および装置・画像形成装置を実現できる。
この発明の画像評価方法・装置によれば、電子写真プロセスを用いる画像形成おいて、入力情報とこれに対応する対応静電潜像の面積の差を測定することにより、入力パターンとの関係で静電潜像の画像評価が可能になる。あるいは、対応静電潜像の面積と「対応静電潜像を形成する入力情報と同一内容の入力情報をもつ入力パターンにより形成される可視像用静電潜像を可視化したトナー画像の面積」の差を測定することにより、入力パターンに応じた対応静電潜像との関係でトナー画像の画像評価が可になる。
【0052】
そして、このような画像評価を利用して画像形成の質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】画像評価装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図2】光導電性の感光体の構成の1例を説明するための図である。
【図3】光画像書き込み手段の1例としての光走査装置を説明するための図である。
【図4】入力情報と対応静電潜像を説明するための図である。
【図5】対応静電潜像の面積測定を説明するための図である。
【図6】対応静電潜像を形成するための光画像書き込みを説明するための図である。
【図7】入力パターンの1例を説明する図である。
【図8】階調の異なる入力情報と対応静電潜像の関係を説明する図である。
【図9】入力パターンの1例を示す図である。
【図10】互いに等価な入力情報を示す図である。
【図11】階調と面積との関係を説明するための図である。
【図12】トナー画像の面積測定を説明するための図である。
【図13】階調再現性における「明度の再現性」の好ましい例を示す図である。
【図14】対応静電潜像とトナー画像の対応を説明する図である。
【図15】静電潜像面積とトナー画像面積との関係を示す図である。
【図16】入力情報に対する対応静電潜像とトナー画像との画像評価を行なう装置の1例のシステム図を示す。
【図17】画像評価の結果を制御因子にフィードバックし、最適・好適値を探すプロセス示すダイヤグラムである。
【図18】図13に示された「階調に対する明度:L*」を、明度L*を「その最大値で規格化」したグラフである。
【図19】入力情報に対応する階調に対し、この入力情報により形成された対応静電潜像の面積を「その最大値で規格化」したグラフを示す図である。
【図20】ドット面積率を説明する図である。
【図21】画像形成装置の1例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1に、画像評価装置の実施の1形態を示す。
符号151は「帯電手段と、対応静電潜像形成手段と、面積測定手段の一部とを収納したケーシング」を示している。
【0055】
ケーシング151内には、電子銃152、コンデンサレンズ153、走査レンズ154、対物レンズ155、光照射光学系156、試料ステージ164、電子検出器163が収納されている。また、符号157は「光導電性の感光体」を試料としたものである。
【0056】
符号159は真空ポンプ、符号158はインタフェース、符号160は制御手段を示している。真空ポンプ159はケーシング151の内空間を「真空に近い低圧状態(以下「実質的な真空状態」もしくは単に「真空状態」という。)」に減圧する。
【0057】
制御手段160は、コンピュータとディスプレイにより構成されており、コンピュータは、インタフェース158を介して装置全体を制御するとともに、画像評価に関わる演算処理を行い、演算結果をディスプレイに表示する。図1において符号161は、ディスプレイに表示された「対応静電潜像の様子」を模式的に示している。
【0058】
光導電性の感光体である試料157は、図1においては平板状に形成され、試料ステージ164上に平面的に定置され、試料ステージ164により、独立した3方向(図の上下方向、図面に直交する平面内の直交2方向)へ変位されるようになっており、ケーシング151内で3次元的に位置調整できるようになっている。
【0059】
試料157を構成する光導電性の感光体は、種々の形態のものが可能であるが、一般的な構成としては、導電性基体の上に光導電層を形成した構成である。光導電層は、単一層構造のものであることもできるし、電荷発生層と電荷輸送層(あるいはさらに保護層)を積層した所謂「機能分離型」のものであることもできる。また、電荷発生物質と電荷輸送物質とを混合させた材料を用いた単層感光体であることもできる。
【0060】
試料としての光導電性の感光体の形態は、図1に示す平板状のものに限らず、ドラム状のものやベルト状のものであることができる。即ち「実際に画像形成装置において使用するドラム状のものやベルト状のもの」も、試料として適宜用いることができる。
【0061】
試料としての光導電性の感光体の1例として、上記機能分離型のものを、図2(12)を参照して簡単に説明する。
近来、光導電性の感光体は、低コスト性、加工容易性の観点から「有機光導電性感光体(以下「OPC」と言う。)」の使用が主流となっている。
図2に示すOPCは、導電性基体121上に、図示されない中間層(電荷リークの防止等のために設けられる。)が設けられ、その上に、電荷発生層122と電荷輸送層123がこの順序に積層された構成となっている。
この構成では、感光体表面は負極性に帯電されるが、電荷発生層と電荷輸送層の積層順序を逆にする構成も可能であり、その場合には感光体表面は正極性に帯電される。
【0062】
電荷輸送層123の表面を「負に均一帯電」させ、光124を照射すると、電荷輸送層123を透過した光124が電荷発生層122に入射して、電荷発生層122内で電子126と正孔(ホール)127を発生させる。
【0063】
発生した電子126は、電荷輸送層122の表面を帯電させている負電荷に反発されて導電性基体121に吸収される。またこのとき、導電性基体121の「電荷発生層122との境界面部分」には、電荷輸送層123表面を帯電させている負電荷にバランスする正電荷が誘起しており、電子126を吸引する。
【0064】
ホール127は、電荷輸送層122の表面を帯電させている負電荷に引かれて電荷輸送層123中を矢印125の向きに移動し、電荷輸送層123表面の負の帯電電荷と相殺する。光124の照射を2次元的に行なって光画像書き込みを行なうことにより、感光体表面に2次元的な静電潜像が形成される。
【0065】
電荷発生層122の厚さは一般に「サブμm」程度、電荷輸送層123の厚さは一般に「数十μm」である。形成される静電潜像のパターンは文字・画像であるが「最小単位はドット」である。
【0066】
図1に戻ると、「帯電手段」は、電子銃152、コンデンサレンズ153、走査レンズ154、対物レンズ155を有する。
【0067】
帯電手段を構成する電子銃152や上記各種レンズとしては、例えば、走査電子顕微に用いられるものを利用することができる。電子銃としては熱フィラメント型のものやフィールドエミッション等、適宜のものを用いることができる。
【0068】
試料ステージ164上にセットされた試料157の表面を帯電するに当たっては、真空ポンプ159によりケーシング151内部を吸気し、ケーシング内部を真空状態に減圧する。
なお、真空ポンプ159は、実際には、達成させる真空度に応じ、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、イオンスパッタポンプ等複数を併用することができる。
【0069】
コンデンサレンズ153、走査レンズ154、対物レンズ155はいずれも「磁界レンズ」或いは「静電レンズ」である。
電子銃152から放射される電子ビームを、コンデンサレンズ153、走査レンズ154、対物レンズ155により試料157表面に収束させつつ、走査レンズ154により電子ビームを試料上157で2次元的に走査し、試料157の表面を均一帯電させる。
【0070】
なお、電子銃152に代えて、イオン銃を用い「イオン粒子ビーム」を生成して帯電に供することができる。例えば、イオン流をなすイオン粒子としてGa+を発生するイオン銃を用いれば、試料表面を正帯電させることができ、帯電特性が正極性である光導電性の感光体の帯電を行なうことができる。
【0071】
電子銃152を用いて試料157の表面を帯電させる場合、試料表面の帯電電位は主として「電子の加速電圧と照射時間」に依存し、電子の加速電圧が高いほど試料表面の帯電電位は高くなる。
【0072】
静電潜像を画像評価するためには、試料表面に形成される静電潜像が、実際の「電子写真プロセスを利用する画像形成」において形成される静電潜像と同等のものである必要がある。
【0073】
このような「画像形成において実際に形成される静電潜像」と同等な静電潜像を試料157に形成するために、帯電条件として「加速電圧を1.0〜数kV程度」、「照射時間を数十秒から数十分程度」の範囲で調整する。このようにして帯電される試料の帯電電位は「汎用の表面電位計」を用いて測定した値で「−600〜−1000V程度(複写装置等の実際の画像形成装置での帯電電位と同等)」にする。
【0074】
即ち、予め、帯電条件を変化させ、上記の帯電電位を実現できるような帯電条件を求め、この条件での帯電を行なう。
【0075】
帯電条件の調整は、インタフェース158を介して前述のコンピュータが行なう。
【0076】
なお、加速電圧を変える代りに、あるいは加速電圧の調整とともに「試料にバイアス電圧」を印加してバイアス電圧を調整するなどして帯電電位を調整することもできる。
【0077】
このように均一帯電された試料157に対して、光照射光学系176により「光画像書き込み」を行なって、静電潜像を形成する。
【0078】
光照射光学系176は「対応静電潜像形成手段」を構成する。
光照射光学系176としては、周知の光走査装置や「発光素子アレイを用いる光画像書き込み装置」を適宜に用いることができる。
光照射光学系176の1例として、従来からよく知られている光走査装置の場合を、図3(11)を参照して説明する。
以下、このような光照射光学系を「光画像書き込み手段」とも言う。
【0079】
図3に示すように、光走査装置は、光源111から放射されるレーザ光束を、図示されないアパーチャを介してコリメートレンズ112に入射させて平行光束化し、シリンドカルレンズ113により副走査方向に集光させ、第一ミラー114を介してポリゴンミラー115の偏向反射面に入射させ、偏向反射面近傍に主走査方向に長い線像に結像させる。
【0080】
ポリゴンミラー115を等速回転させて得られる偏向光束を、走査結像レンズ(所謂fθレンズ)と折り曲げミラー118とを介して、ドラム状の感光体119に集光させて光スポットを形成し、この光スポットを感光体の母線方向を主走査方向として走査して「主走査」を行なう。また感光体119を回転軸1191の周りに等速回転させることにより副走査を行なう。
【0081】
感光体119の表面は図示されない適宜の帯電手段により均一帯電されており、上記光走査により2次元的な静電潜像が形成される。
図3には、光走査により画像書き込みされた3種の「ドットパターン(ワンドットを誇張して大きく描いてある。)による静電潜像」を符号1192により示している。
【0082】
光源111としては、レーザダイオード(LD)を用いることができるほか、また発光ダイオード(LED)、垂直面発光レーザ(VCSEL)を用いることもできる。
【0083】
VCSELを用いて「走査線間隔の微小なマルチビーム走査」を行なうことができ、高解像度の静電潜像を短時間で形成できる。
【0084】
なお、図1においては、光導電性の感光体である試料157は、図3に示すドラム状の感光体119とは異なり「平板状」であるから、副走査を行なうに際しては、試料ステージ164により試料157を、試料の面に平行で、光走査の主走査方向と直交する方向へ等速で移動させて2次元的な走査を実現する。
【0085】
前述のように「試料としての光導電性の感光体」の形態は、図1に示す平板状のものに限らず、ドラム状のものやベルト状のものであることができるのであり、図1の構成において、試料ステージ164と試料157とに代えて、図3に示すドラム状の感光体119とこれを回転させる回転駆動手段をケーシング151内に組み込むようにしても良い。
【0086】
このようなドラム状の試料を用いる場合、前述の汎用の表面電位計をケーシング151内に組み込み、試料を回転させつつ「帯電手段で帯電された試料表面」の電位測定を行なうようにすることができる。
【0087】
光走査の条件は、光源として、例えば波長:650nmのLDを用い、露光エネルギ密度として「1ドットあたり1mJ/cm2以下」が好ましく、このような条件で光走査を行なうことにより、1ドットあたりの面積:5000μm2程度の光画像書き込みを実施できる。
【0088】
なお、図1においては光照射手段156がケーシング151内に設けられているが、この部分をケーシング151の外部に儲け、ケーシング151に開口を形成し、この開口を透過率の高いガラスなどで密封し、このガラスを介して外部からの光で光走査を行なうようにしてもよい。
【0089】
次に、静電潜像の測定について説明する。静電潜像の測定には、上述の帯電手段と、電子検出器163が用いられる。
【0090】
電子銃152からの電流値を「帯電時(数nA)に比して1/1000程度の数pA」に小さくし、このような「弱い電子ビーム」により試料157の表面を2次元走査する。
【0091】
このように電子ビームの電流値を小さくするのは、電流値の電子ビームの電流値が大きいと「静電潜像の消失が速い」のでこれを防ぐためである。
【0092】
電子検出器163は「2次電子検出器」である。静電潜像測定用の弱い電子ビームで試料157を2次元走査すると、試料157から2次電子が放出されるが、2次電子の放出量は「静電潜像が形成されている部分」で少なく、「静電潜像が形成されていない部分」で多い。
【0093】
従って、弱い電子ビームで2次元しつつ、発生する2次電子を電子検出器163で検出(電子検出器163内に吸引した2次電子を蛍光体に当てて蛍光を発生させ、この蛍光の強弱を電子増倍する)ことにより、静電潜像に対応する信号を得る。なお、この測定は、特許文献1により公知である。
【0094】
このように電子検出器163による検出信号を、インタフェース158を介して制御手段160のコンピュータに取り込み、データ処理して、静電潜像のパターンをディスプレイ上に表示する。図1は、試料157に形成された3種の静電潜像161をディスプレイに表示した状態を示している。
【0095】
図1に示す如き画像評価装置で、請求項1の画像評価方法を実施する場合について説明すると、試料157を試料ステージ164上にセットしたのち、制御手段160のコンピュータにより装置各部を制御し、まず真空ポンプ159によりケーシング151内を真空状態とし、上述の如くして試料157の表面を均一に負帯電させ、光照射光学系156による光走査(光画像書き込み)で静電潜像の形成を行なう。
【0096】
その際、制御手段160のコンピュータにおいて「入力パターンの形状と面積」を有する入力情報を生成し、この入力情報を「光画像書き込み情報」として光照射光学系156による光画像書き込みを行なう。この光画像書き込みにより入力情報に対応する「対応静電潜像」が形成される。
【0097】
入力情報と対応静電潜像の1例を図4(1)に示す。
図4(a)は「入力情報を持つ入力パターン」であり「一辺の長さ:aの正方形」が16個、4×4(4行4列)に配列され、そのうち4つの正方形が黒い。
入力パターンの全面積:16a2に対し、黒い部分の全面積は4a2であり「全面積:16a2に対する黒い部分の占める面積率」は25%である。
全面積:16a2が白い場合を「階調:零」、全面積が黒い場合を階調:15とすると全部で16階調を表現でき、図4(a)に示す場合の階調は「4」である。
このように「入力情報には少なくとも入力パターンの形状(黒い部分と白い部分との配列パターン)と面積」が含まれる。
【0098】
正方形の一辺の長さ:aは任意であるが、これは「電子写真プロセスを利用する画像形成で実現させたい所望の解像度」により決定される。
【0099】
例えば、所望の解像度として600dpiを考えると、入力パターンにおける正方形1個の1辺の長さ:a=42.3μm、解像度:1200dpiならa=21.17μm、2400dpiの解像度ならa=10.58μmとなる。
【0100】
表現しようとする階調を256階調とすると、少なくとも16×16(=256)の正方形の配列が必要となる。階調をより滑らかに表現しようとすると、さらに多数の正方形の配列が必要となる。
【0101】
図4(a)に示す入力パターンの入力情報により、上記のようにして試料157上に形成される静電潜像が入力パターンに対応する「対応静電潜像」であるが、この対応静電潜像は例えば図4(b)に示す如きものとなる。
この例では、入力パターンの「1個の黒い正方形に対応する静電潜像部分」は「楕円形状」であるが、実際には、円形となる場合もあるし、矩形に近い形状やあるいは「さらに複雑な形状」になることも有る。
【0102】
上記静電潜像部分(対応静電潜像において、入力パターンにおける1個の黒い正方形に対応する線像部分)の大きさも、図4(c)に示すように、1辺:aの正方形の大きさをはみ出す場合や、図4(d)に示すように上「正方形内に収まる場合」もある。
静電潜像部分の面積:Sdは、図4(c)の場合:Sd>a2であり、(d)の場合:Sd<a2である。
【0103】
静電潜像部分の面積:Sd≠a2であるため、対応静電潜像の階調は、所望値:4からずれる。
【0104】
このように「対応静電潜像の階調が、入力パターンにおける階調と異なる」と、対応静電潜像をトナー画像として可視化した場合における「可視像の階調再現性」を損なう1因となる。
【0105】
対応静電潜像において、入力パターンの「1個の黒い正方形部分」に対応する静電潜像部分の大きさは、光画像書き込みにおける照射光強度、照射時間、感光体の特性、帯電電位等の制御因子よっても変るものであるから、これら制御因子の値を変えることにより、ドット(1個の黒い正方形部分に対応する静電潜像部分)の大きさを変えることが可能である。
【0106】
従って、画像評価により対応静電潜像の面積と入力パターンの面積との「面積差」を、画像形成の電子写真プロセスにフィードバックすることにより階調性再現を向上させることが可能となる。
【0107】
入力パターンの面積情報は、例えば、図4(a)に示す場合であれば、入力パターンの1個の「黒い正方形」の大きさ:a2として与えられるので、上記面積差を得るには、対応静電潜像の面積(上記1ドットに対応する「静電潜像部分」の面積)を測定する必要がある。
【0108】
この面積測定を、図5(2)に即して説明する。
図5(a)において、符号20は、図4(a)に示した入力パターンにおける「1辺の長さ:aの正方形」に相当し、符号21は、対応静電潜像における1ドットの静電潜像部分(上記1個の正方形に対応する静電潜像)の輪郭を示している。
図5(a)における符号22は「測定解像度の最小単位」を表す1ピクセルである。
1ピクセルは一辺の長さ:pの正方形であり、「p<a」である。
図5(a)では「a=12p」としているが、これに限らず、対応静電潜像の形状(説明中の例で1ドットの静電潜像部分の形状)を表現するのに適当な数であれば良い。
図5においてはピクセル全体が「16×16」のピクセル配列となっているが、この図は「対応静電潜像の一部」を切り出したものであり、全体は例えば720×480ピクセル程度である。
測定装置の解像度は、走査型の電子検出器を用いて「NTSC(National Television Standards Committee)の規格であればこの程度の解像度となる。
図5は「1ドットのみの静電潜像部分」を示しているが、図4(a)、(b)で示したように「周囲にあるドットも同時に測定」する場合、最低で48×48ピクセル必要である。
【0109】
測定装置の検出手段(電子検出器)は、得られる物理量の強度を階調に変換して画像を出力するものである(例えば256階調)。
【0110】
上記のように、対応静電潜像は階調を有し、例えば、図5(a)の静電潜像部分の中心と周囲とでは階調数が異なる。そこで、階調に閾値を設け、静電潜像部分を零、バックグランド部分を1として「2値化」する。この2値化により、対応静電潜像(部分)の輪郭も明確に決定できる。
【0111】
対応静電潜像の面積は、このように2値化した対応静電潜像における「階調:0」のピクセル数をカウントすればよい。図5(b)に示す静電潜像部分の例では、その面積はピクセル数にして120ピクセルである。
【0112】
一方、入力パターンにおける1辺:aの正方形は144ピクセルで構成されているので、この正方形に対応する対応静電潜像の面積を表すピクセル数:120とのピクセル数の差は24ピクセルである。
【0113】
即ち、対応静電潜像の面積は、入力パターンの面積に対して面積率:83.3%であることになる。また1ドットの対応静電潜像部分の面積に当たる120ピクセルは、これを正方形形状に換算した場合、換算正方形の1辺が「0.91a2」となる。
【0114】
対応静電潜像の面積率:100%を理想値とすると、実際の対応静電潜像は16.7%小さい値である。このように、入力パターンに対応する対応静電潜像の面積を測定することにより、入力情報と対応静電潜像の差を把握できる。
【0115】
また、上記の場合において、対応静電潜像の階調は、入力パターンの階調:4に対して略3.3であり、入力パターンに対する対応静電潜像の「階調のずれ」を見積ることができる。
図5(b)は「1ドットの静電潜像部分」であるが、図4(b)のように対応静電潜像が4ドットを有する場合も同様にして「上記の差」を求める。
【0116】
4ドットを有する場合について、入力情報と対応静電潜像の差は「誤差の範囲で同じ」場合もあるが、誤差以上に異なる場合も有りうる。
【0117】
4ドット全体での評価は、4つのドットの総和を取ったり「平均値を取る」などして差を求めることができる。ドット数が増えた場合も同様である。
【0118】
図6(3)(a)に示すように、4×4の正方形で構成される入力パターンにおいて、16個の正方形の配列を、図の如く番号1〜16のようにナンバリングする。
【0119】
光画像書き込みを「正方形1〜16の順に光走査」して行なうものとし、光照射する場合を「1(オン)」、光照射しない場合を「0(オフ)」とする。
そうすると、図6(b)に示す入力パターンの光画像書き込みの際の光照射のオン・オフは「1,0,1,0,0,0,0,0,1,0,1,0,0,0,0,0」となる。
【0120】
これは、入力パターンの形状を与える情報である。勿論、実際の配列総数は16よりもはるかに多い。
【0121】
上の説明では、光画像書き込み手段として説明した光走査装置は、単一の光源を有し、光走査は所謂「シングルビーム走査」で行なわれるが、複数の光源を用いるマルチビーム走査により、入力パターンの対応静電潜像を形成するようにしても良いことは言うまでもない。
【0122】
例えば、光源を2個用い、上記4×4個の入力パターンを、奇数行と偶数行に分け、一方の光源のオン・オフ信号を「1,0,1,0,1,0,1,0」として奇数行の光走査を行い、他方の光源のオン・オフ信号を「0,0,0,0,0,0,0,0」として、図6(b)の入力パターンを光画像書き込みできる。光源を4個用いるマルチビーム走査により4行の光走査を1度に行なうこともできる。
【0123】
上の例では、隣接ドット間の光走査に要する時間は一定である。光源にレーザダイオード(LD)を用い、ポリゴンミラーを用いて光画像書き込みを行なう場合、LDの発光時間及びポリゴンミラーの回転数により上記時間が決定され、電子写真プロセスの制御因子の一つとなる。
【0124】
特許文献1に記載された静電潜像測定方法では評価されるのは「ドットの評価」のみであるが、この発明では、上記実施の形態のように、入力パターンを構成する網点の入力値と静電潜像部分の面積の差を測定することが可能となる。
【0125】
図1の装置で上記の評価を行なうに際して、各手段の制御は、インタフェース158を介してコンピュータ160で行なう。各手段の詳細な制御はコンピュータ内のソフトウェアで行う。
【0126】
図5に即して説明したデータ・画像処理をコンピュータにより行い、対応静電潜像の面積・面積率・入力パターンとの差を求める。
このデータ処理・画像処理や「面積差の算出」等の演算は特別なものでなく、汎用のデータ・画像処理ソフト等を用いても行うことが可能である。
【0127】
画像評価装置に関して「装置の制約」がある場合もある。
例えば「電子ビームを走査する範囲を広くできない」とか「試料(光導電性の感光体)のサイズに制約がある」などの制約である。
電子ビームの走査範囲に関しては、汎用SEMと比較して「数nmという分解能」を犠牲にすれば、ある程度(数mm×数mm)の範囲を走査することは可能であるが、実際に使用される感光体は「直径:数cm、長手方向:数十cmの大きさのドラム状」のものが多い。
このような感光体の全面を一度に走査することは難しく、感光体を動かして部分的な走査を繰り返すことになる。また、この程度の大きさの感光体を試料とすると「試料をセットする部分」が大型になり、真空槽も大容量にする必要がある。従って、実際の感光体の一部を切り出して試料としたものについて測定するなどの工夫が必要になる。この場合、電子ビームの走査はごく狭い範囲で構わなくなる。
【0128】
「具体例」
市販の電子複写装置やレーザプリンタに用いられる機能分離型の「光導電性の感光体」を「2cm×2cm程度」に切り出して試料とした。
CTLの厚みは約30μmである。
【0129】
電子ビームの加速電圧を1.8kVとして試料表面を均一帯電させた。
【0130】
「入力パターン」として、図7に示す「1辺:aの正方形の2×2配列」を採用し、図3に示すタイプの光走査装置により光画像書き込みを行なった。光源として発光波長:λ=650nmのLDを2個用い、2ラインを同時走査するマルチビーム走査により光画像書き込みを行なった。
【0131】
2個のLDの一方からのレーザ光束で1行目を書き込み、他方からのレーザ光束で2行目を書き込む。従って、1行目を書き込むための光源オン・オフ信号は「1,0」、2行目を書き込むための光源オン・オフ信号は「0,0」である。
露光エネルギ密度は1mJ/cm2以下とした。
【0132】
ポリゴンミラーによる偏向で1ドットを書き込むのに要する時間:Tに対し、LDが発光している時間をT/2(デューティ比:50%)とした。
【0133】
上記の如き面積測定を30回程度行い、対応静電潜像の面積(黒部分の1ドット)を求めたところ「5600±100μm2」であった。
解像度:600dpiを目標値として、入力パターンの面積:1792μm2であり、対応静電潜像との面積差は3808μm2となった。
【0134】
上記の如く、ある1つの階調について「入力パターンと対応静電潜像の面積差」の測定は、階調再現性を向上させる上で重要であるが「階調再現性」は、複数の「異なる階調」間で成り立つものであるから、異なる階調のそれぞれでの差を把握する必要がある。
【0135】
図8(5)を参照して説明すると、図8上図は「階調が異なる3つ入力パターン」の入力情報であり、これをもとに対応静電潜像を形成する。形成の順序は矢印の如く、階調:4(図8上左図)、8(同中図)、12(同右図)の順でも良いし、これと逆でも良い。
【0136】
対応静電潜像の形成位置は、試料である光導電性の感光体上の同じ位置でも、異なる位置でも良い。同じ位置に形成する場合は、先に形成された対応静電潜像を消去するための除電手段が必要となる。
【0137】
除電は、例えば「光画像書き込みに用いられるのと同じ波長の光」を、試料全面に照射することにより実施でき、例えば、発光素子(LED)を試料設置位置に近接させて配置して試料全面を光照射するようにすればよい。LEDの発光波長は、試料の光感度特性も考慮して、例えばλ=650nmとすればよい。除電後、試料を再度帯電させ、光画像書き込みにより対応静電潜像を形成する。
【0138】
図8下図は、同上図に示す3種類の入力パターンにそれぞれ対応する対応静電潜像を示している。このように形成された3種の対応静電潜像の面積を上述の例と同様にして測定し、各入力パターンの面積(入力情報として入力パターンごとに定まっている。)との差を求める。
【0139】
このようにして、図8では3階調(図8上図の左図・中図・右図)の入力パターンに対して面積差が求まる。図8の例では、説明の簡単のために階調数を「3」としているが、実際の場合として、必要な階調数が例えば256(16×16)であれば、入力パターンとその入力情報は256種あり、対応静電潜像の形成・面積測定も256回行う。
【0140】
入力パターンは、図9に示すような大きな配列にあるものを用いる。ただし、必要とする階調数は間引いても128、64、32、16などであっても良い。
【0141】
図8の入力パターンの個々は4×4の配列であるが、図10の右側に示す「8×2」の配列も、同図左側の「4×4の配列」に等価である。
図10右側に示す「8×2」の入力パターンであれば、2つのLDを光源とする2ライン同時走査のマルチビーム走査方式の1光走査で各対応静電潜像を形成できる。
【0142】
このようにして、対応静電潜像のレベルにおいて「階調再現性の評価」が可能となる。
【0143】
入力パターンの入力情報に「必要とする階調数」に対し、入力パターン(上の例で言えば「黒い正方形部分の集合」)の面積は直線的に増加もしくは減少する。
階調を横軸にとり、入力パターンの面積を縦軸にとってグラフを作成すると、図11に示すようになる。
図11において「入力情報」とあるのは入力パターンに関するものである。
【0144】
この入力情報は、解像度:600dpiとして「面積(縦軸)」を算出している。入力情報を表す直線の傾き:1792.1は、入力パターンの面積/階調で表され、切片は零で原点を通る。
理想的な対応静電潜像が形成できれば、階調に対する対応静電潜像の面積変化は、この「入力情報の直線」と一致する。
しかし実際には、上述のように、対応静電潜像のドット(静電潜像部分)面積は、入力情報の面積値からずれる。例えば、図4(d)に示す場合のように、対応静電潜像の1ドットが一辺:aの正方形内に収まり、その面積が「a2よりも小さい」場合には、階調に対する面積変化は、図11の「静電潜像1」で示すようになる。
【0145】
この場合の「対応静電潜像の1ドットの面積」は0.833a2としている。この直線の傾きは1243.5となり、入力情報を表す直線の傾きと異なる。従って、これを「入力情報の直線からのずれ」として測定可能である。
図11における静電潜像1の直線は、原点を通る。
【0146】
次に、図8に示す階調数:12の対応静電潜像(図8下右図)の場合を考えると、この対応静電潜像における1ドットの面積は「a2よりも小さい」が、上下に隣接するドットが互いに重なっている。対応静電潜像を構成するドットは全部で12ドットある。
1ドットの面積を「Sd」とすれば、全面積:12Sdが理想であるが、ドット相互に重なりが生じているため全面積は「12Sdよりも小さく」なる。
対応静電潜像を構成するドットの数が増えて「重なるドットが多くなる」ほど、対応静電潜像を構成する全ドットの面積は小さくなる。従って、この場合の、階調・面積の関係は、図11の「静電潜像2」のようなグラフ線(破線)となる。
このグラフ線「静電潜像2」は、厳密には直線ではなく「近似直線」である。
【0147】
「静電潜像2」を表す直線は、傾き:1173.8であって「入力情報を表す直線の傾き(1792.1)」と異なり、また切片:1577.1μm2となる。従って「入力情報とのずれ」として、「傾き」のほかに「切片」の測定が可能となる。
【0148】
図11において「入力情報」のグラフ線の相関係数は1で「直線」である(これを「理想直線」と呼ぶ。)
次に、「静電潜像1」のグラフ線の相関係数を求めると1となりこれも直線であるが、理想直線とは「傾きのずれ」がある。「静電潜像2」のグラフ線の相関係数は0.9956と成り、僅かに直線からずれることが分る。これも「入力情報と対応静電潜像の面積とのずれ」の1つの形態であり測定できる。
【0149】
即ち、請求項3において、入力パターンPIの面積:SPIを、階調:Iに対して直線的に変化させたとき、対応静電潜像MIの面積:SIの「階調:Iに対する変化の、面積SPIの直線的変化に対する差」は、この場合、近似直線(静電潜像1、静電潜像2)の傾き・切片・相関係数の3つである。
【0150】
画像を印刷物として紙に印刷した場合、印刷画像の階調再現性評価には「明度:L*」を用いる場合が多い。人が知覚し得る「隣り合う階調間の明度差」は、明度によらず一定値を取ることが知られており、従って「階調に対する明度の変化は直線的である」ことが好ましい。静電潜像の面積についても同じことが言え、階調に対して静電潜像の面積が直線的に変化することが好ましい。
【0151】
図4(a)の入力パターンに基づいて対応静電潜像(図4(b))を形成し、この対応静電潜像を現像してトナー画像とし「最終的に記録シート上に出力画像として出力」した場合における「出力画像」を構成するトナー粒子の大きさを「極端に誇張」して描くと、図12(a)の如くになる。
勿論、トナーの粒径は10μm以下であるから目視でトナー粒子の個々は見えないし、図のように「トナー粒子間に大きな隙間が多数空いている」訳ではない。
【0152】
図12(a)に示すような「ドット状のトナー画像」は、光学顕微鏡やレーザ顕微鏡などを用いて詳細を観察でき、顕微鏡にデジタルカメラ等の撮像機器を装着し、観察画像を電子データにすれば、その後のデータ・画像処理を行うことが容易になる。
汎用の画像処理ソフトを用いれば「トナー画像の面積」を容易に求めることができる。
【0153】
例えば、入力パターンから対応静電潜像を経て、図12(b)のように取得した「出力画像」であるトナー画像の輪郭を抽出して面積を求めることができる。この面積の求め方は「図5に即して説明」したのと同様である。
このように求められる「トナー画像の面積」と、前述の如くして求めた対応静電潜像との面積の差:Δsを求めることができる(図12(c))。
【0154】
入力パターンに対する対応静電潜像の形成とトナー画像の形成とは「同時に行う」ことが好ましい。
対応静電潜像の形成とトナー画像の形成は別々の手段で行ってもよい。
例えば、適宜のデジタル複写装置あるいはプリンタで、記録シート上にトナー画像を出力画像として形成する一方、対応静電潜像は上述した図1の装置を用いて、上記複写装置またはプリンタでの静電潜像形成と同じ条件(帯電電位等の帯電条件・走査光学系による光画像書き込み等)で形成できる。
【0155】
勿論、対応静電潜像形成に用いる光導電性の感光体と、現像によりトナー画像を形成する感光体とは、同一の物性(同一条件での静電潜像形成で、同一の静電潜像が形成される感光体としての特性)を持つものを用いる。勿論、同一の感光体に対し、対応静電潜像の形成と現像とを行なうようにすることができる。
【0156】
同一の感光体を用いる場合を簡単に説明すると、上に説明した試料としての感光体として「実際にデジタル複写装置等で用いられるドラム状の感光体」を用い、これを図1の装置に試料としてセットし、帯電条件・光画像書き込みの条件を設定して、上と同様にして入録パターンに対応する対応静電潜像の形成と形成された対応静電潜像の測定(面積・階調等)を行なう。
【0157】
その後「同じ感光体」をデジタル複写装置にセットし、上記帯電条件・光画像書き込み条件により上記入力パターンと同一の入力情報で静電潜像形成を行なって「可視像用静電潜像」を形成し、形成された可視像用静電潜像に対し現像・転写を行い、入力情報に応じたトナー画像を得る。そして、このトナー画像に対し、上記の如く面積測定等を行なう。
【0158】
このようにすることにより、入力パターンの入力情報と対応静電潜像との関係に加え、対応静電潜像とこれを可視化したトナー画像との関係を知ることが可能になる。
【0159】
ここで、トナー画像を形成するトナーと、トナー画像を転写・定着する記録媒体について説明する。
【0160】
静電潜像を現像する方式としては、乾式現像方式・湿式現像方式があるが、現在では高速性に優れた「乾式現像方式」が主流となっている。しかし、この発明の実施については乾式現像方式に限らず、湿式現像方式を利用することも勿論可能である。
【0161】
乾式現像方式に用いられる粉黛の現像剤には「1成分現像剤と2成分現像剤」が知られ、1成分現像剤を構成するトナーには「非磁性トナー」と「磁性トナー」がある。また、2成分現像剤は「トナー粒子とキャリア粒子」とからなり、この場合も、トナーには非磁性トナー、磁性トナーがある。
トナー粒子はポリマーを主成分とし着色剤等が含まれ、粒径は数μmから十数μmである。キャリア粒子は鉄粉などの金属系材料で粒径は数十μmから数百μmである。
【0162】
トナー画像を最終的に担持することになる記録シートは、転写紙であることが一般的であるが、それ以外に厚紙や、OHPシート(オーバヘッドプロジェクタ用のプラスチックシート)等であることもできる。
【0163】
従来、紙等の記録シート上のトナー画像の階調再現性は巨視的に「反射率、濃度、明度など」を測定して行われている。
【0164】
特に、階調再現性における「明度の再現性」は、図13に示すように、横軸の階調の変化とともに、直線的に変化することが好ましい。
図14を参照して対応静電潜像(可視像用静電潜像)とトナー画像の対応を説明する。
図14の上図には、階調の異なる3種の対応静電潜像が示されている。この対応静電潜像は、図8下図に示したのと同じものであり、図8上図に示す3種の入力情報により「可視像用静電潜像」として形成されたものである。
【0165】
図14下図は、同上図の静電潜像に対応するトナー画像(図中は「トナー像」)である。
【0166】
上記の如くして、静電潜像の面積とトナー画像の面積を階調ごとに求め、「静電潜像面積とトナー画像面積」の差を求める。
【0167】
図14では、説明の簡単のために、階調数を3としているが、これに限らず、256階調等であっても良いことは言うまでもない。
【0168】
例えば、256階調の入力情報について測定を行なう場合であれば、例えば、図9に示す如き「16×16の配列」の入力情報を用いれば良く、この例では、黒い正方形部分の全面積は48a2であり、全面積:256a2に対する面積率:18.8%、階調:48である。
【0169】
上述の如く、対応静電潜像の面積が「入力情報の面積」からずれる。従って、対応静電潜像を用いて形成されるナー画像の面積は、入力情報の面積から「さらにずれる」のが一般的である。
入力情報でなく「対応静電潜像を基準」として、トナーが「静電潜像に理想的に付着」する場合を考えれば、トナー画像の面積は対応静電潜像と同面積になる。この場合を、図15に「A」で表すグラフ線であらわす。
【0170】
図15の横軸は静電潜像面積を表し、縦軸はトナー画像の面積(図中「トナー像面積」)を表している。上記理想的な場合ならば、静電潜像面積とトナー画像面積とは同一であるから、グラフ線:Aの傾きは「1」であり、切片は0で座標原点を通る。
【0171】
「傾き」は「面積/面積」で無次元である。図15では、解像度:600dpiの場合を例として面積を算出した。
【0172】
入力画像の1ドットに対応する静電潜像部分(対応静電潜像における1ドット状の部分)の面積は、入力情報の面積の83.3%とした。
対応静電潜像と等価な可視像用静電潜像へのトナーの付着が少なく、トナー画像面積が対応静電潜像面積の70%になる場合を図15にグラフ線「B」で示す。グラフ線「B」は、傾き:0.7で原点を通る。
【0173】
従って、傾き:1のグラフ線「A」とグラフ線「B」との傾きの差は「0.3」であり「対応静電潜像とトナー画像との差」の1つである。
【0174】
図15のグラフ線「C」は、対応静電潜像に対して「±数%の面積のばらつき」をランダムに有するトナー画像の場合を示す。このグラフ線「C」を破線で示す直線で近似した近似直線は傾き:1.0957で、傾き:1のグラフ線「A」に対して0.0957のずれ(差)がある。
【0175】
上記近似直線の切片は−1412.2であり、これは対応静電潜像とトナー画像の差の1つである。
このように、入力パターンPIを階調:I(N≧I≧1)応じて変化させ、対応静電潜像MIの面積:SIを階調:Iに対して直線的に変化させ、同一内容の入力パターンにより形成されたN個の可視像用静電潜像をトナーにより可視化してN個のトナー画像TIとし、このトナー画像の面積:STIを測定し、面積:SIの階調:Iに対する変化の、面積STIの変化に対する差として、上記傾き・切片・相関係数を測定することができる。
【0176】
従来「階調再現性の評価」は、入力情報に対するトナー画像の明度の直線性のみによっていたが、この発明により「階調再現性における静電潜像とトナー画像とのずれ」を用いることにより高精度の測定が可能である。
【0177】
図16に、入力情報に対する対応静電潜像とトナー画像との画像評価を行なう装置の1例のシステム図を示す。
【0178】
図16において符号141、145で示す部分は、図1に即して説明したのと同様の画像評価を行なう部分であり、符号141で示す部分で試料に対する対応静電潜像の形成と形成された対応静電潜像の面積の測定を、図1の場合と同様にして行なう。
【0179】
図16において、符号142は電子写真プロセスによる画像形成を行なう画像形成部であり、対応静電潜像の形成と面積測定を行なわれる試料と「静電潜像形成条件」を同一に設定された感光体が用いられる。
【0180】
入力パターンに関する入力情報は、コンピュータ145で生成され、ディスプレイに表示される。このようにして、入力情報により試料に対応静電潜像が形成されてその面積が測定される。
【0181】
一方、画像形成部142は、その感光体を試料と同一条件で帯電し、試料に対する光画像書き込みと同一の条件で光画像書き込みを行なって入力情報に対応する可視像用静電潜像を形成し、これを現像して得られるトナー画像を紙等の記録シート上に転写・定着して出力画像として出力する。
【0182】
従って「画像評価を行なう部分で試料に形成される対応静電潜像」と同一の静電潜像が画像形成部142の感光体に形成され、トナー画像として可視化される。試料に形成される対応静電潜像の面積が測定され、入力情報の面積との差が取られる。この面積の差は、所望の階調数の各階調に対して行なわれる。
【0183】
画像形成部142としては、市販の光プリンタやデジタル複写装置を用いて良い。
【0184】
図16に符号146で示すのは、入力情報に応じて記録シート上に形成されたトナー画像である。図では、異なる3階調のものを例示しているが、図示の簡単のためであり、階調数はさらに多くても良いことは言うまでもない。
【0185】
図6のトナー画像146は、数mm〜数cmの巨視的なサイズで見た様子を描いており、数十μmといった微視的なサイズで見ると、図12(a)に示すような小さなドットの集合パターンで出来ている。
【0186】
このトナー画像によるパターン146の評価を説明する。
【0187】
トナー画像によるパターン146は、2種の観察・測定装置により測定される。
第1の観察・測定手段143は「主としてパターンの反射率を測定」する装置である.基本的に光源148及び検出器149を有し、光源148から測定試料150に光照射し、反射光を検出器149により検出する。
【0188】
測定試料150は、トナー画像のパターン146を持つ記録媒体である。この装置では測定試料150の反射率が測定されるが、反射率の測定に代え、あるいは反射率とともに「明度」を測定しても良い。
【0189】
第2の観察・測定手段144は「顕微鏡」であり、同じ測定試料150の微視的状態を観察・測定する。即ち、第1、第2の観察・測定装置における前者は「巨視的な観察・測定」を行い、後者は「微視的な観察・測定」を行なう。
【0190】
前述の如く、入力パターンを特定する入力情報は、コンピュータ145で生成し、対応静電潜像の形成・観察は装置141で行い、観察結果をコンピュータ145に返し、同じ入力情報を用いて画像形成部142で紙等の記録媒体上にトナー画像146を形成し、その観察・測定を第1、第2の観察・測定手段143、144で行い、観察結果をコンピュータ145に返し、コンピュータ145内で対応静電潜像とトナー画像との面積差を算出する。なお、対応静電潜像の形成とトナー画像の形成、観察は同時でも時間差があっても良い。
【0191】
このようにして、入力情報と対応静電潜像、対応静電潜像とトナー画像、入力情報とトナー画像とのそれぞれの差・ずれを高精度で測定・評価することが可能になる。
入力情報が有る関数:F0で、これに対応する対応静電潜像がF1、トナー画像がF2で表されるものとする。
【0192】
このとき、入力情報と対応静電潜像との差:ΔF1はF1−F0で表され、対応静電潜像とトナー画像像との差:ΔF2はF2−F1で表される。
【0193】
従来は、入力情報とトナー画像との差:ΔF0=F2−F0求めていた。ここで、ΔF0=ΔF1+ΔF2ある。
入力情報とこれに最終的に対応するトナー画像との間には、電子写真プロセス上の多くの制御因子(パラメータ、条件)がある。従来のように、入力情報とトナー画像との差:ΔF0のみであると、電子写真プロセスに対する好適な制御因子(パラメータ、条件)を探す効率が悪い。
【0194】
上記ΔF1は「入力情報と対応静電潜像との差」で、主として「走査光学系に関する制御因子」に関する。ΔF2は「対応静電潜像とトナー画像との差」で、主として「現像に関する制御因子」に関する。
【0195】
この発明の画像評価では、従来「ΔF0のみ」に依っていたのを「ΔF1とΔF2の2つを用い」て評価でき、プロセスも走査光学系と現像系を分離することができるので、制御因子を探す効率を有効に工場させることができる。
【0196】
上の関数に対してさらに階調を考慮する。
ある階調を「i」と表すと、階調:iに対して上記のF0、F1、F2は、F0i、F1i、F2iである。それらの差はそれぞれ、ΔF0i、ΔF1i、ΔF2iであり、階調:iの範囲(例えば0≦i≦255)においてF、ΔFを各々求めれば良い。
【0197】
図17は、上記の測定結果を制御因子にフィードバックし、最適・好適値を探すプロセス示すダイヤグラムであり、このようなフィードバックの手段を電子写真プロセスに組み込めば良い。
【0198】
また、図16のシステムを応用すれば、画像形成部142の検査システムとすることもできる。画像形成部142以外は固定とし、画像形成部142の部分を順次換えて測定・評価、調整を行うことができる。
【0199】
このように、入力情報とトナー画像に加えて「静電潜像も含めた評価」の結果を制御因子に反映することにより「より階調再現性の良い画像」とともに、かかる画像を形成できる装置を実現できる。
【0200】
「具体例」
図13に、階調再現性における「明度の再現性」の好ましい例(横軸の階調の変化とともに、明度が直線的に変化する場合)を示したが、図13に示された「階調に対する明度:L*」を、明度L*を「その最大値で規格化」したグラフを図18に示す。
図18において、例えば、階調:100において、直線191からずれた値:192が得られたものとし、この値:192の「直線191からのずれ」を「ΔL*’」と記す。
【0201】
ΔL*は「規格化された明度差」である。
図19は、入力情報に対応する階調に対し、この入力情報により形成された対応静電潜像の面積を「その最大値で規格化」したグラフを示す。
このグラフは、対応静電潜像の面積が「階調に対して理想的に増加」する場合を表している。
【0202】
この図において、例えば、階調:100において、対応静電潜像の面積が「直線201からずれた値:202」が得られたものとする。このとき、値:202の「直線201からのずれ」を「ΔS’」とすると、この「ΔS’」は、階調:100における「対応静電潜像面積の規格化された面積」の理想値からの差である。
【0203】
また、明度差と対応静電潜像面積との差:ΔL*’−ΔS’を求めると、これは現像プロセスにおけるトナー画像形成の寄与を表し、上記ΔF2を含んでおり、上記の如く測定した差・ずれの各値と、従来技術の明度による評価方法を結びつけるものである。
階調全体での評価は、階調をiとして「ΔLi*’ −ΔSi’」である。
【0204】
従来、階調再現性の評価は「横軸に階調数、縦軸に明度の実測値」をプロットして直線近似し、その相関係数の値により「階調再現性の優劣」を評価していたが、評価値が1つであり評価方法に課題があった。
【0205】
これに対し、この発明のように、相関係数の外に「近似直線の傾きのずれ」や「切片の値(原点からのずれ)」を評価値に加えることにより、より精度の高い評価方法を実現できる。
【0206】
また、得られた評価結果を電子写真プロセスの制御因子に反映させることにより、さらに階調再現性の良い画質及びその画質を形成する画像形成装置を実現できる。
【0207】
図16に即して説明した評価装置において、トナー画像の反射率を測定し、網点面積率:Atを求める場合を考える。
【0208】
周知の如く、記録シート上に表現されたトナー画像の階調再現性の評価は、反射率:Rを測定することにより行われることが多い。光学濃度:Dで表現する場合、反射率:Rと光学濃度:Dとの関係は、
D=log10(1/R)
で表される。
【0209】
白色の記録媒体上にトナーが存在しないとき「濃度:0」であり、記録媒体全体がトナーで覆われた所謂「ベタ画像」での濃度は2.0前後の値となることが多い。
【0210】
光画像書き込みを用いる電子写真プロセスで形成されるトナー画像は「ドットの集合」による所謂網点画像であり、一定面積に対して網点の面積率は、濃度:0に対して0%、上記ベタ画像に対して100%であり、この間に「異なる濃度をいくつ表現できるか」により階調の数(階調数)が決まる。
【0211】
図20(a)において、基準となる面積をSs、トナー画像におけるドット像の面積をSdとすると、トナー画像における網点面積率:Atは「At=Sd/Ss」で与えられる。
【0212】
従来においては、反射率の測定において、トナー画像の網点占有率が測定されているが、この場合に「オプティカルドットゲイン(測定用の光が記録媒体である紙の内部まで浸透して拡散したり、トナー表面で反射したり、トナー内部で多重散乱することにより生じ、測定される網点面積を増やす効果を有する。)をどのように補正するかの問題がある。
【0213】
面積階調と網点面積率との関係は「Murray−Davisの式」により表され、オプティカルドットゲイン:nの補正をしたYule−Niesenの式があるが、光学的測定により得られる反射率・網点面積率には原理的にオプティカルドットゲインが含まれる。
【0214】
昨今、パーソナルコンピュータ(PC)により電子的に文章・画像を作成し、この画像をレーザプリンタやデジタル複写装置を用いてアウトプット画像を出力する場合には、一般的に256階調(8bit,28)が用いられており、これが必要とされる階調数になるが、情報機器や電子機器の性能及び作像技術のレベルに依存する所が大きい。業務用の画像形成ではより多くの階調数が必要であり、将来的に階調数はさらに増えると考えられる。
【0215】
図16に示したような画像評価装置では、トナー画像のみならず、対応静電潜像に対しても面積測定が行なわれる。
【0216】
図20(a)のように、トナー画像の反射率から網点面積率:At(=Ss/Sd)にはオプティカルドットゲイン:nが含まれるが、図20(b)のように、対応静電潜像の1ドット画像の面積:Seを測定し、静電潜像に対する網点面積率:As(As=Se/Ss)を求めると、この場合の面積測定は光学測定でないので、網点面積率:Asはオプティカルドットゲインを含まない。
【0217】
従って、光学的に測定される網点面積率:At、非光学的に測定される網点面積率:Asの差:(At−As)或いは比:(At/As)から、オプティカルドットゲイン:nを求めることができ、網点面積率:Atを有効に補正することができる。
【0218】
電子写真プロセスにより形成される画像(トナー画像)は、感光体帯電電位、光画像書き込み時の光強度・照射時間、静電潜像へのトナー付着量の多少等の制御因子(パラメータ、条件)により制御される。
【0219】
この発明においては、画像形成すべきパターンである入力パターンの入力情報により形成される対応静電潜像の面積や、この面積の階調に対する依存性が測定され、また、対応静電潜像とこれを可視化したトナー画像の面積や、その階調に対する依存性が測定されるので、上記電子写真プロセスの制御因子をより精緻に設定することが可能となり、これら制御因子でより良好な制御をおこなって良好な画像形成を実現できる。
【0220】
図21に、画像形成装置の1形態を説明図的に示す。
【0221】
図21において、感光体(OPC)71が矢印方向へ等速回転しつつ、帯電チャージャ72により均一帯電され、走査ビーム73により光画像書き込みが行なわれて静電潜像が形成される。
【0222】
形成された静電潜像はトナー74により可視化されてトナー画像となり、記録媒体である転写紙75上に転写チャージャ76により静電転写され、トナー画像を転写された転写紙76は定着装置77によりトナー画像を定着されて装置外へ排出される。
【0223】
トナー画像転写後の感光体71はクリーナ78により表面を清掃され、除電ランプ79により除電される。
【0224】
上記の如くして決定された制御因子により、帯電チャージャ72の帯電電位、光画像書き込みの際の光強度や照射時間、現像装置におけるバイアス電圧やトナー帯電量等の現像条件等を制御することにより良好な画像形成を行なうことができる。
【符号の説明】
【0225】
152 電子銃
153 コンデンサレンズ
154 走査レンズ
155 対物レンズ
157 試料(光導電性の感光体)
159 真空ポンプ
158 インタフェース
160 制御手段
165 光照射光学系
164 試料ステージ
163 電子検出器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0226】
【特許文献1】特開2003−295696号公報
【特許文献2】特許第3865676号公報
【特許文献3】特開2005−311952号公報
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像評価方法および装置・画像形成装置、より詳しくは、電子写真プロセスを利用した画像形成における静電潜像やトナー画像の評価、これらの評価を利用する画像形成の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを利用した画像形成は、従来からアナログ複写機やデジタル複写機、レーザプリンタ等の光プリンタ装置等の画像形成装置として広く実施されている。
【0003】
近時、主流となっている光走査や発光ダイオードアレイを用いる光書き込みによる画像形成により説明すると、電子写真プロセスでは「光導電性の感光体」が用いられる。
【0004】
光導電性の感光体はその表面が均一に帯電され、均一に帯電した感光体表面に対し光走査等による「光画像書き込み」が行なわれる。
【0005】
この光画像書き込みにより光照射された感光体部分では「光導電性」が生じて帯電電圧が減衰し、感光体表面に「書き込まれた画像に対応する電位分布」として「静電潜像」が形成される。
【0006】
形成された静電潜像は、トナーと呼ばれる微粒子を用いる現像により「トナー画像」として可視化される。
静電潜像を可視化したトナー画像は、一般には、シート状の記録媒体(以下「記録シート」と呼ぶ。)上に転写されたのち、記録シート状に定着される。
【0007】
画像形成の良否は、画像書き込みされる画像(オリジナル画像と称する。)がトナー画像としてどれほど良好に再現されるかにより定まる。この場合、「良好に再現される」ことは、必ずしも「形成された画像がオリジナル画像に忠実である」ことを意味しない。
【0008】
例えば、複写すべきオリジナルの原稿をスキャナで読み取って画像信号を生成し、この画像信号により光走査して静電潜像を形成する場合を考えると、オリジナルの原稿画像は必ずしも「理想的に良い画像」であるとは限らず、画像が擦れているものや汚れているもの、画像の濃さが十分でないものもある。
【0009】
このような場合には、読み取った画像情報信号を適宜に加工し、オリジナル画像の画質を高めるようにして画像信号を生成し、この画像信号により画像書き込みを行なう。
【0010】
このように、静電潜像を形成するのに用いる画像信号を「入力情報」と呼ぶ。
【0011】
そうすると、画像形成の良否は「入力情報にどれほど忠実な画像を形成できるか」により定まる。形成された画像を「出力画像」と呼ぶことにする。
【0012】
入力信号と出力画像との間には、静電潜像を形成する工程、形成された静電潜像をトナー画像とする現像工程、トナー画像を記録シート上に転写・定着する転写・定着工程等があり、これらの工程は何れも最終的に得られる出力画像の良否に影響する。しかし、出力画像の良否に最も大きく影響するのは、静電潜像の良否とトナー画像の良否とである。
【0013】
従って、画像形成を良好に実現するには、電子写真プロセスにおいて「入力信号に応じて形成される静電潜像が入力信号に対してどれほど忠実であるか」、また「静電潜像に対し、これを可視化したトナー画像がどれほど忠実であるか」を評価することが好ましい。
【0014】
しかしながら、現状では「入力情報と出力画像(トナー画像)との比較」のみに留まっている。
【0015】
電子写真プロセスにおいて光導電性の感光体に形成される静電潜像は、その名のとおり潜像であって、肉眼で直接にこれを見ることはできず、トナー画像として可視化されたものが目視できる。
【0016】
静電潜像は上記の如く肉眼により直接に目視できるものではないが、出願人は先に、静電潜像をディスプレイ上に表示して目視できるようにするとともに、静電潜像における電位の分布等を測定できる技術を提案した(特許文献1)。
【0017】
また、記録シート上のトナー画像の反射特性や階調性についての評価は、特許文献2、3等により知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、入力情報に従って形成された静電潜像を、入力情報との関係で画像評価できる画像評価方法の実現、さらに、出力画像であるトナー画像を、静電潜像との関係で画像評価できる画像評価方法の実現、これらの方法を実施するための画像評価装置の実現、このようにして実現される画像評価を画像形成に生かすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1記載の画像評価方法は「帯電させた光導電性の感光体に対し、入力パターンの形状および面積の情報を少なくとも有する入力情報に基づき、光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成し、形成された対応静電潜像の面積を測定し、入力情報の面積と対応静電潜像の面積との面積差を測定する」ことを特徴とする。
【0020】
上記のように、入力情報は「入力パターンの形状および面積の情報」を少なくとも有する。
【0021】
光導電性の感光体は均一に帯電され、入力情報に基づき光画像書き込みにより「入力パターンの形状・面積」に対応する形状・面積を持つ「対応静電潜像」が形成される。
「光画像書き込み」としては、光走査による書き込みや、発光素子アレイを用いる画像書き込みを用いることができる。
【0022】
光画像書き込みのための「入力パターンを構成する情報」即ち「入力情報」は、例えばコンピュータ等で生成させることができる。あるいは、入力情報として面積・形状を設定された可視パターン画像をスキャナで読み取った画像信号もしくはこの画像信号を適宜に加工した信号を「入力情報」とすることもできる。
【0023】
請求項1記載の画像評価方法では、上記の如く、入力パターンに応じ手形成された対応静電潜像の面積が測定され、入力パターンの面積(入力情報の一部として与えられる。)との面積差が測定される。
【0024】
上記面積差が0に近いほど、対応静電潜像は入力パターンに忠実であると考えられる。
【0025】
入力パターンの面積は、入力情報をコンピュータ等で生成する場合であれば「生成データの1つ」として与えることができる。また、所定のパターンをスキャナで読み取って入力パターンの情報の一部とする場合には、スキャナ上において「パターンの像を構成している受光素子の数」をカウントするなどして面積を知ることができる。
【0026】
また入力パターンの形状は、光画像書き込みにおける「画素ごとの発光情報」として与えることができる。
【0027】
対応静電潜像の面積の測定に関しては、具体的な例に即して後述する。
【0028】
請求項1記載の画像評価方法は、入力パターンが均一の画像濃度のものである場合に実施できることは勿論であるが、入力パターンに階調性を持たせることもできる。
【0029】
即ち、請求項2記載のように「階調:Iの異なるN(≧2)個の入力パターンPIに対応するN個の対応静電潜像を形成し、入力パターンPIに対応する対応静電潜像MIの面積:SIと、入力パターンPIの面積:SPIとの面積差を、階調:Iごとに測定することができる。
【0030】
この請求項2記載の画像評価方法において、入力パターンPIの面積:SPIを、階調:Iに対して直線的に変化させ、対応静電潜像MIの面積:SIの「階調:Iに対する変化」の「面積:SPIの直線的変化に対する差」を測定することができる(請求項3)。
【0031】
請求項4記載の画像評価装置は上記請求項1〜3の任意の1に記載の画像評価方法を実施する装置であって、帯電手段と、入力情報生成手段と、対応静電潜像形成手段と、面積測定手段と、演算処理手段とを有する。
「帯電手段」は、光導電性の感光体を帯電させる手段である。帯電手段としては、従来から知られているコロナ放電器等の非接触型のものや、帯電ブラシ・帯電ローラ等の接触型のもの、さらには実施例において後述する「荷電粒子を走査する方式のもの」等を適宜用いることができる。
【0032】
「入力情報生成手段」は、感光体に作用させる入力パターンの入力情報を生成する手段であり、例えば、入力情報を直接に生成するコンピュータや、前述の画像をスキャナで読み取った読み取り信号に基づいて入力情報を生成する構成のものを適宜用いることができる。勿論、入力情報は少なくとも「入力パターンの形状・面積との情報」を含んで生成される。
【0033】
「対応静電潜像形成手段」は、均一に帯電された感光体に対して「入力情報に基づいて光画像書き込み」を行い、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成する手段であり、例えば、光走査装置等を用いることができる。
【0034】
「面積測定手段」は、対応静電潜像の面積を測定する手段である。面積測定手段については、実施例に即して詳述する。
【0035】
「演算処理手段」は、対応静電潜像の測定された面積を用い、少なくとも入力パターンの面積(入力情報として与えられている。)との差を含む演算処理を行なう。
演算処理手段が行なう演算処理には、面積差の演算(請求項2の場合における階調:Iごとの面積差も含む)のみならず、請求項3の場合における「対応静電潜像MIの面積:SIの階調:Iに対する変化の、面積:SPIの直線的変化に対する差」を求める演算を含めることができることは言うまでも無い。
【0036】
請求項5記載の画像評価方法は以下の如き方法である。
帯電させた光導電性の感光体に対し、入力パターンの形状および面積の情報を少なくとも有する入力情報に基づき、光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成し、この対応静電潜像の面積を測定する。
一方、上記入力情報と同一内容の入力情報により可視像用静電潜像を形成し、形成された可視像用静電潜像をトナーにより可視化してトナー画像とし、このトナー画像の面積を測定する。
【0037】
そして、対応静電潜像の面積と、トナー画像の面積の差を測定する。
【0038】
対応静電潜像と可視像用静電潜像とは、同一の感光体もしくは同一種の感光体に形成される。「同一種の感光体」は、同一の入力情報による光画像書き込みにより「少なくとも同じ面積の対応静電潜像」を形成される感光体であり、互いに異なる感光体である。この場合には、対応静電潜像を形成するときの入力情報と、可視像用静電潜像を形成するときの入力情報は「内容的には同一」であるが、光画像書き込みは「異なる感光体」に対してなされる。このとき、入力情報の内容が同一であるので、対応静電潜像と可視像用静電潜像とは、静電潜像の面積・形状は同一である。
【0039】
換言すれば、互いに異なる感光体に形成される対応静電潜像と可視像用静電潜像が同一になるような入力情報が「内容的に同一の入力情報」であり、対応静電潜像をトナー画像として可視化したものとすれば、この可視化されたトナー画像は可視像用静電潜像を可視化したトナー画像と同じものになる。
【0040】
「同一の感光体」の場合には、同一の感光体に対して対応静電潜像が形成され、この対応静電潜像が可視像用静電潜像でもありうる。勿論、対応静電潜像と可視像用静電潜像とは、同一の感光体に対して、同一内容の入力情報を別個に用いて、別個の静電潜像として形成することもできる。
【0041】
請求項5記載の画像評価方法はまた、階調:Iの異なるN(≧2)個の入力パターンに対応するN個の対応静電潜像を形成し、これらN個の対応静電潜像MIの面積:SIを測定し、上記N個の入力パターンと同一内容の入力情報により形成されたN個の可視像用静電潜像をトナーにより可視化してN個のトナー画像TIとし、このトナー画像TIの面積:STIを測定し、面積:SIとSTIとを、階調:Iごとに測定する構成とすることができる(請求項6)。
【0042】
請求項6記載の画像評価方法においては、入力パターンPIを階調:I(N≧I≧1)応じて変化させ、対応静電潜像MIの面積:SIを階調:Iに対して直線的に変化させ、同一内容の入力パターンにより形成されたN個の可視像用静電潜像をトナーにより可視化してN個のトナー画像TIとし、このトナー画像の面積:STIを測定し、面積:SIの階調:Iに対する変化の、面積STIの階調性:Iに対する変化に対する差を測定する構成とすることができる(請求項7)。
【0043】
請求項8記載の画像評価装置は、請求項5〜7の任意の1に記載の画像評価方法を実施する装置であって、帯電手段と、入力情報生成手段と、対応静電潜像形成手段と、面積測定手段と、可視像形成手段と、可視像面積測定手段と、演算処理手段とを有する。
【0044】
「帯電手段」は、光導電性の感光体を帯電させる手段である。
「入力情報生成手段」は、感光体に作用させる入力パターンの入力情報を生成する手段である。
【0045】
「対応静電潜像形成手段」は、感光体に上記入力情報に基づき光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成する手段である。
【0046】
「面積測定手段」は、対応静電潜像の面積を測定する手段である。
【0047】
「可視像形成手段」は、入力情報生成手段による対応静電潜像形成用の入力パターンと同一内容の入力情報を用いて可視像用静電潜像を形成し、この可視像用静電潜像をトナーによるトナー画像として可視化する手段である。
【0048】
「可視像面積測定手段」は、可視像形成手段により形成されたトナー画像のトナー画像面積を測定する手段である。
【0049】
「演算処理手段」は、面積測定手段により測定された対応静電潜像面積と、可視像面積測定手段により測定されたトナー画像面積を用い、少なくとも「対応静電潜像面積とトナー画像面積の差を含む演算処理」を行なう。
【0050】
この発明の画像形成装置は「電子写真プロセスを利用する画像形成装置」であって、上記請求項1、2、3、5、6、7の何れかに記載の画像評価方法、もしくは請求項4または8に記載の画像評価装置により得られた入力情報と対応静電潜像との面積差情報、対応静電潜像面積とトナー画像面積との面積差情報の少なくとも一方に応じて、画像形成条件を調整制御する制御手段を有することを特徴とする(請求項9)。
【発明の効果】
【0051】
以上に説明したように、この発明によれば、新規な画像評価方法および装置・画像形成装置を実現できる。
この発明の画像評価方法・装置によれば、電子写真プロセスを用いる画像形成おいて、入力情報とこれに対応する対応静電潜像の面積の差を測定することにより、入力パターンとの関係で静電潜像の画像評価が可能になる。あるいは、対応静電潜像の面積と「対応静電潜像を形成する入力情報と同一内容の入力情報をもつ入力パターンにより形成される可視像用静電潜像を可視化したトナー画像の面積」の差を測定することにより、入力パターンに応じた対応静電潜像との関係でトナー画像の画像評価が可になる。
【0052】
そして、このような画像評価を利用して画像形成の質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】画像評価装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図2】光導電性の感光体の構成の1例を説明するための図である。
【図3】光画像書き込み手段の1例としての光走査装置を説明するための図である。
【図4】入力情報と対応静電潜像を説明するための図である。
【図5】対応静電潜像の面積測定を説明するための図である。
【図6】対応静電潜像を形成するための光画像書き込みを説明するための図である。
【図7】入力パターンの1例を説明する図である。
【図8】階調の異なる入力情報と対応静電潜像の関係を説明する図である。
【図9】入力パターンの1例を示す図である。
【図10】互いに等価な入力情報を示す図である。
【図11】階調と面積との関係を説明するための図である。
【図12】トナー画像の面積測定を説明するための図である。
【図13】階調再現性における「明度の再現性」の好ましい例を示す図である。
【図14】対応静電潜像とトナー画像の対応を説明する図である。
【図15】静電潜像面積とトナー画像面積との関係を示す図である。
【図16】入力情報に対する対応静電潜像とトナー画像との画像評価を行なう装置の1例のシステム図を示す。
【図17】画像評価の結果を制御因子にフィードバックし、最適・好適値を探すプロセス示すダイヤグラムである。
【図18】図13に示された「階調に対する明度:L*」を、明度L*を「その最大値で規格化」したグラフである。
【図19】入力情報に対応する階調に対し、この入力情報により形成された対応静電潜像の面積を「その最大値で規格化」したグラフを示す図である。
【図20】ドット面積率を説明する図である。
【図21】画像形成装置の1例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1に、画像評価装置の実施の1形態を示す。
符号151は「帯電手段と、対応静電潜像形成手段と、面積測定手段の一部とを収納したケーシング」を示している。
【0055】
ケーシング151内には、電子銃152、コンデンサレンズ153、走査レンズ154、対物レンズ155、光照射光学系156、試料ステージ164、電子検出器163が収納されている。また、符号157は「光導電性の感光体」を試料としたものである。
【0056】
符号159は真空ポンプ、符号158はインタフェース、符号160は制御手段を示している。真空ポンプ159はケーシング151の内空間を「真空に近い低圧状態(以下「実質的な真空状態」もしくは単に「真空状態」という。)」に減圧する。
【0057】
制御手段160は、コンピュータとディスプレイにより構成されており、コンピュータは、インタフェース158を介して装置全体を制御するとともに、画像評価に関わる演算処理を行い、演算結果をディスプレイに表示する。図1において符号161は、ディスプレイに表示された「対応静電潜像の様子」を模式的に示している。
【0058】
光導電性の感光体である試料157は、図1においては平板状に形成され、試料ステージ164上に平面的に定置され、試料ステージ164により、独立した3方向(図の上下方向、図面に直交する平面内の直交2方向)へ変位されるようになっており、ケーシング151内で3次元的に位置調整できるようになっている。
【0059】
試料157を構成する光導電性の感光体は、種々の形態のものが可能であるが、一般的な構成としては、導電性基体の上に光導電層を形成した構成である。光導電層は、単一層構造のものであることもできるし、電荷発生層と電荷輸送層(あるいはさらに保護層)を積層した所謂「機能分離型」のものであることもできる。また、電荷発生物質と電荷輸送物質とを混合させた材料を用いた単層感光体であることもできる。
【0060】
試料としての光導電性の感光体の形態は、図1に示す平板状のものに限らず、ドラム状のものやベルト状のものであることができる。即ち「実際に画像形成装置において使用するドラム状のものやベルト状のもの」も、試料として適宜用いることができる。
【0061】
試料としての光導電性の感光体の1例として、上記機能分離型のものを、図2(12)を参照して簡単に説明する。
近来、光導電性の感光体は、低コスト性、加工容易性の観点から「有機光導電性感光体(以下「OPC」と言う。)」の使用が主流となっている。
図2に示すOPCは、導電性基体121上に、図示されない中間層(電荷リークの防止等のために設けられる。)が設けられ、その上に、電荷発生層122と電荷輸送層123がこの順序に積層された構成となっている。
この構成では、感光体表面は負極性に帯電されるが、電荷発生層と電荷輸送層の積層順序を逆にする構成も可能であり、その場合には感光体表面は正極性に帯電される。
【0062】
電荷輸送層123の表面を「負に均一帯電」させ、光124を照射すると、電荷輸送層123を透過した光124が電荷発生層122に入射して、電荷発生層122内で電子126と正孔(ホール)127を発生させる。
【0063】
発生した電子126は、電荷輸送層122の表面を帯電させている負電荷に反発されて導電性基体121に吸収される。またこのとき、導電性基体121の「電荷発生層122との境界面部分」には、電荷輸送層123表面を帯電させている負電荷にバランスする正電荷が誘起しており、電子126を吸引する。
【0064】
ホール127は、電荷輸送層122の表面を帯電させている負電荷に引かれて電荷輸送層123中を矢印125の向きに移動し、電荷輸送層123表面の負の帯電電荷と相殺する。光124の照射を2次元的に行なって光画像書き込みを行なうことにより、感光体表面に2次元的な静電潜像が形成される。
【0065】
電荷発生層122の厚さは一般に「サブμm」程度、電荷輸送層123の厚さは一般に「数十μm」である。形成される静電潜像のパターンは文字・画像であるが「最小単位はドット」である。
【0066】
図1に戻ると、「帯電手段」は、電子銃152、コンデンサレンズ153、走査レンズ154、対物レンズ155を有する。
【0067】
帯電手段を構成する電子銃152や上記各種レンズとしては、例えば、走査電子顕微に用いられるものを利用することができる。電子銃としては熱フィラメント型のものやフィールドエミッション等、適宜のものを用いることができる。
【0068】
試料ステージ164上にセットされた試料157の表面を帯電するに当たっては、真空ポンプ159によりケーシング151内部を吸気し、ケーシング内部を真空状態に減圧する。
なお、真空ポンプ159は、実際には、達成させる真空度に応じ、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、イオンスパッタポンプ等複数を併用することができる。
【0069】
コンデンサレンズ153、走査レンズ154、対物レンズ155はいずれも「磁界レンズ」或いは「静電レンズ」である。
電子銃152から放射される電子ビームを、コンデンサレンズ153、走査レンズ154、対物レンズ155により試料157表面に収束させつつ、走査レンズ154により電子ビームを試料上157で2次元的に走査し、試料157の表面を均一帯電させる。
【0070】
なお、電子銃152に代えて、イオン銃を用い「イオン粒子ビーム」を生成して帯電に供することができる。例えば、イオン流をなすイオン粒子としてGa+を発生するイオン銃を用いれば、試料表面を正帯電させることができ、帯電特性が正極性である光導電性の感光体の帯電を行なうことができる。
【0071】
電子銃152を用いて試料157の表面を帯電させる場合、試料表面の帯電電位は主として「電子の加速電圧と照射時間」に依存し、電子の加速電圧が高いほど試料表面の帯電電位は高くなる。
【0072】
静電潜像を画像評価するためには、試料表面に形成される静電潜像が、実際の「電子写真プロセスを利用する画像形成」において形成される静電潜像と同等のものである必要がある。
【0073】
このような「画像形成において実際に形成される静電潜像」と同等な静電潜像を試料157に形成するために、帯電条件として「加速電圧を1.0〜数kV程度」、「照射時間を数十秒から数十分程度」の範囲で調整する。このようにして帯電される試料の帯電電位は「汎用の表面電位計」を用いて測定した値で「−600〜−1000V程度(複写装置等の実際の画像形成装置での帯電電位と同等)」にする。
【0074】
即ち、予め、帯電条件を変化させ、上記の帯電電位を実現できるような帯電条件を求め、この条件での帯電を行なう。
【0075】
帯電条件の調整は、インタフェース158を介して前述のコンピュータが行なう。
【0076】
なお、加速電圧を変える代りに、あるいは加速電圧の調整とともに「試料にバイアス電圧」を印加してバイアス電圧を調整するなどして帯電電位を調整することもできる。
【0077】
このように均一帯電された試料157に対して、光照射光学系176により「光画像書き込み」を行なって、静電潜像を形成する。
【0078】
光照射光学系176は「対応静電潜像形成手段」を構成する。
光照射光学系176としては、周知の光走査装置や「発光素子アレイを用いる光画像書き込み装置」を適宜に用いることができる。
光照射光学系176の1例として、従来からよく知られている光走査装置の場合を、図3(11)を参照して説明する。
以下、このような光照射光学系を「光画像書き込み手段」とも言う。
【0079】
図3に示すように、光走査装置は、光源111から放射されるレーザ光束を、図示されないアパーチャを介してコリメートレンズ112に入射させて平行光束化し、シリンドカルレンズ113により副走査方向に集光させ、第一ミラー114を介してポリゴンミラー115の偏向反射面に入射させ、偏向反射面近傍に主走査方向に長い線像に結像させる。
【0080】
ポリゴンミラー115を等速回転させて得られる偏向光束を、走査結像レンズ(所謂fθレンズ)と折り曲げミラー118とを介して、ドラム状の感光体119に集光させて光スポットを形成し、この光スポットを感光体の母線方向を主走査方向として走査して「主走査」を行なう。また感光体119を回転軸1191の周りに等速回転させることにより副走査を行なう。
【0081】
感光体119の表面は図示されない適宜の帯電手段により均一帯電されており、上記光走査により2次元的な静電潜像が形成される。
図3には、光走査により画像書き込みされた3種の「ドットパターン(ワンドットを誇張して大きく描いてある。)による静電潜像」を符号1192により示している。
【0082】
光源111としては、レーザダイオード(LD)を用いることができるほか、また発光ダイオード(LED)、垂直面発光レーザ(VCSEL)を用いることもできる。
【0083】
VCSELを用いて「走査線間隔の微小なマルチビーム走査」を行なうことができ、高解像度の静電潜像を短時間で形成できる。
【0084】
なお、図1においては、光導電性の感光体である試料157は、図3に示すドラム状の感光体119とは異なり「平板状」であるから、副走査を行なうに際しては、試料ステージ164により試料157を、試料の面に平行で、光走査の主走査方向と直交する方向へ等速で移動させて2次元的な走査を実現する。
【0085】
前述のように「試料としての光導電性の感光体」の形態は、図1に示す平板状のものに限らず、ドラム状のものやベルト状のものであることができるのであり、図1の構成において、試料ステージ164と試料157とに代えて、図3に示すドラム状の感光体119とこれを回転させる回転駆動手段をケーシング151内に組み込むようにしても良い。
【0086】
このようなドラム状の試料を用いる場合、前述の汎用の表面電位計をケーシング151内に組み込み、試料を回転させつつ「帯電手段で帯電された試料表面」の電位測定を行なうようにすることができる。
【0087】
光走査の条件は、光源として、例えば波長:650nmのLDを用い、露光エネルギ密度として「1ドットあたり1mJ/cm2以下」が好ましく、このような条件で光走査を行なうことにより、1ドットあたりの面積:5000μm2程度の光画像書き込みを実施できる。
【0088】
なお、図1においては光照射手段156がケーシング151内に設けられているが、この部分をケーシング151の外部に儲け、ケーシング151に開口を形成し、この開口を透過率の高いガラスなどで密封し、このガラスを介して外部からの光で光走査を行なうようにしてもよい。
【0089】
次に、静電潜像の測定について説明する。静電潜像の測定には、上述の帯電手段と、電子検出器163が用いられる。
【0090】
電子銃152からの電流値を「帯電時(数nA)に比して1/1000程度の数pA」に小さくし、このような「弱い電子ビーム」により試料157の表面を2次元走査する。
【0091】
このように電子ビームの電流値を小さくするのは、電流値の電子ビームの電流値が大きいと「静電潜像の消失が速い」のでこれを防ぐためである。
【0092】
電子検出器163は「2次電子検出器」である。静電潜像測定用の弱い電子ビームで試料157を2次元走査すると、試料157から2次電子が放出されるが、2次電子の放出量は「静電潜像が形成されている部分」で少なく、「静電潜像が形成されていない部分」で多い。
【0093】
従って、弱い電子ビームで2次元しつつ、発生する2次電子を電子検出器163で検出(電子検出器163内に吸引した2次電子を蛍光体に当てて蛍光を発生させ、この蛍光の強弱を電子増倍する)ことにより、静電潜像に対応する信号を得る。なお、この測定は、特許文献1により公知である。
【0094】
このように電子検出器163による検出信号を、インタフェース158を介して制御手段160のコンピュータに取り込み、データ処理して、静電潜像のパターンをディスプレイ上に表示する。図1は、試料157に形成された3種の静電潜像161をディスプレイに表示した状態を示している。
【0095】
図1に示す如き画像評価装置で、請求項1の画像評価方法を実施する場合について説明すると、試料157を試料ステージ164上にセットしたのち、制御手段160のコンピュータにより装置各部を制御し、まず真空ポンプ159によりケーシング151内を真空状態とし、上述の如くして試料157の表面を均一に負帯電させ、光照射光学系156による光走査(光画像書き込み)で静電潜像の形成を行なう。
【0096】
その際、制御手段160のコンピュータにおいて「入力パターンの形状と面積」を有する入力情報を生成し、この入力情報を「光画像書き込み情報」として光照射光学系156による光画像書き込みを行なう。この光画像書き込みにより入力情報に対応する「対応静電潜像」が形成される。
【0097】
入力情報と対応静電潜像の1例を図4(1)に示す。
図4(a)は「入力情報を持つ入力パターン」であり「一辺の長さ:aの正方形」が16個、4×4(4行4列)に配列され、そのうち4つの正方形が黒い。
入力パターンの全面積:16a2に対し、黒い部分の全面積は4a2であり「全面積:16a2に対する黒い部分の占める面積率」は25%である。
全面積:16a2が白い場合を「階調:零」、全面積が黒い場合を階調:15とすると全部で16階調を表現でき、図4(a)に示す場合の階調は「4」である。
このように「入力情報には少なくとも入力パターンの形状(黒い部分と白い部分との配列パターン)と面積」が含まれる。
【0098】
正方形の一辺の長さ:aは任意であるが、これは「電子写真プロセスを利用する画像形成で実現させたい所望の解像度」により決定される。
【0099】
例えば、所望の解像度として600dpiを考えると、入力パターンにおける正方形1個の1辺の長さ:a=42.3μm、解像度:1200dpiならa=21.17μm、2400dpiの解像度ならa=10.58μmとなる。
【0100】
表現しようとする階調を256階調とすると、少なくとも16×16(=256)の正方形の配列が必要となる。階調をより滑らかに表現しようとすると、さらに多数の正方形の配列が必要となる。
【0101】
図4(a)に示す入力パターンの入力情報により、上記のようにして試料157上に形成される静電潜像が入力パターンに対応する「対応静電潜像」であるが、この対応静電潜像は例えば図4(b)に示す如きものとなる。
この例では、入力パターンの「1個の黒い正方形に対応する静電潜像部分」は「楕円形状」であるが、実際には、円形となる場合もあるし、矩形に近い形状やあるいは「さらに複雑な形状」になることも有る。
【0102】
上記静電潜像部分(対応静電潜像において、入力パターンにおける1個の黒い正方形に対応する線像部分)の大きさも、図4(c)に示すように、1辺:aの正方形の大きさをはみ出す場合や、図4(d)に示すように上「正方形内に収まる場合」もある。
静電潜像部分の面積:Sdは、図4(c)の場合:Sd>a2であり、(d)の場合:Sd<a2である。
【0103】
静電潜像部分の面積:Sd≠a2であるため、対応静電潜像の階調は、所望値:4からずれる。
【0104】
このように「対応静電潜像の階調が、入力パターンにおける階調と異なる」と、対応静電潜像をトナー画像として可視化した場合における「可視像の階調再現性」を損なう1因となる。
【0105】
対応静電潜像において、入力パターンの「1個の黒い正方形部分」に対応する静電潜像部分の大きさは、光画像書き込みにおける照射光強度、照射時間、感光体の特性、帯電電位等の制御因子よっても変るものであるから、これら制御因子の値を変えることにより、ドット(1個の黒い正方形部分に対応する静電潜像部分)の大きさを変えることが可能である。
【0106】
従って、画像評価により対応静電潜像の面積と入力パターンの面積との「面積差」を、画像形成の電子写真プロセスにフィードバックすることにより階調性再現を向上させることが可能となる。
【0107】
入力パターンの面積情報は、例えば、図4(a)に示す場合であれば、入力パターンの1個の「黒い正方形」の大きさ:a2として与えられるので、上記面積差を得るには、対応静電潜像の面積(上記1ドットに対応する「静電潜像部分」の面積)を測定する必要がある。
【0108】
この面積測定を、図5(2)に即して説明する。
図5(a)において、符号20は、図4(a)に示した入力パターンにおける「1辺の長さ:aの正方形」に相当し、符号21は、対応静電潜像における1ドットの静電潜像部分(上記1個の正方形に対応する静電潜像)の輪郭を示している。
図5(a)における符号22は「測定解像度の最小単位」を表す1ピクセルである。
1ピクセルは一辺の長さ:pの正方形であり、「p<a」である。
図5(a)では「a=12p」としているが、これに限らず、対応静電潜像の形状(説明中の例で1ドットの静電潜像部分の形状)を表現するのに適当な数であれば良い。
図5においてはピクセル全体が「16×16」のピクセル配列となっているが、この図は「対応静電潜像の一部」を切り出したものであり、全体は例えば720×480ピクセル程度である。
測定装置の解像度は、走査型の電子検出器を用いて「NTSC(National Television Standards Committee)の規格であればこの程度の解像度となる。
図5は「1ドットのみの静電潜像部分」を示しているが、図4(a)、(b)で示したように「周囲にあるドットも同時に測定」する場合、最低で48×48ピクセル必要である。
【0109】
測定装置の検出手段(電子検出器)は、得られる物理量の強度を階調に変換して画像を出力するものである(例えば256階調)。
【0110】
上記のように、対応静電潜像は階調を有し、例えば、図5(a)の静電潜像部分の中心と周囲とでは階調数が異なる。そこで、階調に閾値を設け、静電潜像部分を零、バックグランド部分を1として「2値化」する。この2値化により、対応静電潜像(部分)の輪郭も明確に決定できる。
【0111】
対応静電潜像の面積は、このように2値化した対応静電潜像における「階調:0」のピクセル数をカウントすればよい。図5(b)に示す静電潜像部分の例では、その面積はピクセル数にして120ピクセルである。
【0112】
一方、入力パターンにおける1辺:aの正方形は144ピクセルで構成されているので、この正方形に対応する対応静電潜像の面積を表すピクセル数:120とのピクセル数の差は24ピクセルである。
【0113】
即ち、対応静電潜像の面積は、入力パターンの面積に対して面積率:83.3%であることになる。また1ドットの対応静電潜像部分の面積に当たる120ピクセルは、これを正方形形状に換算した場合、換算正方形の1辺が「0.91a2」となる。
【0114】
対応静電潜像の面積率:100%を理想値とすると、実際の対応静電潜像は16.7%小さい値である。このように、入力パターンに対応する対応静電潜像の面積を測定することにより、入力情報と対応静電潜像の差を把握できる。
【0115】
また、上記の場合において、対応静電潜像の階調は、入力パターンの階調:4に対して略3.3であり、入力パターンに対する対応静電潜像の「階調のずれ」を見積ることができる。
図5(b)は「1ドットの静電潜像部分」であるが、図4(b)のように対応静電潜像が4ドットを有する場合も同様にして「上記の差」を求める。
【0116】
4ドットを有する場合について、入力情報と対応静電潜像の差は「誤差の範囲で同じ」場合もあるが、誤差以上に異なる場合も有りうる。
【0117】
4ドット全体での評価は、4つのドットの総和を取ったり「平均値を取る」などして差を求めることができる。ドット数が増えた場合も同様である。
【0118】
図6(3)(a)に示すように、4×4の正方形で構成される入力パターンにおいて、16個の正方形の配列を、図の如く番号1〜16のようにナンバリングする。
【0119】
光画像書き込みを「正方形1〜16の順に光走査」して行なうものとし、光照射する場合を「1(オン)」、光照射しない場合を「0(オフ)」とする。
そうすると、図6(b)に示す入力パターンの光画像書き込みの際の光照射のオン・オフは「1,0,1,0,0,0,0,0,1,0,1,0,0,0,0,0」となる。
【0120】
これは、入力パターンの形状を与える情報である。勿論、実際の配列総数は16よりもはるかに多い。
【0121】
上の説明では、光画像書き込み手段として説明した光走査装置は、単一の光源を有し、光走査は所謂「シングルビーム走査」で行なわれるが、複数の光源を用いるマルチビーム走査により、入力パターンの対応静電潜像を形成するようにしても良いことは言うまでもない。
【0122】
例えば、光源を2個用い、上記4×4個の入力パターンを、奇数行と偶数行に分け、一方の光源のオン・オフ信号を「1,0,1,0,1,0,1,0」として奇数行の光走査を行い、他方の光源のオン・オフ信号を「0,0,0,0,0,0,0,0」として、図6(b)の入力パターンを光画像書き込みできる。光源を4個用いるマルチビーム走査により4行の光走査を1度に行なうこともできる。
【0123】
上の例では、隣接ドット間の光走査に要する時間は一定である。光源にレーザダイオード(LD)を用い、ポリゴンミラーを用いて光画像書き込みを行なう場合、LDの発光時間及びポリゴンミラーの回転数により上記時間が決定され、電子写真プロセスの制御因子の一つとなる。
【0124】
特許文献1に記載された静電潜像測定方法では評価されるのは「ドットの評価」のみであるが、この発明では、上記実施の形態のように、入力パターンを構成する網点の入力値と静電潜像部分の面積の差を測定することが可能となる。
【0125】
図1の装置で上記の評価を行なうに際して、各手段の制御は、インタフェース158を介してコンピュータ160で行なう。各手段の詳細な制御はコンピュータ内のソフトウェアで行う。
【0126】
図5に即して説明したデータ・画像処理をコンピュータにより行い、対応静電潜像の面積・面積率・入力パターンとの差を求める。
このデータ処理・画像処理や「面積差の算出」等の演算は特別なものでなく、汎用のデータ・画像処理ソフト等を用いても行うことが可能である。
【0127】
画像評価装置に関して「装置の制約」がある場合もある。
例えば「電子ビームを走査する範囲を広くできない」とか「試料(光導電性の感光体)のサイズに制約がある」などの制約である。
電子ビームの走査範囲に関しては、汎用SEMと比較して「数nmという分解能」を犠牲にすれば、ある程度(数mm×数mm)の範囲を走査することは可能であるが、実際に使用される感光体は「直径:数cm、長手方向:数十cmの大きさのドラム状」のものが多い。
このような感光体の全面を一度に走査することは難しく、感光体を動かして部分的な走査を繰り返すことになる。また、この程度の大きさの感光体を試料とすると「試料をセットする部分」が大型になり、真空槽も大容量にする必要がある。従って、実際の感光体の一部を切り出して試料としたものについて測定するなどの工夫が必要になる。この場合、電子ビームの走査はごく狭い範囲で構わなくなる。
【0128】
「具体例」
市販の電子複写装置やレーザプリンタに用いられる機能分離型の「光導電性の感光体」を「2cm×2cm程度」に切り出して試料とした。
CTLの厚みは約30μmである。
【0129】
電子ビームの加速電圧を1.8kVとして試料表面を均一帯電させた。
【0130】
「入力パターン」として、図7に示す「1辺:aの正方形の2×2配列」を採用し、図3に示すタイプの光走査装置により光画像書き込みを行なった。光源として発光波長:λ=650nmのLDを2個用い、2ラインを同時走査するマルチビーム走査により光画像書き込みを行なった。
【0131】
2個のLDの一方からのレーザ光束で1行目を書き込み、他方からのレーザ光束で2行目を書き込む。従って、1行目を書き込むための光源オン・オフ信号は「1,0」、2行目を書き込むための光源オン・オフ信号は「0,0」である。
露光エネルギ密度は1mJ/cm2以下とした。
【0132】
ポリゴンミラーによる偏向で1ドットを書き込むのに要する時間:Tに対し、LDが発光している時間をT/2(デューティ比:50%)とした。
【0133】
上記の如き面積測定を30回程度行い、対応静電潜像の面積(黒部分の1ドット)を求めたところ「5600±100μm2」であった。
解像度:600dpiを目標値として、入力パターンの面積:1792μm2であり、対応静電潜像との面積差は3808μm2となった。
【0134】
上記の如く、ある1つの階調について「入力パターンと対応静電潜像の面積差」の測定は、階調再現性を向上させる上で重要であるが「階調再現性」は、複数の「異なる階調」間で成り立つものであるから、異なる階調のそれぞれでの差を把握する必要がある。
【0135】
図8(5)を参照して説明すると、図8上図は「階調が異なる3つ入力パターン」の入力情報であり、これをもとに対応静電潜像を形成する。形成の順序は矢印の如く、階調:4(図8上左図)、8(同中図)、12(同右図)の順でも良いし、これと逆でも良い。
【0136】
対応静電潜像の形成位置は、試料である光導電性の感光体上の同じ位置でも、異なる位置でも良い。同じ位置に形成する場合は、先に形成された対応静電潜像を消去するための除電手段が必要となる。
【0137】
除電は、例えば「光画像書き込みに用いられるのと同じ波長の光」を、試料全面に照射することにより実施でき、例えば、発光素子(LED)を試料設置位置に近接させて配置して試料全面を光照射するようにすればよい。LEDの発光波長は、試料の光感度特性も考慮して、例えばλ=650nmとすればよい。除電後、試料を再度帯電させ、光画像書き込みにより対応静電潜像を形成する。
【0138】
図8下図は、同上図に示す3種類の入力パターンにそれぞれ対応する対応静電潜像を示している。このように形成された3種の対応静電潜像の面積を上述の例と同様にして測定し、各入力パターンの面積(入力情報として入力パターンごとに定まっている。)との差を求める。
【0139】
このようにして、図8では3階調(図8上図の左図・中図・右図)の入力パターンに対して面積差が求まる。図8の例では、説明の簡単のために階調数を「3」としているが、実際の場合として、必要な階調数が例えば256(16×16)であれば、入力パターンとその入力情報は256種あり、対応静電潜像の形成・面積測定も256回行う。
【0140】
入力パターンは、図9に示すような大きな配列にあるものを用いる。ただし、必要とする階調数は間引いても128、64、32、16などであっても良い。
【0141】
図8の入力パターンの個々は4×4の配列であるが、図10の右側に示す「8×2」の配列も、同図左側の「4×4の配列」に等価である。
図10右側に示す「8×2」の入力パターンであれば、2つのLDを光源とする2ライン同時走査のマルチビーム走査方式の1光走査で各対応静電潜像を形成できる。
【0142】
このようにして、対応静電潜像のレベルにおいて「階調再現性の評価」が可能となる。
【0143】
入力パターンの入力情報に「必要とする階調数」に対し、入力パターン(上の例で言えば「黒い正方形部分の集合」)の面積は直線的に増加もしくは減少する。
階調を横軸にとり、入力パターンの面積を縦軸にとってグラフを作成すると、図11に示すようになる。
図11において「入力情報」とあるのは入力パターンに関するものである。
【0144】
この入力情報は、解像度:600dpiとして「面積(縦軸)」を算出している。入力情報を表す直線の傾き:1792.1は、入力パターンの面積/階調で表され、切片は零で原点を通る。
理想的な対応静電潜像が形成できれば、階調に対する対応静電潜像の面積変化は、この「入力情報の直線」と一致する。
しかし実際には、上述のように、対応静電潜像のドット(静電潜像部分)面積は、入力情報の面積値からずれる。例えば、図4(d)に示す場合のように、対応静電潜像の1ドットが一辺:aの正方形内に収まり、その面積が「a2よりも小さい」場合には、階調に対する面積変化は、図11の「静電潜像1」で示すようになる。
【0145】
この場合の「対応静電潜像の1ドットの面積」は0.833a2としている。この直線の傾きは1243.5となり、入力情報を表す直線の傾きと異なる。従って、これを「入力情報の直線からのずれ」として測定可能である。
図11における静電潜像1の直線は、原点を通る。
【0146】
次に、図8に示す階調数:12の対応静電潜像(図8下右図)の場合を考えると、この対応静電潜像における1ドットの面積は「a2よりも小さい」が、上下に隣接するドットが互いに重なっている。対応静電潜像を構成するドットは全部で12ドットある。
1ドットの面積を「Sd」とすれば、全面積:12Sdが理想であるが、ドット相互に重なりが生じているため全面積は「12Sdよりも小さく」なる。
対応静電潜像を構成するドットの数が増えて「重なるドットが多くなる」ほど、対応静電潜像を構成する全ドットの面積は小さくなる。従って、この場合の、階調・面積の関係は、図11の「静電潜像2」のようなグラフ線(破線)となる。
このグラフ線「静電潜像2」は、厳密には直線ではなく「近似直線」である。
【0147】
「静電潜像2」を表す直線は、傾き:1173.8であって「入力情報を表す直線の傾き(1792.1)」と異なり、また切片:1577.1μm2となる。従って「入力情報とのずれ」として、「傾き」のほかに「切片」の測定が可能となる。
【0148】
図11において「入力情報」のグラフ線の相関係数は1で「直線」である(これを「理想直線」と呼ぶ。)
次に、「静電潜像1」のグラフ線の相関係数を求めると1となりこれも直線であるが、理想直線とは「傾きのずれ」がある。「静電潜像2」のグラフ線の相関係数は0.9956と成り、僅かに直線からずれることが分る。これも「入力情報と対応静電潜像の面積とのずれ」の1つの形態であり測定できる。
【0149】
即ち、請求項3において、入力パターンPIの面積:SPIを、階調:Iに対して直線的に変化させたとき、対応静電潜像MIの面積:SIの「階調:Iに対する変化の、面積SPIの直線的変化に対する差」は、この場合、近似直線(静電潜像1、静電潜像2)の傾き・切片・相関係数の3つである。
【0150】
画像を印刷物として紙に印刷した場合、印刷画像の階調再現性評価には「明度:L*」を用いる場合が多い。人が知覚し得る「隣り合う階調間の明度差」は、明度によらず一定値を取ることが知られており、従って「階調に対する明度の変化は直線的である」ことが好ましい。静電潜像の面積についても同じことが言え、階調に対して静電潜像の面積が直線的に変化することが好ましい。
【0151】
図4(a)の入力パターンに基づいて対応静電潜像(図4(b))を形成し、この対応静電潜像を現像してトナー画像とし「最終的に記録シート上に出力画像として出力」した場合における「出力画像」を構成するトナー粒子の大きさを「極端に誇張」して描くと、図12(a)の如くになる。
勿論、トナーの粒径は10μm以下であるから目視でトナー粒子の個々は見えないし、図のように「トナー粒子間に大きな隙間が多数空いている」訳ではない。
【0152】
図12(a)に示すような「ドット状のトナー画像」は、光学顕微鏡やレーザ顕微鏡などを用いて詳細を観察でき、顕微鏡にデジタルカメラ等の撮像機器を装着し、観察画像を電子データにすれば、その後のデータ・画像処理を行うことが容易になる。
汎用の画像処理ソフトを用いれば「トナー画像の面積」を容易に求めることができる。
【0153】
例えば、入力パターンから対応静電潜像を経て、図12(b)のように取得した「出力画像」であるトナー画像の輪郭を抽出して面積を求めることができる。この面積の求め方は「図5に即して説明」したのと同様である。
このように求められる「トナー画像の面積」と、前述の如くして求めた対応静電潜像との面積の差:Δsを求めることができる(図12(c))。
【0154】
入力パターンに対する対応静電潜像の形成とトナー画像の形成とは「同時に行う」ことが好ましい。
対応静電潜像の形成とトナー画像の形成は別々の手段で行ってもよい。
例えば、適宜のデジタル複写装置あるいはプリンタで、記録シート上にトナー画像を出力画像として形成する一方、対応静電潜像は上述した図1の装置を用いて、上記複写装置またはプリンタでの静電潜像形成と同じ条件(帯電電位等の帯電条件・走査光学系による光画像書き込み等)で形成できる。
【0155】
勿論、対応静電潜像形成に用いる光導電性の感光体と、現像によりトナー画像を形成する感光体とは、同一の物性(同一条件での静電潜像形成で、同一の静電潜像が形成される感光体としての特性)を持つものを用いる。勿論、同一の感光体に対し、対応静電潜像の形成と現像とを行なうようにすることができる。
【0156】
同一の感光体を用いる場合を簡単に説明すると、上に説明した試料としての感光体として「実際にデジタル複写装置等で用いられるドラム状の感光体」を用い、これを図1の装置に試料としてセットし、帯電条件・光画像書き込みの条件を設定して、上と同様にして入録パターンに対応する対応静電潜像の形成と形成された対応静電潜像の測定(面積・階調等)を行なう。
【0157】
その後「同じ感光体」をデジタル複写装置にセットし、上記帯電条件・光画像書き込み条件により上記入力パターンと同一の入力情報で静電潜像形成を行なって「可視像用静電潜像」を形成し、形成された可視像用静電潜像に対し現像・転写を行い、入力情報に応じたトナー画像を得る。そして、このトナー画像に対し、上記の如く面積測定等を行なう。
【0158】
このようにすることにより、入力パターンの入力情報と対応静電潜像との関係に加え、対応静電潜像とこれを可視化したトナー画像との関係を知ることが可能になる。
【0159】
ここで、トナー画像を形成するトナーと、トナー画像を転写・定着する記録媒体について説明する。
【0160】
静電潜像を現像する方式としては、乾式現像方式・湿式現像方式があるが、現在では高速性に優れた「乾式現像方式」が主流となっている。しかし、この発明の実施については乾式現像方式に限らず、湿式現像方式を利用することも勿論可能である。
【0161】
乾式現像方式に用いられる粉黛の現像剤には「1成分現像剤と2成分現像剤」が知られ、1成分現像剤を構成するトナーには「非磁性トナー」と「磁性トナー」がある。また、2成分現像剤は「トナー粒子とキャリア粒子」とからなり、この場合も、トナーには非磁性トナー、磁性トナーがある。
トナー粒子はポリマーを主成分とし着色剤等が含まれ、粒径は数μmから十数μmである。キャリア粒子は鉄粉などの金属系材料で粒径は数十μmから数百μmである。
【0162】
トナー画像を最終的に担持することになる記録シートは、転写紙であることが一般的であるが、それ以外に厚紙や、OHPシート(オーバヘッドプロジェクタ用のプラスチックシート)等であることもできる。
【0163】
従来、紙等の記録シート上のトナー画像の階調再現性は巨視的に「反射率、濃度、明度など」を測定して行われている。
【0164】
特に、階調再現性における「明度の再現性」は、図13に示すように、横軸の階調の変化とともに、直線的に変化することが好ましい。
図14を参照して対応静電潜像(可視像用静電潜像)とトナー画像の対応を説明する。
図14の上図には、階調の異なる3種の対応静電潜像が示されている。この対応静電潜像は、図8下図に示したのと同じものであり、図8上図に示す3種の入力情報により「可視像用静電潜像」として形成されたものである。
【0165】
図14下図は、同上図の静電潜像に対応するトナー画像(図中は「トナー像」)である。
【0166】
上記の如くして、静電潜像の面積とトナー画像の面積を階調ごとに求め、「静電潜像面積とトナー画像面積」の差を求める。
【0167】
図14では、説明の簡単のために、階調数を3としているが、これに限らず、256階調等であっても良いことは言うまでもない。
【0168】
例えば、256階調の入力情報について測定を行なう場合であれば、例えば、図9に示す如き「16×16の配列」の入力情報を用いれば良く、この例では、黒い正方形部分の全面積は48a2であり、全面積:256a2に対する面積率:18.8%、階調:48である。
【0169】
上述の如く、対応静電潜像の面積が「入力情報の面積」からずれる。従って、対応静電潜像を用いて形成されるナー画像の面積は、入力情報の面積から「さらにずれる」のが一般的である。
入力情報でなく「対応静電潜像を基準」として、トナーが「静電潜像に理想的に付着」する場合を考えれば、トナー画像の面積は対応静電潜像と同面積になる。この場合を、図15に「A」で表すグラフ線であらわす。
【0170】
図15の横軸は静電潜像面積を表し、縦軸はトナー画像の面積(図中「トナー像面積」)を表している。上記理想的な場合ならば、静電潜像面積とトナー画像面積とは同一であるから、グラフ線:Aの傾きは「1」であり、切片は0で座標原点を通る。
【0171】
「傾き」は「面積/面積」で無次元である。図15では、解像度:600dpiの場合を例として面積を算出した。
【0172】
入力画像の1ドットに対応する静電潜像部分(対応静電潜像における1ドット状の部分)の面積は、入力情報の面積の83.3%とした。
対応静電潜像と等価な可視像用静電潜像へのトナーの付着が少なく、トナー画像面積が対応静電潜像面積の70%になる場合を図15にグラフ線「B」で示す。グラフ線「B」は、傾き:0.7で原点を通る。
【0173】
従って、傾き:1のグラフ線「A」とグラフ線「B」との傾きの差は「0.3」であり「対応静電潜像とトナー画像との差」の1つである。
【0174】
図15のグラフ線「C」は、対応静電潜像に対して「±数%の面積のばらつき」をランダムに有するトナー画像の場合を示す。このグラフ線「C」を破線で示す直線で近似した近似直線は傾き:1.0957で、傾き:1のグラフ線「A」に対して0.0957のずれ(差)がある。
【0175】
上記近似直線の切片は−1412.2であり、これは対応静電潜像とトナー画像の差の1つである。
このように、入力パターンPIを階調:I(N≧I≧1)応じて変化させ、対応静電潜像MIの面積:SIを階調:Iに対して直線的に変化させ、同一内容の入力パターンにより形成されたN個の可視像用静電潜像をトナーにより可視化してN個のトナー画像TIとし、このトナー画像の面積:STIを測定し、面積:SIの階調:Iに対する変化の、面積STIの変化に対する差として、上記傾き・切片・相関係数を測定することができる。
【0176】
従来「階調再現性の評価」は、入力情報に対するトナー画像の明度の直線性のみによっていたが、この発明により「階調再現性における静電潜像とトナー画像とのずれ」を用いることにより高精度の測定が可能である。
【0177】
図16に、入力情報に対する対応静電潜像とトナー画像との画像評価を行なう装置の1例のシステム図を示す。
【0178】
図16において符号141、145で示す部分は、図1に即して説明したのと同様の画像評価を行なう部分であり、符号141で示す部分で試料に対する対応静電潜像の形成と形成された対応静電潜像の面積の測定を、図1の場合と同様にして行なう。
【0179】
図16において、符号142は電子写真プロセスによる画像形成を行なう画像形成部であり、対応静電潜像の形成と面積測定を行なわれる試料と「静電潜像形成条件」を同一に設定された感光体が用いられる。
【0180】
入力パターンに関する入力情報は、コンピュータ145で生成され、ディスプレイに表示される。このようにして、入力情報により試料に対応静電潜像が形成されてその面積が測定される。
【0181】
一方、画像形成部142は、その感光体を試料と同一条件で帯電し、試料に対する光画像書き込みと同一の条件で光画像書き込みを行なって入力情報に対応する可視像用静電潜像を形成し、これを現像して得られるトナー画像を紙等の記録シート上に転写・定着して出力画像として出力する。
【0182】
従って「画像評価を行なう部分で試料に形成される対応静電潜像」と同一の静電潜像が画像形成部142の感光体に形成され、トナー画像として可視化される。試料に形成される対応静電潜像の面積が測定され、入力情報の面積との差が取られる。この面積の差は、所望の階調数の各階調に対して行なわれる。
【0183】
画像形成部142としては、市販の光プリンタやデジタル複写装置を用いて良い。
【0184】
図16に符号146で示すのは、入力情報に応じて記録シート上に形成されたトナー画像である。図では、異なる3階調のものを例示しているが、図示の簡単のためであり、階調数はさらに多くても良いことは言うまでもない。
【0185】
図6のトナー画像146は、数mm〜数cmの巨視的なサイズで見た様子を描いており、数十μmといった微視的なサイズで見ると、図12(a)に示すような小さなドットの集合パターンで出来ている。
【0186】
このトナー画像によるパターン146の評価を説明する。
【0187】
トナー画像によるパターン146は、2種の観察・測定装置により測定される。
第1の観察・測定手段143は「主としてパターンの反射率を測定」する装置である.基本的に光源148及び検出器149を有し、光源148から測定試料150に光照射し、反射光を検出器149により検出する。
【0188】
測定試料150は、トナー画像のパターン146を持つ記録媒体である。この装置では測定試料150の反射率が測定されるが、反射率の測定に代え、あるいは反射率とともに「明度」を測定しても良い。
【0189】
第2の観察・測定手段144は「顕微鏡」であり、同じ測定試料150の微視的状態を観察・測定する。即ち、第1、第2の観察・測定装置における前者は「巨視的な観察・測定」を行い、後者は「微視的な観察・測定」を行なう。
【0190】
前述の如く、入力パターンを特定する入力情報は、コンピュータ145で生成し、対応静電潜像の形成・観察は装置141で行い、観察結果をコンピュータ145に返し、同じ入力情報を用いて画像形成部142で紙等の記録媒体上にトナー画像146を形成し、その観察・測定を第1、第2の観察・測定手段143、144で行い、観察結果をコンピュータ145に返し、コンピュータ145内で対応静電潜像とトナー画像との面積差を算出する。なお、対応静電潜像の形成とトナー画像の形成、観察は同時でも時間差があっても良い。
【0191】
このようにして、入力情報と対応静電潜像、対応静電潜像とトナー画像、入力情報とトナー画像とのそれぞれの差・ずれを高精度で測定・評価することが可能になる。
入力情報が有る関数:F0で、これに対応する対応静電潜像がF1、トナー画像がF2で表されるものとする。
【0192】
このとき、入力情報と対応静電潜像との差:ΔF1はF1−F0で表され、対応静電潜像とトナー画像像との差:ΔF2はF2−F1で表される。
【0193】
従来は、入力情報とトナー画像との差:ΔF0=F2−F0求めていた。ここで、ΔF0=ΔF1+ΔF2ある。
入力情報とこれに最終的に対応するトナー画像との間には、電子写真プロセス上の多くの制御因子(パラメータ、条件)がある。従来のように、入力情報とトナー画像との差:ΔF0のみであると、電子写真プロセスに対する好適な制御因子(パラメータ、条件)を探す効率が悪い。
【0194】
上記ΔF1は「入力情報と対応静電潜像との差」で、主として「走査光学系に関する制御因子」に関する。ΔF2は「対応静電潜像とトナー画像との差」で、主として「現像に関する制御因子」に関する。
【0195】
この発明の画像評価では、従来「ΔF0のみ」に依っていたのを「ΔF1とΔF2の2つを用い」て評価でき、プロセスも走査光学系と現像系を分離することができるので、制御因子を探す効率を有効に工場させることができる。
【0196】
上の関数に対してさらに階調を考慮する。
ある階調を「i」と表すと、階調:iに対して上記のF0、F1、F2は、F0i、F1i、F2iである。それらの差はそれぞれ、ΔF0i、ΔF1i、ΔF2iであり、階調:iの範囲(例えば0≦i≦255)においてF、ΔFを各々求めれば良い。
【0197】
図17は、上記の測定結果を制御因子にフィードバックし、最適・好適値を探すプロセス示すダイヤグラムであり、このようなフィードバックの手段を電子写真プロセスに組み込めば良い。
【0198】
また、図16のシステムを応用すれば、画像形成部142の検査システムとすることもできる。画像形成部142以外は固定とし、画像形成部142の部分を順次換えて測定・評価、調整を行うことができる。
【0199】
このように、入力情報とトナー画像に加えて「静電潜像も含めた評価」の結果を制御因子に反映することにより「より階調再現性の良い画像」とともに、かかる画像を形成できる装置を実現できる。
【0200】
「具体例」
図13に、階調再現性における「明度の再現性」の好ましい例(横軸の階調の変化とともに、明度が直線的に変化する場合)を示したが、図13に示された「階調に対する明度:L*」を、明度L*を「その最大値で規格化」したグラフを図18に示す。
図18において、例えば、階調:100において、直線191からずれた値:192が得られたものとし、この値:192の「直線191からのずれ」を「ΔL*’」と記す。
【0201】
ΔL*は「規格化された明度差」である。
図19は、入力情報に対応する階調に対し、この入力情報により形成された対応静電潜像の面積を「その最大値で規格化」したグラフを示す。
このグラフは、対応静電潜像の面積が「階調に対して理想的に増加」する場合を表している。
【0202】
この図において、例えば、階調:100において、対応静電潜像の面積が「直線201からずれた値:202」が得られたものとする。このとき、値:202の「直線201からのずれ」を「ΔS’」とすると、この「ΔS’」は、階調:100における「対応静電潜像面積の規格化された面積」の理想値からの差である。
【0203】
また、明度差と対応静電潜像面積との差:ΔL*’−ΔS’を求めると、これは現像プロセスにおけるトナー画像形成の寄与を表し、上記ΔF2を含んでおり、上記の如く測定した差・ずれの各値と、従来技術の明度による評価方法を結びつけるものである。
階調全体での評価は、階調をiとして「ΔLi*’ −ΔSi’」である。
【0204】
従来、階調再現性の評価は「横軸に階調数、縦軸に明度の実測値」をプロットして直線近似し、その相関係数の値により「階調再現性の優劣」を評価していたが、評価値が1つであり評価方法に課題があった。
【0205】
これに対し、この発明のように、相関係数の外に「近似直線の傾きのずれ」や「切片の値(原点からのずれ)」を評価値に加えることにより、より精度の高い評価方法を実現できる。
【0206】
また、得られた評価結果を電子写真プロセスの制御因子に反映させることにより、さらに階調再現性の良い画質及びその画質を形成する画像形成装置を実現できる。
【0207】
図16に即して説明した評価装置において、トナー画像の反射率を測定し、網点面積率:Atを求める場合を考える。
【0208】
周知の如く、記録シート上に表現されたトナー画像の階調再現性の評価は、反射率:Rを測定することにより行われることが多い。光学濃度:Dで表現する場合、反射率:Rと光学濃度:Dとの関係は、
D=log10(1/R)
で表される。
【0209】
白色の記録媒体上にトナーが存在しないとき「濃度:0」であり、記録媒体全体がトナーで覆われた所謂「ベタ画像」での濃度は2.0前後の値となることが多い。
【0210】
光画像書き込みを用いる電子写真プロセスで形成されるトナー画像は「ドットの集合」による所謂網点画像であり、一定面積に対して網点の面積率は、濃度:0に対して0%、上記ベタ画像に対して100%であり、この間に「異なる濃度をいくつ表現できるか」により階調の数(階調数)が決まる。
【0211】
図20(a)において、基準となる面積をSs、トナー画像におけるドット像の面積をSdとすると、トナー画像における網点面積率:Atは「At=Sd/Ss」で与えられる。
【0212】
従来においては、反射率の測定において、トナー画像の網点占有率が測定されているが、この場合に「オプティカルドットゲイン(測定用の光が記録媒体である紙の内部まで浸透して拡散したり、トナー表面で反射したり、トナー内部で多重散乱することにより生じ、測定される網点面積を増やす効果を有する。)をどのように補正するかの問題がある。
【0213】
面積階調と網点面積率との関係は「Murray−Davisの式」により表され、オプティカルドットゲイン:nの補正をしたYule−Niesenの式があるが、光学的測定により得られる反射率・網点面積率には原理的にオプティカルドットゲインが含まれる。
【0214】
昨今、パーソナルコンピュータ(PC)により電子的に文章・画像を作成し、この画像をレーザプリンタやデジタル複写装置を用いてアウトプット画像を出力する場合には、一般的に256階調(8bit,28)が用いられており、これが必要とされる階調数になるが、情報機器や電子機器の性能及び作像技術のレベルに依存する所が大きい。業務用の画像形成ではより多くの階調数が必要であり、将来的に階調数はさらに増えると考えられる。
【0215】
図16に示したような画像評価装置では、トナー画像のみならず、対応静電潜像に対しても面積測定が行なわれる。
【0216】
図20(a)のように、トナー画像の反射率から網点面積率:At(=Ss/Sd)にはオプティカルドットゲイン:nが含まれるが、図20(b)のように、対応静電潜像の1ドット画像の面積:Seを測定し、静電潜像に対する網点面積率:As(As=Se/Ss)を求めると、この場合の面積測定は光学測定でないので、網点面積率:Asはオプティカルドットゲインを含まない。
【0217】
従って、光学的に測定される網点面積率:At、非光学的に測定される網点面積率:Asの差:(At−As)或いは比:(At/As)から、オプティカルドットゲイン:nを求めることができ、網点面積率:Atを有効に補正することができる。
【0218】
電子写真プロセスにより形成される画像(トナー画像)は、感光体帯電電位、光画像書き込み時の光強度・照射時間、静電潜像へのトナー付着量の多少等の制御因子(パラメータ、条件)により制御される。
【0219】
この発明においては、画像形成すべきパターンである入力パターンの入力情報により形成される対応静電潜像の面積や、この面積の階調に対する依存性が測定され、また、対応静電潜像とこれを可視化したトナー画像の面積や、その階調に対する依存性が測定されるので、上記電子写真プロセスの制御因子をより精緻に設定することが可能となり、これら制御因子でより良好な制御をおこなって良好な画像形成を実現できる。
【0220】
図21に、画像形成装置の1形態を説明図的に示す。
【0221】
図21において、感光体(OPC)71が矢印方向へ等速回転しつつ、帯電チャージャ72により均一帯電され、走査ビーム73により光画像書き込みが行なわれて静電潜像が形成される。
【0222】
形成された静電潜像はトナー74により可視化されてトナー画像となり、記録媒体である転写紙75上に転写チャージャ76により静電転写され、トナー画像を転写された転写紙76は定着装置77によりトナー画像を定着されて装置外へ排出される。
【0223】
トナー画像転写後の感光体71はクリーナ78により表面を清掃され、除電ランプ79により除電される。
【0224】
上記の如くして決定された制御因子により、帯電チャージャ72の帯電電位、光画像書き込みの際の光強度や照射時間、現像装置におけるバイアス電圧やトナー帯電量等の現像条件等を制御することにより良好な画像形成を行なうことができる。
【符号の説明】
【0225】
152 電子銃
153 コンデンサレンズ
154 走査レンズ
155 対物レンズ
157 試料(光導電性の感光体)
159 真空ポンプ
158 インタフェース
160 制御手段
165 光照射光学系
164 試料ステージ
163 電子検出器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0226】
【特許文献1】特開2003−295696号公報
【特許文献2】特許第3865676号公報
【特許文献3】特開2005−311952号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電させた光導電性の感光体に対し、入力パターンの形状および面積に関する情報を少なくとも有する入力情報に基づき、光画像書き込みを行なって、上記入力パターンに対応する対応静電潜像を形成し、この対応静電潜像の面積を測定し、
上記入力情報の面積と上記対応静電潜像の面積との面積差を測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項2】
請求項1記載の画像評価方法において、
階調:Iの異なるN(≧2)個の入力パターンPIに対応するN個の対応静電潜像を形成し、入力パターンPIに対応する対応静電潜像MIの面積:SIと、上記入力パターンPIの面積:SPIとの面積差を、階調:Iごとに測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項3】
請求項2記載の画像評価方法において、
入力パターンPIの面積:SPIを、階調:Iに対して直線的に変化させ、
対応静電潜像MIの面積:SIの上記階調:Iに対する変化の、上記面積SPIの直線的変化に対する差を測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項4】
請求項1〜3の任意の1に記載の画像評価方法を実施する装置であって、
光導電性の感光体を帯電させる帯電手段と、
上記感光体に作用させる入力パターンの入力情報を生成する入力情報生成手段と、
上記感光体に上記入力情報に基づき光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成する対応静電潜像形成手段と、
対応静電潜像の面積を測定する面積測定手段と、
対応静電潜像の測定された面積を用い、少なくとも入力パターンの面積との差を含む演算処理を行なう演算処理手段とを有することを特徴とする画像評価装置。
【請求項5】
帯電させた光導電性の感光体に対し、入力パターンの形状および面積に関する情報を少なくとも有する入力情報に基づき、光画像書き込みを行なって、上記入力パターンに対応する対応静電潜像を形成し、
この対応静電潜像の面積を測定し、
上記入力情報と同一内容の入力情報により可視像用静電潜像を形成し、
形成された可視像用静電潜像をトナーにより可視化してトナー画像とし、このトナー画像の面積を測定し、
上記対応静電潜像の面積と、上記トナー画像の面積の差を測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項6】
請求項5記載の画像評価方法において、
階調:Iの異なるN(≧2)個の入力パターンPIに対応するN個の対応静電潜像を形成し、これらN個の対応静電潜像MIの面積:SIを測定し、
上記N個の入力パターンPIと同一内容の入力情報により形成されたN個の可視像用静電潜像をトナーにより可視化してN個のトナー画像TIとし、このトナー画像の面積:STIを測定し、
面積:SIとSTIとを、階調:Iごとに測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項7】
請求項6記載の画像評価方法において、
入力パターンPIを階調:I(N≧I≧1)応じて変化させ、対応静電潜像MIの面積:SIを上記階調:Iに対して直線的に変化させ、
同一内容の入力パターンにより形成されたN個の可視像用静電潜像をトナーにより可視化してN個のトナー画像TIとし、このトナー画像の面積:STIを測定し、
上記面積:SIの階調:Iに対する変化の、上記面積STIの変化に対する差を測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項8】
請求項5〜7の任意の1に記載の画像評価方法を実施する装置であって、
光導電性の感光体を帯電させる帯電手段と、
上記感光体に作用させる入力パターンの入力情報を生成する入力情報生成手段と、
上記感光体に上記入力情報に基づき光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成する対応静電潜像形成手段と、
対応静電潜像の面積を測定する面積測定手段と、
上記入力情報生成手段による上記入力パターンと同一内容の入力情報を用いて可視像用静電潜像を形成し、この可視像用静電潜像をトナーによるトナー画像として可視化する可視像形成手段と、
上記可視像形成手段により形成されたトナー画像のトナー画像面積を測定する可視像面積測定手段と、
上記面積測定手段により測定された対応静電潜像面積と、上記可視像面積測定手段により測定されたトナー画像面積を用い、少なくとも、対応静電潜像面積とトナー画像面積の差を含む演算処理を行なう演算処理手段とを有することを特徴とする画像評価装置。
【請求項9】
電子写真プロセスを利用する画像形成装置において、
請求項1、2、3、5、6、7の何れかに記載の画像評価方法、もしくは請求項4または8に記載の画像評価装置により得られた前記入力情報と対応静電潜像との面積差情報、対応静電潜像面積とトナー画像面積との面積差情報の少なくとも一方に応じて、画像形成条件を調整制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
帯電させた光導電性の感光体に対し、入力パターンの形状および面積に関する情報を少なくとも有する入力情報に基づき、光画像書き込みを行なって、上記入力パターンに対応する対応静電潜像を形成し、この対応静電潜像の面積を測定し、
上記入力情報の面積と上記対応静電潜像の面積との面積差を測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項2】
請求項1記載の画像評価方法において、
階調:Iの異なるN(≧2)個の入力パターンPIに対応するN個の対応静電潜像を形成し、入力パターンPIに対応する対応静電潜像MIの面積:SIと、上記入力パターンPIの面積:SPIとの面積差を、階調:Iごとに測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項3】
請求項2記載の画像評価方法において、
入力パターンPIの面積:SPIを、階調:Iに対して直線的に変化させ、
対応静電潜像MIの面積:SIの上記階調:Iに対する変化の、上記面積SPIの直線的変化に対する差を測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項4】
請求項1〜3の任意の1に記載の画像評価方法を実施する装置であって、
光導電性の感光体を帯電させる帯電手段と、
上記感光体に作用させる入力パターンの入力情報を生成する入力情報生成手段と、
上記感光体に上記入力情報に基づき光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成する対応静電潜像形成手段と、
対応静電潜像の面積を測定する面積測定手段と、
対応静電潜像の測定された面積を用い、少なくとも入力パターンの面積との差を含む演算処理を行なう演算処理手段とを有することを特徴とする画像評価装置。
【請求項5】
帯電させた光導電性の感光体に対し、入力パターンの形状および面積に関する情報を少なくとも有する入力情報に基づき、光画像書き込みを行なって、上記入力パターンに対応する対応静電潜像を形成し、
この対応静電潜像の面積を測定し、
上記入力情報と同一内容の入力情報により可視像用静電潜像を形成し、
形成された可視像用静電潜像をトナーにより可視化してトナー画像とし、このトナー画像の面積を測定し、
上記対応静電潜像の面積と、上記トナー画像の面積の差を測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項6】
請求項5記載の画像評価方法において、
階調:Iの異なるN(≧2)個の入力パターンPIに対応するN個の対応静電潜像を形成し、これらN個の対応静電潜像MIの面積:SIを測定し、
上記N個の入力パターンPIと同一内容の入力情報により形成されたN個の可視像用静電潜像をトナーにより可視化してN個のトナー画像TIとし、このトナー画像の面積:STIを測定し、
面積:SIとSTIとを、階調:Iごとに測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項7】
請求項6記載の画像評価方法において、
入力パターンPIを階調:I(N≧I≧1)応じて変化させ、対応静電潜像MIの面積:SIを上記階調:Iに対して直線的に変化させ、
同一内容の入力パターンにより形成されたN個の可視像用静電潜像をトナーにより可視化してN個のトナー画像TIとし、このトナー画像の面積:STIを測定し、
上記面積:SIの階調:Iに対する変化の、上記面積STIの変化に対する差を測定することを特徴とする画像評価方法。
【請求項8】
請求項5〜7の任意の1に記載の画像評価方法を実施する装置であって、
光導電性の感光体を帯電させる帯電手段と、
上記感光体に作用させる入力パターンの入力情報を生成する入力情報生成手段と、
上記感光体に上記入力情報に基づき光画像書き込みを行なって、入力パターンに対応する対応静電潜像を形成する対応静電潜像形成手段と、
対応静電潜像の面積を測定する面積測定手段と、
上記入力情報生成手段による上記入力パターンと同一内容の入力情報を用いて可視像用静電潜像を形成し、この可視像用静電潜像をトナーによるトナー画像として可視化する可視像形成手段と、
上記可視像形成手段により形成されたトナー画像のトナー画像面積を測定する可視像面積測定手段と、
上記面積測定手段により測定された対応静電潜像面積と、上記可視像面積測定手段により測定されたトナー画像面積を用い、少なくとも、対応静電潜像面積とトナー画像面積の差を含む演算処理を行なう演算処理手段とを有することを特徴とする画像評価装置。
【請求項9】
電子写真プロセスを利用する画像形成装置において、
請求項1、2、3、5、6、7の何れかに記載の画像評価方法、もしくは請求項4または8に記載の画像評価装置により得られた前記入力情報と対応静電潜像との面積差情報、対応静電潜像面積とトナー画像面積との面積差情報の少なくとも一方に応じて、画像形成条件を調整制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−191216(P2010−191216A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35911(P2009−35911)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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